説明

放射線CT装置、およびそのデータ処理方法

【課題】スカウト撮影時に、X線被曝を増やすことなく、クレードルが加速移動時または減速移動時であっても、高画質のスカウト画像を得ることができる放射線CT装置、およびそのデータ処理方法を提供する。
【解決手段】X線管20からクレードルに載置された被検体に照射され当該被検体を透過する放射線をX線検出器23により検出して得られる投影データに応じてスカウト画像を生成するX線CT装置1が、X線管20およびX線検出器23とクレードルとの相対的な位置を制御する被検体搬送部4(駆動制御部)と、被検体搬送部4(駆動制御部)によるX線管20およびX線検出器23とクレードルとの相対的な加速移動時または減速移動時に、X線検出器23の検出結果による投影データ、および相対的な位置に基づいてスカウト画像を生成する中央処理装置30とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、放射線発生源からクレードルに載置された被検体(患者)に放射線を照射し、その被検体を透過する放射線を検出して得られる投影データに基づいてスカウト画像を生成する放射線CT(Computerized tomography)装置、およびそのデータ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、X線CT撮影装置等の放射線撮影装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
この装置は、たとえば本スキャン時にヘリカルスキャン、アキシャルスキャン等のスキャンを行い、被検体の体軸(z軸)に沿った方向と垂直な断層画像を設定枚数撮影する。上述した装置は、たとえばサブミリ程度の厚さの断層画像を撮影可能であり、被検体の体内情報をサブミリの精度で観察することができる。
【0003】
また、一般的に本スキャンの前に、被検体の断層画像を撮影するための準備段階としてスカウト画像の撮影を行う。
本スキャンでは、たとえばX線管球やX線検出器を含むガントリ部分をz軸(被検体の体軸)を中心に回転させ、そして被検体が載置されたクレードルを体軸方向に沿って移動させて撮影を行う。
【0004】
一方、スカウト撮影では、X線管球やX線検出器を含むガントリ部分を、z軸を中心に回転させずに固定し、被検体が載置されたクレードルを移動させて撮影する。
このスカウト撮影では、単純X線撮影に類似した被検体の体軸に沿った画像を得ることができる。このスカウト撮影では被検体の位置情報が得られるので、スカウト画像は、たとえば本スキャンに対する撮影範囲を決定するための撮影計画に用いられる。
詳細には、たとえばスカウト撮影は、被検体の正面像、および側面像のいずれか一方向、もしくは両2方向から行われる場合がある。
【0005】
上述したように本スキャンの前段ステップとしてスカウト撮影を行い、得られたスカウト画像を基に体軸方向(z軸)に沿ったクレードルの移動開始位置や移動終了位置を決定する。
【特許文献1】特開平10−314162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的にスカウトの撮影可能範囲は、クレードル(患者寝台)の移動可能範囲内に規定されるが、上述したスカウト撮影時の撮影範囲は、一般的に広いほうが望ましい。これは、スカウト撮影可能範囲よりも外側に、本スキャン時の撮影範囲を設定することができないからである。
詳細には図12に示すように、スカウト撮影可能範囲ARIについて、クレードルの移動速度が一定部分での投影データを使用してスカウト画像を生成し、クレードルの加減速時のデータは使用しなかった。そのため、一般的にスカウト撮影時の撮影可能範囲ARIは、クレードルの移動可能範囲ARCより小さい。たとえばクレードルが1000mm体軸方向(z軸方向)に移動可能であっても、スカウトの撮影範囲ARIは、加減速移動範囲を除いた900mm程度である。
【0007】
たとえばクレードルが定速移動時に得られた投影データを、スカウト画像の内の1ラインの画像データとして順に並べて表示すると、各ライン画像のz方向に沿ったビュー(View)位置が一定間隔であるので、スカウト画像内の位置的な矛盾を起こさずに適正な画像を生成することができる。
しかし、加減速時の投影データは、その取得時のz方向に沿ったビュー位置が一定間隔でないので、単純に投影データを1ラインの画像として順に並べて表示すると、z方向に沿った画像位置に矛盾を含んだスカウト画像を生成してしまう。
【0008】
つまり、単純に従来方法で加減速時のスカウト画像を生成すると、本来のz軸方向に沿った長さよりも間延びしたスカウト画像が生成される。このため加・減速移動時であっても高画質のスカウト画像を得ることができる装置が望まれている。
また、上述したように撮影範囲の外側の範囲においてもX線を照射しているために、X線照射時間が比較的長い。
【0009】
本発明の目的は、スカウト撮影時に、X線被曝を増やすことなく、クレードルが加速移動時または減速移動時であっても、高画質のスカウト画像を得ることができる放射線CT装置、およびそのデータ処理方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、スカウト撮影時に、放射線の照射時間を短縮することができる放射線CT装置、およびそのデータ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の第1の観点の放射線CT装置は、放射線発生手段からクレードルに載置された被検体に照射され当該被検体を透過する放射線を検出手段により検出して得られる投影データに応じてスカウト画像を生成する放射線CT装置であって、前記放射線発生手段および前記検出手段と前記クレードルとの相対的な位置を制御する駆動制御手段と、前記駆動制御手段による、前記放射線発生手段および前記検出手段と前記クレードルとの相対的な加速移動時または減速移動時に、前記検出手段の検出結果による投影データ、および前記相対的な位置に基づいて前記スカウト画像を生成する画像生成手段とを有する。
【0012】
また、本発明の第2の観点の放射線CT装置のデータ処理方法は、放射線発生手段からクレードルに載置された被検体に照射され当該被検体を透過する放射線を検出手段により検出して得られる投影データに応じてスカウト画像を生成する放射線CT装置のデータ処理方法であって、前記放射線発生手段および前記検出手段と前記クレードルとの相対的な位置を制御する第1のステップと、前記第1のステップによる、前記放射線発生手段および前記検出手段と前記クレードルとの相対的な加速移動時または減速移動時に、前記検出手段の検出結果による投影データ、および前記相対的な位置に基づいて前記スカウト画像を生成する第2のステップとを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スカウト撮影時に放射線発生手段および検出器と被検体を載置したクレードルとの相対的な加速移動時または減速移動時であっても、高画質のスカウト画像を得ることができる放射線CT装置、およびそのデータ処理方法を提供することができる。
【0014】
また、スカウト撮影時に、放射線の照射時間を短縮することができる放射線CT装置、およびそのデータ処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
本発明の実施形態に係る放射線CT装置としてのX線CT装置1は、本スキャンの前に行うスカウト撮影時に、放射線発生手段であるX線管および検出器と、被検体を載置したクレードルとが体軸方向(z軸方向)に沿った相対的な直線移動の加速移動時または減速移動時でも投影データを収集し、その収集した投影データを基にスカウト画像を生成する。
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る実施形態の放射線CT装置としてのX線CT装置1の全体構成を示すブロック図である。図2は、図1に示したX線CT装置1の要部を示す構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係るX線CT装置1は、走査ガントリ2、操作コンソール3、および被検体搬送部4を有する。
各構成要素は、たとえばデータ通信線により接続されている。
【0017】
走査ガントリ2は、たとえば操作コンソール3からの制御信号CTL30aに基づいて、被検体搬送部4により撮影空間29で移動する被検体をX線でスキャンして、その被検体の投影データをローデータとして得て、その内容を示す信号を操作コンソール3に出力する。
【0018】
走査ガントリ2は、後述する被検体搬送部4のクレードル移動部102により撮影空間29に移動されたクレードル101が支持する被検体をスキャンして、その被検体の投影データをローデータとして得る。
【0019】
走査ガントリ2は、図1に示すように、X線管20、X線管移動部21、コリメータ22、X線検出器23、データ収集部24、X線コントローラ25、コリメータコントローラ26、回転部27、およびガントリコントローラ28を有する。
【0020】
走査ガントリ2においては、被検体が搬入される撮影空間29を挟むように、X線管20とX線検出器23とが配置されている。そして、コリメータ22が、X線管20からのX線を成形するように配置されている。
【0021】
走査ガントリ2の各部について説明する。
【0022】
