説明

放射線撮影システムおよび放射線撮影システムの長尺撮影方法、並びに放射線画像検出装置

【課題】長尺撮影時のAECの採光野を簡便に設定する。
【解決手段】採光野選択回路は、脊椎と腰部にあたる部分を採光野領域87、88として規定した脊椎用採光野マップ85、または腰部、両膝、両くるぶしにあたる部分を採光野領域89、90、91として規定した下肢用採光野マップ86に基づき、AECに用いる検出画素からのAEC検出信号を選別する。各マップ85、86は、実際の長尺な撮影範囲と同じサイズになるようマップ拡縮部で拡縮され、各回の撮影範囲と同じサイズになるようマップ分割部で分割されて採光野選択回路に出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影システムおよび放射線撮影システムの長尺撮影方法、並びに放射線画像検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、放射線、例えばX線を利用したX線撮影システムが知られている。X線撮影システムは、X線を発生するX線発生装置と、X線を受けてX線画像を撮影するX線撮影装置とからなる。X線発生装置は、X線を被検体に向けて照射するX線源、X線源の駆動を制御する線源制御装置、およびX線の照射開始指示を入力するための照射スイッチを有している。X線撮影装置は、被検体を透過したX線を受けてX線画像を検出するX線画像検出装置、およびX線画像検出装置の駆動を制御するとともにX線画像に各種画像処理を施すコンソールを有している。
【0003】
最近のX線撮影システムの分野では、X線フイルムやイメージングプレート(IP)に代わり、フラットパネルディテクタ(FPD;flat panel detector)を検出パネルとして用いたX線画像検出装置が普及している。FPDには、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する画素がマトリックス状に配列されている。FPDは、画素毎に信号電荷を蓄積し、蓄積した信号電荷を信号処理回路で電圧信号に変換することで、被検体の画像情報を表すX線画像を検出し、これをデジタルな画像データとして出力する。
【0004】
FPDを直方体形状の筐体に内蔵した電子カセッテ(可搬型のX線画像検出装置)も実用化されている。電子カセッテは、撮影台に据え付けられて取り外し不可なタイプと違って、フイルムカセッテやIPカセッテ用の既存の撮影台や専用の撮影台に着脱可能に取り付けて使用される他、据え付け型では撮影困難な部位を撮影するためにベッド上に置いたり被検体自身に持たせたりして使用される。また、自宅療養中の高齢者や、事故、災害等による急病人を撮影するため、撮影台の設備がない病院外に持ち出して使用されることもある。
【0005】
X線撮影システムには、被検体を透過したX線量を検出する線量検出センサを設けて、線量検出センサで検出したX線量の積算値が予め設定した閾値に達したら、X線源によるX線の照射を停止させる自動露出制御(AEC;Automatic Exposure Control)を行うものがある。
【0006】
特許文献1には、FPDの画素の信号を元にAECを行うX線撮影装置が開示されている。関心検出部位(撮影部位)に対応したFPDの画素領域(採光野)のデータ(画素のアドレス、面積等)をもち、関心検出部位に応じてAECに使用する画素を選択している。
【0007】
特許文献2は、マンモグラフィ装置において、画素出力をAECに利用可能な非破壊読み出しの撮像装置(X線画像検出装置)を用い、プレ撮影によって乳房の輪郭を認識して乳房の大きさを算出し、これに応じてAECに用いる画素の領域(採光野)の大きさを変化させている。
【0008】
また、X線撮影には、X線源とX線画像検出装置の位置を一箇所に固定して胸部、腹部等の単一の部位を一枚撮影する場合と、X線源とX線画像検出装置を移動させて、各移動位置で複数枚撮影する場合とがある。後者は長尺撮影と呼ばれ、骨年齢や湾曲度等、主に被検体の骨の具合の観察を目的として行われる。撮影部位としては被検体の首下から腰までの上半身をカバーする全脊椎、腰からつま先までの下半身をカバーする全下肢がある。
【0009】
長尺撮影では、まず、身長や座高、股下長といった被検体の身体的特徴に応じて、放射線技師等のオペレータが撮影範囲を設定する。この撮影範囲とX線画像検出装置(の検出パネルの画素が配列された撮像面)のサイズに基づいて撮影回数を割り出す。さらに各回の撮影のX線源とX線画像検出装置の位置を、隣接する撮影位置で撮像面が重複するように設定する。そして、各撮影位置にX線源とX線画像検出装置を移動させつつ複数回撮影を行う。撮影後、隣接する撮影位置での撮像面の重複により生じたオーバーラップ領域を糊代として複数枚のX線画像を合成し、一枚の長尺画像を生成する。
【0010】
長尺撮影では撮影範囲が広範囲にわたり、腰部と脚部等の体厚やX線があたらない素抜け領域の面積が極端に異なる部位を連続的に撮影するため、各撮影位置で被検体を透過したX線量を最適値に制御することが難しい。そこで特許文献3は、カメラで被検体を撮影してその輪郭を抽出し、これを元に長尺撮影の個々の撮影のAECの採光野を設定している。そして、FPDの画素をAEC用のセンサとし、設定された採光野に存在する画素からの信号を元に各撮影位置でのAECを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−000590号公報
【特許文献2】特開平08−033621号公報
【特許文献3】特開2011−139761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2、3に記載の発明は、採光野の設定のためだけにプレ撮影を行ったりカメラを設置したりして、そのうえプレ撮影で得た画像やカメラの画像から被検体の輪郭を抽出しなければならず、装置規模と装置コストの増大化、処理の煩雑化と長時間化は避けられない。
【0013】
特許文献2は、プレ撮影によって患者に無用な被曝を強いるという問題もある。特許文献3は被検体の輪郭を元に採光野を決めているため、長尺撮影で重要視される骨ではない部分も多く採光野に含まれてしまい、適正なAECが行われないおそれがある。また、被検体が着衣状態であったりギプスを装着していて被検体の輪郭が露わでない場合は、診断に全く関係のない部分も採光野としてしまうおそれもある。
【0014】
特許文献1はそもそも長尺撮影について記載されていない。
【0015】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、長尺撮影時のAECの採光野を簡便に設定することができる放射線撮影システムおよび放射線撮影システムの長尺撮影方法、並びに放射線画像検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の放射線撮影システムは、放射線を被検体に向けて照射する放射線源と、被検体を透過した放射線を受ける複数の画素が配列された検出パネルを有する放射線画像検出装置と、前記検出パネルの前記画素が設けられた撮像面の略全面に満遍なく散らばるよう配置され、被検体を透過した放射線の線量を検出する複数の線量検出センサと、前記線量検出センサで検出された線量の積算値と予め設定した照射停止閾値を比較し、前記積算値が前記照射停止閾値に達したら前記放射線源による放射線の照射を停止させる自動露出制御を行う自動露出制御手段とを備え、前記放射線源と前記放射線画像検出装置を相対的に移動させ、被検体の複数の部位を含む長尺な撮影範囲を分けた複数の撮影範囲で複数回撮影し、これにより得られた複数枚の放射線画像を合成して一枚の長尺画像を生成して表示する放射線撮影システムにおいて、前記自動露出制御に用いる前記線量検出センサの採光野領域を部位毎に規定した採光野マップを記憶するマップ記憶手段と、前記採光野マップに基づき前記自動露出制御に用いる前記線量検出センサを選択する採光野選択手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
前記長尺な撮影範囲に合わせて前記採光野マップを拡縮し、前記長尺な撮影範囲と前記採光野マップのサイズを一致させるマップ拡縮手段を備えることが好ましい。また、前記マップ拡縮手段で拡縮された前記採光野マップを、前記長尺な撮影範囲を分けた複数の撮影範囲に応じて各回の撮影用に分割するマップ分割手段を備えることが好ましい。前記採光野選択手段は、前記マップ分割手段で分割された前記採光野マップを使用する。
【0018】
前記採光野マップは、腰部および脊椎にあたる採光野領域を規定する脊椎用採光野マップと、腰部、両膝、両くるぶしにあたる採光野領域を規定する下肢用採光野マップとを含む。
【0019】
前記採光野マップは、特殊な形状の採光野領域を規定する第一採光野マップと単純な形状の採光野領域を規定する第二採光野マップの二種類があり、前記採光野選択手段は、撮影回数または前記長尺な撮影範囲を分けた複数の撮影範囲毎に前記第一採光野マップと前記第二採光野マップを切り替えて使用する。
【0020】
前記第一採光野マップは、腰部および脊椎の一部にあたる逆T字状の採光野領域を規定し、前記第二採光野マップは、脊椎にあたる一本の棒状の採光野領域を規定する。あるいは、前記第一採光野マップは、腰部および両足の一部にあたるπ字状の採光野領域を規定し、前記第二採光野マップは、両足にあたる二本の棒状の採光野領域を規定する。
【0021】
一回目に撮影する撮影範囲に腰部を含む場合、前記採光野選択手段は、一回目の撮影では前記第一採光野マップを使用し、二回目の撮影以降は前記第二採光野マップに切り替えて使用する。
【0022】
前記採光野選択手段は、前記放射線源の照射野限定器のコリメータ角度、および前記放射線源と前記放射線画像検出装置の位置関係に基づき、放射線が照射される前記撮像面の領域を特定する照射野特定手段を有し、前記照射野特定手段で特定された照射野且つ前記採光野マップで規定された採光野領域に存在する前記線量検出センサを選択する。
【0023】
