説明

放射線測定装置

【課題】放射線検出部を所定速度で移動させるための機能を提供する。
【解決手段】放射線測定装置であるサーベイメータは、放射線を検出するプローブ20と装置の本体10とによって構成されている。プローブ20は、測定対象の表面に沿って当該プローブ20を所定速度で移動させるためのガイド表示を行う複数のLED26を備えている。複数のLED26は、プローブ20の移動方向に沿って一列に配列されている。そして、プローブ20を移動させる速度に応じた点灯移動速度で各LED26が順次点灯される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線測定装置に関し、特に、放射線検出部を移動させながら放射線を検出する放射線測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所内などで発生する廃棄物などを所外に持ち出すためには、その廃棄物などの表面汚染密度の程度を測定し、所定の値以下であることを実測確認する必要がある。
【0003】
その目的のために利用される放射線測定装置として、可搬型ベータ線用のサーベイメータが知られている(特許文献1,2参照)。
【0004】
このようなサーベイメータは、放射線検出部を備えた放射線プローブと、放射線プローブが接続される装置本体とによって構成されている。そして、放射線プローブを被測定物に近づけて被測定物に対して放射線プローブを動かしながら、つまり、被測定物に放射線検出部を近づけて被測定物に対して放射線検出部を移動させながら、表面汚染密度の程度の測定を行うことがある。
【0005】
【特許文献1】特開2001−215278号公報
【特許文献2】特許第3420119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サーベイメータによって表面汚染密度の程度を正確に測定するためには、放射線検出部と被測定物との距離や放射線検出部を移動させる速度などを予め定められた測定条件に適合させなければならない。例えば距離や速度を一定に保った状態で測定する必要がある。
【0007】
そのため、従来においては、放射線検出部を備えた放射線プローブと被測定物との距離や放射線プローブを移動させる速度を一定に保った状態で測定が実施されるように、例えば測定作業者に対して測定のためのトレーニングを行っていた。
【0008】
しかしながら、測定作業者に対するトレーニングのみでは、特に放射線検出部の移動速度を一定に保つことは困難な場合が多い。
【0009】
本発明は、このような背景において成されたものであり、その目的は、放射線検出部を所定速度で移動させるための機能を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である放射線測定装置は、測定対象から放射される放射線を検出する放射線検出部と、放射線検出部から出力される検出信号を信号処理する信号処理部と、信号処理によって得られる測定結果を表示する測定結果表示部と、放射線検出部を所定速度で移動させるためのガイド表示を行う移動ガイド表示部と、を有することを特徴とする。
【0011】
望ましい態様において、前記移動ガイド表示部は、前記ガイド表示として、前記放射線検出部を移動させる速度に応じた速度でマーカを移動する表示を行うことを特徴とする。望ましい態様において、前記移動ガイド表示部は、複数の発光素子からなる発光素子列を備え、前記ガイド表示として、前記放射線検出部を移動させる速度に応じた点灯移動速度で発光素子列に含まれる各発光素子を順次点灯させることを特徴とする。
【0012】
上記態様において、移動ガイド表示部は、例えば、LED(light-emitting diode)やLCD(liquid crystal display)などで構成される。つまり、例えば、LEDなどの複数の発光素子からなる発光素子列に含まれる各発光素子を、放射線検出部の移動速度に応じた点灯移動速度で順次点灯させる。そして、測定作業者が、順次点灯される発光素子をマーカとしてそのマーカの移動速度に合わせて放射線検出部を移動することにより、放射線検出部を所定速度で移動させるようにする。また、LCDにマーカとなる点や矢印などを表示させ、放射線検出部の移動速度に応じた速度で点や矢印などのマーカをLCD上で移動表示させてもよい。
【0013】
また上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である放射線測定装置は、測定対象から放射される放射線を検出して検出信号を出力する放射線プローブと、検出信号を信号処理してそれによって得られる測定結果を表示する装置本体と、を有する放射線測定装置であって、前記放射線プローブは、測定対象の表面に沿って当該放射線プローブを所定速度で移動させるためのガイド表示を行う発光素子列を備え、前記発光素子列は、前記放射線プローブの移動方向に沿って配列される複数の発光素子で構成され、前記放射線プローブを移動させる速度に応じた点灯移動速度で発光素子列に含まれる各発光素子を順次点灯させる、ことを特徴とする。
