説明

放射線検出器

【課題】薄型で大面積の検出面を有しながら、光検出器の設置数を少なくすることができる放射線検出器を提供する。
【解決手段】平行に配列した複数本のシンチレータファイバからなる帯状体が少なくとも1部は重なり合わないように1回又は複数回折り返して形成してあるシート状体と、前記帯状体の末端に接続してある光検出器と、前記シート状体に重ねて設けてあるシート状の光反射材とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薄型で大面積の検出面を有する放射線検出器でありながら、光検出器の設置数を少なくすることができる放射線検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシンチレータファイバからなる薄型で大面積の検出面を有する放射線検出器1は、図5に示すように、シンチレータファイバ2からなる帯状体を、フッ素樹脂からなるシートや硫酸バリウムを塗布したプラスチックシートからなる光反射材3の上に複数並べて構成してある(特許文献1)。
【0003】
また同様に、従来の大面積の検出面を有するシート状のプラスチックシンチレータやNaI(Tl)シンチレータからなる放射線検出器1は、図5に示すように、波長変換ファイバ2’からなる帯状体を、シート状シンチレータ3’の検出面とは逆の面に複数並べて構成してある(特許文献2)。
【0004】
これらの放射線検出器1においては、電気ノイズを除去するために、1束のシンチレータファイバ2又は波長変換ファイバ2’につき、その両端に1対の光検出器4が設けられている。
【特許文献1】特開平7−35867
【特許文献2】特開2003−4886
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような構成では、シンチレータファイバ2や波長変換ファイバ2’の1束ごとに光検出器4が1対必要であるので、検出系が複雑となりコスト及びメンテンナンスの面から問題がある。
【0006】
そこで本発明は、薄型で大面積の検出面を有しながら、光検出器の設置数を少なくして、シンプルな放射線検出器を提供すべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る放射線検出器は、平行に配列した複数本のシンチレータファイバからなる帯状体が少なくとも1部は重なり合わないように1回又は複数回折り返して形成してあるシート状体と、前記帯状体の末端に接続してある光検出器と、前記シート状体に重ねて設けてあるシート状の光反射材とを備えていることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、放射線の検出面を構成するシンチレータファイバの本数(即ち、検出面の面積)を変えずに、シンチレータファイバからなる帯状体の数を減らすことにより、光検出器の使用数を減らして検出系を簡略化できると共に、検査面が同一品質のファイバでカバーでき性能やメンテナンス性の向上が図れる。また、シンチレータファイバの長さが長いほど放射線に由来する蛍光の伝達効率は低下するが、シンチレータファイバに重ねて光反射材を設けて、シンチレータファイバから漏洩した蛍光を再度シンチレータファイバ内に戻すことにより、蛍光の伝達ロスを最低限に抑えることができる。
【0009】
また、シンチレータファイバと付随する光反射材の作る面を適当に折り曲げて立体化して、検査対象物の周囲を囲むことにより、放射線を周囲側面のすべての方向で検出できるので、放射線の検出量の増加が図れる。
【0010】
シンチレータファイバの長さが長いときは、蛍光の伝達ロスを抑えるために、光反射材に加えて更に積分球を設けて、前記帯状体の末端が積分球を介して光検出器に接続してあるようにしてもよい。
【0011】
このように構成することにより、シンチレータファイバ内を伝達された蛍光を、一旦積分球で集光してから、光検出器に導入することにより、蛍光の伝達ロスをより抑制することができる。
【0012】
放射線の検出面を構成するシンチレータファイバの本数が同じである場合、長いシンチレータファイバを用いて折り返し回数を増やした方が、光検出器の数を減らすことができるので、前記帯状体は2回以上折り返してあることが好ましい。
【0013】
上記の本発明に係る放射線検出器において、シンチレータファイバの代わりに波長変換ファイバを用い、光反射材の代わりにシート状のシンチレータを用いてもよい。即ち、平行に配列した複数本の波長変換ファイバからなる帯状体が少なくとも1部は重なり合わないように1回又は複数回折り返して形成してあるシート状体と、前記帯状体の末端に接続してある光検出器と、前記シート状体に重ねて設けてあるシート状のシンチレータとを備えている放射線検出器もまた、本発明の1つである。
