説明

放射線硬化性樹脂組成物

【課題】ポリマークラッド光ファイバのクラッド材として好適な特性、特に、低い屈折率と安定した透明性、良好な塗布性、コア層との密着性、強度・柔軟性に優れた放射線硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】組成物全量を100質量%として、
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体を20〜65質量%、
(B)炭素数が11〜18である2−パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレートを20〜60質量%、ならびに
(C)(A)成分および(B)成分以外であって、芳香族構造および極性基を有さず、エチレン性不飽和基を2以上有する化合物を10〜35質量%
含有する放射線硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマークラッド光ファイバのクラッド層形成用液状硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信用ケーブルとしては、従来用いられてきた金属線からなるいわゆる電線に替わり、高容量、高速度のデジタル信号通信に適した光ファイバが多用されつつある。光ファイバは、その構造や形態に応じて、さまざまな種類が知られているが、最も基本となる構造である光ファイバ心線は、ガラス、石英又は透明樹脂からなるコア層と該コア層の外側に接して設けられたクラッド層を有しており、さらに該クラッド層の外側を放射線硬化性樹脂等によるポリマー被覆層を設けられた構造を有している。中でも、コア層とクラッド層が共に石英からなる全石英光ファイバが多用されている。光ファイバ心線の典型的な口径は、コア層50μm程度、クラッド層と合わせた状態で125μm程度であり、樹脂被覆層をも合わせた状態で250〜500μm程度である。
【0003】
一方、多様な光情報通信のために、光信号の送信・受信・分岐・スイッチング等の各機能を有する光モジュールが開発されており、これらの光モジュールと光ファイバ心線の光軸を位置合わせして接続することが、光信号の減衰を抑制する上で重要であることが知られている。従来の光ファイバ心線のコア層の口径は上記の通り小さく、光モジュールと接続する際の光軸合わせが困難であるため、コア径を200μm程度に大きくした光ファイバ心線が用いられている。
【0004】
このような大口径を有する光ファイバ心線は、典型的には、硬化性の透明樹脂からなるクラッド層を有しているため、ポリマークラッド光ファイバ(プラスチッククラッド光ファイバ又は、ポリマークラッドファイバともいう。)と呼ばれている。クラッド層を構成する硬化性の透明樹脂としては、フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートやフッ素含有(メタ)アクリレートオリゴマー等を含有するフッ素含有紫外線硬化性組成物を用いた例が知られている(特許文献1〜3)。
【0005】
さらに、ポリマークラッド光ファイバのうち、ガラス又は石英からなるコア層を有するタイプが、ハードポリマークラッド光ファイバ、透明樹脂からなるコア層を有するタイプが、プラスチックファイバと呼ばれている。ハードプラスチッククラッド光ファイバは、光伝送効率が高いため、比較的長距離の通信用であり、プラスチックファイバは、比較的短距離の通信用に用いられる。
【0006】
このようなポリマークラッド光ファイバのクラッド層に用いられる硬化性の透明樹脂材料には、低い屈折率と経時的に安定した透明性とを有すること;良好な塗布性を得るための適当な粘度を有していること;コア層との密着性に優れること;ヤング率や破断強度・破断伸び等で表される強度、柔軟性を有することなどの特性が要求されている。
【0007】
しかし、従来のポリマークラッド光ファイバのクラッド層に用いられる樹脂材料では、低い屈折率と透明性、良好な塗布性、コア層との密着性、強度・柔軟性に優れたポリマークラッド層を得ることが困難であり、特に、ポリマークラッド光ファイバを高温環境下に放置した場合であっても安定した透明性を有するポリマークラッド層を得ることが困難であるという問題があった。
【特許文献1】特開平10−10340号公報
【特許文献2】特開平10−160947号公報
【特許文献3】特開平11−119036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ポリマークラッド光ファイバのクラッド材として好適な特性を備え、特に、低い屈折率と安定した透明性、良好な塗布性、コア層との密着性、強度・柔軟性に優れた放射線硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者は、特定のフッ素含有ポリマーと特定のフッ素含有(メタ)アクリレートモノマー、フッ素を含有しない特定構造の(メタ)アクリレートモノマーを必須要件とする放射線硬化性樹脂組成物により、かかる目的が達成できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、組成物全量を100質量%として、
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体を20〜65質量%、
(B)炭素数が11〜18である2−パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレートを20〜60質量%、ならびに
(C)(A)成分および(B)成分以外であって、芳香族構造および極性基を有さず、エチレン性不飽和基を2以上有する化合物を10〜35質量%
含有する放射線硬化性樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物により得られるポリマークラッド層は、特に、低い屈折率と安定した透明性、良好な塗布性、コア層との密着性、強度・柔軟性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体:
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体(A)は、エチレン性不飽和基とフッ素原子を有する重合体であれば、特に限定されないが、側鎖にエチレン性不飽和基を有する含フッ素オレフィン系共重合体が好ましい。(A)成分により本発明の組成物は低屈折率、高い機械強度、ガラスや石英等のコア層への密着性等のポリマークラッド光ファイバのクラッド形成用材料としての基本性能を発現する。
【0013】
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体は、以下に述べる、エチレン性不飽和基とイソシアネート基とを含有する化合物と水酸基含有含フッ素重合体の水酸基とを反応させて得られる。
【0014】
(1)エチレン性不飽和基とイソシアネート基とを含有する化合物:
エチレン性不飽和基とイソシアネート基とを含有する化合物としては、分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和基と少なくとも1個のイソシアネート基とを含有している化合物であれば特に制限されるものではない。
また、上記エチレン性不飽和基として、後述する硬化性樹脂組成物をより容易に硬化させることができることから、(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
このような化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルクロライド、無水(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートの一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
尚、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば昭和電工社製、商品名 カレンズMOI、AOI、BEI等が挙げられる。
【0015】
また、このような化合物は、ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて合成することもできる。
ジイソシアネートの例としては、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0016】
水酸基含有(メタ)アクリレートの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
尚、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、大阪有機化学社製、商品名 HEA;日本化薬社製、商品名 KAYARAD DPHA、PET−30;東亞合成社製、商品名 アロニックス M−215、M−233、M−305、M−400等として入手することができる。
【0017】
(2)水酸基含有含フッ素重合体:
水酸基含有含フッ素重合体は、好ましくは、下記構造単位(a)、(b)及び(c’)を含んでなる。
(a)下記式(1)で表される構造単位。
(b)下記式(2)で表される構造単位。
(c’)下記式(7)で表される構造単位。
【0018】
【化1】

