説明

放射線測定装置

【課題】測定の労力を軽減できるとともに測定時間も短縮できる放射線測定装置を得る。
【解決手段】車輪26に支持され移動可能な基台20のパイプ21にパイプ31を差し込んで図示しないネジでパイプ31を固定するようにされ高さ調整が可能な支持枠30の側方及び上方に各4台の放射線検出器1,2が一列に取り付けられた検出器支持板41,42をワイヤ9を介して駆動装置5により駆動し、壁面91及び天井92の放射線の分布を測定する。複数の放射線検出器1,2が取り付けられた検出器支持板41,42を駆動装置5により駆動して放射線を測定するので、測定の労力を軽減できるとともに測定時間も短縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば壁面や天井等の放射線を検出する放射線測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線測定装置として、駆動機構が設けられ走行可能な基台と、基台上に設けられた昇降機構と、この昇降機構のワイヤに接続された放射線検出装置とを備え、床または天井または壁面に沿って上記放射線検出装置のγ線検出器を移動させながら放射線計測を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平2−259588号公報(第2頁右上欄第12行〜左下欄第13行及び第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の放射線測定装置においては、測定対象はγ線であり、γ線検出器の周りに遮蔽体が必要となるため、γ線検出器をあまり大きくできず、小さなγ線検出器にて大面積を対象に位置分解能良く測定するのに多大な時間を要する。この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、測定の労力を軽減できるとともに測定時間も短縮できる放射線測定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明における放射線測定装置は、移動台車、移動台車の所定位置からの距離を調整しうるようにして支持された支持部材、支持部材に移動部材を介して支持された放射線検出器、移動台車に搭載され移動部材を所定方向に駆動する移動部材駆動装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、この発明における放射線測定装置は、移動台車、この移動台車に伸縮支持装置を介して支持された支持部材と、支持部材に設けられた移動部材と、移動部材に固着され放射線を測定する放射線検出器と、移動台車に搭載され移動部材を所定方向に駆動する移動部材駆動装置とを備えたので、測定の労力を軽減できるとともに測定時間も短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1〜図4は、この発明を実施するための実施の形態1を示すものであり、図1は放射線測定装置の構成を示す構成図、図2は放射線測定装置の設置例を示す設置図、図3は測定手順を示すフローチャート、図4は測定結果の表示例を示す説明図である。図1において、放射線測定装置は次のように構成されている。基台20に支持枠30が上下移動可能に支持されている。基台20は、2本のL状のパイプ21をパイプ22で図1の左右方向に連結し、パイプ21,22で四角形の枠23を形成し、当該四角形の枠23に載置板24を固定したものであり、底部に4個の車輪26が取り付けられ、左方に2個のストッパ25が固定されている。なお、4個の車輪26に移動可能に支持された基台20がこの発明における移動台車である。
【0008】
支持枠30は、パイプ21の径よりも小さい径のL状の別の2本のパイプ31を同様に連結パイプ32で連結し、連結した水平部分を支持部材としての上部水平部34とし、図1における左方に2個のストッパ35が固着され、上部に4個のストッパ36が固着されている。このパイプ31の端部31aを上記L状のパイプ21の端部21aに挿入し、パイプの各端部21a,31aを入れ込み構造に構成し、内側のパイプ31の端部31aをスライドさせて伸縮した後、外側のパイプ21の端部21aに設けた図示しないねじ穴にネジ(図示しない)をねじ込み、ネジを締めることにより内側のパイプ31を所定の位置で固定できるようにしている。また、パイプ32の中央部には滑車37が取り付けられている。なお、外側のパイプ21の端部21aとこの端部21aに挿入されたパイプ31の端部31a及び図示しないネジがこの発明における伸縮支持装置である。また、パイプ31の端部31aがこの発明における交差方向支持部材である。
【0009】
