放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置
【課題】送信するデータの圧縮率を向上させ、データの送信時間を短縮することが可能な放射線画像撮影システムを提供する。
【解決手段】放射線画像撮影システム50は、隣接する放射線検出素子7の画像データD同士の各差分ΔDを可逆圧縮して送信する放射線画像撮影装置1は、検出部Pの各エリアRkごとに、圧縮後の各差分ΔDのデータサイズの総和Σkが各画像データDのデータサイズの合計σkより小さい場合には、圧縮後の各差分ΔDをコンソール58に送信し、総和Σkが合計σk以上である場合には、画像データD自体を送信し、かつ、各エリアRkごとの圧縮、非圧縮の情報を送信し、コンソール58は、圧縮、非圧縮の情報に基づいて、非圧縮のエリアRkについては受信した画像データDを用い、圧縮のエリアRkについては圧縮後の各差分ΔDを元の各差分ΔDに伸長して画像データDを復元し、各画像データDに基づいて放射線画像を生成する。
【解決手段】放射線画像撮影システム50は、隣接する放射線検出素子7の画像データD同士の各差分ΔDを可逆圧縮して送信する放射線画像撮影装置1は、検出部Pの各エリアRkごとに、圧縮後の各差分ΔDのデータサイズの総和Σkが各画像データDのデータサイズの合計σkより小さい場合には、圧縮後の各差分ΔDをコンソール58に送信し、総和Σkが合計σk以上である場合には、画像データD自体を送信し、かつ、各エリアRkごとの圧縮、非圧縮の情報を送信し、コンソール58は、圧縮、非圧縮の情報に基づいて、非圧縮のエリアRkについては受信した画像データDを用い、圧縮のエリアRkについては圧縮後の各差分ΔDを元の各差分ΔDに伸長して画像データDを復元し、各画像データDに基づいて放射線画像を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置に係り、特に、放射線画像撮影装置からコンソールに画像データを圧縮して送信する放射線画像撮影システムおよびそれに用いられる放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレーター等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台(或いはブッキー装置)と一体的に形成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納した可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、通常、互いに交差するように配設された複数の走査線と複数の信号線により区画された各領域に、複数の放射線検出素子が二次元状(マトリクス状)に配列されて検出部が形成されるが、その際、放射線検出素子の数(すなわち画素数)は、通常、数百万〜数千万画素或いはそれ以上の画素数にのぼる。そのため、各放射線検出素子から読み出された画像データDをコンソール等の外部装置に圧縮せずに送信すると、通常、送信時間が非常に長くなる。
【0005】
また、放射線画像撮影装置が、バッテリーが内蔵された可搬型の放射線画像撮影装置である場合には、画像データDの送信時間が長くなると、送信の際に消費される電力が大きくなり、バッテリーの消耗につながる。
【0006】
そこで、例えば特許文献4や特許文献5に記載されているように、読み出された画像データは、通常、可逆圧縮(ロスレス圧縮ともいう。)や非可逆圧縮(不可逆圧縮ともいう。)等のデータ圧縮方法で圧縮されて、コンソールやサーバー等の外部装置に送信される。
【0007】
そして、例えば、放射線画像撮影装置を、被写体として患者の頭部や胸部、手足等の身体の一部を撮影し、取得された放射線画像を医用画像として診断等に用いる医用画像の撮影装置として用いる場合には、放射線画像撮影装置から圧縮して送信した画像データDが、元の画像データDに完全に一致するように復元されないと、病変部がぼやけた状態で復元される等して、病変部の見落とし等の誤診につながる虞れがある。
【0008】
そこで、このような場合には、画像データを圧縮するデータ圧縮方法として、圧縮により画像データDが有する情報の一部が失われてしまう非可逆圧縮ではなく、圧縮前の画像データDと復元後の画像データDとが完全に一致するように圧縮を行う可逆圧縮の方法が採用されることが望ましいと考えられている。可逆圧縮の方法としては、特許文献6に記載されているように、例えば、ハフマン符号化やLZ78、算術符号化等の方法を用いることが可能である。
【0009】
しかし、例えば画像データDをハフマン符号化により可逆圧縮する場合、放射線画像撮影により各放射線検出素子7からそれぞれ読み出された画像データDをヒストグラムに投票すると、各画像データDの出現頻度Fの分布は、例えば図23や図24に示すように、通常、撮影部位(すなわち被写体である患者の身体部位)ごとに分布の形状が異なる状態になる。
【0010】
そして、このような分布を有する画像データDに対して、例えば図25に示す正規分布状の分布に基づいて作成されたハフマンコードHcのテーブル(ハフマン辞書やコード化辞書等ともいう。)を適用し、各画像データDに対してそれぞれハフマンコードHcを割り当てても、必ずしも圧縮率が高くなるは限らない。
【0011】
すなわち、実際の撮影で得られた画像データDの分布が、例えば図24に示した分布のように図25に示した正規分布に比較的近い分布になる場合には、短いハフマンコードHcが割り当てられる画像データDが多くなるため圧縮率が高くなり得る。しかし、例えば図23に示した分布のように図25に示した正規分布に近い分布とは言えない分布になる場合には、長いハフマンコードHcが割り当てられる画像データDが多くなるため、圧縮率は低くなる。
【0012】
そして、このように圧縮率が低くなると、画像データDを圧縮して送信するにもかかわらず、圧縮した画像データDの送信時間が長くなってしまう。そして、放射線画像撮影装置がバッテリー内蔵型である場合には、内蔵されたバッテリーが消耗してしまうといった問題が生じる。
【0013】
このような問題が生じることを防止するための圧縮方法としては、本願出願人が先に提出した特許文献7や特許文献8等に記載の方法が知られている。
【0014】
すなわち、画像データD自体を可逆圧縮する代わりに、信号線6(後述する図7等参照)の延在方向(以下、信号線方向という。)或いは走査線5の延在方向(以下、走査線方向という。)に隣接する各放射線検出素子7から読み出された画像データD同士の差分ΔDを算出し、各差分ΔDをハフマン符号化等により可逆圧縮して送信する。
【0015】
この場合、上記のように放射線画像撮影装置で放射線画像を医用画像として撮影する場合、隣接する各放射線検出素子7から読み出された画像データD同士の差分ΔDはさほど大きな値にならず、しかも、撮影部位によらず、図26に示すようにΔD=0を中心とした比較的狭い範囲の正規分布状の分布になることが分かっている。
【0016】
そこで、例えば図26に示した正規分布状の分布に基づいて予めハフマンコードHcのテーブルを作成しておく。そして、放射線画像撮影で得られた画像データDに対して信号線方向或いは走査線方向に各差分ΔDを算出する。そして、算出した各差分ΔDに対して上記のハフマンコードHcのテーブルを適用してそれぞれハフマンコードHcを割り当てる。
【0017】
このように構成することで、短いハフマンコードHcが割り当てられる差分ΔDが多くなり、長いハフマンコードHcが割り当てられる差分ΔDが少ない状態になるため、データの圧縮率が高くなる。そのため、データの送信時間が短くなり、バッテリーの消耗の度合をより低減させることが可能となる。
【0018】
なお、この場合、圧縮された各差分ΔD(すなわち例えばハフマンコードHc)の送信を受けたコンソール側では、ハフマンコードHcを伸長すると、各差分ΔDが復元される。そして、復元した各差分ΔDと、復元した画像データDに基づいて、元の各画像データDを可逆的に復元していくことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開2000−275350号公報
【特許文献5】特開2005−287927号公報
【特許文献6】特開2009−172078号公報
【特許文献7】国際公開第2011/010480号パンフレット
【特許文献8】特開2011−87727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
そして、本発明者らの研究で、上記の差分ΔDを可逆圧縮する圧縮方法をさらに改良することにより、データの圧縮率をより向上させることが可能で、データの送信時間を短縮して、バッテリーの消耗度合をより低減させることが可能なデータの圧縮の仕方を見出すことができた。
【0021】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、送信するデータの圧縮率を向上させ、データの送信時間を短縮することが可能な放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影システムや放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置にデータを送信する通信手段と、
前記検出部上で隣接する前記放射線検出素子からそれぞれ読み出された前記画像データ同士の差分をそれぞれ算出する算出手段と、
可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報に基づいて、前記各差分の可逆圧縮処理を行う圧縮手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記画像データに基づいて放射線画像を生成するコンソールと、
を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記圧縮手段は、
前記検出部を予め区分した各エリアごとに、当該エリアに属する前記各放射線検出素子に関する前記圧縮後の各差分のデータサイズの総和が、当該エリアに属する前記各放射線検出素子の前記画像データのデータサイズの合計より小さいか否かを判定し、
前記総和が前記合計より小さい場合には、当該エリアに関しては、前記圧縮後の各差分を前記コンソールに送信し、
前記総和が前記合計以上である場合には、当該エリアに関しては、前記各放射線検出素子ごとの前記画像データ自体を前記コンソールに送信し、
あわせて前記各エリアごとの圧縮、非圧縮の情報を前記コンソールに送信し、
前記コンソールは、前記各エリアごとの圧縮、非圧縮の情報に基づいて、
非圧縮の前記エリアについては、送信されてきた前記各放射線検出素子ごとの前記画像データを用い、
圧縮の前記エリアについては、前記放射線画像撮影装置の前記圧縮手段が用いたものと同じ前記可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報に基づいて前記圧縮後の各差分を元の前記各差分に伸長し、伸長した前記各差分に基づいて前記各放射線検出素子ごとの元の前記画像データを復元し、
前記各画像データに基づいて放射線画像を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明のような方式の放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置によれば、放射線画像撮影装置の検出部上の全ての放射線検出素子から読み出された画像データDについて差分ΔDを算出し圧縮してコンソールに送信するのではなく、検出部を区分する各エリアRk(後述する図19等参照)について、圧縮後の各差分ΔDと元の各画像データDのうち、データサイズ(すなわちbit数)の総和や合計が小さい方のデータをコンソールに送信する。
【0024】
そのため、各エリアRkごとにデータサイズの総和や合計が小さい方のデータ(すなわち圧縮後の各差分ΔD或いは画像データD自体)が送信されるようになり、予めデータを全て圧縮後の各差分ΔDの形で送信するように構成されている場合に比べて、送信するデータのデータサイズをより小さくすることが可能となる。
【0025】
そのため、圧縮率を向上させることが可能となり、データの送信時間をより短縮することが可能となる。そして、放射線画像撮影装置がバッテリーを内蔵する場合には、バッテリーの消耗の度合をより低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】ケーブルを接続した状態の放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図4】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図5】図4の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図6】フレキシブル回路基板やPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図10】撮影室等に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図11】回診車上に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図12】各放射線検出素子から読み出された画像データを表す図である。
【図13】信号線方向に隣接する画像データ同士の差分が算出される状態を説明する図である。
【図14】算出手段のレジスター部の構成および信号線方向に隣接する画像データ同士の差分の算出の仕方等を説明する図である。
【図15】走査線のラインL1に接続された各放射線検出素子については基準データと各画像データとの差分が算出されることを説明する図である。
【図16】(A)〜(C)1つのバッファーレジスターを用いて信号線方向に隣接する画像データ同士の差分を算出する仕方を説明する図である。
【図17】走査線方向に隣接する画像データ同士の差分が算出される状態を説明する図である。
【図18】走査線方向に隣接する画像データ同士の差分の算出の仕方等を説明する図である。
【図19】放射線画像撮影装置の検出部を区分する各エリア等を説明する図である。
【図20】(A)、(B)エリアR1に対応するバッファーメモリーの記憶領域を拡大して示すイメージ図であり、算出された各差分が記憶領域にそれぞれ格納される状態を表す図である。
【図21】検出部に撮影される被写体および検出部に放射線が直接到達する素抜け部を説明する図である。
【図22】検出部を区分する各エリアに圧縮、非圧縮を表す1または0が割り当てられた状態を表す図である。
【図23】画像データの出現頻度の分布の例を表すヒストグラムである。
【図24】図27とは別の撮影部位を撮影した場合の画像データの出現頻度の分布の例を表すヒストグラムである。
【図25】画像データの出現頻度の分布について想定された正規分布状の分布の例を表すヒストグラムである。
【図26】信号線方向等に隣接する画像データ同士の各差分の出現頻度の分布を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレーター等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレーター等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0029】
また、放射線画像撮影装置がいわゆる可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された固定式の、いわゆる専用機型の放射線画像撮影装置やそれを用いた放射線画像撮影システムにも、本発明が適用される。
【0030】
[放射線画像撮影装置]
以下、まず、本実施形態に係る放射線画像撮影システムに用いられる放射線画像撮影装置について説明する。図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。
【0031】
本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体状のハウジング2内にシンチレーター3や基板4等で構成されるセンサーパネルSPが収納されている。本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状のハウジング本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、ハウジング本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。
【0032】
また、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクター39、バッテリー状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケーター40等が配置されている。
【0033】
図3に示すように、本実施形態では、コネクター39には、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCが接続できるようになっている。そして、ケーブルCaと接続されることにより、例えば後述するコンソール58(図10や図11参照)との間で信号等を送受信したり、コンソール58に画像データD等を送信することができるようになっている。
【0034】
また、図示を省略するが、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に、アンテナ装置41(後述する図7参照)が例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けられている。このように、本実施形態では、コネクター39やアンテナ装置41が、放射線画像撮影装置1とコンソール58等との間で信号を送受信し、コンソール58に画像データD等を送信するための通信手段として機能するようになっている。
【0035】
図2に示すように、筐体2の内部には、基台31の上面側に図示しない鉛の薄板等を介して基板4が配置され、また、基台31の下面側には、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリー24等が取り付けられている。また、基板4やシンチレーター3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板34が配設されている。また、本実施形態では、基台31や基板4等と筐体2の側面との間に、それらがぶつかり合うことを防止するための緩衝材35が設けられている。
【0036】
