放射線療法を受けている患者の呼吸位相を検出するシステムおよび方法
放射線療法を受けている患者の呼吸位相を検出するシステムおよび方法が開示される。一実施態様では、この方法が、呼吸サイクルの位相を表す複数の患者画像を取得するステップと、患者に放射線を放出するステップと、放射線を放出するステップの間に、患者の伝送データを収集するステップと、伝送データを複数の患者画像と比較するステップとを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ともに参照によって本明細書に組み込まれる2005年7月22日出願の「SYSTEM AND METHOD OF DELIVERING RADIATION THERAPY TO A MOVING TARGET(移動ターゲットへ放射療法を施すシステムおよび方法)」という名称の米国特許仮出願第60/701541号、および2005年7月22日出願の「SYSTEM AND METHOD FOR FEEDBACK GUIDED QUALITY ASSURANCE AND ADAPTATIONS TO RADIATION THERAPY TREATMENT(放射療法治療へのフィードバック誘導品質保証および適用のためのシステムおよび方法)」という名称の米国特許仮出願第60/701580号の恩典を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、放射線療法の実践には、コンピュータおよびネットワーク化、放射線療法治療計画作成ソフトウェア、ならびに医療用画像化様式(コンピュータ断層撮影法(「CT」)、磁気共鳴画像法(「MRI」)、超音波法(「US」)、陽電子放射断層撮影法(「PET」)など)における改良が組み入れられてきた。場合によっては、放射線療法の計画作成および引渡しのための技法が使用される。例えば、肺の腫瘍など、移動するターゲットを治療するある方法は、ターゲットが指定された軌道窓の中にあるときにだけ、放射線を「ゲーティング」すなわち放出することを含む。この方法は、周期的時間間隔の間だけターゲットに照射されるため、非効率である。
【0003】
移動するターゲットを治療する別の1つの方法は、呼吸同期照射法(「BSD」)と呼ばれる。この技法は、治療中にターゲットがたどると予想されるトラック、すなわち予想される運動経路を利用する。そうするために、ターゲットがこの予想されるトラック上にとどまると仮定した計画が作成され、これは、治療計画の全体にわたって予想される周期および位相を有する。厳密に定義されたトラックに従うよう患者に促す音声および視覚誘導を使用することができる。しかし、放射線療法の患者の大部分にとって、厳密に定義されたパターンに従うことは難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
領域の位置、周期および位相についてのプリオリ知識に依存することなく、移動する関心領域に放射線を放出することができる。患者の解剖学的運動の変化を反映させ、放射線治療をより効果的に適用するために、複数の計画間の動的切替え、または「治療中(on the fly)」の計画作成を使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本発明は、放射線療法を受けている患者の呼吸位相を検出する方法を提供する。この方法は、呼吸サイクルの位相を表す複数の患者画像を取得するステップと、患者に放射線を放出するステップと、放射線を放出するステップ中に、患者の伝送データを収集するステップと、伝送データを複数の患者画像と比較するステップとを含む。
【0006】
他の実施形態では、本発明が、放射線療法を受けている患者の呼吸位相を検出するシステムを提供する。このシステムは、コンピュータプロセッサ、患者に放射線を放出するように動作可能な放射線源、および透過放射線を収集するように動作可能な放射線検出器を含む放射線療法装置を含む。このシステムはさらに、コンピュータプロセッサがアクセス可能なコンピュータ可読媒体に記憶されたソフトウェアプログラムを含む。このソフトウェアプログラムは、呼吸サイクルの位相を表す複数の患者画像を取得し、前記収集された透過放射線から前記患者の伝送データを取得し、前記伝送データを前記複数の患者画像と比較するように動作可能である。
【0007】
本発明のその他の形態は、以下の詳細な説明および添付図面を検討することによって明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載された、または添付図面に示された構造および構成要素の配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態を有することができ、様々な方法で実践し、または実施することができる。さらに、本明細書で使用される語句および用語は、説明を目的としたものであり、それらを、限定するものと考えるべきではないことを理解されたい。「含む」、「備える」または「有する」およびそれらの変形の使用は以後に記載された項目およびそれらの均等物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。特に指定されまたは限定されない限り、用語「取り付けられた」、「接続された」、「支持された」および「結合された」ならびに本明細書中のそれらの変形は幅広く使用され、直接と間接の両方の取付け、接続、支持および結合を包含する。さらに、「接続された」および「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されない。
【0009】
本明細書では、図面を説明する際に、上、下、下方、上方、後方、底、前、後など、方向について言及される場合があるが、これらの言及は、便宜上、(普通に見たときの)図面に対してなされる。これらの方向は、文字通りに解釈されることを意図したものではなく、また、任意の形態に本発明を限定することを意図したものでもない。さらに、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、本明細書では説明の目的で使用され、相対的な重要性または有意性を指示しまたは暗示することを意図したものではない。
【0010】
さらに、本発明の実施形態は、両方のハードウェア、ソフトウェア、電子構成要素またはモジュールを含み、それらは、議論の目的上、あたかも大部分の構成要素が単にハードウェアとして実現されるように図示され、説明されることがあることを理解された。しかし、当業者は、この詳細な説明を読むことによって、少なくとも1つの実装では、本発明の電子ベースの諸態様をソフトウェアとして実装することができることを理解するであろう。そのため、ハードウェアおよびソフトウェアベースの複数の装置、ならびに複数の様々な構造構成要素を利用して、本発明を実装することができることに留意されたい。さらに、後の段落で説明するように、図面に示された特定の機械的構成は、本発明の実施形態を例示することを意図したものであり、他の代替の機械的構成が可能である。
【0011】
図1は、患者14に放射線療法を提供することができる放射線療法治療システム10を示す。放射線療法治療は、光子ベースの放射線療法、近接照射療法、電子線療法、陽子、中性子または粒子療法、あるいは他のタイプの治療法を含むことができる。放射線療法治療システム10は、ガントリ22を有する放射線療法装置18を含む。図面に示されたガントリ22は環形ガントリであり、すなわち360°の弧を描いて延び、完全な環または円を形成しているが、他のタイプの取付け構成を使用することもできる。例えば、C字型、部分環ガントリまたはロボットアームを使用することができる。
【0012】
ガントリ22は、光子放射線ビーム34を生成するように動作可能な放射線源26と直線加速器30とを有する放射線モジュールを支持することができる。この放射線モジュールはさらに、放射線ビーム34を変更または変調するように動作可能な変調装置42を含むことできる。変調装置42は、放射線ビーム34を変調し、放射線ビーム34を患者14に向かって導く。具体的には、患者の一部分に向かって放射線ビーム34が導かれる。広く言えば、この患者の一部分には全身が含まれるかもしれないが、この部分は一般的には全身よりも小さく、2次元の面積および/または3次元の体積によって定義することができる。ターゲットまたはターゲット部位(54として示されている)と呼ぶことができる放射線を受け取らせたい部分は、関心領域の一例である。他のタイプの関心領域は危険を伴う領域である。ある1つの部分が危険を伴う領域を含む場合、放射線ビームは、その危険を伴う領域からそらされることが好ましい。患者14は、放射線療法を受け取る必要があるターゲット部位54を2つ以上有することがある。このような変調は時に、強度変調放射線療法(「IMRT」)と呼ばれる。
【0013】
放射線モジュールを患者14に対して様々な回転方向位置および/または軸方向位置に配置することができる他の枠組みを使用してもよい。さらに、放射線モジュールは、ガントリ22の形状に従わない経路上を移動してもよい。例えば、図示されたガントリ22が全体に円形であるとしても、放射線モジュールは非円形経路上を移動することができる。
【0014】
図2に示された一構造では、変調装置42がコリメーション装置を含む。このコリメーション装置は、一組のジョーを有する1次コリメータ38を含む。これらのジョーは、放射線ビームが通過することができる開口を画定し、この開口のサイズを調整する。このコリメーション装置はさらに、マルチリーフコリメータ(MLC)を含み、このMLCは、強度変調を提供するためにある位置から別の位置へ移動するように動作可能なインタレースされた複数のリーフ50を含む。リーフ50はまた、最小限に開いた位置と最大限に開いた位置との間のどの位置へも移動することができることに留意されたい。インタレースされた複数のリーフ50は、放射線ビーム34が患者14のターゲット54に到達する前に、放射線ビーム34の強度、サイズおよび形状を変調する。放射線の通過を許しまたは妨げるために各リーフ50を高速に開閉できるように、各リーフ50は、モータまたは空気弁など、アクチュエータ58によって独立に制御される。アクチュエータ58は、コンピュータ62および/またはコントローラによって制御することができる。
【0015】
放射線療法治療システム10はさらに、放射線モジュールからまたは別個の放射線源から放射線ビームを受け取るように動作可能な検出器66、例えばキロボルテージまたはメガボルテージ検出器を含むことができる。放射線モジュールおよび検出器66は潜在的に、患者14のCT画像を生成するコンピュータ断層撮影(CT)システムとして動作することができる。放射線モジュールは、患者14のターゲット54に向かって放射線ビーム34を発射する。これらのCT画像は、扇形幾何形状、マルチスライス形幾何形状または円錐ビーム形幾何形状を有する放射線ビーム34を使用して取得することができる。さらに、CT画像は、メガボルテージエネルギーまたはキロボルテージエネルギーを引渡す直線加速器30を使用して取得することもできる。ターゲット54および周囲組織はこの放射線の一部を吸収する。
【0016】
放射線療法治療システム10はさらに、治療台70(図1に示されている)など、患者14を支持する患者サポートを含むことができる。治療台70は、少なくとも一軸に沿ってx、yまたはz方向に移動する。他の構造では、この患者サポートを、患者の体の任意の部分を支持するように適合された装置とすることができ、この患者サポートは、患者の全身を支持しなければならない装置に限定されない。システム10はさらに、治療台70の位置を操作するように動作可能な駆動システム74を含むことができる。駆動システム74はコンピュータ62によって制御することができる。
【0017】
コンピュータ62は、様々なソフトウェアプログラムおよび/または通信アプリケーションを実行するオペレーティングシステムを含む。具体的には、コンピュータ62は、放射線療法装置18と通信するように動作可能なソフトウェアプログラム78を含むことができる。コンピュータ62は、医療従事者によってアクセスされるように適合された適切な任意の入出力装置を含むことができる。コンピュータ62は、プロセッサ、I/Oインターフェース、記憶装置ないしメモリなどのハードウェアを含むことができる。コンピュータ62はさらに、キーボードやマウスなどの入力装置を含むことができる。コンピュータ62はさらに、モニタなどの出力装置を含むことができる。さらに、コンピュータ62は、プリンタやスキャナなどの周辺装置を含むことができる。
【0018】
図3に示されているように、放射線療法装置18は、コンピュータ62と直接に通信し、かつ/またはネットワーク82を介して通信する。放射線療法装置18は、ネットワーク82を介して、他の放射線療法装置18とも通信することができる。同様に、それぞれの放射線療法装置18のコンピュータ62は、他の放射線療法装置18のコンピュータ62と通信することができる。コンピュータ62および放射線療法装置18はさらに、データベース86およびサーバ90と通信することができる。複数のデータベース86およびサーバ90がネットワーク82と通信することができる。ソフトウェアプログラム78はサーバ90上に存在することもできることに留意されたい。
【0019】
ネットワーク82は、任意のネットワーク化技術またはネットワーク化トポロジ、あるいはネットワーク化技術とトポロジの組合せに従って構築することができ、複数のサブネットワークを含むことができる。図3に示されたコンピュータ62と装置18の間の接続は、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、公衆電話交換網(「PSTN」)、無線ネットワーク、イントラネット、インターネットまたは他の適切なネットワークを介して実施することができる。病院または医療施設では、図3に示されたコンピュータ62と装置18の間の接続を、任意のバージョンおよび/または他の必要なプロトコルを有する、ヘルスレベルセブン(「HL7」)プロトコルまたは他のプロトコルを介して実施することができる。HL7は、健康管理環境における電子データ交換用の、ベンダが異なる2つのコンピュータアプリケーション(送信側と受信側)間のインターフェースの実施態様を指定する標準プロトコルである。HL7は、健康管理機関が、異なるアプリケーションシステムに由来する鍵となるデータセットを交換することを可能にする。具体的には、HL7は、交換されるデータ、相互交換のタイミング、およびアプリケーションへのエラーの伝達を定義することができる。フォーマットは一般に、事実上総称的であり、必要とするアプリケーションの要求を満たすように構成することができる。
【0020】
図3に示されたコンピュータ62と放射線療法装置18との間の通信は、任意のバージョンおよび/または他の必要なプロトコルを有する医用画像通信規格(Digital Imaging and Communications in Medicine(医学におけるデジタル描写法および通信):「DICOM」)プロトコルによって実施することもできる。DICOMは、アメリカ電気製造業者協会(「NEMA」)によって策定された、異なる医療機器間で医療用画像関連データを引渡すのに使用されるフォーマットを定義した国際通信規格である。DICOM RTは、特に放射線療法データを対象とした規格を指す。
【0021】
