説明

放射線画像処理装置及び方法

【課題】精度のよい欠陥画素補正を可能とするとともに、補正処理に要する時間を短縮することを可能とする。
【解決手段】第1の吸収型格子21と第2の吸収型格子22との相対位置を変更して撮影を行うことにより得られる複数の画像データから被検体Hの位相コントラスト画像を取得するX線撮影システムにおいて、画像処理部14は、FPD20で取得された複数の画像データに基づき、位相微分像を生成する位相微分像生成部32と、欠陥マップ記憶部31に記憶された欠陥マップから欠陥画素の位置情報を取得し、各欠陥画素に対応する位相微分像の位相微分値を、欠陥画素に隣接する画素の位相微分値に基づいて算出した補正値で置換する補正処理部33と、補正処理部33により補正処理がなされた位相微分像から位相コントラスト画像を生成する位相コントラスト画像生成部34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線等の放射線により被検体の撮影を行う放射線撮影システムに用いられる放射線画像処理装置及び方法に関し、特に、放射線画像に対して欠陥画素補正を行う放射線画像処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線は、物質を構成する元素の原子番号と、物質の密度及び厚さとに依存して減衰するといった特性を有することから、被検体の内部を透視するためのプローブとして用いられている。X線を用いた撮影は、医療診断や非破壊検査等の分野において広く普及している。
【0003】
一般的なX線撮影システムでは、X線を放射するX線源とX線を検出するX線画像検出器との間に被検体を配置して、被検体の透過像を撮影する。この場合、X線源からX線画像検出器に向けて放射されたX線は、X線画像検出器までの経路上に存在する物質の特性(原子番号、密度、厚さ)の差異に応じた量の減衰(吸収)を受けた後、X線画像検出器の各画素に入射する。この結果、被検体のX線吸収像がX線画像検出器により検出され画像化される。X線画像検出器としては、X線増感紙とフイルムとの組み合わせや輝尽性蛍光体のほか、半導体回路を用いたフラットパネル検出器(FPD:Flat Panel Detector)が広く用いられている。
【0004】
ただし、X線吸収能は、原子番号が小さい元素からなる物質ほど低くなるため、生体軟部組織やソフトマテリアルなどでは、X線吸収像としての十分な画像の濃淡(コントラスト)が得られないといった問題がある。例えば、人体の関節を構成する軟骨部とその周辺の関節液は、いずれも殆どの成分が水であり、両者のX線の吸収量の差が少ないため、濃淡差が得られにくい。
【0005】
このような問題を背景に、近年、被検体によるX線の強度変化に代えて、被検体によるX線の位相変化(角度変化)に基づいた画像(以下、位相コントラスト画像と称する)を得るX線位相イメージングの研究が盛んに行われている。一般に、X線が物体に入射したとき、X線の強度よりも位相のほうが高い相互作用を示すため、位相差を利用したX線位相イメージングでは、X線吸収能が低い弱吸収物体であっても高コントラストの画像を得ることができる。このようなX線位相イメージングの一種として、2枚の透過型回折格子とX線画像検出器とからなるX線タルボ干渉計を用いたX線撮影システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
X線タルボ干渉計は、被検体の背後に第1の回折格子を配置し、第1の回折格子の格子ピッチとX線波長で決まるタルボ干渉距離だけ下流に第2の回折格子を配置し、その背後にX線画像検出器を配置することにより構成される。タルボ干渉距離とは、第1の回折格子を通過したX線が、タルボ干渉効果によって自己像(縞画像)を形成する距離である。この自己像は、X線源と第1の回折格子との間に配置された被検体とX線との相互作用(位相変化)により変調を受ける。
【0007】
このX線撮影システムでは、第1の回折格子の自己像と第2の回折格子との重ね合わせにより強度変調された縞画像の被検体による変化(位相ズレ)から縞走査法により被検体の位相コントラスト画像が取得される。縞走査法とは、第1の回折格子に対して第2の回折格子を、第1の回折格子の面にほぼ平行で、かつ第1の回折格子の格子線方向にほぼ垂直な方向に、格子ピッチを等分割した走査ピッチで並進移動(走査)させながら複数回の撮影を行い、X線画像検出器で得られる各画素の画素データの上記走査に対する強度変化の位相ズレ量(被検体による位相のズレ量)から位相微分像を取得する方法である。この位相微分像は、被検体で屈折したX線の角度分布に対応する。位相微分像を縞走査方向に沿って積分することにより被検体の位相コントラスト画像が得られる。なお、画素データは、上記走査により周期的に強度が変調される。上記走査に対する複数の画素データのセットを、以下、「強度変調信号」と称する。
【0008】
このX線撮影システムでは、X線画像検出器として、画素データをデジタルデータとして取得可能な上記FPD等の固体撮像装置が用いられる。このようなX線画像検出器は、多数の画素を備えるため、欠陥画素の発生が避けられない。この欠陥画素には、製造時に生じる物理的な欠陥に起因するもののほか、画素自体は正常であるが検出面のキズやゴミの付着などにより画素データが異常となったものが含まれる。
【0009】
欠陥画素の対処方法としては、予め欠陥画素の位置情報を取得しておき、X線画像検出器により取得されたX線画像に対して画像処理の一種である補正処理を施す方法が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。特許文献2、3には、X線タルボ干渉計に係るものではないが、欠陥画素に隣接する複数の隣接画素の画素データに基づき、線形補間やその他の関数を用いた演算により得た画素データで欠陥画素の画素データを置換することにより、欠陥画素補正を行うことを可能としたX線撮影システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−200359号公報
【特許文献2】特開2008−079923号公報
【特許文献3】特開2002−197450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した縞走査法を用いたX線撮影システムでは、位相微分像から位相コントラスト画像を得るために、縞走査方向に沿って積分処理を行う必要があるため、欠陥画素が生じると、1つの欠陥画素につき、縞走査方向に沿ったライン状のアーチファクトが発生してしまう。このため、欠陥画素補正を高精度に行うことが求められている。しかしながら、縞走査法を用いたX線撮影システムに、特許文献2、3に記載の従来の補正方法を適用した場合には、以下の問題が生じる。
【0012】
第1に、従来の補正方法を適用すると、縞走査の各走査ステップで得られる画像(X線吸収像)に対して欠陥画素補正を行うことになるため、その走査ステップ数分の補正処理が要される。したがって、補正処理に要する時間が長いといった問題がある。
【0013】
第2に、従来の補正方法を適用すると、各走査ステップで欠陥画素を補正した結果、欠陥画素に対して算出される位相微分値(補正値)は、補正に用いた隣接画素の強度変調信号の最大値や振幅(コントラスト)の差異が影響して、適正値(中間の値)からずれるといった問題がある。図14(a),(b)は、従来の補正方法の具体例として、位相ズレ量が“0”の隣接画素Aの画素データと、位相ズレ量が“0.5π”の隣接画素Bの画素データとを各走査ステップで平均化した画素データからなる平均信号により、欠陥画素補正を行う場合の問題点を示している。
【0014】
図14(a)は、隣接画素A,Bの強度変調信号の最大値及び振幅が同一である場合を例示している。この場合には、隣接画素A,Bの平均信号の位相ズレ量は“0.25π”となり、隣接画素A,Bの強度変調信号の位相ズレ量(位相微分値)の中間値“0.25π”と一致する。すなわち、この場合には、従来の補正方法であっても適正値が得られる。
【0015】
