教育済みNKT細胞及び免疫関連の障害の治療におけるその使用
本発明は、かかる治療を必要としている哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害を治療するための方法に関する。この方法は、適切な手段により、前記対象の体内でNKT細胞集団を操作する工程を含み、NKT細胞集団の前記操作の結果、Th1/Th2バランスは抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かって変調されることになる。NKT細胞集団の操作は、適切な手段による前記細胞の枯渇によってか、又は代替的には、ex vivo教育済みNKT細胞がTh1/Th2バランスを抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かって変調させる能力を有するような形でのNKT細胞のex vivo教育によって、実施可能である。該発明はさらに、哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療用の薬学組成物にも関する。これらの組成物は、ex vivo教育済みNKT細胞を有効成分として含んでいる。該発明はさらに、ex vivo教育済みNKT細胞及び免疫関連又は免疫介在性の障害の治療におけるその使用を提供している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願に対するリファレンス
本出願は、2001年12月24日付けで出願された国際特許出願公開第PCT/IL01/01197号明細書の371である2003年6月25日付けで出願されたヤロン・イラン(Yaron Ilan)ら、による「教育済みNKT細胞及び免疫関係の障害の治療におけるその使用」という題の米国特許出願の部分継続出願である。上述の特許出願の内容は、その全体が本明細書に参照として援用されている。
【0002】
発明の分野
本発明は、哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療における治療用方法、組成物及びその使用の分野に関する。より特定的には、該発明の方法及び組成物は、抗炎症性又は炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってのTh1/Th2細胞バランスの変調を結果としてもたらす対象のNKT細胞集団の操作及び免疫関係の障害の治療におけるそれらの使用に向けられている。
【0003】
背景
本出願内で引用又は識別されている全ての特許、特許出願、特許公報、科学論文などは、本発明が関係する技術の現状をより完全に記述する目的でその全体が本明細書に参照として援用されるものである。
【背景技術】
【0004】
免疫系は、潜在的に有害な作用物質に対する防御の主要な部分を担っている。しかしながら、この系は、自己抗原にも対抗し、炎症性腸疾患といった自己免疫障害をもたらす可能性がある。これらの障害は、炎症誘発性(Th1)及び抗炎症性(Th2)サイトカインの間のバランス不全として感知される。
【0005】
免疫応答の克服には、望ましくない副作用を導く可能性の高い全身的免疫抑制が関与する傾向がある。かくして、抗原特異的免疫抑制の誘発のための代替的戦略に対する必要性が存在する。免疫寛容は、2つのタイプの機序によって誘発され得る。第1の「劣性」と呼ばれるものには、抗原に応答する能力をもつ圧倒的多数の免疫細胞のクローン・アネルギー又は排除が関与する[マッツィンガー(Matzinger)、P.ら、Ann.Rev.Immunol.12:991〜1045頁(1994年):キン(Qin)、S.ら、Science 259:974〜977頁(1993年)]。代替的には、「優性」タイプの寛容においては、負の免疫調節リンパ球が寛容化手順の結果として現われ得る。クローン排除又はエネルギーとは対照的に、これらのリンパ球が少しだけ存在する場合、それは、はるかに多いエフェクタ細胞をダウンレギュレートし得る。
【0006】
炎症性腸疾患の病因論における免疫系の役割
炎症性腸疾患(IBD)は、Th1−炎症誘発性及びTh2−抗炎症性亜型の免疫応答の間のバランス不全の結果であるものとして感知され得る一般的な胃腸障害である[ストローバ(Strober)、W.ら、Immunol Today 18:61〜64頁、(1997年);ノイラート(Neurath)、M.ら、J.Exp.Med.183:2605〜2615頁(1996年)]。
【0007】
IBDに随伴する腸外徴候がいくつか存在する。例えば、自己免疫現象、つまり疾病を緩和するのに用いられるグルココルチユイド、アザチオプリン、メトトレキサート及びサイクロスポリンといった標的器官の損傷及び免疫抑制剤において1つの役割をもつ免疫複合体の形成がある[ポドルスキー(Podolsky)、D.K.ら、New Engl.J.Med.325:928〜935頁(1991年);ストローバ、W.ら、In Clinical Immunology中、Mosby、St.Louis.R.R.Rich編、1401〜14281〜2(1995年)]。IBD患者は、結腸細胞の構成要素に対する抗体及び複数の異なる細菌抗原を有している。これらの抗原は、上皮損傷の結果として免疫系に進入可能となる[ヒビ(Hibi)、S.ら、Clin.Exp.Immunol.54:63〜168頁(1983年);ダス(Das)、K.M.ら、Gastroenterology 98:464〜69頁(1990年)]。同時代アネルギー及び応答性低下を含めたT細胞媒介免疫の異常は同様に、これらの患者において記述されてきた[チバ(Chiba)、M.ら、Gut、22:177〜182頁(1981頁);レードラ(Raedler)、A.ら、Clin.Exp.Immunol.60:518〜526頁(1985年)]。さらに、抗原刺激を示唆するT細胞サブセット内の変化及び粘膜IgG細胞の濃度増加を含めた、粘膜細胞媒介免疫の変化が同定された。[ダスグプタ(Dasgupta)、A.ら、Gut35:1712〜17頁(1994年);タカハシ、Fら、J.Clin.Invest.76:311〜318頁(1985年)]。感染性免疫又は毒性損傷の後の標的抗原の暴露は、粘膜免疫細胞の活性化を導き、その結果、サイトカインが粘膜炎症性応答を導くことになる[ノイラート、M.ら、J.Exp.Med.183:2605〜2616頁(1996年)]。IFNγといった炎症誘発性サイトカインの分泌は、粘膜透過性の増大に貢献し、IBDの動物モデルにおいて記述されてきた[ストローバ、W.ら、Immunol.Today18:61〜64頁(1997年)]。同様にして、IL1及びIL6を媒介とするコラーゲン合成の増大が、これらの動物で検出できる[ストローバ、W.ら、上掲書]。Balb/CマウスからCB−17scidマウスへの正常なCD45RBTの養子免疫伝達により、Th1−媒介型肉芽腫性大腸炎モデルが確立されてきた。CD45RBからのCD4細胞は、CD45RB集団と共に注射された場合、疾病を予防することが示された。この予防は、TGFβ1に対する抗体の添加により逆転させることができた[サドラック(Sadlack)、B.ら、Cell75:253〜261頁(1993年);パウリ(Powrie)、F.ら、Immunity1:553〜562頁(1994年)]。
【0008】
炎症性腸疾患におけるTh1/Th2のバランス不全
CD4及びCD8の両方のリンパ球が共に、IL−2及びIFNγを産生するTh1細胞か又はIL−4及びIL−10を産生するTh2細胞のいずれかとして型別可能である。免疫系が外来性及び自己抗原に応答する方法は、2つの亜型の応答間のバランスの結果である[ウェイナー(Weiner)、H.L.ら、Immunol.Today 18:335〜343頁アドリーニ(Adorini)、L.ら、Immunol.Today18:209〜211頁(1997年);ラバニ(Rabbani)E.ら、欧州特許出願公開第1149586A1号明細書(2001年4月27日出願)、本明細書に参照として援用]。Th1型の応答は、IBDといった複数の自己免疫及び慢性炎症性障害の病因に関与している。[アドリーニ(Adorini)、L.ら(1997年)上掲書;ミゾグチ(Mizoguchi)、A.ら、J.Exp.Med.183:847〜856頁(1996年)]。かくして、ヒトにおける実験的結腸炎及びIBDは、炎症誘発性Th1型及び抗炎症性Th2型サイトカインの間のバランス不全として感知できる。最近、動物及びヒトの両方において、IL10といった抗炎症性サイトカインがTh1媒介型サイトカインの炎症誘発性効果をダウンレギュレートしかくして免疫介在性障害を緩和することができる、ということが示されてきた[ミゾグチ、A.ら、(1996年)同上;マドセン(Madsen)、K.L.ら、Gastroenterology113:151〜159頁(1997年);ヴァン・デバンター・サンダー(Van Deventer Sander)、J.ら、Gastroenterology113:383〜389頁(1997年)]。
【0009】
免疫介在性障害の改善のための経口寛容誘発(経口免疫調節)
経口寛容(経口免疫調節)は、抗原特異的末梢免疫低応答性の誘発のための認知された手順である[ウェイナー(Weiner)、H.L.ら、(1997年)同上;ウェイナー、H.Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:10762〜10765頁(1994年);ロイ・チョードリ(Roy−Chowdury)ら、国際公開第98/37917号パンフレット(1998年2月26日出願)、本明細書に参照として援用]。抗原の経口投与は、動物及びヒトの両方において、コラーゲン誘発された関節炎、ブドウ膜炎、糖尿病及び実験的アレルギー性脳脊髄炎といった複数の自己免疫障害を防止する又は緩和することが示されてきた。[エスビョルン(Esbjorn)、T.ら、Int.Arch.Allergy Immunol.113:219〜223頁(1997年);ヴォン・ヘラース(Von Herrath)、M.G.ら、J.Clin.Inves.98:1324〜1331頁(1996年);ハンコック(Hancock)、W.ら、Am.J.Path.147:1193〜1197頁(1993年);ウェイナー、H.L.ら、Science261:1321〜1324頁(1993年)]。
【0010】
高用量の抗原に対する経腸暴露は、抗原特異的T細胞のクローン不活性化による寛容を誘発し、一方低用量の抗原の補給は、抗原特異的エフェクタ細胞の生成を抑制する調節細胞分泌因子の誘発を導く[ウェイナー、H.L.ら、(1997年)上掲書]。動物及びヒトの両方において、寛容誘発は、IL10、IL4及びTGFβ1といった免疫抑制サイトカインの分泌を導くTh2/Th3型免疫応答と結びつけられる[ウェイナー、H.L.ら、(1997年)上掲書]。多数の密に関係する抗原に対する反応性が関与する傍観者効果が、複数のモデルで経口寛容誘発における1つの役割を果たすことが示された。[ウェイナー、H.L.ら、(1997年)上掲書;カルバルホ(Carvalho)、B、A.ら、Scand J.Immunol.45:276〜281頁(1997年)]。調節細胞は、補給された抗原によりトリガーされた後に非抗原特異的サイトカインを分泌することから、これらは、補給済み抗原が局在化されている徴環境内で炎症を抑制することができる。該手順は、免疫寛容誘発用の方法として充分確立されているが、正確な機序はまだ発見されていない。1つの抗原がプロセッシング及び/又は吸収されるべきか否か及び寛容誘発にとってタンパク質変性が必要であるか否かについては、相反する結果が発表されている[カルバルホ、B.A.ら、(1997年)上掲書:ブラナス(Blanas)、E.ら、Science274:1707〜1709頁(1996年)]。
【0011】
抗原提示には、腸内へ全タンパク質を提示することが必要とされ得る。しかしながら、タンパク質のプロセッシング及び吸収も同様に、寛容誘発又は消化管後機序を通してその維持に関与する可能性がある[(カルバルホ、B.A.ら(1997年))上掲書]。消化管壁上皮細胞、パイエル板、腸間膜リンパ節又は腸外細胞が、免疫寛容誘発を媒介するものとして示唆されてきた[ストローバ、W.ら(1997年)上掲書]。しかしながら、抗原の経口投与は同様に、エピトープ特異的免疫も惹起することができる[カルバルホ、B.A.ら、(1997年)上掲書;ブラナス、E.ら、(1996年)上掲書」。実際、経口寛容化の後に現われる免疫抑制サイトカイン分泌細胞(例えばTGFβを分泌するTh3細胞)と並んで、炎症誘発性サイトカイン(例えばIFNγ)を分泌する第2の細胞集団を、消化管壁、主としてパイエル板の中に発見できる[ウェイナー、H.L.ら、(1997年)上掲書」。経口投与された抗原は、全身性TGFβ及びIL−4媒介型抗炎症性応答と共に消化管粘膜内でIFNγ媒介型の局所的炎症誘発性応答を惹起する。経口寛容化された動物由来の脾細胞とは対照的に、消化管抽出されたリンパ球は、実験未使用の動物内に寛容を伝達することができない[ストローバ、W.ら、(1997年)上掲書;ウェイナー、H.L.ら(1997年)上掲書」。かくして、経口寛容の誘発には、Th1(及び炎症誘発性サイトカインの分泌)からTh2(及び抗炎症性サイトカインの分泌)免疫応答へのシフトを伴って、免疫原性及び寛容原性細胞集団の間のバランスが必要である。
【0012】
その他の研究者及び本発明者らにより、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)で処置されたマウスを利用するモデル系内で実験的結腸炎を防止又は緩和するのに経口寛容を使用できるということが示されてきた[マドセン(Madsen)、K.L.ら、Gastroenterology 113:151〜159頁(1997年);トロップ(Trop)、S.ら、Hepatology 27:746〜755頁(1999年)]。結腸炎抽出されたタンパク質に対する経口寛容の誘発は、抗結腸免疫応答をダウンレギュレートし、かくして、免疫介在性結腸炎を改善する。サプレッサリンパ球は、炎症誘発性から抗炎症性への免疫応答のシフトの誘発により、寛容を媒介する[マドセン、K.L.ら、(1997年)上掲書、;トロップ、S.ら、上掲書]。
【0013】
免疫寛容誘発における肝臓の役目
肝臓は、長い間免疫調節機能に関与することが示唆されてきた。それは、体内で最大の網内系器官であり、その細胞の複数の亜集団が抗原の提示及び/又はプロセッシングに関与している[カルリ(Callery)、M.P.ら、J.Surg.Res.46:391〜394頁(1989年);ナカノ(Nakano)、Y.ら、Surgery 111:668〜676頁(1992年);ユー(Yu)、S.Y.ら、Surgery 116:229〜234頁(1994年)]。
【0014】
門脈大静脈シャント又はクッパー細胞の遮断は、複数の動物モデルにおいて経口寛容の誘発を妨げた[カルリ、M.P.ら、(1989年)上掲書;ナカノ、Y.ら、(1992年)上掲書;ユー、S.Y.ら、(1994年)上掲書」。腸内細菌叢に対する抗体力価は、門脈大静脈シャントを受けた慢性肝疾患をもつヒトにおいて高くなることが発見された[クリスプ(Crispe)、N.ら、Immun.Today11:236〜245頁(1996年);イラン(Ilan)、Y.ら、Gastro114:260頁(1998年)]。ドナー細胞の門脈投与は、同種特異的低応答性を促進することが示されてきた[クリスプ、N.ら、(1996年)上掲書」。かくして、肝臓は、細胞又はペプチドの特異的亜集団の第1の通過クリアランスを通した末梢免疫寛容誘発のために必要であり得る。
【0015】
当該例は、マウス肝臓抽出の連続的給餌による経口免疫調節の誘発は、ob/obマウスグルコース不寛容を改善し、その肝脂肪含有量を低減させる一方、コンカナバリン−Aにより媒介される肝損傷を受けやすくする、ということを示している。この機序には、Th1/Th2シフト応答が関与している。
【0016】
肝臓関連リンパ球
成人の肝臓は、その免疫変調機能に関与する細胞の複数の亜集団を含有している。クッパー細胞は、門脈循環を通って肝臓に入る抗原に対する第1線の防御において重要であることが発見された。抗原活性化されたクッパー細胞は、抗原提示、食作用を有し、サイトカインの分泌を介して殺傷特性を示した。これらの細胞は同様に走化性及びリンパ球凝集をも誘発する[クリスプ.N.ら、(1996年)上掲書」。さらに、成人肝臓は、多能性幹細胞を含有し、胸腺及び胸腺外T細胞、顆粒球及び赤血球系統細胞を含めた多数の細胞系統を発生させる[クリスプ.N.ら、(1996年)上掲書」。実際、T細胞は、成人肝臓内で胸腺外で分化できる[コリンズ(Collins)C.ら、Eur.J.Immunol.26:3114〜3118頁(1996年)]。
【0017】
肝臓は、高TCR(TCRhigh)を伴う胸腺由来のT細胞及び中間TCR(TCRint)を伴う胸腺外T細胞から成る2つのT細胞集団のための遭遇場所であると思われる。主流T細胞としても知られている第1のT細胞セットは、CD4+及びCD8+細胞の二流の集団の混合物及び、NK細胞マーカー又はIL2Rβを発現せずかつ循環するT細胞プールに密に連結しているCD−CD8−ダブルネガティブ(DN)細胞の大きな集団を含有する[クリスプ、N.ら、(1996年)上掲書」。DN細胞の多くは、B細胞マーカーB220を発現し、その誘発は肝臓へのアポトーシスするT細胞のトラフィックを導く[クリスプ.N.ら、(1996年)上掲書;Ilan、Y.ら、(1998年)上掲書;コリンズ、C.ら、(1996年)上掲書;ガルシア・バルシナ(Garcia−Barcina)、M.ら、Immuno l82:95〜8頁(1994年);マクドナルド(MacDonald)R.H.ら、J.Exp.Med.182:633〜638頁(1995年)]。代替的T細胞として知られる肝臓T細胞の第2のサブセットは、CD4+、又はCD4−8−及びCD16−、高速(express)αβTCRint及び、NKR−P1、Ly−49A及びIL2レセプタβ−鎖を含めた既知のNKレセプタである。[ガルシア・バルシナ、M.ら、(1994年)上掲書、マクドナルド、R.H.ら、(1995年)上掲書、;バンドラック(Bendelac)、A.ら、Curr.Opin.in Immunol.7:367〜374頁(1995年)]。肝臓IL2Rβ+TCRint細胞の大部分はNK1.1+である。これらの細胞は、末梢リンパ様器官を通って循環するプール内で稀である。しかしながらこれらの細胞の小さな集団は、胸腺髄質、脾臓及び骨髄の中に存在する。TCRint、IL2Rβ+、NK1.1+細胞は、従来の胸腺経路を通ってではなく原始経路、胸腺及び胸腺外代替経路を通って分化し、胸腺摘出された動物の肝臓内で発達し得る[マクドナルド、R.H.ら、(1995年)上掲書;ベンドラック、A.ら、(1995年)上掲書;タカハシ、M.ら、J.Immunol.156:2436〜2442頁(1996年);ドハティ(Doherty)、D.G.ら、Hepatology 26:445A頁(1997年)]。それらの機能は、従来のT細胞のいずれかのサブセットのものの特徴ではないが、細胞毒性及びB細胞ヘルプの要素を含む。一次活性化の時点で、これらはTh1及びTh2の両方に由来する多様なサイトカインを放出する。[マクドナルド、R.H.ら、(1995年)上掲書;ベンドラック、A.ら、(1995年)上掲書;タカハシ、M.ら、(1996年)上掲書;ドハティ、D.G.ら、(1997年)上掲書」。これらは同様にIL12に応答し、IFNγを産生し、これらの両方共がTh1サイトカインであり、抗腫瘍及び抗菌エフェクタ細胞を誘発する。[タカハシ、M.ら、(1996年)上掲書;ドハティ、D.G.ら、(1997年)上掲書」。さらに肝臓内でこれらの細胞はIL12及びIFNαに応答して増殖し、末梢欠失中、主流T細胞に対する致死ヒットに積極的に関与し得る[タカハシ、M.ら、(1996年)上掲書;ドハティ、D.G.ら、(1997年)上掲書」。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的の1つは、末梢免疫寛容誘発、脾細胞の養子免疫伝達を介した炎症及び/又は寛容の誘発、特定的にはリンパ球の免疫原性及び寛容原性サブセットの間のバランスを保つ上でのNK1.1+リンパ球の役割を判定することにある。本研究の結果は、初めて、NK1.1+リンパ球が免疫介在性障害において2重の役割を果たし得るということを示している。「寛容化された環境」において、これらは、抗炎症性方向でのTh1/Th2パラダイムの改変を介して免疫低応答性を誘発しかつ/又は維持する。一方、「寛容化されていない環境」においては、これらは炎症誘発性パラダイムを支援する。該発明のこの目的及びその他の目的は、記述が進むにつれてさらに明白になることだろう。
【0019】
哺乳類の対象における免疫関連又は媒介型の障害又は疾患、感染性疾患、代謝疾患及び異なる型の癌の治療のためにさまざまな方法が記述されてきた。これらの方法の1つには、対象中の免疫応答の変調が関与している。これには、選択的免疫ダウンレギュレーション(SIDR)と呼ばれる新しくかつ予想外の免疫変調を産生し適用するための手順又は手順の組合せを用いた免疫応答系のダウンレギュレーションが含まれる。免疫学的変調は、試薬、手順及びプロセスの導入に応答した対象の免疫系における人工的に誘発された変動である。これらの手順は、1997年2月28日付けの米国特許出願第08/808,629号明細書、2003年3月4日付けの米国特許出願第10/377,628号明細書、2003年3月4日付けの米国特許出願第10/377,603号明細書、1997年2月8日付けの米国特許出願第09/447,704号明細書、2001年5月9日付けの米国特許出願第10/385,440号明細書及び1999年7月16日付けの米国特許出願第09/356,294号明細書の中で詳述されてきた。以上の特許の各々はその全体が本出願の中に参照として援用されており、本発明と併用してさらに使用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の要約
第1の態様では、該発明は、かかる治療を必要とする哺乳類の対象において免疫関連又は免疫介在性の障害を、適切な手段により前記対象のNKT細胞集団を操作することによって治療するための方法において、該NKT細胞集団の前記操作が抗炎症性又は炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってのTh1/Th2細胞バランスの変調を結果としてもたらす治療方法に関する。
【0021】
好ましい実施形態においては、該発明は前記細胞の枯渇によりNKT細胞集団を操作する方法に関する。特定的に好ましい実施形態として、NKT細胞集団の枯渇は、NKT細胞を特異的に認識する抗体を有効成分として含む治療上有効な量の組成物を対象に投与することによって実施され得る。代替的には、NKT細胞集団の枯渇は、NKT細胞を特異的に認識する抗体でコーティングされたビーズを用いてex vivoフェレーシスによって実施され得る。
【0022】
代替的に好ましい実施形態では、該発明は、哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療方法において、抗炎症性又は炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2バランスを変調させる能力を有するような形での前記NKT細胞のex vivo教育によるNKT細胞集団の操作が関与する方法に関する。
【0023】
特定的に好ましい実施形態は、
a. 対象又はもう1つの対象からNKT細胞を得る工程;
b. 結果として得られた教育済みNKT細胞が、抗炎症性又は炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かって前記Th1/Th2細胞バランスを変調させる能力を有するような形で、工程(a)で得られたNKT細胞を、ex vivo教育する工程;及び
c. 工程(b)で得られた教育済みNKT細胞を前記対象に再導入する工程;
を含む、哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための方法に関する。抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってのTh1/Th2細胞バランスの変調は、結果としてIL4及びIL10のいずれか1つ対IFNγの定量比の増大をもたらす。炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってのTh1/Th2細胞バランスの変調は、IL4及びIL10のいずれか1つの対IFNγの定量比の減少を結果としてもたらす。
【0024】
より特定的には、NTK細胞のex vivo教育は、
a. 治療すべき免疫関連又は免疫介在性の障害と結びつけられる抗原又はそれらの任意の組合せ;
b. 同じ免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない患者の又は前記対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c. 少なくとも1つのサイトカイン又は接着分子;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下でこれらの細胞を培養することにより実施可能である。
【0025】
該発明の方法に従ったex vivo教育済みNKT細胞は、治療対象への養子免疫伝達により再導入される。
【0026】
もう1つの好ましい実施形態は、免疫関連又は免疫介在性の障害が炎症性腸疾患(IBD)である、該発明の方法に関する。より特定的には、前記疾病はクローン病であり得る。
【0027】
もう1つの特定的に好ましい実施形態においては、該発明の方法は、黒色腫、癌腫、リンパ腫及び肉腫から成る群から選択された悪性腫瘍の治療用である。この目的で、NKT細胞は、有利な抗腫瘍免疫を増大させるべく炎症誘発性方向に免疫応答を増強させる方向で操作され得る。
【0028】
好ましい実施形態は、免疫関連又は免疫介在性の障害が非アルコール性脂肪性肝炎である該発明の方法に関する。
【0029】
もう1つの好ましい実施形態では、該発明の方法は、肥満の治療用である。
【0030】
該発明のもう1つの好ましい実施形態は、真性糖尿病又は耐糖能異常の治療用の方法である。
【0031】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、該発明の方法は、移植片対宿主病の治療用である。
【0032】
もう1つの好ましい実施形態は、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は媒介型の障害又は疾患の治療用の該発明の方法に関する。
【0033】
好ましい実施形態は、免疫関連又は媒介型の障害又は疾患の治療のための経口寛容誘発又は経口免疫調節を通した免疫変調方法に関する。
【0034】
好ましい実施形態は、非アルコール性脂肪性肝炎の治療用の経口寛容誘発又は経口免疫調節を通した免疫変調方法に関する。
【0035】
もう1つの好ましい実施形態は、真性糖尿病又は耐糖能異常の治療用の経口寛容誘発又は経口免調節を通した免疫変調方法に関する。
【0036】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、該発明は、肥満の治療用の経口寛容誘発又は経口免調節を通した免疫変調方法に関する。
【0037】
該発明の方法は任意には、好ましくは経口寛容化により免疫関連又は免疫介在性の障害に対する免疫応答のアップ又はダウンレギュレーションを対象の体内で惹起する工程をさらに含み得る。
【0038】
さらにもう1つの好ましい実施形態は、骨粗鬆症、GVHD、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は媒介型の障害又は疾患の治療のための経口寛容誘発又は経口免疫調節を通した免疫変調の方法に関する。
【0039】
さらにもう1つの特定的に好ましい実施形態では、該発明の方法は、ヒトの患者の治療用である。
【0040】
本発明の第2の態様は、哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための治療用組成物に関する。該発明の組成物は、抗炎症性又は炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させる能力をもつex vivo教育済み自家又は非自家NKT細胞を有効成分として含んでいる。これらの教育済みNKT細胞は、IL4及びIL10のいずれか1つ対IFNγの定量比の増大又は減少を媒介する。該発明の組成物は、任意にはさらに、薬学的に受容可能な担体、希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤を含み得る。
【0041】
好ましい実施形態においては、該発明の治療用組成物内に含まれる教育済みNKT細胞は、
a. 前記免疫関連又は免疫介在性の障害と結びつけられる抗原又はそれらの任意の組合せ;
b. 前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない患者の又は治療すべき対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c. 少なくとも1つのサイトカイン又は接着分子;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下で、該発明の組成物中でのその使用に先立ちex vivoで培養される。
【0042】
好ましい実施形態では、該発明の治療用組成物は、哺乳類の対象、特にヒトにおける腸の感染性疾患の治療、より特定的にはクローン病の治療用である。
【0043】
もう1つの好ましい実施形態では、該発明の治療用組成物は、黒色腫、癌腫、リンパ腫及び肉腫から成る群から選択された悪性腫瘍の治療用である。
【0044】
好ましい実施形態では、該発明の治療用組成物は、非アルコール性脂肪性肝炎の治療用である。
【0045】
もう1つの好ましい実施形態では、該発明は、肥満治療のための治療用組成物に関する。
【0046】
該発明のもう1つの好ましい実施形態は、真性糖尿病又は耐糖能異常治療のための治療用組成物である。
【0047】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、該発明の治療用組成物は、移植片対宿主病の治療のために使用可能である。
【0048】
さらにもう1つの好ましい実施形態では、該発明は、免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための治療用組成物に関する。この組成物は、NKT細胞を特異的に認識する抗体を有効成分として含む。
【0049】
一実施形態においては、該発明の治療用組成物は、クローン病といった腸炎症性疾患の治療のために使用可能である。
【0050】
もう1つの実施形態においては、該発明の治療用組成物は、黒色腫、癌腫、リンパ腫及び肉腫から成る群から選択された悪性腫瘍の治療のために使用することができる。この目的で、NKT細胞は、有利な抗腫瘍免疫を増大させるべく炎症誘発性方向に免疫応答を増強させる方向に操作され得る。
【0051】
もう1つの好ましい実施形態は、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は媒介型の障害又は疾患の治療用の該発明の方法に関する。
【0052】
好ましい実施形態は、免疫関連又は媒介型の障害又は疾患の治療のための治療用組成物の製造における経口抗原の使用に関する。
【0053】
好ましい実施形態は、非アルコール性脂肪性肝炎治療のための治療用組成物の製造における経口抗原の使用に関する。
【0054】
もう1つの好ましい実施形態は、真性糖尿病又は耐糖能異常の治療のための治療用組成物の製造における経口抗原の使用に関する。
【0055】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、該発明は、肥満治療のための治療用組成物の製造における経口抗原の使用に関する。
【0056】
もう1つの好ましい実施形態では、経口抗原は、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は媒介型の障害又は疾患の治療のための治療用組成物の製造において使用される。
【0057】
第3の態様としては、本発明は、免疫関連又は免疫介在性の障害を患う哺乳類の対象の体内で抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2バランスを変調させるための治療用組成物の製造における、教育済みの自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0058】
特定的に好ましい実施形態においては、該発明は哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための治療用組成物の製造においてex vivo教育済みの自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。教育済みNKT細胞は、抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させる能力をもちかくして、IL4とIL10のいずれか1つ対IFNγの定量比の増大を媒介する。
【0059】
1つの特定的に好ましい実施形態においては、該発明は、哺乳類の対象特にヒトの患者の腸炎症性疾患の治療用、特にクローン病の治療用の治療用組成物の製造におけるex vivo教育済みの自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0060】
もう1つの特定的に好ましい実施形態においては、該発明は、悪性腫瘍の治療、より特定的には黒色腫、癌腫、リンパ腫及び肉腫の治療のための治療用組成物の製造におけるex vivo教育済み自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0061】
好ましい実施形態においては、該発明は、非アルコール性脂肪性肝炎の治療のための治療用組成物の製造におけるex vivo教育済み自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0062】
もう1つの好ましい実施形態においては、該発明は、肥満の治療のための治療用組成物の製造におけるex vivo教育済み自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0063】
該発明のもう1つの好ましい実施形態は、真性糖尿病又は耐糖能異常の治療のための治療用組成物の製造におけるex vivo教育済み自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0064】
さらにもう1つの実施形態においては、該発明は、移植片宿主病の治療のための治療用組成物の製造におけるex vivo教育済み自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0065】
もう1つの好ましい実施形態は、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は媒介型の障害又は疾患の治療用の該発明の方法に関する。
【0066】
本発明はさらに、かかる治療を必要としている哺乳類の対象の体内の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療において使用するためのex vivo教育済み自家NKT細胞を提供する。該教育済みNKT細胞は、
a. 治療すべき免疫関連又は免疫介在性の障害と結びつけられる抗原又はそれらの任意の組合せ;
b. 前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない患者の又は前記対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c. 少なくとも1つのサイトカイン又は接着分子;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下でex vivo培養されてきたものである。
【0067】
本態様のもう1つの実施形態においては、該発明は、かかる治療を必要としている哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療におけるex vivo教育済みの自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0068】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、本発明は、免疫関連又は免疫介在性の障害を患う哺乳類の対象の中のNKT細胞集団の操作のための治療用組成物の製造における、NKT細胞を特異的に認識する抗体の使用に関する。
【0069】
NKT細胞集団の枯渇は結果として、抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させることになる。
【0070】
1つの特定的に好ましい実施形態においては、該発明は、哺乳類の対象内の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための治療用組成物の製造におけるNKT細胞を特異的に認識する抗体の使用に関する。
【0071】
1つの特定的実施形態においては、免疫関係の障害は、クローン病といった腸の炎症性疾患であり得る。もう1つの特定的実施形態においては、免疫関連又は免疫介在性の障害は、黒色腫、癌種、リンパ腫及び肉腫といった悪性腫瘍であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
発明の詳細な説明
NK1.1T細胞は、サイトカイン分泌を介して抗炎症性及び炎症誘発性リンパ球の間のバランスを保つこと及び/又は殺傷することに関与している可能性があり、又、Tヘルパー細胞の分化の判定に関与する可能性もある[アラセ(Arase)、H.ら、Eur.J.Immunol.23:307〜310頁(1993年);ヨシモト(Yoshimoto)、T.ら、J.Exp.Med.179:1285〜1295頁(1994年);マクドナルド、H.R.ら、J.Exp.Med.182:633〜638頁(1995年);セダー(Seder)、R.A.ら、Annu.Rev.Immuno.12:635〜673頁(1994年);ヨシモト、T.ら、Science 270:1845〜1847頁(1995年)]。NK1.1T細胞活性化について多数のシグナリング経路が同定された。NK1.1+T細胞は安定した形で分極されず、異なるトリガーの時点で、TCR係合がこれらの細胞由来のTh1及びTh2の両方のサイトカインの分泌をトリガーする、と仮定されている。[ベンデラク、A.ら、Annu.Rev.Immunol.15:535〜562頁(1997年);アラセ、H.ら、J.Immunol.151:546頁(1993年);カワムラ、T.ら、J.Immunol.160:16〜19頁(1998年);チェン、H.ら、J.Immonol.159:2240〜2249頁(1997年);アラセ、H.ら、Eur.J.Immunol.23:307〜310頁(1998年);ヨシモト、T.J.Exp.Med.179:1285〜1295頁(1994年);マクドナルド、H.R.J.上掲書、(1995年)]。NK1.1R又はIL12R係合は、Th1分泌パラダイムを選択的に促進し得る[ベンデラク(Bendelac)、ら.(1997年)上掲書;アラセ、H.ら、J.Exp.Med.183:2391〜2396頁(1996年);ハヤカワ(Hayakawa)、T.ら、J.Exp.Med.176:269〜274頁(1992年)]。
【0073】
上述のように、NK1.1+Tリンパ球は、免疫調節において複雑な役割を果たす。本発明に記述された結果は、NK1.1Tリンパ球が、免疫介在性実験的結腸炎を調節する上で2重の役割をもつということを示している。経口寛容誘発の後のNK1.1Tリンパ球の枯渇は、CD4+細胞により分泌されたIL4対IFNγの定量比を有意に減少させながら、寛容の養子免疫伝達を防げた。これと対照的に、寛容化されていないマウス内のNK1.1Tリンパ球は、結腸炎を緩和し、CD4+により分泌されたIL4とCD4−により分泌されたIFNγの間の定量比を有意に増大させた。
【0074】
第1の態様においては、該発明はかくして、かかる治療を必要としている哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための方法に関する。該発明の方法は、適切な手段により、対象の体内のNKT細胞集団を操作する工程を含む。NKT細胞集団の操作は結果としてTh1/Th2細胞バランスの変調をもたらし、それを抗炎症性又は前抗炎症性サイトカイン産生細胞の産生に向かってシフトさせる。あらゆる免疫変調が免疫応答をダウン又はアップレギュレートし得るということを強調しておくべきである。この変調はさらに該対象の又はもう1つの対象の免疫系の異なる構成要素によって媒介される。かかる構成要素は、例えば細胞免疫反応要素、体液性免疫反応要素及びサイトカインである。
【0075】
好ましい実施形態においては、NKT細胞集団の操作は、この細胞集団を枯渇させることによる。NKT細胞集団の枯渇は、例えば、NKT細胞を特異的に認識する抗体を有効成分として含む治療上有効な量の組成物を対象に投与することによって実施され得る。この特定的方法は、ポリクローナル抗体ならびに好ましくはモノクローナル抗体の使用を包含する。
【0076】
タンパク質に対するポリクローナル抗体の生成は、ウィンレーエンドサンズ(Winley and Sons)Current Protocols in Immunologyの第2章に記述されている。モノクローナル抗体は、ハイブリッド細胞の成長に有利に作用する条件下での不死化されたB細胞との融合により、特にラット又はマウスといった免疫化された動物の脾臓又はリンパ節から取ったB細胞から調製可能である。マウスB細胞の融合のためには、細胞系Ag−8が好まれる。モノクローナル抗体を生成する技術は、上述のCurrent Protocols in Immunologyの第2章といった数多くの論文及び教科書で記述されている。これらの動物の脾臓又はリンパ節細胞は、その中の第2章に記述された通りのモノクローナル抗体の生成のために、タンパク質−免疫化された動物の脾臓又はリンパ節と同じ要領で使用可能である。モノクローナル抗体を生成するのに用いられる技術は、クーラー(Kohler)及びミルスタイン(Milstein)、Nature 256:495〜497頁(1975年)によって、及び米国特許第4,376,110号明細書の中でさらに記述されている。
【0077】
「抗体」という用語は、抗原を結合する能力をもつ例えばFab及びF(ab’)2といった無傷の分子ならびにそのフラグメントの両方を含むように意図されている。Fab及びF(ab’)2フラグメントは、無傷の抗体のFcフラグメントが欠如し、無傷の抗体に比べ、循環からより急速に削減し、より少ない非特異的組織結合を有し得る[ウォール(Wahl)ら、J.Nucl.Med.24:316〜325頁(1983年)]。本発明において有用である抗体のFab及びF(ab’)2及びその他のフラグメントは、無傷抗体分子のために本明細書で開示された方法に従ってNKT細胞の選択的枯渇のために使用可能であり得るということがわかるだろう。かかるフラグメントは標準的に、(Fabフラグメントを産生するための)パパイン又は(F(ab’)2フラグメントを産生するための)ペプシンといった酵素を用いて、タンパク質分解分割により産生される。