図3の双方向の矢印は概して、ネットワーク82と、任意の1つのコンピュータ62、放射線療法装置18および図3に示された他の構成要素との間の双方向通信および双方向情報転送を表す。しかし、医療機器によっては、一方向通信および一方向情報転送だけしか必要がない場合もある。
【0022】
様々な条件および関心領域に対応するために、前述のマルチリーフコリメータは、放射線ビーム34の強度変調を提供することができる。より具体的には、マルチリーフコリメータ46のリーフ50を移動することによって、放射線ビーム34の強度を増大または低減させることができる。しかし、動いているターゲット54(例えば、肺、心臓、消化トラックなどの腫瘍)は、しばしば繰返しパターンでは移動しないため、連続ビーム34で治療するのが難しい。
【0023】
後述するように、ソフトウェアプログラム78は、患者14に引渡しされる放射線量を、関心領域の実際の運動に従って変更することによって、移動する関心領域に対応することができる。本発明の一実施形態に基づく例示的なソフトウェアプログラム78が、図4に概略的に示されている。このソフトウェアプログラムは、関心領域の位置、周期および位相についての演繹的な知識に依存することなく関心領域に放射線を放出する1つの解決策を提示する。1つの方法は、一群の放出計画の事前生成、および患者の解剖学的運動の変化を反映させるための計画間の機能的切替えを利用する。
【0024】
一実施態様は、最初に、ターゲットの軌道、呼吸の位相および治療全体の周期を仮定したBSD型の治療を最適化する。しかし、その1つの計画を最適化することに加えて、基本となるBSD計画とは異なる周期、呼吸位相または他のパラメータをそれぞれが潜在的に有する追加の計画セットを最適化することができる。次いで、治療中に、患者は最初に、BSD計画に示されたターゲットトレースに従うことを試みる。しかし、患者の呼吸が、指定されたしきい値を超えてこの計画から逸脱した場合には、その計画は自動的に、その時点の部位パラメータにより一致した1つの代替計画に切り替わる。患者の随意の呼吸トレースに対する引渡しが、図7の太線に示されている。したがって、この方法の1つの利益は、自動エラー訂正を有するBSD品質の引渡しが可能であり、患者に課せられる運動再現要求が低いことである。
【0025】
他の実施態様では、基本の4次元(「4D」)計画に従うのではなく、引渡し中に患者が自由に呼吸すると、計画が自動的に切り替わる。所望ならば、咳などの特に不規則な呼吸を識別することができ、呼吸が指定された許容範囲に再び戻るまで、治療を一時的に遅らせることができる。同様に、関心領域の位置が明確に定義されていない呼吸位相または運動部位がある場合には、それらの位相の間、治療を意図的に回避することができる。このような判断は、計画作成時に実施することができるが、患者の解剖学的生理構造の知覚された変化に基づいて動的に実施することもできる。
【0026】
可能な様々な基準を使用して一連の計画が作成される。必要なときにいつでも転送されるように、これらのすべての計画、またはそれらの多くの可能な組合せがシステム10上に保持される。呼吸パターンは、適切な評価装置によって、リアルタイム判断に基づいて評価され、潜在的には、前の評価に関連して、予想される呼吸シナリオに基づいて評価される。システム10は、計画または計画の組合せを評価し、引渡しすべき計画または計画の組合せを選択する。選択された計画は、以前に施された治療の以前のフラクションまたは部分とともに蓄積することができる。その計画が転送されると、情報を記録する(または例えばリアルタイム線量再構成に関連して使用する)ことができ、潜在的には、この情報が、(その時点のセッションまたは将来のセッションの間に)将来の放射線を放出する計画を改良するために使用される。
【0027】
図4は、ソフトウェアプログラム78とともに使用することができる様々なモジュールを開示する。これらのモジュールには、最適化モジュール95、計画選択モジュール142、取得モジュール94、受渡しモジュール97、患者フィードバックモジュール100および品質保証モジュール146が含まれる。次に、これらのモジュールの様々な実施態様が記載される。しかし、システム10のすべての構成で、これらのモジュールがすべて必要というわけではないこと、および図4に示されていない他のモジュールをソフトウェアプログラム78とともに使用することができることを理解されたい。また、これらのモジュールを結合して、図示された数よりも少ない数のモジュールとすることができること、それぞれのモジュールは、本明細書の説明の中に開示されていない追加の材料を含むことができること、およびモジュールの名称は説明を容易にするためのものであることは明白である。
【0028】
A.最適化モジュール
前述のとおり、1つの最適化法は、異なる運動位相(または周期など)をそれぞれが表す4D計画のセットを最適化する方法である。呼吸サイクルは、無限または有限フーリエ展開によって記述し、かつ/または近似することができる。最適化モジュールの95の可能な1つの実施態様では、特定の1つの呼吸サイクルが、時間どおりに変化する、異なる周波数、振幅、位相などを有する正弦型および余弦型関数の線形結合の時間の関数として記述される(例えば図7参照)。この条件下で、最適化モジュール95は、それぞれが特定の時刻の引渡しに対して許容される1つの計画を表す一組の計画を生成する。それらの計画または計画の組合せを使用可能にすることによって、より複雑な「規則正しい」または「不規則な」呼吸パターンに対する引渡しを生成することができる。
【0029】
最適化モジュール95の他の実施態様では、それぞれの計画が、所与のパラメータ(例えば周期または軌道)に対する完全な4D計画を表す必要はないが、計画のセットがそれぞれ、運動サイクルの単一の位相に対して適切な静的引渡しを表す。関心領域がその異なる運動位相間で移動すると、計画は自動的に切り替わるであろう。同様に、より多くの画像を生成し、より多くの位相計画を最適化し、かつ/または特定の位相に対する計画を選択するために、位相間を補間することも可能である。
【0030】
さらに、所与の位相またはパラメータのセットに対して使用可能な、異なる最適化基準を利用した複数の計画を有することが可能である。例えば、呼吸位相ごとに計画を1つだけ最適化するのではなしに、複数の計画セットを最適化することが可能である。これは、呼吸位相ごとに、余裕が小さい1つの計画と、より余裕の幅の広い(または他の制約が変化する)他の計画を有することを伴うかもしれない。治療が進むにつれて、関心領域の位置、周期および/または位相、ならびにその速度、不確実性および/または変形に基づいて、計画を動的に選択することができる。ターゲット54が明確に定義されている場合には、余裕の幅が狭いセットから計画を動的に選択することができ、確実性が低い場合には、余裕が大きな計画を選択することができる。
【0031】
複数の位相画像にわたって線量を最適化する1つの方法は、最適化モジュール95が、位相ごとに線量ビームレットを計算し、次いで、画像を関係づける画像変形マップに従ってビームレットを変形させる方法である。この方法を適用することができるが、線量は位相ごとに計算することができ、次いで、変形が調整されたビームレットが必要ないように、変形を使用して追加することができるので、この方法は必要ない。
【0032】
B.計画選択モジュール
計画を選択する方法は、いくつかの可能な基準に基づくことができる。計画選択モジュール142の一実施態様では、計画が、関心領域の位置、周期および/または位相などの先に論じた基準に基づき、これらの基準はそれぞれ、運動検出装置89および取得モジュール94によって取得することができる。同様に、不確実性および/または解剖学的情報も組み込むことができる。測定値は、カメラシステム、レーザシステム、X線または透視システム、CT、MRI、PET、単一光子放射形コンピュータ断層撮影(「SPECT」)、オンラインCT、円錐ビームCT、埋込みマーカ、高周波(「RF」)ローカライザ、超音波、呼吸ベルトまたはカフ、埋込みX線源、音響センサ、歪みゲージ、RFエミッタおよび電極に基づくインピーダンス測定などの適用可能な装置から取得される。ただし、適用可能な装置はこれらに限定されるわけではない。
【0033】
他の実施態様では、計画選択モジュール142が、線量測定特性に基づいて計画を選択する。より具体的には、最適化された計画セクションごとに所望の線量分布が定義される。次いで、治療中に、計画選択モジュール142が、患者のその時点の解剖学的情報およびターゲット情報を与えられた場合に、使用可能な計画のうちのどの計画が、計画線量と最もよく一致するのかを決定する。この計算は、リアルタイム線量計算を含むことができるが、単純化された計算または予め計算された計算によって近似することもできる。
【0034】
他の実施態様では、計画選択モジュールが、予め計算された計算を使用した変形を組み込む。この実施態様は、物理空間内の線量を特定の組織/ターゲット内の線量に関係づける。変形を組み込むことによって、特定の部位における意図された線量分布と一致する計画の選択がより容易になる。変形技法および計算の例が、その内容の全体が参照によって本明細書で組み込まれる、2005年7月22日出願の「SYSTEM AND METHOD FOR FEEDBACK GUIDED QUALITY ASSURANCE AND ADAPTATIONS TO RADIATION THERAPY TREATMENT(放射療法治療へのフィードバック誘導品質保証および適用のためのシステムおよび方法)」という名称の米国特許仮出願第60/701580号に記載されている。
【0035】
なお変形を伴う可能性がある他の実施態様では、所望の線量を計画線量に一致させようとするだけでなく、計画選択モジュール142は同時に、以前のフラクションまたは引渡し中のフラクションの初期との線量の不一致を矯正しようとする。
【0036】
計画選択モジュール142の他の実施態様では、動的計画選択が、単に線量分布(または累積線量分布、変形線量分布、あるいは変形累積線量分布)との一致だけに基づくのではなく、ターゲット線量、敏感な構造の線量または線量−体積ヒストグラム(「DVH」)などの他の基準も使用する。同様に、計画選択はさらに、所与の生物学的結果を達成することに基づく。この実施態様では、生物学的推定量が、線量累積および/または計画選択プロセスに組み込まれる。計画選択モジュール142はさらに、より攻撃的な計画がより許容されると思われる部位、時刻または患者におけるそれらの使用、およびより敏感な位置、時刻または患者におけるより保守的な計画の使用を容易にするために、患者に関する生物学的および臨床的なフィードバックを組み込むことができる。
【0037】
計画選択モジュールの動的計画選択は、患者のその時点の情報に基づく必要があるだけでなく、測定の遅れを考慮し、解剖学的変化の適切な予期の下に計画を引渡しして、測定および処理における遅延を補償するため、過去の情報を使用することもできる。
【0038】
ソフトウェアプログラム78の他の実施態様では、動的に選択可能な計画の一部または全部が事前に最適化されない。高速最適化プログラムを使用して、これらの計画のいくつかは、放射線療法の適用中に生成される。同様に、生理学的変化または解剖学的変化を反映させるために、放射線療法の適用中に既存の計画が変更される。言い換えると、最適化モジュール95と計画選択モジュール142は密接に相互作用して(または統合されて)、高速最適化プログラムおよび選択モジュールを提供する。
【0039】
C.機械的追跡サブモジュールを含む取得モジュール
患者の呼吸位相または運動状態の追跡は、多数ある運動検出装置のうちの多くの装置、および患者の生理を追跡する関連取得ソフトウェアを使用して実行することができる。取得モジュール94は、運動または機械的追跡サブモジュール96を含むことができる。運動検出装置の例には、肺活量計、カメラシステム、立体カメラ、レーザシステム、蛍光透視法、X線システム、CT、埋込みマーカ、RFマーカ、MRI、歪みゲージおよび電極インピーダンス測定が含まれる。ただしこれらに限定されるわけではない。
【0040】
取得モジュール94の一実施態様では、上述の追跡法の代わりに、またはそれに加えて、引渡し中にメガボルテージCT、キロボルテージCTまたは円錐ビームCTシステムなどによって収集されたデータを使用した追跡が実行される。機械的追跡モジュール96は、これらのシステムからのデータを処理して、関心領域の場所、位相および位置、ならびに患者の呼吸位相および解剖学的変化を識別する。この情報は、復元画像から、投射データから、または復元データと投射データの混成物から抽出される。この実施態様はさらに、以前の画像または投射データセットから、あるいは総称画像または投射データセットからの演繹的な情報を組み込むことができる。
【0041】
例えば、腫瘍軌道の4Dのモデルは、計画作成画像から確立され、このモデルは、投射データを使用して検証され、患者のその時点の呼吸位相を識別する。関心の構造またはマーカの存在および位置に関してサイノグラムがチェックされる。この情報は、その時点のまたは最近の患者呼吸位相および腫瘍の位置を識別し、さらに、腫瘍が、予測される位置または時間トラックから外れているかどうか、および、他の如何なる計画が、その時点のまたは将来の解剖学的構造に線量を引渡すのに有用と思われるかを識別する。この情報を使用して、単一または直角門脈/CT投射における位置を、拡大によって検出することができる。
【0042】
他の実装では、機械的追跡サブモジュール96がこの情報を使用して、計画選択において考慮することができる様々な遅延(位置の測定、治療台の測定など)を解析する。この情報はさらに、予想されるターゲット54(または関心領域)の軌道が有効なままであり、適切な補償量を推定するために高周波(雑音、不規則性)から低周波(基本運動)を区別することができるかどうかを検証することができる。機械的追跡サブモジュール96の一部の実装では、この補償が、治療台の動的補正によって部分的に達成される。
【0043】
位相および/または位置の検出に透過放射線を使用するときには、不必要な放射線を最小限に抑えることが好ましい。この理由から、取得モジュール94の一実装は、治療の一部として引渡し中の放射線を使用する。治療は一般に、ターゲット部位54に放射線を放出することだけをその意図としているため、このデータの範囲は一般に限定的である。しかし、取得されるデータの量が、関心領域の必要な特徴、位置または位相を識別するのに十分である可能性もある。
【0044】
他の実装では、取得モジュール94が、患者のより大きな部位に対する伝送データを生み出すために、追加のMLCリーフが短時間「フラッシング」開かれたときに得られる追加情報を取得する。これは、より多くのデータが必要なときには頻繁に、またはより大きな数のリーフを使用して実施し、あるいはこれを、より低い頻度で、またはより少ないリーフを使用して実施して、より少ない情報を取得し、線量を節約することができ、必要に応じて検証することができる。より少ない数のリーフまたは低い頻度を使用するのは例えば、大脳機能局在性がよく知られており、または他の装置も使用されており、または治療品質が検証中の変化にあまり依存しないときであり、あるいは他の理由からである。
【0045】