【0019】
[式中、R1はフッ素原子、フルオロアルキル基又は−OR2で表される基(R2はアルキル基又はフルオロアルキル基を示す)を示す]
【0020】
【化2】

【0021】
[式中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4はアルキル基、−(CH2x−OR5若しくは−OCOR5で表される基(R5はアルキル基又はグリシジル基を示し、xは0又は1の数を示す)、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を示す]
【0022】
【化3】

【0023】
[式中、R11は水素原子又はメチル基を示し、R12は水素原子又はヒドロキシアルキル基を示し、vは0又は1の数を示す]
【0024】
(i)構造単位(a):
上記式(1)において、R1及びR2のフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロシクロヘキシル基等の炭素数1〜6のフルオロアルキル基が挙げられる。また、R2のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
【0025】
構造単位(a)は、含フッ素ビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このような含フッ素ビニル単量体としては、少なくとも1個の重合性不飽和二重結合と、少なくとも1個のフッ素原子とを有する化合物であれば特に制限されるものではない。このような例としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン等のフルオロレフィン類;アルキルパーフルオロビニルエーテル又はアルコキシアルキルパーフルオロビニルエーテル類;パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)、パーフルオロ(イソブチルビニルエーテル)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類;パーフルオロ(プロポキシプロピルビニルエーテル)等のパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
これらの中でも、ヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)又はパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)がより好ましく、これらを組み合わせて用いることがさらに好ましい。
【0026】
尚、構造単位(a)の含有率は、水酸基含有含フッ素重合体中の構造単位(a)〜(c’)の合計量を100モル%としたときに、20〜70モル%である。この理由は、含有率が20モル%未満になると、本発明が意図するところの光学的にフッ素含有材料の特徴である、低屈折率の発現が困難となる場合があるためであり、一方、含有率が70モル%を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の有機溶剤への溶解性、透明性、又は基材への密着性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(a)の含有率を、水酸基含有含フッ素重合体の全体量に対して、25〜65モル%とするのがより好ましく、30〜60モル%とするのがさらに好ましい。
【0027】
(ii)構造単位(b):
式(2)において、R4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ラウリル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0028】
構造単位(b)は、上述の置換基を有するビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このようなビニル単量体の例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルもしくはシクロアルキルビニルエーテル類;エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル等のアリルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(n−プロポキシ)エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0029】
尚、構造単位(b)の含有率は、水酸基含有含フッ素重合体中の構造単位(a)〜(c’)の合計量を100モル%としたときに、10〜70モル%である。この理由は、含有率が10モル%未満になると、水酸基含有含フッ素重合体の有機溶剤への溶解性が低下する場合があるためであり、一方、含有率が70モル%を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の透明性、及び低反射率性等の光学特性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(b)の含有率を、水酸基含有含フッ素重合体の全体量に対して、20〜60モル%とするのがより好ましく、30〜60モル%とするのがさらに好ましい。
【0030】
(iii)構造単位(c’):
式(7)において、R12のヒドロキシアルキル基としては、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基等が挙げられる。
【0031】
構造単位(c’)は、水酸基含有ビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このような水酸基含有ビニル単量体の例としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類、アリルアルコール等が挙げられる。
また、水酸基含有ビニル単量体としては、上記以外にも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0032】
尚、構造単位(c’)の含有率を、水酸基含有含フッ素重合体中の構造単位(a)〜(c’)の合計量を100モル%としたときに、5〜70モル%とすることが好ましい。この理由は、含有率が5モル%未満になると、水酸基含有含フッ素重合体の有機溶剤への溶解性が低下する場合があるためであり、一方、含有率が70モル%を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の透明性、及び低反射率性等の光学特性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(c’)の含有率を、水酸基含有含フッ素重合体の全体量に対して、5〜40モル%とするのがより好ましく、5〜30モル%とするのがさらに好ましい。
【0033】
(iv)構造単位(d)及び構造単位(e):
水酸基含有含フッ素重合体は、さらに下記構造単位(d)を含んで構成することも好ましい。
【0034】
(d)下記式(6)で表される構造単位。
【0035】
【化4】

【0036】
[式中、R9及びR10は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基又はアリール基を示す]
【0037】
式(6)において、R9及びR10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基が、ハロゲン化アルキル基としてはトリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基等の炭素数1〜4のフルオロアルキル基等が、アリール基としてはフェニル基、ベンジル基、ナフチル基等がそれぞれ挙げられる。
【0038】
構造単位(d)は、前記式(6)で表されるポリシロキサンセグメントを有するアゾ基含有ポリシロキサン化合物を用いることにより導入することができる。このようなアゾ基含有ポリシロキサン化合物の例としては、下記式(8)で表される化合物が挙げられる。
【0039】
【化5】

【0040】
[式中、R13〜R16は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基又はシアノ基を示し、R17〜R20は、同一でも異なっていてもよく、水素原子又はアルキル基を示し、p、qは1〜6の数、r、sは0〜6の数、tは1〜200の数、uは1〜20の数を示す]
【0041】
式(8)で表される化合物を用いた場合には、構造単位(d)は、構造単位(e)の一部として水酸基含有含フッ素重合体に含まれる。
【0042】
(e)下記式(9)で表される構造単位。
【0043】
【化6】

【0044】
[式中、R13〜R16、R17〜R20、p、q、r、s及びtは、上記式(8)と同じである]
【0045】
式(8)および(9)において、R13〜R16のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、R17〜R20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。
【0046】
本発明において、上記式(8)で表されるアゾ基含有ポリシロキサン化合物としては、下記式(10)で表される化合物が特に好ましい。
【0047】
【化7】

