説明

放射線貯蔵のためのコア−シェルナノリン光体および方法

本発明は、a)ナノスケールの金属ハロゲン化物コアを調製するステップと、b)ナノスケールの金属ハロゲン化物コアを、希土類金属によって活性化される少なくとも1つのシェルでコーティングするステップと、c)コア−シェルナノリン光体を形成するステップとを含む、放射線貯蔵で使用するためのコア−シェルナノリン光体を生成する方法に関する。また、本発明は、基材コアと、電離放射線、中性子、電子またはUV照射に対して感受性のある少なくとも1つのシェルとを含むコア−シェルナノリン光体にも関する。また、本発明は、放射線画像貯蔵パネル、放射線監視器具および本発明によるコア−シェルナノリン光体の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア−シェルナノリン光体(nanophosphors;ナノ蛍光体)に関する。詳細には、本発明は、放射線貯蔵リン光体、詳細にはX線放射線貯蔵リン光体として機能するコア−シェルナノリン光体粒子に関する。また、本発明は、コア−シェルナノリン光体を生成する方法にも関する。また、本発明は、本発明のコア−シェルナノリン光体を使用して対象またはその一部における放射線レベルを検出および監視する方法にも関する。また、本発明は、本発明のコア−シェルナノリン光体を使用して対象またはその一部をイメージングする方法にも関する。
【0002】
また、コア−シェルナノリン光体は、放射線を検出および監視するための器具においても使用し得る。詳細には、コア−シェルナノリン光体は、哺乳動物であり得る対象またはその一部上で使用し得る、放射線を検出および監視するための器具において使用し得る。また、コア−シェルナノリン光体は、イメージングリーダーなどのイメージング用の器具においても使用し得る。
【背景技術】
【0003】
本明細書全体にわたって、背景技術のすべての記述は、いかなる様式でも、そのような背景技術が従来技術であること、またはそのような背景技術が広く知られているもしくは当分野の一般的な常識の一部を形成することの容認としてみなされるべきでないことを理解されたい。
【0004】
X線は、19世紀のその発見以来、医学的および科学的なイメージングにおいて主要な役割を果たしている。写真乳剤をX線に直接曝露させ、フィルムの黒化によって潜像をもたらす場合は、透過したX線を写真フィルム上に記録する元来の技法が依然として使用されている。しかし、銀系フィルムはX線の捕捉において少々非効率的であるため、高いX線量が必要である。
【0005】
人体を高いX線量に曝露させることに関連する健康上のリスクは十分に認識されており、X線曝露は癌を引き起こす場合があることが確立されている。G J Heyes、A J Mill、およびM W Charlesによる出版物、British Journal of Radiology(2006)79、195〜200、表題「低エネルギーX線の強化された生物学的有効性およびUK 乳房スクリーニングプログラムへの意味(Enhanced biological effectiveness of low energy X−rays and implications for the UK breast screening programme)」では、乳房スクリーニングプログラムにおいてX線量を低下させる必要性が強調されている。
【0006】
したがって、より低い放射線量での医学的X線イメージングを容易にするための器具および方法を提供することが望ましい。スクリーン−フィルム方法は、直接銀フィルム曝露方法を越える最初の主な改良であった。この方法では、X線がシンチレーションスクリーンによって可視光へと変換され、その後、生じる可視光が慣用のハロゲン化銀系の乳剤フィルムによって記録される。
【0007】
シンチレーションスクリーン中で使用されるリン光体物質は良好なX線吸収体でなければならず、写真フィルムの高感度波長領域中の光を発光しなければならない。これらのスクリーン中で現在使用されているリン光体は、希土類で活性化された物質に基づく。しかし、フィルム中の感光性のハロゲン化銀グレインは約4個のX線光子で飽和される、すなわち、黒化プロセスのダイナミックレンジは非常に限定されている。それにもかかわらず、散乱効果を制限する薄膜の厚さのおかげで、この方法の空間分解能は、依然として現在までで最も高いもののうちの1つである。
【0008】
図1は、スクリーン−フィルム方法の模式図を示し、X線は、フィルムを含むシンチレーションスクリーンを介して可視光に変換される線として示されている。2つのイメージング媒体の分解能は、X線フィルムでは10線対/mm、コンピュータX線撮影媒体BaFBr0.850.15:Eu2+(MD−10)では2.5線対/mmとして、表中に示されている。
【0009】
コンピュータX線撮影は、スクリーン−フィルム技術と比較して放射線量を18%と低くまで低下させることを可能にするため、著しい勢いを得ている。慣用のコンピュータX線撮影(CR)では、電離放射線への曝露によって形成されたイメージングプレート(X線貯蔵リン光体を含む)上の潜像は、いわゆる「飛点」方法を使用した光刺激発光によって読み出される。
【0010】
「飛点」方法では、イメージングプレートを横断して集束赤色ヘリウム−ネオンレーザー光線を走査し、生じる可視スペクトルの青緑色領域中の光刺激発光をピクセル毎にデジタルシグナルへと変換する。スクリーン−フィルム方法とは対照的に、CRリン光体は、8桁までのダイナミックレンジを可能にする。しかし、CRにおけるイメージングプレートの空間分解能は、BaFBr(I):Eu2+などの商業的に使用されている光刺激性X線貯蔵リン光体中で必要な比較的大きな結晶子/グレインの大きさが原因で、未だスクリーン−フィルム技術と同水準ではない。
【0011】