前記採光野選択手段は、前記放射線源と前記放射線画像検出装置の位置関係、および前記放射線源の駆動条件に基づき、放射線が被検体を透過せずに前記撮像面に直接照射される素抜け領域の到達予測線量の瞬時値を算出する到達予測線量算出手段と、前記到達予測線量算出手段で算出された前記到達予測線量の瞬時値と前記線量検出センサで検出された線量の瞬時値の比較結果から、放射線が照射される被検体の領域を特定する被検体領域特定手段とを有し、前記被検体領域特定手段で特定された被検体領域且つ前記採光野マップで規定された採光野領域に存在する前記線量検出センサを選択する。
【0024】
前記複数の撮影範囲は、前記撮像面が一部オーバーラップするように分けられる。前記画素は、放射線を受けて信号電荷を蓄積し、スイッチング素子の駆動に応じて信号電荷を信号線に出力するものである。そして、前記線量検出センサは、信号線にスイッチング素子を介さず直接接続された前記画素である。また、前記放射線画像検出装置は、前記検出パネルが可搬型の筐体に収納された電子カセッテである。
【0025】
また、本発明は、放射線を被検体に向けて照射する放射線源と、被検体を透過した放射線を受ける複数の画素が配列された検出パネルを有する放射線画像検出装置と、前記検出パネルの前記画素が設けられた撮像面の略全面に満遍なく散らばるよう配置され、被検体を透過した放射線の線量を検出する複数の線量検出センサと、前記線量検出センサで検出された線量の積算値と予め設定した照射停止閾値を比較し、前記積算値が前記照射停止閾値に達したら前記放射線源による放射線の照射を停止させる自動露出制御を行う自動露出制御手段とを備える放射線撮影システムで、前記放射線源と前記放射線画像検出装置を相対的に移動させ、被検体の複数の部位を含む長尺な撮影範囲を分けた複数の撮影範囲で複数回撮影し、これにより得られた複数枚の放射線画像を合成して一枚の長尺画像を生成して表示する長尺撮影方法において、前記自動露出制御に用いる前記線量検出センサの採光野領域を部位毎に規定した採光野マップに基づき、前記自動露出制御に用いる前記線量検出センサを選択することを特徴とする。
【0026】
さらに、本発明の放射線画像検出装置は、放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受ける複数の画素が配列された検出パネルと、前記検出パネルの前記画素が設けられた撮像面の略全面に満遍なく散らばるよう配置され、被検体を透過した放射線の線量を検出する複数の線量検出センサと、前記線量検出センサで検出された線量の積算値と予め設定した照射停止閾値を比較し、前記積算値が前記照射停止閾値に達したら前記放射線源による放射線の照射を停止させる自動露出制御のための照射停止信号を前記放射線源に向けて送信する信号送信手段と、前記放射線源と前記放射線画像検出装置を相対的に移動させ、被検体の複数の部位を含む長尺な撮影範囲を分けた複数の撮影範囲で複数回撮影し、これにより得られた複数枚の放射線画像を合成して一枚の長尺画像を生成して表示する長尺撮影時、前記自動露出制御に用いる前記線量検出センサの採光野領域を部位毎に規定した採光野マップに基づき、前記自動露出制御に用いる前記線量検出センサを選択する採光野選択手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、自動露出制御に用いる線量検出センサの採光野領域を部位毎に規定した採光野マップをもつので、長尺撮影時のAECの採光野を簡便に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】X線撮影システムの構成を示す概略図である。
【図2】線源制御装置の内部構成と線源制御装置と他の装置との接続関係を示す図である。
【図3】撮影範囲の設定の様子を示す図である。
【図4】電子カセッテの内部構成を示すブロック図である。
【図5】検出画素の配置および採光野を説明するための図である。
【図6】電子カセッテのAEC部および通信部の内部構成を示すブロック図である。
【図7】コンソールに設定された撮影条件を示す図である。
【図8】脊椎用採光野マップおよび下肢用採光野マップを示す図である。
【図9】脊椎用採光野マップおよび下肢用採光野マップの具体的な中味を示す図である。
【図10】コンソールの内部構成を示すブロック図である。
【図11】コンソールの機能および情報の流れを示すブロック図である。
【図12】(A)は長尺撮影時の各撮影位置を示す図であり、(B)は各撮影位置で取得される画像データを示す図である。
【図13】マップ拡縮部の機能を説明するための図である。
【図14】マップ分割部の機能を説明するための図である。
【図15】長尺撮影の処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】AECの処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】(A)は第一、第二脊椎用採光野マップを示し、(B)は第一、第二下肢用採光野マップを示す図である。
【図18】採光野選択回路の別の形態を示す図である。
【図19】図18の態様におけるAECの処理の流れを示すフローチャートである。
【図20】FPDの別の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1において、X線撮影システム2は、X線源10と、X線源10の動作を制御する線源制御装置11と、X線の照射開始を指示するための照射スイッチ12と、被検体Mを透過したX線を検出してX線画像を出力する電子カセッテ13と、電子カセッテ13の動作制御やX線画像の画像処理を担うコンソール14と、被検体Mを立位姿勢で撮影するための立位撮影台15とを有する。X線源10、線源制御装置11、および照射スイッチ12はX線発生装置、電子カセッテ13、およびコンソール14はX線撮影装置をそれぞれ構成する。この他にもX線源10を所望の方向および位置にセットするための線源移動機構16等が設けられている。
【0030】
X線源10は、X線を放射するX線管17と、X線管17が放射するX線の照射野を矩形状に限定する照射野限定器(コリメータ)18とを有する。X線管17は、熱電子を放出するフィラメントからなる陰極と、陰極から放出された熱電子が衝突してX線を放射する陽極(ターゲット)とを有している。照射野限定器18は、例えば、X線を遮蔽する複数枚の鉛板を井桁状に配置し、X線を透過させる照射開口が中央に形成されたものであり、線源制御装置11の制御の下、鉛板の位置を移動することで照射開口の大きさを変化させて、照射野を限定する。
【0031】
線源制御装置11は、X線の照射野が電子カセッテ13のFPD40の撮像面41(ともに図4参照)と略一致するように、照射野限定器18から出射されるX線の角度範囲(以下、コリメータ角度という)を撮影室の床面と垂直なZ方向と撮像面41の幅方向であるX方向(紙面に垂直な方向)の二方向で調整する。図中の「θ」はZ方向に関するコリメータ角度を示している。
【0032】
また、線源制御装置11は、長尺撮影の際に立位撮影台15のホルダ19のZ方向の上下動に追従してX線源11を首振り動作させるよう、線源移動機構16の駆動を制御する。線源移動機構16は、例えばX線源10を撮影室の天井から懸下保持し、且つZ方向に伸縮自在でX線源10をZ方向に首振りさせる機能をもったアームと、該アームが取り付けられてアーム毎X線源10をXY方向(Y方向は撮影室の床面と平行且つX方向に垂直な方向)に移動させるレールと、モータ等の駆動源とからなり、線源制御装置11の制御の下に自動で、または放射線技師等のオペレータにより手動でX線源10の位置を変えることが可能である。長尺撮影時には、被検体Mの撮影範囲のZ方向の中心位置Zに高さが一致するようX線源10が移動される。
【0033】
図2に示すように、線源制御装置11は、トランスによって入力電圧を昇圧して高圧の管電圧を発生し、高電圧ケーブルを通じてX線源10に供給する高電圧発生器30と、X線源10が照射するX線のエネルギースペクトルを決める管電圧、単位時間当たりの照射量を決める管電流、およびX線の照射時間を制御する制御部31と、コンソール14との主要な情報、信号の送受信を媒介する通信I/F32とを備える。
【0034】
制御部31には照射スイッチ12とメモリ33とタッチパネル34が接続されている。照射スイッチ12は、オペレータによって操作される例えば二段階押しのスイッチであり、一段階押しでX線源10のウォームアップを開始させるためのウォームアップ開始信号を発生し、二段階押しでX線源10に照射を開始させるための照射開始信号を発生する。これらの信号は信号ケーブルを通じて線源制御装置11に入力される。制御部31は、照射スイッチ12から照射開始信号を受けたときに高電圧発生器30からX線源10への電力供給を開始させる。
【0035】
メモリ33は、管電圧、管電流照射時間積(mAs値)といった撮影条件を予め数種類格納している。撮影条件はタッチパネル34を通じてオペレータにより手動で設定される。線源制御装置11は、設定された撮影条件の管電圧や管電流照射時間積でX線を照射しようとする。AECはこれに対して必要十分な線量に到達したことを検出すると、線源制御装置11側で照射しようとしていた管電流照射時間積(照射時間)以下であってもX線の照射を停止するように機能する。なお、目標線量に達してAECによる照射停止の判断がされる前にX線の照射が終了して線量不足に陥ることを防ぐために、X線源10の撮影条件には電流照射時間積(照射時間でも可)の最大値が設定される。
【0036】
照射信号I/F35は、電子カセッテ13の検出画素65(図4参照)の出力を元にX線の照射停止タイミングを規定する場合に電子カセッテ13と接続される。この場合、制御部31は、照射スイッチ12からウォームアップ開始信号を受けたときに、照射信号I/F35を介して問い合わせ信号を電子カセッテ13に送信させる。電子カセッテ13は問い合わせ信号を受信するとリセット処理の完了や蓄積開始処理等の準備処理を行う。そして、電子カセッテ13から問い合わせ信号の応答である照射許可信号を照射信号I/F35で受け、さらに照射スイッチ12から照射開始信号を受けたときに高電圧発生器30からX線源10への電力供給を開始させる。また、制御部31は、電子カセッテ13から発せられる照射停止信号を照射信号I/F35で受けたときに、高電圧発生器30からX線源10への電力供給を停止させ、X線の照射を停止させる。
