説明

放電加工機および放電加工機を用いたノズルボディの製造方法

【課題】ガスの力を利用して電極を回転させる放電加工技術において、従来よりも電極の位置の高速制御を容易にする。
【解決手段】圧縮空気を電極保持具22に供給する給気ノズル34を備え、電極保持具22は、給気ノズル34から供給される圧縮空気を受けて回転することで電極23を回転させる回転羽根車と、回転羽根車を内部に収容するボデー基部と、を備え、ボデー基部には、給気ノズル34から供給される圧縮空気をボデー基部の外部から内部に流入させるための吸気窓が形成されており、給気ノズル34には、圧縮空気を放出するスリット孔が設けられ、吸気窓は、スリット孔と離れて対面する位置にあり、スリット孔は、電極保持具22の駆動方向に、吸気窓よりも長くなっており、放電加工の際、電極保持具が移動すると、吸気窓はスリット孔と対面したままスリット孔に沿って移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電加工機および放電加工機を用いたノズルボディの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放電加工において、電極を高速回転させるために、電極を保持して移動する放電ヘッドにエアモータを搭載し、このエアモータに圧縮空気を供給する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−66631号公報
【特許文献2】特開平7−184382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、圧縮空気をエアモータに供給するために、放電ヘッドに空気送り用のチューブを取り付けるようになっていたので、チューブが放電ヘッドの移動の妨げとなっており、そのため、電極の位置の高速制御が困難となっていた。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、ガスの力を利用して電極を回転させる放電加工技術において、従来よりも電極の位置の高速制御を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、電極(23)と被加工物(24)との間に電圧を印加することで放電を発生させ、その放電によって被加工物(23)を溶融させて加工する放電加工機であって、前記電極(23)を保持する電極保持具(22)と、前記電極保持具(22)を駆動方向に移動させるモータ(23)と、前記電極保持具(22)から分離して配置されると共に、ガスを前記電極保持具(22)に供給する給気ノズル(34)と、を備え、前記電極保持具(22)は、前記給気ノズル(34)から供給されるガスを受けて回転することで前記電極(23)を回転させる回転羽根車(51)を備え、前記電極保持具(22)と前記給気ノズル(34)とを繋げて給気ノズル(34)から前記回転羽根車(51)へとガスを送るためのチューブは設けられておらず、放電加工の際、前記電極保持具(22)が前記駆動方向に移動する際、前記回転羽根車(51)は前記給気ノズル(34)からガスを受けて回転し続けることを特徴とする放電加工機である。
【0007】
このように、給気ノズル(34)と電極保持具(22)とが、ガス送り用のチューブで連結されることなく、給気ノズル(34)から回転羽根車(51)までガスを送るようになっているので、電極保持具(22)の上下移動時に、電極保持具(22)と共にガス送り用のチューブが連動して移動することがない。したがって、電極保持具(22)の移動の際、ガス送り用のチューブが邪魔になることがない。また、電極(23)を上下に移動させるために動く電極保持具(22)が、ガス送り用のチューブがない分だけ軽くなるので、電極(23)の位置の高速制御が可能となり、効率的に被加工物(24)を加工することができる。
【0008】
また、電極保持具(22)が駆動方向に移動するとき、回転羽根車(51)は給気ノズル(34)からガスを受けて回転し続けるようになっているので、電極保持具(22)が駆動方向に移動しても、回転羽根車(51)は吸気窓(43)を介してガスを受けて回転し続けることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、電極(23)と被加工物(24)との間に電圧を印加することで放電を発生させ、その放電によって被加工物(23)を溶融させて加工する放電加工機であって、前記電極(23)を保持する電極保持具(22)と、前記電極保持具(22)を駆動方向に移動させるモータ(23)と、前記電極保持具(22)から分離して配置されると共に、ガスを前記電極保持具(22)に供給する給気ノズル(34)と、を備え、前記電極保持具(22)は、前記給気ノズル(34)から供給されるガスを受けて回転することで前記電極(23)を回転させる回転羽根車(51)と、前記回転羽根車(51)を内部に収容するボデー基部(41a)と、を備え、前記ボデー基部(41a)には、前記給気ノズル(34)から供給されるガスを前記ボデー基部(41a)の外部から内部に流入させるための吸気窓(43)が形成されており、前記給気ノズル(34)には、前記電極保持具(22)に向けてガスを放出するスリット孔(34a)が設けられ、前記吸気窓(43)は、前記スリット孔(34a)と離れて対面する位置にあり、前記スリット孔(34a)は、前記電極保持具(22)の前記駆動方向に、前記吸気窓(43)よりも長くなっており、前記吸気窓(43)と前記スリット孔(34a)とを繋げてスリット孔(34a)から吸気窓(43)へとガスを送るためのチューブは設けられておらず、放電加工の際、前記電極保持具(22)が前記駆動方向に移動するとき、前記吸気窓(43)は前記スリット孔(34a)と対面したまま前記スリット孔(34a)に沿って移動するようになっていることを特徴とする放電加工機である。
