説明

放射線画像変換パネルとその製造方法

【課題】輝度及び粒状性が共に良好な放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルであって、該輝尽性蛍光体層が2層構成であり、該2層構成の輝尽性蛍光体層の上層が特定の一般式で表される輝尽性蛍光体を含有し、下層が特定の一般式で表される輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする放射線画像変換パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝尽性蛍光体(以下、単に「蛍光体」ともいう。)を用いた放射線画像(以下「放射線像」ともいう。)変換パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線画像を得るために銀塩を使用した、いわゆる放射線写真法が利用されているが、銀塩を使用しないで放射線像を画像化する方法が開発されている。即ち、被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収させ、しかる後この蛍光体をある種のエネルギーで励起してこの蛍光体が蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射させ、この蛍光を検出して画像化する方法が開示されている。具体的な方法としては、支持体上に輝尽性蛍光体層を設けたパネルを用い、励起エネルギーとして可視光線及び赤外線の一方又は両方を用いる放射線像変換方法が知られている(米国特許第3,859,527号明細書参照)。
【0003】
この放射線像変換方法によれば、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せを用いる放射線写真法による場合に比較して、はるかに少ない被曝線量で情報量の豊富な放射線画像を得ることができるという利点がある。従って、この方法は、特に医療診断を目的とするX線撮影等の直接医療用放射線撮影において、利用価値の非常に高いものである。
【0004】
放射線像変換方法に用いられる放射線像変換パネルは、基本構造として、支持体とその片面に設けられた蛍光体層とからなるものである。なお、蛍光体層が自己支持性を有する場合には必ずしも支持体を必要としない。また、この蛍光体層の支持体とは反対側の表面(支持体に面していない側の表面)には一般に、透明な保護層が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0005】
蛍光体層は一般に、輝尽性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなるものであり、輝尽性蛍光体は、X線などの放射線を吸収したのち励起光の照射を受けると、輝尽発光を示す性質を有するものである。従って、被写体を透過した、或いは被検体から発せられた放射線は、その放射線量に比例して放射線像変換パネルの蛍光体層に吸収され、放射線像変換パネルには被写体或いは被検体の放射線像が放射線エネルギーの蓄積像として形成される。この蓄積像は、上記励起光を照射することにより輝尽発光光として放出させることができ、この輝尽発光光を光電的に読み取って電気信号に変換することにより放射線エネルギーの蓄積像を画像化することが可能となる。
【0006】
放射線像変換方法は、上述のように非常に有利な画像形成方法であるが、この方法に用いられる放射線像変換パネルも従来の放射線写真法に用いられる増感紙と同様に、高感度であってかつ画質(鮮鋭度、粒状性など)の良好な画像を与えるものであることが望まれる。
【0007】
放射線像変換パネルの感度は、基本的には放射線像変換パネルに含有されている輝尽性蛍光体の総輝尽発光量に依存し、この総発光量は蛍光体自体の発光輝度によるのみならず、蛍光体層における輝尽性蛍光体の含有量によっても異なる。輝尽性蛍光体の含有量が多いことは、またX線等の放射線に対する吸収も大であることを意味するから、一層高い感度が得られ、同時に画質(特に、粒状性)が向上する。
【0008】
一方、蛍光体層における輝尽性蛍光体の含有量が一定である場合には、輝尽性蛍光体粒子が密に充填されているほどその層厚を薄くすることができるから、散乱による励起光の広がりを少なくすることができ、相対的に高い鮮鋭度を得ることができる。
【0009】
近年、高画質化の要求が高まり、蛍光体層を支持体上に形成し、そしてこの蛍光体層を圧縮することにより得られる放射線像変換パネルが、特許文献に開示されている(例えば特許文献1〜3参照)。このようにして得られる放射線像変換パネルは、蛍光体層を圧縮処理することで、蛍光体層中の輝尽性蛍光体の密度をそれまでの放射線像変換パネルよりも高くしたものであった。
【0010】
しかしながら、このような技術でも、近年の高画質化の要求に応えるには、不充分であった。特に、輝度と粒状性との関係において、満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開昭59−126299号公報
【特許文献2】特開昭59−126300号公報
【特許文献3】特公平3−14159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、輝度及び粒状性が共に良好な放射線画像変換パネルを提供すること及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは種々検討した結果、粒状性に優れた輝尽性蛍光体層を支持体上の上層に設け、高輝度の輝尽性蛍光体層を下層に設け、組み合わせることにより、本発明の上記課題を解決できることを見いだし、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明に係る上記課題は以下の手段により解決される。
【0014】
