放射線断層撮影方法および放射線断層撮影装置
【課題】本発明の目的は、プラント配管検査のように被検体の移動が不可能な場合であっても、放射線断層撮影の作業を簡素化することにある。
【解決手段】本発明は、放射線源の焦点位置と放射線源の焦点が検出器に投影される位置との距離H,検出器上の任意の座標位置(u,v),透過画像データに映り込んだ空気層部分の座標位置(u′,v′),空気層部分の座標位置(u′,v′)の放射線強度Iref(u′,v′)に基づき、被検体がないと仮定した場合に、任意の座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線の強度を推定して擬似エアデータを生成し、擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行うことを特徴とする。
【効果】本発明によれば、プラント配管検査のように被検体の移動が不可能な場合であっても、放射線断層撮影の作業を簡素化することが可能となる。
【解決手段】本発明は、放射線源の焦点位置と放射線源の焦点が検出器に投影される位置との距離H,検出器上の任意の座標位置(u,v),透過画像データに映り込んだ空気層部分の座標位置(u′,v′),空気層部分の座標位置(u′,v′)の放射線強度Iref(u′,v′)に基づき、被検体がないと仮定した場合に、任意の座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線の強度を推定して擬似エアデータを生成し、擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行うことを特徴とする。
【効果】本発明によれば、プラント配管検査のように被検体の移動が不可能な場合であっても、放射線断層撮影の作業を簡素化することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線断層撮影方法および放射線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力や火力等の発電プラントや、化学プラント,石油プラントに設置された配管の健全性を確保するために、断層撮影が可能なX線CT装置を用いて、これらの配管内面を現地で非破壊検査するニーズが増加している。但し、上記プラントの配管は狭隘な場所に設置されていることが多い。そして、従来のX線CT装置は、検査対象物の周囲を180°+放射線ファンビーム角度乃至は一般的には360°の角度方向から撮影した複数の投影データに基づいて断層画像または立体像を構築するため、装置が大型化する。従って、産業用X線CT装置はプラント配管の検査に適用することが困難である。
【0003】
これに対して、特許文献1は現地のプラント配管を断層撮影する方法を開示する。特許文献1の方法では、X線CT装置が必要とする角度よりも小さい角度でのみ撮影された複数の投影データにより断層像または立体像を構築することが可能である。配管検査では、配管の長軸方向に放射線源と検出器を並進移動させて撮影している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−276285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、放射線検出器の上面に遮蔽体を設け、遮蔽体付きチャンネルの出力とその他のチャンネルの出力との関係からチャンネル定数を求めている。そして、特許文献1の放射線断層撮影装置がチャンネル定数を求める時、この放射線断層撮影装置は、被検体がない状態で計測する「初期設定フロー」が必要となる。
【0006】
しかし、現地プラント配管を撮影する場合、既に設置された配管を取り除くことはできない。そのため、チャンネル定数を取得するために、被検体撮影場所とは別の場所に放射線断層撮影装置を移動させる必要がある。このように撮影装置を移動させる場合、被検体のない場所で撮影装置を組み上げ、アライメントを実施し、透過画像を撮影して、チャンネル定数を算出する。その後、撮影装置を被検体に設置し、アライメントを実施した上で被検体の撮影を実施する。このように、特許文献1の撮影装置では、段取りや工数が多く、作業が煩雑になり、使い勝手が悪いという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、プラント配管検査のように被検体の移動が不可能な場合であっても、放射線断層撮影の作業を簡素化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、放射線源の焦点位置と放射線源の焦点が検出器に投影される位置との距離H,検出器上の任意の座標位置(u,v),透過画像データに映り込んだ空気層部分の座標位置(u′,v′),空気層部分の座標位置(u′,v′)の放射線強度Iref(u′,v′)に基づき、被検体がないと仮定した場合に、任意の座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線の強度を推定して擬似エアデータを生成し、擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プラント配管検査のように被検体の移動が不可能な場合であっても、放射線断層撮影の作業を簡素化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】配管断層撮影装置の一例を表した図である。
【図2】配管断層撮影方法による撮影状況の概念を示した図である。
【図3】配管断層撮影装置により撮影された透過画像を用いて構築された立体像の一例を示した図である。
【図4】配管の透過画像の一例を示した図である。
【図5】エアデータの一例を表した図である。
【図6】実施例1における投影フローの概要の一例を示した図である。
【図7】擬似エアデータ推定方法に関して模式的に説明した図である。
【図8】擬似エアデータ推定方法に関して模式的に説明した図である。
【図9】擬似エアデータ推定方法に関して模式的に説明した図である。
【図10】参照用のデータをあらかじめ取得して参照する場合の方法について説明した図である。
【図11】実施例2における投影フローの概要の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施例は、放射線断層撮影装置および放射線断層撮影方法に係り、特に、配管のような特定の場所に据え付けられた構造物の内部を可視化して検査するのに好適な放射線断層撮影装置および放射線断層撮影方法に関する。
