説明

放射線照射装置

【課題】同一施設内の放射線照射装置設置室に複数台の放射線照射装置が設置されている場合であっても、操作者が誤って別の放射線照射装置にトレイを再セットし、二重照射してしまうことを防止することが可能な放射線照射装置を提供することである。
【解決手段】
被照射物に放射線を照射する放射線照射部と、該放射線照射部の放射線照射方向に設置され前記被照射物を搭載するトレイ載置部とを有する放射線照射装置であって、前記被照射物の厚みに対応する大きさを有する少なくとも2以上のトレイと、各トレイを識別するためにトレイ毎に付与された識別標識と、該識別標識を読み取る読み取り手段とを備え、少なくとも使用可能な放射線照射装置情報、前記被照射物の厚み情報、及び施設情報が前記識別標識に対応している放射線照射装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸血用血液を封入する血液バッグ等にX線またはγ線を含む放射線を照射する放射線照射装置に係り、特に血液バッグの厚みによる放射線照射量の補正技術に関する。
【背景技術】
【0002】
輸血後GVHD(Graft Versus Host Disease)と呼ばれる輸血による副作用がある。これを予防するため、放射線を照射し、輸血用血液製剤の内のリンパ球を不活性化する技術が知られており、用いられる放射線には、放射性同位元素137Cs(セシウム)を利用したγ線とX線とがある。
【0003】
輸血用血液製剤の放射線照射を行う放射線照射装置としては、特許文献1に記載の放射線照射装置がある。特許文献1に記載の放射線照射装置は、血液が格納されたトレイの厚みを検出するセンサを備え、検出されたトレイの厚みに基づいて予め設定された線量の放射線を照射する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−132723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同一施設内の放射線照射装置設置室内に複数台の放射線照射装置が設置されている場合、放射線の照射が終了した血液バッグが、誤って別の放射線照射装置に再セットされ、二重に放射線を照射されてしまうという不都合が指摘されるに至った。
【0006】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、同一施設内の放射線照射装置設置室に複数台の放射線照射装置が設置されている場合であっても、操作者が誤って別の放射線照射装置にトレイを再セットし、二重照射してしまうことを防止することが可能な放射線照射装置を提供することにある。
【0007】
本発明のその他の目的については、明細書全体の記載から明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決すべく、被照射物に放射線を照射する放射線照射部と、該放射線照射部の放射線照射方向に設置され前記被照射物を搭載するトレイ載置部とを有する放射線照射装置であって、前記被照射物の厚みに対応する大きさを有する少なくとも2以上のトレイと、各トレイを識別するためにトレイ毎に付与された識別標識と、該識別標識を読み取る読み取り手段とを備え、少なくとも使用可能な放射線照射装置情報、前記被照射物の厚み情報、及び施設情報が前記識別標識に対応している放射線照射装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、同一施設内の放射線照射装置設置室に複数台の放射線照射装置が設置されている場合であっても、操作者が誤って別の放射線照射装置にトレイを再セットし、二重照射してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の放射線照射装置の概略構成を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態の放射線照射装置におけるバーコード付トレイの概略構成を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態の放射線照射装置におけるバーコード付トレイの大きさを説明するための図である。
【図4】本願発明の実施形態の放射線照射装置におけるトレイ識別機能部のブロック構成を説明するための図である。
【図5】本願発明の実施形態の放射線照射装置におけるトレイ識別機能部の動作フローを説明するための図である。
【図6】本発明の他の実施形態の放射線照射装置におけるトレイ識別機能部のブロック構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明が適用された実施形態の例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明は省略する。