これに対して、図14(b)は、隣接画素A,Bの強度変調信号の最大値が異なる場合(隣接画素Aの強度変調信号の最大値が“1”、隣接画素Bの強度変調信号の最大値が“0.8”)を例示している。この場合には、隣接画素A,Bの平均信号の位相ズレ量はおよそ“0.22π”となり、最大値が大きいほうの隣接画素Aの強度変調信号に偏った値となる。すなわち、従来の補正方法では適正値が得られない。なお、具体例の説明は省略するが、隣接画素A,Bの強度変調信号の最大値が同じで、かつ振幅が異なる場合には、平均信号の位相ズレ量は、振幅の大きいほうの隣接画素の強度変調信号に偏った値となり、同様に、従来の補正方法では適正値が得られない。
【0016】
さらに、従来の補正方法では、X線の屈折が大きい被検体のエッジ部分に対応する位置に欠陥画素が位置する場合には、このエッジ部分の形状(異方性)を画素の強度情報から把握することができず、異方性を考慮した精度のよい補正を行うことができないといった問題がある。
【0017】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、縞走査法を用いた放射撮影システムにおいて、精度のよい欠陥画素補正を可能とするとともに、補正処理に要する時間を短縮することを可能とする放射線画像処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の放射線画像処理装置は、放射線源から照射された放射線を通過させて第1の周期パターン像を生成する第1の格子と、前記第1の周期パターン像に対して強度変調を与えて第2の周期パターン像を生成する強度変調手段と、前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成する放射線画像検出器と、を備えた放射線撮影システムに用いられる放射線画像処理装置であって、前記画像データに基づいて位相微分像を生成する位相微分像生成手段と、前記放射線画像検出器の欠陥画素の位置情報を記憶する欠陥画素情報記憶手段と、前記欠陥画素情報記憶手段から前記欠陥画素の位置情報を取得し、前記各欠陥画素に対応する前記位相微分像の位相微分値を、前記各欠陥画素に隣接する隣接画素の位相微分値に基づいて算出した補正値で置換する補正処理手段と、を備える。
【0019】
前記補正処理手段は、欠陥画素に隣接する複数の隣接画素を、欠陥画素を中心とした点対称の関係を有する複数の点対称ペアにグループ分けするとともに、各点対称ペアについて位相微分値の差の絶対値を算出し、該絶対値が最小となる点対称ペアの位相微分値の平均値を前記補正値とする。
【0020】
前記補正処理手段は、欠陥画素に隣接する各隣接画素の位相微分値の絶対値を算出し、絶対値の大きさが上位2つの隣接画素の位相微分値の平均値を前記補正値とすることも好ましい。
【0021】
前記放射線画像撮影システムは、前記補正処理手段により補正処理がなされた位相微分像に対して積分処理を施すことにより位相コントラスト画像を生成する位相コントラスト画像生成手段を備える。
【0022】
前記強度変調手段は、前記第1の周期パターン像に対して位相が異なる複数の相対位置で強度変調を与えて複数の第2の周期パターン像を生成し、前記放射線画像検出器は、前記各第2の周期パターン像を検出して複数の画像データを生成し、前記位相微分像生成手段は、前記複数の画像データに基づき、前記相対位置に対する画素データの強度変化を表す強度変調信号の位相ズレ量を算出することにより前記位相微分像を生成する。
【0023】
前記強度変調手段は、前記第1の周期パターン像と同一方向の周期パターンを有する第2の格子と、前記第1及び第2の格子のいずれか一方を所定のピッチで移動させる走査手段とからなる。
【0024】
前記第1及び第2の格子は、吸収型格子であり、前記第1の格子は、前記放射線源からの放射線を前記第1の周期パターン像として線形的に前記第2の格子に投影するものである。
【0025】
前記第1の格子は位相型格子であり、前記第1の格子は、タルボ干渉効果により、前記放射線源からの放射線を前記第1の周期パターン像として前記第2の格子の位置に形成するものであってもよい。
【0026】
前記放射線画像検出器は、放射線を電荷に変換する変換層と、前記変換層において変換された電荷を収集する電荷収集電極とを画素ごとに備えた放射線画像検出器であって、前記電荷収集電極は、前記第1の周期パターン像と同一方向の周期パターンを有する複数の線状電極群が、互いに位相が異なるように配列されてなり、前記強度変調手段は、前記電荷収集電極により構成されていることも好ましい。
【0027】
本発明の放射線画像処理装置は、前記放射線源と前記放射線画像検出器との間に被検体を配置せずに前記放射線画像検出器により得られる少なくとも1枚分の画像データに基づいて前記欠陥画素を検出する欠陥画素検出手段を備える。
【0028】
前記欠陥画素検出手段は、前記放射線源が非照射の状態で前記放射線画像検出器により得られる1枚分の画像データに基づいて前記欠陥画素を検出する。
【0029】
前記欠陥画素検出手段は、前記放射線源からの一定強度の放射線照射下において、前記強度変調手段により、前記第1の周期パターン像に対して位相が異なる複数の相対位置で強度変調が与えられて複数の第2の周期パターン像が生成され、前記各第2の周期パターン像が前記放射線画像検出器により検出されることにより生成される複数の画像データに基づき、前記相対位置に対する画素データの強度変化を表す強度変調信号の最大値または平均値を検出し、この最大値または平均値に基づいて前記欠陥画素を検出することが好ましい。
【0030】
前記欠陥画素検出手段は、前記放射線源からの一定強度の放射線照射下において、前記強度変調手段により、前記第1の周期パターン像に対して位相が異なる複数の相対位置で強度変調が与えられて複数の第2の周期パターン像が生成され、前記各第2の周期パターン像が前記放射線画像検出器により検出されることにより生成される複数の画像データに基づき、画素データの前記相対位置に対する強度変化を表す強度変調信号の振幅を検出し、この振幅に基づいて前記欠陥画素を検出することも好ましい。
【0031】
前記欠陥画素検出手段は、前記放射線源からの放射線強度を段階的に変化させながら、各放射線強度において前記最大値または前記平均値を検出し、この最大値または平均値の放射線強度に対するリニアリティに基づいて前記欠陥画素を検出することも好ましい。
【0032】
前記放射線画像撮影システムは、前記第1及び第2の格子を、前記放射線源と前記放射線画像検出器との間から退避させる移動手段を備えており、前記欠陥画素検出手段は、前記移動手段により前記第1及び第2の格子が前記放射線源と前記放射線画像検出器との間から退避した状態で、前記放射線画像検出器により得られる画像データに基づいて前記欠陥画素を検出することも好ましい。
【0033】
本発明の放射線画像処理方法は、放射線源から照射された放射線を通過させて第1の周期パターン像を生成する第1の格子と、前記第1の周期パターン像に対して強度変調を与えて第2の周期パターン像を生成する強度変調手段と、前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成する放射線画像検出器と、を備えた放射線撮影システムに用いられる放射線画像処理方法であって、前記放射線画像検出器により生成された画像データに基づいて位相微分像を生成するステップと、前記放射線画像検出器の欠陥画素の位置情報を取得するステップと、前記各欠陥画素に対応する前記位相微分像の位相微分値を、前記各欠陥画素に隣接する隣接画素の位相微分値に基づいて算出した補正値で置換するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、欠陥画素の位相微分値を、欠陥画素に隣接する画素の位相微分値に基づいて算出した補正値で置換することにより補正するものであるため、精度のよい補正を可能とするとともに、一回の補正処理で欠陥画素補正が完了するため補正処理に要する時間を短縮することができる。
【0035】
