説明

放電管のガラス間接合方法及び放電管

【課題】全体的に小型でかつ電極間に電極構造の位置ずれが生じることのない放電管のガラス間接合方法及び放電管を提供する。
【解決手段】正電極板と負電極板とを電極支持ピンを介して対向配置した状態で支持する台座ガラス120と、所望の光線を透過させる光線透過部を有し、電極板140を囲むように台座ガラスの外周縁部に接合される側面ガラスとを備える放電管のガラス間接合方法であって、台座ガラス及び側面ガラスの軟化温度よりも低い軟化温度を有する接合用ガラス成形体170を、台座ガラスと側面ガラスとの接合部に配置する工程と、台座ガラス及び側面ガラスの軟化温度未満かつ接合用ガラス成形体の軟化温度以上の温度で放電管のガラス間接続部を焼成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばボイラ等の着火状態を検出するのに好適に利用されるUVチューブ等の放電管のガラス間接合方法及び放電管に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばボイラ等の着火状態を簡単に検出するのに、放電管をなす紫外線検出器の1つとしてUVチューブが好適に利用されている。このUVチューブを製造するにあたって、電極が配置されたガラスボタンステム(以下、「ボタンステム」とする)と、ガラスエンベロープ(以下、「エンベロープ」とする)とを接合させている。この接合に際して、火炎バーナーを用いて両部材を直接溶融させて接合するか、エンベロープとボタンステムとの間にフリットガラスを介在させて、フリットガラスを火炎バーナーで加熱溶融させることで両部材を接合している。
【0003】
ここで、例えば特許文献1には、ガラスバルブと、ガラスバルブの両端に配置され、電極構造体を備えたガラスステムからなるチップレス放電管において、ガラスステムの軟化温度をガラスバルブの軟化温度よりも低くすることで、真空封着炉内で直接両者のガラスを軟化させ溶着させる際にガラスバルブの溶融部近傍が外方に凸状に膨出するのを防ぐ構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−182634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで一般に小型のUVチューブにおいて感度特性を上げるためには大きな電極板を備えるのが好ましく、かつ正負の電極板間隔を一定に保つ必要がある。しかしながら、小型のUVチューブとするためにはエンベロープ自体を小型化しなければならないので、電極板が大きくなるほど電極板の側縁、即ち電極支持ピンの基端部とエンベロープ及びボタンステムの接合部との距離が短くなる。そのため、ボタンステムとエンベロープとの接合時の熱の影響で電極板間隔にずれが生じることがあり、製造歩留まりが安定しないという問題が生じる。
【0006】
なお、上述した特許文献1に記載の構成により、溶着時のガラスバルブの膨出を抑えることはできるものの、ボタンステムが溶解するために電極構造のずれを完全に防ぐことができないので、上述の問題解決のための対策とはならない。
【0007】
この課題を図7に基づいて具体的に説明する。図7は、従来のUVチューブを長手方向に沿って示した断面図である。感度の優れた小型のUVチューブ500を製造するためには、UVチューブ内にできる限り大きな電極540(アノード電極541、カソード電極542)を設けることが必要である。しかしながら、電極540が大きいほど、必然的に電極540に接続される電極支持ピン530はボタンステム520のより外周に配置されてしまう。
【0008】
エンベロープ510とボタンステム520を接合するにあたって、一部が紫外線透過ガラスでできたエンベロープ510と、電極支持ピン及び電極を設計寸法通りに規定した状態でガラスを成型して一体化させてできたボタンステム520を火炎バーナーを用いて接合し封着する(図7におけるバーナーの火炎を示す矢印参照)。ここで、正負一対の平板状の電極540は、その両者の間隔精度が放電現象に大きな影響を与える。しかしながら、より外周に配置された電極支持ピン530の挿通されたボタンステム520が、エンベロープ510とボタンステム520との接合時に過度に加熱されることで、電極支持ピン530の基端部近傍のボタンステム520が軟化するために電極支持ピン530が傾くことで電極間隔がずれてしまうことがある。
【0009】
