説明

放電加工装置

【課題】ユーザにかかる負担を抑えつつ、電極の再利用の効率化を図ることのできる放電加工装置を得ること。
【解決手段】放電加工装置は、被加工物を形彫放電加工するための電極が装着される複数の電極装着部と、電極装着部に取り付けられる電極ごとの再利用条件として電極が被加工物の加工に使用される使用回数の上限値を記憶する再利用条件記憶部5と、再利用条件を設定する設定部26と、再利用条件に応じて電極を再利用して被加工物を加工させる加工プログラムを生成する生成部1と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極を用いて形彫放電加工を行う放電加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
形彫放電加工は、加工機の主軸にワークの加工形状を反転させた形状である工具電極を保持し、その工具電極を使用してワークの加工を行っていく。工具電極は放電加工を行うことにより消耗していき形状精度が悪化していくため、ワークのひとつの加工部位に対し、ワークが目標形状に加工されるまで、同一形状の電極に何度も交換して加工を行っていく。
【0003】
従来、ひとつのワークに同一の加工形状が複数ある場合や、同一の加工形状のワークを加工機の定盤上に複数個並べて加工を行う場合は、形状精度の悪化をある程度許容できる荒加工に利用する電極や、形状精度の悪化を気にしなくてよい貫通加工などに使用する電極は、1回の使用で電極を交換してしまうのではなく、何回か使用した後に別の電極交換するのが一般的である。このとき、何回まで電極の再利用を行うかは、形状精度の悪化をどこまで許容できるかをユーザが判断し、それに応じて電極の交換順序を手動でプログラミングしていくことが一般的である。
【0004】
形彫放電加工では、電極の形状精度の悪化を比較的許容できるため工具電極を消耗させながら行っていく加工を荒加工、形状精度を保つために消耗した工具電極を使用しない加工を仕上加工、ある程度までは電極の形状精度の悪化は許容するが仕上加工精度を向上させるためあまり消耗した電極は使用しない加工を中仕上加工と考えて、仕上加工などで使用した電極を中仕上加工に再利用し、中仕上加工に使用した電極を荒加工に再利用する方法がある。
【0005】
そして、荒加工電極、中仕上加工電極、仕上加工電極が全て同じ形状で作られている場合であり、かつ同一形状の加工部位が複数ある場合は、一箇所の加工部位に対して荒加工用、中仕上加工用、仕上加工用の電極をそれぞれひとつずつ用意するのではなく、あらかじめ工具電極の再利用を計画して電極を準備するとともに、それに合わせたプログラミングを行うことにより、電極の必要数を抑制することができる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−313608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の技術によれば加工工程の違いで再利用を判断しているため、加工工程の違い以外では再利用プログラミングすることが難しく、電極の再利用が十分に効率化されているとは言い難かった。また、さらなる効率化を図ろうとした場合、段取替えを行うたびに設定変更が必要となり、ユーザへの負担が増してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ユーザにかかる負担を抑えつつ、電極の再利用の効率化を図ることのできる放電加工装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、被加工物を形彫放電加工するための電極が装着される複数の電極装着部と、電極装着部に取り付けられる電極ごとの再利用条件として電極が被加工物の加工に使用される使用回数の上限値を記憶する再利用条件記憶部と、再利用条件を設定する設定部と、再利用条件に応じて電極を再利用して被加工物を加工させる加工プログラムを生成する生成部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生成部によって、電極の使用回数に応じて電極の再利用が行われる加工プログラムが生成されるので、ユーザにかかる負担を抑えつつ、電極の再利用の効率化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1−1】図1−1は、本発明の実施の形態1にかかる放電加工装置の概略構成を示すブロック図である。
【図1−2】図1−2は、放電加工装置が備える表示装置と制御装置とを詳細に説明するためのブロック図である。
【図2】図2は、放電加工装置で加工される被加工物などを示す斜視図である。
【図3】図3は、NCプログラム入力画面の表示例を示す図である。
【図4】図4は、電極再利用登録画面の表示例を示す図である。