また、本発明は、被検体による放射線の屈折角に対応する位相微分値に基づいて欠陥画素補正を行うものであるため、被検体のエッジに対応する部分に欠陥画素が位置する場合であってもエッジの異方性を考慮した精度の良い補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係るX線撮影システムの構成を示す模式図である。
【図2】フラットパネル検出器の構成を示す模式図である。
【図3】第1及び第2の吸収型格子の構成を示す概略側面図である。
【図4】縞走査法を説明するための説明図である。
【図5】被検体がある場合とない場合との強度変調信号を例示するグラフである。
【図6】欠陥画素の補正処理を説明するフローチャートである。
【図7】点対称ペアについての説明図である。
【図8】欠陥マップの作成処理を説明するフローチャートである。
【図9】被検体のエッジ部分で得られる位相微分値の具体例を示す説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態における欠陥画素の補正処理を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の第3実施形態における欠陥マップの作成処理を説明するフローチャートである。
【図12】X線強度に対する強度変調信号の最大値の変化を例示するグラフである。
【図13】本発明の第4実施形態で用いられる移動装置を示す模式図である。
【図14】従来の補正方法の問題点を説明するグラフである。
【図15】本発明の第5実施形態で用いられるX線画像検出器の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(第1実施形態)
図1において、本発明の第1実施形態に係るX線撮影システム10は、被検体HにX線を照射するX線源11と、X線源11に対向配置され、X線源11から被検体Hを透過したX線を検出して画像データを生成する撮影部12と、撮影部12から読み出された画像データを記憶するメモリ13と、メモリ13に記憶される複数の画像データを画像処理して位相コントラスト画像を生成する画像処理部14と、画像処理部14により生成された位相コントラスト画像が記録される画像記録部15と、X線源11及び撮影部12の制御を行う撮影制御部16と、操作部やモニタからなるコンソール17と、コンソール17から入力される操作信号に基づいてX線撮影システム10の全体を統括的に制御するシステム制御部18とから構成されている。
【0038】
X線源11は、高電圧発生器、X線管、コリメータ(いずれも図示せず)等から構成されており、撮影制御部16の制御に基づいて、被検体HにX線を照射する。例えば、X線管は、回転陽極型であり、高電圧発生器からの電圧に応じて、フィラメントから電子線を放出し、所定の速度で回転する回転陽極に電子線を衝突させることによりX線を発生する。回転陽極は、電子線が固定位置に当り続けることによる劣化を軽減するために回転しており、電子線の衝突部分が、X線を放射するX線焦点となっている。また、コリメータは、X線管から発せられたX線のうち、被検体Hの検査領域に寄与しない部分を遮蔽するように照射野を制限するものである。
【0039】
撮影部12には、半導体回路からなるフラットパネル検出器(FPD)20、被検体HによるX線の位相変化(角度変化)を検出し位相イメージングを行うための第1の吸収型格子21及び第2の吸収型格子22が設けられている。FPD20は、X線源11から照射されるX線の光軸Aに沿う方向(以下、z方向いう)に検出面が直交するように配置されている。
【0040】
第1の吸収型格子21は、z方向に直交する面内の一方向(以下、y方向という)に延伸した複数のX線遮蔽部21aが、z方向及びy方向に直交する方向(以下、x方向という)に所定のピッチpで配列されたものである。同様に、第2の吸収型格子22は、y方向に延伸した複数のX線遮蔽部22aが、x方向に所定のピッチpで配列されたものである。X線遮蔽部21a,22aの材料としては、X線吸収性に優れる金属が好ましく、例えば、金、銀、白金等が好ましい。
【0041】
また、撮影部12には、第2の吸収型格子22を格子線方向(y方向)に直交する方向(x方向)に並進移動させることにより、第1の吸収型格子21に対する第2の吸収型格子22との相対位置を変化させる走査機構23が設けられている。走査機構23は、例えば、圧電素子等のアクチュエータにより構成される。走査機構23は、後述する縞走査の際に、撮影制御部16の制御に基づいて駆動される。詳しくは後述するが、メモリ13には、縞走査の各走査ステップで撮影部12により得られる画像データがそれぞれ記憶される。なお、第2の吸収型格子22と走査機構23とが特許請求の範囲に記載の強度変調手段を構成している。
【0042】
画像処理部14は、キャリブレーション動作時に得られる画像データからFPD20の欠陥画素を検出し、欠陥マップ(欠陥画素の位置情報)を作成する欠陥画素検出部30と、欠陥画素検出部30により作成された欠陥マップを記憶する欠陥マップ記憶部31とを備える。欠陥画素検出部30は、キャリブレーション動作時に作動し、欠陥マップ記憶部31に記憶された欠陥マップを更新する。
【0043】
また、画像処理部14は、縞走査の各走査ステップで撮影部12により撮影され、メモリ13に記憶された複数の画像データに基づき、位相微分像を生成する位相微分像生成部32と、欠陥マップ記憶部31に記憶された欠陥マップに基づき、位相微分像に対して欠陥画素補正を行う補正処理部33と、補正がなされた位相微分像をx方向に沿って積分することにより、位相コントラスト画像を生成する位相コントラスト画像生成部34とをさらに備える。位相コントラスト画像生成部34により生成された位相コントラスト画像は、画像記録部15に記録された後、コンソール17に出力されてモニタ(図示せず)に表示される。
【0044】
コンソール17は、モニタの他、操作者が撮影指示やその指示内容を入力する入力装置(図示せず)を備えている。この入力装置としては、例えば、スイッチ、タッチパネル、マウス、キーボード等が用いられる。入力装置の操作により、X線管の管電圧やX線照射時間等のX線撮影条件、撮影タイミング等が入力される。モニタは、液晶ディスプレイやCRTディスプレイからなり、X線撮影条件等の文字や、上記位相コントラスト画像を表示する。
【0045】
図2において、FPD20は、X線を電荷に変換して蓄積する複数の画素40が、x方向及びy方向に沿ってアクティブマトリクス基板上に2次元配列されてなる受像部41と、受像部41からの電荷の読み出しタイミングを制御する走査回路42と、各画素40に蓄積された電荷を読み出し、電荷を画像データに変換して記憶する読み出し回路43とから構成されている。なお、走査回路42と各画素40とは、行毎に走査線44によって接続されており、読み出し回路43と各画素40とは、列毎に信号線45によって接続されている。画素40の配列ピッチは、x方向及びy方向にそれぞれ100μm程度である。
【0046】
画素40は、アモルファスセレン等の変換層(図示せず)によりX線を電荷に直接変換し、変換された電荷を変換層の下部の電極に接続されたキャパシタ(図示せず)に蓄積する直接変換型のX線検出素子として構成することができる。各画素40には、TFTスイッチ(図示せず)が接続され、TFTスイッチのゲート電極が走査線44、ソース電極がキャパシタ、ドレイン電極が信号線45に接続される。走査回路42からの駆動パルスによってTFTスイッチがON状態になると、キャパシタに蓄積された電荷が信号線45に読み出される。
【0047】
なお、画素40は、酸化ガドリニウム(Gd)やヨウ化セシウム(CsI)等からなるシンチレータ(図示せず)でX線を一旦可視光に変換し、変換された可視光をフォトダイオード(図示せず)で電荷に変換して蓄積する間接変換型のX線検出素子として構成することも可能である。また、本実施形態では、放射線画像検出器としてTFTパネルをベースとしたFPDを用いているが、これに限られず、CCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子をベースとした各種の放射線画像検出器を用いることも可能である。
