説明

放射線画像変換パネル

【課題】 本発明の目的は、気相成長法により形成した輝尽性蛍光体層への透湿を防湿性保護フィルムを用いて低減させ、放射線画像変換パネルの封止を完全に行うことにより、長期間良好な状態で使用することのできる放射線画像変換パネルを提供することにある。
【解決手段】 基板上に、気相堆積法により形成された、少なくとも1層の輝尽性蛍光体層を有する輝尽性蛍光体プレートと、該輝尽性蛍光体プレートの蛍光体面側に配置された保護フィルムからなる放射線画像変換パネルにおいて、該保護フィルムは、該輝尽性蛍光体プレートの周辺部の輝尽性蛍光体層を有しない基板部分に貼られた熱融着性の樹脂からなる粘着テープと熱融着していることを特徴とする放射線画像変換パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相堆積により形成された輝尽性蛍光体層の表面を、防湿性保護フィルムを用いて覆うことにより、蛍光体層を封止した放射線画像変換パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、輝尽性蛍光体を利用した放射線像変換パネルにより放射線像を画像化する方法が用いられるようになってきた。
【0003】
これは、例えば、米国特許第3,859,527号及び特開昭55−12144号等に開示された様に支持体上に輝尽性蛍光体層を形成した放射線像変換パネルを使用するものである。この放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線をあてて被写体各部の放射線透過度に対応する放射線エネルギーを輝尽性蛍光体層に蓄積させて潜像(蓄積像)を形成し、この輝尽性蛍光体層を輝尽励起光(レーザ光が用いられる)で走査することによって各部に蓄積された放射線エネルギーを放射させて光に変換し、この光の強弱を読みとって画像を得る。この画像はCRT等各種のディスプレイ上に再生してもよいし、又ハードコピーとして再生してもよい。
【0004】
この放射線像変換方法に用いられる放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層として、例えば特開昭61−142497号等において行われている様な、微細な凹凸パターンを有する支持体上に輝尽性蛍光体を堆積させ形成した微細な擬柱状ブロックからなる輝尽性蛍光体層を用いる方法がある。
【0005】
又、特開昭61−142500号に記載のように微細なパターンを有する支持体上に、輝尽性蛍光体を堆積させて得た柱状ブロック間のクラックをショック処理を施して更に発達させた輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−39737号に記載されたような、支持体の面に形成された輝尽性蛍光体層にその表面側から亀裂を生じさせ擬柱状とした放射線像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−110200号に記載のように、支持体の上面に蒸着により空洞を有する輝尽性蛍光体層を形成した後、加熱処理によって空洞を成長させ亀裂を設ける方法等も提案されている。
【0006】
又、特開平2−58000号においては、気相堆積法によって支持体上に、支持体の法線方向に対し一定の傾きをもった細長い柱状結晶を形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルが提案されている。
【0007】
これらの輝尽性蛍光体層の形状をコントロールする試みにおいては、いずれも輝尽性蛍光体層を柱状とすることで、輝尽励起光(又輝尽発光)の横方向への拡散を抑える(クラック(柱状結晶)界面において反射を繰り返しながら支持体面まで到達する)ことができるため、輝尽発光による画像の鮮鋭性を著しく増大させることができるという特徴がある。
【0008】
しかしながら、これらの気相成長(堆積)法により形成された輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルにおいて、輝尽性蛍光体の多くは、吸湿性が高く、このため、一般的な環境条件下に放置すると、徐々に空気中の水分を吸収し、時間の経過とともに、性能の著しい劣化を招くことが知られている。
【0009】
従来から、例えば特許文献1に記載されているように、ユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化物ハロゲン化物系蛍光体粒子を結着剤中に分散し形成した輝尽性蛍光体層を、金属酸化物、窒化珪素などの薄膜を蒸着した防湿性保護フィルムをもちいてバリアを形成し封止することにより輝尽性蛍光体層の吸湿を防止する方法にがとられている。
【0010】
また、吸湿性の蛍光体の水蒸気からの保護については、例えば、特許文献2に、シンチレータ材料であるCsI等の蛍光体を水蒸気から保護するためにポリパラキシリレン膜とシリカ等の防湿膜とを順次CVD法により成膜した積層膜を用いる例が記載されている。
【0011】
しかしながら、前記気相堆積法によって形成された輝尽性蛍光体結晶は、前記のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化物ハロゲン化物系蛍光体粒子を結着剤中に分散し形成した輝尽性蛍光体層またシンチレータ材料であるCsI等の蛍光体に比べても、材料の吸湿性が大きいこと、また、気相堆積法による輝尽性蛍光体結晶については、結着剤による保護がないことから、水蒸気からの保護についてはより重要であり、前記の封止方法を用いることにより向上効果は認められるものの、金属酸化物などの薄膜を蒸着した防湿性保護フィルムを用い、これにより、支持体ごと輝尽性蛍光体結晶を包み込む様な前記の封止方法では、充分な防湿性が得られず、より吸湿防止を完全にする方法が必要であった。
【特許文献1】特開平11−344598号公報
【特許文献2】特開2001−235548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、気相成長法により形成した輝尽性蛍光体層への透湿を防湿性保護フィルムを用いて低減させ、放射線画像変換パネルの封止を完全に行うことにより、長期間良好な状態で使用することのできる放射線画像変換パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記課題は、以下の手段により達成されるものである。
【0014】
(請求項1)
基板上に、気相堆積法により形成された、少なくとも1層の輝尽性蛍光体層を有する輝尽性蛍光体プレートと、該輝尽性蛍光体プレートの蛍光体面側に配置された保護フィルムからなる放射線画像変換パネルにおいて、該保護フィルムは、該輝尽性蛍光体プレートの周辺部の輝尽性蛍光体層を有しない基板部分に貼られた熱融着性の樹脂からなる粘着テープと熱融着していることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0015】
(請求項2)
基板上に、気相堆積法により形成された、少なくとも1層の輝尽性蛍光体層を有する輝尽性蛍光体プレートと、該輝尽性蛍光体プレートの蛍光体面側および裏面側に配置された保護フィルムからなる放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体プレートの蛍光体面側および裏面側に配置された保護フィルムは、該輝尽性蛍光体プレートの周辺部の輝尽性蛍光体層を有しない基板部分において、蛍光体側から裏面側に折り返すように貼られた熱融着性の樹脂からなる粘着テープにより、蛍光体面側および裏面側においてそれぞれ熱融着されていることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0016】
(請求項3)
前記保護フィルムの前記輝尽性蛍光体プレートに接する側の最外層の樹脂層が熱融着性を有する樹脂層で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線画像変換パネル。