シンチレーター3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレーター3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0037】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、基板4のシンチレーター3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0038】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた小領域r全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0039】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスター等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0040】
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレーター3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(本実施形態ではシンチレーター3で放射線から変換された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
【0041】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0042】
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0043】
本実施形態では、図4に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。
【0044】
そして、各入出力端子11には、図6に示すように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバー15bを構成するゲートIC15c等のチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板(Chip On Film等ともいう。)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0045】
フレキシブル回路基板12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサーパネルSPが形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0046】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0047】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
【0048】
図7や図8に示すように、本実施形態では、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極7bにバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0049】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバー15bとを備えている。
【0050】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサー21は省略されている。
【0051】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサー18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
【0052】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0053】
各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理を行う場合、図9に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)とされた状態で、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出されると、電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積される。
【0054】
増幅回路18では、コンデンサー18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっている。相関二重サンプリング回路(CDS)19は、各放射線検出素子7から電荷が流出する前に制御手段22からパルス信号Sp1(図9参照)が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。
【0055】
そして、各放射線検出素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積された後、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。そして、電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力する。
【0056】
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサー21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記憶手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
【0057】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。
【0058】
そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。
【0059】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリー24が接続されている。また、バッテリー24は、前述したコネクター39に接続されており、バッテリー24の充電の際にはコネクター39を介して図示しない充電装置から電力が供給されるようになっている。
【0060】
前述したように、制御手段22は、走査駆動手段15から各走査線5にオン電圧を順次印加させて各放射線検出素子7から画像データDを読み出させたり、読み出し回路17を制御して画像データDの読み出し動作を行われる等する。また、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり可変させたりするなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0061】
[放射線画像撮影システム]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50について説明する。図10は、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50の構成例を示す図である。図10では、放射線画像撮影システム50が撮影室Ra内等に構築されている場合が示されている。
【0062】
撮影室Raには、ブッキー装置51が設置されており、ブッキー装置51は、そのカセッテ保持部(カセッテホルダともいう。)51aに上記の放射線画像撮影装置1を装填して用いることができるようになっている。なお、図10では、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bが設置されている場合が示されているが、例えば、立位撮影用のブッキー装置51Aのみ、或いは、臥位撮影用のブッキー装置51Bのみが設けられていてもよい。
【0063】
本実施形態では、図3に示したように、放射線画像撮影装置1のコネクター39と、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCとが接続された状態で、放射線画像撮影装置1をブッキー装置51に装填することができるようになっている。なお、ブッキー装置51のカセッテ保持部51a内にコネクターCを設けておき、放射線画像撮影装置1が装填されると自動的にコネクター39とコネクターCとが接続されるように構成することも可能であり、適宜に構成される。
【0064】
図10に示すように、撮影室Raには、被写体を介してブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線源52Aが少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、放射線源52Aの位置を移動させたり、放射線の照射方向を変えることで、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bのいずれにも放射線を照射することができるようになっている。
【0065】
撮影室Raには、撮影室Ra内の各装置等や撮影室Ra外の各装置等の間の通信等を中継するための中継器(基地局等ともいう。)54が設けられている。なお、本実施形態では、中継器54には、放射線画像撮影装置1が無線方式で画像データDや信号等の送受信を行うことができるように、無線アンテナ(アクセスポイントともいう。)53が設けられている。
【0066】
また、中継器54は、放射線発生装置55やコンソール58と接続されており、中継器54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等から放射線発生装置55に送信するLAN(Local Area Network)通信用の信号等を放射線発生装置55用の信号等に変換し、また、その逆の変換も行う図示しない変換器が内蔵されている。
【0067】
前室(操作室ともいう。)Rbには、本実施形態では、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が操作して放射線発生装置55に対して放射線の照射開始等を指示するための曝射スイッチ56が設けられている。
【0068】
放射線発生装置55は、放射線源52を所定の位置に移動させたり、その放射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように図示しない絞りやコリメーター等を調整したり、或いは、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整する等の種々の制御を行うようになっている。
【0069】
図10に示すように、本実施形態では、コンピューター等で構成されたコンソール58が前室Rbに設けられている。なお、コンソール58を撮影室Raや前室Rbの外側や別室等に設けるように構成することも可能であり、コンソール58の設置場所は適宜決められる。
【0070】
また、コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部58aが設けられており、また、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段59が接続、或いは内蔵されている。
【0071】
コンソール58は、後述するように、放射線画像撮影装置1から画像データD等に関するデータ、すなわち圧縮された差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)が送信されてくると、それに基づいて元の画像データD等を復元し、復元した画像データD等に基づいて放射線画像を生成するようになっている。なお、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から送信されてきたプレビュー画像用のデータに基づいて表示部58a上にプレビュー画像を表示するように構成することも可能である。
【0072】
一方、放射線画像撮影装置1は、図11に示すように、ブッキー装置51には装填されずに、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。例えば、患者Hが病室Rc内のベッドBから起き上がれず、撮影室Raに行くことができないような場合、図11に示すように、放射線画像撮影装置1を病室Rc内に持ち込み、ベッドBと患者の身体との間に差し込んだり患者の身体にあてがったりして用いることができる。
【0073】
放射線画像撮影装置1をこのようにして用いる場合、例えば図3に示したように、放射線画像撮影装置1のコネクター39にケーブルCを接続して用いると、ケーブルCが放射線技師の作業の邪魔になる場合が多いため、本実施形態では、放射線画像撮影装置1を単独の状態で用いる場合には、コネクター39にケーブルCを接続せずに使用される。
【0074】
また、放射線画像撮影装置1を病室Rc等で用いる場合、前述した撮影室Raに据え付けられた放射線発生装置55や放射線源52Aを病室Rcに持ち込むことができないため、図11に示すように、いわゆるポータブルの放射線発生装置55が例えば回診車71に搭載される等して病室Rcに持ち込まれる。
【0075】
この場合、ポータブルの放射線発生装置55の放射線52Pは、任意の方向に放射線を照射できるように構成される。そして、ベッドBと患者の身体との間に差し込まれたり患者の身体にあてがわれたりした放射線画像撮影装置1に対して、適切な距離や方向から放射線を照射することができるようになっている。
【0076】
なお、図10に示したように、放射線画像撮影装置1を、撮影室Raの臥位撮影用のブッキー装置51B上に横臥した患者の身体と臥位撮影用のブッキー装置51Bとの間に差し込んだり、臥位撮影用のブッキー装置51B上で患者の身体にあてがったりして用いることも可能であり、その場合は、ポータブルの放射線52Pや、撮影室Raに据え付けられた放射線源52Aのいずれを用いることも可能である。
【0077】
[放射線画像撮影装置における圧縮処理等について]
次に、放射線画像撮影装置1における画像データDの圧縮処理等について説明する。
【0078】
本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、検出部P(図7等参照)上で隣接する放射線検出素子7からそれぞれ読み出された画像データD同士の差分ΔDをそれぞれ算出する算出手段や、可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報に基づいて各差分ΔDの圧縮処理を行う圧縮手段として機能するように構成されている。
【0079】
以下、画像データD同士の差分ΔDを算出して圧縮する手法について説明する。なお、上記の制御手段22とは別体として、算出手段や圧縮手段を構成することも可能である。また、本発明では、後述するように、検出部Pを予め区分した各エリアRkごとに、圧縮した差分ΔDをコンソール58に送信したり、或いは、元の画像データDをそのままコンソール58に送信したりする場合があるが、この点については後で説明する。
【0080】
以下では、例えば図12に示すように、検出部P(図4や図7参照)のn行、m列目の放射線検出素子7(n,m)から読み出された画像データDを、D(n,m)と表す。なお、この場合、nは走査線5の番号を表し、mは信号線6の番号を表す。
【0081】
本実施形態では、算出手段としての制御手段22は、記憶手段23に記憶されている各画像データD(n,m)を順番に読み出していき、図13に示すように、検出部P上で信号線方向(図中の矢印方向参照)に隣接する放射線検出素子7(n,m)の画像データD(n,m)同士、すなわち同じ信号線6に接続された隣接する放射線検出素子7から読み出された画像データD(n,m)同士の差分ΔDを算出するようになっている。
【0082】
具体的には、本実施形態では、算出手段としての制御手段22には、図14に示すようなレジスター部25が設けられている。そして、レジスター部25には、少なくとも2つのバッファーレジスター25a、25bが設けられており、また、圧縮された差分ΔD等を送信する前に一時的に格納するバッファーメモリー25cが設けられている。
【0083】
そして、制御手段22は、記憶手段23から、走査線5のラインLnに接続された各放射線検出素子7から読み出された走査線方向に並ぶ各画像データD(n,1)、D(n,2)、D(n,3)、…、を読み出してバッファーレジスター25aに一時的に蓄積させる。また、記憶手段23から、上記の走査線5のラインLnに隣接するラインLn+1に接続された各放射線検出素子7から読み出された走査線方向に並ぶ各画像データD(n+1,1)、D(n+1,2)、D(n+1,3)、を読み出してバッファーレジスター25bに一時的に蓄積させる。
【0084】
そして、制御手段22は、バッファーレジスターの25a、25bの同じ番地の画像データD同士の差分ΔDを算出するようになっている。すなわち、算出手段としての制御手段22は、
ΔD(n+1,m)=D(n+1,m)−D(n,m) …(1)
の演算を順次行うことにより、各差分ΔDを算出するようになっている。
【0085】
そして、制御手段22は、各差分ΔDを算出するごとに、後述する圧縮手段としての圧縮処理を行った後、圧縮した差分ΔDをそれぞれバッファーメモリー25cに格納していくようになっている。
【0086】
また、本実施形態では、制御手段22は、上記のようにして、各mについて上記(1)式の演算を行って各差分ΔDをそれぞれ算出し終わると、バッファーレジスター25aに蓄積されている走査線5のラインLnに接続されている各放射線検出素子7の各画像データD(n,m)をバッファーメモリー25cに格納する。
【0087】
そして、各画像データD(n+1,m)を、バッファーレジスター25bからバッファーレジスター25aの対応する番地に移し、空になったバッファーレジスター25bの各番地に、次に隣接する走査線5のラインLn+2に接続されている各放射線検出素子7の各画像データD(n+2,m)を蓄積させる。そして、上記の差分ΔDの算出処理と圧縮処理を繰り返す。
【0088】
このようにして、算出手段としての制御手段22は、信号線方向に隣接する各放射線検出素子7(n,m)、7(n+1,m)から読み出された画像データD(n,m)、D(n+1,m)同士の差分ΔD(n+1,m)を次々と算出していくようになっている。
【0089】
なお、上記のように構成する場合、走査線5のラインL1に接続された各放射線検出素子7の各画像データD(1,1)、D(1,2)、D(1,3)、…については、差分ΔD(1,1)、ΔD(1,2)、ΔD(1,3)、…を算出する相手、すなわちD(0,1)等が存在しない。
