説明

放射線治療装置

【課題】
放射線治療における治療野が移動する場合でも、放射線照射ヘッドに連動して
動作するリアルタイム・イメージャにより、放射線照射ヘッドを邪魔することな
くリアルタイムに治療野の状態をモニタする。
【解決手段】
放射線照射ヘッド10と、X線源77と、センサアレイ78とを具備する放射
線治療装置を用いる。ここで、放射線照射ヘッド10は、患者4の患部5へ治療
用放射線3aを照射する。X線源77は、患者4の患部5に診断用X線3bを照
射する。センサアレイ78は、患者4を透過した診断用X線3bの透過X線を検
出して、診断画像データとして出力する。そして、センサアレイ78及びX線源
77が、放射線照射ヘッド10の移動に連動して動く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置に関し、定位放射線治療に用いる放射線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を用いた癌や腫瘍を治療する放射線治療装置が知られている。定位多軌道で照射する三次元照射放射線治療装置としては、ラジオサージェリ治療装置、リニアック治療装置等が知られている(非特許文献1及び2参照)。
ここで、定位多軌道照射とは、小病巣に対して多方向から放射線を集中的に照射して治療効果を上げると共に、周囲組織の被曝量を最小限に抑える放射線治療法である。原発性良性脳腫瘍、大きさが3cm以下の単発の転移性脳腫瘍、手術操作が難しい頭蓋底転移のような脳内の小病変、あるいは動脈奇形や静脈奇形などの治療にその威力が発揮されている。
【0003】
ラジオサージェリ治療装置は、治療装置に固定された一つ又は複数の放射線照射ユニットから、細い放射線ビームを、特に高い精度で特定の小領域に集中的に照射する。放射線照射ユニットとしては、ガンマ線源やリニアックを用いる。
ラジオサージェリ治療装置では、定位放射線照射用固定具である精密位置決め/患部固定治具を用いて、患者の頭蓋骨等の患部又はその周辺部を機械的に固定する。そして、このフレームを位置決め用の座標基準治具として、X線CT(Computed Tomography)やMRI等を用いて診断画像を取得し、患部の正確な位置及び形状を割り出す。そして、一つ又は複数の放射線照射ユニットと、これをコリメートして空間の小領域に治療用放射線を集中させるコリメート機構から構成される照射装置へ、このフレームのままで患者を機械的に固定する。これにより、上記小領域に照射野を機械的に精密に合わせて、精密な定位照射を行っている。
【0004】
ラジオサージェリ治療装置では、事前に撮影された診断画像に基づいて、治療用の放射線(X線)を照射している。すなわち、患部をリアルタイムで観察する診断用のX線システム(X線発生装置−イメージディテクタ)を備えず、患部をリアルタイムで観察しながら放射線を照射してはいない。
【0005】
リニアック治療装置では、大型のガントリが設置面に対して平行な1軸周りに360度回転することにより、アイソセントリックな照射治療を行っている。これに加えて、治療用ベッドの上下及び水平面内での2次元の移動及び同水平面内での回転を加えることにより、多様な照射が可能となっている。
【0006】
リニアック治療装置では、高速の位置制御はできない。そのため、心鼓動による移動のような高速に移動する治療野へのリアルタイムの追従照射は出来ない。また、照射中の照射野のモニタ手段としては、治療用X線の透過線によるライナックグラフィを用いている。治療用X線は、透過性が強く散乱線も多いため、照射野のリアルタイムモニタ用の画質は高くない。
【0007】
リニアック治療装置では、患部に取り付けたマーカを、診断用のX線システムで追尾し、患部の位置を推定し、推定された位置と照射野とが重なった場合に放射線を照射する方法(動体追跡照射)もある。ここで、診断用のX線システムは、天井に取り付けられた診断用のX線発生装置と、リニアック治療装置の下部に取り付けられたイメージディテクタとで構成される。この方法では、現実の患部の位置をリアルタイムで把握して、現実の患部の位置と照射野とが重なるように追尾しながら放射線を照射する、ということはしていない。
X線発生装置は、天井に固定されているため、イメージディテクタとの距離が大きい。また、リニアック治療装置本体の回転により、イメージディテクタが本体の影に入り、X線発生装置からの診断用のX線がイメージディテクタに届かない場合がある。それに備えて、X線発生装置を多目に天井に取り付け、使用可能な2台をその中から選択して使用している。更に、イメージディテクタは、透過ビーム(被検体を透過した治療ビーム)や散乱ビーム(被検体に散乱された治療ビーム)の向かう領域内に設置されている。
【0008】
関連する技術として、特表平6−502330号公報(国際出願番号:PCT/US91/07696)及び特表平8−504347号公報(国際出願番号:PCT/US93/11872)に、定位固定外科用装置及び方法が開示されている。
【0009】
この定位固定外科用装置(特許文献1及び2参照)の一つは、電子リニアックをアイソセントリックに駆動する装置であり、産業用の汎用ロボットアームの先端に電子リニアックを備えている。この装置は、6自由度ロボットアームの自在な移動能力により、本質的にノンアイソセントリックな照射治療が可能である。
患部の正確な形状や位置は、事前に、X線CTやMRI等により、頭蓋骨や胸部といったランドマーク的な体組織や患部付近に埋め込んだマーカ(例示:患部に埋め込んだ小型の金プレート)に関連付けて割り出す。そして、定位固定外科用装置は、治療照射時に、異なる目視線を持つ2台の診断用のX線システムにより、ランドマークの動きを監視して照準を補正しつつ、治療ビームの精密な照射を行う。照準の補正時間に1〜2秒、照射時間に0.5秒〜1秒かけている。
【0010】
この2台の診断用のX線システムのうち、X線発生装置は、天井にしっかり固定されている。透過X線を受光するイメージレシーバ(イメージディテクタ)は、ベッドの下部に配設されている。すなわち、X線発生装置は、イメージディテクタとの距離が大きい。また、リニアック治療装置本体の回転により、イメージディテクタが本体の影に入り、X線発生装置からの診断用のX線がイメージディテクタに届かない場合がある。一方、イメージレシーバは、治療ビームの照射装置とはベッドを挟んで反対側にある。すなわち、イメージレシーバは、透過ビーム(被検体を透過した治療ビーム)や散乱ビーム(被検体に散乱された治療ビーム)の向かう領域内に設置されている。
【0011】
上記定位固定外科用装置(特許文献1及び2参照)の他の一つは、電子リニアックをガントリに沿って駆動する装置であり、ガントリに2台の診断用のX線システム(X線発生装置−イメージレシーバ)と、電子リニアックとを備えている。電子リニアックを、水平方向の1軸のまわりだけでなく、鉛直方向の1軸のまわりに回転させることにより、3次元的な照射を行うことが出来る。ただし、照射方式は、アイソセントリックである。
この定位固定外科用装置においても、患部の正確な形状や位置は、事前に、X線CT等により、ランドマーク的な体組織や患部付近に埋め込んだマーカに関連付けて割り出す。そして、治療照射時に、異なる目視線を持つ2台の診断用のX線システムにより、ランドマークの動きを監視して照準を補正しつつ、治療ビームの精密な照射を行う。照準の補正時間に1〜2秒、照射時間に0.5秒〜1秒かけている。
【0012】
この2台の診断用のX線システムは、電子リニアックが設置されているガントリに設置されている。同様に、X線発生装置は、電子リニアック側のガントリに、電子リニアックから離れて設置されている。また、イメージレシーバは、被検体を挟んでX線発生装置と反対側のガントリに設置されている。すなわち、イメージレシーバは、透過ビーム(被検体を透過した治療ビーム)や散乱ビーム(被検体に散乱された治療ビーム)の向かう領域内に設置されている。
【0013】
一般に、患者の患部は、治療中にも動いている。特に、頚部から下では、呼吸や心鼓動、蠕動や膀胱内の尿量等、臓器の運動や状態の影響を受けて腫瘍等の照射対象が常時動いている。例えば、患者が横になるだけで、体が徐々に扁平になっていく。また、周期的な動作である呼吸や心鼓動は、周期的であるにもかかわらず、それに伴う各臓器の動きは毎回同じ経路を通るとは限らない。
照射対象の動きをリアルタイムに正確に捉えようとすれば、最も速い動きの一つである心鼓動は、1〜2回/秒である。従って、リアルタイムに正確な診断画像を得るためには、30画像/秒程度の画像撮影技術が必要といわれている。そして、照射対象をリアルタイムに正確に追尾し、放射線を照射しようとすれば、1/30秒毎に正確に放射線照射ヘッドを照射対象へ向けることが必要である。また、追尾に関し、高画質な診断画像を得るためには、診断用のX線システムのイメージディテクタに対する治療用の放射線(X線)の影響をなくすことが重要である。
【0014】
リアルタイムに治療野の状態をモニタすることが可能な技術が望まれている。診断用のX線システムのイメージディテクタに対する治療用の放射線(X線)の影響をなくすことが可能な技術が求められている。放射線の治療野が移動する場合でも、治療野を追従しながら放射線を照射することが可能な技術が求められている。治療効果を高めながら患者に対する放射線照射の負担を軽減することが可能な技術が望まれている。
【0015】
【非特許文献1】西臺武弘著、「放射線治療物理学」、株式会社文光堂、2001年2月26日、p.95−153
【非特許文献2】平岡真寛、笹井啓資、井上俊彦編著、「放射線治療マニュアル」、株式会社中外医学社、2001年4月10日、p.19−63
【特許文献1】特表平6−502330号公報(国際出願番号:PCT/US91/07696)(第5〜6頁、図1〜図3)
【特許文献2】特表平8−504347号公報(国際出願番号:PCT/US93/11872)(第20〜26頁、図5〜図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、放射線の照射治療中においても、リアルタイムに治療野の状態をモニタすることが可能な放射線治療装置を提供することである。
【0017】
また、本発明の他の目的は、診断用のX線システムのイメージディテクタに対する治療用の放射線(X線)の影響をなくすことが可能な放射線治療装置を提供することである。
【0018】
本発明の更に他の目的は、放射線治療における治療野が移動する場合でも、治療野を追従しながら放射線を照射することが可能な放射線治療装置を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、1回転軸周りの照射や、アイソセントリック照射だけでなく、広範囲の領域から迅速な照準合わせを行い放射線照射を実施することが可能な放射線治療装置を提供することである。
【0020】
本発明の更に別の目的は、放射線の照射を正確に行い、治療効果を高めながら患者に対する負担を軽減することが可能な放射線治療装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
以下に、[発明の実施の形態]で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明の実施の形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0022】
従って、上記課題を解決するために、本発明の放射線治療装置は放射線照射ヘッド(10)と、X線源(37、77)と、センサアレイ(38、78)とを具備する。
放射線照射ヘッド(10)は、被検体(4)の治療野(5)へ治療用放射線(3a)を照射する。X線源(37、77)は、被検体(4)の治療野(5)に診断用X線(3b)を照射する。センサアレイ(38、78)は、被検体(4)を透過した診断用X線(3b)の透過X線を検出して、診断画像データとして出力する。
そして、センサアレイ(38、78)は、放射線照射ヘッド(10)の移動に連動して動く。
センサアレイ(38、78)と放射線照射ヘッド(10)の連動した動作により、センサアレイ(38、78)は、放射線照射ヘッド(10)の影になることなく、透過X線を検出することができる。また、放射線照射ヘッド(10)の強力な放射線(X線)を受光することが無い。ただし、連動には、センサアレイ(38、78)と放射線照射ヘッド(10)とが同じ向きに、同じ距離又は同じ角度を保って動く場合や、所定の規則に従って互いに干渉しないように動く場合、一方の動作に基づいて、所定の条件を満たしたときに他方が動作する場合などが含まれる。なお、治療用放射線(3a)は、X線を含む。
【0023】
また、本発明の放射線治療装置は、X線源(37、77)が、センサアレイ(38、78)の動きに連動して動く。
放射線照射ヘッド(10)に連動するセンサアレイ(38、78)と、X線源(37、77)との連動した動作により、センサアレイ(38、78)は透過X線を、適切な位置で受光することが出来る。
【0024】
また、本発明の放射線治療装置は、センサアレイ(38、78)が、放射線照射ヘッド(10)の近傍に設けられている。
近傍に設けられているので、センサアレイ(38、78)を放射線照射ヘッド(10)に連動させ易い。また、放射線照射ヘッド(10)の強力な放射線(X線)を受光することが無い。
【0025】
また、本発明の放射線治療装置は、センサアレイ(38、78)が、放射線照射ヘッド(10)を挟んで両側に設けられている。
片側ではなく、両側にバランスして配置されているので、放射線照射ヘッド(10)と連動させ易い。また、構造的に安定である。
【0026】
また、本発明の放射線治療装置は、X線源(37、77)及びセンサアレイ(38、78)の各々とアイソセンタ(5a)との距離が、放射線照射ヘッド(10)とアイソセンタ(5a)との距離よりも小さい。
X線源(37、77)及びセンサアレイ(38、78)が、被検体(4)に近いところで診断画像の撮影を行うので、撮影画像の画質が向上する。また、X線源(37、77)及びセンサアレイ(38、78)と放射線照射ヘッド(10)とが機械的に干渉し難い。
【0027】
また、本発明の放射線治療装置は、X線源(37、77)とセンサアレイ(38、78)とが、アイソセンタ(5a)に対して対称の位置にある。
対称の位置にあるので、被検体(4)の良好な診断画像を得ることが出来る。
【0028】
また、本発明の放射線治療装置は、放射線照射ヘッド(10)が、C型ガントリ(89)、Ω型ガントリ(9)、L型ガントリ(図示されず)及びロボットアーム(図示されず)のいずれか一つに移動可能に設けられている。
C型ガントリ(89)及びΩ型ガントリ(9)は、放射線照射ヘッド(10)が移動する軌道(図示されず)を備える。L型ガントリ(図示されず)及びロボットアーム(図示されず)は、放射線照射ヘッド(10)を保持して動く。