1.支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルであって、該輝尽性蛍光体層が2層構成であり、該2層構成の輝尽性蛍光体層の上層が下記一般式(I)で表される輝尽性蛍光体を含有し、下層が下記一般式(II)で表される輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする放射線画像変換パネル。
一般式(I) BaFBrxI(1−x):Ln
一般式(II) BaFBryI(1−y):Ln
〔式中、LnはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgから選ばれる金属原子であり、xは0.8≦x≦1、yは0≦y≦0.2である。〕
2.前記一般式(I)及び(II)で表される輝尽性蛍光体の賦活剤がユウロピウム(Eu)であることを特徴とする前記1に記載の放射線画像変換パネル。
【0015】
3.前記1又は2に記載の輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造方法であって、輝尽性蛍光体前駆体を液相法により作製する工程を有することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記手段により、輝度及び粒状性が共に良好な放射線画像変換パネルを提供することができる。また、その製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の放射線画像変換パネルは、支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルであって、当該輝尽性蛍光体層が2層構成であり、当該2層構成の輝尽性蛍光体層の上層が前記一般式(I)で表される輝尽性蛍光体を含有し、下層が前記一般式(II)で表される輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする。この特徴は、請求項1〜3に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0018】
なお、前記一般式(I)及び(II)における輝尽性蛍光体の賦活剤がユウロピウム(Eu)であることが好ましい。また、本発明の放射線画像変換パネルの製造方法としては、輝尽性蛍光体前駆体を液相法により作製する工程を有する製造方法であることが好ましい。さらに、本発明はマンモグラフィなど低管電圧撮影(26〜33kVp)においてより効果を発揮する。
【0019】
以下、本発明とその構成要素、及び発明を実施するための最良の形態等について詳細な説明をする。
【0020】
(輝尽性蛍光体)
本発明に係る輝尽性蛍光体としては、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって、300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す輝尽性蛍光体が一般的に使用される。
【0021】
本発明においては、前記一般式(I)及び(II)で表される輝尽性蛍光体を用いることを要する。これらの輝尽性蛍光体の製造は、粒子形状の制御が難しい固相法ではなく、粒径の制御が容易である液相法により行うことが好ましい。特に、下記の液相合成法により上記輝尽性蛍光体を得ることがより好ましい。
【0022】
なお、一般式(I)及び(II)において、LnはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgから選ばれる金属原子であり、xは0.8≦x≦1、yは0≦y≦0.2である。
【0023】
(輝尽性蛍光体の製造方法)
本発明に係る輝尽性蛍光体は、公知の種々の製造方法によって製造することができるが、予め当該輝尽性蛍光体の前駆体を作製し、それを高温で焼成処理等して所望の輝尽性蛍光体とする態様の方法が好ましい。ここで、「輝尽性蛍光体前駆体」とは、液相法、固相法等によって作製された蛍光体結晶であって、未だ高温での焼成処理等の特別な処理を経ていない状態で、輝尽発光性や瞬時発光性を殆ど示さないものをいう。
【0024】
例えば、液相法で輝尽性蛍光体の前駆体を製造する場合には、前記一般式(I)又は(II)で表される物質が600℃以上の高温を経ていない状態をいう。又、固相法における輝尽性蛍光体の前駆体は、輝尽性蛍光体材料そのもの、又は輝尽性蛍光体材料を混合したもの、又はこれらの物質が600℃以上の高温を経ていない状態をいう。
【0025】
液相法による輝尽性蛍光体前駆体の製造については、特開平10−140148号公報に記載された前駆体製造方法、同10−147778号公報に記載された前駆体製造装置が好ましく利用できる。
【0026】
以下、液相法による前駆体の製造方法を示すが、本発明は、液相法により得られた前駆体の焼成に限らず、固相法により輝尽性蛍光体を製造する際に、輝尽性蛍光体材料を混合し焼成する場合にも適用できる。特に好ましくは、液相法により前駆体を製造することであり、これにより、微粒子化され粒径分布の揃った輝尽性蛍光体の輝尽発光強度を向上させることができる。
【0027】
本発明では以下の液相法により前記一般式(I)及び(II)で表される輝尽性蛍光体の前駆体を得ることが好ましい。
【0028】
本発明に有用な前駆体の形成方法としては、最初に、水系媒体中にフッ素化合物以外の原料化合物を溶解させる。原料化合物として、Baのハロゲン化物(例えばBaBr2、BaI2)とLnのハロゲン化物(例えばEuI3)を水系媒体中に入れ十分に混合し、溶解させて水溶液を調製する。
【0029】
通常Baのハロゲン化物の濃度は0.25(mol/リットル)以上、好ましくは1(mol/リットル)以上、更に好ましくは1.35(mol/リットル)以上、最も好ましくは3.0〜4.5(mol/リットル)として水系媒体との量比を調整しておく。つまり全体の中のBaI2濃度が記載範囲となるように予め濃く作っておく。
【0030】