図2では、イメージング段階および続く「飛点」方法による読出段階を含む、慣用のコンピュータX線撮影の模式図を示す。図2は画像収集段階および画像読取段階を示す。イメージング収集段階は、X線光子が貯蔵リン光体イメージングプレートと接触することを含む。イメージング読取段階は、貯蔵リン光体イメージングプレート上に光を当てるレーザーを含み、その後、検出器によって読み取られる発光が放出される。
【0012】
多くの全固体デジタル放射線装置が存在するが、大きな寸法および高い分解能が必要とされる場合は、これらの装置上のデジタルパネルは極めて高価である。さらに、全固体装置は柔軟ではなく、したがって、たとえば、口腔検査に使用した場合に、患者に不快感を生じさせる。現在、X線撮影の66%より多くが依然としてスクリーン−フィルム方法によって行われており、コンピュータX線撮影へのアップコンバージョンには機器の大きなアップグレードは必要でない。
【0013】
2005年12月16日に出願のPCT国際出願PCT/AU2005/001905号(WO2006/063409号)(New South Innovations Pty Limited)、表題「放射線貯蔵リン光体および応用(RADIATION STORAGE PHOSPHOR & APPLICATIONS)」は、X線曝露の際にF−中心からの還元によってSm3+不純物イオンから生じた比較的安定なSm2+中心の光励起による潜像の累積的かつ反復的な読み出しを可能にする、光ルミネセント(光励起可能、放射線ルミネセント)なX線貯蔵リン光体(Sm3+で活性化されたナノ結晶性ハロゲン化アルカリ土類)を記載している。
【0014】
光励起ルミネセンスは、可視スペクトルの赤色領域およびX線で作製されたSm2+−中心の近赤外線中の非常に狭いf−f遷移に基づいており、優れた信号対雑音比および高いコントラストを有する高感度および高分解能の読み出しを可能にする。国際PCT出願PCT/AU2005/001905号(WO2006/063409号)の内容は、相互参照によって本明細書中に組み込まれている。
【0015】
国際PCT出願PCT/AU2008/001566号(WO2009/052568号)(New South Innovations Pty Limited)、表題「放射線を検出および監視するための器具および方法(APPARATUS AND METHOD FOR DETECTING AND MONITORING RADIATION)」は、本発明のコア−シェルナノリン光体を使用し得る、放射線を検出するための器具および方法を記載している。国際PCT出願PCT/AU2008/001566号(WO2006/063409号)の内容は、相互参照によって本明細書中に組み込まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明は、コア−シェルナノリン光体、コア−シェルナノリン光体を生成する方法、または従来技術の代替方法を提供することによって、従来技術における問題を克服することを追求する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
定義
本明細書の以下の部分は、本発明の説明の理解に有用であり得る一部の定義を提供する。これらは一般的な定義として意図され、いかなる様式でも本発明の範囲をこれらの用語のみに限定するべきでなく、以下の説明のより良好な理解のために記載する。
【0018】
文脈によりそうでないことが必要な場合、または反することが具体的に記述されている場合以外は、単数の整数、ステップまたは要素として本明細書中で列挙した本発明の整数、ステップ、または要素には、列挙した整数、ステップまたは要素の単数形および複数形がどちらも明確に包含される。
【0019】
本明細書全体にわたって、文脈によりそうでないことが必要な場合以外は、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変形は、記述したステップもしくは要素もしくは整数またはステップもしくは要素もしくは整数の群の包含を暗示すると理解される。したがって、本明細書の文脈では、用語「含む」とは、包括的な意味で使用され、したがって、「主に含まれるが、必ずしもそれだけではない」ことを意味すると理解されるべきである。
【0020】
当分野の技術者には、本明細書中に記載の本発明が、具体的に記載したもの以外の変形および改変を受け入れ可能であることが理解されよう。本発明にはそのような変形および改変がすべて含まれることを理解されたい。また、本発明には、すべてのステップ、特徴、組成物および化合物、または前記ステップもしくは特徴のうちの任意の2つ以上も含まれる。
【0021】
本明細書全体にわたって、用語、光ルミネセント、光励起可能および放射線ルミネセントとは、電離放射線に曝露させた際に、標準の光ルミネセンスによって、すなわちより短い波長での励起およびより長い波長でのルミネセンスによって読み出すことができる比較的安定な光学中心が作製されるという、同じ意味を有すると定義される。この場合、光学中心内の電子は、励起光によって直接励起される。
【0022】
本明細書全体にわたって、用語、光学的誘起ルミネセンス(Optically stimulated luminescence (OSL))および光刺激ルミネセンス(Photostimulated luminescence (PSL))とは、同じ現象をいう。PSLまたはOSL物質は、電離放射線に曝露させた際に、電子−正孔対の準安定な捕捉を生じる。続いてより長い波長で刺激した際に、電子および正孔の再結合が原因で、より短い波長のルミネセンスが起こる。これはルミネセンスの間接的な励起であり、上述の光ルミネセンス(放射線ルミネセンス)とは明確に異なる。
【0023】
本明細書全体にわたって、用語、ナノ結晶およびナノ結晶性とは、少なくとも1つの寸法がナノメートルのスケール(1〜999nm)である結晶子を含む物質をいう。ナノ粒子は、1つまたは複数の凝集したナノ結晶のどちらからなることもでき、用語コア−シェルナノリン光体とは、1つまたは複数の凝集したナノ結晶からなるコアおよび別の化学組成を有するシェルを有する、ナノメートルのスケールの粒子を含むルミネセント/リン光性の物質をいう。
