説明

放電灯点灯装置及びプロジェクター

【課題】放電灯の明るさを精度よく制御できる放電灯点灯装置及びプロジェクターを提供すること。
【解決手段】放電灯90に電力を供給する放電灯駆動部230と、放電灯90の駆動電圧Vlaを検出する電圧検出部61と、放電灯駆動部230を制御する制御部40と、を含み、制御部40は、放電灯90に供給される電力が第1電力W1となるように放電灯駆動部230を制御する第1制御処理と、放電灯90に供給される電力が、第1電力W1とは異なる第2電力W2となるように放電灯駆動部230を制御する第2制御処理と、を行い、第1制御処理では、過去に第1制御処理が行われた期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて放電灯駆動部230を制御し、第2制御処理では、過去に第2制御処理が行われた期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて放電灯駆動部230を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置及びプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどの放電灯を用いたプロジェクターが実用化されている。このようなプロジェクターに用いる放電灯点灯装置として、特許文献1には、複数色のカラーセグメントが一巡する間に少なくとも1回は放電灯の駆動電圧を検出し、カラーセグメントごとに点灯電力を変更しながら放電灯を駆動するための放電灯点灯装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−169304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、放電灯の駆動電圧は、放電灯を駆動する電力に応じて短時間で変化する。このため、放電灯を駆動する電力を短時間で変更しながら放電灯を駆動する場合には、目標としている電力値と実際の電力値との間に差が生じてしまい、放電灯の明るさを精度よく制御することが難しかった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、放電灯の明るさを精度よく制御できる放電灯点灯装置及びプロジェクターを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る放電灯点灯装置は、放電灯に電力を供給する放電灯駆動部と、前記放電灯の駆動電圧を検出する電圧検出部と、前記放電灯駆動部を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記放電灯に供給される電力が第1電力となるように前記放電灯駆動部を制御する第1制御処理と、前記放電灯に供給される電力が、前記第1電力とは異なる第2電力となるように前記放電灯駆動部を制御する第2制御処理と、を行い、前記第1制御処理では、過去に前記第1制御処理が行われた期間中に前記電圧検出部によって検出された前記放電灯の駆動電圧に基づいて前記放電灯駆動部を制御し、前記第2制御処理では、過去に前記第2制御処理が行われた期間中に前記電圧検出部によって検出された前記放電灯の駆動電圧に基づいて前記放電灯駆動部を制御する。
【0007】
本発明によれば、過去に第1制御処理が行われた期間中に電圧検出部によって検出された放電灯の駆動電圧に基づいて第1制御処理を行い、過去に第2制御処理が行われた期間中に電圧検出部によって検出された放電灯の駆動電圧に基づいて第2制御処理を行うので、放電灯に供給される電力を精度よく制御できる。したがって、放電灯の明るさを精度よく制御できる放電灯点灯装置を実現できる。
【0008】
この放電灯点灯装置は、前記制御部は、前記第1制御処理を行う期間ごとに前記電圧検出部によって検出された前記放電灯の駆動電圧を取得し、前記第2制御処理を行う期間ごとに前記電圧検出部によって検出された前記放電灯の駆動電圧を取得してもよい。
【0009】
これによって、目標としている電力値を変更するごとに放電灯の駆動電圧を取得できるので、放電灯の状態に合わせて放電灯の明るさを精度よく制御できる。
【0010】
この放電灯点灯装置は、前記制御部は、前記第1制御処理を行う期間の後半に前記電圧検出部によって検出された前記放電灯の駆動電圧を取得し、前記第2制御処理を行う期間の後半に前記電圧検出部によって検出された前記放電灯の駆動電圧を取得してもよい。
【0011】
これによって、放電灯の駆動電圧が安定しているタイミングで検出された放電灯の駆動電圧を取得できるので、放電灯の明るさを精度よく制御できる。
【0012】
本発明に係るプロジェクターは、これらのいずれかの放電灯点灯装置を含む。
【0013】
本発明によれば、放電灯の明るさを精度よく制御できる放電灯点灯装置を含んで構成されているので、放電灯の明るさを精度よく制御できるプロジェクターを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係るプロジェクター500を示す斜視図。
【図2】本実施形態に係るプロジェクター500の光学系を説明するための図。
【図3】光源装置200の構成を示す説明図。
【図4】本実施形態に係るプロジェクター500の回路構成を示す回路図。
【図5】本実施形態に係る放電灯点灯装置1の回路構成を示す回路図。
【図6】図6(A)ないし図6(D)は、放電灯90に供給する駆動電流Iの極性と電極の温度との関係を示す説明図。
【図7】第1期間、第2期間及び切替タイミングについて説明するための図。
【図8】図8(A)は、本実施形態に係る放電灯点灯装置1による駆動電力の制御例を示すグラフ、図8(B)は、本実施形態に係る放電灯点灯装置1による駆動電流Iの制御例を示すグラフ、図8(C)は、本実施形態に係る放電灯点灯装置1による駆動電圧Vlaの例を示すグラフ。
【図9】図9(A)は、本実施形態に係る放電灯点灯装置1による駆動電力の他の制御例を示すグラフ、図9(B)は、本実施形態に係る放電灯点灯装置1による駆動電流Iの他の制御例を示すグラフ、図9(C)は、本実施形態に係る放電灯点灯装置1による駆動電圧Vlaの例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0016】
1.本実施形態に係るプロジェクター
図1は、本実施形態に係るプロジェクター500を示す斜視図である。図1に示される例では、プロジェクター500は、スクリーン700に映像710を投影している。
【0017】
1−1.本実施形態に係るプロジェクターの光学系
図2は、本実施形態に係るプロジェクター500の光学系を説明するための図である。プロジェクター500は、光源装置200と、平行化レンズ305と、照明光学系310と、色分離光学系320と、3つの液晶ライトバルブ330R,330G,330Bと、クロスダイクロイックプリズム340と、投写光学系350とを有している。
【0018】
光源装置200は、放電灯点灯装置1と、光源ユニット210と、を有している。光源ユニット210は、主反射鏡112と副反射鏡50(詳細は後述される)と放電灯90とを有している。放電灯点灯装置1は、放電灯90に電力を供給して、放電灯90を点灯させる。主反射鏡112は、放電灯90から放出された光を、照射方向Dに向けて反射する。照射方向Dは、光軸AXと平行である。光源ユニット210からの光は、平行化レンズ305を通過して照明光学系310に入射する。この平行化レンズ305は、光源ユニット210からの光を、平行化する。
