説明

放射線検出装置

【課題】ノイズ信号の計数値分布に基づいて異常診断をする。
【解決手段】 異常診断をするときは,放射線検出器22には放射線が入力されない状態にあり,前置増幅器24から出力されるものはノイズ信号だけである。このノイズ信号が観測電圧Vobsとなり,これが分岐回路26を経て,二つの比較器28,30の観測電圧入力端子に入力される。比較器28,30では,ノイズ信号46からなる観測電圧と,階段状に変化するスキャン参照電圧48とが比較され,ノイズ信号の計数値分布曲線(観測曲線)が得られる。二つの比較器で得られる観測曲線について,それぞれ,オフセット補正をしてから,それらの曲線をオペレータが眺めることで,異常診断ができる。あるいは,各観測曲線を,異常のない基準曲線と比較することで,異常の有無を判定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線の強度を計数値として検出する放射線検出装置に関し,特に,異常を容易に把握できる放射線検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は従来の放射線検出装置の基本的な構成図である。放射線検出器10の出力は,前置増幅器12で増幅されて観測電圧Vobsとなり,比較器14の観測電圧入力端子に入力される。制御装置16で作られるデジタル信号の参照指令値は,DA変換器17でアナログ信号の参照電圧Vrefに変換されて,比較器14の参照電圧入力端子に入力される。比較器14では,観測電圧Vobsと参照電圧Vrefが比較され,前者が後者よりも大きいときは,信号「1」が出力され,そうでないときは信号「0」が出力される。そして,比較器14の出力信号(パルス信号)の立ち上がりまたは立ち下がりの回数が計数回路18でカウントされて,これが読出回路20で読み出される。
【0003】
このような放射線検出装置において,その異常を認識する従来技術としては,例えば,次の特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2004−239783号公報
【0004】
この特許文献1は,本件出願に関連する内容として,次の点を開示している。(1)多重波高分析器を用いて波高値スペクトルを測定できる。(2)放射線検出器に光パルスを照射することで,被測定放射線が無い状態で,バックグラウンド信号(ノイズ信号)の波高値スペクトルを測定できる。(3)初期状態でバックグラウンド信号の波高値スペクトルを測定しておき,一方,定期的にバックグラウンド信号の波高値スペクトルを測定して,両者のスペクトルの違いから,半導体センサの劣化や半導体検出器用電源の劣化を認識できる(特許文献1の図5のグラフ)。
【0005】
また,放射線検出装置において,回路にオフセットがある場合には,そのオフセット値を測定して,オフセットを補正する必要があるが,回路のオフセット値を測定するには,通常は,何らかの外部基準信号を利用することになる。これに対して,外部信号を使わずに,比較器の観測電圧入力端子に前置増幅器のノイズ信号を入力することで,回路のオフセットを求める手法が,特許文献2に開示されている。
【特許文献2】特開平10−197643号公報
【0006】
この特許文献2は,本件出願に関連する内容として,次の点を開示している。(1)放射線検出器の比較器の参照電圧入力端子には,連続的に変化する参照電圧(特許文献2ではディスクリ電圧と称している)を入力し,観測電圧入力端子には前置増幅器から出力されるノイズ信号を入力して,ノイズ信号の波高値が参照電圧を超える回数をカウントして,参照電圧の変化に対するカウント数の分布を求めている(特許文献2の図1の回路)。これにより,参照電圧に対するノイズ信号の計数値分布を知ることができる。(2)別の手法として,前置増幅器から出力されるノイズ信号について,ピーク値検出回路で波高値(ピーク値)を検出している(特許文献2の図6の回路)。これにより,波高値に対する計数値分布を知ることができる。(3)波高値に対する計数値分布について,その極大点のところでの参照電圧と,参照電圧の基準レベルとの差分を,回路のオフセット情報と認識している(特許文献2の図16のグラフ)。(4)放射線の検出を行っていないときに,特許文献2の図1の回路を用いて,ノイズ信号について参照電圧の変化に対するカウント数の分布を求めて,オフセット情報を認識できる(特許文献2の明細書の段落0127〜0129)。(5)認識したオフセット情報を内部パラメータの一要素として利用することができる(特許文献2の明細書の段落0113)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術を用いると,バックグラウンド信号(ノイズ信号)の波高値スペクトルを定期的に測定することで,放射線検出器の異常を診断することができる。この場合,時間をおいて測定した複数の波高値スペクトルを互いに比較することで異常の診断をすることはできるが,瞬間的に異常の有無を診断することはできない。また,特許文献2の技術を用いると,外部信号を用いることなく,前置増幅器から出力されるノイズ信号の計数値分布を測定するだけで,回路のオフセット値を求めることができる。しかし,ノイズ信号の計数値分布を用いて,回路の異常を診断することには触れていない。さらに,特許文献1及び特許文献2は,二つの比較回路及び二つの計数回路を用いた波高分析機能を有する放射線検出装置についてのオフセット補正及び異常診断技術についての工夫については,何も触れていない。
【0008】