【0014】
波長変換ファイバはシンチレータに比べて光の伝達効率が高い材料からなるので、シンチレータで発生した蛍光を、更に波長変換ファイバに伝達して蛍光の波長を変えて光検出器に到達させることにより、シンチレータで発生した蛍光を高い伝達効率で光検出器へ伝達することができるが、このような態様の放射線検出器においても、波長変換ファイバを折り返して敷設することにより、光検出器の数を減らすことができる。
【0015】
前記シート状のシンチレータとしては、例えば、プラスチックシンチレータやNaI(Tl)シンチレータを用いることができる。
【0016】
プラスチックシンチレータは、薄く成形できるので、透過力の強いγ線を透過して、β線のみを選択的に検出するのに適しており、NaI(Tl)シンチレータは、γ線のエネルギーを効率良く受けることができる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明によれば、シンチレータファイバや波長変換ファイバ等の光伝達ファイバを用いた薄型で検出面積の大きな放射線検出器において、電気ノイズの除去機能は維持しつつ光検出器を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0019】
第1の実施形態に係る放射線検出器1は、図1に示すように、平行に配列した複数本のシンチレータファイバ2からなる帯状体を重なり合わないように1回折り返して形成したシート状体と、当該シート状体と重ねて配置した光反射材3とを備えており、前記帯状体の末端には光検出器4が接続している。
【0020】
以下に各部を説明する。シンチレータファイバ2としてはファイバ状のプラスチックシンチレータを用い、複数本を平行に配列して一定の幅を有する帯状体とし、当該帯状体を重なり合わないように折り返してU字型にしたものを2組組み合わせてシート状体とし、放射線の検出面を構成している。
【0021】
シンチレータファイバ2は直径0.1〜3mm程度のものであり、透過力の強いγ線は透過するため、β線のみを選択的に検出する。シンチレータファイバ2にβ線が入射すると、内包するシンチレーション物質がβ線からエネルギーを受けて蛍光を発する。
【0022】
光反射材3は、フッ素樹脂からなるシートや硫酸バリウム塗装が施されているプラスチックシートからなり、シンチレータファイバ2からなるシート状体に重ねて配置し、シンチレータファイバ2が発した蛍光のうち外部に漏洩したものを反射して再度シンチレータファイバ2内部に戻すものである。
【0023】
光反射材3とシンチレータファイバ2からなるシート状体とは設置剤等で互いに固定してあり、光反射材3がシンチレータファイバ2の支持体としても機能する。
【0024】
シンチレータファイバ2からなる帯状体の末端には光電子増倍管(PMT)からなる光検出器4が接続してあり、光検出器4において、シンチレータファイバ2から伝達された蛍光を電気信号に変換する。本実施形態ではシンチレータファイバ2からなる帯状体を2組使用するため、光検出器4は4基使用してある。
【0025】
本実施形態に係る放射線検出器1を、図2に示すように、同時計数回路11や演算回路12を備えた放射能測定装置10に組み込むことにより、β線測定装置を構成することができる。
【0026】
この際、放射線検出器1は、外部からの光が侵入しないように、図示しない遮光膜で覆われている。
【0027】
本実施形態の放射線検出器1を、図2に示すように、同時計数回路11や演算回路12を備えた放射能測定装置10の放射線検出器として用いると、光検出器4で蛍光が変換されて生じた電気信号は、同時計数回路11に出力される。光検出器4から出力された電気信号にはβ線に由来する蛍光が変換された電気信号のみならず電気ノイズも含まれるが、同一のシンチレータファイバ2からなる帯状体の末端に接続してある一対の光検出器4から出力されるβ線に由来する電気信号のタイミングは一致するが、光検出器4から出力される電気ノイズのタイミングは一致しない。同時計数回路11は、このことを利用して、電気ノイズと電気信号とを識別し、電気ノイズを除去して放射線検出器1で検出したβ線に由来する電気信号のみを抽出して、β線検知信号を出力する。なお、図2においては複数本のシンチレータファイバ2の束を1本に省略して記載してある。
