説明

放電破壊装置

【課題】衝撃力の伝播方向を任意に制御できて、破壊作業を精度よく実施する。
【解決手段】金属細線に所定量の電気エネルギーを供給して急激に溶融気化させ、金属細線の周囲に設けた爆発性の破壊用物質を爆発させて被破壊物を破壊する放電カートリッジ1と、この放電カートリッジ1に外嵌される破壊制御容器10とを具備し、破壊制御容器10は、容器軸心Oを通る縦断面に沿って二分割された金属製の分割容器11と、これら分割容器11を連結固定して破壊制御容器10を形成する複数の連結具12とで構成され、分割容器11を破壊用物質の爆発により破壊されない耐衝撃強度を有する厚肉状に形成し、複数の連結具12を破壊用物質の爆発により破断されて分割容器11を分離させる耐衝撃強度とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電による衝撃エネルギーを用いた放電破壊装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電による衝撃エネルギーを用いてコンクリート構造物や岩盤などを破壊する放電カートリッジは、有底状の容器内に一対の電極部材を介して溶融気化物質である金属細線を配置し、容器に破壊用物質を充填して開口部を閉鎖部材で閉鎖したものである。
【0003】
この放電カートリッジを用いた破壊作業は、被破壊物の破壊部分に装着穴を形成し、この装着穴に放電カートリッジを底部まで挿入配置した後、装着穴の開口部側を土砂などのタンピング材を充填加圧して閉じ、放電カートリッジの衝撃エネルギーが装着穴の開口部から漏れるのを防止する。この種の技術は、たとえば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特許第3770663号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記放電破壊装置では、衝撃力が破壊用物質を中心に放射方向に均等に広がる。また特許文献1のように、装着穴の開口部にタンピング材を充填した場合には、タンピング材により衝撃力が開口部側に漏れるのが防止される。したがって、衝撃力が装着穴の周方向および奥行き方向に広がって伝播されて、被破壊物が破壊される。
【0005】
近年、たとえばコンクリート建造物のリニューアルにおいて、脆弱化した部分のみを破壊したい場合、健全な部分に衝撃力の影響が及ばないように、衝撃力の伝播方向をできるだけ任意に制御することが望まれている。
【0006】
本発明は上記問題点を解決して、衝撃力の伝播方向を任意に制御できて、破壊作業を精度よく実施できる放電破壊装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、収納容器内に挿入配置した溶融気化物質に、所定量の電気エネルギーを供給することにより、溶融気化物質を急激に溶融気化させ、溶融気化物質の溶融気化現象に伴って、溶融気化物質の周囲に設けた爆発性の破壊用物質を爆発させて被破壊物を破壊する放電カートリッジと、当該放電カートリッジに外嵌される破壊制御容器とを具備し、破壊制御容器は、容器軸心を通る縦断面に沿って二等分割または三等分割された金属製の分割容器と、これら分割容器を連結固定して破壊制御容器を形成する複数の連結具とで構成され、分割容器を前記破壊用物質の爆発により破壊されない耐衝撃強度を有する厚肉状に形成し、複数の連結具の耐衝撃強度を、前記破壊用物質の爆発により破断されて分割容器を分離させるように設定したものである。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、分割容器の周壁部の外周部に、隣接する分割容器の外周部に伸び分割容器が離間した初期時に衝撃力の漏出を防止する周面鍔部を形成したものである。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成において、分割容器の底部に、分割面から隣接する分割容器の底部に伸び分割容器が離間した初期時に衝撃力の漏出を防止する底面鍔部および天面鍔部を形成したものである。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成において、分割容器が同一形状で同一重量に形成されたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の構成によれば、放電カートリッジを複数の分割容器からなる破壊制御容器で被覆し、放電カートリッジの爆発による衝撃力で連結具を破断して分割容器を分離させ、衝撃力を分割容器を介して被破壊物に伝播し破壊するので、分割容器の加圧方向にのみ大きい衝撃力を被破壊物に伝播させることができ、衝撃力に伝播指向性を持たせて破壊方向を制御することができる。したがって、破壊したい部分と衝撃力の影響が及ばない部分とに分けて、効果的に破壊作業を行うことができる。また分割容器を、破壊用物質の爆発により破壊されない耐衝撃強度を有する厚肉状に形成したので、繰り返しの使用が可能となり、コストダウンを図ることができる。