上記各項の構成は、放射線照射ヘッド(10)、X線発生装置(37、77)やセンサアレイ(38、78)を保持するガントリやロボットアームの種類にかかわらず適用できる。
【0029】
また、本発明の放射線治療装置には、放射線照射ヘッド(10)が、放射線照射ヘッド(10)が移動する軌道を備えるO型ガントリ(69)に移動可能に設けられている。
O型ガントリ(69)は、ガントリの強度や構造が安定しており、より高精度の動作を行うことが出来る。そして、放射線照射ヘッド(10)、X線発生装置(37、77)やセンサアレイ(38、78)をバランスして配置することが出来る。
【0030】
更に、本発明の放射線治療装置は、X線源(図示されず)とセンサアレイは、O型ガントリの環の内側に設けられている。
環状のガントリの内側に各構成を設けることが出来、重量の偏りが少なく、構造が安定的である。
【0031】
更に、本発明の放射線治療装置は、制御部(80)と、画像処理部(31)とを更に具備する。ただし、診断画像データに基づいて、治療野(5)のその診断画像を生成する。
放射線照射ヘッド(10)は、O型ガントリ(69)に移動可能に接続され、ヘッド首振り機構(131、132)を備えている。ここで、ヘッド首振り機構(131、132)は、放射線照射ヘッド(10)から出射される治療用放射線(3a)が、治療野(5)の動きに追従するように放射線照射ヘッド(10)を首振りさせる。
制御部(80)は、その診断画像と、放射線照射ヘッド(10)の位置と、放射線照射ヘッド(10)の首振り状態とに基づいて、放射線照射ヘッド(10)の照射野(5’)が治療野(5)を追尾するように、ヘッド首振り機構(131、132)の制御を行う。そして、ヘッド首振り機構(131、132)の制御後に、放射線照射ヘッド(10)から治療用放射線(3a)を照射するように放射線照射ヘッド(10)の制御を行う。
ヘッド首振り機構(131、132)により、放射線照射ヘッド(10)は、算出された移動する患部(5)の位置へ、迅速かつ正確に治療放射線(3a)の照射を行うことが出来る。
【0032】
更に、本発明の放射線治療装置は、制御部(80)が、治療野(5)を示すその診断画像上の予め指定されたパターンに基づいて、その診断画像内の治療野(5)の座標としての第1座標(X、Y、Z)を算出する。また、放射線照射ヘッド(10)の位置と放射線照射ヘッド(10)の首振り状態とに基づいて、照射野(5’)の座標としての第2座標(x、y、z)を算出する。そして、第1座標(X、Y、Z)と第2座標(x、y、z)とに基づいて、照射野(5’)へ治療野(5)が含まれるように、ヘッド首振り機構(131、132)の制御を行う。
時々刻々変動する治療野(5)の位置を、リアルタイムで取得した診断画像を用いて把握し、適切な放射線照射ヘッド(10)での追尾を行うことが出来、患部(5)に対して正確な治療放射線(3a)の照射を行うことが出来る。
【0033】
更に、本発明の放射線治療装置は、制御部(80)が、所定の時間間隔毎に、ヘッド首振り機構(131、132)の制御及び放射線照射ヘッド(10)の制御を行う。
時間間隔を定めることにより、患部(5)の動きの速さに応じて、適切に追尾することが出来る。
【0034】
更に、本発明の放射線治療装置は、ヘッド首振り機構(131、132)が、放射線照射ヘッド(10)を互いに直交する二つの軸(S1、S2)の各々の周りで首振りさせる。
ジンバル機構を用いることにより、放射線照射ヘッド(10)の照射野(5’)は、確実に所定の範囲を捕らえることが出来る。
【0035】
更に、本発明の放射線治療装置は、放射線照射ヘッド(10)をO型ガントリ(69)に沿って移動させるヘッド周回移動機構(70)を更に具備する。
放射線照射ヘッド(10)は、O型ガントリ(69)に沿って360°回転することが出来る。
【0036】
更に、本発明の放射線治療装置は、O型ガントリ(69)を、鉛直軸(J1)の周りに回転するガントリ回転機構(72)を更に具備する。
放射線照射ヘッド(10)は、鉛直軸(J1)の周りに回転するO型ガントリ(69)により、球状にその位置を移動でき、あらゆる角度から、被検体(4)へ治療放射線(3a)を照射できる。
【0037】
更に、本発明の放射線治療装置は、マイクロ波発生装置(20)と、導波路(51)とを更に具備する。
ただし、マイクロ波発生装置(20)は、マイクロ波を発生する。導波路(51)は、一端をマイクロ波発生装置(20)に、他端を放射線照射ヘッド(10)に接続し、そのマイクロ波を放射線照射ヘッド(10)へ導波する。
マイクロ波発生装置(20)を放射線照射ヘッド(10)の外に配置しており、放射線照射ヘッド(10)の質量及び大きさを低減することが出来る。
【0038】
更に、本発明の放射線治療装置は、そのマイクロ波が、Cバンドに属する。
そして、放射線照射ヘッド(10)は、そのマイクロ波で電子線を加速する加速管(110)を備える。
高周波のCバンドのマクロ波を用いているので、加速管(110)の大きさを低減でき、放射線照射ヘッド(10)の質量及び大きさを低減することが出来る。
【0039】
更に、本発明の放射線治療装置は、そのマイクロ波が、Xバンドに属する。
そして、放射線照射ヘッド(10)は、そのマイクロ波で電子線を加速する加速管(110)を備える。
高周波のXバンドのマクロ波を用いているので、加速管(110)の大きさを低減でき、放射線照射ヘッド(10)の質量及び大きさを低減することが出来る。
【0040】
本発明の放射線治療装置は、放射線照射ヘッド(10)を、1軸もしくは2軸の方向にアイソセントリックに移動して位置決めする機構(9/28、69/72、89/72)に加えて、放射線照射ヘッド(10)を1軸もしくは2軸の方向に小角回転運動(首振り)させる機構(131、132)を追加することにより、擬似的にノンアイソセントリックな照射が可能となる。不定形な照射野(5’)への対応や、照射野(5’)の移動に対する追従で求められるノンアイソセントリックな成分は、照射野(5’)で50mm以下である。放射線源とアイソセントリックな照射野(5’)の距離SADとしては、通常の電子リニアックの場合に、80cm〜100cmの値である。SADが100cmの場合、放射線照射ヘッド(10)に要求される小角回転運動(首振り)角度は、約3度である。この運動によるSADの変化は、0.2%であり、SADの変化による治療用放射線(3a)のビームの直径の変化は無視できる範囲である。また、放射線照射ヘッド(10)の慣性中心を軸としてこの回転運動を行うように機構上の工夫をすることにより、駆動機構への負担の軽減を図ることが出来る。放射線照射ヘッド(10)の回転軸周りのモーメントと同じモーメントのダミーウェイトを、回転方向と逆に駆動することにより、小角回転運動(首振り)に伴う反力を相殺することも可能である。
【0041】
X線発生装置(37、77)やイメージディテクタ(38、78)を有するイメージャ(30)と、放射線照射ヘッド(10)とが機械的に干渉しないように、放射線照射ヘッド(10)とイメージャ(30)とが連動して動作する。そして、イメージャ(30)は、被検体(4)に近いところで診断画像の撮影を行うので、撮影画像の画質が向上する。イメージャ(30)と上記機構が共通の位置座標を持つようにする。また、イメージャ(30)の画像取り込みタイミングと、治療用放射線(3a)の照射タイミングを時分割で実施するようにタイミング制御することにより、治療用放射線(3a)のイメージャ(30)への影響を防止して、治療照射中でも、リアルタイムで治療野の画像をモニタすることが出来る。その際、イメージディテクタ(38、78)は、放射線照射ヘッド(10)側に有るので、放射線照射ヘッド(10)の治療用放射線(3a)の影響を受けることがない。
【0042】
モニタ画像(ディスプレイ)の中で、治療野画像について、適切なアルゴリズムで画像追尾を行い、これに追従して上記小角回転運動(首振り)を制御することにより、移動する治療野への追従照射治療が可能となる。
【0043】
更に、適切なマンマシンインタフェイス及び安全機構を装備することにより、安全性・信頼性の高い放射線治療装置の実現が可能になる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の放射線治療装置では、放射線の照射治療中においても、X線ヘッド(放射線照射ヘッド)に連動して動作するリアルタイム・イメージャ(X線システム)により、X線ヘッド(放射線照射ヘッド)を邪魔することなくリアルタイムに治療野の状態をモニタすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明である放射線治療装置の実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。
【0046】
(実施例1)
本発明である放射線治療装置の第1の実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。
図1〜図2は、本発明である放射線治療装置の第1の実施の形態における構成を示す正面図及び断面図である。図により、一部省略して表示している。座標200は、図1〜図2におけるX軸、Y軸及びZ軸を有する3次元直交座標を示す。
放射線治療装置6Aは、治療用ベッドシステム7、X線ヘッド10、支持フレーム67−1、支持フレーム67−2、O型ガントリ69、従動導波管系61、マイクロ波発生装置20、リアルタイム・イメージャ74を備えている。
【0047】
治療用ベッドシステム7は、ベッド駆動システム7−1、治療用ベッド7−2及び患者固定装置7−3を備える。
治療用ベッド7−2は、放射線治療を施す患者4を載せ、装置内の所定の位置へ移動する。患者固定装置7−3は、患者4を治療用ベッド7−2に固定する。ベッド駆動システム7−1は、内蔵された駆動機構により、治療用ベッド7−2
をX軸、Y軸及びZ軸の3軸方向に移動可能である。そして、ベッド駆動システム7−1は、システム制御装置80(後述)の制御により、リアルタイム・イメージャ(74)の撮影画像データに基づいて、治療野となる患部5がアイソセンタ5aに位置するように治療用ベッド7−2の位置を調整可能である。治療用ベッド7−2及び患者固定装置7−3には、リアルタイム・イメージャ(74)の画像診断機器の使用に適した材質及び形状が選択される。
【0048】
O型ガントリ69は、リング周回移動機構70、O型駆動リング71−1及び71−2、ガントリ回転機構72、上部支持機構82を含む。
【0049】
O型ガントリ69(本体)は、治療用ベッド7−2の周囲を囲むように設けられ、矩形形状の断面を有する管を円環状にしたリングである。ガントリ回転機構72上に、水平面(XY平面)に対して直立するように設置されている。そして、円の中心が、アイソセンタ5aとなるように治療用ベッド7−2及びX線ヘッド10を配設する。
【0050】
ガントリ回転機構72は、基礎部72−1、回転部72−2及び駆動部72−3を備える。基礎部72−1は、底面(床面等)に固定的に設けられている。回転部72−2は、基礎部72−1上に回転可能に設けられ、O型ガントリ69を固定的に保持する。駆動部72−3は、回転部72−2(及びその上のO型ガントリ69)を回転させる。すなわち、鉛直方向(Z軸方向)の軸である第1回転軸J1のまわりに、図のI1のように、搭載されたO型ガントリ69を回転させる。ただし、第1回転軸J1は、O型ガントリ69の形成する円の直径と重なり、円の中心(アイソセンタ5a)を通る。
【0051】
O型駆動リング71−1及び71−2は、O型ガントリ69と概ね同様の内径及び外径を有するリングである。それぞれ、O型ガントリ69の形成する円と同軸かつ平行で、O型ガントリ69を挟むように、O型ガントリ69に対して回転可能に設けられている。O型ガントリ69の成す平面に垂直で、第1回転軸J1に垂直かつアイソセンタ5aを通る第2回転軸J2のまわりに、図のI2のように、O型ガントリ69に対して回転する。このとき、O型駆動リング71−1及び71−2は、リング周回移動機構70を介して一体で回転する。
リング周回移動機構70は、O型ガントリ69と移動可能に、O型駆動リング71−1及び71−2と固定的に接続されている。O型駆動リング71−1及び71−2を、図のI2のように、O型ガントリ69に沿って周回移動させる。リング周回移動機構70は、O型駆動リング71−1及び71−2を含んでいても良い。リング周回移動機構70は、ラック・アンド・ピニオン方式やベルト方式などを採用することが出来る。
【0052】
上部支持機構82は、基礎部82−1及び回転部82−2を備える。基礎部82−1は、上部(天井等)に固定的に設けられている。回転部82−2は、基礎部82−1の下に回転可能に設けられ、O型ガントリ69を上から固定的に保持する。すなわち、ガントリ回転機構72による第1回転軸J1のまわり回転を、O型ガントリ69の上部で支えている。
【0053】
O型ガントリ69は、第1回転軸J1のまわりを、160°回転することが出来る。また、O型駆動リング71−1及び71−2は、O型ガントリ69上を360°回転することが出来る。すなわち、O型駆動リング71−1及び71−2に固定されているもの(X線ヘッド10他(後述))は、アイソセンタ5aを中心とした九分の八球(8/9球殻)を描くように運動する。
O型ガントリ69、リング周回移動機構70、O型駆動リング71−1及び71−2、ガントリ回転機構73は、例えば、ステンレス鋼のように剛性の大きい材料で造られる。O型ガントリ69(本体)は、幅200〜400mm、厚み100〜200mm、アイソセンタ5aからの半径1200〜2000mmである。
【0054】
X線ヘッド10は、照射野5’(患部5)に治療用X線3aを照射する放射線照射ヘッドである。治療用X線3aを出射する小型電子リニアックを備える。O型ガントリ69に、O型駆動リング71、支持フレーム67−1(後述)及び支持フレーム67−2(後述)を介して移動可能に取り付けられている。支持フレーム102を備える。
【0055】
支持フレーム102は、第1首振り機構131、第2首振り機構132を含む。
第1首振り機構131は、X線ヘッド10をO型ガントリ69上で、第1首振り軸S1の周りでR1のように揺動(回転運動)させる機構である。第1首振り軸S1は、X線ヘッド10が首振りしたときの慣性が小さくなるように、X線ヘッド10の慣性中心をほぼ通る軸上又はその近傍に設けられている。
第2首振り機構132は、X線ヘッド10をO型ガントリ69上で、第2首振り軸S2の周りでR2のように揺動(回転運動)させる機構である。第2首振り軸S2は、X線ヘッド10が首振りしたときの慣性が小さくなるように、X線ヘッド10の慣性中心をほぼ通る軸上又はその近傍に設けられている。詳細は後述する。
また、センサアレイ78Aを保持する保持フレーム76A、及び、センサアレイ78Bを保持する保持フレーム76Bを固定的に保持する。
【0056】