【0090】
そこで、本実施形態では、各画像データD(1,1)、D(1,2)、D(1,3)、…についての差分ΔD(1,1)、ΔD(1,2)、ΔD(1,3)、…を算出するために、予め基準データDc(1)、Dc(2)、Dc(3)、…が予めプログラム中に設定されている。
【0091】
そして、各差分ΔD(1,1)、ΔD(1,2)、ΔD(1,3)、…を算出する際には、図15に示すように、制御手段22は、まず、基準データDc(1)、Dc(2)、Dc(3)、…をバッファーレジスター25aに蓄積させ、記憶手段23から読み出した走査線5のラインL1に接続された各放射線検出素子7から読み出された走査線方向に並ぶ各画像データD(1,1)、D(1,2)、…をバッファーレジスター25bに蓄積させて、各差分ΔD(1,1)、ΔD(1,2)、…を算出するようになっている。
【0092】
その際、基準データDc(1)、Dc(2)、…の各値は、同一の値に設定されてもよく、また、互いに異なる値に設定することも可能であり、予め適宜設定される。また、本実施形態では、基準データDc(1)等は、コンソール58にも同じ値の各基準データDc(1)等が予め備えられているため、コンソール58に送信する必要はない。そのため、基準データDc(1)等はバッファーメモリー25cには送信されないようになっている。
【0093】
また、レジスター部25にバッファーレジスター25aが1つしか設けられていない場合でも、上記と同様の信号線方向に隣接する放射線検出素子7の画像データD同士の差分ΔDを算出するように構成することが可能である。
【0094】
すなわち、図16(A)に示すように、走査線5のあるラインLnに接続された各放射線検出素子7(n,m)の各画像データD(n,m)がバッファーレジスター25aに蓄積されている場合、制御手段22は、隣接する走査線5のラインLn+1の走査線方向に並ぶ各画像データD(n+1,1)、D(n+1,2)、D(n+1,3)、…を記憶手段23から順次読み出してくる。
【0095】
そして、各画像データD(n+1,1)、D(n+1,2)、D(n+1,3)、…を、それぞれ対応する各画像データD(n,1)、D(n,2)、D(n,3)、…と順次置換しながらバッファーレジスター25aに蓄積する。そして、その際、図16(A)〜(C)に示すように、対応する画像データD同士の差分データΔDを算出し、バッファーレジスター25a内の画像データD(n,m)をバッファーメモリー25cに送信しながら置換していくように構成する。
【0096】
このように構成すれば、バッファーレジスター25aが1つしかない場合でも、図14や図15に示した場合と同様にして、信号線方向に隣接する放射線検出素子7の画像データD同士の差分ΔDを算出することが可能となる。
【0097】
一方、本実施形態では、上記のように、検出部P上で信号線方向に隣接する放射線検出素子7の画像データD同士の差分ΔDを算出する場合について説明したが、例えば図17に示すように、検出部P上で走査線方向(図中の矢印方向参照)に隣接する放射線検出素子7の画像データD同士の差分ΔDを算出するように構成することも可能である。
【0098】
この場合は、たとえば図18に示すように、レジスター部25に備えられるバッファーレジスター25aは、少なくとも1つの画像データDを蓄積することができるバッファーレジスターであればよい。
【0099】
そして、この場合、算出手段としての制御手段22は、図18に示すように、バッファーレジスター25aに蓄積されている画像データD(n,m)が読み出された放射線検出素子7(n,m)の走査線方向に隣接する放射線検出素子7(n,m+1)の画像データD(n,m+1)を記憶手段23から読み出し、バッファーレジスター25aに蓄積されている画像データD(n,m)を画像データD(n,m+1)に置換する。
【0100】
その際、画像データD(n,m)、D(n,m+1)同士の差分データΔD(n,m+1)を算出する。また、バッファーレジスター25a内の画像データD(n,m)をバッファーメモリー25cに送信する。この処理を順次繰り返していくことで、走査線方向に隣接する放射線検出素子7の画像データD同士の差分ΔDを算出することができる。
【0101】
なお、この場合も、最初の放射線検出素子7の画像データD(n,1)については、差分ΔD(n,1)を算出するためのD(n,0)が存在しないため、やはり予め基準データDc(n)を予めプログラム中に設定しておく等の処理が行われる。
【0102】
次に、圧縮手段としての制御手段22による差分ΔDの圧縮処理について説明する。
【0103】
本実施形態では、圧縮手段としての制御手段22は、前述したように、上記のようにして算出された各差分ΔDを可逆圧縮するようになっている。そして、本実施形態では、可逆圧縮の方法として、ハフマンコードHcのテーブルを用いたハフマン符号化が採用されているが、LZ78や算術符号化等の方法を用いることも可能である。
【0104】
なお、本実施形態では、このようにハフマン符号化を用いて可逆圧縮を行うため、ハフマンコードHcのテーブルが可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報に相当することになるが、他の圧縮方法を採用する場合には、それぞれの圧縮方法に適合する可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報が用いられる。
【0105】
一方、前述したように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1で放射線画像を医用画像として撮影する場合、上記のようにして算出された各差分ΔDの出現頻度Fの分布は、図26に示したようにΔD=0を中心とした比較的狭い範囲の正規分布状の分布になることが分かっている。
【0106】
そこで、本実施形態では、例えば図26に示した正規分布状の分布に基づいて、予めハフマンコードHcのテーブルを作成しておくようになっている。そして、このハフマンコードHcのテーブルは、ROM等に格納されたプログラム中に書き込まれており、圧縮手段としての制御手段22は、放射線画像撮影装置1の電源がオンされた段階で、プログラム中からハフマンコードHcのテーブルを読み出してメモリーに保存するようになっている。なお、ハフマンコードHcのテーブルを予めメモリー中に保存しておくように構成することも可能である。
【0107】
圧縮手段としての制御手段22は、上記のようにして算出手段(すなわち本実施形態では制御手段22)が図14〜図18に示したようにして画像データDの差分ΔDを算出するごとに、ハフマンコードHcのテーブルに基づいて、算出された差分ΔDを圧縮する、すなわちハフマンコード化するようになっている。
【0108】
そして、制御手段22は、差分ΔDを圧縮するごとに、圧縮された差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)をそれぞれレジスター部25のバッファーメモリー25c(図14参照)に格納していくようになっている。
【0109】
[各エリアごとの判定処理等について]
次に、圧縮手段としての制御手段22における検出部Pの各エリアRkごとの判定処理について説明する。また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50の作用についてもあわせて説明する。
【0110】
本実施形態では、図19に示すように、放射線画像撮影装置1の検出部P(図4や図7参照)が、予め、所定個数の放射線検出素子7が属する各エリアRkに区分されている。
【0111】
なお、図19では、検出部Pが7×8=56個の各エリアR1〜R56に区分されている場合が示されているが、検出部Pを区分する各エリアRkの個数はこれに限定されない。また、以下の説明においては、図19に示すように、各エリアRkにそれぞれN×M個の各放射線検出素子7が属しているものとする。
【0112】
圧縮手段としての制御手段22は、上記のようにして各差分ΔDを算出して圧縮し、圧縮した各差分ΔD(すなわち各ハフマンコードHc)をそれぞれレジスター部25のバッファーメモリー25c(図14参照)に格納していくごとに、各エリアRkごとに、当該エリアRkに属する各放射線検出素子7に関する圧縮後の各差分ΔD(すなわち各ハフマンコードHc)のデータサイズ(すなわちbit数)を加算していくようになっている。
【0113】
具体的には、例えば図19に示したエリアR1に対応するバッファーメモリー25cの記憶領域R1*を拡大した図20(A)のイメージ図に示すように、制御手段22は、上記のようにして例えば差分ΔD(1,1)を算出、圧縮してバッファーメモリー25cの記憶領域R1*に格納すると、圧縮した差分ΔD(1,1)(すなわち差分ΔD(1,1)に対応するハフマンコードHc)のデータサイズを加算する。すなわち、この場合はそのデータサイズを記憶する。
【0114】
続いて、図20(B)のイメージ図に示すように、差分ΔD(1,2)を算出、圧縮してバッファーメモリー25cの記憶領域R1*に格納すると、圧縮した差分ΔD(1,2)(すなわち差分ΔD(1,2)に対応するハフマンコードHc)のデータサイズを、既に記憶されている圧縮した差分ΔD(1,1)のデータサイズに加算する。
【0115】
制御手段22は、このようにして、エリアR1に属する各放射線検出素子7に関する各差分ΔDを算出、圧縮してバッファーメモリー25cの記憶領域R1*に格納するごとに、圧縮した各差分ΔDのデータサイズを加算していく。そして、エリアR1に属するN×M個の各放射線検出素子7について圧縮した各差分ΔDのデータサイズを加算し終わると、その総和を、エリアR1に属する各放射線検出素子7に関する圧縮後の各差分ΔDのデータサイズの総和Σ1として記憶する。
【0116】
圧縮手段としての制御手段22は、この総和Σkの算出処理を各エリアRkごとに行い、算出した各総和Σkを各エリアRkごとに記憶するようになっている。なお、この各エリアRkごとの総和Σkの算出処理を、全ての差分ΔDがバッファーメモリー25cに格納された後に行うように構成することも可能である。
【0117】
上記のようにして、検出部Pの各エリアRkごとに圧縮された各差分ΔD(すなわち各ハフマンコードHc)のデータサイズの総和Σkを算出すると、エリア中の圧縮された各差分ΔDの出現頻度Fが図26に示したようにΔD=0を中心とした比較的狭い範囲の正規分布状の分布になる場合には、短いハフマンコードHc(すなわちbit数が小さなハフマンコードHc)が割り当てられる差分ΔDの割合が多くなり、圧縮後の各差分ΔDのデータサイズ(すなわちbit数)の総和Σkが小さくなる。
【0118】
しかし、例えば、図21に示すように、照射された放射線が被写体Hを透過せずに検出部Pに直接到達した各放射線検出素子7(本実施形態では放射線が被写体Hを透過せずにシンチレーター3に到達し、直接到達した放射線から変換された電磁波が照射された各放射線検出素子7)の部分A、すなわちいわゆる素抜け部Aでは、画像データD同士の差分ΔDが比較的大きくばらつくことが分かっている。
【0119】
また、図示を省略するが、素抜け部A以外の、被写体Hが撮影されている部分においても、撮影条件によっては、画像データD同士の差分ΔDが比較的大きくばらつく場合がある。
【0120】
そして、このように差分ΔDが比較的大きくばらつくと、ΔD=0から正方向または負方向に比較的大きくはずれた差分ΔDの割合が多くなる。そして、そのような差分ΔDに対して、図26に示したような分布に基づいて作成されたハフマンコードHcのテーブルを適用すると、長いハフマンコードHcが割り当てられる差分ΔDの割合が多くなる。そのため、当該エリアRkの圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)のデータサイズの総和Σkが比較的大きくなる場合がある。
【0121】
そして、当該エリアRkに関しては、圧縮された各差分ΔDの総和Σkのデータサイズよりも、当該エリアRkに属する各放射線検出素子7から読み出された元の画像データD自体のデータサイズの合計σkの方が小さくなる場合がある。
【0122】
そのような場合、当該エリアRkについては、圧縮された各差分ΔDをコンソール58に送信するよりも、当該エリアRkに属する各放射線検出素子7から読み出された元の各画像データDをそのまま送信する方が圧縮率が高くなり、送信時間が短くなる。そのため、本実施形態のように放射線画像撮影装置1がバッテリー24を内蔵する場合、バッテリー24の消耗の度合をより低減させることが可能となる。
【0123】
そこで、本実施形態では、圧縮手段としての制御手段22は、上記のようにして検出部Pの各エリアRkに属する各放射線検出素子7に関する圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)のデータサイズの総和Σkを算出すると、各エリアRkごとに、算出した総和Σkが、当該エリアRkに属する各放射線検出素子7の画像データDのデータサイズの合計σkより小さいか否かを判定するようになっている。
【0124】
その際、放射線画像撮影装置1が例えば16bitの階調で画像データDを撮影する場合すなわち例えば各画像データDが0〜65535(=216−1)のデータ値を取り得るように構成されている場合には、画像データDのデータサイズは16(すなわち16bit)になる。
【0125】
このように、放射線画像撮影装置1では、通常、画像データDの階調数(すなわちbit数)が決まっており、データサイズが各画像データDで一定になるように構成されている。そのため、あるエリアRkに属する各画像データDのデータサイズの合計σkは、予め、個々の画像データDの階調数と、当該エリアRkに属する放射線検出素子7の数(すなわち上記の場合はN×M個)との積として算出しておくことができる。すなわち、上記の場合には、合計σkは16×N×Mになる。
【0126】
そこで、本実施形態では、予めプログラム中に書き込まれた上記の積すなわち上記の合計σkを読み出す等して、圧縮手段としての制御手段22が、予め上記の合計σkを有しておくように構成されている。このように構成することで、制御手段22は、上記の合計σkをわざわざ算出しなくてもよくなり、圧縮処理における処理の負担を軽減することが可能となる。
【0127】
圧縮手段としての制御手段22は、各エリアRkの圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)のデータサイズの総和Σkを算出すると、各エリアRkごとに、算出した総和Σkと上記の合計σkとを比較して、総和Σkが合計σkより小さいか否かを判定するようになっている。
【0128】
そして、制御手段22は、算出した総和Σk、すなわち当該エリアRkの圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)のデータサイズの総和Σkが、当該エリアRkに属する各画像データDのデータサイズの合計σk(すなわち例えば16×N×M)より小さい場合には、当該エリアRkに関しては、圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)をコンソール58に送信する。
【0129】
また、総和Σkが合計σk以上である場合には、当該エリアRkに関しては、当該エリアRkに属する各放射線検出素子7ごとの画像データD自体をコンソール58に送信するようになっている。
【0130】
このように構成すれば、データサイズの総和Σkや合計σkが小さい方のデータ(すなわち圧縮後の各差分ΔDである各ハフマンコードHc或いは画像データD自体)が送信されるようになり、予めデータを全て圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)の形で送信するように構成されている場合に比べて、送信するデータのデータサイズ(すなわち総bit数)をより小さくすることが可能となる。すなわち、圧縮率を向上させることが可能となる。
【0131】
そのため、データの送信時間をより短縮することが可能となり、本実施形態のように放射線画像撮影装置1がバッテリー24を内蔵する場合、バッテリー24の消耗の度合をより低減させることが可能となる。なお、上記の判定の結果、全てのエリアRkで圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)の形で送信することが選択された場合には、送信時間は、予めデータを全て圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)の形で送信するように構成されている場合と同じになる。
【0132】
なお、この場合、これらのデータの送信を受けたコンソール58側では、送信されてきたデータを見ただけでは、0と1で表されたデータが、圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)であるか、画像データD自体であるかを判別することができない。
【0133】
そこで、本実施形態では、圧縮手段としての制御手段22は、上記のようにして、各エリアRkごとに判定を行った結果を、各エリアRkごとの圧縮、非圧縮の情報としてコンソール58に送信するようになっている。
【0134】
具体的には、本実施形態では、制御手段22は、例えば図22に示すように、各エリアRkごとに、圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)を送信するエリアRk(すなわち圧縮のエリアRk)に対しては1を、また、圧縮されていない画像データD自体を送信したエリアRk(すなわち非圧縮のエリアRk)に対しては0をそれぞれ割り当てた通知データを、各エリアRkごとの圧縮、非圧縮の情報としてコンソール58に送信するようになっている。
【0135】
なお、この通知データにおける各エリアRkに対する1と0の割り当て方は、上記とは逆でもよい。すなわち、圧縮のエリアRkに対して0を、非圧縮のエリアRkに対して1を割り当ててもよい。また、図22に示した場合には、通知データの実際の形は、各エリアR1〜R56に対応して「00000000001100…」のような形になる。
【0136】
また、放射線画像撮影装置1からコンソール58に、圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)や画像データD自体を各エリアごとに送信した後、通知データを送信するように構成すると、コンソール58では、全てのデータを受信した後、通知データが送信されてきて初めて後述する画像データDの復元処理に取り掛かることになる。
【0137】