このように小型で感度の良いUVチューブを作るためにはできるだけ電極を大きくすることが求められる反面、電極板を大きくすることで接合時の熱影響を受けてしまい、感度を確保することが困難となるので、両者は相反する関係にあると言える。
【0010】
本発明の目的は、全体的に小型でかつ電極間に電極構造の位置ずれが生じることのない放電管のガラス間接合方法及び放電管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る放電管のガラス間接合方法は、
正電極板と負電極板とを電極支持ピンを介して対向配置した状態で支持する台座ガラスと、所望の光線を透過させる光線透過部を有し、電極板を囲むように台座ガラスの外周縁部に接合される側面ガラスとを備える放電管のガラス間接合方法であって、
前記台座ガラス及び側面ガラスの軟化温度よりも低い軟化温度を有する接合用ガラス成形体を、前記台座ガラスと側面ガラスとの接合部に配置する工程と、
前記台座ガラス及び側面ガラスの軟化温度未満かつ接合用ガラス成形体の軟化温度以上の温度で前記放電管のガラス間接続部を焼成する工程とを有することを特徴としている。
【0012】
請求項1に係る本発明によると、台座ガラスと側面ガラスとの接合時に電極支持ピンの基端部をなす台座ガラスの部分に接合に伴う過度の熱影響を与えずに済む。そのため、この台座ガラスの電極支持ピンが貫通する部分を軟化させることがなく、電極支持ピンが傾くことはない。その結果、電極板の間隔がずれることがなく、放電管製造時の歩留まりが向上する。これによって、同一内径のガラスエンベロープに対して、より大きな電極板を台座ガラスに備えることが可能となり、感度特性が向上する。
【0013】
また、本発明の請求項2に係るUVチューブのガラス間接合方法は、請求項1に記載の放電管のガラス間接合方法において、
前記光線透過部及び側面ガラスの軟化温度よりも低い軟化温度を有する接合用ガラス成形体を、当該光線透過部及び側面ガラスの接合部に配置する工程を更に備え、
前記台座ガラス、側面ガラス及び光線透過部の軟化温度未満かつ接合用ガラス成形体の軟化温度以上の温度で前記光線透過部及び側面ガラスの接合部を焼成し、前記台座ガラスと側面ガラスの接合を行うことに加えて、前記光線透過部と側面ガラスの接合を行うことを特徴としている。
【0014】
請求項2に係る本発明によると、このような光線透過部と側面ガラスとの間に接合用ガラス成形体を介在させて、これらガラス間の接合部を焼成させることにより、特注品である光線透過部と一般部品である側面ガラスとを別体化させることができるため、部品コスト上及び在庫管理上これらを予め一体化させたものを準備するよりも優れている。
【0015】
また、本発明の請求項3に係るUVチューブのガラス間の接合方法は、請求項2に記載の放電管のガラス間接合方法において、
前記台座ガラスの側面ガラスとの接合面との反対側において、前記側面ガラス内に空気を排気してガスを導入する排気管を、台座ガラス及び排気管の軟化温度よりも低い軟化温度を有する接合用ガラス成形体を介して配置する工程を備え、
前記台座ガラス、側面ガラス、光線透過部及び排気管の軟化温度未満かつ接合用ガラス成形体の軟化温度以上の温度で焼成し、前記台座ガラスと側面ガラスとの接合と、前記光線透過部と側面ガラスとの接合に加えて、前記側面ガラスと排気管との接合を行うことを特徴としている。
【0016】
請求項3に係る本発明によると、台座ガラスと排気管との間に接合用ガラス成形体を介在させて、この部分を過熱することにより排気管と台座ガラスを接合するようにしているので、排気管と台座ガラスを別工程でバーナーの火炎等を介して接合する必要がなくなる。その結果、UVチューブの製造効率を向上させることができるようになる。
【0017】
また、本発明の請求項4に係る放電管は、
正電極板と負電極板とを電極支持ピンを介して対向配置した状態で支持する台座ガラスと、所望の光線を透過させる光線透過部を有し、電極板を囲むように台座ガラスの外周縁部に接合される側面ガラスとを備える放電管であって、
前記台座ガラスと側面ガラスとが、台座ガラス及び側面ガラスの軟化温度よりも低い軟化温度を有する接合用ガラス成形体を介して接合されていることを特徴としている。
【0018】