支持フレーム67−1は、一方の側を、O型駆動リング71−1に、他方の側を支持フレーム102に固定的に接続している。支持フレーム67−2は、一方の側を、O型駆動リング71−2に、他方の側を支持フレーム102において、支持フレーム102と支持フレーム67−1との接続部に対向する側に固定的に接続している。
すなわち、支持フレーム67−1及び支持フレーム67−2は、X線ヘッド10をO型ガントリ69の内周側に保持している。そして、O型駆動リング71−1及び71−2のリング周回移動機構70による回転に従って、支持フレーム102に保持されたX線ヘッド10とともに回転する。
【0057】
リアルタイム・イメージャ74は、被検体4の治療野に弱いファンビームX線である診断用X線3bを2方面(X線源77A、77B)から照射して、その透過像を検出(センサアレイ78A、78B)する。そして、検出されたデータを画像処理する(イメージャ信号処理装置31)ことによりコンピュータ画面上に治療野5の3次元断層診断画像を表示させる。リアルタイム・イメージャ74は、システム制御装置80により制御される。リアルタイム・イメージャ74は、通常のX線カメラを構成する2組のX線源77A、77B及びセンサアレイ78A、78Bのセット、X線源77A、77Bを保持する保持部68、センサアレイ78A、78Bを保持する保持フレーム76A、76Bを具備する。
【0058】
保持部68(−1及び−2)は、一方の側をO型駆動リング71−1及び71−2に固定的に保持されている。また、他方の側を、第1回転軸J1と第2回転軸J2とが形成する平面を挟んで、その両側にそれぞれX線源77A及び77Bを、アイソセンタ5aを狙うように保持している。更に、頂部に、被検体4を透過した治療用X線3aを吸収する保護板75を備える。そして、X線ヘッド10の動き(O型駆動リング71−1及び71−2の動き)に連動して、X線源77A、77Bを動かす。
【0059】
保持フレーム76Aは、一方の側を、X線ヘッド10(支持フレーム102)の一方の側面から下側へ延びる。他方の側は、センサアレイ78Aが接続されている。
同様に、保持フレーム76Bは、一方の側を、X線ヘッド10(支持フレーム102)の他方の側面から下側へ延びる。他方の側は、センサアレイ78Bが接続されている。
【0060】
X線源77A及びX線源77Bは、保持部68に設けられている。第1回転軸J1と第2回転軸J2とが形成する平面を挟んで互いに反対の側にある。センサアレイ78A及びアイソセンタ78Bも、同様である。2方向から診断用X線3bを照射して診断画像を得るので、患者4の体内における各部位の動きを迅速かつ正確に把握することが出来る。
また、リアルタイム・イメージャ74とO型駆動リング71−1及び71−2、O型ガントリ69とは、機械的に密に結合されており、共通の座標基準を持つ。
【0061】
センサアレイ78Aは、保持フレーム76Aの一端に設けられている。X線ヘッド10の近傍であるが、X線ヘッド10から照射される治療用X線3aの経路を妨害しないように配置されているので、X線ヘッド10の強力なX線の影響を受けずに済む。そして、そのセンサ側受光面の中央部からの垂線がアイソセンタ5aを向き、その延長線上にX線源77Aが配置される。同様に、センサアレイ78Bは、保持フレーム76Bの一端に設けられている。X線ヘッド10の近傍であるが、X線ヘッド10から照射される治療用X線3aの経路を妨害しないように配置されているので、X線ヘッド10の強力なX線の影響を受けずに済む。そして、そのセンサ側受光面の中央部からの垂線がアイソセンタ5aを向き、その延長線上にX線源77Bが配置される。
【0062】
センサアレイ78A、78Bは、被検体4を透過した診断用X線3bを受信(受光)する。被検体4が配置される診断用スペースを取り囲むアイソセンタ5aを中心とする円の円周上に固定して配置され、多数の長高感度CdTeセンサを備え、0.5mmの分解能を有している。また、診断用X線3bの照射時間は、1ショット当たり0.0025〜0.01秒である。
【0063】
X線源77A、77B及びセンサアレイ78A、78Bの各々とアイソセンタ5aとの距離は、X線ヘッド10とアイソセンタ5aとの距離よりも小さい。すなわち、X線源及びセンサアレイは、患者5に近いので、診断画像の画質が向上する。また、X線ヘッド10の、O型ガントリ69上での可動範囲を広くとることが出来る。
【0064】
センサアレイ78A表面の中央部からのアイソセンタ5aを通る垂線と、センサアレイ78B表面の中央部からのアイソセンタ5aを通る垂線とが成す角は、20°〜90°であることが好ましい。より好ましくは、40°〜60°である。これは、X線ヘッド10、X線源77A及びX線源77Bが、相互に影響を及ぼし合わずに、それぞれが正確に動作し、十分な精度を有する診断画像も得られる条件に基づいて設定される。
【0065】
リアルタイム・イメージャ74のX線発生制御装置の出力側には、電源及びX線源77A、77B内のアノード、カソード、グリット電極がそれぞれ接続されている。システム制御装置80からX線発生指令信号がX線発生制御装置に向けて出力されると、その指令に基づいて、X線発生制御装置は、電源から電子銃駆動回路への給電動作を制御する。これに応じてX線源77A、77B内のカソードから電子線が放射され、グリット電極に印加したマイナスのバイアス電圧が解除されてゼロ電位となり、電子線がグリット電極の孔を通過してアノードに入射する。アノードに電子線が入射すると、アノードから2次X線が発生し、窓に取り付けられたコリメータを介して、患者4に向けて扇状の治療用X線3bが放射される。
【0066】
センサアレイ78A、78Bで検出されたX線透過データは、透過X線量に比例した電流信号に変換され、プリアンプ、メインアンプを介して画像信号ディジタイザ及びデータ収録装置に送られて、診断画像データとして収録される。診断用X線3bによる撮像、データ収録等は、システム制御装置80により制御される。収録された診断画像データは、データ収録装置からイメージャ信号処理装置31(後述)へ出力され、イメージャ信号処理装置31でデータ処理される。処理されたデータは、患部5の診断画像としてシステム制御装置80のディスプレイ上に再生表示される。
【0067】
上記の3軸の駆動(I1、I2)により、X線ヘッド10は、アイソセンタ5aを中心とする8/9球殻上でアイソセントリックな動き(X線ヘッド10はアイソセンタ5aを向く)が可能となる。更に、上記の2軸の駆動(R1、R2)により、X線ヘッド10は、8/9球殻上で擬似的にノンアイソセントリックな動き(X線ヘッド10はアイソセンタ5a周辺近傍の3次元の領域5b(図1参照)内の所望の点を向く)が可能となる。この擬似ノンアイソセントリック動作は、X線ヘッド10の慣性中心周りの首振り運動であるため、アイソセントリック動作と比較して各段に素早い動きを行うことが出来る。擬似ノンアイソセントリックな高応答性の迅速な追尾モーションにより、例えば心鼓動等の早い動きに対してもヘッド照準を高応答かつ精密に追従させることが出来る。
【0068】
マイクロ波発生装置20は、クライストロン(図示されず)を含み、クライストロン方式でマイクロ波を発生する。そして、導波路に関わるサーキュレータ21及びダミーロード22を有し、従動導波管系61を介して、X線ヘッド10へ電子加速用のマイクロ波を供給する。ここでは、Cバンド(5.6GHz)のマイクロ波を供給する。マイクロ波発生装置20は、システム制御装置80に制御される。
【0069】
従動導波管系61は、マイクロ波発生装置20で発生したマイクロ波を、X線ヘッド10へ供給する導波路である。リンクアーム62−1、関節部64a、リンクアーム62−2、関節部64b、リンクアーム63、関節部64c、リンクアーム65、関節部66、X線ヘッド10を互いに連結してリンク機構を形成している。関節部64aは、第1回転軸J1方向の軸のまわりに、関節部64b、関節部64c及び関節部66は、第2回転軸J2方向の軸のまわりにそれぞれ回転可能である。なお、リンク先端のX線ヘッド10は、O型駆動リング71−1の運動により、O型ガントリ69に沿ってスライドし、また、第1首振り機構131により関節部66周りに首振りされる。
そして、関節部64a、64b、64c及び66は、マイクロ波を軸回転で伝えるロータリRFカプラ50(後述)を含む。リンクアーム62−1、62−2、63及び65は、導波管51(後述)を含み、関節部64a〜64c、66により、電磁気的に連通している。マイクロ波発生装置20で発生したマイクロ波は、関節部64a−リンクアーム62−関節部64b−リンクアーム63−関節部64c−リンクアーム65−関節部66を介して、X線ヘッド10へ供給される。
【0070】
図1に示すSAD(Source Axis Distance)は、アイソセンタ5aからX線ヘッド10内のターゲット121(後述)までの距離に相当する。本実施例では、基準となるSADを80〜100cmに設定している。
【0071】
次に、図3及び図4を参照しながらX線ヘッド10について詳細に説明する。
【0072】
図3は、本発明の放射線治療装置に適用されるX線ヘッド10の構成を示す図である。図3(a)は、全体図であり、図3(b)は、図3(a)のAA断面図、図3(c)は、BB断面図である。
X線ヘッド10は、4MeV〜10MeVの電子エネルギを有する治療用X線3aを発生する小型の電子リニアックを備える。O型ガントリ69に支持フレーム102等を介して可動支持されている。それと共に、従動導波管系61の関節部66(ロータリRFカプラ)に首振り可能に連結されている。
【0073】
X線ヘッド10は、ヘッドカバー101でX線ヘッド10の本体部が覆われ、本体部の先端側に放射線を放射するための出射部120が取り付けられている。ヘッド本体部を覆うヘッドカバー101内には、電気回路/冷却水回路116、加速管110、RF窓52、導波管51、ロータリRFカプラの一部50B、排気管107、イオンポンプ112、ターゲット排気室119、ターゲット121、冷却板122が設けられている。
【0074】
加速管110の尾部の絶縁ガラス103から外部電源(図示されず)に接続されたケーブル(図示されず)がヘッドカバー101内に導入され、電子銃104のカソード105に接続されている。このカソード105と向き合ってアノード106が配置されている。電子銃104の電源はシステム制御装置80により制御される。
カソード105とアノード106との間はイオンポンプ112に連通する排気管107により排気される。排気される空間は、電子銃104から加速管110へ続き、更に加速管110から出射部120へ続いている。イオンポンプ112は、加速管110に直結しているため、加速管110の真空度を常に高真空に保つことが出来、安定した電子線を、安定的に加速することが可能である。そして、それにより、治療用X線3aを安定的に出力することが可能となる。
絶縁ガラス103から加速管110の先端までの長さは約360mmである。この大きさは、従来用いられている加速管の1/3程度に大幅に小型化、かつ軽量化されている。これは、従来使用されているSバンドのマイクロ波ではなく、高周波数(高エネルギー)のCバンド(5.6GHz)のマイクロ波を用いているからである。
【0075】
図4は、図3(c)の電子銃104及び加速管110近傍の拡大図である。
電子銃104のアノード106の中央孔は、加速管110のバンチャ空洞109に連通している。加速管110の内部には、更に、電子ビーム通過用の中央孔を有する複数の加速空洞111bが繋がって配置されている。加速管110は、バンチャ空洞109及び複数の加速空洞111bの中央孔111cに、電子銃104から出射された電子線を通過させながらマイクロ波により加速させ、高エネルギの電子ビームとして、X線ターゲット121に衝突させる。加速空洞111bは、サイドカップルキャビティ111aを介して左右一対の側方排気管108にそれぞれ連通している。左右一対の側方排気管108は、排気管107経由でイオンポンプ112接続されて真空排気される。
【0076】
図3を参照して、加速管110には、導波管51が連通している。導波管51は、セラミック製のRF窓52及びロータリRFカプラ50A、50B(−従動導波管系61−)を経由してマイクロ波発生装置20に連通している。RF窓52は、導波管51内に封入されたSF6ガスの漏洩を防ぐとともに、マイクロ波を加速管110へ導入させる入口である。
【0077】
出射部120は、ヘッドカバー101で覆われたX線ヘッド10の本体部の先端に設けられている。ターゲット121、冷却板122、1次コリメータ123、フラットニングフィルタ124を備える。電子銃104から加速管110を経て、フラットニングフィルタ124に至るまでは電子ビームの光軸に沿って直列に並んでいる。そして、加速された電子線は、ターゲット排気室119を通って出射部120のターゲット121に入射する。
【0078】
ターゲット121は、高エネルギの加速電子の入射により、制動輻射X線を出射する。制動X線の放射時に発生する熱による熱損傷を受けないように、ターゲット冷却板122が取り付けられている。ターゲット121には、タングステン、タンタル等の高融点金属単体又はこれらの合金を用いる。
【0079】
一次コリメータ123は、タングステンなどのような放射線に対する遮蔽性に優れ、かつ熱中性子の発生の少ない材料でつくられている。ターゲット121からのX線を、所定のビーム幅に絞ってフラットニングフィルタ124に導く。
【0080】
フラットニングフィルタ124は、ターゲット121から出射されるX線の強度を平均化して均一なドーズ分布を持つ治療用X線3aとする。
【0081】
更に、出射部120の先端側にはニ次コリメータ125及び線量計測用の電離箱126が取り付けられている。ニ次コリメータ125は、治療用のX線3aが透過できないタングステンなどのような遮蔽性の高い材料で作られている。フラットニングフィルタ124からのX線を所定のビーム幅に絞った治療用X線3aを、電離箱126に導く。このニ次コリメータ125は、一次コリメータ123の端面部に着脱可能にねじ込まれている。
【0082】
電離箱126は、通過するX線の線量を計測する。ニ次コリメータ125の先端に取り付けられ、所定の成分のガスが封入されている。そして、放電電荷を検出する検出回路(図示されず)が接続されている。この検出回路はシステム制御装置80の入力側に接続されている。システム制御装置80は、線量計測用電離箱126の入力信号に基づいてX線ヘッド10から出射されるX線の線量を算出し、患者4が受ける治療用ドーズデータとしてメモリに保存するようになっている。
【0083】
本発明の放射線治療装置6では、X線ヘッド10は、全長が500〜600mm、幅500mm、深さ300mmと小さく、重量60〜80kgと軽量化もされていながら、高いエネルギーである4MeV〜10MeVの電子エネルギを有する治療用X線3aを発生することが可能である。これは、高周波数(高エネルギー)のCバンド(5.6GHz)のマイクロ波を用いているため加速管110が小型軽量であること、加速管110が小さいため電子線を偏向させる偏向磁石及びその関連機器が不要であること、マイクロ波を発生させる装置(マイクロ波発生装置20)をX線ヘッド10の外側に配置していること、などの理由による。すなわち、全体の重量が軽量化されていること、及び、全体の大きさが小型化されていることで、X線ヘッド10を少ない力で、俊敏かつ迅速に所望の場所へ移動させることが可能となる。