【0012】
ここでは、発電プラントなどに設置された配管を例として図を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、放射線断層撮影装置501の概要を示す。図1の装置は、直管に設置された場合を示す。
【0014】
放射線源1および検出器2は、保温材11を装着した配管10をはさむようにスライド機構3aで取り付けられている。このスライド機構3aは、指示脚3cで支持されたスキャナ3bにより、配管長軸方向に放射線源1および検出器2をスライドさせる。スライド機構3aは、配管10の径方向に放射線源1,検出器2をそれぞれスライドさせるための装置である。
【0015】
放射線断層撮影装置は、放射線源1および検出器2を一定の速度で移動させ、その移動中に等間隔距離で透過像撮影を実施し、複数の透過画像51を取得する。制御・画像取込装置21は、スキャナ3bや検出器2による透過画像を取り込む際の制御をする。記憶装置31は、取り込まれた透過画像51を保存する。その後、画像再構成演算装置22は、記憶装置31から透過画像51を呼び出し、断層像または立体像を構築する。記憶装置32は、構築された断層像または立体像を保存する。画像計測装置23は、記憶装置32から断層像(立体像)を呼び出し、欠陥評価を行う。ここで、図1に示す制御・画像取込装置21,記憶装置31,画像再構成演算装置22,記憶装置32,画像計測装置23の構成は一例であり、例えば記憶装置31と32は同一の装置を使用することも可能である。また、記憶装置31と32は、透過画像・断層像などをデータとして保存する。
【0016】
図2は、放射線断層撮影装置501による撮影状況の概念を示す。放射線源1と放射線検出器2は配管10の長軸方向に並進移動し、放射線検出器2は、配管10の透過画像51を一定間隔で連続撮影する。画像再構成演算装置22は、インストールされた画像再構成演算プログラムにより、撮影した透過画像51の集合から配管の断層像または立体像を構築する。画像再構成演算装置22は、空気層データ選択手段,空気層データ推定手段,格納手段,減衰率算出手段,再構成演算手段を有する。図3は、画像再構成演算により構築された立体像101の模式図を示す。
【0017】
図4および図5は、配管の透過画像の一例、およびエアデータの一例をそれぞれ示す。図4に示すように、配管の透過画像は、いわゆるレントゲン写真として撮影される。一方、エアデータは、被検体がない状態の空気層を透過したデータであるため、図5に示すように濃淡の変化がほとんど見られない画像として表示される。X線CTや配管検査のためのラミノグラフィといった放射線断層撮影装置は、被検体をスキャンする際に、被検体を各方向から撮影する。そして、放射線断層撮影装置は、エアデータをそれぞれの透過画像データで除して、対数変換した減衰率と呼ばれるデータを使用する。
【0018】
減衰率の算出方法を以下に説明する。ここでは、検出器として2次元平面型検出器(フラットパネルディテクタ,FPD)を想定する。FPDは多数の微小な放射線検出素子が縦横に稠密に配列されている。図4または図5に示すように、画像の横軸をu、縦軸をvとし、各座標における減衰率をP(u,v)とする。そして、配管の透過画像(図4)において各座標位置で検出される放射線強度はI(u,v)とし、エアデータ(図5)における各座標位置で検出される放射線強度はIo(u,v)とする。このとき、P(u,v),I(u,v)、およびIo(u,v)の関係は以下の(1)式で表される。
【0019】
【数1】
【0020】
すなわち減衰率P(u,v)は、それぞれの放射線検出素子の位置において求められる数値である。また、被検体の透過画像は複数存在する。そのため、それぞれの透過画像に対応する放射線強度をIi(u,v)(i=1,…,N)とする。従って、減衰率のデータは被検体の透過画像と同じ数だけ存在することになり、以下の(2)式のように表される。
【0021】
【数2】
【0022】
以下では、表記を単純化するために(1)式の表記に基づき説明する。
【0023】
P(u,v)の物理的意味は、X線やγ線が被検体の内部を透過するに伴い減衰する割合である。そして、(3)式で示される。
【0024】
【数3】
【0025】
ここで、μ(x,y,z)は、画像再構成演算を行う空間的な計算範囲内における座標位置(x,y,z)での線減弱係数を表す。線減弱係数とは、X線やγ線が物質内を単位長さ透過する際に減衰する量を表している。また、sは線積分における積分経路を表し、ここでは放射線源とFPD上において着目した一つの検出素子とを結ぶ直線に相当する。画像再構成演算により構築される断層像または立体像は、線減弱係数μ(x,y,z)の空間的分布を表したものである。このため、被検体の透過画像だけでなく、被検体がない場合のエアデータが必要となる。ここではFPDを例に説明したが、イメージインテンシファイアなどの他の検出器であっても同様である。
【0026】
図6は、撮影フローの概要を示す。本実施例では、配管の透過画像データに映りこむ空気層部分のデータから擬似的なエアデータを作成する。そのため、本実施例の撮影フローは、特許文献1で実施していた「初期設定フロー」とそれに伴うアライメント等の実施が不要となる。具体的には、処理1002は、定められた配管場所を撮影するために放射線断層撮影装置501を装着し、必要なアライメント作業を実施する。その後、処理1003は、配管撮影を実施する。処理1101,1102は、撮影した透過画像から、その画像に映りこむ空気層部分のデータを抽出する。そして、処理1101,1102は、透過画像上における、X線が配管を透過し減衰した部分(透過画像上の灰色部分に相当)に対して、配管がない場合に検出素子が検出する放射線強度を推定した擬似エアデータ52を画像再構成演算装置22により求める。処理1004は、得られた擬似エアデータ52を用いて対数変換等の処理を実施した上で、画像再構成演算装置22の再構成演算手段は画像再構成演算を実施する。処理1101,1102は、演算装置上で自動実行されるため、現場での特別な作業は不要である。このため、本実施例では、特許文献1に示す「初期設定フロー」とそれに付随する作業が削減できるため、使い勝手が向上する。
【0027】
