説明

放射線測定装置

【課題】メンテナンスや校正時に生産ラインのフットプリントを最小限にするような測定装置の待避手段を提供する。
【解決手段】所定の幅を有する被測定物(試料)に対して略直行方向に配置され、前記試料の全幅の物理量を同時に測定可能なC型フレームを有する放射線測定装置において、前記C型フレームを前記試料幅の略2/3を前記試料に対して直角方向に移動させた後、連続して残りの略1/3を移動させながら旋回させ、試料の幅方向に対して略90度向きを変えて前記試料の長手方向に対して略平行に待避させる旋回機構を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばラインセンサを用いた放射線測定装置に関し、詳しくは測定装置の校正時における退避スペースの改善を図った放射線測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4(a,b)は本発明が適用される被測定物(試料)の物理量をオンラインで測定する放射線測定装置の構成図で、図(a)は走査型測定器の概略斜視図である。
図(a)において、1はO形フレームである。2は被測定物(シート状物体)であり、例えは紙やプラスチックフィルム、金属等のシートである。3はO形フレーム1の下側のビームに設けられ,β線やX線を発生する線源部(下ヘッド)、4はO形フレーム1の上側のビームに設けられ,被測定物を透過した線源部3からの放射線を測定する電離箱からなる放射線測定部(上ヘッド)である。これら上下ヘッド3,4は図示しないモータによりO形フレーム1上を往復走行する。
【0003】
上記の構成において,上下ヘッドは装置が停止しているときは,装置の向かって右側端部(校正点)に退避している。そして測定が開始されると,まず,上下ヘッドは右側(から左側へシート2の幅方向に走行し,所定のデータ採取位置において測定が続けられる。
【0004】
図4(a)に示すように夫々のヘッドはOフレームの右側に待避位置が設けられている。これは、試料をセットする場合や線源や測定器のメンテナンス、校正などの際に待避する必要があるためである。
【0005】
厚さ測定においては、予め厚さと材質(坪量)が既知の複数の標準サンプルを測定しておき、その坪量に対する透過特性として検量線を求める。その検量線と試料の透過出力値から逆引きして厚さを換算する。塗工量については図4(a)に示す測定器を2本乃至3本生産ライン内に設置し、塗工工程前後にその透過特性を測定し、夫々の差分を求めることで塗工量を知ることが出来る。
【0006】
図4(a)に示すような方式では高速に流れる試料に対して測定器が走査するため、ジグザグのライン上を部分的にしか測定出来ない。このため近年では全面測定の要望がある。
図4(b)は測定素子が狭ピッチで隙間無く並んだラインカメラを設置して全面を測定している放射線測定器を示す概略斜視図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平7−52573
【特許文献2】実開昭62−193505
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図4(a)に示す走査型測定器であっても、図4(b)に示す全面測定型測定器であっても校正の際には試料を一旦取り除いて校正しなければならない。これは、経時変化による線源の劣化、測定器の感度変化、空気層の温度・湿度変化(生産ライン内の空調が悪く季節的または朝晩などの周期的な変動)に対して校正を行うもので、試料の無い状態(空気層)を測定し校正を行う。ある程度長期的には標準サンプルを測定して検量線を求め直すことも行われる。
【0009】
また、連続試料を扱う生産ラインの全長は数十m〜百mを超える様なものもあり、生産現場では品種替えの際であっても繋ぎのダミーシートによりライン内の各装置から一時的であっても試料が途切れることが無いようにして、品種替えの作業性を向上させている。そのため、各々の装置都合(装置校正やメンテナンス)で容易に試料を取り除くことが出来ないという問題がある。
【0010】
そのため現実的には、図4(a)に示すように装置内に待避位置が設けられている。一方、図4(b)に示すような測定装置では全長の長い一体のラインカメラであるため、これらを試料から外れた位置まで線源と測定器を一体で引き出してきて試料の無い空間でメンテナンスや校正が行われる。線源と測定器を一体で引き出すということは、現実的には測定装置ごと引き出すことになる。
【0011】