そこで,本発明の目的は,ノイズ信号の計数値分布に基づいて異常診断ができる放射線検出装置を提供することにある。本発明の別の目的は,オフセット値の取得,オフセット補正,及び,異常の診断を,ノイズ信号の計数値分布を用いて短時間に完結させることのできる放射線検出装置を提供することにある。本発明のさらに別の目的は,二つの比較回路及び二つの計数回路を用いた波高分析機能を有する場合において,二つの計数系でのオフセット値の取得及びオフセット補正と,それらに基づいた異常の診断とを可能にした放射線検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の放射線検出装置は,ノイズ信号の計数値分布に基づいて異常判定をするものであり,次の(ア)乃至(コ)の構成を備えている。(ア)入射した放射線の強度に応じた出力信号を出力する放射線検出器。(イ)前記放射線検出器の出力信号を増幅してアナログ信号の観測電圧を出力する増幅器。(ウ)デジタル信号の参照指令値をアナログ信号の参照電圧に変換するDA変換器。(エ)前記観測電圧と前記参照電圧を比較して,その比較結果に応じて2値信号の比較出力を出力する比較器。(オ)前記比較出力の立ち上がりまたは立ち下がりの回数を計数して計数値を出力する計数回路。(カ)前記参照指令値を所定の時間間隔及び所定の変化量で変化させる参照指令値スキャン手段。(キ)前記放射線検出器に放射線が入力されない状態で,前記参照指令値スキャン手段を動作させて,前記参照指令値の変化に対する前記計数値の変化,すなわちノイズ信号の計数値分布(以下,観測曲線という),を取得する観測曲線取得手段。(ク)前記観測曲線の基準となる基準曲線を取得する基準曲線取得手段。(ケ)前記観測曲線が前記基準曲線から離れている程度に基づいて放射線検出器の異常を判定する異常判定手段。(コ)前記異常判定手段で異常と判定したときに,そのことを知らせる報知手段。
【0010】
本発明は,異常判定をする際の観測曲線として,オフセット補正をしたあとの観測曲線を用いることができる。オフセット補正後の観測曲線を取得するには,シフトした基準値をもとに観測曲線を測定し直してもよいし,取得済みの観測曲線を単にシフトするようにしてもよい。また,基準曲線としては正規分布曲線を用いることができる。
【0011】
検出対象の放射線は,X線やガンマ線などの電磁波,または,アルファ線,ベータ線,中性子線,重粒子線などの粒子線である。放射線検出器の形式は特に制限されないが,本発明は,大きな検出強度でも観測可能な(すなわち,放射線の入射頻度が高くても数え落としがほとんど無く高速で動作が可能な)検出器に特に適しており,アバランシェ・フォト・ダイオード(APD)で代表される半導体検出器に適している。本発明は,高周波のノイズ信号を数え落とし無く計数できることが大切であり,そのためには,比較器と計数回路は百万cps以上の高速処理が可能であることが好ましい。ノイズ信号の計数値分布を求めるには,参照指令値をスキャンする必要があるが,ノイズ信号の周波数は,通常,百万Hzをはるかに超えるので,各参照指令値における測定所要時間は比較的短くても十分なカウント数が得られる。例えば,各参照指令値における測定所要時間は10ミリ秒程度で足りる。参照指令値を100ステップにわたって変化させると仮定すると,10ミリ秒×100=1秒程度で参照指令値のスキャンが完了する。したがって,参照指令値スキャン手段の動作時間は,せいぜい10秒もあれば十分である。このように非常に短時間で,ノイズ信号の計数値分布(観測曲線)を得ることができる。
【0012】
本発明の放射線検出装置は,また,二つの比較器と二つの計数回路を備えていて,2種類の波高で弁別をして放射線を検出できるような放射線検出装置に関係している。そのような放射線検出装置において,ノイズ信号の計数値分布をオフセット補正してから,二つの計数値分布を重ね合わせて表示することに特徴があり,次の(ア)乃至(セ)の構成を備えている。(ア)入射した放射線の強度に応じた出力信号を出力する放射線検出器。(イ)前記放射線検出器の出力信号を増幅してアナログ信号の観測電圧を出力する増幅器。(ウ)デジタル信号の第1の参照指令値をアナログ信号の第1の参照電圧に変換する第1のDA変換器。(エ)デジタル信号の第2の参照指令値をアナログ信号の第2の参照電圧に変換する第2のDA変換器。(オ)前記観測電圧と前記第1の参照電圧を比較して,その比較結果に応じて2値信号の第1の比較出力を出力する第1の比較器。(カ)前記観測電圧と前記第2の参照電圧を比較して,その比較結果に応じて2値信号の第2の比較出力を出力する第2の比較器。(キ)前記第1の比較出力の立ち上がりまたは立ち下がりの回数を計数して第1の計数値を出力する第1の計数回路。(ク)前記第2の比較出力の立ち上がりまたは立ち下がりの回数を計数して第2の計数値を出力する第2の計数回路。(ケ)前記第1の参照指令値と前記第2の参照指令値を所定の時間間隔及び所定の変化量で変化させる参照指令値スキャン手段。(コ)前記放射線検出器に放射線が入力されない状態で,前記参照指令値スキャン手段を動作させて,前記第1の参照指令値の変化に対する前記第1の計数値の変化,すなわちノイズ信号の第1の計数値分布(以下,第1の観測曲線という)と,前記第2の参照指令値の変化に対する前記第2の計数値の変化,すなわちノイズ信号の第2の計数値分布(以下,第2の観測曲線という),を取得する観測曲線取得手段。(サ)前記第1の参照指令値の基準値と,前記第1の観測曲線の中心となる参照指令値の中心値との差を求めて,これを第1のオフセット値として記録するとともに,前記第2の参照指令値の基準値と,前記第2の観測曲線の中心となる参照指令値の中心値との差を求めて,これを第2のオフセット値として記録するオフセット値記録手段。(シ)前記第1の参照指令値の基準値を前記第1のオフセット値だけシフトして,これを前記第1の参照指令値の新たな基準値とするとともに,前記第2の参照指令値の基準値を前記第2のオフセット値だけシフトして,これを前記第2の参照指令値の新たな基準値とする基準値補正手段。(ス)前記第1のオフセット値と前記第2のオフセット値に基づいて,オフセット補正後の前記第1の観測曲線及びオフセット補正後の前記第2の観測曲線を取得する補正分布取得手段。(セ)オフセット補正後の前記第1の観測曲線とオフセット補正後の前記第2の観測曲線を共通の座標軸上に重ね合わせて表示装置に表示する視覚化手段。