【0078】
抗体は、この特定の例においては前記細胞によって発現された細胞外マーカー分子である抗原と特異的に反応しかくして該分子を該抗体に結合させる能力をもつ場合に、或る種の細胞を「特異的に認識する能力を有する」と言われる。
【0079】
「抗原」というのは、その抗原のエピトープに結合する能力をもつ抗体を産生するよう動物を誘発する能力を付加的に有する、抗原により結合される能力をもつ分子又はその一部分である。抗原は、1つ又はそれ以上のエピトープを有する可能性がある。「エピトープ」という用語は、同様に該抗体によって認識され得る、抗体により結合される能力をもつ任意の分子の一部分を意味するように意図されている。エピトープ又は「抗原決定基」は通常、アミノ酸又は糖側鎖といった分子の化学的に活性な表面集団から成り、特異的な3次元構造特性ならびに特異的電荷特性を有する。
【0080】
一変形形態として、NKT細胞集団の枯渇は、NKT細胞を特異的に認識する抗体でコーティングされたビーズを用いてex vivoフェレーシスによって実施可能である。フェレーシス手順では、全血は治療を受ける対象から採血され、血漿、赤血球及び白血球へと直ちに分離される。NKT細胞は、NKT細胞マーカーに対する特異的抗体を用いることによって白色細胞集団から枯渇され、その間その他の血液成分は同時に、治療を受ける対象へと戻るよう移送されている。
【0081】
NK1.1+T細胞上のNK1.1分子は、IL4産生に対してではなくIFNγ産生を導くレセプタとして役立つ[アラセ、H.ら、J.Exp.Med.183:2391〜2396頁(1996年);セダー、R.A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:10188〜92頁(1993年)]。グリコシルポスファチジルイノシトール定着したタンパク質又はLPSリガンドでの刺激時点で、NK1.1T細胞はIFNγ産生細胞となり、Th2細胞分化を阻害し、IgE応答を抑制する[キュイ(Cui、J.ら、J.Exp.Med.190(N−6):783〜792頁(1999年)]。外因性IL2は、NK1.1R−P1架橋の時点でIFNγ産生を増大させる[アラセ、H.ら、(1996年)上掲書」。NK1.1+T細胞は、抗−CD3でのインビボ刺激の時点で迅速に大量のIL4の分泌を介してCD4+T細胞の分化に関与する[ヨシモト、T.ら、Science 270:1845〜7頁(1995年)]。CD1制限されたNK1.1T細胞集団が、抗−CD3で誘発される早期IL4バーストに不可欠である[セダー、R.A.Ann.Rev.Imm.12:635〜673頁(1994年)]。細菌LPSが、クッパー細胞からのIL−12産生を介してNK1.1+細胞を活性化することが示されており、それに続いてIFNγ産生を誘発する[マー(Ma)、X.ら、J.Exp.Med.183:147〜157頁(1996年)]。樹状細胞とNK及び/又はTリンパ球の間の細胞同士の接触の結果、細胞の細胞溶解活性及びIFNγ産生の両方が実質的に増大した[De−Moraes、L.ら、Eur.J.Immunol.28:1507〜1515頁(1998年)]。IL18及び白血球機能関連抗原−1は、肝臓及びその細胞毒性活性においてNK1.1+T細胞の蓄積の中で一つの役割を果たし得る[サカモト(Sakamoto)、Y.ら、J.Immunol.103(5pt2):445〜51頁(1999年)]。NK1.1+T細胞は、それらがT細胞応答に影響を及ぼすもう1つの経路でありうる抗原提示の中で1つの役割を果たしているものとして示唆されてきた[セキ(Seki)、S.ら、J.Immunol.V147:1214〜1221頁(1991年)]。この細胞の亜型は以前に、高レベルの自家死滅を有することが示された[クリプス、N.ら、Immun.Today 11:236〜245頁(1996年);カワムラ、T.ら、J.Immunil.160:16〜19頁(1998年);ドハティ、D.G.ら、J.Hepatology 28:59A(1998年)]。LALによるFas発現は、活性化されたFas発現T細胞の死を結果としてもたらした[ドハティ、D.G.ら、(1998年)上掲書;ジョンソン(Jonsson)J.R.ら、Hepatology 26:269A(1997年);ドハティ、D.G.ら、Hepatology26:445A(1997頁)]。かくして、寛容化された環境の中で、NK1.1T細胞が、そのIL−4媒介型抗炎症性サイトカイン分泌に加えて、感作された炎症誘発性細胞の死滅に関与し、その一方で、寛容化されていない環境内でそれらがそのIFNγ分泌に加えて抗炎症性細胞の死滅に関与しうるということが可能である。IL4及びIL12は両方共がNK1.1T細胞の細胞毒性潜在力を増大させる[ハシモト(Hashimoto)、W.ら、J.Immonol.154:4333〜4340頁(1995年);バラス(Ballas)、Z.K.ら、J.Immonol.150:17〜30頁(1993年)]。炎症の間、免疫応答のバランス化において1つの役割を果たすIL12/IFNγループが存在する[マー、ら.(1996年)上掲書」。IL12は、IFNγ分泌ならびにNK1.1+T細胞の細胞分解活性及び増殖を増大させる[キュイ、ら、(1999年)上掲書;ベンデラク、ら、(1997年)上掲書;アラセ、ら、(1996年)上掲書;デ・モラエス(De−Moraes)、ら、(1998年)上掲書;ノイラート、M.F.ら、J.Exp.Mad.182:1281〜1290頁(1995年)]。
【0082】
従って、代替的な好ましい実施形態として、該発明は、哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための方法に関する。この方法には、Th1/Th2バランスを変調させそれを抗炎症性サイトカイン産生細胞の産生及び前記対象内への教育済み細胞の投与に向けてシフトさせる能力を教育済みNKT細胞が有するような形で、前記細胞のex vivo教育によりNKT細胞集団を操作することが関与している。この変調は、IL4とIL10のうちのいずれか1つ対IFNγの定量比(これは明細書全体を通してCD4+IL4、IL10/CD4+比とも呼ばれる可能性がある)の増大という結果をもたらす。免疫介在性障害においては、該比は、疾病の重症度に従って減少し、回復中に増大し得る。従って、IL4及びIL10のいずれか一方対IFNγの定量比の変化は、治療前レベルに対し関係づけされるべきである。
【0083】
さらにもう1つの好ましい実施形態では、該発明は、哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための方法に関する。この方法には、Th1/Th2バランスを変調させそれを炎症誘発性サイトカイン産生細胞の産生及び前記対象内への教育済み細胞の投与に向けてシフトさせる能力を教育済みNKT細胞が有するような形で、前記NKT細胞のex vivo教育によりNKT細胞集団を操作することが関与している。この変調は、IL4とIL10のうちのいずれか1つ対IFNγの定量比(これは明細書全体を通してCD4+IL4、IL10/CD4+比とも呼ばれる可能性がある)の減少という結果をもたらす。
【0084】
「CD4+IL4」という用語は、CD4+細胞により産生されたIL4を意味し、「CD4+IL10」というのは、CD4+細胞により産生されたIL10を意味し、「CD4+IFNγ」というのは、CD4+細胞により産生されたIFNγを意味する。本発明の中で使用される用語「CD4+IL4 IL10/CD4+IFNγ比」は、好ましくはCD4+細胞により産生されたIL4及びIL10のいずれか1つ対好ましくはCD4+細胞により産生されたIFNγの定量比を意味する。これらのサイトカインの各々の数量を定義するための定量測定が、本明細書で記述された実施例(実験手順)で記述されている通りに実施された。
【0085】
特定的に好ましい実施形態は、哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための方法に関する。この治療方法は、
a. 対象又はもう1つの対象からNKT細胞を得る工程;
b. 結果として得られた教育済みNKT細胞が、抗炎症性又は炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かって前記Th1/Th2細胞バランスを変調させる能力を有するような形で、工程(a)で得られたNKT細胞を、ex vivo教育する工程;及び
c. 工程(b)で得られた教育済みNKT細胞を前記対象に再導入する工程;
を含む。抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってのTh1/Th2バランスの変調は、結果としてIL4及びIL10のいずれか1つ対IFNγの定量比の増大をもたらす。炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってのTh1/Th2バランスの変調は、IL4及びIL10のいずれか1つの対IFNγの定量比の減少を結果としてもたらす。
【0086】
NKT細胞は、骨髄、肝臓、脾臓又は子宮から得ることができるが、上述のサイトフェレーシス方法により末梢血から得ることもできる。
【0087】
より特定的には、NTK細胞のex vivo教育は、
a. 治療すべき免疫関連又は免疫介在性の障害に対して第3者エピトープと結びつけられる少なくとも1つの抗原又はそれらの任意の組合せ;
b. 同じ免疫障害を患う寛容化された又はされていない患者の又は治療すべき対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞又はそれらの任意の組合せ;
c. 少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子、又はその任意の組合せ;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下でこれらの細胞を培養することにより実施可能である。
【0088】
NKT細胞は、上述の方法のいずれかを介してインビボでも教育され得るということがわかるはずである。これらの細胞は、同種エピトープ又は抗原に対する暴露の前又はその後の任意の時点で変調され得る。
【0089】
1つの特定の実施形態においては、NKT細胞のex vivo教育は、治療すべき免疫関連又は免疫介在性の障害と結びつけられる抗原の存在下でこれらの細胞を培養することによって実施され得る。これらの抗原は、前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患うドナー患者から採取した同種抗原、異種抗原、自家抗原、組換えにより調製された抗原又はその任意の組合せであり得る。
【0090】
これらの抗原は、対象に関して未変性又は未変性でない可能性がある。これらは天然でも合成でも、又修飾済み又は未修飾でも、その全体でもフラグメントでもあり得る。フラグメントは、フラグメントとしての合成から又はより大きな疾患単位からフラグメントを作り出すべく消化又はその他の修飾手段によって誘導され得る。かかる抗原は、タンパク質、糖タンパク質、酵素、抗体、組織適合性決定基、リガンド、レセプタ、ホルモン、サイトカイン、細胞膜、細胞構成要素、ウイルス、ウイルス構成要素、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、全細胞、組織又は器官を含むが、これらに制限されるわけではない。抗原は、単一の分子又はさまざまな個々の分子の混合物で構成され得る。抗原は、ウイルス表面、細胞表面、膜、マトリクス、又は複合体という状況の中で又はレセプタ、リガンド、抗体又はその他の任意の結合パートナと接合された状態で自らを提示できる。かかる抗原は、単独で又はさらに摂取、安定性、反応性又はターゲティングに貢献できる作用物質と共に対象に対し導入可能である。
【0091】
重合及び分解、分画及び化学的修飾は全て、潜在的免疫応答に関して特定の抗原の特性を改変する能力を有する。これらの小さなセグメント、フラグメント又はエピトープは単離されているか又は合成されているかのいずれかであり得る。制限的意味のない例として、かかる抗原は、実施例7中でex vivo教育のために使用されるCEPといった、身体抽出物に由来する異なる抗原の組合せであり得る。
【0092】
本発明の方法はさらに、組換えにより調製された抗原を包含する。組換え型抗原の調製には、当該技術分野において周知のものである一般的な分子生物学技術の使用が関与する。かかる技術には例えば、適切な発現ベクターに対する所望の抗原のクローニングが含まれる。
【0093】
本明細書で使用する「ベクター」というのは、宿主のゲノム内へのDNAフラグメントの組込みを可能にするプラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、組込み可能なDNAフラグメント及びその他のビヒクルを包含する。発現ベクターは、標準的には、所望の遺伝子又はそのフラグメント及び適切な宿主細胞中で認識され所望の遺伝子の発現をもたらす操作可能な形で連結された遺伝子制御要素を含有する自己複製するDNA又はRNA構成体である。これらの制御要素は、適切な宿主の内部で発現をもたらす能力をもつ。一般に、該遺伝子制御要素は、原核生物プロモータ系又は真核生物プロモータ発現制御系を内含し得る。これには標準的に、転写プロモータ、転写の開始を制御するための任意のオペレータ、RNA発現のレベルを上昇させるための転写エンハンサ、適切なリボソーム結合部位をコードする配列、RNAスプライス部位、転写及び翻訳を終結する配列などが含まれる。発現ベクターは通常、ベクターが宿主細胞とは独立して複製できるようにする複製起点を含む。
【0094】
ベクターは付加的には、適切な制限部位、ベクター含有細胞の選択のための、抗生物質耐性又はその他のマーカーを含み得る。プラスミドは、同等の機能に役立ち、かつ当該技術分野において既知であるか又は既知となったその他の形のベクターも、本明細書での使用に適している。例えば、本明細書に参照として援用されているパウエルズ(Pouwels)、ら、Cloning Vectors:a Laboratory Manual(1985年及び追補)、エルスヴィア(Elsevier)、N.Y.;及びロドリケス(Rodriques)ら、(eds.)Vectors:a Survey of Molecular Cloning Vectors and their Uses、Buttersworth.Boston、Mass(1988年)を参照のこと。
【0095】
最近になって、肝臓がT細胞破壊の主要な部位であること及び自己免疫マウスIpr/Iprの肝臓内に肝臓から末梢リンパ様組織までの細胞の漏出を伴うこのプロセスの不具合が存在することが提案されてきている[クリプス、N.ら、Immunol.Review、174:47〜62頁(2000年)]。肝臓は、T細胞分化において一定の役割を果たすことが示されてきた。肝臓実質細胞との培養によりCD4−8−TCRβ胸腺欠損ヌード骨髄細胞からCD3−CD4+/CD8+TCRβ細胞及びCD3−4−TCRβ+細胞を生成することができる[マブチ(Mabuchi)、A.ら、J.Leukocyte Biology、63:575〜583頁(1998年)]。従って、もう1つの特定の実施形態においては、肝臓関連細胞の存在下でこれらの細胞を培養することによってNKT細胞のex vivo教育を実施することができる。これらの細胞は、例えばクッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、肝臓関連幹細胞、又はその他の任意の肝臓関連リンパ球であり得る。
【0096】
同じ免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない患者から又は治療を受けている対象からの末梢リンパ球の存在下でNKT細胞を同時培養することも同様に本発明では考慮されている。対象から、それも特にヒトの対象からのリンパ球を得るために、その他の血液成分が同時に患者に戻るよう移行されている間に、多数の白血球を得られるようにする手順であるサイトフェレーシスにより患者から血液を採取する。
【0097】
実施例7に記述されているように、NKT細胞のex vivo教育は、CD4又はCD8細胞とNKT細胞の同時培養により実施される。これらの細胞は好ましくは、寛容化された対象から得られる(経口寛容化としてマウスはCEPを受けた)。
【0098】
もう1つの特定の実施形態においては、IL4、IL10、TGFβ、IFNγ、IL12及びIL15といったサイトカインの存在下で、又はインテグリン、セレクチン及びICAMといった接着分子の存在下で細胞を培養することにより、NKT細胞のex vivo教育を実施し得る。
【0099】
IL12はNK1.1T細胞によるIFNγ誘発の効果をもたらすが、IFNγの方はその調節に貢献し得る[マーら、(1996年)上掲書」。急性GVHDを受けたマウスからの胸腺細胞の細胞溶解活性は、NK1.1+細胞枯渇の後に有意に減少した[ノイラートら、(1995年)上掲書」。急性GVHDを患うマウスの胸腺内のNK1.1+T細胞の増加の前には、胸腺内のIL12産生の過渡的増加が先行していた[ノイラート、ら、(1995年)上掲書」。IL12は急性GVHDを患うマウスの胸腺中でのNK1.1+T細胞の増加を誘発することが報告された[オノエ(Onoe)、Y.ら、Immunology 95:248〜256頁(1998年)]。最近になって、抗−IL12抗体がトランスジェニック動物中の経口寛容を増強することが示され、これは、TGFβ分泌の増加と結びつけられた[マルス(Marth)、T.ら、J.Immunol 157:2348〜2357頁(1996年)]。IL12とTNFαは両方共、実験的結腸炎の免疫病因において重要な役割を有することが示された[ブラガー(Bragger)、M.S.H.ら、Gut 34:1705頁(1998年);パロンキ(Parronchi)、P.ら、Am.J.Pathol.150:823頁(1997年)]。TNBSで誘発された結腸炎を維持する上で単球/マクロファージによるIL12産生が不可欠であり、Th1−媒介型炎症性応答のために必要とされた[クーン(Kuhn)、R.ら、Cell 75:263〜274頁(1993年);セロン(Sellon)、R.K.ら、Immun.66:5224〜5231頁(1998年);ノイラートら(1995年)上掲書;マルス、T.ら、J.Immunol. 157:2348〜2357頁(1996年)]。
【0100】
IL12に対する抗体は、慢性TNBS誘発の結腸炎を抑止した[ノイラートら、(1995年)上掲書」。従って、IL12は、NK1.1+T細胞活性化を介した疾病病因の中で支配的な役割を有する可能性がある。このリンパ球サブセットの活性化がIFNγ分泌を誘発し、その後寛容化されていないマウスにおけるTh1免疫シフトが続くことが可能である[アラセ、ら、(1996年)上掲書;ブライヒャ(Bleicher)、P.A.ら、Science 250:679〜682頁(1990年);キタムラ(Kitamura)、H.ら、J.Exp.Med.189:1121〜1127頁(1999年)]。
【0101】
NK1.1+T細胞は、実験的結腸炎においてIL12の存在下で効能あるIFNγ産生体である[キュイら、(1999年)上掲書;ベンデラクら、(1997年)上掲書;アラセら、(1996年)上掲書;デ・モラエスら、(1998年)上掲書]。本発明の結果は、IL12経路とは独立してNK1.1Rを介して炎症性状態でNK1.1T細胞によりIFNγが分泌されたということを示唆している。これには、IL12Rを介したIL12誘発のIFNγ分泌を伴う、IFNγでトリガーされたIL12の産生が後続していた可能性がある。これとは対照的に、抗炎症性の寛容化された状態では、NK1.1T細胞は、IL4分泌の増加と共に活性化される。実際、寛容化されていないNK1.1で枯渇されたマウスからのリンパ球の養子免疫伝達が、抗炎症性Th2サイトカインをアップレギュレートした。異なる刺激がサイトカイン応答の型を判定することが可能である。
【0102】
かくして、ケモカイン又はその他のメディエータが、NK1.1+T細胞機能及び異なる免疫学的環境下でのそれらのTh1/Th2パラダイムに対する影響の仕方を判定することができる。
【0103】
特定の好ましい実施形態においては、上述のようにex vivo教育されてきたNKT細胞は、治療を受ける対象に再導入され得る。これは、養子免疫伝達と呼ばれてきたプロセスによって実施可能である。この伝達のために使用される特定の教育済みNKT細胞は好ましくは、対象に由来するものであってよい(自家伝達)。同系又は非同系ドナー(非自家伝達)は排除されない。伝達された細胞の貯蔵、成長又は拡張は、インビボ、ex vivo又はインビトロで行なわれた可能性がある。
【0104】
伝達に先立つ細胞のインビトロ貯蔵、成長又は拡張方法は、当業者にとって周知である。伝達で使用するための教育済みNKT細胞がドナーから誘導される場合、これらの細胞は同様に、上述の通りインビボ又はインビトロで貯蔵、成長又は拡張を受けるかもしれない。
【0105】
細胞療法は、例えば静脈内での注射によるか又は本明細書で上述した手段のうちのいずれかによるものであり得る。投与の時点又は様式のいずれも、本発明にとっての制限とはならない。細胞療法投薬計画は、当業者にとって既知のその他の考慮事項の中でも教育済み細胞の考えられる細胞毒性、疾病の病期及び症状などといった要因を考慮に入れて容易に調整可能である。
【0106】
該発明の方法は任意にはさらに、免疫関連又は免疫介在性の障害に対する免疫応答のアップ又はダウンレギュレーションを治療を受ける対象の体内で惹起する工程を含む。ダウンレギュレーション応答は、前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う任意の同種ドナーに由来する構成要素、細胞、組織又は器官、異種供給源、自家供給源、免疫学的等価物又はそれらの任意の組合せを前記対象に投与することによって達成され得る。
【0107】
本発明は、その治療が過渡的なものであれ、又それが長期間にわたり反復的に行なわれるものであれ、かかる治療の有効性を減少させ得る免疫応答の危険性の無い非未変性活性化合物の投与を提供する。本発明はかくして、身体の免疫応答による妨害無くこれらの非未変性活性化合物の有効な生物学的機能を提供する。これは、過渡的又は短期治療のための全身免疫抑制としてそれが使用されている本発明で提供されている通りの免疫変調の使用によって及び/又は、長期治療のための免疫応答の変調により提供される寛容化によって、達成可能である。一部のケースでは、2つ以上のこのような免疫変調投薬計画の組合せが有利であるかもしれない。かかる治療は、非未変性活性化合物の投与の前及び/又は最中に適用できる。
【0108】
特定的に好ましい実施形態においては、前記構成要素、細胞、組織又は器官は、単回用量又は複数回用量で投与され得る。これらの構成要素、細胞、組織又は器官は、単一の投与経路によってか又は少なくとも2つの異なる投与経路によって投与可能である。
【0109】
構成要素は、治療を受けるべき対象に対し直接投与されてもよいし、そうでなければ、化合物のサイズに応じて、投与前に担体にそれらを接合させることが望ましい場合もある。治療用処方を、任意の従来の投薬量処方で投与してよい。処方は標準的に、上述のように、1つ以上のその受容可能な担体と共に、少なくとも1つの活性成分を含んでいる。
【0110】
各々の担体は、その他の成分と相容性があり患者にとって不利でないという意味で薬学的にも生理学的にも受容可能であるべきである。処方には、経口、直腸、経鼻、又は非経口(皮下、筋内、静脈内及び皮内)投与に適したものが含まれる。該処方は、単回投薬量形態で便利な体裁をとることができ、薬局技術で周知のあらゆる方法によって調製され得る。対象の体内で望ましい効果を生み出すのに必要な有効量を含む全てのこのような化合物の投与は、当該技術分野において周知であり、ここでさらに記述される必要はない。
【0111】
特定的には、前記構成要素、細胞、組織又は器官は、経口、静脈内、非経口、経皮、皮下、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所及び直腸投与及びそれらの任意の組合せの中から選択された経路により投与され得る。好ましくは、これらの構成要素、細胞、組織又は器官は、経口寛容化として経口投与される。
【0112】
該発明の方法のもう1つの好ましい実施形態は、炎症性腸疾患(IBD)、特にクローン病の治療に関する。哺乳類、特にヒトの対象におけるクローン病の治療は、
a. 前記対象からNKT細胞を得る工程;
b. 結果としての教育済みNKT細胞が抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させる能力を有するような形で、工程(a)で得られたNKT細胞をex vivo教育する工程;及び
c. 工程(b)で得られた教育済みNKT細胞を前記対象に再導入する工程;
を含む。抗炎症性サイトカイン産生細胞の産生に向かってのTh1/Th2バランスの変調は、結果としてIL4及びIL10のいずれか一方対IFNγの定量比の増加をもたらす。
【0113】
該発明の方法は、特にヒトにおける免疫関連又は免疫介在性の障害の治療用であるが、その他の哺乳動物も内含されている。制限的な意味のないとしては、哺乳類の対象には、サル、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、マウス、ラット及びブタが含まれる。
【0114】
ヒトの患者を治療するためには、ex vivo教育のための該発明の方法は、CD56マーカーを発現するNKT細胞であるNKT細胞の特定の亜型を利用し得る。マウスについては、ex vivo教育のための本発明の方法は、NK1.1+T細胞の特定の亜型を利用することができる。本発明の実施例は、マウスモデルのNK1.1+細胞を用いた実験を開示している。これらの結果が、ヒトの体内でCD56マーカーを発現するNKT細胞にもあてはまるということがわかるはずである。該発明に従ったCD56マーカー発現NKT細胞のex vivo教育は、以下のもののいずれか1つの存在下でこれらの細胞を培養することによるものである;
a. クローン病と結びつけられる少なくとも1つの抗原;これらの抗原には、クローン病を患うドナーからの同種抗原、異種抗原、患者自身からの自家抗原及び組換えにより調製された抗原又はそれらの任意の組合せが含まれるがこれらに制限されるわけではない;
b. クローン病を患う寛容化された又はされていない患者から又は治療を受ける患者からの少なくとも1つの肝臓関連細胞;これらの細胞には、クッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、肝臓関連幹細胞及び任意のその他の肝臓関連リンパ球又はそれらの任意の組合せが含まれるがこれらに制限されるわけではない;
c. IL4、IL10、TGFβ、IFNγ、IL12及びIL15といった少なくとも1つのサイトカイン、又はインテグリン、セレクチン及びICAMといった接着分子又はそれらの任意の組合せ;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)の組合せ。
【0115】
該発明の方法に従った教育済みNKT細胞は、治療を受ける対象に対し養子免疫伝達により再導入される。
【0116】
該発明の方法は、任意には、炎症を起こした腸に対する免疫応答のアップ又はダウンレギュレーションを対象内で惹起する工程をさらに含み得る。ダウンレギュレーション応答の惹起は、クローン病を患う対象の炎症を起こした腸から又は治療を受ける対象の腸から抽出されたタンパク質であり得る構成要素を対象に投与することによって誘発され得る。
【0117】
構成要素は、細胞、組織、器官又はその一部分であり得、これらは、単回用量又は複数回用量で投与され得る。これらの構成要素は、単一の投与経路によって又は少なくとも2つの異なる投与経路によって投与され得る。特定的には、前記構成要素は、経口、静脈内、非経口、経皮、皮下、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所及び直腸投与、又はそれらの任意の組合せにより投与され得る。好ましくは、構成要素は、実施例で記述されている通り、経口寛容化(CEPの経口導入)として経口投与される。
【0118】
もう1つの特定的に好ましい実施形態においては、該発明の方法は、悪性腫瘍の治療用である。癌性状況では、NKT細胞の変調は、炎症誘発性応答を誘発する方向か又は抗腫瘍関連抗原免疫性を増大させる上でのものである。本発明を記述するために本明細書で使用されているように、「癌」、「腫瘍」及び「悪性腫瘍」というのは全て、組織又は器官の過形成に同等に関係する。組織がリンパ系又は免疫系の一部である場合、悪性細胞は、循環する細胞の非充実性腫瘍を含み得る。その他の組織又は器官の悪性腫瘍は、充実性腫瘍を産生し得る。一般に、本発明の方法及び組成物は、非充実性及び充実性腫瘍の治療において使用可能である。
【0119】
本発明で考慮されている通りの悪性腫瘍は、黒色腫、癌腫、リンパ腫及び肉腫から成る群から選択され得る。本発明において有用でありうる悪性腫瘍には、血液悪性腫瘍(白血病、リンパ腫及び骨髄増殖症候群を含む)、再生不良性貧血及び無形成貧血(ウイルス誘発性及び特発性の両方)、骨髄異形成症候群、全ての型の傍腫瘍性症候群(免疫介在性及び特発性の両方)及び充実性腫瘍(肺、肝臓、乳房、結腸、前立腺、消化管、膵臓及びカルポジを含む)が含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0120】
癌を患う哺乳類の対象を治療するためには、該発明の方法により使用される教育済みNKT細胞は、さまざまなやり方で投与可能である。制限的意味のない例としては、教育済み細胞は、静脈内で、又は腹腔内といった充実性腫瘍の場所の近傍にある体腔内に送達されてもよいし、又は充実性腫瘍内又はその近傍に直接注射され得る。
【0121】
さらに又、本発明は、NKT細胞の教育の方法をも提供している。この教育は、以下のいずれかのものの存在下でこれらの細胞を培養することによって実施可能である:
a. 治療すべき免疫関連又は免疫介在性の障害に対して第3者エピトープと結びつけられる少なくとも1つの抗原又はそれらの任意の組合せ;
b. 同じ免疫障害を患う寛容化された又はされていない患者の又は治療すべき対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞又はそれらの任意の組合せ;
c. 少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子、又はその任意の組合せ;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ。
【0122】
該発明の方法は、癌治療において有用であるその他の治療と組合わせることができる。同様に、疾病に起因してすでに免疫抑制されている哺乳類の対象に対しこの治療を施すことができるとも予想されている。ヒト又は動物の患者の免疫状態の評価は、当業者によって容易に判定可能である。
【0123】
第2の態様として、本発明は、哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための治療用組成物に関する。該発明の組成物は、抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2バランスを変調させる能力をもつex vivo教育済み自家NKT細胞を有効成分として含む。これらの教育済み自家NKT細胞は、IL4及びIL10のいずれか一方対IFNγの定量比の増加を媒介する。
【0124】
該発明の組成物はさらに、薬学的に受容可能な担体、添加剤、希釈剤又は賦形剤を含有し得る。適切な担体には、例えばリン酸緩衝生理食塩水及び5%のHSA又はPPFを伴う食塩水が含まれる。その他の適切な担体は当業者にとって周知であり、本発明に対する制限とはならない。同様にして、当業者であれば該発明の薬学組成物の中に含み入れるためのその他の所望の構成要素を容易に選択することができ、かかる構成要素は、本発明の制限条件ではない。
【0125】
1つの好ましい実施形態においては、該発明の治療用組成物の教育済み自家NKT細胞は、以下のもののいずれか1つの存在下でex vivo培養される:
a. 治療すべき免疫関連又は免疫介在性の障害と結びつけられる少なくとも1つの抗原;これらの抗原は、同じ免疫関連又は免疫介在性の障害を患うドナーからの同種抗原、異種抗原、治療を受ける患者からの自家抗原、及び組換えにより調製された抗原又はそれらの任意の組合せのうちのいずれか1つであり得る;
b. 前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない患者の又は治療を受ける対象からの少なくとも1つの肝臓関連細胞;これらの細胞には、クッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、及び任意のその他の肝臓関連リンパ球又はそれらの任意の組合せが含まれるがこれらに制限されるわけではない;
c. IL4、IL10、IGFβ、IFNγ、IL12及びIL15といった少なくとも1つのサイトカイン、又はインテグリン、セレクチン及びICAMといった接着分子;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)の組合せ。
【0126】
1つの好ましい実施形態においては、該発明の治療用組成物は、哺乳類の対象における腸炎症性疾患の治療用、そしてより特定的にはクローン病の治療用である。この組成物は、有効成分として、抗炎症性サイトカイン産生細胞の産生に向かってTh1/Th2バランスを変調させる能力を付与された教育済み自家NKT細胞を含んでいる。
【0127】
該発明の治療用組成物内に含有されている教育済み自家NKT細胞は、Th1/Th2バランスを変調させる能力をもち、それを抗炎症性サイトカイン産生細胞の産生に向かってシフトさせる。このバランスシフトの結果は、CD4+IL4+/CD4+IFNγ比(IL4及びIL10のいずれか一方対IFNγの定量比)の増加である。これらの変調プロセスは、さらに、細胞免疫反応要素、体液性免疫反応要素及びサイトカインといった対象の免疫系の異なる構成要素によってさらに媒介される。
【0128】
組成物中に含有されている自家NKT細胞の教育は、好ましくは上述の通りに実施される。
【0129】
もう1つの好ましい実施形態においては、該発明の治療用組成物は、黒色腫、癌腫、リンパ腫及び/又は肉腫といった悪性腫瘍の治療用である。癌性状況下では、該発明の組成物中に含有されているNKT細胞の変調は、炎性誘発性応答を誘発する方向にあってもよいし又抗腫瘍関連抗原免疫性の増大にあってもよい。
【0130】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、該発明は、免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための治療用組成物に関する。この組成物は、NKT細胞を特定的に認識する抗体を有効成分として含んでいる。該発明の組成物はさらに、薬学的に受容可能な担体を含有し得る。適切な担体としては例えばリン酸緩衝生理食塩水、及び5%のHSA又はPPFを伴う食塩水が含まれる。その他の適切な担体は、当業者にとって周知であり、本発明に対する制限とはならない。同様にして、当業者であれば該発明の薬学組成物の中に含み入れるためのその他の所望の構成要素を容易に選択することができ、かかる構成要素は、本発明の制限条件ではない。
【0131】
一実施形態においては、該発明のこの治療用組成物は、クローン病といった腸炎症性疾患の治療のために使用可能である。腸炎症性疾患の治療のため、特にクローン病の治療のためには、経口薬学組成物が有利であり得る。経口投与は全身的免疫抑制又は侵襲的手段の必要なく、患者の症状の改善を可能にすることになる。
【0132】
もう1つの実施形態においては、該発明の治療用組成物は、黒色腫、癌腫、リンパ腫及び肉腫から成る群から選択された悪性腫瘍の治療のために使用可能である。
【0133】
組成物投薬量は、Th1/Th2バランスを変調させるのに充分なあらゆる量であり得る。当業者であれば、好ましい投薬量は、優良試験所基準及び良質の医療のための基準に従って患者に応じて個別に調節されることになるということがわかる。
【0134】
本明細書で使用されている通り、「Th1/Th2バランスを変調させるのに充分な量」というのは、選択された結果を達成するのに必要な量を意味する。例えば、該発明の組成物の有効量は、Th1/Th2バランスを抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かって変調させることになる。
【0135】
本発明の組成物及び方法はさらに、インシュリン依存性真性糖尿病(IDDM)といった自己免疫疾患の治療を提供し得る。
【0136】
該発明の組成物は、さまざまな要領で投与可能であり得る。制限的な意味のない例としては、組成物を静脈内で送達することができる。
【0137】
注射用に適した薬学的形態には、無菌水溶液又は分散及び無菌注射溶液又は分散の即席調製のための無菌粉末が含まれる。あらゆる場合において、該形態は無菌でなくてはならず、注射針を容易に通過させる程度に流動性でなくてはならない。それは、製造及び貯蔵条件下で安定していなくてはならず、細菌及び真菌といった微生物の汚染作用に対し保護されていなくてはならない。
【0138】
微生物の作用の防止は、例えばパラペン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどといったさまざまな抗菌剤及び抗真菌剤によってもたらされ得る。数多くの場合において、例えば糖又は塩化ナトリウムといった等張性作用物質を内含することが好ましいであろう。例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンといった吸収を遅延させる作用物質を組成物中に使用することによって、注射用組成物の長時間の吸収をもたらすことができる。
【0139】
必要に応じて以上で列挙したさまざまなその他の成分を伴って、適切な溶剤の中に必要な量で活性化合物を取込み、その後ろ過処理式滅菌を行なうことによって、無菌注射溶液が調製される。一般に、基本分散媒及び以上で列挙されたものからその他の必要とされる成分を含有する無菌ビヒクルの中にさまざまな滅菌済み活性成分を取込むことによって、分散が調製される。
【0140】
無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め無菌ろ過されたその溶液から活性成分プラス任意の付加的な所望の成分の粉末を生成する真空及び凍結乾燥技術である。
【0141】
該発明の薬学組成物は一般に、緩衝剤、その浸透圧を調整する作用物質及び任意には当該技術分野において既知の通りである1種以上の薬学的に受容可能な担体、賦形剤及び/又は添加剤を含む。補足的な活性成分も組成物中に取込むことができる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物及び植物油を含有する溶剤又は分散媒であり得る。適切な流動率は、レシチンなどのコーティングの使用、分散の場合における必要とされる粒度の維持及び界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0142】
本明細書で使用されている「薬学的に受容可能な担体」というのは、任意の溶剤、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのかかる媒質及び作用物質の使用は、当該技術分野において周知である。いずれかの従来の媒質又は作用物質がその活性成分と非相溶性である場合を除いて、治療用組成物内でのその使用が考慮される。
【0143】
第3の態様として、本発明は、免疫関連又は免疫介在性の障害を患う哺乳類の対象の体内で抗炎症性サイトカイン産生細胞の産生に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させるための治療用薬学組成物の製造における教育済み自家NKT細胞の使用に関する。好ましい用途は、哺乳類の対象の腸炎症性疾患の治療、特にヒトの対象のクローン病の治療のための組成物の製造である。代替的には、黒色腫、癌種、リンパ腫及び肉腫といった悪性腫瘍の治療のための治療用薬学的組成物の調製において、教育済み自家NKT細胞を使用することができる。癌性状況においては、該発明のNKT細胞の変調は、炎性誘発性応答を誘発する方向にあっても又は、有利な方向に向かっての抗腫瘍関連抗原免疫の増加にあってもよい。
【0144】
本発明はさらに、ex vivo教育済み自家NKT細胞を提供する。教育済みNKT細胞は、以下のもののいずれか1つの存在下でex vivo培養された:
a. 前記免疫関連又は免疫介在性の障害と結びつけられる少なくとも1つの抗原、又はその任意の組合せ;
b. 前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない患者の又は前記対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞、又はその任意の組合せ;
c. 少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ。
【0145】
さらに、該発明は、かかる治療を必要としている哺乳類の対象の体内の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療において使用するための該発明のex vivo教育済み自家NKT細胞を提供する。
【0146】
当該態様のもう1つの実施形態において、本発明は、かかる治療を必要としている哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療におけるex vivo教育済み自家NKT細胞の使用に関する。
【0147】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、本発明は、免疫関連又は免疫介在性の障害を患う哺乳類の対象のNKT細胞集団の操作特定的には、前記対象の前記NKT細胞集合の枯渇のための治療用薬学的組成物の製造における、NKT細胞を特異的に認識する抗体の使用に関する。NKT細胞集合の枯渇の結果として抗炎症性サイトカイン産生細胞の選好産生に向かってTh1/Th2バランスが変調されることになるということがわかるはずである。特に、哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療、特定的にはヒトの対象におけるクローン病といった腸炎症性疾患の治療のための治療用薬学的組成物の調製に抗体を使用することができる。
【0148】
もう1つの特定的実施形態においては、免疫関連又は免疫介在性の障害は、黒色腫、癌種、リンパ腫及び肉腫といった悪性腫瘍である。
【0149】
非アルコール性脂肪性肝炎の病因における免疫系の役割