【0017】
(請求項4)
前記保護フィルムが、少なくとも1層以上の金属酸化物を蒸着した樹脂フィルムを含む複数の樹脂フィルムが層状に接着されてなる積層フィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線画像変換パネル。
【0018】
(請求項5)
基板上に、気相堆積法により形成された、前記少なくとも1層の輝尽性蛍光体層が、下記一般式(1)で表されるアルカリハライド系輝尽性蛍光体からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0019】
一般式(1)
1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
式中、M1はLi,Na,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、M2はBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,Cu及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の2価金属であり、M3はSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1種の3価金属であり、X,X′及びX″はF,Cl,Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンであり、AはEu,Tb,In,Ga,Cs,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、又、a,b及びeは、それぞれ0≦a<0.5,0≦b<0.5,0<e≦0.2の範囲の数値を表す。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、気相堆積により形成された輝尽性蛍光体層を、防湿性保護フィルムを用い封止した耐用年数の長い放射線画像変換パネルが得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0022】
以下本発明を詳細に説明する。
【0023】
気相堆積法により支持体上に輝尽性蛍光体層を形成した前記放射線画像変換パネルにおいては、輝尽性蛍光体層がの吸湿性が強く、湿気に弱いため、通常、輝尽性蛍光体層表面、および支持体を一体として、防湿性保護フィルム、好ましくは、金属酸化物を蒸着したフィルム等を用いて覆い封止することで、防湿性を高めた放射線画像変換パネルを得ている。
【0024】
前述したように、輝尽性蛍光体の吸湿による、放射線画像変換パネルの性能の劣化を防止するために、輝尽性蛍光体層および支持体を防湿性保護フィルムで覆って封止し、水分の浸入を防ぐことは、知られている。
【0025】
例えば、前記特許文献1(特開平11−344598号公報)に記載された放射線画像変換パネルにおいては、輝尽性蛍光体層を有する支持体を、蛍光体層および支持体一体としてその表面、裏面を金属酸化物を蒸着した樹脂フィルムからなる防湿性保護フィルムにより覆い、周囲を接着することで内部を水分から封止している。
【0026】
図1は支持体1例えばホウ珪酸ガラス板上に、気相堆積法により、例えばCsBr等の柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層2を形成した蛍光体プレートの断面図を示す。
【0027】
図2は、輝尽性蛍光体層2及び支持体1からなる該蛍光体プレートの蛍光体面及び裏面を防湿性フィルム3,3′で覆い端面で封止した断面図を示している。2つの防湿性フィルムは端面で熱硬化性樹脂等、例えば尿素樹脂系材料により熱硬化接着され蛍光体プレート全体が封止されている。
【0028】
熱硬化性樹脂とは、合成樹脂の内、加熱して成形する際に硬化するものを指し、本発明の熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、尿素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。中でも、尿素樹脂が好ましいものである。
【0029】
防湿性保護フィルムには、例えばシリカ、アルミナ等金属酸化物の膜を蒸着したフィルム(例えば、アルミナ蒸着PET(市販品:東洋メタライジング社製))或いはこれを他の樹脂フィルムと複数積層したもの(例えば、CPP(熱融着性フィルム(キャスティングポリプロピレン))を積層したもの)が使用できる。これにより防湿性保護フィルムの端面を熱硬化樹脂等により接着し防湿性保護フィルムによる封止を行うことができる。
【0030】
これらの方法は、一定の効果はあるものの、潮解性のつよい、例えば、アルカリハライド系輝尽性蛍光体、特にCsBr,I系の蛍光体において顕著であるが、このような封止方法によっては、防湿性能が充分でなく、蛍光体の輝尽発光特性において、十分な耐用年数が得られないことが判明した。
【0031】
これは、上記輝尽性蛍光体の潮解性が特に大きく、吸水による蛍光体の輝尽発光特性の低下も大きいためであるが、一方、封止方法としてみると、これらの方法は、例えば500μm〜2000μmにも達する厚みのある支持体を、その上に気相堆積法により形成された輝尽性蛍光体層と共に、防湿性保護フィルムを用いて、その輝尽性蛍光体面、および支持体面の裏面、両面から挟み込むようにして、例えば熱硬化型接着剤等を用いて、支持体周囲を接着封止することから、その厚みのために、特にその四隅において皺が発生しやすく、上下の、防湿性保護フィルム間の接着強度の不均一を生じやすい。そのため耐久性に劣り、ひび割れが起こりやすいため、充分な封止強度が得られない。
【0032】
防湿性保護フィルムの加工により、例えば、シリカ、アルミナ等の金属酸化物を蒸着したフィルムの枚数を増やしたり、また防湿性を高めるために金属酸化物膜の膜厚を増加させるなどの手段は、接着部分における前記の改善の手段とはならず、また、鮮鋭性の低下を引き起こすため、新たな防湿性の向上手段が必要とされている。また、気相堆積法により形成した輝尽性蛍光体柱状結晶の表面は、実際は平滑でないこと、また柱状結晶間には間隙等もあり、上記防湿性保護フィルムと結晶表面とに微少な間隙が介在することも厚みのある蛍光体プレートを一体として封止するときの防湿性保護フィルム同士の接着の不均一やシワを引き起こす要因であり、徐々に放射線画像変換パネルの性能劣化が進む原因の一つと考えられる。
【0033】
本発明は、従って、金属酸化物を蒸着したフィルム(防湿性保護フィルム)による輝尽性蛍光体層が形成された支持体(輝尽性蛍光体プレート)の封止を行う際に、支持体の厚みに関係なく、輝尽性蛍光体層のみを有効に封止可能な、新たな、輝尽性蛍光体プレートの封止方法を提供する。輝尽性蛍光体層の厚みも50μm〜1000μmの範囲であり感度上の要求から比較的厚みがあるものの、支持体の厚みがさらに大きいことから(多くは400μm〜2000μmにも達する)、支持体の厚みに起因する防湿性フィルムの、特に蛍光体プレート4隅におけるシワの発生等が少なく、接着強度の強い、強固な封止が得られることが特徴である。
【0034】
図3に本発明の放射線画像変換パネルの一例を示す。支持体(基板)1上に、気相堆積法により形成された、少なくとも1層の輝尽性蛍光体層2を有する輝尽性蛍光体プレートの、輝尽性蛍光体層を有する面に、防湿性保護フィルム3を重ね合わせ、輝尽性蛍光体層が形成されていない基板の周囲部分において、接着剤4により接着し封止することにより放射線画像変換パネルを形成する。
【0035】
従来のように防湿保護フィルムにより、輝尽性蛍光体層を有する基板そのもの全体を、密着封止する方法では、支持体および蛍光体層両者の厚みが大きいために、防湿性保護フィルムの周囲部分、特に4隅に近い部分においてシワの発生が大きく、そのために封止が充分でなく、また、蛍光体結晶にストレスもかかりやすく性能が劣化し易い傾向があったが、この方法によれば、輝尽性蛍光体層のみを保護すればよく支持体(基板)そのものと一体に封止する必要がなく、この方法により封止された放射線画像変換パネルは、前記のように特に4隅におけるシワや接着の不均一を生じることがなく、好ましい。