また、更に高周波数のXバンドのマイクロ波を用いて加速可能な加速管を用いれば、更に小型・軽量化することが可能である。その場合、マイクロ波の周波数に合わせて各機器の設計を変更する(例示:従動導波管系61の各構成の寸法や、加速管110の加速空洞111b等の寸法を変更する)ことにより、実施可能である。
【0084】
次に、図5〜図6を参照して、X線ヘッド10の2軸の首振り機構について詳しく説明する。
【0085】
図5は、支持フレーム102に支持されたX線ヘッド10を示す斜視図である。
図5に示すように、X線ヘッド10のヘッドヘッドカバー101は、ジンバル構造を有する支持フレーム102に支持されている。支持フレーム102は、X線ヘッド10の慣性中心を含む第1首振り軸S1及び第2首振り軸S2が通る位置座標に取り付けられている。そして、第1首振り機構131により、第1首振り軸S1のまわりをR1のように揺動する。同様に、第2首振り機構132により、第2首振り軸S2のまわりをR2のように揺動する。
【0086】
図6は、支持フレームの2軸の首振り機構の構成を示す図である。図6(a)は全体、図6(b)はS1首振り駆動用サーボモータ131b、図6(c)は、関節部66、図6(d)は、S2首振り駆動用サーボモータ132b、図6(e)は、一対のロータリRFカプラ50Aと50Bを示す。
図6(a)に示すように、支持フレーム102には、従動導波管系61の関節部66(ロータリRFカプラ)、及び、S1首振り駆動用サーボモータ131bが、第1首振り軸S1に沿って、対向する2辺にそれぞれ取り付けられている。同様に、一対のロータリRFカプラ50Aと50B、及び、S2首振り駆動用サーボモータ132bが、第2首振り軸S2に沿って、前述の2辺と異なる対向する2辺にそれぞれ取り付けられている。
【0087】
図6(a)、(b)及び(c)に示すように、従動導波管系61の関節部66(ロータリRFカプラ)は、支持フレーム102の一方の側の長辺の中央に取り付けられ、これと向き合うようにS1首振り駆動用サーボモータ131bの駆動軸131aが第1首振り軸S1と重なるようにフレーム102の対向長辺の中央に取り付けられている。そして、S1首振り駆動用サーボモータ131bは、支持フレーム67−2に固定支持されている。サーボモータ駆動軸131aを回転駆動させると、第1首振り軸S1まわりにX線ヘッド10がR1のように首振りする。
【0088】
図6(a)、(d)及び(e)に示すように、一対のロータリRFカプラ50A、50Bは支持フレーム102の一方の側の短辺の中央に取り付けられ、これと向き合うようにS2首振り駆動用サーボモータ132bの駆動軸132aが第2首振り軸S2と重なるように支持フレーム102の対向短辺の中央に取り付けられている。そして、S2首振り駆動用サーボモータ132bの本体は、支持フレーム側のブラケット102aに固定支持され、駆動軸132aは、軸受け133を介して支持フレーム102に回転可能に支持されている。サーボモータ駆動軸132aを回転駆動させると、S2ドライブ軸周りにX線ヘッド10が首振りする。
【0089】
図6(a)に示すように、従動導波管系11の各リンクアーム63、65内には、導波管51が設けられ、各関節部64、66内には、ロータリRFカプラ50が設けられ、更に一対のロータリRFカプラ50A、50Bを通って、X線ヘッド10内の加速管110にマイクロ波が導入されるようになっている。
【0090】
次に、図7〜図9を参照して、マイクロ波を伝達する導波路の関節部分であるロータリRFカプラについて説明する。
【0091】
図7は、ロータリRFカプラ50を内部に有する関節部の構成を示す図である。図7では、関節部64cを代表として示しているが、関節部64a、関節部64b、関節部66、一対のロータリRFカプラ50A、50Bについても同様である。
図7に示すように、リンクアーム63、65の中には、導波管51が設けられ、関節部64a〜64c、66内のロータリRFカプラ50により、導波管51が電磁気的に連通している。
【0092】
図8は、図7で示すロータリRFカプラ50の構成の詳細を示す斜視図である。
図8に示すように、ロータリRFカプラ50は、フランジ継手53、54により、導波管51の各々に接続されている。そして、ロータリRFカプラ50は、導波路55aの加速用のマイクロ波を軸回転で導波路55bへ伝える。
【0093】
図9(a)は、図8のロータリRFカプラ50の詳細を示す断面図である。図9(b)は、ロータリRFカプラ50内のマイクロ波のモードの一例を示す。
図9(a)に示すように、導波管51の導波路55a、55bは、ロータリRFカプラ50の回転部材56、57、軸受け58、λ/4波長チョーク59に取り囲まれた回転スペースに連通し、この中を図9(b)に例示するような管内モード(電気力線2a(2b))でマイクロ波が導かれる。このようなロータリRFカプラ50と導波管51との組み合わせにより、地上に固定されたクライストロン等のマイクロ波発生装置20から、移動するX線ヘッド10へ加速用のマイクロ波を円滑に供給することが出来る。
【0094】
次に、本発明の放射線治療装置の実施の形態の制御システムについて説明する。
【0095】
図10は、本発明の放射線治療装置の実施の形態の制御システムを示すブロック図である。
本実施例の制御システムは、治療用ベッドシステム7、X線ヘッドシステム8、リアルタイムイメージャ74、イメージャ信号処理装置31、マイクロ波発生装置20、システム制御装置80、システムユーティリティ90を備える。実質的にはシステム制御装置80が全体を統括して制御するシステム構成となる。
【0096】
システム制御装置80は、システム制御計算機を備え、コンピュータプログラムとしてのシステム管理アルゴリズム、画像追尾アルゴリズム、治療計画アルゴリズム、治療管理アルゴリズム、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)、インターロックアルゴリズムを含み、治療計画データベース、トレンド記録データベース、治療データベースを搭載している。また、システムモニタ(ディスプレイ)、入出力装置及びBITを含み、これを中心として他のシステムブロックがそれぞれ接続され、入出力信号のやりとりがなされる。
【0097】
治療計画データベースは、医師が立てる治療計画に関する情報としての治療計画情報を格納している。治療計画情報は術前に行われる種々の検査に基づくものである。治療計画情報は、患者属性情報、患者画像情報、吸収線量情報、治療線量情報、患部位置情報等を互いに関連付けている。
ただし、患者属性情報は、患者4の氏名、生年月日等を示す。患者画像情報は、患者4のX線断層画像を示す。吸収線量情報は、患部5に対する放射線(X線)の吸収線量、その照射方法(回数、1回の吸収線量、照射方向(ルート))等を示す吸収線量設定に関する。治療線量情報は、患部5に対する放射線(X線)の治療線量、その照射方法(回数、1回の治療線量、照射方向(ルート))等を示す治療線量設定に関する。患部位置情報は、患部5の位置に関する。患部5の位置は、後述の定義領域5−1であっても良い。
【0098】
トレンド記録データベースは、照射治療の実績に関する照射実績情報を格納している。照射実績情報は、治療の際に実際に照射した放射線(X線)に関するものである。照射実績情報は、患者属性情報、積算治療線量、積算吸収線量、照射方向(ポータル数)毎の治療線量、推定吸収量、目標座標(患部5における照射目標の座標)及び機械座標(実際に照射を行った照射野5’の座標)、等を互いに関連付けている。
【0099】
治療データベースは、物質の種類、物質の厚みと放射線(X線)の吸収量との関係を示す放射線吸収量曲線、等を互いに関連付けて格納している。
【0100】
システム管理アルゴリズムは、各アルゴリズム、GUI、システムモニタ(ディスプレイ)、入出力装置及びBIT等のシステム制御装置80全体を統括制御する。
【0101】
治療計画アルゴリズムは、治療計画データベース(患者4のX線断層画像、吸収線量情報)と治療データベース(物質毎の放射線吸収量曲線)とに基づいて、治療線量情報(照射方向(ルート)毎のX線の治療線量、積算の治療線量)等を算出する。そして、ディスプレイに表示し、医師の確認を受ける。医師は、必要に応じて、照射方向やX線の吸収線量等を変化させて、所望の治療線量情報となるようにする。医師の確認後、治療計画データベースへ格納する。
【0102】
治療管理アルゴリズムは、治療計画データベースの治療計画情報及び/又は画像追尾アルゴリズムからのX線ヘッド10の首振り量に基づいて、X線ヘッド10が所定の方向へ向くようにX線ヘッドシステム8を制御する。
また、治療中にイメージャ信号処理装置31、X線ヘッドシステム8、画像追尾アルゴリズム等から得られる照射実績情報をトレンド記録データベースへ格納する。
【0103】
画像追尾アルゴリズムは、イメージャ信号処理装置31から得られる追尾用画像データに基づいて、患部5の座標を算出する。また、X線ヘッドシステム8から得られる各種データに基づいて、X線ヘッド10の照射野5’の座標を求める。そして、患部5の座標と、照射野5’の座標とに基づいて、X線ヘッド10の首振り量を算出する。
【0104】
インターロックアルゴリズムは、所定の条件が満たされた場合において、治療用X線3aや診断用X線3bを緊急停止させる。所定の条件は、緊急停止ボタンが押された場合、照射野5’と患部5とが予め設定された距離以上に離れた場合、患者4に対する治療線量及び吸収線量の少なくとも一方が、それぞれに対して予め設定された許容値を超えた場合、治療用X線3aを照射する際に診断用X線3bを停止する場合、診断用X線3bを照射する際に治療用X線3aを停止する場合、等である。
【0105】
リアルタイムイメージャ74で検出されたX線透過データは、イメージャ信号処理装置31内の画像再構成アルゴリズムにより診断画像に再構成され、システム制御装置80に送信される。これにより画像診断が治療中にリアルタイムで生成され、医師はシステム制御装置80のコンピュータディスプレイ上に表示された診断画像を観ながら治療を行うことが出来る。
【0106】
マイクロ波発生装置20は、クライストロンモジュレータ・アンド・リニアックシステム制御装置、クライストロン及びRFドライバを具備している。クライストロンは、従動導波管系61を介して、X線ヘッド10に接続され、加速管110にマイクロ波を供給する供給源である。
【0107】
X線ヘッドシステム8は、X線ヘッド10、アイソセントリック駆動機構(O型ガントリ69、リング周回移動機構70、ガントリ回転機構72を含む)、及び、首振り駆動機構(第1首振り機構131、第2首振り機構132及びロータリRFカプラ50を含む)を備える。アイソセントリック駆動機構及び首振り駆動機構は、それぞれに対応した各ドライバ(アイソセントリック駆動ドライバ及び首振り駆動ドライバ)を介して、システム制御部80に接続され、アイソセントリック照射時におけるX線ヘッド10のアイソセントリック駆動機構、及び、擬似アイソセントリック照射時におけるX線ヘッド10の2軸の首振り駆動機構がそれぞれ制御される。
【0108】
次に、本発明である放射線治療装置の第1の実施の形態の動作について、添付図面を参照して説明する。
【0109】
まず、位置較正を行う。位置較正は、受光面の中心部がアイソセンタ5aと重なり、受光面が水平となるように設置されるCCDカメラ60と、電子リニアックに模してX線ヘッド10内に設置されたレーザ発信器とを用いて行う。そして、レーザの受光点とアイソセンタ5aとのずれを補正値とする。
【0110】
上記位置較正の方法により、短時間にO型ガントリ69のような大きな機械工作物における、工作時の歪み、自重等によるたわみ、取り付け時の応力等による位置ずれを精度良く補正することができ、位置精度を向上させることが可能となる。本実施例の場合、位置分解能を20μm程度にすることが可能となった。
このような位置較正は、放射線治療装置6の設置時及び定期点検時に実施する。ただし、所定の使用回数毎、放射線治療毎に行っても良い。
【0111】
次に、本発明の放射線治療装置の実施の形態の動作における、各動作の時間のタイミングについて説明する。
図11は、本発明の放射線治療装置の実施の形態の動作におけるタイミングチャートである。図11(a)は、診断画像を処理する動作のタイミング、図11(b)は、処理後の診断画像に基づく画像追尾計算及びX線ヘッド10の首振り動作のタイミング、そして、図11(c)は、治療X線の照射のタイミングをそれぞれ示している。
【0112】
(0)時間t0以前
まず、放射線治療装置6のメインスイッチをONにすると、治療用ベッドシステム7、X線ヘッドシステム8、リアルタイム・イメージャ74、マイクロ波発生装置20、システム制御装置80、システムユーティリティ90の電源がそれぞれ待機状態となる。治療用ベッドシステム7が作動して、患者4が治療用ベッド7−2とともに、治療エリア内に移動し、リアルタイム・イメージャ74を作動させて患部5が治療装置のアイソセンタ5aに一致するように治療用ベッド7−2を動かして位置合わせをする。このアイソセントリック位置合わせ完了後、リアルタイム・イメージャ74によるリアルタイム画像診断とX線ヘッド10による放射線治療とを開始する。
【0113】
(1)ステップS2−1:時間t0〜t1
通常X線のカメラ(リアルタイム・イメージャ74)は、診断用X線発生ユニットから診断用X線3bを照射野5’に照射する。そして、センサアレイで、そのX線透過データを診断画像データとして検出する。被爆を最小限とするため、診断用X線3bの照射時間は、t0〜t1に限定する。
【0114】
(2)ステップS2−2:時間t1〜t2
検出された診断画像データは、透過X線量に比例した電流信号に変換され、プリアンプ、メインアンプを介して画像信号ディジタイザ及びデータ収録装置に取り込まれる。
【0115】
(3)ステップS2−3:時間t2〜t3
収録された診断画像データは、データ収録装置からイメージャ信号処理装置31へ出力される。そして、イメージャ信号処理装置31の画像再構成アルゴリズムを用いて演算処理され、追尾用画像データに変換される。追尾用画像データは、放射線治療装置6Aの座標系の各座標点(Xi、Yi、Zi)、(i=1〜n:nはデータ数)での診断画像を示すデータである。追尾用画像データは、システム制御装置80へ出力される。
追尾用画像データは、患部5の診断画像としてシステム制御装置80のディスプレイ上に再生表示される。
【0116】