又、Lnの濃度は0.01〜10(mol/リットル)が好ましく、0.05〜1(mol/リットル)が特に好ましい。この時、所望により、少量の酸、他のハロゲン化物(例えば、NH4I、KI、NaI等)、アンモニア、アルコール、水溶性高分子ポリマー、水不溶性金属酸化物微粒子粉体等を添加してもよい。この水溶液を反応母液という。通常、反応母液を50℃以上の温度、好ましくは80℃以上の温度に攪拌しながら維持する。
【0031】
次に、この反応母液に、フッ素化合物(例えばNH4F)の水溶液の濃度を5(mol/リットル)以上、好ましくは8(mol/リットル)以上、更に好ましくは10〜13(mol/リットル)として、ポンプ付きのパイプなどを用いて注入する。この際、激しく攪拌されている部分に液の注入を行うのが好ましい。このフッ素化合物水溶液を反応母液に注入することによって、前記の一般式(I)及び(II)に該当する輝尽性蛍光体の前駆体結晶を沈殿として得る。
【0032】
次に、上記の輝尽性蛍光体の前駆体結晶を、濾過、遠心分離などによって溶液から分離し、メタノール等有機溶媒で十分に洗浄し、乾燥する。この乾燥された輝尽性蛍光体の前駆体結晶に、アルミナ微粉末或いはシリカ微粉末等の焼結防止剤を添加、混合し、結晶表面に焼結防止剤微粉末を均一に付着させる。尚、焼成条件を選ぶことによって焼結防止剤の添加を省略することも可能である。
【0033】
得られた蛍光体前駆体を使用して輝尽性蛍光体を製造するには、特に下記a)〜e)の工程を経る焼成方法を採用する。
(a)焼成前に焼成炉の炉芯管内部に輝尽性蛍光体前駆体を4〜1000kg充填する工程;
(b)0.1%以上の酸素を含まず、0.1〜10%の水素を含む雰囲気を、炉芯管容積に対する流量比率0.01〜1.2(%/min)で流通させながら、輝尽性蛍光体前駆体を100℃以下から600℃以上に加熱する工程;
(c)0.1〜7%の酸素と0.1〜10%の水素を含む雰囲気を、炉芯管容積に対する流量比率0.01〜1.2(%/min)で流通させながら、輝尽性蛍光体前駆体を600℃以上で30分以上加熱する工程;
(d)上記(c)に引き続いて、0.1%以上の酸素を含まず、0.1〜10%の水素を含む雰囲気を、炉芯管容積に対する流量比率2.0〜10(%/min)で流通させながら、輝尽性蛍光体前駆体を600℃以上で30分以上加熱する工程;
(e)上記(d)に引き続いて、0.1%以上の酸素を含まず、0.1〜10%の水素を含む雰囲気を、炉芯管容積に対する流量比率2.0〜10(%/min)で流通させながら、輝尽性蛍光体を100℃以下に冷却して取り出す工程;
輝尽性蛍光体を製造するための前駆体結晶の焼成は、先ず乾燥している蛍光体前駆体結晶を粉体化し、石英ボート、アルミナルツボ、石英ルツボ等の耐熱性容器に充填し、電気炉の炉芯(炉芯管)に入れて焼結を避けながら行う。但し、電気炉の炉芯は焼成中の雰囲気置換が可能なものに限られる。又電気炉としては、ロータリーキルン、流動床炉、振動流動床炉等の移動床式電気炉を使用できる。
【0034】
炉芯に充填された前駆体結晶粉体から、下記に詳細を示す焼成方法により輝尽性蛍光体を製造することが好ましい。
【0035】
輝尽性蛍光体前駆体を炉芯に4〜1000kg充填した後、炉芯内の雰囲気を0.1%以上の酸素を含まず、0.1〜10%の水素を含む雰囲気に置換する。この雰囲気置換に先立って炉芯内部の大気を排出して真空にしても良い。真空吸引には回転式ポンプ等が利用できる。炉芯を真空にした場合は雰囲気の置換効率が高くなるという利点がある。真空を経由せずに雰囲気を置換するいわゆる追い出し置換の場合は、炉芯の容量の少なくとも3倍の体積の雰囲気を注入する必要がある。この炉芯内は通常は常温であるが、100℃以下に設定してある。
【0036】
電気炉の炉芯内を上記雰囲気に置換した後、600℃以上に加熱を行う。この時、炉芯内の混合雰囲気は炉芯管容積に対する流量比率0.01〜1.2(%/min)で流通させることが好ましい。更に好ましくは、0.1〜1.0(%/min)である。又、昇温の速度は、炉芯管の材質や、電気炉の仕様等により異なるが、1〜50℃/minが好ましい。
【0037】
600℃以上に到達した後、少なくとも0.1〜7%の酸素と0.1〜10%の水素を含む雰囲気を炉芯内に導入し、少なくとも30分間保持する。この時の温度は好ましくは600〜1300℃、より好ましくは700〜1000℃である。600℃以上とすることにより、良好な輝尽発光特性が得られ、700℃以上で更に放射線画像の診断の実用上好ましい輝尽発光特性を得ることができる。
【0038】
また、1300℃以下であれば、焼結により大粒径化することを防止でき、特に1000℃以下であれば、放射線画像の診断の実用上好ましい粒径の輝尽性蛍光体を得ることができる。更に好ましくは、820℃付近である。ここで雰囲気の置換は追い出し置換により行い、新たに導入される雰囲気としては、水素濃度が0.1〜10%、酸素濃度は水素濃度未満、かつ残りの成分が窒素である混合ガスが好ましい。より好ましくは、水素濃度は0.1〜3%、酸素濃度は水素濃度に対して40〜80%、かつ残りの成分が窒素という混合ガスである。
【0039】
特に、水素が1%、酸素0.6%、かつ残りの成分が窒素の混合ガスである。
【0040】
水素濃度を0.1%以上とすることで還元力が得られ、発光特性を向上させることができ、5%以下とすることで取り扱い上好ましく、更に輝尽性蛍光体の結晶自体が還元されてしまうことを防止できる。又、酸素濃度は、水素濃度に対して約60%をピークに輝尽発光強度を著しく向上できる。
【0041】
また、昇温中の雰囲気に酸素を混入させても良く、この場合は水素/窒素混合ガスと酸素ガスの流量比を操作することで雰囲気の混合比を制御できる。又酸素の代替として大気をそのまま導入することもできる。更に酸素/窒素混合ガスと水素/窒素混合ガスの流量比を調節して用いることもできる。
【0042】
所望の窒素、水素、酸素の混合比に置換されるまでは、炉芯の容量の3倍以上の体積の新たな雰囲気を導入することが好ましい。この時から、通常、少なくとも30分以上、好ましくは1〜5時間の間、600℃以上で窒素、水素、酸素の混合雰囲気が保持される。