非アルコール系脂肪性肝炎(NASH)は、アルコール消費の履歴を全くもたない患者における肝脂肪蓄積、炎症及び線維形成から成る臨床病理学的疾患単位である。これは20%の症例で肝硬変まで進行することになり、西欧世界では特発性肝硬変の最も一般的な原因と考えられている(カルドウェル(Caldwell)SH、ら、Hepatology 29:664頁(1999年);マッテオーニ(Matteoni)CA、ら、Gastroenterology 116:1413頁(1999年))。NASHは該障害の病因における貢献的役割を果たすものとして示唆されているその他の代謝障害を患う患者に一般的である。これらの代謝障害としては、インシュリン耐性(サニアル(Sanyal)AJ、ら、Gastroenterology 120:1183頁(2001年)、肥満関係のATP枯渇(コルテス−ピント(Cortez−Pinto)H.ら、Jama 282:1659頁(1999年))、遊離脂肪酸ベータ過酸化の増大(ハーシュケヴィッツ(Hruszkewycz)AM、Biochem Biophys Res Commun 153:191頁(1988年))、鉄分蓄積(ジョージ(George)DK、ら、gastroenterology 114:311頁(1998年))、酸化防止剤枯渇(ハリソン(Harrison)SA.ら、gastroenterology 123:M1332頁(2002年))及びレプチン欠損症(コーエン(Cohen)、B.ら、Science 274:1185頁(1996年))が含まれる。それでも体重の低下、厳重な糖尿病制御、脂質レベルの正常化及び酸化防止剤治療を含めたいかなる治療的介入も全くなされない場合、該障害の自然な進行の改変を一貫して示したことがない(Angulo P.New England Journal of Medicine 346:1221〜1231頁(2002年))。
【0150】
NASHについての大部分の情報は、2つの哺乳類モデルつまりレプチン欠損症のob/obマウス及びレプチンレセプタ欠損fa/fa Zuckerラットから導出された。レプチンは、体重の調節に関与するタンパク質である(チャン(Zhang)Y.ら、Nature 372:425〜432頁(1994年))。ゲッ歯類及びヒトにおけるその欠損症は結果として、病的肥満、耐糖能異常、高脂血症及び重症肝臓脂肪症から成る「メタボリック・シンドローム」(以前X症候群と呼ばれていたもの)の重症形態をもたらす(ペレイマウンター(Pelleymounter)M.A.ら、Science 269:540〜543頁(1995年))。それでも、上述のように、これらの代謝障害の一部を矯正することを目的とするいかなる介入も、肝臓脂肪症、線維形成及び炎症の改善を結果としてもたらさなかった。
【0151】
最近の証拠は、レプチン欠損症モデルにおいて免疫系がNASHの病因の中で極めて重要な役割を果たし得るということを示唆している。レプチン欠損症のマウスでは、リポ多糖類による肝損傷誘発の後に、肝マクロファージ(クッパー細胞)応答不全が観察された(ディール(Diehl)AM.J Physiol Gastrointest liver Physiol 282:G1〜G5(2002年))。類似のモデルにおいて、IL6のLPS誘発が大幅に増強され、一方IL10のものは阻害された(ロフレッダー(Loffreda)S、ら、FASEB J 12:57〜65頁(1998年))、ob/obマウス肝マクロファージは、LPS攻撃誘発に応答して対照マウスよりも多いIL12と少ないIL15と産生することが観察され、このことは、これらのマウスで観察されるNKTリンパ球の数及び機能の著しい低下を説明しているのかもしれない(ヤング(Yang)ら、Proc Natl Acad Sci USA 94:2557〜2562頁(1997年))。その他の観察は、レプチン欠損症ob/obマウスの血液及び肝臓内のCD4Tリンパ球の数の減少を示した(ハワード(Howard)JK.ら、J Clin Invest 104:1051〜1059頁(1999年)及びロード(Lord)ら、Nature 394:897〜901頁(1998年))。これにより、CD4Tリンパ球によって媒介されるコンカナバリンA肝炎に対するレプチン欠損症マウスの相対的耐性の説明がつくかもしれない(ファッジオーニ(Faggioni)R ら、Proc Natl Acad Sci USA 97:2367〜2372頁(2000年))。
【0152】
非アルコール系脂肪性肝炎におけるTh1/Th2バランス不全
CD4及びCD8リンパ球は、IL−2を産生するTh1細胞、IFNγ、又はIL−4及びIL−10を産生するTh2細胞のいずれかとして分類される。免疫系は、応答の2つの亜型の間のバランスシフトによって外来性及び自己抗原に応答する[ウェイナー、H.L.ら、Immunol.Today 18:335〜343頁(1997年);アドリーニ、L.ら、Immunol.Today 18:209〜211頁(1997年)]。通常、Th1型の応答は、炎性誘発性反応[アドリーニ、L.ら、(1997年)上掲書;ミゾグチ、A.ら、J.Exp.Med.183−847〜856頁(1996年)]。をひき起こし、一方、IL10といった抗炎症性サイトカインは、抗炎症性Th2反応に向かってバランスをシフトさせ、かくして免疫介在性障害を緩和する[ミゾグチ、A.ら(1996年)上掲書;マドセン、K.L.ら、Gastroenterology 113:151〜159頁(1997年);ファン・デベンター・サンダー(Van Deventer Sander)、J.ら、Gastroenterology 113:383〜389頁(1997年)]。異なる内因性及び外因性刺激に応答して、NKT細胞は、Th1又はTh2経路のいずれかに向かっての免疫系の誘導において主たる役割を果たすと考えられている。
【0153】
レプチンは、Th1及びTh2応答の間のバランスの免疫調節において主たる役割を果たすことが示されてきた(ロード(Lord)GM.ら、Nature 394:897〜901頁(1998年))。レプチン欠損症ob/obマウスNASHモデルにおいては、NKT細胞の数及び機能の改変がTh1応答に向かって、免疫系を傾動させるものと示唆されてきた。これは、LPS誘発型肝臓毒性に対する感応性の増大及びコンカナバリンAの肝臓毒性効果に対するユニークな耐性という結果をもたらすものと示唆されている。違いはそれらの病原性機序の相違にあり得る。前者は、レプチン欠損症マウスにおいて超活性である先天的肝臓免疫系の作用に依存し、一方後者は、レプチン欠損症マウスにおいて抑制され不全であるNKTリンパ球の活性化により左右される。(ファジオーニ、R.ら、PNAS 97:2367〜2372頁(2000年)、ジピング(Zhiping)LI.ら、Gastroenterology 123:1304〜1310頁(2002年))。
【0154】
免疫系と肥満
免疫系と脂肪組織代謝の調節は相互に密に連結していると思われる。脂肪組織内部の最高50パーセントの細胞は、数多くの免疫細胞を含めて非脂肪細胞から成る(モンタギュ(Montague)CT.ら、Diabetes 47:1384〜91頁(1998年))。大部分の研究が病的肥満の免疫学的結果に焦点をあてたものであった。肥満の動物及びヒトに存在するものとして知られる免疫学的改変には、DTHの減少及び分裂刺激されたリンパ球増殖応答(チャンドラ(Chandra)RK.ら、Acta Paediatr Scand 69:25〜30頁(1980年))、食細胞の数及び機能の低下(クリシュナン(Krishnan)EC.ら、J Surg Res 33:89〜97頁(1982年))、インシュリン誘発型リンパ球細胞毒性の減衰(コッフラー(Koffler)M.ら、Diabetes 40:364〜360頁(1991年))、及び特に減量試行中のCD4/CD8比の変化(フィールド(Field)CJ.ら、Am.J.Clin.Nutr.54:123〜129頁(1991年))が含まれる。
【0155】
脂肪細胞は、TNF−α[ホタミスリギル(Hotamisligil)GS.ら、Science 259:87〜91頁(1993年)]及びIL6[ピューロヒット(Purohit)A.ら、Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 80:3052〜58頁(1995年)]を含む炎性誘発性サイトカインを分泌するものとして知られており、両方共脂肪過多症のレベルに関係づけされている(ホタミスリギル、GS.ら、Journal of Internal Medicine 245:621〜625頁(1999年))。これらのサイトカインの一部は、TNF−αにより媒介されるインシュリン耐性[オガワH.ら、Biochimica et biophysica acta 1003:131〜135頁(1989年)]及びIL6によって媒介されるリポタンパク質リパーゼ阻害[ファインゴールド(Feingold)ら、Diabetes 41:97s〜101s頁(1992年)]といった代謝効果を有するものとみなされている。TNF−αノックアウトマウスは、その正常な同腹子に比べて高いインシュリン感受性及び改善された脂質プロファイルを有する[ウイサル(Uysal)ら、Nature 389:610〜614頁(1997年)]。脂肪細胞によって産生される免疫系のその他の構成要素としては、代替的補体系の一部でありヒト補体因子Dと同一の形で機能するタンパク質アジプシンが含まれる[ローゼン(Rosen)BS.ら、Science 244:1483〜7頁(1989年)]。
【0156】
肥満のメディエータとしての免疫系の役割については、ほとんど情報が知られていないが、いくつかの最近の研究は、肥満の発達において免疫系が重要な貢献的役割をもち得るということを示唆している。複数のサイトカインは、脂肪組織調節因子として作用することがわかっている。TNF−αは、交感神経媒介型リポリーシスに関与する脂肪細胞上でのβ3アデノ−レセプタの発現を抑制し、一方IL1は、脂肪レプチン分泌を刺激する[サラフ(Sarraf)ら、Journal of experimental medicine 185:171〜175頁(1997年)]。脂肪細胞の代謝活性速度は、部分的にIL4、IL6及びTNF−αによって媒介される機序を通して(マタック(Mattacks)CA.ら、Cytokine 11:334〜346頁(1999年))最も近いリンパ節からのその距離に密に相関することが観察された[ポンド(Pond)CM.ら、Proceedings of the nutrition society 60:365−374(2001年)]。
【0157】
肥満の動物及びヒトが同様に免疫系の異なる群におけるさまざまな改変に苦しんでいる可能性があるという事実を指摘するこれらの観察結果は、病的肥満の発達の原因となる病原性機序のいくつかを免疫系の変調が変更し得るということを示唆している。
【0158】
移植片対宿主病の病因における免疫系の役割
移植片対宿主病(GVHD)は、骨髄移植の成分にとっての主たる障害物である。GVHDは、幹細胞の移植(SCT)の後に発生する多臓器不全である[フェラーラ(Ferrara)JLM、デーク(Deeg)HJ.Graft versus host disease.New Eng J of Med 1991年;324:667〜72頁)]。病因には、組織破壊を結果としてもたらす同種反応性抗原の認識及びT細胞及びその他の免疫コンピテントエフェクタ細胞の活性化が関与する[ボーゲルサング(Vogelsang GB.Graft versust host disease:Implications from basic immunology for prophylaxis and treatment.Cancer Treat and Res 1997年;77:87〜97頁]。GVHDにおける肝臓の関与は、レシピエントの胆管に対する移植されたドナーのリンパ球による免疫攻撃の結果である。
【0159】
複数の研究が、GVHD内の調節用T細胞サブセットの重要性を示してきた。例えば、CD4+CD25+調節用T細胞の輸液が近年、GVHD致死性を阻害することが示されてきた[テイラー(Taylor)PA、リース(Lees)CJ、ブレーザー(Blazar)B.The infusion of exvivo activated and expanded CD4+CD25+immune regulatory cells inhibits graft−versus−host−disease lethality. Blood 2002年;99:3493〜99頁]。NKT細胞は、重要な免疫変調効果を伴うユニークな調節用Tリンパ球サブセットである。これらの細胞は、さまざまな感染性、炎症性及び新生物形成過程を含めたさまざまな免疫介在性障害においてきわめて重要性の高いものであることがこれまでに示されてきた。NKT細胞は、異なるサイトカインの分泌を介して(すなわちIFNガンマ又はIL−4)か又は異なる免疫細胞サブセットの活性化によって、Th1及びTh2型の両方の免疫性に関与し得る[ゴッドフレイ(Godfrey)DJ、ハモンド(Hammond)KJ、プーロン(Poulon)LD、スミス(Smyth)MJ、バクスター(Baxter)AG、NKT cells:facts、functions and fallacies.Imunol Today 200、21:573〜83頁]。最近、本発明人らは、それぞれ結腸炎[トロップ、S.、イラン、Y.NK1.1+T cell;A two−faced lymphocyte in immune modulation of the IL4/IFN paradigm? J of Clinical Immunology、22:270〜80頁(2002年)]、及び肝臓癌[シボレート(Shibolet)O.、アルパー(Alper)R、ズロットガロブ(Zlotogarov)L、ターレンフェルド(Thalenfeld)B、エンゲルハート(Engelhardt)D.、ラバニ(Rabanni)E.、イラン(Ilan)Y.NKT and CD8 lymphocytes mediate suppression of hepatocellular carcinoma growth via tumor antigen−pulsed dendritic cells.Int.J.Cancer.20;106:236〜43頁、2003年]のマウスモデルにおける経口免疫変調節により誘発された抗炎症性及び抗新生物効果においてNKT細胞は極めて重要な役割を有する、ということを示してきた。以前の研究は、急性及び慢性GVHDにおけるNKT細胞の役割を実証してきた。例えば、NK1.1陽性T細胞サブセットはGVHDを抑制することが示され、一方NK1.1陰性Tリンパ球はGVHDを悪化させ、これはサイトカインの産生差に結びつけられる効果であった[ゼング(Zeng)D.、ルイス(Lewis)D.、デジャバクシュ−ジョーンズ(Dejbakhsh−Jones)S.、ラン(Lan)F.、グラシア−オヘダ(Garcia−Ojeda)M.、シブレー(Sibley)R.、ストローバ(Strober)S.、Bone marrow NK1.1−and NK1.1+T cells reciprocally regulate acute graft versus host disease.J.Exp.Mes.1999年;189:1073〜81頁]。
【0160】
急性GVHDは、同種SCT後の主たる合併症であり、移植、事後低強度条件づけ又は非骨髄機能廃絶投薬計画を含めた近代の移植方法が利用される場合でさえ、SCTの成功にとっての主たる障害物であり続けている。急性GVHDを研究するための1つの実験モデルは、移植に先立って7Gy60Coの全身照射(TBI)を受けた(C57BL/6×Balb/c)F1レシピエントマウス内にC57BL/6ドナーマウスからの2×107の脾細胞を輸液することによってGVHDを生成させることのできる、半同種C57BL/6から(C57BL/6×Balb/c)F1のマウスモデルである[ナグラー(Nagler)A.、オハナ(Ohana)M.、アルパー(Alper)R.、ドビナー(Doviner)V.、シャーマン(Sherman)Y.、ラバニ(Rabbani)E.、エンゲルハルト(Engelhardt)D.、及びイラン(Ilan)Y.、Induction of oral tolerance in bone marrow transplantation recipients suppresses graft versus host disease in a semi allogeneic mouse model.Bone Marrow Transplantation、2003年、(印刷中)]。本発明人らは最近、このモデルの中で、レシピエント脾細胞でのドナーの移植前給餌による経口免疫調節の誘発が、インビトロ同種反応性の抑制、生存率の改善、リンパ球浸潤の低減及び標的器官におけるその他の標準的な組織病理学的GVHD徴候といった形で現われる急性GVHDを緩和する、ということを示してきた。
【0161】
開示及び記述を行なってきたが、本発明が本明細書で開示された特定の実施例、方法工程及び組成物に制限されるものではなく、かかる方法、工程及び組成物は幾分か変動しうるものであるということを理解すべきである。同様に、本明細書に使用された用語が、特定の実施形態を記述する目的のためのみに使用され、制限することを意図されたものでなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその等価物によってのみ制限されることになるということも理解すべきである。
【0162】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形態「a」、「an」及び「the」には、内容が明らかに相反する判断を示しているのでないかぎり、複数の指示対象も含まれる、という点を指摘しておかなければならない。
【0163】
本明細書及び以下の実施例及び特許請求の範囲全体を通して、内容が求めているのでないかぎり、「comprise」という語及び「comprises」及び「comprising」といった活用形は、言及された整数又は工程又は整数群又は工程群の内容を意味するものの、その他の何らかの整数又は工程又は整数群又は工程群の除外を意味するものではないというように理解されることになる。
【0164】
以下の実施例は、本発明の態様を実施する上で発明人らが利用する技術を代表するものである。これらの技術は、該発明の実践のための好ましい実施形態の一例であるが、当業者であれば本開示に照らして、該発明の精神及び意図された範囲から逸脱することなく数多くの修正を認識することになるということがわかるはずである。
【実施例】
【0165】
I.
材料と方法
動物
ハーラン(Harlan)から正常な近交系の生後2〜4ヵ月のC57BL雄マウスを得、ハダサ・ヘブライ(Hadassah−Hebrew)大学医学部の動物コア内に維持した。標準的研究室用食事でマウスを維持し、12時間の明暗サイクルに保った。
【0166】
結腸炎の誘発
記述された通り、50%のエタノール100ml中に溶解させたマウス1匹あたり1mgのTNBSを直腸点滴注入により、TNBS−結腸炎を誘発した[コリンズ(Collins)C、ら、Eur.J.Immunol.26:3114〜3118頁(1996年)]。
【0167】
経口抗原の調製及び投与
TNBSで誘発した結腸炎のマウスから結腸をとり出し、小片にカットし、機械で均質化した。40mmのナイロン製セルストレーナを通してろ過した後、無傷の細胞をスピンダウンし、取出した。タンパク質検定キット(バイオラド(Biorad)、ドイツ、ミュンヘン)を用いて、タンパク質を定量化した。結腸炎抽出タンパク質(CEP)を、11日間隔日に給餌用無外傷性針を用いて(合計5用量)、以下に記述された実験グループに導入した。
【0168】
NK1.1細胞枯渇
以前に記述された通りに[カワムラ、T.ら、J.Immunol.160:16〜19頁(1998年)]、マウス抗マウスNK1.1モノクローナル抗原(セロテック(Serotec)、英国、オクスフォード)を用いて、NK1.1+細胞の枯渇を実施した。ドナーマウスからの脾細胞収獲より36時間前に一日50μgをマウスに腹腔内(IP)注射した。
【0169】
リンパ球の養子免疫伝達
全てのグループからのドナーマウスを、結腸炎の導入から14日目に屠殺し、脾臓から誘導したリンパ球の単一の懸濁液を記述通りに調製した[ウェイナー、H、ら、Annu.Rev.Immunol.12:809〜837頁(1994年)]。移植の前にPBS中に細胞を再懸濁させた。全てのグループからの脾臓リンパ球を実験未使用のレシピエントマウス内に移植し、ひき続き24時間後にTNBSで直腸に攻撃誘発した。
【0170】
実験用結腸炎に対する寛容誘発の効果の評価
結腸炎について以下のパラメータを監視することにより、寛容誘発の効果を評価した。
【0171】
結腸炎の臨床査定:
研究全体を通して毎日下痢が続いた。
【0172】
結腸炎の巨視的評点
標準パラメータを用いて、結腸炎誘発から14日後に結腸査定を実施した[マドセン、K.L.ら、Gastroenterology 113:151〜159頁(1997年);トロップ、S.ら、Hepatology 27:746〜755頁(1999年)]。
【0173】
4つの巨視的パラメータすなわち結腸潰瘍形成度;腸及び腹膜接着;壁厚;及び粘膜浮腫度を決定した。各パラメータを2人の経験豊かな盲検検査官により0(完全に正常)から4(最も重症)までの尺度で等級づけされた。
【0174】
組織学的病巣の等級づけ
炎症の組織学的評価のために、遠位結腸組織(最後の10cm)を取出し、10%のホルムアルデヒドで定着させた。各マウスからの5つのパラフィン切片を次に、標準技術を用いてヘマトキシリン−エオシンで染色した。結腸の顕微鏡断面上の炎症度を0から4まで半定量的に等級づけした(マドセンら、(1997年)上掲書;トロップら、Hepatology 27:746〜755頁(1999年)。等級0:炎症の兆候が全く無く正常、等級1:非常に低レベルの白血球浸潤;等級2:低レベルの白血球浸潤;及び等級3:高い血管密度を伴う高レベルの浸潤及び腸壁の肥厚;等級4:杯細胞の喪失を伴う貫壁性浸潤物、高い血管密度、壁肥厚及び正常な腸アーキテクチャの破断。等級づけは2人の経験豊かな盲検検査官により実施された。
【0175】
実験的結腸炎モデル内の寛容誘発に対するNK1.1リンパ球の役割の評価
肝臓及び脾臓リンパ球の単離
以前に記述された通りに脾細胞を単離し、赤血球を取り出した[ビカーリ(Vicari、A.P.ら、Immunology Today 17(2):71頁(1996年)]。幾分かの修正を加えて、以前に記述された通りに肝内リンパ球を研究の終りで全てのマウスグループから単離した[ビカーリら、(1996年)上掲書;Bleicher、P.A.ら、Science 250:679〜682頁(1990年)]。横隔膜より上で下大動脈をカットし、青くなるまで肝臓を低温PBS5mlで洗い流した。結合組織と胆のうを除去し、肝臓を10−ml入りの皿の中で低温無菌PBS内に置いた。肝臓と脾臓をステンレスメッシュを通してつぶした(サイズ60、シグマケミカル(Sigma Chemical Co.)セントルイス、ミズーリ州)。3分間50ml入りの管の中に細胞懸濁液を入れ、低温PBS中(10分間1,250×rpm)で2回洗浄し、デブリを除去した。細胞をPBS中で再懸濁させ、細胞懸濁液を予めPBS中に浸漬したナイロンメッシュを通して入れ、未結合の細胞を収集した。細胞を45mlのPBS中で2回(室温で1,250×rpm)洗浄した。肝臓及び脾臓リンパ球の単離のために、50ml入り管内でPBS7ml中に懸濁させられた細胞の下に20mlのヒストパーク1077(シグマダイアグノスティクス(Sigma Diagnostics)セントルイス、ミズーリ州)をゆっくりと入れた。管を1,640rpmで室温にて15分間遠心分離した。界面にある細胞を収集し、50ml入りの管内に希釈し、氷冷PBSで2回洗浄した(10分間1,250rpm)。マウス1匹につきおよそ1×106個の細胞を回収した。トリパンブルー染色による生存可能性は、95%を上回っていた。脾細胞及び肝臓関連リンパ球の両方を、全実験グループ中の全ての動物から単離した。
【0176】
NK1.1+リンパ球枯渇の判定のためのフローサイトメトリ分析
リンパ球単離の直後に、10分間1%のBSA4mlでインキュベートしたFalcon2052管の中に2〜5×104個の細胞/500μlのPBSのトリプリケートを入れ、5分間1400rpmで遠心分離した。1:20のFITC−抗マウスNK1.1抗体(NKR−P1C、ファーミンゲン、米国)を伴う10μlのFCS中に細胞を再懸濁させ、30分間にわたり10分毎に混合した。細胞を1%のBSA中で2回洗浄し、読取るまで4℃内に保った。対照グループについては、5μlの1%BSAしか添加しなかった。螢光細胞分析分離装置(ファクスタープラス(FACSTAR plus)、ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson))を用いて、各グループからの1×104個の細胞上で分析的細胞選別を実施した。生きた細胞だけを計数し、抗体処理されていないリンパ球からの背景螢光を、得られたレベルから演繹した。前方−側方散乱装置上でゲートにセットして、死んだ細胞及び赤血球を排除した。コンソート(Consort)30の2色輪郭プロットプログラム(ベクトン・ディキンソン、オクスナード、カリフォルニア州)又はセルクエスト(CELLQuest)プログラムを用いてデータを分析した。
【0177】
脾細胞及び肝臓関連リンパ球の培養
脾細胞及び肝臓関連リンパ球を全てのグループ(A’〜F’)の中のマウスから収獲し、24ウエルの組織培養平板の中で培養した。トリプリケートを、全ての研究グループ内の各動物から調製し、12時間培養した。5%で37℃で12時間細胞からサイトカインが放出されるのを防ぐのに必要とされる2μMのモネンシン(バイオソース(Biosource)、カリフォルニア州)及びConA 2μg/mlを共に、RPMI1640 1mlあたり1×106個の脾細胞の割合でリンパ球を細胞皿の中で活性化させた。RPMI培地は、次のものを含有する:10%のFCS、200mMのHepes、100Uのペニシリン及び100Mgのストレプトマイシン/ml、10mMのHepes IL2−10U/ml、CEP−50Mg/ml。細胞はモネンシン2μM(バイオソース、カリフォルニア州)と共に、2.5×106個の脾細胞と0.5×106個のLALを含んでいた。上清流体を、ELISAによるサイトカイン測定のため両方のセットから収集し、記述された通り[コリンズ(Collins)、C.ら、Eur.J.Immunol.26:3114〜3118頁(1996年)]、フローサイトメトリによりリンパ球を分析した。
【0178】
細胞内染色及びフローサイトメトリ
全てのウエルから細胞を収獲し、2重染色した。以下の抗体を用いて、以前に記述された通りに、CD4+T−細胞集団(Th1及びTh2細胞)を検出するための細胞外及び細胞内染色を使用した。すなわち、CD4+IL4+細胞の検出のためには、FITC接合された抗CD4及びPE接合された抗IL4mAbを使用した(ファーミンゲン(PharMingen)、サンディエゴ、カリフォルニア州)。CD4+IFNγ細胞の検出のためには、FITC接合された抗CD4及びPE接合された抗IFNγmAbを使用した(フィーミンゲン、サンディエゴ、カリフォルニア州)。全てはメーカーの指示事項に従って行なわれた(ICスクリーン、バイオソース細胞内染色キット、カリフォルニア州)。リンパ球をフローサイトメトリにより分析した。
【0179】
肝臓リンパ球細胞毒性検定
これらの研究内で使用された標的細胞は、10%のFCSを伴う補足済みRPMIを利用することによって、組織培養内での連続的成長に適合されたリンパ腫細胞系であるYAC−1細胞であった。YAC−1細胞を、RPMI10%のFCSを伴う25ml入りフラスコ中で2×105細胞/mlの密度でそれらを播種し24時間後にこれらを収集することにより、NK検定用に調製した。細胞を50ml入り管内で懸濁させ収集し、10分間遠心分離(1250rpm)により培地で2回洗浄した。この手順により、51Crを用いて効果的な標識及びNK細胞による溶解の高感受性が保証された。標的細胞を51Cr(ニューライフサイエンス(New Life Science)、ボストンMA、ガミドール、イスラエル)で標識し、37℃で90分間インキュベートした(300μlのRPMI培地中2×106個の細胞あたり200mCi)。10分毎に細胞を手作業で混合した。インキュベーションの後、20%のFCS RPMI3mlを添加し、37℃で30分間再インキュベートした。RPMI10%FCS中で3回細胞を洗浄し、計数した。標識効率度を判定するために、100μlの細胞を計数し、最低0.6cpm/細胞を測定した。エフェクタ細胞は、上述のグループA−H由来の肝臓から単離された肝臓リンパ球であった。51Cr−放出検定をCostar 96ウエル平板内で実施した。100μl中の等級付けされた数のエフェクタ細胞を、100:1、50:1、及び10:1のエフェクタ対標的比(E:T比)で、100μl中5000個の標識された標的細胞と混合させた。各ウエルは、合計200μlの体積で標的及びエフェクタ細胞を収納していた。各試料からの各比率について、5つのウエルをテストした。自然放出の判定のためには、6ウエルの類似した数の標的細胞を100μlのRPMI10%FCSを用いて平板固定した。最大放出の判定のためには、100μlの培地中の6ウエルの標的細胞を100μlのトリトンXと混合した。平板を2分間遠心分離に付し(500rpm)その後37℃で5%のCO2内で4時間インキュベートした。平板を次に再び2分間(500rpm)遠心分離に付し、ガンマ計数器を用いて上清を収獲し計数した。結果は、細胞毒性%=検定の平均cpm−自然放出からのcpm/トリトンXで溶解させた標的からのcpm−自然放出からのcpm×100という等式を用いて計算される標的細胞の特異的溶解パーセントとして表現された。
【0180】
サイトカイン分泌
両方のトリプリケートセットから上清流体を収集し、全ての寛容化された及びされていないグループからの全てのマウス、NK1.1枯渇したマウス及び枯渇していないウスについて、サイトカインレベルを測定した。メーカーの指示事項に従ってジェンザイムダイアグノスティクス(Genzyme Diagnostics)キット(ジェンザイムダイアグノスティクス、マサチューセッツ州、米国)を用いて「サンドイッチ」ELISAによりIL4、IL10、IL12及びIFNγレベルを測定した。寛容化された及びされていないNK1.1枯渇された及びされていないマウスからの5匹のマウスにおいて、結腸炎誘発から10日目に血清レベルを測定した。
【0181】
インビトロ教育実験
リンパ球の単離及び分離
脾細胞を調製し、CD4+、CD8+、NK及び樹状細胞という4つのリンパ球サブセットへと分離した。磁気細胞選別(MACS)を用いて、細胞分離を行なった。各々のリンパ球サブセットについて特異的マイクロビーズを使用した。すなわちCD4及びCD8マイクロビーズ及び抗−NKビーズ[ミルテニルバイオテック(Miltenyl Biotec)、ドイツ]である。リンパ球単離の直後に、10分間1%のBSA4mlでインキュベートしたFalcon2052管の中に2〜5×104個の細胞/500μlのPBSのトリプリケートを入れ、5分間1400rpmで遠心分離した。1:20のFITC−抗マウスNK1.1抗体(NKR−PIC、ファーミンゲン、米国)を伴う10μlのFCS中に細胞を再懸濁させ、30分間にわたり10分毎に混合した。細胞を1%のBSA中で2回洗浄し、読取るまで4℃内に保った。対照グループについては、5μlの1%BSAしか添加しなかった。螢光細胞分析分離装置(ファクスタープラス、ベクトンディッキンソン)を用いて、各グループからの1×104個の細胞上で分析的細胞選別を実施した。生きた細胞だけを計数し、抗体処理されていないリンパ球からの背景螢光を、得られたレベルから演繹した。前方−側方散乱装置上にゲートをセットして、死んだ細胞及び赤血球を排除した。Consort30の2色輪郭プロットプログラム(ペクトン・ディキンソン、オクスナード、カリフォルニア州)又はセルクエストプログラムを用いてデータを分析した。
【0182】
脾細胞及び肝臓関連リンパ球の培養
脾細胞を全てのグループの中のマウスから収獲し、24ウエルの組織培養平板の中で培養した。トリプリケートを、全ての研究グループ内の各動物から調製し、12時間培養した。上清流体を、ELISAによるサイトカイン測定のため両方のセットから収集した。
【0183】
実施例1
実験的結腸炎における寛容誘発の効果
実験的結腸炎における寛容誘発の効果を評価するために、各々20匹の動物から成る6つのマウスグループを研究した(表1)。直腸TNBS(グループA、B、D及びE)又は標準的食塩水(対照グループC及びF)を用いて研究一日目に全てのマウスを攻撃誘発した。全てのグループ中のマウスを、結腸炎誘発の日から始めて11日間隔日に給餌した(50μg/マウス)。グループB及びEは、結腸炎抽出タンパク質(CEP)での給餌を受けたマウスを含んでいた。グループA、C、D及びF内のマウスは、ウシ血清アルブミン(BSA、50μg/マウス)の給餌を受けた。全てのグループ中のマウスを、結腸炎誘発から14日目に屠殺した。グループD〜F内のマウスは、上述の通り、研究が終結する36時間前に抗NK1.1抗マウスモノクローナル抗体で処置した。グループA〜Cのマウスは、NK1.1枯渇されていなかった。
【0184】
【表1】
【0185】
結腸炎の臨床検査
それぞれマウスCEPで給餌されるか又はNK1.1−枯渇されたグループB及びDからの寛容化されたマウスの中で、下痢の著しい減少が観察された。これとは対照的に、BSAで給餌されたか又はマウス−CEPで給餌されNK1.1で枯渇されたグループA及びEからのマウスは、重症の下痢に苦しんだ。マウスの体重の追跡調査は、グループA及びE中のマウスと比較してグループB及びD中の寛容化されたマウスの間で統計的に有意な体重の減少を明らかにした(それぞれ13.5%及び11.65%対3.2%及び4.8%、p<0.005)。
【0186】
結腸炎の巨視的等級付け
マウス抽出の結腸炎由来のタンパク質の給餌又はNK1.1−枯渇(グループB及びD)による経口寛容の誘発は、結腸炎の巨視的等級付けを有意に緩和した。結腸炎のテストされた巨視的パラメータについての評点は、結腸炎潰瘍形成の度合い、腸及び腹膜接着、壁厚み及び粘膜浮腫の度合い、であった。合計巨視的評点は、それぞれ、未処理対照及びCEP給餌NK1.1枯渇グループA及びEにおいて3.1±0.54及び3.05±0.67(p<0.005)であったのに比べ、グループB及びDのマウスではそれぞれ0.35±0.01及び0.63±0.03であった。
【0187】
組織学的病巣の等級付け
腸組織の組織学的評価は、グループA及びEの中の寛容化されていないマウスと比べて、グループB及びD内の寛容化されたか又はNK1.1枯渇されたマウスにおいて、炎症性応答及び粘膜潰瘍形成の著しい減少を示した。グループB及びD内のマウスでは、ほぼ正常な切片又は最小限のリンパ球浸潤しか検出されなかった。これとは対照的に、寛容化されていないマウスから取った腸標本の中には重症の炎症性反応(等級3〜4)が見られた。
【0188】
実施例2
NK1.1+リンパ球は、寛容化されたマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を増大させ、実験的結腸炎を有する寛容化されていないマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた
寛容化されたマウス
寛容化されたマウスにおけるNK1.1+リンパ球の効果を研究するため、全てのグループ内のマウスから脾細胞及び肝臓関連リンパ球(2.5×106個の脾細胞と0.5×106のLAL)を収獲し、CEP及びAPCの存在下で72時間培養した。フローサイトメトリ分析は、経口寛容誘発の後のNK1.1−枯渇が、NK1.1LAL枯渇されていない寛容化されたマウスと比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた(それぞれグループE及びBにおいて0.99±0.03対1.8±0.35のCD4+IL4+/CD4+IFNγ+、p<0.005、図2)ということを示した。対照NK1.1−枯渇されたグループ(グループF)は、NK1.1枯渇されてないグループCに比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比の減少を明らかにした(それぞれグループC及びFについて2.13±0.36対1.6±0.29)。
【0189】
寛容化されていないマウス
寛容化されたグループとは対照的に、NK1.1−枯渇は、実験的結腸炎を有する寛容化されていないマウスに対し反対の効果を示した。CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比は、NK1.1枯渇も寛容化もされていないグループと比べて、NK1.1−枯渇された寛容化されていないグループ内で増大した(それぞれグループA及びDにおいて0.74±0.06対0.56±0.05)。
【0190】
寛容化されたマウスと寛容化されていないマウスの間のCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比の比較は、全ての寛容化されたグループにおいて、より高い比率を明らかにした。TNBSで処置されCEPを経口給餌されたマウス(グループB)は、BSAで給餌された寛容化されていないマウス(グループA)と比べて有意に高い比を示した。グループA、B及びC中のCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比は、それぞれ0.56±0.05、1.8±0.35及び2.13±0.36(p<0.005)であった。図4は、それぞれ、グループB及びEからの寛容化されたNK1.1枯渇されていない及び枯渇されているマウス及びグループA及びDからの寛容化されていないNK1.1枯渇されていない及び枯渇されているマウスから単離されたリンパ球上でのIL4及びIFNγの発現の代表的結果を示す。
【0191】
実施例3
インビトロ感作の役割及び、実験的結腸炎を有する寛容化された及びされていないマウスにおけるCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比に対する疾病−標的−抗原の効果
CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比に対する疾病標的抗原のインビトロ暴露の効果を評価するために、全てのグループ(表1に列挙)の中のマウスから、脾細胞及び肝臓関連リンパ球(2.5×106)の脾細胞及び(0.5×106)のLALを収獲し、ConAの存在下で及びCEP及びAPCの不在下で12時間培養した。抗原の不在下でNK1.1枯渇の効果の評価は、抗原の存在下で見い出されるものと類似であった。グループBの中の寛容化されたマウスから収獲されたリンパ球は、寛容化されたグループE内のNK1.1−枯渇されたマウスに比べて、有意に高いCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を明らかにした(それぞれ0.7±0.02対1.1±0.02、p<0.005)。これとは対照的に、NK1.1枯渇は、抗原の不在下でグループA及びDからの寛容化されていないマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比の増大を誘発した(それぞれ1.21±0.03対0.96±0.01、p<0.005、表2、図5)。これらの結果は、免疫教育がインビボで達成され、インビトロでの細胞−抗原インキュベーションに影響されなかったということを示唆する。
【0192】
同様にして、フローサイトメトリ分析は、CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比がグループB及びE内及び対照グループC及びF内の寛容化されたマウス内で有意に減少し、グループA及びD中の寛容されていないマウス内で有意に増大した(p<0.005、図5)ということを示した。
【0193】
【表2】
【0194】
寛容化された及びされていないマウスにおけるサイトカインレベルの変化
上清流体を、両方のトリプリケートセットから収集し、全ての寛容化された及びされていないグループからの全てのマウスについてサイトカインレベルを測定した。「サンドイッチ」ELISAによりIL4及びIFNγレベルを測定した。寛容化されたマウスは、Th1からTh2の免疫応答サイトカイン分泌のシフトを明示した。これらのマウス(グループB)はIL4レベルの増加及びIFNγレベルの減少を明示した。これとは対照的に、寛容化されていないグループ(グループA、E)からのマウスは、高いIFNγと低いIL4レベルを示した。グループB内の寛容化されたマウスから収獲したリンパ球は、寛容化されたグループE内のNK1.1枯渇されているマウスと比べて、有意に高いIL4及び低いIFNγレベルを明らかにした(それぞれ24.4±1.4及び14.1±0.4対22.6±0.7及び189.8±8.4、図6)。これとは対照的にNK1.1枯渇は、抗原の不在下でグループA及びDからの寛容化されていないマウスにおいてIFNγの増大及びIL4レベルの減少を誘発した(それぞれ128.3±3.7及び0.6±0.01対48.3±4.1及び19.1±0.4、図6)。NK1.1枯渇は、CEPの給餌を受けたグループではIL12レベルの増大を導く(475±23.3対145±5.7及びグループEについて、それぞれ、図7)が、CEPの給餌を受けていないグループ内では反対の効果を有していた(それぞれ、グループA及びDについて165±7.4及び74±3.3)。
【0195】
実施例4
実験的結腸炎における脾細胞の養子免疫伝達に対する寛容誘発の効果
実験的結腸炎モデルにおける寛容誘発の効果を評価するために、各々10匹の動物から成る6つのドナーマウスグループを研究した(表3に異なるグループが列挙されている)。TNBSでの直腸攻撃誘発により、グループGからJまでのマウスにおいて結腸炎を誘発した。グループK及びL内の対照マウスは、標準食塩水で攻撃誘発した。グループK及びL中の対照マウスは、標準食塩水で攻撃誘発した。全てのグループ内のマウスに、結腸炎誘発の日から開始して11日間隔日で50μg/マウスでの給餌を施した。グループI及びJは、結腸炎抽出タンパク質(CEP)での給餌を受けたマウスを含んでいた。グループG、H、K及びL内のマウスには、ウシ血清アルブミン(BSA50μg/マウス)を給餌した。脾細胞収獲の36時間前に、グループG、I及びKからのマウスにおいて、上述の通りNK1.1枯渇を実施した。全てのグループ内のマウスを、結腸炎誘発から14日後に屠殺した。
【0196】
各々10匹の動物から成るレシピエントマウスグループG’−L’も研究した。0.5mlのPBS中で1×106個のドナー細胞を静脈内で注射する24時間前に、300ラドの全身照射で、レシピエントマウスに亜致死線量で照射した。全てのマウスを、細胞移植の24時間後にTNBS浣腸剤で処置した。結腸炎についての臨床的、巨視的及び組織学的パラメータを以下で記述する通り結腸炎誘発から14日後に決定した。
【0197】
【表3】
【0198】
結腸炎の臨床査定
マウスCEPで給餌されたグループJ’からの寛容化されたマウスからの寛容化された細胞のレシピエント内、ならびにグループJの寛容化されたマウス内において、下痢の著しい減少が見られた。これとは対照的に、グループH’からの寛容化されていない脾細胞のレシピエント及びグループHからのBSAでの給餌を受けたマウスは、重症の下痢に苦しんだ。マウスの体重の追跡調査は、グループH及びH’中の寛容化されていないマウスと比較してグループJ及びJ’中の寛容化されたマウスの間で統計的に有意な体重の減少を明らかにした(それぞれ10.8%及び11.2%対5.7%及び5.5%、p<0.005)。
【0199】
グループG’からのNK1.1枯渇されているマウス由来の脾細胞のレシピエント及びグループGからのそのドナーは、グループH及びH’内の寛容化されていないマウスを比較して下痢による苦しみが少なかった。両方のグループ(G及びG’)からのマウスは、体重の増加を示した(それぞれ9.9%及び10.2%対5.7%及び5.5%、p<0.005)。これとは対照的に、グループI’からのNK1.1枯渇されたマウス由来の脾細胞のレシピエントは、寛容化効果の喪失を導いた。そのドナーにおいては、類似の効果が見られた(グループI)。これらのマウスは、グループH及びH’と比べた場合、下痢が少なかったが、NK1.1枯渇されない対照よりも悪いものであった。同様にして、両方のグループにおいてマウス内には体重のいかなる有意な増大も見られなかった(グループJ及びJ’内の寛容化されたマウスに比較してそれぞれグループI及びI’のマウスについて6.0%及び5.1%、p<0.005)。