【0013】
オフセット補正後の第1の計数値分布と第2の計数値分布を表示装置上で重ね合わせて表示する理由は,オペレータがそれらの計数値分布を見て,放射線検出装置の異常の有無を判断できるようにするためである。その表示に当たっては,オフセット後の新たな基準値に基づいて,再び,参照指令値のスキャン動作をして計数値分布を求めてから表示してもよいし,オフセット補正前の計数値分布を単純にシフトさせて表示してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の放射線検出装置は、ノイズ信号の計数値分布を用いて異常診断を短時間に完結させることができる。また,二つの比較回路及び二つの計数回路を用いた波高分析機能を有する場合において,二つの計数系でのオフセット値の取得及びオフセット補正と,それらに基づいた異常の診断とが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下,図面を参照して本発明の実施例を詳しく説明する。図1は,本発明の放射線検出装置の一実施例の基本的な回路構成を示した構成図である。この放射線検出装置は,二つの比較器と二つの計数回路を備えていて,二つの波高値での波高弁別機能を備えている。放射線検出器22の出力信号は前置増幅器24に送られて,アナログ信号の観測電圧Vobsに変換される。この観測電圧Vobsは,分岐回路26で二つに分岐されて,第1の比較器28の観測電圧入力端子と,第2の比較器30の観測電圧入力端子に送られる。第1の比較器28及び第2の比較器30の観測電圧入力端子の前段には,実際には主増幅器が接続されているが,ここでは主増幅器の図示を省略している。
【0016】
制御装置32からは,デジタル信号の第1の参照指令値Dref1と第2の参照指令値Dref2が出力される。第1の参照指令値Dref1は,第1のDA変換器34(図面では,DA変換器1と略称している)でアナログ信号の第1の参照電圧Vref1に変換され,これが第1の比較器28の参照電圧入力端子に入力される。第2の参照指令値Dref2は,第2のDA変換器36(図面では,DA変換器2と略称している)でアナログ信号の第2の参照電圧Vref2に変換され,これが第2の比較器30の参照電圧入力端子に入力される。
【0017】
第1の比較器28は,観測電圧Vobsと第1の参照電圧Vref1を比較して,前者が後者より大きいときは,信号「1」を出力する。そうでないときは信号「0」を出力する。したがって,第1の比較器28の出力(第1の比較出力)は,2値信号のパルス信号となる。第1の比較出力は第1の計数回路38(図面では,計数回路1と略称している)でカウントされる。すなわち,第1の比較出力の立ち上がりまたは立ち下がりの回数(パルス信号の個数)がカウントされる。
【0018】
第2の比較器30は,観測電圧Vobsと第2の参照電圧Vref2を比較して,前者が後者より大きいときは,信号「1」を出力する。そうでないときは信号「0」を出力する。したがって,第1の比較器30の出力(第2の比較出力)は,2値信号のパルス信号となる。第2の比較出力は第2の計数回路40(図面では,計数回路2と略称している)でカウントされる。すなわち,第2の比較出力の立ち上がりまたは立ち下がりの回数(パルス信号の個数)がカウントされる。
【0019】
次に,この放射線検出装置の動作を説明する。まず,放射線検出器22で放射線を検出するときの通常の動作を説明する。第1の参照指令値Dref1は,検出をしたい放射線エネルギー・ウインドウの下限の参照電圧に相当するデジタル値に設定する。第2の参照指令値Dref2は,検出をしたい放射線エネルギー・ウインドウの上限の参照電圧に相当するデジタル値に設定する。この条件で,第1の計数回路38の出力(計数値N1,単位はcps)と,第2の計数回路40の出力(計数値N2,単位はcps)をメモリ42に記録する。メモリ42に記録された二つの計数値N1,N2は,読出回路44によってその差分「N=N1−N2」が読み出される。この値Nが,所望のエネルギー・ウインドウの範囲内にある放射線の強度となる。
【0020】
次に,オフセット補正及び異常診断の動作を説明する。オフセット補正及び異常診断をするときは,オペレータが,放射線検出装置のコントロールパネル上の補正・診断ボタンを押す。このとき,放射線検出器22には放射線が入力されない状態にあり,前置増幅器24から出力されるものはノイズ信号だけである。このノイズ信号が観測電圧Vobsとなり,これが分岐回路26を経て,二つの比較器28,30の観測電圧入力端子に入力される。比較器28,30では,ノイズ信号46からなる観測電圧と,後述するスキャン参照電圧48が比較される。その比較の様子を図2のグラフに示す。
【0021】
図2のグラフは,ノイズ信号からなる観測信号Vobsを実線で示している。一方,参照電圧の例としては,水平に延びる破線で,二つの参照電圧Vi,Vjを示している。横軸は時間の経過を示しており,縦軸は電圧の値である。ノイズ信号は,例えば,±Vaの範囲内でランダムに発生しており,その振動周波数は,百万Hzをはるかに超える高い周波数帯域にある。電圧の基準値(ゼロボルト)に近い参照電圧Viを用いてノイズ信号を観測すると,比較器の出力のパルス数は多くなり,電圧の基準値(ゼロボルト)から遠い参照電圧Vjを用いてノイズ信号を観測すると,比較器の出力のパルス数は少なくなる。
【0022】
図4のグラフは,図2のグラフの一部(基準値よりもプラス側の部分だけ)を拡大して示したものであり,かつ,比較器のパルス出力も示している。参照電圧Viでノイズ信号を観測すると,比較器の出力は,(a)に示すようなパルス出力となる。参照電圧Viよりもノイズ信号が大きいところでは,信号「1」が出力され,そうでないところは信号「0」が出力される。このパルス出力は,例えば,その立ち上がりだけを検出すると,(b)のようなパルス信号になる。このパルス信号を計数回路でカウントする。