この低線量の原理は、MLCが取り付けられていない画像化システムにも適用することができる。例えば、検証のために(X線源などの)追加の源および検出器が使用されている場合、当技術分野ではこのようなシステムは、蛍光透視モードでシステムを動作させることによって運動、場合によっては位相を追跡するために使用されることが知られている。しかし、これは、非常に高い線量を患者に与える。したがって、他の実施態様では、機械的追跡サブモジュール96が、連続使用とは対照的に、非常に遅いまたは離散的な蛍光透視法の使用によって位相および/または位置情報を検出し、検証する。例えば、ターゲット(または関心領域)の位置または位相を決定しまたは補強するのに、連続追跡を使用するのではなく、特定の時刻に蛍光透視フレームが撮影される。これらの時刻は、等間隔とすることができ、または他の患者フィードバックに基づいて間隔を置くことができ、または予想される運動位相または位置に基づいて間隔を置くことができる。そのため、この実施態様は、独立した測定に使用することができ、あるいは、外部検証装置または代用物ベースの検証装置を低線量内部画像で補強するために使用することができる。
【0046】
1.強度変調放射線療法(「IMRT」)によるリアルタイム呼吸運動監視
腫瘍位置のリアルタイム追跡または内臓運動の監視は、放射線療法を3次元(「3D」)から4次元(「4D」)に拡張するのに重要である。ゲーティング、追跡、BSDまたは自由呼吸出産(「FBD」)技法のいずれに基づくにせよ、4D放射線治療技法はすべて、呼吸状態または少なくとも腫瘍位置をリアルタイムで知ることを要求する。使用可能な呼吸監視技法には、マーカ法および空気流法が含まれる。これらの方法はともに、何らかの代用物によって呼吸運動を間接的に監視する。マーカ法は、外部または内部マーカを代用物として使用する。これらのマーカを追跡するためにカメラ(外部マーカ用)または蛍光透視装置(内部マーカ用)が使用される。空気流法は、呼吸している間の空気流を測定するために高温計を使用し、空気流は、呼吸運動の代用物として使用される。これらの代用物法の欠点には以下のものが含まれる:1)代用物が内部呼吸運動にどれくらいよく相関しているのか、およびどのような種類の相関であるのかが疑わしい;2)呼吸運動は複雑な4D変形プロセスであり、したがって、1つまたは少数のパラメータを有する代用物は、大きな身体部分の呼吸運動に対して非常に限定された表現を有する;3)代用物と呼吸運動の間に(潜在的に不安定な)遅延が存在する。
【0047】
1つの代替法は、呼吸運動を監視する直接法を含む。この方法は、治療ビームに対する内臓運動を直接に監視する。この方法は、検出器システムを有するシステム10に直接に実装することができる。検出器システムの例は、TomoTherapy,Inc.社(ウェブサイトはwww.tomotherapy.com)によって提供されているHI−ARTブランドの放射線療法システムである。カメラ、肺活量計、または蛍光透視装置などの追加の装置は必要ない。余分な放射線も必要ない。
【0048】
例えば、放射線療法治療システムは、完全な3D画像セットを有することができ、それぞれの3D画像は、ある呼吸状態(または位相)における患者のスナップショットである。治療の前に、計画作成フルエンスマップ(またはサイノグラム)が一般に使用可能である。患者の3D表現に基づいて、コンピュータ62は、計画作成サイノグラムの投射(線)ごとに、直接光線追跡またはモンテカルロシミュレーションによって、検出器応答(出力信号)を計算する。したがって、4D画像のN個のすべての位相に対して、システムは、投射ごとにN個の出力信号を事前に計算する。この事前計算を実行した後は、呼吸運動の監視は簡単である。このシステムは、実際の検出器信号を事前計算されたN個の検出器信号と比較するだけでよく、最も大きな類似性測度を有するものが、そのときの呼吸位相を与える。単純な相関を類似性測度として使用することができる。相関は以下のように定義することができる。
【0049】
【数1】
【0050】
上式で、
siは、i番目の位相に対応する事前計算された検出信号、
sは、測定された検出信号、
【0051】
【数2】
【0052】
は、N個の位相検出器信号の平均
【0053】
【数3】
【0054】
であり、この検出器信号は、すべての検出器から信号のベクトルを指す。
【0055】
D.機械制御サブモジュールを含む受渡しモジュール
いくつかの構成では、機械的方法を、前述の自由呼吸技法を補正するために使用し、または従来の計画(例えば静的計画、呼吸停止計画など)とともに使用することができる。例えば、1次コリメータ38は、ビームを変調させる変調装置42とともに、関心領域の運動を追跡することができる。他の例として、治療台70を使用して、動的再配置を容易にすることができる。
【0056】
一構成では、機械的追跡モジュール96が、引渡しの全体を通じて、患者位相を連続的に決定する。関連構造の計画作成位置からのオフセットが、受渡しモジュール97の機械制御サブモジュール99によって決定される。サブモジュール99は、このオフセットを横成分と縦成分とに分解する。治療中の(より一般的である)上下方向の運動の影響を受けるターゲット54は、1次コリメータ38を移動することによって考慮される。1次コリメータ38は、変調装置42の前に一組のジョーを含むことができる。これらのジョーは、放射線ビームが通過することができる開口を画定し、そのサイズを調整する。あるいは、セグメント化された1次コリメーションが、ターゲット54を追跡する形状を形成することを可能にし、ビームは、変調装置42によって変調される。他の運動を生み出し、または運動度を拡張するために、治療台運動を組み合わせて使用することもできる。
【0057】
運動を補正する他の機械的技法との違いは、ここで示された技法は、上下方向の運動を考慮するために変調装置42を使用しないことである。1次コリメータ38が、この方向の運動を単独でまたは治療台70との組合せで追跡するために使用される。利点の1つは、原則として、この運動を補正するのに計画の変更が必要ないことである(異なる方向の出力のいくつかの調整を除く)。しかし、この技法を、本明細書に記載された動的計画変更または切替え法に組み込むこともできる。さらに、異なるコリメータ位置が、異なるジョー位置に関連するビームの変化を組み込むように動的計画を最適化することができる。他の実装では、機械制御サブモジュール99が、別個の計画なしで変化をモデル化する。
【0058】
(上下でない)他の方向の運動に対する補正も考慮することができる。このビーム方向の補正は、治療台70を使用して、または逆2乗補正を考慮したMLC変調時刻の単純な変更によって補正される。この運動を単独でまたはMLC時刻の変更とともに考慮するために、治療台運動を使用することもできる。
【0059】
ビームに垂直な平面上の(すなわち上下方向でない)運動は、リーフパターンを変更することによって、またはリーフパターンと治療台運動の組合せによって考慮することができる。コリメータ運動などの機械的運動は、計画作成プロセスに組み込み、または検出された運動に応答して実行することができることに留意されたい。すなわち、場合によっては、予想される患者呼吸トレースに基づいてコリメータ運動が事前にプログラムされる。さらに、患者の運動が予想されるトレースをたどらない場合には、コリメータ運動または計画が動的に変更される。その他の場合、コリメータ38の運動は、患者運動の偏差を純粋に補償する方法である。これらの条件の下で、ターゲット54および敏感な構造の運動はリアルタイムで考慮される。コリメータ38の運動の変更またはリーフパターンの変更によって、治療計画の再整理または治療計画のスケーリングが必要となる可能性があることが予想される。
【0060】
E.患者フィードバックモジュール
本明細書に記載された様々な技法は、必要な呼吸パターンの強制から患者を解放するように設計されているが、このことは、誘導システムの補助なしで、または「ターゲット」呼吸トレースなしで患者が呼吸することを要求しない。その代わりに、システム100のいくつかの構成では、たとえ患者が意図された呼吸トラックから外れたとしても、治療はそれに応じて動的に調整される。
【0061】
この程度まで、患者フィードバックモジュール100は、それらの運動制御に関するフィードバック、および潜在的には誘導信号を患者に提供することができる。これは、ゴーグルシステム、ガントリの内側のまたはガントリから見ることができる(ミラー眼鏡または補助装置を通して潜在的に見ることができる)ビデオ映写、音声フィードバックなどを使用して実行することができる。
【0062】
患者フィードバックモジュール100はさらに、人工呼吸器による補助の下で患者に意図的に呼吸させることによって、患者の動きを助けることができる。人工呼吸器は、より再現可能な標準的な呼吸パターンに患者の呼吸を合わせるのに役立つが、それでも偏差は、複数の計画の使用および動的計画切替えによって理想的に処理されるであろう。いくつかのケースでは、人工呼吸器による患者の活発な呼吸が、3次元(「3D」)計画を引渡すのに適切である可能性もある。
【0063】
F.品質保証モジュール
システム10のいくつかの構成の他の態様は、品質保証および検証のための様々な技法の準備である。例えば、ファントムでの妥当性検証に適用可能な品質保証モジュール146のこのような1つの技法は、意図的に異なる計画を作成して、引渡し中の計画が、電離箱、シンチレーション流体、フィルム、熱ルミネッセンス線量計(「TLD」)、ダイオード検出器、フラットパネルイメージャ、あるいは他の放射線検出器またはモニタなどの外部測定装置を使用して容易に決定されるようにする方法である。次いで、運動−応答曲線を変更することによって、システムは、計画変更がどのくらい高速かつ適切に応答するのかを検証する。
【0064】
他の実装では、品質保証モジュール146が、治療による記録された運動トレースに基づいて4D画像セットの線量を再計算することによって、患者とファントムの両方に適用することができる妥当性検証を実行する。4D画像を横切って累積された線量は、理想的には変形のために調整された正味の放出線量を提供する。正味の線量測定効果の妥当性および移動する部位と移動しない部位の両方が正確に処理されることの妥当性を検証するために、この線量が、患者の内部、患者の体表または患者とは別個の点において測定された線量と比較される。測定された運動パターンに基づく4D線量計算のこの態様も同様に、本明細書で説明された自由呼吸調整引渡しの他の引渡しに適用することができる。
【0065】
詳細な実施例
図9は、移動する関心領域に放射線療法を施す本発明の一実装に基づく方法の流れ図を示す。ソフトウェアプログラム78は、予想される運動(例えば患者の呼吸パターン)を表す複数のトラック102〜130(図5および6)を生成する(ブロック174)。治療計画は、最適化モジュール95によって、トラック102〜130に対応するように最適化される(ブロック178)。例えば、それぞれの治療計画を、トラック102〜130のうちの1つに対応するように最適化することができる。他の例として、複数の治療計画を最適化し、次いで、トラック102〜130のうちの1つに対応するように結合することができる。患者14は、トラック102〜130のうちの1つに従おうとする(ブロック182)。治療が施されている間に、取得モジュール94が、関心領域(例えばターゲット54)の運動に関係した運動データを取得する(ブロック186)。機械的追跡モジュール96が、運動検出装置89から(運動トラック138として示された)運動データを受け取る(ブロック190)。計画選択モジュール142が、その運動データが、患者14が従っている選択されたトラックから外れているかどうかを決定する(ブロック194)。その偏差が指定されたしきい値よりも大きいかどうかを決定するため、計画選択モジュール142は、その偏差をある範囲と比較することができる。計画選択モジュール142は、その運動がその時点で最も密接に対応しているトラック102〜130を決定する(ブロック198)。計画選択モジュール142は、識別されたトラック102〜130に対応する治療計画を選択する(ブロック202)。選択された計画は、患者の実際の運動に対応するために自動的に切り替わるため、患者の治療は、複数の治療計画のいくつかの部分の引渡しを含むことができる。これは、図7の線134として最もよく示されている。線134が別の運動トラック102〜130に移ると、対応する計画が選択される。より整合性があるトラック134を促進するため、患者フィードバックモジュール100から患者に、患者フィードバックを提供することができる。
【0066】
図10は、放射線療法治療の適用に含めることができるプロセスの流れ図を示す。このプロセスは計画の作成から始まる(ブロック300)。前述のとおり、計画および位相は、数学モデル、変形モデルおよび生理学的モデルを使用して決定することができる。複数の計画(ブロック304)が作成された後、それらを、放射線療法装置18へロードすることができる(ブロック308)。より具体的には、放射線療法装置18の構成要素および動作を(例えば受渡しモジュール97を介して)制御する能力を有するコンピュータ62へ、それらの計画をロードすることができる。
【0067】
治療計画が放射線療法装置18(またはコンピュータ62)に記憶された後、患者14の放射線療法治療を始めることができる。治療の最初の段階では、運動パターンが監視され、評価される(ブロック312)。前述のとおり、運動パターンは、例えば運動検出装置89および取得モジュール94を使用して測定することができる。運動パターンを監視した後、その運動パターンに基づいて、潜在的な治療計画のリストを作成することができる(ブロック316)。治療計画は、計画と患者14の運動パターンとの間の時間関係および空間関係に従って評価することができる。潜在的な治療計画のリストが決定された後、治療計画または治療計画の組合せを選択することができる(ブロック320)。治療計画は、コンピュータ62に従って自動的に、または医師または他の専門家によって手動で選択することができる。一般に、関心領域の運動に最もよく一致した計画または計画の組合せが選択される。治療計画を選択した後、それを評価することができる(ブロック324)。評価パラメータには、関心領域の位置、関心領域の変形、投与されている線量、またはこれらの組合せに関する情報などが含まれる。いくつかの実装では、ブロック320で選択された計画が(例えば品質保証モジュール146によって)評価され、それが有効な治療であるとみなされない場合には、引渡す潜在的な治療計画を再評価するため、このプロセスはブロック316に戻ることができる。
【0068】
しかし、治療計画が評価され、それが、意図された結果を有すると見込まれた場合、その治療計画を、放射線療法装置18によって引渡すことができる(ブロック328)。計画の引渡し中に、このプロセスは戻ることができ、それ以降のステップを繰り返すことができる。他の実施態様では、計画が引渡しされた後、その計画が検証される(ブロック332)。引渡しの検証を使用して、患者14に実際に引渡しされた放射線の線量および起こった変形を決定することができる。前述のとおり、線量および変形の情報は、その後にどの計画を実施するのかに影響を及ぼすことができる。計画の引渡しが検証された後、このプロセスは、ブロック300の計画作成ステージに戻ることができ、プロセスを繰り返すことができる。他の実施態様では、プロセスが運動評価ブロック312に戻され、プロセスの残りステップが繰り返される。
【0069】
1.詳細な例:ターゲットを移動するためのらせん形共面IMRTビームの放出