【0019】
照明光学系310は、光源装置200からの光の照度を液晶ライトバルブ330R,330G,330Bにおいて均一化する。また、照明光学系310は、光源装置200からの光の偏光方向を一方向に揃える。この理由は、光源装置200からの光を液晶ライトバルブ330R,330G,330Bで有効に利用するためである。照度分布と偏光方向とが調整された光は、色分離光学系320に入射する。色分離光学系320は、入射光を、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの色光に分離する。3つの色光は、各色に対応付けられた液晶ライトバルブ330R,330G,330Bによって、それぞれ変調される。液晶ライトバルブ330R,330G,330Bは、液晶パネル560R,560G,560Bと、液晶パネル560R,560G,560Bのそれぞれの光入射側及び出射側に配置される偏光板を備える。変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム340によって合成される。合成光は、投写光学系350に入射する。投写光学系350は、入射光を、スクリーン700に投写する。これによって、スクリーン700上には映像710が表示される。
【0020】
なお、平行化レンズ305と、照明光学系310と、色分離光学系320と、クロスダイクロイックプリズム340と、投写光学系350とのそれぞれの構成としては、周知の種々の構成を採用可能である。
【0021】
図3は、光源装置200の構成を示す説明図である。光源装置200は、光源ユニット210と放電灯点灯装置1とを有している。図中には、光源ユニット210の断面図が示されている。光源ユニット210は、主反射鏡112と副反射鏡50と放電灯90とを有している。
【0022】
放電灯90の形状は、第1端部90e1から第2端部90e2まで、照射方向Dに沿って延びる棒形状である。放電灯90の材料は、例えば、石英ガラス等の透光性材料である。放電灯90の中央部は球状に膨らんでおり、その内には、放電空間93が形成されている。放電空間93内には、希ガス、金属ハロゲン化合物等を含む放電媒体であるガスが封入されている。
【0023】
また、放電空間93内には、第1電極91及び第2電極92が、放電灯90から突き出している。第1電極91は、放電空間93の第1端部90e1側に配置され、第2電極92は、放電空間93の第2端部90e2側に配置されている。第1電極91及び第2電極92の形状は、光軸AXに沿って延びる棒形状である。放電空間93内では、第1電極91の電極先端部(「放電端」とも呼ぶ)と第2電極92の電極先端部とが、所定距離だけ離れて互いに向かい合っている。なお、第1電極91及び第2電極92の材料は、例えば、タングステン等の金属である。
【0024】
放電灯90の第1端部90e1には、第1端子951が設けられている。第1端子951と第1電極91とは、放電灯90の内部を通る導電性部材941によって電気的に接続されている。同様に、放電灯90の第2端部90e2には、第2端子952が設けられている。第2端子952と第2電極92とは、放電灯90の内部を通る導電性部材942によって電気的に接続されている。第1端子951及び第2端子952の材料は、例えば、タングステン等の金属である。また、導電性部材941,942としては、例えば、モリブデン箔が利用される。
【0025】
第1端子951及び第2端子952は、放電灯点灯装置1に接続されている。放電灯点灯装置1は、第1端子951及び第2端子952に、交流電流を供給する。その結果、第1電極91と第2電極92との間でアーク放電が起きる。アーク放電によって発生した光(放電光)は、破線の矢印で示すように、放電位置から全方向に向かって放射される。
【0026】
放電灯90の第1端部90e1には、固定部材961によって、主反射鏡112が固定されている。主反射鏡112の反射面(放電灯90側の面)の形状は、回転楕円形状である。主反射鏡112は、放電光を照射方向Dに向かって反射する。なお、主反射鏡112の反射面の形状としては、回転楕円形状に限らず、放電光を照射方向Dに向かって反射するような種々の形状を採用可能である。例えば、回転放物線形状を採用してもよい。この場合は、主反射鏡112は、放電光を、光軸AXにほぼ平行な光に変換することができる。したがって、平行化レンズ305を省略することができる。
【0027】
放電灯90の第2端部90e2側には、固定部材962によって、副反射鏡50が固定されている。副反射鏡50の反射面(放電灯90側の面)の形状は、放電空間93の第2端部90e2側を囲む球面形状である。副反射鏡50は、放電光を、主反射鏡112に向かって反射する。これによって、放電空間93から放射される光の利用効率を高めることができる。
【0028】
なお、固定部材961,962の材料としては、放電灯90の発熱に耐える任意の耐熱材料(例えば、無機接着剤)を採用可能である。また、主反射鏡112及び副反射鏡50と放電灯90との配置を固定する方法としては、主反射鏡112及び副反射鏡50を放電灯90に固定する方法に限らず、任意の方法を採用可能である。例えば、放電灯90と主反射鏡112とを、独立に、プロジェクター500の筐体(図示せず)に固定してもよい。副反射鏡50についても同様である。
【0029】
1−2.本実施形態に係るプロジェクターの回路構成
図4は、本実施形態に係るプロジェクター500の回路構成を示す回路図である。プロジェクター500は、先に説明した光学系の他に、映像信号変換部510、直流電源80、映像処理装置570、CPU(Central Processing Unit)580を含んでいてもよい。また、プロジェクター500とアクティブシャッターメガネ410とを含むプロジェクターシステム400として構成することも可能である。
【0030】
映像信号変換部510は、外部から入力された映像信号502(輝度−色差信号やアナログRGB信号など)を所定のワード長のデジタルRGB信号に変換して映像信号512R,512G,512Bを生成し、映像処理装置570に供給する。
【0031】
映像処理装置570は、3つの映像信号512R,512G,512Bに対してそれぞれ映像処理を行い、液晶パネル560R,560G,560Bをそれぞれ駆動するための駆動信号572R,572G,572Bを液晶パネル560R,560G,560Bに供給する。液晶パネル560R,560G,560Bに入力される駆動信号572R,572G,572Bに基づいて、図2を用いて説明した光学系によって、スクリーン700に映像710が投影される。
【0032】
直流電源80は、外部の交流電源600から供給される交流電圧を一定の直流電圧に変換し、トランス(図示しないが、直流電源80に含まれる)の2次側にある映像信号変換部510、映像処理装置570及びトランスの1次側にある放電灯点灯装置1に直流電圧を供給する。
【0033】
放電灯点灯装置1は、起動時に放電灯90の電極間に高電圧を発生して絶縁破壊させて放電路を形成し、以後、放電灯90が放電を維持するための駆動電流Iを供給する。
【0034】
液晶パネル560R,560G,560Bは、それぞれ駆動信号572R,572G,572Bに基づいて、先に説明した光学系を介して各液晶パネルに入射される色光の輝度を変調する。
【0035】