【0014】
望ましい態様において、前記放射線プローブは、当該放射線プローブの移動方向の反転を検知するセンサを備え、前記センサによって放射線プローブの移動方向の反転が検知されると、前記発光素子列の点灯移動方向を反転させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、放射線検出部を所定速度で移動させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1には、本発明に係る放射線測定装置の好適な実施形態が示されており、図1は、放射線測定装置であるサーベイメータの構成を示す斜視図である。
【0018】
本実施形態のサーベイメータは、GM管やシンチレーション検出器などの放射線検出器を内蔵したプローブ20と、測定値算出のための信号処理・演算回路やメータ表示部12を備えた本体10とから構成される。プローブ20は、ケーブル30により本体10に接続され、検出信号を本体10の信号処理回路系に供給する。本体10は、信号処理・演算回路やメータ表示部12を収容した本体主部16と、ユーザが把持する取手14とから構成される。取手14は本体主部16の上面、すなわちメータ表示部12のある面に取り付けられており、取手14を持ったときにユーザからメータ表示部12が見やすくなっている。ユーザは、一方の手で本体10の取手14を持ち、もう一方の手でプローブ20を持ってその検出面22を測定対象に向けて測定を行う。
【0019】
保管時や持ち運び時の便宜のために、プローブ20は本体10に装着可能となっている。すなわち、図1に示すように、本体10の取手14の上面には溝部14aが形成され、この溝部14aには、スライドホルダ14bがはめ込み固定されている。そして、プローブ20には、取手14のスライドホルダ14bに摺動係合するスライダ24が取付固定されている。このスライダ24をスライドホルダ14bに挿入することにより、プローブ20を本体10に装着することができる。
【0020】
本実施形態のサーベイメータの測定対象は、例えば、床やかべなどである。測定対象は、原子力発電所内などで発生する廃棄物や、原子力発電所内などで作業する作業員の衣服などであってもよい。本実施形態のサーベイメータを利用して放射線を測定する際、ユーザ(測定作業者)は、プローブ20を持ってその検出面22を測定対象に向けて、プローブ20を測定対象に対して移動させながら、測定対象から放射される放射線を検出する。
【0021】
放射線を正確に測定するためには、ユーザは、プローブ20と測定対象との距離や、プローブ20を移動させる速度などを予め定められた測定条件に適合させなけらばならない。例えば、プローブ20を動かす速度が速すぎると、プローブ20によって放射線が十分に検出されないまま測定が行われてしまい、実際に放射されている放射線量よりも低い測定結果が得られる場合もある。そのため、測定規格などに定められた所定速度でプローブ20を移動させることが必要になる。
【0022】
そこで、本実施形態のサーベイメータでは、所定速度でプローブ20を移動させるガイド機能を実現するため、プローブ20に複数のLED26が設けられている。LED26は、検出面22の裏側に設けられている。つまり、検出面22を測定対象に向けた際にLED26がユーザ側に向けられ、ユーザがLED26の点灯状態を確認することができる。なお、複数のLED26は、例えば、5mmの一定間隔で11個が一列に配置される。そして、後に図3などを利用して詳述するように、LED26の点灯状態から、ユーザがプローブ20を所定の速度で移動させることが容易になる。
【0023】
図2は、本実施形態のサーベイメータの内部構成を示すブロック図である。プローブ20に設けられたシンチレータ202、光電子増倍管204、ブリーダ206によって放射線が検出される。シンチレータ202は、放射線と相互作用をすることにより、その放射線が失ったエネルギーに比例した強度の光子を放出する。この発光現象はシンチレーションと呼ばれている。光電子増倍管204は、シンチレータ202におけるシンチレーション光を検出する。ブリーダ206は、光電子増倍管204に電極間電圧を印加するための回路であり、例えば、抵抗を直列に繋いだ電圧分圧回路などによって構成される。シンチレータ202、光電子増倍管204およびブリーダ206で構成される放射線検出部によって放射線が検出されると、検出信号が本体10へ出力される。
【0024】
また、プローブ20には、複数のLED26と各LED26を順次点灯させるためのシフトレジスタ212が設けられている。シフトレジスタ212は、クロック発生回路208から出力されるクロック信号に基づいて各LED26を順次点灯させる。例えばクロック信号のパルスの立ち上がりタイミングに応じて、一列に配列された複数のLED26の一方端から他方端に向かって各LED26を順次点灯させる。なお、LED26の点灯時間間隔や点灯方向は、クロック発生回路208のクロック信号に応じて制御される。