【0043】
前記操作の後、再び炉芯内を0.1%以上の酸素を含まず、0.1〜10%の水素を含む雰囲気に置換する。炉芯内に残留した酸素を0.1%未満(好ましくは0.01%未満)まで追い出すためには、昇温の時と同じ雰囲気ガスを用いることが好ましい。置換の効率を高めるために、新たな雰囲気ガスの流量を増加させることが好ましい。雰囲気ガスの流量は、炉芯管容積に対する流量比率2.0〜10(%/min)が好ましい。
【0044】
また、これにより炉芯内の雰囲気が置換されるので、炉芯内で生成される輝尽性蛍光体 以外の反応生成物を排出することができる。特に、前記反応生成物にヨウ素が含まれる場合には、ヨウ素による輝尽性蛍光体の黄色化、及び黄色化に伴う輝尽性蛍光体の劣化を防止できる。通常、少なくとも30分以上、好ましくは30分から12時間の間、600℃以上で0.1%以上(好ましくは0.01%以上)の酸素を含まない雰囲気が保持される。30分以上とすることにより、良好な輝尽発光特性を示す輝尽性蛍光体を得ることができる。又、12時間以下とすることにより、加熱による輝尽発光特性の低下を防止することができる。
【0045】
冷却は、0.1%以上の酸素を含まず、0.1〜10%の水素を含む雰囲気を、炉芯管容積に対する流量比率2.0〜10(%/min)で流通させながら行うことが好ましい。炉芯管容積に対する流量比率を2.0〜10(%/min)とすることで、炉芯内で生成される輝尽性蛍光体以外の反応生成物を排出することができる。
【0046】
特に、前記反応生成物にヨウ素が含まれる場合には、ヨウ素による輝尽性蛍光体の黄色化、及び黄色化に伴う輝尽性蛍光体の劣化を防止できる。降温の速度は、1〜50℃/minが好ましい。
【0047】
冷却は少なくとも100℃まで行い、その後生成した蛍光体を取り出すことが好ましく、特に好ましい取り出し温度は50℃以下である。
【0048】
(放射線画像変換パネルの作製)
上記のようにして作製された物輝尽性蛍光体を用いて放射線画像変換パネルの構成要素と当該パネルの作製方法について詳しく説明する。
【0049】
〔支持体〕
本発明に係る放射線像変換パネルに用いられる支持体としては各種高分子材料が用いられる。特に情報記録材料としての取り扱い上可撓性のあるシートあるいはウェブに加工できるものが好適であり、この点からいえばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルムが好ましい。
【0050】
また、これら支持体の層厚は用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80〜1000μmであり、取り扱い上の点から、さらに好ましくは80〜500μmである。これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0051】
さらに、これら支持体は、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引層を設けてもよい。
【0052】
〔下引き層〕
本発明の放射線像変換パネルにおいては、支持体上に下引き層を設けても良い。当該下引き層は、架橋剤により架橋できる高分子樹脂と架橋剤とを含有していることが好ましい。
【0053】
下引き層で用いることのできる高分子樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース等を挙げることができ、請求項2に係る発明では、下引き層で用いる高分子樹脂の平均ガラス転移点温度(Tg)が25℃以上であることが特徴の1つであり、好ましくは25〜200℃のTgを有する高分子樹脂を用いることである。
【0054】
本発明に係る下引き層で用いることのできる架橋剤としては、特に制限はなく、例えば、多官能イソシアネート及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミノ樹脂及びその誘導体等を挙げることができるが、架橋剤として多官能イソシアネート化合物を用いることが好ましく、例えば、日本ポリウレタン社製のコロネートHX、コロネート3041等が挙げられる。
【0055】
本発明に係る下引き層は、例えば、以下に示す方法により支持体上に形成することができる。
【0056】
まず、上記記載の高分子樹脂と架橋剤を適当な溶剤、例えば後述の輝尽性蛍光層塗布液の調製で用いる溶剤に添加し、これを充分に混合して下引き層塗布液を調製する。
【0057】
架橋剤の使用量は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂の種類等により異なるが、輝尽性蛍光体層の支持体に対する接着強度の維持を考慮すれば、高分子樹脂に対して、50質量%以下の比率で添加することが好ましく、特には、15〜50質量%であることが好ましい。
【0058】
下引き層の膜厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂及び架橋剤の種類等により異なるが、一般には3〜50μmであることが好ましく、特には、5〜40μmであることが好ましい。
【0059】
〔輝尽性蛍光体層〕
本発明において、輝尽性蛍光体層に用いられる結合剤の例としては、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、またはアラビアゴムのような天然高分子物質;および、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン・塩化ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステルなどのような合成高分子物質などにより代表される結合剤を挙げることができるが、本発明では、結合剤が熱可塑性エラストマーを主成分とする樹脂であることが特徴であり、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、上記にも記載のポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジェン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、天然ゴム系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン−ブタジエンゴム及びシリコンゴム系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0060】