X線管20は、たとえば、回転陽極型であり、X線を照射する。X線管20は、図2に示すように、X線コントローラ25からの制御信号CTL251に基づいて、所定強度のX線を被検体の撮影領域にコリメータ22を介して照射する。X線管20から放射されたX線は、コリメータ22によって、たとえば、コーン状に成形され、被検体を介してX線検出器23に照射される。そして、X線管20は、本スキャン時には被検体の周囲のビュー方向からX線を照射するために、回転部27によって被検体の体軸方向zを中心にして被検体の周囲を回転する。スカウト撮影時にはX線管20は被検体の周囲を回転しない。
【0023】
X線管移動部21は、図2に示すように、X線コントローラ25からの制御信号CTL252に基づいて、X線管20の放射中心を、走査ガントリ2における撮影空間29内の被検体の体軸方向zに沿って移動させる。
【0024】
コリメータ22は、図2に示すように、X線管20とX線検出器23との間に配置されている。コリメータ22は、チャネル方向iと列方向jとにそれぞれ2枚ずつ設けられた板により構成されている。
コリメータ22は、コリメータコントローラ26からの制御信号CTL261に基づいて、各方向に設けられた2枚の板を独立して移動させ、X線管20から照射されたX線をそれぞれの方向において遮ってコーン状に成形し、X線の照射範囲を調整する。
【0025】
X線検出器23は、X線管20から照射され被検体を透過するX線を検出し、その検出結果に基づいて被検体の投影データを生成する。
X線検出器23は、本スキャン時には、X線管20と共に回転部27によって被検体の周囲を回転する。そしてX線検出器23は、被検体の周囲から照射され、被検体を透過するX線を検出して投影データを生成する。スカウト撮影時には、X線検出器23は被検体の周囲を回転しない。
【0026】
また、X線検出器23は、図2に示すように、複数の検出素子23aからなる。
X線検出器23は、本スキャン時に回転部27によってX線管20が被検体の体軸方向zを中心として、被検体の周囲を回転する回転方向に沿ったチャネル方向iと、X線管20が回転部27によって回転する際に中心軸となる回転軸方向に沿った列方向jとに検出素子23aがアレイ状に2次元的に配列されている。
X線検出器23は、2次元的に配列された複数の検出素子23aによって、円筒な凹面状に湾曲した面を形成している。
【0027】
X線検出器23を構成する検出素子23aは、たとえば、検出したX線を光に変換するシンチレータ(図示なし)と、シンチレータが変換した光を電荷に変換するフォトダイオード(図示なし)とを有し、X線検出器23は固体検出器として構成されている。
なお、検出素子23aは、これに限定されるものではない。たとえば、検出素子23aは、カドミウム・テルル(CdTe)等を利用した半導体検出素子、あるいはキセノン(Xe)ガスを利用した電離箱型の検出素子23aであってよい。
【0028】
データ収集部24は、X線検出器23からの投影データを収集するために設けられている。
データ収集部24は、X線検出器23のそれぞれの検出素子23aが検出した投影データを収集して、操作コンソール3に出力する。
データ収集部24は、図2に示すように、選択・加算切換回路(MUX,ADD)241、およびアナログ−デジタル変換器(ADC)242を有する。
【0029】
選択・加算切換回路241は、X線検出器23の検出素子23aによる投影データを、中央処理装置30からの制御信号CTL303に応じて選択し、あるいは組合わせを変えて足し合わせ、その結果をアナログ−デジタル変換器242に出力する。
アナログ−デジタル変換器242は、選択・加算切換回路241において選択あるいは任意の組合せで足し合わされた投影データをアナログ信号からデジタル信号に変換して中央処理装置30に出力する。
【0030】
X線コントローラ25は、図2に示すように、中央処理装置30からの制御信号CTL301に応じて、X線管20に制御信号CTL251を出力し、X線の照射を制御する。
X線コントローラ25は、たとえば、X線管20からの管電流や照射時間などを制御する。また、X線コントローラ25は、本スキャン時には、中央処理装置30による制御信号CTL301に応じて、X線管移動部に対し制御信号を出力し、X線管20の放射中心を体軸方向zに移動するように制御する。
【0031】
コリメータコントローラ26は、図2に示すように、中央処理装置30からの制御信号CTL302に応じてコリメータ22に制御信号CTL261を出力し、X線管20から放射されたX線を成形するようにコリメータ22を制御する。
【0032】
回転部27は、図1に示すように、円筒形状であり、内部に撮影空間29が形成されている。回転部27は、本スキャン時には、ガントリコントローラ28からの制御信号CTL28に応じて、撮影空間29内における被検体の体軸方向zを中心に、被検体の周囲を回転する。
【0033】
回転部27には、たとえば、X線管20、X線管移動部21、コリメータ22、X線検出器23、データ収集部24、X線コントローラ25、コリメータコントローラ26等が搭載されており、撮影空間29に搬入される被検体と各部との位置関係が回転方向にて相対的に変化する。本スキャン時に回転部27が回転することによって、被検体の周囲から複数のビュー方向ごとにX線管移動部21が被検体に照射することが可能になり、被検体を透過したX線をX線検出器23がそれぞれのビュー方向ごとに検出することが可能になる。また、回転部27は、ガントリコントローラ28からの制御信号CTL28に応じてチルトする。たとえば回転部27は、撮影空間29のアイソセンタを中心に体軸方向zに沿うように傾斜可能である。
【0034】
ガントリコントローラ28は、図1および図2に示すように、操作コンソール3の中央処理装置30による制御信号CTL304に基づいて、回転部27に制御信号CTL28を出力し、回転部27を回転およびチルト(傾斜)するように制御する。
【0035】
操作コンソール3について説明する。
【0036】
操作コンソール3は、図1に示すように、中央処理装置30、入力装置31、表示装置32、および記憶装置33を有する。
【0037】
中央処理装置30は、たとえば、コンピュータにより構成されており、X線CT装置1の装置全体を統括的に制御する。
中央処理装置30は、図1に示すように、制御部41、および画像生成部61を有する。
【0038】
制御部41は、たとえば、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、装置の各構成要素を統括的に制御する。
制御部41は、たとえば、オペレータにより入力装置31に入力されたスキャン条件を受け、そのスキャン条件に基づいて、制御信号CTL30aを各構成要素に出力し、スキャンを実行させる。
具体的には、制御部41は、被検体搬送部4に制御信号CTL30bを出力し、被検体搬送部4に被検体を撮影空間29に搬送させる。
また、制御部41は、X線管20からX線を照射するように、制御信号CTL301をX線コントローラ25に出力する。そして、制御部41は、制御信号CTL302をコリメータコントローラ26に出力し、コリメータ22を制御してX線を成形する。また、制御部41は、制御信号CTL303をデータ収集部24に出力し、X線検出器23の検出素子23aが得る投影データを収集するように制御する。
【0039】
画像生成部61は、走査ガントリ2のデータ収集部24が収集した投影データに基づいて、被検体の断層面の画像を再構成する。
画像生成部61は、たとえば、本スキャン時に、アキシャルスキャン等による複数のビュー方向からの投影データに対して、感度補正、ビームハードニング補正などの前処理を実施後、フィルタ処理逆投影法によって再構成を行い、被検体の断面の画像を再構成して生成する。
また、画像生成部61は、後述する駆動制御部111によるクレードルの相対的な加速移動時または減速移動時に、相対的な位置を示すデータおよび検出部の検出結果による投影データに基づいてスカウト画像を生成する。
【0040】
操作コンソール3の入力装置31は、たとえば、キーボードやマウスなどの入力デバイスにより構成されている。入力装置31は、オペレータの入力操作に基づいて、スキャン条件や被検体の情報などの各種情報を中央処理装置30に入力する。
【0041】
表示装置32は、中央処理装置30からの制御により、画像生成部61が再構成した被検体の断層面の画像等を表示する。
【0042】
記憶装置33は、たとえばメモリにより構成されており、画像生成部61が再構成する被検体の断層面の画像などの各種データや、スカウト撮影時に生成するスカウト画像、プログラムなどを記憶する。
記憶装置33は、その記憶されたデータが必要に応じて中央処理装置30にアクセスされる。
【0043】
被検体搬送部4について説明する。被検体搬送部4は、いわゆるクレードルを含む。
【0044】
被検体搬送部4は、撮影空間29の内側と外側との間で被検体を搬送するために設けられている。
図3は、図1に示したX線CT装置1の被検体搬送部4の構成図である。
図3に示すように、被検体搬送部4は、テーブル部(クレードルともいう)101、クレードル移動部102、および駆動制御部111を有する。
【0045】
クレードル101は、被検体を支持するために設けられている。クレードル101には、被検体が載置される載置面が形成されている。また、クレードル101は、図3に示すように、クレードル移動部102によって、載置面に載置される被検体の体軸方向zに沿った水平方向Hと、水平面に対して垂直な上下方向Vとに移動し、撮影空間29の内部に搬入される。
【0046】
クレードル移動部102は、クレードル101を移動するために設けられている。クレードル移動部102は、撮影空間29の内部側と外部側との間で、クレードル101を移動する。クレードル移動部102は、水平移動部102a、および上下移動部102bを有する。
【0047】
水平移動部102aは、水平方向Hにクレードル101を移動する。水平移動部102aは、たとえば、ローラー式駆動機構(図示なし)を備えており、アクチュエータによりローラーを駆動させてクレードル101を水平方向Hに移動する。