【0025】
さらに、プローブ20には、加速度センサ210が設けられている。加速度センサ210は、プローブ20の加速度を検出することにより、加速度の変化から、プローブ20の移動方向が反転するタイミングを検出する。
【0026】
本体10に設けられた放射線計数部110は、プローブ20から出力される放射線の検出信号に含まれるパルスを計数し、それによって得られる測定結果をメータ表示部112のメータに反映させる。測定結果は、例えば単位「Bq/cm(Bq:ベクレル)」でメータに示される。
【0027】
LED制御回路106は、プローブ20のクロック発生回路208を制御して、LED26の点灯時間間隔や点灯方向を制御する。なお、点灯方向は、プローブ20の加速度センサ210によって検出されるプローブ20の移動方向の反転タイミングに基づいて変更される。
【0028】
ユーザは、操作スイッチ102を介して、本実施形態のサーベイメータの各種装置設定を行うことができる。制御部104は、その設定状態などに応じてサーベイメータ内の各部を制御する。ユーザは、操作スイッチ102を介して、例えば、装置の時定数を設定する。一般に、サーベイメータは、汚染箇所を探す(サーベイ)場合には、測定値の正確さよりも測定の迅速さが重要であると考え、このような場合には、時定数を短くして測定を行う。一方、探し当てた汚染箇所の汚染の程度を測定する場合には、迅速さよりもある程度の正確さが必要であると考え、このような場合には、時定数を長くして測定を行う。
【0029】
制御部104は、時定数などの設定情報に応じて、LED制御回路106や放射線計数部110を制御する。例えば、時定数が長い場合には、プローブ20を動かす速度を小さくする必要があるため、時定数に応じた速度でプローブ20をガイドするように、LED制御回路106を制御する。
【0030】
図3は、本実施形態のガイド表示機能を説明するための図である。図3には、各時刻ごとに、プローブ20の先端部、つまりプローブ20のLED26が設けられている部分(図1参照)が示されている。図3は、ユーザによってプローブ20が右方向に移動されていく様子を示している。
【0031】
まず、時刻tにおいて、プローブ20に設けられた複数のLED26のうちの右端のLED26が点灯する。この際ユーザは、右端のLED26の位置に存在する測定対象上の目印50を見つける。目印50は、例えば、測定対象物の傷や色や模様などである。
【0032】
図2を利用して説明したように、複数のLED26は、シフトレジスタ212やクロック発生回路208を介して、LED制御回路106によって制御される。そして、プローブ20を移動させる速度に応じた点灯移動速度で、一方端から他方端に向かって各LED26が順次点灯される。
【0033】
図3は、右端から左端に向かって各LED26が順次点灯する様子を示している。つまり、時刻tにおいて右端のLED26が点灯された後、時刻t(例えば時刻tから1秒後)において一つ左隣のLED26が点灯する。その際、ユーザは、新たに点灯したLED26の位置と目印50の位置が同じになるように、プローブ20を右方向に移動させる。そして、時刻tにおいてさらに一つ左隣のLED26が点灯し、ユーザは、新たに点灯したLED26の位置と目印50の位置が同じになるように、プローブ20を右方向に移動させる。
【0034】
このように、右端から左端に向かって各LED26が順次点灯し、ユーザが順次点灯するLED26の位置と目印50の位置が同じになるようにプローブ20を移動させることにより、LED26の点灯移動速度でプローブ20が移動される。そのため、測定規格などによって予め定められたプローブ20の移動速度でLED26を順次点灯させることにより、予め定められた移動速度でプローブ20を移動させるためのガイドとなる。
【0035】
なお、右端から左端に向かって各LED26が順次点灯して左端のLED26が点灯した後、つまり図3における時刻tにおいて、再び右端のLED26が点灯され、ユーザは、右端のLED26の位置に存在する別の目印52を見つける。
【0036】
再び右端のLED26が点灯された後も、左端に向かって各LED26が順次点灯し、ユーザは順次点灯するLED26の位置と、新しい目印52の位置が同じになるようにプローブ20を右方向へ移動させる。こうして、時刻t以降においても、右端から左端に向かって各LED26の点灯が繰り返され、ユーザが繰り返し点灯が行われるごとに新しい目印を見つけることにより、プローブ20が所定の速度で右側に向かって移動される。
【0037】
ちなみに、左端のLED26から右端のLED26に点灯が切り替わるタイミング、つまり時刻tでは、左右両端のLED26を共に点灯させて、ユーザに切り替わりのタイミングであることを知らせるようにしてもよい。また、時刻tにおいてLED26を点滅させるようにしてもよい。
【0038】
さらに、本実施形態では、プローブ20の移動方向が反転された場合に、LED26の点灯移動方向が切り替えられる。
【0039】
