説明

救命ボート

【課題】家庭にも置ける小型の救命ボートにおいて津波に対して予想されるさまざまな事象に対し安全に対処出来る機能を備えた方式を提供する。
【解決手段】救命ボートをボート本体1と甲板部2より構成し、それは互いに独立しており、その二つはパッチン錠5などそれぞれ対に取りつけられた金具で数か所で締結されれて一体とする。その他に数カ所にボート本体1と甲板部2にフックあるいはUボルト6をやはり対に取り付け、ロープで補強する手段も設けておく。これらの仕組みにより容易に甲板部2をボート本体1から外して人が一度に中に入れ、またそれを取り外して全員が外に出ることが出来る。あるいは救命ボートが海面で漂流した場合、甲板部2を取り外し、ボート本体1だけとして、オールや櫂、棒等で漕ぐこともできる。また甲板部2に取りつけてあるハッチ3からも出入り出来ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は津波用の救命ボートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から多くの種類の救命ボートがある。ここで対象としている5〜6人乗りの小型の救命ボートに関してはほとんどの場合扁平な筏に類似した固い浮体に人が乗るものである。またゴムボートもあるが、それらはいずれも津波に対しては胴体が反転、つまり底面が上を向いた場合、自然に復元することは出来ないものがほとんどである。大型船舶等に搭載されている大型の救命ボートは十分な復元力を備えているものがあるが、家庭の庭や屋上のベランダに置くには大きすぎ、価格的にもかなり高額である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように津波を想定した家庭用の救命ボートについては従来の製品では安全性を備えかつ大きさ、価格面で適切なものがないのが実情である。
【0004】
本発明は家庭の庭や2階のベランダ、屋上等に設置出来る小型の津波用の救命ボートを提供することを目的とする。
【問題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために請求項1にかかる発明について、ボート本体と別のそれを上から完全に覆う甲板からなる救命ボートにおいて、その二つを重ねた場合、一致する位置のボートの側壁と甲板の下にパッチン錠、さらには金具のフックを両方に対で数個所取り付け、それぞれを内部で締めることあるいはロープなどで締結することでボート本体と甲板が動かないよう一体にする構造とした。
【0006】
これにより津波を上から被ってもボートの上から海水が中に入らない構造の救命ボートを容易に構成できる。かつ津波が去った後内部の締結金具を外し甲板を取り除くと全員すぐ外に出ることが出来る。最悪の場合、救命ボートが底を上にした仰向けの状態で陸などに津波が去った後に静止した場合でも、パッチン錠などを外し、ボート本体を押しのけて外に出ることができる。片側が甲板に固定されているハッチ、あるいは甲板の一部をボート本体に固定して開閉する方式では救命ボートが仰向け状態で静止した場合、中からは容易に外に出ることが出来ず閉じ込められた状態となり、それに比べて本発明の方式は安全面で優れている。
【0007】
また請求項2に係る発明について、ボート本体とそれを覆う甲板の外周の接触面について、ボート本体の上部の縁にはすべて防水用のパッキンを付けて両方を一体に締結する構造とした。
【0008】
これにより本発明の救命ボートのボート本体と甲板の接合部分からは海水が入らない構造とすることができる。
【0009】
また請求項3に係る発明について、甲板部分には別に開閉可能で人が出入りでき、かつ外と中から同時にロック出来るレバーのついたハッチをほぼ中央部に取りつけた。
【0010】
これにより通常は救命ボートの内部の掃除や備品の出し入れはハッチから出来る。また万が一救命ボートが津波で流され甲板に大きな障害物が覆って甲板を外すことが出来ない場合、ハッチからも出ることが出来る。
【0011】
また請求項4に係る発明について、ボート本体には全重量を上回る浮体が組み込み、かつ底部には十分復元力を維持できる重りを取りつけた構成を採用した。
【0012】