【0010】
このように、スリット孔(34a)と吸気窓(43)とが、ガス送り用のチューブで連結されることなく、給気ノズル(34)から吸気窓(43)までガスを送るようになっているので、電極保持具(22)の上下移動時に、電極保持具(22)と共にガス送り用のチューブが連動して移動することがない。したがって、電極保持具(22)の移動の際、ガス送り用のチューブが邪魔になることがない。また、電極(23)を上下に移動させるために動く電極保持具(22)が、ガス送り用のチューブがない分だけ軽くなるので、電極(23)の位置の高速制御が可能となり、効率的に被加工物(24)を加工することができる。
【0011】
また、電極保持具(22)が駆動方向に移動するとき、吸気窓(43)はスリット孔(34a)と対面したままスリット孔(34a)に沿って移動するようになっているので、電極保持具(22)が駆動方向に移動しても、回転羽根車(51)は吸気窓(43)を介してガスを受けて回転し続けることができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の放電加工機において、前記給気ノズル(34)には、ガスを当該給気ノズル(34)内に導入するためのエア通路(34b)と、前記エア通路(34b)の当該給気ノズル(34)内部側の端部と連通するサージタンク(34c)と、それぞれ前記サージタンク(34c)の前記スリット孔(34a)に最も近い側の面の一部分と連通すると共に前記スリット孔(34a)に連通する複数の圧縮エア噴射部(34d)と、が設けられており、前記サージタンク(34c)は、前記エア通路(34b)よりも容積が大きく、かつ、前記サージタンク(34c)よりも前記電極保持具(22)の駆動方向に、前記スリット孔(34a)と同じか又はそれ以上に広がっており、前記複数の圧縮エア噴射部(34d)は上下に並び、それぞれが前記サージタンク(34c)と連通する側から前記スリット孔(34a)に向けて広がり、最終的に前記スリット孔(34a)に連通するようになっていることを特徴とする。
【0013】
給気ノズル(34)がこのような構造になっていることで、エア通路(34b)から流入したガスは、サージタンク(34c)がエア通路(34b)より上下に広がっていることでサージタンク(34c)中で上下に広がり、また、サージタンク(34c)から圧縮エア噴射部(34d)への通路が狭く絞られていることによってサージタンク(34c)内にガスが溜まり、その上で上下に並んだ圧縮エア噴射部(34d)のそれぞれを通ってスリット孔(34a)から電極保持具(22)に向けて、放出される。
【0014】
このように、ガスを一旦サージタンク(34c)で上下に広げて溜め、それを上下に並んだ圧縮エア噴射部(34d)を介してスリット孔(34a)に供給することで、スリット孔(34a)のどの位置からも、ほぼ一様な量および圧力のガスが吹き出るようになる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の放電加工機において、前記電極保持具(22)は、前記回転羽根車(51)に固定されて前記回転羽根車(51)と同期して同軸に回転する棒形状のセンタシャフト(52)と、前記センタシャフト(52)に固定されると共に前記電極(23)を保持する電極チャック(22c)と、を備え、前記回転羽根車(51)および前記センタシャフト(52)の回転中心には、それぞれスルーホール(51f、52a)が空けられ、また、電極23は、回転羽根車51およびセンタシャフト52の回転中心にそれぞれ空けられて互いに連通するスルーホール(51f、52a)が空けられ、前記電極(23)これらスルーホール(51f、52a)を通って前記被加工物(24)の方向に延びるようになっていることを特徴とする。
【0016】
このようになっていることで、電極(23)を回転させる機構が電極(23)の邪魔にならず、電極(23)を電極保持具(22)の上方まで延ばすことができる。このようになっていることで、電極の繰り出しが容易になる。つまり、電極(23)を回転させる機構が従来の電動モータのように電極(23)の上部を遮るようになっていれば、繰り出せる電極(23)の長さに大きな制限ができてしまうが、本実施形態では、電極保持具(22)の上方まで電極(23)を延ばせることができるので、繰り出せる電極(23)の長さを大きく取ることができる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の放電加工機に対して燃料噴射ノズルのノズルボディを構成する被加工物(24)を設置する工程と、前記放電加工機を用いて前記被加工物(24)に噴孔を空ける工程と、を備えたノズルボディの製造方法である。このように、本発明の放電加工機は、微細な噴孔を有するノズルボディの製造に適している。
【0018】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る放電加工機1の構成を示すブロック図である。
【図2】放電加工機の機構部2の構成を示す図である。
【図3】フィンガチップ21aの楕円運動とセラミックプレート22aの移動の関係を示す図である。
【図4】(a)は給気ノズル34を図2の左側から見た矢視図であり。(b)は(a)のA−A断面図である。
【図5】放電ヘッド22bおよび電極チャック22cの(a)正面図および(b)側面図である。
【図6】(a)は図5(b)のB−B断面図であり、(b)は図5(a)のC−C断面図である。
【図7】回転羽根車ユニット50の正面図(一部断面図)である。
【図8】回転羽根車51の平面図である。