図4(c)は校正やメンテナンスなどに際し、C型フレーム7を矢印U方向に退避させる前の状態を示す概略斜視図である。C型フレーム7はガイドユニット8に形成された直線ガイド9に沿って引き出される。なお、この例においては放射線源5から図示しないスリット等によりシート状の試料2に対して放射線が扇状に出射され、試料2の全副を照射する。試料を透過して試料の物理量に関連した放射線が放射線検出器(ラインカメラ)6で検出される。
【0012】
生産工程は、工場のフットプリント(空きスペース)を少なくするために、極力装置間の間隔を詰めてレイアウトしてあり、生産ラインと生産ラインの間の通路であっても最小限にしたい。ところが、図4(b)に示すように全長の長いラインカメラ以上の(約2.5倍)測定装置を通路側に引き出さねばならず、よほど通路が広くない限り、通路が塞がってしまったり、隣のラインと干渉してしまうといった問題がある。
【0013】
従って本発明は、連続試料を扱う生産ラインの全面測定装置において、メンテナンスや校正時に生産ラインのフットプリントを最小限にするような測定装置の待避手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を達成するために、本発明の請求項1の放射線測定装置は、
所定の幅を有する被測定物(試料)に対して略直行方向に配置され、前記試料の全幅の物理量を同時に測定可能なC型フレームを有する放射線測定装置において、前記C型フレームを前記試料幅の略2/3を前記試料に対して直角方向に移動させた後、連続して残りの略1/3を移動させながら旋回させ、試料の幅方向に対して略90度向きを変えて前記試料の長手方向に対して略平行に待避させる旋回機構を具備したことを特徴とする。
【0015】
請求項2においては、請求項1に記載の放射線測定装置において、
前記旋回機構は、両端部が直線状に形成され途中が円弧もしくはクロソイド曲線からなる湾曲部を有すると共に前記両端の直線部が略直角に折れ曲がったモノレールと、該モノレールに沿って移動するガイドローラからなり、前記C型フレームは前記モノレールに沿って移動するように構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項3においては、請求項2に記載の放射線測定装置において、
前記ガイドローラは、カムフォロアーもしくはベアリング、樹脂やゴムをライニングしたベアリングを含むことを特徴とする。
【0017】
請求項4においては、請求項2又は3に記載の放射線測定装置において、
前記ガイドローラはモノレールを挟んで4個配置され、前記ガイドローラの設置間隔は、前記湾曲部の外側のガイドローラピッチに対して内側のガイドローラピッチを狭く配置したことを特徴とする。
【0018】
請求項5においては、請求項1に記載の放射線測定装置において、
前記旋回機構は、ラックギアとピニオンギアにより構成したことを特徴とする。
【0019】
請求項6においては、請求項5に記載の放射線測定装置において、
前記ラックギアは、試料幅の略2/3を真直ぐ引き出した後、ピニオンギアとかみ合う位置に設置され、残りの略1/3の移動量に対して歯車がかみ合う構成としたことを特徴とする。
【0020】
請求項7においては、請求項5に記載の放射線測定装置において、
ラックギアとピニオンギアの旋回機構は、試料幅の略2/3を真直ぐ引き出す範囲ではストッパもしくはカムとカム溝によりフレームの旋回を規制したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば以下のような効果がある。
請求項1〜3によれば、
C型フレームを前記試料幅の略2/3を前記試料に対して直角方向に移動させた後、連続して残りの略1/3を移動させながら旋回させ、略90度向きを変えて前記試料の長手方向に対して略平行に待避させる旋回機構を具備し、旋回機構は湾曲部を有し、直線部が直角に折れ曲がったモノレールと、このモノレールに沿って移動するガイドローラで構成し、ガイドローラは、カムフォロアーもしくはベアリング、樹脂やゴムをライニングしたベアリングを含んで構成したので、メンテナンスや校正時に生産ラインのフットプリントを最小限にすることができる。
【0022】
請求項4によれば、
ガイドローラはモノレールを挟んで4個配置され、前記ガイドローラの設置間隔は、前記湾曲部の外側のガイドローラピッチに対して内側のガイドローラピッチを狭く配置したので、モノレールにガイドローラが密着してスムーズに回転することができる。
【0023】
請求項5〜7によれば、