【0037】
電子カセッテ13は、周知の如くFPD40とFPD40を収容する可搬型の筐体(図示せず)とからなる。電子カセッテ13の筐体は略矩形状で偏平な形状を有し、平面サイズはフイルムカセッテやIPカセッテ(CRカセッテとも呼ばれる)と同様の大きさ(国際規格ISO4090:2001に準拠した大きさ)である。このため、フイルムカセッテやIPカセッテ用の既存の撮影台にも取り付け可能である。
【0038】
電子カセッテ13は、FPD40の撮像面41がX線源10と対向する姿勢で保持されるよう、立位撮影台15のホルダ19に着脱自在にセットされる。電子カセッテ13は、立位撮影台15にセットするのではなく、被検体Mが仰臥するベッド上に置いたり被検体M自身に持たせたりして単体で使用することも可能である。
【0039】
図1において、立位撮影台15は、電子カセッテ13のFPD40の撮像面41の向きを変えずにホルダ19をZ方向に上下動させるホルダ移動機構20を備えている。ホルダ移動機構20によって、コンソール14の制御の下に自動で、またはオペレータにより手動でホルダ19の位置(高さ)を変えることができる。
【0040】
X線源10はレーザ光源21を備えている。レーザ光源21は、被検体Mの撮影範囲を設定する際に点灯され、X、Z方向にそれぞれ平行な二種類の線状レーザ光をX線源10の前方に照射可能である。
【0041】
オペレータは、被検体Mを立位撮影台15の前の所定位置に立たせ、線源制御装置11のタッチパネル34を操作してレーザ光源21を点灯させる。次いで図3(A)、(B)に示すように、線源移動機構16を操作して、撮影範囲のZ方向の高さZを設定するため、X方向に平行な線状レーザ光が所望の撮影範囲の上端位置Zと一致する位置にX線源10の高さをセットする。その後、X方向に平行な線状レーザ光が所望の撮影範囲の下端位置Zに一致するよう、X線源10をZ方向下向きに首振りさせる。また、撮影範囲のX方向の幅Xも同様にZ方向に平行な線状レーザ光を照射して、線状レーザ光が所望の位置を照射するようX線源10を左右に首振りさせる。但しX方向の左右の首振り角度は中心に関して等角度とする。このときのX線源10のZ方向の高さ(=Z)および首振り角度φ、φは、線源移動機構16に内蔵のポテンショメータで検出されている。ポテンショメータの検出結果はタッチパネル34の操作によりその都度線源制御装置11からコンソール14に送信される。なお、図1のZ、Z、Zは、全脊椎撮影を行う場合のZ方向の撮影範囲の一例であり、被検体Mの首から腰(骨盤)までの上半身を略カバーする範囲である。
【0042】
上記例ではX線源10の高さと所望の撮影範囲の上端位置Zを合わせた後、X線源10をZ方向下向きに首振りさせて下端位置Zを設定しているが、逆に下端位置Zを先に設定した後、X線源10をZ方向上向きに首振りさせて上端位置Zを設定してもよい。また、図3(C)に示すように、X線源10を任意の高さに配置してZ方向上向きおよび下向きに首振りさせて上端位置Zおよび下端位置Zを設定し、そのときのX線源10の高さと首振り角度φ’、φ’’に基づき撮影範囲を設定してもよい。
【0043】
図4において、電子カセッテ13にはアンテナ42、およびバッテリ43が内蔵されており、コンソール14との無線通信が可能である。アンテナ42は、無線通信のための電波をコンソール14との間で送受信する。バッテリ43は、電子カセッテ13の各部を動作させるための電力を供給する。バッテリ43は、薄型の電子カセッテ13内に収まるよう比較的小型のものが使用される。また、バッテリ43は、電子カセッテ13から外部に取り出して専用のクレードルにセットして充電することも可能である。バッテリ43を無線給電可能な構成としてもよい。
【0044】
電子カセッテ13には、アンテナ42に加えてソケット44が設けられている。ソケット44はコンソール14と有線接続するために設けられており、バッテリ43の残量不足等で電子カセッテ13とコンソール14との無線通信が不可能になった場合に使用される。ソケット44にコンソール14からのケーブルを接続した場合、コンソール14との有線通信が可能になる。この際、コンソール14から電子カセッテ13に給電してもよい。
【0045】
アンテナ42およびソケット44は、通信部45に設けられている。通信部45は、アンテナ42またはソケット44と制御部46、メモリ47間の画像データを含む各種情報、信号の送受信を媒介する。
【0046】
FPD40は、TFTアクティブマトリクス基板を有し、この基板上にX線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素50を配列してなる撮像面41を備えている。複数の画素50は、所定のピッチで二次元にi行(X方向)×j列(Z方向)のマトリクス状に配列されている。
【0047】
FPD40はさらに、X線を可視光に変換するシンチレータ(蛍光体、図示せず)を有し、シンチレータによって変換された可視光を画素50で光電変換する間接変換型である。シンチレータは、CsI(ヨウ化セシウム)やGOS(ガドリウムオキシサルファイド)等からなり、画素50が配列された撮像面41の全面と対向するように配置されている。なお、シンチレータとFPD40は、X線の入射する側からみてシンチレータ、FPD40の順に配置されるPSS(Penetration Side Sampling)方式でもよいし、逆にFPD40、シンチレータの順に配置されるISS(Irradiation Side sampling)方式でもよい。また、シンチレータを用いず、X線を直接電荷に変換する変換層(アモルファスセレン等)を用いた直接変換型のFPDを用いてもよい。
【0048】
画素50は、可視光の入射によって電荷(電子−正孔対)を発生する光電変換素子であるフォトダイオード51、フォトダイオード51が発生した電荷を蓄積するキャパシタ(図示せず)、およびスイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT)52を備える。
【0049】
フォトダイオード51は、電荷を発生する半導体層(例えばPIN型)とその上下に上部電極および下部電極を配した構造を有している。フォトダイオード51は、下部電極にTFT52が接続され、上部電極にはバイアス線53が接続されており、バイアス線53は撮像面41内の画素50の行数分(i行分)設けられて結線54に結束されている。結線54はバイアス電源55に繋がれている。結線54、バイアス線53を通じて、バイアス電源55からフォトダイオード51の上部電極にバイアス電圧Vbが印加される。バイアス電圧Vbの印加により半導体層内に電界が生じ、光電変換により半導体層内で発生した電荷(電子−正孔対)は、一方がプラス、他方がマイナスの極性を持つ上部電極と下部電極に移動し、キャパシタに電荷が蓄積される。
【0050】
TFT52は、ゲート電極が走査線56に、ソース電極が信号線57に、ドレイン電極がフォトダイオード51にそれぞれ接続される。走査線56と信号線57は格子状に配線されており、走査線56は撮像面41内の画素50の行数分(i行分)、信号線57は画素50の列数分(j列分)それぞれ設けられている。走査線56はゲートドライバ58に接続され、信号線57は信号処理回路59に接続される。
【0051】
ゲートドライバ58は、TFT52を駆動することにより、X線の入射量に応じた信号電荷を画素50に蓄積する蓄積動作と、画素50から信号電荷を読み出す読み出し(本読み)動作と、リセット(空読み)動作とを行わせる。制御部46は、ゲートドライバ58によって実行される上記各動作の開始タイミングを制御する。
【0052】
蓄積動作ではTFT52がオフ状態にされ、その間に画素50に信号電荷が蓄積される。読み出し動作では、ゲートドライバ58から同じ行のTFT52を一斉に駆動するゲートパルスG1〜Giを順次発生して、走査線56を一行ずつ順に活性化し、走査線56に接続されたTFT52を一行分ずつオン状態とする。画素50のキャパシタに蓄積された電荷は、TFT52がオン状態になると信号線57に読み出されて、信号処理回路59に入力される。
【0053】
フォトダイオード51の半導体層には、X線の入射の有無に関わらず暗電荷が発生する。この暗電荷はバイアス電圧Vbが印加されているためにキャパシタに蓄積される。画素50において発生する暗電荷は、画像データに対してはノイズ成分となるので、これを除去するためにリセット動作が行われる。リセット動作は、画素50において発生する暗電荷を、信号線57を通じて掃き出す動作である。
【0054】
リセット動作は、例えば、一行ずつ画素50をリセットする順次リセット方式で行われる。順次リセット方式では、信号電荷の読み出し動作と同様、ゲートドライバ58から走査線56に対してゲートパルスG1〜Giを順次発生して、画素50のTFT52を一行ずつオン状態にする。TFT52がオン状態になっている間、画素50から暗電荷が信号線57を通じて積分アンプ60に流れる。リセット動作では、読み出し動作と異なり、マルチプレクサ(MUX)61による積分アンプ60に蓄積された電荷の読み出しは行われず、各ゲートパルスG1〜Giの発生と同期して、制御部46からリセットパルスRSTが出力され、積分アンプ60がリセットされる。
【0055】
順次リセット方式に代えて、配列画素の複数行を一グループとしてグループ内で順次リセットを行い、グループ数分の行の暗電荷を同時に掃き出す並列リセット方式や、全行にゲートパルスを入れて全画素の暗電荷を同時に掃き出す全画素リセット方式を用いてもよい。並列リセット方式や全画素リセット方式によりリセット動作を高速化することができる。
【0056】
