故障予測装置及び画像形成装置
【課題】予測有用情報について、過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定した結果に基づいて被検対象の故障予測を行う構成において、被検対象に対して保守作業が行われることに起因する誤報の発生を回避する。
【解決手段】被検対象たるカラー画像形成装置のプロセスユニットについて取得したP値、Q値、R値等の予測有用情報に基づいて、同プロセスユニットについてもうすぐ故障が発生するのか否かを判定する故障予測装置120において、同プロセスユニットについて取得した保守情報が保守作業の実施を示すものである場合には、その後の一定期間に、そのプロセスユニットについての予測有用情報の挙動にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行わせるようにした。
【解決手段】被検対象たるカラー画像形成装置のプロセスユニットについて取得したP値、Q値、R値等の予測有用情報に基づいて、同プロセスユニットについてもうすぐ故障が発生するのか否かを判定する故障予測装置120において、同プロセスユニットについて取得した保守情報が保守作業の実施を示すものである場合には、その後の一定期間に、そのプロセスユニットについての予測有用情報の挙動にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行わせるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障予測に有用な予測有用情報について過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定した結果に基づいて、もうすぐ故障が発生するか否かを判定する故障予測装置に関するものである。また、かかる故障予測装置を搭載した複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、市場に出回っている様々な機械や装置においては、故障が発生すると、故障の内容によっては修理完了までかなりの期間に渡って使用不可となって、ユーザーに不便を強いてしまうことがあった。このため、故障の発生を事前に予測して、発生前に対処することが望まれる。
【0003】
故障の発生を事前に予測する故障予測装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この故障予測装置は、被検対象としての複写機について、プリントジョブ開始時に実行される紙準備動作開始から紙準備完了までに要する紙準備時間をジョブ毎に監視している。複写機の給紙装置が故障を引き起こす予兆として、紙準備時間が長くなってくることが挙げられる。そこで、所定期間遡った過去から現在までに紙準備時間の分散を算出し、算出結果が所定の制限値を超えた時点で、ユーザーにエラーを警告する。これにより、給紙装置についてもうすぐ故障が発生しそうであることをユーザーに事前に知らせることができる。
【0004】
【特許文献1】特公平3−68385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この故障予測装置においては、ユーザーやサービスマンが、上述したエラーの警告とは無関係に、給紙装置の保守作業を自主的に行った場合、その直後に、給紙装置の故障到来を誤って予測してしまうおそれがあった。具体的には、複写機においては、給紙装置の故障発生直前には、紙準備時間の増加率が急激に高くなるため、過去から現在に至るまでの紙準備時間の分散が制限値を超える。これにより、給紙装置の故障発生を事前に予測することができる。ところが、給紙装置の紙準備時間は、故障発生タイミングよりもかなり早い時点から、少しずつ延長し始める。ユーザーやサービスマンが自主的に給紙装置の保守作業を行った場合、紙準備時間をそれまで少しずつ延長してきた値から、正常な値に急激に戻してしまうため、紙準備時間の分散が一時的に増大する。この増大により、分散が制限値を超えると、故障の到来が誤って予測されてしまうのである。
【0006】
これまで、予測有用情報としての紙準備時間の分散に基づいて故障予測を行う構成において生ずる問題点について説明してきたが、かかる構成に限らず、次のような構成を採用していれば、同様の問題が発生する。即ち、紙準備時間などといった故障予測に有用な予測有用情報について、過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定した結果に基づいて故障予測を行う構成である。
【0007】
本発明は以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次のような故障予測装置や画像形成装置を提供することである。即ち、予測有用情報について、過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定した結果に基づいて被検対象の故障予測を行う構成において、被検対象に対して保守作業が行われることに起因する誤報の発生を回避することができる故障予測装置等である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、故障予測に有用な予測有用情報を被検対象から所定の周期で取得する予測有用情報取得手段と、該予測有用情報取得手段によって取得された予測有用情報について、過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定し、且つ判定結果に基づいて、該被検対象についてもうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定する判定手段と、該判定手段によってもうすぐ故障が発生する旨の判定がなされた場合にその旨を報知する報知手段とを備える故障予測装置において、上記被検対象に対して保守作業が行われたか否かの保守情報を取得する保守情報取得手段を設けるとともに、保守作業が行われた旨の保守情報が該保守情報取得手段によって取得された場合には、その後の一定期間に、上記予測有用情報の挙動にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行うように、上記判定手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の故障予測装置において、上記予測有用情報として、複数種類のものをそれぞれ上記所定の周期で取得するように、上記予測有用情報取得手段を構成するとともに、複数種類の予測有用情報についてそれぞれ過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定し、それぞれの判定結果に対してそれぞれ個別の重み付け処理を施した結果に基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するように、上記判定手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の故障予測装置において、上記被検対象を構成する複数の部品又は内部装置からそれぞれ、上記予測有用情報を取得するように上記予測有用情報取得手段を構成し、それら複数の部品又は内部装置についてそれぞれ、固有の予測有用情報及び上記保守情報に基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定する処理を個別に行うように、上記判定手段を構成し、且つ、それら複数の部品又は内部装置について、もうすぐ故障が発生する旨の情報をそれぞれ個別に報知するように、上記報知手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の故障予測装置において、複数の上記部品又は内部装置のうち、他の部品又は内部装置に対する保守作業によって自らの上記予測有用情報に影響を受けてしまうものについては、そのもの自体についての上記保守情報に加えて、該他の部品又は内部装置についての上記保守情報にも基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するように、上記判定手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかの故障予測装置において、上記予測有用情報について、過去の所定回数分の取得結果に基づいて過去の挙動を把握し、且つ、保守作業が行われた旨の保守情報が取得された場合には、その後、該予測有用情報が該所定回数分だけ取得されるまでの期間を上記一定期間とする処理を実施するように、上記判定手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかの故障予測装置において、画像形成装置を被検対象にすることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の故障予測装置において、上記所定の周期として、上記画像形成装置によって所定回数の画像形成動作が行われる毎の周期を用いるように、上記予測有用情報取得手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、画像情報に基づいて記録体に画像を形成する作像手段を備える画像形成装置において、自らを被検対象にする請求項6又は7の故障予測装置を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
これらの発明においては、被検対象に対して保守作業が行われた場合には、保守作業後における予測有用情報の挙動を新たに把握し直すまで、被検対象について、予測有用情報にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行うので、保守作業が行われることに起因する誤報の発生を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式によって画像を形成するカラー画像形成装置の一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係るカラー画像形成装置1を示す概略構成図である。また、図2は、カラー画像形成装置1に搭載されている制御部100とその周囲の電気機器との接続状態を示すブロック図である。
【0011】
図1において、カラー画像形成装置1は、給紙部10、中間転写ベルト21を備えた転写ユニット20、中間転写ベルト21に沿って配設されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の各色のトナー像形成手段たる画像形成部30Y、30M、30C、30Bkなどを図示しない本体筐体内に備えている。また、中間転写ベルト21上のトナー像のトナー付着量を検知するための付着量検知部50等を備えている。これらの他に、カラー画像形成装置1の各機器をコントロールする制御部100等を備えている。
【0012】
各色の画像形成部30について説明する。なお、ここでは、Bk色の画像形成部30Bkについて説明するが、Y、M,Cの画像形成部30Y〜Cも同様の構成をしている。画像形成部30Bkは、感光体31Bkの周囲に、帯電部32Bk、露光部33Bk、現像部34Bk、1次転写部35Bk、クリーニング部36Bk等が配設されている。
【0013】
画像形成時には、通常運転信号がカラー画像形成装置のコントローラ110によって指示されると感光体31Bkは、制御部100の制御下で図示しない駆動モータによって回転駆動される。また、図2に示すように、制御部100のCPUは感光体モータなどの駆動手段と帯電バイアスを始めとする各作像工程のバイアス出力を順次シーケンシャルに出力する。外部装置からのカラー画像信号は、制御部100の画像信号発生回路101で色変換処理などの画像処理が施され、Bk色の画像信号が露光部33Bkへ出力される。露光部33Bkは、制御部100の露光駆動回路102で、Bkの画像信号を光信号に変換し、この光信号に基づいて露光用レーザーダイオードが点滅しながら、感光体31Bkを走査して露光することで静電潜像を形成する。
【0014】
この感光体31Bk上の静電潜像は現像部34Bkによって現像されてBkトナー像となり、転写部35Bkによって感光体31Bk上のBkトナー像が中間転写ベルト21上に転写される。感光体31Bkは、トナー像転写後にクリーニング部36Bkによって残留トナーがクリーニングされ、除電ランプ38Bkにより除電されて次の画像形成に備えられる。
【0015】
同様にして、画像形成部30Y,M,Cは、感光体31Y,M,Cの周りに、帯電部、現像部、クリーニング部、除電ランプなどを備えている。そして、感光体31Y、31M、31CにY,M,Cトナー像を形成し、これらは中間転写ベルト21上に重ね合わせて1次転写される。
【0016】