【図9】放電加工時の吸気窓43とスリット孔34aの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態の放電加工機1の構成を示す。この放電加工機1は、電極と被加工物との間に電圧を印加することで放電を発生させ、その放電によって被加工物を溶融させて加工する装置である。
【0021】
この放電加工機1は、図1に示すように、機構部2、放電電源3、放電状態検出回路4、モータアンプ5、および制御回路6を備えている。機構部2は、放電加工機1のうち、機械的作動を行う部分であり、超音波モータ21、電極保持具22、電極23等を備え、被加工物24が設置されるようになっている。
【0022】
超音波モータ21は、電極保持具22を駆動方向(具体的には上下)に移動させるモータであり、電極保持具22は、電極23を保持する部材である。電極23は、例えば中空(または中実)の銅、タングステン等の細線状の丸棒等から構成された細径(例えば、0.2mm以下の径)の針金形状の電極であり、電極保持具22が超音波モータ21によって駆動方向に移動するとき、同じように駆動方向に移動する。
【0023】
放電電源3は、電極23と被加工物24の間に繰り返しパルス的に所定の電圧を印加する装置である。繰り返し周期は、例えば、数千万分の1秒程度である。電極23が被加工物24から適切な距離だけ離れている場合に、電極23と被加工物24との間に電圧が印加されると、これらの間に放電が発生し、被加工物24の一部が溶融して加工が進む。
【0024】
放電状態検出回路4は、放電電源3の放電状態を常時検出し、その検出結果の放電状態を信号として制御回路6に出力する。検出される放電状態としては、電極23と被加工物24との間に印加される放電電圧、電極23と被加工物24の間に流れる放電電流等がある。モータアンプ5は、制御回路6から受けた電極駆動信号に従って超音波モータ21を駆動する回路である。
【0025】
制御回路6は、CPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ等を備えた周知のマイクロコンピュータであり、CPUがROMに記録されたプログラムを実行することで、放電状態検出回路4から受けた放電状態の信号に基づいて、モータアンプ5に電極駆動信号を出力する。基本的には、電極23と被加工物24との間隔が放電に適切な間隔となるよう、モータアンプ5に対して電極駆動信号を出力することで、電極23の駆動方向における位置を制御する。
【0026】
図2に、機構部2の詳細な構成を示す。機構部2は、上述の超音波モータ21、電極保持具22、電極23に加え、XYステージ25、背面プレート26、固定プレート27、スライドレール29、電極ガイドホルダ30、電極ガイド31、コンプレッサ32、給気チューブ33、および給気ノズル34を備えている。
【0027】
XYステージ25は、被加工物24を載置する台であり、X移動軸25xおよびY移動軸25y方向に移動させることで、電極23に対する被加工物24の水平面内の位置を変化させることができる。また、XYステージ25は、図示しない給電線を介して放電電源3のグラウンド側端子と導通する。
【0028】
背面プレート26は、XYステージ25に固定された立ち壁であり、固定プレート27は、この背面プレート26の側面において、背面プレート26に対して平行にネジ止め固定された板である。この固定プレート27の背面プレート26側とは反対側の面には、超音波モータ21、電極保持具22、給気ノズル34が固定される。
【0029】
ここで、超音波モータ21について説明する。超音波モータ21は、対応する電極23を駆動するためのモータであって、超音波領域の周波数でフィンガチップ21aを楕円運動させるモータである。フィンガチップ21aの楕円運動は、図2の紙面内における楕円運動となる。このような超音波モータ21としては、特許文献2に記載のマイクロモータを用いてもよい。このマイクロモータは、Nanomotion社からHR1モータという名称で広く販売されている。
【0030】
より詳しくは、超音波モータ21は、長方形圧電セラミック素子上に、市松格子状に4箇所の電極を形成すると共に、その長方形の一辺の中央部にフィンガチップ21aを備えたモータである。超音波モータ21の4箇所の電極の内の2個所の対角線上の電極に40〜80KHz程度の高周波電圧を加えることで、当該セラミック素子を伸縮および屈曲させてフィンガチップ21aに楕円運動を生起させる。
【0031】
電極保持具22は、セラミックプレート22a、放電ヘッド22b、電極チャック22c、移動子22dを備えている。セラミックプレート22aは、超音波モータ21の先端部のフィンガチップ21aと常時接触しており、超音波モータ21が作動してフィンガチップ21aが楕円運動すると、当該圧電セラミック素子に付設されたバネにより、フィンガチップ21aの楕円運動がセラミックプレート22aに伝達され、セラミックプレート22aが直線的に移動する。
【0032】
ここで、フィンガチップ21aの楕円運動とセラミックプレート22aの移動の関係について、図3を用いて説明する。図3(a)に示すように、セラミックプレート22aを上方(すなわち、駆動方向に沿って被加工物24から離れる向き)に移動させる場合は、フィンガチップ21aを紙面の反時計回りに楕円運動させる。また、図3(b)に示すように、セラミックプレート22aを下方(すなわち、駆動方向に沿って被加工物24に近づく向き)に移動させる場合は、フィンガチップ21aを紙面の時計回りに楕円運動させる。
【0033】
反時計回りの楕円運動時、フィンガチップ21aとセラミックプレート22aとは常に接触した状態にあるが、フィンガチップ21aが下降している段階よりも、フィンガチップ21aが上昇している段階の方が、フィンガチップ21aがセラミックプレート22aをより強く押圧する。したがって、セラミックプレート22aに及ぼすフィンガチップ21aの摩擦力は、フィンガチップ21aの上昇時の方が大きく、したがって、全体として見れば、セラミックプレート22aは上昇する。