次に、図7〜図9を用いて、処理1101,1102を実現する具体的方法の一例を説明する。この処理1101,1102は、画像再構成演算装置22が行う。
【0028】
図7は、放射線源1と、放射線源1の焦点が検出器2に投影される位置、および検出器2上のある一つの検出素子の座標位置(u,v)との関係を示したものである。ここで、検出器座標の原点Oは、放射線源1の焦点が検出器2に投影される位置としている。そして、X線が配管を透過した部分において、配管がないと仮定した場合に検出素子が検出する放射線の強度を推定する。
【0029】
放射線源1と検出器2の位置関係は、放射線源1の焦点位置とその焦点が検出器2に投影された位置0との距離をH、その投影位置0における放射線検出強度をIo(0,0)、放射線源1の焦点位置と検出器2上の座標位置(u,v)との距離をL、座標位置(u,v)における放射線検出強度をIo(u,v)とする。
【0030】
ここでは、X線やγ線の強度は距離の二乗に反比例することを利用する。そして、前述の座標・距離は、(4)式の関係で表される。
【0031】
【数4】
【0032】
図8は、配管を透過した座標位置(u,v)において、配管がないと仮定した場合に、座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線の強度を推定する方法を模式的に説明した図である。この推定方法は、配管の透過画像に映りこんだ空気層部分(u′,v′)のデータを用いる。図のように、空気層データ選択手段は、空気層部分のデータのうち、検出器2上の座標位置(u′,v′)を選択し、この位置における放射線強度Iref(u′,v′)を参照データとする。このとき、(4)式からIo(0,0)は以下のようにして求められる。
【0033】
【数5】
【0034】
この結果、空気層データ推定手段は、配管がない場合を仮定して、任意の座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線強度の推定値Io(u,v)を、Io(0,0)および(4)式から求めることができる。この推定値Io(u,v)が擬似エアデータとなり、格納手段に格納される。そして、減衰率算出手段は、擬似エアデータに基づき、検出器の各座標における減衰率を算出する。
【0035】
このように、本実施例では、放射線源の焦点位置と放射線源の焦点が検出器に投影される位置との距離H,検出器上の任意の座標位置(u,v),透過画像データに映り込んだ空気層部分の座標位置(u′,v′),座標位置(u′,v′)の放射線強度Iref(u′,v′)に基づき、配管がないと仮定した場合に、任意の座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線の強度を推定して擬似エアデータを生成し、擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行う。従って、エアデータを求めるために、放射線断層撮影装置を配管から取り外す必要がなくなる。そのため、アライメントを複数回実施する必要がなくなり、段取りや工数が低減し、使い勝手が向上する。このように、プラント配管検査のように被検体の移動が不可能な場合であっても、放射線断層撮影の作業を簡素化することが可能となる。
【0036】
(実施例1の変形例)
以上は、ノイズ等がない理想的な場合に適用可能な方法である。但し、実際には、取得データの中に、放射線の統計的揺らぎによるノイズや検出器回路に起因するノイズ等が含まれる。図9は、配管がないと仮定して、座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線の強度を推定する際に、取得データに含まれるノイズを考慮した手法である。先述の場合と同様、空気層部分のデータのうち、検出器2上の座標位置(u′,v′)を選択し、この位置における放射線強度Iref(u′,v′)を参照データとする。この位置の原点からの距離をr、原点とこの点を結んだ直線のu軸とのなす角をθとすると、u′,v′,r,θは以下の関係式で表される。
【0037】
【数6】
【0038】
図に示す点線は、rを半径とし、原点を中心とする円を示している。Iref(u′,v′)は、この円周上にあり、かつ空気層部分に相当する場所のデータをサンプリングし、これらの平均値とする。平均値を使用することで、ノイズの影響を低減できる。そして、(5)式によりIo(0,0)を算出する。任意の位置(u,v)における放射線強度の推定値Io(u,v)は、Io(0,0)および(4)式から算出できる。
【0039】
また、配管がないと仮定した場合に検出素子が検出する放射線の強度を推定する別の方法として、以下に述べる方法がある。先に述べた半径rの円を複数使用すれば良い。具体的には、参照用の放射線強度Iref(u′,v′)を複数の半径に対して求め、それらのデータから内外挿する。そして、任意の位置(u,v)における放射線強度の推定値Io(u,v)を求める方法である。その際、求めておく参照用の放射線強度値の数が多ければ多いほど、内外挿による推定の精度が向上する。
【0040】
また、参照データIref(u′,v′)の選択には、散乱線の影響を考慮することが望ましい。散乱線とは、主に被検体内部の電子と透過X線(またはγ線)との相互作用(コンプトン散乱)により散乱されたX線(またはγ線)のことである。散乱線の影響は被検体近傍で大きく、実際の空気層の値よりも優位に高くなる場合がある。このため、参照データを選択する場合、被検体近傍のデータは利用しない方が望ましい。
【0041】
また、放射線源1の放射角度や検出器2の検出面サイズよりも大きな被検体を撮影する場合、放射線源1や検出器2を移動させて、被検体全体が収まるように撮影する必要がある。このような場合、被検体の両端において、空気層が映りこむように撮影すれば、本実施例に記載した方法を適用することは可能である。
【0042】
以上の方法により、エアデータの取得を別途実施せずとも、被検体撮影時のデータからエアデータを構築できるため、エアデータ取得を簡素化可能である。
【実施例2】
【0043】
図10,図11は、別の実施例を示す。本実施例は、少なくとも1回、被検体がない状態でエアデータをあらかじめ取得しておく。このエアデータは、参照用エアデータとする。そして、実際の撮影時に、被検体撮影時に映りこむ空気層部分のデータと参照用エアデータを比較することで、擬似エアデータを作成する方法である。
【0044】