【0048】
[式中、t及びuは、上記式(8)と同じである]
【0049】
尚、構造単位(d)の含有率は、水酸基含有含フッ素重合体中の構造単位(a)〜(c’)の合計量を100モル%としたときに、0.1〜10モル%とすることが好ましい。この理由は、含有率が0.1モル%未満になると、硬化後の塗膜の表面滑り性が低下し、塗膜の耐擦傷性が低下する場合があるためであり、一方、含有率が10モル%を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の透明性に劣り、コート材として使用する際に、塗布時にハジキ等が発生し易くなる場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(d)の含有率を、水酸基含有含フッ素重合体の全体量に対して、0.1〜5モル%とするのがより好ましく、0.1〜3モル%とするのがさらに好ましい。同じ理由により、構造単位(e)の含有率は、その中に含まれる構造単位(d)の含有率を上記範囲にするよう決定することが望ましい。
【0050】
(v)構造単位(f):
水酸基含有含フッ素重合体は、さらに下記構造単位(f)を含んで構成することも好ましい。
【0051】
(f)下記式(11)で表される構造単位。
【0052】
【化8】

【0053】
[式中、R21は、下記式(12)で表される基である。
【0054】
【化9】

【0055】
[式中、nは1〜20の数、mは0〜4の数、kは3〜50の数を示す]
【0056】
構造単位(f)は、反応性乳化剤を重合成分として用いることにより導入することができる。このような反応性乳化剤としては、下記式(13)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
【化10】

【0058】
[式中、n、m及びkは、上記式(12)と同じである]
【0059】
尚、構造単位(f)の含有率は、水酸基含有含フッ素重合体中の構造単位(a)〜(c’)の合計量を100モル%としたときに、0.1〜5モル%とすることが好ましい。この理由は、含有率が0.1モル%以上になると、水酸基含有含フッ素重合体の溶剤への溶解性が向上し、一方、含有率が5モル%以内であれば、硬化性樹脂組成物の粘着性が過度に増加せず、取り扱いが容易になり、コート材等に用いても耐湿性が低下しないためである。
また、このような理由により、構造単位(f)の含有率を、水酸基含有含フッ素重合体の全体量に対して、0.1〜3モル%とするのがより好ましく、0.2〜3モル%とするのがさらに好ましい。
【0060】
(3)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体:
(A)成分であるエチレン性不飽和基含有含フッ素重合体は、水酸基含有含フッ素重合体の構造単位(c’)が有する水酸基とエチレン性不飽和基とイソシアネート基とを含有する化合物が有するイソシアネート基等の反応性基とが反応することにより得られる。なお、この場合の、エチレン性不飽和基とイソシアネート基とを含有する化合物が有するイソシアネート基と、水酸基含有含フッ素重合体が有する水酸基とのモル比を、1.1〜1.9の割合とすることが好ましい。
【0061】
したがって、(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体は、水酸基含有含フッ素重合体由来の構造単位(a)および構造単位(b)に加えて、水酸基含有含フッ素重合体の構造単位(c’)がエチレン性不飽和基とイソシアネート基とを含有する化合物と反応して生成する下記構造単位(c)を有する。また、水酸基含有含フッ素重合体が前述の構造単位(d)、構造単位(e)、構造単位(f)等を有する場合には、これらの構造単位はエチレン性不飽和基とイソシアネート基とを含有する化合物と反応しないため、(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体も同様に構造単位(d)、構造単位(e)、構造単位(f)等を有する。
構造単位(c);
【0062】
【化11】