【0024】
発明の概要
一実施形態では、本発明は、
a)ナノスケールの金属ハロゲン化物コアを調製するステップと、
b)ナノスケールの金属ハロゲン化物コアを、希土類金属によって活性化される少なくとも1つのシェルでコーティングするステップと、
c)コア−シェルナノリン光体を形成するステップと
を含む、放射線貯蔵で使用するためのコア−シェルナノリン光体を生成する方法に関する。
【0025】
本発明による方法は、ナノスケールの金属ハロゲン化物コアを化学的調製または化学的処理のステップによって調製するステップa)をさらに含み得る。
【0026】
ステップa)の化学的調製は、逆マイクロエマルジョン、固相反応、共沈殿、コロイド処理、キャッピング、クラスター形成、ゾル−ゲル、電気化学的処理、ソルボサーマル処理、熱水処理、化学蒸着、湿式化学、ボールミリング、薄いナノ結晶性フィルムのスパッタリング、燃焼反応およびその組合せからなる群から選択され得る。ステップa)では、ナノスケールの金属ハロゲン化物コアは、沈殿、熱水/ソルボサーマル合成、または逆マイクロエマルジョンによって調製し得る。
【0027】
金属ハロゲン化物コアは、CaF、SrF、BaF、BaFCl、BaFBr、SrFCl、SrFBr、BaClF、CsBr、CsF、SrMgF、SrAlF、Ba1212、BaMg10、BaMgFおよびその混合物からなる群から選択され得る。
【0028】
希土類金属は、サマリウム、ユーロピウムおよびジスプロシウムからなる群から選択され得る。
【0029】
また、ナノスケールの金属ハロゲン化物コアを調製するステップa)は、物理的調製または物理的処理のステップによるものであってもよい。物理的調製または物理的処理は、ミリング、詳細にはボールミルを使用したものを含み得る。
【0030】
本発明による方法は、少なくとも1つの希土類で活性化されたシェルを、金属ハロゲン化物コア上にコーティングすることをさらに含み得る。また、この方法は、第1および第2の希土類または遷移金属イオンで活性化されたシェルを、金属ハロゲン化物コア上にコーティングすることも含み得る。また、第2の希土類または金属イオンで活性化されたシェルは、電子供与体としても作用し得る。
【0031】
第1の希土類で活性化されたシェルは、金属ハロゲン化物、ハロゲン化アルカリ、ハロゲン化アルカリ土類およびその混合物からなる群から選択され得る。第2の希土類または遷移金属イオンで活性化されたシェルは、放射線に曝露させた際に、複数の自由電子またはF−中心を生じることができる場合がある。
【0032】
本発明による方法は、第1の希土類で活性化されたシェルおよび第2の希土類で活性化されたシェルを有するコア−シェルナノリン光体をさらに含み得る。一実施形態では、第2の希土類で活性化されたシェルは、放射線に曝露させた後に複数の電子を生じ、その後、これらは第1の希土類で活性化された層内に注入される。
【0033】
本発明による方法は、金属ハロゲン化物であるコアを含み、さらに金属ハロゲン化物がCaF、SrF、BaF、BaFCl、BaFBr、SrFCl、SrFBr、BaClF、CsBr、CsF、SrMgF、SrAlF、Ba1212、BaMg10、BaMgFおよびその混合物からなる群から選択され得る、コア−シェルナノリン光体をさらに含み得る。
【0034】
少なくとも1つの希土類で活性化されたシェルは、BaFCl:Sm3+、BaFBr:Sm3+、BaFCl:Sm3+、BaFCl1−xBr:Sm3+、BaFCl1−x−yBr:Sm3+、SrFCl:Sm3+、SrFBr:Sm3+、SrFCl1−xBr:Sm3+、BaFCl1−x−yBr:Sm3+、Ba1−xSrFCl:Sm3+、BaFCl:Sm3+、SrMgF4−xCl:Sm3+、SrAlF5−xCl:Sm3+、Ba12Cl:Sm3+、BaMg10:Sm3+、BaMgF:Sm3+、およびその混合物からなる群から選択され得る。
【0035】
コア−シェルナノリン光体は、基材コアと、電離放射線、中性子、電子またはUV照射に対して感受性のある少なくとも1つのシェルとを含み得る。コア−シェルナノリン光体は、金属ハロゲン化物、ハロゲン化アルカリ、ハロゲン化アルカリ土類およびその混合物からなる群から選択され得る基材コアを含み得る。
【0036】
コア−シェルナノリン光体は、基材コアと同じ物質から形成され得る、少なくとも1つの希土類で活性化されたシェルを含み得る。少なくとも1つの希土類で活性化されたシェルは、金属ハロゲン化物、ハロゲン化アルカリまたはハロゲン化アルカリ土類およびその混合物からなる群から選択され得る。
【0037】
コア−シェルナノリン光体は、BaFCl:Sm3+、BaFBr:Sm3+、BaFCl:Sm3+、BaFCl1−xBr:Sm3+、BaFCl1−x−yBr:Sm3+、SrFCl:Sm3+、SrFBr:Sm3+、SrFCl1−xBr:Sm3+、BaFCl1−x−yBr:Sm3+、Ba1−xSrFCl:Sm3+、BaFCl:Sm3+、SrMgF4−xCl:Sm3+、SrAlF5−xCl:Sm3+、Ba12Cl:Sm3+、BaMg10:Sm3+、BaMgF:Sm3+、およびその混合物からなる群から選択される少なくとも1つの希土類で活性化されたシェルを有し得る。
【0038】
少なくとも1つの希土類で活性化されたシェル中で使用し得る希土類イオンは、Eu3+、Sm3+、Dy3+およびその組合せからなる群から選択され得る。一実施形態では、希土類イオンは、放射線に曝露させた際に+2酸化状態へと還元される。一例では、希土類イオンは、放射線に曝露させた際にSm2+へと還元されるSm3+であり得る。
【0039】
別の実施形態では、コア−シェルナノリン光体は、少なくとも1つの希土類で活性化されたシェルを含み、希土類イオンは比較的安定であり、狭いf−f光ルミネセンスの複数の読出し値を可能にする。別の実施形態では、希土類イオンは、+2酸化状態へと還元され得るSm3+であり得る。Sm2+希土類イオンは比較的安定であり、狭いf−f光ルミネセンスの複数の読出し値を可能にすることに留意されたい。