支持枠30に交差方向移動部材としての検出器支持板41及び移動部材としての検出器支持板42がそれぞれ上下方向及び水平方向に移動可能に取り付けられており、検出器支持板41に図1における左右方向すなわち検出器支持板41の移動方向と交差する方向である直角方向に4台の交差方向放射線検出器としての放射線検出器1が一列に固定され、検出器支持板42に図1における左右方向にすなわち検出器支持板42の移動方向と直角方向に4台の放射線検出器2が一列に固定されている。なお、放射線検出器1,2はβ線を検出するものである。また、基台20の載置板24上に放射線測定器4、駆動装置5、信号処理装置6、操作表示装置11が載置され、上述した放射線検出器1と放射線測定器4は検出器信号ケーブル61にて接続されている。
【0010】
検出器支持板41,42はワイヤ9により滑車37を介して連結されるとともにワイヤ9にて交差方向移動部材駆動装置及び移動材駆動装置としての駆動装置5により上下方向及び水平方向にそれぞれ駆動される。放射線測定装置4は、放射線検出器1で検出した放射線から放射線の分布を求める。信号処理装置6は、駆動装置5からの放射線検出器1の位置情報及び放射線測定装置4からの放射線情報を受け取り、位置に対応した放射線密度を演算処理により求める。操作表示装置11は、信号処理装置6の演算結果の表示を行う。
【0011】
次に、放射線測定装置の設置手順について、図2の設置例を用いて説明する。車輪26にて本装置を測定地点まで移動させ、壁面91側となるストッパ25,35が壁面91に当接するように本装置を設置する。次に、パイプ31を上方に移動させ天井92側となるストッパ36が天井92に当接するように設置して、パイプ31の端部31aをパイプ21の端部21aにネジで固定する。パイプ31を上下に移動させる際はワイヤ9の長さに過不足が生じるため駆動装置5にてワイヤの引き出し巻き取りを行う。
【0012】
壁面91側となるストッパ25,35及び天井92側となるストッパ36は、放射線検出器1と壁面91あるいは天井92との距離が一定となるよう調整されており、表面汚染検出の際に、検出感度を容易に一定とすることができる。壁面91の放射線を測定する場合は、壁面91に対応する位置に設置している放射線検出器1によって測定し、天井92の放射線を測定する場合は、天井92に対応する位置に設置している放射線検出器2によって測定する。
【0013】
次に、測定手順について図3のフローチャートを用いて説明する。操作表示部11より測定開始信号を入力すると(ステップS11)、演算処理装置6から駆動装置5に移動信号が送られ検出器支持板2が初期位置まで移動することにより放射線検出器1が測定初期位置に位置し(ステップS12)、表面の放射線すなわち放射線汚染の測定を開始する(ステップS13)。測定終了後、測定値を演算処理し、測定結果を画面に表示する(ステップS14)。次に、演算処理装置6からの移動命令により、検出器支持板41,42を駆動装置5を用いて次の測定位置まで自動で移動させ(ステップS15)、放射線検出器1,2が測定終了位置にあるか否か、すなわち所定位置までの測定を終えたか否かを判定し(ステップS16)、測定終了位置にない場合はステップS13へ戻りステップS13以降を繰り返して測定を行う。ステップS16において、測定終了位置まで移動していたら測定終了とする(ステップS17)。その後、放射線測定装置を次の測定場所へ移動する。
【0014】
次に、測定結果の表示について図4を用いて説明する。図4は、50cm×50cmサイズの検出器を4台並べた本装置にて、壁面91の高さ300cm、天井92の位置0〜200cmの範囲の放射線の測定を行った場合の放射線の測定値の表示例である。壁面91を下から上へ順次測定を行い、各位置での測定結果を移動部材位置情報発信装置としての駆動装置5から得た検出器支持板41,42の位置情報と組み合わせて、図4(a)のように逐次表示する。設定した複数のしきい値を超えた場合は、各しきい値に対応した色(図4ではハッチングで示す)をつける。また、現在測定中の位置については測定中の旨を表示する。また、天井92についても、同様に図4(b)に示すように位置に対応して放射線の測定値を表示する。
【0015】
本放射線測定装置により、信号処理部6に送信された放射線検出器1の位置情報と表面汚染密度情報である放射線の測定値を組み合わせて表面汚染密度の分布を自動測定することが可能となり、測定に要する労力を軽減できる。また、放射線検出器1,2として、大面積の例えばβ線表面汚染検出器を複数台並べて測定することにより、広い面積を短時間で測定することが可能となる。なお、放射線検出器1,2のサイズ、台数、測定位置のピッチ及び各測定位置での測定時間を変えることにより、位置分解能、測定時間、精度が調整可能であることは言うまでもない。
【0016】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2を示す放射線測定装置の要部を示す要部構成図である。図5に示すように、検出器支持板2と放射線検出器1との間にγ線遮蔽体73を設けることにより、外部のγ線放射線によるノイズを低減させ、β線を検出する放射線検出器1の高感度化を図ることができる。なお、放射線検出器1及びγ線遮蔽体73にて、放射線検出装置を構成している。
【0017】
実施の形態3.