まず、処理1001は、被検体がない状態で参照用エアデータをあらかじめ取得しておく。処理1002,1003は、撮影装置を配管に装着し、配管撮影を実施する。処理1101aは、画像再構成演算装置22のデータ比較手段が、参照用エアデータと透過画像データを比較する。そして、処理1102は、擬似エアデータを作成する。その後、処理1004は、画像再構成演算装置22が再構成演算を実施する。
【0045】
ここで、処理1101aの処理内容を説明する。図10に示すように、データ比較手段は、参照用エアデータと透過画像データの同一部分(線分AA)のラインプロファイルを抽出し、それらのデータを比較する。そして、データ比較手段は、線分AAにおける擬似エアデータのラインプロファイルを生成する。なお、参照用エアデータと透過画像データの空気層部分Bは、検出器出力値が一致しない場合もある。しかし、プロファイルの定性的傾向は一致する。そこで、透過画像データの空気層部分の値に基づき、参照用データのプロファイル形状を適用することで、精度よく擬似エアデータを構築することができる。
【0046】
現地で装置を組み上げるため、参照用エアデータ取得時と配管検査時において、放射線源1が検出器2上に投影される位置の「ずれ」が生じる場合もある。そこで、参照用エアデータ取得の際に、放射線源1が検出器2上に投影される位置等のアライメント情報を把握しておくことが望ましい。このアライメント情報を把握しておけば、「ずれ」を定量的に把握できる。そして、擬似エアデータ構築の際に、「ずれ」量を考慮してプロファイルのフィッティングを行うことが可能である。
【0047】
また、撮影対象によっては、X線発生器の電圧や、γ線源のエネルギを変える場合もある。あらかじめ検出器の放射線エネルギに対する検出器出力を把握しておくことが望ましい。放射線源の放射線エネルギに対する検出器出力の関係に従い、プロファイルをフィッティングすることも可能である。
【0048】
また、参照用エアデータの取得は、装置を現地に搬入する前、例えば発送元の場内においてあらかじめ実施しておくことで、現地での作業を軽減することができる。参照用エアデータは、装置を現地に搬入する前に一度作成しておけば、現地で検査する度に再作成する必要はない。
【0049】
本実施例では、参照用エアデータを取得し、前記参照用エアデータと前記透過画像データの同一部分におけるラインプロファイルを比較して擬似エアデータを作成し、前記擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行う。透過画像データと参照用エアデータを組み合わせて使用することにより、擬似エアデータをより高精度に構築できる。
【0050】
本実施例の方法によれば、高精度に擬似エアデータを構築でき、かつエアデータ取得を簡素化可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の方法及び装置を用いることで、発電プラントの配管のように狭隘な場所で断層撮影を実施する場合に、撮影に伴う段取りや工数の削減、使い勝手向上により、効率的な検査が可能となる。また、本発明の方法は、産業用X線CT装置のように、ターンテーブルに被検体を乗せて回転させ、断層像を得るシステムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 放射線源
2 検出器
10 配管
21 制御・画像取込装置
22 画像再構成演算装置
23 画像計測装置
31,32 記憶装置
51 透過画像
52 擬似エアデータ
101 立体像
501 放射線断層撮影装置
1001,1002,1003,1004,1101,1102 処理
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線断層撮影方法および放射線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力や火力等の発電プラントや、化学プラント,石油プラントに設置された配管の健全性を確保するために、断層撮影が可能なX線CT装置を用いて、これらの配管内面を現地で非破壊検査するニーズが増加している。但し、上記プラントの配管は狭隘な場所に設置されていることが多い。そして、従来のX線CT装置は、検査対象物の周囲を180°+放射線ファンビーム角度乃至は一般的には360°の角度方向から撮影した複数の投影データに基づいて断層画像または立体像を構築するため、装置が大型化する。従って、産業用X線CT装置はプラント配管の検査に適用することが困難である。
【0003】
これに対して、特許文献1は現地のプラント配管を断層撮影する方法を開示する。特許文献1の方法では、X線CT装置が必要とする角度よりも小さい角度でのみ撮影された複数の投影データにより断層像または立体像を構築することが可能である。配管検査では、配管の長軸方向に放射線源と検出器を並進移動させて撮影している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−276285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、放射線検出器の上面に遮蔽体を設け、遮蔽体付きチャンネルの出力とその他のチャンネルの出力との関係からチャンネル定数を求めている。そして、特許文献1の放射線断層撮影装置がチャンネル定数を求める時、この放射線断層撮影装置は、被検体がない状態で計測する「初期設定フロー」が必要となる。
【0006】
しかし、現地プラント配管を撮影する場合、既に設置された配管を取り除くことはできない。そのため、チャンネル定数を取得するために、被検体撮影場所とは別の場所に放射線断層撮影装置を移動させる必要がある。このように撮影装置を移動させる場合、被検体のない場所で撮影装置を組み上げ、アライメントを実施し、透過画像を撮影して、チャンネル定数を算出する。その後、撮影装置を被検体に設置し、アライメントを実施した上で被検体の撮影を実施する。このように、特許文献1の撮影装置では、段取りや工数が多く、作業が煩雑になり、使い勝手が悪いという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、プラント配管検査のように被検体の移動が不可能な場合であっても、放射線断層撮影の作業を簡素化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、放射線源の焦点位置と放射線源の焦点が検出器に投影される位置との距離H,検出器上の任意の座標位置(u,v),透過画像データに映り込んだ空気層部分の座標位置(u′,v′),空気層部分の座標位置(u′,v′)の放射線強度Iref(u′,v′)に基づき、被検体がないと仮定した場合に、任意の座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線の強度を推定して擬似エアデータを生成し、擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プラント配管検査のように被検体の移動が不可能な場合であっても、放射線断層撮影の作業を簡素化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】配管断層撮影装置の一例を表した図である。
