説明

放電装置および空気浄化装置

【課題】安価で、長期間安定してストリーマ放電ができる信頼性の高い放電装置を提供する。
【解決手段】複数の櫛歯状の放電針7を有する放電電極3と、前記放電電極3から一定距離をおいて配設された平板状の対向電極4と、放電電極3及び対向電極4の間に高電圧を印加する高圧電源2とを備え、前記放電電極3から前記対向電極4に向かってストリーマ放電が発生するように構成された放電装置において、前記放電針7の先端を前記対向電極4に対して斜めに配設し、かつ前記放電針7の先端幅方向を円弧形状に形成し、さらに厚み方向のコーナーにアールを設けたもので、放電電極3の加工を安価な加工方法でできるとともにストリーマ放電を長期に渡って安定して行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリーマ放電によって空気を浄化する放電装置と空気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の放電装置および空気浄化装置として、放電電極が対向電極に対して略直交するもの(例えば、特許文献1参照)と、放電電極が対向電極に対して略平行のもの(例えば、特許文献2参照)がある。
【0003】
そして、直流電源の正極側は、放電電極と電気的に接続され、負極側(アース側)は、対向電極と電気的に接続されている。
【0004】
以上のように構成された従来の放電装置の動作は、以下の通りである。
【0005】
放電電極と、対向電極に高圧の直流電圧が印加されると、上記放電電極の先端から対向電極に向かってストリーマ放電が進展する。その結果、空気中では、臭気成分を分解するための活性種(ラジカル、高速電子、励起分子等)が生成される。そして、放電電極と、対向電極の周囲を通過する空気中の臭気成分は、上記活性種によって酸化分解される。更に、活性種は、触媒ユニットのプラズマ触媒を活性化させるので、空気中の臭気成分が更に分解されるようになっている。
【0006】
また、このような臭気成分と活性種との反応後に、なお空気中に臭気成分が残存する場合、これらの残存した臭気成分が、触媒ユニットの吸着剤に吸着される。また、上記活性種と臭気成分との反応後に、新たな副生成物が生じる場合にも、これらの副生成物も触媒ユニットの吸着剤に吸着されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−38932号公報
【特許文献2】特開2004−351310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載されたような従来の放電装置では、放電針の先端は円錐状かコーナーにエッジを有するものであり、ばらつきを抑えるために精密な加工が必要でコストが高くなったり、長時間使用していると損耗によりエッジがR形状になってストリーマ放電が不安定になって浄化能力が次第に低下するという問題があった。
【0009】
また、パルス幅の狭い急峻なパルス高電圧を供給するパルス電源を用いれば安定したストリーマ放電を発生させることができるが、このようなパルス電源を用いるとコストが高くなってしまう。また、パルス分の時間しか放電しないので浄化能力も低下してしまう。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決し、コストが高くなるのを抑えながら安定したストリーマ放電を発生することができる放電装置および空気浄化装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、本発明の放電装置は、複数の櫛歯状の放電針を有する放電電極と、前記放電電極から一定距離をおいて配設された平板状の対向電極と、前記両電極間に高電圧を印加する高電圧印加装置とを備え、前記放電電極から前記対向電極に向かってストリーマ放電が発生するように構成された放電装置において、前記放電針の先端を前記対向電極に対して斜めに配設し、かつ前記放電針の先端幅方向を円弧形状に形成し、さらに厚み方向のコーナーにアールを設けたもので、放電電極の加工を安価な加工方法でできるとともにストリーマ放電を長期に渡って安定して行うことができる。
【0012】
また、本発明の空気浄化装置は、請求項1から6のいずれか1項に記載の放電装置を備えると共に、前記放電装置内に被処理空気を導入して被処理空気中の臭気成分または有害成分を処理するように構成されているもので、被処理空気を長期的に安定して処理することができる。また、処理部材として、触媒や吸着剤を用いるようにすれば、触媒による分解作用や、吸着剤による吸着作用も行われるので、処理性能をより高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の放電装置は、安価な加工でストリーマ放電を長期に渡って安定して行うことができ、この放電装置を空気浄化装置に用いることで、安価で信頼性の高い空気浄化装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における放電装置の縦断面図
【図2】同放電装置の平面図
【図3】(a)同放電装置の放電電極の部分平面図、(b)同放電電極の側面図
【図4】(a)同放電装置の他の例を示す放電電極の部分平面図、(b)同放電電極の側面図
