説明

放電灯点灯装置及び照明器具

【課題】放電灯の消灯時にはフィラメントへ待機予熱電流を流す必要がなく、また点灯時には瞬時に点灯し、更に、インバータスイッチへ多大なストレス与えることなく、放電灯の短期点滅寿命を損なうことがない放電灯点灯装置及び該放電灯点灯装置を用いた照明器具を提供する。
【解決手段】直流電源19と、直流電圧を高周波電圧に変換するインバータ回路11と、インバータ回路11の動作周波数を制御するためのインバータ制御回路22と、放電灯Laの電極に先行予熱電流を供給するための予熱回路13とを備える放電灯点灯装置1であって、インバータ制御回路22は、複数の定格電源電圧のうち、最小定格電源電圧と最大定格電源電圧での先行予熱電流の電流×時間の面積比が1:1.2〜1.6となるように先行予熱時間を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱陰極放電灯を点灯させる前に電極を先行予熱させる放電灯点灯装置及び該放電灯点灯装置を用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光灯などの熱陰極放電灯(以下、放電灯と呼ぶ)を点灯させる場合、その両端に始動電圧を印加する前にフィラメントから熱電子が放出するのに充分な電流を流すことで、点滅時のストレスを抑えて短寿命となることを回避している。但し、フィラメント先行予熱を行う先行予熱時間は一般的に1秒〜1.5秒程度に設定されており、点灯までに一定の時間を必要とする。電球のように電源投入と同時に点灯させると、フィラメントが劣化し、短寿命となり易いのである。
【0003】
フィラメント先行予熱を行うようにした従来例として、特許文献1で開示された調光用放電灯点灯装置が知られている。この従来例は、調光器から消灯信号が放電灯点灯装置に入力されると、放電灯に加わる電圧が点灯維持電圧を下回る電圧となる消灯周波数となり、その後、放電灯を即時点灯可能な待機予熱状態とし、且つ放電灯への印加電圧が点弧電圧に達しない状態となる待機予熱周波数へ移行させるものである。消灯時も常にフィラメントに適切な電流を流し、即時点灯を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−223991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述した従来例では、待機予熱状態においても常にフィラメントに電流が流れるので、フィラメントで電力が消費されることになる。このため、待機予熱状態が長い場合には無駄な消費電力が増大してしまう。
【0006】
また、図10に示す回路構成の放電灯点灯装置100においては、インバータスイッチQ1、Q2に図11に示すような電流が流れ、インバータスイッチQ1、Q2に常時ストレスが加わることになる。
【0007】
ここで、図10に示す従来の放電灯点灯装置100の動作を簡単に説明する。同図に示す放電灯点灯装置100は、一般的な昇圧チョッパ回路10とハーフブリッジ型のインバータ回路11の構成を採る。昇圧チョッパ回路10は、チョークコイルL1と、ダイオードD2と、平滑コンデンサC2と、チョッパスイッチ(FET)Q1とで構成され、交流電圧Vinを全波整流回路16で整流された直流電圧が供給される。インバータ回路11は、昇圧チョッパ回路10で得られた直流電圧を高周波電圧に変換して放電灯Laに印加する。インバータ回路11は、インバータスイッチ(FET)Q2、Q3で構成され、出力端にはLC共振回路12と予熱回路13と放電灯Laが接続される。
【0008】
インバータ回路11のインバータスイッチQ2、Q3はインバータ制御回路20で制御され、昇圧チョッパ回路10のチョッパスイッチQ1はチョッパ制御回路21で制御される。インバータ制御回路20とチョッパ制御回路21の電源は、インバータ動作時にはインバータスイッチQ3と並列に接続されたコンデンサC4、C5とダイオードD3、D4と抵抗器R1とから構成される制御電源供給回路17から得られる。
【0009】
但し、LC共振回路12の設計や予熱回路13の設計によっては先行予熱時にはLC共振回路12に流れる共振電流が少ない為、インバータ回路11のインバータスイッチQ2、Q3に図11に示すような波形のドレイン電流が流れることになる。これはインバータスイッチQ2又はQ3がONした時に制御電源供給回路17のコンデンサC4に充電された電荷がONしたインバータスイッチ側へ流れる為である。またこれはインバータスイッチQ2、Q3への電気的、或いは熱的なストレスとなる。