【図2】配管断層撮影方法による撮影状況の概念を示した図である。
【図3】配管断層撮影装置により撮影された透過画像を用いて構築された立体像の一例を示した図である。
【図4】配管の透過画像の一例を示した図である。
【図5】エアデータの一例を表した図である。
【図6】実施例1における投影フローの概要の一例を示した図である。
【図7】擬似エアデータ推定方法に関して模式的に説明した図である。
【図8】擬似エアデータ推定方法に関して模式的に説明した図である。
【図9】擬似エアデータ推定方法に関して模式的に説明した図である。
【図10】参照用のデータをあらかじめ取得して参照する場合の方法について説明した図である。
【図11】実施例2における投影フローの概要の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施例は、放射線断層撮影装置および放射線断層撮影方法に係り、特に、配管のような特定の場所に据え付けられた構造物の内部を可視化して検査するのに好適な放射線断層撮影装置および放射線断層撮影方法に関する。
【0012】
ここでは、発電プラントなどに設置された配管を例として図を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、放射線断層撮影装置501の概要を示す。図1の装置は、直管に設置された場合を示す。
【0014】
放射線源1および検出器2は、保温材11を装着した配管10をはさむようにスライド機構3aで取り付けられている。このスライド機構3aは、指示脚3cで支持されたスキャナ3bにより、配管長軸方向に放射線源1および検出器2をスライドさせる。スライド機構3aは、配管10の径方向に放射線源1,検出器2をそれぞれスライドさせるための装置である。
【0015】
放射線断層撮影装置は、放射線源1および検出器2を一定の速度で移動させ、その移動中に等間隔距離で透過像撮影を実施し、複数の透過画像51を取得する。制御・画像取込装置21は、スキャナ3bや検出器2による透過画像を取り込む際の制御をする。記憶装置31は、取り込まれた透過画像51を保存する。その後、画像再構成演算装置22は、記憶装置31から透過画像51を呼び出し、断層像または立体像を構築する。記憶装置32は、構築された断層像または立体像を保存する。画像計測装置23は、記憶装置32から断層像(立体像)を呼び出し、欠陥評価を行う。ここで、図1に示す制御・画像取込装置21,記憶装置31,画像再構成演算装置22,記憶装置32,画像計測装置23の構成は一例であり、例えば記憶装置31と32は同一の装置を使用することも可能である。また、記憶装置31と32は、透過画像・断層像などをデータとして保存する。
【0016】
図2は、放射線断層撮影装置501による撮影状況の概念を示す。放射線源1と放射線検出器2は配管10の長軸方向に並進移動し、放射線検出器2は、配管10の透過画像51を一定間隔で連続撮影する。画像再構成演算装置22は、インストールされた画像再構成演算プログラムにより、撮影した透過画像51の集合から配管の断層像または立体像を構築する。画像再構成演算装置22は、空気層データ選択手段,空気層データ推定手段,格納手段,減衰率算出手段,再構成演算手段を有する。図3は、画像再構成演算により構築された立体像101の模式図を示す。
【0017】
図4および図5は、配管の透過画像の一例、およびエアデータの一例をそれぞれ示す。図4に示すように、配管の透過画像は、いわゆるレントゲン写真として撮影される。一方、エアデータは、被検体がない状態の空気層を透過したデータであるため、図5に示すように濃淡の変化がほとんど見られない画像として表示される。X線CTや配管検査のためのラミノグラフィといった放射線断層撮影装置は、被検体をスキャンする際に、被検体を各方向から撮影する。そして、放射線断層撮影装置は、エアデータをそれぞれの透過画像データで除して、対数変換した減衰率と呼ばれるデータを使用する。
【0018】
減衰率の算出方法を以下に説明する。ここでは、検出器として2次元平面型検出器(フラットパネルディテクタ,FPD)を想定する。FPDは多数の微小な放射線検出素子が縦横に稠密に配列されている。図4または図5に示すように、画像の横軸をu、縦軸をvとし、各座標における減衰率をP(u,v)とする。そして、配管の透過画像(図4)において各座標位置で検出される放射線強度はI(u,v)とし、エアデータ(図5)における各座標位置で検出される放射線強度はIo(u,v)とする。このとき、P(u,v),I(u,v)、およびIo(u,v)の関係は以下の(1)式で表される。
【0019】
【数1】
【0020】
すなわち減衰率P(u,v)は、それぞれの放射線検出素子の位置において求められる数値である。また、被検体の透過画像は複数存在する。そのため、それぞれの透過画像に対応する放射線強度をIi(u,v)(i=1,…,N)とする。従って、減衰率のデータは被検体の透過画像と同じ数だけ存在することになり、以下の(2)式のように表される。
【0021】
【数2】
【0022】
以下では、表記を単純化するために(1)式の表記に基づき説明する。
【0023】
P(u,v)の物理的意味は、X線やγ線が被検体の内部を透過するに伴い減衰する割合である。そして、(3)式で示される。
【0024】
【数3】
【0025】
