説明

放電ランプ点灯装置

【課題】必要なランプ光量を確実に得ることが可能であり、異なる仕様のランプに対しても点灯周期と照度の適切な制御が可能である放電ランプ点灯装置を提供する。
【解決手段】同期信号のパルス長から電圧変換パルス信号を算出してチョッパー回路である電圧変換回路2に出力し、同期信号の周波数から周波数変換パルス信号を算出してプッシュプル式インバータであるインバータ回路3に出力する。電圧変換回路2は昇圧制御された電圧をインバータ回路3に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナやコピー機などに用いられる放電ランプの点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナやコピー機などに用いられる放電ランプは、ランプの仕様に合った点灯周期と照度を制御する必要があるが、機種が異なる場合ランプの仕様は異なることが多い。ランプの仕様が異なる場合、制御回路等をそれに合わせて調整しなければならず、ランプ点灯装置の機種が増加し、製造コストが上昇することから、ランプ点灯の同期信号を取り出し、この同期信号に従ってランプの照度を算出して制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−274312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載の技術においては、同期信号の周波数とランプの照度が1対1にしか設定できない。例えば、あるタイプのランプは10kHzのとき30klxであるが、ほかのタイプのランプは同じく10kHzのときでも40klxの照度が必要な場合がある。このような場合、特許文献1に記載の技術では、例えば10kHzのときは40klxのように1対1にしか設定できず、仕様の異なるランプ毎の照度の制御をすることが困難であるという問題点があった。
【0004】
本発明は必要なランプ光量を確実に得ることが可能であり、異なる仕様のランプに対しても点灯周期と照度の適切な制御が可能である放電ランプ点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために本発明は、パルス信号を制御する信号に基づき出力電圧を設定させる電圧変換回路と、電圧変換回路の出力電圧を交流に変換させるとともに昇圧させ、放電ランプに出力するインバータ回路と、インバータ回路の出力周波数を同期させる同期信号の周波数とパルス信号を求め、該求めたパルス信号に基づいてパルス信号を制御して電圧変換回路の出力電圧を制御するとともに、求めた周波数に基づいて生成される信号をインバータ回路に出力する制御部と、を備える放電ランプ点灯装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、必要なランプ光量を確実に得ることが可能であり、異なる仕様のランプに対しても点灯周期と照度の適切な制御が可能であるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明による放電ランプ点灯装置の一実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。なお、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0008】
図1は本実施形態の放電ランプ点灯装置の構成を示した回路図である。図1に示すように、本実施形態の放電ランプ点灯装置は、パルス信号を制御する信号に基づき出力電圧を設定させる電圧変換回路2と、電圧変換回路2の出力電圧を交流に変換させるとともに昇圧させ、放電ランプに出力するインバータ回路3と、制御部1と、を備える。
【0009】
制御部1は、入力した同期信号の周波数とパルス信号を計測し、計測したパルス信号に従って電圧変換パルス信号のパルス信号を算出し、この算出したパルス信号を有する電圧変換パルス信号を前記電圧変換回路2に出力する。
【0010】
制御部1で算出されたパルス信号は、あらかじめ設定されたパルス信号を有する電圧変換パルス信号を出力してもよい。
【0011】
また制御部1は、計測した周波数に従って周波数変換パルス信号の周波数を算出し、この算出した周波数を有する周波数変換パルス信号をインバータ回路3に出力する。
【0012】
制御部1は、放電ランプ点灯装置の起動及び停止を制御するON/OFF信号を入力し、グランドに接続し、同期信号を入力する。
【0013】
入力電圧はグランドに接続するコンデンサC1と、制御部1に並列に接続し、制御部1に電力を供給している。
【0014】
制御部1はプロセッサ等の演算装置と、メモリなどの記憶装置を備える。制御部1はいわゆるマイコンを用いることができる。
【0015】
電圧変換回路2は、制御部1から入力した、パルス信号を制御する信号である電圧変換パルス信号に基づき出力電圧を設定させる。
【0016】
具体的には、電圧変換回路2は、直流電圧入力端子に直列にインダクタL1を接続し、このインダクタL1にダイオードD2のアノードを直列に接続する。また、制御部1からの信号出力端子に抵抗R1を直列に接続し、この抵抗R1にグランドに接続する抵抗R2とFET(電界効果トランジスタ)などのスイッチング素子FET1のゲートとを並列に接続する。スイッチング素子FET1のソースはグランドに接続する。電圧変換回路2はダイオードD2のカソードを出力とし、このカソードとグランド間にコンデンサC2を並列に接続する。