【0040】
また、本発明は、本発明のプロセスによって生成されるコア−シェルナノリン光体にも関する。
【0041】
本発明の別の実施形態では、コア−シェルナノリン光体を含む放射線画像貯蔵パネルが提供される。本発明の別の実施形態では、本発明によるコア−シェルナノリン光体を含む放射線監視器具が提供される。本発明の別の実施形態では、放射線療法の線量の監視における、本発明によるコア−シェルナノリン光体の使用が提供される。
【0042】
本発明の別の実施形態では、科学的および医学的イメージング用のイメージングプレートにおける、本発明によるコア−シェルナノリン光体の使用が提供される。
【0043】
別の態様では、本発明は、エネルギー感受性線量測定および放射線検出のための、本発明によるコア−シェルナノリン光体の使用に関する。少なくとも2つの異なるコア−シェルナノ粒子の混合物を電離放射線に曝露させる。2種類のナノ粒子は、その放射線貯蔵効率のエネルギー依存性が異なるため、2つのナノ粒子の変異形の誘起光ルミネセンスまたは光刺激発光の強度の比を測定することによって、電離放射線の(平均)エネルギーを計算することが可能である。
【0044】
別の態様では、本発明は、金属ハロゲン化物の、シェルが活性化されたコア−シェルナノ粒子に関する。コア−シェルナノ粒子は、電離放射線に対して非常に感受性であるように作製し得る。コア−シェルナノ粒子の大きさは1nm〜900nmで変動することができ、様々な応用のためにあつらえおよび最適化し得る。
【0045】
重要なことに、コア−シェルナノリン光体の非常に小さなグレイン/粒子径のおかげで、コア−シェルナノリン光体は、X線貯蔵リン光体のダイナミックレンジおよび感度を、慣用のスクリーン−フィルムX線イメージングの高い分解能と組み合わせて提供する潜在性を有する。国際PCT出願PCT/AU2005/001905号(WO2006/063409号)に記載されている光ルミネセントX線貯蔵リン光体は、慣用のコンピュータX線撮影で使用されている幅広い短命の光刺激発光(光刺激光よりも短い波長での発光)ではなく、比較的長い寿命(2ms)を有する狭い光ルミネセンス(光励起光よりも長い波長での発光)に基づいているため、異なる読み出し方法を必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】従来技術のスクリーン−フィルム方法を示す模式図である。
【図2】従来技術のコンピュータX線撮影方法を示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に従って1つのシェルを有するコア−シェルナノリン光体粒子を調製する方法を示す模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に従って2つのシェルを有するコア−シェルナノリン光体粒子を調製する方法を示す模式図である。
【図5】図5aおよび図5bは、コア−シェルBaFCl/BaFCl:Sm3+光ルミネセントX線貯蔵リン光体の変調伝達関数(MTF)の評価から生じるデータを示すグラフ表示である(右側の図中の実線)。
【図6】本発明中で使用する逆マイクロエマルジョンを示す表示である。
【図7】電離放射線に曝露させる前および後のナノ結晶性コア−シェル光ルミネセントX線貯蔵リン光体BaFCl/BaFCl:Sm3+のルミネセンススペクトルを示す図である。
【図8】エネルギー選択的光ルミネセント貯蔵リン光体(SrF/SrFCl:Sm2+およびSrF/BaFCl:Sm2+)の遷移の領域における光ルミネセンスを示す図であり、2つの遷移の比により平均エネルギーの決定が可能となる。
【図9】BaF/BaFCl:Sm3+コア−シェルナノ粒子の粉末X線回折を示す図である。
【図10】BaFCl/BaFCl:Sm3+ナノ結晶の透過型電子顕微鏡観察のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、特許請求の範囲の一般性および範囲の限定を意図しないことを理解されたい。
【0048】
図3には、本発明の第1の実施形態に従って1つのシェルを有するコア−シェルナノリン光体粒子を調製する方法の模式図として示されている、本発明の一実施形態が示されている。第1のステップでは、様々な化学的方法、たとえば、共沈殿、ソルボサーマル、熱水処理または化学蒸着によって、コアがナノスケールで生成される。第2のステップでは、ナノスケールのコアは、3+酸化状態のサマリウムなどの希土類金属によって活性化されるシェルでコーティングされる。この第2のステップは、ミリング、熱水またはソルボサーマル処理および湿式化学全般によって支援される固相反応などの、広範な化学的方法によって実施することができる。
【0049】
図4には、本発明の本実施形態において、3+酸化状態のサマリウム(Sm3+)などの希土類金属によって活性化される1つシェルのみを塗布する代わりに、前述の第1のシェルの生成と同じまたは類似の生成ステップの方法を使用して、第2のシェルも提供される、二重シェルナノ粒子を示す別の実施形態が示されている。第2のシェルは電子供与体として作用し、電離放射線に曝露させた際に第1のシェル内に電子を注入することができる。その後、内部シェル内に注入された電子は、たとえばSm3+からSm2+などの希土類金属の還元に使用される。
【0050】
貯蔵リン光体および関連するリーダー器具の顕著な利点は、X線貯蔵機構である。X線貯蔵機構では、Sm2+中心(Sm3+からの還元を誘起する電離放射線によって形成)は非常に安定であり(ただし、これらはより高い光パワーで2ステップの光子イオン化によって可逆的に退色される可能性がある)、したがって、その光ルミネセンスを何度も読み出すことができ、光刺激の際に貯蔵されたエネルギーが放出される光刺激性リン光体(1ピクセルあたり1回の読み出しのみ)と比較して、より良好な信号対雑音比が得られる。
