説明

放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具

【課題】負荷電圧の変動に依らないでスイッチング損失を十分に低減することのできるタイミングでスイッチング素子をオンに切り替えることのできる放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具を提供する。
【解決手段】高圧放電灯DL1に供給する電力を調整する第2のコンバータ部3と、第2のコンバータ部3のスイッチング素子Q4(Q5)のオフ時に流れる電流のゼロクロスを検出するゼロクロス検出部45と、ゼロクロスを検出するとスイッチング素子Q4(Q5)をオンに切り替える駆動部43とを備え、ゼロクロス検出部45は、スイッチング素子Q4のオフ時の両端電圧を検出し、当該検出電圧VB1が閾値Vth1(Vth2)を超えると検出信号を出力する検出回路45Aと、遅延時間TD1を発生させる遅延回路45Bとを備え、駆動部43は、検出信号の出力時から遅延時間TD1が経過するとスイッチング素子Q4(Q5)をオンに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スイッチング回路の出力により放電灯を点灯させる放電灯点灯装置が知られており、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。以下、特許文献1に記載の放電灯点灯装置の回路構成について図13(a)を用いて説明する。
【0003】
この放電灯点灯装置は、図13(a)に示すように、直流電源100と、スイッチング回路101と、制御回路103とを備える。直流電源100は、例えば昇圧チョッパ回路よりなる直流安定化電源回路であり、商用交流電圧を安定した直流電圧VI1に変換して出力する。直流電源100の負出力端子は接地されており、正出力端子はスイッチング素子Q100の一端に接続されている。スイッチング素子Q100は、例えばパワーMOSFETよりなり、制御回路103の出力により高周波でオン/オフされる。スイッチング素子Q100の他端には、チョッパ用のインダクタL100の一端とダイオードD100のカソードが接続されている。インダクタL100の他端には、平滑用のコンデンサC100の正極が接続されている。ダイオードD100のアノードは、チョッパ電流検出用の低抵抗R100を介して直流電源100の負出力端子に接続されている。平滑用のコンデンサC100の両端には、負荷である放電灯102が接続されている。
【0004】
放電灯102は、例えば水銀灯やメタルハライドランプなどの高輝度高圧放電灯(HIDランプ)である。スイッチング素子Q100、ダイオードD100、インダクタL100よりなるスイッチング回路101は、入力直流電圧VI1を任意の負荷電圧VL1に降圧して出力する降圧チョッパ回路を構成している。負荷電圧VL1は、制御回路103により検出されており、その検出電圧に応じて最適な電力が放電灯102に供給されるように、スイッチング素子Q100のオン期間が制御される。
【0005】
制御回路103は、スイッチング素子Q100のオフ時電圧を監視し、オフ時電圧が略最小電圧となったことを検出する検出回路104と、検出回路104の検出信号を受けてスイッチング素子Q100をオンさせる駆動回路105とを備える。検出回路104は、ダイオードD100のカソードの電位VD1を検出することで、実質的にスイッチング素子Q1の両端電圧VQ1(=VI1−VD1)を監視している。
【0006】
図13(a)の回路動作を説明する。制御回路103内の駆動回路105によりスイッチング素子Q100がオンすると、スイッチング素子Q100→インダクタL100→コンデンサC100(及び放電灯102)→抵抗R100の経路を流れる電流が増加する。当該電流が増加すると、駆動回路105内の比較器(図示せず)は、+入力端子の検出電圧が−入力端子の基準電圧に達した時点で出力をオフし、これによりスイッチング素子Q100はオフする。
【0007】
スイッチング素子Q100がオフすると、スイッチング素子Q100→インダクタL100のルートに流れていた電流は、ダイオードD100→インダクタL100のルートに転流する。そして、スイッチング素子Q100がオンしている間にインダクタL100に蓄えたエネルギーの放出を終えた時点で、ダイオードD100はオフする。ダイオードD100がオフすると、コンデンサC100からインダクタL100を通じてダイオードD100の接合容量が充電されるため、ダイオードD100の逆方向電圧VD1が上昇する。当該電圧が比較基準値と等しくなると、検出回路104の出力がオンし、これにより駆動回路105はスイッチング素子Q100をオン駆動する。以下、このサイクルを繰り返すことによりスイッチング素子Q100はオン/オフし、負荷電力を安定制御する。
【0008】
ここで、制御回路103がスイッチング素子Q100の次のオンを指示しない時のダイオードD100の逆方向電圧VD1を図13(b)に示す。同図の期間Tonでは、スイッチング素子Q100を介してインダクタL100に電流が流れる。同図の期間Toffでは、ダイオードD100を介してインダクタL100のエネルギーが放出される。ダイオードD100に流れる電流が無くなり、スイッチング素子Q100、ダイオードD100が共にオフすると、スイッチング素子Q100、ダイオードD100の容量成分により、逆方向電圧VD1は振動しながら負荷電圧VL1へと収束する。
【0009】
振動電圧(逆方向電圧)VD1のピークは負荷電圧VL1に応じて増減し、例えば図13(b)に示すように、負荷電圧VL1が大きい時には振動電圧VD1のピークは高く、逆に負荷電圧VL1が小さい時には振動電圧VD1のピークは低くなる。ここで、比較基準値として同図に示す閾値V100を設定した場合、負荷電圧VL1が小さい時のスイッチング素子Q100のターンオンタイミングでは、スイッチング素子Q100のスイッチング損失は小さい。一方、負荷電圧VL1が大きい時のスイッチング素子Q100のターンオンタイミングでは、本来設定したいタイミングからずれることになり、その結果、スイッチング素子Q100のスイッチング損失は大きくなる。