CPU580は、プロジェクター500の点灯開始から消灯に至るまでの動作を制御する。例えば、点灯命令や消灯命令を、通信信号582を介して放電灯点灯装置1に出力してもよい。また、CPU580は、放電灯点灯装置1から放電灯90の点灯状態を表す点灯情報を、通信信号584を介して受け取ってもよい。
【0036】
さらに、CPU580は、映像信号変換部510から出力される同期信号514に基づいて、映像信号502に同期してアクティブシャッターメガネ410を制御するための制御信号586を、有線又は無線の通信手段を介してアクティブシャッターメガネ410に出力してもよい。
【0037】
アクティブシャッターメガネ410は、右シャッター412と左シャッター414を含んでいてもよい。右シャッター412及び左シャッター414は、制御信号586に基づいて開閉制御される。ユーザーがアクティブシャッターメガネ410を装着した場合に、右シャッター412が閉じられることによって、右目側の視野を遮ることができる。また、ユーザーがアクティブシャッターメガネ410を装着した場合に、左シャッター414が閉じられることによって、左目側の視野を遮ることができる。右シャッター412及び左シャッター414は、例えば、液晶シャッターで構成されていてもよい。
【0038】
1−3.本実施形態に係る放電灯点灯装置の構成
図5は、本実施形態に係る放電灯点灯装置1の回路構成を示す回路図である。
【0039】
放電灯点灯装置1は、電力制御回路20を含む。電力制御回路20は、放電灯90に供給する駆動電力を生成する。本実施形態においては、電力制御回路20は、直流電源80を入力とし、当該入力電圧を降圧して直流電流Idを出力するダウンチョッパー回路で構成されている。
【0040】
電力制御回路20は、スイッチ素子21、ダイオード22、コイル23及びコンデンサー24を含んで構成されることができる。スイッチ素子21は、例えばトランジスターで構成することができる。本実施形態においては、スイッチ素子21の一端は直流電源80の正電圧側に接続され、他端はダイオード22のカソード端子及びコイル23の一端に接続されている。また、コイル23の他端にはコンデンサー24の一端が接続され、コンデンサー24の他端はダイオード22のアノード端子及び直流電源80の負電圧側に接続されている。スイッチ素子21の制御端子には制御部40(後述)から電力制御信号が入力されてスイッチ素子21のON/OFFが制御される。電力制御信号には、例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御信号が用いられてもよい。
【0041】
ここで、スイッチ素子21がONすると、コイル23に電流が流れ、コイル23にエネルギーが蓄えられる。その後、スイッチ素子21がOFFすると、コイル23に蓄えられたエネルギーがコンデンサー24とダイオード22とを通る経路で放出される。その結果、スイッチ素子21がONする時間の割合に応じた直流電流Idが発生する。
【0042】
放電灯点灯装置1は、極性反転回路30を含む。極性反転回路30は、電力制御回路20から出力される直流電流Idを入力し、所与のタイミングで極性反転することによって、制御された時間だけ継続する直流であったり、任意の周波数をもつ交流であったりする駆動電流Iを生成出力する。本実施形態においては、極性反転回路30はインバーターブリッジ回路(フルブリッジ回路)で構成されている。
【0043】
極性反転回路30は、例えば、トランジスターなどで構成される第1のスイッチ素子31、第2のスイッチ素子32、第3のスイッチ素子33及び第4のスイッチ素子34を含み、直列接続された第1のスイッチ素子31及び第2のスイッチ素子32と、直列接続された第3のスイッチ素子33及び第4のスイッチ素子34を、互いに並列接続して構成される。第1のスイッチ素子31、第2のスイッチ素子32、第3のスイッチ素子33及び第4のスイッチ素子34の制御端子には、それぞれ制御部40から極性反転制御信号が入力され、極性反転制御信号に基づいて第1のスイッチ素子31、第2のスイッチ素子32、第3のスイッチ素子33及び第4のスイッチ素子34のON/OFFが制御される。
【0044】
極性反転回路30は、第1のスイッチ素子31及び第4のスイッチ素子34と、第2のスイッチ素子32及び第3のスイッチ素子33とを交互にON/OFFを繰り返すことによって、電力制御回路20から出力される直流電流Idの極性を交互に反転し、第1のスイッチ素子31と第2のスイッチ素子32との共通接続点及び第3のスイッチ素子33と第4のスイッチ素子34との共通接続点から、制御された時間だけ継続する直流であったり、制御された周波数をもつ交流であったりする駆動電流Iを生成出力する。
【0045】
すなわち、第1のスイッチ素子31及び第4のスイッチ素子34がONの時には第2のスイッチ素子32及び第3のスイッチ素子33をOFFにし、第1のスイッチ素子31及び第4のスイッチ素子34がOFFの時には第2のスイッチ素子32及び第3のスイッチ素子33をONにするように制御する。したがって、第1のスイッチ素子31及び第4のスイッチ素子34がONの時には、コンデンサー24の一端から第1のスイッチ素子31、放電灯90、第4のスイッチ素子34の順に流れる駆動電流Iが発生する。また、第2のスイッチ素子32及び第3のスイッチ素子33がONの時には、コンデンサー24の一端から第3のスイッチ素子33、放電灯90、第2のスイッチ素子32の順に流れる駆動電流Iが発生する。
【0046】
本実施形態において、電力制御回路20と極性反転回路30とを合わせて放電灯駆動部230に対応する。すなわち、放電灯駆動部230は、駆動電流Iを放電灯90に供給することによって、放電灯90に駆動電力を供給する。
【0047】
放電灯点灯装置1は、制御部40を含む。制御部40は、電力制御回路20及び極性反転回路30を制御することによって、放電灯90へ供給される駆動電力、駆動電流Iが同一極性で継続する保持時間、駆動電流Iの電流値、周波数等を制御する。制御部40は、制御部40は、電力制御回路20に対して、出力される直流電流Idの電流値を制御することによって、放電灯90へ供給される駆動電力を制御する駆動電力制御を行う。また、極性反転回路30に対して駆動電流Iの極性反転タイミングによって、駆動電流Iが同一極性で継続する保持時間、駆動電流Iの周波数等を制御する極性反転制御を行う。
【0048】
制御部40の構成は、特に限定されるものではないが、本実施形態においては、制御部40は、システムコントローラー41、電力制御部42及び極性反転制御部43含んで構成されている。なお、制御部40は、その一部又は全てを半導体集積回路で構成されていてもよい。
【0049】
システムコントローラー41は、電力制御部42及び極性反転制御部43を制御することによって、電力制御回路20及び極性反転回路30を制御する。システムコントローラー41は、電圧検出部61(後述)によって検出された放電灯90の駆動電圧Vla及び電流検出部62(後述)によって検出された放電灯90の駆動電流Iに基づいて、電力制御部42及び極性反転制御部43を制御してもよい。
【0050】
本実施形態においては、システムコントローラー41は記憶部44を含んで構成されている。なお、記憶部44は、システムコントローラー41とは独立に設けてもよい。
【0051】
システムコントローラー41は、記憶部44に格納された情報に基づき、電力制御回路20及び極性反転回路30を制御してもよい。記憶部44には、例えば駆動電流Iが同一極性で継続する保持時間、駆動電流Iの電流値、周波数、波形、変調パターン等の駆動パラメーターに関する情報が格納されていてもよい。