前述のとおり、本発明を組み込むことができる放射線療法治療システムの例は、TomoTherapy,Inc.社(ウェブサイトはwww.tomotherapy.com)によって提供されているHI−ARTブランドの放射線療法システムである。TOMOTHERAPY HI−ARTブランドのシステムは、多くの態様で従来のIMRTに優るらせん形放射線療法治療システムの一例である。らせん形共面強度変調ビームの放出は利点の一例である。一実装では、このらせん形放出システムが一般に、以下の特徴を有する:1.固定されたジョー幅、2.固定されたジョー位置および向き、3.一定の治療台速度、4.一定のガントリ回転速度、ならびに5)強度変調のための1次元(1D)バイナリMLC。
【0070】
しかし、一方で、この放出システムのこのような単純さは、移動する関心領域の状況(例えばターゲット運動は呼吸運動に起因する)においていくつかの限界も提示する。移動する関心領域の従来のゲーティングおよび追跡技法は、らせん形システムにおいて容易に実現することができない。例えば、ゲーティング技法は、ガントリの回転または治療台の運動を止めることを要求する。追跡技法は、リアルタイムジョー傾斜を要求する。患者が常に計画呼吸パターンに従う場合、BSDは魅力的である。しかし、らせん形システムが、位相外れの呼吸を補正することは難しい。
【0071】
修正らせん形システムの一構成に関して、このシステムは以下のことを仮定する:1.ターゲットの位置をリアルタイムで決定することができる;2.ターゲットの運動は剛体運動であり、変形は、たとえあったとしても、剛体運動に比べて無視することができる;3.1つの投射内のターゲット運動は無視することができる。仮定1は、治療前の患者の体の(4D CTなどの)4D表現と、(先に提示されたカメラ、肺活量計または治療ビームなどを使用した)リアルタイム位相決定技法との組合せによって実行可能である。仮定2は、大部分のケースに対して合理的である。これは、従来のIMRTで使用される追跡技法の基本的な仮定でもある。仮定3は実際に、TomoTherapy,Inc.社によって提供されるHI−ARTシステムなどのいくつかの引渡しシステムの時間分解能である。
【0072】
いくつかの構成では、らせん形放出が投射状である。それぞれの投射は3つのパラメータによって指示される。
kは、回転インデックス(kは整数)、
φは、ガントリエンジェル(φ∈[0,2π])、
pは、MLCリーフインデックス p∈[−P/2,P/2]である。
対(k,φ)は投射インデックスからなる。時間tは、投射インデックスと線形比例する(t=t(k,φ))。
【0073】
1回転あたりの治療台の進行をΔZとする。このとき、治療台位置は
[e2] ΔZ(k,φ)=(k+φ/(2π))ΔZ
である。
【0074】
計画作成サイノグラムをI=I(k,φ,p)とする。関数値I(k,φ,p)は、投射(k,φ)におけるリーフpに対するビームオン時間を表す。計画作成自体は、静的患者モデル(3D計画)またはBSDモデル(4D計画)に基づくことができる。
【0075】
引渡しサイノグラムをI’=I’(k,φ,p)とする。このサブセクションの1つの目的は、移動するターゲットの場合のI’=I’(k,φ,p)を決定することにある。
x=x(k,φ):投射(k,φ)における計画作成ターゲット位置。計画作成自体は、静的患者モデル(3D計画作成)またはBSDモデル(4D計画作成)に基づくことができる。x=(x,y,z)。
【0076】
x’=x’(k,φ):投射(k,φ)における放出ターゲット位置。これは、仮定1に従って決定される。
u=u(k,φ)=x’(k,φ)−x(k,φ):引渡しと計画作成の間のターゲットの変位。u=(ux,uy,uz)。
【0077】
さらに、横ターゲット変位を、ビームに垂直な方向の(MLC線に平行な)成分u⊥と、ビームに平行な方向の成分u//とに分解することができる。結果は以下のとおりである。
【0078】
[e3]u⊥(k,φ)=ux(k,φ)cosφ+uy(k,φ)sinφ
[e4]u//(k,φ)=ux(k,φ)sinφ+uy(k,φ)cosφ
ビームに平行な方向の運動成分u//に関しては、逆自乗補正および減衰補正が必要である。補正係数をrとする。
【0079】
[e5]r(k,φ)=r1(k,φ)r2(k,φ)
上式で、r1(k,φ)は逆自乗補正である。計画作成源−ターゲット距離をs(k,φ)とすると以下のとおり。
【0080】
【数4】
【0081】
減衰補正をr2(k,φ)とすると以下のとおり。
【0082】
【数5】
【0083】
式[e7]は、システムが4D CTを有する場合に限って実行可能であり、そうでなければ、システムは、他のいくつかの近似値を使用しなければならない。
ビームに垂直な方向の平面内運動成分u⊥は、MLCパターンをシフトすることによって補正可能である。すなわち以下のとおりである。
【0084】
[e8]p’(k,φ)=p(k,φ)+u⊥(k,φ)
z成分の運動を補正するためには、投射をシフトする必要がある。さらに、RARが計画された最適の間隔を有するよう、計画作成サイノグラムと同じガントリ角度を保たなければならない。したがって、回転インデックスkを変更するだけでよい。
【0085】
【数6】
【0086】
[e10]φ’=φ
随意運動パターンのため、いくつかの投射が同じ投射にマップし、いくつかの投射がまったくマップされないことも起こりうる。随意に移動するターゲット54に対する放出戦略が、以下の擬似コードによって示されたとおりになるように、それぞれの投射に対する達成可能な最大ビームオン時間を、Imaxとすることを考えなければならない。
【0087】
【数7】
【0088】
図11は、横運動補正の表現である。点線は、計画ターゲット位置およびビーム強度であり、実線は、放出ターゲット位置およびビーム強度である。
図12は、移動するターゲット54用の静的計画を放出すらせん形システムを示す図である。実線は、それぞれの投射に対する計画ターゲット位置である。点線は、放出中の実際のターゲット位置である。正方形は、削られた投射を指示し、三角形は、ガントリおよび治療台がその位置にあるときの実際のターゲットを指示する。円は、その瞬間にどの投射を放出する必要があるかを指示する。円は通常、2つの回転間に位置する。ビーム強度を決定するために、一般に補間法を使用する必要がある。
【0089】
図13は、ある呼吸運動パターンが計画され(BSD計画、実線)、実際のターゲット位置(点線)がBSD計画とは異なることを除き、図12と同様である。正方形は、削られた投射を指示し、三角形は、ガントリおよび治療台がその位置にあるときの実際のターゲットを指示する。円は、その瞬間にどの投射を放出する必要があるかを指示する。円は通常、2つの回転間に位置する。ビーム強度を決定するために、補間法を使用する必要がある。
【0090】
したがって、本発明は特に、移動する関心領域に放射線療法を施す新規の有用なシステムおよび方法を提供する。前記特許請求の範囲には、本発明の様々な特徴および利点が記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】放射線療法治療システムの部分透視図、部分概略図である。
【図2】図1に示された放射線療法治療システムにおいて使用することができるマルチリーフコリメータの部分透視図、部分概略図である。
【図3】図1の放射線療法治療システムの概略図である。
【図4】図1の放射線療法治療システムにおいて使用することができるソフトウェアプログラムのブロック図である。
【図5】運動トラックのグラフ表現である。
【図6】複数の運動トラックのグラフ表現である。
【図7】複数の運動トラックのグラフ表現および患者の運動トラックの表現である。
【図8】運動トラックのグラフ表現である。
【図9】移動する関心領域に放射線療法治療を施す本発明の一実施形態に基づく方法の流れ図である。
【図10】移動する関心領域に放射線療法治療を施す本発明の一実施形態に基づく方法の流れ図である。
【図11】横運動補正のグラフ表現である。
【図12】移動する関心領域の場合の静的計画のグラフ表現である。
【図13】移動する関心領域の場合のBSD計画のグラフ表現である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、ともに参照によって本明細書に組み込まれる2005年7月22日出願の「SYSTEM AND METHOD OF DELIVERING RADIATION THERAPY TO A MOVING TARGET(移動ターゲットへ放射療法を施すシステムおよび方法)」という名称の米国特許仮出願第60/701541号、および2005年7月22日出願の「SYSTEM AND METHOD FOR FEEDBACK GUIDED QUALITY ASSURANCE AND ADAPTATIONS TO RADIATION THERAPY TREATMENT(放射療法治療へのフィードバック誘導品質保証および適用のためのシステムおよび方法)」という名称の米国特許仮出願第60/701580号の恩典を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、放射線療法の実践には、コンピュータおよびネットワーク化、放射線療法治療計画作成ソフトウェア、ならびに医療用画像化様式(コンピュータ断層撮影法(「CT」)、磁気共鳴画像法(「MRI」)、超音波法(「US」)、陽電子放射断層撮影法(「PET」)など)における改良が組み入れられてきた。場合によっては、放射線療法の計画作成および引渡しのための技法が使用される。例えば、肺の腫瘍など、移動するターゲットを治療するある方法は、ターゲットが指定された軌道窓の中にあるときにだけ、放射線を「ゲーティング」すなわち放出することを含む。この方法は、周期的時間間隔の間だけターゲットに照射されるため、非効率である。
【0003】
移動するターゲットを治療する別の1つの方法は、呼吸同期照射法(「BSD」)と呼ばれる。この技法は、治療中にターゲットがたどると予想されるトラック、すなわち予想される運動経路を利用する。そうするために、ターゲットがこの予想されるトラック上にとどまると仮定した計画が作成され、これは、治療計画の全体にわたって予想される周期および位相を有する。厳密に定義されたトラックに従うよう患者に促す音声および視覚誘導を使用することができる。しかし、放射線療法の患者の大部分にとって、厳密に定義されたパターンに従うことは難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
領域の位置、周期および位相についてのプリオリ知識に依存することなく、移動する関心領域に放射線を放出することができる。患者の解剖学的運動の変化を反映させ、放射線治療をより効果的に適用するために、複数の計画間の動的切替え、または「治療中(on the fly)」の計画作成を使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本発明は、放射線療法を受けている患者の呼吸位相を検出する方法を提供する。この方法は、呼吸サイクルの位相を表す複数の患者画像を取得するステップと、患者に放射線を放出するステップと、放射線を放出するステップ中に、患者の伝送データを収集するステップと、伝送データを複数の患者画像と比較するステップとを含む。
【0006】
他の実施形態では、本発明が、放射線療法を受けている患者の呼吸位相を検出するシステムを提供する。このシステムは、コンピュータプロセッサ、患者に放射線を放出するように動作可能な放射線源、および透過放射線を収集するように動作可能な放射線検出器を含む放射線療法装置を含む。このシステムはさらに、コンピュータプロセッサがアクセス可能なコンピュータ可読媒体に記憶されたソフトウェアプログラムを含む。このソフトウェアプログラムは、呼吸サイクルの位相を表す複数の患者画像を取得し、前記収集された透過放射線から前記患者の伝送データを取得し、前記伝送データを前記複数の患者画像と比較するように動作可能である。
【0007】
本発明のその他の形態は、以下の詳細な説明および添付図面を検討することによって明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載された、または添付図面に示された構造および構成要素の配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態を有することができ、様々な方法で実践し、または実施することができる。さらに、本明細書で使用される語句および用語は、説明を目的としたものであり、それらを、限定するものと考えるべきではないことを理解されたい。「含む」、「備える」または「有する」およびそれらの変形の使用は以後に記載された項目およびそれらの均等物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。特に指定されまたは限定されない限り、用語「取り付けられた」、「接続された」、「支持された」および「結合された」ならびに本明細書中のそれらの変形は幅広く使用され、直接と間接の両方の取付け、接続、支持および結合を包含する。さらに、「接続された」および「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されない。
【0009】
本明細書では、図面を説明する際に、上、下、下方、上方、後方、底、前、後など、方向について言及される場合があるが、これらの言及は、便宜上、(普通に見たときの)図面に対してなされる。これらの方向は、文字通りに解釈されることを意図したものではなく、また、任意の形態に本発明を限定することを意図したものでもない。さらに、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、本明細書では説明の目的で使用され、相対的な重要性または有意性を指示しまたは暗示することを意図したものではない。
【0010】
さらに、本発明の実施形態は、両方のハードウェア、ソフトウェア、電子構成要素またはモジュールを含み、それらは、議論の目的上、あたかも大部分の構成要素が単にハードウェアとして実現されるように図示され、説明されることがあることを理解された。しかし、当業者は、この詳細な説明を読むことによって、少なくとも1つの実装では、本発明の電子ベースの諸態様をソフトウェアとして実装することができることを理解するであろう。そのため、ハードウェアおよびソフトウェアベースの複数の装置、ならびに複数の様々な構造構成要素を利用して、本発明を実装することができることに留意されたい。さらに、後の段落で説明するように、図面に示された特定の機械的構成は、本発明の実施形態を例示することを意図したものであり、他の代替の機械的構成が可能である。
【0011】
図1は、患者14に放射線療法を提供することができる放射線療法治療システム10を示す。放射線療法治療は、光子ベースの放射線療法、近接照射療法、電子線療法、陽子、中性子または粒子療法、あるいは他のタイプの治療法を含むことができる。放射線療法治療システム10は、ガントリ22を有する放射線療法装置18を含む。図面に示されたガントリ22は環形ガントリであり、すなわち360°の弧を描いて延び、完全な環または円を形成しているが、他のタイプの取付け構成を使用することもできる。例えば、C字型、部分環ガントリまたはロボットアームを使用することができる。
【0012】