しかし、通知データを先に送信するように構成すれば、コンソール58では、受信した通知データに従って、各エリアRkのデータ(すなわち圧縮後の各差分ΔD或いは画像データD自体)が送信されてくるごとに、送信されてきたデータが圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)であれば即座に復元処理に取り掛かることが可能となる。
【0138】
そこで、本実施形態では、圧縮手段としての制御手段22は、上記のようにして各エリアRkごとに圧縮、非圧縮を表す1、0をそれぞれ割り当てて通知データを作成すると、通知データを、送信するデータの先頭に付加してコンソール58に送信するようになっている。
【0139】
ところで、上記のように構成する場合、検出部Pを複数のエリアRkに細かく区分すれば、すなわち1つのエリアRkに属する各放射線検出素子7の数が少なくなるようにして検出部Pを細かく区分すれば、上記の圧縮、非圧縮の判定をきめ細かく行うことが可能となり、圧縮率をより向上させることができるように思われる。
【0140】
しかし、検出部Pを細かく区分すると、その分、エリアRkの数が増大する。そのため、各エリアRkごとに圧縮、非圧縮を表す1、0をそれぞれ割り当てた上記の通知データ自体のデータサイズ(すなわちbit数。上記の例では各エリアR1〜R56に対応して56になる。)が大きくなる。
【0141】
そのため、検出部Pを各エリアRkで細かく区分し過ぎると、上記のように圧縮率が向上する分以上に通知データのデータサイズが大きくなり、かえってコンソール58に送信する、通知データを含む全データのデータサイズ(すなわちbit数)が大きくなってしまう場合がある。
【0142】
そのため、検出部Pをどの程度の大きさの何個のエリアRkで区分するかは、検出部Pを各エリアRkで区分することによる圧縮率の向上分(すなわち送信するデータのデータサイズの減少分)や、通知データのデータサイズに増加分等を加味して、予め適宜決められる。
【0143】
なお、放射線画像撮影装置1では、放射線画像撮影の前や後に、オフセットデータOの読み出し処理が行われる場合がある。
【0144】
放射線検出素子7から読み出される上記の画像データDには、放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した電荷に起因するデータのほかに、放射線検出素子7自体の熱(温度)による熱励起等により常時発生している、いわゆる暗電荷によるオフセット分が重畳されている。
【0145】
そのため、オフセットデータOの読み出し処理では、放射線画像撮影装置1に放射線を照射しない状態で、各放射線検出素子7内に暗電荷のみを蓄積させ、それをオフセットデータOとして読み出すようになっている。このようにして読み出されたオフセットデータOは、画像データDに重畳されている暗電荷に起因するオフセット分に相当する値になるため、画像データDからオフセットデータOを減算することで、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷のみに起因した真の画像データD*を算出することが可能となる。
【0146】
そして、オフセットデータOの読み出し処理で読み出されたオフセットデータOについても、上記と同様にして、検出部Pの各エリアRkごとに、圧縮、非圧縮を判定してコンソール58に送信するように構成することが可能である。
【0147】
また、オフセットデータOは、通常、画像データDと比較して格段に小さな値になり、それらの差分ΔOを算出すると、各差分ΔOは0に近い値をとる場合が多い。そのため、オフセットデータOについては、検出部Pの各エリアRkに関係なく、全て差分ΔOをハフマン符号化する等して可逆圧縮してコンソール58に送信するように構成することも可能である。
【0148】
[コンソールでの処理について]
次に、上記のようにして放射線画像撮影装置1から送信されてくるデータに対するコンソール58での処理について説明する。
【0149】
なお、本実施形態では、コンソール58は、予め、放射線画像撮影装置1の圧縮手段としての制御手段22が用いたものと同じハフマンコードHcのテーブル(すなわち可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報)を有している。また、算出手段としての制御手段22が各差分ΔDを算出する際に用いたものと同じ基準データDc(1)、Dc(2)、…の情報も有している。
【0150】
さらに、コンソール58は、放射線画像撮影装置1の検出部Pがどのように各エリアRk(図19等参照)に区分されているか、すなわちエリアRkごとの信号線方向の画素数Nや走査線方向の画素数Mの情報や、各エリアRkの検出部Pにおける配列の順番等の情報を予め有している。
【0151】
本実施形態では、コンソール58は、上記のようにして、放射線画像撮影装置1から、通知データ(すなわち各エリアRkごとの圧縮、非圧縮を表す1、0の情報)が送信されてくると、各エリアRkごとに割り当てられた1または0の情報に基づいて、各エリアRkが圧縮のエリアRkであるか非圧縮のエリアRkであるかを判断するようになっている。
【0152】
そして、非圧縮のエリアRk(すなわち通知データにおける圧縮、非圧縮の情報として0が割り当てられているエリアRk。図22参照)については、放射線画像撮影装置1から当該エリアRkに属する各放射線検出素子7の画像データD自体が送信されてくる。そのため、コンソール58は、当該エリアRkに関しては、送信されてきた画像データDをそのまま元の画像データDとして用いるようになっている。
【0153】
そのため、非圧縮のエリアRkについては、コンソール58は、送信されてきた画像データDをそのまま、一旦、記憶手段59(図10参照。図11では図示省略。)に保存する。
【0154】
また、圧縮のエリアRk(すなわち通知データにおける圧縮、非圧縮の情報として1が割り当てられているエリアRk。図22参照)については、放射線画像撮影装置1から当該エリアRkに属する各放射線検出素子7に関する圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)が送信されてくる。
【0155】
そのため、コンソール58は、当該エリアRkに関しては、送信されてきた圧縮後の各差分ΔDを伸長する等して、当該エリアRkに属する各放射線検出素子7の元の画像データDを復元するようになっている。
【0156】
具体的には、圧縮のエリアRkについて圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)が送信されてくると、コンソール58は、放射線画像撮影装置1で用いられたハフマンコードHcのテーブルと同じテーブル(すなわち可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報)に基づいて、圧縮後の各差分ΔDである各ハフマンコードHcを伸長して、元の各差分ΔDを復元する。
【0157】
そして、上記(1)式の逆演算により、既に復元している元の画像データD(n,m)と伸長して復元した差分ΔD(n+1,m)とを加算し、すなわち、
D(n+1,m)=D(n,m)+ΔD(n+1,m) …(2)
の演算を行って、元の画像データD(n+1,m)を復元していくようにして、各画像データDを復元するようになっている。
【0158】
なお、放射線画像撮影装置1の走査線5のラインL1に接続されている各放射線検出素子7の画像データD(1,m)については、下記(3)式のように前述した基準データDc(m)に、伸長して復元した差分ΔD(1,m)が加算されて、元の画像データD(1,m)が復元される。
D(1,m)=Dc(m)+ΔD(1,m) …(3)
【0159】
また、上記(2)、(3)式による元の画像データDの復元の仕方は、放射線画像撮影装置1で図13に示したように信号線方向に差分ΔDを算出した場合の復元の仕方である。説明を省略するが、放射線画像撮影装置1で図17に示したように走査線方向に差分ΔDを算出した場合は、それに適合する復元の仕方で元の画像データDが復元される。
【0160】
さらに、放射線画像撮影装置1からオフセットデータOに関する圧縮された各差分ΔO(すなわちハフマンコードHc)が送信される場合には、圧縮された各差分ΔOについても同様に伸長処理や復元処理を行って、各放射線検出素子7ごとの元のオフセットデータOを復元するように構成される。
【0161】
コンソール58は、上記のようにして元の各画像データDを復元すると、画像データD自体の形で送信されてきた画像データDも含め、全ての画像データDに対して、オフセット補正やゲイン補正処理、対数変換処理、正規化処理、階調処理等の所定の画像処理を施して、最終的な放射線画像を生成するようになっている。
【0162】
そして、本実施形態では、コンソール58は、生成した放射線画像を表示部58a上に表示するようになっている。
【0163】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1および放射線画像撮影システム50によれば、放射線画像撮影装置1の検出部P上の全ての放射線検出素子7から読み出された画像データDについて差分ΔDを算出して圧縮してコンソール58に送信するのではなく、検出部Pを区分する各エリアRkについて、圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)と元の各画像データDのうち、データサイズ(すなわちbit数)の総和Σkや合計σkが小さい方のデータをコンソール58に送信する。
【0164】
そのため、各エリアRkごとにデータサイズの総和Σkや合計σkが小さい方のデータ(すなわち圧縮後の各差分ΔDである各ハフマンコードHc或いは画像データD自体)が送信されるようになり、予めデータを全て圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)の形で送信するように構成されている場合に比べて、送信するデータのデータサイズ(すなわち総bit数)をより小さくすることが可能となる。
【0165】
そのため、圧縮率を向上させることが可能となり、データの送信時間をより短縮することが可能となる。そして、本実施形態のように放射線画像撮影装置1がバッテリー24を内蔵する場合、バッテリー24の消耗の度合をより低減させることが可能となる。
【0166】
なお、放射線画像撮影装置1からコンソール58に対して全ての画像データD(圧縮後の各差分ΔDすなわちハフマンコードHcである場合を含む。)を送信する前に、放射線画像撮影装置1側で、画像データDの中から所定の割合でデータを間引いて間引きデータDtを作成し、間引きデータDtをプレビュー画像用のデータとしてコンソール58に送信する場合がある。
【0167】
そして、コンソール58は、この間引きデータDtに基づいてプレビュー画像を表示部58a上に表示し、放射線技師が表示されたプレビュー画像を見て、画像中に被写体が的確に撮影されているか否かを判定し、再撮影の要否を判断するように構成される場合がある。
【0168】
このように、間引きデータDtをプレビュー画像用のデータとしてコンソール58に送信する際にも、上記のように、放射線画像撮影装置1で、検出部Pの各エリアRkごとに圧縮、非圧縮の判定を行って、各エリアRkごとに圧縮後の各差分ΔDt(すなわちハフマンコードHc)や元の間引きデータDt自体をコンソール58に送信するように構成することが可能である。
【0169】
また、上記の実施形態では、図14や図16、図18に示したように、差分ΔDを算出するために記憶手段23から読み出してバッファーレジスター25a等に蓄積した画像データDを、バッファーメモリー25cに送信して一時的に格納するように構成する場合について説明した。
【0170】
このように構成すると、あるエリアRkについて画像データD自体を圧縮せずにコンソール58に送信する場合に、バッファーメモリー25cに格納されている画像データDを送信すればよく、画像データDを改めて記憶手段23から読み出す必要がなくなるといったメリットがある。
【0171】
すなわち、下記のように画像データD自体を圧縮せずに送信する際に画像データDを記憶手段23から改めて読み出す場合には、画像データDを、記憶手段23から、差分ΔD等の算出処理のためと送信のための少なくとも2回読み出すことが必要になるが、上記のように構成すれば、記憶手段23から読み出された画像データDをそのままバッファーメモリー25cに送信するため、記憶手段23からの画像データDの読み出し処理が1回で済むといったメリットがある。
【0172】
しかし、この場合、バッファーメモリー25cには、全ての画像データDが格納され、さらに全ての差分ΔDも格納される。そのため、バッファーメモリー25cとして、記憶容量が比較的大きなメモリーを用いることが必要となる。
【0173】
そのため、上記のように記憶手段23から読み出してバッファーレジスター25a等に蓄積した画像データDをバッファーメモリー25cに送信するようには構成せず、例えば、上記のようにして圧縮手段としての制御手段22があるエリアRkを非圧縮のエリアRkと判定した時点で、当該非圧縮のエリアRkに属する画像データDを記憶手段23から読み出してバッファーメモリー25cに送信するように構成することも可能である。
【0174】
このように構成すれば、バッファーメモリー25cとして、記憶容量が比較的小さなメモリーを用いることが可能となるといったメリットがある。
【0175】
また、あるエリアRkについて圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)がバッファーメモリー25cに蓄積された段階で、当該エリアRkについて上記の判定を行い、圧縮後の各差分ΔDや元の画像データDのいずれかを送信し、送信するとすぐにバッファーメモリー25cから当該エリアRkの圧縮後の各差分ΔDを削除するように構成することも可能である。
【0176】
このようにして、送信済みの不要となったデータをバッファーメモリー25cから次々と削除していくように構成すれば、バッファーメモリー25cとして、記憶容量がさらに小さなメモリーを用いることが可能となるといったメリットがある。
【0177】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨から逸脱しない限り、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0178】
1 放射線画像撮影装置
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
17 読み出し回路
22 制御手段(算出手段、圧縮手段)
39 コネクター(通信手段)
41 アンテナ装置(通信手段)
50 放射線画像撮影システム
58 コンソール
D 画像データ
Hc ハフマンコード(圧縮後の差分)
N×M 1つのエリアに属する放射線検出素子の数
P 検出部
r 小領域
Rk エリア
ΔD 画像データ同士の差分
Σk 圧縮後の各差分のデータサイズの総和
σk 画像データのデータサイズの合計
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置に係り、特に、放射線画像撮影装置からコンソールに画像データを圧縮して送信する放射線画像撮影システムおよびそれに用いられる放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレーター等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台(或いはブッキー装置)と一体的に形成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納した可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、通常、互いに交差するように配設された複数の走査線と複数の信号線により区画された各領域に、複数の放射線検出素子が二次元状(マトリクス状)に配列されて検出部が形成されるが、その際、放射線検出素子の数(すなわち画素数)は、通常、数百万〜数千万画素或いはそれ以上の画素数にのぼる。そのため、各放射線検出素子から読み出された画像データDをコンソール等の外部装置に圧縮せずに送信すると、通常、送信時間が非常に長くなる。
【0005】
また、放射線画像撮影装置が、バッテリーが内蔵された可搬型の放射線画像撮影装置である場合には、画像データDの送信時間が長くなると、送信の際に消費される電力が大きくなり、バッテリーの消耗につながる。
【0006】
そこで、例えば特許文献4や特許文献5に記載されているように、読み出された画像データは、通常、可逆圧縮(ロスレス圧縮ともいう。)や非可逆圧縮(不可逆圧縮ともいう。)等のデータ圧縮方法で圧縮されて、コンソールやサーバー等の外部装置に送信される。
【0007】
そして、例えば、放射線画像撮影装置を、被写体として患者の頭部や胸部、手足等の身体の一部を撮影し、取得された放射線画像を医用画像として診断等に用いる医用画像の撮影装置として用いる場合には、放射線画像撮影装置から圧縮して送信した画像データDが、元の画像データDに完全に一致するように復元されないと、病変部がぼやけた状態で復元される等して、病変部の見落とし等の誤診につながる虞れがある。
【0008】
そこで、このような場合には、画像データを圧縮するデータ圧縮方法として、圧縮により画像データDが有する情報の一部が失われてしまう非可逆圧縮ではなく、圧縮前の画像データDと復元後の画像データDとが完全に一致するように圧縮を行う可逆圧縮の方法が採用されることが望ましいと考えられている。可逆圧縮の方法としては、特許文献6に記載されているように、例えば、ハフマン符号化やLZ78、算術符号化等の方法を用いることが可能である。
【0009】
しかし、例えば画像データDをハフマン符号化により可逆圧縮する場合、放射線画像撮影により各放射線検出素子7からそれぞれ読み出された画像データDをヒストグラムに投票すると、各画像データDの出現頻度Fの分布は、例えば図23や図24に示すように、通常、撮影部位(すなわち被写体である患者の身体部位)ごとに分布の形状が異なる状態になる。
【0010】
そして、このような分布を有する画像データDに対して、例えば図25に示す正規分布状の分布に基づいて作成されたハフマンコードHcのテーブル(ハフマン辞書やコード化辞書等ともいう。)を適用し、各画像データDに対してそれぞれハフマンコードHcを割り当てても、必ずしも圧縮率が高くなるは限らない。
【0011】