【0012】
図1は本発明の実施形態の放射線照射装置の概略構成を説明するための図であり、特に、二方向照射装置に本願発明を適用した放射線照射装置である。ただし、本実施形態の二方向照射装置本体の構成は、バーコードリーダー14並びに該バーコードリーダー14の制御に係わる制御装置6及び操作盤8を除く他の構成は、周知の二方向照射装置と同様の構成である。従って、以下の説明では、バーコードリーダー14、制御装置6、操作盤8、及びバーコードが貼り付けされるバーコード付トレイ13について詳細に説明する。
【0013】
図1から明らかなように、本実施形態の二方向照射装置100はX線を照射する対象物である輸血血液製剤等(被照射物)が内装(格納)されるバーコード付トレイ13を収納する照射室1bからX線が外部に漏れないようにするため、X線ビームが照射される領域は鉛等で形成された遮へい体(太線で示す)1aで覆われる構成となっている。バーコード付トレイ13を搬出入するためのトレイ部(トレイ載置部)10も遮へい体1aで覆われる構成となっており、該遮へい体1aの外側を覆うように防護ボックス1が形成されている。
【0014】
遮へい体1aで覆われる領域には、輸血血液製剤等が内装(格納)されているバーコード付トレイ13に対し、上下方向からX線を照射するための上部X線管装置2および下部X線管装置3が配置される構成となっている。
【0015】
バーコード付トレイ13が格納される照射室1bと該上部X線管装置2と間にはX線フィルター11が配置され、上部X線管装置2から照射された一点鎖線で示す上部X線線束2aはX線フィルター11を介してバーコード付トレイ13の上面側から照射される構成となっている。同様に、照射室1bと下部X線管装置3との間にもX線フィルター12が配置され、下部X線管装置3から照射された一点鎖線で示す下部X線線束3aはX線フィルター12を介してバーコード付トレイ13に照射される構成となっている。
【0016】
上部X線管装置2にはX線を発生させるために必要な高電圧を供給する上部用高電圧発生装置4aが接続され、下部X線管装置3には下部用高電圧発生装置4bが接続され、該上部用高電圧発生装置4aと下部用高電圧発生装置4bとで高電圧発生装置4を形成している。
【0017】
上部X線管装置2と下部X線管装置3とには図示しない陽極を冷却するための冷却油を供給(循環)するための冷却装置5を有しており、陽極の冷却によって温められた冷却油は循環式冷却装置(もしくは水道水)9から供給される冷却水で冷却される構成となっている。
【0018】
一方、照射室1b内には、バーコード付トレイ13に照射されるX線量を計測するための線量計プローブ7aが配置されており、該線量計プローブ7aからの検出出力に基づいて、線量計7がバーコード付トレイ13に照射されるX線量を計測し、制御装置6に出力する構成となっている。また、照射室1b内には線量計プローブ7aに入射するX線量を調整するためのプローブ用フィルター20が配置されている。該プローブ用フィルター20は制御装置6からの制御によりバーコード付トレイ13に対応したものが選択され、該選択されたプローブ用フィルター20が図示しないフィルター駆動部により線量計プローブ7aの計測面に配置される構成となっている。
【0019】
さらには、本願発明に特徴的な構成であるバーコード付トレイ13からバーコード情報を読み取るためのバーコードリーダー(読み取り手段)14を備える構成となっており、該バーコードリーダー14で読み取られた情報は制御装置6に出力される構成となっている。本実施形態の二方向放射線装置の制御装置6は、線量計7からのX線量情報による高電圧発生装置4の制御による上部及び下部X線管装置2、3からのX線量の制御、冷却装置5の制御、及び循環式冷却装置9の制御の他に、バーコードリーダー14の制御も行う構成となっている。また、制御装置6はバーコード付トレイ13の厚み情報、当該二方向照射装置の機台情報、施設名情報等のバーコード情報をデータベースとして持つ構成となっている。
【0020】
さらには、制御装置6は操作盤(タッチパネル)8に対して、照射する線量やバーコード付トレイ13の厚み補正用の設定及びメッセージ表示を行う構成となっている。
【0021】