【0063】
[式中、R6は水素原子又はメチル基を示し、R7は下記式(4)又は(5)で表わされる基を示し、vは0又は1の数を示す
【0064】
【化12】

【0065】
(式(4)及び(5)中、R8は水素原子又はメチル基を示す)]
【0066】
エチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で、テトラヒドロフランを溶剤として測定したポリスチレン換算数平均分子量として5,000〜500,000であることが好ましい。この理由は、数平均分子量が5,000未満になると、硬化物の機械的強度が低下する場合があるためであり、一方、数平均分子量が500,000を超えると、組成物の粘度が高くなり、コーティングが困難となる場合があるためである。
また、このような理由により、エチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体のポリスチレン換算数平均分子量を10,000〜300,000とするのがより好ましく、10,000〜100,000とするのがさらに好ましい。
【0067】
これら(A)成分であるエチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体は、組成物全量に対して、通常20〜65質量%配合されるが、好ましくは20〜50質量%配合され、特に好ましくは30〜40質量%配合される。20質量%未満では硬化物の屈折率が上昇するほか、コア層との密着性が低下する傾向があり、65質量%を超えると(B)成分および(C)成分の配合量が圧迫される結果、(A)成分の溶解性が低下し、透明性の高い硬化物が得られにくくなる場合がある。
【0068】
(B)炭素数が11〜18である2−パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート:
本発明の組成物に配合される(B)成分は、炭素数が11〜18である2−パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレートであり、通常、下記式(14)で表される。
CH2=CHCOOCH2CH2(CF2nF (14)
[式中、nは6〜12の数を示す]
(B)成分は、後述する(C)成分と共に、(A)成分の溶解性を確保する目的の他、硬化物の屈折率を低減するために配合される。中でも、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートが、(A)成分を溶解するために好適であり、また入手も容易である点で好ましい。
成分(B)としては、例えば、ビスコート17F(大阪有機化学工業社製)等の市販品を使用することができる。
【0069】
(B)成分である2−パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレートは、組成物全量に対して、通常20〜60質量%配合されるが、好ましくは25〜60質量%であり、特に好ましくは40〜50質量%である。20質量%未満であると(A)成分の溶解性が損なわれる他、硬化物の屈折率が低下する可能性があり、70質量%を越えると組成物の粘度が低下して、塗布性が損なわれる。
【0070】
(A)成分であるエチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体と(メタ)アクリレートモノマーとの相溶性は、多くの場合限定的であるが、(B)成分及び後述の(C)成分の組み合わせと混合することにより、溶解性が改善されて、均一な組成物を得ることができる。特に、(B)成分と(C)成分の配合比が、質量比として2:3〜5:1であることが好ましく、2:3〜4:1がさらに好ましい。
【0071】
(C)芳香族構造および極性基を有さず、エチレン性不飽和基を2以上有する化合物:
本発明の組成物に配合される(C)成分は、芳香族構造および極性基を有さず、エチレン性不飽和基を2以上有する化合物である。(C)成分は、極性基を有しないため、(B)成分と併用することにより、(A)成分の溶解性を高めて均一な組成物を与える。また、(C)成分が芳香族構造を有さないことにより、低い屈折率を有する硬化物を与える。
ここで、極性基とは、カルボキシル基やアミノ基等の解離性基のほか、カルボニル基や炭素数3以下のアルキレンオキシド基等の分極性基が含まれるが、水酸基は除かれる。(C)成分は、前記要件を満たす構造であれば特に限定されない。
【0072】
また(C)成分の具体例としては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族構造含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0073】
以上に挙げた(C)成分の中では、単官能又は多官能の脂肪族構造含有(メタ)アクリレートが好ましく、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート又はネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。(C)成分は、1種類単独で用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。
【0074】
(C)成分は、組成物全量に対して、通常10〜35質量%配合されるが、好ましくは15〜35質量%であり、特に好ましくは15〜30質量%である。10質量%未満であると(A)成分の溶解性が損なわれる可能性があり、35質量%を越えると(A)成分及び(B)成分の配合量が圧迫される結果、硬化物の屈折率が増大し、コア層への密着性が損なわれる。
【0075】
本発明の組成物には、更に、(D)(メタ)アクリル酸又はその2量体を配合することができる。(D)成分を配合することにより、コア層、特にガラス又は石英からなるコア層とクラッド層との密着性を改善することができる。
【0076】
(D)成分は、組成物全量に対して、通常0〜10質量%配合されるが、好ましくは1〜7質量%である。10質量%を越えると組成物の保存安定性を損なう場合がある。
【0077】
本発明の組成物を、紫外線等の光の照射により硬化する場合には、(E)光重合開始剤を配合することが望ましい。
【0078】