本実施形態では、水平移動部102aの移動方向である水平方向Hと、体軸(z軸方向)とが同一方向になるように規定されている。
【0048】
上下移動部102bは、上下方向Vにクレードル101を移動する。上下移動部102bは、たとえばアーム式駆動機構(図示なし)を備えており、交差した2本のアーム間の角度を可変することにより、クレードル101を上下方向Vに移動する。
【0049】
駆動制御部111は、たとえば、中央処理装置30の制御信号CTL30bを受けて、クレードル移動部102aを駆動してクレードル101加速移動や、一定速度移動、または減速移動等、設定された速度で移動させる。
【0050】
図4(a)は、テーブル部(クレードル)101の移動開始位置を説明するための図である。図4(b)は、クレードル101の移動終了位置を説明するための図である。
【0051】
クレードル101は、移動開始時には、たとえば図4(a)に示すように、X線管移動部21やX線検出器23が被検体の胸部付近に位置する。そしてクレードル101は、その移動開始位置から被検体の体軸(z軸)方向に沿って移動を開始し、たとえば図4(b)に示すように、X線管移動部21やX線検出器23が被検体の腹部付近に位置すると移動を終了する。
【0052】
図5は、図1に示したX線CT装置1の動作を説明するためのフローチャートである。図6は、図1に示したX線CT装置1の動作を説明するための図である。
図5,図6を参照しながら、X線CT装置1のスカウト撮影時の動作を説明する。
【0053】
ステップST1において、中央処理装置30は、スカウト撮影時にX線管20とX線検出器23を回転させずに固定させる。
ステップST2において、中央処理装置30は、駆動制御部111を制御して、図6に示すように直線移動開始位置CS1までテーブル部(クレードル)101を移動させる。
ステップST3において、中央処理装置30は、駆動制御部111を制御して、図6に示すようにクレードル101の直線移動をスタートさせる。
ステップST4において、中央処理装置30は、駆動制御部111を制御して、クレードル101の直線移動速度を所定関数に基づいて加速する。本実施形態では図6に示すように所定関数が時間に対してリニアな場合を説明する。
この所定関数は、計算式形式や表形式により、各時間と直線移動速度とを関連付ける。
【0054】
ステップST5において、中央処理装置30は、直線移動位置z、ビュー位置view、検出器番号j、およびチャネル番号iで表される投影データD0(z,View,j,i)を加速中に、X線検出器23により収集する。
また、中央処理装置30は、加速移動中にX線検出器23により収集した投影データ、およびクレードル101の位置を基に、後述するようにスカウト画像を生成する。
【0055】
ステップST6において、中央処理装置30は、クレードル101の直線移動速度が、たとえば図6に示す一定速度(所定速度)Vcに達したか否かを判断し、判断の結果、一定速度に達していないと判断した場合にステップST4の処理に戻り、データ収集を行う。一方、ステップST6の判断において、一定速度Vcになった場合には、ステップST7の処理に進む。
【0056】
ステップST7において、中央処理装置30は、クレードル101が一定速度に達したと判断した場合に、駆動制御部111を制御して、定速度開始位置CS2から一定速度Vcでクレードル101をz軸方向に沿って一定速度で移動させる。
【0057】
ステップST8において、中央処理装置30は、クレードル101が一定速度で移動している状態で、X線検出器23により投影データD0(z,View,j,i)を収集する。
また、中央処理装置30は、定速度移動中にX線検出器23により収集した投影データ、およびクレードル101の位置を基に、後述するようにスカウト画像を生成する。
【0058】
ステップST9において、中央処理装置30は、クレードル101が定速度終了位置SE1まで移動したか否かを判断し、定速度終了位置SE2まで移動したと判断した場合にステップST10の処理に進み、定速度終了位置SE2まで移動していないと判断した場合に、ステップST4の処理に戻り、一定速度でのデータ収集を継続する。
【0059】
ステップST10において、中央処理装置30は、駆動制御部111を制御して、クレードル101の直線移動速度を所定関数に基づいて減速させる。
たとえば図6に示すように、所定関数が時間に対してリニアな場合を説明する。
【0060】
ステップST11において、中央処理装置30は、X線検出器23により、クレードル101が減速中の投影データD0(z,view,j、i)を収集する。
また、中央処理装置30は、減速移動中にX線検出器23により収集した投影データ、およびクレードル101の位置を基に、後述するようにスカウト画像を生成する。
【0061】
ステップST12において、中央処理装置30は、クレードル101が停止可能速度に達したか否かを判断し、停止可能速度に達していないと判断した場合には、ステップST10の処理に戻りさらに減速する。一方、ステップST12の判断でクレードル101が停止可能速度に達したと判断した場合には、ステップST13の処理に進む。
【0062】
ステップST13において、中央処理装置30は、駆動制御部111を制御して、クレードル101の体軸方向(z軸方向)に沿った直線移動を移動停止位置CE2にて停止させる。
【0063】
ステップST14において、中央処理装置30は、生成したスカウト画像を基に、本スキャン時の撮影範囲を決定する撮影計画を行う。
ステップST15において、中央処理装置30は、ステップST14において生成した撮影計画に基づいて、本スキャン撮影を行う。
【0064】
図7は、図1に示したX線CT装置1のクレードルが定速移動時のスカウト画像を得る動作を説明するためのフローチャートである。図8(a)〜(d)は、投影データとスカウト画像を説明するための図である。図8(a)は、定速移動時に収集された投影データD0を説明するための図である。図8(b)は、図8(a)に示した投影データD0を基に生成するスカウト画像を説明するための図である。
【0065】
ステップST102において、中央処理装置30は、スカウト画像を生成するための初期処理を行う。
ステップST104において、中央処理装置30は、第n番目のビュー位置での投影データD0(n)を得る。
ステップST106において、中央処理装置30は、第n番目のビュー位置での投影データD0(n)に、たとえばコーンビーム再構成加重等の補正処理を施す。
ステップST108において、中央処理装置30は、たとえば図8(a)に示すように第n番目のビュー位置で得られた投影データD0(n)に基づいて、図8(b)に示すように、スカウト画像のうちの第n番目のライン画像データL0(n)を生成し、第n番目のライン画像データL0(n)をスカウト画像に加える。
【0066】
ステップST110において、中央処理装置30は、定速移動中の全てのビュー位置について上述したステップ102〜ST108までのライン画像データを生成したか否かを判断し、判断の結果、定速移動中の全てのビュー位置についてライン画像データを生成していないと判断した場合には、ステップST104の処理に戻る。一方、ステップST110の判断において、定速移動中の全てのビュー位置ついてライン画像データを生成したと判断した場合には、ステップST112の処理に進む。
【0067】
ステップST112において、中央処理装置30は、定速移動中に得られたスカウト画像を、表示装置32に表示させる。
【0068】
図8(c)は、加速移動時に収集された投影データD0を説明するための図である。図8(d)は、図8(c)に示した投影データD0を基に生成するスカウト画像を説明するための図である。図9は、図1に示したX線CT装置1のクレードルが加速移動時または減速移動時のスカウト画像を生成する動作を説明するためのフローチャートである。
【0069】
図9に示した動作と、図7に示した動作の相違点は、ステップST106とステップST108の間に、ステップST107に示す動作を行う点である。相違点を中心に説明する。
【0070】
ステップST102において、中央処理装置30は、加速移動時または減速移動時のスカウト画像を生成するための初期処理を行う。
ステップST104において、中央処理装置30は、第n番目のビュー位置での投影データD0(n)を得る。
ステップST106において、中央処理装置30は、第n番目のビュー位置での投影データD0(n)に、たとえばコーンビーム再構成加重等の補正処理を施す。
【0071】
定速移動時には第n番目のビュー位置での投影データD0(n)と、スカウト画像のうち第n番目のライン画像データL0(n)の位置は同一であった。
しかし、図8(c),(d)に示すように、加速移動時または減速移動時の第n番目の投影データD0(n)の取得位置と、スカウト画像のうちの第n番目のライン画像データL0(n)の位置は一致していない。
【0072】
そのため、ステップST107において、中央処理装置30は、z軸方向に沿った第n番目のライン画像データL0(n)の画像位置の近傍に位置する第(n−1)番目の投影データD0(n−1)と第n番目の投影データD0(n)を求め、その第(n−1)番目の投影データD0(n−1)と第n番目の投影データD0(n)に基づいて、第n’番目のライン画像データL0(n’)を加重加算処理により生成する。
【0073】
次に、クレードル101の位置から演算により、ビュー位置(数)を得る処理を説明する。
【0074】
クレードル101の移動方向に沿った位置Lは、クレードル速度S、ビュー位置Vと数式(1)に示すように演算により得られる。
【0075】
【数1】