図2は本発明の実施形態の放射線照射装置におけるバーコード付トレイの概略構成を説明するための図であり、特に、図2(a)はバーコード付トレイの平面図(上面図)であり、図2(b)はバーコード付トレイの正面図であり、図2(c)はバーコード付トレイの側面図である。ただし、本実施形態のバーコード付トレイ13は、周知のバーコードを有する構成であること、及びその大きさが被照射物である輸血血液製剤等の容器である血液バック17の大きさに対応する深さで形成される以外の構成は、従来のトレイと同様の構成である。従って、以下の説明では、バーコード及びトレイの大きさについて詳細に説明する。
【0022】
図2(a)〜(c)に示すように、本実施形態の放射線照射装置におけるバーコード付トレイ13は容器部(第1の筐体)13bと上蓋部(第2の筐体)13aとから構成される。容器部13bはバーコード付トレイ13の本体であり、その上面側が開口される構成となっている。上蓋部13aは容器部13bの開口部である上面側に勘合し、該開口部の周縁部に形成される2つのロック機構16a、16bにより、容器部13bに係止される構成となっている。
【0023】
また、図2(b)に示すように、本実施形態のバーコード付トレイ13では、容器部13bの側壁面には第2のバーコード25aが貼り付けされる構成となっている。また、図2(a)に示すように、上蓋部13aの上面にも第1のバーコード25が貼り付けされる構成となっている。ただし、本実施形態においては、第1及び第2のバーコード25、25aは同じバーコードが貼り付けされる構成となっている。
【0024】
このように、本実施形態のバーコード付トレイ13では、バーコード25、25aはバーコード付トレイ13の上蓋部13aと容器部13bとに各々貼り付けされる構成となっているが、これは上蓋部13aと容器部13bとが他の二方向照射装置の上蓋部や容器部と入れ替わってしまった場合を考慮して各々に貼り付ける構成としているものである。
【0025】
ただし、本実施形態ではバーコード25、25aをバーコード付トレイ13の構成品である上蓋13aと容器部13bに貼り付けているが、上蓋部13aや容器部13bに直接印刷してもよい。この場合、血液バッグ17への放射線照射が妨げられることが無いように、バーコード25、25aはX線吸収がごく少ないラベル材やインクを使用する、もしくは放射線が直接照射される部位への貼り付け、印字を避ける必要がある。
【0026】
次に、図3に本発明の実施形態の放射線照射装置におけるバーコード付トレイの大きさ(深さ)を説明するための図を示し、以下、図3に基づいてバーコード付トレイの大きさ(深さ)と血液バックの厚さとの関係を説明する。
【0027】
図3(a)(b)に示すように、本実施形態のバーコード付トレイ13は、異なる深さを有する2種類のトレイからなる。なお、本実施形態では、2種類のバーコード付トレイ13は、容器部13bの深さ方向の形状が異なるのみで、他の部位の形状や上蓋部13aの形状はおなじものである。ただし、上蓋部13aに貼り付けされるバーコード25及び容器部13bに貼り付けされるバーコード25aは容器部13bの大きさに対応するものである。
【0028】
図3(a)に示すバーコード付トレイ13は、例えば血液バック17の容量が400ccに対応した深さL1を有する容器部13bを備えるバーコード付トレイ13である。該バーコード付トレイ13では、400ccの血液バック17を容器部13bに入れた後に、対応する上蓋部13aを勘合させロック機構16a、16bで上蓋部13aを係止した場合に、血液バックの側面部分の一部と上蓋部13aの裏面側が接する深さL1となっている。このため、操作者(検査者)が容量400ccの血液バック17に対応したバーコード付トレイ13に、容量200ccの血液バック17を入れようとした場合、容器部13bの深さL1に対しての血液バック17の厚みが大きく異なることとなる。このため、操作者(検査者)に注意を促すことができる。また、容量200ccの小さい血液バック17を容量400cc用のバーコード付トレイ13に入れ、容量400ccの血液バック17と同じ放射線量の照射を行うこともできる。この場合、容量200ccの血液バック17に対する放射線量よりも多めの放射線量での照射となるが、問題となることはない。さらには、容量400ccの血液バック17に300cc等の規定量に達しない充填量での放射線の照射を行う場合にも、操作者(検査者)が容量400ccの血液バック17に対応したバーコード付トレイ13を用いた放射線の照射を行うことを可能とする。
【0029】