【0023】
参照電圧Viよりも大きな参照信号Vjでノイズ信号を観測すると,比較器の出力は,(c)に示すようなパルス出力となり,その立ち上がりだけを検出すると,(d)のようなパルス信号になる。このパルス信号を計数回路でカウントする。(d)のパルス信号の回数は,(b)のパルス信号の回数よりも少なくなる。
【0024】
図3はスキャン参照電圧48のグラフである。横軸は時間,縦軸は参照電圧の値である。このスキャン参照電圧48は,所定の時間間隔及び所定の変化量で変化する。例えば,時間間隔Δtは10ミリ秒であり,変化量ΔVは0.5mVである。このスキャン参照電圧48は,±25mVの範囲内で,0.5mV刻みで101ステップにわたって,階段状に変化する。したがって,V1からVnまで,101種類の参照電圧が,順番に,比較器28,30に入力される。その所要時間は,10ミリ秒×101回=1.01秒である。すなわち,きわめて短時間で参照電圧のスキャン動作が完了する。
【0025】
次に,参照電圧のスキャン動作において,デジタル信号の参照指令値Drefとアナログ信号の参照電圧Vrefとの関係を説明する。参照指令値Drefは,このグラフの例では,マイナス50からプラス50まで,10ミリ秒の時間間隔で,ひとつずつ変化する。この参照指令値Drefが,DA変換器によって,図3のグラフに示すようなスキャン参照電圧に変換される。オフセット補正・異常診断の最初の段階では,図1の二つのDA変換器34,36に,全く同一のスキャン参照指令値Dref1,Dref2が入力される。それらは,それぞれDA変換器34,36で変換されて二つのスキャン参照電圧Vref1,Vref2になる。ただし,これらは必ずしも同じにはならない。その理由は,二つのDA変換機34,36が,それぞれ固有のオフセットをもっているからである。
【0026】
図5はノイズ信号の計数値分布のグラフである。横軸はデジタル信号の参照指令値Drefである。縦軸は計数回路で得られるカウント数で,単位はcps(1秒当たりのカウント数)である。実線の曲線50は,第1の比較器28と第1の計数回路38を用いて測定した,ノイズ信号の計数値分布曲線(観測曲線)である。これが第1の計数値分布50(第1の観測曲線)である。一方,破線の曲線52は,第2の比較器30と第2の計数回路40を用いて測定した,ノイズ信号の計数値分布曲線である。これが第2の計数値分布52(第2の観測曲線)である。このとき,二つの比較器28,30には同一の観測電圧(ノイズ信号からなる)が入力されている。また,二つの比較器28,30には,同一のスキャン参照指令値Drefから作られたスキャン参照電圧Vref1,Vref2が入力されている。ノイズ信号の計数値分布の最大値は約8百万cpsに達しており,ノイズ信号がきわめて高周波であることが分かる。この場合,それぞれの参照指令値について,10ミリ秒という短時間でノイズ信号を計数しても,そのカウント数は,8百万cps×0.01秒=8万個にも達するので,十分な測定精度が得られる。なお,このグラフを得るに当たっては,大きなオフセットを予想して,デジタル信号の参照指令値は,マイナス100からプラス100の間で(参照電圧としては全体で100mVの範囲内で)変化させている。図5のグラフは,そのうちのマイナス80からプラス80の範囲を示している。
【0027】
第1の計数値分布50の中心は,参照指令値Drefの基準値(零点)に対して,第1のオフセット値Doff1だけずれている。また,第2の計数値分布52の中心は,参照指令値Drefの基準値(零点)に対して,第2のオフセット値Doff2だけずれている。計数値分布50,52の中心位置は,後述する制御装置によって自動的に決定されるが,その決定手法としては何種類か考えられる。第1の手法は,計数値分布が極大となる位置を中心位置と定めるものである。また,第2の手法は,計数値分布の積分中心を中心位置と定めるものである。すなわち,中心位置の左側の分布面積と右側の分布面積が等しくなるように中心位置を定めるものである。さらに,第3の手法は,計数値分布の半価幅の中心を中心位置と定めるものである。実際のところ,ノイズの計数値分布はほぼ左右対称となるので,放射線検出器が正常に動作する限り,上述のどの手法を採用しても,得られる中心位置はほぼ同じになる。ただし,放射線検出器に異常があると,手法に応じて計数値分布の中心位置は異なることになる。何らかの異常によりノイズ信号の計数値分布がいびつな形状になることを想定すると,第2の手法に基づいて計数値分布の中心位置を決定することが好ましい。
【0028】
オフセットが生じる主要な要因としては,DA変換器のオフセットや比較器自身のオフセットが考えられるが,いずれにしても,デジタル信号の参照指令値を出力する端子から計数値回路の出力端子までの回路系の全体のオフセットが,上述のようにノイズ信号の計数値分布のオフセットとして現れていると考えることができる。
【0029】
上述のようにして二つのオフセット値が定まったら,これを不揮発性メモリに記憶する。そして,第1の参照指令値Dref1については,その基準値を第1のオフセットDoff1のところにシフトする。すなわち,Doff1の位置を,新たな基準値(零点)と定める。同様に,第2の参照指令値Dref2については,その基準値を第2のオフセットDoff2のところにシフトする。すなわち,Doff2の位置を,新たな基準値(零点)と定める。
【0030】