ここで、μ(x,y,z)は、画像再構成演算を行う空間的な計算範囲内における座標位置(x,y,z)での線減弱係数を表す。線減弱係数とは、X線やγ線が物質内を単位長さ透過する際に減衰する量を表している。また、sは線積分における積分経路を表し、ここでは放射線源とFPD上において着目した一つの検出素子とを結ぶ直線に相当する。画像再構成演算により構築される断層像または立体像は、線減弱係数μ(x,y,z)の空間的分布を表したものである。このため、被検体の透過画像だけでなく、被検体がない場合のエアデータが必要となる。ここではFPDを例に説明したが、イメージインテンシファイアなどの他の検出器であっても同様である。
【0026】
図6は、撮影フローの概要を示す。本実施例では、配管の透過画像データに映りこむ空気層部分のデータから擬似的なエアデータを作成する。そのため、本実施例の撮影フローは、特許文献1で実施していた「初期設定フロー」とそれに伴うアライメント等の実施が不要となる。具体的には、処理1002は、定められた配管場所を撮影するために放射線断層撮影装置501を装着し、必要なアライメント作業を実施する。その後、処理1003は、配管撮影を実施する。処理1101,1102は、撮影した透過画像から、その画像に映りこむ空気層部分のデータを抽出する。そして、処理1101,1102は、透過画像上における、X線が配管を透過し減衰した部分(透過画像上の灰色部分に相当)に対して、配管がない場合に検出素子が検出する放射線強度を推定した擬似エアデータ52を画像再構成演算装置22により求める。処理1004は、得られた擬似エアデータ52を用いて対数変換等の処理を実施した上で、画像再構成演算装置22の再構成演算手段は画像再構成演算を実施する。処理1101,1102は、演算装置上で自動実行されるため、現場での特別な作業は不要である。このため、本実施例では、特許文献1に示す「初期設定フロー」とそれに付随する作業が削減できるため、使い勝手が向上する。
【0027】
次に、図7〜図9を用いて、処理1101,1102を実現する具体的方法の一例を説明する。この処理1101,1102は、画像再構成演算装置22が行う。
【0028】
図7は、放射線源1と、放射線源1の焦点が検出器2に投影される位置、および検出器2上のある一つの検出素子の座標位置(u,v)との関係を示したものである。ここで、検出器座標の原点Oは、放射線源1の焦点が検出器2に投影される位置としている。そして、X線が配管を透過した部分において、配管がないと仮定した場合に検出素子が検出する放射線の強度を推定する。
【0029】
放射線源1と検出器2の位置関係は、放射線源1の焦点位置とその焦点が検出器2に投影された位置0との距離をH、その投影位置0における放射線検出強度をIo(0,0)、放射線源1の焦点位置と検出器2上の座標位置(u,v)との距離をL、座標位置(u,v)における放射線検出強度をIo(u,v)とする。
【0030】
ここでは、X線やγ線の強度は距離の二乗に反比例することを利用する。そして、前述の座標・距離は、(4)式の関係で表される。
【0031】
【数4】
【0032】
図8は、配管を透過した座標位置(u,v)において、配管がないと仮定した場合に、座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線の強度を推定する方法を模式的に説明した図である。この推定方法は、配管の透過画像に映りこんだ空気層部分(u′,v′)のデータを用いる。図のように、空気層データ選択手段は、空気層部分のデータのうち、検出器2上の座標位置(u′,v′)を選択し、この位置における放射線強度Iref(u′,v′)を参照データとする。このとき、(4)式からIo(0,0)は以下のようにして求められる。
【0033】
【数5】
【0034】
この結果、空気層データ推定手段は、配管がない場合を仮定して、任意の座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線強度の推定値Io(u,v)を、Io(0,0)および(4)式から求めることができる。この推定値Io(u,v)が擬似エアデータとなり、格納手段に格納される。そして、減衰率算出手段は、擬似エアデータに基づき、検出器の各座標における減衰率を算出する。
【0035】
このように、本実施例では、放射線源の焦点位置と放射線源の焦点が検出器に投影される位置との距離H,検出器上の任意の座標位置(u,v),透過画像データに映り込んだ空気層部分の座標位置(u′,v′),座標位置(u′,v′)の放射線強度Iref(u′,v′)に基づき、配管がないと仮定した場合に、任意の座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線の強度を推定して擬似エアデータを生成し、擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行う。従って、エアデータを求めるために、放射線断層撮影装置を配管から取り外す必要がなくなる。そのため、アライメントを複数回実施する必要がなくなり、段取りや工数が低減し、使い勝手が向上する。このように、プラント配管検査のように被検体の移動が不可能な場合であっても、放射線断層撮影の作業を簡素化することが可能となる。
【0036】
(実施例1の変形例)
以上は、ノイズ等がない理想的な場合に適用可能な方法である。但し、実際には、取得データの中に、放射線の統計的揺らぎによるノイズや検出器回路に起因するノイズ等が含まれる。図9は、配管がないと仮定して、座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線の強度を推定する際に、取得データに含まれるノイズを考慮した手法である。先述の場合と同様、空気層部分のデータのうち、検出器2上の座標位置(u′,v′)を選択し、この位置における放射線強度Iref(u′,v′)を参照データとする。この位置の原点からの距離をr、原点とこの点を結んだ直線のu軸とのなす角をθとすると、u′,v′,r,θは以下の関係式で表される。
【0037】
【数6】
【0038】
図に示す点線は、rを半径とし、原点を中心とする円を示している。Iref(u′,v′)は、この円周上にあり、かつ空気層部分に相当する場所のデータをサンプリングし、これらの平均値とする。平均値を使用することで、ノイズの影響を低減できる。そして、(5)式によりIo(0,0)を算出する。任意の位置(u,v)における放射線強度の推定値Io(u,v)は、Io(0,0)および(4)式から算出できる。
【0039】