【図5】図5は、再利用条件の登録の流れを示すフローチャートである。
【図6】図6は、再利用条件登録画面の一例を示す図である。
【図7】図7は、再利用電極配置画面の表示例を示す図である。
【図8】図8は、再利用電極呼出画面の表示例を示す図である。
【図9】図9は、NCプログラム入力画面の変更後の表示例を示す図である。
【図10】図10は、NCプログラム入力画面の変更後の他の表示例を示す図である。
【図11】図11は、放電加工装置で加工される被加工物などの他の例を示す斜視図である。
【図12】図12は、モデル情報を用いたNCプログラムの生成の流れを示すフローチャートである。
【図13】図13は、NCプログラム入力画面の変更後の他の表示例を示す図である。
【図14】図14は、NCプログラム入力画面の変更後の他の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる放電加工装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1−1は、本発明の実施の形態1にかかる放電加工装置の概略構成を示すブロック図である。放電加工装置は、定盤10、自動電極交換装置(ATC)(電極装着部)50、表示装置20、制御装置30を備える。放電加工装置は、自動電極交換装置50に装着された工具電極13−a〜dを用いて、定盤10に載置された被加工物11を形彫放電加工するものである。自動電極交換装置50は、複数備えられており、加工条件などに合わせて使用する工具電極13−a〜dを切り換えることができるようになっている。
【0014】
図1−2は、放電加工装置が備える表示装置20と制御装置30とを詳細に説明するためのブロック図である。図1−2に示すように、制御装置30は、NCプログラム生成手段(生成部)1、NCプログラム保存手段2、プログラム運転手段3、芯ずれ情報保存手段4、再利用条件保存手段(再利用条件記憶部)5、電極利用情報保存手段6、電極利用情報データ7、モデル情報記憶手段8、電極番号変更手段9を備える。
【0015】
また、表示装置20の表示画面には、NCプログラム入力画面21、NCプログラム表示画面22、再利用電極配置画面23、再利用電極呼出画面24、電極再利用登録画面25、再利用条件登録画面26が表示可能となっている。
【0016】
なお、表示装置20は、1の表示画面に複数の各画面21〜26を表示させるように構成されてもよいし、複数の表示画面を備えて別々に各画面21〜26を表示させるように構成されてもよい。以下に、制御装置30の動作と各画面21〜26の表示とについて説明する。
【0017】
NCプログラム入力画面21(図3も参照)は、形彫放電加工用のプログラム情報を入力する際に表示される画面である。NCプログラム生成手段1は、入力されたプログラム情報などに基づいてNCプログラム(加工プログラム)を生成する。NCプログラム保存手段2は、生成されたNCプログラムを保存する。NCプログラム表示画面22は、保存されたNCプログラムの内容を確認するために表示される画面である。プログラム運転手段3は、NCプログラムを運転して放電加工装置を動作させる。
【0018】
芯ずれ情報保存手段4は、自動電極交換装置50に装着される工具電極13−a〜dの芯ずれ情報を保存する。NCプログラム入力画面21からは、再利用電極配置画面23(図7も参照)を呼び出して、どの加工位置で工具電極を再利用するかを確認することができる。
【0019】
再利用電極呼出画面24(図8も参照)を呼び出すことで、再利用のために加工位置に配置される工具電極13−a〜dをユーザに選択させることができる。電極再利用登録画面25(図4も参照)では、再利用する電極をプログラム作成前にあらかじめ登録できる。再利用電極呼出画面24で呼び出されて表示される工具電極は、電極再利用登録画面25で登録された工具電極である。
【0020】
再利用可能な工具電極であるが否かを判断する条件(再利用条件)は、再利用条件登録画面26(図6も参照)で設定される。再利用条件登録画面26に表示される情報には、再利用条件保存手段5に保存される複数の再利用条件の選択枝が含まれる。本実施の形態では、再利用条件として、工具電極13−a〜dの形彫放電加工への最大使用回数(上限値)、工具電極13−a〜dが形彫放電加工を行う最大使用時間(加工時間)、工具電極13−a〜dが形彫放電加工を行った際の電気条件、工具電極13−a〜dの揺動縮小代が保存されている。
【0021】
電極再利用登録画面25に表示される情報には、再利用条件登録画面26で登録された内容が含まれる。また、以前にその工具電極が使用されていた場合にはその電極利用情報データ7も含まれる。電極利用情報データ7は、電極利用情報保存手段6に保存されている。
【0022】