請求項4に係る本発明によると、台座ガラスと側面ガラスとの接合時に電極支持ピンの基端部をなす台座ガラスの部分に接合に伴う過度の熱影響を与えずに済む。そのため、この台座ガラスの電極支持ピンが貫通する部分を軟化させることがなく、電極支持ピンが傾くことがない。その結果、電極板の間隔がずれることがなく、放電管製造時の歩留まりが向上する。これによって、同一内径のガラスエンベロープに対して、より大きな電極板を台座ガラスに備えることが可能となり、感度特性が向上する。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記放電管はUVセンサであることを特徴としている。
【0020】
請求項5に係る発明がこのような構成を有することで、UVセンサによる紫外線の検出を長期にわたって精度良く行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明よると、全体的に小型でかつ電極間に電極構造の位置ずれが生じることのない放電管のガラス間接合方法及び放電管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態である放電管のガラス間接合方法を適用して製造したUVチューブを示す説明図であって、当該UVチューブを長手方向に沿って切断した断面図である。
【図2】図1に対応する図であり、図1に示したUVチューブの第1変形例を示す断面図である。
【図3】図1に対応する図であり、図1に示したUVチューブの第2変形例を示す断面図である。
【図4】図3に示した第2変形例に係るUVチューブの製造工程を説明する図である。
【図5】本発明の実施例における比較例の評価試験結果を示す図である。
【図6】本発明の実施例における本実施例の評価試験結果を示す図である。
【図7】図1に対応する図であり、従来のUVチューブを長手方向に沿って示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る放電管のガラス間接合方法を適用して製造したUVチューブについて図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態である放電管のガラス間接合方法を適用して製造したUVチューブを示す説明図であって、当該UVチューブを長手方向に沿って切断した断面図である。
【0024】
本発明の一実施形態に係るUVチューブ100は、エンベロープ110と、エンベロープ110に接合用ガラス成形体170を介して接合されたボタンステム120と、ボタンステム120を貫通する6本の電極支持ピン130と、6本の電極支持ピン130を介してボタンステム120に支持された電極板140と、ボタンステム120からエンベロープ110と反対側に突出した排気管150とを有している。
【0025】
エンベロープ110は、本実施形態ではホウ珪酸ガラスでできており、UVチューブ100の組立て前の状態で一方の端部が天板(光線透過部)111として塞がれた円筒形状を有している。そして、天板111の部分は、ガラス内からFe成分を除去して紫外線を透過させるようになっており、UVチューブ100を設置した状態で、天板111が例えばボイラの火炎等に向けられ、火炎の発する紫外線をエンベロープ内に入光するようになっている。また、エンベロープ110の周側壁(側面ガラス)112は、通常のホウ珪酸ガラスでできており、この部分からエンベロープ内に紫外線が入光するのを阻止するようになっている。
【0026】
接合用ガラス成形体170は、UVチューブ100の製造前の状態でリング状をなし、エンベロープ110及びボタンステム120の材質であるホウ珪酸ガラスよりも軟化温度が低いガラスでできている。
【0027】
ボタンステム120は、エンベロープ110と同様にホウ珪酸ガラスでできている。ボタンステム120の形状は全周に亘って複数の段部が形成された厚さの厚い略円板状をなしており、ボタンステム120の周縁近傍に周方向等間隔をなして6本の電極支持ピン130が貫通している。なお、6本の電極支持ピン130の軸線とボタンステムの中心軸線は平行となっており、かつ電極支持ピン130はボタンステム120にバーナーの火炎等で加熱されて一体化している。また、ボタンステム120の中央部分には貫通孔121が形成され、この貫通孔121の図中下部が拡径されて排気管端部付き当て用凹み部122を形成し、排気管150の端部151が当接している。なお、排気管150の端部151はバーナーの火炎等でボタンステム120に接合されている。
【0028】
また、ボタンステム120の外周の段部のうち図中下側の段部にはリング状の接合用ガラス成形体170がUVチューブ100の組立て前に載せられ、その接合用ガラス成形体170の上にエンベロープ110が載せられている。そして、ボタンステム120とエンベロープ110は、接合用ガラス成形体170を介して後述する接合方法で接合され、この部分は封着されている。