(E)光重合開始剤の具体例としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォフフィンオキシド;IRGACURE184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61;Darocure1116、1173(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製);LucirinTPO(BASF社製);ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
【0079】
(E)光重合開始剤を用いる場合には、さらに光増感剤を併用することもできる。光増感剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。また、本発明の液状硬化性樹脂組成物を熱および紫外線を併用して硬化させる場合には、前記熱重合開始剤と光重合開始剤を併用することもできる。
【0080】
(E)重合開始剤は、組成物全量に対して、0.1〜10質量%、特に0.3〜7質量%配合するのが好ましい。
【0081】
本発明の組成物には、発明の効果を損なわない限度で、(F)(A)成分、(B)成分および(C)成分以外の、芳香族構造及び極性基を有さず、エチレン性不飽和基を1個有する化合物を配合することができる。
このような、芳香族構造及び極性基を有さず、エチレン性不飽和基を1個有する化合物の具体例としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム;
ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドt−オクチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド類;
イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の脂肪族構造含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0082】
(F)成分は、組成物全量に対して、通常0〜30質量%配合されるが、好ましくは0〜25質量%であり、特に好ましくは0〜20質量%である。30質量%を越えると組成物及びその硬化物の透明性を損なう場合がある。
【0083】
本発明の組成物には、発明の効果を損なわない限度で、(G)(A)成分、(B)成分、(C)成分および(F)成分以外の、エチレン性不飽和基を有する化合物を配合することができる。(G)成分としては、芳香族構造含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基やアルキレンオキシド構造等の極性基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。(G)成分は、芳香族構造含有(メタ)アクリレートのように硬化物の屈折率を増大させる傾向がある他、極性基含有(メタ)アクリレートのように(A)成分の溶解性を減少させる傾向があるため、(G)成分の配合量は、組成物全量を100質量%として、5質量%以下とすることが好ましい。
【0084】
これら(G)成分の市販品として、例えば、ユピマーUV、SA1002(以上、三菱化学社製)、アロニックスM−215、M−315、M−325(以上、東亞合成社製)、サートマーCN4000(サートマー・カンパニー・インク製)、アローニックスTO−1210(東亞合成社製)等を挙げることができる。
【0085】
本発明の組成物には、必要に応じて、本発明の特性を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を配合することができる。
【0086】
本発明の組成物の粘度は、25℃において、0.8〜5.0Pa・sであることが好ましく、1.5〜6Pa・sであることが特に好ましい。
【0087】
なお、本発明の液状硬化性樹脂組成物は、放射線によって硬化されるが、放射線硬化に加えて熱硬化を併用することもできる。ここで放射線とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等をいう。
【0088】
本発明の液状硬化性組成物の硬化物は、好ましくは200MPa〜500MPaのヤング率を示すのが好ましい。また、アップジャケット層を形成するには、膜厚100〜350μmに被覆するのが好ましい。さらに、光ファイバアップジャケット層の外側に接して熱可塑性樹脂からなるケーブル層を設けることもできる。
【実施例】
【0089】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
【0090】
製造例1(水酸基含有含フッ素共重合体の合成)
内容積2.0Lの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブを窒素ガスで十分置換した後、酢酸エチル400g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(FPVE)53.2g、エチルビニルエーテル(EVE)36.1g、ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)44.0g、過酸化ラウロイル1.00g、上記式(10)で表されるアゾ基含有ポリジメチルシロキサン(VPS1001、和光純薬工業社製)6.0g及びノニオン性反応性乳化剤(NE−30、旭電化工業社製)20.0gを仕込み、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。
次いで、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)120.0gを仕込み、昇温を開始した。オートクレーブ内の温度が60℃に達した時点での圧力は5.3×105Paを示した。その後、70℃で20時間攪拌下に反応を継続し、圧力が1.7×105Paに低下した時点でオートクレーブを水冷し、反応を停止させた。室温に達した後、未反応モノマーを放出してオートクレーブを開放し、固形分濃度26.4%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させた後、メタノールにて洗浄し、50℃にて真空乾燥を行い220gの水酸基含有含フッ素重合体を得た。これを「水酸基含有含フッ素重合体1」とする。