各色の画像形成部の下方には、転写手段たる転写ユニット20が配設されている。この転写ユニット20は、無端状の中間転写ベルト21、従動ローラ22、23、駆動ローラ24などを備えている。複数の色のトナー像を担持する像担持体である中間転写ベルト21は、駆動ローラ24、従動ローラ22、23等に張り渡されている。中間転写ベルト21は、トナーの固着を避けるために極めて平滑性の高い材料が用いられている。例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)やポリイミドなど光沢を有する表面をもったベルト材料を好適に用いることができる。駆動ローラ24が、図2に示す制御部100の制御下で図外のモータ等の駆動機構により回転駆動されることにより、中間転写ベルト21は、図1中反時計方向に回転駆動される。各色の感光体31Y,M,C,Bk上に形成されたY,M,C,Bkトナー像は、各色の1次転写ニップで中間転写ベルト21上に重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト21上には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0017】
中間転写ベルト21における駆動ローラ24に対する掛け回し箇所には、2次転写バイアスローラ61がベルトおもて面側から当接しており、これによって2次転写ニップ6が形成されている。この2次転写バイアスローラ61には、図2に示すように、制御部100の制御下で、バイアス電源回路104によって2次転写バイアスが印加されている。これにより、2次転写バイアスローラ61と接地された2次転写ニップ裏側ローラ24との間に2次転写電界が形成されている。中間転写ベルト21上に形成された4色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って2次転写ニップに進入する。
【0018】
給紙部10は、給紙カセット11内の記録紙(転写紙)12を、例えば、図示しない給紙コロ11aと分離部材11bにより1枚ずつ分離して図示しないレジストローラ対に送り出す。レジストローラ対が、給紙カセット11から送られてきた記録紙12のタイミング調整を行って、記録紙12を所定のタイミングで2次転写ニップ6に向けて送り出す。2次転写ニップ6では、中間転写ベルト21上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙12上に一括2次転写されて、記録紙12の白色と相まってフルカラー画像となる。
【0019】
このようにしてフルカラー画像が形成された記録紙12は、定着部40に搬送される。定着部40は、フルカラー画像が形成された記録紙12を定着ローラ41と加圧ローラ42で加熱・加圧することにより、各色のトナーを記録紙12に定着させ、排紙ローラ対により図示しない排紙トレイ上に排出する。
【0020】
なお、感光体31、帯電部32、露光部33、現像部34、1次転写部35、及びクリーニング部36を具備する画像形成部30においては、それら各部のうち、露光部33及び1次転写部35を除く部分がプロセスユニットとして構成されている。このプロセスユニットは、感光体31、帯電部32、現像部34及びクリーニング部36を共通の保持体で保持しており、それらが1つのユニットとして画像形成装置本体に対して一体的に着脱されるものである。
【0021】
付着量検知部50は、ブラック(Bk)の画像形成部30Bkよりも中間転写ベルト21の移動方向下流側に配設されており、図3に示すように、中間転写ベルト21の幅方向にそれぞれ一対配設された光学的検知手段たる光学センサ51、52を備えている。光学センサ51、52は、それぞれ、図4、図5に示すように発光ダイオードなどからなる発光素子151と、乱反射光を受光する第1受光素子152と、正反射光を受光する第2受光素子153とから構成されている。第1受光素子152及び第2受光素子153は、Siフォトトランジスタや、PD(フォトダイオード)などを用いる。各素子151,152,153は、プリント基板150上に実装されている。また、射出光路上に集光レンズ154が配置されており、発光素子151からの射出光は、集光レンズ154により屈折して、像担持体たる中間転写ベルト21の表面の照射目標に集光される。また、入射光路上にも、集光レンズ155、156が配置されている。中間転写ベルト12上の照射対象物であるトナーから反射した反射光を集光レンズ155、156で集光された光を受光素子152、153が受光する。プリント基板150は、制御部100に接続されている。発光素子151は、図2に示す制御部100の光量調整回路105によって調整された電圧が印加されている。また、制御部100は、第1、第2受光素子152、153からの出力信号をADコンバータ106でデジタル信号に変換処理する。
【0022】
光学センサ51、52としては、近赤外光および/または赤外光が検出可能なものを用いている。近赤外光および/または赤外光は、トナー像のトナー付着量が同じであれば、トナーの着色剤の影響を受けず、受光素子の出力値がほぼ同じ値を示す。具体的には、ピーク発光波長が840[nm]程度の波長の光を照射する光学素子を用い、ピーク分光感度が840[nm]程度の受光素子を用いる。また、例えば、発光素子を可視光から赤外光の領域までの光を照射する発光素子とし、受光素子を近赤外光または赤外光を受光する受光素子としてもよい。また、受光素子を可視光から赤外光までの領域の光を受光する受光素子とし、発光素子を近赤外光または赤外光を照射する発光素子としてもよい。光学センサをこのような構成にしても、近赤外光または赤外光を検出する光学センサとすることができる。なお、黒色トナーの着色剤として、低価格のカーボンブラックを用いた場合、カーボンは赤外領域でも強い吸光を示すため、図6に示すように、Y、M、C色に比べて付着量検知感度が低くなる。
【0023】
本実施形態に係るカラー画像形成装置においては、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行う度に、各色の画像濃度を適正化するために現像バイアス、帯電バイアス、露光量などを調整するプロセス調整運転が行われている。電子写真方式では、経時劣化や環境変動で画像濃度が変動してしまう弱点があるので、上記プロセス調整運転を実行して画像濃度が安定するように制御しているのである。
【0024】
このプロセス調整運転の制御フローを図7に示す。電源投入時あるいは所定枚数のプリント前後の時間を利用し、プロセス調整運転信号がコントローラ110によって制御部100に指示され、プロセス調整運転がスタートする(図2参照)。
【0025】
プロセス調整運転がスタートすると、制御部100は、画像信号発生回路101を画像ナシの状態とする(S201)。次に、制御部100のCPUは、図4に示したように、中間転写ベルト21に光を照射して正反射光を第2受光素子153で受光する。そして、第2受光素子153の出力(受光信号)が予め決められた所定値になるように、光量調整回路105で光学センサ51、52の発光素子151の発光強度Rを調整する(S202〜S204)。これは、図8に示すように、発光素子151の発光効率個体差、温度変動や経時変動により、第2受光素子153の出力値がばらつく。このため、第2受光素子153の出力値が、目標出力値となるように、発光素子151の発光強度Rを調整することで、精度良くトナー像濃度を計測することが可能となる。すなわち、S202〜S204は、光学センサ51、52で精度良くトナー像の付着量を計測するための光学センサ51、52の校正動作に相当する。
【0026】
このような光学センサ51、52の校正動作が終わったら、図9に示すような、パターン画像60を中間転写ベルト21上における各光学センサ51、52に対向する位置に自動形成する(S205)。パターン画像60は、濃度レベルの異なる5個程度のパッチ画像60Sからなり、Bk色のパターン画像60Bk、M色のパターン画像60M、C色のパターン画像60C(図示せず)、Y色のパターン画像60Y(図示せず)が順次中間転写ベルト12に形成される。このパッチ画像60Sは、露光条件をそれぞれ変えて形成される。このとき帯電、現像バイアス条件は予め決められた特定値で実行される。この中間転写ベルト上のパターン画像を図5に示したように光学センサ51、52で光学的に計測する(S206)。
【0027】
次に、各色パターン画像の各パッチ画像60Sを検知して得られた乱反射光を受光する第1受光素子152の5点の受光信号を、先の図6に示したような付着量と受光素子の出力値との関係に基づいて構築された付着量算出アルゴリズムを用いてトナー付着量(画像濃度)に変換処理する。これにより、各パッチ画像60Sのトナー付着量が検知される。本実施形態においては、近赤外および/または赤外光を用いた光学センサを用いているので、色によって第1受光素子152の出力値に差異がないため、付着量算出アルゴリズムを色毎に備える必要がなく、共通の付着量算出アルゴリズムを用いることができる。なお、黒色の着色剤として、カーボンブラックを用いた場合は、先の図6に示したように、Y、M、Cと、Bkとで付着量に対する受光素子の出力値が異なるので、Y、M、C用と、Bk用との2つの付着量算出アルゴリズムを用いる。
【0028】
色毎に各パッチ画像60Sのトナー付着量を検知したら、各パッチ画像のトナー付着量(単位面積あたり)と、各パッチ画像を作成したときの各現像ポテンシャルとの関係から、図10に示すように、線形近似した現像ポテンシャル−トナー付着量直線を各色求める。この現像ポテンシャル−トナー付着量直線から傾きγ、切片x0を各色算出する(S207)。このように各色の傾きγ、切片x0を求めることで、先ほど述べた濃度変動要因(経時劣化・環境変動)によって直線の傾きγおよび切片x0が狙いの特性(図中点線)とずれていることが検出できる。傾きγのずれを補正するための露光光量補正パラメータPを傾きγから決定する。また、現像が開始される現像ポテンシャル(切片X0)のズレを補正するため現像バイアス補正パラメータQを切片x0から決定する(S208)。
【0029】
露光光量補正パラメータPを露光信号に掛け合わせることで傾きγが主に補正され、現像バイアスに補正パラメータQを掛け合わせることで切片x0が主に補正されることで、狙いとする画像濃度を安定して得ることが可能となる。なお、上述では、露光光量と現像バイアスを補正しているが、帯電電位や転写電流など画像濃度に寄与するその他のプロセス制御値を補正しても良い。
【0030】
各色の画像形成部30Y,M,C,Bkにおける感光体表面をクリーニングするクリーニング部36Y,M,C,Bkは、次のようにして、中間転写ベルト21に転写されずに感光体31Y,M,C,Bkの表面上に残った転写残トナーを掻き落としている。即ち、ウレタンゴムブレードなどのブレード部材を感光体31Y,M,C,Bkに当接させることで、その表面から転写残トナーを掻き落としている。このようなブレードクリーニング方式においては、一部の転写残トナーがブレード部材の下に潜ってクリーニング部36Y,M,C,Bkを通過してしまう。例えば、Bk用の画像形成部30Bkを例にすると、図11に示すように、クリーニング部36Bkを通過した転写残トナーは、帯電部32Bk、露光部33Bkを順次通過して現像部34Bkで回収される比率が高い。しかし、通過した転写残トナーの一部は、ブレード部材BLを通過するときにブレード部材BLとの摩擦帯電によって帯電特性を失ったり、形状が変化してしまったりして、現像部34Bkで回収されなくなる。このような転写残トナーは、1次転写部へ移動して、中間転写ベルト21に付着する。正常時においては、このような理由によって1次転写部へ移動する転写残トナーは、ごく微量である。よって、図12に示すように、中間転写ベルト上通過した転写残トナーが全体にごく微量に付着するだけであり、画像品質を著しく損なうようなことは無い。
【0031】
一方、長期の使用によってブレード部材BLが磨耗してくるとブレード部材BLの掻き落とし力が低下する。これにより、図13に示すように、ブレード部材BLを通過するトナーが加速度的に増えていく傾向となる。すると、ブレード部材BLの摩耗箇所から大量のトナーがスジ状に通過する。ブレード部材BLを通過した大量の転写残トナーは、帯電部32Bkに付着して、帯電部32Bkを汚し、帯電能力を低下させる。また、感光体31Bk上の大量の転写残トナーの影響で、露光部33Bkで感光体表面を所定の電位まで減衰させることができなくなる。その結果、異常画像が発生してしまう。また、現像部34Bkもこのような大量の転写残トナーを回収することができず、スジ状に延びる転写残トナーが中間転写ベルト21に転写され、中間転写ベルト21上に縦スジ状の異常画像が発生してしまう。このように正常な画像が得られなくなった画像形成部30Bkは、ただちに修理を要する。
【0032】
画像形成部30Bkがこのような修理を要する状態に至る少し前から、図14に示すように、中間転写ベルト21表面の全体に均一に付着する転写残トナーの量が増加する。この状態を「軽度の地汚れ」と言うが、使用者にとって気になるような画像劣化とはならず、気づくことは極めて少ない。ブレード摩耗によるクリーニング部36Bkや現像部34Bkの故障の予兆である「軽度地汚れ」がある状態において、プロセス調整運転を行うと、上述のパッチ画像に対するトナー付着量は、低濃度部の付着量が狙いの特性より若干高くなる。その結果、現像ポテンシャルとトナー付着量との関係を示す直線は、図15に示すように、傾きγの若干の低下や切片X0の若干の低下を引き起こす。但し、トナーや感光体の環境経時変動範囲(図中点線の範囲)に起因する傾きγや切片X0の変化と大差ない。
【0033】
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
【0034】