【0010】
インバータ制御回路20とチョッパ制御回路21の電源ラインと接地との間には平滑コンデンサC6が介挿されている。予熱回路13は、トランスT1とコンデンサC7〜C10から構成され、放電灯Laのフィラメントを予熱する。放電灯Laの点灯後はランプ電流が流れるので、LC共振回路12に流れる共振電流は増加する。従って、インバータ回路11のインバータスイッチQ2、Q3に流れるドレイン電流は図12に示すような波形となる。
【0011】
本来は先行予熱時も図12に示すような形のドレイン電流波形が望ましいと言える。先行熱予熱時は共振電流が少ないため、回生電流によってコンデンサC4に充電された電荷が完全に放電されないままインバータスイッチQ2又はQ3がONし、コンデンサC4に充電された電荷が、ONしたインバータスイッチ側へ流れる。
【0012】
以上ように、図10に示す回路構成の従来の放電灯点灯装置においては、特許文献1で開示された調光用放電灯点灯装置のような待機予熱はインバータスイッチQ2、Q3へのストレスを常に加えることになり、故障の原因となる。
【0013】
一方、放電灯Laを瞬時に点灯させる方法として、先行予熱時間を短くし、先行予熱電流を多くすることで、短期間で十分なフィラメント加熱を行い、放電灯Laへ点弧電圧を印加する方法もある。
【0014】
図13は、一般的な高周波点灯専用形蛍光灯の先行予熱時間と先行予熱電流の関係におけるフィラメントのエミッション開始特性とエミッタ蒸発開始特性を示したものである。同図に示すように、予熱時間が長いと、予熱電流が少なくてもエミッションを開始できる。但し、エミッタが蒸発しだす電流も予熱時間が短いときよりも低い値となる。
【0015】
ここで、問題となる点は先行予熱時間を短くした場合(例えば、0.3秒〜0.5秒)、一般的な先行予熱時間(例えば、1.1秒〜1.3秒)よりも先行予熱電流の設計幅が狭くなる(A>B)点である。更に、安定器(図示略)の電源電圧が100V、200V、242Vと共用の場合は図14に示すような波形となり、100Vと242V時の先行予熱電流の差が大きくなる。これは通常、電源投入当初は予熱回路の電源も安定器(図示略)の電源電圧の上昇に応じて増加するため、100Vと242Vでは予熱回路の電源が一定になるまで差があるためである。これは、同一の昇圧チョッパ回路で複数の電源電圧を用いる以上、目標の出力であるチョッパ出力VDCとなるまでの時間は電源電圧によって異なる為である。昇圧チョッパ回路の設計(VDC検出信号のエラーパンプ設計など/フィードバックを早める)によってはある程度改善できるが、同じ昇圧チョッパ回路である以上はVin=100Vと242Vでは必ず差が生じる。図15に示すように、先行予熱時間が1秒程度あれば、その差は相対的に減少する。
【0016】
先行予熱時間が短く、且つ100V〜242Vまで使用される安定器(図示略)においては、100V時と242V時の先行電流に差が生じるため、図13に示す予熱電流設計範囲(B)を超えてしまい、短期点滅寿命が悪化することになる。
【0017】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、放電灯の消灯時にはフィラメントへ待機予熱電流を流す必要がなく、また点灯時には瞬時に点灯し、更に、インバータスイッチへ多大なストレス与えることなく、放電灯の短期点滅寿命を損なうことがない放電灯点灯装置及び該放電灯点灯装置を用いた照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の放電灯点灯装置は、直流電源と、前記直流電源から出力される直流電圧を高周波電圧に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路の動作周波数を制御するためのインバータ制御回路と、放電灯の電極に先行予熱電流を供給するための予熱回路と、を備える放電灯点灯装置であって、前記インバータ制御回路は、複数の定格電源電圧のうち、最小定格電源電圧と最大定格電源電圧での先行予熱電流の電流×時間の面積比が1:1.2〜1.6となるように先行予熱時間を設定する。
【0019】
