説明

放射線画像撮影装置及びその駆動方法

【課題】被写体の内部情報をより多く含む、観察に適したX線画像の取得を実現できるようにする。
【解決手段】X線発生部101から被写体1000にX線を照射して、被写体1000を透過した透過X線101bに基づくX線画像Aの撮像を行うX線センサ部102と、X線画像Aの各画素値に係るヒストグラムを算出するヒストグラム算出部103と、ヒストグラムの分布が平坦となるように、X線発生部101から照射する照射X線101aのX線照射条件を決定するX線照射条件決定部104を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線発生部から被写体に放射線を照射して、前記被写体を透過した放射線に基づく放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影装置及びその駆動方法に関するものである。なお、本明細書においては、放射線としてX線を適用した例を示すが、本発明においては、このX線に限定されずに、例えば、α線、β線、γ線などの他の放射線も含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線の一種であるX線を用いて被写体の撮影を行い、X線画像を取得するX線画像撮影装置が、医療分野を中心に広く普及している。この際、X線画像撮影装置は、X線発生部から被写体にX線を照射し、被写体を透過したX線に基づいてX線画像を取得するものであり、被写体の内部の状態を観察することが可能となっている。なお、X線画像撮影装置は、X線透視装置とも称される。また、被写体が人体の場合には、一般的に、観察という用語は使わずに、診断とか検査という用語を使うことが多い。
【0003】
また、X線画像撮影装置では、被写体を透過したX線をX線センサ部で検知することにより、X線画像を取得する。ここで、X線センサ部は、X線を検知すると、当該X線をそのX線強度に応じた電気信号へ変換してX線画像を取得するデバイスである。このX線センサ部の一例としては、イメージインテンシファイアやFPD(Flat Panel Detector)等が挙げられる。
【0004】
また、X線発生部から照射するX線は、被写体を被曝させてしまうため、被写体への照射X線量が少ないほどよい。しかしながら、被写体への照射X線量が少ないと、被写体を透過するX線が少なくなり、その結果、X線センサ部で受光するX線量が少なくなって、被写体を観察するには不適当なX線画像が取得されてしまうことになる。
【0005】
このように、X線画像撮影装置では、被写体を撮影する際に、「被写体へのX線の被曝量を低減する」という目標と、「観察に適したX線画像を取得する」という目標をいかにしてバランスよく折り合いをつけるかということが重要である。
【0006】
そのため、X線画像撮影装置には、X線発生部から照射するX線の最適なX線照射条件を自動的に決定するためのX線照射条件決定部が設けられている。ここで、X線照射条件としては、例えば、X線発生部における管電圧や管電流、或いはX線の照射時間等が挙げられる。具体的に、管電圧とは、X線を発生させるX線発生部のX線管に印加する電圧であり、X線スペクトルに関係する量である。また、管電流とは、X線発生部のX線管に流す電流であり、X線強度に関係する量である。また、照射時間とは、管電圧と管電流で決定されるX線を照射する時間である。
【0007】
この際、観察する被写体が毎回同じであれば、最適なX線照射条件を一度求めてしまえば、常にそのX線照射条件を使用し続けることが可能である。一方、観察する被写体が毎回異なる場合、或いは、被写体が動くものである場合には、撮影の度に、最適なX線照射条件が変化するため、その都度、X線照射条件を設定する必要がある。
【0008】
【特許文献1】特開平8−66389号公報
【特許文献2】特開2002−14059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のX線画像撮影装置では、X線照射条件決定部によるX線照射条件の決定に際して、一般的に、X線センサ部がイメージインテンシファイアであるものを想定したものである。この場合、イメージインテンシファイアは、正常動作可能領域であるダイナミックレンジが非常に狭いため、イメージインテンシファイアに入射するX線量がダイナミックレンジを超えないように、X線照射条件を決定する必要がある。
【0010】
仮に、イメージインテンシファイアに入射するX線量がダイナミックレンジを超えた場合には、「観察に適したX線画像を取得する」ことが困難になってしまう。この場合、具体的には、ハレーションを起こして、いわゆる白飛びをしてしまう。また、仮に、イメージインテンシファイアに入射するX線量がダイナミックレンジを下回る場合には、X線画像が黒つぶれして、やはり、「観察に適したX線画像を取得する」ことが困難になってしまう。
【0011】
この問題を解決する技術として、例えば、上記の特許文献1や特許文献2の技術がある。これらの技術では、まず、X線画像に関する所定値がイメージインテンシファイアの非常に狭い正常動作可能領域(ダイナミックレンジ)に収まるようにX線照射条件を決定し、その上で、X線の被曝量を低減するX線照射条件を決定するようにしている。
【0012】
このように、X線センサ部がイメージインテンシファイアである場合には、一般的に、「被写体へのX線の被曝量を低減する」ことと、「観察に適したX線画像を取得する」こととの2つをバランス良く満足させることは非常に難しい。
【0013】
しかしながら、現在、X線センサ部の主流はFPDになってきている。
このFPDは、イメージインテンシファイアと比較して、桁違いにダイナミックレンジが広いため、ある非常に狭いレンジに収まるように、X線照射条件を決定する必要性は少なくなっている。
【0014】
ここで、従来のX線画像撮影装置における概略構成について説明する。
【0015】
図18は、従来のX線画像撮影装置の概略構成の一例を示す模式図である。
従来のX線画像撮影装置1800は、図18に示すように、例えば、X線発生部1801、X線センサ部1802、X線照射条件決定部1803、及び、表示部1804を具備して構成されている。この際、X線センサ部1802は、例えばイメージインテンシファイアで形成されている。また、被写体1000は、X線発生部1801とX線センサ部1802との間に配置される。
【0016】
従来のX線画像撮影装置1800では、X線照射条件決定部1803において、上述したように、X線センサ部1802の非常に狭いダイナミックレンジを考慮し、その上で、被写体1000へのX線の被曝量を低減するX線照射条件を決定する。
【0017】
そして、X線照射条件決定部1803で決定されたX線照射条件により、X線発生部1801から被写体1000にX線(照射X線)1801aが照射される。この照射X線1801aのうち、被写体1000に吸収されずに透過した透過X線1801bがX線センサ部1802に入射する。そして、X線センサ部1802において、透過X線1801bに基づくX線画像Aが生成され、当該X線画像Aが表示部1804に出力されて表示される。
【0018】
しかしながら、この場合、X線画像Aは、X線センサ部1802の非常に狭いダイナミックレンジを満たすことを考慮した上で得られた画像であるため、被写体1000の内部情報をより多く含んだ、観察に適したX線画像であるとは必ずしも言えなかった。更に、X線照射条件の決定に際して、X線センサ部1802の非常に狭いダイナミックレンジを満たすことを第1に優先させているため、被写体へのX線の被曝量を低減することについては、あまり考慮されていなかった。
【0019】
また、図19は、従来のX線画像撮影装置の概略構成の他の一例を示す模式図である。ここで、図19において、図18に示す構成と同様の構成については、同じ符号を付しており、画像処理部1901の構成が追加されている。
【0020】
図19に示す従来のX線画像撮影装置1900では、画像処理部1901において、X線センサ部1802で生成されたX線画像Aに対して画像処理を行い、X線画像AをX線画像Bとしている。この場合、表示部1804には、画像処理が施されたX線画像Bが表示される。
【0021】
この場合、X線画像Aに画像処理を施してX線画像Bを生成しているため、図18に示す場合よりは良好なX線画像を得られるかもしれない。しかしながら、この場合においても、原画像であるX線画像AがX線センサ部1802の非常に狭いダイナミックレンジを満たすことを考慮した上で得られた画像であるため、観察に適したX線画像であるとは必ずしも言えなかった。更に、本例においても、X線照射条件の決定に際して、X線センサ部1802の非常に狭いダイナミックレンジを満たすことを第1に優先させているため、被写体へのX線の被曝量を低減することについては、あまり考慮されていなかった。
【0022】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、被写体の内部情報をより多く含む、観察に適した放射線画像の取得を実現する放射線画像撮影装置及びその駆動方法を提供することを第1の目的とする。
さらに、被写体への放射線の被曝量をより低減させることを実現する放射線画像撮影装置及びその駆動方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の放射線画像撮影装置は、放射線発生部から被写体に放射線を照射して、前記被写体を透過した放射線に基づく放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影装置であって、前記放射線画像の各画素値に係るヒストグラムを算出するヒストグラム算出部と、前記ヒストグラムの分布が平坦となるように、前記放射線発生部から照射する放射線の放射線照射条件を決定する放射線照射条件決定部とを有する。
【0024】
本発明の放射線画像撮影装置における他の態様は、放射線発生部から被写体に放射線を照射して、前記被写体を透過した放射線に基づく放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影装置であって、前記放射線画像の各画素値に係るヒストグラムを算出するヒストグラム算出部と、前記ヒストグラムから前記放射線画像の輝度に係る平均情報量を算出する平均情報量算出部と、前記平均情報量が増大するように、前記放射線発生部から照射する放射線の放射線照射条件を決定する放射線照射条件決定部とを有する。
