説明

放熱板

【課題】放熱面積が大きく、空気の対流がなくても熱放射による優れた放熱作用を発揮できる放熱板を提供する。
【解決手段】二等辺三角形の断面形状を有する複数の凸部(凸条4)を隣接させて片面に形成し、各凸条4の傾斜面4a,4aを熱放射面とした放熱板であって、各凸条4の頂角θを90°以上に設定する。各凸条4が二等辺三角形の断面形状を有するので板状の放熱板に比べて放熱面積が大きくなり、各凸条4の頂角θを90°以上に設定したので、各凸条4の傾斜した熱放射面から垂直に放射される放射熱が、隣接する凸条4の傾斜した熱放射面に当たって反射されたり遮断されたりすることがない。そのため、空気の対流がなくても熱放射による優れた放熱作用を発揮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱放射性に優れた放熱板に関し、特にLEDなどの放熱に好ましく使用される放熱板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発熱量が大きいCPU、ICその他の電子部品の放熱には、通常、図7に示すように、複数のフィン100aを一定の相互間隔をあけて基部100bから立設した構造の放熱部材(ヒートシンク)100が使用されている。この放熱部材100は電子部品101の天面に放熱テープ102などを用いて接着され、電子部品101から放熱部材100のフィン100aへ伝導してくる熱を、機器の筐体内部の冷却ファン(不図示)からフィン100aに送られる風(空気の対流)によって放熱させるものである。
【0003】
一方、少なくとも断面の辺が傾斜している断面形状(例えば、三角形、台形、円弧、矩形、多角形、円形、楕円、流線型、正弦波形)の突起を、左右交互に蛇行又はジグザグさせて規則的に配列した冷却フィンが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、一方の面に発熱素子が熱的に接続される熱拡散板と、この熱拡散板の他の面に接続される、頭部の放熱面積が脚部の放熱面積よりも大きいY字型の放熱フィンとを備えたヒートシンクも知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−100293号公報
【特許文献2】特開2006−210611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図7に示す放熱部材100は、冷却ファンでフィン100aに風を送って空気を対流させると効率良く放熱できるが、空気の対流がなくて主にフィン100aからの放射熱によって放熱を行う場合には、各フィン100aの放熱面が相対向しているため、各フィン100aの放熱面から出た放射熱が隣りのフィン100aの放熱面で反射され、放射熱がフィン100aの相互間に滞留して効率良く放熱できないという問題があった。
【0007】
しかも、複数のフィン100aを立設した放熱部材100は嵩が高いため、昨今の薄型で狭額縁の液晶テレビ等に組み込まれるエッジライト型の液晶モジュールにおいて、その光源であるLEDの放熱を行う放熱部材として使用し難いという問題があった。かと言って、フィンのない板状の嵩が低い放熱部材を用いる場合は、その放熱面積が小さいため、LEDから多量に発生する熱を効率良く放熱できないという問題があった。
【0008】
一方、前記特許文献1の冷却フィンのように、断面の辺が傾斜している断面形状の突起を左右交互に蛇行又はジグザグさせて規則的に配列したものは、放熱面積が大きいため放熱効率は向上するが、突起の斜面からの放射熱が隣接する突起によって反射されたり遮断されたりして十分放射されないため、熱放射による放熱作用が満足に発揮されないという問題があった。
【0009】
また、前記特許文献2のヒートシンクのように、熱拡散板の片面に、頭部の放熱面積が脚部の放熱面積よりも大きいY字型の放熱フィンを複数設けたものも、放熱面積が大きいため放熱効率は向上するが、やはり熱放射による放熱作用が満足に発揮されず、嵩も高いので、液晶モジュールのLEDの放熱を行う放熱部材として使用し難いという問題があった。
【0010】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、放熱面積が大きく、空気の対流がなくても熱放射による優れた放熱作用を発揮でき、嵩が低いため液晶モジュール等におけるLEDの放熱に好ましく使用される放熱板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る放熱板は、二等辺三角形の断面形状を有する複数の凸部を隣接させて片面に形成し、各凸部の傾斜面を熱放射面とした放熱板であって、各凸部の頂角θを90°以上に設定したことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の放熱板は、好ましくはLEDの放熱に用いられるものであり、更に好ましくは、前記凸部が形成された片面と反対面にLEDが取付けられて液晶モジュールのバックライトに組み込まれるものである。