【0028】
演算回路12は、同時計数回路11が出力したβ線検知信号のカウント数の合計から放射能の測定値を算出する。演算回路12には更に表示装置や記録装置が接続されており、得られた放射能の測定値を表示したり、記録したりすることが可能なように構成してあってもよい。
【0029】
このような本実施形態によれば、放射線の検出面を構成するシンチレータファイバ2の本数(検出面の面積)は、図5に示す従来例と同じであっても、光検出器4の設置数は8基から4基に減らすことができる。また、シンチレータファイバ2の長さが長いほどβ線に由来する蛍光の伝達効率は低下するが、少なくともβ線に由来する蛍光であることが識別できればよく、放射線の検出面の裏側に重ねて光反射材3を設けることにより、蛍光の伝達ロスを最低限に抑えることができる。
【0030】
第2の実施形態に係る放射線検出器1においては、図3に示すように、平行に配列した複数本のシンチレータファイバ2からなる帯状体を重なり合わないように3回折り返して、シート状体が形成してある。
【0031】
本実施形態では、第1の実施形態と比べて、1束あたりの本数は同じであるものの、より長いシンチレータファイバ2を使用し、折り返しの回数を増やすことにより、放射線の検出面を形成するシンチレータファイバ2の本数(検出面の面積)は等しくしつつ、光検出器4の設置数は4基から2基に減少させている。なお、シンチレータファイバ2の長さは、光伝達効率から3m以下であることが好ましい。
【0032】
シンチレータファイバ2が長くなるのにともない、光伝達効率は低下するが、光反射材3に加えて、シンチレータファイバ2の末端と光検出器4との間に積分球5を設けて、シンチレータファイバ2内を伝達された蛍光を集光してから光検出器4に伝達することにより、蛍光の伝達ロスを抑制している。
【0033】
本実施形態によれば、放射線の検出面の面積を維持しながら、光検出器4の設置数を更に減らすことができる。そして、シンチレータファイバ2の長さが長くなったことにともなう蛍光の伝達ロスを、光反射材3に加えて、積分球5を用いて蛍光を集光してから光検出器4に伝達することにより最小限に止めることができる。
【0034】
上記の第1の実施形態及び第2の実施形態はいずれもシンチレータファイバ2を備えたβ線検出器に関するものであるが、これらの実施形態と同様な構成でありながら、図1及び図3に示すように、シンチレータファイバ2に代えて波長変換ファイバ2’を用い、光反射材3に代えてシート状のシンチレータ3’を用い、シート状のシンチレータ3’により放射線検出面を構成することにより、シート状のシンチレータ3’がプラスチックシンチレータであればβ線検出器を、シート状のシンチレータ3’がNaI(Tl)シンチレータであればγ線検出器を構成することができる。
【0035】
この際、プラスチックシンチレータとしては0.1〜0.3mm程度の薄型のものを用いる。これにより、透過力の強いγ線は透過してβ線のみを選択的に検出する。
【0036】
一方、NaI(Tl)シンチレータとしては1cm程度の厚さを有する厚型のものを用いる。
【0037】
波長変換ファイバ2’は、シート状のシンチレータ3’の検出面とは反対側の面に密着させて配置し、シート状のシンチレータ3’で生じた蛍光が入射するとそれとは異なる波長の蛍光を発生し、その蛍光をファイバ軸方向に伝達する。波長変換ファイバ2’は、シート状のシンチレータ3’に比べて光の伝達効率が高い材料からなるものである。
【0038】
波長変換ファイバ2’からなる帯状体の両端部は光検出器4に接続してあり、光検出器4において、波長変換ファイバ2’から伝達された蛍光を電気信号に変換する。また、図3に示す実施形態では、波長変換ファイバ2’から伝達された蛍光を一旦積分球5で集光してから光検出器4に導入する。
【0039】
シート状のシンチレータ3’にβ線やγ線が入射すると、それらの放射線からエネルギーを受けたシンチレーション物質が蛍光を発し、発光箇所近傍に配置されている波長変換ファイバ2’が当該蛍光を受けて異なる波長の蛍光を発する。蛍光が生じた波長変換ファイバ2’内では光が等方的に放出されるので、発生した蛍光は波長変換ファイバ2’内を伝達して光検出器4に到達し電気信号に変換される。これらの実施形態に係る放射線検出器1も、図2に示すように、放射能測定装置10に組み込むことにより、β線測定装置やγ線測定装置を構成することができる。
【0040】
これらの実施形態によっても、放射線に由来する蛍光を伝達する波長変換ファイバ2’の本数は変えずに、光検出器4の設置数を減らすことができる。