また、配管がないと仮定した場合に検出素子が検出する放射線の強度を推定する別の方法として、以下に述べる方法がある。先に述べた半径rの円を複数使用すれば良い。具体的には、参照用の放射線強度Iref(u′,v′)を複数の半径に対して求め、それらのデータから内外挿する。そして、任意の位置(u,v)における放射線強度の推定値Io(u,v)を求める方法である。その際、求めておく参照用の放射線強度値の数が多ければ多いほど、内外挿による推定の精度が向上する。
【0040】
また、参照データIref(u′,v′)の選択には、散乱線の影響を考慮することが望ましい。散乱線とは、主に被検体内部の電子と透過X線(またはγ線)との相互作用(コンプトン散乱)により散乱されたX線(またはγ線)のことである。散乱線の影響は被検体近傍で大きく、実際の空気層の値よりも優位に高くなる場合がある。このため、参照データを選択する場合、被検体近傍のデータは利用しない方が望ましい。
【0041】
また、放射線源1の放射角度や検出器2の検出面サイズよりも大きな被検体を撮影する場合、放射線源1や検出器2を移動させて、被検体全体が収まるように撮影する必要がある。このような場合、被検体の両端において、空気層が映りこむように撮影すれば、本実施例に記載した方法を適用することは可能である。
【0042】
以上の方法により、エアデータの取得を別途実施せずとも、被検体撮影時のデータからエアデータを構築できるため、エアデータ取得を簡素化可能である。
【実施例2】
【0043】
図10,図11は、別の実施例を示す。本実施例は、少なくとも1回、被検体がない状態でエアデータをあらかじめ取得しておく。このエアデータは、参照用エアデータとする。そして、実際の撮影時に、被検体撮影時に映りこむ空気層部分のデータと参照用エアデータを比較することで、擬似エアデータを作成する方法である。
【0044】
まず、処理1001は、被検体がない状態で参照用エアデータをあらかじめ取得しておく。処理1002,1003は、撮影装置を配管に装着し、配管撮影を実施する。処理1101aは、画像再構成演算装置22のデータ比較手段が、参照用エアデータと透過画像データを比較する。そして、処理1102は、擬似エアデータを作成する。その後、処理1004は、画像再構成演算装置22が再構成演算を実施する。
【0045】
ここで、処理1101aの処理内容を説明する。図10に示すように、データ比較手段は、参照用エアデータと透過画像データの同一部分(線分AA)のラインプロファイルを抽出し、それらのデータを比較する。そして、データ比較手段は、線分AAにおける擬似エアデータのラインプロファイルを生成する。なお、参照用エアデータと透過画像データの空気層部分Bは、検出器出力値が一致しない場合もある。しかし、プロファイルの定性的傾向は一致する。そこで、透過画像データの空気層部分の値に基づき、参照用データのプロファイル形状を適用することで、精度よく擬似エアデータを構築することができる。
【0046】
現地で装置を組み上げるため、参照用エアデータ取得時と配管検査時において、放射線源1が検出器2上に投影される位置の「ずれ」が生じる場合もある。そこで、参照用エアデータ取得の際に、放射線源1が検出器2上に投影される位置等のアライメント情報を把握しておくことが望ましい。このアライメント情報を把握しておけば、「ずれ」を定量的に把握できる。そして、擬似エアデータ構築の際に、「ずれ」量を考慮してプロファイルのフィッティングを行うことが可能である。
【0047】
また、撮影対象によっては、X線発生器の電圧や、γ線源のエネルギを変える場合もある。あらかじめ検出器の放射線エネルギに対する検出器出力を把握しておくことが望ましい。放射線源の放射線エネルギに対する検出器出力の関係に従い、プロファイルをフィッティングすることも可能である。
【0048】
また、参照用エアデータの取得は、装置を現地に搬入する前、例えば発送元の場内においてあらかじめ実施しておくことで、現地での作業を軽減することができる。参照用エアデータは、装置を現地に搬入する前に一度作成しておけば、現地で検査する度に再作成する必要はない。
【0049】
本実施例では、参照用エアデータを取得し、前記参照用エアデータと前記透過画像データの同一部分におけるラインプロファイルを比較して擬似エアデータを作成し、前記擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行う。透過画像データと参照用エアデータを組み合わせて使用することにより、擬似エアデータをより高精度に構築できる。
【0050】
本実施例の方法によれば、高精度に擬似エアデータを構築でき、かつエアデータ取得を簡素化可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の方法及び装置を用いることで、発電プラントの配管のように狭隘な場所で断層撮影を実施する場合に、撮影に伴う段取りや工数の削減、使い勝手向上により、効率的な検査が可能となる。また、本発明の方法は、産業用X線CT装置のように、ターンテーブルに被検体を乗せて回転させ、断層像を得るシステムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 放射線源
2 検出器
10 配管
21 制御・画像取込装置
22 画像再構成演算装置
23 画像計測装置
31,32 記憶装置
51 透過画像
52 擬似エアデータ
101 立体像
501 放射線断層撮影装置
1001,1002,1003,1004,1101,1102 処理
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過画像データから、前記被検体の断層像又は立体像を構築する放射線断層撮影方法であって、
前記放射線源の焦点位置と前記放射線源の焦点が前記検出器に投影される位置との距離H、前記検出器上の任意の座標位置(u,v)、前記透過画像データに映り込んだ空気層部分の座標位置(u′,v′)、空気層部分の前記座標位置(u′,v′)の放射線強度Iref(u′,v′)に基づき、前記被検体がないと仮定した場合に、前記任意の座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線の強度を推定して擬似エアデータを生成し、
前記擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行うことを特徴とする放射線断層撮影方法。
【請求項2】
請求項1記載の放射線断層撮影方法であって、