これらのうち、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーは、蛍光体との結合力が強いため分散性が良好であり、また延性にも富み、放射線 増感スクリーンの対屈曲性が良好となるので好ましい。なお、これらの結合剤は、架橋剤により架橋されたものでも良い。
【0061】
塗布液における結合剤と輝尽性蛍光体との混合比は、蛍光体に対し1〜20質量部が好ましく、さらには2〜10質量部がより好ましい。
【0062】
輝尽性蛍光体層塗布液の調製に用いられる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル、トリオール、キシロールなどの芳香族化合物、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどのハロゲン化炭化水素およびそれらの混合物などが挙げられる。
【0063】
なお、塗布液には、該塗布液中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、また、形成後の輝尽性蛍光体層中における結合剤と蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤などの種々の添加剤が混合されていてもよい。そのような目的に用いられる分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。また、可塑剤の例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル;フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチル等のフタル酸エステル;グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチルなどのグリコール酸エステル;そして、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールとコハク酸とのポリエステルなどのポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステルなどを挙げることができる。また、輝尽性蛍光体層塗布液中に、輝尽性蛍光体粒子の分散性を向上させる目的で、ステアリン酸、フタル酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などの分散剤を混合してもよい。
【0064】
輝尽性蛍光体層用塗布液の調製は、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、三本ロールミル、高速インペラー分散機、Kadyミル、あるいは超音波分散機などの分散装置を用いて行われる。
【0065】
上記のようにして調製された塗布液を、後述する支持体表面に均一に塗布することにより塗膜を形成する。用いることのできる塗布方法としては、通常の塗布手段、例えば、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、リップコーターなどを用いることができる。
【0066】
本発明は、上記の手段により調製された輝尽性蛍光体層用塗布液を用いて支持体上に同時又は別々に塗布し、その後加熱・乾燥して、支持体上に2層構成の輝尽性蛍光体層を形成し、上層の輝尽性蛍光体層は前記一般式(I)で表される輝尽性蛍光体を含有し、下層の輝尽性蛍光体層は前記一般式(II)で表される輝尽性蛍光体を含有していることを特徴としている。
【0067】
2層構成の輝尽性蛍光体層の膜厚は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによって異なるが、本発明においては、10μm〜1mmであることが好ましく、より好ましくは10〜500μmである。
【0068】
また、輝尽性蛍光体層には高光吸収の物質、高光反射率の物質等を含有させてもよい。これにより輝尽性蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散の低減に有効である。
【0069】
高光反射率の物質とは、輝尽励起光(500〜900nm、特に600〜800nm)に対する反射率の高い物質のことをいい、例えば、アルミニウム、マグネシウム、銀、インジウム、その他の金属等、白色顔料及び緑色〜赤色領域の色材を用いることができる。白色顔料は輝尽発光も反射することができる。
【0070】
白色顔料としては、例えば、TiO2(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO3・Pb(OH)2、BaSO4、Al23、M(II)FX(但し、M(II)はBa、Sr及びCaの各原子から選ばれるの少なくとも一種の原子であり、XはCl原子又はBr原子である。)、CaCO3、ZnO、Sb23、SiO2、ZrO2、リトポン(BaSO4・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸塩、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウムなどがあげられる。
【0071】