一方、図3(b)に示すバーコード付トレイ13は、例えば血液バック17の容量が200ccに対応した深さL2を有する容器部13bを備えるバーコード付トレイ13である。該バーコード付トレイ13では、200ccの血液バック17を容器部13bに入れた後に、対応する上蓋部13aを勘合させロック機構16a、16bで上蓋部13aを係止した場合に、血液バックの側面部分の一部と上蓋部13aの裏面側が接する程度の深さL2となっている。このため、操作者(検査者)が容量200ccの血液バック17に対応したバーコード付トレイ13に、容量400ccの血液バック17を入れようとした場合、容器部13bから血液バック17が大きくはみ出すためにロック機構16a、16bを操作することが不可能となる。従って、容量400ccの大きい血液バック17が誤って容量200cc用のバーコード付トレイ13に入れられてしまうことを防止できる。
【0030】
このように、本実施形態のバーコード付トレイ13では、その大きさが予め把握可能な血液バック17の厚さに対応した深さを有する構成となっているので、血液バック17を本実施形態のバーコード付トレイ13に格納する際に、容易に血液バックの容量に対応したバーコード付トレイ13を選択可能となる。その結果、バーコード付トレイ13に貼り付けされるバーコード25、25aに対応した厚み情報を参照することで、血液バック17の厚みを把握することができる。
【0031】
なお、一般的な血液バック17では、図2(a)中に示す血液バック17の縦方向(図中の上下方向)や横方向(図中の左右方向)の大きさは容量に係わらず同じ大きさの場合が一般的である。従って、容量200ccの血液バック17を2個重ねて深さL1のバーコード付トレイ13に入れることが可能となる。この場合には容量400ccの血液バック17を1個入れた場合と同じ放射線量の照射となるので、本願発明を適用可能である。
【0032】
次に、図4に本願発明の実施形態の放射線照射装置におけるトレイ識別機能部のブロック構成を説明するための図を、図5に本願発明の実施形態の放射線照射装置におけるトレイ識別機能部の動作フローを説明するための図を示し、以下、図4及び図5に基づいて、本実施形態の放射線照射装置におけるトレイの識別動作を説明する。
【0033】
図4に示すように、バーコード付トレイ13の上蓋部13aと容器部13bとに貼り付けられているバーコード25,25aをバーコードリーダー14で読み取る。上蓋部13aの情報と容器部13bの情報は制御装置6(シーケンサ部)の入力モジュール6bを経由してCPUモジュール6a内に伝達される。図5に示すように、上蓋部13aの情報と容器部13bの情報がトレイ情報として伝達されると(ステップ30)、トレイ情報はCPUモジュール6aにより、データベース23に予め登録されている二方向照射装置の機台情報およびトレイの厚さ情報、施設情報等との照合が行われる(ステップ31)。
【0034】
照合の結果、本実施形態の二方向照射装置100に対応したバーコード付トレイ13であることが認識されると、CPUモジュール6aより操作盤制御用モジュール6dを経由して、操作盤8より照射条件の設定をはじめとする二方向照射装置の放射線照射に係る操作画面が表示され、操作可能となる(ステップ32)。このとき、バーコード付トレイ13の厚み情報すなわち血液バッグの厚み情報に基づいて、CPUモジュール6aは出力モジュール6cを経由してフィルター駆動部を制御し、線量計プローブ7の厚み補正を自動的に行う。これにより操作者の誤設定を防止することができる。
【0035】
続いて、トレイのセットを行う(ステップ33)。この時のバーコード付トレイ13のセットは、まず操作盤8の搬出スイッチを操作することによってトレイ部10を図1中の搬出位置10aまで搬出させる。次に、バーコード付トレイ13をトレイ部10にセット後、操作盤8の搬入スイッチにてトレイ部10を照射室10b内に搬入させる。
【0036】
搬入後に操作盤8の図示しない放射線照射スイッチが有効となり、操作者が放射線照射スイッチを操作することにより放射線照射の照射が開始され(ステップ34)、照射線量がバーコード付トレイ13の厚さ情報に対応した所定の線量に到達すると放射線照射が停止され、照射完了となる(ステップ35)。
【0037】
前述するステップ31におけるデータベース23との照合において、本実施形態の二方向照射装置100のバーコード付トレイ13でないと識別された場合、CPUモジュール6aより操作盤制御用モジュール6dを経由し、バーコード付トレイ13が本二方向照射装置100のものではないことを操作盤8に表示し、操作者に知らせ照射条件設定不可とする(ステップ36)。
【0038】
以上に説明した動作により、他の二方向照射装置で照射された血液バッグが二重照射されることを防止することが可能である。また、本実施形態の二方向照射装置100のバーコード付トレイ13であって、誤って二重照射される可能性に対しては、同じバーコード情報が続けて入力された際に確認として操作盤8に二重照射でないかメッセージを表示し、操作者に知らせることで回避することができる。