【0010】
そこで、この特許文献1に記載の放電灯点灯装置では、検出回路104は、負荷電圧VL1が増大するにつれて比較基準値を高く設定する比較基準値設定手段を有している。すなわち、検出回路104は、図13(c)に示すように、負荷電圧VL1の増大に従って閾値V100を変更する。これにより、負荷電圧VL1が変動しても適切なターンオンタイミングを失することがなく、負荷電圧VL1が高い場合でも低い場合でもスイッチング損失を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−173022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上記従来例において、スイッチング損失を最も低減するためには、振動電圧VD1がそのピークにおいて検出回路104の比較基準値(閾値V100)に達する必要がある。そこで、閾値V100を振動電圧VD1のピーク付近に設定するのが望ましいが、負荷電圧VL1が変動すると振動電圧VD1が閾値V100を超えずに、スイッチング素子Q100をオンに切り替えることができない可能性があった。
【0013】
これを回避するためには、振動電圧VD1がそのピークに達する前に閾値V100を超えるように余裕を持って閾値V100を設定する必要があるが、この場合にはスイッチング損失を十分には低減することができない。すなわち、上記従来例のように負荷電圧VL1の変化に応じて閾値V100を可変する制御だけでは、スイッチング損失を十分に低減することのできるタイミングでスイッチング素子Q100をオンに切り替えることが困難であるという問題があった。
【0014】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、負荷電圧の変動に依らないでスイッチング損失を十分に低減することのできるタイミングでスイッチング素子をオンに切り替えることのできる放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の放電灯点灯装置は、直流電源と放電灯との間に接続されて前記放電灯に供給する電力を調整するスイッチング部と、前記スイッチング部を構成する逆導通型のスイッチング素子のオフ時に流れる電流のゼロクロスを検出するゼロクロス検出部と、前記ゼロクロス検出部でゼロクロスを検出すると前記スイッチング素子をオンに切り替える駆動部とを備え、前記ゼロクロス検出部は、前記スイッチング素子のオフ時の両端電圧を検出し、当該検出電圧が閾値を超えると検出信号を出力する検出回路と、所定の遅延時間を発生させる遅延回路とを備え、前記駆動部は、前記検出信号の出力された時点から前記遅延時間が経過すると前記スイッチング素子をオンに切り替えることを特徴とする。
【0016】
この放電灯点灯装置において、前記閾値は、前記検出電圧の振動の変曲点に設定され、前記所定時間は、前記閾値と前記検出電圧の振動の振動周期に基づいて設定されることが好ましい。
【0017】
この放電灯点灯装置において、前記放電灯に印加される負荷電圧を検出する負荷電圧検出部を備え、前記ゼロクロス検出部は、前記閾値又は前記所定時間の少なくとも何れか一方を前記負荷電圧に基づいて変化させることが好ましい。
【0018】
この放電灯点灯装置において、前記スイッチング部は、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子の直列回路と、第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子の直列回路とを並列に接続したフルブリッジ回路から成り、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子の接続点と、前記第3のスイッチング素子及び前記第4のスイッチング素子の接続点との間には、前記放電灯が装着されるソケットと、インダクタ及びコンデンサを少なくとも有する共振回路との直列回路が接続され、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子を所定の周波数で駆動し、前記第3のスイッチング素子及び前記第4のスイッチング素子を前記所定の周波数よりも高い周波数で駆動することで、前記直流電源の出力電圧を矩形波交流に変換することが好ましい。
【0019】
本発明の照明器具は、上記何れかの放電灯点灯装置と、前記放電灯点灯装置により点灯される前記放電灯が装着される器具本体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、負荷電圧の変動に依らないでスイッチング損失を十分に低減することのできるタイミングでスイッチング素子をオンに切り替えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態1を示す回路概略図である。
【図2】同上の放電灯点灯装置の動作を説明するための波形図である。
【図3】同上の放電灯点灯装置における検出電圧の振動を説明するための波形図である。
【図4】(a),(b)は同上の放電灯点灯装置においてチョーク電流のゼロクロス付近での各パラメータを示す波形図である。
【図5】(a),(b)はチョーク電流のゼロクロスの従来の検出方法を説明するための波形図である。
【図6】(a)〜(c)は同上の放電灯点灯装置において、正極性の期間におけるチョーク電流のゼロクロスの検出方法を説明するための図である。
【図7】(a)〜(c)は同上の放電灯点灯装置において、負極性の期間におけるチョーク電流のゼロクロスの検出方法を説明するための図である。