【0048】
読み出し回路43は、積分アンプ、補正回路、A/D変換器(いずれも図示せず)等により構成されている。積分アンプは、各画素40から信号線45を介して出力された電荷を積分して電圧信号(画像信号)に変換する。A/D変換器は、積分アンプにより変換された画像信号を、デジタルの画像データに変換する。補正回路は、画像データに対して、オフセット補正、ゲイン補正、及びリニアリティ補正等を行い、補正後の画像データをメモリ13に入力する。
【0049】
図3において、第1の吸収型格子21のX線遮蔽部21aは、x方向に所定のピッチpで、互いに所定の間隔dを空けて配列されている。同様に、第2の吸収型格子22のX線遮蔽部22aは、x方向に所定のピッチpで、互いに所定の間隔dを空けて配列されている。X線遮蔽部21a,22aは、それぞれ不図示のX線透過性基板(例えば、ガラス基板)上に配置されたものである。第1及び第2の吸収型格子21,22は、入射X線に位相差を与えるものでなく、強度差を与えるものであり、振幅型格子とも称される。なお、スリット部(上記間隔d,dの領域)は空隙でなくてもよく、高分子や軽金属等のX線低吸収材が充填されていてもよい。
【0050】
第1及び第2の吸収型格子21,22は、スリット部を通過したX線を線形的(幾何光学的)に投影するように構成されている。具体的には、間隔d,dを、X線源11から照射されるX線のピーク波長より十分大きな値とすることで、照射X線に含まれる大部分のX線をスリット部で回折させずに、直進性を保ったまま通過するように構成する。例えば、前述のX線管の回転陽極としてタングステンを用い、管電圧を50kVとした場合には、X線のピーク波長は、約0.4Åである。この場合には、間隔d,dを、1〜10μm程度とすれば、スリット部で大部分のX線が回折されずに線形的に投影される。この場合、格子ピッチp,pは、2〜20μm程度の大きさである。
【0051】
X線源11から照射されるX線は、平行ビームではなく、X線焦点を発光点としたコーンビームであるため、第1の吸収型格子21を通過することにより形成される第1の周期パターン像(以下、G1像という)は、X線焦点11aからの距離に比例して拡大される。第2の吸収型格子22の格子ピッチp及び間隔dは、そのスリット部が、第2の吸収型格子22の位置におけるG1像の明部の周期パターンとほぼ一致するように決定されている。すなわち、X線焦点11aから第1の吸収型格子21までの距離をL、第1の吸収型格子21から第2の吸収型格子22までの距離をLとした場合に、格子ピッチp及び間隔dは、次式(1)及び(2)の関係を満たすように決定される。
【0052】
【数1】

【0053】
【数2】

【0054】
なお、必ずしも式(2)を満たす必要はなく、間隔d,dをそれぞれ個別に設定してもよい。
【0055】
第1の吸収型格子21から第2の吸収型格子22までの距離Lは、タルボ干渉計の場合には、第1の回折格子の格子ピッチとX線波長とで決まるタルボ干渉距離に制約されるが、本実施形態では、第1の吸収型格子21が入射X線を回折させずに投影する構成であって、第1の吸収型格子21のG1像が、第1の吸収型格子21の後方のすべての位置で相似的に得られるため、該距離Lを、タルボ干渉距離と無関係に設定することができる。
【0056】
上記のように本実施形態の撮影部12は、タルボ干渉計を構成するものではないが、第1の吸収型格子21でX線の回折が生じ、タルボ干渉効果が生じていると仮定した場合のタルボ干渉距離Zは、第1の吸収型格子21の格子ピッチp、X線波長(ピーク波長)λ、及び正の整数mを用いて、次式(3)で表される。
【0057】
【数3】

【0058】
本実施形態では、前述のように距離Lをタルボ干渉距離と無関係に設定することができるため、撮影部12のz方向への薄型化を目的とし、距離Lを、m=1の場合の最小のタルボ干渉距離Zより短い値に設定する。すなわち、距離Lは、次式(4)を満たす範囲の値に設定される。
【0059】
【数4】

【0060】
X線遮蔽部21a,22aは、コントラストの高い周期パターン像を生成するためには、X線を完全に遮蔽(吸収)することが好ましいが、上記したX線吸収性に優れる材料(金、銀、白金等)を用いたとしても、吸収されずに透過するX線が少なからず存在する。このため、X線の遮蔽性を高めるためには、X線遮蔽部21a,22aのそれぞれの厚み(z方向の厚さ)をできるだけ厚くすること(すなわち、アスペクト比を高めること)が好ましい。例えば、X線管の管電圧が50kVの場合に、照射X線の90%以上を遮蔽することが好ましく、この場合には、X線遮蔽部21a,22aの厚みは、金(Au)換算で30μm以上であることが好ましい。
【0061】
以上のように構成された第1及び第2の吸収型格子21,22では、第1の吸収型格子21により生成されたG1像が第2の吸収型格子22との重ね合わせにより部分的に遮蔽され、強度変調されることにより、第2の周期パターン像(以下、G2像という)が生成される。このG2像はFPD20によって撮像される。
【0062】
第2の吸収型格子22の位置におけるG1像のパターン周期と、第2の吸収型格子22の格子ピッチpとは、製造誤差や配置誤差により若干の差異が生じており、この微小な差異により、G2像にはモアレ縞が生じる。また、第1及び第2の吸収型格子21,22の格子配列方向に誤差が生じ、配列方向が同一でない場合には、G2像にいわゆる回転モアレが発生する。しかし、G2像にモアレ縞が発生した場合でも、モアレ縞のx方向またはy方向の周期が画素40の配列ピッチより大きい範囲であれば特に問題はない。理想的にはモアレ縞が発生しないことが好ましいが、モアレ縞は、後述するように、縞走査の走査量(第2の吸収型格子22の並進距離)の確認に利用することができる。
【0063】
X線源11と第1の吸収型格子21との間に被検体Hを配置すると、FPD20により検出されるG2像は、被検体Hにより変調を受ける。この変調量は、被検体Hによる屈折効果によって偏向したX線の角度に比例する。したがって、FPD20で検出されたG2像を解析することによって、被検体Hの位相コントラスト画像を生成することができる。
【0064】
次に、G2像の解析方法について説明する。同図には、被検体Hのx方向に関する位相シフト分布Φ(x)に応じて屈折される1つのX線が例示されている。符号50は、被検体Hが存在しない場合に直進するX線の経路を示している。この経路50を進むX線は、第1及び第2の吸収型格子21,22を通過してFPD20に入射する。符号51は、被検体Hが存在する場合に、被検体Hにより屈折されて偏向したX線の経路を示している。この経路51を進むX線は、第1の吸収型格子21を通過した後、第2の吸収型格子22のX線遮蔽部22aにより遮蔽される。
【0065】
被検体Hの位相シフト分布Φ(x)は、被検体Hの屈折率分布をn(x,z)、zをX線の進む方向として、次式(5)で表される。
【0066】
【数5】

【0067】
第1の吸収型格子21から第2の吸収型格子22の位置に投影されたG1像は、被検体HでのX線の屈折により、その屈折角φに応じた量だけx方向に変位する。この変位量Δxは、X線の屈折角φが微小であることに基づいて、近似的に次式(6)で表される。
【0068】
【数6】

【0069】
ここで、屈折角φは、X線波長λと被検体Hの位相シフト分布Φ(x)を用いて、次式(7)で表される。
【0070】
【数7】

【0071】
このように、被検体HでのX線の屈折によるG1像の変位量Δxは、被検体Hの位相シフト分布Φ(x)に関連している。そして、この変位量Δxは、FPD20で検出される各画素40の強度変調信号の位相ズレ量ψ(被検体Hがある場合とない場合とでの各画素40の強度変調信号の位相のズレ量)に、次式(8)のように関連している。
【0072】
【数8】

【0073】