【0036】
これらの方法において防湿性保護フィルム同士を接着する接着剤としては、前記熱硬化性樹脂を用いた接着剤を用いることができる。これにより防湿性保護フィルム同士を密着させた後、接着剤部分を加熱することで樹脂を硬化し蛍光体層を封止することが出来る。
【0037】
しかしながら、本発明においてより好ましいのは、前記防湿性フィルム及び蛍光体基板との接着を、熱融着性の樹脂を用いて行うものである。即ち、前記図3において、前記の熱硬化性樹脂からなる接着剤に代えて、熱融着性フィルムと接着剤層からなる粘着テープ(例えばCPP(キャスティングポリプロピレン)を基材とする粘着テープ)を接着剤4として、支持体(基板)1に貼りつけ、これに輝尽性蛍光体層2と密着させた、熱融着性フィルムが防湿性フィルムの表面に積層された防湿性保護フィルム3を、熱融着性フィルム面が、前記基板に接着された粘着テープの熱融着フィルム面と対向するように重ね合わせ、熱融着により両方の熱融着フィルム同士を熱融着させることが好ましい。
【0038】
熱融着による接着なので互いの層が融合して、強度の強い接着が得られる。またCPP等の熱融着性樹脂は透湿性も低いため、封止の効果が持続し好ましい。
【0039】
熱融着は、用いる熱融着性樹脂の溶融温度により異なるが、120℃から200℃の範囲の温度で行うのが好ましく、熱融着温度がこの範囲にある熱融着性樹脂フィルムを用いることが好ましい。特に、熱融着性樹脂としてポリプロピレンを基材とするものが好ましい。
【0040】
熱融着性のフィルムと積層される接着剤層としては、例えばアクリル系の接着剤等があり、例えば、日東電工製PPS粘着テープNo.370シリーズ等は前記ポリプロピレンフィルムを基材とし、アクリル系樹脂からなる接着剤層を有する粘着テープであり、入手可能である。
【0041】
これらの粘着テープを用いて、熱融着性フィルム表面を防湿性保護フィルムの熱融着性フィルム面と対向させるように、基板に貼着し、加熱して互いに熱融着させ、封止する。
【0042】
これにより、厚みのある基板の蛍光体面と防湿性保護フィルムを直接貼り合わせることが出来るため、基板と防湿性保護フィルムの間に、基板と比べると厚みの小さい蛍光体層のみを封止することとなり、周囲に封止部分周縁においてのシワの発生が少ない。また、キャスティングポリプロピレン等の熱融着性樹脂は、透湿性が低いため、水分の封止性にも優れ、防湿性保護フィルムによる封止がより均一に密着よく行われより強固なものとなる。
【0043】
熱融着樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、キャステングポリプロピレン(CPP)等を好ましく用いることができる。
【0044】
本発明に用いられる、これら熱融着性の樹脂は、前記の130℃から200℃の温度範囲で熱融着する樹脂であり、下記の熱溶融温度が120℃から250℃の範囲にある樹脂が好ましい。
【0045】
樹脂の溶融温度(融点)の測定は、本発明においては、温度制御された加熱用ステンレスプレート上に、粉体とした材料を置き、約50倍のルーペを用いて、軟化、溶融状態を観察して、軟化点や、溶融状態を観察して測定する。また、DSC等を用いて測定する方法もある。樹脂粉体は、粒径10μm程度に粉砕して測定する。
【0046】
このようにして得られる溶融温度は、例えば、重合度結晶化度等によっても異なってくるがポリプロピレンでは、150℃〜165℃、ポリエチレン(LLDPE)等では122℃前後である。
【0047】
本発明に用いられる、これら熱融着性の樹脂として、具体的には、ヒートシールできる樹脂、つまり前記ポリエチレンやポリプロピレン等が好ましい。
【0048】
又、熱融着は、前記の溶融温度の近傍乃至それ以上の温度、即ち、130℃から200℃の範囲で行うのが好ましい。
【0049】
図4に、本発明に係わる、より好ましい封止方法を用いて輝尽性蛍光体プレートを封止した放射線画像変換パネルの1例を示す。
【0050】
図4の形態では、支持体(基板)1上に、気相堆積法により形成された、少なくとも1層の輝尽性蛍光体層2を有する輝尽性蛍光体プレートの周辺部の、輝尽性蛍光体層を有しない支持体(基板)周囲部分において、前記CPP等熱融着性の樹脂フィルムおよび接着剤層からなる粘着テープ5が、接着剤層により、蛍光体側から裏面側に支持体の端面にて折り返すように貼着され、粘着テープ5において前記CPP等の熱融着性フィルム面が表側になるように貼られ、これに対向するように、同じく熱融着性フィルム層を有する2つの防湿性保護フィルム3、3’のそれぞれの熱融着性フィルム面が、該基板の周縁部分において粘着テープ5の熱融着性フィルム面と熱融着された構造を有している。
【0051】
熱融着性樹脂によって、二枚の防湿性保護フィルム、およびCPP等の熱融着フィルムが完全に接着して、輝尽性蛍光体プレートを覆う形態となっているため、この方法による封止方法は、水分の透過性が低いポリプロピレンフィルム等熱融着性樹脂より完全に封止されるため、熱硬化樹脂等の接着剤層等からやや水分の透過がある図3に示した封止方法に比べ、水分の遮断がより完全に近く、耐久性が高い放射線画像変換パネルを得ることが可能である。
【0052】
シワの発生等による封止の不均一或いは不完全さ等の改善について着目すると、前記防湿性保護フィルムと基板との或いは防湿性保護フィルム同士の接着は、前記熱融着性の樹脂フィルムおよび接着剤層からなる粘着テープを用いて行う必要はなく、熱硬化性或いは光硬化性の樹脂等からなる接着剤或いは粘着テープ等を用いても充分にその効果を得ることが出来るが、前記CPP等の熱融着性の樹脂フィルムを基体とし接着剤層を有する粘着テープをこのように用いることが、前記の効果に加え、水分の遮断性に優れ封止性がよく、また熱融着樹脂同士の融合により、接着後にも強度が保たれるため耐久性に優れ好ましい。
【0053】
前記防湿性保護フィルムは、少なくとも1層以上の金属酸化物を蒸着した樹脂フィルムであるが、これらの金属酸化物を蒸着した樹脂フィルムを含む複数の樹脂フィルムが層状に接着されてなる積層フィルムであることが好ましく、特に、前記熱融着性の樹脂フィルムを基体とする粘着テープを用い熱融着により接着する場合、粘着テープと接着する面側には同様な熱融着性樹脂フィルムが積層された防湿性保護フィルムであることが好ましい。
【0054】
金属酸化物を蒸着したフィルム(膜)としては、1Å〜100Åの厚みで少なくとも1層以上の金属酸化物膜を1〜30μmの樹脂フィルム上に蒸着形成したフィルムであり、例えば、シリカやアルミナ等の無機酸化物層を蒸着により形成し防湿性を高めたポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムである。これらは安価で加工性や透明性に優れ、防湿性及び酸素透過性が温度や湿度の影響を受けづらいため、環境によらず安定した画像品質を要求される医療用輝尽性蛍光体プレート用の防湿性保護フィルムとして適している。これらの蒸着フィルムは近年、透明で中身の確認ができることや、熱安定性が高くレトルト殺菌ができる。電子レンジによる中身の加熱が可能等の利点を生かして主に食品分野で不透明なアルミニウムラミネートフィルムの代替えとして普及してきた。
【0055】
金属酸化物を蒸着したフィルムとしては、例えばアルミナ蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)としてVMPET等があり、これは東洋メタライジング社等から入手できる。
【0056】
本発明に使用する前記金属酸化物を蒸着したフィルムは、必要とされる防湿性にあわせ、異なった複数の蒸着層を有するフィルムを用いたり、複数枚積層することで更に防湿性を向上させることができる。
【0057】