【図8】本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態2を示す回路概略図である。
【図9】(a)〜(c)は同上の放電灯点灯装置において、検出電圧が降下して振動する場合のチョーク電流のゼロクロスの検出方法を説明するための図である。
【図10】(a)〜(c)は同上の放電灯点灯装置において、検出電圧が上昇して振動する場合のチョーク電流のゼロクロスの検出方法を説明するための図である。
【図11】本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態3を示す回路概略図である。
【図12】(a)〜(c)は本発明に係る照明器具の実施形態を示す概略図である。
【図13】従来の放電灯点灯装置を示す図で、(a)は回路概略図で、(b)はスイッチング素子オフ時の振動電圧を説明するための波形図で、(c)は動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
以下、本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態1について図面を用いて説明する。本実施形態は、図1に示すように、整流部1と、第1のコンバータ部2と、第2のコンバータ部3と、制御部4とを備える。整流部1は、ダイオードブリッジから構成され、交流電源AC1から供給される交流電圧を全波整流して第1のコンバータ部2に出力する。
【0023】
第1のコンバータ部2は、例えばFETから成るスイッチング素子Q1と、チョークコイルCH1と、ダイオードD1と、平滑コンデンサC1とを有する所謂昇圧チョッパ回路である。第1のコンバータ部2は、整流部1から出力される脈流電圧を所定の直流電圧に昇圧して出力することで力率を改善する。そして、第1のコンバータ部2の平滑コンデンサC1の両端から入力電圧V1が出力される。すなわち、本実施形態では、整流部1と第1のコンバータ部2とで直流電源を構成している。
【0024】
第2のコンバータ部3は、例えばFETから成る4つのスイッチング素子Q2〜Q5と、チョークコイルCH2と、コンデンサC3とを有する所謂降圧チョッパ回路である。第2のコンバータ部3では、2つのスイッチング素子Q2,Q3の直列回路と、残り2つのスイッチング素子Q4,Q5の直列回路とが、第1のコンバータ部2の出力端間に並列に接続されることでフルブリッジ回路が構成されている。また、スイッチング素子Q2,Q3の接続点と、スイッチング素子Q4,Q5の接続点との間には、チョークコイルCH2とコンデンサC2との直列回路が接続されている。この第2のコンバータ部3がスイッチング部を構成し、4つのスイッチング素子Q2〜Q5が、それぞれ第1のスイッチング素子〜第4のスイッチング素子に相当する。なお、これらスイッチング素子Q2〜Q5は逆導通型のスイッチング素子であり、本実施形態では、各スイッチング素子Q2〜Q5の寄生ダイオードにより逆導通を実現している。
【0025】
更に、第2のコンバータ部3では、コンデンサC2と並列に、共振回路30と高圧放電灯DL1が装着されるソケット(図示せず)との直列回路が接続されている。共振回路30は、高圧放電灯DL1が装着されるソケットに直列に接続されるパルストランス(インダクタ)PT1を具備する。また、共振回路30は、パルストランスPT1のタップと第1のコンバータ部2の低電位側の出力端との間に挿入されたコンデンサC3及び抵抗R1とを具備している。
【0026】
制御部4は、マイコンを主構成要素として構成され、第2のコンバータ部2への入力電圧V1を検出する入力電圧検出部40と、入力電圧V1が所定の電圧レベルとなるようにスイッチング素子Q1をスイッチング制御する入力電圧制御部41とを備える。また、制御部4は、高圧放電灯DL1に印加される負荷電圧VL1を検出する検出機能と、負荷電圧VL1に基づいて高圧放電灯DL1の点灯・非点灯を判別する判別機能とを有する負荷状態検出部42を備える。この負荷状態検出部42が、負荷電圧検出部に相当する。更に、制御部4は、負荷電圧VL1が所定の電圧レベルとなるように第2のコンバータ部3の各スイッチング素子Q2〜Q5をスイッチング制御する駆動部43を備える。
【0027】
駆動部43は、負荷状態検出部42での判別結果を受けて第2のコンバータ部3の動作モードを切り替える切替機能と、スイッチング素子Q4,Q5の駆動周波数及びオン期間を決定する演算機能とを有する。切替機能は、第2のコンバータ部3から高圧放電灯DL1を始動させるための高電圧を出力させる始動モードと、第2のコンバータ部3から高圧放電灯DL1を安定して点灯させるための電圧を出力させる安定点灯モードとを切り替える機能である。また、演算機能は、安定点灯モードの時にスイッチング素子Q4,Q5をスイッチング制御する機能である。
【0028】
例えば、安定点灯モードにおいて、駆動部43は、スイッチング素子Q2,Q5をオン/オフさせる期間と、スイッチング素子Q3,Q4をオン/オフさせる期間とを所定の周波数(数百Hz程度)で交番させている。ここで、前者の期間ではスイッチング素子Q3,Q4はオフ状態であり、後者の期間ではスイッチング素子Q2,Q5がオフ状態である。そして、前者の期間では、駆動部43はスイッチング素子Q2をオフさせた状態でスイッチング素子Q5を所定の周波数(数十kHz程度)でオン/オフさせる。また、後者の期間では、駆動部43はスイッチング素子Q3をオフさせた状態でスイッチング素子Q4を所定の周波数(数十kHz程度)でオン/オフさせる。
【0029】
ここで、前者の期間では負荷電圧VL1は正電圧となり、後者の期間では負荷電圧VL1は負電圧となる(図2参照)。したがって、以下の説明では、前者の期間を「正極性の期間」、後者の期間を「負極性の期間」と呼ぶものとする。正極性の期間と負極性の期間とは、一定時間(例えば3ms)毎に交代する。