【0029】
電極支持ピン130は、ボタンステム120の周縁近傍に円周方向等間隔隔てて6本の電極支持ピンからなり、上述したようにボタンステム120を貫通した状態で設けられている。そして、6本の電極支持ピン130のうち3本の電極支持ピン131(図中2本のみ図示)が周方向互いに等間隔隔ててボタンステム120に設けられ、かつ一方の電極(アノード電極141)の支持体及び出力取り出し用端子としての役目を果たしている。また、残りの3本の電極支持ピン132(図中2本のみ図示)はアノード電極支持用の電極支持ピン131の周方向入れ違いの位置に等間隔をなしてボタンステム120に設けられており、他方の電極(カソード電極142)の支持体及び出力取り出し用端子としての役目も果たしている。そして、アノード電極支持用の電極支持ピン131は、カソード電極支持用の電極支持ピン132よりも図1中若干上方に突出しており、このアノード電極支持用の電極支持ピン131を介して網状の円板からなるアノード電極141がレーザー溶接等により固定されている。また、カソード電極支持用の電極支持ピン132の端部には円板状のカソード電極142がレーザー溶接等によって固定されている。なお、カソード電極142には、ここでは図示しないがアノード電極支持用の電極支持ピン131と干渉しないように切欠きが設けられている。
【0030】
以上の構成によって、アノード電極141とカソード電極142とは互いに所定間隔隔てた状態で対向配置されている。なお、電極支持ピン130は、電極固定部をなす端部の位置が設計寸法通りになるようにボタンステム120に所望の温度で接合されているので、アノード電極141とカソード電極142との間隔は電極支持ピン130をボタンステム120に焼成してアノード電極141とカソード電極142をレーザー溶接等により固定したボタンステムアッシーの状態においては電極間の間隔が厳密に管理されている。
【0031】
排気管150は、エンベロープ110及びボタンステム120と同様にホウ珪酸ガラスでできており、細長の筒体からなり、一方の端部151がボタンステム120に上述したようなバーナーの火炎であぶって接合されると共に、他方の端部152が閉塞されている。このように他方の端部152が閉塞されることで、エンベロープ110、接合用ガラス成形体170、ボタンステム120、及び排気管150によって内部に空間100Cが画成され、この空間内にネオン(Ne)及び水素(H)からなるペニングガスが封入されている。なお、UVチューブの製造前では、排気管150の他方の端部152は開口され、製造中にこの空間内の空気をそのペニングガスで置換するようになっている。
【0032】
続いて、上述したUVチューブの製造工程について説明する。最初にボタンステムアッシー120Aを製造する。このボタンステムアッシー120Aの製造にあたっては、6本の仮焼成した電極支持ピン130をボタンステム120に挿入し、ボタンステム120の電極支持ピン挿入部をバーナーの火炎であぶってボタンステム120を軟化させた後、冷やして両者を一体化させる。これによって、アノード電極支持用の電極支持ピン131がカソード電極支持用の電極支持ピン132よりも電極間の間隔に対応する所定の突き出し量だけ突出させるようにして一体化させる。
【0033】
また、ボタンステム120に排気管150の一方の端部151を嵌め込む。続いて、ボタンステム120の排気管150を嵌め込んだ部分をバーナーの火炎であぶり、ボタンステムのこの部分を軟化させた後に冷やして、両者を接合する。
【0034】
そして、電極支持ピン130の電極取り付け側端部は、カソード電極142をそのアノード電極干渉防止用の切欠き部を介してアノード電極支持用の電極支持ピン131と干渉しないようにカソード電極142に取り付け、レーザー溶接等で固定する。次いで、アノード電極支持用の電極支持ピン131にアノード電極141をレーザー溶接等で取り付ける。これによってアノード電極141とカソード電極142との間は設計通りの間隔が維持されるようになっている。
【0035】
続いて、ここでは図示しない治具にエンベロープ110を図1とは上下逆の方向で組み付ける。即ち、最初に天板111を下に向けた状態のエンベロープ110を治具のUVチューブ組立て収容部に収容する。そして、エンベロープ110の上側に位置する開口部112aに接合用ガラス成形体170を載せ、更にボタンステム120を図1とは上下逆の方向で接合用ガラス成形体170に載せる。