【0200】
グループK及びLからのマウスは、TNBSでの攻撃誘発は受けず、疾患の臨床上の証拠も示さなかった。その体重はそれぞれ11.4%及び12.3%だけ増大した。これとは対照的にグループK’及びL’からのマウスは、重症の下痢を発達させ、その体重はそれぞれ4.5%及び5.2%しか増大しなかった。
【0201】
結腸炎の巨視的等級付け
マウス抽出の結腸炎由来のタンパク質の給餌(グループJ)及び寛容化されたリンパ球の養子免疫伝達(グループJ’)による経口寛容の誘発は、結腸炎の巨視的等級付けを有意に緩和した。結腸炎のテストされた巨視的パラメータについての評点は、結腸炎潰瘍形成の度合い、腸及び腹膜接着、壁厚み及び粘膜浮腫の度合いであった。合計巨視的評点は、それぞれ、グループH及びH’の寛容化されていないマウスにおける3.22±0.15及び3.32±0.26に比べて、それぞれグループJ及びJ’において0.31±0.24及び0.3±0.25であった。グループGからのNK1.1枯渇されたマウス及びグループG’からのそのリンパ球のレシピエントは、疾病の緩和を明示した(それぞれ0.8±0.4及び0.85±0.5)。これとは対照的に、グループIからのNK1.1枯渇されたマウス及びそのリンパ球のレシピエント(グループI’)は、重症の結腸炎を明示した(それぞれ3.72±0.22及び3.77±0.6、p<0.005)。グループK’及びL’からのマウスは、重症の結腸炎の証拠を示した(それぞれ3.4±0.29及び3.27±0.22)。
【0202】
組織学的病巣の等級付け
腸組織の組織学的評価は、グループJ及びJ’の中の寛容化されたマウスにおいて、炎症性応答及び粘膜潰瘍形成の著しい減少を示し、組織学的評点は、それぞれ1.8及び1.7であった。これらのマウスにおいては、ほぼ正常な切片又は最小限のリンパ球浸潤しか検出されなかった。これとは対照的に、グループH及びH’内の寛容化されていないマウスから取った腸標本の中に重症の炎症性反応が見られ、組織学的評点は3.3及び3.08(それぞれグループH及びH’、p<0.005、図8)であった。グループG内の寛容化されていないNK1.1枯渇されたマウス及びその脾細胞のレシピエント(グループG’)において、炎症性反応及び粘膜潰瘍形成の著しい減少が検出された。グループG及びG’についての組織学的標点はそれぞれ2.08及び2であった。グループIからのNK1.1枯渇されたマウス及びそのリンパ球のレシピエント(グループI’)は、重症の結腸炎を明示した。グループI及びI’内のマウスについての評点はそれぞれ2.9及び2.5であった。グループK及びLは、TNBSでの直腸攻撃誘発を受けなかった。
【0203】
実施例5
NK1.1+リンパ球は、寛容化されたマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を増大させ、実験的結腸炎を有する寛容化されていないマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた
寛容化されたマウス
寛容化された及びされていないレシピエントマウスの間のCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比の比較は、全ての寛容化されたグループにおいて高い比率を明らかにした。グループJ’からの寛容化されたレシピエントマウスは、グループH’内の寛容化されていないマウスと比較して有意に高い比率を示した。CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比はそれぞれ2.16と0.55であった(p<0.005)。
【0204】
寛容化されたマウスからのリンパ球の養子免疫伝達は、レシピエントマウス内でCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を増大させた。フローサイトメトリ分析は、NK1.1枯渇されたCEP給餌を受けたドナーマウスからの脾細胞の養子免疫伝達が、寛容化され枯渇されていないマウスから収獲された脾細胞に比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させるということを示した(それぞれグループI’及びJ’について0.58対2.16、p<0.005、図9)。
【0205】
寛容化されていないマウス
寛容化されていないリンパ球の養子免疫伝達は、レシピエントマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた。寛容化されたグループとは対照的に、NK1.1枯渇は、実験的結腸炎を有する寛容化されていないマウスに対して反対の効果を有していた。フローサイトメトリ分析は、NK1.1枯渇された寛容化されていないドナーマウスからの脾細胞の養子免疫伝達が、寛容化されていないNK1.1枯渇されていないマウスからの脾細胞と比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を増加させたことを示した(それぞれ、グループG’及びH’において1.7対0.55、p<0.005、図9及び表4)。図10は、寛容化されたNK1.1枯渇されていない及び枯渇されたドナーのレシピエントから、及び寛容化されていないNK1.1枯渇されていない及び枯渇されたドナーから(グループG’−J’)の単離済みリンパ球上のIL4及びIFNγの発現の代表的結果を示している。
【0206】
【表4】
【0207】
対照リンパ球からの養子免疫伝達
フローサイトメトリ分析は、対照のNK1.1枯渇されているマウスからの脾細胞の養子免疫伝達が、NK1.1枯渇されていないドナーマウスに比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を増加させることを示した(それぞれグループK’及びL’、1.13対0.69、p<0.005)。
【0208】
実施例6
NK1.1による肝臓リンパ球細胞毒性
これらの研究では、100:1、50:1溶解及び10:1のE:T比で標的細胞としてYAC−1細胞を使用した。NK1.1枯渇された及び枯渇されていない寛容化された及び寛容化されていないマウスのレシピエントから単離した肝臓リンパ球を用いて、研究を実施した。寛容化されずNK1.1枯渇されていないマウス(グループH’)からのレシピエントは、その他のグループ(12.37%の細胞毒性)に比べて溶解をほぼ全く示さなかった(100:1のE:T、図11)。グループG’内の寛容化されておらずNK1.1枯渇されたマウスからのレシピエントは、グループH’に比べ高い溶解を示した(それぞれ20.4%対12.37%の細胞毒性)。グループI’からのNK1.1枯渇されCEP給餌を受けたマウスからのレシピエントは、グループJ’内のNK1.1枯渇されていないマウスよりも低い溶解を示した(それぞれ42.58%対46.98%の細胞毒性)。対照グループからのレシピエントは、それぞれ、グループL’と比べてグループK’内のマウスについて、23.1%対22.47%の細胞毒性を有していた(p<0.005、図11)。
【0209】
サイトカイン検定
両方のトリプリケートセットから上清流体を収集し、全ての寛容化された及びされていないグループからの全てのマウスについてサイトカインレベルを測定した。「サンドイッチ」ELISAによってIL4、IL10及びIFNγレベルを測定した。寛容化されたマウスは、Th1からTh2までの免疫応答サイトカイン分泌のシフトを明示した。これらのマウス(グループH)は、IL4、IL10レベルの増加及びIFNγレベルの減少を明示した。これとは対照的に、寛容化されていないグループ(グループG、J、K)からのマウスは高いIFNγ及び低いIL10レベルを示した。グループH内の寛容化されたマウスから収獲したリンパ球は、寛容化されたグループK内のNK1.1枯渇されたマウスと比べて、有意に高いIL4、IL10及び低いIFNγレベルを明らかにした(それぞれ18.4±3.7、23.1±2.9及び5.1±0.4対2.9±0.6、0.8±0.1及び19.8±3.8、図12)。これとは対照的に、NK1.1枯渇は、抗原の不在下でグループG及びJからの寛容化されていないマウスにおいて、IFNγレベルの増加及びIL4、IL10レベルの減少を誘発した(それぞれ24.3±3.7、3.1±0.9及び4.6±0.4対18.3±1.1、3.2±0.1及び2.1±0.4、図12)。
【0210】
実施例7
NKTリンパ球のex vivo免疫プログラミング
先行する実施例で示されているように、マウス抽出された結腸炎由来のタンパク質の給餌による経口寛容の誘発は、寛容化されていないマウスと比べて、結腸炎の異なる症候(結腸炎の巨視的等級づけ、重症の下痢、炎症性応答及び粘膜潰瘍形成)を有意に緩和した。
【0211】
従って、本発明者は、細胞特にNK細胞のex vivo教育が、いかなる経口寛容処置も受けていない誘発された結腸炎を患う動物における異なる結腸炎の症候を改善しうるか否かを調べることによって、NKT細胞のインビトロ/ex vivo免疫プログラミングの可能性を判定する目的で、以下の実験を実施した。
【0212】
8つの異なる組合せの異なる細胞サブグループ(表5に列挙した通りのCD4、CD8、脾細胞及び樹状細胞)を、以下の6つの実験的グループの各々から調製した:
1. 結腸炎無し及び処置(経口寛容化)無しの対照動物から収獲された細胞。これらの細胞を、BSAと共にex vivoでインキュベートした。
2. 結腸炎を有し処置(経口寛容化)無しの対照動物から収獲された細胞。これらの細胞を、BSAと共にex vivoでインキュベートした。
3. 結腸炎を有し経口寛容化を介した処置を受けた動物から収獲された細胞。細胞をBSAと共にインビトロでインキュベートした。
4. 結腸炎無し及び処置(経口寛容化)無しの対照動物から収獲された細胞。これらの細胞を、CEPと共にex vivoでインキュベートした。
5. 結腸炎を有し処置(経口寛容化)無しの対照動物から収獲された細胞。細胞を、CEPと共にex vivoでインキュベートした。
6. 結腸炎を有し経口寛容化を介した処置を受けた動物から収獲された細胞。細胞を、CEPと共にex vivoでインキュベートした。
【0213】
【表5】
【0214】
実験グループ1、2及び3由来の細胞が、BSAの存在下でインビトロでインキュベートされ、従って対照として役立ち、一方実験グループ4、5及び6の細胞が抗原(CEP)の存在下でインビトロでインキュベートされ、従ってテストグループとして役立ったという点に留意されたい。ex vivo教育を、異なる処置済み細胞による(IFNγの分泌と比べた)IL10の分泌を測定することによって検査した。
【0215】
処置(経口寛容化)を受けていないもののCEPの存在下でインビトロでインキュベートされた結腸炎を患う動物(サブグループ5A”〜5H”)から調製された異なる細胞型又は細胞組合せ(サブグループA”〜H”)か、抗原とのインキュベーションによるex vivo教育の実現可能性を示す主要なテスト対象グループであることがわかるはずである。表6に示されているように、疾病関連抗原(サブグループE”5)の存在下でNK1.1+T細胞を培養することは、IL10分泌の増加によって明示されるような寛容化された細胞のものと類似したサイトカインパターンを導く。
【0216】
CD4細胞及び抗原(サブグループA”5)の培養について、類似のパターンが観察された。これらの結果は、疾病に結びつけられる抗原に対し細胞を暴露することによるex vivo教育の成功を示している。しかしながら、抗原によるNKT教育がCD4、CD8又はDC(それぞれF”5、G”5及びH”5)の添加によって妨げられたことから、抗原の存在下で2つ以上の細胞型を組合せることは、この望ましい効果を低減させた。
【0217】
疾病に結びつけられる抗原とのインキュベーションによるNKT細胞のex vivo教育の実現可能性に加えて、発明人らは、IL10上昇した分泌によって反映されるように、その他の細胞型とのNKT細胞の同時培養が所望のex vivo教育を結果としてもたらし得るか否かを調べた。表6に示されているように、寛容化されたマウスから得られたCD4又はCD8細胞とNKT細胞の組合せのみが、IL10上昇した分泌を結果としてもたらした(それぞれサブグループF3及びG3)。抗原に対するex vivo暴露と組合せて、寛容化されたマウスから得られたCD4細胞とNKT細胞は、類似の効果を有し(サブグループF6)、一方抗原の存在は、寛容化されたマウスからのNKTCD8、組合せが検査された時点で(サブグループG6)IL10の分泌を有意に低減させた。
【0218】
しかしながら、樹状細胞とNKT細胞の同時培養は、検査したいずれの組合せ(サブグループH3〜H6)においてもIL10分泌を誘発できなかった。
【0219】
【表6】
【0220】
【表7】
【0221】
【表8】
【0222】
本発明の実施例は、Th2特異的記憶細胞が伝達されたと仮定されることから、実験未使用のマウス内への寛容化された脾細胞の養子免疫伝達が寛容を誘発する、ということを示した。これとは対照的に、NK1.1枯渇されたCEP給餌マウス由来のリンパ球の養子免疫伝達は、寛容を伝達できず、炎症性Th1媒介型応答をアップレギュレートした。NK1.1+T細胞が急速にIL4を産生し、実験的アレルギー性脳脊髄炎及び糖尿病性NODマウスモデルにおける自己免疫応答の調節の役割を果たすということが発見された[ベンデラック、A.ら、Annu Rev Immunol 15:535〜562頁(1997年);サカモト(Sakamoto)A.ら、J Allergy Clin Immunol 103(5 pt 2):s445〜51頁(1999年);セキ(Seki),S.ら、J Immunol 147:1214〜1221頁(1991年)]。しかしながら、経口寛容誘発の終結時におけるNK1.1T細胞の枯渇は、サイトカイン分泌の型に影響を及ぼし、寛容化された枯渇されていないNK1.1T細胞マウスと比較してCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた。本発明の結果は、NK1.1T細胞が、IFNγ炎性誘発性サイトカイン分泌か又はIL4抗炎症性サイトカイン分泌を介して、免疫応答のTh1/Th2プロファイルに影響を及ぼしうるということを示唆している。両方の条件において、そのインパクトは、従来のCD4+T細胞によるものよりもはるかに大きい[チェン(Chen)、H.ら、J Immuno 159:2240〜2249頁(1997年)]。
【0223】
その上、本発明者らは、さらに、NKT細胞のex vivo教育が実現可能であることを示した。疾病標的抗原に対しインビトロでNKT細胞を暴露することで抗炎症性IL10分泌パターンに向かってのこれらの細胞の教育が可能となった。
【0224】
結論としては、NK1.1+リンパ球は、免疫変調において及び免疫原性又は寛容原性の方向で免疫応答の切換えにおいて、2重の役割を果たしている。それらが活性化された状態となる環境、異なる刺激タイプ又はシグナリングレセプタが、それらの機能を決定し得る。全く異なる免疫調節機序に関与するNK1.1+T細胞は、免疫介在性障害におけるTh1/Th2パラダイム及びエフェクタ細胞の型を変調させる。
【0225】
結論としては、NK1.1+リンパ球は、免疫変調において及び免疫原性又は寛容原性の方向で免疫応答の切換えにおいて、2重の役割を果たしている。それらが活性化された状態となる環境、異なる刺激のタイプ又はシグナリングレセプタが、それらの機能を判定し得る。全く異なる免疫調節機序に関与するNK1.1+T細胞は、免疫介在性障害におけるTh1/Th2パラダイム及びエフェクタ細胞の型を変調させる。
【0226】
II.
材料と方法
動物
雌の免疫コンピテント(異型接合)胸膜欠損Balb/cマウスをジャクソンラボラトリ(Jackson Laboratories)バーハーバー、メイン州から購入した。全ての動物を滅菌したケージ内で層流フード内に保ち、照射済みの食料及び無菌酸性化水を与えた。動物実験を、Hebrew University−Hadassah Institutional Committee for Care and Use of Laboratory Animalsの指針及び委員会の承認に従って実施した。
【0227】
細胞培養
可欠アミノ酸及び10%の熱不活性化済みウシ胎児血清で補足された培地の中で、単層としての培養で、ヒト肝臓癌細胞系Hep−3Bを分泌するHBsAgを成長させた。
【0228】
胸膜欠損マウス内の腫瘍及び脾細胞の移植
胸膜欠損マウスを、亜致死線量照射(600cGy)で条件づけした。照射から24時間後に、マウスに、107個のヒト肝臓癌Hep3B細胞を右肩に皮下注射した。照射から3日後、ドナー免疫コンピテントマウスから脾細胞を収獲した。レシピエント胸膜欠損マウスには、1×107細胞/マウスの割合でドナー脾臓細胞を静脈内注射し、レシピエント内にコンピテントな免疫系を確立した。次に抗原パルスしたNKT細胞をマウスに注射した。
【0229】
リンパ球の単離及びNKT細胞の分離
ドナー免疫コンピテントBalb/Cマウスから収獲した脾臓から、脾細胞を調製した。脾臓から結合組織を除去した後、脾臓を10ml入り皿の低温滅菌PBS中に入れ、ステンレス鋼メッシュ(サイズ60、シグマケミカル、セントルイス、ミズーリ州)を通して圧壊した。リンパ球の単離のためには、50ml入り管の中で、PBS7ml中に懸濁させられた細胞の下側に、ヒストパーク1077 20ml(シグマケミカル、セントルイス、ミズーリ州)を置いた。界面にある細胞を収集し、50ml入り管内で希釈し、氷冷PBSで2回洗浄した(10分間1250rpm)。約1×108個の細胞/マウスを回収した。特異的抗NKマイクロビーズ(ミルテニルバイオテク(Miltenyl Biotec)、ドイツ)と共に磁気細胞選択(MACS)を用いてNKT細胞分離を行なった。
【0230】
パルスによるNKT細胞教育
腫瘍又はウイルス関連抗原でex vivoパルスすることでNKT細胞を教育した。0.5mlのPBS中の1×106個のNKT細胞をフラスコ中に設置し、72時間、HCC溶解物(3μg/ml)、Hep3B細胞又はウシ血清アルブミン(BSA)(1μg/ml)と共にインキュベートした。
【0231】
NKT細胞の養子免疫伝達
免疫コンピテンスの回復後7日後に養子免疫伝達を実施した。これは、HCC溶解物、Hep3B細胞又はBSAに対しインビトロで暴露されたNKT細胞の静脈内注射によって実施された。
【0232】
ex vivo免疫変調済み調節NKTリンパ球の養子免疫伝達の効果の評価
ex vivo教育済みNKTリンパ球の養子免疫伝達の効果を、以下のパラメータを監視することによって評価した。
【0233】
腫瘍成長の追跡調査
6週間2週間隔でレシピエントマウスを追跡調査した。生存率、体重及び腫瘍体積(カリパスを用いて)を査定した。苦痛の徴候を示したマウス及び過度に体重低下(測定間で10%超又は初期体重の25%超)したマウスを屠殺した。
【0234】
サイトカイン分泌
4週目の間、全てのグループ内のマウスから血液を採取し、14,000rpmで遠心分離した。ジェンザイムダイアグノステックスキッツ(Genzyme Diagnostics kits)(ジェンザイムダイアグノスティックス(Genzyme Diagnostics)、マサチューセッツ州、米国)を用いて「サンドイッチ」ELISAにより血清サイトカインレベルを測定した。
【0235】
肝臓及び脾臓リンパ球の単離及びCD4+、CD8+及びNKT細胞のフローサイトメトリ判定
肝臓及び脾臓由来のリンパ球の単離を上述の通りに実施し、Falcon2052管の中に2×104細胞/500μlPBSのトリプリケートを置いた。細胞を、1:20のFITC抗マウスNK1.1抗体[NKR−P1C、ファーミンジェン(Pharmigen)、米国]を伴う10μlのウシ胎児血清(FCS)中に再懸濁させ、30分間10分毎に混合した。1%のBSA中で細胞を2回洗浄し、読取りまで4℃中に保った。螢光細胞分析分離装置(FACStarplus、ベクトンディッキンソン、カリフォルニア州)を用いて各グループからの1×104個の細胞について分析的細胞選別を実施した。生きた細胞のみを計数し、抗原処置されていないリンパ球からの背景螢光を、得られたレベルから差し引いた。データをコンソート(Consort)30、2色輪郭プロットプログラム(ベクトンディッキンソン、カリフォルニア州)で分析した。
【0236】
STAT1−6用のウエスタンブロット分析
STATタンパク質発現の判定のため、全てのグループ中のマウスから脾細胞を得た。モーター駆動式テフロン(登録商標)乳棒が備わったガラスホモジナイザを用いて0.25Mのスクロース/10mMのトリス−HCl、pH7.4中で組織ホモジェネート(200mg/ml)を調製した。SDS−ポリアクリルアミド(7.5%)ゲル上での電気泳動により、タンパク質(100μg/レーン)を分解し、ニトロセルロース膜に対し電気ブロットした。STATタンパク質を検出するために、異なるSTATタンパク質に導かれたポリクローナルウサギ抗マウス抗体そしてそれに続いてアルカリホスファターゼでカップリングされたヤギ抗ウサギIgG(ベッチルラボラトリーズ(Bethyl Lab.)、モンゴメリ、テキサス州)を用いて、膜をプローブ探査した。
【0237】
実施例1
ex vivo免疫変調済み調節NKTリンパ球の養子免疫伝達の効果
教育済みNKT細胞の養子免疫伝達のインビボ抗腫瘍効果を評価するために、各々10匹の動物から成る胸膜欠損Balb/Cマウスの4つのグループ(グループA−D)を研究した(表1)。全てのマウスを亜致死線量照射し、ヒトHep3BHCCを移植した。免疫コンピテントBalb/Cマウスから調製したNKT細胞を、HCC由来の抗原(HCC溶解物)、Hep3B細胞及びBSAを用いてex vivoでパルスした。その後、1×106個の教育済みNKT細胞を養子免疫伝達により各HCC包含マウスの体内に注射した。グループAは、HCC溶解物でパルスしたNKT細胞を受け;グループBは、Hep3B細胞でパルスしたNKT細胞を受け;グループCはBSAでパルスしたNKT細胞を受け;グループDはNKT移植を受けなかった。
【0238】
【表9】
【0239】
抗腫瘍効果の機序を判定するために、NKT、CD4及びCD8マーカーについてFACSにより脾臓内リンパ球集団を分析した。腫瘍サイズ及び重量、血清サイトカインレベル及び脾細胞STAT1−6タンパク質発現も同様に査定された。
【0240】
結果
HCC由来の抗原でパルスされたNKT細胞(グループA)の養子免疫伝達は、結果として、4週間以内で腫瘍を完全に消滅させ、体重減少を弱めた(6.5%)。これとは対照的に、グループB、グループC及びグループD内のマウスは、大きい壊死腫瘍及び重大な体重減少(グループB、グループC及びグループD内でそれぞれ21%、17%及び23%の体重減少、p<0.05)を発生させた;従って、生存率を査定することができなかった。
【0241】
グループA内で、NKT/CD4及びCD8/CD4比が有意に増大した(NKT/CD4比についてグループB、グループC及びグループD内でそれぞれ12.3対6.4、4.8及び5.6、p<0.05)。グループA内で、転写因子STAT4の発現が有意に増大したが、グループB−Dでは増大しなかった。IFNγの血清レベルは、グループB、C及びD(それぞれ3.24、1.77及び1.38倍、p<0.05)に比べてグループA内で増大させられた。
【0242】
HCC由来の抗原を用いてex vivoでパルスされたNKTリンパ球の養子免疫伝達は、マウスHCCの抑制を導く。NKT媒介型抗腫瘍活性は、抗腫瘍NKT及びCD8リンパ球の数の増加、IL−2活性についてのマーカーであるSTAT4の発現の増加、及び血清炎性誘発性サイトカインレベルの上昇によって明示されるTh1免疫の増強と結びつけられた。NKTリンパ球のex vivo変調は、HCCのための免疫療法の新しい様式として期待できる。
【0243】
III.
材料と方法
試薬
コンカナバリンAをウォーシントンバイオケミカル(Worthington Biochemical Corporation)、米国から購入した。
【0244】
抗HBVワクチン(Bio Hep B)をバイオテクノロジカルジェネラル(Bio Technological General Corporation)、米国から購入した。
【0245】
動物
実験用プロトコルは、Animal studies commitee of the Jerusalem Hebrew University Medical Schoolにより承認された。ハーラン(Harlan)研究所から、生後10週間の雄レプチン欠乏C57BL/6Jマウス及びその脂肪の少ない同腹子(+/?)を購入した。ハダサ・ヘブライ大学医学部の動物コアで動物達を恒温で収納した。マウスを規則的な12時間の明暗サイクルに保ち、標準的なマウス食を給餌し、びんから水道水を入手することができた。隔日にマウスを計量し、食物摂取を記録した。実験の終了時に、イソフルラン麻酔下での頸部断頭によりマウスを屠殺した。
【0246】
経口抗原の調製及び投与
肝臓を関係するマウスから取り出し、小片にカットし、機械で均質化した。40mmのナイロン細胞ストレーナを通したろ過の後、無傷の細胞をスピンダウンし、取出した。タンパク質検定キット(バイオラド(Biorad)、ミュンヘン、ドイツ)を使用してタンパク質を定量し、30日間隔日に(合計15用量)、給餌用無外傷性針を用いて以下に記述する実験グループの体内に導入した。
【0247】
トランスアミナーゼ及びトリグリセリドの測定
自動型手順を用いて血清ALT及びAST血漿活性を測定した。ロッシュ(Roche)トリグリセリトGPO−RAP酵素試行キットを用いて、血清220cc血液試料を処理した。試料のトリグリセリドレベルを、550nmの波長を用いてCobas DP−25分光光度計で測定した。
【0248】
グルコース寛容測定
グルコース寛容の測定のためには、マウスは、体重1キログラムあたり1グラムの量でグルコースの給餌を受けた。経口給餌の後、時点0でそして次に15分毎に合計3時間イソフルラン麻酔の下で尾から血液を採取した。エリート(Elite)グルコース試験片及びグルコメータでグルコースレベルを測定した。
【0249】
脾臓及び肝臓リンパ球単離
以前に記述された通りに脾細胞を単離し、赤血球を取り出した[ビカーリ、A.P.ら、Immunology Today 17(2):71頁(1996年)]。幾分かの修正を加えて、以前に記述された通りに肝内リンパ球を研究の終りで全てのマウスグループから単離した[ビカーリら、(1996年)上掲書;ブライシャー、P.A.ら、Science 250:679〜682頁(1990年)]。横隔膜より上で下大動脈をカットし、青くなるまで肝臓を低温PBS5mlで洗い流した。結合組織と胆のうを除去し、肝臓を10ml入りの皿の中で低温無菌PBS内に置いた。肝臓と脾臓をステンレスメッシュを通してつぶした(サイズ60、シグマケミカル、セントルイス、ミズーリ州)。3分間50ml入りの管の中に細胞懸濁液を入れ、低温PBS中(10分間1,250×rpm)で2回洗浄し、デブリを除去した。細胞をPBS中で再懸濁させ、細胞懸濁液を予めPBS中に浸漬したナイロンメッシュを通して入れ、未結合の細胞を収集した。細胞を45mlのPBS中で2回(室温で1,250×rpm)洗浄した。肝臓及び脾臓リンパ球の単離のために、50ml入り管内でPBS7ml中に懸濁させられた細胞の下に20mlのヒストパーク1077(シグマダイアグノスティクス、セントルイス、ミズーリ州)をゆっくりと入れた。管を1,640rpmで室温にて15分間遠心分離した。界面にある細胞を収集し、50ml入りの管内に希釈し、氷冷PBSで2回洗浄した(10分間1,250rpm)。マウス1匹につきおよそ1×106個の細胞を回収した。トリパンブルー染色による生存可能性は、95%を上回っていた。脾細胞及び肝臓関連リンパ球の両方を、全実験グループ中の全ての動物から単離した。
【0250】
リンパ球の養子免疫伝達
関係するグループ全てのドナーマウスを養子免疫伝達実験の一日目に屠殺し、脾臓に由来するリンパ球の単一懸濁液を、記述されている通り[ウィナー、H.ら、Annu Rev Immunol 12:809〜837頁(1994年)]に調製した。移植の前にPBS中に細胞を再懸濁させた。全てのグループからの脾臓リンパ球を、先行する照射無しで、実験未使用のレシピエント内に移植した。
【0251】
サイトカイン測定
1. 血清サイトカイン:全ての寛容された及び寛容されないグループからの全てのマウスについて、サイトカインレベルを測定した。メーカーの指示事項に従って、ジェンザイムダイアグノステックスキッツ(ジェンザイムダイアグノスティックス、マサチューセッツ州、米国)を用いて「サンドイッチ」ELISAによりIFNγ、TGF−β、TNF、IL4、IL6及びIL10レベルを測定した。
2. 脾臓サイトカイン:上述の通り100万個/mlの脾細胞を収集した。その後、Elispot方法(ダイアクローンリサーチ(Diaclone Research)、米国)を用いて、IFNγ及びIL10レベルを計算した。
【0252】
NKT1.1リンパ球集団の判定のためのフローサイトメトリ分析
リンパ球単離の直後に、2〜5×104細胞/500μlPBSのトリプリケートを、Falcon2052管内に入れ、10分間1%のBSA4mlでインキュベートし、5分間1400rpmで遠心分離した。1:20のFITC−抗マウスNK1.1抗体(NKR−P1C、ファーミンジェン、米国)と共に10μlのFCS中で細胞を再懸濁させ、30分間10分毎に混合した。1%のBSA中で2回細胞を洗浄し、読取りまで4℃に保った。対照グループについては、5μlの1%BSAのみを添加した。螢光細胞分析分離装置(FACSTAR plus、ベクトンディッキンソン)を用いて各々のグループから1×104個の細胞について分析的細胞選別を実施した。生きた細胞のみを計数し、抗原処置されていないリンパ球からの背景螢光を、得られたレベルから差し引いた。ゲートを前方散乱及び側方散乱上にセットして、死滅細胞及び赤血球を排除した。データをコンソート30 2色輪郭プロットプログラム(ベクトンディッキンソン、オクスナード、カリフォルニア州)又はセルクエストプログラムで分析した。
【0253】
Statウエスタンブロット分析
ウエスタンブロット分析キットを用いてStat1、3、4、6レベルを推定した。
【0254】
脂肪含有量の肝臓MRI測定
マウスの肝臓中の脂肪の査定/定量化のため、単一回の捕捉で、同相(in−phase)及び対向相(opposed−phase)画像を提供する2重エコー化学シフト勾配−エコー磁気共鳴映像法(MRI)シーケンスの技術を用いて、肝脂肪含有量を測定した。T1−加重対向相MRI技術は、組織内の脂肪の比較的小さな割合の検出に関し感度が高い。全てのMRIは、1.5−Tシステム(シグナ(Signa)LX;GE、ミルウウォーキ州、米国)で実施された。2重エコーMR映像法を、125msecの繰返し時間(TR)、4及び6.5msecの2重エコー時間(TEs)及び80°のフリップ角度で実施した。画像形成パラメータには、3mmの切片厚み、13cmの視野、256*160のマトリクス、そして膝コイルを用いて1つの信号の捕捉が含まれていた。交差点ギャップ無く切片厚み3mmで肝臓のレベルで横方向(軸方向)及び冠状画像が捕捉された。以前の報告書で記述されている通り[ミッチェル(Mitchell)DG ら、Invest.Radiol 26:1041〜1052頁(1991年);トモヒロ(Tomohiro)N.ら、Radiology 218:642〜646頁(2001年)]同相及び対向相の画像間のSI変化の信号強度(SI)測定の定量的査定を計算した。SIインデックスは、以下の式から計算した:SIインデックス=(SIip−Siop)/SIip、(式中、SIipは同相画像上のSIであり、SIopは、対向相画像上のSIである。SIインデックスは、同相画像上のSIと比較した対向相画像上のSI損失の分数を反映している。
【0255】
肝臓組織学検査
各々のマウスについて、10%の緩衝ホルムアルデヒドの中で単一の肝臓セグメントを定着させ、組織学的分析のためパラフィン内に包埋した。切片(μm)を、ヘマトキシリン/エオシンで染色し、組織学的評点を実施した。
【0256】
統計学的分析
データは、平均±SEMとして表現されている。上述のパラメータに関する異なるグループ間の統計学的有意性は、対応のないスチューデントt検定を用いて計算された。0.05未満のp値は、統計的に有意な差を表わすものとみなされた。
【0257】
実施例1
グルコース寛容に対するNKT1.1リンパ球養子免疫伝達の効果
ob/obNASHモデル中で観察された代謝及び肝臓の機能の乱れにおけるNKT1.1リンパ球の役割を査定するために、表1に示されている通りに、マウスを5つのグループへと分割した。実験12日目に、上述のように全てのマウスグループ内で耐糖能試験を実施した。
【0258】
【表10】
【0259】
本発明人らの先行実験において示されているように、免疫学的操作(グループC)に付されなかったob/obマウスは、グルコール寛容試験でひどく混乱を受けた(表2、及び図1参照)。同様にして、規則的ob/ob脾細胞で養子免疫伝達を受けるob/obマウスは、耐糖能試験全体を通して有意に上昇したグルコースレベルを有していた。
【0260】
【表11】
【0261】
対照的に、野生型(グループA)又はob/ob(グループB)NKT1.1リンパ球のいずれかが注射されたマウスは、グループDに比べて(最高120分の時限まで全ての時限についてp<0.001)耐糖能試験の著しい改善を特色としていた。実際、耐糖能試験中のob/obグループの各々とその脂肪の少ない同腹子の間のグルコースレベルの差は、統計的に異なるものではなかった(耐糖能試験全体を通してP値は0.20〜0.63の間の範囲内にある)。野生型脾細胞が移植されたグループCのマウスのグルコースレベルは、グループD及びグループEマウスの有意に高いレベルとグループA及びグループBマウスの事実上正常なレベルの中間であった。
【0262】
これらの結果は、ob/obNKT1.1リンパ球の数の減少及び/又は機能の混乱が、ob/obマウスにおけるグルコース寛容の発達の中で主要な役割を果たす、ということを示唆している。野生型又はob/obNKTリンパ球のいずれかを補充することにより、これらのマウス内のグルコース不寛容を矯正することができる。
【0263】
実施例2
肝脂肪含有量に対するNKT1.1リンパ球の養子免疫伝達効果
肝臓脂肪症のレベルに対するNKT1.1リンパ球の養子免疫伝達の効果を査定するために、実験の終りにおいて、全てのグループのマウス(表3参照)は腹部MRIを受け、肝脂肪含有量を上述の方法に従って推定し、SIインデックスとして提示した。
【0264】
【表12】
【0265】
野生型(グループA)及びob/ob(グループB)のNKT1.1リンパ球の養子免疫伝達を受けるマウスは両方共、図2a及び2bに示されているように、MRIによる肝脂肪含有量のレベル低下を示した。養子免疫伝達とMRI記録の間の経過時間は短かいものにすぎなかった(12日間)が、これらの差は、統計的有意性(それぞれP=0.063、P=0.008)に近づいていた。このことは、NKT1.1リンパ球の枯渇又は機能不良がob/obモデル内の非アルコール系脂肪性肝炎の病因に関与していること、そしてその補充が肝臓脂肪症を矯正し得ることを示唆している。
【0266】
実施例3
コンカナバリン−A肝炎に対する罹病性に対するNKT1.1リンパ球の養子免疫伝達の効果
Con−Aで誘発された肝炎に対するob/obマウスのこれまでに既知の耐性に対するNKT1.1リンパ球の役割を査定する目的で、全てのグループのマウス(表4)は、実験の12日目に、その尻尾の1本の静脈内に、合計体積を0.1ccとして発熱物質無しの食塩水の中に溶解された200μgのCon−Aの静脈内注射を受けた。24時間後、全てのマウスを屠殺し、血清トランスアミナーゼレベル及び肝臓炎症の組織学的度合を判定した。図4及び図3a及び3bに示されているように、グループD及びグループEのマウスは、Con−A攻撃誘発に応答したその基線レベルに比べて穏やかな肝臓トランスアミナーゼの上昇しか発生させなかった(AST、その基線レベルのそれぞれ1.48及び1.40倍、及びALT、その基線レベルのそれぞれ1.52及び1.79倍)。これとは対照的に、グループA及びBは、ConAに応答して、AST(その基線レベルの3.6及び2.44倍)及びALT(その基線レベルの5.2及び3.46倍)の両方において有意な上昇を発生させた。野生型脾細胞の移植を受けたグループCのマウスは、グループA及びグループBのものとグループDとグループEのものの中間で肝臓トランスアミナーゼの控めな上昇を特色としていた。この実験の結果は、NKTリンパ球の養子免疫伝達が、場合によってCon−A肝炎に関与するCD4リンパ球の活性化によって、ob/obマウスをよりCon−A肝炎にかかりやすいものにする可能性があるということを示唆している。
【0267】
【表13】
【0268】
実施例4
グルコース寛容に対する経口免疫調節(肝臓抽出物給餌による)の効果
NASHモデルのさまざまな代謝及び免疫学的成分に対する経口免疫調節の効果を評価するために、マウスを表5に記されているように各々14のマウスから成る6つのグループへと分割した。隔日に、各グループに、マウス1匹につき50μgのob/op肝臓抽出物、50μgの正規同腹子肝臓抽出物又は50μgのウシ血清アルブミンのいずれかを与えた。
【0269】
【表14】
【0270】
30日目に、全ての肝臓抽出物の給餌(合計15回の給餌)が終結した。59日目に、以上で記述されているように、全てのマウスに対して耐糖能試験を実施した。予想された通り、ob/obマウスの全てのグループは、その脂肪の少ない同腹子グループ(p<0.001、表6)に比べ、グルコース食の後血中のグルコースレベルを有意に上昇させた。しかしながら、野生型及びob/ob肝臓抽出物での食餌を受けたグループB及びグループCのob/obマウスはそれぞれ、図4に描かれているように、BSAでの給餌を受けたグループCのob/obマウス(p<0.001)に比べて、経口グルコースに応答して有意に低いグルコースレベルを発生させた。
【0271】
このことは、経口免疫調節誘発を通した免疫変調がob/obマウスの代謝プロファイルを改変し、そのグルコース寛容の結果を改善し、それらの糖尿病性をより低くする、ということを示唆している。
【0272】
【表15】
【0273】
実施例5
肝脂肪含有量に対する肝臓抽出物給餌による経口免疫調節誘発の効果
肝脂肪含有量に対する経口免疫調節の効果を判定するために、6つのグループ全てのマウスに、実験59日目に腹部MRIを行った(表7)。肝脂肪含有量を、上述の方法を用いて判定し、SIインデックスとして記述した。3匹の野生型マウスは全て、ob/obマウスグループよりも有意に低い肝脂肪含有量を特色としてもち(全てのグループでp<0.001)、肝臓抽出物の給餌の効果は全く指摘されなかった(図2a)。野生型及びob/ob肝臓抽出物をそれぞれ受けたグループA及びグループBのマウスは、グループCのマウスに比べて肝脂肪含有量における有意な減少を示した(それぞれにp=0.03及びp=0.019)。図5a及び図5bにこれらの結果が示されている。
【0274】
この耐性は、肝臓抽出物の給餌を通した経口免疫調節誘発が、罹病性の高い哺乳動物の肝臓内のNASH及び脂肪蓄積速度の減少を結果としてもたらすような形で代謝プロファイルを改変するということを示唆している。
【0275】
【表16】
【0276】
実施例6
コンカナバリン−A肝炎への罹病性に対する肝臓抽出物給餌による経口免疫調節誘発の効果
野生型マウスとは対照的に、ob/ob(レプチン欠乏症の脂肪質のマウス)マウスは、以前、コンカナバリン−A誘発型肝炎に対するユニークな耐性を提示することが示されてきた。この耐性は、これらのマウスの体内のNKT1.1リンパ球集団内の定量的及び定性的改変から判定された。実験60日目に、Con−A肝炎への罹病性に対する肝臓抽出物給餌による経口免疫調節誘発の効果を判定するために、イソフルラン麻酔下で全てのマウスの眼窩後方神経叢から血液を採取し、血清トランスアミナーゼレベルを測定した。同じ日に、全てのマウスは、合計体積0.1ccとなるよう発熱物質を含まない食塩水の中で溶解させられた200μgのCon−Aをその尾部静脈中の静脈注射で受けた。24時間後に、全てのマウスを屠殺し、血清トランスアミナーゼレベル及び肝炎症の組織学的度合いを判定した。
【0277】
前述した通り、ob/obマウスは自発性肝炎を患らっていた(平均AST=227、平均ALT=204)が、一方その脂肪の少ない同腹子は患らっていなかった(平均AST=37、平均ALT=102)。グループCとグループFのマウス(BSAが与えられたob/obマウス及びその脂肪の少ない同腹子)は、200μgのCon−Aの注射に付され、ob/obマウスは、ob/obマウスがCon−A肝炎に対し比較的耐性があったことを示唆する以前の観察事実と一致して、その脂肪の少ない同腹子(平均ASTはその基線値の5.94倍まで増加)に比べ、有意なほど穏やかなAST増加(平均ASTはその基線値の1.83倍まで増加)を有していた。未知の理由で、ALTレベルは、ob/ob及び脂肪の少ない同腹子グループにおいて匹敵する形で増加した(それぞれその基線値の2.75及び2.098倍)。Con−Aの投与に応答した野生型マウス内のトランスアミナーゼ上昇度に対する肝臓抽出物給餌の効果は全く存在しなかった(グループE及びグループF内でASTはそれぞれその基線値の5.56及び6.67倍まで増加する)。このことは、図6a及び図6bに示されている。
【0278】
これとは対照的に、野生型及びob/ob肝臓抽出物での給餌を受けたグループA及びグループBのob/obマウスは、BSAの給餌を受けたob/obに比べ、有意にはるかに顕著なASTの上昇を発生させた(ASTはそれぞれその基線値の2.71及び2.89倍まで増大する)。ALTは、さらに控めな効果を示した(ALTは、グループCでのその正常値の2.75倍に比べ、グループA及びグループBでそれぞれその基線値の3.1及び3.72倍まで増大する)。Con−A肝炎に対する罹病性度のこの差異は、これらのマウスにおいてより顕著なCD4リンパ球媒介型肝損傷に向かってのシフトをひき起こした、グループA及びグループBにおける肝臓抽出物給餌によって誘発される免疫変調に原因がある。
【0279】
実施例7
B型肝炎ワクチン接種に対する応答
外部刺激に対する免疫学的T細胞媒介型応答に関してob/obマウスとその脂肪の少ない同腹子の間に存在する深遠な差異を確認するために、10匹のob/obマウスと10匹の脂肪の少ない同腹子をB型肝炎に対し免疫化した。実験1日目、14日目、21日目、25日目及び30日目に、全てのマウスに腹腔内で0.4μグラムのbio Hep Bワクチンを注射した。30日目に、全てのマウスを屠殺し、標準的な機器を用いて抗−HBS抗体力価を測定した。その脂肪の少ない同腹子に比べて、ob/obマウスは減衰された免疫応答を示し、有意に低い抗HBS抗体力価を特色としていた(p=0.027)。このことは表8及び図7に描かれている。このことは、ob/obマウスが深く損われたT細胞免疫応答を有するという、先行する実験からの印象の正当性を立証しており、このことは、ob/obマウス内での上述の代謝的及び免疫学的な現象の発生において主たる役割を果たす可能性がある。肝臓抽出物との経口寛容及びNKT細胞の養子免疫伝達がこの応答を矯正し得る。
【0280】
【表17】
【0281】
IV.