【0030】
更に、制御部4は、チョークコイルCH2を流れるチョーク電流IL2を検出する電流検出部44と、チョーク電流IL2のゼロクロスを検出するゼロクロス検出部45とを備える。ここで、チョーク電流IL2は、コンデンサC2によりリプル成分が取り除かれて高圧放電灯DL1を流れる負荷電流となる。このため、チョーク電流IL2を検出し、チョーク電流IL2が電流目標値となるように制御することで、負荷電流を適正に制御することができる。
【0031】
電流検出部44は、第1のインバータ部2の低電位側の出力端に接続される抵抗R2の両端電圧を検出することで、チョーク電流IL2を検出する。そして、電流検出部44は、チョーク電流IL2が増大して予め設定された電流目標値に達すると、オン状態にある何れかのスイッチング素子Q4,Q5をオフに切り替える指令コマンドを駆動部43に送信する。なお、電流検出部44は、正極性の期間の場合にはスイッチング素子Q5を、負極性の期間の場合にはスイッチング素子Q4をオフに切り替える指令コマンドを送信する。駆動部43では、当該指令コマンドを受信するとオン状態にある何れかのスイッチング素子Q4,Q5をオフに切り替える。これにより、チョーク電流IL2は減少し始める。
【0032】
ゼロクロス検出部45は、スイッチング素子Q4,Q5の接続点に発生する検出電圧(すなわち、スイッチング素子Q4のオフ時の両端電圧)VB1に基づいて、減少するチョーク電流IL2が零点を通過するゼロクロスを検出する。この減少するチョーク電流IL2のゼロクロスを検出することは、実質的にスイッチング素子Q4,Q5のオフ時に流れる電流のゼロクロスを検出することとなる。そして、ゼロクロス検出部45は、オフ状態にある何れかのスイッチング素子Q4,Q5(正極性の期間ではスイッチング素子Q5、負極性の期間ではスイッチング素子Q4)をオンに切り替える指令コマンドを駆動部43に送信する。駆動部43では、当該指令コマンドを受信するとオフ状態にある何れかのスイッチング素子Q4,Q5をオンに切り替える。これにより、チョーク電流IL2は再び増大し始める。上記の動作を繰り返すことで、チョーク電流IL2が電流目標値となるように制御され、結果として負荷電流を適正に制御することができる。
【0033】
以下、本実施形態の基本的な動作について図2を用いて説明する。なお、図2は高圧放電灯DL1が非点灯状態から安定した点灯状態に至るまでの各部の波形図を示している。先ず、高圧放電灯DL1が非点灯状態のときに、図示しない点灯スイッチが投入されて電源がオンになると、制御部4の入力電圧制御部41が制御動作を開始し、スイッチング素子Q1を数十kHz程度でオン/オフさせるスイッチング制御を行う。これにより、第1のコンバータ部2からは、高圧放電灯DL1の非点灯時及び点灯時の何れにおいても、電源電圧を昇圧した直流電圧(入力電圧V1)が出力される。ここで、第1のコンバータ部2は、入力力率を高めることで入力電流歪みを抑制している。
【0034】
入力電圧V1が所定の電圧値に達すると、制御部4の駆動部43が動作を開始する。この時点では、まだ高圧放電灯DL1は点灯しておらず、その等価インピーダンスは無限大に近い高インピーダンスとなっている。また、駆動部43の動作モードは始動モードとなっている。駆動部43は、スイッチング素子Q2,Q5がオンの期間と、スイッチング素子Q3,Q4がオンの期間とを所定の周波数f0(数百kHz程度)で交番させる。ここで、当該周波数f0は共振回路30の共振周波数に近い周波数であり、正弦波状の高電圧がパルストランスPT1の1次巻線N1に発生する。1次巻線N1で発生した高電圧は、1次巻線N1と2次巻線N2との巻数比に基づいて昇圧され、昇圧された電圧がコンデンサC2を介して高圧放電灯DL1に印加される。これにより、高圧放電灯DL1が絶縁破壊されて始動する。このとき、高圧放電灯DL1は短絡に近い低インピーダンスとなるため、負荷電圧VL1は略0Vまで低下する。
【0035】
一方、負荷状態検出部42では、負荷電圧VL1が所定の閾値を超えるか否かに基づいて高圧放電灯DL1の点灯・非点灯を判別している。すなわち、負荷電圧VL1が所定の閾値を上回っている場合には、負荷状態検出部42は高圧放電灯DL1が非点灯状態にあると判別し、その出力電圧はハイレベルとなる。一方、負荷電圧VL1が所定の閾値を下回っている場合には、負荷状態検出部42は高圧放電灯DL1が点灯状態にあると判別し、その出力電圧はローレベルとなる。
【0036】
ここで、高圧放電灯DL1の始動により、上記のように負荷電圧VL1が略0Vまで低下することで所定の閾値を下回るので、負荷状態検出部42は高圧放電灯DL1が点灯したと判別し、その出力電圧がローレベルとなって駆動部43に入力される。このローレベルの電圧信号を受けて、駆動部43では動作モードを始動モードから安定点灯モードに切り替える。
【0037】
安定点灯モードにおいては、既に述べたように、駆動部43は、スイッチング素子Q2,Q5をオン/オフさせる期間と、スイッチング素子Q3,Q4をオン/オフさせる期間とを所定の周波数f1(数百Hz程度)で交番させる。したがって、高圧放電灯DL1には周波数f1の矩形波交流電圧が印加される。そして、高圧放電灯DL1は、始動直後では負荷電圧VL1が低いが、放電灯内部が高温・高圧になるにつれて負荷電圧VL1が上昇して定格電圧に至り、安定した点灯状態となる。なお、駆動部43では、前述のように高圧放電灯DL1に適正な負荷電流が流れるようにスイッチング素子Q4,Q5の駆動周波数及びオン期間を制御する。このため、高圧放電灯DL1に適正な電力が供給され、安定した点灯状態が持続される。
【0038】