【0036】
治具にはこのようなUVチューブ組立て収容部が多数形成されており、それぞれのUVチューブ組立て収容部に上述の手順でUVチューブ100の各部品を組み込む。そして、UVチューブ100の部品をこの治具に組み込みを終えた後、加熱炉に治具ごと入れて治具ごと加熱する。この加熱に際して、加熱炉の温度は接合用ガラス成形体170が溶融してボタンステム120とエンベロープ110との間を封着する温度まで加熱する。本実施形態では、例えば650℃まで加熱炉内の温度を高める。
【0037】
650℃まで加熱すると、本実施形態では接合用ガラス成形体170は軟化するが、ボタンステム120やエンベロープ110の軟化温度である750℃には達していないので、これらボタンステム120やエンベロープ110には熱的な悪影響を与えずに済む。これによってボタンステム120のエンベロープ110との接合部近傍を貫通する電極支持ピン近傍の部分が軟化することなく、エンベロープ110とボタンステム120との接合時に電極支持ピン130とボタンステム120との寸法関係にも悪影響を与えることがない。
【0038】
その結果、電極支持ピン130の端部に取り付けられたアノード電極141及びカソード電極142の間隔も設計寸法通りに維持され、UVチューブ100の感度特性を低下させることがない。
【0039】
続いて、窒素雰囲気中の加熱炉においてエンベロープ110とボタンステム120を接合したUVチューブ100を外部に取り出し、後工程で排気管150の端部開口部からUVチューブ内の空間の空気を向いてガスを封入する。このガスは、上述した通りのペニングガスである。そして、排気管150の、電極支持ピンより突き出た部分で排気管150をバーナーの火炎であぶる。UVチューブ内は外部雰囲気より負圧になっているので、バーナーで加熱した部分の溶けたガラスが収束してこの部分が閉塞される。これによって、UVチューブ100の製造を完了する。
【0040】
以上の通り、本実施形態では、ボタンステム120の電極支持ピン130が貫通した部分をボタンステム120とエンベロープ110との接合時に熱で変形させることがない。その結果、アノード電極141とカソード電極142との間隔をボタンステムアッシー120Aとして組み立てたままの状態に維持することができ、UVチューブ製造後においてもこれら電極間の設計寸法通りの間隔を維持することができる。
【0041】
続いて、上述した実施形態の他の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。この変形例は第1変形例及び第2変形例からなる。
【0042】
図2は、図1に対応する図であり、図1に示したUVチューブの第1変形例を示す断面図である。第1変形例は、上述した実施形態のようにエンベロープ210とボタンステム220との間に接合用ガラス成形体270が介在していることに加えて、排気管250とボタンステム220との間にも接合用ガラス成形体280が介在している。後者の接合用ガラス成形体280は、内径が排気管250の内径と同等で外径がボタンステム220の排気管取り付け用凹み部221の内径と合致した円環状成形体281と、この円環状成形体281に一端が当接し、排気管250の外径と同一の外径を有する円筒状成形体282からなっている。
【0043】
そして、この第1変形例に係るUVチューブ200を製造するにあたって、上述の実施形態と異なる点としては、電極支持ピン230をボタンステム220に固定しかつ電極支持ピン230の端部にアノード電極241とカソード電極242を取り付けてなるボタンステムアッシー220Aと、エンベロープ210と、ボタンステム220との接合工程において、排気管250をボタンステム220に接合するようになっている点である。
【0044】
即ち、このUVチューブ200の具体的製造方法としては、粉ガラスを焼結したボタンステム220に電極支持ピン230を挿入したものを焼成して両者を一体化させ、電極支持ピン230の先端にアノード電極241とカソード電極242をレーザー溶接等で取り付けた段階でボタンステムアッシー220Aを構成する点が上述の実施形態と異なっている。
【0045】