【0025】
また、本発明の放射線画像撮影装置におけるその他の態様は、放射線発生部から被写体に放射線を照射して、前記被写体を透過した放射線に基づく放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影装置であって、前記放射線画像の各画素値に係るヒストグラムを算出するヒストグラム算出部と、前記ヒストグラムから前記放射線画像の輝度に係る平均情報量を算出する平均情報量算出部と、前記平均情報量が増大すると共に前記ヒストグラムの分布が平坦となるように、前記放射線発生部から照射する放射線の放射線照射条件を決定する放射線照射条件決定部とを有する。
【0026】
本発明の放射線画像撮影装置の駆動方法は、放射線発生部から被写体に放射線を照射して、前記被写体を透過した放射線に基づく放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影装置の駆動方法であって、前記放射線画像の各画素値に係るヒストグラムを算出するヒストグラム算出ステップと、前記ヒストグラムの分布が平坦となるように、前記放射線発生部から照射する放射線の放射線照射条件を決定する放射線照射条件決定ステップとを有する。
【0027】
本発明の放射線画像撮影装置の駆動方法における他の態様は、放射線発生部から被写体に放射線を照射して、前記被写体を透過した放射線に基づく放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影装置の駆動方法であって、前記放射線画像の各画素値に係るヒストグラムを算出するヒストグラム算出ステップと、前記ヒストグラムから前記放射線画像の輝度に係る平均情報量を算出する平均情報量算出ステップと、前記平均情報量が増大するように、前記放射線発生部から照射する放射線の放射線照射条件を決定する放射線照射条件決定ステップとを有する。
【0028】
また、本発明の放射線画像撮影装置の駆動方法におけるその他の態様は、放射線発生部から被写体に放射線を照射して、前記被写体を透過した放射線に基づく放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影装置の駆動方法であって、前記放射線画像の各画素値に係るヒストグラムを算出するヒストグラム算出ステップと、前記ヒストグラムから前記放射線画像の輝度に係る平均情報量を算出する平均情報量算出ステップと、前記平均情報量が増大すると共に前記ヒストグラムの分布が平坦となるように、前記放射線発生部から照射する放射線の放射線照射条件を決定する放射線照射条件決定ステップとを有する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、被写体の内部情報をより多く含む、観察に適した放射線画像を取得することが可能となる。
さらに、本発明の他の特徴によれば、被写体への放射線の被曝量をより低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す本発明の各実施形態では、放射線としてX線を適用したX線画像撮影装置の例を示すが、本発明においてはこれに限定されずに、例えば、α線、β線、γ線などの他の放射線に基づく放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置も適用可能である。
【0031】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0032】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の概略構成の一例を示す模式図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係るX線画像撮影装置100は、X線発生部101、X線センサ部102、ヒストグラム算出部103、X線照射条件決定部104、画像処理部105、及び、表示部106を有して構成されている。この際、X線センサ部102は、例えばFPDで形成されている。また、被写体1000は、X線発生部101とX線センサ部102との間に配置される。
【0033】
X線発生部(放射線発生部)101は、X線照射条件決定部104で決定されたX線照射条件に基づいてX線を発生させ、当該X線を被写体1000に照射する。ここで、X線発生部101から被写体1000に照射されたX線を「照射X線101a」とする。
【0034】
X線センサ部(放射線センサ部)102は、X線発生部101から照射された照射X線101aのうち、被写体1000に吸収されずに透過した透過X線101bを検知して、当該透過X線101bに基づくX線画像Aを撮像する撮像部を構成する。具体的に、X線センサ部102は、透過X線101bを検知すると、当該透過X線101bをそのX線強度に応じた電気信号へ変換してX線画像Aを生成して撮像を行う。
【0035】
ヒストグラム算出部103は、X線画像Aの各画素値に係るヒストグラムを算出する。
【0036】
X線照射条件決定部(放射線照射条件決定部)104は、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムに基づいて、X線発生部101から照射するX線のX線照射条件を決定する。具体的に、本実施形態では、X線照射条件決定部104は、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムに基づいて、当該ヒストグラムの分布の平坦度(平坦度合い)を算出する。そして、X線照射条件決定部104は、算出したヒストグラムの分布の平坦度合いに応じて、当該ヒストグラムの分布が平坦となるように、X線照射条件を決定する。ここで、X線照射条件としては、例えば、X線発生部101のX線管に供給する管電圧や管電流、或いはX線の照射時間等を適用することができる。
【0037】
画像処理部105は、X線センサ部102で生成されたX線画像Aに対して所定の画像処理を行い、画像処理後のX線画像Bを生成する。
【0038】
表示部106は、画像処理が施されたX線画像Bや、X線発生部101から照射する照射X線101aのX線照射条件に係る各種の情報等を必要に応じて表示する。具体的に、本実施形態では、X線照射条件に係る各種の情報として、例えば、X線照射条件決定部104で算出された、ヒストグラムの分布の平坦度合いに係る数値が表示部106に表示される。さらに、例えば、X線照射条件に係る各種の情報として、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムの分布を表示するようにしてもよい。
【0039】
本実施形態では、被写体1000の内部情報をより多く含む、観察に適したX線画像の取得を実現するために、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムの分布(形状)が平坦となるように、X線照射条件決定部104でX線照射条件を決定している。
【0040】
ここで、X線画像Aの各画素値に係るヒストグラムの分布が平坦になると、被写体1000の内部情報をより多く含む、観察に適したX線画像の取得が可能となる点について、以下に説明を行う。
【0041】
図2は、図1に示す被写体1000の内部構成の一例を示す模式図である。
図2に示す例では、被写体1000は、物質1〜物質7で構成されている。ここで、物質1〜物質7は、それぞれ、均一な物質であり、その面積は、(物質1=物質2)>物質3>(物質4=物質5)>(物質6=物質7)という順番になっているものとする。また、後の説明のために、物質1をX、物質2をYと呼ぶことにする。
【0042】
図3は、図1に示すヒストグラム算出部103で算出されたX線画像の各画素値に係るヒストグラムの分布の一例を示す模式図である。
【0043】
図3(a)及び(b)には、被写体1000として図2に示す異なる7つの物質1〜7を、X線照射条件を変えてX線センサ部102で撮像(撮影)したX線画像の各画素値のヒストグラムが示されている。ここでは、画素値として、X線画像の各画素の輝度に係る値を用いている。
【0044】
図2に示すXとYは、面積が同じであるため、図3(a)及び(b)に示すように、Xの度数とYの度数は同じとなる。ここで、「被写体の内部情報をより多く含む、観察に適したX線画像」とは、図2に示す被写体1000の場合には、7つの物質1〜7が弁別できることを意味する。これは、被写体1000に7つの物質1〜7が存在するのにもかかわらず、6つの物質或いは5つの物質しか弁別できない場合には、被写体1000の内部構造を見落としてしまうことになるからである。極端な場合、被写体1000に7つの物質1〜7が存在するにもかかわらず、どの物質も全く弁別できない場合には、X線画像の撮影による観察の意味は全く無く、被写体1000に対してX線をただ被曝させているだけになってしまう。
【0045】
図3(a)で示されるヒストグラム1に係るX線画像と図3(b)で示されるヒストグラム2に係るX線画像において、XとYを弁別しやすいX線画像は、図3(b)である。図2に示すように、被写体1000に存在する物質が7つであるという先験情報があれば、XとYを弁別することは、図3(a)に示すX線画像でも可能である。しかしながら、一般には、被写体1000の内部に物質がいくつ存在しているのかという先験情報は得られないため、図3(b)のように、Xの画素値とYの画素値とが離れている方が、弁別が簡単である。
【0046】
図2に示す被写体1000の場合には、異なる7つの物質1〜7が存在するとしているが、X線の吸収線量の度合いが異なる7つの対象物であれば、同じことが言える。この場合、例えば、物質1(X)と物質2(Y)とがどちらも同じ水である場合であって、その厚みが異なるというケースでもよい。また、各物質は、混合物質であってもよく、例えば、物質1が、厚み1cmの水と厚み2cmのカルシウムとの計3cmの厚みの混合物質であってもよい。
【0047】
ここで、図3(a)に示すヒストグラム1と図3(b)に示すヒストグラム2とは、ヒストグラムの分布(形状)が異なっている。具体的に、図3(b)に示すヒストグラム2は、図3(a)に示すヒストグラム1よりも、ヒストグラムの分布が平坦となっている。上述したように、図3(b)のヒストグラム2に係るX線画像の方が、図3(a)のヒストグラム1に係るX線画像よりも、被写体1000の内部の状態を弁別できるため、本実施形態ではこの点を利用して、X線照射条件を決定するようにする。即ち、X線照射条件決定部104において、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムの分布が平坦となるように、X線照射条件を決定する。