【0034】
また、時計回りの楕円運動時も、フィンガチップ21aとセラミックプレート22aとは常に接触した状態にあるが、今度はフィンガチップ21aが上昇している段階よりも、フィンガチップ21aが下降している段階の方が、フィンガチップ21aがセラミックプレート22aをより強く押圧する。したがって、セラミックプレート22aに及ぼすフィンガチップ21aの摩擦力は、フィンガチップ21aの下降時の方が大きく、したがって、全体として見れば、セラミックプレート22aは下降する。
【0035】
また、フィンガチップ21aが楕円運動を停止した場合、フィンガチップ21aとセラミックプレート22aとが接触しているので、フィンガチップ21aとセラミックプレート22aとの摩擦力によって、セラミックプレート22aも停止する。
【0036】
セラミックプレート22aは、移動子22dに固定されている。移動子22dは、固定プレート27に固定されたスライドレール29に対して離れないように係合されると共に、スライドレール29上をスライドレール29に沿って自在に移動可能なセラミック製の部材である。
【0037】
放電ヘッド22bは、背面(固定プレート27側の面)で移動子22dに固定されることで、セラミックプレート22aおよび移動子22dと一体的にスライドレール29の延びる方向に移動可能となる。この放電ヘッド22bの一部は、放電ヘッド22bの外部から圧縮空気を受け、この圧縮空気を利用して回転するようになっており、この回転を電極チャック22cを介して電極23に伝えることで、電極23を回転させるようになっている。
【0038】
電極チャック22cは、放電ヘッド22bの回転する部分の下端部に固定され、放電ヘッド22bの回転部分と共に回転する導電性金属部材である。この電極チャック22cは、電極23を周りから挟むようになっていることで、電極23を保持すると共に電極23と導通し、また、図示しない給電線(被覆を含めて直径1mm程度)を介して放電電源3の非グラウンド側端子と導通する。このようになっていることで、放電電源3は、給電線および電極チャック22cを介して電極23に電圧を印加することができる。
【0039】
電極ガイドホルダ30は、電極保持具22の下部において背面プレート26に固定されている。また、電極ガイド31は、この電極ガイドホルダ30に固定されると共に、電極チャック22cから下方に延びる電極23が挿通される挿通孔を有している。この挿通孔を電極23が通ることで、電極23が位置決めされる。
【0040】
コンプレッサ32は、放電ヘッド22bに送る圧縮空気の供給源である。給気チューブ33は、コンプレッサ32の送出した圧縮空気を給気ノズル34の内部に送る(例えばビニル製の)チューブである。
【0041】
給気ノズル34は、固定プレート27の背面プレート26とは反対側の面に固定されていると共に、当該面内において、放電ヘッド22bを基準として超音波モータ21とは反対側に配置されている(例えば樹脂製、金属製等の)部材である。さらに給気ノズル34は、放電ヘッド22bから分離して配置されている。
【0042】
以下、図4を用いてこの給気ノズル34について説明する。図4(a)は、給気ノズル34を図2の左側から見た矢視図である。また、図4(b)は、図4(a)のA−A断面図である。
【0043】
図4に示すように、給気ノズル34は、直方体の外形を有し、その外形のうち一面(以下、送風面という)は、放電ヘッド22bに対向して配置されている。また、図4(a)に示すように、この送風面の左右方向中央部には、上下に細長い矩形のスリット孔34aが設けられている。このスリット孔34aの上下方向の長さは、例えば10mmである。
【0044】
また、図4(b)に示すように、送風面の反対側の面には、圧縮空気を給気ノズル34内に導入するためのエア通路34bが設けられている。このエア通路34bには、給気チューブ33が連結されることで、コンプレッサ32の圧縮空気が給気チューブ33を介して給気ノズル34内に流入するようになっている。
【0045】
また、エア通路34bの給気ノズル34内部側の端部は、サージタンク34cに連通している。このサージタンク34cは、エア通路34bよりも容積が大きく、かつ、サージタンク34cよりも上下に広がっている。より具体的には、サージタンク34cの上下方向の長さは、スリット孔34aの上下方向の長さと比べると、ほぼ同じか又はより長くなっている。
【0046】
また、サージタンク34cのエア通路34bに連通する面とは反対側の面(すなわちスリット孔34aに最も近い側の面)の一部分において、サージタンク34cと複数(具体的に4つ)の圧縮エア噴射部34dとが連通している。これら圧縮エア噴射部34dは上下に一列に並び、それぞれがサージタンク34cと連通する側からスリット孔34aに向けて広がり、最終的にスリット孔34aに連通するようになっている。
【0047】
給気ノズル34がこのような構造になっているので、エア通路34bから流入した圧縮空気は、サージタンク34cがエア通路34bより上下に広がっていることによってサージタンク34c中で上下に広がり、また、サージタンク34cから圧縮エア噴射部34dへの通路が狭く絞られていることによってサージタンク34c内に圧縮空気が溜まり、この溜まった圧縮空気が、上下に並んだ圧縮エア噴射部34dのそれぞれを通ってスリット孔34aから放電ヘッド22bに向けて、放出される。
【0048】
このように、コンプレッサ32からの圧縮空気を一旦サージタンク34cで上下に広げて溜め、それを上下に並んだ圧縮エア噴射部34dを平等に介してスリット孔34aに供給することで、スリット孔34aの上端から下端のどの位置からも、ほぼ一様な量および圧力の圧縮空気が吹き出るようになる。