信号処理回路59は、積分アンプ60、MUX61、およびA/D変換器62等を備える。積分アンプ60は、各信号線57に対して個別に接続される。積分アンプ60は、オペアンプとオペアンプの入出力端子間に接続されたキャパシタとからなり、信号線57はオペアンプの一方の入力端子に接続される。積分アンプ60のもう一方の入力端子はグランド(GND)に接続される。積分アンプ60は、信号線57から入力される電荷を積算し、電圧信号D1〜Djに変換して出力する。各列の積分アンプ60の出力端子には、増幅器63、サンプルホールド(S/H)部64を介してMUX61が接続される。MUX61の出力側には、A/D変換器62が接続される。
【0057】
MUX61は、パラレルに接続される複数の積分アンプ60から順に一つの積分アンプ60を選択し、選択した積分アンプ60から出力される電圧信号D1〜DjをシリアルにA/D変換器62に入力する。A/D変換器62は、入力された電圧信号D1〜Djをデジタルデータに変換して、電子カセッテ13に内蔵されるメモリ47に出力する。なお、MUX61とA/D変換器62の間に増幅器を接続してもよい。
【0058】
MUX61によって積分アンプ60から一行分の電圧信号D1〜Djが読み出されると、制御部46は、積分アンプ60に対してリセットパルスRSTを出力し、積分アンプ60のリセットスイッチ60aをオンする。これにより、積分アンプ60に蓄積された一行分の信号電荷がリセットされる。積分アンプ60がリセットされると、ゲートドライバ58から次の行のゲートパルスが出力され、次の行の画素50の信号電荷の読み出しを開始させる。これらの動作を順次繰り返して全行の画素50の信号電荷を読み出す。
【0059】
全行の読み出しが完了すると、一画面分のX線画像を表す画像データがメモリ47に記録される。この画像データはメモリ47から読み出され、通信部45を通じてコンソール14に出力される。こうして被検体MのX線画像が検出される。
【0060】
制御部46は、線源制御装置11の制御部31からの問い合わせ信号を受信したタイミングで、FPD40にリセット動作を行わせて線源制御装置11に照射許可信号を返信する。そして、照射開始信号を受信したタイミングでFPD40の動作をリセット動作から蓄積動作へ移行させる。
【0061】
FPD40は、上述のようにTFT52を介して信号線57に接続された画素50の他に、TFT52を介さず信号線57に短絡して接続された検出画素65を同じ撮像面41内に複数備えている。検出画素65は、被検体Mを透過して撮像面41に入射するX線の線量を検出するために利用される画素であり、照射開始検出センサとして機能したり、照射終了検出センサおよびAECセンサとして機能する。検出画素65は撮像面41内の画素50の数%程度を占める。
【0062】
図5に示すように、検出画素65は、撮像面41内で局所的に偏ることなく撮像面41内に満遍なく散らばるよう、撮像面41の中心に関して左右対称な点線で示す波形の軌跡66に沿って設けられている。検出画素65は、同じ信号線57が接続された画素50の列に一個ずつ設けられ、検出画素65が設けられた列は、検出画素65が設けられない列を例えば二〜三列挟んで設けられる。検出画素65の位置はFPD40の製造時に既知であり、FPD40は全検出画素65の位置(座標)を不揮発性のメモリ(図示せず)に予め記憶している。なお、ここで示した検出画素65の配置は一例であり、適宜変更可能である。
【0063】
検出画素65は信号線57との間にTFT52が設けられておらず、信号線57に直に接続されているので、検出画素65で発生した信号電荷は、直ちに信号線57に読み出される。同列にある通常の画素50がTFT52をオフ状態とされ、信号電荷を蓄積する蓄積動作中であっても同様である。このため検出画素65が接続された信号線57上の積分アンプ60には、検出画素65で発生した電荷が常に流入する。蓄積動作時、積分アンプ60に蓄積された検出画素65からの電荷は、所定のサンプリング周期でMUX61を介して電圧値としてA/D変換器62に出力される。
【0064】
図4において、AEC部67は、制御部46により駆動制御される。AEC部67は、検出画素65が接続された信号線57からの電圧値(AEC検出信号という)をA/D変換器62を介して取得する。
【0065】
図6において、AEC部67は、採光野選択回路75、積分回路76、比較回路77、および閾値発生回路78を有する。採光野選択回路75は、コンソール14からの採光野の情報に基づき、撮像面41内に散らばった複数の検出画素65のうち、どの検出画素65のAEC検出信号をAECに用いるかを選択する。積分回路76は、採光野選択回路75で選択された検出画素65からのAEC検出信号の平均値、最大値、最頻値、または合計値を積算する。比較回路77は、X線の照射開始が検出されたときに積分回路76からのAEC検出信号の積算値のモニタリングを開始する。そして、積算値と閾値発生回路78から与えられる照射停止閾値とを適宜のタイミングで比較する。積算値が閾値に達したとき、比較回路77は照射停止信号を出力する。
【0066】
通信部45には、上述のアンテナ42とソケット44の他に照射信号I/F80が設けられている。照射信号I/F80には線源制御装置11の照射信号I/F35が接続される。照射信号I/F80は、問い合わせ信号の受信、問い合わせ信号に対する照射許可信号の送信、比較回路77の出力、すなわち照射停止信号の送信を行う。
【0067】
コンソール14は、有線方式や無線方式により電子カセッテ13と通信可能に接続されており、電子カセッテ13の動作を制御する。具体的には、電子カセッテ13に対して撮影条件を送信して、FPD40の信号処理の条件(蓄積される信号電荷に応じた電圧を増幅するアンプのゲイン等)を設定させるとともに、電子カセッテ13の電源のオンオフ、省電力モードや撮影準備状態へのモード切り替え等の制御を行う。
【0068】
コンソール14は、電子カセッテ13から送信されるX線画像データに対してオフセット補正やゲイン補正、欠陥補正等の各種画像処理を施す。欠陥補正では、検出画素65がある列の画素値を隣り合う検出画素65がない列の画素値で補間する。画像処理済みのX線画像はコンソール14のディスプレイ104(図10参照)に表示される他、そのデータがコンソール14内のストレージデバイス102やメモリ101(ともに図10参照)、あるいはコンソール14とネットワーク接続された画像蓄積サーバといったデータストレージに記憶される。
【0069】
コンソール14は、患者の性別、年齢、撮影部位、撮影目的といった情報が含まれる検査オーダの入力を受け付けて、検査オーダをディスプレイ104に表示する。検査オーダは、HIS(病院情報システム)やRIS(放射線情報システム)といった患者情報や放射線検査に係る検査情報を管理する外部システムから入力されるか、オペレータにより手動入力される。検査オーダには、頭部、胸部、腹部、全脊椎、全下肢等の撮影部位、正面、側面、斜位、PA(X線を被検体Mの背面から照射)、AP(X線を被検体Mの正面から照射)といった撮影方向が含まれる。オペレータは、検査オーダの内容をディスプレイ104で確認し、その内容に応じた撮影条件をディスプレイ104の操作画面を通じて入力する。
【0070】
図7に示すように、コンソール14では撮影部位毎に撮影条件を設定可能である。撮影条件には、検出画素65の採光野マップ、および検出画素65のAEC検出信号の積算値と比較してX線の照射停止を判断するための照射停止閾値等が記憶されている。この撮影条件の情報はストレージデバイス102に格納されている。なお、ここでは撮影部位として長尺撮影の全脊椎、全下肢のみを例示しているが、実際には胸部AP、胸部PA、頭部、腹部といった他の撮影部位とそれらに対応する撮影条件も記憶されている。
【0071】
全脊椎撮影における検出画素65の採光野マップ(脊椎用採光野マップ)85は、図8に被検体Mの正面図とともにハッチングで示すように、胸部、腹部にわたる脊椎の部分と腰部とをカバーする採光野領域87、88をもつ。全下肢撮影における採光野マップ(下肢用採光野マップ)86は腰部、両膝、および両くるぶしの部分をカバーする採光野領域89、90、91をもつ。各マップ85、86は矩形状であり、脊椎用採光野マップ85は幅X、高さZ、下肢用採光野マップ86は幅X(=X)、高さZである。これらの幅および高さは、被検体Mとして典型的な成人男性の体型に基づき決定される。各採光野領域87〜91は被検体Mの体軸と一致するX方向の中心を結んだ線に関して対称である。
【0072】
各採光野マップ85、86は、具体的には、図9(A)、(B)に示すように、左上を原点(0、0)とするXZ平面座標で各採光野領域87〜91を表したデータである。各採光野領域87〜91は、対角線で結ぶ左上の始点92と右下の終点93(ともに図8参照、脊椎用採光野マップ85の脊椎の採光野領域87のみ図示)の座標で表される。例えば脊椎の採光野領域87は始点座標が(X、0)、終点座標が(X、Z)である。各採光野領域87〜91が矩形状であるため始点92と終点93の座標で表すだけで各採光野領域87〜91が各採光野マップ85、86のどこからどこまでを占めるかが分かる。なお、採光野マップの情報のもち方としては上記の例に限らず、例えば平面座標毎に採光野領域にあたるか否かを示す情報をもってもよい。また、採光野領域の形状は矩形状に限らず、円形や楕円形であってもよい。その場合は円や楕円の中心座標の情報に加えて半径や長辺、短辺の長さの情報をもつ。
【0073】
図10において、コンソール14を構成するコンピュータは、CPU100、メモリ101、ストレージデバイス102、通信I/F103、ディスプレイ104、および入力デバイス105を備えている。これらはデータバス106を介して相互接続されている。
【0074】
ストレージデバイス102は、例えばHDD(Hard Disk Drive)である。ストレージデバイス102には、制御プログラムやアプリケーションプログラム(以下、APという)107が記憶される。AP107は、検査オーダやX線画像の表示処理、X線画像に対する画像処理、撮影条件の設定等、X線撮影に関する様々な機能をコンソール14に実行させるためのプログラムである。