前記放射線強度Iref(u′,v′)は、前記放射線源の焦点が前記検出器に投影される位置を中心とした円の周上をサンプリングして得ることを特徴とする放射線断層撮影方法。
【請求項3】
被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過画像データから、前記被検体の断層像又は立体像を構築する放射線断層撮影装置であって、
画像再構成演算装置は、前記放射線源の焦点位置と前記放射線源の焦点が前記検出器に投影される位置との距離H、前記検出器上の任意の座標位置(u,v)、前記透過画像データに映り込んだ空気層部分の座標位置(u′,v′)、空気層部分の前記座標位置(u′,v′)の放射線強度Iref(u′,v′)に基づき、前記被検体がないと仮定した場合に、前記任意の座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線の強度を推定して擬似エアデータを生成する空気層データ推定手段と、
前記擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行う再構成演算部を備えることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項4】
被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過画像データから、前記被検体の断層像又は立体像を構築する放射線断層撮影方法であって、
事前に参照用エアデータを取得し、
前記参照用エアデータと前記透過画像データの同一部分におけるラインプロファイルを比較して擬似エアデータを作成し、
前記擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行うことを特徴とする放射線断層撮影方法。
【請求項5】
被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過画像データから、前記被検体の断層像又は立体像を構築する放射線断層撮影装置であって、
画像再構成演算装置は、
事前に取得した前記参照用エアデータと、前記透過画像データの同一部分におけるラインプロファイルを比較して擬似エアデータを作成するデータ比較手段と、
前記擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行う再構成演算部を備えることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項1】
被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過画像データから、前記被検体の断層像又は立体像を構築する放射線断層撮影方法であって、
前記放射線源の焦点位置と前記放射線源の焦点が前記検出器に投影される位置との距離H、前記検出器上の任意の座標位置(u,v)、前記透過画像データに映り込んだ空気層部分の座標位置(u′,v′)、空気層部分の前記座標位置(u′,v′)の放射線強度Iref(u′,v′)に基づき、前記被検体がないと仮定した場合に、前記任意の座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線の強度を推定して擬似エアデータを生成し、
前記擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行うことを特徴とする放射線断層撮影方法。
【請求項2】
請求項1記載の放射線断層撮影方法であって、
前記放射線強度Iref(u′,v′)は、前記放射線源の焦点が前記検出器に投影される位置を中心とした円の周上をサンプリングして得ることを特徴とする放射線断層撮影方法。
【請求項3】
被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過画像データから、前記被検体の断層像又は立体像を構築する放射線断層撮影装置であって、
画像再構成演算装置は、前記放射線源の焦点位置と前記放射線源の焦点が前記検出器に投影される位置との距離H、前記検出器上の任意の座標位置(u,v)、前記透過画像データに映り込んだ空気層部分の座標位置(u′,v′)、空気層部分の前記座標位置(u′,v′)の放射線強度Iref(u′,v′)に基づき、前記被検体がないと仮定した場合に、前記任意の座標位置(u,v)の検出素子が検出する放射線の強度を推定して擬似エアデータを生成する空気層データ推定手段と、
前記擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行う再構成演算部を備えることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項4】
被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過画像データから、前記被検体の断層像又は立体像を構築する放射線断層撮影方法であって、
事前に参照用エアデータを取得し、
前記参照用エアデータと前記透過画像データの同一部分におけるラインプロファイルを比較して擬似エアデータを作成し、
前記擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行うことを特徴とする放射線断層撮影方法。
【請求項5】
被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過画像データから、前記被検体の断層像又は立体像を構築する放射線断層撮影装置であって、
画像再構成演算装置は、
事前に取得した前記参照用エアデータと、前記透過画像データの同一部分におけるラインプロファイルを比較して擬似エアデータを作成するデータ比較手段と、
前記擬似エアデータを用いて画像再構成演算を行う再構成演算部を備えることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−209089(P2011−209089A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76570(P2010−76570)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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