得られた水酸基含有含フッ素重合体1について、GPCによるポリスチレン換算数平均分子量を測定したところ、約70000であった。また、アリザリンコンプレクソン法によるフッ素含量の測定結果、1H−NMR、13C−NMRの両NMR分析結果および元素分析結果から、水酸基含有含フッ素重合体1を構成する各単量体成分の割合を決定したところ、ヘキサフルオロプロピレン由来の構造単位(構造単位(a))、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)由来の構造単位(構造単位(a))、エチルビニルエーテル由来の構造単位(構造単位(b))、ヒドロキシエチルビニルエーテル由来の構造単位(構造単位(c’))が、構造単位(a)〜(c’)の合計量を100モル%として、それぞれ、25:25:25:25モル%であった。
【0091】
製造例2((A)エチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体1の合成)
電磁攪拌機、ガラス製冷却管及び温度計を備えた容量1リットルのセパラブルフラスコに、製造例1で得られた水酸基含有含フッ素重合体1を41.0g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルメチルフェノール0.01g、希釈溶剤として2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート41.0g、及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート17.0gを仕込み、50℃で水酸基含有含フッ素重合体1が溶解して、溶液が透明、均一になるまで攪拌を行った。
次いで、この系に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート0.90gを添加し、溶液が均一になるまで攪拌した後、ジブチルチンジラウレート0.015gを添加して反応を開始し、系の温度を55〜65℃に保持し5時間攪拌を継続することにより、エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体を得た。得られたエチレン性不飽和基含有含フッ素重合体を「エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体1」とする。このとき用いた希釈溶剤は、紫外線硬化樹脂の成分として用いることができる。
【0092】
製造例3((A)エチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体2の合成)
製造例2において2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート0.90gに替えて2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート0.82gを使用した以外は製造例2と同様にして、エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体を得た。得られたエチレン性不飽和基含有含フッ素重合体を「エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体2」とする。
【0093】
実施例1〜3、比較例1〜5
表1に示す組成の各成分を、攪拌機を備えた反応容器に仕込み、液温度を50℃に制御しながら1時間攪拌し、液状硬化性樹脂組成物を得た。
【0094】
試験例1
前記実施例及び比較例で得た液状硬化性樹脂組成物を、以下のような方法で硬化させて試験片を作製し、下記の各評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0095】
1.粘度:
実施例および比較例で得られた組成物の25℃における粘度をB型粘度計を用いて測定した。
【0096】
2.ヤング率:
250μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを窒素下で1J/cm2のエネルギーの紫外線で照射して硬化させ、ヤング率測定
用フィルムを得た。このフィルムから、延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるよう短冊状サンプルを作成し、温度23℃、湿度50%で引っ張り試験を行った。引っ張り速度は1mm/minで2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。
【0097】
3.破断強度および破断伸び:
引張試験器(島津製作所社製、AGS−50G)を用い、試験片の破断強度および破断伸びを下記測定条件にて測定した。
引張速度 :50mm/分
標線間距離(測定距離):25mm
測定温度 :23℃
相対湿度 :50%RH
【0098】
4.屈折率:
ガラス板上に膜厚が200μmとなるようにアプリケーターバーを用いて樹脂組成物を塗布し、1.0J/cm2の紫外線を窒素下で照射し、試験片を作製した。JIS K7105に従い、アタゴ社製アッベ屈折計を用いて、25℃における屈折率を測定した。
【0099】
5.透明性(ヘイズ):
硬化膜の全光線透過率を、カラーヘイズメーター(スガ試験機社製)を用い、JIS K7105に準拠して測定した。測定は、製造直後の硬化膜および120℃72時間放置後の硬化膜について、それぞれ行った。
【0100】
6.密着力:
実施例および比較例で得られた組成物に関し、その硬化物の密着力安定性を測定した。液状組成物を381μm厚のアプリケーターを用いてスライドガラス上に塗布し、窒素雰囲気下で0.1J/cm2の紫外線を照射し、厚さ約200μmの硬化フィルムを得た。このスライドガラス上の硬化フィルムを、温度23℃、湿度50%下に24時間静置した。その後、この硬化フィルムから延伸部が幅10mmとなるように短冊状サンプルを作成した。このサンプルを引っ張り試験器を用いてJIS Z0237に準拠して密着力試験を行った。引張速度は50mm/minでの抗張力から密着力を求めた。
【0101】
7.硬化速度:
200μm厚のアプリケーターを用いて石英ガラス板上に組成物を塗布し、それに3.5KWメタルハライドランプ(オーク社製、SMX−3500/F−OS)を用い、空気雰囲気下において紫外線照射量20mJ/cm2と1.0J/cm2の2条件で紫外線を照射し、硬化フィルムを得た。次いで、23℃、相対湿度50%で24時間放置した後、このフィルムから、延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるよう短冊状サンプルを作成して試験片とした。次に、引っ張り試験機にて試験片のヤング率(MPa)を測定した。紫外線照射量20mJ/cm2におけるヤング率を1J/cm2におけるヤング率で除して得られる値を硬化
速度とした。
【0102】
【表1】