旋回機構は、ラックギアとピニオンギアにより構成し、ラックギアは、試料幅の略2/3を真直ぐ引き出した後、ピニオンギアとかみ合う位置に設置し、残りの略1/3の移動量に対して歯車がかみ合う構成とし試料幅の略2/3を真直ぐ引き出す範囲ではストッパもしくはカムとカム溝によりフレームの旋回を規制したので、フレームをスムーズに回転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す放射線測定装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態の詳細を示す平面図(a)及び(a)図のZ視図である。
【図3】本発明の他の実施例の詳細を示す平面図(a)及び(a)図のZ視図である。
【図4】従来の放射線測定装置の一例を示す概略構成を示す走査型測定器(a)及び全面測定器(b)および退避機構を示す斜視図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の実施形態の一例を示す放射線測定装置の模式的な概略構成図である。なお、図4(b)に示す従来の全面測定器の概略構成図とはC型フレーム(以下フレームという)の旋回装置を設けた点のみが異なっている。
【0026】
図1において、7はフレームを示し左奥側が開放されており、試料の連続する流れに対して、フレーム7ごと右手前に引き出すことが可能である。ところがこの形態では図4(b,c)で説明したように多くの引き出しスペースが必要となってしまい好ましくない。
図1(b)は、図1(a)のように引き出した場合を上方から見た平面図である。測定装置ごと少なくとも試料の幅サイズ以上に引き出す必要があることがわかる。
【0027】
一方、図1(b)は本発明の待避方法を示している。図1(b)は、図1(a)の従来例と対比して見ることができるように併記してある。真直ぐ引き出す場合の概ね2/3は従来通り真直ぐ引き出し、残り1/3で引き出しながら旋回するようにしている。このようにすることにより、完全に引き出した後に90度旋回させる場合に対して、フレームの後部が引き出す前の位置から外側にはみ出す寸法D,及び内側にはみ出す寸法Eを最小に抑えることが可能になるとともに、旋回に要する最大寸法Cも旋回しない場合の図1(a)に示す寸法Aに対して小さくすることができる。
【0028】
また、旋回を終えてメンテナンスや校正の位置では、試料2の流れに対して平行に収まることから通常の運転状態に対してはみ出す量は測定状態におけるフレームの位置からわずかにはみ出た寸法B程度となり通路の圧迫を避けられ、作業エリアの確保も容易である。
【0029】
図2(a,b)は図1(b)のようにフレームを移動させるための機構を示す平面図(a)および(a)図のZ視図(b)である。この実施例はモノレール10とガイドローラ11を用いた方式で、2/3程度の直線とそれに続いて90度左に向きを変えるようにモノレール10を床などの固定部分に設置してある。直線と直線を繋ぐ曲線は、円弧であっても良いし、高速道路のカーブなどに用いられるクロソイドカーブなどが好適であるが、必ずしもその限りではない。
【0030】
このモノレール10にカムフォロアーや樹脂やゴムなどでライニングしたベアリングなどのガイドローラ11でモノレールを挟み込む。途中で湾曲部Mを通過することから、ガイドローラ11は寸法P2より寸法P1の方を狭くすることで密着して回転が可能となるように配置されている。なお、この配置は湾曲の種類によって最適の寸法が異なる。ガイドローラはフレーム7に固定されており、フレーム7の底面には床面に対して起立するようにキャスターやタイヤなどの搬送ローラ12が固定されている。
【0031】
図2の構成によれば、フレームをモノレール10とガイドローラ11及び搬送ローラ12により試料2の幅の略2/3を試料に対して直角方向に移動させ、その後連続して残りの略1/3を湾曲部Mに沿って移動させながら旋回させ、略90度向きを変えて試料の長手方向に対して略平行に待避させることができる。
【0032】
図3は他の実施例を示す平面図(a)及び(a)図のZ視図(b)である。この実施例では固定部(床)に直線ガイドレール13が1軸もしくは2軸並行に設置されている(図では2軸)。フレーム7の底部には旋回用ベアリング19を介してスライダ14が固定され、フレーム7は床に搬送ローラ12により起立して支持されている。スライダ14はフレームを搭載した状態でガイドローラ20を介して直線ガイドレールに沿って矢印Q方向に移動する。
【0033】