【0075】
メモリ101は、CPU100が処理を実行するためのワークメモリである。CPU100は、ストレージデバイス102に記憶された制御プログラムをメモリ101へロードして、プログラムに従った処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。通信I/F103は、RIS、HIS、画像蓄積サーバ、電子カセッテ13等の外部装置との無線または有線による伝送制御を行うネットワークインターフェースである。入力デバイス105は、キーボードやマウス、あるいはディスプレイ104と一体となったタッチパネル等である。入力デバイス105は、撮影条件を設定する際や、FPD40の撮像面41の位置YからX線管17の焦点の位置Yまでの距離(SID;Source Image Distance、図1参照)を入力する際等に操作される。
【0076】
図11において、コンソール14のCPU100は、AP107を起動して長尺撮影を選択すると、駆動条件設定部110、駆動制御部111、カセッテ制御部112、画像処理部113、表示制御部114、マップ拡縮部115、およびマップ分割部116として機能する。駆動条件設定部110は、長尺撮影時のホルダ19の移動範囲およびX線源10の首振り角度範囲や、移動範囲内での撮影位置、照射野限定器18によるコリメータ角度を設定する。駆動制御部111は、駆動条件設定部110で設定された各種駆動条件に応じて、線源制御装置11を介して線源移動機構16、照射野限定器18を駆動させたり、ホルダ移動機構20を駆動させる。画像処理部113は、上述のオフセット補正、ゲイン補正、欠陥補正等の各種画像処理の他、長尺撮影の各撮影位置で得られた画像データを収集して、これらを合成することにより長尺画像データを作成する。表示制御部114は、長尺画像データに基づく合成X線画像(長尺画像)や、撮影に必要な操作メニュー等をディスプレイ104に表示させる。
【0077】
駆動条件設定部110は、ホルダ19の移動範囲およびX線源10の首振り角度範囲を設定する撮影範囲設定部117と、コリメータ角度を設定するコリメータ角度設定部118と、上記移動範囲内での撮影位置を設定する撮影位置設定部119とから構成されている。
【0078】
撮影範囲設定部117は、入力デバイス105を介して入力されるSIDと、線源制御装置11から入力される、レーザ光源21で撮影範囲を設定したときのポテンショメータの検出結果(上端位置Z、首振り角度φ、φ)に基づき撮影範囲の幅X、高さZを算出する。具体的には次式(1−1)、(1−2)を計算する(図3参照)。
=2×SID×tan(φ/2)・・・式(1−1)
=SID×tanφ・・・式(1−2)
この計算結果から撮影範囲のZ方向の下端位置Zおよび中心位置Zが分かる。撮影範囲設定部117は、撮影範囲のZ方向の上端および下端位置Z、Zをホルダ19の移動範囲に設定し、中心位置Zを長尺撮影時のX線源10の位置に設定する。全脊椎撮影の場合、ホルダ移動機構20は、下端位置Zを移動開始位置とし、上端位置Zを移動終了位置として、ホルダ19を移動開始位置と移動終了位置の間で移動させる。全下肢撮影の場合は、逆に上端位置Zを移動開始位置、下端位置Zを移動終了位置とする。従って、全脊椎撮影、全下肢撮影いずれの場合も腰部が最初に撮影する部位となる。
【0079】
撮影範囲設定部117は、X線源10を撮影範囲のZ方向の中心位置Zに配置した場合のX線源10の首振り角度範囲Φ(図1参照)を次式(2)より求める。
Φ=2×tan−1{(Z/2)/SID}・・・(2)
線源移動機構16は、ホルダ19の上下動と連動するようX線源10のZ方向の首振り角度φを上記角度範囲Φで変更する。
【0080】
コリメータ角度設定部118は、入力デバイス105を介して入力されるSIDと、FPD40の撮像面41のサイズ(既知)と、撮影範囲の幅Xに基づいて、長尺撮影時のコリメータ角度を算出する。撮像面41のZ方向の長さをFOV(図12参照)とした場合、Z方向に関するコリメータ角度θは、次式(3−2)で求められる。X方向に関するコリメータ角度θについても、式(2−2)のFOVをXとした次式(3−1)で同様に算出可能である。
θ=2×tan−1{(X/2)/SID} ・・・式(3−1)
θ=2×tan−1{(FOV/2)/SID} ・・・式(3−2)
【0081】
上式(3−1)、(3−2)で求めたコリメータ角度θは各撮影位置で共通して適用される。一方コリメータ角度θは、X線源10と撮像面41のZ方向の中心の高さが中心位置Zと一致しているときの角度であるため、撮像面41のZ方向の中心の高さと中心位置Zとのずれ量に応じて補正される。長尺撮影時、線源制御装置11は、コリメータ角度θ、θが上式(3−1)、(3−2)で求めた値、または補正した値となるように照射野限定器18を駆動する。
【0082】
撮影位置設定部119は、撮影範囲の高さZと、撮像面41のZ方向の長さFOVに基づいて、長尺撮影時の各撮影位置を設定する。具体的には、まず、次式(4)を計算する。
/FOV・・・式(4)
そして、隣接する撮影位置で撮像面41を重複させるため、上式(4)の計算結果が割り切れる場合は商に1を加え、割り切れない場合は小数点以下を切り上げることにより撮影回数nを算出する。撮影回数nが決まったら、図12(A)に示すように、撮像面41の下端が下端位置Zに一致する移動開始位置(一回目の撮影位置)P1と、撮像面41の上端が上端位置Zに一致する移動終了位置(n回目の撮影位置)Pnとを定め(全脊椎撮影の場合、全下肢撮影の場合はこの逆)、移動開始位置P1と移動終了位置Pnとの間を、(n−1)の数で等分する位置をその他の撮影位置とする。
【0083】
例えば、Z=100cm、FOV=25cmの場合には、Z/FOV=4で割り切れるため、撮影回数nは4+1で「5」と算出される。各撮影位置P1、P2、P3、P4、P5の間隔d=18.75cmとなる。Z=100cm、FOV=30cmの場合にはZ/FOV=3.33・・・で割り切れないため、小数点以下を切り上げて撮影回数nは「4」となる。各撮影位置P1、P2、P3、P4の間隔d≒23.3cmとなる。
【0084】
図12(B)は、各撮影位置P1、P2、・・・、Pnで得られる画像データI1、I2、・・・、Inを示している。撮影位置が隣接する画像データは、隣接する撮影位置での撮像面41の重複により、オーバーラップ領域125が生じる。オーバーラップ領域125は、画像処理部113で長尺画像データを生成する際の糊代となる。このオーバーラップ領域125の重複量γは、次式(5)で算出される。
γ={n×FOV−Z}/(n−1) ・・・式(5)
前述のZ=100cm、FOV=25cmの場合はγ=(5×25−100)/2=12.5cm、Z=100cm、FOV=30cmの場合はγ=(4×30−100)/3≒6.7cmとなる。
【0085】
撮影位置設定部119は、移動開始位置、移動終了位置、算出した撮影回数n、および各撮影位置の間隔dの情報を駆動制御部111に出力する。駆動制御部111の制御の下、ホルダ移動機構20は間隔dでホルダ19をZ方向に順次撮影位置P1からPnに移動させる。線源制御装置11はX線の照射野が各撮影位置の撮影範囲に一致するような首振り角度φでX線源10が首振りするよう、線源移動機構16の駆動を制御する。また、線源制御装置11は、各撮影位置にホルダ19が移動して停止し、X線源10が所望の首振り角度φで首振りし終えたときにX線が照射されるようX線源10の駆動を制御する。
【0086】
撮影位置設定部119は、算出したオーバーラップ領域125の重複量γの情報を画像処理部113に出力する。画像処理部113は、重複量γの情報に基づき各撮影位置での画像データをオーバーラップ領域125で繋ぎ合わせて長尺画像データを生成する。
【0087】
図13において、マップ拡縮部115は、撮影範囲設定部117で設定された撮影範囲のサイズに応じて脊椎用採光野マップ85または下肢用採光野マップ86を拡大、縮小する。各採光野マップ85、86は、前述のように典型的な成人男性の体型に合わせたサイズであるため、被検体Mの体型によっては実際の撮影範囲とサイズが異なる場合がある。このためマップ拡縮部115は、撮影範囲の幅Xおよび高さZと、脊椎用採光野マップ85の幅Xおよび高さZ、または下肢用採光野マップ86の幅Xおよび高さZの比を計算し、これをX方向、Z方向のそれぞれ拡縮率として各採光野マップ85、86の拡大または縮小を行う。具体的には各採光野領域87〜91の始点座標および終点座標に拡縮率を乗算して始点座標および終点座標を変更する。図13では一例として脊椎用採光野マップ85を拡大率X/X、Z/Zともに1.2倍で拡大する様子を示している。マップ拡縮部115は、拡縮した各採光野マップ85、86の情報をマップ分割部116に出力する。以後、拡縮した採光野マップを拡縮脊椎用採光野マップ85’または拡縮下肢用採光野マップ86’と表現する。
【0088】
図14に示すように、マップ分割部116は、撮影位置設定部119で算出された各撮影位置の間隔dの情報に基づき、拡縮脊椎用採光野マップ85’または拡縮下肢用採光野マップ86’を各回の撮影範囲に応じたサイズに分割する。図14では撮影回数が三回で拡縮脊椎用採光野マップ85’を各撮影位置P1〜P3で三分割した様子を示している。マップ分割部116は、分割した拡縮脊椎用採光野マップ85’または拡縮下肢用採光野マップ86’の情報をカセッテ制御部112に出力する。以後、拡縮脊椎用採光野マップ85’を分割したものを分割脊椎用採光野マップ85’’、拡縮下肢用採光野マップ86’を分割したものを分割下肢用採光野マップ86’’と表現する。
【0089】
カセッテ制御部112は、長尺撮影の各回の撮影毎に、マップ分割部116からの分割脊椎用採光野マップ85’’または分割下肢用採光野マップ86’’の情報と照射停止閾値の情報(図7のth1またはth2)を電子カセッテ13に提供する。
【0090】