本発明者らは、図1に示したカラー画像形成装置1と同様の構成のプリンタ試験機を用意した。そして、このプリンタ試験機を用いて、テスト画像を連続して出力する連続プリントを実施した。この連続プリントの実施中、100枚の出力を行う毎に、プリントジョブを一時中止させて、上述したプロセス調整運転を実施させるようにした。そして、プロセス調整運転によって得られる上述の露光光量補正パラメータP(以下、P値という)、現像バイアス補正パラメータQ(以下、Q値という)及び発光強度R(以下、R値という)を、データ記憶手段に順次記憶させていった。
【0035】
図16は、各色のプロセスユニットにおけるQ値の経時変化を示すグラフである。図示のように、Bk用のプロセスユニットにおいて、ブレードクリーニング不良に起因する異常画像が発生する少し前に、その他3つのY,M,C用のプロセスユニットにおいて、Q値の変動量が一時的に増大していることがわかる。つまり、ある色のプロセスユニットが故障する少し前に、他色のプロセスユニットのQ値の変動量が一時的に増大するという予兆が見られるのである。但し、同図においては、繰り返しの連続プリント試験によって得られた膨大な量のデータのうち、前述の予兆が顕著に発生しているデータを示したが、変動量が予兆と言えるほど増大しない場合もあった。
【0036】
Q値について説明したが、P値も同様の予兆が見られることがわかった。また、ある色で異常画像が発生する前に、その色のR値の変動量が一時的に増大する場合があることもわかった。そこで、本発明者らは、P値、Q値及びR値を組み合わせて、故障の予測を行うことを考えた。そこで、まず、P値、Q値、R値についてそれぞれ、過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを示す時間的特徴量を算出した。かかる時間的特徴量としては、過去所定回数分のサンプリングデータの標準偏差を例示することができる。また、過去所定回数分のサンプリングデータの移動平均値や、過去所定回数分のサンプリングデータの回帰直線の傾きなどでもよい。時間的特徴量の算出方法は、ARIMAモデルなど多数提案されており、適宜の方法を選択すればよい。実験では、過去10回分のサンプリングデータの標準偏差を、時間的特徴量として算出した。
【0037】
次に、P値、Q値、M値の時間的特徴量について、それぞれブースティング法という教師付き学習アルゴリズムにより、故障の予測に寄与するための重み付け値を算出した。ブースティング法については数理科学、No.489,MARCH、2004「統計的パタン識別の情報幾何」に詳しい説明が記載されている。要約すると、まず、複数種類のデータからなるデータ組について、正常な状態から、故障予兆状態に変化するまでの履歴を用意する。そして、各種のデータの履歴についてそれぞれ、経時変動グラフの形状から、故障予兆期間を目視で推定し、その故障予兆期間内に相当するデータにマイナス極性のラベルを付す一方で、それ以外のデータ(正常期間内のデータ)にプラス極性のラベルを付す。この操作を100回繰り返すことで、各種のデータについてそれぞれ閾値b1〜b100、判別極性sgn1〜sgn100、重み付け値α1〜α100を決定する。次に、各種のデータの時間的特徴量に基づいて、それぞれのデータについて正常であるか、異常であるかを判別する。この判別は、故障予測をする上で決定的な要素にはならないので、この時の判別は弱判別処理と呼ばれる。弱判別処理は次式のように行われる。なお、Ciは、時間定期特徴量を表している。
【数1】
【数2】
【0038】
弱判別処理を終えたら、次式に基づいて、故障予測の判定に用いるF値を算出する。
【数3】
【0039】
上述した閾値、判別極性及び重み付け値は、ラベルの付された教師付きデータは適切に学習が行われ故障予兆期間に相当するものだけが、マイナス極性のF値になるように、決定される。よって、数3の数式によって求められるF値がマイナス極性である場合には、故障予兆期間に入ったと推定することができる。
【0040】
連続プリント試験によって得られたP値、Q値及びR値の時系列データに基づいて、ブースティング法によって閾値、判別極性及び重み付け値を決定して、F値の経時変化を調べてみた。この結果を図17に示す。図示のように、異常画像が発生する少し前の時点、即ち、プロセスユニットが故障する少し前の時点で、F値がプラスからマイナスに転じており、故障の予兆を精度良く捉えていることがわかる。
【0041】
ブースティング法によって決定された閾値、判別極性及び重み付け値が、他の個体機にも適用可能であるか否かを調べるために、先のプリンタ試験機と同じ仕様の試験機である1、2、3、5号機を用意した。そして、それぞれ、同様の閾値、判別極性及び重み付け値によってF値の経時変化を調べてみた。1、2、3、4、5号機におけるF値の経時変化を図18、図19、図20、図21、図22に示す。何れの試験機においても、プロセスユニットが故障する少し前の時点で、F値がプラスからマイナスに転じており、故障の予兆を精度良く捉えていることがわかる。
【0042】
以上の実験から、カラー画像形成装置においては、P値、Q値、R値のような複数種類の予測有用情報についてそれぞれ、次のような処理を行うことで、内部装置である各色のプロセスユニットの故障予測を精度良く行えることがわかった。即ち、過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定し、それぞれの判定結果に対してそれぞれ個別の重み付け処理を施した結果に基づいて、もうすぐ故障が発生するか否かの判定を行う処理である。
【0043】
ところが、実験により、次のようなおそれがあることがわかった。即ち、ユーザーやサービスマンが、故障予測結果とは無関係に、プロセスユニットの保守作業を自主的に行った場合、その直後に、プロセスユニットの故障到来を誤って予測してしまうおそれがある。
【0044】
図23は、正常な状態のY用のプロセスユニットにおけるQ値の経時変化を示すグラフである。また、図24は、正常な状態のY用のプロセスユニットにおけるQ値(Y色)の過去10回分の標準偏差(時間的特徴量)の経時変化を示すグラフである。正常な状態のプロセスユニットでは、図23に示すように、Q値が経時変動するものの、その変動幅はそれほど大きくない。このため、図24に示すように、Q値の過去10回分の標準偏差(以下、10点標準偏差という)もそれほど大きく変動しない。
【0045】
図25は、正常な状態から故障状態に推移する際のY用のプロセスユニットにおけるQ値の経時変化を示すグラフである。また、図26は、正常な状態から故障状態に推移する際のY用のプロセスユニットにおけるQ値の10点標準偏差の経時変化を示すグラフである。図示のように、プロセスユニットが故障予兆期間に入ると、Q値の10点標準偏差が急激に大きくなる。この変動を捉えることで、故障予兆期間に入ったことを検出することが可能になる。
【0046】
ところが、故障予兆期間に入っていなくても、図27や図28に示すように、プロセスユニットを交換すると、その直後にQ値の10点標準偏差が急激に大きくなる。これにより、故障予兆期間に入ったものと誤った検出がなされて、誤報を発生させるおそれがある。
【0047】
次に、実施形態に係るカラー画像形成装置の特徴的な構成について説明する。
図29は、実施形態に係るカラー画像形成装置に搭載されている故障予測装置120の電気回路を示すブロック図である。この故障予測装置120は、カラー画像形成装置1の制御部100(図2参照)から送られてくるP値、Q値、R値などの予測有用情報を取得するデータ取得部120aと、予測有用情報に基づいて、もうすぐ故障が発生しそうであるか否かを判定する判定手段としての判定部120bとを具備している。また、判定部120bは、時間的特徴量算出部120c、重み付け処理部120e、判定器120f等から構成されている。
【0048】
図30は、故障予測装置120によって実施される処理フローを示すフローチャートである。故障予測装置120のデータ取得部120aは、被検対象となる内部装置(例えばプロセスユニット)について制御部100から送られてくる複数種類の予測有用情報の組を、データセットとして図示しないデータ記憶回路に時系列で記憶していく。時間的特徴量算出部120cは、データ取得部120aに記憶されている各種の予測有用情報についてそれぞれ、所定回数分の過去データをデータ取得部120aから受け取って、時間的特徴量を算出する(S1〜S3)。重み付け処理部120eは、各種の予測有用情報についてそれぞれ、時間的特徴量を先に数1及び数2に示した数式に代入して、異常であるか否かを判定しながら(S4)、その判定結果に対して、先に数3に示した数式によって重み付けをしながらF値を求める(S5)。そして、F値がプラス極性あるいはゼロである場合には(S6でY)、被検対象の内部装置が故障予兆期間には入っていないので、まだ故障が発生しない旨の判定をして、そのまま処理を終了する。一方、F値がマイナス極性であう場合には(S6でN)、被検対象の内部装置が故障予兆期間に入っている可能性がある。但し、故障予兆期間に入っているのではなく、交換された直後であるために、F値がマイナス極性に転じてしまっている可能性もある。そこで、判定器120fは、F値がマイナス極性である場合には、保守情報であるM値をデータ取得部120aから読み出す(S7)。
【0049】
この読み出しに先立って、データ取得部120aでは、次のような処理が行われている。即ち、内部装置の保守作業を行ったユーザーやサービスマンは、その旨の情報をカラー画像形成装置の操作パネル111(図2参照)に入力する。この情報は、コントローラ110及び制御部100を介して、故障予測装置120のデータ取得部120aに送られる。そして、データ取得部120aは、その情報を受信すると、それ以降、予測有用情報を所定回数だけ受け取るまでの間、M値を「0」から「1」に変更する。つまり、内部装置の保守作業が行われると、その後、予測有用情報が所定回数分だけ取得されるまでの間、M値が「0」から「1」に変更されるのである。
【0050】
判定器120fは、データ取得部120aから読み出したM値が「1」である場合、即ち、保守作業が行われた後の一定期間内である場合には(S8でY)、故障予兆期間に入っていないので、そのまま処理を終了する。これに対し、データ取得部120aから読み出したM値が「0」である場合、即ち、保守作業が行われた後の一定期間内でない場合には(S8でN)、故障予兆期間に入っているので、メンテナンス要求をディスプレイからなる表示部112に表示して、内部装置について、もうすぐ故障する旨をユーザーに報知する。かかる構成においては、被検対象たる内部装置に対して保守作業が行われた場合には、保守作業後における予測有用情報の挙動を新たに把握し直すまで、その内部装置について、F値にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行うので、保守作業が行われることに起因する誤報の発生を回避することができる。
【0051】
M値を求める情報として、被検対象となる内部装置の累積動作回数をカウンタ情報に基づいて把握し、そのカウンタ情報がゼロにリセットされているときに、保守作業が行われたことを把握するようにしてもよい。
【0052】
なお、F値の算出や、M値の算出は、次の表1に示すように、被検対象となる4つのプロセスユニットに対して、それぞれ個別に行われる。例えば、Y用のプロセスユニットであれば、そのP値、Q値、R値等に基づいて、Y用のプロセスユニットに固有のF値を求め、その結果と、Y用のプロセスユニットに対するM値とに基づいて、Y用のプロセスユニットについて、もうすぐ故障が発生する旨の警告を発信するか否かを決定する。
【表1】
【0053】
また、実施形態においては、保守作業が実施された後の一定期間内として、次のような期間を採用している。即ち、本カラー画像形成装置は、1枚のプリント動作が行われる毎に、カウント値をカウントアップするカウンタを備えている。そして、故障予測装置は、予測有用情報であるP値、Q値、R値を、所定回数のプリント動作が行われる毎に、取得するようになっている。また、P値、Q値、R値の時間的特徴量(10点標準偏差)については、上述したように、過去10回分の取得結果に基づいて算出するようになっている。このような構成では、たとえプロセスユニットに対する保守作業が行われたとしても、その後、P値、Q値、R値についてそれぞれ10回分のデータを取得した後には、その保守作業がF値に影響を及ぼすことがなくなる。そこで、保守作業が行われた場合には、その後、10回分のP値、Q値、R値のデータが取得されるまでの期間を、上記一定期間としている。100枚プリント毎にP値、Q値、R値のデータを取得する場合には、上記一定期間は、100×10=1,000枚となる。
【0054】
次に、実施形態に係るカラー画像形成装置の各変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係るカラー画像形成装置の構成は、実施形態と同様である。
[第1変形例]
図31は、第1変形例に係るカラー画像形成装置の故障予測装置によって実施される処理フローを示すフローチャートである。実施形態に係るカラー画像形成装置の故障予測装置は、M値の内容にかかわらず、P値、Q値及びR値に基づくF値を算出してから、もうすぐ故障が発生する旨の警告を発信するか否かについて、M値に基づいて決定していた。これに対し、第1変形例に係るカラー画像形成装置の故障予測装置は、図示のように、F値の算出に先立って、M値の内容を確認する(S4)。そして、M値の内容が、保守作業が行われた後の一定期間内であることを示している場合には(S5でY)、P値、Q値、R値についての弱判別処理や、それらに基づくF値の算出を行うことなく、一連の処理フローを終了する。これにより、保守作業が行われた後の一定期間内である場合には、弱判別処理やF値の算出を省略して、演算付加を低減することができる。