【0048】
この際、例えばX線照射条件決定部104は、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムの分布の平坦度合いを算出する。このヒストグラムの分布の平坦度合いの一例として、例えば、累積ヒストグラムの包絡線の直線度合いを算出する方法が挙げられる。
【0049】
図3(c)は、図3(a)に示すヒストグラム1の累積ヒストグラムであり、図3(d)は、図3(b)に示すヒストグラム2の累積ヒストグラムである。この図3(c)及び図3(d)において、点線が累積ヒストグラムであり、実線が累積ヒストグラムの包絡線である。この実線で示された包絡線を見て分かるように、図3(c)よりも図3(d)の方が直線に近いと言える。この直線は、(画素値,累積度数)と表記すると、(0,0)と(最大画素値,画面の画素数)を結ぶ直線のことである。
【0050】
ここで、包絡線の曲線における直線度合いとしては、例えば、包絡線の曲線と直線で囲まれる面積で求める方法がある。この例を図4に示す。
【0051】
図4は、図3(c)及び図3(d)に示す累積ヒストグラムの包絡線の直線度合いにおける算出方法の一例を示す模式図である。
図4に示す例では、累積ヒストグラムの包絡線と直線とで囲まれた、縦線で塗りつぶされた領域の面積が小さいほど、包絡線の直線度合いが大きいと判断することができる。
【0052】
この方法を用いれば、ヒストグラムの平坦度(平坦度合い)を数値的に算出することができる。その1つの指標として、例えば、以下の(1)式に示す指標を設定する。
ヒストグラムの平坦度=1/{(縦線で塗りつぶした領域の面積)+1} ・・(1)
この(1)式に示す指標は、0〜1の値であり、1に近いほどヒストグラムの平坦度が大きいということになる。
【0053】
また、ヒストグラムの分布が平坦となるように、X線照射条件を決定する方法としては、例えば、複数の管電圧で撮影して、その中でヒストグラムの分布が一番平坦となる管電圧を選択するという方法が考えられる。
【0054】
また、表示部106に表示されるX線画像Bの平均輝度が一定ではない場合、即ち平均輝度がふらつく場合、観察に適した画像ではなくなってしまう。本実施形態では、画像処理部105において、X線画像Aの平均輝度値をあらかじめ設定された一定値に補正する画像処理を行う。
【0055】
画像処理部105で行われる具体的な画像処理方法として、X線画像Aの全画素に補正値Kを加算する方法がある。例えば、X線画像Bの平均輝度値を一定値βにする補正値Kは、次式で計算される。
K=(β−α)
ここで、αはX線画像Aの平均輝度である。上記式で計算された補正値KをX線画像Aに加算することにより、X線画像Bの平均輝度値を一定値βにすることができる。
【0056】
また、他の方法として、入力画像を出力画像に変換する階調変換曲線をリアルタイムに変更する方法がある。
図20は、図1に示す画像処理部105において行われる階調変換曲線の変更の一例を示す模式図である。図20の横軸は入力画像の画素値を示し、縦軸は出力画像の画素値を示している。画像処理部105が階調変換処理のみを行う場合は、X線画像Aが入力画像となり、X線画像Bが出力画像となる。
【0057】
図20に示されるように、現時点における階調変換曲線2001を右方向へ概形を変えずに移動させると、階調変換曲線2002になる。移動後(変更後)の階調変換曲線2002を用いて階調変換を行うと、出力画像の画素には、変更前の画素値よりも小さい画素が多くなる。従って、平均輝度値も小さくなる。これは、入力画素をxとし、階調変換曲線2001をf01(x)、階調変換曲線2002をf02(x)とした場合に、f01(x)>f02(x)が成立することに起因する。同様に、階調変換曲線を左へ移動させると、平均輝度値を大きくすることができる。
【0058】
以上説明したように、階調変換曲線の移動(変更)により平均輝度値を変化させることができる。
【0059】
なお、X線画像Bの平均輝度を一定値βにする場合、まず、X線画像AからX線画像Bを生成した後に、X線画像Bの平均輝度β'を算出する。そして、βよりβ'の方が大きい場合は、階調変換曲線を右へ移動させる。また、βよりβ'の方が小さい場合は、階調変換曲線を左へ移動させる。
【0060】
以上の操作を高速で反復してリアルタイム実行することにより、X線画像Bの平均輝度をβにすることができる。ちなみに、反復実行中のごく短い時間のふらつきは知覚されにくいが、ふらつきは表示されない方が好ましい。よって、反復実行中は、前フレームのX線画像Bを表示し、現フレームのX線画像Bは平均輝度がβになるまで表示しない処理を行うようにしてもよい。
【0061】
次に、第1の実施形態に係るX線画像撮影装置100の駆動方法における処理手順について説明する。
【0062】
図5は、本発明の第1の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の駆動方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。ここで、図5に示すフローチャートは、動画像の撮影を行う場合を示している。
【0063】
まず、X線画像撮影装置100における不図示の操作部を介してユーザからX線照射指示が入力されると、ステップS101に進む。この際、操作部を介したX線照射指示の入力としては、例えば、フットペダルの押下や、曝射ボタンの押下が挙げられる。
【0064】
ステップS101に進むと、X線照射条件決定部104は、例えば自身に予め記憶されているX線照射条件の初期値を読み出して、X線照射条件を設定する。このX線照射条件の初期値としては、被写体1000の観察部位に適した値が記憶されている。例えば、被写体1000の観察部位が厚い場合にはX線の強度が大きいX線照射条件となっており、また、例えば、被写体1000の観察部位が薄い場合にはX線の強度が小さいX線照射条件となっている。本実施形態においては、このX線照射条件の初期値は、特に限定するものではない。
【0065】
続いて、ステップS102において、X線発生部101は、X線照射条件決定部104で設定されたX線照射条件に基づいて、被写体1000に対してX線を照射する。
【0066】
続いて、ステップS103において、X線センサ部102は、被写体1000を透過した透過X線101bを検知して、当該透過X線101bに基づくX線画像Aを撮像する。これにより、X線画像Aが取得される。このステップS103で取得されたX線画像Aは、ヒストグラム算出部103に出力される。
【0067】
続いて、ステップS104において、ヒストグラム算出部103は、ステップS103で取得されたX線画像Aの各画素値に係るヒストグラムを算出する。
【0068】
続いて、ステップS105において、X線照射条件決定部104は、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムに基づいて、X線発生部101から照射するX線のX線照射条件を決定する。具体的に、ステップS105では、ステップS104で算出されたヒストグラムに基づいて当該ヒストグラムの分布の平坦度合いを算出し、算出した平坦度合いに応じて、X線照射条件を決定する。
【0069】
この際、X線照射条件決定部104は、ヒストグラムの分布の平坦度合いに係る数値を、今回の撮影に係るX線照射条件と関連付けて自身の内部に記憶する。続いて、X線照射条件決定部104は、X線照射条件を変更する処理を行う。ここで、X線照射条件を変更する例としては、管電圧を少し大きくする又は少し小さくすることや、管電流を少し大きくする又は少し小さくするなどである。
【0070】
上述したように、ヒストグラムの分布の平坦化を目指すために、本例では累積ヒストグラムの包絡線の直線度合いを算出するようにしているが、この場合、以下のようにしてもよい。例えば、図3(a)、図3(b)に示すヒストグラムの偏りを計算し、画素値が小さい方に偏っている場合には、管電流を大きくする、もしくは、管電圧を大きくする、或いは、管電流と管電圧を大きくする変更を行う。また、画素値が大きい方に偏っている場合には、管電流を小さくする、もしくは、管電圧を小さくする、或いは、管電流と管電圧を小さくする変更を行う。また、画素値が偏っていない場合には、例えば被写体1000へのX線の被曝量を低減することを目的として、必ず管電圧を少し小さくする、または、必ず管電流を少し小さくするというように、変更後のX線照射条件を予め決めておいてもよい。また、乱数等で管電圧や管電流をどのように変更するのかを決めてもよい。
【0071】
続いて、ステップS106において、X線照射条件決定部104は、ステップS105で決定したX線照射条件を、X線発生部101に対して設定する。
【0072】
また、ステップS103で取得されたX線画像Aは、画像処理部105にも出力される。そして、以降のステップS107及びS108の処理が行われる。なお、ステップS107及びS108の処理は、ステップS104〜S106の処理と同時に平行して実行される。
【0073】
ステップS107に進むと、画像処理部105は、X線画像Aに対して所定の画像処理を行い、画像処理後のX線画像Bを生成する。この際、画像処理部105は、例えば、X線画像Aに対してノイズ低減処理や鮮鋭化処理を実行する。さらに、画像処理部105は、上述したように、表示部106に表示されるX線画像Bの平均輝度が一定となるように、例えば階調曲線をリアルタイムに変更することにより、X線画像Aの平均輝度を一定する画像処理を行う。
【0074】
続いて、ステップS108において、表示部106は、画像処理部105から出力されたX線画像Bを表示する。
【0075】
ステップS106、S108の処理が終了すると、再び、ステップS102に戻る。
2巡目(2フレーム目)以降の処理では、ステップS105の処理が異なる。1巡目(1フレーム目)のステップS105では、X線照射条件を所定のルールに基づき変更するものであった。2巡目(2フレーム目)以降のステップS105の処理では、X線照射条件の変更により、ヒストグラムの平坦度合いがどのように変化したのかを算出して、X線照射条件を決定する。
【0076】