【0076】
また、クレードル101の移動方向に沿った位置L=P(V)の逆関数Vを数式(2)に示すように、演算することで、クレードル位置L(mm)におけるビュー位置Vを得る。
【0077】
V=Q(L) …(2)
【0078】
〔第1具体例〕
たとえばクレードル101の速度S(v)が数式(3)に示すような場合に、クレードルの体軸(z軸)方向に沿った位置L=P(V)は、数式(4)に示すように定数aを用いて演算により得られる。
また、ビュー位置Vは、数式(5)に示すように定数Cを用いて演算により得られる。
【0079】
S(v)=a×v …(3)
【0080】
【数2】

【0081】
【数3】

【0082】
〔第2具体例〕
たとえばクレードルのスピードS(v)が、一定速度bになるまで加速し、その一定速度bで設定時間移動し、その後減速する場合を説明する。
具体的には、クレードルのスピードS(v)は、ビュー位置vがv<V1の場合に、定数aを用いて数式(6)に示すように等加速度運動を行い、ビュー位置vがV1≦v≦V2の場合に定数bを用いて数式(7)に示すように等速度運動を行い、ビュー位置vがV2<vの場合に定数cを用いて数式(8)に示すように、速度が0になるまで等加速度運動(減速運動)を行う。
【0083】
S(v)=a×v ;(v<V1) …(6)
【0084】
S(v)=a×V1=b ;(V1≦v≦V2) …(7)
【0085】
S(v)=b−c×(v−V2) ;(V2<v)…(8)
【0086】
そして上述した数式(6)〜(8)に示すクレードルのスピードS(v)に対して、数式(1)に示すようにビュー位置vに関して0からVまで積分を行い、数式(2)に示すように、逆関数を生成する演算を行うことで、クレードルの位置L(mm)におけるビュー位置V(view)を得る。
【0087】
以下、図9に示すように、ステップST108において、中央処理装置30は、補間処理により生成した第n’番目のライン画像データL0(n’)を、スカウト画像のうちの第n’番目のライン画像データとし、第n’番目のライン画像データをスカウト画像に加える。
【0088】
ステップST110において、中央処理装置30は、加速移動中または減速移動中の全てのビュー位置について上述したステップ102〜ST108までのライン画像データを生成したか否かを判断し、判断の結果、加速移動中または減速移動中の全てのビュー位置についてライン画像データを生成していないと判断した場合には、ステップST104の処理に戻る。一方、ステップST110の判断において、加速移動中または減速移動中の全てのビュー位置ついてライン画像データを生成したと判断した場合には、ステップST112の処理に進む。
【0089】
ステップST112において、中央処理装置30は、加速移動中または減速移動中に得られたスカウト画像を、表示装置32に表示させる。
【0090】
上述したように、中央処理装置30は、第n番目のライン画像データL0(n)の画像位置の近傍に位置する第(n−1)番目の投影データD0(n−1)と第n番目の投影データD0(n)を求め、その第(n−1)番目の投影データD0(n−1)と第n番目の投影データD0(n)に基づいて、第n番目のライン画像データL0(n)を補間処理により生成するので、スカウト画像において体軸方向(z軸方向)に沿って間延びしない、高品質のスカウト画像を生成することができる。
【0091】
また、図6に示すように、本実施形態に係るX線CT装置1では、クレードル移動範囲ARCがスカウト撮影範囲ARIと同じ、加速移動開始位置CS1から減速移動終了位置CE2までの範囲であり、図12に示すような一般的なCT装置のクレードル移動範囲ARCと比べて小さくなるので、被検体に対するX線照射時間を低減することができる。
また、クレードル移動範囲ARCが比較的小さいので、被検体に対する検査のための拘束時間を低減することができる。
【0092】
〔第2実施形態〕
以下より、本発明にかかる第2実施形態について説明する。
【0093】
本発明の第2実施形態に係るX線CT装置1aは、X線検出器23を複数配置するMDCT(Multi detector row CT)で得られた投影データを用いてスカウト画像を生成する。このようなMDCTにおいては、1回のスキャンで複数枚の画像を撮影することができる。第2実施形態に係るCT装置1aはマルチディテクタを備え、スカウト撮影時のスキャン時間を短縮し、被曝量の低減等を行う。以下、図面を参照しながら説明する。
【0094】
図10は、本発明の第2実施形態に係るX線CT装置1aの動作を説明するための図である。
本実施形態に係るX線CT装置1aは、X線管20と、図2に示すようにマトリックス形状に配置された多列X線検出器23との幾何学的な配置構成により、クレードル移動範囲ARCの外側にもX線を照射して多列検出器23により投影データを収集する。そして、収集した投影データに基づいて、たとえば図10に示すように加速時または減速時に得られた投影データに基づいてスカウト画像を生成する。
【0095】
中央処理装置30は、第n番目のライン画像データL0(n)を生成する時は、この第n番目のライン画像データL0(n)に相当するビュー位置およびロー(ROW)位置を特定し、特定したビュー位置およびロー位置での投影データD0(n)に基づいて補間処理を行い、その処理結果を基にスカウト画像を生成する。
【0096】
図11は、本発明の第2実施形態に係るX線CT装置の動作の一具体例を示すフローチャートである。図11を参照しながら、本実施形態に係るX線CT装置の動作を説明する。定速度移動時の動作については一般的な処理なので説明を省略し、加速移動時または減速移動時の動作について説明する。
【0097】
ステップST102において、中央処理装置30は、スカウト画像を生成するための初期処理を行う。
ステップST104aにおいて、中央処理装置30は、加速移動時または減速移動時に、第n番目のビュー位置かつ第m番目のロー位置でのX線検出器23が投影データ(n,m)を得る。
【0098】
ここで、中央処理装置30は、クレードルの位置からビュー数(位置)および検出器列のロー位置を求める。
たとえば、中央処理装置30は、検出器列数t(検出器中心から体軸z方向)を、検出器の1列の幅dp(mm)、クレードルの移動開始位置Ls、クレードルの移動終了位置Leにより、クレードル中心位置Lがクレードルの移動開始位置Lsよりも小さい場合(L<Ls)には、数式(9)に示す演算により生成する。ここで、ビュー位置Vの値は0である。
【0099】
【数4】

【0100】
中央処理装置30は、クレードル中心位置Lが、クレードルの移動終了位置よりも大きい場合(L>Le)には、検出器列数tを、数式(10)に示す演算により生成する。ここで、ビュー位置V値はVendである。
【0101】
【数5】