【0049】
また、圧縮空気は、スリット孔34aから放電ヘッド22bに向けて、電極保持具22の駆動方向対して垂直な方向に放出されるので、垂直でない場合に比べ、効率的にボデー基部41a内に圧縮空気を送ることができる。
【0050】
ここで、放電ヘッド22bおよび電極チャック22cの詳細構成について、図5〜図8を用いて説明する。図5(a)は、放電ヘッド22bおよび電極チャック22cを図2の正面から見た図であり、図5(b)は、放電ヘッド22bおよび電極チャック22cを図2の右側(すなわち、給気ノズル34側)から見た図である。また、図6(a)は、図5(b)のB−B断面図であり、図6(b)は、図5(a)のC−C断面図である。
【0051】
図6、図7に示すように、放電ヘッド22bは、ボデー41、ネジ42a、42b、回転羽根車ユニット固定用ネジ44、および回転羽根車ユニット50を備えている。ボデー41の、上端から下端までの長さは約15mmであり、図5(a)中の左右方向の幅は約8mmであり、図5(b)中の左右方向の幅は約10mmである。また、放電ヘッド22bの質量は、約3gである。
【0052】
ボデー41は、アルミニウム製の部材であり、回転羽根車ユニット50を内部に収容する中空のボデー基部41aを有し、さらに、ボデー基部41aの上部の固定プレート27に近い側でボデー基部41aと一体に形成された壁部41bを有している。この壁部41bが、ネジ42a、42bによって移動子22dに固定される。
【0053】
また、ボデー基部41aは、上方と下方に開口部を有しており、更に、図5(a)紙面手前右側の角(すなわち、固定プレート27から最も遠くかつ給気ノズル34に面した側の角)が、一部切り欠かれており、この切り欠きによって、ボデー基部41aの外部から内部に圧縮空気を流入させるための吸気窓43が形成される。
【0054】
この吸気窓43の位置は、給気ノズル34のスリット孔34aと離れて(すなわち非接触で)対面する位置にある。スリット孔34aから吸気窓43までの距離は、1mmである。また、吸気窓43の上下方向の長さは、0.7mmであり、スリット孔34aの上下方向の長さよりも短くなっている。
【0055】
この吸気窓43の上下方向の位置は、放電ヘッド22bの上下移動と共に変化するので、固定されている給気ノズル34のスリット孔34aに対して相対的に、上下方向に移動することになる。しかし、スリット孔34aも放電ヘッド22bの移動方向に対して平行に(すなわち上下に)延びており、また、通常の放電加工の範囲内で吸気窓43が移動する上下範囲は、スリット孔34aの上下範囲に含まれる。したがって、所定の作動開始位置に放電ヘッド22bが位置している場合も、電極23がXYステージ25に当接するような位置に放電ヘッド22bが位置している場合も、それらの間の位置に放電ヘッド22bが位置している場合も、吸気窓43はスリット孔34aと対面する。つまり、電極保持具22が上下方向(すなわち駆動方向)に移動すると、吸気窓43はスリット孔34aと対面したままスリット孔34aに沿って移動するようになっている。
【0056】
なお、吸気窓43と給気ノズル34のスリット孔34aとの間には、圧縮空気の流れを妨げる障害物はなく、また、吸気窓43とスリット孔34aとを繋げてスリット孔34aから吸気窓43へと空気を送るためのチューブも設けられていない。
【0057】
また、図6に示すように、ボデー基部41aの内部には、回転羽根車ユニット50の上部が収容され、回転羽根車ユニット50の下部は、ボデー基部41aの底面に設けられた開口部を通じてボデー基部41aの下方に延び、その下端において電極チャック22cに固定されている。
【0058】
また、図5(a)、図6(b)に示すように、回転羽根車ユニット固定用ネジ44は、回転羽根車ユニット50の外殻をボデー基部41aに押しつけることで、回転羽根車ユニット50の外殻をボデー基部41aに固定している。
【0059】
この回転羽根車ユニット50は、回転羽根車51、センタシャフト52、複数のころ軸受け(ころ軸受け53a、53b等)、回転羽根車ユニット50の外殻となる外輪54、およびフランジ55を有しており、外輪54がボデー41に固定された状態で回転羽根車51およびセンタシャフト52が一体的に回転するようになっている。図7に、この回転羽根車ユニット50の正面図を示し、図8に、回転羽根車51を上から見た平面図を示す。ただし、図7では、ころ軸受け53a、外輪54およびセンタシャフト52のうち外輪54に覆われた部分を、断面で表している。
【0060】
回転羽根車51は、樹脂、セラミック等から成る部材であり、図7、図8に示すように、円盤形状の円盤部51aの上に、軸51bおよび3つの羽根51c、51d、51eが形成された構造を有している。この回転羽根車ユニット50の図7の上下方向の長さは、約8mmであり、図7の左右方向の長さは、最も太い部分で約4.5mmである。
【0061】
図8に示すように、軸51bは、円盤部51aの上面の中央に位置し、羽根51c、51d、51eは、それぞれ軸51bから円盤部51aの外周まで延びている。これら羽根51c、51d、51eがボデー41のボデー基部41a内部に流入した圧縮空気を受けることで、回転羽根車51が回転するようになっている。
【0062】
また、各羽根51c、51d、51eについて、当該羽根の延びる方向(すなわち長手方向)に垂直な方向(例えば、羽根51cについては方向60)を幅方向とし、羽根の幅方向の中心線(例えば、羽根51cについては中心線61)の方向を羽根方向とし、その中心線と軸51bの外周との交点および軸51bの回転中心62を通る直線(例えば、羽根51cについては中心線63)を放射方向とした場合、羽根方向は放射方向に対して約40°傾いている。このようになっていることで、回転羽根車51の回転角度によって圧縮空気の当たり方が変化することによる回転の不安定化を抑えることができる。