次に,新たな基準値に基づいて,再び,参照指令値のスキャン動作を実行して,第1の計数値分布(第1の観測曲線)と第2の計数値分布(第2の観測曲線)を取得する。図6は,そのようにして得られた,オフセット補正後の計数値分布のグラフである。実線で示す第1の計数値分布50と,破線で示す第2の係数値分布52は,それらの中心位置が基準値の位置に重なっている。したがって,二つの参照指令値の基準として,それぞれ新たな基準値を用いる限り,第1チャンネル(第1の比較器と第1の計数回路を通る経路)と第2チャンネル(第2の比較器と第2の計数回路を通る経路)の特性は,オフセットに関しては同じになる。
【0031】
この補正後の計数値分布を表示装置54(図1を参照)に表示することで,オフセットが解消されていることを,オペレータが確認することができる。オペレータの確認用に,補正後の計数値分布を表示装置54に表示するに当たっては,新たな基準値に基づいて,再び,参照指令値をスキャンして計数値分布を取得しなくても,簡略的に,図5に示す計数値分布をオフセット値分だけシフトして重ね合わせるだけでも足りる。
【0032】
図6のグラフは,オフセット後の二つの計数値分布が,ほぼガウス分布に類似するきれいな曲線を描いており,これをオペレータが見ることで,放射線検出装置の検出回路が正常に機能していることを確認できる。
【0033】
図7のグラフは,オフセット補正後の二つの計数値分布を示す別の例である。このグラフでは,実線で示す第1の計数値分布50はきれいなガウス分布に類似の曲線を描いているが,破線で示す第2の計数値分布52は,いびつな形をしている。ノイズ信号の計数値分布は,本来は,ガウス分布に類似する曲線となるので,第2チャンネルについては,その回路系に何らかの異常があることが分かる。オペレータは,この図7のグラフを表示装置54上で見ることで,第2チャンネルの異常を確認できる。このグラフに見るような第2の計数値分布52の異常は,採用した回路部品や回路パターンが不適切であることに起因しており,放射線検出装置の製造段階で発見できる性質のものである。
【0034】
図8のグラフは,オフセット補正後の二つの計数値分布を示すさらに別の例である。このグラフでは,実線で示す第1の計数値分布50も,破線で示す第2の係数値分布52も,いびつな形状をしている。特に,計数値分布の中央付近が極端に減少している。これは,計数値が大きいころで,回路の高周波動作に電流の供給が追いつかなくなっていることを意味している。このような異常は,例えば,回路に使用している電解コンデンサが寿命になると生じる。
【0035】
次に,異常診断を放射線検出装置が自動的に実施する方法を説明する。図10は異常診断のための第1の手法を説明する計数値分布のグラフである。基準曲線56は正常な計数値分布を示している。この基準曲線56は,診断の対象となる放射線検出装置と同じ型の放射線検出装置について,正常な動作が確認されているもので,あらかじめ,ノイズ信号の計数値分布を求めたものである。この基準曲線56のデータは,各参照電圧に対するカウント数のデータとして,不揮発性メモリに記憶されている。
【0036】
基準曲線56が正常であることについては,例えば,次のような作業で確認できる。計数値分布のピーク値(最大値)は,放射線検出器から計数回路に至る回路構成の動作周波数帯域の最高値(これは,使用している回路素子等に応じて定まる)に依存する。例えば,動作周波数帯域の最高値が500MHzの回路構成では,ノイズ信号の計数値分布のピーク値は,500Mcps(1秒間当たり500メガ・カウント)付近にあることが予想される。したがって,基準曲線56のピーク値が500Mcps付近にあれば,基準曲線56が正常であることが確認できる。また,正常な放射線検出装置の場合は,ノイズ信号の計数値分布が正規分布になることが予想されるので,基準曲線56が正規分布であれば,基準曲線56が正常であることが確認できる。基準曲線56の中心位置は,参照電圧の零点の位置に一致している。
【0037】
図10において,基準曲線56の上方に上限曲線58が設定され,下方に下限曲線60が設定されている。上限曲線58よりも上方のカウント数の領域62はハッチングで示してあり,カウント数がこの領域にある場合は異常と診断される。下限曲線60よりも下方のカウント数の領域64もハッチングで示してあり,この領域も異常と診断される。上限曲線58は基準曲線56を所定のカウント数だけ上方にシフトしたものであり,下限曲線60は基準曲線56を所定のカウント数だけ下方にシフトしたものである。上下のシフト量を決めるには,例えば,正常な放射線検出装置についてノイズ信号の計数値分布のグラフをいくつか取得して,正常な計数値分布同士のばらつきを考慮することで,実験的に定めることができる。例えば,30〜50%のシフト量を上下にもたせることができる。上限曲線58と下限曲線60のデータも,各参照電圧に対するカウント数のデータとして,不揮発性メモリに記憶される。
【0038】
観測曲線66は,診断の対象となる放射線検出装置についてのノイズ信号の計数値分布の一例を示すものである。この観測曲線66のデータとしては,オフセット補正をしたあとの計数値分布を使用する。この観測曲線66の全体が上限曲線58と下限曲線60の間に入っていれば,この観測曲線66は正常と判定される。逆に,観測曲線66のどこかが,領域62,64のいずれかに入り込んでいれば,この観測曲線66は異常と判定される。コンピュータの内部での診断動作では,各参照電圧について,観測曲線66のデータが,上限曲線58と下限曲線60の間に存在しているかどうかを判断している。図10の例では,観測曲線66一部が,上限曲線58よりも上方の領域62に入り込んでいるので,コンピュータにより異常と判定される。
【0039】
異常と判定された場合は,その旨をオペレータに知らせる。報知手段としては,表示画面上に「異常」の文字を表示させる方法や,異常ランプを点灯させる方法,警報ブザーを鳴らす方法,などの各種の手段を採用することができる。
【0040】