【0052】
電力制御部42は、システムコントローラー41からの制御信号に基づき、電力制御回路20へ電力制御信号を出力することによって、電力制御回路20を制御する。
【0053】
極性反転制御部43は、システムコントローラー41からの制御信号に基づき、極性反転回路30へ極性反転制御信号を出力することによって、極性反転回路30を制御する。
【0054】
なお、制御部40は、専用回路によって実現して上述した制御や後述する処理の各種制御を行うようにすることもできるが、例えばCPUが記憶部44等に記憶された制御プログラムを実行することによってコンピューターとして機能し、これらの処理の各種制御を行うようにすることもできる。
【0055】
また、図5に示される例では、制御部40は、放電灯点灯装置1の一部として構成されているが、制御部40の機能の一部又は全部をCPU580が担うように構成されていてもよい。
【0056】
放電灯点灯装置1は、電圧検出部61を含む。電圧検出部61は、放電灯90の駆動電圧Vlaを検出し、駆動電圧情報を制御部40に出力する。
【0057】
放電灯点灯装置1は、電流検出部62を含んで構成されていてもよい。電流検出部62は、放電灯90の駆動電流Iを検出し、駆動電流情報を制御部40に出力する。本実施形態において、電流検出部62は、放電灯90に直列に接続された抵抗63に発生する電圧を検出することによって、放電灯90の駆動電流Iを検出する。
【0058】
なお、電圧検出部61及び電流検出部62は、それぞれ専用回路によって実現して上述した検出を行うようにすることもできるが、例えばCPUが図示しない記憶部等に記憶された制御プログラムを実行することによってコンピューターとして機能し、上述した検出を行うようにすることもできる。
【0059】
また、制御部40と電圧検出部61及び電流検出部62とは、独立に構成されていてもよいし、1つのCPUによって一体として構成されていてもよい。
【0060】
放電灯点灯装置1は、イグナイター回路70を含んでもよい。イグナイター回路70は、放電灯90の点灯開始時にのみ動作し、放電灯90の点灯開始時に放電灯90の電極間(第1電極91と第2電極92との間)を絶縁破壊して放電路を形成するために必要な高電圧(放電灯90の通常点灯時よりも高い電圧)を放電灯90の電極間(第1電極91と第2電極92との間)に供給する。本実施形態においては、イグナイター回路70は、放電灯90と並列に接続されている。
【0061】
1−4.駆動電流の極性と電極の温度との関係
図6(A)ないし図6(D)は、放電灯90に供給する駆動電流Iの極性と電極の温度との関係を示す説明図である。図6(A)及び図6(B)は、第1電極91及び第2電極92の動作状態を示している。図中には、第1電極91及び第2電極92の先端部分が示されている。第1電極91及び第2電極92の先端にはそれぞれ突起911,921が設けられている。第1電極91と第2電極92の間で生じる放電は、主として突起911と突起921との間で生じる。図6(A)及び図6(B)に示される例では、突起が無い場合と比べて、第1電極91及び第2電極92における放電位置(アーク位置)の移動を抑えることができる。ただし、このような突起を省略してもよい。
【0062】
図6(A)は、第1電極91が陽極として動作し、第2電極92が陰極として動作する第1極性状態P1を示している。第1極性状態P1では、放電によって、第2電極92(陰極)から第1電極91(陽極)へ電子が移動する。陰極(第2電極92)からは、電子が放出される。陰極(第2電極92)から放出された電子は、陽極(第1電極91)の先端に衝突する。この衝突によって熱が生じ、そして、陽極(第1電極91)の先端(突起911)の温度が上昇する。
【0063】
図6(B)は、第1電極91が陰極として動作し、第2電極92が陽極として動作する第2極性状態P2を示している。第2極性状態P2では、第1極性状態P1とは逆に、第1電極91から第2電極92へ電子が移動する。その結果、第2電極92の先端(突起921)の温度が上昇する。
【0064】
このように、陽極の温度は、陰極と比べて高くなりやすい。ここで、一方の電極の温度が他方の電極と比べて高い状態が続くことは、種々の不具合を引き起こし得る。例えば、高温電極の先端が過剰に溶けた場合には、意図しない電極変形が生じ得る。その結果、アーク長が適正値からずれる場合がある。また、低温電極の先端の溶融が不十分な場合には、先端に生じた微少な凹凸が溶けずに残り得る。その結果、いわゆるアークジャンプが生じる(アーク位置が安定せずに移動する)場合がある。
【0065】
このような不具合を抑制する技術として、駆動電流Iとして、各電極の極性を繰り返し交替させる交流電流を放電灯90に供給する交流駆動を利用可能である。図6(C)は、放電灯90に供給される駆動電流Iの一例を示すタイミングチャートである。横軸は時間Tを示し、縦軸は駆動電流Iの電流値を示している。駆動電流Iは、放電灯90を流れる電流を示す。正値は、第1極性状態P1を示し、負値は、第2極性状態P2を示す。図6(C)に示される例では、駆動電流Iとして矩形波交流電流が利用されている。そして、図6(C)に示される例では、第1極性状態P1と第2極性状態P2とが交互に繰り返されている。ここで、第1極性区間Tpは、第1極性状態P1が続く時間を示し、第2極性区間Tnは、第2極性状態P2が続く時間を示す。また、図6(C)に示される例では、第1極性区間Tpの平均電流値はIm1であり、第2極性区間Tnの平均電流値は−Im2である。なお、放電灯90の駆動に適した駆動電流Iの周波数は、放電灯90の特性に合わせて、実験的に決定可能である(例えば、30Hz〜1kHzの範囲の値が採用される)。他の値Im1、−Im2、Tp、Tnも、同様に実験的に決定可能である。
【0066】
図6(D)は、第1電極91の温度変化を示すタイミングチャートである。横軸は時間Tを示し、縦軸は温度Hを示している。第1極性状態P1では、第1電極91の温度Hが上昇し、第2極性状態P2では、第1電極91の温度Hが降下する。また、第1極性状態P1と第2極性状態P2状態が繰り返されるので、温度Hは、最小値Hminと最大値Hmaxとの間で周期的に変化する。なお、図示は省略するが、第2電極92の温度は、第1電極91の温度Hとは逆位相で変化する。すなわち、第1極性状態P1では、第2電極92の温度が降下し、第2極性状態P2では、第2電極92の温度が上昇する。
【0067】
第1極性状態P1では、第1電極91(突起911)の先端が溶融するので、第1電極91(突起911)の先端が滑らかになる。これによって、第1電極91での放電位置の移動を抑制できる。また、第2電極92(突起921)の先端の温度が降下するので、第2電極92(突起921)の過剰な溶融が抑制される。これによって、意図しない電極変形を抑制できる。第2極性状態P2では、第1電極91と第2電極92の立場が逆である。したがって、第1極性状態P1と第2極性状態P2を繰り返すことによって、第1電極91及び第2電極92のそれぞれにおける不具合を抑制できる。
【0068】
ここで、駆動電流Iの波形が対称である場合、すなわち、駆動電流Iの波形が「|Im1|=|−Im2|、Tp=Tn」という条件を満たす場合には、第1電極91と第2電極92との間で、供給される電力の条件が同じである。したがって、第1電極91及び第2電極92の熱的条件(温度の上がりやすさや下がりやすさ)が同一であれば、第1電極91と第2電極92との間の温度差が小さくなるものと推定される。