具体的には、2巡目の場合、1巡目で記憶したヒストグラムの分布の平坦度と、2巡目で算出したヒストグラムの分布の平坦度とを比較して、平坦度が大きい方のX線照射条件を採用し、3巡目のX線照射条件とする。さらに、平坦度を大きくするためのX線照射条件を予測して、X線照射条件を変更するようにしてもよい。例えば、2巡目で管電圧を大きくした結果、ヒストグラムの分布の平坦度が小さくなった場合は、次の3巡目では、2巡目(或いは1巡目)における管電圧よりも小さくすれば、ヒストグラムの分布の平坦度を大きくすることができるという予測が成り立つ。このため、これをX線照射条件に反映させて変更する。なお、2巡目で上述した予測が成り立たない場合には、当該予測のX線照射条件への反映は行わず、3巡目以降で予測が成り立った時点で、X線照射条件への反映を行うようにする。X線照射条件を決定するための多くのヒストグラムの分布の平坦度のデータがあると、当該平坦度を大きくするための予測の精度は、向上することになる。
【0077】
このように、X線照射条件決定部104では、繰り返し撮影することで得られた複数のX線画像Aの各画素値に係るヒストグラムの分布の平坦度を算出することで、当該ヒストグラムの分布が平坦となるようなX線照射条件を決定することができる。
【0078】
なお、通常、X線画像撮影装置におけるX線画像の撮影サイクルは、例えば、毎秒30フレームや毎秒10フレームというように決まっている。この際、ステップS105において、X線照射条件の決定の完了時間が長い場合には、撮影サイクルを守ることができなくなってしまうため、例えば、ステップS105の完了を待たずに、ステップS106に進む場合もある。この場合、例えば、ステップS106のX線照射条件の設定では、1巡前のものと同じX線照射条件を使用する。
【0079】
また、ステップS105で算出されたヒストグラムの分布の平坦度合いに係る数値を、例えばステップS108において、表示部106に表示するようにしてもよい。この表示を行うことにより、ユーザ(観察者)は、表示部106に表示されているX線画像が、被写体1000の内部情報が最大限含まれているかどうかを判断することができる。例えば、被写体1000が動いたために最適なX線照射条件を探索し直している間は、ヒストグラムの平坦度は小さい。この場合、ユーザは、もう少し待てば、最適なX線照射条件に到達する可能性があることを、表示部106に表示されたヒストグラムの平坦度から判断することができるようになる。
【0080】
(第2実施の形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0081】
図6は、本発明の第2の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の概略構成の一例を示す模式図である。ここで、図6において、図1に示す構成と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0082】
図6に示すように、第2の実施形態のX線画像撮影装置200は、第1の実施形態のX線画像撮影装置100に対して、素抜けの画素値データテーブル201と、吸収線量算出部202と、照射X線量の等値曲線データテーブル203が追加されて構成されている。また、第2の実施形態のX線画像撮影装置200では、第1の実施形態のX線画像撮影装置100のX線照射条件決定部における処理の内容が異なるため、図6では、これをX線照射条件決定部204として示している。
【0083】
素抜けの画素値データテーブル201は、X線照射条件に関するものであって、X線発生部101とX線センサ部102との間に被写体1000が存在しない場合にX線センサ部102で撮像されたX線画像の画素値データが設定されたテーブルである。
【0084】
吸収線量算出部202は、X線発生部101とX線センサ部102との間に被写体1000が存在する場合にX線センサ部102で撮像されたX線画像と、素抜けの画素値データテーブル201とを用いて、被写体1000におけるX線の吸収線量を算出する。
【0085】
照射X線量の等値曲線データテーブル(同値曲線データテーブル)203は、X線照射条件に関するものであって、X線発生部101から照射するX線のX線量(放射線量)における複数の等値曲線データが設定された等値曲線データテーブルである。
【0086】
X線照射条件決定部204は、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムのみならず、吸収線量算出部202で算出された吸収線量、及び、照射X線量の等値曲線データテーブル203の等値曲線データを用いて、X線照射条件を決定する。
【0087】
第1の実施形態では、被写体1000の内部情報をより多く含む、観察に適したX線画像の取得を目的として、X線画像Aの各画素値に係るヒストグラムの分布が平坦となるように、X線照射条件を設定するものであった。第2の実施形態では、第1の実施形態における目的に加えて、更に、被写体1000へのX線被曝量の低減を目的としたX線照射条件の設定を行うものである。
【0088】
以下、被写体1000へのX線被曝量の低減を考慮したX線照射条件の決定方法について説明を行う。
【0089】
被写体1000の負担を軽減するためには、[1]X線の照射線量を小さくするという方法と、[2]被写体1000におけるX線の吸収線量を小さくするという方法が考えられる。
【0090】
[1]の方法は、X線発生部101から照射する照射X線101aのX線量(照射X線量)を小さくすれば、被写体1000のX線の吸収線量も小さくなるという考え方である。この場合、X線照射条件である管電圧、管電流及び照射時間を決定すれば、照射X線量が一意に定まるため、X線照射条件を制御しやすい方法である。この場合、照射X線量が決定すると、管電圧、管電流及び照射時間が決まるため、例えば、照射X線量が100マイクロレントゲン以下になるようにX線照射条件を決定するということが可能である。ただし、この場合、照射X線量を小さくすれば、必ず、被写体1000におけるX線の吸収線量も小さくなるとは限らない。
【0091】
[2]の方法は、被写体1000におけるX線の吸収線量を算出する必要があるが、[1]の方法と比較して、被写体1000におけるX線の吸収線量を小さくすることが確実に行える。ただし、被写体1000におけるX線の吸収線量を確実に算出することは、簡単ではなく、また、その精度を向上させることは難しい。
【0092】
そこで、本実施形態では、[1]の方法と、[2]の方法を単独で、もしくは、組み合わせて使用することにより、被写体1000におけるX線の吸収線量を小さくすることを実現する。
【0093】
まず、[1]の方法を実現するための実施例を以下に説明する。
【0094】
図7は、図6に示す照射X線量の等値曲線データテーブル203を説明するための模式図である。この図7に示すデータは、例えば、キャリブレーション時に予め作成される。
【0095】
ここで、図7(a)は、X線照射条件である管電圧と管電流を変化させたときに、照射X線量を測定したデータ(「照射X線量マップ」と呼ぶ)である。図7(a)に示す照射X線量マップにおいて、水平方向の点線と垂直方法の点線が交差する点は、照射X線量を測定したデータである。この照射X線量の測定は、例えば、X線照射時間が一定値という条件、もしくは、X線照射時間と管電流の積が一定値という条件で測定する。
【0096】
図7(b)は、図7(a)に示す照射X線量マップにおいて、照射X線量が等しい点を結んで、照射X線量の等値曲線群を示したものである。図7(b)が、図6に示す照射X線量の等値曲線データテーブル203に相当するものである。
【0097】
図8は、図6に示す照射X線量の等値曲線データテーブル203の一例を示す模式図である。
図7(b)に示す照射X線量の等値曲線データテーブル203は、具体的に、例えば、図8(a)のようになる。図8(a)には、照射X線量が小さい順に、10マイクロレントゲン、20マイクロレントゲン、30マイクロレントゲン、40マイクロレントゲン、50マイクロレントゲンという照射X線量の等値曲線データが示されている。
【0098】
そして、図8(b)に示すように、30マイクロレントゲンを指定すれば、30マイクロレントゲンを実現する管電圧と管電流との組み合わせが取得できるようになっている。ここで、管電圧と管電流との組み合わせは、例えば、(X1,Y1)や(X2,Y2)である。
【0099】
この際、管電圧と管電流の組み合わせは、多数存在するため、X線照射条件の範囲を絞ることが肝要である。このように、X線照射条件の範囲を絞ることで、必要な撮影時間を短くすることができ、また、被写体へのX線被曝量も少なくすることができる。
【0100】
被写体1000におけるX線の吸収線量を小さくするには、例えば、照射X線量が30マイクロレントゲン以下という条件でX線照射条件を決定する。ただし、照射X線量を小さくすれば、X線量子モトルによるノイズの影響が大きくなるため、X線画像の画質は悪くなる。そのため、照射X線量が30マイクロレントゲン以下という条件であれば、照射X線量がちょうど30マイクロレントゲンのとき、被写体1000におけるX線の吸収線量とX線画像の画質とのトレードオフが釣り合うことになる。
【0101】
また、照射X線量の上限値を決定するだけでは、X線照射条件の範囲を絞ることが困難である場合がある。そのため、このような場合には、X線センサ部102のX線量に対する感度限界を考慮するとよい。例えば、X線センサ部102のX線量に対する感度限界が10マイクロレントゲンである場合であって、照射X線量の上限値が200マイクロレントゲンである場合には、図8(c)に示す斜線部分がX線照射条件の範囲となる。
【0102】
この際、照射X線量の下限値は、X線センサ部のX線量に対する感度限界でなくてもよく、例えば、画像処理部105の性能から定まる照射X線量を測定しておき、その照射X線量を使用することも可能である。また、照射X線量の下限値が定まらない場合は、照射X線量の下限値を0とする。この場合、X線照射条件の下限における範囲を絞ることはできない。
【0103】
続いて、[2]の方法を実現するための実施例を以下に説明する。
【0104】
[2]の方法は、被写体1000におけるX線の吸収線量を小さくするという方法であるが、この場合、本実施形態では、吸収線量算出部202で被写体1000におけるX線の吸収線量を算出する。この際、「照射X線量から被写体1000におけるX線の吸収線量を差し引いた残りのX線量がX線センサ部102へ到達してX線画像になる」という考えに基づいて行われる。即ち、被写体1000におけるX線の吸収線量は、照射X線量からX線センサ部へ到達したX線量の差分であり、以下に示す(2)式から算出される。