電極利用情報データ7には、工具電極13-a〜dが被加工物11の形彫放電加工に使用された使用回数や、被加工物11に形彫放電加工を行った累積加工時間や、被加工物11に形彫放電加工を行った際の電気条件が記憶されている。すなわち、電極利用情報保存手段6は、回数履歴記憶部や、加工時間履歴記憶部や、電気条件履歴記憶部として機能する。
【0023】
なお、電極再利用登録画面25に表示される情報には、電極利用情報保存手段6から与えられる他の情報も含まれる。また、モデル情報記憶手段8から与えられる工具電極13-a〜dの形状モデル情報や加工ワークの形状モデル情報が含まれる場合もある。
【0024】
また、電極番号変更手段9は、放電加工装置の運用に際して、使用される工具電極13-a〜dの累積使用時間などを加工運転中に判断する。また、電極番号変更手段9は、その判断結果に応じて、電極番号を加工運転中に変更して、使用する工具電極を変更する。
【0025】
上述したように、本実施の形態1にかかる放電加工装置では、NCプログラム入力画面21やNCプログラム表示画面22でNCプログラムを確認し、電極再利用登録画面25で、使用電極に関する情報を入力する。また、再利用条件登録画面26で、実際の形彫放電加工で工具電極を再利用するための条件である再利用条件を設定する。
【0026】
そして、再利用電極配置画面23では、実際の形彫放電加工で工具電極を再利用する加工箇所(範囲)を設定する。さらに、再利用電極呼出画面24では、再利用条件登録画面26で入力された再利用条件を満たす工具電極が表示され、表示された工具電極をユーザが確認した上で、NCプログラム生成手段1によって自動的に配置展開させることができる。ユーザが確認してから配置展開させることで、誤設定などの問題が発生するのを抑制することができる。
【0027】
各画面21〜26での情報の入力(設定)は、表示装置20がタッチパネル式のものであれば表示画面に触れて入力することもできるし、別個に設けられたキーボードなどの入力装置(図示せず)などを用いて入力することもできる。すなわち、表示装置20や入力装置が、再利用条件などを設定する設定部として機能する。なお、設定部は、情報を入力することができる機能を備えていればよく、上述したものに限られない。
【0028】
図2は、放電加工装置で加工される被加工物などを示す斜視図である。操作の事例として、図2に示される加工について以下に説明する。放電加工装置上の定盤10上に被加工物11が固定される。被加工物11には、加工位置12−a〜eの5箇所で同一形状の加工を行う。その加工には、工具電極13−a〜dの4本を使用する場合を想定する。
【0029】
仮に、工具電極13−aが荒加工用、13−bが中仕上用、13−cが仕上用の工具電極として準備されている状況とする。また、工具電極13−a〜dは加工に使用される前に芯ずれ測定が行われており、芯ずれ保存手段4にその情報が登録されているものとする。
【0030】
図3は、NCプログラム入力画面21の表示例を示す図である。NCプログラム入力画面21では、例えば図3に示すような情報が表示される。NCプログラム入力画面21では、加工位置12−a〜eの5箇所の加工位置を示す開始位置座標X,Y,Zと、どの位置まで加工するかを示す加工深さX,Y,Zが表示される。また、NCプログラム入力画面21では、加工に使用される加工条件の番号E、加工に使用される揺動パターン番号Dが表示される。
【0031】
なお、シーケンス番号1で設定されている位置が加工位置12−a、シーケンス番号2で設定されている位置が加工位置12−b、シーケンス番号3で設定されている位置が加工位置12−c、シーケンス番号4で設定されている位置が加工位置12−d、シーケンス番号5で設定されている位置が加工位置12−eである。
【0032】
また、NCプログラム入力画面21では、荒加工に使用される電極を示す1本目電極T1、中仕上加工に使用される電極を示す2本目電極T2、仕上加工に使用される3本目電極T3、およびそれぞれの揺動縮小代R1〜R3が表示される。
【0033】
なお、図3に示すNCプログラム入力画面21において、加工位置12−a(シーケンス番号1)に使用する工具電極の登録番号や加工位置情報は設定されているが、加工位置12−b〜eの4箇所に関しては、加工位置情報は設定されているが、工具電極の登録番号が未設定となっている。なお、工具電極の登録番号とは、後述するATC番号のことである(図4も参照)。この状態から、加工位置12−b〜eに対し、工具電極13−aが荒加工用の電極として再利用可能かどうかを判断し、NCプログラムが編集される作業について以下に説明する。
【0034】