【0055】
[第2変形例]
第2変形例に係るカラー画像形成装置の故障判定装置は、被検対象となる内部装置として、複数のユニット(例えばプロセスユニット)のうち、他の部品又はユニットに対する保守作業によって自らの予測有用情報(例えば、P値、Q値、R値)に影響を受けてしまうものについては、そのユニット自体についての保守情報としてのM値に加えて、他の部品又はユニットについてのM値にも基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するようになっている。次に示すユニットA〜ユニットDのうち、ユニットCやユニットDは、この種のユニットである。
【表2】
【0056】
表2において、ユニットCについては、そのもの自体であるユニットCのM値に加えて、ユニットDのM値にも基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するようになっている。そして、たとえF値が異常を示しても、ユニットC、ユニットDの何れかが保守作業後の一定期間内にある場合には、予測有用情報の挙動にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行う。このため、表2に示すように、F値が異常を示しても、ユニットC、ユニットDの何れかが保守作業後の一定期間内にある場合には、もうすぐ故障する旨の警告を行わない。また、ユニットDについては、そのもの自体であるユニットDのM値に加えて、ユニットBのM値にも基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するようになっている。そして、たとえF値が異常を示しても、ユニットD、ユニットBの何れかが保守作業後の一定期間内にある場合には、予測有用情報の挙動にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行う。このため、表2に示すように、F値が異常を示しても、ユニットD、ユニットBの何れかが保守作業後の一定期間内にある場合には、もうすぐ故障する旨の警告を行わない。
【0057】
以上、実施形態に係るカラー画像形成装置においては、予測有用情報として、P値、Q値、R値などの複数種類のものをそれぞれ所定の周期(100枚プリント毎)で取得するように、予測有用情報取得手段としてのデータ取得部120aを構成している。また、それら予測有用情報についてそれぞれ、10点標準偏差によって示される過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを弱判定処理によって判定し、それぞれの判定結果に対してそれぞれ個別の重み付け処理を施した結果に基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するように、判定手段としての判定部120bを構成している。かかる構成では、複数種類の予測有用情報についての弱判定の結果に対して、それぞれ故障予測に寄与する度合いに応じた重み付けをした結果で、最終的に、もうすぐ故障するのか否かを判定することで、判定精度を向上させることができる。
【0058】
また、実施形態に係るカラー画像形成装置において、被検対象を構成する複数の内部装置としての複数のプロセスユニットからそれぞれ、予測有用情報を取得するようにデータ取得部120aを構成している。また、それら複数のプロセスユニットについてそれぞれ、固有の予測有用情報(P値等)及び保守情報(M値)に基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定する処理を個別に行うように、判定部120bを構成している。更には、それら複数のプロセスユニットについて、もうすぐ故障が発生する旨の情報をそれぞれ個別に報知するように、報知手段としての表示部112を構成している。かかる構成では、複数のプロセスユニットについてそれぞれ、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、をユーザーなどに知らせることができる。
【0059】
また、第2変形例に係るカラー画像形成装置においては、複数の内部装置としての複数のユニットのうち、他のユニットに対する保守作業によって自らの予測有用情報に影響を受けてしまうものについては、そのもの自体についての保守情報(M値)に加えて、該他のユニットについての保守情報(M値)にも基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するように、判定部120bを構成している。かかる構成では、他のユニットに対する保守作業によって自らの予測有用情報に影響を受けてしまうユニットについて、自らに対して保守作業が行われることに起因する誤報の発生に加えて、他のユニットに対して保守作業が行われることに起因する誤報の発生を回避することができる。
【0060】
また、実施形態に係るカラー画像形成装置においては、予測有用情報としてのP値、Q値、R値についてそれぞれ、過去の10回分(所定回数分)の取得結果に基づいて過去の挙動である10点標準偏差を把握し、且つ、保守作業が行われた旨の保守情報が取得された場合(M値が1である場合)には、その後、それら予測有用情報が10回分だけ取得されるまでの期間を、予測有用情報にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行う一定期間とする処理を実施するように、判定部120bを構成している。かかる構成では、10回分の取得タイミングの経過により、保守作業の実施が故障予測の判定に影響を及ぼすことがなくなった直後から、通常の故障予測をすぐに再開することができる。
【0061】
また、実施形態に係るカラー画像形成装置においては、所定のサンプリング周期として、所定回数の画像形成動作が行われる毎の周期を用いるように、データ取得部120aを構成している。かかる構成では、サンプリング周期を把握するための手段として、既設のプリント枚数カウンタを利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施形態に係るカラー画像形成装置を示す概略構成図。
【図2】同カラー画像形成装置に搭載されている制御部とその周囲の電気機器との接続状態を示すブロック図。
【図3】同カラー画像形成装置の4つの感光体と転写ユニットとを示す斜視図。
【図4】中間転写ベルトの無垢の表面を被検対象にしている付着量検知部を示す模式図。
【図5】中間転写ベルト上のトナー像を被検対象にしている付着量検知部を示す模式図。
【図6】乱反射光を受光する受光素子からの出力と、トナー付着量との関係を示すグラフ。
【図7】同画像形成装置におけるプロセス調整運転の制御フローを示すフローチャート。
【図8】正反射光を受光する受光素子からの出力と、LED電流(発光量)との関係を示すグラフ。
【図9】中間転写ベルトの表面上に形成されるパターン画像を示す模式図。
【図10】パターン画像に対するトナー付着量と現像ポテンシャルとの関係を示すグラフ。
【図11】Y用の画像形成部における転写残トナーのブレードすり抜けの初期症状を説明するための模式図。
【図12】初期症状のブレードすり抜けによってごく軽微な地汚れを引き起こしている状態のベルト表面を示す拡大模式図。
【図13】Y用の画像形成部における転写残トナーのブレードすり抜けの初期症状を説明するための模式図。
【図14】末期症状のブレードすり抜けによって重度の地汚れを引き起こしている状態のベルト表面を示す拡大模式図。
【図15】軽度の地汚れによる傾きγや切片X0の低下現象を説明するグラフ。
【図16】各色のプロセスユニットにおけるQ値の経時変化を示すグラフ。
【図17】0号機におけるF値の経時変化を示すグラフ。
【図18】1号機におけるF値の経時変化を示すグラフ。
【図19】2号機におけるF値の経時変化を示すグラフ。
【図20】3号機におけるF値の経時変化を示すグラフ。
【図21】4号機におけるF値の経時変化を示すグラフ。
【図22】5号機におけるF値の経時変化を示すグラフ。
【図23】正常な状態のY用のプロセスユニットにおけるQ値の経時変化を示すグラフ。
【図24】同プロセスユニットにおけるQ値(Y色)の10点標準偏差の経時変化を示すグラフ。
【図25】正常な状態から故障状態に推移する際の同プロセスユニットにおけるQ値の経時変化を示すグラフ。
【図26】正常な状態から故障状態に推移する際の同プロセスユニットにおけるQ値の10点標準偏差の経時変化を示すグラフ。
【図27】ユニットに対する保守作業が行われる前後の同プロセスユニットにおけるQ値の経時変化を示すグラフ。
【図28】ユニットに対する保守作業が行われる前後の同プロセスユニットにおけるQ値の10点標準偏差の経時変化を示すグラフ。
【図29】同カラー画像形成装置に搭載されている故障予測装置の電気回路を示すブロック図。
【図30】同故障予測装置によって実施される処理フローを示すフローチャート。
【図31】第1変形例に係るカラー画像形成装置の故障予測装置によって実施される処理フローを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0063】
1:カラー画像形成装置(被検対象)
20:転写ユニット(作像手段の一部)
30Y,M,C,Bk:画像形成部(内部装置、作像手段の一部)
100:制御部(予測有用情報取得手段、判定手段)
111:操作パネル(保守情報取得手段)
112:表示部(報知手段)
120:故障予測装置
120a:データ取得部(予測有用情報取得手段)
120b:判定部(判定手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障予測に有用な予測有用情報について過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定した結果に基づいて、もうすぐ故障が発生するか否かを判定する故障予測装置に関するものである。また、かかる故障予測装置を搭載した複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、市場に出回っている様々な機械や装置においては、故障が発生すると、故障の内容によっては修理完了までかなりの期間に渡って使用不可となって、ユーザーに不便を強いてしまうことがあった。このため、故障の発生を事前に予測して、発生前に対処することが望まれる。
【0003】
故障の発生を事前に予測する故障予測装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この故障予測装置は、被検対象としての複写機について、プリントジョブ開始時に実行される紙準備動作開始から紙準備完了までに要する紙準備時間をジョブ毎に監視している。複写機の給紙装置が故障を引き起こす予兆として、紙準備時間が長くなってくることが挙げられる。そこで、所定期間遡った過去から現在までに紙準備時間の分散を算出し、算出結果が所定の制限値を超えた時点で、ユーザーにエラーを警告する。これにより、給紙装置についてもうすぐ故障が発生しそうであることをユーザーに事前に知らせることができる。
【0004】
【特許文献1】特公平3−68385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この故障予測装置においては、ユーザーやサービスマンが、上述したエラーの警告とは無関係に、給紙装置の保守作業を自主的に行った場合、その直後に、給紙装置の故障到来を誤って予測してしまうおそれがあった。具体的には、複写機においては、給紙装置の故障発生直前には、紙準備時間の増加率が急激に高くなるため、過去から現在に至るまでの紙準備時間の分散が制限値を超える。これにより、給紙装置の故障発生を事前に予測することができる。ところが、給紙装置の紙準備時間は、故障発生タイミングよりもかなり早い時点から、少しずつ延長し始める。ユーザーやサービスマンが自主的に給紙装置の保守作業を行った場合、紙準備時間をそれまで少しずつ延長してきた値から、正常な値に急激に戻してしまうため、紙準備時間の分散が一時的に増大する。この増大により、分散が制限値を超えると、故障の到来が誤って予測されてしまうのである。
【0006】
これまで、予測有用情報としての紙準備時間の分散に基づいて故障予測を行う構成において生ずる問題点について説明してきたが、かかる構成に限らず、次のような構成を採用していれば、同様の問題が発生する。即ち、紙準備時間などといった故障予測に有用な予測有用情報について、過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定した結果に基づいて故障予測を行う構成である。
【0007】