また本発明において、前記蒸着フィルムは、保護層として或いは他の機能をもたせるため、又、防湿性をさらに高めるため、材質の異なった別の樹脂フィルム、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン等他の樹脂フィルムを、前記金属酸化物を蒸着したフィルムに2種類以上積層して、防湿性保護フィルムとして用いることが好ましい。この場合の積層方法としては、ドライラミネート、押し出しラミネートまたは共押し出しコーティングラミネートなどの方法があげられる。
【0058】
前記蒸着フィルムおよびその他の樹脂フィルムを積層する方法については、ドライラミネート方式が作業性の面で優れている。この方法は一般には1.0〜2.5μm程度の硬化性の接着剤層を使用するが、接着剤層厚は2.5μmより大きくする必要がある。但し接着剤の塗設量が多すぎる場合には、トンネル、浸み出し、縮緬皺などが発生することがあるためより好ましくは接着剤量を乾燥膜厚で3〜5μmになるように調節することが好ましい。
【0059】
樹脂フィルムを積層化するためには、ホットメルトラミネーション法やエクストルージョンラミネート法及び共押出しラミネーション法も使用でき、上記ドライラミネート方式との併用も可能である。
【0060】
ホットメルトラミネーションとはホットメルト接着剤を溶融し基材に接着層を塗設する方法であるが、接着剤層の厚さは一般に1〜50μmと広い範囲で設定可能な方法である。一般に使用されるホットメルト接着剤のベースレジンとしては、EVA、EEA、ポリエチレン、ブチルラバー等が使用され、ロジン、キシレン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂等が粘着付与剤として、ワックス等が可塑剤として添加される。
【0061】
エクストルージョンラミネート法とは高温で溶融した樹脂をダイスにより基材上に塗設する方法であり、樹脂層の厚さは一般に10〜50μmと広い範囲で設定可能である。
【0062】
エクストルージョンラミネートに使用される樹脂としては一般に、LDPE、EVA、PP等が使用されるが、基材との接着性を増すために基材にあらかじめ接着促進剤を塗設しておくことがある。
【0063】
この接着促進剤としては、有機チタン系、ポリエチレンイミン系、イソシアネート系、ポリエステル系等があるが、一般にこれらの接着促進剤層は基材フィルムの表面に微細な凹凸をつけ溶融ポリマーの拡散性を向上する目的のものであり本発明でいう2.5μm以下の硬化性接着剤層には含まれない。
【0064】
共押出しラミネーション法とは異種又は同種の熱可塑性樹脂を2個以上の押出し機から、それぞれの樹脂を同時に押し出して、特別に設計されたダイスの内部又は外部で積層され、製膜と同時に多層フィルムを形成することをいう。
【0065】
一般に共押出しラミネーションに使用される樹脂としては、LDPE(低密度ポリエチレン)、Ny(ナイロン)、ION(アイオノマー)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレンビニルアセテート)、HDPE(高密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、POL(ポリオレフィン)等が挙げられる。
【0066】
このように、本発明の放射線画像変換パネルにおいては、輝尽性蛍光体プレートを水分から封止し保護するために、金属酸化物を蒸着したフィルムを含む複数の樹脂フィルムが層状に接着されてなる積層フィルムを防湿性保護フィルムとして用いることが好ましいが、積層フィルムの場合、金属酸化物層を有するフィルムと他の樹脂フィルム間或いは複数の金属酸化物を蒸着したフィルム間を接着する接着剤層は、厚さ2.5μm以下であり、硬化性の、熱や紫外線による架橋反応を伴う、具体的には主剤と硬化剤を混合して使用する2液反応型や分子構造中に反応基を有する1液型のビニル系、アクリル系、ポリアミド系、エポキシ系、ゴム系、ウレタン系等の接着剤層を用いることが好ましい。これらの接着剤は一般にはドライラミネーション等で頻繁に使用されるものである。
【0067】
但し、ホットメルト系接着剤は、経時硬化タイプを除けばここで言う硬化性の接着剤層に含まれない。
【0068】
これら防湿性保護フィルムの厚さは、実用上は1μm〜300μmまでである。良好な耐湿性と耐衝撃性を得るためには5μm以上が好ましく、特に10μm以上の防湿性保護フィルムにより封止した場合、耐久性、耐用性に優れた変換パネルが得られて一層好ましい。
【0069】
しかしながら一方で防湿性フィルムとして用いる場合にも膜厚をあまり大きくしないことが鮮鋭性の上からは重要である。鮮鋭性が低下しない範囲で用いるには、金属酸化物を蒸着したフィルムを含む防湿性保護フィルム全体で300μm、好ましくは150μm以下である。
【0070】
例えば、前記の金属酸化物を蒸着した防湿性フィルムと、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、キャステングポリプロピレン(CPP)等の熱融着性フィルムをドライラミネーション等により積層したものが実際に防湿性保護フィルムとして使用できる。輝尽性蛍光体層を有する基板上に貼着された、熱融着性樹脂フィルムを基体とした粘着テープを用いてその熱溶融性樹脂フィルム面同士をと熱溶融接着させるために、防湿性保護フィルムとしては、これらの低密度ポリエチレン(LDPE)、キャステングポリプロピレン(CPP)等の熱融着性の樹脂フィルムを最外層に積層したものが好ましい。
【0071】
また、前記熱溶融性樹脂フィルムが積層された防湿性保護フィルムと接着される前記熱融着性樹脂フィルムを基体とする粘着テープとしては、PP(ポリプロピレン)フィルムを基材にしたものがあり、具体的には、日東電工株式会社製PPS粘着テープNo.370シリーズ等が挙げられる。例えば、No.3703F、No.370F、No.3703DF等があり、これらはPP(ポリプロピレン)フィルムを基体とし、これれにアクリル樹脂系の接着剤層を有する粘着テープである。接着剤層および基体フィルムと接着剤層の総膜厚は、前記370シリーズにおいて、例えば、それぞれBacking Thickness/Total Thickness30/55、40/65、30/55(μm)である。ここにおいて、Backing Thicknessはアクリル樹脂系の接着剤層の厚みである。
【0072】
防湿性保護フィルムは輝尽励起光及び輝尽発光を効率よく透過するために、広い波長範囲で高い透過率を示すことが望ましく、透過率は60%以上、好ましくは80%以上である。
【0073】
また、表面にMgF2などの反射防止層を設けると、輝尽励起光及び輝尽性発光を効率よく透過すると共に鮮鋭性の低下を小さくする効果もあり好ましい。
【0074】
又、鮮鋭性の向上のため、防湿性保護フィルムに、例えばリン酸鉛等の着色剤を含有させ着色し、輝尽励起光を吸収する機能をもたせてもよい。
【0075】
その為に、輝尽励起光を吸収する色材(顔料又は色素)で着色したフィルムを、前記金属酸化物を蒸着したフィルムに積層したり、どちらか一方の面に色素乃至顔料を含有する層を塗布により設ける方法もある。
【0076】
着色したフィルムの製造方法としては、色材を練り込んだプラスチックフィルムやプラスチックフィルムの表面に色材(顔料又は染料)を含有する層を塗布等によって形成する方法があり、着色したプラスチックフィルムを接着剤等を用いて均一に防湿性保護フィルムに貼り合わせる方法で着色することが出来る。
【0077】
〈輝尽性蛍光体〉