【0103】
表1において、
ビスコート17F;2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート(大阪有機化学工業社製)。
Irgacure184;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)。
Lucirin;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン社製)。
カイナーADS;VDF/TFE/HFPフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンの共重合体(アルケマ社製)。
【0104】
表1から明らかなように、各実施例は、組成物の粘度、硬化物のヤング率・機械強度(破断強度および破断伸び)・屈折率・透明性(ヘイズ)に優れ、高温条件に暴露された後でも良好な透明性を維持している。また、コア層の材質である石英との密着力も良好である。これに対して、(C)成分量が過多である比較例1では、(B)成分と(C)成分の配合量バランスが崩れているため、(A)成分の溶解性が低下した結果、硬化物の透明性が劣っている。(A)成分に替えてエチレン性不飽和基を有しない水酸基含有含フッ素重合体を用いた比較例2では、組成物の粘度が過小であり、フッ素重合体が組成物中に溶解しないため透明性も劣っている。また、(A)成分に該当しないフッ素重合体を用いた比較例3では、フッ素重合体が組成物中に溶解しないため、透明性が劣っている。
【0105】
実施例4〜8
表2に示す組成の各成分を、攪拌機を備えた反応容器に仕込み、液温度を50℃に制御しながら1時間攪拌し、液状硬化性樹脂組成物を得た。
得られた液状硬化性樹脂組成物を、試験例と同様に硬化させて試験片を作製し、粘度、ヤング率、破断強度および破断伸びを評価した。結果を表2に併せて示す。
【0106】
【表2】