ところで、チョーク電流IL2の制御方式としては、電流連続モードと、電流臨界モードとが一般的に知られている。電流連続モードは、チョーク電流IL2がゼロとならないようにスイッチング制御する制御方式であり、電流臨界モードは、チョーク電流IL2がゼロとなるタイミングでスイッチング素子をオンに切り替えるようにスイッチング制御する制御方式である。高圧放電灯DL1の安定点灯時においては、スイッチング損失が小さい電流臨界モードでチョーク電流IL2を制御することが一般的であり、本実施形態においても、チョーク電流IL2を電流臨界モードで制御する。
【0039】
以下、電流臨界モードにおける検出電圧VB1及びチョーク電流IL2の振る舞いについて図面を用いて説明する。正極性の期間では、スイッチング素子Q5がオンに切り替わると、コンデンサC1→スイッチング素子Q2→コンデンサC2→チョークコイルCH2→スイッチング素子Q5→コンデンサC1のループで電流が流れる。これにより、チョークコイルCH2にエネルギーが蓄積される。その後、スイッチング素子Q5がオフに切り替わると、チョークコイルCH2に蓄積されたエネルギーが放出される。これにより、チョークコイルCH2→スイッチング素子Q4(寄生ダイオード)→スイッチング素子Q2→コンデンサC2→チョークコイルCH2のループで電流が流れる。
【0040】
負極性の期間では、スイッチング素子Q4がオンに切り替わると、コンデンサC1→スイッチング素子Q4→チョークコイルCH2→コンデンサC2→スイッチング素子Q3→コンデンサC1のループで電流が流れる。これにより、チョークコイルCH2にエネルギーが蓄積される。その後、スイッチング素子Q4がオフに切り替わると、チョークコイルCH2に蓄積されたエネルギーが放出される。これにより、チョークコイルCH2→コンデンサC2→スイッチング素子Q3→スイッチング素子Q5(寄生ダイオード)→チョークコイルCH2のループで電流が流れる。
【0041】
そして、チョークコイルCH2に蓄積されたエネルギーが放出されると、チョークコイルCH2のインダクタンスL2と、スイッチング素子Q4,Q5各々に寄生するドレイン−ソース間の寄生容量CQ4,CQ5とで決定される周波数で自由振動が発生する。したがって、チョークコイルCH2の両端に印加されるチョーク電圧VL2は振動し、また、チョーク電流IL2もゼロ付近で振動する(図3参照)。
【0042】
このとき、スイッチング素子Q4,Q5の接続点で発生する検出電圧VB1も振動し、その振幅は時間の経過に伴って徐々に減衰していく。この検出電圧VB1の1回目の振動における振幅は、負荷電圧VL1の約2倍に相当する。例えば、負荷電圧VL1が82Vの場合には、検出電圧VB1の1回目の振動における振幅は約164Vとなる(図4(a)参照)。一方、例えば負荷電圧VL1が24Vの場合には、検出電圧VB1の1回目の振動における振幅は約48Vと小さくなる(図4(b)参照)。なお、電流臨界モードで制御する際には、高圧放電灯DL1は安定点灯状態であるため、負荷電圧VL1はほぼ一定電圧となっている。
【0043】
ここで、電流臨界モードにおいて、スイッチング素子Q4,Q5のスイッチング損失が最も小さくなるタイミングは、スイッチング素子Q4,Q5を流れる電流(換言すれば、チョーク電流IL2)がゼロとなる時である。そして、チョーク電流IL2がゼロとなるタイミングは、検出電圧VB1の振動成分がピーク(正極性の期間では極小値、負極性の期間では極大値)に達する時に等しい。したがって、従来では、図5(a)に示すように、検出電圧VB1のピーク付近を閾値Vth0として設定し、検出電圧VB1が閾値Vth0を超えるとチョーク電流IL2がゼロクロスしたものとして判定していた。
【0044】
但し、閾値Vth0を一定値に設定すると、図5(b)に示すように、負荷電圧VL1が変化した場合には、検出電圧VB1がピークに達する前に閾値Vth0を超えてしまい、チョーク電流IL2のゼロクロスを検出するタイミングがずれてしまう。そこで、既に述べたように、特許文献1に記載の従来例では、負荷電圧VL1の変化に伴って閾値Vth0を変化させることで上記の問題を解決していた。
【0045】
しかしながら、既に述べたように、負荷電圧VL1のピーク付近に閾値Vth0を設定した場合には、負荷電圧VL1の変動によって検出電圧VB1が閾値Vth0を超えず、スイッチング素子をオンに切り替えることができない可能性があった。このようにスイッチング素子をオンに切り替えることができない場合には、スイッチング制御が行われずに高圧放電灯DL1が消灯してしまう虞がある。これを回避するためには、検出電圧VB1がそのピークに達する前に閾値Vth0を超えるように余裕を持って閾値Vth0を設定する必要があり、この場合にはスイッチング損失を十分には低減することができない。
【0046】
ところで、検出電圧VB1の周期T1は、チョークコイルCH2のインダクタンスL2、及びスイッチング素子Q4,Q5各々に寄生するドレイン−ソース間の寄生容量CQ4,CQ5を用いて次式で表される。
【0047】
T1=2π√{L2・(CQ4+CQ5)}
すなわち、検出電圧VB1について、その振幅は負荷電圧VL1に依存するものの、その振動周期T1は負荷電圧VL1に依存しない。ここで、検出電圧VB1が変曲点を通過した時点からピークに達する時点までの時間TD1は、次式で表される。
【0048】
TD1=T1/4
したがって、当該時間TD1も負荷電圧VL1に依存しないため、検出電圧VB1が変曲点を通過した時点さえ検出できれば、その時点から時間TD1だけ経過した時点を、検出電圧VB1がピークに達する時点として検出することができる。
【0049】
そこで、本実施形態のゼロクロス検出部45は、検出電圧VB1の振動の変曲点を閾値Vth1(正極性の期間の場合),Vth2(負極性の期間の場合)として設定する検出回路45Aを備える。検出回路45Aは、検出電圧VB1が閾値を超えると検出信号を出力する。また、ゼロクロス検出部45は、所定の遅延時間TD1を発生させる遅延回路45Bを備える。そして、駆動部43は、検出信号の出力された時点から遅延時間TD1が経過するとスイッチング素子Q4,Q5の何れか(正極性の期間ではスイッチング素子Q5、負極性の期間ではスイッチング素子Q4)をオンに切り替える。