【0051】
このことは、CCDまたはCMOSカメラによる数メガピクセルの反復かつ並行の読み出しを可能にする。さらに、BaFBr(I):Eu2+リン光体の幅広い光刺激4f5d→4f発光とは対照的に、本発明の光ルミネセントリン光体の光ルミネセンスは、f−電子シェル内の遷移に基づいているため、極めて狭い。
【0052】
このことは、励起と発光の光の間のはるかにより高いコントラストおよび感度限界を促進する。従来技術のリン光体(BaFBr0.850.15:Eu2+)は、その感度を促進するために用いなければならない比較的大きな結晶子によって引き起こされる散乱効果が原因で、限定された空間分解能を有する。対照的に、本発明のコア−シェルナノリン光体は、直径50nm〜150nm、直径60nm〜140nm、直径70nm〜130nm、直径80nm〜120nm、直径90nm〜110nm、またはより典型的には直径約100nm(平均体積加重直径)の範囲であり得るナノ粒子に基づき得る。したがって、より高い充填密度が達成され、散乱効果はそれほど明白でなく、より高い空間分解能が可能となる。
【0053】
本発明のコア−シェルナノリン光体のはるかにより高いコントラストおよび感度限界は、図5中に示されるデータによって実証される。図5は、変調伝達関数(MTF)の評価を実証する。図5中のデータは、鋼鉄の縁部を、1つの標準の口腔検査線量(約1mGyの表面線量)によって65kVおよび7mAのX線管電圧および電流でイメージングすることによって得られた。
【0054】
鋼鉄の縁部をイメージングプレートと20mmのPerspexプレートとの間に挟み(組織による散乱を模倣するため)、X線カメラはPerspexの150mm上方であった。この評価から見ることができるように、MTFは、最先端のCRシステム(たとえば、CR−GPイメージングプレートを用いたKodak CR9000)よりも有意に良好であった。後者のCRシステムは、光刺激性貯蔵リン光体システムに基づいている。
【0055】
イメージングプレートの上の鋼鉄の縁部は、1つの標準の口腔検査線量(約5μGyの身体線量)によって、20mmのPerspexを介してイメージングした。読み出しは、開発したプロトタイプの2Dリーダーによって実施した。CR−GPイメージングプレートを用いたKodak CR9000リーダーのMTFを比較のために示す(実線によって繋がれた中実の三角形)。左側の図は、エッジ拡がり関数ESFの微分によって得られた線拡がり関数を示す。
【0056】
コア−シェルナノリン光体粒子は、光ルミネセンスに基づくX線貯蔵リン光体である。活性化されたシェルは、はるかに多くの欠陥を受け入れることができ、したがって電離放射線に誘起されるサマリウム(III)の還元に電子を提供することができると仮説が立てられているため、本発明のコア−シェルナノリン光体は、従来技術のリン光体よりも感受性が高い。また、電離放射線は、電離放射線を強く減衰させる粒子を通り抜ける必要もない。むしろ、効果は表面、すなわちシェル上で起こる。
【0057】
また、コア−シェルナノリン光体粒子の混合物(たとえば、BaFCl/BaFCl:Sm3+、BaFCl/SrFCl:Sm3+)または混合シェルを有するナノリン光体粒子も、エネルギー感受性放射線検出に使用し得る。放射線検出は、2つ(または複数の環境)におけるSm3+→Sm2+変換の異なるエネルギー依存性に基づいて起こる。異なる環境に対応する2つ(または複数の)波長でのSm2+光ルミネセンスの比の測定により、それぞれ単色または多色の電離放射線のエネルギーまたは平均エネルギーの決定が可能となる。
【0058】
コア−シェルおよびコア−二重シェルナノリン光体粒子の調製
本発明の一実施形態では、ナノリン光体粒子のコアは、それだけには限定されないが、熱水/ソルボサーマル合成(たとえば、溶液がオートクレーブ中で高温および高圧に曝露される場合)、逆マイクロエマルジョン(たとえば、油性相中の逆ミセルが水相の寸法を制御する、すなわち、微視的な「反応器」が提供される場合)、共沈殿(たとえば、SrFおよびBaFナノ粒子は、フッ化アンモニア溶液および様々なエタノール−水混合物を用いた塩化物塩の共沈殿によって合成することができる)、ならびに(機械化学的)固相反応(たとえば、BaFおよびBaCl:Sm3+ナノ粒子のミリング)を含めた、様々な方法によって調製し得る。
【0059】
図6では、たとえば、逆ミセルを、ポリオキシエチレンノニルフェノール(Igepal CO−520)、メタノールおよび水を使用して容易に調製し得る。Igepal、メタノールおよび水は、それぞれ界面活性剤、共界面活性剤および極性相として作用する。第1の極性の水相はアルカリ土類塩を含有し、第2の相はフッ化物塩を含有する。2つの逆ミセルを混合し、その後、迅速に混合して、粉末がナノスケールで得られる。粒子径およびその均一性は、様々な界面活性剤/極性相の比を用いることによって最適化することができる。ミセルは「化学反応器」の寸法を定義し、したがってナノ粒子の大きさを制限および決定する。
【0060】
別の例では、BaClFの高度に均一な粒子径は、ソルボサーマル処理を介して、水対オレイン酸の比を変化させることによって得られ得る。その後、ソルボサーマル処理から形成されたナノ粒子を、熱水/ソルボサーマル方法を用いたまたはボールミル中での固体化学による第2のステップでさらに処理し得る。さらなる例として、BaFナノ粒子をBaCl:Sm3+と共にミリングした場合は、高分解能電子顕微鏡観察および粉末X線回折で実証することができるように、BaF/BaFCl:Sm3+コア−シェルナノリン光体粒子が形成される。
【0061】
本発明に使用し得るコアおよびシェルの物質のリストは、以下の表1中に示されている。表1は、本発明の適切なコア−シェルの組合せの225個の例を記載している。コア粒子は様々なシェル物質によってコーティングされ得るが、格子パラメータが原因で、すべての組合せが形成され得るわけではないことを理解されたい。また、リン光体の感度は、コアおよびシェルの相対寸法に依存し得る。