したがって、各画素40の強度変調信号の位相ズレ量ψを求めることにより、式(8)から屈折角φが求まり、式(7)を用いて位相シフト分布Φ(x)の微分量が求まる。これをxについて積分することにより、被検体Hの位相シフト分布Φ(x)、すなわち被検体Hの位相コントラスト画像を生成することができる。本実施形態では、上記位相ズレ量ψを、下記に示す縞走査法を用いて算出する。
【0074】
縞走査法では、第1及び第2の吸収型格子21,22の一方を他方に対して相対的にx方向に並進移動させながら撮影を行う(すなわち、両者の格子周期の位相を変化させながら撮影を行う)。本実施形態では、前述の走査機構23により第2の吸収型格子22を移動させる。G2像に生じるモアレ縞は、第2の吸収型格子22の移動に伴って移動し、並進距離(x方向への移動量)が、第2の吸収型格子22の格子周期の1周期(格子ピッチp)に達すると(すなわち、位相変化が2πに達すると)、元の位置に戻る。このように、格子ピッチpの整数分の1ずつ第2の吸収型格子22を移動させながら、FPD20でG2像を撮影する。撮影により得られた複数の画像データから各画素の強度変調信号を取得し、前述の画像処理部14内の位相微分像生成部32で演算処理することにより、各画素の強度変調信号の位相ズレ量ψが得られ、位相微分像が得られる。
【0075】
図4は、格子ピッチpをM(2以上の整数)個に分割した走査ピッチ(p/M)ずつ第2の吸収型格子22を移動させる様子を模式的に示している。走査機構23は、k=0,1,2,・・・,M−1のM個の各走査位置に、第2の吸収型格子22を順に並進移動させる。なお、同図では、第2の吸収型格子22の初期位置を、被検体Hが存在しない場合における第2の吸収型格子22の位置でのG1像の暗部が、X線遮蔽部22aにほぼ一致する位置(k=0)としているが、この初期位置は、k=0,1,2,・・・,M−1のうちいずれの位置としてもよい。
【0076】
まず、k=0の位置では、主として、被検体Hにより屈折されなかったX線の成分(非屈折成分)が第2の吸収型格子22を通過する。次に、k=1,2,・・・と順に第2の吸収型格子22を移動させていくと、第2の吸収型格子22を通過するX線は、非屈折成分が減少する一方で、被検体Hにより屈折されたX線の成分(屈折成分)が増加する。特に、k=M/2の位置では、主として、屈折成分のみが第2の吸収型格子22を通過する。k=M/2の位置を超えると、逆に、第2の吸収型格子22を通過するX線は、屈折成分が減少する一方で、非屈折成分が増加する。
【0077】
k=0,1,2,・・・,M−1の各位置で、FPD20により撮影を行い画像データを生成すると、各画素40について、M個の画素データが得られる。以下に、このM個の画素データから各画素40の強度変調信号の位相ズレ量ψを算出する方法を説明する。第2の吸収型格子22の位置kにおける各画素40の画素データI(x)は、一般に次式(9)で表される。
【0078】
【数9】

【0079】
ここで、xは画素のx方向に関する座標、Aは入射X線の強度、Aは強度変調信号のコントラストに対応する値、nは正の整数、iは虚数単位である。また、φ(x)は、上記屈折角φを画素40の座標xの関数として表したものである。
【0080】
次いで、次式(10)で表される関係式を適用すると、上記屈折角φ(x)は、式(11)のように表される。
【0081】
【数10】

【0082】
【数11】

【0083】
ここで、arg[ ]は、偏角の抽出を意味しており、上記位相ズレ量ψに対応する。したがって、各画素40で得られたM個の画素データで表される強度変調信号から、式(11)に基づいて位相ズレ量ψを算出することにより、屈折角φ(x)が求まり、位相シフト分布Φ(x)の微分量が求まる。
【0084】
具体的には、図5に示すように、強度変調信号は、第2の吸収型格子22の位置kに対して、格子ピッチpの周期で周期的に変化する。同図中の破線は、被検体Hが存在しない場合の強度変調信号を示しており、同図中の実線は、被検体Hが存在する場合の強度変調信号を示している。この両者の位相差が上記位相ズレ量ψに対応する。
【0085】
以上の説明では、画素40のy方向に関するy座標を考慮していないが、各y座標について同様の演算を行うことにより、x方向及びy方向に関する2次元的な位相ズレの分布ψ(x,y)が得られる。この位相ズレの分布ψ(x,y)が位相微分像に対応する。なお、屈折角φと位相ズレ量ψとは、上記式(7)で示されるように比例関係にあるため、共に位相シフト分布Φ(x)の微分量に対応する物理量である。
【0086】
次に、補正処理部33による欠陥画素補正について説明する。補正処理部33は、上記の原理に基づいて位相微分像生成部32によって算出された位相微分像(位相ズレの分布ψ(x,y))に対して、図6に示すフローチャートに従って補正処理を行う。まず、補正処理部33は、欠陥マップ記憶部31に記憶された欠陥マップから、1つの欠陥画素を選択する(ステップS1)。次いで、補正処理部33は、位相微分像生成部32から入力される位相微分像から、ステップS1で選択した欠陥画素に隣接する8個の隣接画素に対応する位相微分値(位相ズレ量ψ)を抽出する(ステップS2)。
【0087】
次いで、補正処理部33は、図7に示すように、欠陥画素に隣接する8個の隣接画素を、欠陥画素を中心として点対称の関係にある4種の点対称ペアI,II,III,IVのそれぞれについて、位相微分値の差分値を算出する(ステップS3)。なお、2つ以上の欠陥画素が隣接している場合には、上記隣接画素に欠陥画素が含まれることになる。この場合には、欠陥画素を含む点対称ペアを、位相微分値の差分値の算出対象から除外する。
【0088】
そして、補正処理部33は、位相微分値の差分値の絶対値が最も小さい点対称ペアを特定し(ステップS4)、選択した点対称ペアの位相微分値の平均値を算出し(ステップS5)、算出した平均値を補正値として、欠陥画素の位相微分値を置き換える(ステップS6)。
【0089】
この後、選択中の欠陥画素が最終の欠陥画素であるか否かを判定し(ステップS7)、最終の欠陥画素でない場合には(ステップS7:NO判定)、再びステップS1に戻って、欠陥マップ中の他の欠陥画素を選択し、ステップS2〜S6を同様に実行する。この結果、欠陥マップ中のすべての欠陥画素について補正処理が行われる。
【0090】
以上のように補正処理が行われた位相微分像は、位相コントラスト画像生成部34に入力される。位相コントラスト画像生成部34は、入力された位相微分像をx軸に沿って積分することにより、被検体Hの位相シフト分布Φ(x,y)を生成し、これを位相コントラスト画像として画像記録部15に記録する。
【0091】
次に、キャリブレーション動作時に実行される欠陥マップの作成処理を、図8に示すフローチャートに基づいて説明する。キャリブレーション動作は、操作者によるコンソール17からの指示に基づいて、システム制御部18が各部を制御することにより実行される。
【0092】
キャリブレーションの指示があると(ステップS10:YES判定)、システム制御部18は、X線源11からのX線の照射(曝射)を禁止した状態で、FPD20に撮影動作を実行させ、FPD20により得られた画像データ(以下、X線非照射の状態で得られた画像データを「ダーク画像」と称する)をメモリ13に記憶させる(ステップS11)。
【0093】
メモリ13に記憶されたダーク画像は、欠陥画素検出部30に読み出され、欠陥画素検出部30は、ダーク画像の画素データ(すなわち、画素のノイズ値)が許容値より大きい画素を欠陥画素と判定する(ステップS12)。これにより、TFTスイッチ等の欠陥により大きな暗電流(リーク電流)が生じた画素が欠陥画素と判定される。
【0094】
次いで、システム制御部18は、X線源11とFPD20との間に被検体Hを配置せずに、X線源11から一定の強度でX線を照射させた状態で、走査機構23により第2の吸収型格子22を、k=0,1,2,・・・,M−1の各走査位置に移動させながら、各走査位置でFPD20に撮影動作(以下、この撮影動作を「縞走査撮影」と称する)を実行させ、各走査位置で得られた画像データをメモリ13に記憶させる(ステップS13)。
【0095】