これらの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射したり、屈折させることにより輝尽発光を容易に散乱し、得られる放射線像変換パネルの感度を顕著に向上させることができる。
【0072】
また、高光吸収率の物質としては、例えば、カーボンブラック、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄など及び青の色材が用いられる。このうちカーボンブラックは輝尽発光も吸収する。
【0073】
また、色材は、有機又は無機系色材のいずれでもよい。有機系色材としては、例えば、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学製)、D&CブルーNo.1(ナショナルアニリン製)、スピリットブルー(保土谷化学製)、オイルブルーNo.603(オリエント製)、キトンブルーA(チバガイギー製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土谷化学製)、レイクブルーAFH(協和産業製)、プリモシアニン6GX(稲畑産業製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学製)、シアンブルーBNRCS(東洋インキ製)、ライオノイルブルーSL(東洋インキ製)等が用いられる。
【0074】
また、カラーインデクスNo.24411、23160、74180、74200、22800、23154、23155、24401、14830、15050、15760、15707、17941、74220、13425、13361、13420、11836、74140、74380、74350、74460等の有機系金属錯塩色材もあげられる。
【0075】
無機系色材としては群青、例えば、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−Co−NiO系等の無機顔料があげられる。
【0076】
(保護層)
また、本発明に係る輝尽性蛍光体層は保護層を有していても良い。保護層は保護層用塗布液を輝尽性蛍光体層上に直接塗布して形成してもよいし、あらかじめ別途形成した保護層を輝尽性蛍光体層上に接着してもよい。あるいは別途形成した保護層上に輝尽性蛍光体層を形成する手段を取ってもよい。
【0077】
保護層の材料としては、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の通常の保護層用材料が用いられる。他に透明なガラス基板を保護層としてもちいることもできる。これらの保護層の層厚は0.1〜2000μmが好ましい。
【0078】
(放射線画像変換パネルを含むシステム構成)
図1は、本発明の放射線画像変換パネルを含むシステム構成の一部を示す概略図である。図1において21は放射線発生装置、22は被写体、23は輝尽性蛍光体を含有する可視光ないし赤外光輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネル、24は放射線像変換パネル23の放射線潜像を輝尽発光として放出させるための輝尽励起光源、25は放射線像変換パネル23より放出された輝尽発光を検出する光電変換装置、26は光電変換装置25で検出された光電変換信号を画像として再生する画像再生装置、27は再生された画像を表示する画像表示装置、28は輝尽励起光源24からの反射光をカットし、放射線像変換パネル23より放出された光のみを透過させるためのフィルタである。
【0079】
尚、図1は被写体の放射線透過像を得る場合の例であるが、被写体22自体が放射線を放射する場合には、前記放射線発生装置21は特に必要ない。
【0080】
また、光電変換装置25以降は放射線像変換パネル23からの光情報を何らかの形で画像として再生できるものであればよく、前記に限定されない。
【0081】
図1に示されるように、被写体22を放射線発生装置21と放射線像変換パネル23の間に配置し放射線Rを照射すると、放射線Rは被写体22の各部の放射線透過率の変化に従って透過し、その透過像RI(即ち、放射線の強弱の像)が放射線像変換パネル23に入射する。
【0082】
この入射した透過像RIは放射線像変換パネル23の輝尽性蛍光体層に吸収され、これによって輝尽性蛍光体層中に吸収された放射線量に比例した数の電子及び/又は正孔が発生し、これが輝尽性蛍光体のトラップレベルに蓄積される。
【0083】
即ち、放射線透過像のエネルギーを蓄積した潜像が形成される。次にこの潜像を光エネルギーで励起して顕在化する。
【0084】
また、可視あるいは赤外領域の光を照射する輝尽励起光源24によって輝尽性蛍光体層に照射してトラップレベルに蓄積された電子及び/又は正孔を追い出し、蓄積されたエネルギーを輝尽発光として放出させる。
【0085】
この放出された輝尽発光の強弱は蓄積された電子及び/又は正孔の数、すなわち放射線 像変換 パネル23の輝尽性蛍光体層に吸収された放射線エネルギーの強弱に比例しており、この光信号を、例えば、光電子増倍管等の光電変換装置25で電気信号に変換し、画像再生装置26によって画像として再生し、画像表示装置27によってこの画像を表示する。
【0086】
画像再生装置26は単に電気信号を画像信号として再生するのみでなく、いわゆる画像処理や画像の演算、画像の記憶、保存等が出来るものを使用するとより有効である。
【0087】
また、光エネルギーで励起する際、輝尽励起光の反射光と輝尽性蛍光体層から放出される輝尽発光とを分離する必要があることと、輝尽性蛍光体層から放出される発光を受光する光電変換器は一般に600nm以下の短波長の光エネルギーに対して感度が高くなるという理由から、輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光はできるだけ短波長領域にスペクトル分布を持ったものが望ましい。
【0088】