【0102】
上述したように、中央処理装置30は、数式(9)や(10)により得られる検出器列数tと、上述した数式(2)等により、ビュー位置とロー位置を求める。
【0103】
ステップST106aにおいて、中央処理装置30は、第m番目のロー位置かつ第n番目のビュー位置でのX線検出器23による投影データ(n,m)に、たとえばコーンビーム再構成加重等の加重加算処理を施す。
【0104】
ステップST107aにおいて、中央処理装置30は、得られた第m番目のロー位置かつ第n番目のビュー位置での投影データ(n,m)を基に、スカウト画像の内の第n’番目のライン画像データL0(n’)の画像位置の近傍に位置する第(n−1)番目の投影データD0(n−1)と第n番目の投影データD0(n)を求め、その第(n−1)番目の投影データD0(n−1)と第n番目の投影データD0(n)に基づいて、第n’番目のライン画像データL0(n’)を補間処理により生成する。
【0105】
ステップST108aにおいて、中央処理装置30は、補間処理により生成した第n’番目のライン画像データL0(n’)を、スカウト画像のうちの第n’番目のライン画像データとし、第n’番目のライン画像データをスカウト画像に加える。
【0106】
ステップST109において、中央処理装置30は、加速移動中または減速移動中の全てのロー位置について上述したステップ104a〜ST108aまでの処理を行ったか否かを判断し、判断の結果、処理を行っていないと判断した場合には、ステップST104aの処理に戻る。一方、ステップST109の判断において、全てのロー位置について処理を行ったと判断した場合には、ステップST110の処理に進む。
【0107】
ステップST110において、中央処理装置30は、加速移動中または減速移動中の全てのビュー位置について上述したステップ104a〜ST108aまでのライン画像データを生成したか否かを判断し、判断の結果、加速移動中または減速移動中の全てのビュー位置についてライン画像データを生成していないと判断した場合には、ステップST104aの処理に戻る。一方、ステップST110の判断において、加速移動中または減速移動中の全てのビュー位置ついてライン画像データを生成したと判断した場合には、ステップST112の処理に進む。
【0108】
ステップST112において、中央処理装置30は、加速移動中または減速移動中に得られたスカウト画像を、表示装置32に表示させる。
【0109】
以上、説明したように本実施形態では、クレードルの移動範囲よりも、移動方向(z方向)に沿って外側に位置する複数のX線検出器23による投影データに基づいて補間処理を行い、その処理の結果によりスカウト画像を生成するので、より撮影範囲を低減することができる。
詳細には、図10に示すように、クレードルの移動範囲ARCよりも、撮影範囲ARIを大きくすることができる。
また、撮影範囲ARIよりもクレードルの移動範囲ARCが小さいので、スカウト撮影時のスキャン時間を短縮することができる。また、被曝量を低減することができる。
【0110】
また、スカウト画像のうちの第n’番目のライン画像データに相当する、異なるビュー位置や異なるロー位置での投影データが複数存在する場合がある。もしくは近い位置に相当するデータが複数存在する場合がある。このような場合は異なるビュー位置や異なるロー位置での複数の投影データの全て、または一部を補間処理に使用することにより、より高画質のスカウト画像を得ることができる。
【0111】
また、上述したように撮影範囲ARIをクレードルの移動範囲と同一もしくはそれ以上の範囲にすることができる。
また、撮影範囲ARIに対してクレードル移動範囲ARCが短くなるため、被検体に対する撮影のための拘束時間が短くなる。
また、クレードルの移動可能範囲ARC以上の範囲に対応するスカウト画像を作成することができるため、クレードルの移動可能範囲ARC以上に本スキャンに対する撮影計画を行うことができる。
また、上記と同様の理由で、X線管電流(Auto mA)に対する計画も従来以上に広い撮影範囲で行うことができて、被曝を更に低減することができる。
また、クレードル速度一定の範囲であっても、同一位置の相当するデータを全て使用することにより画像ノイズを低減することができる。
また、クレードル速度一定の範囲であっても、同一位置の相当するデータを全て使用することによりX線被曝を低減することができる。
また、加減速部分のデータ密度は距離に対して大きいので、重複した部分のデータを多く利用することにより、加減速部分のX線管電流を低下させることができ、ひいては被曝を低減させることができる。
【0112】
〔第3実施形態〕
以下より、本発明にかかる第3実施形態について説明する。
【0113】
本実施形態は、X線CT装置1において被検体をスキャンする際に中央処理装置30の制御部41が各部を制御する動作が異なる。この点を除き本実施形態は、実施形態1と同様である。このため、重複する個所については、説明を省略する。
【0114】
図13は、本発明にかかる第3実施形態において、スカウトデータ収集の処理の流れを示すフロー図である。また、図14は、本発明にかかる第3実施形態において、スカウトスキャンの時間的変化を示す図である。図14においては、図14(a)がクレードル101の移動速度vを時間tに対応させて示す図であり、縦軸がクレードル101の移動速度v,横軸が時間tである。また、図14(b)がクレードル101の移動速度vを、クレードル101の移動位置zに対応させて示す図であり、縦軸がクレードル101の移動速度v,横軸がクレードル101の移動位置zである。また、図14(c)は、X線管20へ供給する管電流値Iをクレードル101の移動位置z示す図であり、縦軸が管電流値I,横軸がクレードル101の移動位置zである。
【0115】
まず、ステップP1では、図13に示すように、X線管20とX線検出器23を、スカウト像を撮る方向に回転させて止める。
【0116】
ステップP2では、被検体搬送部4のクレードル101をz方向に直線移動を開始させる。
【0117】
ステップP3では、クレードル101の移動速度が目標速度vcになったら、X線管電流が目標のX線管電流Iになるように移動速度に比例したX線管電流値でX線を徐々に出力させる。
【0118】
ここでは、図14(a)に示すように、クレードル101が停止している移動開始時点tから、所定時間経過後の第1時間tまでの間に、クレードル101の移動速度vが所定の一定速度vになるようにクレードル101を加速させて移動させる。つまり、図14(b)に示すように、クレードル101が停止している移動開始位置zから、クレードル101が一定速度vでの移動を開始する一定速度移動開始位置zまでの間において、クレードル101を一定の加速度で加速させて移動させる。そして、この際においては、図14(c)に示すように、クレードル101の移動速度vに対応して比例するように、X線管20への管電流値Iを所定値Iまで増加させて、被検体をスキャンする。つまり、走査ガントリ2に対してクレードル101が移動する方向の単位長さ当たりのX線照射時間とX線管21への管電流値との積を一定にして、走査ガントリ2に対してクレードル101が移動する方向の単位長さ当たりのX線照射量が一定になるように、X線管21をX線コントローラ25が制御する。
【0119】
ステップP4では、スカウト像用X線透過データを収集する。
【0120】
ステップP5では、一定な所定速度vでクレードル101を移動させる。
【0121】
ここでは、図14(a)に示すように、前述の第1時間tから、所定時間経過後の第2時間tまでの間に、一定な所定速度vでクレードル101を移動させる。つまり、図14(b)に示すように、前述の一定速度移動開始位置zから、クレードル101が一定速度vでの移動を終了する一定速度移動終了位置zまでの間において、一定な所定速度vでクレードル101を移動させる。そして、この際においては、図14(c)に示すように、X線管20への管電流値Iを一定な所定値Iとして、被検体をスキャンする。
【0122】
ステップP6では、クレードル移動速度を減速させる。
【0123】
ここでは、図14(a)に示すように、前述の第2時間tから、所定時間経過後の第3時間tまでの間に、クレードル101が停止するように、移動中のクレードル101を一定の割合で減速させる。つまり、図14(b)に示すように、前述の一定速度移動終了位置zから、クレードル101が停止する停止位置zまでの間において、一定な減速度でクレードル101を減速させて停止させる。そして、この際においては、図14(c)に示すように、クレードル101の移動速度vに対応して比例するように、X線管20への管電流値Iを所定値Iから一定の割合で減少させて、被検体をスキャンする。なお、クレードル位置zが以下の数式(11)を満たす位置で、クレードル移動速度を減速させてもよい。
【0124】
【数6】

【0125】
ステップP7では、スカウト像用のX線透過データ収集の終点についたらX線透過データ収集を終了させる。
【0126】
ステップP8では、クレードルの設定移動量Lが以下の数式(12)を満足するように、データ収集を終了し、X線出力を停止させて、クレードル101をとめる。
【0127】
【数7】

【0128】
上記のように被検体をスカウトスキャンする際には、図14(c)に示すように、加減速の区間ではX線管電流を速度に対応するように制御する。
【0129】
なお、上記のように被検体をスカウトスキャンする際には、図14に示すように加減速を線形(リニア)に、つまり一定加速度で制御を行う場合のほかに、加減速を非線形(ノンリニア)に行ってもよい。
【0130】
図15は、クレードル101の速度変化が非線形(ノンリニア)の場合のX線管電流の制御を示す図である。図15においては、図15(a)がクレードル101の移動速度vを、クレードル101の移動位置zに対応させて示す図であり、縦軸がクレードル101の移動速度v,横軸がクレードル101の移動位置zである。また、図15(b)は、X線管20へ供給する管電流値Iをクレードル101の移動位置z示す図であり、縦軸が管電流値I,横軸がクレードル101の移動位置zである。
【0131】
図15に示すように、加減速を非線形(ノンリニア)に行う場合には、例えば加減速をS字カーブのように変化させて、乗り心地よく行った場合もX線管電流の制御を速度に合わせてS字カーブのように変化させればよい。そして、この時も、X線管電流を速度に比例させて、z方向の単位長さ当たりのX線照射線量が一定になるように制御する。
【0132】
なお、このスカウトデータ収集のトリガーに用いられるデータ収集パルスには大きく分けると以下の2つの方式がある。
【0133】
(1)z方向距離等間隔データ収集パルス:データ収集パルスの間隔はz方向の距離上で一定間隔となる。
【0134】
(2)一定時間データ収集パルス:データ収集パルスの間隔は時間方向に一定間隔となる。
【0135】
図16は、z方向距離等間隔データ収集パルスの場合を示す図である。図16においては、図16(a)がクレードル101の移動速度vと、データの収集を実施する時間間隔Δtとの関係を示す図であり、縦軸がクレードル101の移動速度v,横軸が時間tである。また、図16(b)は、X線管20へ供給する管電流値Iと、データの収集を実施する時間間隔Δtとの関係を示す図であり、縦軸が管電流値I,横軸が時間tである。また、図17は、z方向距離等間隔データ収集パルスの場合において、スカウト像を画像再構成する様子を示す図である。
【0136】
z方向距離等距離データ収集パルスは、被検体搬送部4のクレードル101に付いたエンコーダ信号、グラティキュール信号、マグネットスケール信号などのz方向座標もしくはその元となるパルスまたはその信号の分周信号などにより実現される。ここでは、走査ガントリ2に対してクレードル101が移動する一定の距離間隔ごとに投影データを得るように、クレードル101の移動速度vにデータ収集時間Δtを対応させる。つまり、図16に示すように、1ビュー(1ライン)のデータ収集時間Δtは、加速時では時間軸上で徐々に長い時間幅から加速とともに短い時間幅に変化し、減速時では徐々に短い時間幅から減速とともに長い時間幅に変化する。そして、一定速度時ではデータ収集時間Δtは一定の時間幅となって、データ収集を行う。
【0137】
このビューデータからスカウト像を画像再構成する場合は、図17に示すように、1ビューがそのままスカウト像のz方向の幅Δzの1ラインのデータになる。または複数ビューが、スカウト像のz方向の幅がΔzの1ラインのデータになる場合は、複数の一定数ビューデータのz方向または時間方向の束ね処理、平均処理、加重加算処理などを行って1ラインのデータになるように処理する。
【0138】
図18は、z方向に一定間隔幅データパルスの場合のスカウト像の各ラインのデータの作成の流れを示す図である。
なお、ここで、nは整数あり、zsは加重加算範囲の開始Z座標であり、zeは加重加算範囲の終了Z座標であり、ziは加重加算範囲内のスカウトビューデータZ座標であり、S(i)は加重加算されたスカウトビューデータ、つまり、束ねられたスカウトビューデータ(スカウト投影データ)であり、wはビューデータに対する加重係数である。
【0139】
図18に示すように、ステップC1では、n=0とする。
【0140】
ステップC2では、zs=n・Δz , ze=(n+1)Δzとする。
【0141】
ステップC3では、zs≦zi≦zeの範囲のビューデータを探す。
【0142】
ステップC4では、zs≦zi≦zeの範囲のビューデータdata(n1)〜data(nm)を抽出する。
【0143】
エンコーダ信号などによるz方向に一定間隔幅のデータ収集パルスの場合は、データ収集した1ビューのデータが、そのままスカウト像の1ラインになるようにデータ収集系が作られていれば、一定速度の部分も、加速の部分も、減速の部分も、常に“データ収集した1ビュー”が抽出されて、そのまま“スカウト像の1ライン”になる。
【0144】
また、同様にエンコーダ信号などによるz方向に一定間隔幅のデータ収集パルスの場合は、データ収集したnmビュー分のデータを束ね処理または平均処理または加重加算してスカウト像の1ラインになるようにデータ収集系が作られていれば、一定速度の部分も、加速の部分も、減速の部分も、常に“データ収集した一定数nmビュー”が抽出されて、束ね処理または平均処理または加重加算されて“スカウト像の1ライン”を作る。
【0145】
ステップC5では、zs≦zi≦zEの範囲のビューデータを束ね処理または平均処理または加重加算して以下の数式(13)または数式(14)のように求める。
【0146】
【数8】