上記構成によれば、電圧値の異なる複数の電源電圧での先行予熱電流の電流×時間の面積比を1:1.2〜1.6となるように先行予熱時間を短く設定したので、定格電源電圧が複数ある場合でも、人の感じる時間として充分即時点灯と言えるほど先行予熱時間を短くし、ランプの短期点滅寿命を損なうことのない放電灯点灯装置を提供することができる。
【0020】
上記構成において、前記予熱回路から供給される先行予熱電流はその予熱周波数により増減するものであり、前記インバータ制御回路は、前記直流電源の出力電圧に応じて先行予熱周波数を変化させる。
【0021】
上記構成によれば、定格電源電圧に応じて、先行予熱周波数を変化させることができるので、更に幅広い定格電源電圧、或いはチョッパ回路設計においても人の感じる時間として充分即時点灯と言えるほど先行予熱時間を短くし、ランプの短期点滅寿命を損なうことのない放電灯点灯装置を提供することができる。
【0022】
また、上記構成において、前記インバータ回路を構成するインバータスイッチと並列に接続されたコンデンサとダイオードを含み、前記インバータ制御回路の動作用電源を該インバータ制御回路へ供給する制御電源供給回路を更に備えた。
【0023】
上記構成によれば、先行予熱期間中のインバータスイッチのストレス印加時間を極力少なくすることができる。
【0024】
また、上記構成において、人体の有無を検知する人体検知センサを更に備え、前記インバータ制御回路は、前記人体検知センサからの信号を受けて、放電灯を点灯或いは調光或いは消灯させるように制御する。
【0025】
上記構成によれば、人感センサを用いた照明器具においても待機予熱方式を用いることなく、人非検知時の無駄な消費電力を無くし、即時点灯による利便性と安全性を向上させることができる。
【0026】
本発明の照明器具は、前記放電灯点灯装置と、前記放電灯点灯装置により点灯動作が制御される放電灯と、を備える。
【0027】
上記構成によれば、短期点滅寿命を損なうことなく従来商品よりも即時点灯をすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、放電灯の消灯時にはフィラメントへ待機予熱電流を流す必要がなく、また点灯時には瞬時に点灯し、更に、インバータスイッチへ多大なストレス与えることがないことから、放電灯の短期点滅寿命を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1に係る放電灯点灯装置の回路構成を示す図
【図2】図1の放電灯点灯装置において電源電圧を100Vとした場合のチョッパ出力VDCと先行予熱電流との波形を示す図
【図3】図1の放電灯点灯装置において電源電圧を242Vとした場合のチョッパ出力VDCと先行予熱電流との波形を示す図
【図4】本発明の実施の形態2に係る放電灯点灯装置の回路構成を示す図
【図5】図4の放電灯点灯装置において電源電圧を100Vとした場合の先行予熱電流とインバータ動作周波数の関係を示す図
【図6】図4の放電灯点灯装置において電源電圧を242Vとした場合の先行予熱電流とインバータ動作周波数の関係を示す図
【図7】本発明の実施の形態3に係る放電灯点灯装置の回路構成を示す図
【図8】制御電源供給回路においてコンデンサ容量を大きくした場合の先行予熱期間におけるインバータ回路のインバータスイッチのドレイン電流の波形を示す図
【図9】本発明の実施の形態4に係る照明装置の概略構成を示すブロック図
【図10】従来の放電灯点灯装置の回路構成を示す図
【図11】図10の放電灯点灯装置のインバータスイッチに流れる電流を示す図
【図12】先行予熱時の理想的なドレイン電流波形を示す図
【図13】一般的な高周波点灯専用形蛍光灯の先行予熱時間と先行予熱電流の関係におけるフィラメントのエミッション開始特性とエミッタ蒸発開始特性を示す図
【図14】先行予熱時間を0.4秒とし、安定器の電源電圧を100V、242Vとしたときの予熱電流の波形を示す図
【図15】先行予熱時間を1.2秒とし、安定器の電源電圧を100V、242Vとしたときの予熱電流の波形を示す図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る放電灯点灯装置の回路構成を示す図である。なお、図1において前述した図10と共通する部分には同一の符号を付けている。
【0032】