材料と方法
GVHDにおけるNKT細胞の推定上の保護的役割を査定するために、NKT枯渇された脾細胞の移植を受けたマウスに対する増大する数のNKTリンパ球(0〜4.5×106細胞)の養子免疫伝達を実施した。レシピエントマウスを、GVHD関連の肝臓、腸及び皮膚の損傷の組織学的パラメータについて追跡調査した。NKT細胞媒介型免疫変調機序及び寛容誘発における肝臓の役割を判定するために、肝内及び脾臓内リンパ球を単離しFACSによりCD4+及びCD8+亜集団について分析し、血清サイトカインレベルを判定した。
【0282】
動物
ドナーマウスは、ジャクソンラボラトリーズ(Jackson Laboratories)(アンヌハーバー、メイン州)から得た生後12週間のC57BL/6の雄であった。レシピエントは(C57BL/6×Balb/c)F1の雌のマウスであった。マウスをハダッシュヘブライ大学医学部の動物コアにおいて12時間の明暗サイクル中に保った。全ての動物を、正規の実験室食で給餌し、不断吸水させた。全ての動物実験は、Hebrew−University−Hadassah Institutional Committee for the Care and Use of Laboratory Animalsにより承認された。照射及び脾細胞移植の後、マウスを層流アイソレータ内に維持した。
【0283】
リンパ球の単離及びNKT細胞の分離
ドナーC57BLマウスから収獲した脾臓から、脾細胞を調製した。結合組織を除去した後、脾臓を10ml入り皿の低温滅菌PBS中に入れ、ステンレスメッシュ(サイズ60、シグマケミカル、セントルイス、ミズーリ州)を通して圧壊した。リンパ球の単離のためには、50ml入り管の中で、PBS7ml中に懸濁させられた細胞の下側に、ヒストパーク1077 20ml(シグマダイアグノスティックス、セントルイス、ミズーリ州)を置いた。界面にある細胞を収集し、50ml入り管内で希釈し、氷冷PBSで2回洗浄した(10分間1250rpm)。約1×108個の細胞/マウスを回収した。特異的抗DX5マイクロビーズ(ミルテニルバイオテク、ドイツ)と共に磁気細胞選択(MACS)を用いてNKT細胞分離を行なった。
【0284】
脾細胞の移植
GVHDを誘発するため、C57BL/6ドナーマウスからの2×107脾臓細胞を(C57BL/6×Balb/c)F1レシピエントマウス内に静脈内注射した。移植前にマウスに60Co全身照射(7Gy)を行った。
【0285】
実験グループ(n=8マウス/グループ)
GVHDにおけるNKT細胞の推定上の保護的役割を査定するため、増大する数のNKTリンパ球の養子免疫伝達を実施した。グループAのマウスに全脾細胞を移植し、グループBのマウスにNKT枯渇された脾細胞を移植し、グループC、グループD及びグループEのマウスには、0.5、2.5及び4.5×106個のNKT細胞を添加したNKT枯渇脾細胞を移植した。グループFのマウスは脾細胞移植を受けなかった。
【0286】
GVHDの組織学的変化の等級付け
皮膚、肝臓及び腸の炎症の度合いを評価するために、組織を全てのグループ内のマウスから採取し、10%のホルムアルデヒド内に保つ。各マウスからの5つの組織切片をパラフィン内に包埋し、切片化し、標準的手順によりヘマトキシリン−エオシンで染色し、実験条件を知らない経験豊かな病理学者がこれを検査した。
【0287】
CD4+、CD8+Tリンパ球の判定のためのフローサイトメトリ分析
リンパ球単離の直後に、Falcon2052管の中に2〜5×106個の細胞/500μλのPBSのトリプリケートを入れ、10分間1%のBSA4mlでインキュベートし、5分間1400rpmで遠心分離した。1:20のFITC−抗マウスCD4及びCD81抗体(ファーミンゲン、米国)を伴う10μlのFCS中に細胞を再懸濁させ、10分毎に30分間混合した。細胞を1%のBSA中で2回洗浄し、読取るまで4℃内に保った。螢光細胞分析分離装置(ファクスタープラス(FACSTAR plus、ベクトンディッキンソン)を用いて、各グループからの1×104個の細胞上で分析的細胞選別を実施した。生きた細胞だけを計数し、抗体処置されていないリンパ球からの背景螢光を、得られたレベルから差し引いた。前方−側方散乱装置上でゲートをセットして、死んだ細胞及び赤血球を排除した。コンソート30の2色輪郭プロットプログラム(ベクトン・ディキンソン、オクスナード、カリフォルニア州)又はセルクエスト25プログラムのいずれかを用いてデータを分析した。
【0288】
サイトカインレベルの測定
全てのグループ内のマウスから血液を採取し、14,000rpmで遠心分離した。ジェンザイムダイアグノステックスキッツ(ジェンザイムダイアグノスティックス、マサチューセッツ州、米国)を用いて「サンドイッチ」ELISAにより血清IFNγ、TNFα、IL−10及びIL−12レベルを測定した。
【0289】
統計学的分析
スチューデントt検定(両側検定)により分析した。
【0290】
GVHD関連組織損傷に対するNKT細胞の養子免疫伝達の効果
実施例1
皮膚のGVHDの緩和
全てのグループからのマウス内で皮膚生検を実施した。GVHDにおける表皮は、基底細胞層の広汎性脈管化、海綿状態及び異常角化ケラチノサイト及び表皮下裂溝形成、急性GVHDの等級IIを特徴づける形態変化を示した。一部においては、表皮の局所性完全喪失を伴う表皮下裂溝形成が観察され、これは急性GVHDの等級III−IVと相容性あるものであった。NKT細胞の養子免疫伝達はこれらの変化を改善した。
【0291】
実施例2
小腸GVHDの緩和
小腸生検を、全てのグループからのマウスにおいて実施した。NKT細胞の移植を受けたマウスにおいて、全てのGVHD関係組織学パラメータの有意な減衰が観察された。対照においては、等級Iの急性GVHDの特徴であるアポトーシス体(単一細胞壊死)が、数多くの腺窩の中に見られた。一部の標本では、腸腺窩の中に壊死破片が存在し、これは等級IIの急性GVHDと相容性あるものであった。
【0292】
実施例3
GVHD関連肝臓病の改善
NKT細胞の移植を受けたマウスにおいて、穏やかな門脈炎症、リンパ球浸潤及び肝内胆管の断裂が指摘された。これとは対照的に、NKT枯渇されたマウスは、内皮炎が随伴する重症の非化膿性の胆管炎を発生させた。この内皮炎は、静脈内皮に対する損傷、リンパ球浸潤及び腐肉の形成として明らかであった。
【0293】
実施例4
GVHD関連死亡率に対するNKT細胞の養子免疫伝達の効果
4.5×106個のNKT細胞の養子免疫伝達は、生存率を有意に改善した(28日目で85%の生存率)。これとは対照的に、NKT細胞の枯渇は、高い死亡率を導いた(14日目で100%の死亡率)。移植されたNKT細胞の数との直接的相関が指摘された(4.5×106個のNKT細胞の移植で最大の効果)。これらの結果は図8に示されている。
【0294】
実施例5
末梢寛容誘発としての肝内CD8リンパ球トラッピングに対するNKT細胞の養子免疫伝達の効果
寛容誘発は、NKT細胞枯渇されたマウス(p<0.05)と比べた4.5×106個のNKT細胞の移植を受けたマウスにおける肝内CD4/CD8比の16分の1減少と同時の末梢CD4/CD8比の2.26倍増加によって明示されるCD8リンパ球の肝内トラッピングと結びつけられた。これらの結果は図9及び図10の中に示されている。
【0295】
実施例6
血清サイトカインに対するNKT細胞の養子免疫伝達の効果
血清IL−12レベルは、NKT細胞枯渇された動物(p<0.05)と比べて、4.5×106個のNKT細胞の移植を受けた寛容化されたマウスにおいて、有意に低く(52pg/ml対735pg/ml)、血清IL−10レベルは有意に高い(112pg/ml対50pg/ml)ものであった。グループ間の血清IFNγ及びTNFαレベルの有意な差異は全く存在しなかった。これらの結果は図11及び図12で描かれている。
【0296】
結論
4.5×106個のNKT細胞の養子免疫伝達は、GVHDに関係する肝臓、腸及び皮膚の傷害を有意に緩和した。これとは対照的に、NKT細胞の枯渇は、重症のGVHD関連多器官傷害を導いた。
【0297】
少数の調節NKT細胞の移植は、移植片宿主寛容の発達を容易にすることによって、GVHD関係の肝臓、腸及び皮膚損傷の改善を導く。この効果は、Th2型免疫応答に向かってのエフェクタ細胞サブセット及び血清サイトカインの変調と結びつけられた。肝臓は、リンパ球トラッピングを介した寛容誘発に重要な役割を果たす。NKT細胞の移植は、GVHDに対する新規の治療措置として期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0298】
図面の簡単な説明
【図1A−1B】実験的結腸炎における腸粘膜の組織学的評価に対する寛容化の効果
【図1A】寛容化されていないマウスの遠位結腸組織(最後の10cm)由来のパラフィン切片を示す。
【図1B】寛容化されたマウスの遠位結腸組織(最後の10cm)由来のパラフィン切片を示す。 切片はヘマトキシリン−エオシンで染色された。マウス由来のCEPの給餌は、炎症応答及び粘膜損傷の著しい減少(グループB、図1B)により明示される実験的結腸炎の著しい緩和を導いた。これとは対照的に、BSAの給餌を受けた寛容化されていないマウス内(グループA、図1A)では、重症の結腸炎がみられた。
【図2】NK1.1+リンパ球は、寛容されたマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を増大させる。 全てのグループ内のマウスから脾細胞及び肝臓関連リンパ球(LAL)(2.5×106個の脾細胞と0.5×106のLAL)を収獲し、CEP及びAPCの存在下で72時間培養した。以下のヒストグラム内で要約されているフローサイトメトリ分析は、経口寛容誘発の後のNK1.1−LAL枯渇が、NK1.1枯渇されていない寛容化されたマウス(グループE、白色棒)と比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた(グループB、黒色棒)ということを示した。対照NK1.1−枯渇されたグループ(グループF、黒色棒)は、NK1.1枯渇されてないグループ(グループC、白色棒)に比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比の減少を示した。略号:EXP.GR.=実験グループ、rat.=比、CEP=結腸炎抽出タンパク質、n−dep.=枯渇されていない、NK1.1−dep.(NK1.1−枯渇されている)、cont.=対照
【図3】NK1.1+リンパ球は、実験的結腸炎を有する寛容化されていないマウスにおけるCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた。 寛容化されたグループとは対照的に、NK1.1枯渇は、実験的結腸炎を有する寛容化されていないマウス(N−CEP)において反対の効果を有していた。CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比は、NK1.1枯渇されておらず寛容化されていないグループ(グループA、白色棒)と比べて、NK1.1枯渇され寛容化されていないグループ(グループD、黒色棒)において増大した。略号:EXP.GR.=実験グループ、rat.=比、CEP=結腸炎抽出タンパク質、n−dep.=枯渇されていない、NK1.1−dep.(NK1.1−枯渇されている)、cont.=対照
【図4】異なる実験グループからの単離済みリンパ球上でのIL4及びIFNγの発現 該図は、IL4及びIFNγ発現の判定のためのフローサイトメトリ分析の代表的結果を示す。それぞれ、グループB及びEからの寛容化されたNK1.1枯渇されていない及びされているマウス、及びグループA及びDからの寛容化されていないNK1.1枯渇されている及びされていないマウスからの単離済みリンパ球内のIL4及びIFNγの発現。5×104個の小さいリンパ球のゲーティングの後のドットプロットとしてデータが表示されている。ドットプロットの下の数字は、染色済み細胞を表わす。 異なる実験グループがB、E、A及びDで表わされている。略号:EXP.GR.=実験グループ。
【図5】実験的結腸炎をもつ寛容化された及びされていないマウスにおけるCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比に対するインビトロ抗原の暴露の効果 CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比に対する疾病標的抗原の効果の評価のため、全てのグループ(B、E、A、D、C、F)のマウスから脾細胞及び肝臓関連リンパ球(2.5×106個の脾細胞及び0.5×106個のLAL)を収獲し、ConA(コンカナバリン−A)の存在下でかつCEP及びAPCの不在下(白色棒)で12時間培養した。フローサイトメトリ分析は、CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比が、グループB及びE内及び対照グループC及びFの寛容化されたマウスにおいて有意に減少し、グループA及びD内の寛容化されていない(n−CEP)マウスにおいて有意に増大することを示した。 抗原の不在下でのNK1.1枯渇の効果の評価は、抗原の存在下で記述されたものと類似の効果を示した(黒色棒)。グループB内の寛容化されたマウスから収獲されたリンパ球は、寛容化されたグループE内のNK1.1枯渇されたマウスと比べて有意に高いCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を明らかにした。これとは対照的に、NK1.1枯渇は、疾病標的抗原の不在下でグループA及びDからの寛容化されていないマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比の増加を誘発した。略号:EXP.GR.=実験グループ、rat.=比、CEP=結腸炎抽出タンパク質、n−CEP=寛容化されていない。
【図6】異なる実験グループにおけるIL4及びIFNγレベル。 両方のトリプリケートセットから上清流体を収集し、全ての寛容化された及びされていないグループ(異なるグループがA、B、C、D、E、Fとして表わされている)からの全てのマウスについて、サイトカインレベルを測定した。「サンドイッチ」ELISAにより、IL4及びIFNγレベルを測定した。寛容化されたマウスは、Th1からTh2までの免疫応答サイトカイン分泌のシフトを明示した。これらのマウス(グループB)は、IL4レベルの増加及びIFNγレベルの減少を明示した。これとは対照的に、寛容化されていないグループ(グループA、E及びF)からのマウスは高いIFNγ及び低いIL4レベルを示した。略号:EXP.GR.=実験グループ。
【図7】IL12レベルに対するNK1.1枯渇の効果 両方のトリプリケートセットから上清流体を収集し、全ての寛容化された及びされていないグループ(異なるグループがA、B、C、D、E、Fとして表わされている)からの全てのマウスについて、サイトカインレベルを測定した。NK1.1枯渇は、CEPの給餌を受けたグループ(それぞれグループE及びB)内のIL12レベルの増加を導くがCEPの給餌を受けていないグループ(グループA及びD)においては反対の効果を有していた。略号:EXP.GR.=実験グループ。
【図8A−8B】実験的結腸炎における腸粘膜の組織学的評価に対する寛容化の効果
【図8A】寛容化されていないマウスの遠位結腸組織(最後の10cm)からのパラフィン切片を示す。
【図8B】寛容化されたマウスの遠位結腸組織(最後の10cm)からのパラフィン切片を示す。 切片はヘマトキシリン−エオシンで染色された。マウス由来のCEPの給餌は、炎症応答及び粘膜損傷の著しい減少(グループH、図8B)により明示される実験的結腸炎の著しい緩和を導いた。これとは対照的に、BSAの給餌を受けた寛容化されていないマウス内(グループG、図8A)では、重症の結腸炎がみられた。
【図9】NK1.1+リンパ球は、寛容化されたマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を増大させる。 全てのグループ内のマウスから脾細胞及び肝臓関連リンパ球(LAL)(2.5×106個の脾細胞と0.5×106のLAL)を収獲し、CEP及びAPCの存在下で72時間培養した。異なる実験グループはG’、H’、I’、J’、K’及びL’で表されている。フローサイトメトリ分析は、経口寛容誘発の後のNK1.1−LAL枯渇が、NK1.1枯渇されていない寛容化されたマウス(グループK’)と比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた(グループH’)ということを示した。対照NK1.1−枯渇されたグループ(グループL’)は、NK1.1枯渇されてないグループ(グループI’)に比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比の減少を示した。NK1.1+リンパ球は、実験的結腸炎を有する寛容化されていないマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた。寛容化されたグループとは対照的に、NK1.1枯渇は、実験的結腸炎をもつ寛容化されていないマウスにおいて反対の効果を示した。CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比は、NK1.1枯渇されず寛容化されていないグループ(グループG’)に比べてNK1.1枯渇され寛容化されていないグループ(グループJ’)において増大した。略号:EXP.GR.=実験グループ、rat=比。
【図10】異なる実験グループからの単離済みリンパ球上でのIL4及びIFNγの発現 該図は、IL4及びIFNγ発現の判定のためのフローサイトメトリ分析の代表的結果を示す。寛容化されたNK1.1枯渇されていない及びされているマウス、及び寛容化されていないNK1.1枯渇されていない及び枯渇されているマウスからの単離済みリンパ球内のIL4及びIFNγの発現。5×104個の小さいリンパ球のゲーティングの後のドットプロットとしてデータが表示されている。ドットプロットの下の数字は、染色済み細胞のパーセンテージを表わす。代表的な結果が示されている。実験グループ(EXR.GR) 異なる実験グループがG、H、I及びJで表わされている。略号:EXP.GR.=実験グループ。
【図11】NK1.1による肝臓リンパ球細胞毒性 これらの研究においては、100:1〜10:1のE:T比で標的細胞としてYAC−1細胞を使用した。寛容化されておらずNK1.1枯渇されていないマウス(グループH’)からのレシピエントはその他のグループと比べてほぼ全く溶解を示さなかった。グループG’内の寛容化されずNK1.1枯渇されたマウスからのレシピエントは、それぞれグループH’よりも高い溶解を示した。グループI’からのNK1.1枯渇されCEP給餌を受けたマウスからのレシピエントは、グループJ’内のNK1.1枯渇されていないマウスに比べ低い溶解を示した。対照グループからのレシピエントは、それぞれグループL’と比べたグループK’内のマウスについて、23%対22.47%の細胞毒性を有していた。異なる実験グループは、G’、H’、I’、J’、K’及びL’により表わされている。略号:EXP.GR.=実験グループ
【図12】異なる実験グループにおけるサイトカインレベル。 両方のトリプリケートセットから上清流体を収集し、全ての寛容化された及びされていないグループからの全てのマウスについて、サイトカインレベルを測定した。「サンドイッチ」ELISAにより、IL4、IL10及びIFNγレベルを測定した。寛容化されたマウスは、Th1からTh2までの免疫応答サイトカイン分泌のシフトを明示した。これらのマウス(グループH)は、IL4、IL10レベルの増加及びIFNγレベルの減少を明示した。これとは対照的に、寛容化されていないグループ(グループG、J及びK)及び対照グループIからのマウスは高いIFNγ及び低いIL10レベルを示した。グループH内の寛容化されたマウスから収獲されたリンパ球は、寛容化されたグループK内のNK1.1枯渇されたマウスと比べて有意に高いIL4、IL10及び低いIFNγレベルを明らかにした。これとは対照的に、NK1.1枯渇は、抗原の不在下でグループG及びJからの寛容化されていないマウスにおいてIFNγレベルの増加及びIL4、IL10レベルの減少を誘発した。異なる実験グループは、G、H、J及びKにより表わされている。略号:EXP.GR.=実験グループ。IL4及びIL10は、黒色棒でIFNγは白色棒で表わされている。
【図13】グルコース寛容時間曲線
【図14a】MRI脂肪含有量(IP−OP)
【図14b】MRISIインデックス(IP−OP/IP)
【図15a】養子免疫伝達グループ内のCon−Aに応答したASTレベル
【図15b】養子免疫伝達グループ内のCon−Aレベルに応答したALT
【図16】6マウスグループについての平均グルコース寛容曲線
【図17a】平均MRI肝脂肪含有量(SIインデックス)野生型マウス
【図17b】平均MRI肝脂肪含有量(SIインデックス)−ob/obマウス
【図18a】野生型マウスにおけるASTレベル
【図18b】ob/obマウスにおけるASTレベル
【図19】ワクチン接種(Miu/ml)HBVワクチン接種(Miu/ml)後の平均抗−HBS力価
【図20】生存率に対するNKT細胞の移植の効果
【図21】末梢CD4+/CD8+比に対するNKT細胞の移植の効果
【図22】肝臓CD4+/CD8+比に対するNKT細胞の移植の効果
【図23】血清IL−12(pg/ml)に対するNKT細胞の移植の効果
【図24】血清IL−10(pg/ml)に対するNKT細胞の移植の効果
【技術分野】
【0001】
関連特許出願に対するリファレンス
本出願は、2001年12月24日付けで出願された国際特許出願公開第PCT/IL01/01197号明細書の371である2003年6月25日付けで出願されたヤロン・イラン(Yaron Ilan)ら、による「教育済みNKT細胞及び免疫関係の障害の治療におけるその使用」という題の米国特許出願の部分継続出願である。上述の特許出願の内容は、その全体が本明細書に参照として援用されている。
【0002】
発明の分野
本発明は、哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療における治療用方法、組成物及びその使用の分野に関する。より特定的には、該発明の方法及び組成物は、抗炎症性又は炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってのTh1/Th2細胞バランスの変調を結果としてもたらす対象のNKT細胞集団の操作及び免疫関係の障害の治療におけるそれらの使用に向けられている。
【0003】
背景
本出願内で引用又は識別されている全ての特許、特許出願、特許公報、科学論文などは、本発明が関係する技術の現状をより完全に記述する目的でその全体が本明細書に参照として援用されるものである。
【背景技術】
【0004】
免疫系は、潜在的に有害な作用物質に対する防御の主要な部分を担っている。しかしながら、この系は、自己抗原にも対抗し、炎症性腸疾患といった自己免疫障害をもたらす可能性がある。これらの障害は、炎症誘発性(Th1)及び抗炎症性(Th2)サイトカインの間のバランス不全として感知される。
【0005】
免疫応答の克服には、望ましくない副作用を導く可能性の高い全身的免疫抑制が関与する傾向がある。かくして、抗原特異的免疫抑制の誘発のための代替的戦略に対する必要性が存在する。免疫寛容は、2つのタイプの機序によって誘発され得る。第1の「劣性」と呼ばれるものには、抗原に応答する能力をもつ圧倒的多数の免疫細胞のクローン・アネルギー又は排除が関与する[マッツィンガー(Matzinger)、P.ら、Ann.Rev.Immunol.12:991〜1045頁(1994年):キン(Qin)、S.ら、Science 259:974〜977頁(1993年)]。代替的には、「優性」タイプの寛容においては、負の免疫調節リンパ球が寛容化手順の結果として現われ得る。クローン排除又はエネルギーとは対照的に、これらのリンパ球が少しだけ存在する場合、それは、はるかに多いエフェクタ細胞をダウンレギュレートし得る。
【0006】
炎症性腸疾患の病因論における免疫系の役割
炎症性腸疾患(IBD)は、Th1−炎症誘発性及びTh2−抗炎症性亜型の免疫応答の間のバランス不全の結果であるものとして感知され得る一般的な胃腸障害である[ストローバ(Strober)、W.ら、Immunol Today 18:61〜64頁、(1997年);ノイラート(Neurath)、M.ら、J.Exp.Med.183:2605〜2615頁(1996年)]。
【0007】
IBDに随伴する腸外徴候がいくつか存在する。例えば、自己免疫現象、つまり疾病を緩和するのに用いられるグルココルチユイド、アザチオプリン、メトトレキサート及びサイクロスポリンといった標的器官の損傷及び免疫抑制剤において1つの役割をもつ免疫複合体の形成がある[ポドルスキー(Podolsky)、D.K.ら、New Engl.J.Med.325:928〜935頁(1991年);ストローバ、W.ら、In Clinical Immunology中、Mosby、St.Louis.R.R.Rich編、1401〜14281〜2(1995年)]。IBD患者は、結腸細胞の構成要素に対する抗体及び複数の異なる細菌抗原を有している。これらの抗原は、上皮損傷の結果として免疫系に進入可能となる[ヒビ(Hibi)、S.ら、Clin.Exp.Immunol.54:63〜168頁(1983年);ダス(Das)、K.M.ら、Gastroenterology 98:464〜69頁(1990年)]。同時代アネルギー及び応答性低下を含めたT細胞媒介免疫の異常は同様に、これらの患者において記述されてきた[チバ(Chiba)、M.ら、Gut、22:177〜182頁(1981頁);レードラ(Raedler)、A.ら、Clin.Exp.Immunol.60:518〜526頁(1985年)]。さらに、抗原刺激を示唆するT細胞サブセット内の変化及び粘膜IgG細胞の濃度増加を含めた、粘膜細胞媒介免疫の変化が同定された。[ダスグプタ(Dasgupta)、A.ら、Gut35:1712〜17頁(1994年);タカハシ、Fら、J.Clin.Invest.76:311〜318頁(1985年)]。感染性免疫又は毒性損傷の後の標的抗原の暴露は、粘膜免疫細胞の活性化を導き、その結果、サイトカインが粘膜炎症性応答を導くことになる[ノイラート、M.ら、J.Exp.Med.183:2605〜2616頁(1996年)]。IFNγといった炎症誘発性サイトカインの分泌は、粘膜透過性の増大に貢献し、IBDの動物モデルにおいて記述されてきた[ストローバ、W.ら、Immunol.Today18:61〜64頁(1997年)]。同様にして、IL1及びIL6を媒介とするコラーゲン合成の増大が、これらの動物で検出できる[ストローバ、W.ら、上掲書]。Balb/CマウスからCB−17scidマウスへの正常なCD45RBTの養子免疫伝達により、Th1−媒介型肉芽腫性大腸炎モデルが確立されてきた。CD45RBからのCD4細胞は、CD45RB集団と共に注射された場合、疾病を予防することが示された。この予防は、TGFβ1に対する抗体の添加により逆転させることができた[サドラック(Sadlack)、B.ら、Cell75:253〜261頁(1993年);パウリ(Powrie)、F.ら、Immunity1:553〜562頁(1994年)]。
【0008】
炎症性腸疾患におけるTh1/Th2のバランス不全
CD4及びCD8の両方のリンパ球が共に、IL−2及びIFNγを産生するTh1細胞か又はIL−4及びIL−10を産生するTh2細胞のいずれかとして型別可能である。免疫系が外来性及び自己抗原に応答する方法は、2つの亜型の応答間のバランスの結果である[ウェイナー(Weiner)、H.L.ら、Immunol.Today 18:335〜343頁アドリーニ(Adorini)、L.ら、Immunol.Today18:209〜211頁(1997年);ラバニ(Rabbani)E.ら、欧州特許出願公開第1149586A1号明細書(2001年4月27日出願)、本明細書に参照として援用]。Th1型の応答は、IBDといった複数の自己免疫及び慢性炎症性障害の病因に関与している。[アドリーニ(Adorini)、L.ら(1997年)上掲書;ミゾグチ(Mizoguchi)、A.ら、J.Exp.Med.183:847〜856頁(1996年)]。かくして、ヒトにおける実験的結腸炎及びIBDは、炎症誘発性Th1型及び抗炎症性Th2型サイトカインの間のバランス不全として感知できる。最近、動物及びヒトの両方において、IL10といった抗炎症性サイトカインがTh1媒介型サイトカインの炎症誘発性効果をダウンレギュレートしかくして免疫介在性障害を緩和することができる、ということが示されてきた[ミゾグチ、A.ら、(1996年)同上;マドセン(Madsen)、K.L.ら、Gastroenterology113:151〜159頁(1997年);ヴァン・デバンター・サンダー(Van Deventer Sander)、J.ら、Gastroenterology113:383〜389頁(1997年)]。
【0009】
免疫介在性障害の改善のための経口寛容誘発(経口免疫調節)
経口寛容(経口免疫調節)は、抗原特異的末梢免疫低応答性の誘発のための認知された手順である[ウェイナー(Weiner)、H.L.ら、(1997年)同上;ウェイナー、H.Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:10762〜10765頁(1994年);ロイ・チョードリ(Roy−Chowdury)ら、国際公開第98/37917号パンフレット(1998年2月26日出願)、本明細書に参照として援用]。抗原の経口投与は、動物及びヒトの両方において、コラーゲン誘発された関節炎、ブドウ膜炎、糖尿病及び実験的アレルギー性脳脊髄炎といった複数の自己免疫障害を防止する又は緩和することが示されてきた。[エスビョルン(Esbjorn)、T.ら、Int.Arch.Allergy Immunol.113:219〜223頁(1997年);ヴォン・ヘラース(Von Herrath)、M.G.ら、J.Clin.Inves.98:1324〜1331頁(1996年);ハンコック(Hancock)、W.ら、Am.J.Path.147:1193〜1197頁(1993年);ウェイナー、H.L.ら、Science261:1321〜1324頁(1993年)]。
【0010】
高用量の抗原に対する経腸暴露は、抗原特異的T細胞のクローン不活性化による寛容を誘発し、一方低用量の抗原の補給は、抗原特異的エフェクタ細胞の生成を抑制する調節細胞分泌因子の誘発を導く[ウェイナー、H.L.ら、(1997年)上掲書]。動物及びヒトの両方において、寛容誘発は、IL10、IL4及びTGFβ1といった免疫抑制サイトカインの分泌を導くTh2/Th3型免疫応答と結びつけられる[ウェイナー、H.L.ら、(1997年)上掲書]。多数の密に関係する抗原に対する反応性が関与する傍観者効果が、複数のモデルで経口寛容誘発における1つの役割を果たすことが示された。[ウェイナー、H.L.ら、(1997年)上掲書;カルバルホ(Carvalho)、B、A.ら、Scand J.Immunol.45:276〜281頁(1997年)]。調節細胞は、補給された抗原によりトリガーされた後に非抗原特異的サイトカインを分泌することから、これらは、補給済み抗原が局在化されている徴環境内で炎症を抑制することができる。該手順は、免疫寛容誘発用の方法として充分確立されているが、正確な機序はまだ発見されていない。1つの抗原がプロセッシング及び/又は吸収されるべきか否か及び寛容誘発にとってタンパク質変性が必要であるか否かについては、相反する結果が発表されている[カルバルホ、B.A.ら、(1997年)上掲書:ブラナス(Blanas)、E.ら、Science274:1707〜1709頁(1996年)]。
【0011】
抗原提示には、腸内へ全タンパク質を提示することが必要とされ得る。しかしながら、タンパク質のプロセッシング及び吸収も同様に、寛容誘発又は消化管後機序を通してその維持に関与する可能性がある[(カルバルホ、B.A.ら(1997年))上掲書]。消化管壁上皮細胞、パイエル板、腸間膜リンパ節又は腸外細胞が、免疫寛容誘発を媒介するものとして示唆されてきた[ストローバ、W.ら(1997年)上掲書]。しかしながら、抗原の経口投与は同様に、エピトープ特異的免疫も惹起することができる[カルバルホ、B.A.ら、(1997年)上掲書;ブラナス、E.ら、(1996年)上掲書」。実際、経口寛容化の後に現われる免疫抑制サイトカイン分泌細胞(例えばTGFβを分泌するTh3細胞)と並んで、炎症誘発性サイトカイン(例えばIFNγ)を分泌する第2の細胞集団を、消化管壁、主としてパイエル板の中に発見できる[ウェイナー、H.L.ら、(1997年)上掲書」。経口投与された抗原は、全身性TGFβ及びIL−4媒介型抗炎症性応答と共に消化管粘膜内でIFNγ媒介型の局所的炎症誘発性応答を惹起する。経口寛容化された動物由来の脾細胞とは対照的に、消化管抽出されたリンパ球は、実験未使用の動物内に寛容を伝達することができない[ストローバ、W.ら、(1997年)上掲書;ウェイナー、H.L.ら(1997年)上掲書」。かくして、経口寛容の誘発には、Th1(及び炎症誘発性サイトカインの分泌)からTh2(及び抗炎症性サイトカインの分泌)免疫応答へのシフトを伴って、免疫原性及び寛容原性細胞集団の間のバランスが必要である。
【0012】
その他の研究者及び本発明者らにより、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)で処置されたマウスを利用するモデル系内で実験的結腸炎を防止又は緩和するのに経口寛容を使用できるということが示されてきた[マドセン(Madsen)、K.L.ら、Gastroenterology 113:151〜159頁(1997年);トロップ(Trop)、S.ら、Hepatology 27:746〜755頁(1999年)]。結腸炎抽出されたタンパク質に対する経口寛容の誘発は、抗結腸免疫応答をダウンレギュレートし、かくして、免疫介在性結腸炎を改善する。サプレッサリンパ球は、炎症誘発性から抗炎症性への免疫応答のシフトの誘発により、寛容を媒介する[マドセン、K.L.ら、(1997年)上掲書、;トロップ、S.ら、上掲書]。
【0013】
免疫寛容誘発における肝臓の役目
肝臓は、長い間免疫調節機能に関与することが示唆されてきた。それは、体内で最大の網内系器官であり、その細胞の複数の亜集団が抗原の提示及び/又はプロセッシングに関与している[カルリ(Callery)、M.P.ら、J.Surg.Res.46:391〜394頁(1989年);ナカノ(Nakano)、Y.ら、Surgery 111:668〜676頁(1992年);ユー(Yu)、S.Y.ら、Surgery 116:229〜234頁(1994年)]。
【0014】
門脈大静脈シャント又はクッパー細胞の遮断は、複数の動物モデルにおいて経口寛容の誘発を妨げた[カルリ、M.P.ら、(1989年)上掲書;ナカノ、Y.ら、(1992年)上掲書;ユー、S.Y.ら、(1994年)上掲書」。腸内細菌叢に対する抗体力価は、門脈大静脈シャントを受けた慢性肝疾患をもつヒトにおいて高くなることが発見された[クリスプ(Crispe)、N.ら、Immun.Today11:236〜245頁(1996年);イラン(Ilan)、Y.ら、Gastro114:260頁(1998年)]。ドナー細胞の門脈投与は、同種特異的低応答性を促進することが示されてきた[クリスプ、N.ら、(1996年)上掲書」。かくして、肝臓は、細胞又はペプチドの特異的亜集団の第1の通過クリアランスを通した末梢免疫寛容誘発のために必要であり得る。
【0015】
当該例は、マウス肝臓抽出の連続的給餌による経口免疫調節の誘発は、ob/obマウスグルコース不寛容を改善し、その肝脂肪含有量を低減させる一方、コンカナバリン−Aにより媒介される肝損傷を受けやすくする、ということを示している。この機序には、Th1/Th2シフト応答が関与している。
【0016】
肝臓関連リンパ球
成人の肝臓は、その免疫変調機能に関与する細胞の複数の亜集団を含有している。クッパー細胞は、門脈循環を通って肝臓に入る抗原に対する第1線の防御において重要であることが発見された。抗原活性化されたクッパー細胞は、抗原提示、食作用を有し、サイトカインの分泌を介して殺傷特性を示した。これらの細胞は同様に走化性及びリンパ球凝集をも誘発する[クリスプ.N.ら、(1996年)上掲書」。さらに、成人肝臓は、多能性幹細胞を含有し、胸腺及び胸腺外T細胞、顆粒球及び赤血球系統細胞を含めた多数の細胞系統を発生させる[クリスプ.N.ら、(1996年)上掲書」。実際、T細胞は、成人肝臓内で胸腺外で分化できる[コリンズ(Collins)C.ら、Eur.J.Immunol.26:3114〜3118頁(1996年)]。
【0017】
肝臓は、高TCR(TCRhigh)を伴う胸腺由来のT細胞及び中間TCR(TCRint)を伴う胸腺外T細胞から成る2つのT細胞集団のための遭遇場所であると思われる。主流T細胞としても知られている第1のT細胞セットは、CD4+及びCD8+細胞の二流の集団の混合物及び、NK細胞マーカー又はIL2Rβを発現せずかつ循環するT細胞プールに密に連結しているCD−CD8−ダブルネガティブ(DN)細胞の大きな集団を含有する[クリスプ、N.ら、(1996年)上掲書」。DN細胞の多くは、B細胞マーカーB220を発現し、その誘発は肝臓へのアポトーシスするT細胞のトラフィックを導く[クリスプ.N.ら、(1996年)上掲書;Ilan、Y.ら、(1998年)上掲書;コリンズ、C.ら、(1996年)上掲書;ガルシア・バルシナ(Garcia−Barcina)、M.ら、Immuno l82:95〜8頁(1994年);マクドナルド(MacDonald)R.H.ら、J.Exp.Med.182:633〜638頁(1995年)]。代替的T細胞として知られる肝臓T細胞の第2のサブセットは、CD4+、又はCD4−8−及びCD16−、高速(express)αβTCRint及び、NKR−P1、Ly−49A及びIL2レセプタβ−鎖を含めた既知のNKレセプタである。[ガルシア・バルシナ、M.ら、(1994年)上掲書、マクドナルド、R.H.ら、(1995年)上掲書、;バンドラック(Bendelac)、A.ら、Curr.Opin.in Immunol.7:367〜374頁(1995年)]。肝臓IL2Rβ+TCRint細胞の大部分はNK1.1+である。これらの細胞は、末梢リンパ様器官を通って循環するプール内で稀である。しかしながらこれらの細胞の小さな集団は、胸腺髄質、脾臓及び骨髄の中に存在する。TCRint、IL2Rβ+、NK1.1+細胞は、従来の胸腺経路を通ってではなく原始経路、胸腺及び胸腺外代替経路を通って分化し、胸腺摘出された動物の肝臓内で発達し得る[マクドナルド、R.H.ら、(1995年)上掲書;ベンドラック、A.ら、(1995年)上掲書;タカハシ、M.ら、J.Immunol.156:2436〜2442頁(1996年);ドハティ(Doherty)、D.G.ら、Hepatology 26:445A頁(1997年)]。それらの機能は、従来のT細胞のいずれかのサブセットのものの特徴ではないが、細胞毒性及びB細胞ヘルプの要素を含む。一次活性化の時点で、これらはTh1及びTh2の両方に由来する多様なサイトカインを放出する。[マクドナルド、R.H.ら、(1995年)上掲書;ベンドラック、A.ら、(1995年)上掲書;タカハシ、M.ら、(1996年)上掲書;ドハティ、D.G.ら、(1997年)上掲書」。これらは同様にIL12に応答し、IFNγを産生し、これらの両方共がTh1サイトカインであり、抗腫瘍及び抗菌エフェクタ細胞を誘発する。[タカハシ、M.ら、(1996年)上掲書;ドハティ、D.G.ら、(1997年)上掲書」。さらに肝臓内でこれらの細胞はIL12及びIFNαに応答して増殖し、末梢欠失中、主流T細胞に対する致死ヒットに積極的に関与し得る[タカハシ、M.ら、(1996年)上掲書;ドハティ、D.G.ら、(1997年)上掲書」。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的の1つは、末梢免疫寛容誘発、脾細胞の養子免疫伝達を介した炎症及び/又は寛容の誘発、特定的にはリンパ球の免疫原性及び寛容原性サブセットの間のバランスを保つ上でのNK1.1+リンパ球の役割を判定することにある。本研究の結果は、初めて、NK1.1+リンパ球が免疫介在性障害において2重の役割を果たし得るということを示している。「寛容化された環境」において、これらは、抗炎症性方向でのTh1/Th2パラダイムの改変を介して免疫低応答性を誘発しかつ/又は維持する。一方、「寛容化されていない環境」においては、これらは炎症誘発性パラダイムを支援する。該発明のこの目的及びその他の目的は、記述が進むにつれてさらに明白になることだろう。
【0019】
哺乳類の対象における免疫関連又は媒介型の障害又は疾患、感染性疾患、代謝疾患及び異なる型の癌の治療のためにさまざまな方法が記述されてきた。これらの方法の1つには、対象中の免疫応答の変調が関与している。これには、選択的免疫ダウンレギュレーション(SIDR)と呼ばれる新しくかつ予想外の免疫変調を産生し適用するための手順又は手順の組合せを用いた免疫応答系のダウンレギュレーションが含まれる。免疫学的変調は、試薬、手順及びプロセスの導入に応答した対象の免疫系における人工的に誘発された変動である。これらの手順は、1997年2月28日付けの米国特許出願第08/808,629号明細書、2003年3月4日付けの米国特許出願第10/377,628号明細書、2003年3月4日付けの米国特許出願第10/377,603号明細書、1997年2月8日付けの米国特許出願第09/447,704号明細書、2001年5月9日付けの米国特許出願第10/385,440号明細書及び1999年7月16日付けの米国特許出願第09/356,294号明細書の中で詳述されてきた。以上の特許の各々はその全体が本出願の中に参照として援用されており、本発明と併用してさらに使用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の要約