本発明は以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次のような故障予測装置や画像形成装置を提供することである。即ち、予測有用情報について、過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定した結果に基づいて被検対象の故障予測を行う構成において、被検対象に対して保守作業が行われることに起因する誤報の発生を回避することができる故障予測装置等である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、故障予測に有用な予測有用情報を被検対象から所定の周期で取得する予測有用情報取得手段と、該予測有用情報取得手段によって取得された予測有用情報について、過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定し、且つ判定結果に基づいて、該被検対象についてもうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定する判定手段と、該判定手段によってもうすぐ故障が発生する旨の判定がなされた場合にその旨を報知する報知手段とを備える故障予測装置において、上記被検対象に対して保守作業が行われたか否かの保守情報を取得する保守情報取得手段を設けるとともに、保守作業が行われた旨の保守情報が該保守情報取得手段によって取得された場合には、その後の一定期間に、上記予測有用情報の挙動にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行うように、上記判定手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の故障予測装置において、上記予測有用情報として、複数種類のものをそれぞれ上記所定の周期で取得するように、上記予測有用情報取得手段を構成するとともに、複数種類の予測有用情報についてそれぞれ過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定し、それぞれの判定結果に対してそれぞれ個別の重み付け処理を施した結果に基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するように、上記判定手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の故障予測装置において、上記被検対象を構成する複数の部品又は内部装置からそれぞれ、上記予測有用情報を取得するように上記予測有用情報取得手段を構成し、それら複数の部品又は内部装置についてそれぞれ、固有の予測有用情報及び上記保守情報に基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定する処理を個別に行うように、上記判定手段を構成し、且つ、それら複数の部品又は内部装置について、もうすぐ故障が発生する旨の情報をそれぞれ個別に報知するように、上記報知手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の故障予測装置において、複数の上記部品又は内部装置のうち、他の部品又は内部装置に対する保守作業によって自らの上記予測有用情報に影響を受けてしまうものについては、そのもの自体についての上記保守情報に加えて、該他の部品又は内部装置についての上記保守情報にも基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するように、上記判定手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかの故障予測装置において、上記予測有用情報について、過去の所定回数分の取得結果に基づいて過去の挙動を把握し、且つ、保守作業が行われた旨の保守情報が取得された場合には、その後、該予測有用情報が該所定回数分だけ取得されるまでの期間を上記一定期間とする処理を実施するように、上記判定手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかの故障予測装置において、画像形成装置を被検対象にすることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の故障予測装置において、上記所定の周期として、上記画像形成装置によって所定回数の画像形成動作が行われる毎の周期を用いるように、上記予測有用情報取得手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、画像情報に基づいて記録体に画像を形成する作像手段を備える画像形成装置において、自らを被検対象にする請求項6又は7の故障予測装置を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
これらの発明においては、被検対象に対して保守作業が行われた場合には、保守作業後における予測有用情報の挙動を新たに把握し直すまで、被検対象について、予測有用情報にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行うので、保守作業が行われることに起因する誤報の発生を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式によって画像を形成するカラー画像形成装置の一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係るカラー画像形成装置1を示す概略構成図である。また、図2は、カラー画像形成装置1に搭載されている制御部100とその周囲の電気機器との接続状態を示すブロック図である。
【0011】
図1において、カラー画像形成装置1は、給紙部10、中間転写ベルト21を備えた転写ユニット20、中間転写ベルト21に沿って配設されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の各色のトナー像形成手段たる画像形成部30Y、30M、30C、30Bkなどを図示しない本体筐体内に備えている。また、中間転写ベルト21上のトナー像のトナー付着量を検知するための付着量検知部50等を備えている。これらの他に、カラー画像形成装置1の各機器をコントロールする制御部100等を備えている。
【0012】
各色の画像形成部30について説明する。なお、ここでは、Bk色の画像形成部30Bkについて説明するが、Y、M,Cの画像形成部30Y〜Cも同様の構成をしている。画像形成部30Bkは、感光体31Bkの周囲に、帯電部32Bk、露光部33Bk、現像部34Bk、1次転写部35Bk、クリーニング部36Bk等が配設されている。
【0013】
画像形成時には、通常運転信号がカラー画像形成装置のコントローラ110によって指示されると感光体31Bkは、制御部100の制御下で図示しない駆動モータによって回転駆動される。また、図2に示すように、制御部100のCPUは感光体モータなどの駆動手段と帯電バイアスを始めとする各作像工程のバイアス出力を順次シーケンシャルに出力する。外部装置からのカラー画像信号は、制御部100の画像信号発生回路101で色変換処理などの画像処理が施され、Bk色の画像信号が露光部33Bkへ出力される。露光部33Bkは、制御部100の露光駆動回路102で、Bkの画像信号を光信号に変換し、この光信号に基づいて露光用レーザーダイオードが点滅しながら、感光体31Bkを走査して露光することで静電潜像を形成する。
【0014】
この感光体31Bk上の静電潜像は現像部34Bkによって現像されてBkトナー像となり、転写部35Bkによって感光体31Bk上のBkトナー像が中間転写ベルト21上に転写される。感光体31Bkは、トナー像転写後にクリーニング部36Bkによって残留トナーがクリーニングされ、除電ランプ38Bkにより除電されて次の画像形成に備えられる。
【0015】
同様にして、画像形成部30Y,M,Cは、感光体31Y,M,Cの周りに、帯電部、現像部、クリーニング部、除電ランプなどを備えている。そして、感光体31Y、31M、31CにY,M,Cトナー像を形成し、これらは中間転写ベルト21上に重ね合わせて1次転写される。
【0016】
各色の画像形成部の下方には、転写手段たる転写ユニット20が配設されている。この転写ユニット20は、無端状の中間転写ベルト21、従動ローラ22、23、駆動ローラ24などを備えている。複数の色のトナー像を担持する像担持体である中間転写ベルト21は、駆動ローラ24、従動ローラ22、23等に張り渡されている。中間転写ベルト21は、トナーの固着を避けるために極めて平滑性の高い材料が用いられている。例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)やポリイミドなど光沢を有する表面をもったベルト材料を好適に用いることができる。駆動ローラ24が、図2に示す制御部100の制御下で図外のモータ等の駆動機構により回転駆動されることにより、中間転写ベルト21は、図1中反時計方向に回転駆動される。各色の感光体31Y,M,C,Bk上に形成されたY,M,C,Bkトナー像は、各色の1次転写ニップで中間転写ベルト21上に重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト21上には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0017】
中間転写ベルト21における駆動ローラ24に対する掛け回し箇所には、2次転写バイアスローラ61がベルトおもて面側から当接しており、これによって2次転写ニップ6が形成されている。この2次転写バイアスローラ61には、図2に示すように、制御部100の制御下で、バイアス電源回路104によって2次転写バイアスが印加されている。これにより、2次転写バイアスローラ61と接地された2次転写ニップ裏側ローラ24との間に2次転写電界が形成されている。中間転写ベルト21上に形成された4色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って2次転写ニップに進入する。
【0018】
給紙部10は、給紙カセット11内の記録紙(転写紙)12を、例えば、図示しない給紙コロ11aと分離部材11bにより1枚ずつ分離して図示しないレジストローラ対に送り出す。レジストローラ対が、給紙カセット11から送られてきた記録紙12のタイミング調整を行って、記録紙12を所定のタイミングで2次転写ニップ6に向けて送り出す。2次転写ニップ6では、中間転写ベルト21上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙12上に一括2次転写されて、記録紙12の白色と相まってフルカラー画像となる。
【0019】
このようにしてフルカラー画像が形成された記録紙12は、定着部40に搬送される。定着部40は、フルカラー画像が形成された記録紙12を定着ローラ41と加圧ローラ42で加熱・加圧することにより、各色のトナーを記録紙12に定着させ、排紙ローラ対により図示しない排紙トレイ上に排出する。
【0020】
なお、感光体31、帯電部32、露光部33、現像部34、1次転写部35、及びクリーニング部36を具備する画像形成部30においては、それら各部のうち、露光部33及び1次転写部35を除く部分がプロセスユニットとして構成されている。このプロセスユニットは、感光体31、帯電部32、現像部34及びクリーニング部36を共通の保持体で保持しており、それらが1つのユニットとして画像形成装置本体に対して一体的に着脱されるものである。
【0021】
付着量検知部50は、ブラック(Bk)の画像形成部30Bkよりも中間転写ベルト21の移動方向下流側に配設されており、図3に示すように、中間転写ベルト21の幅方向にそれぞれ一対配設された光学的検知手段たる光学センサ51、52を備えている。光学センサ51、52は、それぞれ、図4、図5に示すように発光ダイオードなどからなる発光素子151と、乱反射光を受光する第1受光素子152と、正反射光を受光する第2受光素子153とから構成されている。第1受光素子152及び第2受光素子153は、Siフォトトランジスタや、PD(フォトダイオード)などを用いる。各素子151,152,153は、プリント基板150上に実装されている。また、射出光路上に集光レンズ154が配置されており、発光素子151からの射出光は、集光レンズ154により屈折して、像担持体たる中間転写ベルト21の表面の照射目標に集光される。また、入射光路上にも、集光レンズ155、156が配置されている。中間転写ベルト12上の照射対象物であるトナーから反射した反射光を集光レンズ155、156で集光された光を受光素子152、153が受光する。プリント基板150は、制御部100に接続されている。発光素子151は、図2に示す制御部100の光量調整回路105によって調整された電圧が印加されている。また、制御部100は、第1、第2受光素子152、153からの出力信号をADコンバータ106でデジタル信号に変換処理する。
【0022】
光学センサ51、52としては、近赤外光および/または赤外光が検出可能なものを用いている。近赤外光および/または赤外光は、トナー像のトナー付着量が同じであれば、トナーの着色剤の影響を受けず、受光素子の出力値がほぼ同じ値を示す。具体的には、ピーク発光波長が840[nm]程度の波長の光を照射する光学素子を用い、ピーク分光感度が840[nm]程度の受光素子を用いる。また、例えば、発光素子を可視光から赤外光の領域までの光を照射する発光素子とし、受光素子を近赤外光または赤外光を受光する受光素子としてもよい。また、受光素子を可視光から赤外光までの領域の光を受光する受光素子とし、発光素子を近赤外光または赤外光を照射する発光素子としてもよい。光学センサをこのような構成にしても、近赤外光または赤外光を検出する光学センサとすることができる。なお、黒色トナーの着色剤として、低価格のカーボンブラックを用いた場合、カーボンは赤外領域でも強い吸光を示すため、図6に示すように、Y、M、C色に比べて付着量検知感度が低くなる。