ガントリ22は、光子放射線ビーム34を生成するように動作可能な放射線源26と直線加速器30とを有する放射線モジュールを支持することができる。この放射線モジュールはさらに、放射線ビーム34を変更または変調するように動作可能な変調装置42を含むことできる。変調装置42は、放射線ビーム34を変調し、放射線ビーム34を患者14に向かって導く。具体的には、患者の一部分に向かって放射線ビーム34が導かれる。広く言えば、この患者の一部分には全身が含まれるかもしれないが、この部分は一般的には全身よりも小さく、2次元の面積および/または3次元の体積によって定義することができる。ターゲットまたはターゲット部位(54として示されている)と呼ぶことができる放射線を受け取らせたい部分は、関心領域の一例である。他のタイプの関心領域は危険を伴う領域である。ある1つの部分が危険を伴う領域を含む場合、放射線ビームは、その危険を伴う領域からそらされることが好ましい。患者14は、放射線療法を受け取る必要があるターゲット部位54を2つ以上有することがある。このような変調は時に、強度変調放射線療法(「IMRT」)と呼ばれる。
【0013】
放射線モジュールを患者14に対して様々な回転方向位置および/または軸方向位置に配置することができる他の枠組みを使用してもよい。さらに、放射線モジュールは、ガントリ22の形状に従わない経路上を移動してもよい。例えば、図示されたガントリ22が全体に円形であるとしても、放射線モジュールは非円形経路上を移動することができる。
【0014】
図2に示された一構造では、変調装置42がコリメーション装置を含む。このコリメーション装置は、一組のジョーを有する1次コリメータ38を含む。これらのジョーは、放射線ビームが通過することができる開口を画定し、この開口のサイズを調整する。このコリメーション装置はさらに、マルチリーフコリメータ(MLC)を含み、このMLCは、強度変調を提供するためにある位置から別の位置へ移動するように動作可能なインタレースされた複数のリーフ50を含む。リーフ50はまた、最小限に開いた位置と最大限に開いた位置との間のどの位置へも移動することができることに留意されたい。インタレースされた複数のリーフ50は、放射線ビーム34が患者14のターゲット54に到達する前に、放射線ビーム34の強度、サイズおよび形状を変調する。放射線の通過を許しまたは妨げるために各リーフ50を高速に開閉できるように、各リーフ50は、モータまたは空気弁など、アクチュエータ58によって独立に制御される。アクチュエータ58は、コンピュータ62および/またはコントローラによって制御することができる。
【0015】
放射線療法治療システム10はさらに、放射線モジュールからまたは別個の放射線源から放射線ビームを受け取るように動作可能な検出器66、例えばキロボルテージまたはメガボルテージ検出器を含むことができる。放射線モジュールおよび検出器66は潜在的に、患者14のCT画像を生成するコンピュータ断層撮影(CT)システムとして動作することができる。放射線モジュールは、患者14のターゲット54に向かって放射線ビーム34を発射する。これらのCT画像は、扇形幾何形状、マルチスライス形幾何形状または円錐ビーム形幾何形状を有する放射線ビーム34を使用して取得することができる。さらに、CT画像は、メガボルテージエネルギーまたはキロボルテージエネルギーを引渡す直線加速器30を使用して取得することもできる。ターゲット54および周囲組織はこの放射線の一部を吸収する。
【0016】
放射線療法治療システム10はさらに、治療台70(図1に示されている)など、患者14を支持する患者サポートを含むことができる。治療台70は、少なくとも一軸に沿ってx、yまたはz方向に移動する。他の構造では、この患者サポートを、患者の体の任意の部分を支持するように適合された装置とすることができ、この患者サポートは、患者の全身を支持しなければならない装置に限定されない。システム10はさらに、治療台70の位置を操作するように動作可能な駆動システム74を含むことができる。駆動システム74はコンピュータ62によって制御することができる。
【0017】
コンピュータ62は、様々なソフトウェアプログラムおよび/または通信アプリケーションを実行するオペレーティングシステムを含む。具体的には、コンピュータ62は、放射線療法装置18と通信するように動作可能なソフトウェアプログラム78を含むことができる。コンピュータ62は、医療従事者によってアクセスされるように適合された適切な任意の入出力装置を含むことができる。コンピュータ62は、プロセッサ、I/Oインターフェース、記憶装置ないしメモリなどのハードウェアを含むことができる。コンピュータ62はさらに、キーボードやマウスなどの入力装置を含むことができる。コンピュータ62はさらに、モニタなどの出力装置を含むことができる。さらに、コンピュータ62は、プリンタやスキャナなどの周辺装置を含むことができる。
【0018】
図3に示されているように、放射線療法装置18は、コンピュータ62と直接に通信し、かつ/またはネットワーク82を介して通信する。放射線療法装置18は、ネットワーク82を介して、他の放射線療法装置18とも通信することができる。同様に、それぞれの放射線療法装置18のコンピュータ62は、他の放射線療法装置18のコンピュータ62と通信することができる。コンピュータ62および放射線療法装置18はさらに、データベース86およびサーバ90と通信することができる。複数のデータベース86およびサーバ90がネットワーク82と通信することができる。ソフトウェアプログラム78はサーバ90上に存在することもできることに留意されたい。
【0019】
ネットワーク82は、任意のネットワーク化技術またはネットワーク化トポロジ、あるいはネットワーク化技術とトポロジの組合せに従って構築することができ、複数のサブネットワークを含むことができる。図3に示されたコンピュータ62と装置18の間の接続は、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、公衆電話交換網(「PSTN」)、無線ネットワーク、イントラネット、インターネットまたは他の適切なネットワークを介して実施することができる。病院または医療施設では、図3に示されたコンピュータ62と装置18の間の接続を、任意のバージョンおよび/または他の必要なプロトコルを有する、ヘルスレベルセブン(「HL7」)プロトコルまたは他のプロトコルを介して実施することができる。HL7は、健康管理環境における電子データ交換用の、ベンダが異なる2つのコンピュータアプリケーション(送信側と受信側)間のインターフェースの実施態様を指定する標準プロトコルである。HL7は、健康管理機関が、異なるアプリケーションシステムに由来する鍵となるデータセットを交換することを可能にする。具体的には、HL7は、交換されるデータ、相互交換のタイミング、およびアプリケーションへのエラーの伝達を定義することができる。フォーマットは一般に、事実上総称的であり、必要とするアプリケーションの要求を満たすように構成することができる。
【0020】
図3に示されたコンピュータ62と放射線療法装置18との間の通信は、任意のバージョンおよび/または他の必要なプロトコルを有する医用画像通信規格(Digital Imaging and Communications in Medicine(医学におけるデジタル描写法および通信):「DICOM」)プロトコルによって実施することもできる。DICOMは、アメリカ電気製造業者協会(「NEMA」)によって策定された、異なる医療機器間で医療用画像関連データを引渡すのに使用されるフォーマットを定義した国際通信規格である。DICOM RTは、特に放射線療法データを対象とした規格を指す。
【0021】
図3の双方向の矢印は概して、ネットワーク82と、任意の1つのコンピュータ62、放射線療法装置18および図3に示された他の構成要素との間の双方向通信および双方向情報転送を表す。しかし、医療機器によっては、一方向通信および一方向情報転送だけしか必要がない場合もある。
【0022】
様々な条件および関心領域に対応するために、前述のマルチリーフコリメータは、放射線ビーム34の強度変調を提供することができる。より具体的には、マルチリーフコリメータ46のリーフ50を移動することによって、放射線ビーム34の強度を増大または低減させることができる。しかし、動いているターゲット54(例えば、肺、心臓、消化トラックなどの腫瘍)は、しばしば繰返しパターンでは移動しないため、連続ビーム34で治療するのが難しい。
【0023】
後述するように、ソフトウェアプログラム78は、患者14に引渡しされる放射線量を、関心領域の実際の運動に従って変更することによって、移動する関心領域に対応することができる。本発明の一実施形態に基づく例示的なソフトウェアプログラム78が、図4に概略的に示されている。このソフトウェアプログラムは、関心領域の位置、周期および位相についての演繹的な知識に依存することなく関心領域に放射線を放出する1つの解決策を提示する。1つの方法は、一群の放出計画の事前生成、および患者の解剖学的運動の変化を反映させるための計画間の機能的切替えを利用する。
【0024】
一実施態様は、最初に、ターゲットの軌道、呼吸の位相および治療全体の周期を仮定したBSD型の治療を最適化する。しかし、その1つの計画を最適化することに加えて、基本となるBSD計画とは異なる周期、呼吸位相または他のパラメータをそれぞれが潜在的に有する追加の計画セットを最適化することができる。次いで、治療中に、患者は最初に、BSD計画に示されたターゲットトレースに従うことを試みる。しかし、患者の呼吸が、指定されたしきい値を超えてこの計画から逸脱した場合には、その計画は自動的に、その時点の部位パラメータにより一致した1つの代替計画に切り替わる。患者の随意の呼吸トレースに対する引渡しが、図7の太線に示されている。したがって、この方法の1つの利益は、自動エラー訂正を有するBSD品質の引渡しが可能であり、患者に課せられる運動再現要求が低いことである。
【0025】
他の実施態様では、基本の4次元(「4D」)計画に従うのではなく、引渡し中に患者が自由に呼吸すると、計画が自動的に切り替わる。所望ならば、咳などの特に不規則な呼吸を識別することができ、呼吸が指定された許容範囲に再び戻るまで、治療を一時的に遅らせることができる。同様に、関心領域の位置が明確に定義されていない呼吸位相または運動部位がある場合には、それらの位相の間、治療を意図的に回避することができる。このような判断は、計画作成時に実施することができるが、患者の解剖学的生理構造の知覚された変化に基づいて動的に実施することもできる。
【0026】
可能な様々な基準を使用して一連の計画が作成される。必要なときにいつでも転送されるように、これらのすべての計画、またはそれらの多くの可能な組合せがシステム10上に保持される。呼吸パターンは、適切な評価装置によって、リアルタイム判断に基づいて評価され、潜在的には、前の評価に関連して、予想される呼吸シナリオに基づいて評価される。システム10は、計画または計画の組合せを評価し、引渡しすべき計画または計画の組合せを選択する。選択された計画は、以前に施された治療の以前のフラクションまたは部分とともに蓄積することができる。その計画が転送されると、情報を記録する(または例えばリアルタイム線量再構成に関連して使用する)ことができ、潜在的には、この情報が、(その時点のセッションまたは将来のセッションの間に)将来の放射線を放出する計画を改良するために使用される。
【0027】
図4は、ソフトウェアプログラム78とともに使用することができる様々なモジュールを開示する。これらのモジュールには、最適化モジュール95、計画選択モジュール142、取得モジュール94、受渡しモジュール97、患者フィードバックモジュール100および品質保証モジュール146が含まれる。次に、これらのモジュールの様々な実施態様が記載される。しかし、システム10のすべての構成で、これらのモジュールがすべて必要というわけではないこと、および図4に示されていない他のモジュールをソフトウェアプログラム78とともに使用することができることを理解されたい。また、これらのモジュールを結合して、図示された数よりも少ない数のモジュールとすることができること、それぞれのモジュールは、本明細書の説明の中に開示されていない追加の材料を含むことができること、およびモジュールの名称は説明を容易にするためのものであることは明白である。
【0028】
A.最適化モジュール
前述のとおり、1つの最適化法は、異なる運動位相(または周期など)をそれぞれが表す4D計画のセットを最適化する方法である。呼吸サイクルは、無限または有限フーリエ展開によって記述し、かつ/または近似することができる。最適化モジュールの95の可能な1つの実施態様では、特定の1つの呼吸サイクルが、時間どおりに変化する、異なる周波数、振幅、位相などを有する正弦型および余弦型関数の線形結合の時間の関数として記述される(例えば図7参照)。この条件下で、最適化モジュール95は、それぞれが特定の時刻の引渡しに対して許容される1つの計画を表す一組の計画を生成する。それらの計画または計画の組合せを使用可能にすることによって、より複雑な「規則正しい」または「不規則な」呼吸パターンに対する引渡しを生成することができる。
【0029】
最適化モジュール95の他の実施態様では、それぞれの計画が、所与のパラメータ(例えば周期または軌道)に対する完全な4D計画を表す必要はないが、計画のセットがそれぞれ、運動サイクルの単一の位相に対して適切な静的引渡しを表す。関心領域がその異なる運動位相間で移動すると、計画は自動的に切り替わるであろう。同様に、より多くの画像を生成し、より多くの位相計画を最適化し、かつ/または特定の位相に対する計画を選択するために、位相間を補間することも可能である。
【0030】
さらに、所与の位相またはパラメータのセットに対して使用可能な、異なる最適化基準を利用した複数の計画を有することが可能である。例えば、呼吸位相ごとに計画を1つだけ最適化するのではなしに、複数の計画セットを最適化することが可能である。これは、呼吸位相ごとに、余裕が小さい1つの計画と、より余裕の幅の広い(または他の制約が変化する)他の計画を有することを伴うかもしれない。治療が進むにつれて、関心領域の位置、周期および/または位相、ならびにその速度、不確実性および/または変形に基づいて、計画を動的に選択することができる。ターゲット54が明確に定義されている場合には、余裕の幅が狭いセットから計画を動的に選択することができ、確実性が低い場合には、余裕が大きな計画を選択することができる。
【0031】
複数の位相画像にわたって線量を最適化する1つの方法は、最適化モジュール95が、位相ごとに線量ビームレットを計算し、次いで、画像を関係づける画像変形マップに従ってビームレットを変形させる方法である。この方法を適用することができるが、線量は位相ごとに計算することができ、次いで、変形が調整されたビームレットが必要ないように、変形を使用して追加することができるので、この方法は必要ない。
【0032】
B.計画選択モジュール
計画を選択する方法は、いくつかの可能な基準に基づくことができる。計画選択モジュール142の一実施態様では、計画が、関心領域の位置、周期および/または位相などの先に論じた基準に基づき、これらの基準はそれぞれ、運動検出装置89および取得モジュール94によって取得することができる。同様に、不確実性および/または解剖学的情報も組み込むことができる。測定値は、カメラシステム、レーザシステム、X線または透視システム、CT、MRI、PET、単一光子放射形コンピュータ断層撮影(「SPECT」)、オンラインCT、円錐ビームCT、埋込みマーカ、高周波(「RF」)ローカライザ、超音波、呼吸ベルトまたはカフ、埋込みX線源、音響センサ、歪みゲージ、RFエミッタおよび電極に基づくインピーダンス測定などの適用可能な装置から取得される。ただし、適用可能な装置はこれらに限定されるわけではない。