メモリ13に記憶された複数の画像データは、欠陥画素検出部30に読み出される。欠陥画素検出部30は、強度変調信号の最大値(図5に示した強度変調信号(被検体なし)のピーク値)を求め、この最大値が所定値より小さい画素を欠陥画素と判定する(ステップS14)。これにより、何らかの欠陥で飽和電荷量が低下した画素が欠陥画素と判定される。なお、このステップS14では、強度変調信号の最大値に代えて、平均値を算出し、この平均値に基づいて欠陥画素を検出してもよい。
【0096】
次いで、欠陥画素検出部30は、強度変調信号の振幅(コントラストに対応)を求め、この振幅が所定値より小さい画素を欠陥画素と判定する(ステップS15)。これにより、第1の吸収型格子21や第2の吸収型格子22の製造欠陥や配置誤差等の影響によりコントラストが低下した画素が欠陥画素と判定される。
【0097】
そして、欠陥画素検出部30が、ステップS12、ステップS14、及びステップS15で得られた欠陥画素情報をそれぞれ統合して、欠陥画素の位置情報を表す欠陥マップを作成し、これを欠陥マップ記憶部31に入力する(ステップS16)。このとき、欠陥マップ記憶部31に欠陥マップが既存である場合には、新たに入力された欠陥マップに更新(上書き)する。
【0098】
次に、以上のように構成されたX線撮影システム10の作用を説明する。操作者により、キャリブレーションの指示がコンソール17から入力されると、X線撮影システム10の各部が連携動作して、上記キャリブレーション動作が実行され、欠陥画素検出部30により作成された欠陥マップが欠陥マップ記憶部31に記憶される。
【0099】
次いで、X線源11とFPD20との間に被検体Hを配した状態で、操作者により、撮影指示がコンソール17から入力されると、X線撮影システム10の各部が連携動作して、上記撮影動作が実行され、位相微分像(位相ズレの分布ψ(x,y))が生成され、欠陥マップに基づく欠陥画素補正が行われた後、位相コントラスト画像が生成されてモニタに表示される。
【0100】
図9は、被検体Hとして、水中に配置された直径10mmのプラスチック球(材質:PMMA)を用い、FPD20の画素40のピッチを150μmと想定した場合に得られる位相微分値(規格化された理想値)の例であり、同図中の符号「1」〜「9」は、FPD20の画素40のうち、PMMA球のエッジ付近に位置する9個の画素40を示している。位相微分値は、PMMA球のエッジに対応する画素「2」、「5」、「8」がその他の画素より顕著に大きな値を示している。ここで、例えば、中央の画素「5」が欠陥画素であるとすると、位相微分値の差分値は、欠陥画素「5」を中心として点対称の関係にある4種の点対称ペアのうち、画素「2」、「8」の点対称ペアが最も小さくなるため、欠陥画素「5」の補正処理時には、画素「2」、「8」が選択され、両者の位相微分値の平均値(0.86)で、欠陥画素「5」の位相微分値が補正されることになる。
【0101】
上記のような被検体のエッジの急峻な変化は、位相微分像に顕著に現れるものであり、位相微分像を生成する前の画素データ(吸収像)には現れ難い(吸収像では、画素データはエッジ部分においても比較的連続に変化する)ため、従来技術のように、単に吸収像に基づいて欠陥画素補正を行った場合には、エッジ部分を正確に補正することはできない。これに対して、本発明では、エッジの変化が正確に反映される位相微分値に基づいて欠陥画素補正を行っているため、エッジ部分を精度良く補正することができる。
【0102】
なお、上記実施形態では、X線源11からFPD20までの距離を長くした場合に、X線焦点11aの焦点サイズ(一般的に0.1mm〜1mm程度)によるG1像のボケが影響し、位相コントラスト画像の画質の低下をもたらす恐れがあるため、X線焦点11aの直後にマルチスリット(線源格子)を配置してもよい。
【0103】
このマルチスリットは、第1及び第2の吸収型格子21,22と同様な構成の吸収型格子であり、一方向(y方向)に延伸した複数のX線遮蔽部が、第1及び第2の吸収型格子21,22のX線遮蔽部21a,22aと同一方向(x方向)に周期的に配列されたものである。このマルチスリットは、X線源11からのX線を部分的に遮蔽してx方向に関する実効的な焦点サイズを縮小するとともに、x方向に多数の点光源(分散光源)を形成することにより、G1像のボケを抑制する。
【0104】
また、上記実施形態では、第1の吸収型格子21を、そのスリット部を通過したX線をG1像として線形的に投影するように構成しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、スリット部でX線を回折することにより、いわゆるタルボ干渉効果が生じる国際公開WO2004/058070号公報等に記載の構成としてもよい。この場合には、第1及び第2の吸収型格子21,22の間の距離Lをタルボ干渉距離に設定する必要がある。また、この場合には、第1の吸収型格子21に代えて、位相型格子(位相型回折格子)を用いることが可能である。第1の吸収型格子21に代えて用いた位相型格子は、タルボ干渉効果により生じるG1像(自己像)を、第2の吸収型格子22の位置に形成する。
【0105】
さらに、上記実施形態では、被検体HをX線源11と第1の吸収型格子21との間に配置しているが、被検体Hを第1の吸収型格子21と第2の吸収型格子22との間に配置した場合にも同様に位相コントラスト画像の生成が可能である。
【0106】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態として、補正処理部33による欠陥画素補正処理の変形例について説明する。本第実施形態では、補正処理部33は、図10に示すフローチャートに従って補正処理を行う。まず、第1実施形態と同様に、補正処理部33は、欠陥マップ記憶部31に記憶された欠陥マップから、1つの欠陥画素を選択し(ステップS20)、次いで、位相微分像生成部32から入力される位相微分像から、選択した欠陥画素に隣接する8個の隣接画素に対応する位相微分値(位相ズレ量ψ)を抽出する(ステップS21)。
【0107】
次いで、補正処理部33は、各隣接画素の位相微分値の絶対値を算出する(ステップS22)。そして、補正処理部33は、絶対値の大きさが上位2つの隣接画素を特定し(ステップS23)、特定した2つの隣接画素の位相微分値の平均値を算出し(ステップS24)、算出した平均値で欠陥画素の位相微分値を置き換える(ステップS25)。
【0108】
この後、選択中の欠陥画素が最終の欠陥画素であるか否かを判定し(ステップS26)、最終の欠陥画素でない場合には、再びステップS20に戻って、欠陥マップ中の他の欠陥画素を選択し、ステップS21〜S25を同様に実行する。この結果、欠陥マップ中のすべての欠陥画素について補正処理が行われる。
【0109】
本実施形態は、隣接画素のうち、位相微分値の絶対値の大きさが上位2つのものを用いて補間処理を行うことを特徴としており、第1実施形態と同様に、被検体のエッジ部分に欠陥画素が生じた場合でもエッジ部分を精度良く補正することができる。例えば、図9で説明した例では、画素「5」が欠陥画素である場合には、本実施形態においても画素「2」、「8」が選択され、両者の位相微分値の平均値(0.86)で、欠陥画素「5」の位相微分値が補正されることになる。
【0110】
さらに、欠陥画素補正処理のその他の変形例としては、欠陥画素に隣接する8個の隣接画素の各位相微分値をパラメータとする関数を予め設定しておき、この関数の出力値で、欠陥画素の位相微分値を置換することが挙げられる。
【0111】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態として、欠陥画素を検出するためのキャリブレーション動作の変形例について説明する。本実施形態では、システム制御部18は、図11に示すフローチャートに従ってキャリブレーション動作を実行する。
【0112】