図4は、電極再利用登録画面25の表示例を示す図である。ユーザは図4に示される電極再利用登録画面25に、工具電極13−a〜dの再利用情報を登録する作業を行う。電極再利用登録画面25には、工具電極13−a〜dが装着される自動電極交換装置50を示すATC番号が入力された欄が設けられる。また、電極再利用登録画面25には、自動電極交換装置50に装着される工具電極をユーザが識別するためのコメント欄が設けられる。
【0035】
また、電極再利用登録画面25には、自動電極交換装置50に装着される工具電極13−a〜dの現在までの使用状況を示す仕様状態欄が設けられる。また、電極再利用登録画面25には、自動電極交換装置50に装着される工具電極13−a〜dの再利用条件が登録されているか否かを示す条件登録欄が設けられる。また、電極再利用登録画面25には、自動電極交換装置50に装着される工具電極13−a〜dの形状情報を登録するモデル登録欄、および、この情報がいつ登録されたかを示す登録日欄などが設けられる。
【0036】
なお、ATC番号13の自動電極交換装置50には工具電極13−aを装着するものとし、ATC番号14の自動電極交換装置50には工具電極13−bを装着するものとし、ATC番号15の自動電極交換装置50には工具電極13−cを装着するものとし、ATC番号16の自動電極交換装置50には工具電極13−dを装着するものとする。
【0037】
例えば、ユーザはATC番号「13」のコメント欄に、そこに装着する工具電極13−aを識別するための名称を記載する。ここでは仮に「FOR−ROUGH1」と登録したとする。そして、この工具電極13−aがどのような条件で再利用されるかを設定するために、再利用条件の登録を行う。図5は、再利用条件の登録の流れを示すフローチャートである。再利用条件の登録作業の流れは、図5に示すフローのように行われる。
【0038】
すなわち、工具電極を装着する自動電極交換装置50のATC番号を指定し(ステップS1)、再利用情報を新規登録する場合には(ステップS2,Yes)、工具電極を識別するためのコメントを登録する(ステップS3)。そして、再利用条件を設定し(ステップS4)、モデル情報を使用する場合には(ステップS5,Yes)、工具電極の形状の三次元データ(三次元形状)を登録する(ステップS6)。
【0039】
なお、再利用情報を新規登録しない場合には(ステップS2,No)、既存の電極情報データを呼び出してこれを利用する(ステップS7)。また、モデルデータを使用しない場合には(ステップS5,No)、三次元データの登録を行わずに再利用条件の登録が終了する。
【0040】
図6は、再利用条件登録画面26の一例を示す図である。上記ステップS4に示す再利用条件の設定は、再利用条件登録画面26への情報入力によって行われる。再利用条件登録画面26では、複数の再利用条件の中から任意の再利用条件を選択して設定することができる。
【0041】
例えば、設定欄26aでは、工具電極13−a〜dの再利用を許可する条件として、対象となる工具電極13−a〜dを最大何回まで再利用を許可するか(最大使用回数)を設定することができる。また、設定欄26bでは、累積使用時間が何時間になるまで対象の工具電極13−a〜dの再利用を許可するか(最大使用時間)を設定することができる。なお、累積使用時間とは、対象の工具電極13−a〜dが加工に使用された時間を累積したものである。ここで設定される累積時間は、ユーザの経験則等に基づいた設定をユーザが自ら設定するものとし、複数回の電極再利用に対しても時間を累積していくものとする。
【0042】
また、設定欄26cでは、過去に使用された加工条件を再利用条件とすることができる。ここでは、対象の工具電極13−a〜dの再利用の基準となる規定の電気条件を設定することができる。加工に使用する電流値Ipとその電流が1発の放電で使用される継続時間ONの組み合わせ時間が大きい場合は電極の消耗が大きくなるとし、再利用される加工におけるIpとONの組み合わせより大きな電気条件で使用された電極は再利用できないものとする。例えば、再利用される電極が使用する電気条件がIp1.5、ON4.0という設定である場合、それより大きな条件であるIp2.5やON5.0のような電気条件で使用された電極は、再利用不可であるとする。
【0043】
また、設定欄26dでは、減寸量より規定される揺動縮小代を再利用条件とすることができる。ここでは、対象の工具電極13−a〜dの再利用の基準となる揺動縮小代を設定することができる。
【0044】
ユーザは、上述した複数の再利用条件の中から任意の再利用条件について設定できるとともに、選択欄26eにチェックを入れることで、再利用条件として実際に適用されるものを選択することができる。
【0045】
また、ユーザは、1の選択欄26eにチェックを入れてもよいし、複数の選択欄26eにチェックを入れて、再利用条件を組み合わせて適用してもよい。したがって、図3では、工具電極13−a〜dの使用回数と、揺動縮小代を基準に再利用の可否が判断されるようにした場合を例示していることとなる。