また、本発明の放熱板における前記凸部は、互いに平行な凸条であるか、又は、縦横に隣接する正四角錐形の突起であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の放熱板のように、二等辺三角形の断面形状を有する複数の凸部を隣接させて片面に形成し、各凸部の傾斜面を熱放射面としたものは、板状の放熱板に比べて放熱面積が大きくなり、しかも、本発明の放熱板のように各凸部の頂角θを90°以上に設定したものは、各凸部の傾斜した熱放射面から垂直に放射される放射熱が、隣接する凸部の傾斜した熱放射面に当たって反射されたり遮断されたりすることがないため、空気の対流がなくても熱放射による優れた放熱作用を発揮することができる。また、各凸部の頂角θが90°以上であると、各凸部の高さがそれほど高くならず、放熱板の嵩が従来のフィンを立設した放熱部材よりも低くなるため、薄型で狭額縁の液晶テレビ等に組み込まれるエッジライト型の液晶モジュールにおいて、その光源であるLEDの放熱を行う放熱板として好適に使用できるようになる。
【0014】
凸部の形状は二等辺三角形の断面形状を有するものであればよいが、その中でも、凸条は隙間をあけないで互いに平行に容易に形成できる利点があり、また、正四角錐形の突起は隙間をあけないで縦横に隣接させて容易に形成できる利点があるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る放熱板を前方斜め上から見た部分斜視図である。
【図2】同放熱板を後方斜め上から見た部分斜視図である。
【図3】同放熱板の拡大断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る放熱板を示す部分斜視図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る放熱板を装備した液晶モジュールの正面図である。
【図6】図5のA−A線に沿った拡大部分断面図である。
【図7】従来の放熱部材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の放熱板を詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る放熱板を前方斜め上から見た部分斜視図、図2は同放熱板を後方斜め上から見た部分斜視図、図3は同放熱板の拡大断面図であって、この実施形態はLEDバー1の配線基板2を放熱板P1として利用したものである。
【0018】
このLEDバー1は、図1に示すように、良好な熱伝導性を有するアルミニウムコアを用いた矩形の配線基板2の前面(配線を形成した面)に、点光源として複数のLED3を一定間隔をあけて一列に配列して実装したものである。放熱板P1となる配線基板2の後面には、図2,図3に示すように、二等辺三角形の断面形状を有する凸部として、配線基板2の長さ方向に延びる複数の凸条4が配線基板2の全長に亘って互いに隣接して平行に形成されており、各凸条4の傾斜面4a,4aは、LED3から配線基板2に伝導した熱を放射する熱放射面となっている。
【0019】
各凸条4の頂角θは、90°以上、180°未満に設定する必要があり、このように頂角θを設定すると、各凸条4の傾斜面4a、4aから垂直に放射される放射熱が、隣接する凸部4の傾斜面4aに当たって反射されたり遮断されたりすることがなくなるので、熱放射による放熱作用が向上する。また、頂角θが大きくなって180°に近づくほど、放熱板P1(配線基板2)の後面が平坦面に近くなって放熱面積が減少し、逆に、頂角θが90°に近づくほど、放熱板P1の後面の起伏が大きくなって放熱面積が増加するので、この実施形態では、各凸条4の頂角θを90°に設定することにより、その放熱面積を平坦面の場合のルート(√)2倍として放熱作用を一層向上させている。また、頂角θが90°以上であれば、凸条4の高さがそれほど高くならず、従来のフィンを立設した放熱部材100よりも放熱板P1(配線基板2)の嵩が低くなるので、液晶モジュールのバックライトユニットへの組み込みも容易である。
【0020】
上記のように配線基板2を放熱板P1に加工したLEDバー1は、液晶テレビなどの液晶モジュールにおいて、そのエッジライト型バックライトユニットの導光板の端面に沿って組み込まれ、LED3から導光板に入射した光で導光板を面発光させて使用される。このとき、LED3から出る多量の熱は、配線基板2の熱伝導性の良好なアルミニウムコアに速やかに伝導し、配線基板2の後面に形成された各凸条4の傾斜面4a,4aから放射されるが、前述したように、各凸条4の傾斜面4a,4aから垂直に放射される放射熱は、隣接する凸部4の傾斜面4aに当たって反射されたり遮断されたりすることがなく、放熱面積が大きいことと相俟って、優れた放熱作用が発揮され、空気の対流がなくても効率良く放熱して、LED3の過熱による劣化や輝度の低下を防止することができる。