図1において、本実施の形態の放電灯点灯装置1は、従来の放電灯点灯装置100と同様に、昇圧チョッパ回路10とハーフブリッジ型のインバータ回路11の構成を採る。昇圧チョッパ回路10と全波整流回路16は直流電源19を構成する。インバータ回路11の出力には、LC共振回路12と予熱回路13と放電灯Laを含む負荷回路14が接続されている。電源電圧Vinは100V〜242Vまで入力可能であり、何れの電圧が入力されてもチョッパ出力VDCは一定となる。昇圧チョッパ回路10のチョッパ出力VDCは、インバータ回路11と負荷回路14への電源となる。従って、予熱回路13から放電灯Laへ供給される予熱電流もチョッパ出力VDCの値によって変化する。
【0033】
昇圧チョッパ回路10のチョッパ動作はチョッパ制御回路21で制御され、インバータ回路11のインバータ動作はインバータ制御回路22で制御される。また、先行予熱時間はインバータ制御回路22で設定される。予熱〜始動〜点灯のインバータ周波数が変化することで適切な先行予熱電流、始動電圧、定格点灯出力電力を放電灯Laに加えることができる。先行予熱期間の点灯周波数は固定されている。
【0034】
図2は、電源電圧を100Vとした場合のチョッパ出力VDCと先行予熱電流との波形を示す図である。また、図3は、電源電圧を242Vとした場合のチョッパ出力VDCと先行予熱電流との波形を示す図である。図2及び図3に示すように、電源電圧が100Vの場合、電源電圧が242Vの場合に比べ、先行予熱期間にチョッパ出力VDCが一定となるまでの時間が長いことが分かる。昇圧チョッパ回路10の設計が同じであるため、電源電圧の大きさに応じて、チョッパ出力VDCまで電源電圧を昇圧するまでの時間が異なる。電源電圧が小さいと、昇圧されるチョッパ出力が目標の値となるまでに時間を要することは一般的な昇圧チョッパ回路においてやむを得ない。
【0035】
本実施の形態の特徴的な点は、電源電圧Vin=100VとVin=242Vとの先行予熱電流の電流×時間の面積比が、1:1.2〜1.6になるように先行予熱時間を短く設定している点である。これは、一般的な熱陰極蛍光ランプの同じ先行予熱時間におけるエミッション開始の予熱電流とエミッタ蒸発開始の予熱電流の比が1:1.2〜1.6となっていることによる。実験的にも高周波点灯専用形蛍光灯FHT32とFHT63において電源電圧が100Vと242Vでそれぞれ先行予熱電流の電流×時間の面積比が1:1.4となる状態で点滅寿命試験(「日本工業規格JIS7617−2 直管蛍光灯−第2部:性能規定」に寿命についての規定、付属書C(光束維持率と寿命の試験方法)にその試験方法が記載されている)を行ったところ、所望の短期点滅寿命(4万回以上でも断線せず)を満足することができた。ここでは電源電圧によらず、先行予熱周波数は一定であり、先行予熱時間を調整することで、先行予熱電流の電流×時間の面積比をVin=100VとVin=242Vで1:1.4となるように調整している。
【0036】
このように本実施の形態の放電灯点灯装置1によれば、電源電圧Vin=100Vと242Vでの先行予熱電流の電流×時間の面積比を1:1.2〜1.6となるように先行予熱時間を短く設定したので、短期点滅寿命を損なうことなく従来商品よりも即時点灯をすることができる。具体例として、先行予熱時間が0.5秒以下であれば、人の目には即時点灯と感じられることが実験的に得られている。
【0037】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る放電灯点灯装置の回路構成を示す図である。なお、図4において前述した図10及び図1と共通する部分には同一の符号を付けている。本実施の形態の放電灯点灯装置2は、チョッパ出力電圧VDCを検出するチョッパ出力検出回路30を有している点が、前述した実施の形態1の放電灯点灯装置1と異なる。
【0038】
チョッパ出力検出回路30は、3つの直列接続された抵抗R5〜R7と、抵抗R7に並列接続されたコンデンサC12とを有し、昇圧チョッパ回路10の出力側に並列に介挿されている。チョッパ出力検出回路30の検出信号(チョッパ出力)S1はインバータ制御回路23に入力される。インバータ制御回路23は、チョッパ出力検出回路30の検出信号S1に応じて、先行予熱時のインバータ周波数を変化させる。なお、チョッパ出力検出回路30は、実際にはチョッパ制御用に使用される回路を兼用しても良い。
【0039】