第1の態様では、該発明は、かかる治療を必要とする哺乳類の対象において免疫関連又は免疫介在性の障害を、適切な手段により前記対象のNKT細胞集団を操作することによって治療するための方法において、該NKT細胞集団の前記操作が抗炎症性又は炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってのTh1/Th2細胞バランスの変調を結果としてもたらす治療方法に関する。
【0021】
好ましい実施形態においては、該発明は前記細胞の枯渇によりNKT細胞集団を操作する方法に関する。特定的に好ましい実施形態として、NKT細胞集団の枯渇は、NKT細胞を特異的に認識する抗体を有効成分として含む治療上有効な量の組成物を対象に投与することによって実施され得る。代替的には、NKT細胞集団の枯渇は、NKT細胞を特異的に認識する抗体でコーティングされたビーズを用いてex vivoフェレーシスによって実施され得る。
【0022】
代替的に好ましい実施形態では、該発明は、哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療方法において、抗炎症性又は炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2バランスを変調させる能力を有するような形での前記NKT細胞のex vivo教育によるNKT細胞集団の操作が関与する方法に関する。
【0023】
特定的に好ましい実施形態は、
a. 対象又はもう1つの対象からNKT細胞を得る工程;
b. 結果として得られた教育済みNKT細胞が、抗炎症性又は炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かって前記Th1/Th2細胞バランスを変調させる能力を有するような形で、工程(a)で得られたNKT細胞を、ex vivo教育する工程;及び
c. 工程(b)で得られた教育済みNKT細胞を前記対象に再導入する工程;
を含む、哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための方法に関する。抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってのTh1/Th2細胞バランスの変調は、結果としてIL4及びIL10のいずれか1つ対IFNγの定量比の増大をもたらす。炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってのTh1/Th2細胞バランスの変調は、IL4及びIL10のいずれか1つの対IFNγの定量比の減少を結果としてもたらす。
【0024】
より特定的には、NTK細胞のex vivo教育は、
a. 治療すべき免疫関連又は免疫介在性の障害と結びつけられる抗原又はそれらの任意の組合せ;
b. 同じ免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない患者の又は前記対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c. 少なくとも1つのサイトカイン又は接着分子;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下でこれらの細胞を培養することにより実施可能である。
【0025】
該発明の方法に従ったex vivo教育済みNKT細胞は、治療対象への養子免疫伝達により再導入される。
【0026】
もう1つの好ましい実施形態は、免疫関連又は免疫介在性の障害が炎症性腸疾患(IBD)である、該発明の方法に関する。より特定的には、前記疾病はクローン病であり得る。
【0027】
もう1つの特定的に好ましい実施形態においては、該発明の方法は、黒色腫、癌腫、リンパ腫及び肉腫から成る群から選択された悪性腫瘍の治療用である。この目的で、NKT細胞は、有利な抗腫瘍免疫を増大させるべく炎症誘発性方向に免疫応答を増強させる方向で操作され得る。
【0028】
好ましい実施形態は、免疫関連又は免疫介在性の障害が非アルコール性脂肪性肝炎である該発明の方法に関する。
【0029】
もう1つの好ましい実施形態では、該発明の方法は、肥満の治療用である。
【0030】
該発明のもう1つの好ましい実施形態は、真性糖尿病又は耐糖能異常の治療用の方法である。
【0031】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、該発明の方法は、移植片対宿主病の治療用である。
【0032】
もう1つの好ましい実施形態は、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は媒介型の障害又は疾患の治療用の該発明の方法に関する。
【0033】
好ましい実施形態は、免疫関連又は媒介型の障害又は疾患の治療のための経口寛容誘発又は経口免疫調節を通した免疫変調方法に関する。
【0034】
好ましい実施形態は、非アルコール性脂肪性肝炎の治療用の経口寛容誘発又は経口免疫調節を通した免疫変調方法に関する。
【0035】
もう1つの好ましい実施形態は、真性糖尿病又は耐糖能異常の治療用の経口寛容誘発又は経口免調節を通した免疫変調方法に関する。
【0036】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、該発明は、肥満の治療用の経口寛容誘発又は経口免調節を通した免疫変調方法に関する。
【0037】
該発明の方法は任意には、好ましくは経口寛容化により免疫関連又は免疫介在性の障害に対する免疫応答のアップ又はダウンレギュレーションを対象の体内で惹起する工程をさらに含み得る。
【0038】
さらにもう1つの好ましい実施形態は、骨粗鬆症、GVHD、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は媒介型の障害又は疾患の治療のための経口寛容誘発又は経口免疫調節を通した免疫変調の方法に関する。
【0039】
さらにもう1つの特定的に好ましい実施形態では、該発明の方法は、ヒトの患者の治療用である。
【0040】
本発明の第2の態様は、哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための治療用組成物に関する。該発明の組成物は、抗炎症性又は炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させる能力をもつex vivo教育済み自家又は非自家NKT細胞を有効成分として含んでいる。これらの教育済みNKT細胞は、IL4及びIL10のいずれか1つ対IFNγの定量比の増大又は減少を媒介する。該発明の組成物は、任意にはさらに、薬学的に受容可能な担体、希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤を含み得る。
【0041】
好ましい実施形態においては、該発明の治療用組成物内に含まれる教育済みNKT細胞は、
a. 前記免疫関連又は免疫介在性の障害と結びつけられる抗原又はそれらの任意の組合せ;
b. 前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない患者の又は治療すべき対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c. 少なくとも1つのサイトカイン又は接着分子;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下で、該発明の組成物中でのその使用に先立ちex vivoで培養される。
【0042】
好ましい実施形態では、該発明の治療用組成物は、哺乳類の対象、特にヒトにおける腸の感染性疾患の治療、より特定的にはクローン病の治療用である。
【0043】
もう1つの好ましい実施形態では、該発明の治療用組成物は、黒色腫、癌腫、リンパ腫及び肉腫から成る群から選択された悪性腫瘍の治療用である。
【0044】
好ましい実施形態では、該発明の治療用組成物は、非アルコール性脂肪性肝炎の治療用である。
【0045】
もう1つの好ましい実施形態では、該発明は、肥満治療のための治療用組成物に関する。
【0046】
該発明のもう1つの好ましい実施形態は、真性糖尿病又は耐糖能異常治療のための治療用組成物である。
【0047】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、該発明の治療用組成物は、移植片対宿主病の治療のために使用可能である。
【0048】
さらにもう1つの好ましい実施形態では、該発明は、免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための治療用組成物に関する。この組成物は、NKT細胞を特異的に認識する抗体を有効成分として含む。
【0049】
一実施形態においては、該発明の治療用組成物は、クローン病といった腸炎症性疾患の治療のために使用可能である。
【0050】
もう1つの実施形態においては、該発明の治療用組成物は、黒色腫、癌腫、リンパ腫及び肉腫から成る群から選択された悪性腫瘍の治療のために使用することができる。この目的で、NKT細胞は、有利な抗腫瘍免疫を増大させるべく炎症誘発性方向に免疫応答を増強させる方向に操作され得る。
【0051】
もう1つの好ましい実施形態は、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は媒介型の障害又は疾患の治療用の該発明の方法に関する。
【0052】
好ましい実施形態は、免疫関連又は媒介型の障害又は疾患の治療のための治療用組成物の製造における経口抗原の使用に関する。
【0053】
好ましい実施形態は、非アルコール性脂肪性肝炎治療のための治療用組成物の製造における経口抗原の使用に関する。
【0054】
もう1つの好ましい実施形態は、真性糖尿病又は耐糖能異常の治療のための治療用組成物の製造における経口抗原の使用に関する。
【0055】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、該発明は、肥満治療のための治療用組成物の製造における経口抗原の使用に関する。
【0056】
もう1つの好ましい実施形態では、経口抗原は、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は媒介型の障害又は疾患の治療のための治療用組成物の製造において使用される。
【0057】
第3の態様としては、本発明は、免疫関連又は免疫介在性の障害を患う哺乳類の対象の体内で抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2バランスを変調させるための治療用組成物の製造における、教育済みの自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0058】
特定的に好ましい実施形態においては、該発明は哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための治療用組成物の製造においてex vivo教育済みの自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。教育済みNKT細胞は、抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させる能力をもちかくして、IL4とIL10のいずれか1つ対IFNγの定量比の増大を媒介する。
【0059】
1つの特定的に好ましい実施形態においては、該発明は、哺乳類の対象特にヒトの患者の腸炎症性疾患の治療用、特にクローン病の治療用の治療用組成物の製造におけるex vivo教育済みの自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0060】
もう1つの特定的に好ましい実施形態においては、該発明は、悪性腫瘍の治療、より特定的には黒色腫、癌腫、リンパ腫及び肉腫の治療のための治療用組成物の製造におけるex vivo教育済み自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0061】
好ましい実施形態においては、該発明は、非アルコール性脂肪性肝炎の治療のための治療用組成物の製造におけるex vivo教育済み自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0062】
もう1つの好ましい実施形態においては、該発明は、肥満の治療のための治療用組成物の製造におけるex vivo教育済み自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0063】
該発明のもう1つの好ましい実施形態は、真性糖尿病又は耐糖能異常の治療のための治療用組成物の製造におけるex vivo教育済み自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0064】
さらにもう1つの実施形態においては、該発明は、移植片宿主病の治療のための治療用組成物の製造におけるex vivo教育済み自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0065】
もう1つの好ましい実施形態は、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は媒介型の障害又は疾患の治療用の該発明の方法に関する。
【0066】
本発明はさらに、かかる治療を必要としている哺乳類の対象の体内の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療において使用するためのex vivo教育済み自家NKT細胞を提供する。該教育済みNKT細胞は、
a. 治療すべき免疫関連又は免疫介在性の障害と結びつけられる抗原又はそれらの任意の組合せ;
b. 前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない患者の又は前記対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c. 少なくとも1つのサイトカイン又は接着分子;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下でex vivo培養されてきたものである。
【0067】
本態様のもう1つの実施形態においては、該発明は、かかる治療を必要としている哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療におけるex vivo教育済みの自家又は非自家NKT細胞の使用に関する。
【0068】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、本発明は、免疫関連又は免疫介在性の障害を患う哺乳類の対象の中のNKT細胞集団の操作のための治療用組成物の製造における、NKT細胞を特異的に認識する抗体の使用に関する。
【0069】
NKT細胞集団の枯渇は結果として、抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させることになる。
【0070】
1つの特定的に好ましい実施形態においては、該発明は、哺乳類の対象内の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための治療用組成物の製造におけるNKT細胞を特異的に認識する抗体の使用に関する。
【0071】
1つの特定的実施形態においては、免疫関係の障害は、クローン病といった腸の炎症性疾患であり得る。もう1つの特定的実施形態においては、免疫関連又は免疫介在性の障害は、黒色腫、癌種、リンパ腫及び肉腫といった悪性腫瘍であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
発明の詳細な説明
NK1.1T細胞は、サイトカイン分泌を介して抗炎症性及び炎症誘発性リンパ球の間のバランスを保つこと及び/又は殺傷することに関与している可能性があり、又、Tヘルパー細胞の分化の判定に関与する可能性もある[アラセ(Arase)、H.ら、Eur.J.Immunol.23:307〜310頁(1993年);ヨシモト(Yoshimoto)、T.ら、J.Exp.Med.179:1285〜1295頁(1994年);マクドナルド、H.R.ら、J.Exp.Med.182:633〜638頁(1995年);セダー(Seder)、R.A.ら、Annu.Rev.Immuno.12:635〜673頁(1994年);ヨシモト、T.ら、Science 270:1845〜1847頁(1995年)]。NK1.1T細胞活性化について多数のシグナリング経路が同定された。NK1.1+T細胞は安定した形で分極されず、異なるトリガーの時点で、TCR係合がこれらの細胞由来のTh1及びTh2の両方のサイトカインの分泌をトリガーする、と仮定されている。[ベンデラク、A.ら、Annu.Rev.Immunol.15:535〜562頁(1997年);アラセ、H.ら、J.Immunol.151:546頁(1993年);カワムラ、T.ら、J.Immunol.160:16〜19頁(1998年);チェン、H.ら、J.Immonol.159:2240〜2249頁(1997年);アラセ、H.ら、Eur.J.Immunol.23:307〜310頁(1998年);ヨシモト、T.J.Exp.Med.179:1285〜1295頁(1994年);マクドナルド、H.R.J.上掲書、(1995年)]。NK1.1R又はIL12R係合は、Th1分泌パラダイムを選択的に促進し得る[ベンデラク(Bendelac)、ら.(1997年)上掲書;アラセ、H.ら、J.Exp.Med.183:2391〜2396頁(1996年);ハヤカワ(Hayakawa)、T.ら、J.Exp.Med.176:269〜274頁(1992年)]。
【0073】
上述のように、NK1.1+Tリンパ球は、免疫調節において複雑な役割を果たす。本発明に記述された結果は、NK1.1Tリンパ球が、免疫介在性実験的結腸炎を調節する上で2重の役割をもつということを示している。経口寛容誘発の後のNK1.1Tリンパ球の枯渇は、CD4+細胞により分泌されたIL4対IFNγの定量比を有意に減少させながら、寛容の養子免疫伝達を防げた。これと対照的に、寛容化されていないマウス内のNK1.1Tリンパ球は、結腸炎を緩和し、CD4+により分泌されたIL4とCD4−により分泌されたIFNγの間の定量比を有意に増大させた。
【0074】
第1の態様においては、該発明はかくして、かかる治療を必要としている哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための方法に関する。該発明の方法は、適切な手段により、対象の体内のNKT細胞集団を操作する工程を含む。NKT細胞集団の操作は結果としてTh1/Th2細胞バランスの変調をもたらし、それを抗炎症性又は前抗炎症性サイトカイン産生細胞の産生に向かってシフトさせる。あらゆる免疫変調が免疫応答をダウン又はアップレギュレートし得るということを強調しておくべきである。この変調はさらに該対象の又はもう1つの対象の免疫系の異なる構成要素によって媒介される。かかる構成要素は、例えば細胞免疫反応要素、体液性免疫反応要素及びサイトカインである。
【0075】
好ましい実施形態においては、NKT細胞集団の操作は、この細胞集団を枯渇させることによる。NKT細胞集団の枯渇は、例えば、NKT細胞を特異的に認識する抗体を有効成分として含む治療上有効な量の組成物を対象に投与することによって実施され得る。この特定的方法は、ポリクローナル抗体ならびに好ましくはモノクローナル抗体の使用を包含する。
【0076】
タンパク質に対するポリクローナル抗体の生成は、ウィンレーエンドサンズ(Winley and Sons)Current Protocols in Immunologyの第2章に記述されている。モノクローナル抗体は、ハイブリッド細胞の成長に有利に作用する条件下での不死化されたB細胞との融合により、特にラット又はマウスといった免疫化された動物の脾臓又はリンパ節から取ったB細胞から調製可能である。マウスB細胞の融合のためには、細胞系Ag−8が好まれる。モノクローナル抗体を生成する技術は、上述のCurrent Protocols in Immunologyの第2章といった数多くの論文及び教科書で記述されている。これらの動物の脾臓又はリンパ節細胞は、その中の第2章に記述された通りのモノクローナル抗体の生成のために、タンパク質−免疫化された動物の脾臓又はリンパ節と同じ要領で使用可能である。モノクローナル抗体を生成するのに用いられる技術は、クーラー(Kohler)及びミルスタイン(Milstein)、Nature 256:495〜497頁(1975年)によって、及び米国特許第4,376,110号明細書の中でさらに記述されている。
【0077】
「抗体」という用語は、抗原を結合する能力をもつ例えばFab及びF(ab’)2といった無傷の分子ならびにそのフラグメントの両方を含むように意図されている。Fab及びF(ab’)2フラグメントは、無傷の抗体のFcフラグメントが欠如し、無傷の抗体に比べ、循環からより急速に削減し、より少ない非特異的組織結合を有し得る[ウォール(Wahl)ら、J.Nucl.Med.24:316〜325頁(1983年)]。本発明において有用である抗体のFab及びF(ab’)2及びその他のフラグメントは、無傷抗体分子のために本明細書で開示された方法に従ってNKT細胞の選択的枯渇のために使用可能であり得るということがわかるだろう。かかるフラグメントは標準的に、(Fabフラグメントを産生するための)パパイン又は(F(ab’)2フラグメントを産生するための)ペプシンといった酵素を用いて、タンパク質分解分割により産生される。
【0078】
抗体は、この特定の例においては前記細胞によって発現された細胞外マーカー分子である抗原と特異的に反応しかくして該分子を該抗体に結合させる能力をもつ場合に、或る種の細胞を「特異的に認識する能力を有する」と言われる。
【0079】
「抗原」というのは、その抗原のエピトープに結合する能力をもつ抗体を産生するよう動物を誘発する能力を付加的に有する、抗原により結合される能力をもつ分子又はその一部分である。抗原は、1つ又はそれ以上のエピトープを有する可能性がある。「エピトープ」という用語は、同様に該抗体によって認識され得る、抗体により結合される能力をもつ任意の分子の一部分を意味するように意図されている。エピトープ又は「抗原決定基」は通常、アミノ酸又は糖側鎖といった分子の化学的に活性な表面集団から成り、特異的な3次元構造特性ならびに特異的電荷特性を有する。
【0080】
一変形形態として、NKT細胞集団の枯渇は、NKT細胞を特異的に認識する抗体でコーティングされたビーズを用いてex vivoフェレーシスによって実施可能である。フェレーシス手順では、全血は治療を受ける対象から採血され、血漿、赤血球及び白血球へと直ちに分離される。NKT細胞は、NKT細胞マーカーに対する特異的抗体を用いることによって白色細胞集団から枯渇され、その間その他の血液成分は同時に、治療を受ける対象へと戻るよう移送されている。
【0081】
NK1.1+T細胞上のNK1.1分子は、IL4産生に対してではなくIFNγ産生を導くレセプタとして役立つ[アラセ、H.ら、J.Exp.Med.183:2391〜2396頁(1996年);セダー、R.A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:10188〜92頁(1993年)]。グリコシルポスファチジルイノシトール定着したタンパク質又はLPSリガンドでの刺激時点で、NK1.1T細胞はIFNγ産生細胞となり、Th2細胞分化を阻害し、IgE応答を抑制する[キュイ(Cui、J.ら、J.Exp.Med.190(N−6):783〜792頁(1999年)]。外因性IL2は、NK1.1R−P1架橋の時点でIFNγ産生を増大させる[アラセ、H.ら、(1996年)上掲書」。NK1.1+T細胞は、抗−CD3でのインビボ刺激の時点で迅速に大量のIL4の分泌を介してCD4+T細胞の分化に関与する[ヨシモト、T.ら、Science 270:1845〜7頁(1995年)]。CD1制限されたNK1.1T細胞集団が、抗−CD3で誘発される早期IL4バーストに不可欠である[セダー、R.A.Ann.Rev.Imm.12:635〜673頁(1994年)]。細菌LPSが、クッパー細胞からのIL−12産生を介してNK1.1+細胞を活性化することが示されており、それに続いてIFNγ産生を誘発する[マー(Ma)、X.ら、J.Exp.Med.183:147〜157頁(1996年)]。樹状細胞とNK及び/又はTリンパ球の間の細胞同士の接触の結果、細胞の細胞溶解活性及びIFNγ産生の両方が実質的に増大した[De−Moraes、L.ら、Eur.J.Immunol.28:1507〜1515頁(1998年)]。IL18及び白血球機能関連抗原−1は、肝臓及びその細胞毒性活性においてNK1.1+T細胞の蓄積の中で一つの役割を果たし得る[サカモト(Sakamoto)、Y.ら、J.Immunol.103(5pt2):445〜51頁(1999年)]。NK1.1+T細胞は、それらがT細胞応答に影響を及ぼすもう1つの経路でありうる抗原提示の中で1つの役割を果たしているものとして示唆されてきた[セキ(Seki)、S.ら、J.Immunol.V147:1214〜1221頁(1991年)]。この細胞の亜型は以前に、高レベルの自家死滅を有することが示された[クリプス、N.ら、Immun.Today 11:236〜245頁(1996年);カワムラ、T.ら、J.Immunil.160:16〜19頁(1998年);ドハティ、D.G.ら、J.Hepatology 28:59A(1998年)]。LALによるFas発現は、活性化されたFas発現T細胞の死を結果としてもたらした[ドハティ、D.G.ら、(1998年)上掲書;ジョンソン(Jonsson)J.R.ら、Hepatology 26:269A(1997年);ドハティ、D.G.ら、Hepatology26:445A(1997頁)]。かくして、寛容化された環境の中で、NK1.1T細胞が、そのIL−4媒介型抗炎症性サイトカイン分泌に加えて、感作された炎症誘発性細胞の死滅に関与し、その一方で、寛容化されていない環境内でそれらがそのIFNγ分泌に加えて抗炎症性細胞の死滅に関与しうるということが可能である。IL4及びIL12は両方共がNK1.1T細胞の細胞毒性潜在力を増大させる[ハシモト(Hashimoto)、W.ら、J.Immonol.154:4333〜4340頁(1995年);バラス(Ballas)、Z.K.ら、J.Immonol.150:17〜30頁(1993年)]。炎症の間、免疫応答のバランス化において1つの役割を果たすIL12/IFNγループが存在する[マー、ら.(1996年)上掲書」。IL12は、IFNγ分泌ならびにNK1.1+T細胞の細胞分解活性及び増殖を増大させる[キュイ、ら、(1999年)上掲書;ベンデラク、ら、(1997年)上掲書;アラセ、ら、(1996年)上掲書;デ・モラエス(De−Moraes)、ら、(1998年)上掲書;ノイラート、M.F.ら、J.Exp.Mad.182:1281〜1290頁(1995年)]。
【0082】
従って、代替的な好ましい実施形態として、該発明は、哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための方法に関する。この方法には、Th1/Th2バランスを変調させそれを抗炎症性サイトカイン産生細胞の産生及び前記対象内への教育済み細胞の投与に向けてシフトさせる能力を教育済みNKT細胞が有するような形で、前記細胞のex vivo教育によりNKT細胞集団を操作することが関与している。この変調は、IL4とIL10のうちのいずれか1つ対IFNγの定量比(これは明細書全体を通してCD4+IL4、IL10/CD4+比とも呼ばれる可能性がある)の増大という結果をもたらす。免疫介在性障害においては、該比は、疾病の重症度に従って減少し、回復中に増大し得る。従って、IL4及びIL10のいずれか一方対IFNγの定量比の変化は、治療前レベルに対し関係づけされるべきである。
【0083】
さらにもう1つの好ましい実施形態では、該発明は、哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための方法に関する。この方法には、Th1/Th2バランスを変調させそれを炎症誘発性サイトカイン産生細胞の産生及び前記対象内への教育済み細胞の投与に向けてシフトさせる能力を教育済みNKT細胞が有するような形で、前記NKT細胞のex vivo教育によりNKT細胞集団を操作することが関与している。この変調は、IL4とIL10のうちのいずれか1つ対IFNγの定量比(これは明細書全体を通してCD4+IL4、IL10/CD4+比とも呼ばれる可能性がある)の減少という結果をもたらす。
【0084】
「CD4+IL4」という用語は、CD4+細胞により産生されたIL4を意味し、「CD4+IL10」というのは、CD4+細胞により産生されたIL10を意味し、「CD4+IFNγ」というのは、CD4+細胞により産生されたIFNγを意味する。本発明の中で使用される用語「CD4+IL4 IL10/CD4+IFNγ比」は、好ましくはCD4+細胞により産生されたIL4及びIL10のいずれか1つ対好ましくはCD4+細胞により産生されたIFNγの定量比を意味する。これらのサイトカインの各々の数量を定義するための定量測定が、本明細書で記述された実施例(実験手順)で記述されている通りに実施された。
【0085】
特定的に好ましい実施形態は、哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための方法に関する。この治療方法は、
a. 対象又はもう1つの対象からNKT細胞を得る工程;
b. 結果として得られた教育済みNKT細胞が、抗炎症性又は炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かって前記Th1/Th2細胞バランスを変調させる能力を有するような形で、工程(a)で得られたNKT細胞を、ex vivo教育する工程;及び
c. 工程(b)で得られた教育済みNKT細胞を前記対象に再導入する工程;
を含む。抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってのTh1/Th2バランスの変調は、結果としてIL4及びIL10のいずれか1つ対IFNγの定量比の増大をもたらす。炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってのTh1/Th2バランスの変調は、IL4及びIL10のいずれか1つの対IFNγの定量比の減少を結果としてもたらす。
【0086】
NKT細胞は、骨髄、肝臓、脾臓又は子宮から得ることができるが、上述のサイトフェレーシス方法により末梢血から得ることもできる。
【0087】
より特定的には、NTK細胞のex vivo教育は、
a. 治療すべき免疫関連又は免疫介在性の障害に対して第3者エピトープと結びつけられる少なくとも1つの抗原又はそれらの任意の組合せ;
b. 同じ免疫障害を患う寛容化された又はされていない患者の又は治療すべき対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞又はそれらの任意の組合せ;
c. 少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子、又はその任意の組合せ;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下でこれらの細胞を培養することにより実施可能である。
【0088】
NKT細胞は、上述の方法のいずれかを介してインビボでも教育され得るということがわかるはずである。これらの細胞は、同種エピトープ又は抗原に対する暴露の前又はその後の任意の時点で変調され得る。
【0089】
1つの特定の実施形態においては、NKT細胞のex vivo教育は、治療すべき免疫関連又は免疫介在性の障害と結びつけられる抗原の存在下でこれらの細胞を培養することによって実施され得る。これらの抗原は、前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患うドナー患者から採取した同種抗原、異種抗原、自家抗原、組換えにより調製された抗原又はその任意の組合せであり得る。
【0090】
これらの抗原は、対象に関して未変性又は未変性でない可能性がある。これらは天然でも合成でも、又修飾済み又は未修飾でも、その全体でもフラグメントでもあり得る。フラグメントは、フラグメントとしての合成から又はより大きな疾患単位からフラグメントを作り出すべく消化又はその他の修飾手段によって誘導され得る。かかる抗原は、タンパク質、糖タンパク質、酵素、抗体、組織適合性決定基、リガンド、レセプタ、ホルモン、サイトカイン、細胞膜、細胞構成要素、ウイルス、ウイルス構成要素、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、全細胞、組織又は器官を含むが、これらに制限されるわけではない。抗原は、単一の分子又はさまざまな個々の分子の混合物で構成され得る。抗原は、ウイルス表面、細胞表面、膜、マトリクス、又は複合体という状況の中で又はレセプタ、リガンド、抗体又はその他の任意の結合パートナと接合された状態で自らを提示できる。かかる抗原は、単独で又はさらに摂取、安定性、反応性又はターゲティングに貢献できる作用物質と共に対象に対し導入可能である。
【0091】
重合及び分解、分画及び化学的修飾は全て、潜在的免疫応答に関して特定の抗原の特性を改変する能力を有する。これらの小さなセグメント、フラグメント又はエピトープは単離されているか又は合成されているかのいずれかであり得る。制限的意味のない例として、かかる抗原は、実施例7中でex vivo教育のために使用されるCEPといった、身体抽出物に由来する異なる抗原の組合せであり得る。
【0092】
本発明の方法はさらに、組換えにより調製された抗原を包含する。組換え型抗原の調製には、当該技術分野において周知のものである一般的な分子生物学技術の使用が関与する。かかる技術には例えば、適切な発現ベクターに対する所望の抗原のクローニングが含まれる。
【0093】
本明細書で使用する「ベクター」というのは、宿主のゲノム内へのDNAフラグメントの組込みを可能にするプラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、組込み可能なDNAフラグメント及びその他のビヒクルを包含する。発現ベクターは、標準的には、所望の遺伝子又はそのフラグメント及び適切な宿主細胞中で認識され所望の遺伝子の発現をもたらす操作可能な形で連結された遺伝子制御要素を含有する自己複製するDNA又はRNA構成体である。これらの制御要素は、適切な宿主の内部で発現をもたらす能力をもつ。一般に、該遺伝子制御要素は、原核生物プロモータ系又は真核生物プロモータ発現制御系を内含し得る。これには標準的に、転写プロモータ、転写の開始を制御するための任意のオペレータ、RNA発現のレベルを上昇させるための転写エンハンサ、適切なリボソーム結合部位をコードする配列、RNAスプライス部位、転写及び翻訳を終結する配列などが含まれる。発現ベクターは通常、ベクターが宿主細胞とは独立して複製できるようにする複製起点を含む。
【0094】
ベクターは付加的には、適切な制限部位、ベクター含有細胞の選択のための、抗生物質耐性又はその他のマーカーを含み得る。プラスミドは、同等の機能に役立ち、かつ当該技術分野において既知であるか又は既知となったその他の形のベクターも、本明細書での使用に適している。例えば、本明細書に参照として援用されているパウエルズ(Pouwels)、ら、Cloning Vectors:a Laboratory Manual(1985年及び追補)、エルスヴィア(Elsevier)、N.Y.;及びロドリケス(Rodriques)ら、(eds.)Vectors:a Survey of Molecular Cloning Vectors and their Uses、Buttersworth.Boston、Mass(1988年)を参照のこと。
【0095】
最近になって、肝臓がT細胞破壊の主要な部位であること及び自己免疫マウスIpr/Iprの肝臓内に肝臓から末梢リンパ様組織までの細胞の漏出を伴うこのプロセスの不具合が存在することが提案されてきている[クリプス、N.ら、Immunol.Review、174:47〜62頁(2000年)]。肝臓は、T細胞分化において一定の役割を果たすことが示されてきた。肝臓実質細胞との培養によりCD4−8−TCRβ胸腺欠損ヌード骨髄細胞からCD3−CD4+/CD8+TCRβ細胞及びCD3−4−TCRβ+細胞を生成することができる[マブチ(Mabuchi)、A.ら、J.Leukocyte Biology、63:575〜583頁(1998年)]。従って、もう1つの特定の実施形態においては、肝臓関連細胞の存在下でこれらの細胞を培養することによってNKT細胞のex vivo教育を実施することができる。これらの細胞は、例えばクッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、肝臓関連幹細胞、又はその他の任意の肝臓関連リンパ球であり得る。
【0096】
同じ免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない患者から又は治療を受けている対象からの末梢リンパ球の存在下でNKT細胞を同時培養することも同様に本発明では考慮されている。対象から、それも特にヒトの対象からのリンパ球を得るために、その他の血液成分が同時に患者に戻るよう移行されている間に、多数の白血球を得られるようにする手順であるサイトフェレーシスにより患者から血液を採取する。
【0097】
実施例7に記述されているように、NKT細胞のex vivo教育は、CD4又はCD8細胞とNKT細胞の同時培養により実施される。これらの細胞は好ましくは、寛容化された対象から得られる(経口寛容化としてマウスはCEPを受けた)。
【0098】
もう1つの特定の実施形態においては、IL4、IL10、TGFβ、IFNγ、IL12及びIL15といったサイトカインの存在下で、又はインテグリン、セレクチン及びICAMといった接着分子の存在下で細胞を培養することにより、NKT細胞のex vivo教育を実施し得る。
【0099】
IL12はNK1.1T細胞によるIFNγ誘発の効果をもたらすが、IFNγの方はその調節に貢献し得る[マーら、(1996年)上掲書」。急性GVHDを受けたマウスからの胸腺細胞の細胞溶解活性は、NK1.1+細胞枯渇の後に有意に減少した[ノイラートら、(1995年)上掲書」。急性GVHDを患うマウスの胸腺内のNK1.1+T細胞の増加の前には、胸腺内のIL12産生の過渡的増加が先行していた[ノイラート、ら、(1995年)上掲書」。IL12は急性GVHDを患うマウスの胸腺中でのNK1.1+T細胞の増加を誘発することが報告された[オノエ(Onoe)、Y.ら、Immunology 95:248〜256頁(1998年)]。最近になって、抗−IL12抗体がトランスジェニック動物中の経口寛容を増強することが示され、これは、TGFβ分泌の増加と結びつけられた[マルス(Marth)、T.ら、J.Immunol 157:2348〜2357頁(1996年)]。IL12とTNFαは両方共、実験的結腸炎の免疫病因において重要な役割を有することが示された[ブラガー(Bragger)、M.S.H.ら、Gut 34:1705頁(1998年);パロンキ(Parronchi)、P.ら、Am.J.Pathol.150:823頁(1997年)]。TNBSで誘発された結腸炎を維持する上で単球/マクロファージによるIL12産生が不可欠であり、Th1−媒介型炎症性応答のために必要とされた[クーン(Kuhn)、R.ら、Cell 75:263〜274頁(1993年);セロン(Sellon)、R.K.ら、Immun.66:5224〜5231頁(1998年);ノイラートら(1995年)上掲書;マルス、T.ら、J.Immunol. 157:2348〜2357頁(1996年)]。
【0100】
IL12に対する抗体は、慢性TNBS誘発の結腸炎を抑止した[ノイラートら、(1995年)上掲書」。従って、IL12は、NK1.1+T細胞活性化を介した疾病病因の中で支配的な役割を有する可能性がある。このリンパ球サブセットの活性化がIFNγ分泌を誘発し、その後寛容化されていないマウスにおけるTh1免疫シフトが続くことが可能である[アラセ、ら、(1996年)上掲書;ブライヒャ(Bleicher)、P.A.ら、Science 250:679〜682頁(1990年);キタムラ(Kitamura)、H.ら、J.Exp.Med.189:1121〜1127頁(1999年)]。
【0101】
NK1.1+T細胞は、実験的結腸炎においてIL12の存在下で効能あるIFNγ産生体である[キュイら、(1999年)上掲書;ベンデラクら、(1997年)上掲書;アラセら、(1996年)上掲書;デ・モラエスら、(1998年)上掲書]。本発明の結果は、IL12経路とは独立してNK1.1Rを介して炎症性状態でNK1.1T細胞によりIFNγが分泌されたということを示唆している。これには、IL12Rを介したIL12誘発のIFNγ分泌を伴う、IFNγでトリガーされたIL12の産生が後続していた可能性がある。これとは対照的に、抗炎症性の寛容化された状態では、NK1.1T細胞は、IL4分泌の増加と共に活性化される。実際、寛容化されていないNK1.1で枯渇されたマウスからのリンパ球の養子免疫伝達が、抗炎症性Th2サイトカインをアップレギュレートした。異なる刺激がサイトカイン応答の型を判定することが可能である。