【0021】
図4は本発明の他の実施形態を示す部分斜視図である。この実施形態も、LEDバー1の配線基板2を放熱板P2として利用するものであるが、この放熱板P2(配線基板2)の後面には、二等辺三角形の断面形状を有する凸部として、頂角θを90°以上、180°未満とした正四角錐形の突起5が互いに隣接して縦横に配列して形成されている。その他の構成は、前記実施形態の放熱板P1と同様であるので、説明を省略する。
【0022】
このような放熱板P2も、各突起5の傾斜面5aから垂直に放射される放射熱が、隣接する突起5の傾斜面5aに当たって反射されたり遮断されたりすることがなく、放熱面積も大きいので、熱放射による優れた放熱作用を発揮し、空気の対流がなくても効率良く放熱してLEDの過熱を防止することができる。
【0023】
なお、この実施形態では、二等辺三角形の断面形状を有する凸部として、上記の正四角錐形の突起5を形成しているが、これに限定されるものではなく、例えば正六角錐形の突起を互いに隣接させてジグザグに配列して形成してもよい。
【0024】
また、上述した放熱板P1,P2において熱放射性を更に向上させるために、放熱板P1,P2の後面にアルマイト処理を施したり、熱放射性に優れた塗膜やコーティング層を形成してもよい。
【0025】
図5は本発明の更に他の実施形態に係る放熱板を装備した液晶モジュールの正面図、図6は図5のA−A線に沿った拡大部分断面図である。
【0026】
この液晶モジュールは、金属製のリアフレーム6の上に光反射シート7と導光板8と光学シート9を設け、LED3を配線基板2に一列に配列して実装したLEDバー1を導光板8の端面沿いに配置して、放熱シート10でLEDバー1をリアフレーム6の側板6aに接着固定すると共に、モールドフレーム11で導光板8の端縁部を抑え、モールドフレーム11の上に液晶パネル12を載置して周縁部をベゼル13で囲んだ概略構造を有するものであり、リアフレーム6の上記側板6aを放熱板P3として使用し、この放熱板P3(側板6a)の外側面に、二等辺三角形の断面形状を有する凸部として、頂角θを90°以上、180°未満とした複数の前記凸条4を互いに隣接させて平行に形成して、各凸条4の傾斜面を熱放射面としたものである。
【0027】
このように液晶モジュールのリアフレーム6の側板6aを放熱板P3としたものは、LEDバー1のLED3で発生した熱が配線基板2、放熱シート10を通じて放熱板P3(側板6a)まで伝導し、空気の対流がなくても、放熱板P3の各凸条4の傾斜面から前述したように効率良く放熱されるので、LED3の過熱による劣化や輝度の低下を防止することができる。
【0028】
なお、凸条4に代えて前記突起5を縦横に隣接させて形成してもよいし、必要に応じて放熱板P3の外側面に熱放射性を更に高める塗膜やコーティング層を形成してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 LEDバー
2 配線基板
3 LED
4 凸条
4a 凸条の傾斜面(熱放射面)
5 突起
5a 突起の傾斜面(熱放射面)
6 リアフレーム
6a リアフレームの側板
8 導光板
12 液晶パネル
P1,P2,P3 放熱板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二等辺三角形の断面形状を有する複数の凸部を隣接させて片面に形成し、各凸部の傾斜面を熱放射面とした放熱板であって、各凸部の頂角θを90°以上に設定したことを特徴とする放熱板。
【請求項2】
LEDの放熱に用いられる請求項1に記載の放熱板。
【請求項3】
前記凸部が形成された片面と反対面にLEDが取付けられて液晶モジュールのバックライトに組み込まれる請求項2に記載の放熱板。
【請求項4】
前記凸部が互いに平行な凸条である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放熱板。
【請求項5】
前記凸部が縦横に隣接する正四角錐形の突起である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放熱板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−234078(P2012−234078A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103378(P2011−103378)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】