図11は異常診断のための第2の手法を説明する計数値分布のグラフである。基準曲線56は図10で説明したのと同じものである。この第2の手法では,基準曲線56のデータのうち,ピーク値を示す参照電圧(すなわちゼロ)と,ピーク値の半分のカウント数のところの上下二つの参照電圧Vb,Vcと,カウント数がほぼゼロまで減少する上下二つの参照電圧Vd,Veの,五つの参照電圧だけを用いて,異常判定をしている。これらの五つの参照電圧について,基準曲線56のデータ(黒丸で示す)に対する許容範囲を設定する。例えば,参照電圧Vbにおける基準曲線56のデータ68に対して,許容範囲70を設定する。この許容範囲70の上限値と下限値は,データ68を所定のカウント数だけ上方及び下方にシフトしたものである。観測曲線66について異常を診断するには,上述の五つの参照電圧について,観測曲線66のデータ(白丸で示す)が許容範囲に入っているかどうかを判定する。図11の例では,参照電圧Veのところで,観測曲線66のデータ72が許容範囲74から外れているので,異常と判定される。また,基準曲線56から離れたところでの参照電圧,すなわち,参照電圧Vd,Veよりも外側の参照電圧Vf,Vgのところでも,異常判定をするようにしてもよい。その場合は,参照電圧Vd,Veにおける許容範囲74と同程度の許容範囲を用いる。基準曲線56からかなり離れたところにおいて許容範囲74を外れるようなカウント数が出現したとすれば,明らかに異常であることが判明する。
【0041】
図12は異常診断のための第3の手法を説明する計数値分布のグラフである。基準曲線56は図10で説明したものと同じものである。この第3の手法では,基準曲線56のデータのうち,カウント数のピーク値76のところで,参照電圧の許容範囲78を設定し,また,ピーク値76の半分の値の2箇所80,82のところで,それぞれ,参照電圧の許容範囲84,86を設定している。観測曲線66について異常を診断するには,観測曲線66について,そのピーク値Npeakを示す箇所88における参照電圧が,許容範囲78に入っているかどうかを判定し,さらに,その半分の値Npeak/2を示す2箇所90,92における参照電圧が,許容範囲84,86に入っているかどうかを判定する。図12の例では,Npeak/2を示す一方の箇所90における参照電圧の値が,許容範囲84からわずかに外れており,異常と判定される。
【0042】
図13は異常診断のための第4の手法を説明する計数値分布のグラフである。この手法では,あらかじめ基準曲線を作らずに,観測曲線66に基づいて基準曲線94を作ることに特徴がある。オフセット補正が済んだ観測曲線66は,そのピーク値の箇所96における参照電圧は,ほぼゼロの位置にある(カウント数のピーク値のところを計数値分布の中心位置と定義すれば,ピーク値における参照電圧の値は正確にゼロである)。このピーク値Npeakの箇所96を基準にして,ここを頂点とする正規分布の曲線を描き,これを基準曲線94とする。正規分布の曲線を描くには,分散の値を定める必要があるが,この分散の値については,診断の対象となる放射線検出装置と同じ型の正常な放射線検出装置について,あらかじめ,ノイズ信号の計数値分布を求めて,適切な分散の値を定めておくことができる。その値は不揮発性メモリに記憶しておく。
【0043】
観測曲線66に基づいて基準曲線94を求めたら,この基準曲線94のピーク値Npeakの半分のカウント数となる箇所98,100における参照電圧Vb,Vcを求める。そして,それらの参照電圧のところで,カウント数の許容範囲102,104を設定する。この許容範囲の上限値と下限値は,箇所98,100でのカウント数について,これを所定のカウント数だけ上方及び下方にシフトしたものである。観測曲線66について異常を診断するには,上述の二つの参照電圧Vb,Vcについて,観測曲線66のデータ(白丸で示す)が許容範囲に入っているかどうかを判定する。図13の例では,参照電圧Vbのところで,観測曲線66のデータ106が許容範囲102から外れているので,異常と判定される。
【0044】
図14は異常診断のための第5の手法を説明する計数値分布のグラフである。この手法でも,図13の場合と同様に,あらかじめ基準曲線を作らずに,観測曲線66に基づいて基準曲線94を作っている。その作り方は,図13の場合と同じである。観測曲線66に基づいて基準曲線94を求めたら,この基準曲線94のピーク値Npeakの半分のカウント数Npeak/2となる箇所98,100において,参照電圧の許容範囲106,108を設定する。この許容範囲の上限値と下限値は,箇所98,100の参照電圧を,所定の電圧値だけ右方向び左方向にシフトしたものである。観測曲線66について異常を診断するには,カウント数がNpeak/2のところでの観測曲線66の参照電圧の値(白丸で示す)が許容範囲106,108に入っているかどうかを判定する。図14の例では,観測曲線66のデータ110が許容範囲106から外れているので,異常と判定される。
【0045】
上述の五つの手法については,これらを単独で用いてもよいし,あるいは,それらの2種類以上を組み合わせてもよい。2種類以上を組み合わせる場合は,どれか一つの手法で異常と判定された場合には,異常と判定する。
【0046】
ところで,基準曲線に対して極端にかけ離れた観測曲線が得られたときは,異常診断の前に,オペレータに何らかの点検を促すようにしてもよい。例えば,図11のグラフにおいて,基準曲線56に対して,観測曲線112のような極端に小さなものが得られた場合には,前置増幅器からのノイズ信号が計数値回路に入って来ていないことが考えられる。その理由としては,前置増幅器と計数値回路の間で接続不良であることが考えられる。このような場合は,ノイズ信号の計数値分布の異常を判定するよりも,配線の接続状況を点検することの方が大事なので,オペレータに対して,表示画面に「接続不良」などの表示をして,配線の接続状況の点検を促すようにしてもよい。
【0047】