図4は、放射線測定の際のプローブの移動を説明するための図である。図4には、床や壁などの被測定物(測定対象)60の表面に沿ってプローブを移動させる際の移動方向が実線矢印で示されている。
【0040】
図4(A)では、被測定物60の左側から右側に向かって実線矢印に従ってプローブが移動され、そして、プローブが右端に到達した後に左端に戻されてから、再び左側から右側に向かって実線矢印に従ってプローブが移動されている。この場合、プローブが常に左側から右側に向かって移動されて放射線が測定されている。したがって、図3を利用して説明したように、LED26を右端から左端に繰り返し移動点灯させることにより、プローブを所定の速度で移動させることができる。
【0041】
一方、図4(B)では、被測定物60の左側から右側に向かって実線矢印に従ってプローブが移動され、プローブが右端に到達した後に、今度は右側から左側に向かって実線矢印に従ってプローブが移動される。そして、さらに左側から右側に向かってプローブが移動される。つまり、図4(B)の場合には、プローブの移動方向が反転されて放射線が測定されている。
【0042】
そこで、本実施形態のサーベイメータでは、プローブに内蔵された加速度センサ(図2の符号210)によって、プローブの加速度を検出することにより、加速度の変化から、プローブの移動方向が反転するタイミングを検出している。そして、LED制御回路(図2の符号106)は検出されたタイミングで、LEDの点灯移動方向を切り替えている。
【0043】
つまり、プローブが左側から右側に向かって移動されている際には、LEDを右端から左端へ繰り返し点灯移動させ、プローブの移動方向が反転されてプローブが右側から左側に向かって移動される際には、LEDを左端から右端へ繰り返し点灯移動させる。これにより、プローブが右側から左側に向かって移動される場合においても、図3を利用して説明した原理を利用して、但しその移動方向(左右)を反転させて、プローブを所定の速度で移動させることができる。
【0044】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るサーベイメータの全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るサーベイメータの内部構成を示すブロック図である。
【図3】ガイド表示機能を説明するための図である。
【図4】放射線測定の際のプローブの移動を説明するための図である。
【符号の説明】
【0046】
20 プローブ、26 LED、106 LED制御回路、210 加速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象から放射される放射線を検出する放射線検出部と、
放射線検出部から出力される検出信号を信号処理する信号処理部と、
信号処理によって得られる測定結果を表示する測定結果表示部と、
放射線検出部を所定速度で移動させるためのガイド表示を行う移動ガイド表示部と、
を有する、
ことを特徴とする放射線測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線測定装置において、
前記移動ガイド表示部は、前記ガイド表示として、前記放射線検出部を移動させる速度に応じた速度でマーカを移動する表示を行う、
ことを特徴とする放射線測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線測定装置において、
前記移動ガイド表示部は、複数の発光素子からなる発光素子列を備え、前記ガイド表示として、前記放射線検出部を移動させる速度に応じた点灯移動速度で発光素子列に含まれる各発光素子を順次点灯させる、
ことを特徴とする放射線測定装置。
【請求項4】
測定対象から放射される放射線を検出して検出信号を出力する放射線プローブと、
検出信号を信号処理してそれによって得られる測定結果を表示する装置本体と、
を有する放射線測定装置であって、
前記放射線プローブは、測定対象の表面に沿って当該放射線プローブを所定速度で移動させるためのガイド表示を行う発光素子列を備え、
前記発光素子列は、前記放射線プローブの移動方向に沿って配列される複数の発光素子で構成され、
前記放射線プローブを移動させる速度に応じた点灯移動速度で発光素子列に含まれる各発光素子を順次点灯させる、
ことを特徴とする放射線測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の放射線測定装置において、
前記放射線プローブは、当該放射線プローブの移動方向の反転を検知するセンサを備え、
前記センサによって放射線プローブの移動方向の反転が検知されると、前記発光素子列の点灯移動方向を反転させる、
ことを特徴とする放射線測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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