【0017】
直列に接続された抵抗R7及び抵抗R8は電圧変換回路2の出力電圧検出用であり、抵抗R7及び抵抗R8は接続点から検出された出力検出電圧を制御部1に出力している。
【0018】
インバータ回路3は、プッシュプル式インバータ回路を用いることができる。このプッシュプル式インバータ回路は、制御部1から入力した周波数変換パルス信号によってON/OFF切り替えし、このON/OFF切り替えに従って電圧変換回路2からのトランスへの出力電圧のON/OFFを切り替えるスイッチング素子FET2及びスイッチング素子FET3を有する。
【0019】
具体的には、電圧変換回路2からの入力電圧端子はグランドと制御部1に接続する抵抗を並列に接続しており、インバータ回路3はこの電圧変換回路2からの入力電圧端子が1次コイルに接続するトランスT1を有する。
【0020】
スイッチング素子FET2は、ゲートに抵抗R3を介して制御部1からの第1の信号出力端子が接続されている。また、スイッチング素子FET2のゲートは抵抗R4を介してスイッチング素子FET2のソース及びグランド及びトランスT1の2次コイルに接続している。スイッチング素子FET2のドレインはトランスT1の1次コイルと接続している。
【0021】
スイッチング素子FET3は、ゲートに抵抗R5を介して制御部1からの第2の信号出力端子が接続されている。また、スイッチング素子FET3のゲートは抵抗R6を介してスイッチング素子FET3のソース及びグランド及びトランスT1の2次コイルに接続している。スイッチング素子FET3のドレインはトランスT1の他の1次コイルと接続している。
【0022】
トランスT1の2次コイルはコネクタCN2を介して放電ランプである外面電極キセノンランプに接続する。
【0023】
ここで、放電ランプについて説明する。図5は、放電ランプの断面図の例である。図5に示すように、放電ランプは内部にキセノンなどの希ガスを封入し、蛍光体層34を塗布したガラスバルブ31と、ガラスバルブ内に電子を放射する外部電極32、32と、蛍光性絶縁チューブ33と、透光性樹脂シート35と、を有する。このように、放電ランプは内部にキセノンを封入した外面電極キセノンランプを用いることができる。
【0024】
図1を用いて動作の概要を説明する。ON/OFF信号がコネクタCN1CNT2より入力されると制御部1に入力され、制御部1は動作を開始する。
【0025】
次に同期信号がコネクタCN1CNT4より入力されると制御部1に入力する。制御部1は同期信号がHIGHのとき、スイッチング素子FET2にHIGHを出力し、次に同期信号がHIGHのとき、スイッチング素子FET3にHIGHを出力する。このように、制御部1は周波数変換パルス信号をスイッチング素子FET2とスイッチング素子FET3に交互に出力する。
【0026】
スイッチング素子FET2とスイッチング素子FET3はこの周波数変換パルス信号がHIGHのときONとなり、LOWのときOFFとなるように動作する。
【0027】
スイッチング素子FET2がONになるとトランスT1の1次コイルに電流が流れ、OFFになると逆向きに電流が流れる。次に、スイッチング素子FET3がONになるとトランスT1の1次コイルに電流が流れ、OFFになると逆向きに電流が流れる。
【0028】
1次コイルに電流が流れると2次コイルに電流が流れる。これにより周波数と電圧が変換され、外面電極キセノンランプに供給される。
【0029】
一方、制御部1は、クロック又はタイマを用いて同期信号のパルス信号、すなわちHIGHの長さを計測する。制御部1は計測した同期信号のパルス信号が増加したとき、電圧変換パルス信号のパルス信号を増加させるように、電圧変換パルス信号のパルス信号を算出し、電圧変換回路2のスイッチング素子FET1に出力する。
【0030】
電圧変換パルス信号がHIGHのとき、スイッチング素子FET1はONになり、LOWのときOFFとなる。スイッチング素子FET1のON時間が長いと電圧変換回路2は疑似的に電圧を昇圧する。電圧変換回路2は変換された電圧をインバータ回路3に出力し、インバータ回路3は周波数を変換する。
【0031】
ここで、同期信号の周波数は画像素子の読取周期と同期しているため、放電ランプは画像素子の読取周期と同期して点灯することが可能となる。また、同期信号のパルス長はランプの照度と相関しているため、パルス長を計測して電圧変換パルス信号を算出することにより、電圧変換回路2は適切な電圧を出力することが可能となり、これにより放電ランプは適切な照度にて点灯することが可能となる。
【0032】
さらに、仕様の異なる放電ランプが装着された時は、制御部1は同期信号のパルス長を可変し、電圧変換回路2の出力電圧を適切なランプ照度となるように調光する。または、制御部1は電圧変換パルス信号の算出方法を装着された放電ランプの仕様に合わせて変更することにより、同期信号の周波数が同一でも放電ランプの仕様に合わせた照度が得られる。
【0033】