UVチューブ200を製造するにあたって、UVチューブ製造用治具のUVチューブ収容用凹み部に、図2とは上下逆の方向でエンベロープ210を収容し、エンベロープ210の開口部に接合用ガラス成形体270を載せ、この接合用ガラス成形体270の上に図2とは上下逆の方向でボタンステムアッシー220Aを載せ、ボタンステム220の排気管取り付け用凹み部221に円環状成形体281を載せると共に、一端部に円筒状成形体282を嵌めた排気管250を付き当てる。
【0046】
UVチューブ製造用治具に設けられた複数のUVチューブ収容凹み部の全てにこのようなUVチューブ200を構成する各部品を配置した後、UVチューブ製造用治具を加熱炉に入れ、上述の実施形態と同様に約650℃で所定時間加熱する。これによって、エンベロープ210とボタンステム220との間の接合用ガラス成形体270が軟化してエンベロープ210とボタンステム220との間が封着されると共に、ボタンステム220と排気管250との間の接合用ガラス成形体280が軟化してボタンステム220と排気管250との間が封着される。
【0047】
なお、ボタンステム220と排気管250との間の接合用ガラス成形体280は円環状成形体281と円筒状成形体282の2つの成形体でできていたが、これらを一体化した接合用ガラス成形体としても良い。しかしながら、加熱によりこの部分溶融して一体化するので、前者の方が成形コスト上有利である。
【0048】
続いて、上述の実施形態の第2変形例について説明する。図3は、図1に対応する図であり、図1に示したUVチューブの第2変形例を示す断面図である。また、図4は、図3に示した第2変形例に係るUVチューブの製造工程を説明する図である。第2変形例は、上述した第1変形例のようにエンベロープ310とボタンステム320との間に接合用ガラス成形体370が介在すると共に、排気管350とボタンステム320との間にも接合用ガラス成形体380が介在していることに加えて、エンベロープ310が円板状の天板311と円筒状の側方周壁312からなり、この天板311と側方周壁312の間にリング状の接合用ガラス成形体390が介在されている点で上述の実施形態及びその第1変形例と異なる。
【0049】
そして、この第2変形例に係るUVチューブ300を製造するにあたって、上述の実施形態及び第1変形例と異なる工程としては、UVチューブ製造用治具のUVチューブ収容用凹み部に、図3とは上下逆の方向でエンベロープ310の天板(光線透過部)311を収容し、この天板上にリング状の接合用ガラス成形体390を載せ、この接合用ガラス成形体390の上に側方周壁(側面ガラス)312を載せ、側方周壁312に接合用ガラス成形体370を載せ、この接合用ガラス成形体370の上に上述した第1変形例と同等のボタンステムアッシー320Aを載せ、ボタンステム320の排気管取り付け用凹み部にリング状の接合用ガラス成形体381を載せると共に、一端部に円筒状の接合用ガラス成形体382を嵌めた排気管350を付き当てる。
【0050】
図4において、UVチューブ製造用治具40の各治具構成要素41〜45にこのようなUVチューブ300を構成する各部品をそれぞれ配置した後、UVチューブ製造用治具を加熱炉に入れ、上述の実施形態と同様に約650℃で所定時間加熱する。これによって、側方周壁312とボタンステム320との間の接合用ガラス成形体370が軟化して側方周壁312とボタンステム320との間が封着され、ボタンステム320と排気管350との間の接合用ガラス成形体380(381,382)が軟化してボタンステム320と排気管350との間が封着され、天板311と側方周壁312との間の接合用ガラス成形体390が軟化して天板311と側方周壁312との間が封着される。
【0051】
以上説明した本発明の効果に加えて、本発明の更なる派生効果について説明する。ガラスの接合ではガスバーナーによる火炎での接合が一般的である。このガスバーナーの火炎による加熱の際には、接合部とガスバーナーの火炎とが周方向に相対的に移動しなくてはならず、接合用設備の複雑化や大型化を招く。これに加えて、接合部が周方向全体にわたって均一に加熱溶融されるための技量が作業者に求められると同時に、火炎を使用することで設備設置場所(作業場所)の環境制限が大きくなる。
【0052】