【0023】
本実施形態に係るカラー画像形成装置においては、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行う度に、各色の画像濃度を適正化するために現像バイアス、帯電バイアス、露光量などを調整するプロセス調整運転が行われている。電子写真方式では、経時劣化や環境変動で画像濃度が変動してしまう弱点があるので、上記プロセス調整運転を実行して画像濃度が安定するように制御しているのである。
【0024】
このプロセス調整運転の制御フローを図7に示す。電源投入時あるいは所定枚数のプリント前後の時間を利用し、プロセス調整運転信号がコントローラ110によって制御部100に指示され、プロセス調整運転がスタートする(図2参照)。
【0025】
プロセス調整運転がスタートすると、制御部100は、画像信号発生回路101を画像ナシの状態とする(S201)。次に、制御部100のCPUは、図4に示したように、中間転写ベルト21に光を照射して正反射光を第2受光素子153で受光する。そして、第2受光素子153の出力(受光信号)が予め決められた所定値になるように、光量調整回路105で光学センサ51、52の発光素子151の発光強度Rを調整する(S202〜S204)。これは、図8に示すように、発光素子151の発光効率個体差、温度変動や経時変動により、第2受光素子153の出力値がばらつく。このため、第2受光素子153の出力値が、目標出力値となるように、発光素子151の発光強度Rを調整することで、精度良くトナー像濃度を計測することが可能となる。すなわち、S202〜S204は、光学センサ51、52で精度良くトナー像の付着量を計測するための光学センサ51、52の校正動作に相当する。
【0026】
このような光学センサ51、52の校正動作が終わったら、図9に示すような、パターン画像60を中間転写ベルト21上における各光学センサ51、52に対向する位置に自動形成する(S205)。パターン画像60は、濃度レベルの異なる5個程度のパッチ画像60Sからなり、Bk色のパターン画像60Bk、M色のパターン画像60M、C色のパターン画像60C(図示せず)、Y色のパターン画像60Y(図示せず)が順次中間転写ベルト12に形成される。このパッチ画像60Sは、露光条件をそれぞれ変えて形成される。このとき帯電、現像バイアス条件は予め決められた特定値で実行される。この中間転写ベルト上のパターン画像を図5に示したように光学センサ51、52で光学的に計測する(S206)。
【0027】
次に、各色パターン画像の各パッチ画像60Sを検知して得られた乱反射光を受光する第1受光素子152の5点の受光信号を、先の図6に示したような付着量と受光素子の出力値との関係に基づいて構築された付着量算出アルゴリズムを用いてトナー付着量(画像濃度)に変換処理する。これにより、各パッチ画像60Sのトナー付着量が検知される。本実施形態においては、近赤外および/または赤外光を用いた光学センサを用いているので、色によって第1受光素子152の出力値に差異がないため、付着量算出アルゴリズムを色毎に備える必要がなく、共通の付着量算出アルゴリズムを用いることができる。なお、黒色の着色剤として、カーボンブラックを用いた場合は、先の図6に示したように、Y、M、Cと、Bkとで付着量に対する受光素子の出力値が異なるので、Y、M、C用と、Bk用との2つの付着量算出アルゴリズムを用いる。
【0028】
色毎に各パッチ画像60Sのトナー付着量を検知したら、各パッチ画像のトナー付着量(単位面積あたり)と、各パッチ画像を作成したときの各現像ポテンシャルとの関係から、図10に示すように、線形近似した現像ポテンシャル−トナー付着量直線を各色求める。この現像ポテンシャル−トナー付着量直線から傾きγ、切片x0を各色算出する(S207)。このように各色の傾きγ、切片x0を求めることで、先ほど述べた濃度変動要因(経時劣化・環境変動)によって直線の傾きγおよび切片x0が狙いの特性(図中点線)とずれていることが検出できる。傾きγのずれを補正するための露光光量補正パラメータPを傾きγから決定する。また、現像が開始される現像ポテンシャル(切片X0)のズレを補正するため現像バイアス補正パラメータQを切片x0から決定する(S208)。
【0029】
露光光量補正パラメータPを露光信号に掛け合わせることで傾きγが主に補正され、現像バイアスに補正パラメータQを掛け合わせることで切片x0が主に補正されることで、狙いとする画像濃度を安定して得ることが可能となる。なお、上述では、露光光量と現像バイアスを補正しているが、帯電電位や転写電流など画像濃度に寄与するその他のプロセス制御値を補正しても良い。
【0030】
各色の画像形成部30Y,M,C,Bkにおける感光体表面をクリーニングするクリーニング部36Y,M,C,Bkは、次のようにして、中間転写ベルト21に転写されずに感光体31Y,M,C,Bkの表面上に残った転写残トナーを掻き落としている。即ち、ウレタンゴムブレードなどのブレード部材を感光体31Y,M,C,Bkに当接させることで、その表面から転写残トナーを掻き落としている。このようなブレードクリーニング方式においては、一部の転写残トナーがブレード部材の下に潜ってクリーニング部36Y,M,C,Bkを通過してしまう。例えば、Bk用の画像形成部30Bkを例にすると、図11に示すように、クリーニング部36Bkを通過した転写残トナーは、帯電部32Bk、露光部33Bkを順次通過して現像部34Bkで回収される比率が高い。しかし、通過した転写残トナーの一部は、ブレード部材BLを通過するときにブレード部材BLとの摩擦帯電によって帯電特性を失ったり、形状が変化してしまったりして、現像部34Bkで回収されなくなる。このような転写残トナーは、1次転写部へ移動して、中間転写ベルト21に付着する。正常時においては、このような理由によって1次転写部へ移動する転写残トナーは、ごく微量である。よって、図12に示すように、中間転写ベルト上通過した転写残トナーが全体にごく微量に付着するだけであり、画像品質を著しく損なうようなことは無い。
【0031】
一方、長期の使用によってブレード部材BLが磨耗してくるとブレード部材BLの掻き落とし力が低下する。これにより、図13に示すように、ブレード部材BLを通過するトナーが加速度的に増えていく傾向となる。すると、ブレード部材BLの摩耗箇所から大量のトナーがスジ状に通過する。ブレード部材BLを通過した大量の転写残トナーは、帯電部32Bkに付着して、帯電部32Bkを汚し、帯電能力を低下させる。また、感光体31Bk上の大量の転写残トナーの影響で、露光部33Bkで感光体表面を所定の電位まで減衰させることができなくなる。その結果、異常画像が発生してしまう。また、現像部34Bkもこのような大量の転写残トナーを回収することができず、スジ状に延びる転写残トナーが中間転写ベルト21に転写され、中間転写ベルト21上に縦スジ状の異常画像が発生してしまう。このように正常な画像が得られなくなった画像形成部30Bkは、ただちに修理を要する。
【0032】
画像形成部30Bkがこのような修理を要する状態に至る少し前から、図14に示すように、中間転写ベルト21表面の全体に均一に付着する転写残トナーの量が増加する。この状態を「軽度の地汚れ」と言うが、使用者にとって気になるような画像劣化とはならず、気づくことは極めて少ない。ブレード摩耗によるクリーニング部36Bkや現像部34Bkの故障の予兆である「軽度地汚れ」がある状態において、プロセス調整運転を行うと、上述のパッチ画像に対するトナー付着量は、低濃度部の付着量が狙いの特性より若干高くなる。その結果、現像ポテンシャルとトナー付着量との関係を示す直線は、図15に示すように、傾きγの若干の低下や切片X0の若干の低下を引き起こす。但し、トナーや感光体の環境経時変動範囲(図中点線の範囲)に起因する傾きγや切片X0の変化と大差ない。
【0033】
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
【0034】
本発明者らは、図1に示したカラー画像形成装置1と同様の構成のプリンタ試験機を用意した。そして、このプリンタ試験機を用いて、テスト画像を連続して出力する連続プリントを実施した。この連続プリントの実施中、100枚の出力を行う毎に、プリントジョブを一時中止させて、上述したプロセス調整運転を実施させるようにした。そして、プロセス調整運転によって得られる上述の露光光量補正パラメータP(以下、P値という)、現像バイアス補正パラメータQ(以下、Q値という)及び発光強度R(以下、R値という)を、データ記憶手段に順次記憶させていった。
【0035】
図16は、各色のプロセスユニットにおけるQ値の経時変化を示すグラフである。図示のように、Bk用のプロセスユニットにおいて、ブレードクリーニング不良に起因する異常画像が発生する少し前に、その他3つのY,M,C用のプロセスユニットにおいて、Q値の変動量が一時的に増大していることがわかる。つまり、ある色のプロセスユニットが故障する少し前に、他色のプロセスユニットのQ値の変動量が一時的に増大するという予兆が見られるのである。但し、同図においては、繰り返しの連続プリント試験によって得られた膨大な量のデータのうち、前述の予兆が顕著に発生しているデータを示したが、変動量が予兆と言えるほど増大しない場合もあった。
【0036】
Q値について説明したが、P値も同様の予兆が見られることがわかった。また、ある色で異常画像が発生する前に、その色のR値の変動量が一時的に増大する場合があることもわかった。そこで、本発明者らは、P値、Q値及びR値を組み合わせて、故障の予測を行うことを考えた。そこで、まず、P値、Q値、R値についてそれぞれ、過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを示す時間的特徴量を算出した。かかる時間的特徴量としては、過去所定回数分のサンプリングデータの標準偏差を例示することができる。また、過去所定回数分のサンプリングデータの移動平均値や、過去所定回数分のサンプリングデータの回帰直線の傾きなどでもよい。時間的特徴量の算出方法は、ARIMAモデルなど多数提案されており、適宜の方法を選択すればよい。実験では、過去10回分のサンプリングデータの標準偏差を、時間的特徴量として算出した。
【0037】
次に、P値、Q値、M値の時間的特徴量について、それぞれブースティング法という教師付き学習アルゴリズムにより、故障の予測に寄与するための重み付け値を算出した。ブースティング法については数理科学、No.489,MARCH、2004「統計的パタン識別の情報幾何」に詳しい説明が記載されている。要約すると、まず、複数種類のデータからなるデータ組について、正常な状態から、故障予兆状態に変化するまでの履歴を用意する。そして、各種のデータの履歴についてそれぞれ、経時変動グラフの形状から、故障予兆期間を目視で推定し、その故障予兆期間内に相当するデータにマイナス極性のラベルを付す一方で、それ以外のデータ(正常期間内のデータ)にプラス極性のラベルを付す。この操作を100回繰り返すことで、各種のデータについてそれぞれ閾値b1〜b100、判別極性sgn1〜sgn100、重み付け値α1〜α100を決定する。次に、各種のデータの時間的特徴量に基づいて、それぞれのデータについて正常であるか、異常であるかを判別する。この判別は、故障予測をする上で決定的な要素にはならないので、この時の判別は弱判別処理と呼ばれる。弱判別処理は次式のように行われる。なお、Ciは、時間定期特徴量を表している。
【数1】
【数2】
【0038】
弱判別処理を終えたら、次式に基づいて、故障予測の判定に用いるF値を算出する。
【数3】
【0039】
上述した閾値、判別極性及び重み付け値は、ラベルの付された教師付きデータは適切に学習が行われ故障予兆期間に相当するものだけが、マイナス極性のF値になるように、決定される。よって、数3の数式によって求められるF値がマイナス極性である場合には、故障予兆期間に入ったと推定することができる。
【0040】
連続プリント試験によって得られたP値、Q値及びR値の時系列データに基づいて、ブースティング法によって閾値、判別極性及び重み付け値を決定して、F値の経時変化を調べてみた。この結果を図17に示す。図示のように、異常画像が発生する少し前の時点、即ち、プロセスユニットが故障する少し前の時点で、F値がプラスからマイナスに転じており、故障の予兆を精度良く捉えていることがわかる。
【0041】
ブースティング法によって決定された閾値、判別極性及び重み付け値が、他の個体機にも適用可能であるか否かを調べるために、先のプリンタ試験機と同じ仕様の試験機である1、2、3、5号機を用意した。そして、それぞれ、同様の閾値、判別極性及び重み付け値によってF値の経時変化を調べてみた。1、2、3、4、5号機におけるF値の経時変化を図18、図19、図20、図21、図22に示す。何れの試験機においても、プロセスユニットが故障する少し前の時点で、F値がプラスからマイナスに転じており、故障の予兆を精度良く捉えていることがわかる。
【0042】