すなわち、実際の撮影で得られた画像データDの分布が、例えば図24に示した分布のように図25に示した正規分布に比較的近い分布になる場合には、短いハフマンコードHcが割り当てられる画像データDが多くなるため圧縮率が高くなり得る。しかし、例えば図23に示した分布のように図25に示した正規分布に近い分布とは言えない分布になる場合には、長いハフマンコードHcが割り当てられる画像データDが多くなるため、圧縮率は低くなる。
【0012】
そして、このように圧縮率が低くなると、画像データDを圧縮して送信するにもかかわらず、圧縮した画像データDの送信時間が長くなってしまう。そして、放射線画像撮影装置がバッテリー内蔵型である場合には、内蔵されたバッテリーが消耗してしまうといった問題が生じる。
【0013】
このような問題が生じることを防止するための圧縮方法としては、本願出願人が先に提出した特許文献7や特許文献8等に記載の方法が知られている。
【0014】
すなわち、画像データD自体を可逆圧縮する代わりに、信号線6(後述する図7等参照)の延在方向(以下、信号線方向という。)或いは走査線5の延在方向(以下、走査線方向という。)に隣接する各放射線検出素子7から読み出された画像データD同士の差分ΔDを算出し、各差分ΔDをハフマン符号化等により可逆圧縮して送信する。
【0015】
この場合、上記のように放射線画像撮影装置で放射線画像を医用画像として撮影する場合、隣接する各放射線検出素子7から読み出された画像データD同士の差分ΔDはさほど大きな値にならず、しかも、撮影部位によらず、図26に示すようにΔD=0を中心とした比較的狭い範囲の正規分布状の分布になることが分かっている。
【0016】
そこで、例えば図26に示した正規分布状の分布に基づいて予めハフマンコードHcのテーブルを作成しておく。そして、放射線画像撮影で得られた画像データDに対して信号線方向或いは走査線方向に各差分ΔDを算出する。そして、算出した各差分ΔDに対して上記のハフマンコードHcのテーブルを適用してそれぞれハフマンコードHcを割り当てる。
【0017】
このように構成することで、短いハフマンコードHcが割り当てられる差分ΔDが多くなり、長いハフマンコードHcが割り当てられる差分ΔDが少ない状態になるため、データの圧縮率が高くなる。そのため、データの送信時間が短くなり、バッテリーの消耗の度合をより低減させることが可能となる。
【0018】
なお、この場合、圧縮された各差分ΔD(すなわち例えばハフマンコードHc)の送信を受けたコンソール側では、ハフマンコードHcを伸長すると、各差分ΔDが復元される。そして、復元した各差分ΔDと、復元した画像データDに基づいて、元の各画像データDを可逆的に復元していくことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開2000−275350号公報
【特許文献5】特開2005−287927号公報
【特許文献6】特開2009−172078号公報
【特許文献7】国際公開第2011/010480号パンフレット
【特許文献8】特開2011−87727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
そして、本発明者らの研究で、上記の差分ΔDを可逆圧縮する圧縮方法をさらに改良することにより、データの圧縮率をより向上させることが可能で、データの送信時間を短縮して、バッテリーの消耗度合をより低減させることが可能なデータの圧縮の仕方を見出すことができた。
【0021】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、送信するデータの圧縮率を向上させ、データの送信時間を短縮することが可能な放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影システムや放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置にデータを送信する通信手段と、
前記検出部上で隣接する前記放射線検出素子からそれぞれ読み出された前記画像データ同士の差分をそれぞれ算出する算出手段と、
可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報に基づいて、前記各差分の可逆圧縮処理を行う圧縮手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記画像データに基づいて放射線画像を生成するコンソールと、
を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記圧縮手段は、
前記検出部を予め区分した各エリアごとに、当該エリアに属する前記各放射線検出素子に関する前記圧縮後の各差分のデータサイズの総和が、当該エリアに属する前記各放射線検出素子の前記画像データのデータサイズの合計より小さいか否かを判定し、
前記総和が前記合計より小さい場合には、当該エリアに関しては、前記圧縮後の各差分を前記コンソールに送信し、
前記総和が前記合計以上である場合には、当該エリアに関しては、前記各放射線検出素子ごとの前記画像データ自体を前記コンソールに送信し、
あわせて前記各エリアごとの圧縮、非圧縮の情報を前記コンソールに送信し、
前記コンソールは、前記各エリアごとの圧縮、非圧縮の情報に基づいて、
非圧縮の前記エリアについては、送信されてきた前記各放射線検出素子ごとの前記画像データを用い、
圧縮の前記エリアについては、前記放射線画像撮影装置の前記圧縮手段が用いたものと同じ前記可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報に基づいて前記圧縮後の各差分を元の前記各差分に伸長し、伸長した前記各差分に基づいて前記各放射線検出素子ごとの元の前記画像データを復元し、
前記各画像データに基づいて放射線画像を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明のような方式の放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置によれば、放射線画像撮影装置の検出部上の全ての放射線検出素子から読み出された画像データDについて差分ΔDを算出し圧縮してコンソールに送信するのではなく、検出部を区分する各エリアRk(後述する図19等参照)について、圧縮後の各差分ΔDと元の各画像データDのうち、データサイズ(すなわちbit数)の総和や合計が小さい方のデータをコンソールに送信する。
【0024】
そのため、各エリアRkごとにデータサイズの総和や合計が小さい方のデータ(すなわち圧縮後の各差分ΔD或いは画像データD自体)が送信されるようになり、予めデータを全て圧縮後の各差分ΔDの形で送信するように構成されている場合に比べて、送信するデータのデータサイズをより小さくすることが可能となる。
【0025】
そのため、圧縮率を向上させることが可能となり、データの送信時間をより短縮することが可能となる。そして、放射線画像撮影装置がバッテリーを内蔵する場合には、バッテリーの消耗の度合をより低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】ケーブルを接続した状態の放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図4】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図5】図4の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図6】フレキシブル回路基板やPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図10】撮影室等に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図11】回診車上に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図12】各放射線検出素子から読み出された画像データを表す図である。
【図13】信号線方向に隣接する画像データ同士の差分が算出される状態を説明する図である。
【図14】算出手段のレジスター部の構成および信号線方向に隣接する画像データ同士の差分の算出の仕方等を説明する図である。
【図15】走査線のラインL1に接続された各放射線検出素子については基準データと各画像データとの差分が算出されることを説明する図である。
【図16】(A)〜(C)1つのバッファーレジスターを用いて信号線方向に隣接する画像データ同士の差分を算出する仕方を説明する図である。
【図17】走査線方向に隣接する画像データ同士の差分が算出される状態を説明する図である。
【図18】走査線方向に隣接する画像データ同士の差分の算出の仕方等を説明する図である。
【図19】放射線画像撮影装置の検出部を区分する各エリア等を説明する図である。
【図20】(A)、(B)エリアR1に対応するバッファーメモリーの記憶領域を拡大して示すイメージ図であり、算出された各差分が記憶領域にそれぞれ格納される状態を表す図である。
【図21】検出部に撮影される被写体および検出部に放射線が直接到達する素抜け部を説明する図である。
【図22】検出部を区分する各エリアに圧縮、非圧縮を表す1または0が割り当てられた状態を表す図である。
【図23】画像データの出現頻度の分布の例を表すヒストグラムである。
【図24】図27とは別の撮影部位を撮影した場合の画像データの出現頻度の分布の例を表すヒストグラムである。
【図25】画像データの出現頻度の分布について想定された正規分布状の分布の例を表すヒストグラムである。
【図26】信号線方向等に隣接する画像データ同士の各差分の出現頻度の分布を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレーター等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレーター等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0029】
また、放射線画像撮影装置がいわゆる可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された固定式の、いわゆる専用機型の放射線画像撮影装置やそれを用いた放射線画像撮影システムにも、本発明が適用される。
【0030】
[放射線画像撮影装置]
以下、まず、本実施形態に係る放射線画像撮影システムに用いられる放射線画像撮影装置について説明する。図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。
【0031】
本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体状のハウジング2内にシンチレーター3や基板4等で構成されるセンサーパネルSPが収納されている。本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状のハウジング本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、ハウジング本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。
【0032】
また、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクター39、バッテリー状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケーター40等が配置されている。
【0033】
図3に示すように、本実施形態では、コネクター39には、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCが接続できるようになっている。そして、ケーブルCaと接続されることにより、例えば後述するコンソール58(図10や図11参照)との間で信号等を送受信したり、コンソール58に画像データD等を送信することができるようになっている。
【0034】
また、図示を省略するが、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に、アンテナ装置41(後述する図7参照)が例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けられている。このように、本実施形態では、コネクター39やアンテナ装置41が、放射線画像撮影装置1とコンソール58等との間で信号を送受信し、コンソール58に画像データD等を送信するための通信手段として機能するようになっている。
【0035】
図2に示すように、筐体2の内部には、基台31の上面側に図示しない鉛の薄板等を介して基板4が配置され、また、基台31の下面側には、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリー24等が取り付けられている。また、基板4やシンチレーター3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板34が配設されている。また、本実施形態では、基台31や基板4等と筐体2の側面との間に、それらがぶつかり合うことを防止するための緩衝材35が設けられている。
【0036】
シンチレーター3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレーター3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0037】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、基板4のシンチレーター3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0038】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた小領域r全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0039】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスター等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0040】
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレーター3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(本実施形態ではシンチレーター3で放射線から変換された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
【0041】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0042】
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0043】
本実施形態では、図4に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。
【0044】
そして、各入出力端子11には、図6に示すように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバー15bを構成するゲートIC15c等のチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板(Chip On Film等ともいう。)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0045】
フレキシブル回路基板12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサーパネルSPが形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0046】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0047】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
【0048】
図7や図8に示すように、本実施形態では、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極7bにバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0049】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバー15bとを備えている。
【0050】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサー21は省略されている。
【0051】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサー18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
【0052】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0053】
各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理を行う場合、図9に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)とされた状態で、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出されると、電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積される。
【0054】
増幅回路18では、コンデンサー18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっている。相関二重サンプリング回路(CDS)19は、各放射線検出素子7から電荷が流出する前に制御手段22からパルス信号Sp1(図9参照)が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。
【0055】
そして、各放射線検出素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積された後、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。そして、電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力する。