【0039】
以上説明したように、本願発明の実施形態の放射線照射装置では、被照射物である血液バック(200cc用と400cc用の種類)の厚みに対応する深さがL1とL2を有する2種類の大きさのバーコード付トレイをそれぞれ複数個ずつ備える構成となっている。このとき、複数個ずつ備えるバーコード付トレイをそれぞれ区別すると共に、格納可能な血液バックの大きさすなわち放射線量が異なるバーコード付トレイの大きさを区別するために、各バーコード付トレイの上蓋部と容器部とにはトレイ毎に異なる番号等が付与された識別標識であるバーコードが貼り付けされる構成となっている。
【0040】
一方、本実施形態の放射線照射装置の本体には、バーコードを読み取るためのバーコードリーダーが配置される構成となっている。さらには、当該バーコード情報に対応するバーコード付トレイの使用可能な放射線照射装置の情報、バーコード付トレイ(血液バック)の厚み情報、及び施設情報が格納されるデータベースを有する構成となっている。この構成により、読み取られたバーコード情報に基づいて、照射する放射線量を選択すると共に、他の放射線照射装置のトレイがセットされていないか、セットされているバーコード付トレイに格納される血液バックに一度放射線を照射していないか等を確認する構成となっているので、同一施設内の放射線照射装置設置室に複数台の放射線照射装置が設置されている場合であっても、操作者が誤って別の放射線照射装置にトレイを再セットし、二重照射してしまうことを防止できる。
【0041】
なお、本実施形態の放射線照射装置では、バーコードリーダー14を装置本体の外側に配置し、バーコード付トレイ13をトレイ部10にセットする際に、操作者が該バードリーダー14を用いてバーコード付トレイ13のバーコード25、25aを読み取る構成としたが、これに限定されることはなく、例えば、放射線照射装置100の内部等にバーコードリーダー14を配置し、操作盤8からのバーコード付トレイの格納指示に基づいてバーコード25、25aを読み取る構成としてもよい。この構成により、操作者の負担をさらに低減できるという格別の効果を得ることが可能である。
【0042】
また、本実施形態の放射線装置では、バーコード付トレイ13の識別標識としてバーコードを用いる構成としたが、識別標識としてはバーコードに限定されることはなく、例えばベリコード等のマトリックス式及びバーコードのような1次元バーコードを上下に複数重ねたスタック式等の二次元コード等を識別標識として用いてもよい。
【0043】
さらには、本実施形態の放射線照射装置では、大きさ(深さ)の異なる2種類のバーコード付トレイは、容器部の深さ方向の形状が異なるのみで、他の部位の形状や上蓋部の形状はおなじものとしたが、これに限定されることはなく、異なる深さの容器部毎にロック機構の取り付け位置を変えるあるいは縦方向や横方向の形状を変える等することにより、異なる深さの容器に対応する上蓋部を容易に判別することが可能となる。
【0044】
さらには、本実施形態の放射線照射装置では、バーコード付トレイに貼り付けされたバーコード情報に基づいてのみ、当該バーコード付トレイの大きさ(深さ)を特定する構成としたが、これに限定されることはなく、例えば、バーコード情報から得られたバーコード付トレイの大きさ情報を確認する手段を設け、確認結果とバーコード情報とを比較し一致する場合のみ放射線照射を可能とすることにより、操作者の負担をさらに低減できるという格別の効果を得ることが可能であると共に、放射線照射の信頼性をさらに向上できるという効果も得ることができる。
【0045】
図6は本発明の他の実施形態の放射線照射装置におけるトレイ識別機能部のブロック構成を説明するための図であり、図6に示す放射線照射装置はバーコード付トレイの大きさを確認する手段として厚みセンサ15を備える構成である。ただし、厚みセンサ15及び厚みセンサ15から得られる厚み情報とバーコード情報から得られる厚み情報を比較する構成以外の構成は、図4に示す放射線照射装置と同じ構成である。従って、以下の説明では、厚みセンサ15とその比較制御についてのみ詳細に説明する。
【0046】
図6に示す他の実施形態の放射線照射装置では、トレイ部内に厚みセンサ15が配置される構成となっており、厚みセンサ15で得られた厚み情報は入力モジュール6bを介してCPUモジュールに入力される。図6に示す厚みセンサ15としては、例えば、一対の発光素子と受光素子とからなる周知のセンサを2組用い、一方のセンサ対をトレイ部の底面からL2以下の高さに配置し、他方のセンサ対をトレイ部の底面からL2以上L1以下の高さに配置することにより構成される。このような位置にセンサ対を配置することにより、深さがL2のバーコード付トレイがトレイ部にセットされた場合には、高さL2に配置された一方のセンサ対の出力のみが変化する。また、深さがL1のバーコード付トレイがセットされた場合には、高さL1と高さL2に配置された両方のセンサ対の出力が変化することとなるので、容易にバーコード付トレイの大きさを判定することが可能となる。