まず、第1実施形態と同様に、キャリブレーションの指示があると(ステップS30:YES判定)、システム制御部18は、X線源11からのX線の照射(曝射)を禁止した状態で、FPD20に撮影動作を実行させ、FPD20により得られる画像データ(ダーク画像)をメモリ13に記憶させ(ステップS31)、欠陥画素検出部30により、画素データが許容値より大きい画素が欠陥画素と判定される(ステップS32)。
【0113】
次いで、システム制御部18は、X線源11とFPD20との間に被検体Hを配置せずに、X線源11から一定の強度でX線を照射させた状態で縞走査撮影を実行させ、各走査位置で得られた画像データをメモリ13に記憶させる(ステップS33)。そして、システム制御部18は、画素40ごとに強度変調信号の最大値を求めて記録する(ステップS34)。なお、このステップS34では、強度変調信号の最大値に代えて、平均値を算出し、この平均値を記録してもよい。
【0114】
この後、終了判定を行い、X線強度が最終の強度でない場合には(ステップS35:NO判定)、X線強度を所定値だけ変更し(ステップS36)、再びステップS33に戻る。すなわち、X線強度を段階的に変更しながら各X線強度においてステップS33〜S35が実行され、X線強度が最終の強度に達すると(ステップS35:YES判定)、ステップS37に移行する。
【0115】
ステップS37では、欠陥画素検出部30により、X線強度に対する各強度変調信号の最大値(または平均値)の変化率が算出され、リニアリティ(線形性)が許容範囲外にある画素が欠陥画素と判定される。具体的には、欠陥画素検出部30は、図12に示すように、X線強度の変化に対して強度変調信号の最大値(または平均値)が線形的に変化する画素を正常画素と判定し、リニアリティが許容範囲外であって非線形的に変化する画素を欠陥画素と判定する。
【0116】
この後、欠陥画素検出部30が、ステップS32で得られた欠陥画素情報と、ステップS37で得られた欠陥画素情報とを統合して、欠陥画素の位置情報を表す欠陥マップを作成し、これを欠陥マップ記憶部31に入力する(ステップS38)。
【0117】
このように、本実施形態のキャリブレーション動作は、画素データのX線強度に対するリニアリティに基づいて欠陥画素判定を行うことを含むため、第1実施形態の場合よりもより精度良く判定を行うことが可能である。
【0118】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態として、欠陥画素を検出するためのキャリブレーション動作の別の変形例について説明する。本実施形態では、キャリブレーション時に、図13に示すように、第1及び第2の吸収型格子21,22を、X線源11とFPD20との間から退避するように移動させる移動装置60を設ける。
【0119】
本実施形態では、キャリブレーション時に第1及び第2の吸収型格子21,22をX線源11とFPD20との間から退避させるため、上記第1〜第3実施形態のような強度変調信号の最大値(または平均値)の検出が不要となる。つまり、第1及び第2の吸収型格子21,22を退避させた場合には、FPD20により得られる画像データは、強度変調されたものではなく、吸収像そのものを表すため、この吸収像の各画素データに基づいて欠陥画素の検出(画素データが所定値より小さいものを欠陥画素と判定、または、リニアリティが許容範囲外のものを欠陥画素と判定)を行えばよい。
【0120】
(第5実施形態)
また、上記各実施形態では、第2の吸収型格子22がFPD20とは独立して設けられているが、特開平2009−133823号公報に開示された構成のX線画像検出器を用いることにより、第2の吸収型格子22を排することができる。このX線画像検出器は、X線を電荷に変換する変換層と、変換層において変換された電荷を収集する電荷収集電極とを備えた直接変換型のX線画像検出器において、各画素の電荷収集電極が、一定の周期で配列された線状電極を互いに電気的に接続してなる複数の線状電極群を、互いに位相が異なるように配置することにより構成されており、電荷収集電極が特許請求の範囲に記載の強度変調手段を構成している。
【0121】
図15は、本実施形態のX線画像検出器(FPD)の構成を例示する。画素70が、x方向及びy方向に沿って一定のピッチで2次元配列されており、各画素70には、X線を電荷に変換する変換層によって変換された電荷を収集するための電荷収集電極71が形成されている。電荷収集電極71は、第1〜第6の線状電極群72〜77から構成されており、各線状電極群の線状電極の配列周期の位相がπ/3ずつずれている。具体的には、第1の線状電極群72の位相を0とすると、第2の線状電極群73の位相はπ/3、第3の線状電極群74の位相は2π/3、第4の線状電極群75の位相はπ、第5の線状電極群76の位相は4π/3、第6の線状電極群77の位相は5π/3である。このように、画素70で発生された電荷が線状電極群72〜77を通して蓄えられる。
【0122】
さらに、各画素70には、電荷収集電極71により収集された電荷を読み出すためのスイッチ群78が設けられている。スイッチ群78は、第1〜第6の線状電極群72〜77のそれぞれに設けられたTFTスイッチからなる。第1〜第6の線状電極群72〜77により収集された電荷を、スイッチ群78を制御してそれぞれ個別に読み出すことによって、一度の撮影により、互いに位相の異なる6種類のG2像を検出することができる。この6種類のG2像に対応する複数の画像データに基づいて位相微分像を生成し、位相コントラスト画像を生成することができる。
【0123】
FPD20に代えて、上記構成のX線画像検出器を用いることにより、撮影部12から第2の吸収型格子22が不要となるため、コスト削減とともに、さらなる薄型化が可能となる。また、本実施形態では、一度の撮影により、異なる位相で強度変調が行われた複数のG2像を検出することが可能であるため、縞走査のための物理的な走査が不要となり、走査機構23を排することができる。なお、電荷収集電極71に代えて、特開平2009−133823号公報に記載のその他の構成の電荷収集電極を用いることも可能である。
【0124】
また、第2の吸収型格子22を配置しない場合の別の実施形態として、X線画像検出器によりG1像を直接検出し、信号処理によって位相を変えながら周期的にサンプリングすることで、互いに位相の異なる複数のG2像に対応する画像データを生成することも可能である。
【0125】
また、上記各実施形態では、縞走査法により位相微分像を求めているが、本発明はこれに限定されず、国際公開WO2010/050483に記載されたフーリエ変換法により位相微分像を求めてもよい。このフーリエ変換法は、X線画像検出器により得られた1枚分の画像データをフーリエ変換することによって画像データに生じるモアレ縞のフーリエスペクトルを取得し、このフーリエスペクトルからキャリア周波数に対応したスペクトルを分離して逆フーリエ変換を行なうことにより位相微分像を得る方法である。この場合には、第1及び第2の吸収型格子21,22を移動させる必要がなく、走査機構23が不要となる。
【0126】
また、上記各実施形態において、強度変調信号の最大値は、強度変調信号を構成する複数の画素データのうちの最大の画素データの値としてもよいが、画素データの数が少ない場合には誤差が生じるため、強度変調信号を構成する複数の画素データのフィッティング波形のピーク値としてもよい。強度変調信号の平均値及び振幅についても同様である。
【0127】
以上説明した第1〜第4実施形態は、医療診断用の放射線撮影システムのほか、工業用等のその他の放射線撮影システムに適用することが可能である。また、放射線として、X線以外に、ガンマ線等を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0128】
10 X線撮影システム
11 X線源(放射線源)
11a X線焦点
12 撮影部
14 画像処理部
16 撮影制御部
18 システム制御部
20 フラットパネル検出器(FPD)
21 第1の吸収型格子
21a X線遮蔽部
22 第2の吸収型格子
22a X線遮蔽部
23 走査機構
30 欠陥画素検出部
31 欠陥マップ記憶部
32 位相微分像生成部