【0069】
また、電極が広い範囲にわたり加熱されすぎる(アークスポット(アーク放電に伴う電極表面上のホットスポット)が大きくなる)と過剰な溶融によって電極の形状が崩れる。逆に、電極が冷えすぎると電極の先端が十分に溶融できず、先端を滑らかに戻せない、すなわち電極の先端が変形しやすくなる。
【0070】
また、放電灯90の駆動電流Iが大きくなると電極温度が高くなるので、電極からの熱電子放出が増える。これによって、放電灯90の駆動電圧Vlaは小さくなる。逆に、放電灯90の駆動電流Iが小さくなると電極温度が低くなるので、電極からの熱電子放出が減る。これによって、放電灯90の駆動電圧Vlaは大きくなる。
【0071】
1−5.本実施形態における駆動電流の制御例
次に、本実施形態に係る放電灯点灯装置1における駆動電流Iの制御の具体例について説明する。
【0072】
図7は、第1期間、第2期間及び切替タイミングについて説明するための図である。図7には、上から順に駆動信号572R,572G,572Bの内容、右シャッター412の開閉状態、左シャッター414の開閉状態、第1期間と第2期間、切替タイミングの時間的関係が示されている。図7の横軸は時間である。以下では、第1映像及び第2映像をそれぞれ左目用映像及び右目用映像として表示映像を観察者に立体視させる例について説明する。
【0073】
図7に示される例では、駆動信号572R,572G,572Bは、時刻t1から時刻t3までの間は第1映像としての右目用映像、時刻t3から時刻t5までの間は第2映像としての左目用映像、時刻t5から時刻t7までの間は第1映像としての右目用映像、時刻t7から時刻t9までの間は第2映像としての左目用映像に対応する駆動信号となっている。したがって、図7に示される例では、プロジェクター500は、時刻t1、時刻t3、時刻t5、時刻t7、時刻t9を切替タイミングとして、第1映像としての右目用映像と第2映像としての左目用映像とを切り替えて交互に出力する。
【0074】
時間的に隣り合う切替タイミングに挟まれる期間は、第1期間で始まり、第2期間で終わる。図7に示される例では、例えば、切替タイミングとなる時刻t1と時刻t3とに挟まれる期間は、時刻t1から時刻t2までの間の第1期間で始まり、時刻t2から時刻t3までの間の第2期間で終わる。切替タイミングとなる時刻t3と時刻t5とに挟まれる期間、切替タイミングとなる時刻t5と時刻t7とに挟まれる期間、切替タイミングとなる時刻t7と時刻t9とに挟まれる期間についても同様である。なお、図7に示される例では、第1期間の長さと第2期間の長さとを同一に表しているが、第1期間の長さと第2期間の長さは、必要に応じてそれぞれ適宜設定できる。また、第1期間と第2期間の他に、第3期間が存在していてもよい。第3期間においては、後述される第1期間及び第2期間における駆動電流Iの制御とは異なる制御を行ってもよい。
【0075】
右シャッター412は、第1映像としての右目用映像に対応する駆動信号572R,572G,572Bが液晶パネル560R,560G,560Bに入力されている期間の少なくとも一部の期間で開いた状態となる。図7に示される例では、右シャッター412は、時刻t1から時刻t2までの間では閉じた状態であり、時刻t2から時刻t3までの間は開いた状態である。また、図7に示される例では、第2映像としての左目用映像に対応する駆動信号572R,572G,572Bが液晶パネル560R,560G,560Bに入力されている期間において、右シャッター412は、時刻t3から閉じ始め、時刻t3と時刻t4との間で閉じ終わり、時刻t4から時刻t5までの間は閉じた状態である。時刻t5から時刻t9までの間における右シャッター412の開閉状態の変化は、時刻t1から時刻t5までの間の開閉状態の変化と同様である。
【0076】
左シャッター414は、第2映像としての左目用映像に対応する駆動信号572R,572G,572Bが液晶パネル560R,560G,560Bに入力されている期間の少なくとも一部の期間で開いた状態となる。図7に示される例では、左シャッター414は、時刻t3から時刻t4までの間では閉じた状態であり、時刻t4から時刻t5までの間は開いた状態である。また、図7に示される例では、第1映像としての右目用映像に対応する駆動信号572R,572G,572Bが液晶パネル560R,560G,560Bに入力されている期間において、左シャッター414は、時刻t1から閉じ始め、時刻t1と時刻t2との間で閉じ終わり、時刻t2から時刻t3までの間は閉じた状態である。時刻t5から時刻t9までの間における左シャッター414の開閉状態の変化は、時刻t1から時刻t5までの間の開閉状態の変化と同様である。
【0077】
図7に示される例では、第1映像としての右目用映像に対応する駆動信号572R,572G,572Bが液晶パネル560R,560G,560Bに入力されている期間においては、右シャッター412が閉じている期間が第1期間、右シャッター412が開いている期間が第2期間に対応している。また、図7に示される例では、第2映像としての左目用映像に対応する駆動信号572R,572G,572Bが液晶パネル560R,560G,560Bに入力されている期間においては、左シャッター414が閉じている期間が第1期間、左シャッター414が開いている期間が第2期間に対応している。また、図7に示される例では、第1期間においては、右シャッター412及び左シャッター414のいずれのシャッターも閉じている期間が存在している。
【0078】
図8(A)は、本実施形態に係る放電灯点灯装置1による駆動電力の制御例を示すグラフ、図8(B)は、本実施形態に係る放電灯点灯装置1による駆動電流Iの制御例を示すグラフ、図8(C)は、本実施形態に係る放電灯点灯装置1による駆動電圧Vlaの例を示すグラフである。図8(A)〜図8(C)の横軸は時間を表す。図8(A)の縦軸は駆動電力、図8(B)の縦軸は駆動電流I、図8(C)の縦軸は駆動電圧Vlaを表す。
【0079】
本実施形態に係る放電灯点灯装置1において、制御部40は、放電灯90に供給される電力が第1電力W1となるように放電灯駆動部230を制御する第1制御処理と、放電灯90に供給される電力が、第1電力W1とは異なる第2電力W2となるように放電灯駆動部230を制御する第2制御処理と、を行い、第1制御処理では、過去に第1制御処理が行われた期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて放電灯駆動部230を制御し、第2制御処理では、過去に第2制御処理が行われた期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて放電灯駆動部230を制御する。
【0080】
図8(A)に示される例では、放電灯90に供給される駆動電力は、第1期間では第1電力W1、第2期間では第1電力W1とは異なる第2電力W2となっている。すなわち、制御部40は、第1期間においては第1制御処理を行い、第2期間においては第2制御処理を行う。また、図8(A)に示される例では、第1電力W1<第2電力W2の大小関係が成立している。なお、駆動電力の値については、放電灯90の仕様に基づいて実験的に決定することができる。また、第1期間の長さと第2期間の長さについては、放電灯90の仕様に基づいて実験的に決定することができる。
【0081】