【0047】
従って、図6に示す他の実施形態の放射線照射装置では、まず、バーコードリーダー14から入力されるバーコード情報に基づいて得られるバーコード付トレイの厚み情報と、厚みセンサ15から得られる厚み情報とをCPUモジュール6aが比較することにより、トレイ部にセットされているバーコード付トレイの大きさを判定する。次に、判定結果が同じ結果の場合には、前述するステップ34となり、放射線の照射が行われる。一方、判定結果が異なる場合には、前述するステップ36と同様にして、バーコード情報に基づいて得られるバーコード付トレイの厚み情報と厚みセンサ15から得られる厚み情報とが一致しないことを操作盤8に表示し、操作者に知らせ照射条件設定不可とする。その結果、操作者の負担をさらに低減できるという格別の効果を得ることが可能であると共に、放射照射の信頼性をさらに向上できるという効果も得ることができる。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記発明の実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記発明の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・防護ボックス、1a・・・遮へい体、1b・・・照射室
2・・・上部X線管装置、2a・・・上部X線線束、3・・・下部X線管装置
3a・・・下部X線線束、4・・・高電圧発生ユニット
4a、4b・・・高電圧発生装置、5・・・冷却装置、6・・・制御装置
7・・・線量計、7a・・・線量計プローブ、8・・・操作盤(タッチパネル)
9・・・循環式冷却装置もしくは水道水、10・・・トレイ部
10a・・・トレイ部搬出状態、11、12・・・X線フィルター
13・・・バーコード付トレイ、13a・・・上蓋部、13b・・・容器部
14・・・バーコードリーダー、15・・・厚みセンサ
16a,16b・・・ロック機構、17・・・血液バック
20・・・フィルター駆動部、25、25a・・・バーコード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射物に放射線を照射する放射線照射部と、該放射線照射部の放射線照射方向に設置され前記被照射物を搭載するトレイ載置部とを有する放射線照射装置であって、
前記被照射物の厚みに対応する大きさを有する少なくとも2以上のトレイと、
各トレイを識別するためにトレイ毎に付与された識別標識と、
該識別標識を読み取る読み取り手段とを備え、
少なくとも使用可能な放射線照射装置情報、前記被照射物の厚み情報、及び施設情報が前記識別標識に対応していることを特徴とする放射線照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線照射装置において、
前記トレイは少なくとも一面が開口され前記被照射物を内装する第1の筐体と、
前記第1の筐体と勘合し、前記開口を塞ぐ第2の筐体とからなり、
前記第1の筐体と前記第2の筐体とに前記識別標識が付加されていることを特徴とする放射線照射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線照射装置において、
前記第1の筐体に前記被照射物を内装し、前記第1の筐体に前記第2の筐体が勘合可能な場合、
当該トレイの識別情報に対応する厚み情報を内装される前記被照射物の厚みとし、前記厚み情報に基づいた所定量の放射線を前記被照射物に照射する手段を備えることを特徴とする放射線照射装置
【請求項4】
請求項1乃至3の内のいずれか1項に記載の放射線照射装置において、
前記トレイの厚みを検出する検出手段と、
前記識別標識から得られる厚み情報と前記検出手段から得られる厚み情報とに基づいて、前記被測定物への放射線照射の可否を判定する手段と
を備えることを特徴とする放射線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−22053(P2011−22053A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168396(P2009−168396)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】