図15は正常な放射線検出装置についてのノイズ信号の計数値分布の実測値のグラフである。図15のグラフにおいて,横軸は参照電圧であり,縦軸はカウント数である。黒丸は,0.5mV刻みの参照電圧のところでカウント数を実測したものである。一方,実線は,実測値を正規分布曲線でフィッティングしたものである。正規分布曲線の数式は図15の(1)式で表すことができる。xとyが変数であり,この曲線をグラフに表すときは,グラフの横軸をx,縦軸をyとする。(1)式中のa,a,a,aは正規分布曲線の形を決める定数である。この正規分布曲線ができるだけ実測値に一致するように,a,a,a,aの値を求めると,変数xを参照電圧(単位はmV)とし,変数yをカウント数で表した場合には,図15の式(1)の下方に示してあるような数値結果となる。図15のグラフを見ると,実測値は正規分布曲線によってきわめて良好にフィッティングされている。したがって,放射線検出装置が正常なときのノイズ信号の計数値分布は正規分布となることが確認できた。ゆえに,上述の異常診断において,基準曲線としては正規分布曲線を使うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の放射線検出装置の一実施例の基本的な回路構成を示した構成図である。
【図2】ノイズ信号からなる観測信号と参照電圧レベルを示すグラフである。
【図3】スキャン参照電圧のグラフである。
【図4】図2のグラフの一部を拡大した拡大図である。
【図5】ノイズ信号の計数値分布のグラフである。
【図6】オフセット補正後の計数値分布のグラフである。
【図7】オフセット補正後の二つの計数値分布を示す別のグラフである。
【図8】オフセット補正後の二つの計数値分布を示すさらに別のグラフである。
【図9】従来の放射線検出装置の基本的な構成図である。
【図10】異常診断のための第1の手法を説明する計数値分布のグラフである。
【図11】異常診断のための第2の手法を説明する計数値分布のグラフである。
【図12】異常診断のための第3の手法を説明する計数値分布のグラフである。
【図13】異常診断のための第4の手法を説明する計数値分布のグラフである。
【図14】異常診断のための第5の手法を説明する計数値分布のグラフである。
【図15】正常な放射線検出装置についてのノイズ信号の計数値分布の実測値のグラフである。
【符号の説明】
【0049】
22 放射線検出器
24 前置増幅器
26 分岐回路
28 第1の比較器
30 第2の比較器
32 制御装置
34 第1のDA変換器
36 第2のDA変換器
38 第1の計数回路
40 第2の計数回路
42 メモリ
44 読出回路
46 ノイズ信号
48 スキャン参照電圧
50 第1の計数値分布(第1の観測曲線)
52 第2の計数値分布(第2の観測曲線)
54 表示装置
56 基準曲線
58 上限曲線
60 下限曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構成を備える放射線検出装置。
(ア)入射した放射線の強度に応じた出力信号を出力する放射線検出器。
(イ)前記放射線検出器の出力信号を増幅してアナログ信号の観測電圧を出力する増幅器。
(ウ)デジタル信号の参照指令値をアナログ信号の参照電圧に変換するDA変換器。
(エ)前記観測電圧と前記参照電圧を比較して,その比較結果に応じて2値信号の比較出力を出力する比較器。
(オ)前記比較出力の立ち上がりまたは立ち下がりの回数を計数して計数値を出力する計数回路。
(カ)前記参照指令値を所定の時間間隔及び所定の変化量で変化させる参照指令値スキャン手段。
(キ)前記放射線検出器に放射線が入力されない状態で,前記参照指令値スキャン手段を動作させて,前記参照指令値の変化に対する前記計数値の変化,すなわちノイズ信号の計数値分布(以下,観測曲線という),を取得する観測曲線取得手段。
(ク)前記観測曲線の基準となる基準曲線を取得する基準曲線取得手段。
(ケ)前記観測曲線が前記基準曲線から離れている程度に基づいて放射線検出器の異常を判定する異常判定手段。
(コ)前記異常判定手段で異常と判定したときに,そのことを知らせる報知手段。
【請求項2】
次の構成を備える放射線検出装置。
(ア)入射した放射線の強度に応じた出力信号を出力する放射線検出器。
(イ)前記放射線検出器の出力信号を増幅してアナログ信号の観測電圧を出力する増幅器。
(ウ)デジタル信号の参照指令値をアナログ信号の参照電圧に変換するDA変換器。
(エ)前記観測電圧と前記参照電圧を比較して,その比較結果に応じて2値信号の比較出力を出力する比較器。
(オ)前記比較出力の立ち上がりまたは立ち下がりの回数を計数して計数値を出力する計数回路。
(カ)前記参照指令値を所定の時間間隔及び所定の変化量で変化させる参照指令値スキャン手段。
(キ)前記放射線検出器に放射線が入力されない状態で,前記参照指令値スキャン手段を動作させて,前記参照指令値の変化に対する前記計数値の変化,すなわちノイズ信号の計数値分布(以下,観測曲線という),を取得する観測曲線取得手段。
(ク)前記参照指令値の基準値と,前記観測曲線の中心となる参照指令値の中心値との差を求めて,これをオフセット値として記録するオフセット値記録手段。
(ケ)前記参照指令値の基準値を前記オフセット値だけシフトして,これを前記参照指令値の新たな基準値とする基準値補正手段。
(コ)前記オフセット値に基づいて,オフセット補正後の前記観測曲線を取得する補正分布取得手段。
(サ)前記観測曲線の基準となる基準曲線を取得する基準曲線取得手段。
(シ)オフセット補正後の前記観測曲線について,その観測曲線が前記基準曲線から離れている程度に基づいて放射線検出器の異常を判定する異常判定手段。