図8(B)には、図8(A)に示される駆動電力パターンで放電灯90を駆動する場合における駆動電流Iの制御例が示されている。図8(B)に示される例では、駆動電流Iは、第1期間においては、電流値が+I1から−I1までの範囲内となる交流電流であり、第2期間においては、電流値が+I2から−I2までの範囲内となる交流電流である。一般的に、放電灯90の駆動電力を大きくするためには、放電灯90の駆動電流Iを大きくする。したがって、図8(B)においても、I1<I2の大小関係が成立している。
【0082】
図8(C)には、図8(A)に示される駆動電力パターンで放電灯90を駆動した場合における、放電灯90の駆動電圧Vlaの一般的な傾向が模式的に示されている。図8(C)に示される例では、第1期間における駆動電圧Vlaの電圧値はV1、第2期間における駆動電圧Vlaの電圧値はV2である。また、図8(C)に示される例では、V1>V2の大小関係が成立している。
【0083】
放電灯90の駆動電流Iが大きくなると電極温度が高くなるので、電極からの熱電子放出が増える。これによって、放電灯90の駆動電圧Vlaは小さくなる。逆に、放電灯90の駆動電流Iが小さくなると電極温度が低くなるので、電極からの熱電子放出が減る。これによって、放電灯90の駆動電圧Vlaは大きくなる。したがって、駆動電圧Vlaは、第1期間においては相対的に大きくなり、第2期間においては相対的に小さくなる。
【0084】
本実施形態に係る放電灯点灯装置1において、制御部40は、第1制御処理では、過去に第1制御処理が行われた期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて放電灯駆動部230を制御する。例えば、時刻t3から時刻t4までの第1期間においては、制御部40は、時刻t1から時刻t2までの第1期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて放電灯駆動部230を制御してもよい。図8(C)に示される例では、第1期間における駆動電圧Vlaの電圧値はV1であるので、制御部40は、V1×I1が第1電力W1となる駆動電流Iを出力させるように放電灯駆動部230を制御する。また例えば、時刻t3から時刻t4までの第1期間においては、制御部40は、時刻t3よりも前に(時間的に先に)存在した複数回の第1期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaの平均値に基づいて放電灯駆動部230を制御してもよい。
【0085】
同様に、制御部40は、第2制御処理では、過去に第2制御処理が行われた期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて放電灯駆動部230を制御する。例えば、時刻t4から時刻t5までの第2期間においては、制御部40は、時刻t2から時刻t3までの第2期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて放電灯駆動部230を制御してもよい。図8(C)に示される例では、第2期間における駆動電圧Vlaの電圧値はV2であるので、制御部40は、V2×I2が第2電力W2となる駆動電流Iを出力させるように放電灯駆動部230を制御する。また例えば、時刻t4から時刻t5までの第2期間においては、制御部40は、時刻t4よりも前に(時間的に先に)存在した複数回の第2期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaの平均値に基づいて放電灯駆動部230を制御してもよい。
【0086】
本実施形態に係る放電灯点灯装置1によれば、過去に第1制御処理が行われた期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて第1制御処理を行い、過去に第2制御処理が行われた期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて第2制御処理を行うので、放電灯90に供給される電力を精度よく制御できる。したがって、放電灯の明るさを精度よく制御できる放電灯点灯装置を実現できる。
【0087】
本実施形態に係る放電灯点灯装置1において、制御部40は、第1制御処理を行う期間ごとに電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得し、第2制御処理を行う期間ごとに電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得してもよい。換言すれば、制御部40は、第1制御処理を行う期間では少なくとも1回は電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得し、第2制御処理を行う期間では少なくとも1回は電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得してもよい。制御部40は、取得した放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて第1制御処理及び第2制御処理を行う。
【0088】
図8(C)に示される例では、時刻t1から時刻t2までの第1期間においても、時刻t3から時刻t4までの第1期間においても、それぞれ少なくとも1回は電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得する。同様に、時刻t2から時刻t3までの第2期間においても、時刻t5から時刻t6までの第2期間においても、それぞれ少なくとも1回は電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得する。
【0089】
放電灯90の駆動電圧Vlaは、放電灯90の電極の劣化状態などによって経時変化する。第1制御処理を行う期間ごとに電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得し、第2制御処理を行う期間ごとに電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得することによって、目標としている電力値を変更するごとに放電灯90の駆動電圧Vlaを取得できるので、放電灯90の状態に合わせて放電灯90の明るさを精度よく制御できる。
【0090】
本実施形態に係る放電灯点灯装置1において、制御部40は、第1制御処理を行う期間の後半に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得し、第2制御処理を行う期間の後半に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得してもよい。
【0091】
目標としている電力値が変更された直後は、放電灯90の電極の温度が急激に変化するので、放電灯90の駆動電圧Vlaの値が不安定になる可能性がある。第1制御処理を行う期間の後半と第2制御処理を行う期間の後半に放電灯90の駆動電圧Vlaを取得することによって、放電灯90の駆動電圧Vlaが安定しているタイミングで検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得できる。したがって、放電灯90の明るさを精度よく制御できる。
【0092】