【0050】
以下、本実施形態におけるチョーク電流IL2のゼロクロスの検出方法について説明する。
【0051】
先ず、正極性の期間におけるチョーク電流IL2のゼロクロスの検出について図6(a)〜(c)を用いて説明する。なお、以下の説明では、入力電圧V1は260Vとする。負荷電圧VL1が80Vの場合、検出電圧VB1の1回目の振動における振幅は約160Vとなる。したがって、この場合の検出電圧VB1の変曲点は、260−160/2=180Vと想定される。そこで、検出回路45Aでは、負荷電圧VL1が80Vの場合における閾値Vth1を180Vに設定する。また、負荷電圧VL1が50Vの場合には、検出電圧VB1の1回目の振動における振幅は約100Vとなる。したがって、この場合の検出電圧VB1の変曲点は、260−100/2=210Vと想定される。そこで、検出回路45Aでは、負荷電圧VL1が50Vの場合における閾値Vth1を210Vに設定する。このように、検出回路45Aでは、負荷電圧VL1に基づいて閾値Vth1を設定する(図6(b)参照)。
【0052】
遅延部45Bでは、チョークコイルCH2のインダクタンスL2、及びスイッチング素子Q4,Q5各々に寄生するドレイン−ソース間の寄生容量CQ4,CQ5で決定される周期T1に基づいて遅延時間TD1を設定する。この遅延時間TD1は、負荷電圧VL1に依らず一定値に設定される(図6(c)参照)。
【0053】
そして、検出回路45Aは、検出電圧VB1が閾値Vth1を下回ると、検出信号を出力する。駆動部43では、検出信号を受信すると、検出信号の出力された時点から遅延回路45Bで設定された遅延時間TD1が経過した時点でスイッチング素子Q5をオンに切り替える。これにより、駆動部43は、検出電圧VB1がピーク(極小値)に達した時点でスイッチング素子Q5をオンに切り替えることができる。
【0054】
次に、負極性の期間におけるチョーク電流IL2のゼロクロスの検出について図7(a)〜(c)を用いて説明する。負荷電圧VL1が80Vの場合、検出電圧VB1の1回目の振動における振幅は約160Vとなる。したがって、この場合の検出電圧VB1の変曲点は、160/2=80Vと想定される。そこで、検出回路45Aでは、負荷電圧VL1が80Vの場合における閾値Vth2を80Vに設定する。負荷電圧VL1が50Vの場合には、検出電圧VB1の1回目の振動における振幅は約100Vとなる。したがって、この場合の検出電圧VB1の変曲点は、100/2=50Vと想定される。そこで、検出回路45Aでは、負荷電圧VL1が50Vの場合における閾値Vth2を50Vに設定する。このように、検出回路45Aでは、負荷電圧VL1に基づいて閾値Vth2を設定する(図7(b)参照)。
【0055】
遅延部45Bでは、チョークコイルCH2のインダクタンスL2、及びスイッチング素子Q4,Q5各々に寄生するドレイン−ソース間の寄生容量CQ4,CQ5で決定される周期T1に基づいて遅延時間TD1を設定する。この遅延時間TD1は、負荷電圧VL1に依らず一定値に設定される(図7(c)参照)。
【0056】
そして、検出回路45Aは、検出電圧VB1が閾値Vth2を上回ると、検出信号を出力する。駆動部43では、検出信号を受信すると、検出信号の出力された時点から遅延回路45Bで設定された遅延時間TD1が経過した時点でスイッチング素子Q4をオンに切り替える。これにより、駆動部43は、検出電圧VB1がピーク(極大値)に達した時点でスイッチング素子Q4をオンに切り替えることができる。
【0057】
上述のように、本実施形態では、ゼロクロス検出部45において検出電圧VB1が検出信号を出力した時点から遅延時間TD1を経過した時点でスイッチング素子Q4,Q5の何れかをオンに切り替えている。したがって、閾値Vth1,Vth2を検出電圧VB1のピーク付近に設定する必要がないので、負荷電圧VL1が小さく検出電圧VB1の振動の振幅も小さい場合においても十分検出できるような値に設定することができる。これにより、負荷電圧VL1の変動によって検出電圧VB1が閾値Vth1,Vth2を超えずにスイッチング素子Q4,Q5をオンに切り替えることができない事態を回避することができる。そして、閾値Vth1,Vth2と遅延時間TD1とを適宜設定すれば、スイッチング損失を十分に低減することのできるタイミングでスイッチング素子Q4,Q5の何れかをオンに切り替えることができる。
【0058】
特に、本実施形態では、負荷電圧VL1に基づいて閾値Vth1,Vth2を検出電圧VB1の振動の変曲点に設定し、遅延時間TD1を検出電圧VB1の振動周期T1の1/4に設定している。このため、閾値Vth1,Vth2を検出電圧VB1が超えるように余裕を持って設定することができ、且つ検出電圧VB1がピークに達する時点、すなわちスイッチング損失が最も小さいタイミングでスイッチング素子Q4,Q5をオンに切り替えることができる。
【0059】
また、スイッチング損失を十分に低減できることから、回路部品としてスイッチング損失による発熱に耐え得る耐熱性の高い部品を選定する必要がないので、耐熱性の低い安価な回路部品を選定することで、回路部品の小型化及び低コスト化を図ることができる。結果として、放電灯点灯装置全体の小型化及び低コスト化も図ることができる。
【0060】
(実施形態2)
以下、本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態2について図面を用いて説明する。但し、本実施形態の基本的な構成及び動作は実施形態1と共通であるので、共通する点については説明を省略する。また、本実施形態では、図8に示すように、整流部1及び第1のコンバータ部2を直流電源DC1とし、制御部4の入力電圧検出部40及び入力電圧制御部41は要旨ではないので図示を省略する。