本発明において、輝尽性蛍光体層を形成する輝尽性蛍光体としては、例えば特開昭61−236890号に記載されている二価ユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体等があり、例えば、ヨウ素を含有する希土類元素賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、特には輝尽性蛍光体がEu付加BaFI化合物等が挙げられるが、本発明の放射線画像変換パネルに好ましく用いられる輝尽性蛍光体としては、例えば、特開昭48−80487号に記載されているBaSO4:Axで表される蛍光体、特開昭48−80488号記載のMgSO4:Axで表される蛍光体、特開昭48−80489号に記載されているSrSO4:Axで表される蛍光体、特開昭51−29889号に記載されているNa2SO4、CaSO4及びBaSO4等にMn、Dy及びTbの中少なくとも1種を添加した蛍光体、特開昭52−30487号に記載されているBeO、LiF、MgSO4及びCaF2等の蛍光体、特開昭53−39277号に記載されているLi247:Cu,Ag等の蛍光体、特開昭54−47883号に記載されているLi2O・(Be22)x:Cu,Ag等の蛍光体、米国特許第3,859,527号に記載されているSrS:Ce,Sm、SrS:Eu,Sm、La22S:Eu,Sm及び(Zn,Cd)S:Mnxで表される蛍光体があげられる。又、特開昭55−12142号に記載されているZnS:Cu,Pb蛍光体、一般式がBaO・xAl23:Euであげられるアルミン酸バリウム蛍光体、及び、一般式がM(II)O・xSiO2:Aで表されるアルカリ土類金属珪酸塩系蛍光体があげられる。
【0078】
又、特開昭55−12143号に記載されている一般式が(Ba1-x-yMgxCay)Fx:Eu2+で表されるアルカリ土類フッ化ハロゲン化物蛍光体、特開昭55−12144号に記載されている一般式がLnOX:xAで表される蛍光体、特開昭55−12145号に記載されている一般式が(Ba1-xM(II)x)Fx:yAで表される蛍光体、特開昭55−84389号に記載されている一般式がBaFX:xCe,yAで表される蛍光体、特開昭55−160078号に記載されている一般式がM(II)FX・xA:yLnで表される希土類元素賦活二価金属フルオロハライド蛍光体、一般式ZnS:A、CdS:A、(Zn,Cd)S:A,Xで表される蛍光体、特開昭59−38278号に記載されている下記いずれかの一般式
xM3(PO42・NX2:yA
xM3(PO42:yA
で表される蛍光体、特開昭59−155487号に記載されている下記いずれかの一般式
nReX3・mAX′2:xEu
nReX3・mAX′2:xEu,ySm
で表される蛍光体等、又、特開昭61−228400号に記載されている一般式M(I)X:xBiで表されるビスマス賦活アルカリハライド蛍光体等が好ましいのものとしてあげられる。
【0079】
しかしながら、特開昭61−72087号、特開平2−58000号等に記載されたような、下記一般式(1)で表されるアルカリハライド系輝尽性蛍光体が特に好ましい。
【0080】
一般式(1)
1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
式中、M1はLi,Na,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、M2はBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,Cu及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の2価金属であり、M3はSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1種の3価金属であり、X,X′及びX″はF,Cl,Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンであり、AはEu,Tb,In,Ga,Cs,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、又、a,b及びeは、それぞれ0≦a<0.5,0≦b<0.5,0<e≦0.2の範囲の数値を表す。
【0081】
これら一般式(1)において、M1はK、RbおよびCsからなる群から選ばれることが好ましく、XはBrおよびIからなる群から選ばれることが好ましい。
【0082】
また、M2はBe、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれることが好ましく、M3はY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、GaおよびInからなる群から選ばれることが好ましい。更に、bとしては0≦b≦0.01であることが好ましく、AはEu、Cs、Sm、TlおよびNaからなる群から選ばれることが好ましい。
【0083】
これらのアルカリハライド系輝尽性蛍光体は気相堆積法により基板上に成膜することで、基板の法線方向に対し一定の傾きをもった(勿論、傾きがなく、基板面に対して垂直でもよいが)細長い柱状結晶を形成する。この様な柱状結晶の形成により、輝尽励起光(又輝尽発光)の横方向への拡散を抑えることができるため、輝尽発光による画像の鮮鋭性がよいことがこれらの蛍光体を用いたときの特徴である。アルカリハライド系輝尽性蛍光体のなかでもRbBr及びCsBr系蛍光体が高輝度、高画質であり好ましい。
【0084】
本発明において、特に好ましいのはこれらの中でも下記一般式(2)で表される蛍光体である。
【0085】
一般式(2)
CsX:A
式中、XはBr又はIを表し、AはEu,In,Ga又はCeを表す。
【0086】
中でもCsBr系蛍光体が特に輝度が高く高画質であり、また本発明の製造方法による基板或いは基板との付着性(接着性)の向上効果も高く好ましい。
【0087】
本発明において好ましい、これらの輝尽性蛍光体を用いて得られる柱状結晶、即ち各々の結晶がある間隙をおいて柱状に成長している結晶は、前記、特開平2−58000号に記載された方法により得ることができる。
【0088】
即ち、基板上に輝尽性蛍光体の蒸気又は該原料を供給し、蒸着等の気相成長(堆積)させる方法によって独立した細長い柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層を得ることができる。
【0089】
例えば、蒸着時の輝尽性蛍光体の蒸気流を基板に垂直な方向に対し0〜5度の範囲で入射させることにより、基板面に対してほぼ垂直柱状の結晶を得ることが出来る。
【0090】
これらの場合において、基板と坩堝との最短部の間隔は輝尽性蛍光体の平均飛程に合わせて概ね10cm〜60cmに設置するのが適当である。
【0091】
蒸発源となる輝尽性蛍光体は、均一に溶解させるか、プレス、ホットプレスによって成形して坩堝に仕込まれる。この際、脱ガス処理を行うことが好ましい。蒸発源から輝尽性蛍光体を蒸発させる方法は電子銃により発した電子ビームの走査により行われるが、これ以外の方法にて蒸発させることもできる。
【0092】
また、蒸発源は必ずしも輝尽性蛍光体である必要はなく、輝尽性蛍光体原料を混和したものであってもよい。
【0093】
また、賦活剤は母体(basic substance)に対して賦活剤(actibator)を混合したものを蒸着してもよいし、母体のみを蒸着した後、あとから賦活剤をドープしてもよい。例えば、母体をCsBrとした場合、CsBrのみを蒸着した後、例えば賦活剤であるInをドープしてもよい。即ち、結晶が独立しているため、膜が厚くとも充分にドープ可能であるし、結晶成長が起こりにくいので、MTFは低下しないからである。
【0094】
ドーピングは形成された蛍光体の母体層中にドーピング剤(賦活剤)を熱拡散、イオン注入法によって行うことが出来る。
【0095】
〈蛍光体層厚み、結晶の大きさ等〉
これらの方法により形成した柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層の層厚は目的とする放射線画像変換パネルの放射線に対する感度、輝尽性蛍光体の種類等によって異なるが、50μm〜1000μmの範囲から選ばれるのが好ましく、50μm〜800μmから選ばれるのがより好ましい。
【0096】