【0033】
他の実施態様では、計画選択モジュール142が、線量測定特性に基づいて計画を選択する。より具体的には、最適化された計画セクションごとに所望の線量分布が定義される。次いで、治療中に、計画選択モジュール142が、患者のその時点の解剖学的情報およびターゲット情報を与えられた場合に、使用可能な計画のうちのどの計画が、計画線量と最もよく一致するのかを決定する。この計算は、リアルタイム線量計算を含むことができるが、単純化された計算または予め計算された計算によって近似することもできる。
【0034】
他の実施態様では、計画選択モジュールが、予め計算された計算を使用した変形を組み込む。この実施態様は、物理空間内の線量を特定の組織/ターゲット内の線量に関係づける。変形を組み込むことによって、特定の部位における意図された線量分布と一致する計画の選択がより容易になる。変形技法および計算の例が、その内容の全体が参照によって本明細書で組み込まれる、2005年7月22日出願の「SYSTEM AND METHOD FOR FEEDBACK GUIDED QUALITY ASSURANCE AND ADAPTATIONS TO RADIATION THERAPY TREATMENT(放射療法治療へのフィードバック誘導品質保証および適用のためのシステムおよび方法)」という名称の米国特許仮出願第60/701580号に記載されている。
【0035】
なお変形を伴う可能性がある他の実施態様では、所望の線量を計画線量に一致させようとするだけでなく、計画選択モジュール142は同時に、以前のフラクションまたは引渡し中のフラクションの初期との線量の不一致を矯正しようとする。
【0036】
計画選択モジュール142の他の実施態様では、動的計画選択が、単に線量分布(または累積線量分布、変形線量分布、あるいは変形累積線量分布)との一致だけに基づくのではなく、ターゲット線量、敏感な構造の線量または線量−体積ヒストグラム(「DVH」)などの他の基準も使用する。同様に、計画選択はさらに、所与の生物学的結果を達成することに基づく。この実施態様では、生物学的推定量が、線量累積および/または計画選択プロセスに組み込まれる。計画選択モジュール142はさらに、より攻撃的な計画がより許容されると思われる部位、時刻または患者におけるそれらの使用、およびより敏感な位置、時刻または患者におけるより保守的な計画の使用を容易にするために、患者に関する生物学的および臨床的なフィードバックを組み込むことができる。
【0037】
計画選択モジュールの動的計画選択は、患者のその時点の情報に基づく必要があるだけでなく、測定の遅れを考慮し、解剖学的変化の適切な予期の下に計画を引渡しして、測定および処理における遅延を補償するため、過去の情報を使用することもできる。
【0038】
ソフトウェアプログラム78の他の実施態様では、動的に選択可能な計画の一部または全部が事前に最適化されない。高速最適化プログラムを使用して、これらの計画のいくつかは、放射線療法の適用中に生成される。同様に、生理学的変化または解剖学的変化を反映させるために、放射線療法の適用中に既存の計画が変更される。言い換えると、最適化モジュール95と計画選択モジュール142は密接に相互作用して(または統合されて)、高速最適化プログラムおよび選択モジュールを提供する。
【0039】
C.機械的追跡サブモジュールを含む取得モジュール
患者の呼吸位相または運動状態の追跡は、多数ある運動検出装置のうちの多くの装置、および患者の生理を追跡する関連取得ソフトウェアを使用して実行することができる。取得モジュール94は、運動または機械的追跡サブモジュール96を含むことができる。運動検出装置の例には、肺活量計、カメラシステム、立体カメラ、レーザシステム、蛍光透視法、X線システム、CT、埋込みマーカ、RFマーカ、MRI、歪みゲージおよび電極インピーダンス測定が含まれる。ただしこれらに限定されるわけではない。
【0040】
取得モジュール94の一実施態様では、上述の追跡法の代わりに、またはそれに加えて、引渡し中にメガボルテージCT、キロボルテージCTまたは円錐ビームCTシステムなどによって収集されたデータを使用した追跡が実行される。機械的追跡モジュール96は、これらのシステムからのデータを処理して、関心領域の場所、位相および位置、ならびに患者の呼吸位相および解剖学的変化を識別する。この情報は、復元画像から、投射データから、または復元データと投射データの混成物から抽出される。この実施態様はさらに、以前の画像または投射データセットから、あるいは総称画像または投射データセットからの演繹的な情報を組み込むことができる。
【0041】
例えば、腫瘍軌道の4Dのモデルは、計画作成画像から確立され、このモデルは、投射データを使用して検証され、患者のその時点の呼吸位相を識別する。関心の構造またはマーカの存在および位置に関してサイノグラムがチェックされる。この情報は、その時点のまたは最近の患者呼吸位相および腫瘍の位置を識別し、さらに、腫瘍が、予測される位置または時間トラックから外れているかどうか、および、他の如何なる計画が、その時点のまたは将来の解剖学的構造に線量を引渡すのに有用と思われるかを識別する。この情報を使用して、単一または直角門脈/CT投射における位置を、拡大によって検出することができる。
【0042】
他の実装では、機械的追跡サブモジュール96がこの情報を使用して、計画選択において考慮することができる様々な遅延(位置の測定、治療台の測定など)を解析する。この情報はさらに、予想されるターゲット54(または関心領域)の軌道が有効なままであり、適切な補償量を推定するために高周波(雑音、不規則性)から低周波(基本運動)を区別することができるかどうかを検証することができる。機械的追跡サブモジュール96の一部の実装では、この補償が、治療台の動的補正によって部分的に達成される。
【0043】
位相および/または位置の検出に透過放射線を使用するときには、不必要な放射線を最小限に抑えることが好ましい。この理由から、取得モジュール94の一実装は、治療の一部として引渡し中の放射線を使用する。治療は一般に、ターゲット部位54に放射線を放出することだけをその意図としているため、このデータの範囲は一般に限定的である。しかし、取得されるデータの量が、関心領域の必要な特徴、位置または位相を識別するのに十分である可能性もある。
【0044】
他の実装では、取得モジュール94が、患者のより大きな部位に対する伝送データを生み出すために、追加のMLCリーフが短時間「フラッシング」開かれたときに得られる追加情報を取得する。これは、より多くのデータが必要なときには頻繁に、またはより大きな数のリーフを使用して実施し、あるいはこれを、より低い頻度で、またはより少ないリーフを使用して実施して、より少ない情報を取得し、線量を節約することができ、必要に応じて検証することができる。より少ない数のリーフまたは低い頻度を使用するのは例えば、大脳機能局在性がよく知られており、または他の装置も使用されており、または治療品質が検証中の変化にあまり依存しないときであり、あるいは他の理由からである。
【0045】
この低線量の原理は、MLCが取り付けられていない画像化システムにも適用することができる。例えば、検証のために(X線源などの)追加の源および検出器が使用されている場合、当技術分野ではこのようなシステムは、蛍光透視モードでシステムを動作させることによって運動、場合によっては位相を追跡するために使用されることが知られている。しかし、これは、非常に高い線量を患者に与える。したがって、他の実施態様では、機械的追跡サブモジュール96が、連続使用とは対照的に、非常に遅いまたは離散的な蛍光透視法の使用によって位相および/または位置情報を検出し、検証する。例えば、ターゲット(または関心領域)の位置または位相を決定しまたは補強するのに、連続追跡を使用するのではなく、特定の時刻に蛍光透視フレームが撮影される。これらの時刻は、等間隔とすることができ、または他の患者フィードバックに基づいて間隔を置くことができ、または予想される運動位相または位置に基づいて間隔を置くことができる。そのため、この実施態様は、独立した測定に使用することができ、あるいは、外部検証装置または代用物ベースの検証装置を低線量内部画像で補強するために使用することができる。
【0046】
1.強度変調放射線療法(「IMRT」)によるリアルタイム呼吸運動監視
腫瘍位置のリアルタイム追跡または内臓運動の監視は、放射線療法を3次元(「3D」)から4次元(「4D」)に拡張するのに重要である。ゲーティング、追跡、BSDまたは自由呼吸出産(「FBD」)技法のいずれに基づくにせよ、4D放射線治療技法はすべて、呼吸状態または少なくとも腫瘍位置をリアルタイムで知ることを要求する。使用可能な呼吸監視技法には、マーカ法および空気流法が含まれる。これらの方法はともに、何らかの代用物によって呼吸運動を間接的に監視する。マーカ法は、外部または内部マーカを代用物として使用する。これらのマーカを追跡するためにカメラ(外部マーカ用)または蛍光透視装置(内部マーカ用)が使用される。空気流法は、呼吸している間の空気流を測定するために高温計を使用し、空気流は、呼吸運動の代用物として使用される。これらの代用物法の欠点には以下のものが含まれる:1)代用物が内部呼吸運動にどれくらいよく相関しているのか、およびどのような種類の相関であるのかが疑わしい;2)呼吸運動は複雑な4D変形プロセスであり、したがって、1つまたは少数のパラメータを有する代用物は、大きな身体部分の呼吸運動に対して非常に限定された表現を有する;3)代用物と呼吸運動の間に(潜在的に不安定な)遅延が存在する。
【0047】
1つの代替法は、呼吸運動を監視する直接法を含む。この方法は、治療ビームに対する内臓運動を直接に監視する。この方法は、検出器システムを有するシステム10に直接に実装することができる。検出器システムの例は、TomoTherapy,Inc.社(ウェブサイトはwww.tomotherapy.com)によって提供されているHI−ARTブランドの放射線療法システムである。カメラ、肺活量計、または蛍光透視装置などの追加の装置は必要ない。余分な放射線も必要ない。
【0048】
例えば、放射線療法治療システムは、完全な3D画像セットを有することができ、それぞれの3D画像は、ある呼吸状態(または位相)における患者のスナップショットである。治療の前に、計画作成フルエンスマップ(またはサイノグラム)が一般に使用可能である。患者の3D表現に基づいて、コンピュータ62は、計画作成サイノグラムの投射(線)ごとに、直接光線追跡またはモンテカルロシミュレーションによって、検出器応答(出力信号)を計算する。したがって、4D画像のN個のすべての位相に対して、システムは、投射ごとにN個の出力信号を事前に計算する。この事前計算を実行した後は、呼吸運動の監視は簡単である。このシステムは、実際の検出器信号を事前計算されたN個の検出器信号と比較するだけでよく、最も大きな類似性測度を有するものが、そのときの呼吸位相を与える。単純な相関を類似性測度として使用することができる。相関は以下のように定義することができる。
【0049】
【数1】
【0050】
上式で、
siは、i番目の位相に対応する事前計算された検出信号、
sは、測定された検出信号、
【0051】
【数2】
【0052】
は、N個の位相検出器信号の平均
【0053】
【数3】
【0054】
であり、この検出器信号は、すべての検出器から信号のベクトルを指す。
【0055】
D.機械制御サブモジュールを含む受渡しモジュール
いくつかの構成では、機械的方法を、前述の自由呼吸技法を補正するために使用し、または従来の計画(例えば静的計画、呼吸停止計画など)とともに使用することができる。例えば、1次コリメータ38は、ビームを変調させる変調装置42とともに、関心領域の運動を追跡することができる。他の例として、治療台70を使用して、動的再配置を容易にすることができる。
【0056】
一構成では、機械的追跡モジュール96が、引渡しの全体を通じて、患者位相を連続的に決定する。関連構造の計画作成位置からのオフセットが、受渡しモジュール97の機械制御サブモジュール99によって決定される。サブモジュール99は、このオフセットを横成分と縦成分とに分解する。治療中の(より一般的である)上下方向の運動の影響を受けるターゲット54は、1次コリメータ38を移動することによって考慮される。1次コリメータ38は、変調装置42の前に一組のジョーを含むことができる。これらのジョーは、放射線ビームが通過することができる開口を画定し、そのサイズを調整する。あるいは、セグメント化された1次コリメーションが、ターゲット54を追跡する形状を形成することを可能にし、ビームは、変調装置42によって変調される。他の運動を生み出し、または運動度を拡張するために、治療台運動を組み合わせて使用することもできる。
【0057】
運動を補正する他の機械的技法との違いは、ここで示された技法は、上下方向の運動を考慮するために変調装置42を使用しないことである。1次コリメータ38が、この方向の運動を単独でまたは治療台70との組合せで追跡するために使用される。利点の1つは、原則として、この運動を補正するのに計画の変更が必要ないことである(異なる方向の出力のいくつかの調整を除く)。しかし、この技法を、本明細書に記載された動的計画変更または切替え法に組み込むこともできる。さらに、異なるコリメータ位置が、異なるジョー位置に関連するビームの変化を組み込むように動的計画を最適化することができる。他の実装では、機械制御サブモジュール99が、別個の計画なしで変化をモデル化する。
【0058】
(上下でない)他の方向の運動に対する補正も考慮することができる。このビーム方向の補正は、治療台70を使用して、または逆2乗補正を考慮したMLC変調時刻の単純な変更によって補正される。この運動を単独でまたはMLC時刻の変更とともに考慮するために、治療台運動を使用することもできる。
【0059】
ビームに垂直な平面上の(すなわち上下方向でない)運動は、リーフパターンを変更することによって、またはリーフパターンと治療台運動の組合せによって考慮することができる。コリメータ運動などの機械的運動は、計画作成プロセスに組み込み、または検出された運動に応答して実行することができることに留意されたい。すなわち、場合によっては、予想される患者呼吸トレースに基づいてコリメータ運動が事前にプログラムされる。さらに、患者の運動が予想されるトレースをたどらない場合には、コリメータ運動または計画が動的に変更される。その他の場合、コリメータ38の運動は、患者運動の偏差を純粋に補償する方法である。これらの条件の下で、ターゲット54および敏感な構造の運動はリアルタイムで考慮される。コリメータ38の運動の変更またはリーフパターンの変更によって、治療計画の再整理または治療計画のスケーリングが必要となる可能性があることが予想される。
【0060】
E.患者フィードバックモジュール
本明細書に記載された様々な技法は、必要な呼吸パターンの強制から患者を解放するように設計されているが、このことは、誘導システムの補助なしで、または「ターゲット」呼吸トレースなしで患者が呼吸することを要求しない。その代わりに、システム100のいくつかの構成では、たとえ患者が意図された呼吸トラックから外れたとしても、治療はそれに応じて動的に調整される。