【0062】
【表1】

【実施例】
【0063】
コア−シェルナノ粒子の調製方法の例
1.実施形態:in situ調製
(実施例1)
BaFCl/BaFCl:Sm3+コア−シェルナノリン光体粒子
1.事前に以下の水溶液を調製し、23℃の水浴中に保つ:
0.4MのBaCl・2HO(500mLのHOおよび2滴のHCl、36%中に48.85g)、
0.2MのNHF(200mLのHO中に1.48g)ならびに
SmCl・6HOの1mg/mL溶液。
2.50mLのプラスチック製遠心管内に、25mlの0.4MのBaCl・2HO、600μLのSmCl・6HOの1mg/ml溶液および150μLのHCl(36%)を入れる。
3.遠心管を密封し、23℃の水浴中に入れる。
4.バリウムおよびサマリウムの溶液に25mLの0.2MのNHFを加える。白色沈殿物がすぐに形成され始めるはずである。
5.さらに10分間、23℃で混合物を沈殿させる。
6.10分間遠心分離し、その後に傾瀉することによって、沈殿物を溶液から分離する。
7.10滴の溶液を沈殿物に加え戻す。
8.遠心管中の沈殿物を適切なガラス容器内に入れ、65℃で約24時間乾燥させる。
9.粉末の調製には、沈殿物を乳鉢および乳棒中で粉砕して、リン光体BaFCl/BaFCl:Sm3+が白色粉末、0.79gとして得られる。
【0064】
この調製手順を改変して、広範なコア−シェルナノリン光体粒子を合成し得る。詳細には、第1のステップはコアをナノスケールで生成し、その後、第2のステップで活性化されたシェルが形成される。
【0065】
(実施例2)
SrFCl/SrFCl:Sm3+の合成
本実施例では、0.2gのSrF、50mLの0.4MのSrCl・6HO、300μLの36%のHClおよび2400μLの1mg/mLのSmCl・6HOの混合物を、プラスチック製遠心管内に加えた。その後、遠心管を密封し、素早く振盪した。その後、混合物を12分間遠心分離し、溶液を傾瀉して除去した。しかし、その後、2500μLの溶液を遠心管中の沈殿物に加え戻した。その後、沈殿物および2500μLの溶液を有する遠心管を、65℃の温度のオーブン内で乾燥させ、ここで沈殿物が冷却され、粉砕されて、SrFCl/SrFCl:Sm3+が収率0.30gを有する白色粉末として得られた。
【0066】
(実施例3)
BaSr1−xFCl/Sm3+の合成
本実施例では、0.2gのSrF、50mLの0.4MのBaCl・6HO、300μLの36%のHClおよび2400μLの1mg/mLのSmCl・6HOの混合物を、プラスチック製遠心管内に加えた。その後、遠心管を密封し、素早く振盪した。その後、混合物を12分間遠心分離し、溶液を傾瀉して除去した。しかし、その後、2000μLの溶液を遠心管中の沈殿物に加え戻した。その後、沈殿物および2000μLの溶液を有する遠心管を、65℃の温度のオーブン内で乾燥させ、その後、乾燥した沈殿物がここで冷却され、粉砕されて、BaSr1−xFCl/Sm3+が白色粉末として得られた。収率:0.37g。
【0067】
(実施例4)
BaFCl/BaFCl:Sm3+コア−シェルナノリン光体の調製
本発明のさらに好ましい実施形態では、BaFCl/BaFCl:Sm3+コア−シェルナノリン光体を2つの分離ステップで調製する方法の一例を以下に記載する。
【0068】
第1ステップ
1.以下の水溶液:
0.4MのBaCl・2HO(500mlのHOおよび2滴のHCl、36%中に48.85g)、
0.2MのNHF(200mLのHO中に1.48g)、ならびに
SmCl・6HOの1mg/mL溶液を調製し、23℃の水浴中で貯蔵する。
2.その後、25mLの0.4MのBaCl・2HO溶液を、600μLのSmCl・6HOの1mg/mL溶液および150mlのHCl(36%)と共に、50mLのプラスチック製遠心管内に入れる。
3.遠心管を密封し、23℃の水浴中に入れる。
4.25mLの0.2MのNHFを、プラスチック製遠心管中のバリウムおよびサマリウムの溶液に入れ、ここで白色沈殿物が形成される。
5.さらに10分間、23℃でバリウムおよびサマリウムの溶液を沈殿させる。
6.10分間遠心分離し、その後に傾瀉することによって、沈殿物をバリウムおよびサマリウムの溶液から分離する。
7.沈殿物を20〜40mLの水で数回洗浄し、それぞれの間に遠心分離する。
8.水を傾瀉し、粉末を約65度のオーブン内で乾燥させる。
【0069】
第2ステップ
1.BaFClナノ粒子(40mLの水中に約0.7g)の懸濁液を、25mLの0.4MのBaCl、600μLのSmCl・6HOの1mg/mL溶液および150μlのHCl(36%)中での湿式粉砕/ミリングによって調製する。
2.その後、懸濁液を激しく振盪および/または超音波処理する。
3.その後、懸濁液を遠心分離した後、浮遊溶液を傾瀉する。
4.傾瀉後、10〜20滴の新鮮な浮遊溶液を懸濁液に加え戻す。
5.その後、懸濁液を65℃のオーブン内で乾燥させて、沈殿物を形成させる。
6.粉末を調製するためには、沈殿物を乳鉢および乳棒中で粉砕して、白色粉末の形態のコア−シェルナノリン光体BaFCl/BaFCl:Sm3+が得られる。
【0070】
既に言及したように、図5aおよび図5bは、コア−シェルBaFCl/BaFCl:Sm3+光ルミネセントX線貯蔵リン光体の変調伝達関数(MTF)の評価に基づくデータを提供する(右側の図中の実線)。
【0071】
さらに、図5aおよび5b中に示されるデータは、本発明のコア−シェルナノリン光体、詳細にはBaFCl/BaFCl:Sm3+の、より高いコントラストおよび感度限界を実証している。
【0072】
図5aおよび5b中のデータは、鋼鉄の縁部を、1つの標準の口腔検査線量(約1mGyの表面線量)によって65kVおよび7mAのX線管電圧および電流でイメージングすることによって得られた。鋼鉄の縁部をイメージングプレートと20mmのPerspexプレートとの間に挟み(組織による散乱を模倣するため)、X線カメラはPerspexの150mm上方であった。図5aおよび5bから見ることができるように、MTFは、従来技術のCRシステム(たとえば、CR−GPイメージングプレートを用いたKodak CR9000)よりも有意に良好であった。従来技術のCRシステムは、光刺激性貯蔵リン光体システムに基づいている。