リアルタイム・イメージャ74及びイメージャ信号処理装置31は、時間t3後の所定の時間経過後、再び時間t0〜t3のプロセスを繰り返す。図11中、時間t0〜t3のプロセス=時間t10〜t13、時間t20〜t23…のプロセスである。
【0117】
治療用X線3aの直接線、漏洩線及び散乱線が、リアルタイム・イメージャ74のセンサアレイ(検出器)に影響を与えないようにするため、少なくとも診断用X線3bを照射している時間t0〜t1においては、治療用X線3aが照射されないように、X線ヘッド10はインターロックされている。
【0118】
これらの診断画像処理(ステップS2−1〜S2−3)にかかる合計時間t0〜t3は、0.01秒である。すなわち、診断画像処理の1サイクル時間は、0.01秒である。これは、心鼓動等の速い動きに追従する上では充分なサンプルレートである。
【0119】
(4)ステップS2−4:時間t3〜t4
システム制御装置80の画像追尾アルゴリズムを用いて、以下の画像追尾計算を行う。
追尾用画像データに基づいて、患部5の座標(放射線治療装置6の座標系での座標点(X、Y、Z))を抽出する。一方、リング周回移動機構70、ガントリ回転機構73、第1首振り機構131及び第2首振り機構132の位置(座標)、回転角等に基づいて、現在のX線ヘッド10の照射野5’の座標(放射線治療装置6の座標系での座標点(x、y、z))を算出する。そして、(1)2点間の距離L=|(X、Y、Z)−(x、y、z)|が予め設定された値L02以下である場合、首振りを行わないこととし、(2)距離Lが予め設定された値L01以上である場合、首振り量をθ0(患部5の座標方向の距離L01に対応)とし、(3)L02<距離L<L01の場合、患部5の座標と照射野5’の座標とに基づいて、X線ヘッド10の首振り量(θ1、θ2)を算出する。
【0120】
ただし、X線ヘッド10の首振り量(θ1、θ2)は、S1首振りドライブ軸周りの微小変位角(首振り角)θ1(回転方向、回転角度の大きさ)及びS2首振りドライブ軸周りの微小変位角(首振り角)θ2(回転方向、回転角度の大きさ)である。
L01は、時間t4〜t5の間にX線ヘッド10が首振り可能な最大距離である。また、L02は、患部5の座標点(X、Y、Z)及び照射野5’の座標点(x、y、z)の算出の際に見込まれる誤差の値である。
【0121】
この患部5の移動(運動)の状態(座標点(X、Y、Z))は、システム制御装置80のディスプレイ上に表示される。ただし、患部5だけでなく、その周辺の領域(例示:患部5を含む輪郭線5−2(後述))を同様に示しても良い。
【0122】
(5)ステップS2−5:時間t4〜t5
算出されたX線ヘッド10の首振り量(θ1、θ2)に基づいて、システム制御装置80の治療管理アルゴリズムにより、X線ヘッド10の首振り量(θ1、θ2)を示す首振り駆動信号が、X線ヘッドシステム8へ出力される。
首振り駆動信号に基づいて、X線ヘッドシステム8のX線ヘッド首振り駆動ドライバにより、第1首振り機構131及び第2首振り機構132が駆動され、X線ヘッド10が所望の方向へ向く。
システム制御装置80は、時間t5の後の時間t13から、再び時間t3〜t5のプロセスを繰り返す。図11中では、時間t3〜t5のプロセス=時間t13〜t15、時間t23〜t25…のプロセスである。
【0123】
これらの画像追尾計算及びX線ヘッド首振り(ステップS2−4〜S2−5)にかかる合計時間t3〜t5は、0.01秒である。すなわち、画像追尾計算及びX線ヘッド首振りの1サイクル時間は、0.01秒である。これは、心鼓動等の速い動きに追従する上では充分なレートである。
【0124】
第1首振り機構131のS1首振り駆動用サーボモータ131b、及び、第2首振り機構132のS2首振り駆動用サーボモータ132bを駆動させている時間t4〜t5には、首振り角の誤動作の可能性があるため、治療用X線3aが照射されないように、X線ヘッド10はインターロックされ、安全性を確保するようにしている。
【0125】
(6)ステップS2−6:時間t5〜t6
システム制御装置80のシステム管理アルゴリズムを用いて、時間t5に治療用X線3aの照射を指示ずる信号としての治療X線照射信号がX線ヘッド10へ出力される。X線ヘッド10のインターロックが解除され、患部5への治療用X線3aの照射が開始される。治療用X線3aの照射時間t5〜t6は、約0.0025〜0.01秒である。照射のデューティは、約50%である。
システム制御装置80は、時間t6の後の時間t15から、再び時間t5〜t6のプロセスを繰り返す。図11中では、時間t5〜t6のプロセス=時間t15〜t16、時間t25〜t26…のプロセスである。
【0126】
この治療X線照射(ステップS2−6)にかかる合計時間t5〜t6は、0.01秒である。すなわち、治療X線照射の1サイクル時間は、0.01秒である。これは、心鼓動等の速い動きに追従する上では充分なレートである。
【0127】
ここで、X線ヘッド10を首振りしながら治療X線3aを照射する様子について、図面を参照して更に説明する。
図12は、X線ヘッド10による放射線治療の様子を示す斜視図である。X線ヘッド10は、患部5へX線を照射する。
図13及び図14は、X線ヘッド10を首振りしながら治療X線3aを照射する様子を説明する図である。図13は、図12におけるA−A断面、図14は、図12におけるB−B断面である。
照射野5’の移動に追従して照射するには、システム制御装置80は、上記時間t3〜t4において、算出された患部5の位置(座標(X、Y、Z))と、現在のX線ヘッド10の照射野5’の座標(x、y、z))とに基づいて、X軸方向及びY軸方向における患部5の照射野5’からのシフト量DV1、DV2を算出する。そして、シフト量DV1、DV2に基づいて、所定の計算式を用いて、第1首振りドライブ軸S1及び第2首振りドライブ軸S2周りの移動による変位角θ1及びθ2をそれぞれ求める。
上記時間t5〜t6において、X線ヘッド10を第1首振りドライブ軸S1の周りに変位角θ1、第2首振りドライブ軸S2の周りに変位角θ2だけ首振りさせる。そして、首振りを停止させると同時に、X線ヘッド10から治療用X線3aを出射する。
【0128】
以上のステップS2−1〜ステップS2−6により、頚部以下の呼吸や心鼓動、蠕動や膀胱内の尿量等、臓器の運動や状態の影響を受けて動く腫瘍等の患部5に対して、X線ヘッド10の照準が迅速かつ高応答に追従し、放射線(X線)を高精度に照射することが可能となる。すなわち、診断画像の処理時間を含めて0.03秒以内にX線ヘッド10を首振り動作させ、放射線(X線)を照射させることが出来、照射野(患部)の動きに対して迅速に追随させることが出来る。
【0129】
上記プロセスでは、ステップS2−4:時間t3〜t4において、ステップS2−5でX線ヘッド10に首振りさせる角度を所定の大きさに制限している。これは、首振り角度が大きくなると、首振りにかかる時間が長くなり、その間に患部5が更に移動してしまう。その結果として、X線ヘッド10の照射野5’の座標点(x、y、z)が、患部5の座標点(X、Y、Z)の位置から大きくずれてしまうからである。
X線ヘッド10が追尾する患部5の早い動きは、呼吸及び心鼓動によるものである。この場合、患部5は、概ね同じ領域内(ただし、経路は必ずしも同じではない)で移動している。従って、一度、X線ヘッド10の照射野5’の座標点(x、y、z)と患部5の座標点(X、Y、Z)とが完全に一致しない場合があっても、その後一致させることは可能である。
【0130】
診断画像データの取得や画像追尾計算に異常が生じた場合には、その時点で治療用X線3aの照射にインターロックをかけて照射を停止させ、安全性を確保する。本装置では、X線ヘッド10の首振り、及び位置決めが正常に行われたことを確認してから治療用X線3aの照射がなされるように設計されている。
そして、照射野5’の座標点(x、y、z)と患部5の座標点(X、Y、Z)とのずれが、予め設定された値以上の場合、そのサイクルでは、ステップS2−6(時間t5〜t6)での治療用X線3aの照射を行わない。
【0131】
また、システム制御装置80は、必要に応じて、リング周回移動機構70、ガントリ回転機構72及び治療用ベッドシステム7を移動して、患部5にX線ヘッド10の照準を合わせようにすることも可能である。
すなわち、システム制御装置80は、時間t3〜t4において、患部5の座標と照射野5’の座標とに基づいて、X線ヘッド10の首振り量(第1首振り機構131及び第2首振り機構132用)及び移動量(リング周回移動機構70、ガントリ回転機構73及び治療用ベッドシステム7用)を算出する。次に、時間t4〜t5において、X線ヘッド10の首振り量及び移動量をX線ヘッドシステム8へ出力する。そして、第1首振り機構131、第2首振り機構132、リング周回移動機構70、ガントリ回転機構73及び治療用ベッドシステム7を移動して、患部5にX線ヘッド10の照準を合わせる。
【0132】
治療用X線3aの照射停止後、タイミングt5に診断用ビーム3bの照射を開始し、次の診断画像処理サイクルt5〜t8に移行する。次いで、診断画像処理後のタイミングt3にX線ヘッド10のインターロックが解除され治療ビーム3aの照射が再開される。
【0133】
このようにして、診断画像処理サイクル(図11中、0〜Ta):0.01秒、画像追尾計算サイクル及びX線ヘッド首振りサイクル(図11中、Ta〜Tb):0.01秒、及び、治療X線照射サイクル(図11中、Tb〜Tc):0.01秒の計0.03秒のサイクルが繰り返される。すなわち、1/30秒(=0.033秒)よりも短い周期で正確に放射線照射ヘッドを照射対象へ向けることができ、患部(治療野)が心鼓動のような最も速い動きを有していても、照射対象をリアルタイムに正確に追尾し、放射線を照射することが出来る。
【0134】
次に、擬似ノンアイソセントリックな治療の手順について説明する。
図15は、擬似ノンアイソセントリックな治療の手順をディスプレイの表示で示すフロー図である。
【0135】
(1)ステップS3−1
放射線治療においては、医師が治療計画を立てる。その治療計画は術前に行われる種々の検査に基づくものである。それらの治療計画は、治療計画データベースに格納される。
更に、医師は手術中において、本発明の放射線治療装置を用いることにより、患部の病巣を直接的にリアルタイムで画像診断することにより高精度で確実性の高い放射線治療を行うことが出来る。
【0136】
(2)ステップS3−2
図15(a)に示すように、リアルタイム・イメージャ74及びイメージャ信号処理装置31を用いて患部5及びその近傍領域の診断画像が再構成され、システム制御装置80のディスプレイ上に再生表示される。
診断画像の再構成は、上記ステップS2−1〜ステップS2−3により行われる。ただし、この段階では、ステップS2−4〜ステップS2−6は行わない。
【0137】
(3)ステップS3−3
図15(b)に示すように、医師は、ディスプレイ上で患部5の各断面図を確認して、画像追尾のための照射野5’の輪郭線を定義する。ここで、治療開始に先立って、照射野5’のマッピングは終了しており(治療計画データベース)、これを参考に複数のスライスで照射野5’の輪郭を定義する。輪郭で定義された領域は、定義領域5−1であり、定義領域5−1は患部5を含む。定義領域5−1は、治療計画データベースに格納される。
治療計画アルゴリズムは、治療計画データベース(定義領域5−1を含む)と治療データベースとに基づいて、治療線量情報(照射方向(ルート)毎のX線の治療線量、積算の治療線量)等を算出する。そして、ディスプレイに表示し、医師の確認を受ける。医師は、必要に応じて、照射方向やX線の吸収線量等を変化させて、所望の治療線量情報となるようにする。医師の確認後、治療線量情報は、治療計画データベースへ格納する。
【0138】
(4)ステップS3−4
図15(c)に示すように、システム制御装置80の画像追尾アルゴリズムにより、画像輪郭抽出を行う。すなわち、実際の患部5の診断画像と定義された定義領域5−1の輪郭線とのパターンマッチングを行い、輪郭線5−2として表示する(後述)。そして、画像追尾を開始する。医師は、画像追尾状況を目視で確認する。
画像追尾は、上記ステップS2−4により行われる。従って、上記ステップS2−1〜ステップS2−4が繰り返し行われる。ただし、この段階では、ステップS2−5〜ステップS2−6は行わない。
【0139】
(5)ステップS3−5
図15(d)に示すように、画像追尾が安定した後に、医師はマスターアームスイッチ(Master Arm SW)を操作して、X線ヘッドシステム8をARMED状態にする。X線ヘッドシステム8は、照準をクロスヘアラインで照射ボリュームを赤色でディスプレイ上に表示する。そして、画像追尾と同時に、X線ヘッド10の追尾(首振り)も行われる。画像及びX線ヘッド10による追尾が継続しているため、照準及び照射ボリュームは、照射野5’の移動と共に自動的に追従する。
X線ヘッド10の追尾(首振り)は、上記ステップS2−5により行われる。従って、上記ステップS2−1〜ステップS2−5が繰り返し行われる。ただし、この段階では治療用X線3aの放出は行わないので、ステップS2−6は行わない。
【0140】
(6)ステップS3−6
図15(e)に示すように、医師のトリガ操作で治療用X線3aの照射を開始する。治療計画の段階で予定の照射時間は決まっており、ディスプレイ上ではカウントダウンが開始される。その一方で、1回の照射の照射時間(ステップS2−6:時間t5〜t6)も決まっている。従って、短時間(時間t5〜t6)の照射を繰り返す間に、カウントが減少する。そして、最終的にゼロになると治療用X線3aは自動的に停止する。治療用X線3aの治療線量は、電離箱126により検出され、治療管理アルゴリズムへ出力される。
治療用X線3aの照射は、上記ステップS2−6により行われる。従って、上記ステップS2−1〜ステップS2−6が繰り返し行われる。
また、治療管理アルゴリズムにより、治療中にイメージャ信号処理装置31、X線ヘッドシステム8、画像追尾アルゴリズム等から得られる照射実績情報(の全部又は一部)が、ディスプレイ上に継続的に表示される。医師は、この照射実績情報(の全部又は一部)を確認しながら、トリガを引きつづけて照射を継続する。照射実績情報は、トレンド記録データベースへ格納する。
システム制御装置80は、診断画像のサンプリング(追尾)、及び、治療用X線3aの照射を高速に交互に続け、画像追尾と治療用X線の照射とをリアルタイムで継続する。カウントダウンがゼロになる前であっても、医師がトリガを離せば、そのタイミングで直ちに治療用X線3aは停止するので、安全性は充分に確保される。
【0141】
(7)ステップS3−7
図15(f)に示すように、医師はマスターアームスイッチをSAFE位置として、システムを安全な状態にし、X線ヘッド10を次の照射位置へ移動させる。
この段階では、上記ステップS2−1〜ステップS2−3により行われる。そして、ステップS2−4〜ステップS2−6は行わない。