本発明の輝尽性蛍光体の発光波長域は300〜500nmであり、一方輝尽励起波長域は500〜900nmであるので前記の条件を同時に満たすが、最近、診断装置のダウンサイジング化が進み、放射線像変換パネルの画像読み取りに用いられる励起波長は高出力で、且つ、コンパクト化が容易な半導体レーザが好まれ、そのレーザ光の波長は650〜700nmであることが好ましく、本発明の放射線像変換パネルに組み込まれた輝尽性蛍光体は、650〜700nmの励起波長を用いた時に、極めて良好な鮮鋭性を示すものである。
【0089】
即ち、本発明の輝尽性蛍光体はいずれも500nm以下に主ピークを有する発光を示し、輝尽励起光の分離が容易でしかも受光器の分光感度とよく一致するため、効率よく受光できる結果、受像系の感度を高めることができる。
【0090】
輝尽励起光源24としては、放射線像変換パネル23に使用される輝尽性蛍光体の輝尽励起波長を含む光源が使用される。特にレーザ光を用いると光学系が簡単になり、また輝尽励起光強度を大きくすることができるために輝尽発光効率をあげることができ、より好ましい結果が得られる。
【0091】
レーザとしては、例えば、He−Neレーザ、He−Cdレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、N2レーザ、YAGレーザ及びその第2高調波、ルビーレーザ、半導体レーザ、各種の色素レーザ、銅蒸気レーザ等の金属蒸気レーザ等がある。通常はHe−NeレーザやArイオンレーザのような連続発振のレーザが望ましいが、パネル1画素の走査時間とパルスを同期させればパルス発振のレーザを用いることもできる。
【0092】
また、フィルタ28を用いずに特開昭59−22046号公報に示されるような、発光の遅延を利用して分離する方法によるときは、連続発振レーザを用いて変調するよりもパルス発振のレーザを用いる方が好ましい。
【0093】
上記の各種レーザ光源の中でも、半導体レーザは小型で安価であり、しかも変調器が不要であるので特に好ましく用いられる。
【0094】
フィルタ28としては放射線像変換パネル23から放射される輝尽発光を透過し、輝尽励起光をカットするものであるから、これは放射線像変換パネル23に含有する輝尽性蛍光体の輝尽発光波長と輝尽励起光源24の波長の組合わせによって決定される。
【0095】
例えば、輝尽励起波長が500〜900nmで輝尽発光波長が300〜500nmにあるような実用上好ましい組合わせの場合、フィルタとしては例えば東芝社製C−39、C−40、V−40、V−42、V−44、コーニング社製7−54、7−59、スペクトロフィルム社製BG−1、BG−3、BG−25、BG−37、BG−38等の紫〜青色ガラスフィルタを用いることができる。又、干渉フィルタを用いると、ある程度、任意の特性のフィルタを選択して使用できる。光電変換装置25としては、光電管、光電子倍増管、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、光導電素子等光量の変化を電子信号の変化に変換し得るものなら何れでもよい。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0097】
(輝尽性蛍光体の作製)
〈ユウロピウム賦活フッ化臭化バリウム(BaFBr:Eu)の作製〉
ユウロピウム賦活フッ化臭化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するために、BaBr2水溶液(2mol/L)2500mlとEuBr3水溶液(0.2mol/L)26.5mlを反応器に入れた。この反応器中の反応母液を撹拌しながら60℃で保温した。弗化アンモニウム水溶液(10mol/L)250mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、結晶(沈澱物)を析出させた。注入終了後そのままの温度で90分間攪拌した。90分攪拌した後ろ過しエタノール2000mlで洗浄した後、80℃で乾燥し、ユウロピウム賦活フッ化臭化バリウムの結晶を得た。
【0098】
焼成時の焼結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するためにアルミナの超微粒子粉体を0.2質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。
【0099】
これを石英ボートに充填してチューブ炉を用いて水素合ガス雰囲気下で、850℃で2時間焼成した後、分級により蛍光体中の蛍光体粒子の平均粒径が5μmのユウロピウム賦活フッ化臭化バリウムを得た。
【0100】
尚、平均粒径は電子顕微鏡にて、各蛍光体中の500個の蛍光体粒子の粒径を測定し、その平均値を平均粒径とした。
【0101】
〈ユウロピウム賦活フッ化ヨウ化バリウム(BaFI:Eu)〉
ユウロピウム賦活フッ化ヨウ化バリウムの蛍光体前駆体を合成するために、BaI2水溶液(3.6mol/L)2780ml、EuI3水溶液(0.15mol/L)27mlを反応器に入れた。この反応器中の反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。次いで、反応母液中にフッ化アンモニウム水溶液(8mol/L)322mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈殿物を生成させた。
【0102】
注入終了後も保温と撹拌を2時間続けて沈殿物の熟成を行った。
【0103】
次に沈殿物を濾別後、エタノールにより洗浄した後、真空乾燥させてユウロピウム賦活フッ化ヨウ化バリウムの結晶を得た。
【0104】
焼成時の焼結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するためにアルミナの超微粒子粉体を0.2質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。
【0105】
これを石英ボートに充填してチューブ炉を用いて水素合ガス雰囲気下で、850℃で2時間焼成した後、分級により蛍光体中の蛍光体粒子の平均粒径が7μmのユウロピウム賦活フッ化ヨウ化バリウムを得た。