【0107】
表2において、
CN4000;サートマーCN4000(サートマー・カンパニー・インク製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物全量を100質量%として、
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体を20〜65質量%、
(B)炭素数が11〜18である2−パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレートを20〜60質量%、ならびに
(C)(A)成分および(B)成分以外であって、芳香族構造および極性基を有さず、エチレン性不飽和基を2以上有する化合物を10〜35質量%
含有する放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分が、下記式(1)で表される構造単位(a)、下記式(2)で表される構造単位(b)、下記式(3)で表される構造単位(c)および下記式(6)で表される構造単位(d)を含有するエチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体である、請求項1記載の放射線硬化性樹脂組成物。
構造単位(a):
【化1】

[式中、R1はフッ素原子、フルオロアルキル基又は−OR2で表される基(R2はアルキル基又はフルオロアルキル基を示す)を示す]
構造単位(b):
【化2】

[式中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4はアルキル基、−(CH2x−OR5若しくは−OCOR5で表される基(R5はアルキル基又はグリシジル基を示し、xは0又は1の数を示す)、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を示す]
構造単位(c):
【化3】

[式中、R6は水素原子又はメチル基を示し、R7は下記式(4)又は(5)で表わされる基を示し、vは0又は1の数を示す
【化4】

(式(4)及び(5)中、R8は水素原子又はメチル基を示す)]
構造単位(d):
【化5】

[式中、R9及びR10は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基又はアリール基を示す]
【請求項3】
更に、(D)(メタ)アクリル酸又はその2量体を含有する請求項1又は2記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
更に、(E)光重合開始剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
光ファイバクラッド層形成用である請求項1〜4のいずれか1項記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜。
【請求項7】
ガラス、石英又は透明樹脂からなるコア層と、該コア層の外側に接して請求項6記載の硬化膜からなるクラッド層とを有するポリマークラッド光ファイバ。

【公開番号】特開2008−195919(P2008−195919A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300350(P2007−300350)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】