【0046】
なお、複数の再利用条件が選択されている場合、選択された再利用条件を同時に満たすことが可能であるかが再利用条件保存手段5によって判断される。そして、選択された再利用条件が、同時に満たすことが不可能な組み合わせである場合には、表示装置20の表示画面にメッセージなどを表示して、選択した再利用条件を同時に満たすことが不可能であることをユーザ伝え、再設定を促す。
【0047】
また、ステップS6における工具電極の形状の三次元データを登録する場合には、例えば再利用条件登録画面26にモデル登録欄(図示せず)を設け、モデル情報記憶手段8に登録されている工具電極の形状や加工対象ワークの形状を示す3次元の形状データを使用することによって登録できるように構成してもよい。
【0048】
上記のように工具電極13−a〜dの登録番号、ユーザが識別するためのコメント、再利用条件の登録、モデル情報の登録などがなされている状況において、加工位置12−b〜eに対して、登録された工具電極13−a〜dが再利用可能かどうかを制御装置30のNCプログラム生成手段1が判断し、NCプログラムを生成する。
【0049】
図3に示す状態までNCプログラム情報が入力されている場合、NCプログラム入力画面21から、再利用電極配置画面23が呼び出される。再利用電極配置画面23の呼び出しは、ユーザの操作によって行われてもよいし、NCプログラム入力画面21に所定の情報が入力された際に自動的に行われてもよい。
【0050】
図7は、再利用電極配置画面23の表示例を示す図である。再利用電極配置画面23は、NCプログラム入力画面21上で1本目電極T1〜3本目電極T3のいずれの位置に再利用電極を配置するかの概要を設定する割振対象設定欄と、いずれの加工位置12−a〜12−eの加工に再利用電極を用いるかの設定範囲を指定する割振範囲設定欄を備えている。
【0051】
ここで指定される割振対象とは、荒加工へ再利用電極の配置を設定するような具体的な指定だけでなく、再利用条件さえ問題なければ荒加工、中仕上加工、仕上加工のいずれにでも再利用できるようなあいまいな指定も可能であるものとする。
【0052】
また、再利用電極配置画面23は、モデル情報記憶手段8で保存されている3次元形状のデータから割振範囲を自動的に認識する方法と、割振範囲設定欄への直接入力で再利用電極の設定範囲をユーザに指定させる方法などの複数の再利用電極の設定範囲指定方法を備えているものとする。割振範囲を自動的に認識する場合には、工具電極13−a〜dの三次元形状のデータと、被加工物11の加工位置12−a〜eでの加工形状とをプログラム生成手段が認識し、その加工形状に適切な工具電極13−a〜dで加工を行うよう割振範囲が設定される。再利用電極として加工位置に配置する工具電極の再利用条件などの情報(例えば、再利用条件登録画面26)は、この再利用電極配置画面23から呼び出しが可能であるものとする。
【0053】
図8は、再利用電極呼出画面24の表示例を示す図である。再利用条件登録画面26で登録された内容を満たす電極の登録情報が存在する場合、再利用電極配置画面23から再利用電極呼出画面24を呼び出すことができる。例えば、再利用条件登録画面26で登録された内容を満たす電極の登録情報が存在する場合にのみ、再利用条件登録画面26上に呼出ボタンが表示されて、その呼出ボタンを選択することで、再利用電極呼出画面24を呼び出すことができるように構成してもよい。
【0054】
再利用電極呼出画面24は、電極再利用登録画面25で登録されている工具電極の登録番号やコメントを表示するだけでなく、これまでにその電極が何回使用されたかを示す使用回数欄やこれまでにその電極がどれだけの時間使用されていたかを示す累積時間欄、ユーザが使用を予定していた縮小代を表示する縮小代欄などを表示する機能を備えている。なお、再利用電極呼出画面24で表示される情報は、電極利用情報保存手段6に保存されている。
【0055】
また、再利用条件登録画面26に登録された再利用条件を満たす工具電極が複数存在する場合、再利用電極呼出画面24には条件を満たした全ての電極の登録情報を表示することができるほか、表示数が多い場合には、指定した使用回数以下の電極や、指定した使用時間以下の電極、指定した電気条件以下で使用されていた電極や、指定縮小代で登録している電極などの各種条件をもとに表示条件の絞込み検索を行い、その複数の表示条件を満たした電極のみ画面上に表示することも可能とする。
【0056】
再利用電極呼出画面24で表示条件を満たされる工具電極が存在する場合、ユーザは再利用電極の選択が可能となる。ここで仮にATC番号「13」,コメント「FOR−ROUGH1」の工具電極が再利用条件登録画面26で登録された再利用可能条件を満たしている場合、すなわち再利用電極呼出画面24の表示条件を満たしている場合、電極登録番号「13」の電極を、NCプログラム入力画面21に入力されたNCプログラム情報上に配置展開される。