吸収線量=照射X線量−X線センサ部102へ到達したX線量 ・・(2)
【0105】
また、X線画像の画素値は、X線のX線量に依存する。この関係をf( )とすると、以下に示す(3)式のようになる。
X線画像の画素値=f(X線センサ部102へ到達したX線量) ・・(3)
【0106】
(3)式のf( )は、単調増加関数であるため、逆関数が存在する。この逆関数をh( )とすると、(3)式は、以下に示す(4)式のようになる。
X線センサ部102へ到達したX線量=h(X線画像の画素値) ・・(4)
【0107】
そして、(2)式は、(4)式を考慮すると、以下に示す(5)式のようになる。
吸収線量=照射X線量−h(X線画像の画素値) ・・(5)
【0108】
また、照射X線量は、X線発生部101とX線センサ部102との間に被写体1000が存在しない場合にX線センサ部102で撮像されたX線画像の画素値(即ち、素抜けの画素値)と対応している。
【0109】
これは、(5)式に、吸収線量=0を代入すると、以下の(6)式となるためである。
照射X線量=h(被写体1000が存在しない場合のX線画像の画素値)
=h(X線画像の素抜けの画素値) ・・(6)
【0110】
これらをまとめると、被写体1000におけるX線の吸収線量は、以下の(7)式により算出することができる。
吸収線量=h(X線画像の素抜けの画素値)−h(X線画像の画素値) ・・(7)
【0111】
また、関数h( )が線形関数とみなせるならば、(7)式は、以下の(8)式のように表すことができる。
吸収線量=h(X線画像の素抜けの画素値−X線画像の画素値) ・・(8)
【0112】
本実施形態では、上述したX線画像の素抜けの画素値データを、素抜けの画素値データテーブル201として予め記憶しておく。
【0113】
図9は、図6に示す素抜けの画素値データテーブル201を説明するための模式図である。
【0114】
ここで、図9(a)は、X線発生部101とX線センサ部102との間に被写体1000が存在しない状態で、X線照射条件である管電圧と管電流を変化させたときに、X線センサ部102で撮像したX線画像の画素値データである。このデータを、「X線センサ部102の素抜けの画素値マップ」と呼ぶ。図9(a)に示すX線センサ部102の素抜けの画素値マップは、1点でもよいが、複数点あることが望ましい。そして、図9(a)に示す「X線センサ部102の素抜けの画素値マップ」の各データから、図6に示す素抜けの画素値データテーブル201が作成される。
【0115】
この際、X線センサ部102のある位置における素抜けの画素値から、X線センサ部102のどの位置の素抜けの画素値でも推測できるようになっていればよい。一般に、照射されたX線は、図9(b)に示すように、四方八方へ広がりながら、X線センサ部102へ到達する。そのため、被写体1000が存在しない場合であっても、点AにおけるX線量と点Bにおける線量とは異なるため、その画素値も異なる。
【0116】
この場合、素抜けの画素値は、点Aだけを測定しておき、点Aの画素値から点Bの画素値や、その他の位置の画素値を推測するという方法でもよい。また、素抜けの画素値は、点Aと点Bを測定しておき、これら2つの画素値から、その他の位置の画素値を推測するという方法でもよい。さらには、全画素の画素値について測定する方法でもよい。ただし、この場合、管電圧と管電流の組み合わせの数分だけX線画像を取得する必要があるため、データ量が非常に多くなることが懸念される。また、素抜けの画素値における測定時は、ノイズの影響をできるかぎり排除するために、加算平均の結果を使用するとよい。
【0117】
次に、第2の実施形態に係るX線画像撮影装置200の駆動方法における処理手順について説明する。
【0118】
図10は、本発明の第2の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の駆動方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。ここで、図10に示すフローチャートは、動画像の撮影を行う場合を示している。また、図10において、図5に示すフローチャートのステップと同様のステップについては、同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0119】
ユーザからX線照射指示が入力されると、図5に示すステップS101〜ステップS103の処理が行われる。
【0120】
ステップS103の処理が終了すると、ステップS104、ステップS201及びステップS107の処理が同時に平行して実行される。
【0121】
ステップS104では、ヒストグラム算出部103は、ステップS103で取得されたX線画像Aの各画素値に係るヒストグラムを算出する。
【0122】
また、ステップS201では、吸収線量算出部202は、ステップS103で取得されたX線画像Aから、被写体1000におけるX線の吸収線量を算出する。
【0123】
このステップS201の詳細について以下に説明する。
ステップS201では、吸収線量算出部202は、まず、ステップS101で設定したX線照射条件に対応する、X線センサ部102の素抜けの画素値を、素抜けの画素値データテーブル201から抽出する。この際、素抜けの画素値データテーブル201は、上述したように、図9(a)のX線センサ部102の素抜けの画素値マップに対応したものである。
【0124】
続いて、吸収線量算出部202は、抽出したX線センサ部102の素抜けの画素値を用いて、ステップS103で取得された被写体1000におけるX線画像Aから、被写体1000におけるX線の吸収線量を算出する。
【0125】
ステップS104及びS201の処理が終了すると、ステップS202に進む。
ステップS202に進むと、X線照射条件決定部204は、ステップS104で算出されたヒストグラム、ステップS201で算出された吸収線量、及び、照射X線量の等値曲線データテーブル203の等値曲線データを用いて、X線照射条件を決定する。
【0126】
このステップS202の詳細について以下に説明する。
ステップS202では、X線照射条件決定部204は、まず、ステップS104と同様にヒストグラムの平坦度合いを算出する。そして、X線照射条件決定部204は、算出したヒストグラムの平坦度平坦度合いに係る数値と、ステップS201で算出された被写体1000におけるX線の吸収線量に係る数値とを、今回の撮影に係るX線照射条件と関連付けて自身の内部に記憶する。続いて、X線照射条件決定部204は、X線照射条件を変更する処理を行う。
【0127】
このX線照射条件決定部204によるX線照射条件の変更方法は、第1の実施形態におけるステップS105の処理とほぼ同じであるが、本実施形態では、この際、照射X線量の等値曲線データテーブル203の等値曲線データを用いる。この場合、例えば、図8(b)に示すように、照射X線量が、丁度、30マイクロレントゲンであればよいことが分かっている場合には、X線照射条件として、30マイクロレントゲンの等値曲線データ上の値を使用する。なお、この場合、次回のX線画像の撮影においては、30マイクロレントゲンの等値曲線データに基づくX線照射条件でX線画像Aの撮影が行われ、ヒストグラム算出部103では、当該X線画像Aに対してヒストグラムを算出することになる。
【0128】
また、例えば、図8(c)に示すように、照射X線量の上限値と下限値が既知の場合には、照射X線量の上限値における等値曲線データと、照射X線量の下限値の等値曲線データで囲まれる領域に基づくX線照射条件を使用する。なお、この場合、次回のX線画像の撮影においては、照射X線量の上限値と下限値の等値曲線データで囲まれる領域に基づくX線照射条件でX線画像Aの撮影が行われ、ヒストグラム算出部103では、当該X線画像Aに対してヒストグラムを算出することになる。
【0129】
ステップS202の処理が終了すると、ステップS203に進み、X線照射条件決定部204は、ステップS202で決定したX線照射条件を、X線発生部101に対して設定する。
【0130】
ステップS203、S108の処理が終了すると、再び、ステップS102に戻る。
2巡目(2フレーム目)以降の処理では、ステップS202の処理が異なる。1巡目(1フレーム目)のステップS202では、X線照射条件を所定のルールに基づき変更するものであった。2巡目(2フレーム目)以降のステップS202の処理では、X線照射条件の変更により、ヒストグラムの平坦度合いと被写体1000におけるX線の吸収線量がどのように変化したのかを算出して、X線照射条件を決定する。
【0131】
そのために、本実施形態では、予め、ヒストグラムの平坦度合いと被写体1000におけるX線の吸収線量とを統一的に取り扱うための評価指標を決定しておく。その評価指標の一例を以下の(9)式に示す。
評価指標=α(ヒストグラムの平坦度)+β(1/{吸収線量+1}) ・・(9)
【0132】
ここで、(9)式のαとβは、定数である。(9)式の場合、評価指標の値が大きいほど、ヒストグラムの平坦度合いも大きくなり、被写体1000におけるX線の吸収線量も小さくなる。即ち、X線照射条件決定部204は、(9)式に示す評価指標が大きくなるように、X線照射条件を決定する。なお、評価指標としては、(9)式に限定されるわけではなく、例えば、評価指標が小さいほど、X線照射条件として望ましいという指標でもよい。この場合には、X線照射条件決定部204は、評価指標が小さくなるように、X線照射条件を決定する。便宜上、この評価指標を「統一評価指標」と呼ぶ。この際、各巡目で記憶した、ヒストグラムの平坦度合いに係る数値と被写体1000におけるX線の吸収線量に係る数値から、それぞれ、各統一評価指標が算出される。
【0133】
そして、2巡目(2フレーム目)のステップS202の処理では、1巡目における統一評価指標と、2巡目における統一評価指標とを比較して、統一評価指標が大きい方のX線照射条件を採用し、3巡目のX線照射条件とする。さらに、統一評価指標を大きくするためのX線照射条件を予測して、X線照射条件を変更するようにしてもよい。例えば、2巡目で管電圧を大きくした結果、統一評価指標が小さくなった場合は、次の3巡目では、2巡目(或いは1巡目)における管電圧より小さくすれば、統一評価指標を大きくすることができるという予測が成り立つ。このため、これをX線照射条件に反映させて変更する。なお、2巡目で上述した予測が成り立たない場合には、当該予測のX線照射条件への反映は行わず、3巡目以降で予測が成り立った時点で、X線照射条件への反映を行うようにする。X線照射条件を決定するための多くの統一評価指標があると、統一評価指標を大きくするための予測の精度は、向上することになる。