【図5】本発明の実施の形態2における空気浄化装置の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、複数の櫛歯状の放電針を有する放電電極と、前記放電電極から一定距離をおいて配設された平板状の対向電極と、前記放電電極及び前記対向電極の間に高電圧を印加する高電圧印加装置とを備え、前記放電電極から前記対向電極に向かってストリーマ放電が発生するように構成された放電装置において、前記放電針の先端を前記対向電極に対して斜めに配設し、かつ前記放電針の先端幅方向を円弧形状に形成し、さらに厚み方向のコーナーにアールを設けたもので、放電電極の加工を安価な加工方法でできるとともにストリーマ放電を長期に渡って安定して行うことができる。
【0016】
第2の発明は、特に、第1の発明の対向電極に対する放電針先端の角度が実質的に45°であることを特徴とするもので、ストリーマ放電の起点となる電極針先端の円弧部頂点下部に電荷が集中し、ストリーマ放電を長期に渡って安定して行うことができる。
【0017】
第3の発明は、特に、第1の発明の対向電極に対する放電針先端の角度を15°以上30°以下としたもので、電極針が損耗によって短くなっても放電針先端と対向電極の間の距離の変化は放電針が短くなった分の半分以下であり、放電針が損耗してもストリーマ放電を長期に渡って安定して行うことができる。
【0018】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明の放電電極をエッチング加工で形成したもので、放電電極の高価な加工が不要で、精度よく放電電極の加工ができるので安価な放電装置を提供することができる。
【0019】
第5の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明の放電電極を打ち抜き加工で形成
し、ダレ面を対向電極側に配設したもので、放電電極の高価な加工が不要で、精度よく放電電極の加工ができるので安価な放電装置を提供することができる。
【0020】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか一つの発明の放電針の根元を太く先端の幅方向を略均一にしたもので、放電電極の強度を増して扱いやすくするとともに、先端の幅方向が均一なので、放電針が損耗しても放電針先端の形状は損耗前と類似した形状になるので、ストリーマ放電を長期に渡って安定して行うことができる。
【0021】
第7の発明に係る空気浄化装置は、請求項1から6のいずれか1項に記載の放電装置を備えると共に、前記放電装置の内部に被処理空気を導入して被処理空気中の臭気成分または有害成分を処理するように構成されているもので、被処理空気を長期的に安定して処理することができる。また、処理部材として、触媒や吸着剤を用いるようにすれば、触媒による分解作用や、吸着剤による吸着作用も行われるので、処理性能をより高めることができる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における放電装置の縦断面図、図2は、同放電装置の平面図、図3、図4は同放電装置の放電電極の詳細図である。
【0024】
次に、本実施の形態における放電装置の構成について図1〜4を用いて説明する。
【0025】
本実施の形態における放電装置20は、高電圧印加装置である高圧電源2と、高圧電源2の正極側に電気的に接続される放電電極3と、高圧電源2の負極側に電気的に接続される対向電極4と、放電電極3と電気的に接続し放電電極3の先端と所定の隙間を設けて取り付けられ放電電極3の先端の電界の集中を和らげる電極対峙板8と、放電部をカバーし通風経路を形成するカバー体5と、放電電極3を支持する支持体6で構成されている。
【0026】
放電電極3には、櫛歯状の複数の放電針7が設けられており、放電針7の根元は、放電針7の変形を防ぐために放電針7の先端側より太く形成し、さらに、先端が磨耗しても形状が変わらないようにするため、先端側の幅方向を略均一にしている。
【0027】
放電電極3は、図3に示すようにエッチングまたは、図4に示すように打ち抜きにより加工され、前記放電針7の先端幅方向を円弧形状に形成し、また、厚み方向のコーナーR側が対向電極4に近い側に配置され、さらに放電針7は、対向電極4に対して斜めに取り付けられている。
【0028】
本実施の形態では、対向電極4に対する放電針7先端の角度を、実質的に45°としているが、15°以上30°以下であれば、実質的に大きな問題は無い。
【0029】
放電針7の対向部には、高圧電源2の負極側に電気的に接続している対向電極4が設けられており、放電針7の先端と対向電極4との間は所定の隙間Gが確保されている。
【0030】
以上のように構成された本実施の形態における放電装置20の動作、作用を説明する。
【0031】
高圧電源2によって高電圧が印加された放電電極3の先端からは対向電極4に向かってストリーマ放電が進展する。その結果、空気中に、臭気成分を分解するための活性種(ラジカル、高速電子、励起分子等)が多量に生成される。そして、ストリーマ放電部1に導
入された臭気成分は、放電電極3と、対向電極4との間を通過するときに、上記活性種によって酸化分解される。
【0032】
ストリーマ放電が行われると、放電電極3の放電針7の先端が損耗してくるが、放電針7の先端は、幅方向が均一で先端が円弧状および厚み方向でアールがついているので、損耗しても放電針7先端の形状は当初と類似の形状であり、放電針7が対向電極4に対して斜めであるので放電の起点となるポイントも変化が少ない。このようにして、安定したストリーマ放電を、長期に渡って得ることができる。