【0147】
【数9】

【0148】
データ収集した1ビューのデータが、そのままスカウト像の1ラインにならない場合は、スカウト像の各ラインデータを作成するのに、データ収集された一定数nmの複数ビューのデータを束ね処理または平均処理または加重加算することにより、スカウト像の各ラインのデータを画像再構成することができる。平均または加重加算における加重係数の例を図25に示す。
【0149】
ステップC6では、全スカウトビューデータ収集をしたかを判断する。もしYESならば終了し、もしNOならばステップC7へ行く。
【0150】
ステップC7では、n=n+1とする。そしてステップC2へ戻る。
【0151】
なお、照射されるX線線量の観点で考えてみると、加速時、減速時で速度の遅い場合は、速度に比例して少ないX線線量、X線管電流のX線が照射される。また、速度の速い一定速度の部分では、速度に比例して多いX線線量、X線管電流のX線が照射される。
【0152】
一定速度での速度をv(mm/s)とし、加減速時での速度をk・v(mm/s)とし(ただし0≦k≦1)、一定速度でのX線管電流をa(mA)とすると、加減速時のX線管電流はk・a(mA)となる。
【0153】
一定速度中の単位長さΔz(mm)でのX線線量Rは、mA・s相当で、以下の数式(15)のように示される。
【0154】
【数10】

【0155】
また、加減速中の単位長さΔz(mm)でのX線線量RはmAs相当で、以下の数式(16)のように示され、一定速度中のX線線量と同じとなる。
【0156】
【数11】

【0157】
つまり、X線線量、X線管電流は速度に比例して制御しておけばz方向の単位長さあたりのX線線量は同じとなり、得られるスカウト像の画像ノイズのS/Nはz方向に加減速部分も一定速度部分も均一となり、画質は一定となる。
【0158】
図19は、一定時間等間隔データ収集パルスの場合を示す図である。図19においては、図19(a)がクレードル101の移動速度vと、データの収集を実施する時間間隔Δtとの関係を示す図であり、縦軸がクレードル101の移動速度v,横軸が時間tである。また、図19(b)は、X線管20へ供給する管電流値Iと、データの収集を実施する時間間隔Δtとの関係を示す図であり、縦軸が管電流値I,横軸が時間tである。図19(c)は、クレードル101の移動速度vと、データの収集を実施する際におけるクレードル101の位置の間隔Δzとの関係を示す図であり、縦軸がクレードル101の移動速度v,横軸がクレードル移動位置zである。また、図20は、一定時間等間隔データ収集パルスの場合において、スカウト像を画像再構成する様子を示す図である。
【0159】
図19に示すように、一定時間データ収集パルスは、内部クロックなどの時間方向の一定周期幅クロック信号などにより実現される。ここでは、走査ガントリ2に対してクレードル101が移動する一定の時間間隔ごとに投影データを得るように、走査ガントリ2を制御部41が制御する。そして、図19に示すように、1ビュー(1ライン)のデータ収集時間Δtは一定時間データ収集パルスでは加減速時、一定速度時いずれでもΔtは一定時間である。つまり、z方向の距離座標系で考えると、加速時では1ビュー(1ライン)のz方向幅Δzは加速時は狭いz方向幅から広いz方向幅に変化し、減速時は1ビュー(1ライン)のz方向幅Δzは広いz方向幅から狭いz方向幅に推移しながらデータ収集を行う。
【0160】
このビューデータからスカウト像を画像再構成する場合は、図20に示すように、加減速時は一定速度の場合よりも多い目の複数ビューを束ねてスカウト像のz方向の幅がΔzの1ラインのデータとし、一定速度時は1ビューがそのままスカウト像の幅Δzの1ラインのデータになる。もしくは複数のビューがスカウト像1ラインのデータになる場合は、加減速時にはビューデータに束ね処理、平均処理、加重加算処理が必要になる。ただし、加算するビュー数は一定数とはならない。
【0161】
図21は、一定時間データ収集パルスの場合のスカウト像の各ラインのデータ作成の流れを示す図である。
【0162】
図21に示すように、ステップC11では、n=0とする。
【0163】
ステップC12では、以下の数式(17)を満足させる。
【0164】
【数12】

【0165】
ステップC13では、zs≦zi≦zeの範囲のビューデータを探す。
【0166】
ステップC14では、zs≦zi≦zeの範囲のビューデータdata(n1)〜data(nk)を抽出する。
【0167】
一定時間データ収集パルスの場合は、一定速度の部分、加減速の部分でスカウト像の1ラインになるデータ収集されたビューデータの数n(t)は変わってくる。つまり、データ収集されたn(t)ビューのデータがスカウト像のz方向の幅がΔzの1ラインになるとすると、n(t)は時間tの関数となる。このn(t)は加減速のパターンにより依存して変化する。
【0168】
ステップC15では、zs≦zi≦zeの範囲のビューデータを以下の数式(18)または数式(19)のように求める。
【0169】
【数13】

【0170】
【数14】

【0171】
スカウト像の各ラインデータを作成するのにデータ収集されたn(t)ビューの複数ビューのデータを平均または加重加算することにより、スカウト像の各ラインのデータを画像再構成することができる。
【0172】
平均または加重加算の加重係数の例を図22に示す。
【0173】
ステップC6では、全スカウトビューデータ収集をしたかを判断する。もしYESならば終了で、もしNOならばステップC7へ行く。
【0174】
ステップC7では、n=n+1とする。そしてステップC2へ戻る。
【0175】
なお、照射されるX線線量の観点で考えてみると、z方向距離等間隔データ収集パルスの時と同様で、一定速度中も加減速中も単位長さΔz(mm)でのX線線量はmA・S相当で、以下の数式(20)により示され、一定となり、一定時間データ収集パルスの場合と同様となる。
【0176】
【数15】