図5は、電源電圧を100Vとした場合の先行予熱電流とインバータ動作周波数の関係を示す図である。図6は、電源電圧を242Vとした場合の先行予熱電流とインバータ動作周波数の関係を示す図である。図5及び図6に示すように、Vin=242Vでは、先行予熱時周波数はインバータ動作開始後、すぐに120kHzで一定となるが、Vin=100Vでは、チョッパ出力電圧VDCに応じて、160kHzから120kHzへと変化している。この動作により、インバータ回路11と予熱回路13を含む負荷回路14の電源となるチョッパ出力電圧VDCが低い状態でもVin=242Vとほぼ同じ程度のフィラメント予熱電流を供給することができる。
【0040】
以上の動作により、電源電圧Vinが変化しても即時点灯が可能で短期点滅寿命を満足することができる。例えば、先行予熱時にインバータ回路11で消費される電力に相当するインバータスイッチQ3のドレイン電流を検出し、フィードバックすることでVin=100V時とVin=242V時のフィラメント消費電力を同じにしようとしても、従来例(図10)の回路では先行予熱電流は図11のような波形となるため、正確にフィードバックをすることができない。また、先行予熱時にフィラメントで消費される電力を同じにするようにフィラメント電力(或いはフィラメント電流)をフィードバックすれば、Vin=100V時でもVin=242V時でも短期点滅寿命を満足することができるが、フィードバック用の回路を追加する必要があり、コストアップとなる。
【0041】
このように本実施の形態の放電灯点灯装置2によれば、昇圧チョッパ回路10のチョッパ出力を検出するチョッパ出力検出回路30の検出信号S1に応じて、先行予熱周波数を変化させるので、前述した実施の形態1の放電灯点灯装置1よりも更に幅広い定格電源電圧、或いはチョッパ回路設計においても人の感じる時間として充分即時点灯と言えるほど先行予熱時間を短くし、放電灯Laの短期点滅寿命を損なうことのない放電灯点灯装置を提供することが可能となる。
【0042】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3に係る放電灯点灯装置の回路構成を示す図である。なお、図7において前述した図10と共通する部分には同一の符号を付けている。本実施の形態の放電灯点灯装置3の特徴的な点は、昇圧チョッパ回路10のチョッパ制御回路21の制御電源とインバータ回路11のインバータ制御回路22の制御電源をインバータスイッチQ3と並列に接続された制御電源供給回路17から供給している点である。
【0043】
制御電源供給回路17のコンデンサC4は、インバータ動作後に十分な電流をインバータ制御回路22及びチョッパ制御回路21へ供給するために一定以上のコンデンサ容量が必要となる。しかし、従来例において述べたように、コンデンサ容量が大きいと先行予熱期間にインバータ回路11のインバータスイッチQ2、Q3のドレイン電流が図8のような波形となり、インバータスイッチQ2、Q3へのストレスとなる。即時点灯を可能とするために、ランプ消灯時に待機予熱を行うと常にストレスがインバータスイッチQ2、Q3へ加わることになる。長時間のストレス印加はインバータスイッチQ2、Q3の故障の原因となる。
【0044】
そこで、本実施の形態では、インバータ制御回路22において、先行予熱電流の電流×時間の面積比を電源電圧Vin=100Vと242Vで1:1.4となるように先行予熱時間を短く設定している。先行予熱時間を約0.4秒にすることで放電灯Laの即時点灯が可能となる。
【0045】
このように本実施の形態の放電灯点灯装置3によれば、図7の回路構成であっても、インバータ制御回路22において、先行予熱電流の電流×時間の面積比を電源電圧Vin=100Vと242Vで1:1.4となるように先行予熱時間を短く設定しているので、インバータ回路11のインバータスイッチQ2、Q3へのストレス印加時間を極力短くできて短期点滅寿命を損なうことがない。また、即時点灯が可能となる。
【0046】
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4に係る照明器具の概略構成を示すブロック図である。本実施の形態の照明器具5は、赤外線を用いて人の有無を検知する焦電センサ等の人感センサ40を有する放電灯点灯装置4を備えたものである。なお、放電灯点灯装置4は、全波整流回路16の前段に入力フィルタ回路15を備えている。この入力フィルタ回路15は、前述した実施の形態1〜実施の形態3の放電灯点灯装置1〜3にも勿論適用可能であり、寧ろ一般的に使用されるものである。また、この入力フィルタ回路15と全波整流回路16と昇圧チョッパ回路10は直流電源19Aを構成する。