採光野選択回路75は、カセッテ制御部112から提供される分割脊椎用採光野マップ85’’または分割下肢用採光野マップ86’’の情報と検出画素65の位置座標情報を突き合わせて採光野領域に存在する検出画素65を特定することで、長尺撮影における各回の撮影の採光野を選択する。また、閾値発生回路78は、カセッテ制御部112から提供される照射停止閾値の情報を元に、長尺撮影における各回の撮影の照射停止閾値を設定する。
【0091】
次に、図15、図16のフローチャートを参照しながら、X線撮影システム2において長尺撮影(全脊椎撮影)を行う場合の処理手順を説明する。
【0092】
まず、X線源10、立位撮影台15を撮影に適切な位置に配置した後、図15のステップ10(S10)に示すように、SIDを計測してこの値を入力デバイス105にてコンソール14に入力する。続いて被検体Mを立位撮影台15の前の所定位置に立たせ、この状態でレーザ光源21を点灯させて、線源移動機構16によりX線源10の高さを調整したりZ方向またはX方向に首振りさせたりして撮影範囲を設定する(S11)。
【0093】
SIDが不変で既に入力されていた場合、撮影部位によってSIDが決まっていて、ストレージデバイス102に記憶された撮影条件に撮影部位毎のSIDを予め設定値としてもっている場合、またはX線源10、立位撮影台15の水平位置を検出する位置センサが設けられ、位置センサの出力に基づきSIDを自動計算可能な場合はS10の手順を省いてもよい。
【0094】
SIDの計測値、およびポテンショメータによるX線源10の高さ(上端位置Z)および首振り角度φ、φの検出値は、駆動条件設定部110に入力される。駆動条件設定部110では、撮影範囲設定部117、コリメータ角度設定部118、および撮影位置設定部119の各設定部にて、移動範囲、コリメータ角度θ、撮影回数n、撮影位置P1、P2、・・・、Pnとその間隔d、さらにはオーバーラップ領域125の重複量γ等が算出される(S12)。これらの情報は駆動制御部111等に出力される。
【0095】
マップ拡縮部115では、撮影範囲設定部117で設定された撮影範囲の情報に応じて、脊椎用採光野マップ85が拡大または縮小されて拡縮脊椎用採光野マップ85’とされる(S13)。次にマップ分割部116にて、撮影位置設定部119で算出された各撮影位置の間隔dの情報に基づき、拡縮脊椎用採光野マップ85’が各回の撮影範囲に応じたサイズに分割され、分割脊椎用採光野マップ85’’とされる(S14)。この分割脊椎用採光野マップ85’’の情報は、照射停止閾値の情報とともにカセッテ制御部112を通じて電子カセッテ13に送信される(S15)。
【0096】
次いで、駆動制御部111の制御の下、線源移動機構16およびホルダ移動機構20が駆動され、X線源10が中心位置Zに移動されて一回目の撮影の首振り角度に首振りされるとともに、ホルダ19が一回目の撮影位置P1に移動される。また、線源制御装置11により照射野限定器18が駆動されて、コリメータ角度設定部118で算出されたコリメータ角度θ、θまたは補正値となるよう照射野が調整される(S16)。
【0097】
この後、X線撮影システム10は、照射開始指示の待ち受け状態となる(S17)。オペレータにより照射スイッチ12が操作されて照射開始指示がなされると(S17でYES)、
X線源10からX線の照射が開始され、これに伴いFPD40では電荷の蓄積動作が開始されて一回目の撮影が行われる(S18)。
【0098】
電子カセッテ13ではFPD40の蓄積動作と同時にAEC部67で検出画素65の出力に基づくAECが行われている。図16に示すように、採光野選択回路75は、コンソール14のカセッテ制御部112から与えられた分割脊椎用採光野マップ85’’の情報に基づき、A/D変換器62から入力される複数の検出画素65のAEC検出信号のうち、分割脊椎用採光野マップ85’’で規定される採光野領域に存在する検出画素65からのAEC検出信号を選別し、選別したAEC検出信号を積分回路76に出力する(S30)。積分回路76は検出信号を積算する(S31)。
【0099】
閾値発生回路78は、カセッテ制御部112から与えられた照射停止閾値(この場合は照射停止閾値th1)を発生し、これを比較回路77に出力する。比較回路77は、積分回路76からの検出信号の積算値と閾値発生回路78からの照射停止閾値とを比較(S32)し、積算値が閾値に達したとき(S33でYES)に照射停止信号を出力する。比較回路77から出力された照射停止信号は照射信号I/F80を介して線源制御装置11の照射信号I/F35に向けて送信される(S34)。
【0100】
照射信号I/F35で照射停止信号を受けた場合、線源制御装置11では、制御部31により高電圧発生器30からX線源10への電力供給が停止され、これによりX線の照射が停止される。電子カセッテ13では、FPD40の動作が蓄積動作から読み出し動作に移行し、この読み出し動作により画像データが出力される。
【0101】
FPD40から出力された画像データは、通信部45を介してコンソール14に有線または無線送信されて画像処理部113で各種画像処理が施される。一回目の撮影では画像データI1が取得される(図15のS19)。
【0102】
以下同様にして、ホルダ19をk回目(k=2、3、4、・・・、n)の撮影位置Pkに移動させて且つ照射野を調整しつつX線源10を所望の首振り角度φで首振りさせ(S20)、k回目の撮影の分割脊椎用採光野マップ85’’で規定される採光野領域を採光野としてk回目の撮影を行い(S21)、これにより画像データIkを取得する(S22)。これらの処理は撮影回数がnになるまで(k=n、S23でYES)続けられる。
【0103】
n回目の撮影終了後、画像処理部113により、各撮影位置P1、P2、・・・、Pnで得られた画像データI1、I2、・・・、Inをオーバーラップ領域125で繋ぎ合わせて一枚分の長尺画像データとする合成処理が行われる(S24)。生成された長尺画像データは表示制御部114によりディスプレイ104に表示される(S25)。
【0104】
以上説明したように、本発明によれば、脊椎、腰部にあたる部分を採光野領域87、88に規定した脊椎用採光野マップ85、および腰部、両膝、両くるぶしにあたる部分を採光野領域89、90、91に規定した下肢用採光野マップ86を有し、これらのマップ85、86に基づき検出画素65からのAEC検出信号を選別するので、採光野を設定するためにプレ撮影を行ったり、大掛かりな装置を設けたりする必要がなく、簡単に長尺撮影時の採光野を設定することができる。
【0105】
撮影範囲と同じサイズになるよう採光野マップを拡縮した後、各回の撮影範囲に見合ったサイズに分割するので、被検体の体格差の違いに柔軟に対応することができ、体格差の違いに関わらず常に適正なAECを行うことができる。
【0106】
本発明は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0107】
上記実施形態では、撮影範囲の設定が可能な場合を例示しているが、古いX線撮影システムや簡易的で安価なX線撮影システムの中には、撮影範囲を設定するためのレーザ光源21等の設備が元々なく、従って撮影範囲の設定ができず撮影回数および撮影位置も一種に固定されているものがある。こうしたシステムの採光野マップとしては、図17に示すものを適用することができる。
【0108】
図17(A)において、脊椎用採光野マップとして、第一脊椎用採光野マップ130と第二脊椎用採光野マップ131の二種類を用意する。また(B)に示すように、下肢用採光野マップとして、第一下肢用採光野マップ132と第二下肢用採光野マップ133の二種類を同様に用意する。
【0109】
第一脊椎用採光野マップ130には、腰部と脊椎の一部にあたる逆T字状の採光野領域134が設けられており、全脊椎撮影において腰部付近を撮影する一回目の撮影の採光野に設定される。第二脊椎用採光野マップ131には、脊椎にあたる一本の棒状の採光野領域135が設けられており、全脊椎撮影において脊椎を撮影する二回目の撮影以降の採光野に設定される。
【0110】
同様に、第一下肢用採光野マップ132は腰部と両足の付け根にあたるπ字状の採光野領域136を有し、全下肢撮影で腰部付近を撮影する一回目の撮影の採光野に設定される。第二下肢用採光野マップ133は両足にあたる二本の棒状の採光野領域137を有し、全下肢撮影で両膝、両くるぶしを含む両足を撮影する二回目の撮影以降の採光野に設定される。
【0111】
全脊椎撮影の場合、カセッテ制御部112は、一回目の撮影には第一脊椎用採光野マップ130の情報を電子カセッテ13に提供し、二回目の撮影以降は第二脊椎用採光野マップ131に切り替える。全下肢撮影の場合は、一回目の撮影には第一下肢用採光野マップ132を提供し、二回目の撮影以降は第二下肢用採光野マップ133を提供する。採光野領域の形状が逆T字状(第一脊椎用採光野マップ130の採光野領域134)またはπ字状(第一下肢用採光野マップ132の採光野領域136)と複雑になる腰部付近の撮影用と、採光野領域の形状が比較的単純な脊椎、両足にあたる部分(第二脊椎用採光野マップ131の採光野領域135、および第二下肢用採光野マップ133の採光野領域137)の撮影用の二種類の採光野マップを用意し、それらを撮影回数に応じて切り替えて使用すれば、撮影範囲の設定が不可能なX線撮影システムにも対応することができる。
【0112】
上記実施形態では、予め記憶された採光野と照射停止閾値で一回目に撮影する部位を全脊椎、全下肢撮影ともに腰部としている。その理由としては、腰部は骨盤があるため診断時に最も注目すべき部位となりやすいためである。但し本発明はこれに限定されず、腰部以外の部位を一回目に撮影してもよい。例えば全下肢撮影で膝関節症の検査を行う場合は膝を一回目に撮影する部位とする。従って図17に示す例で一回目に撮影する部位を腰部以外とする場合は、各マップ130、131または132、133の切り替えは撮影回数ではなく撮影部位に応じて行う。
【0113】