【0056】
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサー21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記憶手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
【0057】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。
【0058】
そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。
【0059】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリー24が接続されている。また、バッテリー24は、前述したコネクター39に接続されており、バッテリー24の充電の際にはコネクター39を介して図示しない充電装置から電力が供給されるようになっている。
【0060】
前述したように、制御手段22は、走査駆動手段15から各走査線5にオン電圧を順次印加させて各放射線検出素子7から画像データDを読み出させたり、読み出し回路17を制御して画像データDの読み出し動作を行われる等する。また、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり可変させたりするなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0061】
[放射線画像撮影システム]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50について説明する。図10は、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50の構成例を示す図である。図10では、放射線画像撮影システム50が撮影室Ra内等に構築されている場合が示されている。
【0062】
撮影室Raには、ブッキー装置51が設置されており、ブッキー装置51は、そのカセッテ保持部(カセッテホルダともいう。)51aに上記の放射線画像撮影装置1を装填して用いることができるようになっている。なお、図10では、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bが設置されている場合が示されているが、例えば、立位撮影用のブッキー装置51Aのみ、或いは、臥位撮影用のブッキー装置51Bのみが設けられていてもよい。
【0063】
本実施形態では、図3に示したように、放射線画像撮影装置1のコネクター39と、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCとが接続された状態で、放射線画像撮影装置1をブッキー装置51に装填することができるようになっている。なお、ブッキー装置51のカセッテ保持部51a内にコネクターCを設けておき、放射線画像撮影装置1が装填されると自動的にコネクター39とコネクターCとが接続されるように構成することも可能であり、適宜に構成される。
【0064】
図10に示すように、撮影室Raには、被写体を介してブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線源52Aが少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、放射線源52Aの位置を移動させたり、放射線の照射方向を変えることで、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bのいずれにも放射線を照射することができるようになっている。
【0065】
撮影室Raには、撮影室Ra内の各装置等や撮影室Ra外の各装置等の間の通信等を中継するための中継器(基地局等ともいう。)54が設けられている。なお、本実施形態では、中継器54には、放射線画像撮影装置1が無線方式で画像データDや信号等の送受信を行うことができるように、無線アンテナ(アクセスポイントともいう。)53が設けられている。
【0066】
また、中継器54は、放射線発生装置55やコンソール58と接続されており、中継器54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等から放射線発生装置55に送信するLAN(Local Area Network)通信用の信号等を放射線発生装置55用の信号等に変換し、また、その逆の変換も行う図示しない変換器が内蔵されている。
【0067】
前室(操作室ともいう。)Rbには、本実施形態では、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が操作して放射線発生装置55に対して放射線の照射開始等を指示するための曝射スイッチ56が設けられている。
【0068】
放射線発生装置55は、放射線源52を所定の位置に移動させたり、その放射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように図示しない絞りやコリメーター等を調整したり、或いは、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整する等の種々の制御を行うようになっている。
【0069】
図10に示すように、本実施形態では、コンピューター等で構成されたコンソール58が前室Rbに設けられている。なお、コンソール58を撮影室Raや前室Rbの外側や別室等に設けるように構成することも可能であり、コンソール58の設置場所は適宜決められる。
【0070】
また、コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部58aが設けられており、また、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段59が接続、或いは内蔵されている。
【0071】
コンソール58は、後述するように、放射線画像撮影装置1から画像データD等に関するデータ、すなわち圧縮された差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)が送信されてくると、それに基づいて元の画像データD等を復元し、復元した画像データD等に基づいて放射線画像を生成するようになっている。なお、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から送信されてきたプレビュー画像用のデータに基づいて表示部58a上にプレビュー画像を表示するように構成することも可能である。
【0072】
一方、放射線画像撮影装置1は、図11に示すように、ブッキー装置51には装填されずに、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。例えば、患者Hが病室Rc内のベッドBから起き上がれず、撮影室Raに行くことができないような場合、図11に示すように、放射線画像撮影装置1を病室Rc内に持ち込み、ベッドBと患者の身体との間に差し込んだり患者の身体にあてがったりして用いることができる。
【0073】
放射線画像撮影装置1をこのようにして用いる場合、例えば図3に示したように、放射線画像撮影装置1のコネクター39にケーブルCを接続して用いると、ケーブルCが放射線技師の作業の邪魔になる場合が多いため、本実施形態では、放射線画像撮影装置1を単独の状態で用いる場合には、コネクター39にケーブルCを接続せずに使用される。
【0074】
また、放射線画像撮影装置1を病室Rc等で用いる場合、前述した撮影室Raに据え付けられた放射線発生装置55や放射線源52Aを病室Rcに持ち込むことができないため、図11に示すように、いわゆるポータブルの放射線発生装置55が例えば回診車71に搭載される等して病室Rcに持ち込まれる。
【0075】
この場合、ポータブルの放射線発生装置55の放射線52Pは、任意の方向に放射線を照射できるように構成される。そして、ベッドBと患者の身体との間に差し込まれたり患者の身体にあてがわれたりした放射線画像撮影装置1に対して、適切な距離や方向から放射線を照射することができるようになっている。
【0076】
なお、図10に示したように、放射線画像撮影装置1を、撮影室Raの臥位撮影用のブッキー装置51B上に横臥した患者の身体と臥位撮影用のブッキー装置51Bとの間に差し込んだり、臥位撮影用のブッキー装置51B上で患者の身体にあてがったりして用いることも可能であり、その場合は、ポータブルの放射線52Pや、撮影室Raに据え付けられた放射線源52Aのいずれを用いることも可能である。
【0077】
[放射線画像撮影装置における圧縮処理等について]
次に、放射線画像撮影装置1における画像データDの圧縮処理等について説明する。
【0078】
本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、検出部P(図7等参照)上で隣接する放射線検出素子7からそれぞれ読み出された画像データD同士の差分ΔDをそれぞれ算出する算出手段や、可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報に基づいて各差分ΔDの圧縮処理を行う圧縮手段として機能するように構成されている。
【0079】
以下、画像データD同士の差分ΔDを算出して圧縮する手法について説明する。なお、上記の制御手段22とは別体として、算出手段や圧縮手段を構成することも可能である。また、本発明では、後述するように、検出部Pを予め区分した各エリアRkごとに、圧縮した差分ΔDをコンソール58に送信したり、或いは、元の画像データDをそのままコンソール58に送信したりする場合があるが、この点については後で説明する。
【0080】
以下では、例えば図12に示すように、検出部P(図4や図7参照)のn行、m列目の放射線検出素子7(n,m)から読み出された画像データDを、D(n,m)と表す。なお、この場合、nは走査線5の番号を表し、mは信号線6の番号を表す。
【0081】
本実施形態では、算出手段としての制御手段22は、記憶手段23に記憶されている各画像データD(n,m)を順番に読み出していき、図13に示すように、検出部P上で信号線方向(図中の矢印方向参照)に隣接する放射線検出素子7(n,m)の画像データD(n,m)同士、すなわち同じ信号線6に接続された隣接する放射線検出素子7から読み出された画像データD(n,m)同士の差分ΔDを算出するようになっている。
【0082】
具体的には、本実施形態では、算出手段としての制御手段22には、図14に示すようなレジスター部25が設けられている。そして、レジスター部25には、少なくとも2つのバッファーレジスター25a、25bが設けられており、また、圧縮された差分ΔD等を送信する前に一時的に格納するバッファーメモリー25cが設けられている。
【0083】
そして、制御手段22は、記憶手段23から、走査線5のラインLnに接続された各放射線検出素子7から読み出された走査線方向に並ぶ各画像データD(n,1)、D(n,2)、D(n,3)、…、を読み出してバッファーレジスター25aに一時的に蓄積させる。また、記憶手段23から、上記の走査線5のラインLnに隣接するラインLn+1に接続された各放射線検出素子7から読み出された走査線方向に並ぶ各画像データD(n+1,1)、D(n+1,2)、D(n+1,3)、を読み出してバッファーレジスター25bに一時的に蓄積させる。
【0084】
そして、制御手段22は、バッファーレジスターの25a、25bの同じ番地の画像データD同士の差分ΔDを算出するようになっている。すなわち、算出手段としての制御手段22は、
ΔD(n+1,m)=D(n+1,m)−D(n,m) …(1)
の演算を順次行うことにより、各差分ΔDを算出するようになっている。
【0085】
そして、制御手段22は、各差分ΔDを算出するごとに、後述する圧縮手段としての圧縮処理を行った後、圧縮した差分ΔDをそれぞれバッファーメモリー25cに格納していくようになっている。
【0086】
また、本実施形態では、制御手段22は、上記のようにして、各mについて上記(1)式の演算を行って各差分ΔDをそれぞれ算出し終わると、バッファーレジスター25aに蓄積されている走査線5のラインLnに接続されている各放射線検出素子7の各画像データD(n,m)をバッファーメモリー25cに格納する。
【0087】
そして、各画像データD(n+1,m)を、バッファーレジスター25bからバッファーレジスター25aの対応する番地に移し、空になったバッファーレジスター25bの各番地に、次に隣接する走査線5のラインLn+2に接続されている各放射線検出素子7の各画像データD(n+2,m)を蓄積させる。そして、上記の差分ΔDの算出処理と圧縮処理を繰り返す。
【0088】
このようにして、算出手段としての制御手段22は、信号線方向に隣接する各放射線検出素子7(n,m)、7(n+1,m)から読み出された画像データD(n,m)、D(n+1,m)同士の差分ΔD(n+1,m)を次々と算出していくようになっている。
【0089】
なお、上記のように構成する場合、走査線5のラインL1に接続された各放射線検出素子7の各画像データD(1,1)、D(1,2)、D(1,3)、…については、差分ΔD(1,1)、ΔD(1,2)、ΔD(1,3)、…を算出する相手、すなわちD(0,1)等が存在しない。
【0090】
そこで、本実施形態では、各画像データD(1,1)、D(1,2)、D(1,3)、…についての差分ΔD(1,1)、ΔD(1,2)、ΔD(1,3)、…を算出するために、予め基準データDc(1)、Dc(2)、Dc(3)、…が予めプログラム中に設定されている。
【0091】
そして、各差分ΔD(1,1)、ΔD(1,2)、ΔD(1,3)、…を算出する際には、図15に示すように、制御手段22は、まず、基準データDc(1)、Dc(2)、Dc(3)、…をバッファーレジスター25aに蓄積させ、記憶手段23から読み出した走査線5のラインL1に接続された各放射線検出素子7から読み出された走査線方向に並ぶ各画像データD(1,1)、D(1,2)、…をバッファーレジスター25bに蓄積させて、各差分ΔD(1,1)、ΔD(1,2)、…を算出するようになっている。
【0092】
その際、基準データDc(1)、Dc(2)、…の各値は、同一の値に設定されてもよく、また、互いに異なる値に設定することも可能であり、予め適宜設定される。また、本実施形態では、基準データDc(1)等は、コンソール58にも同じ値の各基準データDc(1)等が予め備えられているため、コンソール58に送信する必要はない。そのため、基準データDc(1)等はバッファーメモリー25cには送信されないようになっている。
【0093】
また、レジスター部25にバッファーレジスター25aが1つしか設けられていない場合でも、上記と同様の信号線方向に隣接する放射線検出素子7の画像データD同士の差分ΔDを算出するように構成することが可能である。
【0094】
すなわち、図16(A)に示すように、走査線5のあるラインLnに接続された各放射線検出素子7(n,m)の各画像データD(n,m)がバッファーレジスター25aに蓄積されている場合、制御手段22は、隣接する走査線5のラインLn+1の走査線方向に並ぶ各画像データD(n+1,1)、D(n+1,2)、D(n+1,3)、…を記憶手段23から順次読み出してくる。
【0095】
そして、各画像データD(n+1,1)、D(n+1,2)、D(n+1,3)、…を、それぞれ対応する各画像データD(n,1)、D(n,2)、D(n,3)、…と順次置換しながらバッファーレジスター25aに蓄積する。そして、その際、図16(A)〜(C)に示すように、対応する画像データD同士の差分データΔDを算出し、バッファーレジスター25a内の画像データD(n,m)をバッファーメモリー25cに送信しながら置換していくように構成する。
【0096】
このように構成すれば、バッファーレジスター25aが1つしかない場合でも、図14や図15に示した場合と同様にして、信号線方向に隣接する放射線検出素子7の画像データD同士の差分ΔDを算出することが可能となる。
【0097】
一方、本実施形態では、上記のように、検出部P上で信号線方向に隣接する放射線検出素子7の画像データD同士の差分ΔDを算出する場合について説明したが、例えば図17に示すように、検出部P上で走査線方向(図中の矢印方向参照)に隣接する放射線検出素子7の画像データD同士の差分ΔDを算出するように構成することも可能である。
【0098】
この場合は、たとえば図18に示すように、レジスター部25に備えられるバッファーレジスター25aは、少なくとも1つの画像データDを蓄積することができるバッファーレジスターであればよい。
【0099】
そして、この場合、算出手段としての制御手段22は、図18に示すように、バッファーレジスター25aに蓄積されている画像データD(n,m)が読み出された放射線検出素子7(n,m)の走査線方向に隣接する放射線検出素子7(n,m+1)の画像データD(n,m+1)を記憶手段23から読み出し、バッファーレジスター25aに蓄積されている画像データD(n,m)を画像データD(n,m+1)に置換する。
【0100】
その際、画像データD(n,m)、D(n,m+1)同士の差分データΔD(n,m+1)を算出する。また、バッファーレジスター25a内の画像データD(n,m)をバッファーメモリー25cに送信する。この処理を順次繰り返していくことで、走査線方向に隣接する放射線検出素子7の画像データD同士の差分ΔDを算出することができる。
【0101】
なお、この場合も、最初の放射線検出素子7の画像データD(n,1)については、差分ΔD(n,1)を算出するためのD(n,0)が存在しないため、やはり予め基準データDc(n)を予めプログラム中に設定しておく等の処理が行われる。
【0102】
次に、圧縮手段としての制御手段22による差分ΔDの圧縮処理について説明する。
【0103】
本実施形態では、圧縮手段としての制御手段22は、前述したように、上記のようにして算出された各差分ΔDを可逆圧縮するようになっている。そして、本実施形態では、可逆圧縮の方法として、ハフマンコードHcのテーブルを用いたハフマン符号化が採用されているが、LZ78や算術符号化等の方法を用いることも可能である。
【0104】
なお、本実施形態では、このようにハフマン符号化を用いて可逆圧縮を行うため、ハフマンコードHcのテーブルが可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報に相当することになるが、他の圧縮方法を採用する場合には、それぞれの圧縮方法に適合する可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報が用いられる。