【0177】
つまり、一定時間データ収集パルスの場合もX線線量、X線管電流は速度に比例して制御しておけばz方向の単位長さあたりのX線線量は同じとなり、得られるスカウト像の画像ノイズのS/Nはz方向に加減速部分も一定速度部分も均一となり、画質は一定となる。
【0178】
図23は、本発明のX線CT装置100のスカウトデータ収集およびその画像再構成の動作の概略を示すフロー図である。
【0179】
ステップS1では、上述したように、まず、X線管20とX線検出器23とを被検体に対する設定角度に回転させて止める。被検体搬送部4のクレードル101を直線移動させながらスカウトスキャン動作を行ない、ビュー角度viewと、検出器列番号jと、チャネル番号iとで表わされるX線検出器データD0(view,j,i)にテーブル直線移動z方向位置Ztable(view)を付加させて、X線検出器データを収集する。
【0180】
ステップS2では、X線検出器データD0(view,j,i)に対して前処理を行い、投影データに変換する。前処理は図24のようにステップS21オフセット補正,ステップS22対数変換,ステップS23X線線量補正,ステップS24感度補正からなる。
【0181】
ステップS3では、前処理された各チャネルのデータをx方向にライン状に並べ、更に撮影テーブルのクレードルがz方向に進むにつれ、このラインデータをz方向に並べて行くことによりスカウト像が得られる。
【0182】
前記のスカウト像データ収集トリガーに用いられるデータ収集パルスの説明の所では、z方向距離等間隔データ収集パルス、一定時間データ収集パルスの2種類のデータ収集パルスによるビューデータのデータ収集方法、そのビューデータからスカウト像の1ラインのデータの画像再構成方法について述べ、更にその時のz方向に画像ノイズのS/N一定となる画質を実現し、更に被曝線量の低減、最適化の必要があることより、X線照射線量はテーブルの速度に比例する必要があることを述べた。
【0183】
しかし、上記のデータ収集方法、ビューデータからスカウト像の1ラインのデータの画像再構成方法は、1列のX線検出器を前提に説明してきた。次にX線検出器が多列X線検出器になった場合の多列X線検出器の画像再構成のデータ処理の1例を示すが、多列X線検出器の各列1列ごとのデータ収集に観しては、前記の1列のX線検出器の場合と同様である。
【0184】
1列のX線検出器の場合は、各時刻に収集された1ビューのX線検出器データをz方向に並べるだけでスカウト像ができた。しかし、多列のX線検出器23の場合は、図25に示すように、時刻tiのchチャネル、k列の1ビューのX線検出器データをd(ch,k,ti)とすると、スカウト像S(ch,ti)は、以下の数式(21)に示すように、複数ビューのデータを加算してS/Nを良くすることを考慮して各時刻,各列のX線検出器23のX線検出器データを加算してスカウト像を画像再構成する。
【0185】
【数16】

【0186】
また、この場合、時間分解能を上げるために下記の数式(22)に示すように加重係数をかけてもよい。
【0187】
【数17】

【0188】
ステップS4では、このスカウト像に対して画像フィルタ重畳、データ値変換などの後処理を行い、最終的なスカウト像D31(x,y)を得る。
【0189】
後処理の画像フィルタ重畳処理では、最終的なスカウト像をD31(x,y)とし、画像フィルタ重畳後のデータをD32(x,y)、画像フィルタをFilter(x,y)とすると、以下の数式(23)に示すようにして実施する。
【0190】
【数18】

【0191】
この画像フィルタにエッジ強調タイプのフィルタを用いると、目視で見易いスカウト像に変換できる。
【0192】
得られたスカウト像は表示装置32に表示される。
【0193】
スカウト像を表示装置32に表示する際は、モニタ画面M(x,y)にスカウト像S(ch,ti)をそのまま対応させて表示すると、X線検出器が図26のように円弧状である場合はモニタ画面上で歪んで見える。これを避けるには図26のように円弧・直線変換を行い、円弧状X線検出器の各チャネルのデータdet(ch)をX軸上に並び変えたX線検出器データP(x)に対応させることができる。
【0194】
この場合は、det(ch)をP(x)に変換するには、以下の数式(24)を満足するように実施する。ここで、fcdはX線焦点・回転中心間距離であり、fddはX線焦点・検出器間距離であり、Δpは検出器チャネルピッチを示している。
【0195】
【数19】