【0073】
図5aおよび図5bでは、イメージングプレートの上の鋼鉄の縁部は、1つの標準の口腔検査線量(約5μGyの身体線量)によって、20mmのPerspexを介してイメージングした。読み出しは、プロトタイプの2Dリーダーによって実施した。CR−GPイメージングプレートを用いたKodak CR9000リーダーのMTFを比較のために示す(実線によって繋がれた中実の三角形)。左側の図は、エッジ拡がり関数ESFの微分によって得られた線拡がり関数を示す。
【0074】
図7には、低線量のX線照射に曝露させる前および後のナノ結晶性コア−シェル光ルミネセントX線貯蔵リン光体BaFCl/BaFCl:Sm3+のルミネセンススペクトルが示されている。Sm2+イオンの顕著な遷移は、図7中で(0,1)として表示されている。
【0075】
図8には、エネルギー選択的光ルミネセント貯蔵リン光体(SrF/SrFCl:Sm2+およびSrF/BaFCl:Sm2+)の遷移の領域中の光ルミネセンスが示されており、2つの強烈な遷移の強度比を使用して、エネルギー感受性線量測定における電離放射線の平均エネルギーを決定することができる。これは、2つの相の事前に決定されたエネルギー依存性に基づいて行い、したがって、強度比は平均エネルギーをもたらす。同様の方法が二重光ダイオード波長計における波長の決定に使用されており、当業者には周知であろう。
【0076】
図9には、BaF/BaFCl:Sm3+コア−シェルナノ粒子の粉末X線回折が示されている。
【0077】
図10には、BaFCl/BaFCl:Sm3+ナノ結晶の透過型電子顕微鏡観察のグラフが示されている。
【0078】
図7〜10は、既知のリン光体を越える、本発明のコア−シェルナノ粒子の改良された特性を実証していることが理解されよう。詳細には、コア−シェルナノリン光体は、均一な希土類イオン分布を有するナノ粒子と比較して、はるかにより高いコア−シェルナノ粒子の感度を示すことに留意されたい。
【0079】
本発明のコア−シェルナノ粒子の利点は、コア−シェルナノ粒子を、コンピュータX線撮影において現在使用されている光刺激性物質よりもはるかに高い感度を有する光ルミネセントX線貯蔵リン光体として使用できることである。
【0080】
当業者には、本発明のプロセスを改変して、広範なコア−シェルナノ粒子を合成できることが理解されよう。詳細には、第1のステップはコアをナノスケールで生成し、その後、第2のステップで活性化されたシェルが作製される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ナノスケールの金属ハロゲン化物コアを調製するステップと、
b)前記ナノスケールの金属ハロゲン化物コアを、希土類金属によって活性化される少なくとも1つのシェルでコーティングするステップと、
c)コア−シェルナノリン光体を形成するステップと
を含む、放射線貯蔵で使用するためのコア−シェルナノリン光体を生成する方法。
【請求項2】
前記ナノスケールの金属ハロゲン化物コアを調製するステップa)が、化学的調製または化学的処理のステップによるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学的調製が、逆マイクロエマルジョン、固相反応、共沈殿、コロイド処理、キャッピング、クラスター形成、ゾル−ゲル、電気化学的処理、ソルボサーマル処理、熱水処理、化学蒸着、湿式化学、ボールミリングおよびその組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)で、前記ナノスケールの金属ハロゲン化物コアが、沈殿、熱水/ソルボサーマル合成、または逆マイクロエマルジョンによって調製される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属ハロゲン化物コアが、CaF、SrF、BaF、BaFCl、BaFBr、SrFCl、SrFBr、BaClF、CsBr、CsF、SrMgF、SrAlF、Ba1212、BaMg10、BaMgFおよびその混合物からなる群から選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記希土類金属が、サマリウム、ユーロピウムおよびジスプロシウムからなる群から選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノスケールの金属ハロゲン化物コアを調製するステップa)が、物理的調製または物理的処理のステップによるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記物理的調製が、ミリング、特にボールミリングである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属ハロゲン化物コア上にコーティングされた1つまたは複数の希土類で活性化されたシェルが存在する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1および第2の希土類で活性化されたシェルが存在し、前記第2の希土類または遷移金属イオンで活性化されたシェルが電子供与体として作用する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の希土類または遷移金属イオンで活性化されたシェルが、金属ハロゲン化物、ハロゲン化アルカリ、ハロゲン化アルカリ土類およびその混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の希土類または遷移金属イオンで活性化されたシェルが、放射線に曝露させた際に、複数の自由電子またはF−中心を生