【0134】
また、ステップS202で算出されたヒストグラムの分布の平坦度合いに係る数値を、例えばステップS108において、表示部106に表示するようにしてもよい。この表示を行うことにより、ユーザ(観察者)は、表示部106に表示されているX線画像が、被写体1000の内部情報が最大限含まれているかどうかを判断することができる。例えば、被写体1000が動いたために最適なX線照射条件を探索し直している間は、ヒストグラムの平坦度は小さい。この場合、ユーザは、もう少し待てば、最適なX線照射条件に到達する可能性があることを、表示部106に表示されたヒストグラムの平坦度から判断することができるようになる。さらに、ステップS201で算出された被写体1000におけるX線の吸収線量に係る数値を、例えばステップS108において、表示部106に表示するようにしてもよい。この場合、ユーザは、被写体1000におけるX線の吸収線量が多いのか少ないのかを判断することができるようになる。
【0135】
(第3実施の形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0136】
図11は、本発明の第3の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の概略構成の一例を示す模式図である。ここで、図11において、図6に示す構成と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0137】
図11に示すように、第3の実施形態のX線画像撮影装置300は、第2の実施形態のX線画像撮影装置200に対して、平均情報量算出部301が追加されて構成されている。また、第3の実施形態のX線画像撮影装置300では、第2の実施形態のX線画像撮影装置200のX線照射条件決定部における処理の内容が異なるため、図11では、これをX線照射条件決定部304として示している。
【0138】
平均情報量算出部301は、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムからX線画像Aの輝度に係る平均情報量を算出する。
【0139】
X線照射条件決定部304は、平均情報量算出部301で算出された平均情報量、吸収線量算出部202で算出された吸収線量、及び、照射X線量の等値曲線データテーブル203の等値曲線データを用いて、X線照射条件を決定する。
【0140】
特に、本実施形態では、X線照射条件決定部304は、平均情報量算出部301で算出された平均情報量が増大するように、X線発生部101から照射するX線(照射X線101a)のX線照射条件を決定する。これにより、本実施形態では、被写体1000の内部情報をより多く含んだ、観察に適したX線画像を取得できるようにしている。この点について、以下に詳しく説明する。
【0141】
図12は、図11に示すヒストグラム算出部103で算出されたX線画像の各画素値に係るヒストグラムの分布の一例を示す模式図である。
【0142】
図12(a)及び(b)は、X線照射条件を変えて被写体1000を撮影したX線画像の各画素値のヒストグラムが示されている。ここでは、画素値として、X線画像の各画素の輝度に係る値を用いている。
【0143】
図12(a)で示されるヒストグラム1に係るX線画像と図12(b)で示されるヒストグラム2に係るX線画像において、観察に有用な被写体の内部情報をより含んでいるX線画像は、図12(b)である。その理由は、画像処理をしない場合、図12(a)では、3パターンに色分けされたX線画像を見て被写体を観察することになるが、図12(b)では、4パターンに色分けされたX線画像を見ながら同じ被写体を観察することができるためである。
【0144】
図12(a)及び(b)に示すヒストグラムの分布(形状)は、どちらも平坦である。そのため、図3(c)及び(d)のように、図12(a)及び(b)のヒストグラムにおける累積ヒストグラムの包絡線を考慮した場合、どちらも直線となり、その優劣の区別がつかない。そして、本実施形態では、平均情報量を用いて、この区別をつけるようにする。
【0145】
ここで、平均情報量算出部301で算出する平均情報量は、例えば、以下の(10)式に示すものとなる。
平均情報量=−Σ(Pi/M)*(LogPi/M) ・・(10)
ただし、(10)式に示すΣは、i=1〜Nについて加算し、Nは、ヒストグラムのビン数を示す。また、Piは、i番目のビンの度数であり、Mは、全画素数である。ここで、MとPiの関係は、M=ΣPiである。
【0146】
この平均情報量は、エントロピーとも称される。(10)式に示す対数の底は、自然対数や10や2を用いることが多い。本実施形態では、(10)式に示す対数の底は、自然対数でも10でも2でもその他の値でもよい。
【0147】
この平均情報量の性質として、「ビン数がNのとき、平均情報量の最大値は、LogNである」という事実がある。この場合、Piは、iによらず、同じであり、Pi=P=(M/N)である。即ち、ヒストグラムの度数がすべて同じときに、平均情報量は最大となる。そのため、図12(b)に示すヒストグラム2と図12(c)に示すヒストグラム3の平均情報量を算出すると、平均情報量は、図12(b)の方が大きい。
【0148】
このように、平均情報量は、ヒストグラムの度数分布に偏りがある場合より、ヒストグラムの度数分布に偏りが無い場合の方が大きいという性質がある。このことは、上述した第1の実施形態(或いは、第2の実施形態)における「ヒストグラムの平坦化」と、ほぼ同じ指標として使用することができる。即ち、X線照射条件決定部304では、平均情報量算出部301で算出された平均情報量が増大するように、X線発生部101から照射するX線(照射X線101a)のX線照射条件を決定すればよいことになる。
【0149】
さらに、図12(a)に示すヒストグラム1と図12(b)に示すヒストグラム2の平均情報量を算出すると、平均情報量は、図12(b)の方が大きくなる。このように、「ヒストグラムの平坦度」等による比較では区別がつかない場合も、平均情報量を使用することで、観察に有用な被写体の内部情報をより多く含んだX線画像を撮影することができる。
【0150】
次に、第3の実施形態に係るX線画像撮影装置300の駆動方法における処理手順について説明する。
【0151】
図13は、本発明の第3の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の駆動方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。ここで、図13に示すフローチャートは、動画像の撮影を行う場合を示している。また、図13において、図10に示すフローチャートのステップと同様のステップについては、同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0152】
ユーザからX線照射指示が入力されると、図10に示すステップS101〜ステップS104の処理が行われる。また、ステップS104の処理と同時に、ステップS201及びステップS107の処理が平行して実行される。
【0153】
ステップS104の処理が終了すると、ステップS301に進む。ステップS301に進むと、平均情報量算出部301は、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムからX線画像Aの輝度に係る平均情報量を算出する。
【0154】
ステップS301及びS201の処理が終了すると、ステップS302に進む。ステップS302に進むと、X線照射条件決定部304は、ステップS301で算出された平均情報量、ステップS201で算出された吸収線量、及び、照射X線量の等値曲線データテーブル203の等値曲線データを用いて、X線照射条件を決定する。
【0155】
なお、このステップS302の処理は、第2の実施形態におけるステップS202の処理において、ステップS104で算出されたヒストグラムに替えて、ステップS301で算出された平均情報量を適用すること以外は、同様である。
【0156】
ステップS302の処理が終了すると、ステップS303に進み、X線照射条件決定部304は、ステップS302で決定したX線照射条件を、X線発生部101に対して設定する。
【0157】
ステップS303、S108の処理が終了すると、再び、ステップS102に戻る。
2巡目(2フレーム目)以降の処理についても、第2の実施形態で説明した処理において、ステップS104で算出されたヒストグラムに替えて、ステップS301で算出された平均情報量を適用すること以外は、同様である。
【0158】
また、ステップS301で算出された平均情報量に係る数値を、例えばステップS108において、表示部106に表示するようにしてもよい。この表示を行うことにより、ユーザ(観察者)は、表示部106に表示されているX線画像が、被写体1000の内部情報が最大限含まれているかどうかを判断することができる。
【0159】
(第4実施の形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0160】
図14は、本発明の第4の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の概略構成の一例を示す模式図である。ここで、図14において、図1及び図11に示す構成と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0161】
図14に示すように、第4の実施形態のX線画像撮影装置400は、第1の実施形態のX線画像撮影装置100に対して、図11に示す第3の実施形態のX線画像撮影装置300の平均情報量算出部301を追加したものである。また、第4の実施形態のX線画像撮影装置400では、第1の実施形態或いは第3の実施形態のX線画像撮影装置のX線照射条件決定部における処理の内容が異なるため、図14では、これをX線照射条件決定部404として示している。
【0162】