【0063】
また、円盤部51a、軸51bの中央には、電極23を通すためのスルーホール51fが設けられている。スルーホール51fの孔径は、例えば0.5mm程度である。
【0064】
センタシャフト52は、回転羽根車51と一体に形成された棒形状の部材であり、一端が円盤部51aの下面の中心部に固定され、円盤部51aの下方に延びている。このセンタシャフト52も、回転羽根車51の回転と同期して同軸で回転する。また、センタシャフト52の中心にも、回転羽根車51のスルーホール51fと連通すると共にセンタシャフト52の下端まで延びるスルーホール52aが設けられており、このスルーホール52aを電極23が通るようになっている。スルーホール52aの孔径も、スルーホール51fと同じであり、例えば0.5mm程度である。
【0065】
また、センタシャフト52の上半部は、複数の円柱形状のころ軸受け(例えば、ころ軸受け53a、53b)によって側面を支えられている。また、これらころ軸受けの外側および下側を取り囲む様に、それぞれ外輪54およびフランジ55が設けられている。ころ軸受け、外輪54、フランジ55の材質は、それぞれ樹脂、セラミック、アルミニウム等の金属のうち、いずれであってもよい。
【0066】
このような回転羽根車ユニット50のち、回転羽根車51、センタシャフト52の上半部、ころ軸受け、外輪54、フランジ55が、ボデー41のボデー基部41aの内部に収容される。
【0067】
また、図6に示すように、電極チャック22cは、センタシャフト52の下端部と嵌合することでセンタシャフト52に固定される。また電極チャック22cは、その下端部で電極23を挟んで保持することで、電極23と導通する。
【0068】
以下、上記のような構成の放電加工機1の作動および放電加工機1を用いた加工方法について説明する。
【0069】
まず、被加工物24を、XYステージ25上に設置する。本実施形態における被加工物24は、エンジンのシリンダ内に燃料(ガソリン燃料、ディーゼル燃料等)を噴射する燃料噴射ノズルのノズルボディの元となる部材であり、ノズルボディの外形を有した部材である。放電加工機1を用いた放電加工では、電極23と被加工物24との間に放電を発生させて被加工物24に憤孔を空ける工程を、XYステージ25のX軸方向位置およびY軸方向位置を適宜変化させながら、繰り返す。これによって、燃料を噴射するための複数の憤孔が被加工物24の複数位置に空けられる。これらの憤孔を空けることで被加工物24はノズルボディとして完成するので、被加工物24の放電加工方法では、ノズルボディの製造方法でもある。
【0070】
被加工物24をXYステージ25上に設置した後、作業者は、放電電源3を作動させる。すると放電電源3は、所定の周期(例えば、1/10秒の周期)で電極23と被加工物24との間にパルス電圧を印加し始める。
【0071】
また作業者は、放電状態検出回路4、モータアンプ5、制御回路6を作動させる。すると、放電状態検出回路4は、電極23と被加工物24との間の放電状態(放電電流、放電電圧等)を示す信号を制御回路6に出力し始め、制御回路6は、受けた放電状態の信号に基づいて、電極23と被加工物24との間隔が放電に適切な間隔となるよう、モータアンプ5に対して電極駆動信号を出力する。そしてモータアンプ5は、制御回路6から受けた電極駆動信号に応じて超音波モータ21を駆動する。
【0072】
これによって、電極23と被加工物24との間の放電が繰り返されるにつれ、被加工物24の憤孔が深くなり、憤孔が深くなるにつれ、電極保持具22が下降して電極23も下降していく。
【0073】
この際、憤孔の真円度を高くして、憤孔の任意の断面における最大外径と最小外径の差を1.5μm以下に抑えるために、電極23を1000rpm程度で回転させるようになっている。また、電極23を回転させないと、求心性が失われることにより電極ガイド31との摩擦力に耐え切れず、電極23にたわみが発生してしまうので、それを防止するためにも電極23を回転させる。
【0074】
このように電極23を回転させるために、作業者は、放電電源3、放電状態検出回路4、モータアンプ5、制御回路6を作動させると同時に、コンプレッサ32を作動させることで、コンプレッサ32から給気チューブ33を介して給気ノズル34へ圧縮空気を供給する。このとき、送風圧力は0.4MPaである。
【0075】
すると、既に述べた通り、コンプレッサ32からの圧縮空気が一旦サージタンク34cで上下に広がって溜まり、それが上下に並んだ圧縮エア噴射部34dを介してスリット孔34aに供給されることで、スリット孔34aの上端から下端のどの位置からも、ほぼ一様な量および圧力の圧縮空気が吹き出るようになる。
【0076】
そして、既に述べた通り、通常の放電加工の範囲内ではボデー41の吸気窓43とスリット孔34aとが接近して対面しているので、スリット孔34aから吹き出た圧縮空気の一部が、勢いが減衰することなく、吸気窓43を介してボデー41のボデー基部41a内部に直接流入する。そして流入した圧縮空気によって回転羽根車51およびセンタシャフト52が1000rpm程度で回転し、その回転に同期して電極チャック22cおよび電極23が回転する。ボデー基部41aに流入して回転羽根車51を回転させた空気は、ボデー基部41aの上端の開口部を通ってボデー基部41aの外部に抜け出る。
【0077】
また、図9に示すように、放電ヘッド22bおよび電極チャック22cが上下方向(すなわち駆動方向)に移動しても、吸気窓43はスリット孔34aと対面したままスリット孔34aに沿って移動するようになっているので、電極保持具22が駆動方向に移動しても、回転羽根車51は吸気窓43を介して圧縮空気を受けて回転し続けることができる。