これにより万が一救命ボートが津波等で流されて障害物に衝突して亀裂が入り、あるいは穴が開いて海水が浸水してもボート全体は沈まず海面に浮遊した状態を保てる。ハッチを開けておけば中で人は窒息することはない。また甲板を取り除くとその重さだけボートは浮き上がり海水に体が浸かりながらもボートの中で溺れずに過ごすことが出来る。
【0013】
また津波で救命ボートが海中で転覆して底が上を向くような反転状態に陥っても底に取りつけてある重りの関係ですぐ復元し、甲板が海面の上となり正常な状態になる。
【0014】
また請求項5に係る発明について、ボート本体の床には収容人数分のシートベルトが取りつけてある構成を採用した。
【0015】
これにより救命ボートが津波でほとんど上下が逆さまになるような状態に陥っても人がシートベルトを締めていることにより重心が移動しないので、容易に復元することが出来る。
【0016】
また請求項6に係る発明について、甲板部分には明かりを取るために厚い透明なガラスやプラスチックの窓を取り付けてある。
【0017】
これにより昼間中に入りハッチを締めても中が真っ暗になることはない。
【発明の効果】
【0018】
以上のように津波に対する救命ボートは海水の乱流で全体が横転、反転するような事態に対しても十分に安全性が維持できることが重要な要素となる。それはゴムボートや一般の簡単な救命ボートには備わっていない。
また家庭用ではサイズが小さいものでは長さが150センチメートル、幅100センチメートル、深さ100センチメートル程度の救命ボートが望ましい。このようなサイズのものに上記のような機能を備え、かつそれほど製作コストもかからないものを造ることは容易ではない。例えば小型の潜水艇のようなものを想定した場合、人が出入り出来るようにするには内部にかなりのスペースが必要になる。その結果、救命ボートの構造も大きなものとなり、救命ボート本体の重量も増し、復元力の維持のための重りの重量も増加する。その結果庭に置くにも2階のベランダに置くにも大きすぎることとなる。この発明による津波用の救命ボートは甲板を外すと一度に人がどこからでも入れ、座った後に再び甲板をボート本体に上から取りつけることで、一番コンパクトなものとすることができる。
【0019】
また瞬間的に膨張させるタイプのゴムの救命ボートもあるが、家庭などでの津波での避難の必要性は一度だけでなく、何回も繰り返し来ることが予想される。そういう点で、一度特殊な装置で膨張させると次にそれを使うには新たに膨らませる装置を組み込む必要があるものは不便であり費用もかかる。津波警報が出たときに一度膨らませ、そのときには使わなかったために空気を抜いてたたみ、まだ次の準備ができない数日後に再び津波警報が出るような場合には使用できないことも予想される。そういう点で、今後予想される繰り返し発令される可能性のある地震に繰り返し使えることもこの発明による救命ボートの特徴である。
【0020】
さらに今後津波の予想される地域ではどこでも高齢者が増加するが、その場合遠くまでの避難は容易ではない。それに対しこの救命ボートは小型であるために庭や2階のベランダには当然設置できる。つまり夜間などでは寝巻きのままで救命ボートに入り避難することも可能である。また全体の重量もこの全体を外板で覆う救命ボートの場合は、サイズが20%増加ずると、表面積は約40%増え、全重量の増加は著しい。そういう点で、よりコンパクトなものであることはベランダに置く上で重要であり、それを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示す救命ボートの部分断面図を含む斜視図
【図2】同救命ボートの長手方向の断面図
【図3】同救命ボートのパッチン錠取り付け部拡大図
【図4】同救命ボートの別の実施例
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0023】
図1において、救命ボートはボート本体1と甲板部2より構成されている。その材質は金属、プラスチック、木材等一般的に船に用いられものである。ボート本体1と甲板部2は独立しており、その二つはパッチン錠5などそれぞれ対に取りつけられた金具でボートの両サイドでそれぞれ数か所で締結されれて一体となる。このように締結するものとしては、貫抜や掛金のようなものでもよい。さらにその他に数カ所にボート本体1と甲板部2にフックあるいはUボルト6をやはり対に取り付け、ロープ13等で補強する手段も設けておく。これにより容易に甲板部2をボート本体1から外して人が一度に中に入れ、またそれを取り外して全員が外に出ることが出来る。あるいは救命ボートが海面で漂流した場合、甲板部2を取り外し、ボート本体1だけとして、オールや櫂等で漕ぐこともできる。