X線照射条件決定部404は、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラム、及び、平均情報量算出部301で算出された平均情報量を用いて、X線照射条件を決定する。
【0163】
第3の実施形態では、平均情報量算出部301において、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムからX線画像Aの輝度に係る平均情報量を算出し、当該平均情報量を用いて、X線照射条件を決定するものであった。即ち、第3の実施形態では、「ヒストグラムの平坦度」の指標では区別がつかなかった図12(a)及び(b)のヒストグラに係るX線画像の優劣を、平均情報量を算出することにより、区別できるようにしたものであった。
【0164】
しかしながら、例えば、図12(b)及び(d)のヒストグラに係るX線画像を比較すると、図12(b)の方が観察に有用な内部情報を含むX線画像であると考えられるが、この場合、どちらの平均情報量も同じとなる。このように、ヒストグラムの分布(形状)が平坦になるようにX線照射条件を決定する方法も、平均情報量が最大化するようにX線照射条件を決定する方法も、それぞれ一長一短がある。
【0165】
そこで、本実施形態では、X線照射条件決定部404において、平均情報量算出部301で算出された平均情報量が増大すると共に、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムの分布が平坦となるように、X線照射条件を決定する。
【0166】
この際、X線照射条件決定部404では、以下に示すように処理することが望ましい。
まず、平均情報量算出部301で算出された平均情報量が増大する放射線照射条件を求め、次に、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムの分布が平坦となる放射線照射条件を求めて、X線照射条件を決定する。この場合、例えば、平均情報量算出部301で算出された平均情報量が同じである場合に、ヒストグラムの分布(形状)の平坦度合いを比較して、X線照射条件を決定するようにする。
【0167】
次に、第4の実施形態に係るX線画像撮影装置400の駆動方法における処理手順について説明する。
【0168】
図15は、本発明の第4の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の駆動方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。ここで、図15に示すフローチャートは、動画像の撮影を行う場合を示している。また、図15において、図5に示すフローチャートのステップと同様のステップについては、同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0169】
ユーザからX線照射指示が入力されると、図1に示すステップS101〜ステップS104の処理が行われる。また、ステップS104の処理と同時に、ステップS107の処理が平行して実行される。
【0170】
ステップS104の処理が終了すると、ステップS401に進む。ステップS401に進むと、平均情報量算出部301は、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムからX線画像Aの輝度に係る平均情報量を算出する。
【0171】
ステップS401の処理が終了すると、ステップS402に進む。ステップS402に進むと、X線照射条件決定部404は、上述したように、ステップS401で算出された平均情報量、及び、ステップS104で算出されたヒストグラムを用いて、X線照射条件を決定する。
【0172】
ステップS402の処理が終了すると、ステップS403に進み、X線照射条件決定部304は、ステップS402で決定したX線照射条件を、X線発生部101に対して設定する。
【0173】
ステップS403、S108の処理が終了すると、再び、ステップS102に戻る。
2巡目(2フレーム目)以降の処理についても、上述した第1の実施形態で説明した内容と第3の実施形態で説明した内容を組み合わせたものとなる。
【0174】
また、ステップS401で算出された平均情報量に係る数値及びステップS402で算出されたヒストグラムの分布の平坦度合いに係る数値を、例えばステップS108において、表示部106に表示するようにしてもよい。この表示を行うことにより、ユーザ(観察者)は、表示部106に表示されているX線画像が、被写体1000の内部情報が最大限含まれているかどうかを判断することができる。
【0175】
(第5実施の形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
【0176】
図16は、本発明の第5の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の概略構成の一例を示す模式図である。ここで、図16において、図11に示す構成と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0177】
図16に示すように、第5の実施形態のX線画像撮影装置500は、第3の実施形態のX線画像撮影装置300に対して、第4の実施形態で示した内容を反映させたものである。即ち、X線照射条件決定部504において、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラム、及び、平均情報量算出部301で算出された平均情報量を用いて、X線照射条件を決定するようにしたものである。
【0178】
次に、第5の実施形態に係るX線画像撮影装置500の駆動方法における処理手順について説明する。
【0179】
図17は、本発明の第5の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の駆動方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。ここで、図17に示すフローチャートは、動画像の撮影を行う場合を示している。また、図17において、図13に示すフローチャートのステップと同様のステップについては、同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0180】
ユーザからX線照射指示が入力されると、図13に示すステップS101〜ステップS104の処理が行われる。また、ステップS104の処理と同時に、ステップS201及びステップS107の処理が平行して実行される。
【0181】
ステップS104の処理が終了すると、ステップS501に進む。ステップS501に進むと、平均情報量算出部301は、図15のステップS401と同様に、ヒストグラム算出部103で算出されたヒストグラムからX線画像Aの輝度に係る平均情報量を算出する。
【0182】
ステップS501及びS201の処理が終了すると、ステップS502に進む。ステップS502に進むと、X線照射条件決定部504は、ステップS104、S501及びS201で算出されたヒストグラム、平均情報量及び吸収線量、並びに、照射X線量の等値曲線データテーブル203の等値曲線データを用いて、X線照射条件を決定する。
【0183】
ステップS502の処理が終了すると、ステップS503に進み、X線照射条件決定部304は、ステップS502で決定したX線照射条件を、X線発生部101に対して設定する。
【0184】
ステップS503、S108の処理が終了すると、再び、ステップS102に戻る。
2巡目(2フレーム目)以降の処理についても、上述した第3の実施形態で説明した内容と第4の実施形態で説明した内容を組み合わせたものとなる。
【0185】
また、ステップS501で算出された平均情報量に係る数値及びステップS502で算出されたヒストグラムの分布の平坦度合いに係る数値を、例えばステップS108において、表示部106に表示するようにしてもよい。この表示を行うことにより、ユーザ(観察者)は、表示部106に表示されているX線画像が、被写体1000の内部情報が最大限含まれているかどうかを判断することができる。
【0186】
前述した各実施形態に係る放射線画像撮影装置の駆動方法を示す図5、図10、図13、図15及び図17の各ステップは、コンピュータのCPUがRAMやROMなどに記憶されたプログラムを実行することによって実現できる。このプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本発明に含まれる。
【0187】
具体的に、前記プログラムは、例えばCD−ROMのような記憶媒体に記録し、或いは各種伝送媒体を介し、コンピュータに提供される。前記プログラムを記録する記憶媒体としては、CD−ROM以外に、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、不揮発性メモリカード等を用いることができる。他方、前記プログラムの伝送媒体としては、プログラム情報を搬送波として伝搬させて供給するためのコンピュータネットワーク(LAN、インターネットの等のWAN、無線通信ネットワーク等)システムにおける通信媒体を用いることができる。また、この際の通信媒体としては、光ファイバ等の有線回線や無線回線などが挙げられる。
【0188】
また、本発明は、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより各実施形態に係る放射線画像撮影装置の機能が実現される態様に限られない。そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して各実施形態に係る放射線画像撮影装置の機能が実現される場合も、かかるプログラムは本発明に含まれる。また、供給されたプログラムの処理の全て、或いは一部がコンピュータの機能拡張ボードや機能拡張ユニットにより行われて各実施形態に係る放射線画像撮影装置の機能が実現される場合も、かかるプログラムは本発明に含まれる。
【0189】
また、前述した本実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術的思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の概略構成の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示す被写体の内部構成の一例を示す模式図である。