医師は、各ポータルにおける照射終了時と、一連の照射終了時に、累積被曝線量の総計にあたるトータルドウズ(Total Dose)を確認する。すなわち、治療管理アルゴリズムにより、トレンド記録データベースからデータを読出し、累積線量及び1クール内の累積線量分布を画面に表示する。治療に関するデータは、トレンド記録データベース内の、患者4毎に作成される治療ファイル(照射実績情報を含む)に記憶される。
【0142】
ここで、ステップS3−4における実際の患部5の診断画像と定義領域5−1の輪郭線とのパターンマッチングする方法について、更に説明する。
図16は、患部5と定義領域5−1とパターンマッチングによる輪郭線5−2との関係を示す図である。図16(a)は、患部5と定義領域5−1との関係を示し、図16(b)〜(e)は、患部5と輪郭線5−2との関係を示す。
【0143】
(1)ステップS4−1
医師は、図16(a)のように、ディスプレイに描画可能なタッチペンで、あるいは、マウスのようなポインタで描画ツールの要領でディスプレイ上に定義領域5−1を示す。
(2)ステップS4−2
治療計画アルゴリズムは、ディスプレイ上に描かれた定義領域5−1と、ディスプレイ上の診断画像とに基づいて、定義領域5−1内の診断画像を抽出する。そして、その診断画像の形状、座標、明度分布を把握する。又は、図16(b)に示すような定義領域5−1の所定の割合(例示90%)を占める明度範囲の形状を抽出することにより、その診断画像の形状、座標、明度分布を把握する。
(3)ステップS4−3
治療計画アルゴリズムは、定義領域5−1の範囲の形状、又は、所定の割合を示す明度範囲の形状について、その重心を求める。そして、ディスプレイ上に「+」で表示する。例えば、定義領域5−1(図16(a))の重心は、図16(c)のようになる。所定の割合を示す明度範囲(図16(b))の重心は、図16(d)のようになる。なお、図16(e)のように、単に定義領域5−1の中心だけ示しても良い。
以上により、パターンマッチングを終了する。
【0144】
ディスプレイ上において、定義領域5−1の範囲、又は、所定の割合を示す明度範囲を示す明度範囲を特定の色で表示し、その他は他の色で表示するという2値化表示を行うことも可能である。定義領域5−1等が判別しやすくすることが出来る。
【0145】
ただし、明度分布の把握は、以下のように行う。
図17は、診断画像における明度分布の一例を示すグラフである。縦軸は明度、横軸は診断画像の位置である。
診断画像の定義領域5−1における、明度は、グラフからL1〜L2の範囲となることがわかる。従って、定義領域5−1の明度範囲は、L1〜L2となる。
また、定義領域5−1の所定の割合(例示90%)を占める明度範囲とは、明度範囲L1〜L2のうち、定義領域5−1の所定の割合(例示90%)の面積を占めるように選択された連続する明度範囲L3〜L4である。この場合、L2=L4となる。
なお、同じ明度を示す他の位置は、定義領域5−1から離れているので、認識しない。
【0146】
本実施の形態の治療装置によれば、画像処理を含めて0.02秒以内に放射線照射ヘッド(X線ヘッド10)を高速首振り動作させ、照射野(患部)の動きに対して追従させることができるので、高精度に放射線を照射(照射時間0.01秒)することが出来る。このように患部の動きに対応して、高応答かつ高精度にノンアイソセントリック照射することが可能であるので、頚部以下の呼吸や心鼓動、蠕動や膀胱内の尿量等、臓器の運動や状態の影響を受けて腫瘍等の照射対象が移動する部位を治療対象とすることが出来るようになる。
【0147】
コントラストの低い軟部組織等は、イメージングできないため、骨組織等のコントラストの高いランドマークを元に予めX線CTやMRI等で照射野の位置決めが出来るようにしておく。あるいは、小型の金プレート等を照射野付近に埋め込んでマーカとするか、もしくはDSA(Digital Subtraction Angiography)のように造影剤や差分画像処理により画像強調出来るような工夫を行う。また、X線CTやPETでは、リアルタイムイメージングのために、高速のリアルタイム画像再構成計算を行う。
【0148】
本発明の放射線治療装置では、放射線の照射治療中においても、X線ヘッド(放射線照射ヘッド)に連動して動作するリアルタイム・イメージャ(X線システム)により、リアルタイムに治療野の状態をモニタすることが可能となる。
【0149】
また、本発明の放射線治療装置では、リアルタイム・イメージャ(X線システム)のセンサアレイ(イメージディテクタ)が、X線ヘッド(放射線照射ヘッド)側にあり、その動きに連動する。そのため、センサアレイに対する治療用の放射線(X線)の影響をなくすことが可能となる。
【0150】
また、X線源−センサアレイのセットは、X線ヘッド10に対して、固定された位置関係を有しているので、診断画像を取得する制御演算にかかる負担や、リアルタイム・イメージャの動作にかかる負担を大幅に低減することが出来る。
また、センサアレイは、X線ヘッド側に取り付けられているので、非常に強力なX線である治療用X線3aがセンサアレイに入射することがない。
【0151】
更に、本発明の放射線治療装置では、O型ガントリを用いている。そのため、X線ヘッド(放射線照射ヘッド)は、8/9球殻の非常に広い範囲で移動することができ、治療野に対して所望の角度から照射を行うことが可能となる。また、O型ガントリは、構造的に安定で、強度が高い。そのため、装置の歪みやイナーシャ等の問題が非常に少なく、X線ヘッドの位置合わせや、放射線照射の照準合わせを正確に実施することが出来る。
【0152】
加えて、ジンバル機構により、放射線治療における治療野が移動する場合でも、広範囲の領域から迅速な照準合わせを行い、治療野を迅速に追従しながら放射線を照射することが可能となる。
【0153】
そして、本発明の放射線治療装置は、放射線の照射を正確に行うことが出来るので、治療効果を高めながら放射線の照射量を低減できる。すなわち、患者に対する負担を軽減することが可能となる。
【0154】
(実施例2)
本発明である放射線治療装置の第2の実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。
図18〜図19は、本発明である放射線治療装置の第1の実施の形態における構成を示す正面図である。図により、一部省略して表示している。座標200は、図18〜図19におけるX軸、Y軸及びZ軸を有する3次元直交座標を示す。
放射線治療装置6Bは、治療用ベッドシステム7、X線ヘッド10、支持フレーム67−1、支持フレーム67−2、C型ガントリ89、従動導波管系61、マイクロ波発生装置20、リアルタイム・イメージャ30を備えている。
【0155】
C型ガントリ89は、ヘッド周回移動機構33、ガントリ回転機構72、上部支持機構82を含む。
C型ガントリ89(本体)は、治療用ベッド7−2の周囲を囲むように設けられ、矩形形状の断面を有する管を円環の一部を除いたC型状である。ガントリ回転機構72上に、水平面(XY平面)に対して直立するように設置されている。そして、円(一部を除いてC型になる前の円、以下「仮想円」ともいう)の中心が、アイソセンタ5aとなるように治療用ベッド7−2及びX線ヘッド10を配設する。
【0156】
ガントリ回転機構72及び上部支持機構82は、C型ガントリ89を対象としている他は実施例1と同様である。
ヘッド周回移動機構33は、図18のH3に示すように、X線ヘッド10をC型ガントリ89(本体)に沿ってC型ガントリ89(本体)上を周回移動させる。ラック・アンド・ピニオン方式やベルト方式を採用することが出来る。
配線32は、X線ヘッド10、リアルタイム・イメージャ30及びヘッド周回移動機構33に用いる制御用、電源用等の配線である。
【0157】
C型ガントリ89は、第1回転軸J1のまわりを、340°回転することが出来る。また、ヘッド周回移動機構33により、X線ヘッド10他(後述)は、アイソセンタ5aを中心としてC型ガントリ89に沿って240°回転することが出来る。すなわち、X線ヘッド10他(後述)は、約三分の二球(2/3球殻)を描くように運動する。
C型ガントリ89や、ヘッド周回移動機構33、ガントリ回転機構72、上部支持機構82は、例えば、ステンレス鋼のように剛性の大きい材料で造られる。C型ガントリ89(本体)は、幅200〜400mm、厚み100〜200mm、アイソセンタ5aからの半径800〜1000mmである。
【0158】
X線ヘッド10は、照射野5’(患部5)に治療用X線3aを照射する放射線照射ヘッドである。治療用X線3aを出射する小型電子リニアックを備える。C型ガントリ89にヘッド周回移動機構33を介して移動可能に取り付けられている。支持フレーム102(第1首振り機構131(後述)及び第2首振り機構132(後述)を含む)を備える。
【0159】
リアルタイム・イメージャ30は、患者4の治療野5に弱いファンビームX線である診断用X線3bを2方面(X線源37A、37B)から照射して、その透過像を検出(センサアレイ38A、38B)する。そして、検出されたデータを画像処理する(イメージャ信号処理装置31)ことによりコンピュータ画面上に治療野5の3次元断層診断画像を表示させる。リアルタイム・イメージャ30は、システム制御装置80により制御される。リアルタイム・イメージャ30は、通常のX線カメラを構成する2組のX線源37A、37B及びセンサアレイ38A、38Bのセット、それらのセットを保持する保持フレーム35A、35B、保持フレーム36A、36Bを具備する。
【0160】
保持フレーム35A及び保持フレーム36Aは、一端をX線ヘッド10の支持フレーム102(又はその周辺部材)に固定的に保持され、他端でそれぞれX線源37A及びセンサアレイ38Aを保持している。同様に、保持フレーム35B及び保持フレーム36Bは、一端をX線ヘッド10の支持フレーム102(又はその周辺部材)に固定的に保持され、他端でそれぞれX線源37B及びセンサアレイ38Bを保持している。そして、X線ヘッド10の動きに連動して、X線源37A、37B及びセンサアレイ38A、38Bのセットを動かすことが出来る。保持フレーム35A、35B、保持フレーム36A、36Bは、例えば、ステンレス鋼のように剛性の大きい材料で造られる。
【0161】
センサアレイ38Aは、J1軸を含む仮想円に垂直な平面を境として、一方側のX線ヘッド10の近傍に配置されている。これにより、センサアレイ38Aが、X線ヘッド10の強力なX線の影響を受けずに済む。そして、そのセンサアレイ側平面の中央部からの垂線がアイソセンタ5aを向き、その延長線上にX線源37Aが配置される。同様に、センサアレイ38Bは、J1軸を含む仮想円に垂直な平面を境として、他方側のX線ヘッド10の近傍に配置されている。これにより、センサアレイ38Bが、X線ヘッド10の強力なX線の影響を受けずに済む。そのセンサ側平面の中央部からの垂線がアイソセンタ5aを向き、その延長線上にX線源37Bが配置される。
【0162】
センサアレイ38A、38Bは、患者4を透過した診断用X線3bを受信(受光)する。患者4が配置される診断用スペースを取り囲むアイソセンタ5aを中心とする円の円周上に固定して配置され、多数の長高感度CdTeセンサを備え、0.5mmの分解能を有している。また、X線の照射時間は、1ショット当たり0.01秒である。
【0163】
X線源37A、37B及びセンサアレイ38A、38Bの各々とアイソセンタ5aとの距離は、X線ヘッド10とアイソセンタ5aとの距離よりも小さい。X線源及びセンサアレイが患部5に近いので、診断画像の画質が向上する。また、X線ヘッド10の、C型ガントリ89上での可動範囲を広くとることが出来る。
【0164】
センサアレイ38A表面の中央部からのアイソセンタ5aを通る垂線と、センサアレイ38B表面の中央部からのアイソセンタ5aを通る垂線とが成す角は、20°〜90°であることが好ましい。より好ましくは、40°〜60°である。これは、X線ヘッド10、X線源37A及びX線源37Bが、相互に影響を及ぼし合わずに、それぞれが正確に動作し、十分な精度を有する診断画像も得られる条件に基づいて設定される。
【0165】
X線源37A及びX線源37Bは、J1軸を含む仮想円に垂直な平面を挟んで互いに反対の側にある。センサアレイ38A及びアイソセンタ38Bも、同様である。これにより、患者4の体内における各部位の動きを迅速かつ正確に把握することが出来る。
また、リアルタイム・イメージャ30とC型ガントリ89とは、機械的に密に結合されており、共通の座標基準を持つ。
【0166】
その他の機能及び構成については、実施例1のリアルタイム・イメージャ74と同様であるので、その説明を省略する。
【0167】
上記の3軸の駆動(I3、H3)により、X線ヘッド10は、アイソセンタ5aを中心とする2/3球殻上でアイソセントリックな動き(X線ヘッド10はアイソセンタ5aを向く)が可能となる。更に、上記の2軸の駆動(R1、R2)により、X線ヘッド10は、2/3球殻上で擬似的にノンアイソセントリックな動き(X線ヘッド10はアイソセンタ5a周辺近傍の3次元の首振り領域5b(図18参照)内の所望の点を向く)が可能となる。この擬似ノンアイソセントリック動作は、X線ヘッド10の慣性中心周りの首振り運動であるため、アイソセントリック動作と比較して各段に素早い動きを行うことが出来る。擬似ノンアイソセントリックな高応答性の迅速な追尾モーションにより、例えば心鼓動等の早い動きに対してもヘッド照準を高応答かつ精密に追従させることが出来る。
【0168】
治療用ベッドシステム7、支持フレーム102、マイクロ波発生装置20及び従動導波管系61は、実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0169】
また、図3及び図4におけるX線ヘッド10、図5及び図6におけるX線ヘッド10の2軸の首振り機構、図7〜図9における、ロータリRFカプラについては、実施例1で説明した通りなので、その説明を省略する。
【0170】
次に、本発明の放射線治療装置の実施の形態の制御システムについて説明する。
【0171】
図10は、本発明の放射線治療装置の実施の形態の制御システムを示すブロック図である。
本実施例の制御システムは、治療用ベッドシステム7、X線ヘッドシステム8、リアルタイムイメージャ30、イメージャ信号処理装置31、マイクロ波発生装置20、システム制御装置80、システムユーティリティ90を備える。実質的にはシステム制御装置80が全体を統括して制御するシステム構成となる。
ただし、リアルタイムイメージャがリアルタイムイメージャ30であること、X線ヘッドシステム8のアイソセントリック駆動機構にC型ガントリ89、ヘッド周回移動機構33、ガントリ回転機構72を含んでいることを除くと、実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0172】
次に、本発明である放射線治療装置の実施の形態の動作について、添付図面を参照して説明する。
【0173】