【0024】
ボート本体1には底の部分にシートベルト8を収容人数分取りつけておき、人が入った後に座り、それで体を締める。これにより救命ボートが津波で海中で反転しても体が底の床から離れないようにして人がけがをしないようにするだけではなく、重心の移動を防止するようになっている。
【0025】
甲板部2には開閉可能なハッチ3を取りつける。それには開閉のレバー11を取りつける。ハッチ3を閉めた状態でレバー11を回すとレバーのつめ12が甲板部2に引っかかり開かない構造となっている。その開閉は内側と外側についているレバー11でどちらからも出来るようにしておく。これにより内部からハッチ3を閉めても、救出のときに外からも容易に開けることが出来るようにしてある。また長時間救命ボートの中で避難する状態が続いた場合、ハッチ3を少し開けて空気の取り入れも出来る。
【0026】
また甲板部には別に厚いガラスやプラスチックの窓4を付けて明かりを取り入れるようにしてある。
【0027】
またボート本体1と甲板部2の接する外周部分にはパッキン10を取りつけておき、締結したときに強く押えつけ接触面から海水が入らないようにしてある。
【0028】
図2において、救命ボート本体1の前後には発泡プラスチックのような浮体7が救命ボート本体に固定されている。これにより救命ボートに海水が完全に侵入しても全体は沈まない構造となっている。またボート本体1の底には重り9が固定されてあり、これにより救命ボートの重心を下げ、最悪底が上になっても直に元に復元する構造となっている。
【0029】
図3において、パッチン錠の取り付けを示してある。パッチン錠5はボート本体1にレバー部分を取り付け甲板部2にリングを引っかける部分を取り付けて両方を締結する。これは同様の機能を果たすものであれば何でも良く、たとえば貫抜でもよい。それとは別に衝撃で甲板部2が外れるのを防止するためにフックあるいはUボルト6を数か所ボート本体1と甲板部2に対に取りつけて、ロープ13などで締結するとより安全となる。
【0030】
図4において、取りはずしの可能な甲板部分は全体を覆うのもでなく、人の入るボートの上だけとした実施例を示す。少しサイズの大きなこの救命ボートについては持ち上げる甲板も重くなるので、そうしたほうが扱うのに楽である。基本的な構造は本発明とまったく同じである。
【符号の説明】
【0031】
1 ボート本体
2 甲板部
3 ハッチ
4 窓
5 パッチン錠
6 フックあるいはUボルト
7 浮体
8 シートベルト
9 重り
10 パッキン
11 レバー
12 レバーのつめ
13 ロープ
14 取り外し可能な甲板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボート本体と別のそれを上から完全に覆う甲板からなる救命ボートにおいて、その二つを重ねた場合、一致する位置のボートの側壁と甲板の下にパッチン錠、さらには金具のフックを両方に対で数個所取り付け、それぞれを内部で締める、あるいはロープなどで締結することでボート本体と甲板が動かないように一体にすることを特徴とする救命ボート。
【請求項2】
ボート本体とそれを覆う甲板の外周の接触面について、
ボート本体の上部の縁にはすべて防水用のパッキンを付けて両方を一体に締結した場合、完全に防水できることを特徴とする請求項1に記載の救命ボート。
【請求項3】
甲板部分には別に開閉可能で人が出入りでき、かつ外と中から同時にロック出来るレバーのついたハッチをほぼ中央部に取りつけてあることを特徴とする請求項1に記載の救命ボート。
【請求項4】
ボート本体には全重量を上回る浮体が組み込み、かつ底部には甲板を上回る重量の重りを取りつけてあをことを特徴とする請求項1に記載の救命ボート。
【請求項5】
ボート本体の床には収容人数分のシートベルトが取りつけてあることを特徴とする請求項1に記載の救命ボート。
【請求項6】
甲板部分には明かりを取るために厚い透明なガラスやプラスチックの窓を取り付けてあることを特徴とする請求項1に記載の救命ボート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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