これらの柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層において変調伝達関数(MTF)をよくするためには、柱状結晶の大きさ(柱状結晶を基板と平行な面から観察したときの各柱状結晶の断面積の円換算した直径の平均値であり、少なくとも100個以上の柱状結晶を視野中に含む顕微鏡写真から計算する)は0.5〜50μm程度がよく、更に好ましくは、0.5〜20μmである。即ち、柱状結晶が0.5μmより細い場合は、柱状結晶により輝尽励起光が散乱される為にMTFが低下するし、柱状結晶が50μm以上の場合も輝尽励起光の指向性が低下し、MTFは低下する。
【0097】
該輝尽性蛍光体を気相成長(堆積)させる方法としては蒸着法、スパッタ法及びCVD法がある。
【0098】
蒸着法は基板(支持体)を蒸着装置内に設置したのち、装置内を排気すると同時に窒素等の不活性なガスを導入口から導入して1.333Pa〜1.33×10-3Pa程度の真空とし、次いで、輝尽性蛍光体の少なくとも1つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法などの方法で加熱蒸発させて支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚みに堆積させる。この結果、結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層が形成されるが、前記蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。また、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器或いはエレクトロンビームを用いて蒸着を行うことも可能である。また蒸着法においては、輝尽性蛍光体原料を複数の抵抗加熱器或いはエレクトロンビームを用いて蒸着し、支持体上で目的とする輝尽性蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。更に蒸着法においては、蒸着時に必要に応じて基板(支持体)を冷却或いは加熱してもよい。また、蒸着終了後、輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。
【0099】
スパッタ法は前記蒸着法と同様に基板をスパッタ装置内に設置した後、装置内を一旦排気して真空とし、次いでスパッタ用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスを装置内に導入して1.33Pa〜1.33×10-3Pa程度のガス圧とする。次に、前記輝尽性蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより基板表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さに堆積させる。このスパッタ工程では蒸着法と同様に複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能であるし、それぞれを用いて同時或いは順次、前記ターゲットをスパッタリングして輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。また、スパッタ法では、複数の輝尽性蛍光体原料をターゲットとして用い、これを同時或いは順次スパッタリングして、基板上で目的とする輝尽性蛍光体層を形成する事も可能であるし、必要に応じてO2、H2等のガスを導入して反応性スパッタを行ってもよい。更に、スパッタ法においては、スパッタ時必要に応じて基板を冷却或いは加熱してもよい。また、スパッタ終了後に輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。
【0100】
CVD法は目的とする輝尽性蛍光体或いは輝尽性蛍光体原料を含有する有機金属化合物を熱、高周波電力等のエネルギーで分解することにより、基板上に結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層を得るものであり、いずれも輝尽性蛍光体層を基板の法線方向に対して特定の傾きをもって独立した細長い柱状結晶に気相成長させることが可能である。
【0101】
これらの柱状結晶は前記の通り特開平2−58000号に記載された方法、即ち、基板上に輝尽性蛍光体の蒸気又は該原料を供給し、蒸着等の気相成長(堆積)させる方法で得ることができる。
【0102】
図5は支持体12上に輝尽性蛍光体層が蒸着により形成される様子を示す模式図である。11は形成される輝尽性蛍光体柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層を模式的に表している。輝尽性蛍光体の蒸気流Vの基板面の法線方向(P)に対する入射角度をθ2とすると、形成される柱状結晶の基板面の法線方向(P)に対する角度はθ1で表される。入射角度θ2に依存して一定の角度θ1で柱状結晶が形成される。形成された柱状結晶の角度は、輝尽性蛍光体材料によってそれぞれ異なり、例えば、アルカリハライド系蛍光体のうち、本発明において特に好ましいCsBr系蛍光体の場合には、例えば、蒸着時の輝尽性蛍光体の蒸気流を基板に垂直な方向に対し0〜5度の範囲で入射させる(即ちθ2が0〜5度)ことにより、基板面に対してほぼ垂直柱状(θ1がほぼ0度)の結晶を得ることが出来る。
【0103】
この様にして基板上に形成した輝尽性蛍光体層11は、結着剤を含有していないので、指向性に優れており、輝尽励起光及び輝尽発光の指向性が高く、輝尽性蛍光体を結着剤中に分散した分散型の輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルより層厚を厚くすることができる。更に輝尽励起光の輝尽性蛍光体層中での散乱が減少することで像の鮮鋭性が向上する。
【0104】
又、柱状結晶間の間隙に結着剤等充填物を充填してもよく、輝尽性蛍光体層の補強となる。又高光吸収率の物質、高光反射率の物質等を充填してもよい。これにより前記補強効果をもたせるほか、輝尽性蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散をほぼ完全に防止できる。
【0105】
高光反射率の物質とは、輝尽励起光(500〜900nm、特に600〜800nm)に対する反射率の高いものをいい、例えばアルミニウム、マグネシウム、銀、インジウムその他の金属など、白色顔料及び緑色から赤色領域の色材を用いることができる。
【0106】
白色顔料は輝尽発光も反射することができる。白色顔料として、TiO2(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO3・Pb(OH)2、BaSO4、Al23、M(II)FX(但し、M(II)はBa、Sr及びCaの中の少なくとも一種であり、XはCl、及びBrのうちの少なくとも一種である。)、CaCO3、ZnO、Sb23、SiO2、ZrO2、リトポン(BaSO4・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸鉛、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウムなどがあげられる。これらの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射したり、屈折させることにより輝尽発光を容易に散乱し、得られる放射線画像変換パネルの感度を顕著に向上させうる。
【0107】
また、高光吸収率の物質としては、例えば、カーボン、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄など及び青の色材が用いられる。このうちカーボンは輝尽発光も吸収する。
【0108】