【0105】
一方、前述したように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1で放射線画像を医用画像として撮影する場合、上記のようにして算出された各差分ΔDの出現頻度Fの分布は、図26に示したようにΔD=0を中心とした比較的狭い範囲の正規分布状の分布になることが分かっている。
【0106】
そこで、本実施形態では、例えば図26に示した正規分布状の分布に基づいて、予めハフマンコードHcのテーブルを作成しておくようになっている。そして、このハフマンコードHcのテーブルは、ROM等に格納されたプログラム中に書き込まれており、圧縮手段としての制御手段22は、放射線画像撮影装置1の電源がオンされた段階で、プログラム中からハフマンコードHcのテーブルを読み出してメモリーに保存するようになっている。なお、ハフマンコードHcのテーブルを予めメモリー中に保存しておくように構成することも可能である。
【0107】
圧縮手段としての制御手段22は、上記のようにして算出手段(すなわち本実施形態では制御手段22)が図14〜図18に示したようにして画像データDの差分ΔDを算出するごとに、ハフマンコードHcのテーブルに基づいて、算出された差分ΔDを圧縮する、すなわちハフマンコード化するようになっている。
【0108】
そして、制御手段22は、差分ΔDを圧縮するごとに、圧縮された差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)をそれぞれレジスター部25のバッファーメモリー25c(図14参照)に格納していくようになっている。
【0109】
[各エリアごとの判定処理等について]
次に、圧縮手段としての制御手段22における検出部Pの各エリアRkごとの判定処理について説明する。また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50の作用についてもあわせて説明する。
【0110】
本実施形態では、図19に示すように、放射線画像撮影装置1の検出部P(図4や図7参照)が、予め、所定個数の放射線検出素子7が属する各エリアRkに区分されている。
【0111】
なお、図19では、検出部Pが7×8=56個の各エリアR1〜R56に区分されている場合が示されているが、検出部Pを区分する各エリアRkの個数はこれに限定されない。また、以下の説明においては、図19に示すように、各エリアRkにそれぞれN×M個の各放射線検出素子7が属しているものとする。
【0112】
圧縮手段としての制御手段22は、上記のようにして各差分ΔDを算出して圧縮し、圧縮した各差分ΔD(すなわち各ハフマンコードHc)をそれぞれレジスター部25のバッファーメモリー25c(図14参照)に格納していくごとに、各エリアRkごとに、当該エリアRkに属する各放射線検出素子7に関する圧縮後の各差分ΔD(すなわち各ハフマンコードHc)のデータサイズ(すなわちbit数)を加算していくようになっている。
【0113】
具体的には、例えば図19に示したエリアR1に対応するバッファーメモリー25cの記憶領域R1*を拡大した図20(A)のイメージ図に示すように、制御手段22は、上記のようにして例えば差分ΔD(1,1)を算出、圧縮してバッファーメモリー25cの記憶領域R1*に格納すると、圧縮した差分ΔD(1,1)(すなわち差分ΔD(1,1)に対応するハフマンコードHc)のデータサイズを加算する。すなわち、この場合はそのデータサイズを記憶する。
【0114】
続いて、図20(B)のイメージ図に示すように、差分ΔD(1,2)を算出、圧縮してバッファーメモリー25cの記憶領域R1*に格納すると、圧縮した差分ΔD(1,2)(すなわち差分ΔD(1,2)に対応するハフマンコードHc)のデータサイズを、既に記憶されている圧縮した差分ΔD(1,1)のデータサイズに加算する。
【0115】
制御手段22は、このようにして、エリアR1に属する各放射線検出素子7に関する各差分ΔDを算出、圧縮してバッファーメモリー25cの記憶領域R1*に格納するごとに、圧縮した各差分ΔDのデータサイズを加算していく。そして、エリアR1に属するN×M個の各放射線検出素子7について圧縮した各差分ΔDのデータサイズを加算し終わると、その総和を、エリアR1に属する各放射線検出素子7に関する圧縮後の各差分ΔDのデータサイズの総和Σ1として記憶する。
【0116】
圧縮手段としての制御手段22は、この総和Σkの算出処理を各エリアRkごとに行い、算出した各総和Σkを各エリアRkごとに記憶するようになっている。なお、この各エリアRkごとの総和Σkの算出処理を、全ての差分ΔDがバッファーメモリー25cに格納された後に行うように構成することも可能である。
【0117】
上記のようにして、検出部Pの各エリアRkごとに圧縮された各差分ΔD(すなわち各ハフマンコードHc)のデータサイズの総和Σkを算出すると、エリア中の圧縮された各差分ΔDの出現頻度Fが図26に示したようにΔD=0を中心とした比較的狭い範囲の正規分布状の分布になる場合には、短いハフマンコードHc(すなわちbit数が小さなハフマンコードHc)が割り当てられる差分ΔDの割合が多くなり、圧縮後の各差分ΔDのデータサイズ(すなわちbit数)の総和Σkが小さくなる。
【0118】
しかし、例えば、図21に示すように、照射された放射線が被写体Hを透過せずに検出部Pに直接到達した各放射線検出素子7(本実施形態では放射線が被写体Hを透過せずにシンチレーター3に到達し、直接到達した放射線から変換された電磁波が照射された各放射線検出素子7)の部分A、すなわちいわゆる素抜け部Aでは、画像データD同士の差分ΔDが比較的大きくばらつくことが分かっている。
【0119】
また、図示を省略するが、素抜け部A以外の、被写体Hが撮影されている部分においても、撮影条件によっては、画像データD同士の差分ΔDが比較的大きくばらつく場合がある。
【0120】
そして、このように差分ΔDが比較的大きくばらつくと、ΔD=0から正方向または負方向に比較的大きくはずれた差分ΔDの割合が多くなる。そして、そのような差分ΔDに対して、図26に示したような分布に基づいて作成されたハフマンコードHcのテーブルを適用すると、長いハフマンコードHcが割り当てられる差分ΔDの割合が多くなる。そのため、当該エリアRkの圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)のデータサイズの総和Σkが比較的大きくなる場合がある。
【0121】
そして、当該エリアRkに関しては、圧縮された各差分ΔDの総和Σkのデータサイズよりも、当該エリアRkに属する各放射線検出素子7から読み出された元の画像データD自体のデータサイズの合計σkの方が小さくなる場合がある。
【0122】
そのような場合、当該エリアRkについては、圧縮された各差分ΔDをコンソール58に送信するよりも、当該エリアRkに属する各放射線検出素子7から読み出された元の各画像データDをそのまま送信する方が圧縮率が高くなり、送信時間が短くなる。そのため、本実施形態のように放射線画像撮影装置1がバッテリー24を内蔵する場合、バッテリー24の消耗の度合をより低減させることが可能となる。
【0123】
そこで、本実施形態では、圧縮手段としての制御手段22は、上記のようにして検出部Pの各エリアRkに属する各放射線検出素子7に関する圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)のデータサイズの総和Σkを算出すると、各エリアRkごとに、算出した総和Σkが、当該エリアRkに属する各放射線検出素子7の画像データDのデータサイズの合計σkより小さいか否かを判定するようになっている。
【0124】
その際、放射線画像撮影装置1が例えば16bitの階調で画像データDを撮影する場合すなわち例えば各画像データDが0〜65535(=216−1)のデータ値を取り得るように構成されている場合には、画像データDのデータサイズは16(すなわち16bit)になる。
【0125】
このように、放射線画像撮影装置1では、通常、画像データDの階調数(すなわちbit数)が決まっており、データサイズが各画像データDで一定になるように構成されている。そのため、あるエリアRkに属する各画像データDのデータサイズの合計σkは、予め、個々の画像データDの階調数と、当該エリアRkに属する放射線検出素子7の数(すなわち上記の場合はN×M個)との積として算出しておくことができる。すなわち、上記の場合には、合計σkは16×N×Mになる。
【0126】
そこで、本実施形態では、予めプログラム中に書き込まれた上記の積すなわち上記の合計σkを読み出す等して、圧縮手段としての制御手段22が、予め上記の合計σkを有しておくように構成されている。このように構成することで、制御手段22は、上記の合計σkをわざわざ算出しなくてもよくなり、圧縮処理における処理の負担を軽減することが可能となる。
【0127】
圧縮手段としての制御手段22は、各エリアRkの圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)のデータサイズの総和Σkを算出すると、各エリアRkごとに、算出した総和Σkと上記の合計σkとを比較して、総和Σkが合計σkより小さいか否かを判定するようになっている。
【0128】
そして、制御手段22は、算出した総和Σk、すなわち当該エリアRkの圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)のデータサイズの総和Σkが、当該エリアRkに属する各画像データDのデータサイズの合計σk(すなわち例えば16×N×M)より小さい場合には、当該エリアRkに関しては、圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)をコンソール58に送信する。
【0129】
また、総和Σkが合計σk以上である場合には、当該エリアRkに関しては、当該エリアRkに属する各放射線検出素子7ごとの画像データD自体をコンソール58に送信するようになっている。
【0130】
このように構成すれば、データサイズの総和Σkや合計σkが小さい方のデータ(すなわち圧縮後の各差分ΔDである各ハフマンコードHc或いは画像データD自体)が送信されるようになり、予めデータを全て圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)の形で送信するように構成されている場合に比べて、送信するデータのデータサイズ(すなわち総bit数)をより小さくすることが可能となる。すなわち、圧縮率を向上させることが可能となる。
【0131】
そのため、データの送信時間をより短縮することが可能となり、本実施形態のように放射線画像撮影装置1がバッテリー24を内蔵する場合、バッテリー24の消耗の度合をより低減させることが可能となる。なお、上記の判定の結果、全てのエリアRkで圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)の形で送信することが選択された場合には、送信時間は、予めデータを全て圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)の形で送信するように構成されている場合と同じになる。
【0132】
なお、この場合、これらのデータの送信を受けたコンソール58側では、送信されてきたデータを見ただけでは、0と1で表されたデータが、圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)であるか、画像データD自体であるかを判別することができない。
【0133】
そこで、本実施形態では、圧縮手段としての制御手段22は、上記のようにして、各エリアRkごとに判定を行った結果を、各エリアRkごとの圧縮、非圧縮の情報としてコンソール58に送信するようになっている。
【0134】
具体的には、本実施形態では、制御手段22は、例えば図22に示すように、各エリアRkごとに、圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)を送信するエリアRk(すなわち圧縮のエリアRk)に対しては1を、また、圧縮されていない画像データD自体を送信したエリアRk(すなわち非圧縮のエリアRk)に対しては0をそれぞれ割り当てた通知データを、各エリアRkごとの圧縮、非圧縮の情報としてコンソール58に送信するようになっている。
【0135】
なお、この通知データにおける各エリアRkに対する1と0の割り当て方は、上記とは逆でもよい。すなわち、圧縮のエリアRkに対して0を、非圧縮のエリアRkに対して1を割り当ててもよい。また、図22に示した場合には、通知データの実際の形は、各エリアR1〜R56に対応して「00000000001100…」のような形になる。
【0136】
また、放射線画像撮影装置1からコンソール58に、圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)や画像データD自体を各エリアごとに送信した後、通知データを送信するように構成すると、コンソール58では、全てのデータを受信した後、通知データが送信されてきて初めて後述する画像データDの復元処理に取り掛かることになる。
【0137】
しかし、通知データを先に送信するように構成すれば、コンソール58では、受信した通知データに従って、各エリアRkのデータ(すなわち圧縮後の各差分ΔD或いは画像データD自体)が送信されてくるごとに、送信されてきたデータが圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)であれば即座に復元処理に取り掛かることが可能となる。
【0138】
そこで、本実施形態では、圧縮手段としての制御手段22は、上記のようにして各エリアRkごとに圧縮、非圧縮を表す1、0をそれぞれ割り当てて通知データを作成すると、通知データを、送信するデータの先頭に付加してコンソール58に送信するようになっている。
【0139】
ところで、上記のように構成する場合、検出部Pを複数のエリアRkに細かく区分すれば、すなわち1つのエリアRkに属する各放射線検出素子7の数が少なくなるようにして検出部Pを細かく区分すれば、上記の圧縮、非圧縮の判定をきめ細かく行うことが可能となり、圧縮率をより向上させることができるように思われる。
【0140】
しかし、検出部Pを細かく区分すると、その分、エリアRkの数が増大する。そのため、各エリアRkごとに圧縮、非圧縮を表す1、0をそれぞれ割り当てた上記の通知データ自体のデータサイズ(すなわちbit数。上記の例では各エリアR1〜R56に対応して56になる。)が大きくなる。
【0141】
そのため、検出部Pを各エリアRkで細かく区分し過ぎると、上記のように圧縮率が向上する分以上に通知データのデータサイズが大きくなり、かえってコンソール58に送信する、通知データを含む全データのデータサイズ(すなわちbit数)が大きくなってしまう場合がある。
【0142】
そのため、検出部Pをどの程度の大きさの何個のエリアRkで区分するかは、検出部Pを各エリアRkで区分することによる圧縮率の向上分(すなわち送信するデータのデータサイズの減少分)や、通知データのデータサイズに増加分等を加味して、予め適宜決められる。
【0143】
なお、放射線画像撮影装置1では、放射線画像撮影の前や後に、オフセットデータOの読み出し処理が行われる場合がある。
【0144】
放射線検出素子7から読み出される上記の画像データDには、放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した電荷に起因するデータのほかに、放射線検出素子7自体の熱(温度)による熱励起等により常時発生している、いわゆる暗電荷によるオフセット分が重畳されている。
【0145】
そのため、オフセットデータOの読み出し処理では、放射線画像撮影装置1に放射線を照射しない状態で、各放射線検出素子7内に暗電荷のみを蓄積させ、それをオフセットデータOとして読み出すようになっている。このようにして読み出されたオフセットデータOは、画像データDに重畳されている暗電荷に起因するオフセット分に相当する値になるため、画像データDからオフセットデータOを減算することで、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷のみに起因した真の画像データD*を算出することが可能となる。
【0146】
そして、オフセットデータOの読み出し処理で読み出されたオフセットデータOについても、上記と同様にして、検出部Pの各エリアRkごとに、圧縮、非圧縮を判定してコンソール58に送信するように構成することが可能である。
【0147】
また、オフセットデータOは、通常、画像データDと比較して格段に小さな値になり、それらの差分ΔOを算出すると、各差分ΔOは0に近い値をとる場合が多い。そのため、オフセットデータOについては、検出部Pの各エリアRkに関係なく、全て差分ΔOをハフマン符号化する等して可逆圧縮してコンソール58に送信するように構成することも可能である。
【0148】
[コンソールでの処理について]
次に、上記のようにして放射線画像撮影装置1から送信されてくるデータに対するコンソール58での処理について説明する。
【0149】
なお、本実施形態では、コンソール58は、予め、放射線画像撮影装置1の圧縮手段としての制御手段22が用いたものと同じハフマンコードHcのテーブル(すなわち可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報)を有している。また、算出手段としての制御手段22が各差分ΔDを算出する際に用いたものと同じ基準データDc(1)、Dc(2)、…の情報も有している。
【0150】
さらに、コンソール58は、放射線画像撮影装置1の検出部Pがどのように各エリアRk(図19等参照)に区分されているか、すなわちエリアRkごとの信号線方向の画素数Nや走査線方向の画素数Mの情報や、各エリアRkの検出部Pにおける配列の順番等の情報を予め有している。
【0151】
本実施形態では、コンソール58は、上記のようにして、放射線画像撮影装置1から、通知データ(すなわち各エリアRkごとの圧縮、非圧縮を表す1、0の情報)が送信されてくると、各エリアRkごとに割り当てられた1または0の情報に基づいて、各エリアRkが圧縮のエリアRkであるか非圧縮のエリアRkであるかを判断するようになっている。
【0152】
そして、非圧縮のエリアRk(すなわち通知データにおける圧縮、非圧縮の情報として0が割り当てられているエリアRk。図22参照)については、放射線画像撮影装置1から当該エリアRkに属する各放射線検出素子7の画像データD自体が送信されてくる。そのため、コンソール58は、当該エリアRkに関しては、送信されてきた画像データDをそのまま元の画像データDとして用いるようになっている。