しかしながら、本発明のように低融点の接合用ガラスを用いることで汎用的な加熱炉などでUVチューブが生産可能となり、生産の場所と作業者の高度な技量を必要としなくなる。また、1つの治具に多数のUVチューブ製造用凹み部を設けることで、1つの治具に多数のUVチューブの構成部品を収容して治具ごと加熱炉に入れて加熱することができ、一度に多数のUVチューブを製造することが可能となる。これによって、従来のようにバーナーによる火炎を利用してUVチューブのガラス間接合を行っていた方法、即ちバーナーによる加熱装置を用いてUVチューブを1つずつ製造していた製造方法に比べてUVチューブの生産性を格段に向上させることができるようになる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の有用性を立証するために評価試験を行ったので、その評価試験の結果について説明する。図5は、本発明の実施例における比較例の評価試験結果を示す図である。である。また、図6は、本発明の実施例における本実施例の評価試験結果を示す図である。
【0054】
この評価試験においては、本実施例として、図1に示したUVチューブを用いると共に、本比較例として、図7に示した従来型のUVチューブを用いた。
【0055】
図5に示した比較例を用いた評価試験では、図5右下に示した太い実線で示す変動なしの多角形形状が電極板の周方向に亘ってほぼ等しい間隔で電極板同士が対抗配置した状態を示している。そして、本比較例においては、サンプル数を図5の右側に示すように9つのサンプル数とし、各サンプル数において電極板間の間隔を測定し、これを一つの図に重ねて表した。なお、図5における等間隔で中心から放射方向に伸びた線は、太い実線の部分が接合前後の変動幅が0であることを示し、これに対し内側に向かうか外側に向かうかによって接合前後の電極間の変動が周方向に生じていることを示している。この図から明らかなように、比較例を構成する各サンプルの電極間の接合前後の変動幅はかなり大きいことが判明した。これは、電極支持ピン530の挿通されたボタンステム520が、エンベロープ510とボタンステム520との接合時に過度に加熱されることで、電極支持ピン530の基端部近傍のボタンステム520が軟化するために電極支持ピン530が傾いたりすることに起因するものと考えられる。
【0056】
一方、本実施例を用いた評価試験では、図6の右下に示すようにサンプル数4つのUVチューブを用いた。そして比較例における評価試験と同様に図6に示す太い実線を接合前後の電極の周方向等間隔に定めた各地点における電極間の距離の変動幅が0の場合とし、これに対して4つのサンプルがどの程度接合前後で電極間の間隔が変動しているかどうかをプロットして示した。この図から明らかなように、本実施例においては接合前後の電極間の間隔の変動幅が周方向全体に亘って殆ど生じず、電極間の間隔がエンベロープとボタンステムとの接合前後で変化していないことが分かった。その結果、ボタンステムアッシーの段階で設計寸法通りに規定された電極間の間隔がエンベロープを接合した後にも維持されることが分かり、本実施例の検出感度特性が設計寸法通りに得られることが立証できた。
【0057】
以上説明したように、本発明では放電管のガラス間接合方法をUVチューブの製造に適用したが、本発明の適用範囲は必ずしもこれに限定されず、一般的な放電管の製造にも適用可能であることは言うまでもない。
【0058】
なお、上述したUVセンサは、開閉機構からなるシャッターを備え自己診断機能を有するタイプのUVセンサにも使用可能であり、かつこのような自己診断機能を有さない廉価なUVセンサにも使用可能である。
【0059】
また、上述の低融点の接合用ガラスは、上述した軟化温度に限定されずボタンステムとエンベロープからなる両部材のガラス軟化温度よりも低い軟化温度であれば良い。例えば、680℃程度の軟化温度であるガラスボタンステムとガラスエンベロープを使用する場合は、軟化温度が650℃程度以下の低融点の接合用ガラスを用いれば良い。
【0060】
また、電極を取り付けた後に、ボタンステム及びエンベロープの両者の軟化点温度より低い作業点温度をもつ低融点の接合用ガラスペーストをボタンステム及びエンベロープの接合部に塗布し、両者の接合面を合わせ作業点まで加熱して焼成することでボタンステムとエンベロープの接合及び封着を行っても良い。
【0061】
なお、上述したように事前に多数のUVセンサの構成要素を収容して、治具ごと加熱炉に入れて一度に多数のUVセンサを製造する代わりに、UVセンサの構成要素を組み合わせたものを各UVセンサ一つずつ収容載置するトレーに載せ、このトレーをコンベヤー等に載せてリフロー工程で連続的一つずつ加熱するようにしても良い。
【0062】