図6、図7は、この発明の実施の形態3を示すものであり、図6は放射線測定装置の構成及び設置を示す構成及び設置図、図7は測定手順を示すフローチャートである。上述の実施の形態1では基台20の移動は手動にて行うこととしていたが、図6のように基台20に走行用モータ44、移動台車位置情報発信装置としての移動距離測定装置45、及び近接センサ46を取り付け、信号処理装置56にて制御することにより、自動移動測定が可能となる。
【0018】
次に、図7のフローチャートにより、測定手順を説明する。図7において、放射線測定装置を初期位置に設置し、移動方向を2次元の(X,Y)方向に設定する(ステップS21)。ステップS22において移動方向をX方向とした場合、天井92の測定を実施し(ステップS23)、測定終了後X方向に測定範囲分(1ステップ)移動する(ステップS24)。その際、近接センサ46が動作していないかどうかすなわち近接センサ46にて壁面91からの距離が所定値以下でないか否かを監視する(ステップS25)。ステップS25において、壁面91からの距離が所定値以上あり移動する間に近接センサ46が作動しなければ、ステップS23へ戻り、次の測定を開始する。
【0019】
ステップS25において、近接センサ46が作動すれば、移動を停止し(ステップS26)、測定を行う(ステップS27)。これにより、部屋のX方向の一列分の測定ができる。X方向及びY方向の全ての測定が終わって終了位置にあるか否かを判定し(ステップS28)、終わっていなければステップS22へ戻り、Y方向にフレーム幅分ずらして順次測定する(ステップS31〜S35)。ステップS28において、X方向及びY方向とも終了位置にあれば測定を終了する。測定値は測定の都度、移動台車位置情報発信装置としての移動距離測定装置45及び移動部材位置情報発信装置として駆動装置5からの放射線検出器1の位置情報に基づいて、天井全体の表面汚染測定(放射線の測定)が可能となる。なお、壁91についても、同様にして放射線の測定を行うことができる。
【0020】
このように、駆動装置により走行用モータ44により基台20をX方向及びY方向に駆動し、移動距離測定装置45からの移動距離情報と駆動装置5からの放射線検出器1の位置情報と放射線検出器1あるいは放射線検出器2にて測定された測定対象面の放射線の測定値とに基づき、測定対象面の放射線汚染の分布状況を迅速かつ容易に知ることができる。
【0021】
以上のように、この発明における放射線測定装置は、移動台車、この移動台車に伸縮支持装置を介して支持された支持部材と、支持部材に設けられた移動部材と、移動部材に固着され放射線を測定する放射線検出器と、移動台車に搭載され移動部材を所定方向に駆動する移動部材駆動装置とを備えたので、測定の労力を軽減できるとともに測定時間も短縮できる。
【0022】
そして、支持部材と交差する方向に設けられた交差方向支持部材と、交差方向支持部材に設けられた交差方向移動部材と、交差方向移動部材に固着され放射線を測定する交差方向放射線検出器と、移動台車に搭載され交差方向移動部材を支持部材と交差する方向に駆動する交差方向移動部材駆動装置とを備えたものであることを特徴とするので、放射線検出器及び交差方向放射線検出器の双方により放射線の測定が可能であり、測定の労力を軽減できるとともに測定時間も短縮できる。
【0023】
さらに、放射線検出器は、所定方向と交差する方向に複数個配列されたものであることを特徴とするので、複数の放射線検出器により所定方向と交差する方向における所定の幅分の放射線を同時に測定可能であるので、測定時間を短縮できる。
【0024】
また、放射線検出器はβ線を検出するものであり、支持部材は放射線検出器に入射するγ線を遮蔽するγ線遮蔽体が設けられたものであることを特徴とするので、外部放射線によるノイズを低減し、β線を検出する放射線検出器の高感度化を図ることができる。
【0025】
そして、移動台車を駆動する移動台車駆動装置と、移動台車の位置情報を発信する移動台車位置情報発信装置と、移動部材の位置情報を発信する移動部材位置情報発信装置と、放射線検出器にて検出された放射線を移動台車及び移動部材の位置情報に対応させて表示する放射線分布表示装置とが設けられたものであることを特徴とするので、位置に対応させた放射線の値を容易に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1である放射線測定装置の構成を示す構成図である。
【図2】放射線測定装置の設置例を示す設置図である。
【図3】測定手順を示すフローチャートである。
【図4】測定結果の表示例を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2である放射線測定装置の要部を示す要部構成図である。
【図6】この発明の実施の形態3である放射線測定装置の構成及び設置を示す構成及び設置図である。
【図7】測定手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0027】
1,2 放射線検出器、4 放射線測定装置、5 駆動装置、6 信号処理装置、
11 操作表示装置、12 車輪、20 基台、21a パイプの端部、30 支持枠、
31a パイプの端部、41,42 検出器支持板、44 走行用モータ、
45 移動距離測定装置、46 近接センサ、73 γ線遮蔽体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動台車、この移動台車に伸縮支持装置を介して支持された支持部材と、上記支持部材に設けられた移動部材と、上記移動部材に固着され放射線を測定する放射線検出器と、上記移動台車に搭載され上記移動部材を所定方向に駆動する移動部材駆動装置とを備えた放射線測定装置。
【請求項2】
上記支持部材と交差する方向に設けられた交差方向支持部材と、上記交差方向支持部材に設けられた交差方向移動部材と、上記交差方向移動部材に固着され放射線を測定する交差方向放射線検出器と、上記移動台車に搭載され上記交差方向移動部材を上記支持部材と交差する方向に駆動する交差方向移動部材駆動装置とを備えたものであることを特徴とする請求項1記載の放射線測定装置。
【請求項3】
上記放射線検出器は、上記所定方向と交差する方向に複数個配列されたものであることを特徴とする請求項1記載の放射線測定装置。
【請求項4】
上記放射線検出器はβ線を検出するものであり、上記支持部材は上記放射線検出器に入射するγ線を遮蔽するγ線遮蔽体が設けられたものであることを特徴とする請求項1記載の放射線測定装置。
【請求項5】
上記移動台車を駆動する移動台車駆動装置と、上記移動台車の位置情報を発信する移動台車位置情報発信装置と、上記移動部材の位置情報を発信する移動部材位置情報発信装置と、上記放射線検出器にて検出された放射線を上記移動台車及び移動部材の位置情報に対応させて表示する放射線分布表示装置とが設けられたものであることを特徴とする請求項1記載の放射線測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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