【0061】
この程度まで、患者フィードバックモジュール100は、それらの運動制御に関するフィードバック、および潜在的には誘導信号を患者に提供することができる。これは、ゴーグルシステム、ガントリの内側のまたはガントリから見ることができる(ミラー眼鏡または補助装置を通して潜在的に見ることができる)ビデオ映写、音声フィードバックなどを使用して実行することができる。
【0062】
患者フィードバックモジュール100はさらに、人工呼吸器による補助の下で患者に意図的に呼吸させることによって、患者の動きを助けることができる。人工呼吸器は、より再現可能な標準的な呼吸パターンに患者の呼吸を合わせるのに役立つが、それでも偏差は、複数の計画の使用および動的計画切替えによって理想的に処理されるであろう。いくつかのケースでは、人工呼吸器による患者の活発な呼吸が、3次元(「3D」)計画を引渡すのに適切である可能性もある。
【0063】
F.品質保証モジュール
システム10のいくつかの構成の他の態様は、品質保証および検証のための様々な技法の準備である。例えば、ファントムでの妥当性検証に適用可能な品質保証モジュール146のこのような1つの技法は、意図的に異なる計画を作成して、引渡し中の計画が、電離箱、シンチレーション流体、フィルム、熱ルミネッセンス線量計(「TLD」)、ダイオード検出器、フラットパネルイメージャ、あるいは他の放射線検出器またはモニタなどの外部測定装置を使用して容易に決定されるようにする方法である。次いで、運動−応答曲線を変更することによって、システムは、計画変更がどのくらい高速かつ適切に応答するのかを検証する。
【0064】
他の実装では、品質保証モジュール146が、治療による記録された運動トレースに基づいて4D画像セットの線量を再計算することによって、患者とファントムの両方に適用することができる妥当性検証を実行する。4D画像を横切って累積された線量は、理想的には変形のために調整された正味の放出線量を提供する。正味の線量測定効果の妥当性および移動する部位と移動しない部位の両方が正確に処理されることの妥当性を検証するために、この線量が、患者の内部、患者の体表または患者とは別個の点において測定された線量と比較される。測定された運動パターンに基づく4D線量計算のこの態様も同様に、本明細書で説明された自由呼吸調整引渡しの他の引渡しに適用することができる。
【0065】
詳細な実施例
図9は、移動する関心領域に放射線療法を施す本発明の一実装に基づく方法の流れ図を示す。ソフトウェアプログラム78は、予想される運動(例えば患者の呼吸パターン)を表す複数のトラック102〜130(図5および6)を生成する(ブロック174)。治療計画は、最適化モジュール95によって、トラック102〜130に対応するように最適化される(ブロック178)。例えば、それぞれの治療計画を、トラック102〜130のうちの1つに対応するように最適化することができる。他の例として、複数の治療計画を最適化し、次いで、トラック102〜130のうちの1つに対応するように結合することができる。患者14は、トラック102〜130のうちの1つに従おうとする(ブロック182)。治療が施されている間に、取得モジュール94が、関心領域(例えばターゲット54)の運動に関係した運動データを取得する(ブロック186)。機械的追跡モジュール96が、運動検出装置89から(運動トラック138として示された)運動データを受け取る(ブロック190)。計画選択モジュール142が、その運動データが、患者14が従っている選択されたトラックから外れているかどうかを決定する(ブロック194)。その偏差が指定されたしきい値よりも大きいかどうかを決定するため、計画選択モジュール142は、その偏差をある範囲と比較することができる。計画選択モジュール142は、その運動がその時点で最も密接に対応しているトラック102〜130を決定する(ブロック198)。計画選択モジュール142は、識別されたトラック102〜130に対応する治療計画を選択する(ブロック202)。選択された計画は、患者の実際の運動に対応するために自動的に切り替わるため、患者の治療は、複数の治療計画のいくつかの部分の引渡しを含むことができる。これは、図7の線134として最もよく示されている。線134が別の運動トラック102〜130に移ると、対応する計画が選択される。より整合性があるトラック134を促進するため、患者フィードバックモジュール100から患者に、患者フィードバックを提供することができる。
【0066】
図10は、放射線療法治療の適用に含めることができるプロセスの流れ図を示す。このプロセスは計画の作成から始まる(ブロック300)。前述のとおり、計画および位相は、数学モデル、変形モデルおよび生理学的モデルを使用して決定することができる。複数の計画(ブロック304)が作成された後、それらを、放射線療法装置18へロードすることができる(ブロック308)。より具体的には、放射線療法装置18の構成要素および動作を(例えば受渡しモジュール97を介して)制御する能力を有するコンピュータ62へ、それらの計画をロードすることができる。
【0067】
治療計画が放射線療法装置18(またはコンピュータ62)に記憶された後、患者14の放射線療法治療を始めることができる。治療の最初の段階では、運動パターンが監視され、評価される(ブロック312)。前述のとおり、運動パターンは、例えば運動検出装置89および取得モジュール94を使用して測定することができる。運動パターンを監視した後、その運動パターンに基づいて、潜在的な治療計画のリストを作成することができる(ブロック316)。治療計画は、計画と患者14の運動パターンとの間の時間関係および空間関係に従って評価することができる。潜在的な治療計画のリストが決定された後、治療計画または治療計画の組合せを選択することができる(ブロック320)。治療計画は、コンピュータ62に従って自動的に、または医師または他の専門家によって手動で選択することができる。一般に、関心領域の運動に最もよく一致した計画または計画の組合せが選択される。治療計画を選択した後、それを評価することができる(ブロック324)。評価パラメータには、関心領域の位置、関心領域の変形、投与されている線量、またはこれらの組合せに関する情報などが含まれる。いくつかの実装では、ブロック320で選択された計画が(例えば品質保証モジュール146によって)評価され、それが有効な治療であるとみなされない場合には、引渡す潜在的な治療計画を再評価するため、このプロセスはブロック316に戻ることができる。
【0068】
しかし、治療計画が評価され、それが、意図された結果を有すると見込まれた場合、その治療計画を、放射線療法装置18によって引渡すことができる(ブロック328)。計画の引渡し中に、このプロセスは戻ることができ、それ以降のステップを繰り返すことができる。他の実施態様では、計画が引渡しされた後、その計画が検証される(ブロック332)。引渡しの検証を使用して、患者14に実際に引渡しされた放射線の線量および起こった変形を決定することができる。前述のとおり、線量および変形の情報は、その後にどの計画を実施するのかに影響を及ぼすことができる。計画の引渡しが検証された後、このプロセスは、ブロック300の計画作成ステージに戻ることができ、プロセスを繰り返すことができる。他の実施態様では、プロセスが運動評価ブロック312に戻され、プロセスの残りステップが繰り返される。
【0069】
1.詳細な例:ターゲットを移動するためのらせん形共面IMRTビームの放出
前述のとおり、本発明を組み込むことができる放射線療法治療システムの例は、TomoTherapy,Inc.社(ウェブサイトはwww.tomotherapy.com)によって提供されているHI−ARTブランドの放射線療法システムである。TOMOTHERAPY HI−ARTブランドのシステムは、多くの態様で従来のIMRTに優るらせん形放射線療法治療システムの一例である。らせん形共面強度変調ビームの放出は利点の一例である。一実装では、このらせん形放出システムが一般に、以下の特徴を有する:1.固定されたジョー幅、2.固定されたジョー位置および向き、3.一定の治療台速度、4.一定のガントリ回転速度、ならびに5)強度変調のための1次元(1D)バイナリMLC。
【0070】
しかし、一方で、この放出システムのこのような単純さは、移動する関心領域の状況(例えばターゲット運動は呼吸運動に起因する)においていくつかの限界も提示する。移動する関心領域の従来のゲーティングおよび追跡技法は、らせん形システムにおいて容易に実現することができない。例えば、ゲーティング技法は、ガントリの回転または治療台の運動を止めることを要求する。追跡技法は、リアルタイムジョー傾斜を要求する。患者が常に計画呼吸パターンに従う場合、BSDは魅力的である。しかし、らせん形システムが、位相外れの呼吸を補正することは難しい。
【0071】
修正らせん形システムの一構成に関して、このシステムは以下のことを仮定する:1.ターゲットの位置をリアルタイムで決定することができる;2.ターゲットの運動は剛体運動であり、変形は、たとえあったとしても、剛体運動に比べて無視することができる;3.1つの投射内のターゲット運動は無視することができる。仮定1は、治療前の患者の体の(4D CTなどの)4D表現と、(先に提示されたカメラ、肺活量計または治療ビームなどを使用した)リアルタイム位相決定技法との組合せによって実行可能である。仮定2は、大部分のケースに対して合理的である。これは、従来のIMRTで使用される追跡技法の基本的な仮定でもある。仮定3は実際に、TomoTherapy,Inc.社によって提供されるHI−ARTシステムなどのいくつかの引渡しシステムの時間分解能である。
【0072】
いくつかの構成では、らせん形放出が投射状である。それぞれの投射は3つのパラメータによって指示される。
kは、回転インデックス(kは整数)、
φは、ガントリエンジェル(φ∈[0,2π])、
pは、MLCリーフインデックス p∈[−P/2,P/2]である。
対(k,φ)は投射インデックスからなる。時間tは、投射インデックスと線形比例する(t=t(k,φ))。
【0073】
1回転あたりの治療台の進行をΔZとする。このとき、治療台位置は
[e2] ΔZ(k,φ)=(k+φ/(2π))ΔZ
である。
【0074】
計画作成サイノグラムをI=I(k,φ,p)とする。関数値I(k,φ,p)は、投射(k,φ)におけるリーフpに対するビームオン時間を表す。計画作成自体は、静的患者モデル(3D計画)またはBSDモデル(4D計画)に基づくことができる。
【0075】
引渡しサイノグラムをI’=I’(k,φ,p)とする。このサブセクションの1つの目的は、移動するターゲットの場合のI’=I’(k,φ,p)を決定することにある。
x=x(k,φ):投射(k,φ)における計画作成ターゲット位置。計画作成自体は、静的患者モデル(3D計画作成)またはBSDモデル(4D計画作成)に基づくことができる。x=(x,y,z)。
【0076】
x’=x’(k,φ):投射(k,φ)における放出ターゲット位置。これは、仮定1に従って決定される。
u=u(k,φ)=x’(k,φ)−x(k,φ):引渡しと計画作成の間のターゲットの変位。u=(ux,uy,uz)。
【0077】
さらに、横ターゲット変位を、ビームに垂直な方向の(MLC線に平行な)成分u⊥と、ビームに平行な方向の成分u//とに分解することができる。結果は以下のとおりである。
【0078】
[e3]u⊥(k,φ)=ux(k,φ)cosφ+uy(k,φ)sinφ
[e4]u//(k,φ)=ux(k,φ)sinφ+uy(k,φ)cosφ
ビームに平行な方向の運動成分u//に関しては、逆自乗補正および減衰補正が必要である。補正係数をrとする。
【0079】
[e5]r(k,φ)=r1(k,φ)r2(k,φ)
上式で、r1(k,φ)は逆自乗補正である。計画作成源−ターゲット距離をs(k,φ)とすると以下のとおり。
【0080】
【数4】
【0081】
減衰補正をr2(k,φ)とすると以下のとおり。
【0082】
【数5】
【0083】
式[e7]は、システムが4D CTを有する場合に限って実行可能であり、そうでなければ、システムは、他のいくつかの近似値を使用しなければならない。
ビームに垂直な方向の平面内運動成分u⊥は、MLCパターンをシフトすることによって補正可能である。すなわち以下のとおりである。
【0084】
[e8]p’(k,φ)=p(k,φ)+u⊥(k,φ)
z成分の運動を補正するためには、投射をシフトする必要がある。さらに、RARが計画された最適の間隔を有するよう、計画作成サイノグラムと同じガントリ角度を保たなければならない。したがって、回転インデックスkを変更するだけでよい。
【0085】
【数6】
【0086】
[e10]φ’=φ
随意運動パターンのため、いくつかの投射が同じ投射にマップし、いくつかの投射がまったくマップされないことも起こりうる。随意に移動するターゲット54に対する放出戦略が、以下の擬似コードによって示されたとおりになるように、それぞれの投射に対する達成可能な最大ビームオン時間を、Imaxとすることを考えなければならない。
【0087】
【数7】
【0088】
図11は、横運動補正の表現である。点線は、計画ターゲット位置およびビーム強度であり、実線は、放出ターゲット位置およびビーム強度である。
図12は、移動するターゲット54用の静的計画を放出すらせん形システムを示す図である。実線は、それぞれの投射に対する計画ターゲット位置である。点線は、放出中の実際のターゲット位置である。正方形は、削られた投射を指示し、三角形は、ガントリおよび治療台がその位置にあるときの実際のターゲットを指示する。円は、その瞬間にどの投射を放出する必要があるかを指示する。円は通常、2つの回転間に位置する。ビーム強度を決定するために、一般に補間法を使用する必要がある。
【0089】
図13は、ある呼吸運動パターンが計画され(BSD計画、実線)、実際のターゲット位置(点線)がBSD計画とは異なることを除き、図12と同様である。正方形は、削られた投射を指示し、三角形は、ガントリおよび治療台がその位置にあるときの実際のターゲットを指示する。円は、その瞬間にどの投射を放出する必要があるかを指示する。円は通常、2つの回転間に位置する。ビーム強度を決定するために、補間法を使用する必要がある。
【0090】
したがって、本発明は特に、移動する関心領域に放射線療法を施す新規の有用なシステムおよび方法を提供する。前記特許請求の範囲には、本発明の様々な特徴および利点が記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】放射線療法治療システムの部分透視図、部分概略図である。
【図2】図1に示された放射線療法治療システムにおいて使用することができるマルチリーフコリメータの部分透視図、部分概略図である。
【図3】図1の放射線療法治療システムの概略図である。
【図4】図1の放射線療法治療システムにおいて使用することができるソフトウェアプログラムのブロック図である。
【図5】運動トラックのグラフ表現である。
【図6】複数の運動トラックのグラフ表現である。
【図7】複数の運動トラックのグラフ表現および患者の運動トラックの表現である。
【図8】運動トラックのグラフ表現である。
【図9】移動する関心領域に放射線療法治療を施す本発明の一実施形態に基づく方法の流れ図である。