また、例えば第2変形例における各ガラス間接合体の軟化温度は、同変形例においては同一したが、その代わりに複数のガラス間接合体のそれぞれが異なる軟化温度で軟化するようにして良い。この場合のメリットとしては、エンベロープとボタンステムの接合工程とエンベロープと天板、ボタンステムと排気管接合工程というように接合工程の分割が可能であり、これにより生産性が向上する点にある。
【符号の説明】
【0063】
40 UVチューブ製造用治具
41〜45 各治具構成要素
100 UVチューブ
100C 空間
110 エンベロープ
111 天板
112 周側壁
112a 開口部
120 ボタンステム
120A ボタンステムアッシー
121 貫通孔
122 排気管端部付き当て用凹み部
130(131,132) 電極支持ピン
140 電極板
141 アノード電極
142 カソード電極
150 排気管
151,152 端部
170 接合用ガラス成形体
200 UVチューブ
210 エンベロープ
220 ボタンステム
220A ボタンステムアッシー
221 排気管取り付け用凹み部
230 電極支持ピン
241 アノード電極
242 カソード電極
250 排気管
270 接合用ガラス成形体
280 接合用ガラス成形体
281 円環状成形体
282 円筒状成形体
300 UVチューブ
310 エンベロープ
311 天板
312 側方周壁
320 ボタンステム
320A ボタンステムアッシー
350 排気管
370 接合用ガラス成形体
380,381,382 接合用ガラス成形体
390 接合用ガラス成形体
500 UVチューブ
510 エンベロープ
520 ボタンステム
530 電極支持ピン
540 電極
541 アノード電極
542 カソード電極



【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電極板と負電極板とを電極支持ピンを介して対向配置した状態で支持する台座ガラスと、所望の光線を透過させる光線透過部を有し、電極板を囲むように台座ガラスの外周縁部に接合される側面ガラスとを備える放電管のガラス間接合方法であって、
前記台座ガラス及び側面ガラスの軟化温度よりも低い軟化温度を有する接合用ガラス成形体を、前記台座ガラスと側面ガラスとの接合部に配置する工程と、
前記台座ガラス及び側面ガラスの軟化温度未満かつ接合用ガラス成形体の軟化温度以上の温度で前記放電管のガラス間接続部を焼成する工程とを有することを特徴とする放電管のガラス間接合方法。
【請求項2】
前記光線透過部及び側面ガラスの軟化温度よりも低い軟化温度を有する接合用ガラス成形体を、当該光線透過部及び側面ガラスの接合部に配置する工程を更に備え、
前記台座ガラス、側面ガラス及び光線透過部の軟化温度未満かつ接合用ガラス成形体の軟化温度以上の温度で前記光線透過部及び側面ガラスの接合部を焼成し、前記台座ガラスと側面ガラスの接合を行うことに加えて、前記光線透過部と側面ガラスの接合を行うことを特徴とする、請求項1に記載の放電管のガラス間接合方法。
【請求項3】
前記台座ガラスの側面ガラスとの接合面との反対側において、前記側面ガラス内に空気を排気してガスを導入する排気管を、台座ガラス及び排気管の軟化温度よりも低い軟化温度を有する接合用ガラス成形体を介して配置する工程を備え、
前記台座ガラス、側面ガラス、光線透過部及び排気管の軟化温度未満かつ接合用ガラス成形体の軟化温度以上の温度で焼成し、前記台座ガラスと側面ガラスとの接合と、前記光線透過部と側面ガラスとの接合に加えて、前記側面ガラスと排気管との接合を行うことを特徴とする、請求項2に記載の放電管のガラス間接合方法。
【請求項4】
正電極板と負電極板とを電極支持ピンを介して対向配置した状態で支持する台座ガラスと、所望の光線を透過させる光線透過部を有し、電極板を囲むように台座ガラスの外周縁部に接合される側面ガラスとを備える放電管であって、
前記台座ガラスと側面ガラスとが、台座ガラス及び側面ガラスの軟化温度よりも低い軟化温度を有する接合用ガラス成形体を介して接合されていることを特徴とする放電管。
【請求項5】
前記放電管はUVセンサであることを特徴とする、請求項4に記載の放電管。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−14323(P2011−14323A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156334(P2009−156334)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】