上記実施形態では、ある程度採光野マップで検出画素65の採光野を限定しているものの、採光野マップは本来意図した採光野から外れることを防ぐために採光野領域にマージンを設けているので、場合によっては採光野選択回路75で選択した検出画素65に非照射野(X線が照射されない領域)や素抜け領域(被検体Mを透過せずにX線が直接入射する領域)にあるものが含まれてしまい、適正なAECが行われなくなるおそれがある。そこで、図18および図19を参照して以下に説明するように、採光野として選択する検出画素65を絞り込むことが好ましい。
【0114】
図18において、採光野選択回路140は、照射野特定部141、被検体領域特定部142、および到達予測線量算出部143を備えている。照射野特定部141は、コリメータ角度θ、θ、SID、撮影位置、X線源10の首振り角度φで決まる撮像面41上のX線の照射野を特定する。そして、採光野マップで規定された採光野領域に存在する検出画素65から出力されるAEC検出信号のうち、照射野に存在する検出画素65のAEC検出信号をピックアップする。言い換えれば、非照射野と重なった採光野領域の部分に存在する検出画素65のAEC検出信号を除外する(図19のS40)。
【0115】
被検体領域特定部142は、採光野マップで規定された採光野領域且つ照射野に存在する検出画素65から出力されるAEC検出信号のうち、被検体領域に存在する検出画素65のAEC検出信号をピックアップする。つまり素抜け領域に存在する検出画素65のAEC検出信号を除外する。
【0116】
到達予測線量算出部143は、SID、撮影位置、X線源10の首振り角度φ、撮影条件(管電圧、管電流)等をパラメータとする線量との関係式から、そのシチュエーションで素抜け領域に到達するであろうX線の線量を算出し(図19のS41)、これを瞬時値に換算したものを被検体領域特定部142に出力する。なお、照射野の特定と到達予測線量の算出に必要な各種パラメータは、上記実施形態の駆動条件設定部110で算出した情報を、カセッテ制御部112を介して取得する。
【0117】
被検体領域特定部142は、到達予測線量算出部143からの到達予測線量の瞬時値と、採光野領域且つ照射野に存在する検出画素65からのAEC検出信号の大小を比較する(図19のS42)。そして、AEC検出信号が到達予測線量の瞬時値以上の検出画素65を素抜け領域に存在する検出画素65と特定し、それ以外を被検体領域に存在するものと特定する(図19のS43)。もしくは、AEC検出信号が到達予測線量の瞬時値を中心値とする所定の範囲(到達予測線量の瞬時値±α)に収まる検出画素65を素抜け領域に存在する検出画素65と特定してもよい。こうして、採光野領域に存在する検出画素65のAEC検出信号のうち、非照射野および素抜け領域に存在する検出画素65のAEC検出信号を採光野から除外する。これらの照射野および被検体領域の特定(非照射野および素抜け領域の採光野領域からの除外)は撮影中に送られてくるAEC検出信号に対してリアルタイムで行う。非照射野と素抜け領域にある検出画素65からのAEC検出信号を除外することで、より正確なAECを行うことができる。
【0118】
なお、図18では、非照射野と重なった分割脊椎用採光野マップ85’’の採光野領域88の部分144の検出画素65のAEC検出信号を照射野特定部141で除外し、さらに素抜け領域と重なった採光野領域88の部分145の検出画素65のAEC検出信号を被検体領域特定部142で除外する様子を示している。
【0119】
撮影範囲の設定の仕方としては、上記実施形態以外の方法を用いてもよい。例えば上記実施形態のレーザ光源21に代えて、照射野限定器18を通して矩形状の可視光を被検体Mに向けて照射する可視光源を設けてもよい。この場合、矩形状の可視光で照らされた範囲が所望の撮影範囲となるようコリメータ角度θ、θを調整し、調整後のコリメータ角度θ、θとSIDの幾何学式に基づき撮影範囲のサイズを算出する。あるいはX線源10ではなくホルダ19にレーザ光源21等の照準器を設けてもよい。さらには照準器等を設けずに、撮影範囲のサイズを物差しで実測して入力デバイス105から実測値を入力させる構成としてもよい。
【0120】
オーバーラップ領域125の重複量γの撮像面41のZ方向の長さFOVに対する割合が大きくなると、オーバーラップ領域125の部分で被検体Mの被曝量が大きくなるため、重複量γに上限を設ける(例えば、FOVの10%の長さ)ことが好ましい。そして、上式(5)を用いて算出した重複量γと所定の上限値を比較して、重複量γが上限値より大きい場合には、重複量γが上限値となるよう各撮影位置P1、P2、・・・、Pnを上下方向に均等にずらす。
【0121】
あるいは重複量γを常に一定の値としてもよい。この場合はn回目の撮影で撮像面41が撮影範囲からはみ出ることがあるが、その際にはX線の照射野を撮影範囲の上端または下端に限定して対処する。
【0122】
採光野領域の検出画素65のAEC検出信号に掛ける加重係数を採光野マップのデータに予め設定しておいてもよい。この場合、採光野領域内でも特に診断で重要な箇所、例えば採光野領域90内でまさに両膝の骨にあたる部分の加重係数を他の部分よりも低く設定する。そして、AEC検出信号をAEC部67に出力する際に、設定された加重係数をAEC検出信号に掛け、加重係数を低く設定した箇所にX線が多くあたるようにする。特に診断で重要な箇所が鮮明に映されたX線画像を得ることができる。
【0123】
上記実施形態では、画像検出用の画素50とAECセンサとして働く検出画素65が各々独立して存在するため、検出画素65がある列の画素値を隣り合う検出画素65がない列の画素値で補間する欠陥補正を行う必要がある。このためX線画像の画質低下を招くおそれがある。そこで、FPDを図20に示すFPD150のような構成とすることで、欠陥補正を不要とする。
【0124】
図20において、FPD150は、画像検出専用の第一画素151と画像検出兼AEC用の第二画素152とを備えている。第一、第二画素151、152は、上記実施形態の画素50と検出画素65同様、適当な割合でマトリクス状に配列されている。第一、第二画素151、152は、それぞれ二つのフォトダイオード153、154を有する。第一画素151のフォトダイオード153、154は並列に接続され、一端がTFT52を介して信号線57に接続されている。一方、第二画素152のフォトダイオード153は第一画素151と同様に一端がTFT52を介して信号線57に接続されているが、フォトダイオード154はTFT52を介さずに信号線57に直接接続されている。つまり第二画素152のフォトダイオード154は上記実施形態の検出画素65と同じ構成である。
【0125】
第一画素151からは二つのフォトダイオード153、154で蓄積された電荷が読み出される。一方、第二画素152からはフォトダイオード153で蓄積された電荷のみが読み出される。第二画素152はフォトダイオード154がAECに用いられてX線画像の生成に寄与しない分、フォトダイオード153、154の開口面積が同じ場合は同じ入射線量では第一画素151よりも蓄積電荷量が略半分になるが、検出画素65の場所からは画素値が得られず、欠陥補正を行うしかない上記実施形態と比べれば、X線画像の画質劣化が抑えられる。フォトダイオード153、154の開口面積等に基づいて、第二画素152の画素値に乗算すると第一画素151の画素値相当になる係数等を予め求めておき、第二画素152の出力に該係数を乗算して補正すれば、欠陥補正を行わずにX線画像を生成することができ、FPDを構成する画素の一部をAEC用としたことによるX線画像の画質への悪影響を略完全に排除することができる。
【0126】
上記実施形態では、立位姿勢の被検体Mに対してホルダ19を上下方向に移動させる立位撮影の場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、臥位撮影台に横たわる被検体Mに対してホルダを水平方向に移動させる臥位撮影にも適用することができる。また、上記実施形態では、ホルダ19を被検体Mの体軸方向に沿って移動させているが、被検体Mの体軸方向とは異なる方向に移動させて長尺撮影を行ってもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、電子カセッテ13を装着したホルダ19の移動に伴ってX線の照射方向を変更するようにX線源の角度を変更する首振り方式を例示しているが、電子カセッテを装着したホルダの移動に伴ってX線源10を直線的に移動させる直線移動方式に本発明を適用してもよい。さらに、ホルダ19とX線源10を各撮影位置で停止させずに移動させたままで撮影を行ってもよい。
【0128】
電子カセッテ13の検出画素65に不具合が発生したり、線源制御装置11と電子カセッテ13の間の通信が配線断等で撮影中に途絶えたりすると、照射停止信号が正しく送受信されず、AECが効かなくなる場合も考えられる。特に線源制御装置11側は撮影条件として電流照射時間積の最大値が設定されるため、AECが効かなくなると患者への被曝量が上限値以上になってしまうおそれもある。そこで、電子カセッテ13にテストモードを設け、設置直後や一日の撮影前にコンソール14がもつ全撮影条件にてテスト撮影を行わせる。そして、電子カセッテ13が照射停止信号を線源制御装置11に送信してからも検出画素65でX線の検出を続行し、所定時間内にX線の照射停止が検出された場合は正常にAECが行われていると判断し、検出されなかった場合は何らかの故障が発生したと判断してコンソール14のディスプレイ104に警告メッセージを表示する。
【0129】
また、線源制御装置11と電子カセッテ13の照射信号I/F35、80を有線と無線の両方で接続可能な構成とした場合、電波強度等のモニタリングの結果、無線による通信が不安定な状態であると判断したときに有線に切り替えるよう警告表示をしてもよい。
【0130】
上記実施形態では、AECセンサとしてTFT52を介さず信号線57に短絡して接続された検出画素65を用いているが、各画素50にバイアス電圧Vbを供給するバイアス線53に画素50で発生する電荷に基づく電流が流れることを利用して、ある特定の画素50に繋がるバイアス線53の電流をモニタリングして線量を検出してもよく、全てのTFT52をオフ状態にしたときに画素50から漏れるリーク電荷に基づき線量を検出してもよい。さらに画素50とは別に構成が異なり出力が独立したAEC用の検出画素を撮像面41と同一平面に設けてもよい。