【図10】移動する関心領域に放射線療法治療を施す本発明の一実施形態に基づく方法の流れ図である。
【図11】横運動補正のグラフ表現である。
【図12】移動する関心領域の場合の静的計画のグラフ表現である。
【図13】移動する関心領域の場合のBSD計画のグラフ表現である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸サイクルの位相を表す複数の患者画像を取得するステップと、
前記患者に放射線を放出するステップと、
放射線を放出する前記ステップの間に、前記患者の伝送データを収集するステップと、
前記伝送データを前記複数の患者画像と比較するステップと
を含む、放射線療法を受けている患者の呼吸位相を検出する方法。
【請求項2】
放射線を放出する前記ステップは、前記呼吸サイクルの少なくとも1つの位相の間に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記比較に少なくとも部分的に基づいて前記呼吸サイクルを追跡するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記比較に少なくとも部分的に基づいて前記患者の解剖学的変化を決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記患者に放射線を放出する前記ステップは、メガボルテージCT、キロボルテージCTまたは円錐ビームCTシステムを使用して、前記患者を貫通する放射線を放出するステップを含み、伝送データを収集する前記ステップは、前記患者を貫通して引渡しされた前記放射線の伝送データを収集するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記患者に放射線を放出する前記ステップは、前記患者を貫通して治療放射線を放出するステップを含み、伝送データを収集する前記ステップは、治療放射線の伝送データを収集するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記患者に放射線を放出する前記ステップは、蛍光透視装置を使用して、前記患者を貫通する放射線を放出するステップを含み、伝送データを収集する前記ステップは、前記患者を貫通して引渡しされた前記放射線の伝送データを収集するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
複数の患者画像を取得する前記ステップは、複数の3次元患者画像を取得するステップを含み、前記比較ステップは、前記伝送データを前記複数の3次元画像と比較するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の3次元画像は、決定された第1の呼吸状態における前記患者の第1の3次元スナップショットと、決定された第2の呼吸状態における前記患者の第2の3次元スナップショットとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
3次元画像を取得する前記ステップは、前記患者に療法を提供する前に前記複数の3次元画像を取得するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の画像に基づいてデータを事前に計算するステップをさらに含み、前記比較ステップは、前記伝送データを事前に計算されたデータと比較するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記放射線療法は、マルチリーフコリメータ(MLC)を含む放射線療法システムによって施され、前記比較ステップは、MLCパターンを考慮するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記放射線療法が治療計画に従って施され、前記比較ステップは、システムパラメータを考慮するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記呼吸サイクルの位相を、前記比較を使用して決定するステップと、決定された位相を使用して前記治療を変更するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記呼吸サイクルの位相を、前記比較を使用して決定するステップと、決定された位相を線量計算に使用するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記呼吸サイクルの位相を、前記比較を使用して決定するステップと、決定された位相を使用して運動モジュールを構築するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の画像がコンピュータ断層撮影システムによる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の画像が磁気共鳴画像化システムによる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
コンピュータプロセッサ、患者に放射線を放出するように動作可能な放射線モジュール、および透過放射線を収集するように動作可能な検出器を含む放射線療法装置と、
前記コンピュータプロセッサがアクセス可能なコンピュータ可読媒体に記憶され、呼吸サイクルの位相を表す複数の患者画像を取得し、前記収集された透過放射線から前記患者の伝送データを取得し、前記伝送データを前記複数の患者画像と比較するように動作可能なソフトウェアプログラムと、
を備える放射線療法を受けている患者の呼吸位相を検出するシステム。
【請求項20】
前記放射線モジュールは、前記呼吸サイクルの少なくとも1つの位相の間に放射線を放出する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記ソフトウェアプログラムはさらに、前記比較の少なくとも部分に基づいて前記呼吸サイクルを追跡するように動作可能である、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記ソフトウェアプログラムはさらに、前記比較の少なくとも部分に基づいて前記患者の解剖学的変化を決定するように動作可能である、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記ソフトウェアプログラムは、複数の患者画像を、複数の3次元患者画像を取得することによって取得し、前記比較は、前記伝送データを前記複数の3次元画像と比較するステップを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記放射線モジュールはマルチリーフコリメータ(MLC)を含み、前記比較は、MLCパターンを考慮するステップを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記ソフトウェアプログラムはさらに、前記比較を使用して位相を決定し、決定された位相を使用して放射線の前記引渡しを変更するように動作可能である、請求項19に記載のシステム。
【請求項26】
伝送データを収集する前記ステップに対してより修正可能であるように前記患者の治療を変更するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項1】
呼吸サイクルの位相を表す複数の患者画像を取得するステップと、
前記患者に放射線を放出するステップと、
放射線を放出する前記ステップの間に、前記患者の伝送データを収集するステップと、
前記伝送データを前記複数の患者画像と比較するステップと
を含む、放射線療法を受けている患者の呼吸位相を検出する方法。
【請求項2】
放射線を放出する前記ステップは、前記呼吸サイクルの少なくとも1つの位相の間に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記比較に少なくとも部分的に基づいて前記呼吸サイクルを追跡するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記比較に少なくとも部分的に基づいて前記患者の解剖学的変化を決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記患者に放射線を放出する前記ステップは、メガボルテージCT、キロボルテージCTまたは円錐ビームCTシステムを使用して、前記患者を貫通する放射線を放出するステップを含み、伝送データを収集する前記ステップは、前記患者を貫通して引渡しされた前記放射線の伝送データを収集するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記患者に放射線を放出する前記ステップは、前記患者を貫通して治療放射線を放出するステップを含み、伝送データを収集する前記ステップは、治療放射線の伝送データを収集するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記患者に放射線を放出する前記ステップは、蛍光透視装置を使用して、前記患者を貫通する放射線を放出するステップを含み、伝送データを収集する前記ステップは、前記患者を貫通して引渡しされた前記放射線の伝送データを収集するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
複数の患者画像を取得する前記ステップは、複数の3次元患者画像を取得するステップを含み、前記比較ステップは、前記伝送データを前記複数の3次元画像と比較するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の3次元画像は、決定された第1の呼吸状態における前記患者の第1の3次元スナップショットと、決定された第2の呼吸状態における前記患者の第2の3次元スナップショットとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
3次元画像を取得する前記ステップは、前記患者に療法を提供する前に前記複数の3次元画像を取得するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の画像に基づいてデータを事前に計算するステップをさらに含み、前記比較ステップは、前記伝送データを事前に計算されたデータと比較するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記放射線療法は、マルチリーフコリメータ(MLC)を含む放射線療法システムによって施され、前記比較ステップは、MLCパターンを考慮するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記放射線療法が治療計画に従って施され、前記比較ステップは、システムパラメータを考慮するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記呼吸サイクルの位相を、前記比較を使用して決定するステップと、決定された位相を使用して前記治療を変更するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記呼吸サイクルの位相を、前記比較を使用して決定するステップと、決定された位相を線量計算に使用するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記呼吸サイクルの位相を、前記比較を使用して決定するステップと、決定された位相を使用して運動モジュールを構築するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の画像がコンピュータ断層撮影システムによる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の画像が磁気共鳴画像化システムによる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
コンピュータプロセッサ、患者に放射線を放出するように動作可能な放射線モジュール、および透過放射線を収集するように動作可能な検出器を含む放射線療法装置と、
前記コンピュータプロセッサがアクセス可能なコンピュータ可読媒体に記憶され、呼吸サイクルの位相を表す複数の患者画像を取得し、前記収集された透過放射線から前記患者の伝送データを取得し、前記伝送データを前記複数の患者画像と比較するように動作可能なソフトウェアプログラムと、
を備える放射線療法を受けている患者の呼吸位相を検出するシステム。
【請求項20】
前記放射線モジュールは、前記呼吸サイクルの少なくとも1つの位相の間に放射線を放出する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記ソフトウェアプログラムはさらに、前記比較の少なくとも部分に基づいて前記呼吸サイクルを追跡するように動作可能である、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記ソフトウェアプログラムはさらに、前記比較の少なくとも部分に基づいて前記患者の解剖学的変化を決定するように動作可能である、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記ソフトウェアプログラムは、複数の患者画像を、複数の3次元患者画像を取得することによって取得し、前記比較は、前記伝送データを前記複数の3次元画像と比較するステップを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記放射線モジュールはマルチリーフコリメータ(MLC)を含み、前記比較は、MLCパターンを考慮するステップを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記ソフトウェアプログラムはさらに、前記比較を使用して位相を決定し、決定された位相を使用して放射線の前記引渡しを変更するように動作可能である、請求項19に記載のシステム。
【請求項26】
伝送データを収集する前記ステップに対してより修正可能であるように前記患者の治療を変更するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−502245(P2009−502245A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522987(P2008−522987)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028351
【国際公開番号】WO2007/014026
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(506024320)トモセラピー・インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028351
【国際公開番号】WO2007/014026
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(506024320)トモセラピー・インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】
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