【0102】
かくして、ケモカイン又はその他のメディエータが、NK1.1+T細胞機能及び異なる免疫学的環境下でのそれらのTh1/Th2パラダイムに対する影響の仕方を判定することができる。
【0103】
特定の好ましい実施形態においては、上述のようにex vivo教育されてきたNKT細胞は、治療を受ける対象に再導入され得る。これは、養子免疫伝達と呼ばれてきたプロセスによって実施可能である。この伝達のために使用される特定の教育済みNKT細胞は好ましくは、対象に由来するものであってよい(自家伝達)。同系又は非同系ドナー(非自家伝達)は排除されない。伝達された細胞の貯蔵、成長又は拡張は、インビボ、ex vivo又はインビトロで行なわれた可能性がある。
【0104】
伝達に先立つ細胞のインビトロ貯蔵、成長又は拡張方法は、当業者にとって周知である。伝達で使用するための教育済みNKT細胞がドナーから誘導される場合、これらの細胞は同様に、上述の通りインビボ又はインビトロで貯蔵、成長又は拡張を受けるかもしれない。
【0105】
細胞療法は、例えば静脈内での注射によるか又は本明細書で上述した手段のうちのいずれかによるものであり得る。投与の時点又は様式のいずれも、本発明にとっての制限とはならない。細胞療法投薬計画は、当業者にとって既知のその他の考慮事項の中でも教育済み細胞の考えられる細胞毒性、疾病の病期及び症状などといった要因を考慮に入れて容易に調整可能である。
【0106】
該発明の方法は任意にはさらに、免疫関連又は免疫介在性の障害に対する免疫応答のアップ又はダウンレギュレーションを治療を受ける対象の体内で惹起する工程を含む。ダウンレギュレーション応答は、前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う任意の同種ドナーに由来する構成要素、細胞、組織又は器官、異種供給源、自家供給源、免疫学的等価物又はそれらの任意の組合せを前記対象に投与することによって達成され得る。
【0107】
本発明は、その治療が過渡的なものであれ、又それが長期間にわたり反復的に行なわれるものであれ、かかる治療の有効性を減少させ得る免疫応答の危険性の無い非未変性活性化合物の投与を提供する。本発明はかくして、身体の免疫応答による妨害無くこれらの非未変性活性化合物の有効な生物学的機能を提供する。これは、過渡的又は短期治療のための全身免疫抑制としてそれが使用されている本発明で提供されている通りの免疫変調の使用によって及び/又は、長期治療のための免疫応答の変調により提供される寛容化によって、達成可能である。一部のケースでは、2つ以上のこのような免疫変調投薬計画の組合せが有利であるかもしれない。かかる治療は、非未変性活性化合物の投与の前及び/又は最中に適用できる。
【0108】
特定的に好ましい実施形態においては、前記構成要素、細胞、組織又は器官は、単回用量又は複数回用量で投与され得る。これらの構成要素、細胞、組織又は器官は、単一の投与経路によってか又は少なくとも2つの異なる投与経路によって投与可能である。
【0109】
構成要素は、治療を受けるべき対象に対し直接投与されてもよいし、そうでなければ、化合物のサイズに応じて、投与前に担体にそれらを接合させることが望ましい場合もある。治療用処方を、任意の従来の投薬量処方で投与してよい。処方は標準的に、上述のように、1つ以上のその受容可能な担体と共に、少なくとも1つの活性成分を含んでいる。
【0110】
各々の担体は、その他の成分と相容性があり患者にとって不利でないという意味で薬学的にも生理学的にも受容可能であるべきである。処方には、経口、直腸、経鼻、又は非経口(皮下、筋内、静脈内及び皮内)投与に適したものが含まれる。該処方は、単回投薬量形態で便利な体裁をとることができ、薬局技術で周知のあらゆる方法によって調製され得る。対象の体内で望ましい効果を生み出すのに必要な有効量を含む全てのこのような化合物の投与は、当該技術分野において周知であり、ここでさらに記述される必要はない。
【0111】
特定的には、前記構成要素、細胞、組織又は器官は、経口、静脈内、非経口、経皮、皮下、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所及び直腸投与及びそれらの任意の組合せの中から選択された経路により投与され得る。好ましくは、これらの構成要素、細胞、組織又は器官は、経口寛容化として経口投与される。
【0112】
該発明の方法のもう1つの好ましい実施形態は、炎症性腸疾患(IBD)、特にクローン病の治療に関する。哺乳類、特にヒトの対象におけるクローン病の治療は、
a. 前記対象からNKT細胞を得る工程;
b. 結果としての教育済みNKT細胞が抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させる能力を有するような形で、工程(a)で得られたNKT細胞をex vivo教育する工程;及び
c. 工程(b)で得られた教育済みNKT細胞を前記対象に再導入する工程;
を含む。抗炎症性サイトカイン産生細胞の産生に向かってのTh1/Th2バランスの変調は、結果としてIL4及びIL10のいずれか一方対IFNγの定量比の増加をもたらす。
【0113】
該発明の方法は、特にヒトにおける免疫関連又は免疫介在性の障害の治療用であるが、その他の哺乳動物も内含されている。制限的な意味のないとしては、哺乳類の対象には、サル、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、マウス、ラット及びブタが含まれる。
【0114】
ヒトの患者を治療するためには、ex vivo教育のための該発明の方法は、CD56マーカーを発現するNKT細胞であるNKT細胞の特定の亜型を利用し得る。マウスについては、ex vivo教育のための本発明の方法は、NK1.1+T細胞の特定の亜型を利用することができる。本発明の実施例は、マウスモデルのNK1.1+細胞を用いた実験を開示している。これらの結果が、ヒトの体内でCD56マーカーを発現するNKT細胞にもあてはまるということがわかるはずである。該発明に従ったCD56マーカー発現NKT細胞のex vivo教育は、以下のもののいずれか1つの存在下でこれらの細胞を培養することによるものである;
a. クローン病と結びつけられる少なくとも1つの抗原;これらの抗原には、クローン病を患うドナーからの同種抗原、異種抗原、患者自身からの自家抗原及び組換えにより調製された抗原又はそれらの任意の組合せが含まれるがこれらに制限されるわけではない;
b. クローン病を患う寛容化された又はされていない患者から又は治療を受ける患者からの少なくとも1つの肝臓関連細胞;これらの細胞には、クッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、肝臓関連幹細胞及び任意のその他の肝臓関連リンパ球又はそれらの任意の組合せが含まれるがこれらに制限されるわけではない;
c. IL4、IL10、TGFβ、IFNγ、IL12及びIL15といった少なくとも1つのサイトカイン、又はインテグリン、セレクチン及びICAMといった接着分子又はそれらの任意の組合せ;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)の組合せ。
【0115】
該発明の方法に従った教育済みNKT細胞は、治療を受ける対象に対し養子免疫伝達により再導入される。
【0116】
該発明の方法は、任意には、炎症を起こした腸に対する免疫応答のアップ又はダウンレギュレーションを対象内で惹起する工程をさらに含み得る。ダウンレギュレーション応答の惹起は、クローン病を患う対象の炎症を起こした腸から又は治療を受ける対象の腸から抽出されたタンパク質であり得る構成要素を対象に投与することによって誘発され得る。
【0117】
構成要素は、細胞、組織、器官又はその一部分であり得、これらは、単回用量又は複数回用量で投与され得る。これらの構成要素は、単一の投与経路によって又は少なくとも2つの異なる投与経路によって投与され得る。特定的には、前記構成要素は、経口、静脈内、非経口、経皮、皮下、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所及び直腸投与、又はそれらの任意の組合せにより投与され得る。好ましくは、構成要素は、実施例で記述されている通り、経口寛容化(CEPの経口導入)として経口投与される。
【0118】
もう1つの特定的に好ましい実施形態においては、該発明の方法は、悪性腫瘍の治療用である。癌性状況では、NKT細胞の変調は、炎症誘発性応答を誘発する方向か又は抗腫瘍関連抗原免疫性を増大させる上でのものである。本発明を記述するために本明細書で使用されているように、「癌」、「腫瘍」及び「悪性腫瘍」というのは全て、組織又は器官の過形成に同等に関係する。組織がリンパ系又は免疫系の一部である場合、悪性細胞は、循環する細胞の非充実性腫瘍を含み得る。その他の組織又は器官の悪性腫瘍は、充実性腫瘍を産生し得る。一般に、本発明の方法及び組成物は、非充実性及び充実性腫瘍の治療において使用可能である。
【0119】
本発明で考慮されている通りの悪性腫瘍は、黒色腫、癌腫、リンパ腫及び肉腫から成る群から選択され得る。本発明において有用でありうる悪性腫瘍には、血液悪性腫瘍(白血病、リンパ腫及び骨髄増殖症候群を含む)、再生不良性貧血及び無形成貧血(ウイルス誘発性及び特発性の両方)、骨髄異形成症候群、全ての型の傍腫瘍性症候群(免疫介在性及び特発性の両方)及び充実性腫瘍(肺、肝臓、乳房、結腸、前立腺、消化管、膵臓及びカルポジを含む)が含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0120】
癌を患う哺乳類の対象を治療するためには、該発明の方法により使用される教育済みNKT細胞は、さまざまなやり方で投与可能である。制限的意味のない例としては、教育済み細胞は、静脈内で、又は腹腔内といった充実性腫瘍の場所の近傍にある体腔内に送達されてもよいし、又は充実性腫瘍内又はその近傍に直接注射され得る。
【0121】
さらに又、本発明は、NKT細胞の教育の方法をも提供している。この教育は、以下のいずれかのものの存在下でこれらの細胞を培養することによって実施可能である:
a. 治療すべき免疫関連又は免疫介在性の障害に対して第3者エピトープと結びつけられる少なくとも1つの抗原又はそれらの任意の組合せ;
b. 同じ免疫障害を患う寛容化された又はされていない患者の又は治療すべき対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞又はそれらの任意の組合せ;
c. 少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子、又はその任意の組合せ;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ。
【0122】
該発明の方法は、癌治療において有用であるその他の治療と組合わせることができる。同様に、疾病に起因してすでに免疫抑制されている哺乳類の対象に対しこの治療を施すことができるとも予想されている。ヒト又は動物の患者の免疫状態の評価は、当業者によって容易に判定可能である。
【0123】
第2の態様として、本発明は、哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための治療用組成物に関する。該発明の組成物は、抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2バランスを変調させる能力をもつex vivo教育済み自家NKT細胞を有効成分として含む。これらの教育済み自家NKT細胞は、IL4及びIL10のいずれか一方対IFNγの定量比の増加を媒介する。
【0124】
該発明の組成物はさらに、薬学的に受容可能な担体、添加剤、希釈剤又は賦形剤を含有し得る。適切な担体には、例えばリン酸緩衝生理食塩水及び5%のHSA又はPPFを伴う食塩水が含まれる。その他の適切な担体は当業者にとって周知であり、本発明に対する制限とはならない。同様にして、当業者であれば該発明の薬学組成物の中に含み入れるためのその他の所望の構成要素を容易に選択することができ、かかる構成要素は、本発明の制限条件ではない。
【0125】
1つの好ましい実施形態においては、該発明の治療用組成物の教育済み自家NKT細胞は、以下のもののいずれか1つの存在下でex vivo培養される:
a. 治療すべき免疫関連又は免疫介在性の障害と結びつけられる少なくとも1つの抗原;これらの抗原は、同じ免疫関連又は免疫介在性の障害を患うドナーからの同種抗原、異種抗原、治療を受ける患者からの自家抗原、及び組換えにより調製された抗原又はそれらの任意の組合せのうちのいずれか1つであり得る;
b. 前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない患者の又は治療を受ける対象からの少なくとも1つの肝臓関連細胞;これらの細胞には、クッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、及び任意のその他の肝臓関連リンパ球又はそれらの任意の組合せが含まれるがこれらに制限されるわけではない;
c. IL4、IL10、IGFβ、IFNγ、IL12及びIL15といった少なくとも1つのサイトカイン、又はインテグリン、セレクチン及びICAMといった接着分子;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)の組合せ。
【0126】
1つの好ましい実施形態においては、該発明の治療用組成物は、哺乳類の対象における腸炎症性疾患の治療用、そしてより特定的にはクローン病の治療用である。この組成物は、有効成分として、抗炎症性サイトカイン産生細胞の産生に向かってTh1/Th2バランスを変調させる能力を付与された教育済み自家NKT細胞を含んでいる。
【0127】
該発明の治療用組成物内に含有されている教育済み自家NKT細胞は、Th1/Th2バランスを変調させる能力をもち、それを抗炎症性サイトカイン産生細胞の産生に向かってシフトさせる。このバランスシフトの結果は、CD4+IL4+/CD4+IFNγ比(IL4及びIL10のいずれか一方対IFNγの定量比)の増加である。これらの変調プロセスは、さらに、細胞免疫反応要素、体液性免疫反応要素及びサイトカインといった対象の免疫系の異なる構成要素によってさらに媒介される。
【0128】
組成物中に含有されている自家NKT細胞の教育は、好ましくは上述の通りに実施される。
【0129】
もう1つの好ましい実施形態においては、該発明の治療用組成物は、黒色腫、癌腫、リンパ腫及び/又は肉腫といった悪性腫瘍の治療用である。癌性状況下では、該発明の組成物中に含有されているNKT細胞の変調は、炎性誘発性応答を誘発する方向にあってもよいし又抗腫瘍関連抗原免疫性の増大にあってもよい。
【0130】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、該発明は、免疫関連又は免疫介在性の障害の治療のための治療用組成物に関する。この組成物は、NKT細胞を特定的に認識する抗体を有効成分として含んでいる。該発明の組成物はさらに、薬学的に受容可能な担体を含有し得る。適切な担体としては例えばリン酸緩衝生理食塩水、及び5%のHSA又はPPFを伴う食塩水が含まれる。その他の適切な担体は、当業者にとって周知であり、本発明に対する制限とはならない。同様にして、当業者であれば該発明の薬学組成物の中に含み入れるためのその他の所望の構成要素を容易に選択することができ、かかる構成要素は、本発明の制限条件ではない。
【0131】
一実施形態においては、該発明のこの治療用組成物は、クローン病といった腸炎症性疾患の治療のために使用可能である。腸炎症性疾患の治療のため、特にクローン病の治療のためには、経口薬学組成物が有利であり得る。経口投与は全身的免疫抑制又は侵襲的手段の必要なく、患者の症状の改善を可能にすることになる。
【0132】
もう1つの実施形態においては、該発明の治療用組成物は、黒色腫、癌腫、リンパ腫及び肉腫から成る群から選択された悪性腫瘍の治療のために使用可能である。
【0133】
組成物投薬量は、Th1/Th2バランスを変調させるのに充分なあらゆる量であり得る。当業者であれば、好ましい投薬量は、優良試験所基準及び良質の医療のための基準に従って患者に応じて個別に調節されることになるということがわかる。
【0134】
本明細書で使用されている通り、「Th1/Th2バランスを変調させるのに充分な量」というのは、選択された結果を達成するのに必要な量を意味する。例えば、該発明の組成物の有効量は、Th1/Th2バランスを抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かって変調させることになる。
【0135】
本発明の組成物及び方法はさらに、インシュリン依存性真性糖尿病(IDDM)といった自己免疫疾患の治療を提供し得る。
【0136】
該発明の組成物は、さまざまな要領で投与可能であり得る。制限的な意味のない例としては、組成物を静脈内で送達することができる。
【0137】
注射用に適した薬学的形態には、無菌水溶液又は分散及び無菌注射溶液又は分散の即席調製のための無菌粉末が含まれる。あらゆる場合において、該形態は無菌でなくてはならず、注射針を容易に通過させる程度に流動性でなくてはならない。それは、製造及び貯蔵条件下で安定していなくてはならず、細菌及び真菌といった微生物の汚染作用に対し保護されていなくてはならない。
【0138】
微生物の作用の防止は、例えばパラペン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどといったさまざまな抗菌剤及び抗真菌剤によってもたらされ得る。数多くの場合において、例えば糖又は塩化ナトリウムといった等張性作用物質を内含することが好ましいであろう。例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンといった吸収を遅延させる作用物質を組成物中に使用することによって、注射用組成物の長時間の吸収をもたらすことができる。
【0139】
必要に応じて以上で列挙したさまざまなその他の成分を伴って、適切な溶剤の中に必要な量で活性化合物を取込み、その後ろ過処理式滅菌を行なうことによって、無菌注射溶液が調製される。一般に、基本分散媒及び以上で列挙されたものからその他の必要とされる成分を含有する無菌ビヒクルの中にさまざまな滅菌済み活性成分を取込むことによって、分散が調製される。
【0140】
無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め無菌ろ過されたその溶液から活性成分プラス任意の付加的な所望の成分の粉末を生成する真空及び凍結乾燥技術である。
【0141】
該発明の薬学組成物は一般に、緩衝剤、その浸透圧を調整する作用物質及び任意には当該技術分野において既知の通りである1種以上の薬学的に受容可能な担体、賦形剤及び/又は添加剤を含む。補足的な活性成分も組成物中に取込むことができる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物及び植物油を含有する溶剤又は分散媒であり得る。適切な流動率は、レシチンなどのコーティングの使用、分散の場合における必要とされる粒度の維持及び界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0142】
本明細書で使用されている「薬学的に受容可能な担体」というのは、任意の溶剤、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのかかる媒質及び作用物質の使用は、当該技術分野において周知である。いずれかの従来の媒質又は作用物質がその活性成分と非相溶性である場合を除いて、治療用組成物内でのその使用が考慮される。
【0143】
第3の態様として、本発明は、免疫関連又は免疫介在性の障害を患う哺乳類の対象の体内で抗炎症性サイトカイン産生細胞の産生に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させるための治療用薬学組成物の製造における教育済み自家NKT細胞の使用に関する。好ましい用途は、哺乳類の対象の腸炎症性疾患の治療、特にヒトの対象のクローン病の治療のための組成物の製造である。代替的には、黒色腫、癌種、リンパ腫及び肉腫といった悪性腫瘍の治療のための治療用薬学的組成物の調製において、教育済み自家NKT細胞を使用することができる。癌性状況においては、該発明のNKT細胞の変調は、炎性誘発性応答を誘発する方向にあっても又は、有利な方向に向かっての抗腫瘍関連抗原免疫の増加にあってもよい。
【0144】
本発明はさらに、ex vivo教育済み自家NKT細胞を提供する。教育済みNKT細胞は、以下のもののいずれか1つの存在下でex vivo培養された:
a. 前記免疫関連又は免疫介在性の障害と結びつけられる少なくとも1つの抗原、又はその任意の組合せ;
b. 前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない患者の又は前記対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞、又はその任意の組合せ;
c. 少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子;及び
d. 上記(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ。
【0145】
さらに、該発明は、かかる治療を必要としている哺乳類の対象の体内の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療において使用するための該発明のex vivo教育済み自家NKT細胞を提供する。
【0146】
当該態様のもう1つの実施形態において、本発明は、かかる治療を必要としている哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療におけるex vivo教育済み自家NKT細胞の使用に関する。
【0147】
さらにもう1つの好ましい実施形態においては、本発明は、免疫関連又は免疫介在性の障害を患う哺乳類の対象のNKT細胞集団の操作特定的には、前記対象の前記NKT細胞集合の枯渇のための治療用薬学的組成物の製造における、NKT細胞を特異的に認識する抗体の使用に関する。NKT細胞集合の枯渇の結果として抗炎症性サイトカイン産生細胞の選好産生に向かってTh1/Th2バランスが変調されることになるということがわかるはずである。特に、哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害の治療、特定的にはヒトの対象におけるクローン病といった腸炎症性疾患の治療のための治療用薬学的組成物の調製に抗体を使用することができる。
【0148】
もう1つの特定的実施形態においては、免疫関連又は免疫介在性の障害は、黒色腫、癌種、リンパ腫及び肉腫といった悪性腫瘍である。
【0149】
非アルコール性脂肪性肝炎の病因における免疫系の役割
非アルコール系脂肪性肝炎(NASH)は、アルコール消費の履歴を全くもたない患者における肝脂肪蓄積、炎症及び線維形成から成る臨床病理学的疾患単位である。これは20%の症例で肝硬変まで進行することになり、西欧世界では特発性肝硬変の最も一般的な原因と考えられている(カルドウェル(Caldwell)SH、ら、Hepatology 29:664頁(1999年);マッテオーニ(Matteoni)CA、ら、Gastroenterology 116:1413頁(1999年))。NASHは該障害の病因における貢献的役割を果たすものとして示唆されているその他の代謝障害を患う患者に一般的である。これらの代謝障害としては、インシュリン耐性(サニアル(Sanyal)AJ、ら、Gastroenterology 120:1183頁(2001年)、肥満関係のATP枯渇(コルテス−ピント(Cortez−Pinto)H.ら、Jama 282:1659頁(1999年))、遊離脂肪酸ベータ過酸化の増大(ハーシュケヴィッツ(Hruszkewycz)AM、Biochem Biophys Res Commun 153:191頁(1988年))、鉄分蓄積(ジョージ(George)DK、ら、gastroenterology 114:311頁(1998年))、酸化防止剤枯渇(ハリソン(Harrison)SA.ら、gastroenterology 123:M1332頁(2002年))及びレプチン欠損症(コーエン(Cohen)、B.ら、Science 274:1185頁(1996年))が含まれる。それでも体重の低下、厳重な糖尿病制御、脂質レベルの正常化及び酸化防止剤治療を含めたいかなる治療的介入も全くなされない場合、該障害の自然な進行の改変を一貫して示したことがない(Angulo P.New England Journal of Medicine 346:1221〜1231頁(2002年))。
【0150】
NASHについての大部分の情報は、2つの哺乳類モデルつまりレプチン欠損症のob/obマウス及びレプチンレセプタ欠損fa/fa Zuckerラットから導出された。レプチンは、体重の調節に関与するタンパク質である(チャン(Zhang)Y.ら、Nature 372:425〜432頁(1994年))。ゲッ歯類及びヒトにおけるその欠損症は結果として、病的肥満、耐糖能異常、高脂血症及び重症肝臓脂肪症から成る「メタボリック・シンドローム」(以前X症候群と呼ばれていたもの)の重症形態をもたらす(ペレイマウンター(Pelleymounter)M.A.ら、Science 269:540〜543頁(1995年))。それでも、上述のように、これらの代謝障害の一部を矯正することを目的とするいかなる介入も、肝臓脂肪症、線維形成及び炎症の改善を結果としてもたらさなかった。
【0151】
最近の証拠は、レプチン欠損症モデルにおいて免疫系がNASHの病因の中で極めて重要な役割を果たし得るということを示唆している。レプチン欠損症のマウスでは、リポ多糖類による肝損傷誘発の後に、肝マクロファージ(クッパー細胞)応答不全が観察された(ディール(Diehl)AM.J Physiol Gastrointest liver Physiol 282:G1〜G5(2002年))。類似のモデルにおいて、IL6のLPS誘発が大幅に増強され、一方IL10のものは阻害された(ロフレッダー(Loffreda)S、ら、FASEB J 12:57〜65頁(1998年))、ob/obマウス肝マクロファージは、LPS攻撃誘発に応答して対照マウスよりも多いIL12と少ないIL15と産生することが観察され、このことは、これらのマウスで観察されるNKTリンパ球の数及び機能の著しい低下を説明しているのかもしれない(ヤング(Yang)ら、Proc Natl Acad Sci USA 94:2557〜2562頁(1997年))。その他の観察は、レプチン欠損症ob/obマウスの血液及び肝臓内のCD4Tリンパ球の数の減少を示した(ハワード(Howard)JK.ら、J Clin Invest 104:1051〜1059頁(1999年)及びロード(Lord)ら、Nature 394:897〜901頁(1998年))。これにより、CD4Tリンパ球によって媒介されるコンカナバリンA肝炎に対するレプチン欠損症マウスの相対的耐性の説明がつくかもしれない(ファッジオーニ(Faggioni)R ら、Proc Natl Acad Sci USA 97:2367〜2372頁(2000年))。
【0152】
非アルコール系脂肪性肝炎におけるTh1/Th2バランス不全
CD4及びCD8リンパ球は、IL−2を産生するTh1細胞、IFNγ、又はIL−4及びIL−10を産生するTh2細胞のいずれかとして分類される。免疫系は、応答の2つの亜型の間のバランスシフトによって外来性及び自己抗原に応答する[ウェイナー、H.L.ら、Immunol.Today 18:335〜343頁(1997年);アドリーニ、L.ら、Immunol.Today 18:209〜211頁(1997年)]。通常、Th1型の応答は、炎性誘発性反応[アドリーニ、L.ら、(1997年)上掲書;ミゾグチ、A.ら、J.Exp.Med.183−847〜856頁(1996年)]。をひき起こし、一方、IL10といった抗炎症性サイトカインは、抗炎症性Th2反応に向かってバランスをシフトさせ、かくして免疫介在性障害を緩和する[ミゾグチ、A.ら(1996年)上掲書;マドセン、K.L.ら、Gastroenterology 113:151〜159頁(1997年);ファン・デベンター・サンダー(Van Deventer Sander)、J.ら、Gastroenterology 113:383〜389頁(1997年)]。異なる内因性及び外因性刺激に応答して、NKT細胞は、Th1又はTh2経路のいずれかに向かっての免疫系の誘導において主たる役割を果たすと考えられている。
【0153】
レプチンは、Th1及びTh2応答の間のバランスの免疫調節において主たる役割を果たすことが示されてきた(ロード(Lord)GM.ら、Nature 394:897〜901頁(1998年))。レプチン欠損症ob/obマウスNASHモデルにおいては、NKT細胞の数及び機能の改変がTh1応答に向かって、免疫系を傾動させるものと示唆されてきた。これは、LPS誘発型肝臓毒性に対する感応性の増大及びコンカナバリンAの肝臓毒性効果に対するユニークな耐性という結果をもたらすものと示唆されている。違いはそれらの病原性機序の相違にあり得る。前者は、レプチン欠損症マウスにおいて超活性である先天的肝臓免疫系の作用に依存し、一方後者は、レプチン欠損症マウスにおいて抑制され不全であるNKTリンパ球の活性化により左右される。(ファジオーニ、R.ら、PNAS 97:2367〜2372頁(2000年)、ジピング(Zhiping)LI.ら、Gastroenterology 123:1304〜1310頁(2002年))。
【0154】
免疫系と肥満
免疫系と脂肪組織代謝の調節は相互に密に連結していると思われる。脂肪組織内部の最高50パーセントの細胞は、数多くの免疫細胞を含めて非脂肪細胞から成る(モンタギュ(Montague)CT.ら、Diabetes 47:1384〜91頁(1998年))。大部分の研究が病的肥満の免疫学的結果に焦点をあてたものであった。肥満の動物及びヒトに存在するものとして知られる免疫学的改変には、DTHの減少及び分裂刺激されたリンパ球増殖応答(チャンドラ(Chandra)RK.ら、Acta Paediatr Scand 69:25〜30頁(1980年))、食細胞の数及び機能の低下(クリシュナン(Krishnan)EC.ら、J Surg Res 33:89〜97頁(1982年))、インシュリン誘発型リンパ球細胞毒性の減衰(コッフラー(Koffler)M.ら、Diabetes 40:364〜360頁(1991年))、及び特に減量試行中のCD4/CD8比の変化(フィールド(Field)CJ.ら、Am.J.Clin.Nutr.54:123〜129頁(1991年))が含まれる。
【0155】
脂肪細胞は、TNF−α[ホタミスリギル(Hotamisligil)GS.ら、Science 259:87〜91頁(1993年)]及びIL6[ピューロヒット(Purohit)A.ら、Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 80:3052〜58頁(1995年)]を含む炎性誘発性サイトカインを分泌するものとして知られており、両方共脂肪過多症のレベルに関係づけされている(ホタミスリギル、GS.ら、Journal of Internal Medicine 245:621〜625頁(1999年))。これらのサイトカインの一部は、TNF−αにより媒介されるインシュリン耐性[オガワH.ら、Biochimica et biophysica acta 1003:131〜135頁(1989年)]及びIL6によって媒介されるリポタンパク質リパーゼ阻害[ファインゴールド(Feingold)ら、Diabetes 41:97s〜101s頁(1992年)]といった代謝効果を有するものとみなされている。TNF−αノックアウトマウスは、その正常な同腹子に比べて高いインシュリン感受性及び改善された脂質プロファイルを有する[ウイサル(Uysal)ら、Nature 389:610〜614頁(1997年)]。脂肪細胞によって産生される免疫系のその他の構成要素としては、代替的補体系の一部でありヒト補体因子Dと同一の形で機能するタンパク質アジプシンが含まれる[ローゼン(Rosen)BS.ら、Science 244:1483〜7頁(1989年)]。
【0156】
肥満のメディエータとしての免疫系の役割については、ほとんど情報が知られていないが、いくつかの最近の研究は、肥満の発達において免疫系が重要な貢献的役割をもち得るということを示唆している。複数のサイトカインは、脂肪組織調節因子として作用することがわかっている。TNF−αは、交感神経媒介型リポリーシスに関与する脂肪細胞上でのβ3アデノ−レセプタの発現を抑制し、一方IL1は、脂肪レプチン分泌を刺激する[サラフ(Sarraf)ら、Journal of experimental medicine 185:171〜175頁(1997年)]。脂肪細胞の代謝活性速度は、部分的にIL4、IL6及びTNF−αによって媒介される機序を通して(マタック(Mattacks)CA.ら、Cytokine 11:334〜346頁(1999年))最も近いリンパ節からのその距離に密に相関することが観察された[ポンド(Pond)CM.ら、Proceedings of the nutrition society 60:365−374(2001年)]。
【0157】
肥満の動物及びヒトが同様に免疫系の異なる群におけるさまざまな改変に苦しんでいる可能性があるという事実を指摘するこれらの観察結果は、病的肥満の発達の原因となる病原性機序のいくつかを免疫系の変調が変更し得るということを示唆している。
【0158】
移植片対宿主病の病因における免疫系の役割
移植片対宿主病(GVHD)は、骨髄移植の成分にとっての主たる障害物である。GVHDは、幹細胞の移植(SCT)の後に発生する多臓器不全である[フェラーラ(Ferrara)JLM、デーク(Deeg)HJ.Graft versus host disease.New Eng J of Med 1991年;324:667〜72頁)]。病因には、組織破壊を結果としてもたらす同種反応性抗原の認識及びT細胞及びその他の免疫コンピテントエフェクタ細胞の活性化が関与する[ボーゲルサング(Vogelsang GB.Graft versust host disease:Implications from basic immunology for prophylaxis and treatment.Cancer Treat and Res 1997年;77:87〜97頁]。GVHDにおける肝臓の関与は、レシピエントの胆管に対する移植されたドナーのリンパ球による免疫攻撃の結果である。
【0159】
複数の研究が、GVHD内の調節用T細胞サブセットの重要性を示してきた。例えば、CD4+CD25+調節用T細胞の輸液が近年、GVHD致死性を阻害することが示されてきた[テイラー(Taylor)PA、リース(Lees)CJ、ブレーザー(Blazar)B.The infusion of exvivo activated and expanded CD4+CD25+immune regulatory cells inhibits graft−versus−host−disease lethality. Blood 2002年;99:3493〜99頁]。NKT細胞は、重要な免疫変調効果を伴うユニークな調節用Tリンパ球サブセットである。これらの細胞は、さまざまな感染性、炎症性及び新生物形成過程を含めたさまざまな免疫介在性障害においてきわめて重要性の高いものであることがこれまでに示されてきた。NKT細胞は、異なるサイトカインの分泌を介して(すなわちIFNガンマ又はIL−4)か又は異なる免疫細胞サブセットの活性化によって、Th1及びTh2型の両方の免疫性に関与し得る[ゴッドフレイ(Godfrey)DJ、ハモンド(Hammond)KJ、プーロン(Poulon)LD、スミス(Smyth)MJ、バクスター(Baxter)AG、NKT cells:facts、functions and fallacies.Imunol Today 200、21:573〜83頁]。最近、本発明人らは、それぞれ結腸炎[トロップ、S.、イラン、Y.NK1.1+T cell;A two−faced lymphocyte in immune modulation of the IL4/IFN paradigm? J of Clinical Immunology、22:270〜80頁(2002年)]、及び肝臓癌[シボレート(Shibolet)O.、アルパー(Alper)R、ズロットガロブ(Zlotogarov)L、ターレンフェルド(Thalenfeld)B、エンゲルハート(Engelhardt)D.、ラバニ(Rabanni)E.、イラン(Ilan)Y.NKT and CD8 lymphocytes mediate suppression of hepatocellular carcinoma growth via tumor antigen−pulsed dendritic cells.Int.J.Cancer.20;106:236〜43頁、2003年]のマウスモデルにおける経口免疫変調節により誘発された抗炎症性及び抗新生物効果においてNKT細胞は極めて重要な役割を有する、ということを示してきた。以前の研究は、急性及び慢性GVHDにおけるNKT細胞の役割を実証してきた。例えば、NK1.1陽性T細胞サブセットはGVHDを抑制することが示され、一方NK1.1陰性Tリンパ球はGVHDを悪化させ、これはサイトカインの産生差に結びつけられる効果であった[ゼング(Zeng)D.、ルイス(Lewis)D.、デジャバクシュ−ジョーンズ(Dejbakhsh−Jones)S.、ラン(Lan)F.、グラシア−オヘダ(Garcia−Ojeda)M.、シブレー(Sibley)R.、ストローバ(Strober)S.、Bone marrow NK1.1−and NK1.1+T cells reciprocally regulate acute graft versus host disease.J.Exp.Mes.1999年;189:1073〜81頁]。
【0160】
急性GVHDは、同種SCT後の主たる合併症であり、移植、事後低強度条件づけ又は非骨髄機能廃絶投薬計画を含めた近代の移植方法が利用される場合でさえ、SCTの成功にとっての主たる障害物であり続けている。急性GVHDを研究するための1つの実験モデルは、移植に先立って7Gy60Coの全身照射(TBI)を受けた(C57BL/6×Balb/c)F1レシピエントマウス内にC57BL/6ドナーマウスからの2×107の脾細胞を輸液することによってGVHDを生成させることのできる、半同種C57BL/6から(C57BL/6×Balb/c)F1のマウスモデルである[ナグラー(Nagler)A.、オハナ(Ohana)M.、アルパー(Alper)R.、ドビナー(Doviner)V.、シャーマン(Sherman)Y.、ラバニ(Rabbani)E.、エンゲルハルト(Engelhardt)D.、及びイラン(Ilan)Y.、Induction of oral tolerance in bone marrow transplantation recipients suppresses graft versus host disease in a semi allogeneic mouse model.Bone Marrow Transplantation、2003年、(印刷中)]。本発明人らは最近、このモデルの中で、レシピエント脾細胞でのドナーの移植前給餌による経口免疫調節の誘発が、インビトロ同種反応性の抑制、生存率の改善、リンパ球浸潤の低減及び標的器官におけるその他の標準的な組織病理学的GVHD徴候といった形で現われる急性GVHDを緩和する、ということを示してきた。
【0161】
開示及び記述を行なってきたが、本発明が本明細書で開示された特定の実施例、方法工程及び組成物に制限されるものではなく、かかる方法、工程及び組成物は幾分か変動しうるものであるということを理解すべきである。同様に、本明細書に使用された用語が、特定の実施形態を記述する目的のためのみに使用され、制限することを意図されたものでなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその等価物によってのみ制限されることになるということも理解すべきである。
【0162】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形態「a」、「an」及び「the」には、内容が明らかに相反する判断を示しているのでないかぎり、複数の指示対象も含まれる、という点を指摘しておかなければならない。
【0163】
本明細書及び以下の実施例及び特許請求の範囲全体を通して、内容が求めているのでないかぎり、「comprise」という語及び「comprises」及び「comprising」といった活用形は、言及された整数又は工程又は整数群又は工程群の内容を意味するものの、その他の何らかの整数又は工程又は整数群又は工程群の除外を意味するものではないというように理解されることになる。
【0164】
以下の実施例は、本発明の態様を実施する上で発明人らが利用する技術を代表するものである。これらの技術は、該発明の実践のための好ましい実施形態の一例であるが、当業者であれば本開示に照らして、該発明の精神及び意図された範囲から逸脱することなく数多くの修正を認識することになるということがわかるはずである。
【実施例】
【0165】
I.