以上の実験から、カラー画像形成装置においては、P値、Q値、R値のような複数種類の予測有用情報についてそれぞれ、次のような処理を行うことで、内部装置である各色のプロセスユニットの故障予測を精度良く行えることがわかった。即ち、過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定し、それぞれの判定結果に対してそれぞれ個別の重み付け処理を施した結果に基づいて、もうすぐ故障が発生するか否かの判定を行う処理である。
【0043】
ところが、実験により、次のようなおそれがあることがわかった。即ち、ユーザーやサービスマンが、故障予測結果とは無関係に、プロセスユニットの保守作業を自主的に行った場合、その直後に、プロセスユニットの故障到来を誤って予測してしまうおそれがある。
【0044】
図23は、正常な状態のY用のプロセスユニットにおけるQ値の経時変化を示すグラフである。また、図24は、正常な状態のY用のプロセスユニットにおけるQ値(Y色)の過去10回分の標準偏差(時間的特徴量)の経時変化を示すグラフである。正常な状態のプロセスユニットでは、図23に示すように、Q値が経時変動するものの、その変動幅はそれほど大きくない。このため、図24に示すように、Q値の過去10回分の標準偏差(以下、10点標準偏差という)もそれほど大きく変動しない。
【0045】
図25は、正常な状態から故障状態に推移する際のY用のプロセスユニットにおけるQ値の経時変化を示すグラフである。また、図26は、正常な状態から故障状態に推移する際のY用のプロセスユニットにおけるQ値の10点標準偏差の経時変化を示すグラフである。図示のように、プロセスユニットが故障予兆期間に入ると、Q値の10点標準偏差が急激に大きくなる。この変動を捉えることで、故障予兆期間に入ったことを検出することが可能になる。
【0046】
ところが、故障予兆期間に入っていなくても、図27や図28に示すように、プロセスユニットを交換すると、その直後にQ値の10点標準偏差が急激に大きくなる。これにより、故障予兆期間に入ったものと誤った検出がなされて、誤報を発生させるおそれがある。
【0047】
次に、実施形態に係るカラー画像形成装置の特徴的な構成について説明する。
図29は、実施形態に係るカラー画像形成装置に搭載されている故障予測装置120の電気回路を示すブロック図である。この故障予測装置120は、カラー画像形成装置1の制御部100(図2参照)から送られてくるP値、Q値、R値などの予測有用情報を取得するデータ取得部120aと、予測有用情報に基づいて、もうすぐ故障が発生しそうであるか否かを判定する判定手段としての判定部120bとを具備している。また、判定部120bは、時間的特徴量算出部120c、重み付け処理部120e、判定器120f等から構成されている。
【0048】
図30は、故障予測装置120によって実施される処理フローを示すフローチャートである。故障予測装置120のデータ取得部120aは、被検対象となる内部装置(例えばプロセスユニット)について制御部100から送られてくる複数種類の予測有用情報の組を、データセットとして図示しないデータ記憶回路に時系列で記憶していく。時間的特徴量算出部120cは、データ取得部120aに記憶されている各種の予測有用情報についてそれぞれ、所定回数分の過去データをデータ取得部120aから受け取って、時間的特徴量を算出する(S1〜S3)。重み付け処理部120eは、各種の予測有用情報についてそれぞれ、時間的特徴量を先に数1及び数2に示した数式に代入して、異常であるか否かを判定しながら(S4)、その判定結果に対して、先に数3に示した数式によって重み付けをしながらF値を求める(S5)。そして、F値がプラス極性あるいはゼロである場合には(S6でY)、被検対象の内部装置が故障予兆期間には入っていないので、まだ故障が発生しない旨の判定をして、そのまま処理を終了する。一方、F値がマイナス極性であう場合には(S6でN)、被検対象の内部装置が故障予兆期間に入っている可能性がある。但し、故障予兆期間に入っているのではなく、交換された直後であるために、F値がマイナス極性に転じてしまっている可能性もある。そこで、判定器120fは、F値がマイナス極性である場合には、保守情報であるM値をデータ取得部120aから読み出す(S7)。
【0049】
この読み出しに先立って、データ取得部120aでは、次のような処理が行われている。即ち、内部装置の保守作業を行ったユーザーやサービスマンは、その旨の情報をカラー画像形成装置の操作パネル111(図2参照)に入力する。この情報は、コントローラ110及び制御部100を介して、故障予測装置120のデータ取得部120aに送られる。そして、データ取得部120aは、その情報を受信すると、それ以降、予測有用情報を所定回数だけ受け取るまでの間、M値を「0」から「1」に変更する。つまり、内部装置の保守作業が行われると、その後、予測有用情報が所定回数分だけ取得されるまでの間、M値が「0」から「1」に変更されるのである。
【0050】
判定器120fは、データ取得部120aから読み出したM値が「1」である場合、即ち、保守作業が行われた後の一定期間内である場合には(S8でY)、故障予兆期間に入っていないので、そのまま処理を終了する。これに対し、データ取得部120aから読み出したM値が「0」である場合、即ち、保守作業が行われた後の一定期間内でない場合には(S8でN)、故障予兆期間に入っているので、メンテナンス要求をディスプレイからなる表示部112に表示して、内部装置について、もうすぐ故障する旨をユーザーに報知する。かかる構成においては、被検対象たる内部装置に対して保守作業が行われた場合には、保守作業後における予測有用情報の挙動を新たに把握し直すまで、その内部装置について、F値にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行うので、保守作業が行われることに起因する誤報の発生を回避することができる。
【0051】
M値を求める情報として、被検対象となる内部装置の累積動作回数をカウンタ情報に基づいて把握し、そのカウンタ情報がゼロにリセットされているときに、保守作業が行われたことを把握するようにしてもよい。
【0052】
なお、F値の算出や、M値の算出は、次の表1に示すように、被検対象となる4つのプロセスユニットに対して、それぞれ個別に行われる。例えば、Y用のプロセスユニットであれば、そのP値、Q値、R値等に基づいて、Y用のプロセスユニットに固有のF値を求め、その結果と、Y用のプロセスユニットに対するM値とに基づいて、Y用のプロセスユニットについて、もうすぐ故障が発生する旨の警告を発信するか否かを決定する。
【表1】
【0053】
また、実施形態においては、保守作業が実施された後の一定期間内として、次のような期間を採用している。即ち、本カラー画像形成装置は、1枚のプリント動作が行われる毎に、カウント値をカウントアップするカウンタを備えている。そして、故障予測装置は、予測有用情報であるP値、Q値、R値を、所定回数のプリント動作が行われる毎に、取得するようになっている。また、P値、Q値、R値の時間的特徴量(10点標準偏差)については、上述したように、過去10回分の取得結果に基づいて算出するようになっている。このような構成では、たとえプロセスユニットに対する保守作業が行われたとしても、その後、P値、Q値、R値についてそれぞれ10回分のデータを取得した後には、その保守作業がF値に影響を及ぼすことがなくなる。そこで、保守作業が行われた場合には、その後、10回分のP値、Q値、R値のデータが取得されるまでの期間を、上記一定期間としている。100枚プリント毎にP値、Q値、R値のデータを取得する場合には、上記一定期間は、100×10=1,000枚となる。
【0054】
次に、実施形態に係るカラー画像形成装置の各変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係るカラー画像形成装置の構成は、実施形態と同様である。
[第1変形例]
図31は、第1変形例に係るカラー画像形成装置の故障予測装置によって実施される処理フローを示すフローチャートである。実施形態に係るカラー画像形成装置の故障予測装置は、M値の内容にかかわらず、P値、Q値及びR値に基づくF値を算出してから、もうすぐ故障が発生する旨の警告を発信するか否かについて、M値に基づいて決定していた。これに対し、第1変形例に係るカラー画像形成装置の故障予測装置は、図示のように、F値の算出に先立って、M値の内容を確認する(S4)。そして、M値の内容が、保守作業が行われた後の一定期間内であることを示している場合には(S5でY)、P値、Q値、R値についての弱判別処理や、それらに基づくF値の算出を行うことなく、一連の処理フローを終了する。これにより、保守作業が行われた後の一定期間内である場合には、弱判別処理やF値の算出を省略して、演算付加を低減することができる。
【0055】
[第2変形例]
第2変形例に係るカラー画像形成装置の故障判定装置は、被検対象となる内部装置として、複数のユニット(例えばプロセスユニット)のうち、他の部品又はユニットに対する保守作業によって自らの予測有用情報(例えば、P値、Q値、R値)に影響を受けてしまうものについては、そのユニット自体についての保守情報としてのM値に加えて、他の部品又はユニットについてのM値にも基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するようになっている。次に示すユニットA〜ユニットDのうち、ユニットCやユニットDは、この種のユニットである。
【表2】
【0056】
表2において、ユニットCについては、そのもの自体であるユニットCのM値に加えて、ユニットDのM値にも基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するようになっている。そして、たとえF値が異常を示しても、ユニットC、ユニットDの何れかが保守作業後の一定期間内にある場合には、予測有用情報の挙動にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行う。このため、表2に示すように、F値が異常を示しても、ユニットC、ユニットDの何れかが保守作業後の一定期間内にある場合には、もうすぐ故障する旨の警告を行わない。また、ユニットDについては、そのもの自体であるユニットDのM値に加えて、ユニットBのM値にも基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するようになっている。そして、たとえF値が異常を示しても、ユニットD、ユニットBの何れかが保守作業後の一定期間内にある場合には、予測有用情報の挙動にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行う。このため、表2に示すように、F値が異常を示しても、ユニットD、ユニットBの何れかが保守作業後の一定期間内にある場合には、もうすぐ故障する旨の警告を行わない。
【0057】
以上、実施形態に係るカラー画像形成装置においては、予測有用情報として、P値、Q値、R値などの複数種類のものをそれぞれ所定の周期(100枚プリント毎)で取得するように、予測有用情報取得手段としてのデータ取得部120aを構成している。また、それら予測有用情報についてそれぞれ、10点標準偏差によって示される過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを弱判定処理によって判定し、それぞれの判定結果に対してそれぞれ個別の重み付け処理を施した結果に基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するように、判定手段としての判定部120bを構成している。かかる構成では、複数種類の予測有用情報についての弱判定の結果に対して、それぞれ故障予測に寄与する度合いに応じた重み付けをした結果で、最終的に、もうすぐ故障するのか否かを判定することで、判定精度を向上させることができる。
【0058】
また、実施形態に係るカラー画像形成装置において、被検対象を構成する複数の内部装置としての複数のプロセスユニットからそれぞれ、予測有用情報を取得するようにデータ取得部120aを構成している。また、それら複数のプロセスユニットについてそれぞれ、固有の予測有用情報(P値等)及び保守情報(M値)に基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定する処理を個別に行うように、判定部120bを構成している。更には、それら複数のプロセスユニットについて、もうすぐ故障が発生する旨の情報をそれぞれ個別に報知するように、報知手段としての表示部112を構成している。かかる構成では、複数のプロセスユニットについてそれぞれ、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、をユーザーなどに知らせることができる。
【0059】
また、第2変形例に係るカラー画像形成装置においては、複数の内部装置としての複数のユニットのうち、他のユニットに対する保守作業によって自らの予測有用情報に影響を受けてしまうものについては、そのもの自体についての保守情報(M値)に加えて、該他のユニットについての保守情報(M値)にも基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するように、判定部120bを構成している。かかる構成では、他のユニットに対する保守作業によって自らの予測有用情報に影響を受けてしまうユニットについて、自らに対して保守作業が行われることに起因する誤報の発生に加えて、他のユニットに対して保守作業が行われることに起因する誤報の発生を回避することができる。