放射線治療装置の実施の形態の動作については、リアルタイムイメージャがリアルタイムイメージャ30であること、C型ガントリ89、ヘッド周回移動機構33を用いている以外は、実施例1と同様(図11〜図17の説明を含む)であるので、その説明を省略する。
【0174】
本発明の放射線治療装置により、実施例1と同様の効果を得ることが可能となる。
【0175】
(実施例3)
次に、本発明である放射線治療装置の第3の実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。
図20〜図21は、本発明である放射線治療装置の第3の実施の形態における構成を示す正面図及び側面図である。図により、一部省略して表示している。座標200は、図20〜図21におけるX軸、Y軸及びZ軸を有する3次元直交座標を示す。
放射線治療装置6Cは、治療用ベッドシステム7、X線ヘッド10、支持フレーム102、Ω型ガントリ9、従動導波管系11、マイクロ波発生装置20、支持台29、リアルタイム・イメージャ30を備えている。
【0176】
Ω型ガントリ9は、ガントリ傾動機構28、ヘッド周回移動機構33、配線32とを含む。
Ω型ガントリ9は、治療用ベッド7−2より上半分の円弧状をなす半円リングを備え、治療用ベッド7−2を跨ぐように設けられている。ガントリ傾動軸26は、半円の両端及び中心を結ぶY軸方向の軸であり、円の中心はアイソセンタ5aと一致する。
【0177】
ガントリ傾動機構28は、Ω型ガントリ9を傾動可能に支持している。ガントリ傾動機構28は、Ω型ガントリ9をガントリ傾動軸26の周りに、Z軸正方向に直立する位置を0°として、+60°(X軸負方向に傾いた位置)〜−210°(Z軸負方向に倒立する位置から更にX軸正方向に傾いた位置)の範囲内で、図21のG1に示すように傾けることが出来る。すなわち、Ω型ガントリ9は、アイソセンタ5aを中心とした四分の三球(3/4球殻)を描くように運動する。Ω型ガントリ9は、例えば、ステンレス鋼のように剛性の大きい材料で造られ、幅200〜400mm、厚み20〜50mm、アイソセンタ5aからの半径800〜1000mmである。
【0178】
ヘッド周回移動機構33は、図20のH1に示すように、X線ヘッド10をΩ型ガントリ9に沿って、Ω型ガントリ9の半円弧上を周回移動させる。ラック・アンド・ピニオン方式やベルト方式を採用することが出来る。
配線32は、X線ヘッド10、リアルタイム・イメージャ30及び周回移動機構33に用いる制御用、電源用等の配線である。
【0179】
上記の3軸の駆動(G1、H1)により、X線ヘッド10は、アイソセンタ5aを中心とする3/4球殻上でアイソセントリックな動き(X線ヘッド10はアイソセンタ5aを向く)が可能となる。更に、上記の2軸の駆動(R1、R2)により、X線ヘッド10は、3/4球殻上で擬似的にノンアイソセントリックな動き(X線ヘッド10はアイソセンタ5a周辺近傍の3次元の領域5b(図20参照)内の所望の点を向く)が可能となる。この擬似ノンアイソセントリック動作は、X線ヘッド10の慣性中心周りの首振り運動であるため、アイソセントリック動作と比較して各段に素早い動きを行うことが出来る。擬似ノンアイソセントリックな高応答性の迅速な追尾モーションにより、例えば心鼓動等の早い動きに対してもヘッド照準を高応答かつ精密に追従させることが出来る。
【0180】
従動導波管系11は、マイクロ波発生装置20で発生したマイクロ波を、X線ヘッド10へ供給する導波路である。リンクアーム12−1、関節部14a、リンクアーム12−2、関節部14b、リンクアーム13、関節部14c、リンクアーム15、関節部16、X線ヘッド10を互いに連結してリンク機構を形成している。関節部14a、関節部14b、関節部14c、関節部16は、X軸方向の軸の周りに回転可能である。なお、リンク先端のX線ヘッド10は、ヘッド周回移動機構33により、Ω型ガントリ9に沿ってスライドし、また、第1首振り機構131により関節部16周りに首振りされる。
そして、関節部14a、14b、14c及び16は、マイクロ波を軸回転で伝えるロータリRFカプラ50(後述)を含む。リンクアーム12−1、12−2、13及び15は、導波管51(後述)を含み、関節部14a〜14c、16により、電磁気的に連通している。マイクロ波発生装置20で発生したマイクロ波は、関節部14a−リンクアーム12−関節部14b−リンクアーム13−関節部14c−リンクアーム15−関節部16を介して、X線ヘッド10へ供給される。
【0181】
治療用ベッドシステム7、支持フレーム102及びマイクロ波発生装置20は、実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
また、X線ヘッド10及びリアルタイム・イメージャ30は、実施例2と同様である。
【0182】
また、図3及び図4におけるX線ヘッド10、図5及び図6におけるX線ヘッド10の2軸の首振り機構、図7〜図9における、ロータリRFカプラについては、実施例1で説明した通りなので、その説明を省略する。
【0183】
次に、本発明の放射線治療装置の実施の形態の制御システムについて説明する。
【0184】
図10は、本発明の放射線治療装置の実施の形態の制御システムを示すブロック図である。
本実施例の制御システムは、治療用ベッドシステム7、X線ヘッドシステム8、リアルタイムイメージャ30、イメージャ信号処理装置31、マイクロ波発生装置20、システム制御装置80、システムユーティリティ90を備える。実質的にはシステム制御装置80が全体を統括して制御するシステム構成となる。
ただし、X線ヘッドシステム8のアイソセントリック駆動機構にΩ型ガントリ9、ヘッド周回移動機構33、ガントリ傾動機構28を含んでいることを除くと、実施例2と同様であるので、その説明を省略する。
【0185】
次に、本発明である放射線治療装置の実施の形態の動作について、添付図面を参照して説明する。
【0186】
放射線治療装置の実施の形態の動作については、Ω型ガントリ9、ガントリ傾動機構28を用いている以外は、実施例2と同様(図11〜図17の説明を含む)であるので、その説明を省略する。
【0187】
本発明の放射線治療装置により、実施例2と同様の効果を得ることが可能となる。
【0188】
(実施例4)
次に、本発明である放射線治療装置の第4の実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。
図22は、本発明である放射線治療装置の第4の実施の形態における構成を示す斜視図である。図により、一部省略して表示している。座標200は、図22におけるX軸、Y軸及びZ軸を有する3次元直交座標を示す。
放射線治療装置6Dは、治療用ベッドシステム7、X線ヘッド10、支持フレーム102、Ω型ガントリ9、従動導波管系11(図示されず)、マイクロ波発生装置20(図示されず)、支持台29、リアルタイム・イメージャ30’を備えている。
本実施の形態の構成は、リアルタイム・イメージャ30’が異なる以外は、実施例3と同様である。
【0189】
このリアルタイム・イメージャ30’は、回転駆動機構39、保持フレーム35A’、35B’、保持フレーム36A’、36B’、通常のX線カメラを構成する2組のX線源37A’、37B’及びセンサアレイ38A’、38B’のセットを具備する。
【0190】
保持フレーム35A’、35B’は、それぞれ、その一端をX線源37A’、37B’に、他端を回転駆動機構39に接続している。同様に、保持フレーム36A’、36B’は、それぞれ、その一端をセンサアレイ38A’、38B’に、他端を回転駆動機構39に接続している。
【0191】
センサアレイ38A’は、X線ヘッド10のY軸方向の一方側の近傍に配置されている。そのセンサ側平面の中央部からの垂線がアイソセンタ5aを向き、その延長線上にX線源37A’が配置される。同様に、センサアレイ38B’は、X線ヘッド10のY軸方向の他方側の近傍に配置されている。そのセンサ側平面の中央部からの垂線がアイソセンタ5aを向き、その延長線上にX線源37B’が配置される。
【0192】
回転駆動機構39は、2組のX線源37A’、37B’及び、センサアレイ38A’、38B’のセットが所望の位置に来るように、アイソセンタ5aを通りX軸と平行なリアルタイム・イメージャ回転軸Qを中心として保持フレーム35A’、35B’及び保持フレーム36A’、36B’を回転する。その際、2組のX線源37A’、37B’及び、センサアレイ38A’、38B’のセットが、X線ヘッド10の動作の邪魔にならないように、X線ヘッド10の動作に連動して、保持フレーム35A’、35B’及び保持フレーム36A’、36B’を回転する。
【0193】
2組のX線源37A’、37B’及び、38B’のセットは、互いに所定の角度を保持するように制御される。所定の角度は、センサアレイ38A’又はセンサアレイ38B’−アイソセンタ5a−X線ヘッド10の成す角は、60度〜20度である。より好ましくは、45度〜30度である。これは、X線ヘッド10、X線源37A’及びX線源37B’が、相互に影響を及ぼし合わずに、それぞれが正確に動作し、十分な精度を有する診断画像も得られる条件に基づいて設定される。
ただし、2組のX線源37A’、37B’及び、センサアレイ38A’、38B’のセットは、X線源−センサアレイのセットの目視線は互いに一致しないようにすれば、それぞれ独立に位置の制御を行っても良い。
【0194】
その他のリアルタイム・イメージャ30’の構成及び動作は、リアルタイムイメージャ30と同様であるので、その説明を省略する。
【0195】
本実施の形態の構成は、リアルタイム・イメージャ30’が異なる以外は実施例3と同様であるので、その他の構成については、その説明を省略する。
【0196】
本実施の形態の動作は、リアルタイム・イメージャ30’が異なる以外は、実施例3と同様である。従って、その説明を省略する。
【0197】
本発明の放射線治療装置により、実施例3と同様の効果を得ることが可能となる。
また、X線源−センサアレイのセットは、X線ヘッドとは別の機構に取り付けられているので、ガントリやX線ヘッドに対する負担が少ない。
【0198】
(実施例5)
本発明である放射線治療装置の第5の実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。
図23は、本発明である放射線治療装置の第5の実施の形態における構成を示す斜視図である。図により、一部省略して表示している。座標200は、図23におけるX軸、Y軸及びZ軸を有する3次元直交座標を示す。
放射線治療装置6Eは、治療用ベッドシステム7、X線ヘッド10、支持フレーム102、Ω型ガントリ9、従動導波管系11(図示されず)、マイクロ波発生装置20(図示されず)、支持台29、リアルタイム・イメージャ30’を備えている。
本実施の形態の構成は、リアルタイム・イメージャ30’’が異なる以外は、実施例3と同様である。
【0199】
Ω型ガントリ9は、ガントリ傾動機構28、ヘッド周回移動機構33、配線32とを含む。
ガントリ傾動機構28は、Ω型ガントリ9を傾動可能に支持している。ガントリ傾動機構28は、Ω型ガントリ9をガントリ傾動軸26の周りに、Z軸正方向に直立する位置を0°として、0°〜−90°(Z軸負方向に倒立する位置から更にX軸正方向に傾いた位置)の範囲内で、図23のG1’に示すように傾けることが出来る。すなわち、Ω型ガントリ9は、アイソセンタ5aを中心とした四分の一球(1/4球殻)を描くように運動する。Ω型ガントリ9は、例えば、ステンレス鋼のように剛性の大きい材料で造られ、幅200〜400mm、厚み20〜50mm、アイソセンタ5aからの半径800〜1000mmである。
【0200】
ヘッド周回移動機構33及び配線32は、実施例4と同様であるのでその説明を省略する。
【0201】
上記の3軸の駆動(G1’、H1)により、X線ヘッド10は、アイソセンタ5aを中心とする1/4球殻上でアイソセントリックな動き(X線ヘッド10はアイソセンタ5aを向く)が可能となる。更に、上記の2軸の駆動(R1、R2)により、X線ヘッド10は、1/4球殻上で擬似的にノンアイソセントリックな動き(X線ヘッド10はアイソセンタ5a周辺近傍の3次元の領域5b(図23参照)内の所望の点を向く)が可能となる。この擬似ノンアイソセントリック動作は、X線ヘッド10の慣性中心周りの首振り運動であるため、アイソセントリック動作と比較して各段に素早い動きを行うことが出来る。擬似ノンアイソセントリックな高応答性の迅速な追尾モーションにより、例えば心鼓動等の早い動きに対してもヘッド照準を高応答かつ精密に追従させることが出来る。
【0202】
このリアルタイム・イメージャ30’’は、回転駆動機構39A’’−1、39A’’−2、39B’’−1及び39B’’−2と、それらの各々に搭載されたX線源37A’’−1、X線源37A’’−2、37B’’−1及び37B’’−2、保持フレーム36A’’、36B’’、センサアレイ38A’’、38B’’を具備する。
【0203】
保持フレーム36A’’、36B’’は、それぞれ、その一端をX線ヘッド10の支持フレーム102に、他端をそれぞれセンサアレイ38A’’、38B’’に接続している。すなわち、保持フレーム36A’’、36B’’は、センサアレイ38A’’、38B’’をX線ヘッド10に固定し、X線ヘッド10に連動させる。センサアレイ98A又はセンサアレイ98B−アイソセンタ5a−X線ヘッド10の成す角は、90度〜20度である。より好ましくは、60度〜30度である。
【0204】
センサアレイ38A’’は、X線ヘッド10のY軸方向の一方側の近傍に配置されている。そのセンサ側平面の中央部からの垂線がアイソセンタ5aを向いている。同様に、センサアレイ38B’は、X線ヘッド10のY軸方向の他方側の近傍に配置されている。そのセンサ側平面の中央部からの垂線がアイソセンタ5aを向いている。
【0205】
回転駆動機構39A’’−1、39A’’−2、39B’’−1及び39B’’−2は、床面に設けられている。それらの各々に搭載されたX線源37A’’−1、A’’−2、37B’’−1及び37B’’−2から照射される診断用X線3bの向きを、所定のセンサアレイ38A’又は38B’の向きとするように各X線源の姿勢を制御する。
【0206】
X線源37A’’−1、A’’−2、37B’’−1及び37B’’−2の各々は、回転駆動機構39A’’−1、39A’’−2、39B’’−1及び39B’’−2上に設けられている。システム制御装置80により、X線ヘッド10の位置に基づいて、複数用意されたX線源(図23では、X線源37A’’−1、A’’−2、37B’’−1及び37B’’−2の4個)から最適な2つが選択される。ここで、最適な2つは、診断用X線3bが患部5を含むその周辺領域(アイソセンタ5a近傍)へ照射され、その透過X線がセンサアレイに達する、という条件を満たすものである。この最適なX線源の選択は、治療用X線3aのポータル(照射方向)を変更する毎に行う(追尾動作においては、行わない)。また、選択された2組のX線源−センサアレイのセットは、その目視線は互いに一致しないように制御を行う。