【0061】
実施形態1では、遅延時間を一定とし、負荷電圧に基づいて閾値を変化させていたが、本実施形態では、閾値を一定とし、負荷電圧に基づいて遅延時間を変化させることに特徴がある。本実施形態は、図8に示すように、負荷状態検出部42に遅延回路45Bを接続しており、遅延回路45Bでは、負荷状態検出部42で検出された負荷電圧VL1に基づいて遅延時間TD2を設定する。なお、遅延時間TD2を負荷電圧VL1に基づいて変化させることは、マイコンを制御回路として用いることで簡単に実現することができる。
【0062】
以下、本実施形態におけるチョーク電流IL2のゼロクロスの検出方法について説明する。
【0063】
先ず、正極性の期間におけるチョーク電流IL2のゼロクロスの検出について図9(a)〜(c)を用いて説明する。なお、以下の説明では、入力電圧V1は260Vとする。負荷電圧VL1が80Vの場合、検出電圧VB1の1回目の振動における振幅は約160Vとなる。したがって、この場合の検出電圧VB1の極小値は、260−160=100Vと想定される。また、負荷電圧VL1が50Vの場合には、検出電圧VB1の1回目の振動における振幅は約100Vとなる。したがって、この場合の検出電圧VB1の極小値は、260−100=160Vと想定される。そこで、検出回路45Aでは、負荷電圧VL1が50Vの場合においても検出電圧VB1を検出できるように、閾値Vth1を180Vに設定する。このように、検出回路45Aでは、想定される最も小さい負荷電圧VL1であっても検出電圧VB1を検出できるように、閾値Vth1を設定する。この閾値Vth1は、負荷電圧VL1に依らず一定値に設定される(図9(c)参照)。
【0064】
遅延部45Bでは、図9(b)に示すように、負荷電圧VL1に基づいて遅延時間TD2を設定する。例えば、負荷電圧VL1が80Vの場合には、遅延時間TD2を約220nsに設定し、負荷電圧VL1が50Vの場合には、遅延時間TD2を約140nsに設定する。すなわち、負荷電圧VL1が増大するにつれて遅延時間TD2が長くなるように設定する。
【0065】
そして、検出回路45Aは、検出電圧VB1が閾値Vth1を下回ると、検出信号を出力する。駆動部43では、検出信号を受信すると、検出信号の出力された時点から遅延回路45Bで設定された遅延時間TD2が経過した時点でスイッチング素子Q5をオンに切り替える。これにより、駆動部43は、検出電圧VB1がピーク(極小値)に達した時点でスイッチング素子Q5をオンに切り替えることができる。
【0066】
次に、負極性の期間におけるチョーク電流IL2のゼロクロスの検出について図10(a)〜(c)を用いて説明する。負荷電圧VL1が80Vの場合、検出電圧VB1の1回目の振動における振幅は約160Vとなる。したがって、この場合の検出電圧VB1の極大値は160Vと想定される。また、負荷電圧VL1が50Vの場合には、検出電圧VB1の1回目の振動における振幅は約100Vとなる。したがって、この場合の検出電圧VB1の極大値は100Vと想定される。そこで、検出回路45Aでは、負荷電圧VL1が50Vの場合においても検出電圧VB1を検出できるように、閾値Vth2を80Vに設定する。このように、検出回路45Aでは、想定される最も小さい負荷電圧VL1であっても検出電圧VB1を検出できるように、閾値Vth2を設定する。この閾値Vth2は、負荷電圧VL1に依らず一定値に設定される(図10(c)参照)。
【0067】
遅延部45Bでは、図10(b)に示すように、負荷電圧VL1に基づいて遅延時間TD2を設定する。例えば、負荷電圧VL1が80Vの場合には、遅延時間TD2を約220nsに設定し、負荷電圧VL1が50Vの場合には、遅延時間TD2を約140nsに設定する。すなわち、負荷電圧VL1が増大するにつれて遅延時間TD2が長くなるように設定する。
【0068】
そして、検出回路45Aは、検出電圧VB1が閾値Vth2を上回ると、検出信号を出力する。駆動部43では、検出信号を受信すると、検出信号の出力された時点から遅延回路45Bで設定された遅延時間TD2が経過した時点でスイッチング素子Q4をオンに切り替える。これにより、駆動部43は、検出電圧VB1がピーク(極大値)に達した時点でスイッチング素子Q4をオンに切り替えることができる。
【0069】
上述のように、本実施形態では、検出回路45Aでは閾値Vth1,Vth2を一定値に設定し、遅延回路45Bでは負荷電圧VL1に基づいて遅延時間TD2を設定している。したがって、実施形態1と同様の効果を奏することができ、また、閾値Vth1,Vth2を負荷電圧VL1に依らず一定値に設定しているので、実施形態1と比べて検出回路45Aを簡素に構成することができる。
【0070】
(実施形態3)
以下、本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態3について図面を用いて説明する。但し、本実施形態の基本的な構成及び動作は実施形態2と共通であるので、共通する点については説明を省略する。
【0071】
実施形態2では、第2のコンバータ部3のスイッチング素子Q2〜Q5から構成されるフルブリッジ回路が降圧チョッパ回路を兼ねる構成であった。一方、本実施形態は、図11に示すように、第2のコンバータ部3を1つのスイッチング素子Q6のみを有する一般的な降圧チョッパ回路で構成している。
【0072】
第2のコンバータ部3は、図11に示すように、例えばFETから成るスイッチング素子Q6と、チョークコイルCH2と、ダイオードD2と、平滑コンデンサC2とを有する所謂降圧チョッパ回路である。そして、第2のコンバータ部3の平滑コンデンサC2の両端電圧が高圧放電灯DL1に印加される。なお、スイッチング素子Q6は逆導通型のスイッチング素子であり、本実施形態では、スイッチング素子Q6の寄生ダイオードにより逆導通を実現している。