【0106】
尚、平均粒径は電子顕微鏡にて、各蛍光体中の500個の蛍光体粒子の粒径を測定し、その平均値を平均粒径とした。
【0107】
(蛍光体層塗布液の調製)
蛍光体:BaFBr:Eu、BaFI:Eu(前記一般式(I)及び(II)においてそれぞれx=1、y=0)をそれぞれ100gとポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロン63SS固形分濃度30%)16.7gとをメチルエチルケトン−トルエン(1:1)混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散し、粘度を2.5〜3.0Pa・sに調整して、蛍光体層塗布液を調製した。
【0108】
(蛍光体シート1〜7の作製)
上記調製した蛍光体層塗布液をそれぞれ用いて、ドクターブレードにより、厚さ250μmのポリエチレンテレフタレート支持体上に、塗布を行った。重層蛍光体層は先ず下層を該支持体上に塗布し、乾燥した後上層を塗布した。乾燥は100℃のオーブンで15分間乾燥させて蛍光体層を有する蛍光体シート1〜7を作製した。
【0109】
(防湿性保護フィルムの作製)
上記作製した蛍光体シートの蛍光体層塗設面側の保護フィルムとして下記構成(A)を用いた。
【0110】
構成(A)
NY15///VMPET12///VMPET12///PET12///CPP20
NY:ナイロン
PET:ポリエチレンテレフタレート
CPP:キャステングポリプロピレン
VMPET:アルミナ蒸着PET(市販品:東洋メタライジング社製)
各樹脂フィルムの後ろに記載の数字は、樹脂層の膜厚(μm)を示す。
【0111】
上記「///」は、ドライラミネーション接着層で、接着剤層の厚みが3.0μmであることを意味する。使用したドライラミネーション用の接着剤は、2液反応型のウレタン系接着剤を用いた。
【0112】
また、蛍光体シートの支持体裏面側の保護フィルムは、CPP30μm/アルミフィルム9μm/ポリエチレンテレフタレート(PET)188μmの構成のドライラミネートフィルムとした。また、この場合の接着剤層の厚みは1.5μmで2液反応型のウレタン系接着剤を使用した。
【0113】
(放射線画像変換パネルの作製)
前記作製した蛍光体シートを、各々一辺が20cmの正方形に断裁した後、上記作製した防湿性保護フィルムを用いて、減圧下で周縁部をインパルスシーラーを用いて融着、封止して、放射線画像変換パネルを作製した。尚、融着部から蛍光体シート周縁部までの距離は1mmとなるように融着した。融着に使用したインパルスシーラーのヒーターは3mm幅のものを使用した。
【0114】
以上のようにして、輝尽性蛍光体層を有する輝尽性蛍光体パネル1(試料1)〜輝尽性蛍光体パネル7(試料7)を得た。
【0115】
各試料について、下記の評価を行った。
【0116】
(輝度の評価)
輝度の評価は、管電圧28kVp、管電流80mA、照射時間0.1秒、爆射線源とプレート間距離1mの条件で各試料にX線を照射し、それによって試料が発する光を光ファイバーで集光して光電子増倍管により光電変換し、試料1の輝度を100としてそれに対する相対値で示した。
【0117】
(粒状性評価)
放射線画像変換パネル1の粒状性評価は、放射線画像の形成を下記のX線照射条件にて行い、次いで、放射線画像の読取には、励起光として690nmの半導体レーザ光、605nmの半導体レーザ光を各々用いて行った。読取の後、フィルム出力したX線のベタ露光画像を目視により、下記の4段階ランク評価をした。
【0118】
X線照射条件:28kV、80mA、0.1sec
フィルム出力条件:γ(階調)=3.0出力
◎:粒状がほとんどわからず極めて良好
○:若干の粒状が認められるものの良好
△:粒状が認められる
×:粒状がはっきり目立つ
上記評価結果を表1に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
表1から明らかなように、本発明による放射線画像変換パネルは、安価で、輝度、粒状性共に優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の放射線画像変換パネルを含むシステム構成の一例を示す概略図
【符号の説明】
【0122】
21 放射線発生装置
22 被写体
23 放射線画像変換パネル
24 輝尽励起光源
25 光電変換装置
26 画像再生装置
27 画像表示装置
28 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルであって、該輝尽性蛍光体層が2層構成であり、該2層構成の輝尽性蛍光体層の上層が下記一般式(I)で表される輝尽性蛍光体を含有し、下層が下記一般式(II)で表される輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする放射線画像変換パネル。
一般式(I) BaFBrxI(1−x):Ln
一般式(II) BaFBryI(1−y):Ln
〔式中、LnはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgから選ばれる金属原子であり、xは0.8≦x≦1、yは0≦y≦0.2である。〕
【請求項2】
前記一般式(I)及び(II)で表される輝尽性蛍光体の賦活剤がユウロピウム(Eu)であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造方法であって、輝尽性蛍光体前駆体を液相法により作製する工程を有することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−58257(P2009−58257A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223848(P2007−223848)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】