【図3】図1に示すヒストグラム算出部で算出されたX線画像の各画素値に係るヒストグラムの分布の一例を示す模式図である。
【図4】図3(c)及び図3(d)に示す累積ヒストグラムの包絡線の直線度合いにおける算出方法の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の駆動方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の概略構成の一例を示す模式図である。
【図7】図6に示す照射X線量の等値曲線データテーブルを説明するための模式図である。
【図8】図6に示す照射X線量の等値曲線データテーブルの一例を示す模式図である。
【図9】図6に示す素抜けの画素値データテーブルを説明するための模式図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の駆動方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の概略構成の一例を示す模式図である。
【図12】図11に示すヒストグラム算出部で算出されたX線画像の各画素値に係るヒストグラムの分布の一例を示す模式図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の駆動方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第4の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の概略構成の一例を示す模式図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の駆動方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第5の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の概略構成の一例を示す模式図である。
【図17】本発明の第5の実施形態に係るX線画像撮影装置(放射線画像撮影装置)の駆動方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図18】従来のX線画像撮影装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【図19】従来のX線画像撮影装置の概略構成の他の一例を示す模式図である。
【図20】図1に示す画像処理部において行われる階調変換曲線の変更の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0191】
100 X線画像撮影装置
101 X線発生部
101a 照射X線
101b 透過X線
102 X線センサ部
103 ヒストグラム算出部
104 X線照射条件決定部
105 画像処理部
106 表示部
1000 被写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線発生部から被写体に放射線を照射して、前記被写体を透過した放射線に基づく放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影装置であって、
前記放射線画像の各画素値に係るヒストグラムを算出するヒストグラム算出部と、
前記ヒストグラムの分布が平坦となるように、前記放射線発生部から照射する放射線の放射線照射条件を決定する放射線照射条件決定部と
を有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
放射線発生部から被写体に放射線を照射して、前記被写体を透過した放射線に基づく放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影装置であって、
前記放射線画像の各画素値に係るヒストグラムを算出するヒストグラム算出部と、
前記ヒストグラムから前記放射線画像の輝度に係る平均情報量を算出する平均情報量算出部と、
前記平均情報量が増大するように、前記放射線発生部から照射する放射線の放射線照射条件を決定する放射線照射条件決定部と
を有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項3】
放射線発生部から被写体に放射線を照射して、前記被写体を透過した放射線に基づく放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影装置であって、
前記放射線画像の各画素値に係るヒストグラムを算出するヒストグラム算出部と、
前記ヒストグラムから前記放射線画像の輝度に係る平均情報量を算出する平均情報量算出部と、
前記平均情報量が増大すると共に前記ヒストグラムの分布が平坦となるように、前記放射線発生部から照射する放射線の放射線照射条件を決定する放射線照射条件決定部と
を有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記放射線照射条件決定部は、前記放射線照射条件を決定する際に、前記平均情報量が増大する放射線照射条件を求め、次に、前記ヒストグラムの分布が平坦となる放射線照射条件を求めることを特徴とする請求項3に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記放射線照射条件に関するものであって、前記放射線発生部から照射する放射線の放射線量における同値曲線データが設定された同値曲線データテーブルを更に有し、
前記ヒストグラム算出部は、前記同値曲線データに基づく放射線照射条件で撮影された放射線画像に対して、前記ヒストグラムを算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記放射線照射条件に関するものであって、前記放射線発生部から照射する放射線の放射線量における複数の同値曲線データが設定された同値曲線データテーブルを更に有し、
前記ヒストグラム算出部は、前記同値曲線データで囲まれる領域に基づく放射線照射条件で撮影された放射線画像に対して、前記ヒストグラムを算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記放射線画像を撮像する撮像部と、
前記放射線照射条件に関するものであって、前記放射線発生部と前記撮像部との間に前記被写体が存在しない場合に前記撮像部で撮像された放射線画像の画素値に係る画素値データテーブルと、
前記放射線発生部と前記撮像部との間に前記被写体が存在する場合に前記撮像部で撮像された放射線画像と、前記画素値データテーブルとを用いて、前記被写体における放射線の吸収線量を算出する吸収線量算出部と
を更に有し、
前記放射線照射条件決定部は、前記吸収線量算出部で算出された吸収線量を小さくすることも考慮して前記放射線照射条件を決定することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記ヒストグラムの分布の平坦度合いに係る数値を表示部に表示することを特徴とする請求項1又は3に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記平均情報量に係る数値を表示部に表示することを特徴とする請求項2又は3に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記ヒストグラムの分布の平坦度合いに係る数値、及び、前記平均情報量に係る数値を表示部に表示することを特徴とする請求項3に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項11】
前記放射線画像の平均輝度値をあらかじめ設定された値に補正する画像処理部を更に有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項12】
放射線発生部から被写体に放射線を照射して、前記被写体を透過した放射線に基づく放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影装置の駆動方法であって、
前記放射線画像の各画素値に係るヒストグラムを算出するヒストグラム算出ステップと、
前記ヒストグラムの分布が平坦となるように、前記放射線発生部から照射する放射線の放射線照射条件を決定する放射線照射条件決定ステップと
を有することを特徴とする放射線画像撮影装置の駆動方法。
【請求項13】
放射線発生部から被写体に放射線を照射して、前記被写体を透過した放射線に基づく放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影装置の駆動方法であって、
前記放射線画像の各画素値に係るヒストグラムを算出するヒストグラム算出ステップと、
前記ヒストグラムから前記放射線画像の輝度に係る平均情報量を算出する平均情報量算出ステップと、
前記平均情報量が増大するように、前記放射線発生部から照射する放射線の放射線照射条件を決定する放射線照射条件決定ステップと
を有することを特徴とする放射線画像撮影装置の駆動方法。
【請求項14】
放射線発生部から被写体に放射線を照射して、前記被写体を透過した放射線に基づく放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影装置の駆動方法であって、
前記放射線画像の各画素値に係るヒストグラムを算出するヒストグラム算出ステップと、
前記ヒストグラムから前記放射線画像の輝度に係る平均情報量を算出する平均情報量算出ステップと、
前記平均情報量が増大すると共に前記ヒストグラムの分布が平坦となるように、前記放射線発生部から照射する放射線の放射線照射条件を決定する放射線照射条件決定ステップと
を有することを特徴とする放射線画像撮影装置の駆動方法。
【請求項15】
前記放射線画像の平均輝度値をあらかじめ設定された値に補正する画像処理ステップを更に有することを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−268827(P2009−268827A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123921(P2008−123921)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】