【0057】
配置展開の方法は、再利用電極配置画面23で設定した割振範囲設定欄の入力範囲に範囲内にNCプログラム生成手段1によって自動的に配置される。なお、ユーザが手動で任意に配置できるようにして、ユーザが自動配置と手動配置を選択することができるように構成してもよい。
【0058】
また、再利用電極呼出画面24の表示条件設定欄24aにユーザがチェックを入れることで、再利用条件登録画面26で入力された再利用条件からさらに絞り込んで工具電極を表示させることもできる。図26では、表示条件設定欄24aのうち「残回数指定」が選択されており、再利用条件を満たすともに、残回数の条件も満たす工具電極が再利用電極呼出画面24に表示されていることとなる。なお、「残回数」は、工具電極があと何回再利用可能であるかを示す回数である。例えば再利用回数が10回に設定された工具電極が、すでに5回使用されていれば、残回数は5回となる。このように、再利用される工具電極にさらに絞込みをかけてからNCプログラムを生成させることもできる。
【0059】
以下に、範囲内の複数箇所を選択するものとし、再利用電極配置画面23で設定した割振範囲が加工位置12−b〜eの4箇所に相当する範囲が設定されているものとして、自動的に配置展開された例を説明する。
【0060】
図9は、NCプログラム入力画面21の変更後の表示例を示す図である。再利用条件登録画面26で登録されたATC番号「13」の再利用可能回数が4回以上あれば、1本目電極T1として加工位置12−b〜eまでの4ヶ所で電極の再利用が可能であるため、再利用電極呼出画面24の操作により、図9に示すようにNCプログラム入力画面21の入力内容が変更される。
【0061】
NCプログラム入力画面21の表示内容は、電極の登録番号の他に何らかの記号や文字の色調を変えることで、再利用を意味する電極だとユーザに認識できるようにする。なお、本実施の形態では、星型の記号を付している。
【0062】
なお、NCプログラム生成手段1による工具電極13−a〜dの再利用回数の判断には種々の方法がある。例えば、再利用電極呼出画面で、工具電極13−a〜dの累積使用回数が指定されていれば、最大使用回数と累積使用回数との差が工具電極13−a〜dの再利用回数となる。
【0063】
また、再利用電極呼出画面で、工具電極13−a〜dの累積使用時間が指定されていれば、最大使用時間と累積使用時間との差を、次の形彫放電加工で1回にかかる時間で割ることで、再利用回数が算出される。
【0064】
図10は、NCプログラム入力画面21の変更後の他の表示例を示す図である。例えば、ATC番号「13」の再利用可能回数が加工位置12−b〜eの配置回数分である4回に満たない場合は、図10に示すように再利用が可能な回数だけNCプログラム入力画面21上に工具電極のATC番号が配置される。
【0065】
また、再利用可能な工具電極の配置のタイミングで、あらかじめ芯ずれ情報保存手段4に登録されている情報がNCプログラムに付与される。通常、一度使用された工具電極は加工に伴う消耗により形状崩れが発生しているため、電極の再利用時に芯ずれを再測定することが困難である。
【0066】
もし、仮に事前に芯ずれ情報を制御装置上の使用電極と対比させて記憶する手段を制御装置が持ち合わせていたとしても、ATC番号が以前対象の工具電極を使用したATC番号から変更されていたり、ATC番号を別の工具電極の登録番号で上書きしたりしてしまうと、情報が損失する。
【0067】
そのため、工具電極個別の情報として芯ずれ保存手段4および電極利用情報保存手段6に過去の使用履歴を含めて芯ずれ情報を保存しておくことで、電極再利用時であっても以前測定した芯ずれ情報を使用できるようになる。このような処理を経て再利用電極番号を制御装置の管理情報からNCプログラム上に配置することで、そのNCプログラムを使用し、再利用電極の使用効率を高めることができる。
【0068】
図11は、放電加工装置で加工される被加工物などの他の例を示す斜視図である。図11に示す被加工物14は、加工位置15−a〜eの加工形状が全て同一ではない。より具体的には、加工位置15−a〜cの加工形状が同一形状であり、工具電極16−a,bおよび工具電極17がその加工に使用される。
【0069】
また、加工位置15−d,eの加工形状が同一形状であり、工具電極18がその加工に使用される。なお、図4に示す電極再利用登録画面25において、ATC番号13に工具電極16−aを装着させ、ATC番号14に工具電極16−bを装着させ、ATC番号15に工具電極17を装着させ、ATC番号16に工具電極18を装着させるように登録するものとする。
【0070】