【0153】
そのため、非圧縮のエリアRkについては、コンソール58は、送信されてきた画像データDをそのまま、一旦、記憶手段59(図10参照。図11では図示省略。)に保存する。
【0154】
また、圧縮のエリアRk(すなわち通知データにおける圧縮、非圧縮の情報として1が割り当てられているエリアRk。図22参照)については、放射線画像撮影装置1から当該エリアRkに属する各放射線検出素子7に関する圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)が送信されてくる。
【0155】
そのため、コンソール58は、当該エリアRkに関しては、送信されてきた圧縮後の各差分ΔDを伸長する等して、当該エリアRkに属する各放射線検出素子7の元の画像データDを復元するようになっている。
【0156】
具体的には、圧縮のエリアRkについて圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)が送信されてくると、コンソール58は、放射線画像撮影装置1で用いられたハフマンコードHcのテーブルと同じテーブル(すなわち可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報)に基づいて、圧縮後の各差分ΔDである各ハフマンコードHcを伸長して、元の各差分ΔDを復元する。
【0157】
そして、上記(1)式の逆演算により、既に復元している元の画像データD(n,m)と伸長して復元した差分ΔD(n+1,m)とを加算し、すなわち、
D(n+1,m)=D(n,m)+ΔD(n+1,m) …(2)
の演算を行って、元の画像データD(n+1,m)を復元していくようにして、各画像データDを復元するようになっている。
【0158】
なお、放射線画像撮影装置1の走査線5のラインL1に接続されている各放射線検出素子7の画像データD(1,m)については、下記(3)式のように前述した基準データDc(m)に、伸長して復元した差分ΔD(1,m)が加算されて、元の画像データD(1,m)が復元される。
D(1,m)=Dc(m)+ΔD(1,m) …(3)
【0159】
また、上記(2)、(3)式による元の画像データDの復元の仕方は、放射線画像撮影装置1で図13に示したように信号線方向に差分ΔDを算出した場合の復元の仕方である。説明を省略するが、放射線画像撮影装置1で図17に示したように走査線方向に差分ΔDを算出した場合は、それに適合する復元の仕方で元の画像データDが復元される。
【0160】
さらに、放射線画像撮影装置1からオフセットデータOに関する圧縮された各差分ΔO(すなわちハフマンコードHc)が送信される場合には、圧縮された各差分ΔOについても同様に伸長処理や復元処理を行って、各放射線検出素子7ごとの元のオフセットデータOを復元するように構成される。
【0161】
コンソール58は、上記のようにして元の各画像データDを復元すると、画像データD自体の形で送信されてきた画像データDも含め、全ての画像データDに対して、オフセット補正やゲイン補正処理、対数変換処理、正規化処理、階調処理等の所定の画像処理を施して、最終的な放射線画像を生成するようになっている。
【0162】
そして、本実施形態では、コンソール58は、生成した放射線画像を表示部58a上に表示するようになっている。
【0163】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1および放射線画像撮影システム50によれば、放射線画像撮影装置1の検出部P上の全ての放射線検出素子7から読み出された画像データDについて差分ΔDを算出して圧縮してコンソール58に送信するのではなく、検出部Pを区分する各エリアRkについて、圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)と元の各画像データDのうち、データサイズ(すなわちbit数)の総和Σkや合計σkが小さい方のデータをコンソール58に送信する。
【0164】
そのため、各エリアRkごとにデータサイズの総和Σkや合計σkが小さい方のデータ(すなわち圧縮後の各差分ΔDである各ハフマンコードHc或いは画像データD自体)が送信されるようになり、予めデータを全て圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)の形で送信するように構成されている場合に比べて、送信するデータのデータサイズ(すなわち総bit数)をより小さくすることが可能となる。
【0165】
そのため、圧縮率を向上させることが可能となり、データの送信時間をより短縮することが可能となる。そして、本実施形態のように放射線画像撮影装置1がバッテリー24を内蔵する場合、バッテリー24の消耗の度合をより低減させることが可能となる。
【0166】
なお、放射線画像撮影装置1からコンソール58に対して全ての画像データD(圧縮後の各差分ΔDすなわちハフマンコードHcである場合を含む。)を送信する前に、放射線画像撮影装置1側で、画像データDの中から所定の割合でデータを間引いて間引きデータDtを作成し、間引きデータDtをプレビュー画像用のデータとしてコンソール58に送信する場合がある。
【0167】
そして、コンソール58は、この間引きデータDtに基づいてプレビュー画像を表示部58a上に表示し、放射線技師が表示されたプレビュー画像を見て、画像中に被写体が的確に撮影されているか否かを判定し、再撮影の要否を判断するように構成される場合がある。
【0168】
このように、間引きデータDtをプレビュー画像用のデータとしてコンソール58に送信する際にも、上記のように、放射線画像撮影装置1で、検出部Pの各エリアRkごとに圧縮、非圧縮の判定を行って、各エリアRkごとに圧縮後の各差分ΔDt(すなわちハフマンコードHc)や元の間引きデータDt自体をコンソール58に送信するように構成することが可能である。
【0169】
また、上記の実施形態では、図14や図16、図18に示したように、差分ΔDを算出するために記憶手段23から読み出してバッファーレジスター25a等に蓄積した画像データDを、バッファーメモリー25cに送信して一時的に格納するように構成する場合について説明した。
【0170】
このように構成すると、あるエリアRkについて画像データD自体を圧縮せずにコンソール58に送信する場合に、バッファーメモリー25cに格納されている画像データDを送信すればよく、画像データDを改めて記憶手段23から読み出す必要がなくなるといったメリットがある。
【0171】
すなわち、下記のように画像データD自体を圧縮せずに送信する際に画像データDを記憶手段23から改めて読み出す場合には、画像データDを、記憶手段23から、差分ΔD等の算出処理のためと送信のための少なくとも2回読み出すことが必要になるが、上記のように構成すれば、記憶手段23から読み出された画像データDをそのままバッファーメモリー25cに送信するため、記憶手段23からの画像データDの読み出し処理が1回で済むといったメリットがある。
【0172】
しかし、この場合、バッファーメモリー25cには、全ての画像データDが格納され、さらに全ての差分ΔDも格納される。そのため、バッファーメモリー25cとして、記憶容量が比較的大きなメモリーを用いることが必要となる。
【0173】
そのため、上記のように記憶手段23から読み出してバッファーレジスター25a等に蓄積した画像データDをバッファーメモリー25cに送信するようには構成せず、例えば、上記のようにして圧縮手段としての制御手段22があるエリアRkを非圧縮のエリアRkと判定した時点で、当該非圧縮のエリアRkに属する画像データDを記憶手段23から読み出してバッファーメモリー25cに送信するように構成することも可能である。
【0174】
このように構成すれば、バッファーメモリー25cとして、記憶容量が比較的小さなメモリーを用いることが可能となるといったメリットがある。
【0175】
また、あるエリアRkについて圧縮後の各差分ΔD(すなわちハフマンコードHc)がバッファーメモリー25cに蓄積された段階で、当該エリアRkについて上記の判定を行い、圧縮後の各差分ΔDや元の画像データDのいずれかを送信し、送信するとすぐにバッファーメモリー25cから当該エリアRkの圧縮後の各差分ΔDを削除するように構成することも可能である。
【0176】
このようにして、送信済みの不要となったデータをバッファーメモリー25cから次々と削除していくように構成すれば、バッファーメモリー25cとして、記憶容量がさらに小さなメモリーを用いることが可能となるといったメリットがある。
【0177】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨から逸脱しない限り、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0178】
1 放射線画像撮影装置
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
17 読み出し回路
22 制御手段(算出手段、圧縮手段)
39 コネクター(通信手段)
41 アンテナ装置(通信手段)
50 放射線画像撮影システム
58 コンソール
D 画像データ
Hc ハフマンコード(圧縮後の差分)
N×M 1つのエリアに属する放射線検出素子の数
P 検出部
r 小領域
Rk エリア
ΔD 画像データ同士の差分
Σk 圧縮後の各差分のデータサイズの総和
σk 画像データのデータサイズの合計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置にデータを送信する通信手段と、
前記検出部上で隣接する前記放射線検出素子からそれぞれ読み出された前記画像データ同士の差分をそれぞれ算出する算出手段と、
可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報に基づいて、前記各差分の可逆圧縮処理を行う圧縮手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記画像データに基づいて放射線画像を生成するコンソールと、
を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記圧縮手段は、
前記検出部を予め区分した各エリアごとに、当該エリアに属する前記各放射線検出素子に関する前記圧縮後の各差分のデータサイズの総和が、当該エリアに属する前記各放射線検出素子の前記画像データのデータサイズの合計より小さいか否かを判定し、
前記総和が前記合計より小さい場合には、当該エリアに関しては、前記圧縮後の各差分を前記コンソールに送信し、
前記総和が前記合計以上である場合には、当該エリアに関しては、前記各放射線検出素子ごとの前記画像データ自体を前記コンソールに送信し、
あわせて前記各エリアごとの圧縮、非圧縮の情報を前記コンソールに送信し、
前記コンソールは、前記各エリアごとの圧縮、非圧縮の情報に基づいて、
非圧縮の前記エリアについては、送信されてきた前記各放射線検出素子ごとの前記画像データを用い、
圧縮の前記エリアについては、前記放射線画像撮影装置の前記圧縮手段が用いたものと同じ前記可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報に基づいて前記圧縮後の各差分を元の前記各差分に伸長し、伸長した前記各差分に基づいて前記各放射線検出素子ごとの元の前記画像データを復元し、
前記各画像データに基づいて放射線画像を生成することを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項2】
前記放射線画像撮影装置の前記圧縮手段は、前記各エリアごとに、前記圧縮後の各差分を送信した前記エリアに対して1または0、前記圧縮されていない画像データを送信した前記エリアに対しては0または1をそれぞれ割り当てた通知データを、前記各エリアごとの圧縮、非圧縮の情報として前記コンソールに送信し、
前記コンソールは、前記通知データにおいて前記各エリアごとに割り当てられた1または0の情報に基づいて当該エリアが圧縮の前記エリアであるか非圧縮の前記エリアであるかを判断することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記放射線画像撮影装置の前記圧縮手段は、前記各エリアごとの圧縮、非圧縮の情報を、送信するデータの先頭に付加して前記コンソールに送信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記エリアに属する前記各放射線検出素子の前記画像データのデータサイズの合計は、前記画像データの階調数と、1つの前記エリアに属する前記放射線検出素子の数との積として予め算出されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置にデータを送信する通信手段と、
前記検出部上で隣接する前記放射線検出素子からそれぞれ読み出された前記画像データ同士の差分をそれぞれ算出する算出手段と、
可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報に基づいて、前記各差分の可逆圧縮処理を行う圧縮手段と、
を備え、
前記圧縮手段は、
前記検出部を予め区分した各エリアごとに、当該エリアに属する前記各放射線検出素子に関する前記圧縮後の各差分のデータサイズの総和が、当該エリアに属する前記各放射線検出素子の前記画像データのデータサイズの合計より小さいか否かを判定し、
前記総和が前記合計より小さい場合には、当該エリアに関しては、前記圧縮後の各差分をコンソールに送信し、
前記総和が前記合計以上である場合には、当該エリアに関しては、前記各放射線検出素子ごとの前記画像データ自体を前記コンソールに送信し、
あわせて前記各エリアごとの圧縮、非圧縮の情報を前記コンソールに送信することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置にデータを送信する通信手段と、
前記検出部上で隣接する前記放射線検出素子からそれぞれ読み出された前記画像データ同士の差分をそれぞれ算出する算出手段と、
可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報に基づいて、前記各差分の可逆圧縮処理を行う圧縮手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記画像データに基づいて放射線画像を生成するコンソールと、
を備え、
前記放射線画像撮影装置の前記圧縮手段は、
前記検出部を予め区分した各エリアごとに、当該エリアに属する前記各放射線検出素子に関する前記圧縮後の各差分のデータサイズの総和が、当該エリアに属する前記各放射線検出素子の前記画像データのデータサイズの合計より小さいか否かを判定し、
前記総和が前記合計より小さい場合には、当該エリアに関しては、前記圧縮後の各差分を前記コンソールに送信し、
前記総和が前記合計以上である場合には、当該エリアに関しては、前記各放射線検出素子ごとの前記画像データ自体を前記コンソールに送信し、
あわせて前記各エリアごとの圧縮、非圧縮の情報を前記コンソールに送信し、
前記コンソールは、前記各エリアごとの圧縮、非圧縮の情報に基づいて、
非圧縮の前記エリアについては、送信されてきた前記各放射線検出素子ごとの前記画像データを用い、
圧縮の前記エリアについては、前記放射線画像撮影装置の前記圧縮手段が用いたものと同じ前記可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報に基づいて前記圧縮後の各差分を元の前記各差分に伸長し、伸長した前記各差分に基づいて前記各放射線検出素子ごとの元の前記画像データを復元し、
前記各画像データに基づいて放射線画像を生成することを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項2】
前記放射線画像撮影装置の前記圧縮手段は、前記各エリアごとに、前記圧縮後の各差分を送信した前記エリアに対して1または0、前記圧縮されていない画像データを送信した前記エリアに対しては0または1をそれぞれ割り当てた通知データを、前記各エリアごとの圧縮、非圧縮の情報として前記コンソールに送信し、
前記コンソールは、前記通知データにおいて前記各エリアごとに割り当てられた1または0の情報に基づいて当該エリアが圧縮の前記エリアであるか非圧縮の前記エリアであるかを判断することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記放射線画像撮影装置の前記圧縮手段は、前記各エリアごとの圧縮、非圧縮の情報を、送信するデータの先頭に付加して前記コンソールに送信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記エリアに属する前記各放射線検出素子の前記画像データのデータサイズの合計は、前記画像データの階調数と、1つの前記エリアに属する前記放射線検出素子の数との積として予め算出されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置にデータを送信する通信手段と、
前記検出部上で隣接する前記放射線検出素子からそれぞれ読み出された前記画像データ同士の差分をそれぞれ算出する算出手段と、
可逆圧縮処理を行うためのデータ圧縮処理に関する情報に基づいて、前記各差分の可逆圧縮処理を行う圧縮手段と、
を備え、
前記圧縮手段は、
前記検出部を予め区分した各エリアごとに、当該エリアに属する前記各放射線検出素子に関する前記圧縮後の各差分のデータサイズの総和が、当該エリアに属する前記各放射線検出素子の前記画像データのデータサイズの合計より小さいか否かを判定し、
前記総和が前記合計より小さい場合には、当該エリアに関しては、前記圧縮後の各差分をコンソールに送信し、
前記総和が前記合計以上である場合には、当該エリアに関しては、前記各放射線検出素子ごとの前記画像データ自体を前記コンソールに送信し、
あわせて前記各エリアごとの圧縮、非圧縮の情報を前記コンソールに送信することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2013−9907(P2013−9907A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145801(P2011−145801)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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