【0012】
請求項2または3記載の構成によれば、周面鍔部、底面鍔部、天面鍔部により、爆発初期の衝撃力が分割面の隙間から漏出するのを防止することができ、衝撃力の伝播指向性を明瞭にすることができる。
【0013】
請求項4記載の構成によれば、分割容器を同一形状で同一重量に形成することで、製造コストを低減することができ、分割容器に互換性ができて使い勝手がよくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
図1,図2に示すように、本発明に係る放電破壊装置は、放電カートリッジ1と、この放電カートリッジ1に外嵌される2分割の破壊制御容器10とで構成され、放電カートリッジ1の容器軸心Oを中心とした対称方向に伝播指向性を有するものである。
【0015】
放電カートリッジ1は、たとえば樹脂製で有底状の収納容器2に、一対の電極3を一定間隔をあけて開口部2aから軸心部近傍に挿入配置し、電極3の先端部間に金属細線4(溶融気化物質の一例で、たとえばCuからなる)を連結し、収納容器2内で金属細線4の周囲に所定量の爆発性の破壊用物質5(ニトロメタンなどの爆発性物質あるいは可燃性物質が用いられる)を充填し、円筒容器2の開口部を蓋材(収納容器)6で閉じて爆発性の破壊用物質5を封入している。なお、一対の電極3は、蓋材6を貫通してそれぞれの電極端子3aが外部に露出している。
【0016】
破壊制御容器10は、容器軸心Oを通る縦断面に沿って分割面13で二分割された金属製の分割容器11と、これら分割容器11を連結固定して破壊制御容器10を形成する複数の連結具(連結ボルト)12とで構成されている。これら分割容器11は、放電カートリッジ1の破壊用物質5の爆発による衝撃力で破壊されない耐衝撃強度を有する肉厚状の底壁部11aと周壁部11bと天壁部11cからなり、たとえば材質がたとえば鋼管などの構造用鋼材などが使用され、この場合の各壁部11a〜11cの厚みは、たとえば20mm〜50mmの範囲に形成される。
【0017】
連結具12は、分割面の両側で分割容器11の周壁部11bに、取付面11dを貫通する3個2組の貫通穴11eが所定間隔をあけて形成され、6つの貫通穴11eにそれぞれ嵌合されている。これら6本の連結具12は、破壊用物質5の爆発により分割容器11が衝撃力を受けると、その衝撃力により破断されて分割容器11を互いに分離させることができる衝撃強度に設定されている。
【0018】
分割容器11の天壁部11cには、電極端子3aに接続されるリード線7A,7Bが挿入可能な半割状の貫通溝14が分割面13に臨んで形成されている。また天壁部11cの容器軸心O位置に、分割面13で二分割される半割状の雌ねじ穴16が所定深に形成され、ロッドRの先端雄ねじ部を雌ねじ穴16に螺着して、後述するように、被破壊物の装着穴に放電破壊装置を保持することができる。18は分割容器11の天壁部11cにそれぞれ装着された吊下げ用のIボルトで、ワイヤーWなどを連結しておき、破壊後の分割容器11の回収に使用する。
【0019】
両分割容器11は同一形状で同一重量に形成されている。そして周壁部11bには、分割面13の一側部から他方の分割容器11の周壁部11b側に突出する周面鍔部(鍔部)16が形成され、分割面13の他側部に、他方の分割容器11の周面鍔部16が嵌合される周面鍔受け部(凹部)17が形成されている。この周面鍔部16により、放電カートリッジ1の衝撃力の発生初期に、分割面13が離間した隙間からの衝撃力の漏出を防止することができる。
【0020】
図3に示すように、放電カートリッジ1の電極3に電気エネルギーを供給するエネルギー供給回路21は、リード線7A,7Bに接続される一対の導線22A,22Bがそれぞれ接続された電源装置(直流高電圧電源)23と、一対の導線22A,22B間に並列接続されたコンデンサー24と、一方の導線22Aに介在された放電スイッチ25(パワースイッチングユニット)とで構成されている。
【0021】
放電破壊作業において、まず衝撃力の大きさと伝播指向性とを考慮して、被破壊物Mの所定位置に、所定方向で、所定深さの装着穴Tを形成し、ロッドRに取り付けた放電破壊装置を装着穴Tに挿入し、ロッドRを支持装置(図示せず)により保持させる。なお、装着穴Tに放電破壊装置を挿入後、タンピング材を装着穴Tに充填して突き固め、開口部を封鎖してもよい。