本実施形態に係るプロジェクター500によれば、放電灯90の明るさを精度よく制御できる放電灯点灯装置1を含んで構成されているので、放電灯90の明るさを精度よく制御できるプロジェクターを実現できる。
【0093】
1−6.本実施形態における駆動電流の他の制御例
次に、本実施形態に係る放電灯点灯装置1における駆動電流Iの制御の他の具体例について説明する。
【0094】
図9(A)は、本実施形態に係る放電灯点灯装置1による駆動電力の他の制御例を示すグラフ、図9(B)は、本実施形態に係る放電灯点灯装置1による駆動電流Iの他の制御例を示すグラフ、図9(C)は、本実施形態に係る放電灯点灯装置1による駆動電圧Vlaの例を示すグラフである。図9(A)〜図9(C)の横軸は時間を表す。図9(A)の縦軸は駆動電力、図9(B)の縦軸は駆動電流I、図9(C)の縦軸は駆動電圧Vlaを表す。図9(A)ないし図9(C)に示しされる例では、第1期間、第2期間及び第3期間の名称については、図7及び図8とは独立である。
【0095】
本発明における第1電力W1及び第2電力W2は、3つ以上の電力値から任意に選択された2つの電力値であってもよい。図9(A)に示される例では、第1電力W1<第2電力W2<第3電力W3の大小関係が成立している。
【0096】
図9(A)に示される例では、放電灯90に供給される駆動電力は、第1期間では第1電力W1、第2期間では第1電力W1とは異なる第2電力W2、第3期間では第1電力W1及び第2電力W2とは異なる第3電力W3となっている。すなわち、制御部40は、第1期間においては第1制御処理を行い、第2期間においては第2制御処理を行う。また、第3期間においては放電灯90に供給される電力が第3電力W3となるように放電灯駆動部230を制御する第3制御処理を行う。なお、駆動電力の値については、放電灯90の仕様に基づいて実験的に決定することができる。また、第1期間の長さ、第2期間の長さ及び第3期間の長さについては、放電灯90の仕様に基づいて実験的に決定することができる。
【0097】
図9(B)には、図9(A)に示される駆動電力パターンで放電灯90を駆動する場合における駆動電流Iの制御例が示されている。図9(B)に示される例では、駆動電流Iは、第1期間においては、電流値が+I1から−I1までの範囲内となる交流電流であり、第2期間においては、電流値が+I2から−I2までの範囲内となる交流電流であり、第3期間においては、電流値が+I3から−I3までの範囲内となる交流電流である。一般的に、放電灯90の駆動電力を大きくするためには、放電灯90の駆動電流Iを大きくする。したがって、図9(B)においても、I1<I2<I3の大小関係が成立している。
【0098】
図9(C)には、図9(A)に示される駆動電力パターンで放電灯90を駆動した場合における、放電灯90の駆動電圧Vlaの一般的な傾向が模式的に示されている。図9(C)に示される例では、第1期間における駆動電圧Vlaの電圧値はV1、第2期間における駆動電圧Vlaの電圧値はV2、第3期間における駆動電圧Vlaの電圧値はV3である。また、図9(C)に示される例では、V1>V2>V3の大小関係が成立している。放電灯90の駆動電圧Vlaが図9(C)に示されるような傾向となる理由は前述のとおりである。
【0099】
本実施形態に係る放電灯点灯装置1において、制御部40は、第1制御処理では、過去に第1制御処理が行われた期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて放電灯駆動部230を制御する。例えば、時刻t4から時刻t5までの第1期間においては、制御部40は、時刻t1から時刻t2までの第1期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて放電灯駆動部230を制御してもよい。図9(C)に示される例では、第1期間における駆動電圧Vlaの電圧値はV1であるので、制御部40は、V1×I1が第1電力W1となる駆動電流Iを出力させるように放電灯駆動部230を制御する。また例えば、時刻t4から時刻t5までの第1期間においては、制御部40は、時刻t4よりも前に(時間的に先に)存在した複数回の第1期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaの平均値に基づいて放電灯駆動部230を制御してもよい。
【0100】
同様に、制御部40は、第2制御処理では、過去に第2制御処理が行われた期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて放電灯駆動部230を制御する。例えば、時刻t5から時刻t6までの第2期間においては、制御部40は、時刻t2から時刻t3までの第2期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて放電灯駆動部230を制御してもよい。図9(C)に示される例では、第2期間における駆動電圧Vlaの電圧値はV2であるので、制御部40は、V2×I2が第2電力W2となる駆動電流Iを出力させるように放電灯駆動部230を制御する。また例えば、時刻t5から時刻t6までの第2期間においては、制御部40は、時刻t5よりも前に(時間的に先に)存在した複数回の第2期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaの平均値に基づいて放電灯駆動部230を制御してもよい。
【0101】
同様に、制御部40は、第3制御処理では、過去に第3制御処理が行われた期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて放電灯駆動部230を制御する。例えば、時刻t6から時刻t7までの第3期間においては、制御部40は、時刻t3から時刻t4までの第3期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて放電灯駆動部230を制御してもよい。図9(C)に示される例では、第3期間における駆動電圧Vlaの電圧値はV3であるので、制御部40は、V3×I3が第3電力W3となる駆動電流Iを出力させるように放電灯駆動部230を制御する。また例えば、時刻t6から時刻t7までの第3期間においては、制御部40は、時刻t6よりも前に(時間的に先に)存在した複数回の第3期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaの平均値に基づいて放電灯駆動部230を制御してもよい。
【0102】
本実施形態に係る放電灯点灯装置1によれば、過去に第1制御処理が行われた期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて第1制御処理を行い、過去に第2制御処理が行われた期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて第2制御処理を行い、過去に第3制御処理が行われた期間中に電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaに基づいて第3制御処理を行うので、放電灯90に供給される電力を精度よく制御できる。したがって、放電灯の明るさを精度よく制御できる放電灯点灯装置を実現できる。
【0103】