【0131】
上記実施形態では、コンソール14と電子カセッテ13が別体である例で説明したが、コンソール14は独立した装置である必要はなく、電子カセッテ13にコンソール14の機能を搭載してもよい。同様に、線源制御装置11とコンソール14を一体化した装置としてもよい。また、可搬型のX線画像検出装置である電子カセッテに限らず、撮影台に据え付けるタイプのX線画像検出装置に適用してもよい。
【0132】
本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する撮影システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0133】
2 X線撮影システム
10 X線源
11 線源制御装置
13 電子カセッテ
14 コンソール
35 照射信号I/F
40、150 FPD
50 画素
65 検出画素
67 AEC部
75、140 採光野選択回路
80 照射信号I/F
85、86 脊椎用採光野マップ、下肢用採光野マップ
87〜91、134〜137 採光野領域
100 CPU
104 ディスプレイ
105 入力デバイス
110 駆動条件設定部
112 カセッテ制御部
115 マップ拡縮部
116 マップ分割部
125 オーバーラップ領域
130、131 第一、第二脊椎用採光野マップ
132、133 第一、第二下肢用採光野マップ
141 照射野特定部
142 被検体領域特定部
143 到達予測線量算出部
151、152 第一、第二画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を被検体に向けて照射する放射線源と、
被検体を透過した放射線を受ける複数の画素が配列された検出パネルを有する放射線画像検出装置と、
前記検出パネルの前記画素が設けられた撮像面の略全面に満遍なく散らばるよう配置され、被検体を透過した放射線の線量を検出する複数の線量検出センサと、
前記線量検出センサで検出された線量の積算値と予め設定した照射停止閾値を比較し、前記積算値が前記照射停止閾値に達したら前記放射線源による放射線の照射を停止させる自動露出制御を行う自動露出制御手段とを備え、
前記放射線源と前記放射線画像検出装置を相対的に移動させ、被検体の複数の部位を含む長尺な撮影範囲を分けた複数の撮影範囲で複数回撮影し、これにより得られた複数枚の放射線画像を合成して一枚の長尺画像を生成して表示する放射線撮影システムにおいて、
前記自動露出制御に用いる前記線量検出センサの採光野領域を部位毎に規定した採光野マップを記憶するマップ記憶手段と、
前記採光野マップに基づき前記自動露出制御に用いる前記線量検出センサを選択する採光野選択手段とを備えることを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項2】
前記長尺な撮影範囲に合わせて前記採光野マップを拡縮し、前記長尺な撮影範囲と前記採光野マップのサイズを一致させるマップ拡縮手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項3】
前記マップ拡縮手段で拡縮された前記採光野マップを、前記長尺な撮影範囲を分けた複数の撮影範囲に応じて各回の撮影用に分割するマップ分割手段を備え、
前記採光野選択手段は、前記マップ分割手段で分割された前記採光野マップを使用することを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項4】
前記採光野マップは、腰部および脊椎にあたる採光野領域を規定する脊椎用採光野マップと、
腰部、両膝、両くるぶしにあたる採光野領域を規定する下肢用採光野マップとを含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
前記採光野マップは、特殊な形状の採光野領域を規定する第一採光野マップと単純な形状の採光野領域を規定する第二採光野マップの二種類があり、
前記採光野選択手段は、撮影回数または前記長尺な撮影範囲を分けた複数の撮影範囲毎に前記第一採光野マップと前記第二採光野マップを切り替えて使用することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項6】
前記第一採光野マップは、腰部および脊椎の一部にあたる逆T字状の採光野領域を規定し、
前記第二採光野マップは、脊椎にあたる一本の棒状の採光野領域を規定することを特徴とする請求項5に記載の放射線撮影システム。
【請求項7】
前記第一採光野マップは、腰部および両足の一部にあたるπ字状の採光野領域を規定し、
前記第二採光野マップは、両足にあたる二本の棒状の採光野領域を規定することを特徴とする請求項5に記載の放射線撮影システム。
【請求項8】
一回目に撮影する撮影範囲に腰部を含む場合、前記採光野選択手段は、一回目の撮影では前記第一採光野マップを使用し、二回目の撮影以降は前記第二採光野マップに切り替えて使用することを特徴とする請求項5ないし7のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項9】
前記採光野選択手段は、前記放射線源の照射野限定器のコリメータ角度、および前記放射線源と前記放射線画像検出装置の位置関係に基づき、放射線が照射される前記撮像面の領域を特定する照射野特定手段を有し、
前記照射野特定手段で特定された照射野且つ前記採光野マップで規定された採光野領域に存在する前記線量検出センサを選択することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項10】
前記採光野選択手段は、前記放射線源と前記放射線画像検出装置の位置関係、および前記放射線源の駆動条件に基づき、放射線が被検体を透過せずに前記撮像面に直接照射される素抜け領域の到達予測線量の瞬時値を算出する到達予測線量算出手段と、
前記到達予測線量算出手段で算出された前記到達予測線量の瞬時値と前記線量検出センサで検出された線量の瞬時値の比較結果から、放射線が照射される被検体の領域を特定する被検体領域特定手段とを有し、
前記被検体領域特定手段で特定された被検体領域且つ前記採光野マップで規定された採光野領域に存在する前記線量検出センサを選択することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項11】
前記複数の撮影範囲は、前記撮像面が一部オーバーラップするように分けられることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項12】
前記画素は、放射線を受けて信号電荷を蓄積し、スイッチング素子の駆動に応じて信号電荷を信号線に出力するものであり、
前記線量検出センサは、信号線にスイッチング素子を介さず直接接続された前記画素であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項13】
前記放射線画像検出装置は、前記検出パネルが可搬型の筐体に収納された電子カセッテであることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項14】
放射線を被検体に向けて照射する放射線源と、
被検体を透過した放射線を受ける複数の画素が配列された検出パネルを有する放射線画像検出装置と、
前記検出パネルの前記画素が設けられた撮像面の略全面に満遍なく散らばるよう配置され、被検体を透過した放射線の線量を検出する複数の線量検出センサと、
前記線量検出センサで検出された線量の積算値と予め設定した照射停止閾値を比較し、前記積算値が前記照射停止閾値に達したら前記放射線源による放射線の照射を停止させる自動露出制御を行う自動露出制御手段とを備える放射線撮影システムで、
前記放射線源と前記放射線画像検出装置を相対的に移動させ、被検体の複数の部位を含む長尺な撮影範囲を分けた複数の撮影範囲で複数回撮影し、これにより得られた複数枚の放射線画像を合成して一枚の長尺画像を生成して表示する長尺撮影方法において、
前記自動露出制御に用いる前記線量検出センサの採光野領域を部位毎に規定した採光野マップに基づき、前記自動露出制御に用いる前記線量検出センサを選択することを特徴とする放射線撮影システムの長尺撮影方法。
【請求項15】
放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受ける複数の画素が配列された検出パネルと、
前記検出パネルの前記画素が設けられた撮像面の略全面に満遍なく散らばるよう配置され、被検体を透過した放射線の線量を検出する複数の線量検出センサと、
前記線量検出センサで検出された線量の積算値と予め設定した照射停止閾値を比較し、前記積算値が前記照射停止閾値に達したら前記放射線源による放射線の照射を停止させる自動露出制御のための照射停止信号を前記放射線源に向けて送信する信号送信手段と、
前記放射線源と前記放射線画像検出装置を相対的に移動させ、被検体の複数の部位を含む長尺な撮影範囲を分けた複数の撮影範囲で複数回撮影し、これにより得られた複数枚の放射線画像を合成して一枚の長尺画像を生成して表示する長尺撮影時、前記自動露出制御に用いる前記線量検出センサの採光野領域を部位毎に規定した採光野マップに基づき、前記自動露出制御に用いる前記線量検出センサを選択する採光野選択手段とを備えることを特徴とする放射線画像検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−70723(P2013−70723A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210146(P2011−210146)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】