【0033】
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態における空気浄化装置の縦断面図である。なお、上記実施の形態1における放電装置と同一部分には同一符合を付して、その説明を省略する。
【0034】
図5において、本実施の形態における空気浄化装置は、上記実施の形態1における放電装置20と、放電装置20のストリーマ放電部1の下流側に配され放電時に発生したオゾンを捕集、分解するハニカム形状の触媒12と、その触媒12の下流側に配置され、周囲の空気を吸引し、ストリーマ放電部1に空気を導入する吸引ファン11と、触媒12と吸引ファン11を収納する外郭15を備えている。
【0035】
高圧電源2、吸引ファン11は制御装置(図示せず)によって制御される。放電電流は放電電流検知手段(図示せず)が検知する。
【0036】
以上のように構成された本実施の形態における空気浄化装置の動作を図5を用いて説明する。
【0037】
本実施の形態における空気浄化装置の運転が開始されると吸引ファン11が周囲の空気を吸引し、ストリーマ放電部1内に導入される。また、制御装置(図示せず)が、高圧電源2の電圧を上げ、放電電流検知手段(図示せず)の検知電流値がある一定の電流値になるように高圧電源2の電圧を制御する。高圧電源2によって高電圧が印加された放電電極3の先端からは、対向電極4に向かってストリーマ放電が進展する。その結果、空気中に、臭気成分を分解するための活性種(ラジカル、高速電子、励起分子等)が多量に生成される。
【0038】
そして、放電部1に導入された臭気成分は、放電電極3と、対向電極4との間を通過するときに、上記活性種によって酸化分解される。一部の活性種は、臭気成分を酸化分解しないまま、下流に設けられた触媒12に到達するが、同時に、放電電極3と対向電極4との間を通過したときに酸化分解されなかった臭気成分も触媒12に到達するので、そこで臭気成分が、触媒12に付着した活性種で結局酸化分解され、効率よく臭気成分が酸化分解される。
【0039】
また、放電電極3と対向電極4間に直流の高電圧を印加することによりオゾンも発生するが、それは、触媒12で捕集、分解され、外部に排出されることが無いので、使用者は、快適に空気浄化装置を使用することが出来る。
【0040】
ストリーマ放電が行われると、放電電極3の放電針7の先端が損耗してくるが、放電針7の先端は幅方向が均一で先端が円弧状および厚み方向でアールがついているので、損耗しても放電針7先端の形状は当初と類似の形状であり、また、放電針7が対向電極4に対して斜めであるので放電の起点となるポイントも変化が少ない。よって、安定したストリーマ放電が、長期に渡って得られ信頼性の高い空気浄化装置が提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように本発明に係る放電装置は、安価で、安定したストリーマ放電を発生することができるもので、各種空気浄化装置に適用できるものである。
【符号の説明】
【0042】
2 高圧電源(高電圧印加装置)
3 放電電極
4 対向電極
7 放電針
8 電極対峙板
11 吸引ファン
12 触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の櫛歯状の放電針を有する放電電極と、前記放電電極から一定距離をおいて配設された平板状の対向電極と、前記放電電極及び前記対向電極の間に高電圧を印加する高電圧印加装置とを備え、前記放電電極から前記対向電極に向かってストリーマ放電が発生するように構成された放電装置において、前記放電針の先端を前記対向電極に対して斜めに配設し、かつ前記放電針の先端幅方向を円弧形状に形成し、さらに厚み方向のコーナーにアールを設けたことを特徴とする放電装置。
【請求項2】
対向電極に対する放電針先端の角度が実質的に45°であることを特徴とする請求項1に記載の放電装置。
【請求項3】
対向電極に対する放電針先端の角度が15°以上30°以下であることを特徴とする請求項1に記載の放電装置。
【請求項4】
放電電極をエッチング加工で形成した請求項1から3のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項5】
放電電極を打ち抜き加工で形成し、ダレ面を対向電極側に配設した請求項1から3のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項6】
放電針の根元を太く先端の幅方向を略均一にした請求項1から5のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の放電装置を備えると共に、前記放電装置の内部に被処理空気を導入して被処理空気中の臭気成分または有害成分を処理するように構成されていることを特徴とする空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−5562(P2012−5562A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142305(P2010−142305)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】