【0047】
放電灯点灯装置4において、ランプ消灯時に人感センサ40が人を検知するとインバータ制御回路24へH信号を出力する。インバータ制御回路24は、H信号を検知すると、放電灯Laのフィラメントに適切な予熱を行いその後、ランプ両端に始動電圧を加えて点灯させる。
【0048】
本実施の形態では、インバータ制御回路24において、先行予熱電流の電流×時間の面積比を電源電圧Vin=100Vと242Vで1:1.4となるように先行予熱時間を短く設定している。先行予熱時間を約0.4秒にすることで放電灯Laの即時点灯が可能となる。従来のような先行予熱時間に1秒以上を有するような放電灯点灯装置100では、周囲が暗い状態での通路や階段において不便であった。人を検知した後点灯するまで時間が掛かるので人は数歩通路や階段を歩いてしまい場合によっては危険性もある。
【0049】
このように本実施の形態の照明器具5によれば、放電灯点灯装置4が人感センサ40を有して人の有無を検知するので、即時点灯による利便性、安全性が向上し、待機予熱を行わなくてもよく、人が居ない場合に待機電力を抑えることができる。なお、これまでの実施の形態1〜3のように電源電圧が変化しても、短期点滅寿命を損なうことがないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1〜4 放電灯点灯装置
5 照明器具
10 昇圧チョッパ回路
11 インバータ回路
12 LC共振回路
13 予熱回路
14 負荷回路
15 入力フィルタ回路
16 全波整流回路
17 制御電源供給回路
19、19A 直流電源
21 チョッパ制御回路
22、23、24 インバータ制御回路
30 チョッパ出力検出回路
40 人感センサ
La 放電灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
前記直流電源から出力される直流電圧を高周波電圧に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路の動作周波数を制御するためのインバータ制御回路と、
放電灯の電極に先行予熱電流を供給するための予熱回路と、
を備える放電灯点灯装置であって、
前記インバータ制御回路は、複数の定格電源電圧のうち、最小定格電源電圧と最大定格電源電圧での先行予熱電流の電流×時間の面積比が1:1.2〜1.6となるように先行予熱時間を設定する放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記予熱回路から供給される先行予熱電流はその予熱周波数により増減するものであり、前記インバータ制御回路は、前記直流電源の出力電圧に応じて先行予熱周波数を変化させる請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記インバータ回路を構成するインバータスイッチと並列に接続されたコンデンサとダイオードを含み、前記インバータ制御回路の動作用電源を該インバータ制御回路へ供給する制御電源供給回路を更に備えた請求項1又は請求項2に記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
人体の有無を検知する人体検知センサを更に備え、
前記インバータ制御回路は、前記人体検知センサからの信号を受けて、放電灯を点灯或いは調光或いは消灯させるように制御する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の放電灯点灯装置と、
前記放電灯点灯装置により点灯動作が制御される放電灯と、
を備えた照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−29054(P2011−29054A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175113(P2009−175113)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】