【0078】
なお、放電加工の際、図示しない加工液供給装置を作動させることによって、被加工物24に対して水等の加工液が供給されるようになっている。
【0079】
最終的に電極23が被加工物24を貫通して憤孔が空けられると、放電電源3、放電状態検出回路4、モータアンプ5、制御回路6、コンプレッサ32の作動を停止させる。この作動停止は、作業者が手動で行ってもよいし、あるいは、制御回路6が放電状態検出回路4からの信号に基づいて電極23の貫通を検知し、その貫通検知に基づいて制御回路6が放電電源3、放電状態検出回路4、モータアンプ5、コンプレッサ32の作動を停止させるようになっていてもよい。以上のような工程を経て、被加工物24に噴孔が空けられ、ノズルボディが完成する。
【0080】
以上説明した通り、本実施形態の放電加工機1では、放電加工の際、コンプレッサ32からの圧縮空気を放電ヘッド22bの回転羽根車51に吹き付けることで、回転羽根車51、センタシャフト52、電極チャック22c、および電極23を回転させる。
【0081】
この圧縮空気は、給気ノズル34から空中を介して放電ヘッド22b内の回転羽根車51に直接吹き付けられるようになっており、給気ノズル34と放電ヘッド22bとの間は、空気送り用のチューブで連結されていない。したがって、放電ヘッド22bの上下移動時に、放電ヘッド22bと共に空気送り用のチューブが連動して移動することがない。したがって、放電ヘッド22bの移動の際、空気送り用のチューブが邪魔になることがない。また、電極23を上下に移動させるために動く部分が、空気送り用のチューブがない分だけ軽くなるので、電極23の位置の高速制御が可能となり、効率的に被加工物24に複数の憤孔を空けることができる。
【0082】
また、電極23を回転させるためにエアスピンドル方式を採用しているので、電気式モータを用いて電極23を回転させる場合のように、重い電気式モータが放電ヘッド22bに含まれていない。したがって、放電ヘッド22bが3g程度に軽量化し、ひいては、電極23の位置の高速制御が可能となり、効率的に被加工物24に複数の憤孔を空けることができる。
【0083】
また、電極23は、回転羽根車51およびセンタシャフト52の回転中心にそれぞれ空けられたスルーホール51fおよびスルーホール52aを通って被加工物24の方向に延びている。したがって、電極23を回転させる機構が電極23の邪魔にならず、図2に示すように、電極23を放電ヘッド22bの上方まで真っ直ぐ延ばすことができる。このようになっていることで、電極の繰り出しが容易になる。繰り出しとは、放電加工を何度も行うことで電極23の被加工物24側先端が削れたときに、電極23のうち電極チャック22cから下方に延びる部分の長さを調整するため、電極23を下方に繰り出す作業をいう。電極23を回転させる機構が従来の電動モータのように電極23の上部を遮るようになっていれば、繰り出せる電極23の長さに大きな制限ができてしまうが、本実施形態では、放電ヘッド22bの上方まで電極23を延ばせることができるので、繰り出せる電極23の長さを大きく取ることができる。また、図2に示す様に、電極23が放電ヘッド22bの上部で曲がっておらず、真っ直ぐになっているので、繰り出し時に電極23が撓んでしまう恐れも軽減される。
【0084】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0085】
例えば、上記実施形態においては、回転羽根車51はボデー基部41aに収容されており、ボデー基部41aの吸気窓43を介して受けた空気によって回転するようになっている。しかし、回転羽根車51はボデー基部41aの外に露出していてもよい。この場合、回転羽根車51は、給気ノズル34から直接空気を受けて回転することになる。
【0086】
また例えば、上記実施形態においては、給気ノズル34のスリット孔43aは、電極保持具22の駆動方向に、吸気窓43よりも長く伸びており、そのスリット孔43aのすべての位置から電極保持具22に対して平行に空気を放出するようになっている。
【0087】
しかし、必ずしもこのようになっておらずともよく、例えば、給気ノズル34のスリット孔34aは、駆動方向に、吸気窓43と同程度またはそれ以下であってもよい。その場合、スリット孔34aから電極保持具22に対して放射状に空気が放出されるようになっていれば、電極保持具22が駆動方向に移動しても、回転羽根車51は空気を受けて回転し続けることができる。あるいは、スリット孔34aの向きを電極保持具22の駆動方向の位置変化に合わせて変化させるようになっていても、回転羽根車51は空気を受けて回転し続けることができる。
【0088】
また例えば、上記実施形態においては、ボデー41のボデー基部41aの上端には開口部が設けられ、吸気窓43からボデー基部41aに流入して回転羽根車51を回転させた空気は、ボデー基部41aの上端の開口部を通ってボデー基部41aの外部に抜け出るようになっている。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよく、ボデー基部41aの上方は、例えば蓋で塞がれているようになっていてもよい。この場合、ボデー基部41aの側面のうち、吸気窓43とは離れた位置に排気窓を設け、吸気窓43からボデー基部41aに流入して回転羽根車51を回転させた空気をその排気窓から抜け出させるようになっていてもよい。またこの場合、ボデー基部41aの蓋のうち、回転羽根車51のスルーホール51fの真上の部分には、電極23を通すスルーホールを設けてもよい。このようにすることで、蓋があっても電極23は放電ヘッド22bの上方に真っ直ぐ延びることができる。
【0089】
また例えば、給気ノズル34から放出されるのは、圧縮空気以外のガスであってもよい。