じることができる、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の希土類または遷移金属イオンで活性化されたシェルが、放射線に曝露させた後に複数の電子を生じ、その後、これらが前記希土類で活性化された層内に注入される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属ハロゲン化物が、CaF、SrF、BaF、BaFCl、BaFBr、SrFCl、SrFBr、BaClF、CsBr、CsF、SrMgF、SrAlF、Ba1212、BaMg10、BaMgFおよびその混合物からなる群から選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの希土類で活性化されたシェルが、BaFCl:Sm3+、BaFBr:Sm3+、BaFCl:Sm3+、BaFCl1−xBr:Sm3+、BaFCl1−x−yBr:Sm3+、SrFCl:Sm3+、SrFBr:Sm3+、SrFCl1−xBr:Sm3+、BaFCl1−x−yBr:Sm3+、Ba1−xSrFCl:Sm3+、BaFCl:Sm3+、SrMgF4−xCl:Sm3+、SrAlF5−xCl:Sm3+、Ba12Cl:Sm3+、BaMg10:Sm3+、BaMgF:Sm3+、およびその混合物からなる群から選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノリン光体が、BaFCl/BaFCl:Sm3+、SrFCl/SrFCl:Sm3+、およびBaSr1−xFCl:Sm3+からなる群から選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
基材コアと、電離放射線、中性子、電子またはUV照射に対して感受性のある少なくとも1つのシェルとを含むコア−シェルナノリン光体。
【請求項18】
前記基材コアが、金属ハロゲン化物、ハロゲン化アルカリ、ハロゲン化アルカリ土類およびその混合物からなる群から選択される、請求項17に記載のコア−シェルナノリン光体。
【請求項19】
前記シェル物質が少なくとも1つの希土類イオンによって活性化されること以外は、前記シェルは前記基材コアと同じ物質から形成されることができる、請求項17または18に記載のコア−シェルナノリン光体。
【請求項20】
前記少なくとも1つのシェルが、金属ハロゲン化物、ハロゲン化アルカリまたはハロゲン化アルカリ土類およびその混合物からなる群から選択される、請求項17、18または19に記載のコア−シェルナノリン光体。
【請求項21】
前記少なくとも1つの希土類で活性化されたシェルが、BaFCl:Sm3+、BaFBr:Sm3+、BaFCl:Sm3+、BaFCl1−xBr:Sm3+、BaFCl1−x−yBr:Sm3+、SrFCl:Sm3+、SrFBr:Sm3+、SrFCl1−xBr:Sm3+、BaFCl1−x−yBr:Sm3+、Ba1−xSrFCl:Sm3+、BaFCl:Sm3+、SrMgF4−xCl:Sm3+、SrAlF5−xCl:Sm3+、Ba12Cl:Sm3+、BaMg10:Sm3+、BaMgF:Sm3+、およびその混合物からなる群から選択される、請求項17、18、19または20のいずれか一項に記載のコア−シェルナノリン光体。
【請求項22】
前記希土類イオンが、Eu3+、Sm3+、Dy3+およびその組合せからなる群から選択される、請求項19に記載のコア−シェルナノリン光体。
【請求項23】
前記希土類イオンがSm3+である、請求項22に記載のコア−シェルナノリン光体。
【請求項24】
前記Sm3+希土類イオンが、放射線に曝露させた際に+2酸化状態へと還元される、請求項23に記載のコア−シェルナノリン光体。
【請求項25】
前記Sm3+希土類イオンが+2酸化状態へと還元された後、Sm2+希土類イオンは比較的安定であり、狭いf−f光ルミネセンスの複数の読出し値を可能にする、請求項24に記載のコア−シェルナノリン光体。
【請求項26】
請求項1から16のいずれか一項に記載のプロセスによって生成されたコア−シェルナノリン光体。
【請求項27】
請求項17から26のいずれか一項に記載のコア−シェルナノリン光体を含む放射線画像貯蔵パネル。
【請求項28】
請求項17から26のいずれか一項に記載のコア−シェルナノリン光体を含む放射線監視器具。
【請求項29】
放射線療法の線量を監視するための、請求項17から26のいずれか一項に記載のコア−シェルナノリン光体の使用。
【請求項30】
前記監視が個人用放射線監視のためである請求項29に記載の使用。
【請求項31】
科学的および医学的イメージング用のイメージングプレートのための、請求項17から26のいずれか一項に記載のコア−シェルナノリン光体の使用。
【請求項32】
エネルギー感受性線量測定および放射線検出のための、請求項17から26のいずれか一項に記載のコア−シェルナノリン光体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−510194(P2013−510194A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535551(P2012−535551)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001476
【国際公開番号】WO2011/054050
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(512111991)ドシメトリー アンド イメージング プロプライエタリ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】DOSIMETRY & IMAGING PTY LTD
【住所又は居所原語表記】PO Box 620,Roseville,New South Wales 2069 Australia
【Fターム(参考)】