本実施形態に係る放電灯点灯装置1においても、第1制御処理を行う期間ごとに電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得し、第2制御処理を行う期間ごとに電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得し、第3制御処理を行う期間ごとに電圧検出部61によって検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得することによって、目標としている電力値を変更するごとに放電灯90の駆動電圧Vlaを取得できるので、放電灯90の状態に合わせて放電灯90の明るさを精度よく制御できる。
【0104】
また、本実施形態係る放電灯点灯装置1においても、第1制御処理を行う期間の後半と第2制御処理を行う期間の後半と第3制御処理を行う期間の後半に放電灯90の駆動電圧Vlaを取得することによって、放電灯90の駆動電圧Vlaが安定しているタイミングで検出された放電灯90の駆動電圧Vlaを取得できる。したがって、放電灯90の明るさを精度よく制御できる。
【0105】
上記各実施形態においては、3つの液晶パネルを用いたプロジェクターを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つ、2つ又は4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクターにも適用可能である。
【0106】
上記各実施形態においては、透過型のプロジェクターを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、反射型のプロジェクターにも適用することが可能である。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶パネル等のように光変調手段としての電気光学変調装置が光を透過するタイプであることを意味しており、「反射型」とは、反射型の液晶パネルやマイクロミラー型光変調装置などのように光変調手段としての電気光学変調装置が光を反射するタイプであることを意味している。マイクロミラー型光変調装置としては、例えば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス;Texas Instruments社の商標)を用いることができる。反射型のプロジェクターにこの発明を適用した場合にも、透過型のプロジェクターと同様の効果を得ることができる。
【0107】
本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクターに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェクターに適用する場合にも可能である。
【0108】
上記各実施形態においては、駆動電流Iの極性反転1/2周期の期間中は、駆動電流Iの絶対値は一定となっている。すなわち、駆動電流Iの波形は、いわゆる矩形状の波形となっている。駆動電流Iの波形はこれに限らず、駆動電流Iの極性反転半周期の期間中において、駆動電流Iの絶対値が、第1の電流値となる期間で始まり、第1の電流値よりも大きい第2の電流値となる期間で終わる波形や、駆動電流Iの極性反転半周期の期間中において、駆動電流Iの絶対値が単調増加する波形など、駆動電流Iの極性反転1周期の期間中において、駆動電流Iの絶対値が異なる値をとる波形であってもよい。
【0109】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0110】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0111】
1 放電灯点灯装置、20 電力制御回路、21 スイッチ素子、22 ダイオード、23 コイル、24 コンデンサー、30 極性反転回路、31 第1のスイッチ素子、32 第2のスイッチ素子、33 第3のスイッチ素子、34 第4のスイッチ素子、40 制御部、41 システムコントローラー、42 電力制御部、43 極性反転制御部、44 記憶部、50 副反射鏡、61 電圧検出部、62 電流検出部、63 抵抗、70 イグナイター回路、80 直流電源、90 放電灯、90e1 第1端部、90e2 第2端部、91 第1電極、92 第2電極、93 放電空間、112 主反射鏡 200 光源装置、210 光源ユニット、230 放電灯駆動部、305 平行化レンズ、310 照明光学系、320 色分離光学系、330R,330G,330B 液晶ライトバルブ、340 クロスダイクロイックプリズム、350 投写光学系、400 プロジェクターシステム、410 アクティブシャッターメガネ、412 右シャッター、414 左シャッター、500 プロジェクター、502 映像信号、510 映像信号変換部、512R,512G,512B 映像信号、514 同期信号、560R,560G,560B 液晶パネル、570 映像処理装置、572R,572G,572B 駆動信号、580 CPU、582 通信信号、584 通信信号、586 制御信号、600 交流電源、700 スクリーン、710 映像、911 突起、921 突起、941,942 導電性部材、951 第1端子、952 第2端子、961,962 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯に電力を供給する放電灯駆動部と、
前記放電灯の駆動電圧を検出する電圧検出部と、
前記放電灯駆動部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記放電灯に供給される電力が第1電力となるように前記放電灯駆動部を制御する第1制御処理と、
前記放電灯に供給される電力が、前記第1電力とは異なる第2電力となるように前記放電灯駆動部を制御する第2制御処理と、
を行い、
前記第1制御処理では、過去に前記第1制御処理が行われた期間中に前記電圧検出部によって検出された前記放電灯の駆動電圧に基づいて前記放電灯駆動部を制御し、
前記第2制御処理では、過去に前記第2制御処理が行われた期間中に前記電圧検出部によって検出された前記放電灯の駆動電圧に基づいて前記放電灯駆動部を制御する、放電灯点灯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放電灯点灯装置において、
前記制御部は、
前記第1制御処理を行う期間ごとに前記電圧検出部によって検出された前記放電灯の駆動電圧を取得し、
前記第2制御処理を行う期間ごとに前記電圧検出部によって検出された前記放電灯の駆動電圧を取得する、放電灯点灯装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の放電灯点灯装置において、
前記制御部は、
前記第1制御処理を行う期間の後半に前記電圧検出部によって検出された前記放電灯の駆動電圧を取得し、
前記第2制御処理を行う期間の後半に前記電圧検出部によって検出された前記放電灯の駆動電圧を取得する、放電灯点灯装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置を含む、プロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−77501(P2013−77501A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217573(P2011−217573)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】