【0207】
その他のリアルタイム・イメージャ30’の構成及び動作は、リアルタイムイメージャ30と同様であるので、その説明を省略する。
【0208】
本実施の形態の構成は、リアルタイム・イメージャ30’が異なる以外は実施例3と同様であるので、その他の構成については、その説明を省略する。
【0209】
本実施の形態の動作は、リアルタイム・イメージャ30’が異なる以外は、実施例3と同様である。従って、その説明を省略する。
【0210】
本発明の放射線治療装置により、実施例3と同様の効果を得ることが可能となる。
また、X線源−センサアレイのセットは、X線ヘッドとは別の機構に取り付けられているので、ガントリやX線ヘッドに対する負担が少ない。
【0211】
本発明によれば、放射線ヘッド部全体のアイソセントリックな動きに加えて、ヘッド部自体をその慣性中心等の適当な回転中心の周りに1軸または2軸の首振り動作することにより、擬似的にノンアイソセントリックな照射治療が可能となり、その効果は、完全にノンアイソセントリックな照射治療装置に対して全く遜色の無いレベルのものが得られる。また、呼吸や心鼓動による照射野の移動に対応して高速に追従可能である。
【0212】
本発明によれば、非磁気型の精密検査装置により、治療野を確認しながら放射線の照射位置及び照射時間等の条件を高精度に制御することが出来る。このため、臓器自体に動きが無い頭部の治療に適用できることは勿論、心臓や肺などの動きのある臓器の小病巣に対しても、放射線を正確に照射することが出来、放射線治療分野において、その用途を拡大することが可能となる。
【0213】
本発明によれば、剛性の点で問題の多い片持型のロボットアームと異なり、高強度・高剛性の放射線ヘッド支持構造を採用することが出来、高い絶対精度を機械的に保証することが可能となる。このため、所要の効率的な治療が可能と成る。
【0214】
ノンアイソセントリックな照射治療に所要の自由度を遥かに越える過剰な自由度を持つ汎用の産業用ロボットアームを適用するのは、患者の安全性の点で問題がある。すなわち、ロボットアームの誤動作等の事故の際にロボットアームもしくはその先端の放射線照射ヘッドが患者に接触して、患者に対して外傷的な危害が及ぶ可能性がある。これに対して、可動範囲が制限されており、患者に対する絶対的な安全性が確保できる。
【0215】
従来技術では、照射治療中に照射野をリアルタイムに監視することができず、推定に基づく照射を余儀なくされていたが、本発明によれば、通常のX線カメラやX線CT、PET、DSA等のイメージャで、照射治療中に照射野をリアルタイムで監視することが可能となり、信頼性・安全性の高い照射治療が可能となる。
【0216】
また、リアルタイムに得られる上記の照射野画像を基にして画像追尾を行い、移動する照射野への追従照射が可能となる。
【0217】
本発明の実施の形態に示される医師とのマンマシンインタフェイスにより、安全性・信頼性に優れた放射線治療が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】本発明である放射線治療装置の第1の実施の形態における構成を示す正面図である。
【図2】本発明である放射線治療装置の第1の実施の形態における構成を示す側面図である。
【図3】本発明である放射線治療装置に適用されるX線ヘッドの構成を示す図である。ただし、(a)全体図、(b)(a)のAA断面図、(c)(a)のBB断面図である。
【図4】図3(c)の電子銃及び加速管近傍の拡大図である。
【図5】支持フレームに支持されたX線ヘッドを示す斜視図である。
【図6】支持フレームの2軸の首振り機構の構成を示す図である。ただし、(a)全体、(b)S1首振り駆動用サーボモータ、(c)、関節部、(d)S2首振り駆動用サーボモータ、(e)ロータリRFカプラである。
【図7】ロータリRFカプラを内部に有する関節部の構成を示す図である。
【図8】図7で示すロータリRFカプラの構成の詳細を示す斜視図である。
【図9】(a)図9のロータリRFカプラの詳細を示す断面図である。(b)ロータリRFカプラ内のマイクロ波のモードの一例を示す。
【図10】本発明である放射線治療装置の実施の形態の制御システムを示すブロック図である。
【図11】本発明である放射線治療装置の実施の形態の動作におけるタイミングチャートである。ただし、(a)診断画像を処理する動作のタイミング、(b)処理後の診断画像に基づく画像追尾計算及びX線ヘッドの首振り動作のタイミング、(c)治療X線の照射のタイミングである。
【図12】X線ヘッドによる放射線治療の様子を示す斜視図である。
【図13】X線ヘッドを首振りしながら治療X線を照射する様子を説明する図であり、図12におけるA−A断面を示す。
【図14】X線ヘッドを首振りしながら治療X線を照射する様子を説明する図であり、図12におけるB−B断面を示す。
【図15】(a)〜(f)擬似ノンアイソセントリックな治療の手順をディスプレイの表示で示すフロー図である。
【図16】患部と定義領域とパターンマッチングによる輪郭線との関係を示す図である。ただし、(a)患部と定義領域との関係、(b)〜(e)患部と輪郭線との関係を示す。
【図17】診断画像における明度分布の一例を示すグラフである。
【図18】本発明である放射線治療装置の第2の実施の形態における構成を示す正面図である。
【図19】本発明である放射線治療装置の第2の実施の形態における構成を示す側面図である。
【図20】本発明である放射線治療装置の第3の実施の形態における構成を示す正面図である。
【図21】本発明である放射線治療装置の第3の実施の形態における構成を示す側面図である。
【図22】本発明である放射線治療装置の第4の実施の形態の構成を示す斜視図である。
【図23】本発明である放射線治療装置の第5の実施の形態の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0219】
2、2a、2b 電気力線
3a 治療用X線
3b 診断用X線
4 患者
5 患部
5’ 照射野
5−1 定義領域
5−2(a,b,c) 輪郭線
5a アイソセンタ
5b 首振り領域
6、6A、6B、6C、6D、6E 放射線治療装置
7 治療用ベッドシステム
7−1 ベッド駆動システム
7−2 治療用ベッド
7−3 患者固定装置
8 X線ヘッドシステム
9 Ω型ガントリ
10 X線ヘッド
11、61、 従動導波管系
12、13、15、62(−1〜2)、63、65 リンクアーム
14a、14b、14c、16、64a、64b、64c、66 関節部
20 マイクロ波発生装置
21 サーキュレータ
22 ダミーロード
26 ガントリ傾動軸
28 ガントリ傾動機構
29 支持台
30(’、’’)、74 リアルタイム・イメージャ
31 イメージャ信号処理装置
32 配線
33 ヘッド周回移動機構
35A(’、’’)、35B(’、’’)、36A(’、’’)、36B(
’、’’)、76A、76B 保持フレーム
37A(’)、37B(’)、37A’’−1〜2、37B’’−1〜2、
77A、77B X線源
38A(’、’’)、38B(’、’’)、78A、78B センサアレ

39、39A’’−1〜2、39B’’−1〜2 回転駆動機構
50、50A,50B ロータリRFカプラ
51 導波管
52 RF窓
53、54 フランジ継手
55a、55b 導波路
56、57 回転部材
58 軸受け
59 λ/4波長チョーク
67、67−1、67−2 支持フレーム
66 関節部
68(−1〜2) 保持部
69 O型ガントリ
70 リング周回移動機構
71、71−1、71−2 O型駆動リング
72 ガントリ回転機構
72−1 基礎部
72−2 回転部
72−3 駆動部
73 ガントリ回転機構
75 保護板
76、76A、76B 保持フレーム
77、77A、77B X線源
78、78A、78B センサアレイ
80 システム制御装置
82 上部支持機構
82−1 基礎部
82−2 回転部
89 C型ガントリ
90 システムユーティリティ
95 回転駆動機構
99 回転ドラム(治療用ガントリ)
101 ヘッドカバー
102 支持フレーム
102a ブラケット
103 絶縁ガラス
104 電子銃
105 カソード
106 アノード
107、108 排気管
109 バンチャ空洞
110 加速管
111a サイドカップルキャビティ
111b 加速空洞
111c 中央孔
112 イオンポンプ
114 高圧接続端子
116 電気回路/冷却水回路
119 ターゲット排気室
120 出射部
121 ターゲット
122 冷却板
123 一次コリメータ
124 フラットニングフィルタ
125 二次コリメータ
126 電離箱
131 第1首振り機構
131a 駆動軸
131b S1首振り駆動用サーボモータ
132 第2首振り機構
132a 駆動軸
132b S2首振り駆動用サーボモータ
133 軸受け
200 座標
S1 第1首振り軸
S2 第2首振り軸
R1 第1首振り方向
R2 第2首振り方向
J1 第1回転軸
J2 第2回転軸
I1 O型ガントリ回転方向
I2 O型駆動リング回転方向
I3 C型ガントリ回転方向
G1 アークガイドレール移動方向
H1、H3 X線ヘッド移動方向
Q リアルタイム・イメージャ回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
O型ガントリと、
前記O型ガントリに移動可能に設けられ、被検体の治療野へ治療用放射線を照射する放射線照射ヘッドと、
前記O型ガントリに移動可能に設けられ、前記被検体の前記治療野に診断用X線を照射するX線源と、
前記O型ガントリに移動可能に設けられ、前記被検体を透過した前記診断用X線の透過X線を検出して、診断画像データとして出力するセンサアレイと
を具備し、
前記センサアレイは、前記放射線照射ヘッドを挟んで対象な位置に設けられ、前記O型ガントリ上を前記放射線照射ヘッドの移動に連動して動き、
前記X線源は、前記センサアレイの動きに連動して動く
放射線治療装置。
【請求項2】
前記放射線ヘッドと前記X線源と前記センサアレイとは、前記O型ガントリの環の内側に設けられている
請求項1に記載の放射線治療装置。
【請求項3】
前記センサアレイは、前記放射線照射ヘッドの近傍に設けられている
請求項1又は2に記載の放射線治療装置。
【請求項4】
前記センサアレイは、前記放射線照射ヘッドを挟んで両側に設けられている
請求項3に記載の放射線治療装置。
【請求項5】
前記放射線照射ヘッドを前記O型ガントリに沿って移動させるヘッド周回移動機構を更に具備する
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項6】
前記X線源及び前記センサアレイの各々とアイソセンタとの距離は、前記放射線照射ヘッドとアイソセンタとの距離よりも小さい
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項7】
前記X線源と前記センサアレイとが、アイソセンタに対して対称の位置にある
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項8】
制御部と、
前記診断画像データに基づいて、前記治療野の前記診断画像を生成する画像処理部と
を更に具備し、
前記放射線照射ヘッドは、前記O型ガントリに移動可能に接続され、前記放射線照射ヘッドから出射される前記治療用放射線が、前記治療野の動きに追従するように前記放射線照射ヘッドを首振りさせるヘッド首振り機構を備え、
前記制御部は、前記診断画像と、前記放射線照射ヘッドの位置と、前記放射線照射ヘッドの首振り状態とに基づいて、前記放射線照射ヘッドの照射野が前記治療野を追尾するように、前記ヘッド首振り機構の位置制御を行い、前記ヘッド首振り機構の位置制御後に、前記放射線照射ヘッドから前記治療用放射線を照射するように前記放射線照射ヘッドの制御を行う
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記治療野を示す前記診断画像上の予め指定された画像パターンに基づいて、
前記診断画像内の前記治療野の座標としての第1座標を算出し、
前記放射線照射ヘッドの位置と前記放射線照射ヘッドの首振り状態とに基づいて、前記照射野の座標としての第2座標を算出し、
前記第1座標と前記第2座標とに基づいて、前記照射野へ前記治療野が含まれるように、前記ヘッド首振り機構の位置制御を行う
請求項8に記載の放射線治療装置。
【請求項10】
前記制御部は、所定の時間間隔毎に、前記ヘッド首振り機構の位置制御及び前記放射線照射ヘッドの制御を行う
請求項8又は9に記載の放射線治療装置。
【請求項11】
前記ヘッド首振り機構は、前記放射線照射ヘッドを互いに直交する二つの軸の各々の周りで首振りさせる
請求項8乃至10のいずれか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項12】
前記O型ガントリを、鉛直軸の周りに回転するガントリ回転機構を更に具備する
請求項8乃至11のいずれか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項13】
前記O型ガントリが、C型ガントリ、Ω型ガントリ、L型ガントリのいずれか一つに置き換えられている
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項14】
マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置と、
一端を前記マイクロ波発生装置に、他端を前記放射線照射ヘッドに接続し、前記マイクロ波を前記放射線照射ヘッドへ導波する導波路と
を更に具備する
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項15】
前記マイクロ波は、Cバンドに属し、
前記放射線照射ヘッドは、前記マイクロ波で電子線を加速する加速管を備える
請求項14に記載の放射線治療装置。
【請求項16】
前記マイクロ波は、Xバンドに属し、
前記放射線照射ヘッドは、前記マイクロ波で電子線を加速する加速管を備える
請求項14に記載の放射線治療装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2006−21046(P2006−21046A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196650(P2005−196650)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【分割の表示】特願2002−266133(P2002−266133)の分割
【原出願日】平成14年9月11日(2002.9.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】