【0060】
また、実施形態に係るカラー画像形成装置においては、予測有用情報としてのP値、Q値、R値についてそれぞれ、過去の10回分(所定回数分)の取得結果に基づいて過去の挙動である10点標準偏差を把握し、且つ、保守作業が行われた旨の保守情報が取得された場合(M値が1である場合)には、その後、それら予測有用情報が10回分だけ取得されるまでの期間を、予測有用情報にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行う一定期間とする処理を実施するように、判定部120bを構成している。かかる構成では、10回分の取得タイミングの経過により、保守作業の実施が故障予測の判定に影響を及ぼすことがなくなった直後から、通常の故障予測をすぐに再開することができる。
【0061】
また、実施形態に係るカラー画像形成装置においては、所定のサンプリング周期として、所定回数の画像形成動作が行われる毎の周期を用いるように、データ取得部120aを構成している。かかる構成では、サンプリング周期を把握するための手段として、既設のプリント枚数カウンタを利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施形態に係るカラー画像形成装置を示す概略構成図。
【図2】同カラー画像形成装置に搭載されている制御部とその周囲の電気機器との接続状態を示すブロック図。
【図3】同カラー画像形成装置の4つの感光体と転写ユニットとを示す斜視図。
【図4】中間転写ベルトの無垢の表面を被検対象にしている付着量検知部を示す模式図。
【図5】中間転写ベルト上のトナー像を被検対象にしている付着量検知部を示す模式図。
【図6】乱反射光を受光する受光素子からの出力と、トナー付着量との関係を示すグラフ。
【図7】同画像形成装置におけるプロセス調整運転の制御フローを示すフローチャート。
【図8】正反射光を受光する受光素子からの出力と、LED電流(発光量)との関係を示すグラフ。
【図9】中間転写ベルトの表面上に形成されるパターン画像を示す模式図。
【図10】パターン画像に対するトナー付着量と現像ポテンシャルとの関係を示すグラフ。
【図11】Y用の画像形成部における転写残トナーのブレードすり抜けの初期症状を説明するための模式図。
【図12】初期症状のブレードすり抜けによってごく軽微な地汚れを引き起こしている状態のベルト表面を示す拡大模式図。
【図13】Y用の画像形成部における転写残トナーのブレードすり抜けの初期症状を説明するための模式図。
【図14】末期症状のブレードすり抜けによって重度の地汚れを引き起こしている状態のベルト表面を示す拡大模式図。
【図15】軽度の地汚れによる傾きγや切片X0の低下現象を説明するグラフ。
【図16】各色のプロセスユニットにおけるQ値の経時変化を示すグラフ。
【図17】0号機におけるF値の経時変化を示すグラフ。
【図18】1号機におけるF値の経時変化を示すグラフ。
【図19】2号機におけるF値の経時変化を示すグラフ。
【図20】3号機におけるF値の経時変化を示すグラフ。
【図21】4号機におけるF値の経時変化を示すグラフ。
【図22】5号機におけるF値の経時変化を示すグラフ。
【図23】正常な状態のY用のプロセスユニットにおけるQ値の経時変化を示すグラフ。
【図24】同プロセスユニットにおけるQ値(Y色)の10点標準偏差の経時変化を示すグラフ。
【図25】正常な状態から故障状態に推移する際の同プロセスユニットにおけるQ値の経時変化を示すグラフ。
【図26】正常な状態から故障状態に推移する際の同プロセスユニットにおけるQ値の10点標準偏差の経時変化を示すグラフ。
【図27】ユニットに対する保守作業が行われる前後の同プロセスユニットにおけるQ値の経時変化を示すグラフ。
【図28】ユニットに対する保守作業が行われる前後の同プロセスユニットにおけるQ値の10点標準偏差の経時変化を示すグラフ。
【図29】同カラー画像形成装置に搭載されている故障予測装置の電気回路を示すブロック図。
【図30】同故障予測装置によって実施される処理フローを示すフローチャート。
【図31】第1変形例に係るカラー画像形成装置の故障予測装置によって実施される処理フローを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0063】
1:カラー画像形成装置(被検対象)
20:転写ユニット(作像手段の一部)
30Y,M,C,Bk:画像形成部(内部装置、作像手段の一部)
100:制御部(予測有用情報取得手段、判定手段)
111:操作パネル(保守情報取得手段)
112:表示部(報知手段)
120:故障予測装置
120a:データ取得部(予測有用情報取得手段)
120b:判定部(判定手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
故障予測に有用な予測有用情報を被検対象から所定の周期で取得する予測有用情報取得手段と、該予測有用情報取得手段によって取得された予測有用情報について、過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定し、且つ判定結果に基づいて、該被検対象についてもうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定する判定手段と、該判定手段によってもうすぐ故障が発生する旨の判定がなされた場合にその旨を報知する報知手段とを備える故障予測装置において、
上記被検対象に対して保守作業が行われたか否かの保守情報を取得する保守情報取得手段を設けるとともに、
保守作業が行われた旨の保守情報が該保守情報取得手段によって取得された場合には、その後の一定期間に、上記予測有用情報の挙動にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行うように、上記判定手段を構成したことを特徴とする故障予測装置。
【請求項2】
請求項1の故障予測装置において、
上記予測有用情報として、複数種類のものをそれぞれ上記所定の周期で取得するように、上記予測有用情報取得手段を構成するとともに、
複数種類の予測有用情報についてそれぞれ過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定し、それぞれの判定結果に対してそれぞれ個別の重み付け処理を施した結果に基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するように、上記判定手段を構成したことを特徴とする故障予測装置。
【請求項3】
請求項1又は2の故障予測装置において、
上記被検対象を構成する複数の部品又は内部装置からそれぞれ、上記予測有用情報を取得するように上記予測有用情報取得手段を構成し、
それら複数の部品又は内部装置についてそれぞれ、固有の予測有用情報及び上記保守情報に基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定する処理を個別に行うように、上記判定手段を構成し、
且つ、それら複数の部品又は内部装置について、もうすぐ故障が発生する旨の情報をそれぞれ個別に報知するように、上記報知手段を構成したことを特徴とする故障予測装置。
【請求項4】
請求項3の故障予測装置において、
複数の上記部品又は内部装置のうち、他の部品又は内部装置に対する保守作業によって自らの上記予測有用情報に影響を受けてしまうものについては、そのもの自体についての上記保守情報に加えて、該他の部品又は内部装置についての上記保守情報にも基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するように、上記判定手段を構成したことを特徴とする故障予測装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかの故障予測装置において、
上記予測有用情報について、過去の所定回数分の取得結果に基づいて過去の挙動を把握し、且つ、保守作業が行われた旨の保守情報が取得された場合には、その後、該予測有用情報が該所定回数分だけ取得されるまでの期間を上記一定期間とする処理を実施するように、上記判定手段を構成したことを特徴とする故障予測装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかの故障予測装置において、
画像形成装置を被検対象にすることを特徴とする故障予測装置。
【請求項7】
請求項6の故障予測装置において、
上記所定の周期として、上記画像形成装置によって所定回数の画像形成動作が行われる毎の周期を用いるように、上記予測有用情報取得手段を構成したことを特徴とする故障予測装置。
【請求項8】
画像情報に基づいて記録体に画像を形成する作像手段を備える画像形成装置において、
自らを被検対象にする請求項6又は7の故障予測装置を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
故障予測に有用な予測有用情報を被検対象から所定の周期で取得する予測有用情報取得手段と、該予測有用情報取得手段によって取得された予測有用情報について、過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定し、且つ判定結果に基づいて、該被検対象についてもうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定する判定手段と、該判定手段によってもうすぐ故障が発生する旨の判定がなされた場合にその旨を報知する報知手段とを備える故障予測装置において、
上記被検対象に対して保守作業が行われたか否かの保守情報を取得する保守情報取得手段を設けるとともに、
保守作業が行われた旨の保守情報が該保守情報取得手段によって取得された場合には、その後の一定期間に、上記予測有用情報の挙動にかかわらず、まだ故障が発生しない旨の判定を行うように、上記判定手段を構成したことを特徴とする故障予測装置。
【請求項2】
請求項1の故障予測装置において、
上記予測有用情報として、複数種類のものをそれぞれ上記所定の周期で取得するように、上記予測有用情報取得手段を構成するとともに、
複数種類の予測有用情報についてそれぞれ過去の挙動に対して特異な動きをしているか否かを判定し、それぞれの判定結果に対してそれぞれ個別の重み付け処理を施した結果に基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するように、上記判定手段を構成したことを特徴とする故障予測装置。
【請求項3】
請求項1又は2の故障予測装置において、
上記被検対象を構成する複数の部品又は内部装置からそれぞれ、上記予測有用情報を取得するように上記予測有用情報取得手段を構成し、
それら複数の部品又は内部装置についてそれぞれ、固有の予測有用情報及び上記保守情報に基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定する処理を個別に行うように、上記判定手段を構成し、
且つ、それら複数の部品又は内部装置について、もうすぐ故障が発生する旨の情報をそれぞれ個別に報知するように、上記報知手段を構成したことを特徴とする故障予測装置。
【請求項4】
請求項3の故障予測装置において、
複数の上記部品又は内部装置のうち、他の部品又は内部装置に対する保守作業によって自らの上記予測有用情報に影響を受けてしまうものについては、そのもの自体についての上記保守情報に加えて、該他の部品又は内部装置についての上記保守情報にも基づいて、もうすぐ故障が発生するのか、あるいはまだ故障が発生しないのか、の何れであるのかを判定するように、上記判定手段を構成したことを特徴とする故障予測装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかの故障予測装置において、
上記予測有用情報について、過去の所定回数分の取得結果に基づいて過去の挙動を把握し、且つ、保守作業が行われた旨の保守情報が取得された場合には、その後、該予測有用情報が該所定回数分だけ取得されるまでの期間を上記一定期間とする処理を実施するように、上記判定手段を構成したことを特徴とする故障予測装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかの故障予測装置において、
画像形成装置を被検対象にすることを特徴とする故障予測装置。
【請求項7】
請求項6の故障予測装置において、
上記所定の周期として、上記画像形成装置によって所定回数の画像形成動作が行われる毎の周期を用いるように、上記予測有用情報取得手段を構成したことを特徴とする故障予測装置。
【請求項8】
画像情報に基づいて記録体に画像を形成する作像手段を備える画像形成装置において、
自らを被検対象にする請求項6又は7の故障予測装置を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2010−101948(P2010−101948A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270814(P2008−270814)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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