また、色材は、有機若しくは無機系色材のいずれでもよい。有機系色材としては、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学製)、D&CブルーNo.1(ナショナルアニリン製)、スピリットブルー(保土谷化学製)、オイルブルーNo.603(オリエント製)、キトンブルーA(チバガイギー製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土ヶ谷化学製)、レイクブルーAFH(協和産業製)、プリモシアニン6GX(稲畑産業製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学製)、シアンブルーBNRCS(東洋インク製)、ライオノイルブルーSL(東洋インク製)等が用いられる。またカラーインデクスNo.24411、23160、74180、74200、22800、23154、23155、24401、14830、15050、15760、15707、17941、74220、13425、13361、13420、11836、74140、74380、74350、74460等の有機系金属錯塩色材もあげられる。無機系色材としては群青、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−Co−NiO系顔料があげられる。
【0109】
〈支持体〉
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる支持体(基板)としては水分の透過性の低いものが好ましく、各種のガラス、高分子材料、金属等が用いられるが、例えば石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどの板ガラス、又、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シート或いは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートが好ましい。これら支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0110】
また、本発明においては、基板と輝尽性蛍光体の接着性を向上させるために、必要に応じて基板の表面に予め接着層を設けてもよい。
【0111】
これら基板の厚みは用いる基板の材質等によって異なるが、一般的には80μm〜2000μmであり、取り扱い上の観点から、更に好ましいのは80μm〜1000μmである。
【0112】
また、アルカリハライド系輝尽性蛍光体のなかでもRbBr及びCsBr系蛍光体が高輝度、高画質であり好ましい。
【0113】
これらの気相堆積法によって形成した蛍光体柱状結晶は水分に弱いため、前記の様に、金属酸化物蒸着層を有するフィルムを含む防水性保護フィルムを用い封止する。
【0114】
〈実施の形態〉
以下に、本発明により、放射線画像変換パネルの具体的構成例および製造について述べる。
【0115】
前記図4において示された、2枚の防湿性保護フィルムにより、蛍光体プレートの表面および裏面を覆って、それぞれ輝尽性蛍光体層が形成された表面の輝尽性蛍光体層が形成されていない周辺部において、蛍光体側(表面)から裏面側に折り返すように貼られた熱融着性の樹脂からなる粘着テープを用いて、それぞれの防湿性保護フィルムと熱融着して、放射線画像変換パネルを製造する方法について、以下その具体的な実施の形態について述べる。
【0116】
図6に蛍光体プレートの蛍光体が支持体上に形成されていない周囲の部分(その一部を示した)に、熱溶融性樹脂テープを基体とする粘着テープ5(日東電工製PPS粘着テープNo.3703Fを用いた)を、蛍光体の形成されていない周囲の部分の表面側および裏面側とその端面を覆うように貼り付けた様子を示す。このようにして蛍光体プレート周囲の全てに4隅を含め粘着テープを貼りつける。
【0117】
次いで、支持体の上下に防湿性保護フィルム、具体的には12μmのVMPET;アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレート(東洋メタライジング社製)を、30μmのキャステングポリプロピレン(CPP)とドライラミネーションにより積層した防湿性保護フィルムを、そのキャスティングポリプロピレンフィルムが、蛍光体プレートの蛍光体面、そして、支持体面にそれぞれ対向するように配置し(図7)、周囲部分から或いはその一部でもよいが、真空引き(減圧)により空気を抜くことで、表面裏面の防湿性保護フィルムが蛍光体層およびその周囲の粘着テープを貼り付けた面、また支持体の裏面と図8に示すように密着させる。
【0118】
このようにして防湿性フィルム同士が密着させた後、その状態を保ちながら、表面および裏面の粘着テープが貼着した周縁部(矢印)を防湿性フィルム側から、例えばポリプロピレンであれば200℃の温度で加熱し融着する。例えば、周縁部をインパルスシーラーで加熱融着したり、2本の加熱したローラー間で加圧加熱するラミネート方式等でもよい。これにより、粘着テープと防湿性保護フィルム間が、互いにその熱溶融性樹脂フィルム同士で熱融着することで接着し蛍光体プレートを封止することができる(図8)。
【0119】
熱融着部分の周囲の防湿性保護フィルムの、余った部分については、図9のように熱融着後(破線ように)断裁して、最終的に放射線画像変換パネルを得ることが出来る。
【0120】
上記の加熱融着方法については、特に限定はされず、また、封止も大気圧環境下でよいが、上記インパルスシーラーで加熱融着する方法においては、上記のように減圧環境下で加熱融着することが、蛍光体シートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
【0121】
本発明の金属酸化物層が蒸着形成された防湿性保護フィルムにより蛍光体シートを封止するにあたっては、防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層の樹脂層を熱融着性を有する樹脂フィルムとすることで防湿性保護フィルムが融着可能となり蛍光体シートの封止作業が効率化される。
【0122】
また、熱融着性を有する樹脂フィルム中には、シリカ、チタン、ゼオライト等の無機微粒子を0.01質量%〜1.0質量%含有させてもよく、これにより、熱融着による蛍光体シートの封止作業によって生じる、大きな周期の画像ムラを防止でき好ましい。0.01質量%以下では効果は少なく、1.0質量%以上では積層保護フィルムの透明性やヘイズ値の劣化を伴う。
【0123】
防湿性保護フィルムと前記輝尽性蛍光体との密着部分の接着性を向上させる目的で、蛍光体面には、防湿性保護フィルムとの接着面にさらに下引き層を設けたり、粗面化処理を施すこともできる。
【0124】
本発明の放射線画像変換パネルにおいて、蛍光体プレートの支持体側の防湿保護フィルムは光学的には不透明であってもかまわないため、防湿性の向上のために、支持体側の防湿保護フィルムについてはアルミラミネートフィルムとすることが好ましい。
【0125】
ラミネートに使用するアルミ箔フィルムとしてはピンホール等による防湿性劣化の点から9μm以上あることが望ましい。また支持体側の防湿保護フィルムも蛍光体面側の防湿保護フィルムと同様に、膜厚200μm以下、であることが望ましい。即ち、図4において、支持体面側の防湿性保護フィルム3について1層以上のアルミニウムフィルムをラミネートしてなる積層防湿フィルムとすることが好ましい。これにより確実に水分の侵入を低減できる。
【0126】
本発明の放射線画像変換パネルの防湿性保護フィルムの蛍光体面に接する側の最外層の熱融着性を有する樹脂層と蛍光体面は接着しても実質的に接着していなくてもかまわないが、前記有機層の形成により密着性は向上する。
【0127】
本発明の放射線画像変換パネルにおいて防湿性保護フィルムの膜厚が200μmを超えると封止作業時のフィルムの取り扱い性が悪化するのと後述のインパルスシーラー等による熱融着が困難となるため膜厚としては200μm以下が望ましい。
【0128】
〈低屈折率層〉
又、本発明においては、上記構成中において低屈折率層を設けてもよい。低屈折率層は防湿性保護フィルムを構成する樹脂材料よりも屈折率の低い素材からなり、この層が存在することにより、保護層や防湿性保護フィルムを厚くしても鮮鋭性の低下を小さくすることができる。例えば以下に示す物質を用いる事ができ、蒸着等気相成長法で形成された薄膜の状態で用いるのが好ましい。
【0129】