図2は、各信号のタイミングチャートである。図2に示すように、ON/OFF信号21がONになると制御部1は動作を開始する。同期信号22に合わせて、制御部1はスイッチング素子FET2とスイッチング素子FET3に、ゲート信号23、ゲート信号24として同期させた信号を交互に出力する。
【0034】
また、制御部1はスイッチング素子FET1に、同期信号のパルス信号に従って算出したパルス信号を有する電圧変換パルス信号25を出力する。
【0035】
図3は制御部1の電圧変換パルス信号の出力における動作を表したフローチャートである。図3に示すように、ステップS301において、制御部1はタイマをリセットする。ステップS302において、制御部1は同期信号がHIGHか判定する。同期信号がHIGHのとき制御部1はステップS303に進み、HIGHでない場合はステップS302に戻る。
【0036】
ステップS303において、制御部1はタイマをONにして時間の計測を開始する。ステップS304において、制御部1は同期信号がLOWかを判定する。同期信号がLOWであった場合、制御部1はステップS305に進み、LOWでなかった場合、制御部1はステップS303に戻る。
【0037】
ステップS305において、制御部1はタイマをOFFにし、計測した時間をメモリに格納する。
【0038】
ステップS306において、制御部1はHIGH継続時間から電圧変換パルス信号のパルス長であるスイッチング素子FET1のゲート信号長を算出する。算出方法は関数を用いて算出してもテーブル管理してもよい。
【0039】
ステップS307において、制御部1はスイッチング素子FET1に電圧変換パルス信号を出力する。
【0040】
ステップS308において、制御部1はスイッチング素子FET2及びスイッチング素子FET3に別途算出した周波数変換パルス信号を出力し、ステップS301に戻る。
【0041】
制御部1に入力される同期信号12とインバータ回路3の周波数変換パルス信号と同期が図れない場合は、同期信号12を図4(b)に示すように、図2の(b)の同期信号に相当する図4(a)を分周させた図4(b)のゲート信号でFET1を駆動させてもよい。
【0042】
ここで、同期が図れない場合とは、放電ランプを効率的に駆動させるインバータ回路の出力に合致しない場合をいう。
【0043】
以上述べたように、本実施形態の放電ランプ点灯装置は、同期信号のパルス長から電圧変換パルス信号を算出して電圧変換回路2に出力し、同期信号の周波数から周波数変換パルス信号を算出してインバータ回路3に出力する。このため、本実施形態の放電ランプ点灯装置は、必要なランプ光量を確実に得ることが可能であり、異なる仕様のランプに対しても点灯周期と照度の適切な制御が可能であるという効果がある。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態の放電ランプ点灯装置の構成を示した回路図である。
【図2】各信号のタイミングチャートである。
【図3】制御部の電圧変換パルス信号の出力における動作を表したフローチャートである。
【図4】電圧変換パルス信号を分周した場合のパルスの様子を示した図である。
【図5】放電ランプの断面図の例である。
【符号の説明】
【0046】
1:制御部、
2:電圧変換回路、
3:インバータ回路、
FET1,FET2,FET3:スイッチング素子、
T1:トランス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス信号を制御する信号に基づき出力電圧を設定させる電圧変換回路と、
前記電圧変換回路の出力電圧を交流に変換させるとともに昇圧させ、放電ランプに出力するインバータ回路と、
前記インバータ回路の出力周波数を同期させる同期信号の周波数とパルス信号を求め、該求めたパルス信号に基づいてパルス信号を制御して前記電圧変換回路の出力電圧を制御するとともに、前記求めた周波数に基づいて生成される信号を前記インバータ回路に出力する制御部と、
を備える放電ランプ点灯装置。
【請求項2】
前記制御部が、計測した前記同期信号の前記パルス信号が増加したとき、前記電圧変換パルス信号のパルス信号を増加させることを特徴とする、請求項1記載の放電ランプ点灯装置。
【請求項3】
前記電圧変換回路が、前記制御部から入力した前記電圧変換パルス信号によって前記電圧変換回路からの出力電圧の値を設定する昇圧チョッパー回路であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放電ランプ点灯装置。
【請求項4】
前記インバータ回路が、前記制御部から入力した前記周波数変換パルス信号によって前記電圧変換回路からのトランスへの出力電圧のON/OFFを切り替えるスイッチング素子を有するプッシュプル式インバータ回路であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放電ランプ点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−176434(P2009−176434A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10787(P2008−10787)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】