【0073】
ここで、スイッチング素子Q6のオン/オフは実施形態2のスイッチング素子Q4のオン/オフに相当し、ダイオードD2はオフ状態のスイッチング素子Q5に相当する。というのも、実施形態2の負極性の期間では、スイッチング素子Q5はオフ状態であり、寄生ダイオードとして機能しているからである。したがって、本実施形態では、チョークコイルCH2のインダクタンスL2と、スイッチング素子Q6に寄生するコンデンサの寄生容量CQ6と、ダイオードD2に寄生するコンデンサの寄生容量CD2とで決定される周波数で自由振動が発生する。
【0074】
本実施形態の検出回路45Aは、スイッチング素子Q6とダイオードD2との接続点に発生する電圧を検出電圧VB1として検出する。そして、実施形態2と同様に、ゼロクロス検出回路45において、検出回路45Aは、検出電圧VB1が閾値Vth2を上回ると検出信号を出力し、遅延回路45Bは、負荷電圧VL1に基づく遅延時間TD2を発生させる。駆動部43では、検出信号を受信すると、検出信号の出力された時点から遅延回路45Bで設定された遅延時間TD2が経過した時点でスイッチング素子Q6をオンに切り替える。これにより、駆動部43は、検出電圧VB1がピーク(極大値)に達した時点でスイッチング素子Q6をオンに切り替えることができる。
【0075】
上述のように、本実施形態においても実施形態2と同様の効果を奏することができる。
【0076】
上記各実施形態の放電灯点灯装置は、例えば図12(a)〜(c)に示すような照明器具に採用することができる。図12(a)〜(c)に示す照明器具は、上記各実施形態の何れかの放電灯点灯装置が収納される電子バラスト6と、当該放電灯点灯装置により点灯される高圧放電灯DL1が装着される器具本体7とを備えている。なお、図12(a)に示す照明器具はダウンライトであり、図12(b),(c)に示す照明器具はスポットライトである。
【0077】
このような照明器具によれば、スイッチング素子の誤動作の可能性を排除しつつスイッチング損失を十分に低減することができる。なお、これらの照明器具は単独で用いるのみならず、複数を組み合わせて照明システムを構築してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 整流部(直流電源)
2 第1のコンバータ部(直流電源)
3 第2のコンバータ部(スイッチング部)
30 共振回路
42 負荷状態検出部(負荷電圧検出部)
43 駆動部
45 ゼロクロス検出部
45A 検出回路
45B 遅延回路
C3 コンデンサ
DL1 高圧放電灯
PT1 パルストランス(インダクタ)
Q2〜Q5 スイッチング素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と放電灯との間に接続されて前記放電灯に供給する電力を調整するスイッチング部と、前記スイッチング部を構成する逆導通型のスイッチング素子のオフ時に流れる電流のゼロクロスを検出するゼロクロス検出部と、前記ゼロクロス検出部でゼロクロスを検出すると前記スイッチング素子をオンに切り替える駆動部とを備え、前記ゼロクロス検出部は、前記スイッチング素子のオフ時の両端電圧を検出し、当該検出電圧が閾値を超えると検出信号を出力する検出回路と、所定の遅延時間を発生させる遅延回路とを備え、前記駆動部は、前記検出信号の出力された時点から前記遅延時間が経過すると前記スイッチング素子をオンに切り替えることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記閾値は、前記検出電圧の振動の変曲点に設定され、前記所定時間は、前記閾値と前記検出電圧の振動の振動周期に基づいて設定されることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記放電灯に印加される負荷電圧を検出する負荷電圧検出部を備え、前記ゼロクロス検出部は、前記閾値又は前記所定時間の少なくとも何れか一方を前記負荷電圧に基づいて変化させることを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記スイッチング部は、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子の直列回路と、第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子の直列回路とを並列に接続したフルブリッジ回路から成り、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子の接続点と、前記第3のスイッチング素子及び前記第4のスイッチング素子の接続点との間には、前記放電灯が装着されるソケットと、インダクタ及びコンデンサを少なくとも有する共振回路との直列回路が接続され、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子を所定の周波数で駆動し、前記第3のスイッチング素子及び前記第4のスイッチング素子を前記所定の周波数よりも高い周波数で駆動することで、前記直流電源の出力電圧を矩形波交流に変換することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の放電灯点灯装置と、前記放電灯点灯装置により点灯される前記放電灯が装着される器具本体とを備えることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−243620(P2012−243620A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113507(P2011−113507)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】