フレーム7の底部の中央付近でかつ、試料2の端部(向かって奥側)付近には支軸18を介してピニオンギア15が固定される。床に固定された直線ガイドレール13の手前側の床には所定の長さを有するラックギア16が固定されている。
【0034】
上述の構成において、校正やメンテナンス時にはフレーム7が矢印Q方向に引き出されるが、試料幅の全長の略2/3に引き出した辺りでラックギア16とピニオンギア15がかみ合うように配置されている。図示していないが、試料幅の全長の略2/3が引き出される範囲ではフレーム7自体が旋回しないように、ストッパやガイド溝とガイドピンなどで規制されており、規制から外れてラックギア16ピニオンギア15でフレームの旋回が開始される。
【0035】
ラックギア16とピニオン15は一旦分離して再度かみ合うため、歯車同士がスムーズにかみ合い始めるように転位歯車もしくははすば歯車(ヘリカルギア)にするのが好適である。フレーム7を手前に引き出すことで旋回が強制され引き出し終了点が旋回終了点となる。戻す時は、幾分旋回を意識して直線ガイドレール13に沿って押し戻すように操作する。
【0036】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。例えばスライダ14やガイドローラ20、ガイドレール13などは図示の形状に限ることなく同様に機能するものであれば別の形状であっても良い。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0037】
1 O型フレーム
2 被測定物(試料)
3 放射線源部(下ヘッド)
4 放射測定部(電離箱)(上ヘッド)
5 放射線源
6 放射線検出器(ラインカメラ)
7 C型フレーム
8 ガイドユニット
9 直線ガイド
10 モノレール
11 ガイドローラ(カムフォロワ−)
12 搬送ローラ
13 直線ガイドレール
14 スライダ
15 ピニオンギア
16 ラックギア
18 支軸
19 ベアリング
20 ガイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅を有する被測定物(試料)に対して略直行方向に配置され、前記試料の全幅の物理量を同時に測定可能なC型フレームを有する放射線測定装置において、前記C型フレームを前記試料幅の略2/3を前記試料に対して直角方向に移動させた後、連続して残りの略1/3を移動させながら旋回させ、試料の幅方向に対して略90度向きを変えて前記試料の長手方向に対して略平行に待避させる旋回機構を具備したことを特徴とする放射線測定装置。
【請求項2】
前記旋回機構は、両端部が直線状に形成され途中が円弧もしくはクロソイド曲線からなる湾曲部を有すると共に前記両端の直線部が略直角に折れ曲がったモノレールと、該モノレールに沿って移動するガイドローラからなり、前記C型フレームは前記モノレールに沿って移動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の放射線測定装置。
【請求項3】
前記ガイドローラは、カムフォロアーもしくはベアリング、樹脂やゴムをライニングしたベアリングを含むことを特徴とする請求項2に記載の放射線測定装置。
【請求項4】
前記ガイドローラはモノレールを挟んで4個配置され、前記ガイドローラの設置間隔は、前記湾曲部の外側のガイドローラピッチに対して内側のガイドローラピッチを狭く配置したことを特徴とする請求項2又は3に記載の放射線測定装置。
【請求項5】
前記旋回機構は、ラックギアとピニオンギアにより構成したことを特徴とする請求項1に記載の放射線測定装置。
【請求項6】
前記ラックギアは、試料幅の略2/3を真直ぐ引き出した後、ピニオンギアとかみ合う位置に設置され、残りの略1/3の移動量に対して歯車がかみ合う構成としたことを特徴とする請求項5に記載の放射線測定装置。
【請求項7】
ラックギアとピニオンギアの旋回機構は、試料幅の略2/3を真直ぐ引き出す範囲ではストッパもしくはカムとカム溝によりフレームの旋回を規制したことを特徴とする請求項5に記載の放射線測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−163794(P2011−163794A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23797(P2010−23797)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】