【0022】
一方、エネルギー供給回路21では、電源装置23からコンデンサー24に金属細線4を溶融気化させるのに必要な量の電気エネルギーを蓄積する。そして、放電スイッチ25をオンして、コンデンサー23から電極3を介して金属細線4に電気エネルギーを供給すると、金属細線4が溶融気化されてその体積膨張により衝撃エネルギーが発生する。この時の放電、火花、発熱、体積膨張に伴う衝撃エネルギーにより、破壊用物質5が爆発する。この衝撃エネルギーは、図3に示すように、装着穴Tの長さ方向への衝撃力の漏れはほとんどなく、また放電破壊装置の周方向では、両分割容器11が配置された両側に大きい衝撃力が伝播される8の字ビーム形に伝播指向性が生じ、被破壊物Mを効果的に破壊することができる。
【0023】
上記実施の形態1によれば、放電カートリッジ1を複数の分割容器11からなる破壊制御容器10で被覆し、放電カートリッジ1の破壊用物質5による爆発の衝撃力で連結具12を破壊して分割容器11を分離させ、分割容器11を介して衝撃力を被破壊物Tに伝播させ破壊するので、分割容器11の分離方向F1,F2にのみ、大きい衝撃力を伝播させて破壊方向を制御することができる。これにより、構造物の脆弱化した部分のみを破壊し、健全な部分に衝撃力の影響が及ばないようにすることが可能となる。
【0024】
また分割容器11の各壁部11a〜11cを、破壊用物質5の爆発により破壊されない耐衝撃強度を有する厚肉状に形成したので、分割容器11の繰り返し使用が可能となり、コストダウンを図ることができる。
【0025】
さらに分割面13から他方の分割容器11側に突出する周面鍔部16により、衝撃力により分割面13に生じた隙間から、衝撃力の漏出するのを防止することができ、衝撃力の伝播指向性をより明瞭化することができる。
【0026】
さらにまた、分割容器11を同一形状で同一重量に形成することで、均等な伝播指向性を得ることができるとともに、製造コストを低減することができ、分割容器11に互換性ができて使い勝手を向上させることができる。
【0027】
以上のように、上記放電破壊装置により、破壊方向に指向性を持たせることができるので、たとえば建築物のリニューアルにおいて、コンクリート構造物や天然石などの脆弱化した部分のみを限定的に破壊して除去するのに最適であり、他の部分に悪影響を与えないように破壊することができる。
【0028】
[実施の形態1の変形例1]
図4は、上記放電破壊装置の実施の形態1変形例を示す。なお、実施の形態1と同一部材には、同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
破壊制御容器10の一方の分割容器11Aの底壁部11aの端部に、分割面13から他方の分割容器11B側に突出する底面鍔部(端面鍔部)31Bが設けられるとともに、他方の分割容器11Bの天壁部11cの端部に、分割面13から一方の分割容器11A側に突出する天面鍔部(端面鍔部)31Aが設けられている。そして、他方の分割容器11Bの底壁部11aに、底面鍔部31Bが嵌合される底面鍔受け凹部32Bが形成され、また一方の分割容器11Aの天壁部11cに天面鍔部31Aが嵌合される天面鍔受け凹部32Aが形成されている。
【0030】
上記底面鍔部31Bおよび天面鍔部31Aにより、衝撃力により連結具12が伸びて分割容器11の分割面13に僅かに離間した隙間からの衝撃力の漏出を防止することができ、衝撃力の伝播指向性をさらに明瞭にすることができる。もちろん、底壁部11aと天壁部11cの一方に鍔部を設けてもよい。
【0031】
[実施の形態1の他の変形例]
図5は破壊制御容器10の変形例で、なお、実施の形態1と同一部材には、同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
上記実施の形態1では、破壊制御容器10を円筒形容器状に形成したが、破壊制御容器10を、図5(b)に示すように円錐台形の破壊制御容器41や図5(c)に示すように戴頭部を有する紡錘体形の破壊制御容器42、図5(d)に示すように截頭部を有する球体形の破壊制御容器43などのように、他の回転体形状の容器状としてもよいし、図5(a)に示すように多角筒体の破壊制御容器44であってもよく、それぞれ実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0033】
[実施の形態2]
図6は、破壊制御容器50を3等分割して分割容器51を形成したものである。なお、実施の形態1と同一部材には、同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