また、工具電極16−a,bの揺動縮小代が0.15mm、工具電極17の揺動縮小代が0.1mmとなっており、それに応じて工具電極16−a,bと工具電極17の形状(寸法)が異なっている。さらに、加工後の加工形状が模擬する被加工物14の3次元データ、工具電極16−a,b、工具電極17、工具電極18の3次元データが準備されているものとする。
【0071】
NCプログラム入力画面21で入力される初期NCプログラム情報は図3と同じであるが、電極再利用登録画面25にてモデル情報が登録されている場合は、図12に示すように、モデル情報を使用した電極配置作業が可能となる。
【0072】
すなわち、NCプログラムの作成または既存NCプログラムを呼び出してNCプログラム入力画面21を表示させ(ステップS21)、再利用する電極利用箇所を再利用電極配置画面23で選択する(ステップS22)。さらに、モデル情報を使用する場合には(ステップS23,Yes)、再利用電極を配置可能な加工位置を選択する(ステップS24)。そして、再利用電極を選択し(ステップS25)、NCプログラムに割り振ることで(ステップS26)、NCプログラム生成手段1によってNCプログラムが生成される(ステップS27)。
【0073】
一方、モデル情報を使用せずに登録済みの工具電極を使用する場合には(ステップS23,No)、再利用条件を絞り込んで表示させ(ステップS28)、ステップS25へと移行する。
【0074】
この場合、過去の使用回数や累積時間などの再利用電極の登録情報だけでなく、モデル情報を使用して対象となる加工位置を制御装置が認識できるようになるため、再利用電極の加工位置配置はユーザが判断することなく行えるようになる。具体的には、図13に示すように、工具電極16−a(ATC番号13)を加工位置15−a〜cの荒加工、工具電極16−b(ATC番号14)を加工位置15−a〜cの中仕上加工に電極再利用配置を行う。
【0075】
また、縮小代情報が工具電極16−a,bとは異なり、再利用条件の登録がされていない(未設定)である工具電極17(ATC番号15)は再利用設定がされない。なお、再利用条件を満たさない場合にも再利用設定はされない。
【0076】
また、3次元形状情報より算出される最適加工位置の情報から、加工位置15−a〜cとは加工形状が異なる加工位置15−d,eには工具電極16−a,bは再利用されず、工具電極18が使用されるNCプログラム生成が、自動的に行われることとなる。このように再利用電極の情報に3次元の形状モデル情報をさらに付与することで、NCプログラム上の電極配置設定をユーザの判断で行わないようにできるため、NCプログラム作成時にユーザのヒューマンエラーによる設定ミスを排除することができる。
【0077】
次に、再利用条件登録画面26について詳細を述べる(図6も参照)。電極の再利用条件として再利用回数を指定する場合は、電極の使用回数により再利用できるか否かを判断するため、前記したNCプログラム作成段階において再利用する電極をプログラム上に指定できる。一方、累積使用時間や電気条件の大きさで再利用できるか否かを判断する場合は、NCプログラムの運転中に工具電極が使用された時間や使用される電気条件などの電極使用状況が変化していくため、運転前にNCプログラムの登録情報を単純に変更するだけでは対応することが難しい。そこで、電極番号変更手段9が必要となる。
【0078】
電極番号変更手段9は、NCプログラムの運転中に再利用条件登録画面26で登録されている電極再利用条件を使用中の工具電極が満たさなくなった場合、運転中のNCプログラムを読み替えて、使用する工具電極を置き換えるためのものである。
【0079】
例えば、図2に示される加工について再び考えた場合、定盤10上に固定された被加工物11に、加工位置12−a〜eの5箇所の同一形状加工を行い、その加工に工具電極13−a〜dの4本を使用する場合を想定する。
【0080】
工具電極13−aが荒加工用、13−bが中仕上用、13−cが仕上用の工具電極として準備されている状況とする。工具電極13−aを使用して加工位置12−a〜eの荒加工を順番に行っていく途中、例えば工具電極13−aを使用して加工位置12−bの荒加工を行っている最中に電極の使用時間が再利用条件登録画面26で登録されている累積使用時間の指定時間を超えた場合、電極番号変更手段9は使用する工具電極を置き換える。
【0081】
より具体的には、電極番号変更手段9は、電極利用情報保存手段6に保存されている電極利用情報データ7を参照し、置き換え可能な電極が登録されている場合は、加工位置12−bの加工が終了した後の加工位置12−cの加工を行うときに、登録されている使用可能電極に使用電極を置き換える。例えば、図14に示すように、1本目電極で加工する加工位置12c〜eに使用する電極をATC番号16に装着された電極とする変更が行われる。
【0082】