(ス)前記異常判定手段で異常と判定したときに,そのことを知らせる報知手段。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線検出装置において,前記補正分布取得手段は,新たな基準値に基づいた前記参照指令値を用いて,前記観測曲線取得手段を動作させて,オフセット補正後の前記観測曲線を取得することを特徴とする放射線検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の放射線検出装置において,前記補正分布取得手段は,前記観測曲線を前記オフセット値だけシフトさせることで,オフセット補正後の観測曲線を取得することを特徴とする放射線検出装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の放射線検出装置において,前記比較器及び前記計数回路は百万cps以上の高速処理が可能であることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の放射線検出装置において,前記観測曲線を取得するのに要する前記参照指令値スキャン手段の動作時間は10秒以下であることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の放射線検出装置において,前記基準曲線は正規分布曲線であることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項8】
次の構成を備える放射線検出装置。
(ア)入射した放射線の強度に応じた出力信号を出力する放射線検出器。
(イ)前記放射線検出器の出力信号を増幅してアナログ信号の観測電圧を出力する増幅器。
(ウ)デジタル信号の第1の参照指令値をアナログ信号の第1の参照電圧に変換する第1のDA変換器。
(エ)デジタル信号の第2の参照指令値をアナログ信号の第2の参照電圧に変換する第2のDA変換器。
(オ)前記観測電圧と前記第1の参照電圧を比較して,その比較結果に応じて2値信号の第1の比較出力を出力する第1の比較器。
(カ)前記観測電圧と前記第2の参照電圧を比較して,その比較結果に応じて2値信号の第2の比較出力を出力する第2の比較器。
(キ)前記第1の比較出力の立ち上がりまたは立ち下がりの回数を計数して第1の計数値を出力する第1の計数回路。
(ク)前記第2の比較出力の立ち上がりまたは立ち下がりの回数を計数して第2の計数値を出力する第2の計数回路。
(ケ)前記第1の参照指令値と前記第2の参照指令値を所定の時間間隔及び所定の変化量で変化させる参照指令値スキャン手段。
(コ)前記放射線検出器に放射線が入力されない状態で,前記参照指令値スキャン手段を動作させて,前記第1の参照指令値の変化に対する前記第1の計数値の変化,すなわちノイズ信号の第1の計数値分布(以下,第1の観測曲線という)と,前記第2の参照指令値の変化に対する前記第2の計数値の変化,すなわちノイズ信号の第2の計数値分布(以下,第2の観測曲線という),を取得する観測曲線取得手段。
(サ)前記第1の参照指令値の基準値と,前記第1の観測曲線の中心となる参照指令値の中心値との差を求めて,これを第1のオフセット値として記録するとともに,前記第2の参照指令値の基準値と,前記第2の観測曲線の中心となる参照指令値の中心値との差を求めて,これを第2のオフセット値として記録するオフセット値記録手段。
(シ)前記第1の参照指令値の基準値を前記第1のオフセット値だけシフトして,これを前記第1の参照指令値の新たな基準値とするとともに,前記第2の参照指令値の基準値を前記第2のオフセット値だけシフトして,これを前記第2の参照指令値の新たな基準値とする基準値補正手段。
(ス)前記第1のオフセット値と前記第2のオフセット値に基づいて,オフセット補正後の前記第1の観測曲線及びオフセット補正後の前記第2の観測曲線を取得する補正分布取得手段。
(セ)オフセット補正後の前記第1の観測曲線とオフセット補正後の前記第2の観測曲線を共通の座標軸上に重ね合わせて表示装置に表示する視覚化手段。
【請求項9】
請求項8に記載の放射線検出装置において,前記補正分布取得手段は,新たな基準値に基づいた前記第1の参照指令値と,新たな基準値に基づいた前記第2の参照指令値とを用いて,前記観測曲線取得手段を動作させて,オフセット補正後の前記第1の観測曲線及びオフセット補正後の前記第2の観測曲線を取得することを特徴とする放射線検出装置。
【請求項10】
請求項8に記載の放射線検出装置において,前記補正分布取得手段は,前記第1の計数値分布を前記第1のオフセット値だけシフトさせ,前記第2の計数値分布を前記第2のオフセット値だけシフトさせることで,オフセット補正後の第1の観測曲線及びオフセット補正後の第2の観測曲線を取得することを特徴とする放射線検出装置。
【請求項11】
請求項8から10までのいずれか1項に記載の放射線検出装置において,前記第1の比較器,前記第2の比較器,前記第1の計数回路及び前記第2の計数回路は百万cps以上の高速処理が可能であることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項12】
請求項8から11までのいずれか1項に記載の放射線検出装置において,前記第1の観測曲線及び前記第2の観測曲線を取得するのに要する前記参照指令値スキャン手段の動作時間は10秒以下であることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項13】
請求項5または11に記載の放射線検出装置において,前記放射線検出器が半導体検出器であることを特徴とする放射線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−187546(P2007−187546A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5709(P2006−5709)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】