【0196】
このようなアドレス変換を行い、対応するデータは補間または重み付けを行ってx軸上に等間隔にX線検出器データを並び変えられる。このアドレス変換による並び換えによりX線検出器が円弧状であるために発生するスカウト像上の幾何学的歪みを抑えることができる。
【0197】
このX線検出器データP(x)を画面のx軸方向に並べ、時系列に収集できるP(x)を画面のy軸方向に並べることで、スカウト像をモニタ画面M(x,y)に表示できる。
【0198】
以上のように、本実施形態において被検体をスキャンする際には、その被検体を支持しているクレードル101をクレードル移動部102の水平移動部102aが撮影空間29において水平方向Hへ加速または減速させて移動する。そして、そのクレードル移動部の水平移動部102aによって加減速して撮影空間29を移動するクレードル部101の移動位置と移動時間との少なくとも一方に関連付けて、被検体からの投影データを走査ガントリ2がスキャンの実施によって取得する。ここでは、走査ガントリ2に対してクレードル101が移動する移動速度に、単位時間あたりに被検体へ照射するX線照射量が比例するように、X線管21への管電流をX線コントローラが制御する。その後、クレードル101の移動位置と移動時間との少なくとも一方に関連付けて取得された投影データに基づいて、被検体の断層面についての画像を画像生成部61が生成する。
【0199】
このように、本実施形態においては、クレードル101が移動する移動速度に、単位時間あたりに被検体へ照射するX線照射量が比例するように走査ガントリ2がスキャンを実施するために、クレードル101が移動する方向の単位長さ当たりのX線照射量が一定になる。このため、クレードル101の移動方向の各位置の間においてスカウト像の画像ノイズのS/Nは一定となり、一定の画質を実現できる。また、X線管電流を速度に比例させて制御し、z方向の単位長さ当たりのX線照射線量は一定に制御し、必要以上にX線管電流を出力させないため、被曝低減、照射X線線量の最適化が実現できる。
【0200】
したがって、本実施形態によれば、クレードル可動範囲に比べて、スカウトスキャンにおけるスカウト像撮影可能範囲をできる限りz方向に広く取ることを実現可能であって、スカウトスキャンにおけるX線被曝低減、および、スカウト像の画質におけるz方向の画像ノイズ均一性を実現することができる。
【0201】
なお、本発明は、本実施形態に限られるものではなく、任意に好適な改変が可能である。
【0202】
たとえば、クレードル速度が一定の場合でも全てのビュー位置とロー位置を考慮すると同一位置に相当する(もしくはその付近の)投影データは複数個存在する場合がある。そのためクレードル速度が一定の場合に、スカウト画像のうち第n’番目のライン画像を作成する場合に、その位置近傍の全ての投影データを用いてライン画像を補間生成してもよい。こうすることにより、複数の投影データを用いてスカウト画像を生成することにより、スカウト画像の内の画像ノイズを低減することができ、より高画質のスカウト画像を得ることができる。
【0203】
詳細には、駆動制御部111は、中央処理装置30の制御により、クレードルを一定速度で相対移動させ、画像生成部61は、スカウト画像の内の第n番目のラインの画像データに対応する、ビュー位置およびロー位置のX線検出器23による検出結果の複数の投影データに基づいて、スカウト画像の内の第n番目のラインの画像データを生成し、当該生成の結果に基づいてスカウト画像を生成してもよい。
【0204】
また画像ノイズを低減することができるので、X線照射量を低減でき、被曝を低減することができる。
【0205】
また、上述した実施形態では、ビュー間隔が一定であり、ビュー間隔が一定によりデータ取得時間の間隔が一定であることを前提に、上述した本発明に係る動作を行ったが、この形態に限られるものではない。
【0206】
たとえば、データ取得時間とz方向位置を同期させることにより(つまりはデータ取得時間間隔を不均一にすることにより)スカウト画像を生成してもよい。
詳細には、中央処理装置30は、画像生成部61は、駆動制御部111によるクレードルの移動方向に沿った相対的な位置に基づいて、スカウト画像の内の第n番目のライン画像データに対応する、X線検出器23による投影データのデータ取得時間を決定し、決定したデータ取得時間に得られた投影データに基づいてスカウト画像を生成する。
こうすることで、歪のない高画質のスカウト画像を得ることができる。
【0207】
また、多列のX線検出器によるスカウト像の画像再構成法は、実施例に示す通りでもよいし、また他の同様の方法でもよい。
【0208】
また、本実施例では、スカウト像にエッジ強調タイプの画像フィルタを重畳することにより、見やすいスカウト像に変換しているが、これには様々なフィルタ係数が考えられるが、いずれも同様の効果を出すことができる。
【0209】
本実施例は、医用X線CT装置を元に書かれているが、産業用X線CT装置または他の装置と組合わせたX線CT−PET装置,X線CT−SPECT装置などのスカウトスキャンで利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明は、放射線発生源からクレードルに載置された被検体(患者)に放射線を照射し、その被検体を透過する放射線を検出して得られる投影データに基づいてスカウト画像を生成する放射線CT装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】図1は、本発明に係る実施形態の放射線CT装置としてのX線CT装置1の全体を構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示したX線CT装置1の要部を示す構成図である。
【図3】図3は、図1に示したX線CT装置1の被検体搬送部4の構成図である。
【図4】図4は、図1に示したX線CT装置1の被検体搬送部4の動作を説明するための図である。(a)は、スカウト撮影時の移動開始位置の一具体例を示す図である。(b)は、スカウト撮影時の移動終了位置の一具体例を示す図である。
【図5】図5は、図1に示したX線CT装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、図1に示したX線CT装置1の動作を説明するための図である。
【図7】図7は、図1に示したX線CT装置1のクレードルが定速移動時のスカウト画像を得る動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】図8においては、(a)〜(d)は、投影データとスカウト画像を説明するための図である。(a)は、定速移動時に収集された投影データD0を説明するための図である。(b)は(a)に示した投影データD0を基に生成するスカウト画像を説明するための図である。(c)は加速移動時に収集された投影データD0を説明するための図である。(d)は(c)に示した投影データD0を基に生成するスカウト画像を説明するための図である。
【図9】図9は、図1に示したX線CT装置1のクレードルが加速移動時または減速移動時のスカウト画像を生成する動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態に係るX線CT装置1aの動作を説明するための図である。
【図11】図11は、本発明の第2実施形態に係るX線CT装置の動作の一具体例を示すフローチャートである。
【図12】図12は、一般的なX線CT装置の動作を説明するための図である。
【図13】図13は、本発明にかかる第3実施形態において、スカウトデータ収集の処理の流れを示すフロー図である。
【図14】図14は、本発明にかかる第3実施形態において、スカウトスキャンの時間的変化を示す図である。
【図15】図15は、撮影テーブルのクレードルの速度変化(加速)が非線形(ノンリニア)の場合のX線管電流の制御を示す図である。
【図16】図16は、z方向距離等間隔データ収集パルスの場合を示す図である。
【図17】図17は、z方向距離等間隔データ収集パルスの場合において、スカウト像を画像再構成する様子を示す図である。
【図18】図18は、z方向に一定間隔幅データパルスの場合のスカウト像の各ラインのデータの作成の流れを示す図である。
【図19】図19は、一定時間等間隔データ収集パルスの場合を示す図である。
【図20】図20は、一定時間等間隔データ収集パルスの場合において、スカウト像を画像再構成する様子を示す図である。
【図21】図21は、一定時間データ収集パルスの場合のスカウト像の各ラインのデータ作成の流れを示す図である。
【図22】図22は、スカウト像データを画像再構成する際の加重係数の例を示す図であり、(a)が平均の加重係数の場合を示し、(b)が加重加算の加重係数の場合について示している。
【図23】図23は、本発明の一実施形態に係るX線CT装置の概略動作を示すフロー図である。
【図24】図24は、前処理の詳細を示すフロー図である。
【図25】図25は、多列X線検出器の場合のスカウト像再構成の1例を示す図である。
【図26】図26は、円弧状多列X線検出器の場合の円弧・直線変更を示す図である。
【符号の説明】
【0212】
1…X線CT装置、2…走査ガントリ、3…操作コンソール、4…被検体搬送部、20…X線管、21…X線管移動部、22…コリメータ、23…X線検出器、24…データ収集部、25…X線コントローラ、26…コリメータコントローラ、27…回転部、28…ガントリコントローラ、30…中央処理装置、31…入力装置、32…表示装置、33…記憶装置、41…制御部、61…画像生成部、101…クレードル、102…クレードル移動部、111…駆動制御部、241…選択・加算切換回路(MUX,ADD)、242…アナログ−デジタル変換器(ADC)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線発生手段からクレードルに載置された被検体に照射され当該被検体を透過する放射線を検出手段により検出して得られる投影データに応じてスカウト画像を生成する放射線CT装置であって、
前記放射線発生手段および前記検出手段と前記クレードルとの相対的な位置を制御する駆動制御手段と、
前記駆動制御手段による、前記放射線発生手段および前記検出手段と前記クレードルとの相対的な加速移動時または減速移動時に、前記検出手段の検出結果による投影データ、および前記相対的な位置に基づいて前記スカウト画像を生成する画像生成手段と
を有する放射線CT装置。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、前記クレードルを前記放射線発生手段および前記検出手段に対して、体軸方向に沿った方向に加速移動または減速移動させ、
前記画像生成手段は、前記駆動制御手段による前記クレードルの加速移動時または減速移動時の前記検出手段による投影データの内、前記スカウト画像の内の一ラインの画像データを求めるためのライン投影データを選択し、当該選択したライン投影データに基づいて前記スカウト画像の内の一ラインの画像データを補間演算により生成して前記スカウト画像を生成する
請求項1に記載の放射線CT装置。
【請求項3】
前記画像生成手段は、前記クレードルの前記相対的な位置に対応するビュー位置に基づいて、前記クレードルの加速移動時または減速移動時の前記検出手段による投影データの内、前記スカウト画像の内の一ラインの画像データを求めるためのライン投影データを選択する
請求項2に記載の放射線CT装置。
【請求項4】
前記検出手段は、少なくとも前記クレードルの移動方向に沿って配置された複数の検出手段を含み、
前記画像生成手段は、前記クレードルの移動範囲よりも、前記移動方向に沿って外側に位置する前記複数の検出手段による投影データに基づいて前記スカウト画像を生成する
請求項1から3のいずれか一に記載の放射線CT装置。
【請求項5】
前記画像生成手段は、前記スカウト画像の内の第n番目のラインの画像データを生成する場合に、前記クレードルの相対的な位置に基づいて、前記第n番目のラインの画像データを生成するためのビュー位置またはロー位置の前記検出手段による投影データを特定し、前記特定した投影データに基づいて前記スカウト画像の内の前記第n番目のラインの画像データを補間演算により生成して前記スカウト画像を生成する
請求項1から4のいずれか一に記載の放射線CT装置。
【請求項6】
前記駆動制御手段は、前記クレードルを一定速度で相対移動させ、
前記画像生成手段は、前記スカウト画像の内の第n番目のラインの画像データに対応するビュー位置およびロー位置の前記検出手段による複数の投影データに基づいて、前記スカウト画像の内の第n番目のラインの画像データを生成し、当該生成の結果に基づいて前記スカウト画像を生成する
請求項1から請求項5のいずれか一に記載の放射線CT装置。
【請求項7】
前記画像生成手段は、前記駆動制御手段による前記クレードルの移動方向に沿った相対的な位置に基づいて、前記スカウト画像の内の第n番目のライン画像データに対応する、前記検出器による投影データのデータ取得時間を決定し、前記決定したデータ取得時間に得られた前記投影データに基づいて前記スカウト画像を生成する
請求項1に記載の放射線CT装置。
【請求項8】
前記放射線発生手段および前記検出手段に対して前記クレードルが移動する方向の単位長さ当たりの放射線照射量が一定になるように、前記放射線発生手段を制御する放射線制御部
を有する請求項1に記載の放射線CT装置。
【請求項9】
前記放射線発生手段および前記検出手段に対して前記クレードルが移動する方向の単位長さ当たりの放射線照射時間と前記放射線発生手段への管電流値との積が一定になるように、前記放射線発生手段を制御する放射線制御部
を有する請求項1に記載の放射線CT装置。
【請求項10】
前記放射線発生手段および前記検出手段に対して前記クレードルが移動する移動速度に、単位時間あたりに前記被検体へ照射する放射線照射量が比例するように、前記放射線発生手段を制御する放射線制御部
を有する請求項1に記載の放射線CT装置。
【請求項11】
前記放射線発生手段および前記検出手段に対して前記クレードルが移動する一定の時間間隔ごとに前記投影データを得るように、前記放射線発生手段および前記検出手段を制御する制御部
を有する請求項1に記載の放射線CT装置。
【請求項12】
前記放射線発生手段および前記検出手段に対して前記クレードルが移動する一定の距離間隔ごとに前記投影データを得るように、前記放射線発生手段および前記検出手段を制御する制御部
を有する請求項1に記載の放射線CT装置。
【請求項13】
放射線発生手段からクレードルに載置された被検体に照射され当該被検体を透過する放射線を検出手段により検出して得られる投影データに応じてスカウト画像を生成する放射線CT装置のデータ処理方法であって、
前記放射線発生手段および前記検出手段と前記クレードルとの相対的な位置を制御する第1のステップと、
前記第1のステップによる、前記放射線発生手段および前記検出手段と前記クレードルとの相対的な加速移動時または減速移動時に、前記検出手段の検出結果による投影データ、および前記相対的な位置に基づいて前記スカウト画像を生成する第2のステップと
を有する放射線CT装置のデータ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2006−212410(P2006−212410A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154322(P2005−154322)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】