また、この使用する電極が変わることに伴い、電極番号変更手段9は芯ずれ情報保存手段4から変更された電極に対する芯ずれ情報を読み出し、自動的に芯ずれ情報をNCプログラム上に付加し、運転を継続する。これらの変更の際、NCプログラムは図14に示すように矢印などの記号を付して書き換えられており、どのように電極番号が変更されたかをユーザが確認しやすくなっている。
【0083】
NCプログラムの運転中に電極が再利用条件を満たさなくなった場合には、加工条件を変更する場合もある。例えば、NCプログラムを使用した加工運転中にユーザが放電加工状態の確認を行い、加工条件の登録内容を変更した場合や、放電加工装置が持つ適応制御処理などにより加工条件が変更された場合がこれに相当する。その場合においても、前記したように加工中にATC番号を読み替えることで、本来再利用不可である電極が自動運転に伴いそのまま利用されてしまうユーザ設定ミスを避けることができる。
【0084】
また、本来使用可能であるはずだった電極が再利用されないというユーザの判断ミスを避けることができるため、ユーザが判断しながらプログラミングをするよりも、電極の再利用効率を高めることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明にかかる放電加工装置は、電極を再利用して被加工物を加工する放電加工装置に有用である。
【符号の説明】
【0086】
1 NCプログラム生成手段(生成部)
2 NCプログラム保存手段
3 プログラム運転手段
4 芯ずれ情報保存手段
5 再利用条件保存手段(再利用条件記憶部)
6 電極利用情報保存手段
7 電極利用情報データ
8 モデル情報記憶手段
9 電極番号変更手段
10 定盤
11 被加工物
12−a〜12−e 加工位置
13−a〜13−d 工具電極
15−a〜15e 加工位置
16−a〜b 工具電極
17 工具電極
18 工具電極
20 表示装置
21 NCプログラム入力画面
22 NCプログラム表示画面
23 再利用電極配置画面
24 再利用電極呼出画面
25 電極再利用登録画面
26 再利用条件登録画面(設定部)
26a〜26d 設定欄
26e 選択欄
30 制御装置
50 自動電極交換装置(電極装着部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を形彫放電加工するための電極が装着される複数の電極装着部と、
前記電極装着部に取り付けられる電極ごとの再利用条件として前記電極が前記被加工物の加工に使用される使用回数の上限値を記憶する再利用条件記憶部と、
前記再利用条件を設定する設定部と、
前記再利用条件に応じて前記電極を再利用して前記被加工物を加工させる加工プログラムを生成する生成部と、を備えることを特徴とする放電加工装置。
【請求項2】
前記電極が前記被加工物の加工に使用された使用回数を記憶する回数履歴記憶部をさらに備え、
前記生成部は、前記回数履歴記憶部に記憶された前記使用回数と前記上限値とから前記電極の再利用可能な回数を算出し、その算出結果に応じて前記加工プログラムを生成することを特徴とする請求項1に記載の放電加工装置。
【請求項3】
前記電極が前記被加工物に放電加工を行った累積加工時間を記憶する加工時間履歴記憶部をさらに備え、
前記生成部は、前記回数履歴記憶部に記憶された前記累積加工時間と前記上限値とから前記電極の再利用可能な回数を算出し、その算出結果に応じて前記加工プログラムを生成することを特徴とする請求項1に記載の放電加工装置。
【請求項4】
前記電極が前記被加工物に放電加工を行った際の電気条件を記憶する電気条件履歴記憶部をさらに備え、
前記生成部は、前記電気条件履歴記憶部に記憶された前記電気条件と前記上限値とから前記電極の再利用可能な回数を算出し、その算出結果に応じて前記加工プログラムを生成することを特徴とする請求項1に記載の放電加工装置。
【請求項5】
前記電極の三次元形状を記憶する形状記憶部をさらに備え、
前記生成部は、前記形状記憶部に記憶された三次元形状に基づいて、前記被加工物の加工形状に合わせた前記電極に加工させる加工プログラムを生成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放電加工装置。
【請求項6】
前記電極の芯ずれ情報を記憶する芯ずれ情報記憶部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の放電加工装置。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−176458(P2012−176458A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40620(P2011−40620)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】