この破壊制御容器50は、円筒形容器を容器軸心Oを含む120°ごとの3つの縦断面に沿う分割面53で3等分して分割容器51A〜51Cを形成したもので、組立の関係から、周面鍔部53が両側部に形成された分割容器51Aと、周面鍔部53が一側部に形成され他側部に周面鍔部54が形成された分割容器51Bと、周面鍔受け部54が両側部に形成された分割容器51Cとで構成されている。
【0035】
上記実施の形態2において、爆発性の破壊用物質5の爆発により生じる衝撃力が、破壊制御容器50の各分割容器51A〜51Cを加圧し、まず分割容器51A〜51Cの連結具12を破断させて各分割容器51A〜51Cを分離させ、さらに各分割容器51A〜51Cを容器軸心Oを中心として180°ごとの放射方向F1〜F3に加圧し、被破壊物Tを破壊する。
【0036】
上記実施の形態2によれば、放電カートリッジ1の破壊用物質5により生じる爆発による衝撃力により、連結具12を破断して分割容器51A〜51Cを分離させ、分割容器51A〜51Cを120°ごとに均等な放射方向F1〜F3に加圧して破壊する衝撃力の伝播指向性を持たせることができる。これにより、衝撃力の伝播方向を制御して、構造物の脆弱化した部分のみを破壊し、健全な部分に衝撃力の影響が及ばないようにすることが可能となる。
【0037】
なお、破壊制御容器10を4等分して、容器軸心Oの周方向にほぼ均等に衝撃力を伝播させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る放電破壊装置の実施の形態1を示し、(a)は縦断面図、(b)は平面図、(c)は放電カートリッジの縦断面図である。
【図2】放電破壊装置の使用状態を示す縦断面図である。
【図3】放電破壊装置の破壊後の状態を示し、(a)は破壊指向性を表した縦断面図、(b)は破壊指向性を表した平面図である。
【図4】放電破壊装置の変形例を示し、(a)は平面図、(b)は縦断面図、(c)は底面図である。
【図5】放電破壊装置の他の変形例を示す斜視図で、(a)は多角筒体形、(b)は円錐台形、(c)は紡錘体形、(d)は球体形を示す。
【図6】本発明に係る放電破壊具の実施の形態2を示し、破壊指向性を表した平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 放電カートリッジ
2 円筒容器(破壊容器)
3 電極
4 金属細線(溶融気化物質)
5 爆発性の破壊用物質
10 破壊制御容器
11 分割容器
11a 底壁部
11b 周壁部
11c 天壁部
12 連結具
13 分割面
21 エネルギー供給装置
22A,22B 導線
23 電源装置
24 コンデンサー
25 放電スイッチ
31A 底面鍔部
31B 天面鍔部
32A 底面鍔受け部
32B 天面鍔受け部
41〜44 破壊制御容器
51A〜51C 分割容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納容器内に挿入配置した溶融気化物質に、所定量の電気エネルギーを供給することにより、溶融気化物質を急激に溶融気化させ、溶融気化物質の溶融気化現象に伴って、溶融気化物質の周囲に設けた爆発性の破壊用物質を爆発させて被破壊物を破壊する放電カートリッジと、当該放電カートリッジに外嵌される破壊制御容器とを具備し、
破壊制御容器は、容器軸心を通る縦断面に沿って二等分割または三等分割された金属製の分割容器と、これら分割容器を連結固定して破壊制御容器を形成する複数の連結具とで構成され、
分割容器を前記破壊用物質の爆発により破壊されない耐衝撃強度を有する厚肉状に形成し、
複数の連結具の耐衝撃強度を、前記破壊用物質の爆発により破断されて分割容器を分離させるように設定した
ことを特徴とする放電破壊装置。
【請求項2】
分割容器の周壁部の外周部に、隣接する分割容器の外周部に伸び分割容器が離間した初期時に衝撃力の漏出を防止する周面鍔部を形成した
ことを特徴とする請求項1記載の放電破壊装置。
【請求項3】
分割容器の底部に、分割面から隣接する分割容器の底部に伸び分割容器が離間した初期時に衝撃力の漏出を防止する底面鍔部および天面鍔部を形成した
ことを特徴とする請求項1または2記載の放電破壊装置。
【請求項4】
分割容器が同一形状で同一重量に形成された
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の放電破壊装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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