【0090】
また例えば、上記の実施形態において、制御回路6がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 放電加工機
21 超音波モータ
22 電極保持具
22b 放電ヘッド
22c 電極チャック
23 電極
24 被加工物
32 コンプレッサ
33 給気チューブ
34 給気ノズル
34a スリット孔
34b エア通路
34c サージタンク
34d 圧縮エア噴射部
41 ボデー
41a ボデー基部
43 吸気窓
51 回転羽根車
51c、51d、51e 羽根
51f、52a スルーホール
52 センタシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極(23)と被加工物(24)との間に電圧を印加することで放電を発生させ、その放電によって被加工物(23)を溶融させて加工する放電加工機であって、
前記電極(23)を保持する電極保持具(22)と、
前記電極保持具(22)を駆動方向に移動させるモータ(23)と、
前記電極保持具(22)から分離して配置されると共に、ガスを前記電極保持具(22)に供給する給気ノズル(34)と、を備え、
前記電極保持具(22)は、前記給気ノズル(34)から供給されるガスを受けて回転することで前記電極(23)を回転させる回転羽根車(51)を備え、
前記電極保持具(22)と前記給気ノズル(34)とを繋げて給気ノズル(34)から前記回転羽根車(51)へとガスを送るためのチューブは設けられておらず、
放電加工の際、前記電極保持具(22)が前記駆動方向に移動する際、前記回転羽根車(51)は前記給気ノズル(34)からガスを受けて回転し続けることを特徴とする放電加工機。
【請求項2】
電極(23)と被加工物(24)との間に電圧を印加することで放電を発生させ、その放電によって被加工物(23)を溶融させて加工する放電加工機であって、
前記電極(23)を保持する電極保持具(22)と、
前記電極保持具(22)を駆動方向に移動させるモータ(23)と、
前記電極保持具(22)から分離して配置されると共に、ガスを前記電極保持具(22)に供給する給気ノズル(34)と、を備え、
前記電極保持具(22)は、前記給気ノズル(34)から供給されるガスを受けて回転することで前記電極(23)を回転させる回転羽根車(51)と、前記回転羽根車(51)を内部に収容するボデー基部(41a)と、を備え、
前記ボデー基部(41a)には、前記給気ノズル(34)から供給されるガスを前記ボデー基部(41a)の外部から内部に流入させるための吸気窓(43)が形成されており、
前記給気ノズル(34)には、前記電極保持具(22)に向けてガスを放出するスリット孔(34a)が設けられ、
前記吸気窓(43)は、前記スリット孔(34a)と離れて対面する位置にあり、
前記スリット孔(34a)は、前記電極保持具(22)の前記駆動方向に、前記吸気窓(43)よりも長くなっており、
前記吸気窓(43)と前記スリット孔(34a)とを繋げてスリット孔(34a)から吸気窓(43)へとガスを送るためのチューブは設けられておらず、
放電加工の際、前記電極保持具(22)が前記駆動方向に移動するとき、前記吸気窓(43)は前記スリット孔(34a)と対面したまま前記スリット孔(34a)に沿って移動するようになっていることを特徴とする放電加工機。
【請求項3】
前記給気ノズル(34)には、
ガスを当該給気ノズル(34)内に導入するためのエア通路(34b)と、
前記エア通路(34b)の当該給気ノズル(34)内部側の端部と連通するサージタンク(34c)と、
それぞれ前記サージタンク(34c)の前記スリット孔(34a)に最も近い側の面の一部分と連通すると共に前記スリット孔(34a)に連通する複数の圧縮エア噴射部(34d)と、が設けられており、
前記サージタンク(34c)は、前記エア通路(34b)よりも容積が大きく、かつ、前記サージタンク(34c)よりも前記電極保持具(22)の駆動方向に、前記スリット孔(34a)と同じか又はそれ以上に広がっており、
前記複数の圧縮エア噴射部(34d)は上下に並び、それぞれが前記サージタンク(34c)と連通する側から前記スリット孔(34a)に向けて広がり、最終的に前記スリット孔(34a)に連通するようになっていることを特徴とする請求項2に記載の放電加工機。
【請求項4】
前記電極保持具(22)は、前記回転羽根車(51)に固定されて前記回転羽根車(51)と同期して同軸に回転する棒形状のセンタシャフト(52)と、
前記センタシャフト(52)に固定されると共に前記電極(23)を保持する電極チャック(22c)と、を備え、
前記回転羽根車(51)および前記センタシャフト(52)の回転中心には、それぞれスルーホール(51f、52a)が空けられ、
また、電極23は、回転羽根車51およびセンタシャフト52の回転中心にそれぞれ空けられて互いに連通するスルーホール(51f、52a)が空けられ、前記電極(23)これらスルーホール(51f、52a)を通って前記被加工物(24)の方向に延びるようになっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の放電加工機。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の放電加工機に対して燃料噴射ノズルのノズルボディを構成する被加工物(24)を設置する工程と、
前記放電加工機を用いて前記被加工物(24)に噴孔を空ける工程と、を備えたノズルボディの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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