33 補正処理部
34 位相コントラスト画像生成部
40 画素
60 移動装置
70 画素
71 電荷収集電極
72〜77 第1〜第6の線状電極群
78 スイッチ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から照射された放射線を通過させて第1の周期パターン像を生成する第1の格子と、
前記第1の周期パターン像に対して強度変調を与えて第2の周期パターン像を生成する強度変調手段と、
前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成する放射線画像検出器と、を備えた放射線撮影システムに用いられる放射線画像処理装置であって、
前記画像データに基づいて位相微分像を生成する位相微分像生成手段と、
前記放射線画像検出器の欠陥画素の位置情報を記憶する欠陥画素情報記憶手段と、
前記欠陥画素情報記憶手段から前記欠陥画素の位置情報を取得し、前記各欠陥画素に対応する前記位相微分像の位相微分値を、前記各欠陥画素に隣接する隣接画素の位相微分値に基づいて算出した補正値で置換する補正処理手段と、
を備えたことを特徴とする放射線画像処理装置。
【請求項2】
前記補正処理手段は、欠陥画素に隣接する複数の隣接画素を、欠陥画素を中心とした点対称の関係を有する複数の点対称ペアにグループ分けするとともに、各点対称ペアについて位相微分値の差の絶対値を算出し、該絶対値が最小となる点対称ペアの位相微分値の平均値を前記補正値とすることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項3】
前記補正処理手段は、欠陥画素に隣接する各隣接画素の位相微分値の絶対値を算出し、絶対値の大きさが上位2つの隣接画素の位相微分値の平均値を前記補正値とすることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項4】
前記放射線画像撮影システムは、前記補正処理手段により補正処理がなされた位相微分像に対して積分処理を施すことにより位相コントラスト画像を生成する位相コントラスト画像生成手段を備えることを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項5】
前記強度変調手段は、前記第1の周期パターン像に対して位相が異なる複数の相対位置で強度変調を与えて複数の第2の周期パターン像を生成し、
前記放射線画像検出器は、前記各第2の周期パターン像を検出して複数の画像データを生成し、
前記位相微分像生成手段は、前記複数の画像データに基づき、前記相対位置に対する画素データの強度変化を表す強度変調信号の位相ズレ量を算出することにより前記位相微分像を生成することを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項6】
前記強度変調手段は、前記第1の周期パターン像と同一方向の周期パターンを有する第2の格子と、前記第1及び第2の格子のいずれか一方を所定のピッチで移動させる走査手段とからなることを特徴とする請求項5項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の格子は、吸収型格子であり、前記第1の格子は、前記放射線源からの放射線を前記第1の周期パターン像として線形的に前記第2の格子に投影することを特徴とする請求項6に記載の放射線画像処理装置。
【請求項8】
前記第1の格子は位相型格子であり、前記第1の格子は、タルボ干渉効果により、前記放射線源からの放射線を前記第1の周期パターン像として前記第2の格子の位置に形成することを特徴とする請求項6に記載の放射線画像処理装置。
【請求項9】
前記放射線画像検出器は、放射線を電荷に変換する変換層と、前記変換層において変換された電荷を収集する電荷収集電極とを画素ごとに備えた放射線画像検出器であって、
前記電荷収集電極は、前記第1の周期パターン像と同一方向の周期パターンを有する複数の線状電極群が、互いに位相が異なるように配列されてなり、
前記強度変調手段は、前記電荷収集電極により構成されていることを特徴とする請求項5に記載の放射線撮影システム。
【請求項10】
前記放射線源と前記放射線画像検出器との間に被検体を配置せずに前記放射線画像検出器により得られる少なくとも1枚分の画像データに基づいて前記欠陥画素を検出する欠陥画素検出手段を備えることを特徴とする請求項1から9いずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項11】
前記欠陥画素検出手段は、前記放射線源が非照射の状態で前記放射線画像検出器により得られる1枚分の画像データに基づいて前記欠陥画素を検出することを特徴とする請求項10に記載の放射線画像処理装置。
【請求項12】
前記欠陥画素検出手段は、前記放射線源からの一定強度の放射線照射下において、前記強度変調手段により、前記第1の周期パターン像に対して位相が異なる複数の相対位置で強度変調が与えられて複数の第2の周期パターン像が生成され、前記各第2の周期パターン像が前記放射線画像検出器により検出されることにより生成される複数の画像データに基づき、前記相対位置に対する画素データの強度変化を表す強度変調信号の最大値または平均値を検出し、この最大値または平均値に基づいて前記欠陥画素を検出することを特徴とする請求項10に記載の放射線画像処理装置。
【請求項13】
前記欠陥画素検出手段は、前記放射線源からの一定強度の放射線照射下において、前記強度変調手段により、前記第1の周期パターン像に対して位相が異なる複数の相対位置で強度変調が与えられて複数の第2の周期パターン像が生成され、前記各第2の周期パターン像が前記放射線画像検出器により検出されることにより生成される複数の画像データに基づき、前記相対位置に対する画素データの強度変化を表す強度変調信号の振幅を検出し、この振幅に基づいて前記欠陥画素を検出することを特徴とする請求項11または12に記載の放射線画像処理装置。
【請求項14】
前記欠陥画素検出手段は、前記放射線源からの放射線強度を段階的に変化させながら、各放射線強度において前記最大値または前記平均値を検出し、この最大値または平均値の放射線強度に対するリニアリティに基づいて前記欠陥画素を検出することを特徴とする請求項12に記載の放射線画像処理装置。
【請求項15】
前記放射線画像撮影システムは、前記第1及び第2の格子を、前記放射線源と前記放射線画像検出器との間から退避させる移動手段を備えており、
前記欠陥画素検出手段は、前記移動手段により前記第1及び第2の格子が前記放射線源と前記放射線画像検出器との間から退避した状態で、前記放射線画像検出器により得られる画像データに基づいて前記欠陥画素を検出することを特徴とする請求項10に記載の放射線画像処理装置。
【請求項16】
放射線源から照射された放射線を通過させて第1の周期パターン像を生成する第1の格子と、
前記第1の周期パターン像に対して強度変調を与えて第2の周期パターン像を生成する強度変調手段と、
前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成する放射線画像検出器と、を備えた放射線撮影システムに用いられる放射線画像処理方法であって、
前記放射線画像検出器により生成された画像データに基づいて位相微分像を生成するステップと、
前記放射線画像検出器の欠陥画素の位置情報を取得するステップと、
前記各欠陥画素に対応する前記位相微分像の位相微分値を、前記各欠陥画素に隣接する隣接画素の位相微分値に基づいて算出した補正値で置換するステップと、
を有することを特徴とする放射線画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−218148(P2011−218148A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22482(P2011−22482)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】