【0041】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば、シンチレータファイバ2や波長変換ファイバ2’の折り返し回数は各ファイバの曲率が許す範囲で適宜設定することができる。また、シンチレータファイバ2の本数も適宜選択することができる。
【0042】
また、本発明に係るβ線検出器とγ線検出器を重ねて使用しても良い。この場合、β線検出器を測定対象物側に配置し、その外側にγ線検出器を配置する。
【0043】
前記実施形態に係る放射線検出器を折り曲げて、図4に示すように、立体構造を有するものとし、その内部に検査対象物を設置するようにしてもよい。図4(a)は、シンチレータファイバ2(複数本のシンチレータファイバ2の束を1本に省略して記載)が内側(検査対象物側)に、光反射材3が外側になるように折り曲げた態様を示すものであり、図4(b)は、シート状のシンチレータ3’が内側に、波長変換ファイバ2’(複数本の波長変換ファイバ2’の束を1本に省略して記載)が外側になるように折り曲げた態様を示すものである。このようなものであれば、放射線を1面だけではなく周囲側面から検出でき、最大限の信号を得ることができる。なお、図4は第2の実施形態に係る放射線検出器を折り曲げて立体構造を有するようにしたものであるが、第1の実施形態にかかる放射線検出器であっても同様に立体的に構成することができる。
【0044】
その他、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る放射線検出器の模式的平面図。
【図2】同実施形態に係る放射線検出器を組み込んだ放射能測定装置の模式的概要図。
【図3】本発明の他の実施形態に係る放射線検出器の模式的平面図。
【図4】同実施形態に係る放射線検出器を立体的(直方体の例)に構成したものの模式的斜視図。
【図5】従来の放射線検出器の一実施形態を示す模式的平面図。
【符号の説明】
【0046】
1・・・放射線検出器
2・・・シンチレータファイバ
3・・・光反射材
4・・・光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配列した複数本のシンチレータファイバからなる帯状体が少なくとも1部は重なり合わないように1回又は複数回折り返して形成してあるシート状体と、
前記帯状体の末端に接続してある光検出器と、
前記シート状体に重ねて設けてあるシート状の光反射材とを備えていることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記帯状体の末端は積分球を介して光検出器に接続してある請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記帯状体は2回以上折り返してある請求項1又は2記載の放射線検出器。
【請求項4】
平行に配列した複数本の波長変換ファイバからなる帯状体が少なくとも1部は重なり合わないように1回又は複数回折り返して形成してあるシート状体と、
前記帯状体の末端に接続してある光検出器と、
前記シート状体に重ねて設けてあるシート状のシンチレータとを備えていることを特徴とする放射線検出器。
【請求項5】
前記シート状のシンチレータは、プラスチックシンチレータ又はNaI(Tl)シンチレータである請求項4記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記帯状体の末端は積分球を介して光検出器に接続してある請求項4又は5記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記帯状体は2回以上折り返してある請求項4、5又は6記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記シート状体とそれに付随する前記シート状の光反射材又は前記シート状のシンチレータの作る面が立体構造を成した請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の放射線検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−248408(P2007−248408A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75999(P2006−75999)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】