物質 屈折率
CaF 1.23〜1.26
Na2AlF6 1.35
MgF2 1.38
SiO2 1.46
或いは、以下の様な液体層を用いることもできる。
【0130】
物質 屈折率
エチルアルコール 1.36
メチルアルコール 1.33
ジエチルアルコール 1.35
又、本発明の低屈折率層として、空気、窒素、アルゴンなどの気体層や真空層など屈折率が実質的に1である層を用いると、鮮鋭性の低下を防止する効果が高く特に好ましい。
【0131】
本発明の低屈折率層の厚さは0.05μmから3mmまでが実用的である。
【0132】
本発明の低屈折率層は、輝尽性蛍光体層と密着状態にあってもよいし、離れていてもよい。
【0133】
〈撮影方法〉
図10に、本発明の放射線画像変換パネルを用いた放射線像変換方法を概略的に示す。
【0134】
即ち、図10において、21は放射線発生装置、22は被写体、23は本発明に係わる放射線画像変換パネル、24は(レーザ等の)輝尽励起光源、25は該変換パネルにより放射された輝尽蛍光を検出する光電変換装置、26は25で検出された信号を画像として再生する装置、27は再生された画像を表示する装置、28は輝尽励起光と輝尽蛍光とを分離し、輝尽蛍光のみを透過させるフィルタである。尚、25以降は23からの光情報を何らかの形で画像として再生できるものであればよく、上記に限定されるものではない。
【0135】
図11に示されるように、放射線発生装置21からの放射線(R)は被写体22を通して放射線画像変換パネル23に入射する(RI)。この入射した放射線はパネル23の輝尽層に吸収され、そのエネルギーが蓄積され、放射線透過像の蓄積像が形成される。
【0136】
次にこの蓄積像を輝尽励起光源24からの輝尽励起光で励起して輝尽発光として放出せしめる。
【0137】
放射される輝尽発光の強弱は蓄積された放射線エネルギー量に比例するので、この光信号を例えば光電子倍増管等の光電変換装置25で光電変換し、画像再成装置26によって画像として再生し画像表示装置27によって表示することにより、被写体の放射線透過像を観察することができる。
【0138】
従って本発明のこのような構成により、防湿性能がたかく、耐用年数の長い放射線画像変換パネルを得ることが出来た。
【0139】
本発明の図3あるいは4の構成により、支持体と防湿性保護フィルム間に蛍光体層を封止するため、封止される部分の厚みが少ないため特に封着された蛍光体プレートの4隅部分においてシワの大きな発生がなく、封止も均一であり封止効果が高い。
【0140】
図4の構成によれば、透湿性の低い例えばポリプロピレン等の熱融着性樹脂により蛍光体が完全に封止されるので、シワ等の発生がなく、また透湿性が低く、より耐久性の高い放射線画像変換パネルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】輝尽性蛍光体層を形成した蛍光体プレートの断面を示す図である。
【図2】蛍光体プレートの蛍光体面及び裏面を防湿性フィルムで封止したところを示す断面図である。
【図3】本発明の封放射線画像変換パネルの一例を示す断面図である。
【図4】本発明の封放射線画像変換パネルの別の1例を示す断面図である。
【図5】支持体上に輝尽性蛍光体層が蒸着により形成される様子を示す模式図である。
【図6】蛍光体プレートの周囲の部分の表面側および裏面側およびその端面を覆うように粘着テープを貼り付けた様子を示す図である。
【図7】防湿性保護フィルムを蛍光体プレートの蛍光体面、そして、支持体面にそれぞれ対向するように配置したところを示す図である。
【図8】防湿性保護フィルム間に蛍光体プレートを封止したところを示す図である。
【図9】得られた放射線画像変換パネルの断面図である。
【図10】本発明の放射線画像変換パネルを用いた放射線像変換方法を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0142】
1 支持体
2 輝尽性蛍光体層
3 防湿性保護フィルム
4 接着剤
21 放射線発生装置
22 被写体
23 放射線画像変換パネル
24 輝尽励起光源
25 光電変換装置
26 画像再生装置
27 画像表示装置
28 フィルタ
V 蒸気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、気相堆積法により形成された、少なくとも1層の輝尽性蛍光体層を有する輝尽性蛍光体プレートと、該輝尽性蛍光体プレートの蛍光体面側に配置された保護フィルムからなる放射線画像変換パネルにおいて、該保護フィルムは、該輝尽性蛍光体プレートの周辺部の輝尽性蛍光体層を有しない基板部分に貼られた熱融着性の樹脂からなる粘着テープと熱融着していることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【請求項2】
基板上に、気相堆積法により形成された、少なくとも1層の輝尽性蛍光体層を有する輝尽性蛍光体プレートと、該輝尽性蛍光体プレートの蛍光体面側および裏面側に配置された保護フィルムからなる放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体プレートの蛍光体面側および裏面側に配置された保護フィルムは、該輝尽性蛍光体プレートの周辺部の輝尽性蛍光体層を有しない基板部分において、蛍光体側から裏面側に折り返すように貼られた熱融着性の樹脂からなる粘着テープにより、蛍光体面側および裏面側においてそれぞれ熱融着されていることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【請求項3】
前記保護フィルムの前記輝尽性蛍光体プレートに接する側の最外層の樹脂層が熱融着性を有する樹脂層で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線画像変換パネル。
【請求項4】
前記保護フィルムが、少なくとも1層以上の金属酸化物を蒸着した樹脂フィルムを含む複数の樹脂フィルムが層状に接着されてなる積層フィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線画像変換パネル。
【請求項5】
基板上に、気相堆積法により形成された、前記少なくとも1層の輝尽性蛍光体層が、下記一般式(1)で表されるアルカリハライド系輝尽性蛍光体からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
一般式(1)
1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
式中、M1はLi,Na,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、M2はBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,Cu及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の2価金属であり、M3はSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1種の3価金属であり、X,X′及びX″はF,Cl,Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンであり、AはEu,Tb,In,Ga,Cs,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、又、a,b及びeは、それぞれ0≦a<0.5,0≦b<0.5,0<e≦0.2の範囲の数値を表す。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−10388(P2006−10388A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184870(P2004−184870)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】