材料と方法
動物
ハーラン(Harlan)から正常な近交系の生後2〜4ヵ月のC57BL雄マウスを得、ハダサ・ヘブライ(Hadassah−Hebrew)大学医学部の動物コア内に維持した。標準的研究室用食事でマウスを維持し、12時間の明暗サイクルに保った。
【0166】
結腸炎の誘発
記述された通り、50%のエタノール100ml中に溶解させたマウス1匹あたり1mgのTNBSを直腸点滴注入により、TNBS−結腸炎を誘発した[コリンズ(Collins)C、ら、Eur.J.Immunol.26:3114〜3118頁(1996年)]。
【0167】
経口抗原の調製及び投与
TNBSで誘発した結腸炎のマウスから結腸をとり出し、小片にカットし、機械で均質化した。40mmのナイロン製セルストレーナを通してろ過した後、無傷の細胞をスピンダウンし、取出した。タンパク質検定キット(バイオラド(Biorad)、ドイツ、ミュンヘン)を用いて、タンパク質を定量化した。結腸炎抽出タンパク質(CEP)を、11日間隔日に給餌用無外傷性針を用いて(合計5用量)、以下に記述された実験グループに導入した。
【0168】
NK1.1細胞枯渇
以前に記述された通りに[カワムラ、T.ら、J.Immunol.160:16〜19頁(1998年)]、マウス抗マウスNK1.1モノクローナル抗原(セロテック(Serotec)、英国、オクスフォード)を用いて、NK1.1+細胞の枯渇を実施した。ドナーマウスからの脾細胞収獲より36時間前に一日50μgをマウスに腹腔内(IP)注射した。
【0169】
リンパ球の養子免疫伝達
全てのグループからのドナーマウスを、結腸炎の導入から14日目に屠殺し、脾臓から誘導したリンパ球の単一の懸濁液を記述通りに調製した[ウェイナー、H、ら、Annu.Rev.Immunol.12:809〜837頁(1994年)]。移植の前にPBS中に細胞を再懸濁させた。全てのグループからの脾臓リンパ球を実験未使用のレシピエントマウス内に移植し、ひき続き24時間後にTNBSで直腸に攻撃誘発した。
【0170】
実験用結腸炎に対する寛容誘発の効果の評価
結腸炎について以下のパラメータを監視することにより、寛容誘発の効果を評価した。
【0171】
結腸炎の臨床査定:
研究全体を通して毎日下痢が続いた。
【0172】
結腸炎の巨視的評点
標準パラメータを用いて、結腸炎誘発から14日後に結腸査定を実施した[マドセン、K.L.ら、Gastroenterology 113:151〜159頁(1997年);トロップ、S.ら、Hepatology 27:746〜755頁(1999年)]。
【0173】
4つの巨視的パラメータすなわち結腸潰瘍形成度;腸及び腹膜接着;壁厚;及び粘膜浮腫度を決定した。各パラメータを2人の経験豊かな盲検検査官により0(完全に正常)から4(最も重症)までの尺度で等級づけされた。
【0174】
組織学的病巣の等級づけ
炎症の組織学的評価のために、遠位結腸組織(最後の10cm)を取出し、10%のホルムアルデヒドで定着させた。各マウスからの5つのパラフィン切片を次に、標準技術を用いてヘマトキシリン−エオシンで染色した。結腸の顕微鏡断面上の炎症度を0から4まで半定量的に等級づけした(マドセンら、(1997年)上掲書;トロップら、Hepatology 27:746〜755頁(1999年)。等級0:炎症の兆候が全く無く正常、等級1:非常に低レベルの白血球浸潤;等級2:低レベルの白血球浸潤;及び等級3:高い血管密度を伴う高レベルの浸潤及び腸壁の肥厚;等級4:杯細胞の喪失を伴う貫壁性浸潤物、高い血管密度、壁肥厚及び正常な腸アーキテクチャの破断。等級づけは2人の経験豊かな盲検検査官により実施された。
【0175】
実験的結腸炎モデル内の寛容誘発に対するNK1.1リンパ球の役割の評価
肝臓及び脾臓リンパ球の単離
以前に記述された通りに脾細胞を単離し、赤血球を取り出した[ビカーリ(Vicari、A.P.ら、Immunology Today 17(2):71頁(1996年)]。幾分かの修正を加えて、以前に記述された通りに肝内リンパ球を研究の終りで全てのマウスグループから単離した[ビカーリら、(1996年)上掲書;Bleicher、P.A.ら、Science 250:679〜682頁(1990年)]。横隔膜より上で下大動脈をカットし、青くなるまで肝臓を低温PBS5mlで洗い流した。結合組織と胆のうを除去し、肝臓を10−ml入りの皿の中で低温無菌PBS内に置いた。肝臓と脾臓をステンレスメッシュを通してつぶした(サイズ60、シグマケミカル(Sigma Chemical Co.)セントルイス、ミズーリ州)。3分間50ml入りの管の中に細胞懸濁液を入れ、低温PBS中(10分間1,250×rpm)で2回洗浄し、デブリを除去した。細胞をPBS中で再懸濁させ、細胞懸濁液を予めPBS中に浸漬したナイロンメッシュを通して入れ、未結合の細胞を収集した。細胞を45mlのPBS中で2回(室温で1,250×rpm)洗浄した。肝臓及び脾臓リンパ球の単離のために、50ml入り管内でPBS7ml中に懸濁させられた細胞の下に20mlのヒストパーク1077(シグマダイアグノスティクス(Sigma Diagnostics)セントルイス、ミズーリ州)をゆっくりと入れた。管を1,640rpmで室温にて15分間遠心分離した。界面にある細胞を収集し、50ml入りの管内に希釈し、氷冷PBSで2回洗浄した(10分間1,250rpm)。マウス1匹につきおよそ1×106個の細胞を回収した。トリパンブルー染色による生存可能性は、95%を上回っていた。脾細胞及び肝臓関連リンパ球の両方を、全実験グループ中の全ての動物から単離した。
【0176】
NK1.1+リンパ球枯渇の判定のためのフローサイトメトリ分析
リンパ球単離の直後に、10分間1%のBSA4mlでインキュベートしたFalcon2052管の中に2〜5×104個の細胞/500μlのPBSのトリプリケートを入れ、5分間1400rpmで遠心分離した。1:20のFITC−抗マウスNK1.1抗体(NKR−P1C、ファーミンゲン、米国)を伴う10μlのFCS中に細胞を再懸濁させ、30分間にわたり10分毎に混合した。細胞を1%のBSA中で2回洗浄し、読取るまで4℃内に保った。対照グループについては、5μlの1%BSAしか添加しなかった。螢光細胞分析分離装置(ファクスタープラス(FACSTAR plus)、ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson))を用いて、各グループからの1×104個の細胞上で分析的細胞選別を実施した。生きた細胞だけを計数し、抗体処理されていないリンパ球からの背景螢光を、得られたレベルから演繹した。前方−側方散乱装置上でゲートにセットして、死んだ細胞及び赤血球を排除した。コンソート(Consort)30の2色輪郭プロットプログラム(ベクトン・ディキンソン、オクスナード、カリフォルニア州)又はセルクエスト(CELLQuest)プログラムを用いてデータを分析した。
【0177】
脾細胞及び肝臓関連リンパ球の培養
脾細胞及び肝臓関連リンパ球を全てのグループ(A’〜F’)の中のマウスから収獲し、24ウエルの組織培養平板の中で培養した。トリプリケートを、全ての研究グループ内の各動物から調製し、12時間培養した。5%で37℃で12時間細胞からサイトカインが放出されるのを防ぐのに必要とされる2μMのモネンシン(バイオソース(Biosource)、カリフォルニア州)及びConA 2μg/mlを共に、RPMI1640 1mlあたり1×106個の脾細胞の割合でリンパ球を細胞皿の中で活性化させた。RPMI培地は、次のものを含有する:10%のFCS、200mMのHepes、100Uのペニシリン及び100Mgのストレプトマイシン/ml、10mMのHepes IL2−10U/ml、CEP−50Mg/ml。細胞はモネンシン2μM(バイオソース、カリフォルニア州)と共に、2.5×106個の脾細胞と0.5×106個のLALを含んでいた。上清流体を、ELISAによるサイトカイン測定のため両方のセットから収集し、記述された通り[コリンズ(Collins)、C.ら、Eur.J.Immunol.26:3114〜3118頁(1996年)]、フローサイトメトリによりリンパ球を分析した。
【0178】
細胞内染色及びフローサイトメトリ
全てのウエルから細胞を収獲し、2重染色した。以下の抗体を用いて、以前に記述された通りに、CD4+T−細胞集団(Th1及びTh2細胞)を検出するための細胞外及び細胞内染色を使用した。すなわち、CD4+IL4+細胞の検出のためには、FITC接合された抗CD4及びPE接合された抗IL4mAbを使用した(ファーミンゲン(PharMingen)、サンディエゴ、カリフォルニア州)。CD4+IFNγ細胞の検出のためには、FITC接合された抗CD4及びPE接合された抗IFNγmAbを使用した(フィーミンゲン、サンディエゴ、カリフォルニア州)。全てはメーカーの指示事項に従って行なわれた(ICスクリーン、バイオソース細胞内染色キット、カリフォルニア州)。リンパ球をフローサイトメトリにより分析した。
【0179】
肝臓リンパ球細胞毒性検定
これらの研究内で使用された標的細胞は、10%のFCSを伴う補足済みRPMIを利用することによって、組織培養内での連続的成長に適合されたリンパ腫細胞系であるYAC−1細胞であった。YAC−1細胞を、RPMI10%のFCSを伴う25ml入りフラスコ中で2×105細胞/mlの密度でそれらを播種し24時間後にこれらを収集することにより、NK検定用に調製した。細胞を50ml入り管内で懸濁させ収集し、10分間遠心分離(1250rpm)により培地で2回洗浄した。この手順により、51Crを用いて効果的な標識及びNK細胞による溶解の高感受性が保証された。標的細胞を51Cr(ニューライフサイエンス(New Life Science)、ボストンMA、ガミドール、イスラエル)で標識し、37℃で90分間インキュベートした(300μlのRPMI培地中2×106個の細胞あたり200mCi)。10分毎に細胞を手作業で混合した。インキュベーションの後、20%のFCS RPMI3mlを添加し、37℃で30分間再インキュベートした。RPMI10%FCS中で3回細胞を洗浄し、計数した。標識効率度を判定するために、100μlの細胞を計数し、最低0.6cpm/細胞を測定した。エフェクタ細胞は、上述のグループA−H由来の肝臓から単離された肝臓リンパ球であった。51Cr−放出検定をCostar 96ウエル平板内で実施した。100μl中の等級付けされた数のエフェクタ細胞を、100:1、50:1、及び10:1のエフェクタ対標的比(E:T比)で、100μl中5000個の標識された標的細胞と混合させた。各ウエルは、合計200μlの体積で標的及びエフェクタ細胞を収納していた。各試料からの各比率について、5つのウエルをテストした。自然放出の判定のためには、6ウエルの類似した数の標的細胞を100μlのRPMI10%FCSを用いて平板固定した。最大放出の判定のためには、100μlの培地中の6ウエルの標的細胞を100μlのトリトンXと混合した。平板を2分間遠心分離に付し(500rpm)その後37℃で5%のCO2内で4時間インキュベートした。平板を次に再び2分間(500rpm)遠心分離に付し、ガンマ計数器を用いて上清を収獲し計数した。結果は、細胞毒性%=検定の平均cpm−自然放出からのcpm/トリトンXで溶解させた標的からのcpm−自然放出からのcpm×100という等式を用いて計算される標的細胞の特異的溶解パーセントとして表現された。
【0180】
サイトカイン分泌
両方のトリプリケートセットから上清流体を収集し、全ての寛容化された及びされていないグループからの全てのマウス、NK1.1枯渇したマウス及び枯渇していないウスについて、サイトカインレベルを測定した。メーカーの指示事項に従ってジェンザイムダイアグノスティクス(Genzyme Diagnostics)キット(ジェンザイムダイアグノスティクス、マサチューセッツ州、米国)を用いて「サンドイッチ」ELISAによりIL4、IL10、IL12及びIFNγレベルを測定した。寛容化された及びされていないNK1.1枯渇された及びされていないマウスからの5匹のマウスにおいて、結腸炎誘発から10日目に血清レベルを測定した。
【0181】
インビトロ教育実験
リンパ球の単離及び分離
脾細胞を調製し、CD4+、CD8+、NK及び樹状細胞という4つのリンパ球サブセットへと分離した。磁気細胞選別(MACS)を用いて、細胞分離を行なった。各々のリンパ球サブセットについて特異的マイクロビーズを使用した。すなわちCD4及びCD8マイクロビーズ及び抗−NKビーズ[ミルテニルバイオテック(Miltenyl Biotec)、ドイツ]である。リンパ球単離の直後に、10分間1%のBSA4mlでインキュベートしたFalcon2052管の中に2〜5×104個の細胞/500μlのPBSのトリプリケートを入れ、5分間1400rpmで遠心分離した。1:20のFITC−抗マウスNK1.1抗体(NKR−PIC、ファーミンゲン、米国)を伴う10μlのFCS中に細胞を再懸濁させ、30分間にわたり10分毎に混合した。細胞を1%のBSA中で2回洗浄し、読取るまで4℃内に保った。対照グループについては、5μlの1%BSAしか添加しなかった。螢光細胞分析分離装置(ファクスタープラス、ベクトンディッキンソン)を用いて、各グループからの1×104個の細胞上で分析的細胞選別を実施した。生きた細胞だけを計数し、抗体処理されていないリンパ球からの背景螢光を、得られたレベルから演繹した。前方−側方散乱装置上にゲートをセットして、死んだ細胞及び赤血球を排除した。Consort30の2色輪郭プロットプログラム(ペクトン・ディキンソン、オクスナード、カリフォルニア州)又はセルクエストプログラムを用いてデータを分析した。
【0182】
脾細胞及び肝臓関連リンパ球の培養
脾細胞を全てのグループの中のマウスから収獲し、24ウエルの組織培養平板の中で培養した。トリプリケートを、全ての研究グループ内の各動物から調製し、12時間培養した。上清流体を、ELISAによるサイトカイン測定のため両方のセットから収集した。
【0183】
実施例1
実験的結腸炎における寛容誘発の効果
実験的結腸炎における寛容誘発の効果を評価するために、各々20匹の動物から成る6つのマウスグループを研究した(表1)。直腸TNBS(グループA、B、D及びE)又は標準的食塩水(対照グループC及びF)を用いて研究一日目に全てのマウスを攻撃誘発した。全てのグループ中のマウスを、結腸炎誘発の日から始めて11日間隔日に給餌した(50μg/マウス)。グループB及びEは、結腸炎抽出タンパク質(CEP)での給餌を受けたマウスを含んでいた。グループA、C、D及びF内のマウスは、ウシ血清アルブミン(BSA、50μg/マウス)の給餌を受けた。全てのグループ中のマウスを、結腸炎誘発から14日目に屠殺した。グループD〜F内のマウスは、上述の通り、研究が終結する36時間前に抗NK1.1抗マウスモノクローナル抗体で処置した。グループA〜Cのマウスは、NK1.1枯渇されていなかった。
【0184】
【表1】
【0185】
結腸炎の臨床検査
それぞれマウスCEPで給餌されるか又はNK1.1−枯渇されたグループB及びDからの寛容化されたマウスの中で、下痢の著しい減少が観察された。これとは対照的に、BSAで給餌されたか又はマウス−CEPで給餌されNK1.1で枯渇されたグループA及びEからのマウスは、重症の下痢に苦しんだ。マウスの体重の追跡調査は、グループA及びE中のマウスと比較してグループB及びD中の寛容化されたマウスの間で統計的に有意な体重の減少を明らかにした(それぞれ13.5%及び11.65%対3.2%及び4.8%、p<0.005)。
【0186】
結腸炎の巨視的等級付け
マウス抽出の結腸炎由来のタンパク質の給餌又はNK1.1−枯渇(グループB及びD)による経口寛容の誘発は、結腸炎の巨視的等級付けを有意に緩和した。結腸炎のテストされた巨視的パラメータについての評点は、結腸炎潰瘍形成の度合い、腸及び腹膜接着、壁厚み及び粘膜浮腫の度合い、であった。合計巨視的評点は、それぞれ、未処理対照及びCEP給餌NK1.1枯渇グループA及びEにおいて3.1±0.54及び3.05±0.67(p<0.005)であったのに比べ、グループB及びDのマウスではそれぞれ0.35±0.01及び0.63±0.03であった。
【0187】
組織学的病巣の等級付け
腸組織の組織学的評価は、グループA及びEの中の寛容化されていないマウスと比べて、グループB及びD内の寛容化されたか又はNK1.1枯渇されたマウスにおいて、炎症性応答及び粘膜潰瘍形成の著しい減少を示した。グループB及びD内のマウスでは、ほぼ正常な切片又は最小限のリンパ球浸潤しか検出されなかった。これとは対照的に、寛容化されていないマウスから取った腸標本の中には重症の炎症性反応(等級3〜4)が見られた。
【0188】
実施例2
NK1.1+リンパ球は、寛容化されたマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を増大させ、実験的結腸炎を有する寛容化されていないマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた
寛容化されたマウス
寛容化されたマウスにおけるNK1.1+リンパ球の効果を研究するため、全てのグループ内のマウスから脾細胞及び肝臓関連リンパ球(2.5×106個の脾細胞と0.5×106のLAL)を収獲し、CEP及びAPCの存在下で72時間培養した。フローサイトメトリ分析は、経口寛容誘発の後のNK1.1−枯渇が、NK1.1LAL枯渇されていない寛容化されたマウスと比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた(それぞれグループE及びBにおいて0.99±0.03対1.8±0.35のCD4+IL4+/CD4+IFNγ+、p<0.005、図2)ということを示した。対照NK1.1−枯渇されたグループ(グループF)は、NK1.1枯渇されてないグループCに比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比の減少を明らかにした(それぞれグループC及びFについて2.13±0.36対1.6±0.29)。
【0189】
寛容化されていないマウス
寛容化されたグループとは対照的に、NK1.1−枯渇は、実験的結腸炎を有する寛容化されていないマウスに対し反対の効果を示した。CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比は、NK1.1枯渇も寛容化もされていないグループと比べて、NK1.1−枯渇された寛容化されていないグループ内で増大した(それぞれグループA及びDにおいて0.74±0.06対0.56±0.05)。
【0190】
寛容化されたマウスと寛容化されていないマウスの間のCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比の比較は、全ての寛容化されたグループにおいて、より高い比率を明らかにした。TNBSで処置されCEPを経口給餌されたマウス(グループB)は、BSAで給餌された寛容化されていないマウス(グループA)と比べて有意に高い比を示した。グループA、B及びC中のCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比は、それぞれ0.56±0.05、1.8±0.35及び2.13±0.36(p<0.005)であった。図4は、それぞれ、グループB及びEからの寛容化されたNK1.1枯渇されていない及び枯渇されているマウス及びグループA及びDからの寛容化されていないNK1.1枯渇されていない及び枯渇されているマウスから単離されたリンパ球上でのIL4及びIFNγの発現の代表的結果を示す。
【0191】
実施例3
インビトロ感作の役割及び、実験的結腸炎を有する寛容化された及びされていないマウスにおけるCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比に対する疾病−標的−抗原の効果
CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比に対する疾病標的抗原のインビトロ暴露の効果を評価するために、全てのグループ(表1に列挙)の中のマウスから、脾細胞及び肝臓関連リンパ球(2.5×106)の脾細胞及び(0.5×106)のLALを収獲し、ConAの存在下で及びCEP及びAPCの不在下で12時間培養した。抗原の不在下でNK1.1枯渇の効果の評価は、抗原の存在下で見い出されるものと類似であった。グループBの中の寛容化されたマウスから収獲されたリンパ球は、寛容化されたグループE内のNK1.1−枯渇されたマウスに比べて、有意に高いCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を明らかにした(それぞれ0.7±0.02対1.1±0.02、p<0.005)。これとは対照的に、NK1.1枯渇は、抗原の不在下でグループA及びDからの寛容化されていないマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比の増大を誘発した(それぞれ1.21±0.03対0.96±0.01、p<0.005、表2、図5)。これらの結果は、免疫教育がインビボで達成され、インビトロでの細胞−抗原インキュベーションに影響されなかったということを示唆する。
【0192】
同様にして、フローサイトメトリ分析は、CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比がグループB及びE内及び対照グループC及びF内の寛容化されたマウス内で有意に減少し、グループA及びD中の寛容されていないマウス内で有意に増大した(p<0.005、図5)ということを示した。
【0193】
【表2】
【0194】
寛容化された及びされていないマウスにおけるサイトカインレベルの変化
上清流体を、両方のトリプリケートセットから収集し、全ての寛容化された及びされていないグループからの全てのマウスについてサイトカインレベルを測定した。「サンドイッチ」ELISAによりIL4及びIFNγレベルを測定した。寛容化されたマウスは、Th1からTh2の免疫応答サイトカイン分泌のシフトを明示した。これらのマウス(グループB)はIL4レベルの増加及びIFNγレベルの減少を明示した。これとは対照的に、寛容化されていないグループ(グループA、E)からのマウスは、高いIFNγと低いIL4レベルを示した。グループB内の寛容化されたマウスから収獲したリンパ球は、寛容化されたグループE内のNK1.1枯渇されているマウスと比べて、有意に高いIL4及び低いIFNγレベルを明らかにした(それぞれ24.4±1.4及び14.1±0.4対22.6±0.7及び189.8±8.4、図6)。これとは対照的にNK1.1枯渇は、抗原の不在下でグループA及びDからの寛容化されていないマウスにおいてIFNγの増大及びIL4レベルの減少を誘発した(それぞれ128.3±3.7及び0.6±0.01対48.3±4.1及び19.1±0.4、図6)。NK1.1枯渇は、CEPの給餌を受けたグループではIL12レベルの増大を導く(475±23.3対145±5.7及びグループEについて、それぞれ、図7)が、CEPの給餌を受けていないグループ内では反対の効果を有していた(それぞれ、グループA及びDについて165±7.4及び74±3.3)。
【0195】
実施例4
実験的結腸炎における脾細胞の養子免疫伝達に対する寛容誘発の効果
実験的結腸炎モデルにおける寛容誘発の効果を評価するために、各々10匹の動物から成る6つのドナーマウスグループを研究した(表3に異なるグループが列挙されている)。TNBSでの直腸攻撃誘発により、グループGからJまでのマウスにおいて結腸炎を誘発した。グループK及びL内の対照マウスは、標準食塩水で攻撃誘発した。グループK及びL中の対照マウスは、標準食塩水で攻撃誘発した。全てのグループ内のマウスに、結腸炎誘発の日から開始して11日間隔日で50μg/マウスでの給餌を施した。グループI及びJは、結腸炎抽出タンパク質(CEP)での給餌を受けたマウスを含んでいた。グループG、H、K及びL内のマウスには、ウシ血清アルブミン(BSA50μg/マウス)を給餌した。脾細胞収獲の36時間前に、グループG、I及びKからのマウスにおいて、上述の通りNK1.1枯渇を実施した。全てのグループ内のマウスを、結腸炎誘発から14日後に屠殺した。
【0196】
各々10匹の動物から成るレシピエントマウスグループG’−L’も研究した。0.5mlのPBS中で1×106個のドナー細胞を静脈内で注射する24時間前に、300ラドの全身照射で、レシピエントマウスに亜致死線量で照射した。全てのマウスを、細胞移植の24時間後にTNBS浣腸剤で処置した。結腸炎についての臨床的、巨視的及び組織学的パラメータを以下で記述する通り結腸炎誘発から14日後に決定した。
【0197】
【表3】
【0198】
結腸炎の臨床査定
マウスCEPで給餌されたグループJ’からの寛容化されたマウスからの寛容化された細胞のレシピエント内、ならびにグループJの寛容化されたマウス内において、下痢の著しい減少が見られた。これとは対照的に、グループH’からの寛容化されていない脾細胞のレシピエント及びグループHからのBSAでの給餌を受けたマウスは、重症の下痢に苦しんだ。マウスの体重の追跡調査は、グループH及びH’中の寛容化されていないマウスと比較してグループJ及びJ’中の寛容化されたマウスの間で統計的に有意な体重の減少を明らかにした(それぞれ10.8%及び11.2%対5.7%及び5.5%、p<0.005)。
【0199】
グループG’からのNK1.1枯渇されているマウス由来の脾細胞のレシピエント及びグループGからのそのドナーは、グループH及びH’内の寛容化されていないマウスを比較して下痢による苦しみが少なかった。両方のグループ(G及びG’)からのマウスは、体重の増加を示した(それぞれ9.9%及び10.2%対5.7%及び5.5%、p<0.005)。これとは対照的に、グループI’からのNK1.1枯渇されたマウス由来の脾細胞のレシピエントは、寛容化効果の喪失を導いた。そのドナーにおいては、類似の効果が見られた(グループI)。これらのマウスは、グループH及びH’と比べた場合、下痢が少なかったが、NK1.1枯渇されない対照よりも悪いものであった。同様にして、両方のグループにおいてマウス内には体重のいかなる有意な増大も見られなかった(グループJ及びJ’内の寛容化されたマウスに比較してそれぞれグループI及びI’のマウスについて6.0%及び5.1%、p<0.005)。
【0200】
グループK及びLからのマウスは、TNBSでの攻撃誘発は受けず、疾患の臨床上の証拠も示さなかった。その体重はそれぞれ11.4%及び12.3%だけ増大した。これとは対照的にグループK’及びL’からのマウスは、重症の下痢を発達させ、その体重はそれぞれ4.5%及び5.2%しか増大しなかった。
【0201】
結腸炎の巨視的等級付け
マウス抽出の結腸炎由来のタンパク質の給餌(グループJ)及び寛容化されたリンパ球の養子免疫伝達(グループJ’)による経口寛容の誘発は、結腸炎の巨視的等級付けを有意に緩和した。結腸炎のテストされた巨視的パラメータについての評点は、結腸炎潰瘍形成の度合い、腸及び腹膜接着、壁厚み及び粘膜浮腫の度合いであった。合計巨視的評点は、それぞれ、グループH及びH’の寛容化されていないマウスにおける3.22±0.15及び3.32±0.26に比べて、それぞれグループJ及びJ’において0.31±0.24及び0.3±0.25であった。グループGからのNK1.1枯渇されたマウス及びグループG’からのそのリンパ球のレシピエントは、疾病の緩和を明示した(それぞれ0.8±0.4及び0.85±0.5)。これとは対照的に、グループIからのNK1.1枯渇されたマウス及びそのリンパ球のレシピエント(グループI’)は、重症の結腸炎を明示した(それぞれ3.72±0.22及び3.77±0.6、p<0.005)。グループK’及びL’からのマウスは、重症の結腸炎の証拠を示した(それぞれ3.4±0.29及び3.27±0.22)。
【0202】
組織学的病巣の等級付け
腸組織の組織学的評価は、グループJ及びJ’の中の寛容化されたマウスにおいて、炎症性応答及び粘膜潰瘍形成の著しい減少を示し、組織学的評点は、それぞれ1.8及び1.7であった。これらのマウスにおいては、ほぼ正常な切片又は最小限のリンパ球浸潤しか検出されなかった。これとは対照的に、グループH及びH’内の寛容化されていないマウスから取った腸標本の中に重症の炎症性反応が見られ、組織学的評点は3.3及び3.08(それぞれグループH及びH’、p<0.005、図8)であった。グループG内の寛容化されていないNK1.1枯渇されたマウス及びその脾細胞のレシピエント(グループG’)において、炎症性反応及び粘膜潰瘍形成の著しい減少が検出された。グループG及びG’についての組織学的標点はそれぞれ2.08及び2であった。グループIからのNK1.1枯渇されたマウス及びそのリンパ球のレシピエント(グループI’)は、重症の結腸炎を明示した。グループI及びI’内のマウスについての評点はそれぞれ2.9及び2.5であった。グループK及びLは、TNBSでの直腸攻撃誘発を受けなかった。
【0203】
実施例5
NK1.1+リンパ球は、寛容化されたマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を増大させ、実験的結腸炎を有する寛容化されていないマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた
寛容化されたマウス
寛容化された及びされていないレシピエントマウスの間のCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比の比較は、全ての寛容化されたグループにおいて高い比率を明らかにした。グループJ’からの寛容化されたレシピエントマウスは、グループH’内の寛容化されていないマウスと比較して有意に高い比率を示した。CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比はそれぞれ2.16と0.55であった(p<0.005)。
【0204】
寛容化されたマウスからのリンパ球の養子免疫伝達は、レシピエントマウス内でCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を増大させた。フローサイトメトリ分析は、NK1.1枯渇されたCEP給餌を受けたドナーマウスからの脾細胞の養子免疫伝達が、寛容化され枯渇されていないマウスから収獲された脾細胞に比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させるということを示した(それぞれグループI’及びJ’について0.58対2.16、p<0.005、図9)。
【0205】
寛容化されていないマウス
寛容化されていないリンパ球の養子免疫伝達は、レシピエントマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた。寛容化されたグループとは対照的に、NK1.1枯渇は、実験的結腸炎を有する寛容化されていないマウスに対して反対の効果を有していた。フローサイトメトリ分析は、NK1.1枯渇された寛容化されていないドナーマウスからの脾細胞の養子免疫伝達が、寛容化されていないNK1.1枯渇されていないマウスからの脾細胞と比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を増加させたことを示した(それぞれ、グループG’及びH’において1.7対0.55、p<0.005、図9及び表4)。図10は、寛容化されたNK1.1枯渇されていない及び枯渇されたドナーのレシピエントから、及び寛容化されていないNK1.1枯渇されていない及び枯渇されたドナーから(グループG’−J’)の単離済みリンパ球上のIL4及びIFNγの発現の代表的結果を示している。
【0206】
【表4】
【0207】
対照リンパ球からの養子免疫伝達
フローサイトメトリ分析は、対照のNK1.1枯渇されているマウスからの脾細胞の養子免疫伝達が、NK1.1枯渇されていないドナーマウスに比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を増加させることを示した(それぞれグループK’及びL’、1.13対0.69、p<0.005)。
【0208】
実施例6
NK1.1による肝臓リンパ球細胞毒性
これらの研究では、100:1、50:1溶解及び10:1のE:T比で標的細胞としてYAC−1細胞を使用した。NK1.1枯渇された及び枯渇されていない寛容化された及び寛容化されていないマウスのレシピエントから単離した肝臓リンパ球を用いて、研究を実施した。寛容化されずNK1.1枯渇されていないマウス(グループH’)からのレシピエントは、その他のグループ(12.37%の細胞毒性)に比べて溶解をほぼ全く示さなかった(100:1のE:T、図11)。グループG’内の寛容化されておらずNK1.1枯渇されたマウスからのレシピエントは、グループH’に比べ高い溶解を示した(それぞれ20.4%対12.37%の細胞毒性)。グループI’からのNK1.1枯渇されCEP給餌を受けたマウスからのレシピエントは、グループJ’内のNK1.1枯渇されていないマウスよりも低い溶解を示した(それぞれ42.58%対46.98%の細胞毒性)。対照グループからのレシピエントは、それぞれ、グループL’と比べてグループK’内のマウスについて、23.1%対22.47%の細胞毒性を有していた(p<0.005、図11)。
【0209】
サイトカイン検定
両方のトリプリケートセットから上清流体を収集し、全ての寛容化された及びされていないグループからの全てのマウスについてサイトカインレベルを測定した。「サンドイッチ」ELISAによってIL4、IL10及びIFNγレベルを測定した。寛容化されたマウスは、Th1からTh2までの免疫応答サイトカイン分泌のシフトを明示した。これらのマウス(グループH)は、IL4、IL10レベルの増加及びIFNγレベルの減少を明示した。これとは対照的に、寛容化されていないグループ(グループG、J、K)からのマウスは高いIFNγ及び低いIL10レベルを示した。グループH内の寛容化されたマウスから収獲したリンパ球は、寛容化されたグループK内のNK1.1枯渇されたマウスと比べて、有意に高いIL4、IL10及び低いIFNγレベルを明らかにした(それぞれ18.4±3.7、23.1±2.9及び5.1±0.4対2.9±0.6、0.8±0.1及び19.8±3.8、図12)。これとは対照的に、NK1.1枯渇は、抗原の不在下でグループG及びJからの寛容化されていないマウスにおいて、IFNγレベルの増加及びIL4、IL10レベルの減少を誘発した(それぞれ24.3±3.7、3.1±0.9及び4.6±0.4対18.3±1.1、3.2±0.1及び2.1±0.4、図12)。
【0210】
実施例7
NKTリンパ球のex vivo免疫プログラミング
先行する実施例で示されているように、マウス抽出された結腸炎由来のタンパク質の給餌による経口寛容の誘発は、寛容化されていないマウスと比べて、結腸炎の異なる症候(結腸炎の巨視的等級づけ、重症の下痢、炎症性応答及び粘膜潰瘍形成)を有意に緩和した。
【0211】
従って、本発明者は、細胞特にNK細胞のex vivo教育が、いかなる経口寛容処置も受けていない誘発された結腸炎を患う動物における異なる結腸炎の症候を改善しうるか否かを調べることによって、NKT細胞のインビトロ/ex vivo免疫プログラミングの可能性を判定する目的で、以下の実験を実施した。
【0212】
8つの異なる組合せの異なる細胞サブグループ(表5に列挙した通りのCD4、CD8、脾細胞及び樹状細胞)を、以下の6つの実験的グループの各々から調製した:
1. 結腸炎無し及び処置(経口寛容化)無しの対照動物から収獲された細胞。これらの細胞を、BSAと共にex vivoでインキュベートした。
2. 結腸炎を有し処置(経口寛容化)無しの対照動物から収獲された細胞。これらの細胞を、BSAと共にex vivoでインキュベートした。
3. 結腸炎を有し経口寛容化を介した処置を受けた動物から収獲された細胞。細胞をBSAと共にインビトロでインキュベートした。
4. 結腸炎無し及び処置(経口寛容化)無しの対照動物から収獲された細胞。これらの細胞を、CEPと共にex vivoでインキュベートした。
5. 結腸炎を有し処置(経口寛容化)無しの対照動物から収獲された細胞。細胞を、CEPと共にex vivoでインキュベートした。
6. 結腸炎を有し経口寛容化を介した処置を受けた動物から収獲された細胞。細胞を、CEPと共にex vivoでインキュベートした。
【0213】
【表5】
【0214】
実験グループ1、2及び3由来の細胞が、BSAの存在下でインビトロでインキュベートされ、従って対照として役立ち、一方実験グループ4、5及び6の細胞が抗原(CEP)の存在下でインビトロでインキュベートされ、従ってテストグループとして役立ったという点に留意されたい。ex vivo教育を、異なる処置済み細胞による(IFNγの分泌と比べた)IL10の分泌を測定することによって検査した。
【0215】
処置(経口寛容化)を受けていないもののCEPの存在下でインビトロでインキュベートされた結腸炎を患う動物(サブグループ5A”〜5H”)から調製された異なる細胞型又は細胞組合せ(サブグループA”〜H”)か、抗原とのインキュベーションによるex vivo教育の実現可能性を示す主要なテスト対象グループであることがわかるはずである。表6に示されているように、疾病関連抗原(サブグループE”5)の存在下でNK1.1+T細胞を培養することは、IL10分泌の増加によって明示されるような寛容化された細胞のものと類似したサイトカインパターンを導く。
【0216】
CD4細胞及び抗原(サブグループA”5)の培養について、類似のパターンが観察された。これらの結果は、疾病に結びつけられる抗原に対し細胞を暴露することによるex vivo教育の成功を示している。しかしながら、抗原によるNKT教育がCD4、CD8又はDC(それぞれF”5、G”5及びH”5)の添加によって妨げられたことから、抗原の存在下で2つ以上の細胞型を組合せることは、この望ましい効果を低減させた。
【0217】
疾病に結びつけられる抗原とのインキュベーションによるNKT細胞のex vivo教育の実現可能性に加えて、発明人らは、IL10上昇した分泌によって反映されるように、その他の細胞型とのNKT細胞の同時培養が所望のex vivo教育を結果としてもたらし得るか否かを調べた。表6に示されているように、寛容化されたマウスから得られたCD4又はCD8細胞とNKT細胞の組合せのみが、IL10上昇した分泌を結果としてもたらした(それぞれサブグループF3及びG3)。抗原に対するex vivo暴露と組合せて、寛容化されたマウスから得られたCD4細胞とNKT細胞は、類似の効果を有し(サブグループF6)、一方抗原の存在は、寛容化されたマウスからのNKTCD8、組合せが検査された時点で(サブグループG6)IL10の分泌を有意に低減させた。
【0218】
しかしながら、樹状細胞とNKT細胞の同時培養は、検査したいずれの組合せ(サブグループH3〜H6)においてもIL10分泌を誘発できなかった。
【0219】
【表6】
【0220】
【表7】
【0221】
【表8】
【0222】
本発明の実施例は、Th2特異的記憶細胞が伝達されたと仮定されることから、実験未使用のマウス内への寛容化された脾細胞の養子免疫伝達が寛容を誘発する、ということを示した。これとは対照的に、NK1.1枯渇されたCEP給餌マウス由来のリンパ球の養子免疫伝達は、寛容を伝達できず、炎症性Th1媒介型応答をアップレギュレートした。NK1.1+T細胞が急速にIL4を産生し、実験的アレルギー性脳脊髄炎及び糖尿病性NODマウスモデルにおける自己免疫応答の調節の役割を果たすということが発見された[ベンデラック、A.ら、Annu Rev Immunol 15:535〜562頁(1997年);サカモト(Sakamoto)A.ら、J Allergy Clin Immunol 103(5 pt 2):s445〜51頁(1999年);セキ(Seki),S.ら、J Immunol 147:1214〜1221頁(1991年)]。しかしながら、経口寛容誘発の終結時におけるNK1.1T細胞の枯渇は、サイトカイン分泌の型に影響を及ぼし、寛容化された枯渇されていないNK1.1T細胞マウスと比較してCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた。本発明の結果は、NK1.1T細胞が、IFNγ炎性誘発性サイトカイン分泌か又はIL4抗炎症性サイトカイン分泌を介して、免疫応答のTh1/Th2プロファイルに影響を及ぼしうるということを示唆している。両方の条件において、そのインパクトは、従来のCD4+T細胞によるものよりもはるかに大きい[チェン(Chen)、H.ら、J Immuno 159:2240〜2249頁(1997年)]。
【0223】
その上、本発明者らは、さらに、NKT細胞のex vivo教育が実現可能であることを示した。疾病標的抗原に対しインビトロでNKT細胞を暴露することで抗炎症性IL10分泌パターンに向かってのこれらの細胞の教育が可能となった。
【0224】
結論としては、NK1.1+リンパ球は、免疫変調において及び免疫原性又は寛容原性の方向で免疫応答の切換えにおいて、2重の役割を果たしている。それらが活性化された状態となる環境、異なる刺激タイプ又はシグナリングレセプタが、それらの機能を決定し得る。全く異なる免疫調節機序に関与するNK1.1+T細胞は、免疫介在性障害におけるTh1/Th2パラダイム及びエフェクタ細胞の型を変調させる。
【0225】
結論としては、NK1.1+リンパ球は、免疫変調において及び免疫原性又は寛容原性の方向で免疫応答の切換えにおいて、2重の役割を果たしている。それらが活性化された状態となる環境、異なる刺激のタイプ又はシグナリングレセプタが、それらの機能を判定し得る。全く異なる免疫調節機序に関与するNK1.1+T細胞は、免疫介在性障害におけるTh1/Th2パラダイム及びエフェクタ細胞の型を変調させる。
【0226】
II.
材料と方法
動物
雌の免疫コンピテント(異型接合)胸膜欠損Balb/cマウスをジャクソンラボラトリ(Jackson Laboratories)バーハーバー、メイン州から購入した。全ての動物を滅菌したケージ内で層流フード内に保ち、照射済みの食料及び無菌酸性化水を与えた。動物実験を、Hebrew University−Hadassah Institutional Committee for Care and Use of Laboratory Animalsの指針及び委員会の承認に従って実施した。
【0227】
細胞培養
可欠アミノ酸及び10%の熱不活性化済みウシ胎児血清で補足された培地の中で、単層としての培養で、ヒト肝臓癌細胞系Hep−3Bを分泌するHBsAgを成長させた。
【0228】
胸膜欠損マウス内の腫瘍及び脾細胞の移植
胸膜欠損マウスを、亜致死線量照射(600cGy)で条件づけした。照射から24時間後に、マウスに、107個のヒト肝臓癌Hep3B細胞を右肩に皮下注射した。照射から3日後、ドナー免疫コンピテントマウスから脾細胞を収獲した。レシピエント胸膜欠損マウスには、1×107細胞/マウスの割合でドナー脾臓細胞を静脈内注射し、レシピエント内にコンピテントな免疫系を確立した。次に抗原パルスしたNKT細胞をマウスに注射した。
【0229】
リンパ球の単離及びNKT細胞の分離
ドナー免疫コンピテントBalb/Cマウスから収獲した脾臓から、脾細胞を調製した。脾臓から結合組織を除去した後、脾臓を10ml入り皿の低温滅菌PBS中に入れ、ステンレス鋼メッシュ(サイズ60、シグマケミカル、セントルイス、ミズーリ州)を通して圧壊した。リンパ球の単離のためには、50ml入り管の中で、PBS7ml中に懸濁させられた細胞の下側に、ヒストパーク1077 20ml(シグマケミカル、セントルイス、ミズーリ州)を置いた。界面にある細胞を収集し、50ml入り管内で希釈し、氷冷PBSで2回洗浄した(10分間1250rpm)。約1×108個の細胞/マウスを回収した。特異的抗NKマイクロビーズ(ミルテニルバイオテク(Miltenyl Biotec)、ドイツ)と共に磁気細胞選択(MACS)を用いてNKT細胞分離を行なった。
【0230】
パルスによるNKT細胞教育
腫瘍又はウイルス関連抗原でex vivoパルスすることでNKT細胞を教育した。0.5mlのPBS中の1×106個のNKT細胞をフラスコ中に設置し、72時間、HCC溶解物(3μg/ml)、Hep3B細胞又はウシ血清アルブミン(BSA)(1μg/ml)と共にインキュベートした。
【0231】
NKT細胞の養子免疫伝達
免疫コンピテンスの回復後7日後に養子免疫伝達を実施した。これは、HCC溶解物、Hep3B細胞又はBSAに対しインビトロで暴露されたNKT細胞の静脈内注射によって実施された。
【0232】
ex vivo免疫変調済み調節NKTリンパ球の養子免疫伝達の効果の評価
ex vivo教育済みNKTリンパ球の養子免疫伝達の効果を、以下のパラメータを監視することによって評価した。
【0233】
腫瘍成長の追跡調査
6週間2週間隔でレシピエントマウスを追跡調査した。生存率、体重及び腫瘍体積(カリパスを用いて)を査定した。苦痛の徴候を示したマウス及び過度に体重低下(測定間で10%超又は初期体重の25%超)したマウスを屠殺した。
【0234】
サイトカイン分泌
4週目の間、全てのグループ内のマウスから血液を採取し、14,000rpmで遠心分離した。ジェンザイムダイアグノステックスキッツ(Genzyme Diagnostics kits)(ジェンザイムダイアグノスティックス(Genzyme Diagnostics)、マサチューセッツ州、米国)を用いて「サンドイッチ」ELISAにより血清サイトカインレベルを測定した。
【0235】
肝臓及び脾臓リンパ球の単離及びCD4+、CD8+及びNKT細胞のフローサイトメトリ判定
肝臓及び脾臓由来のリンパ球の単離を上述の通りに実施し、Falcon2052管の中に2×104細胞/500μlPBSのトリプリケートを置いた。細胞を、1:20のFITC抗マウスNK1.1抗体[NKR−P1C、ファーミンジェン(Pharmigen)、米国]を伴う10μlのウシ胎児血清(FCS)中に再懸濁させ、30分間10分毎に混合した。1%のBSA中で細胞を2回洗浄し、読取りまで4℃中に保った。螢光細胞分析分離装置(FACStarplus、ベクトンディッキンソン、カリフォルニア州)を用いて各グループからの1×104個の細胞について分析的細胞選別を実施した。生きた細胞のみを計数し、抗原処置されていないリンパ球からの背景螢光を、得られたレベルから差し引いた。データをコンソート(Consort)30、2色輪郭プロットプログラム(ベクトンディッキンソン、カリフォルニア州)で分析した。
【0236】
STAT1−6用のウエスタンブロット分析
STATタンパク質発現の判定のため、全てのグループ中のマウスから脾細胞を得た。モーター駆動式テフロン(登録商標)乳棒が備わったガラスホモジナイザを用いて0.25Mのスクロース/10mMのトリス−HCl、pH7.4中で組織ホモジェネート(200mg/ml)を調製した。SDS−ポリアクリルアミド(7.5%)ゲル上での電気泳動により、タンパク質(100μg/レーン)を分解し、ニトロセルロース膜に対し電気ブロットした。STATタンパク質を検出するために、異なるSTATタンパク質に導かれたポリクローナルウサギ抗マウス抗体そしてそれに続いてアルカリホスファターゼでカップリングされたヤギ抗ウサギIgG(ベッチルラボラトリーズ(Bethyl Lab.)、モンゴメリ、テキサス州)を用いて、膜をプローブ探査した。
【0237】
実施例1
ex vivo免疫変調済み調節NKTリンパ球の養子免疫伝達の効果
教育済みNKT細胞の養子免疫伝達のインビボ抗腫瘍効果を評価するために、各々10匹の動物から成る胸膜欠損Balb/Cマウスの4つのグループ(グループA−D)を研究した(表1)。全てのマウスを亜致死線量照射し、ヒトHep3BHCCを移植した。免疫コンピテントBalb/Cマウスから調製したNKT細胞を、HCC由来の抗原(HCC溶解物)、Hep3B細胞及びBSAを用いてex vivoでパルスした。その後、1×106個の教育済みNKT細胞を養子免疫伝達により各HCC包含マウスの体内に注射した。グループAは、HCC溶解物でパルスしたNKT細胞を受け;グループBは、Hep3B細胞でパルスしたNKT細胞を受け;グループCはBSAでパルスしたNKT細胞を受け;グループDはNKT移植を受けなかった。
【0238】
【表9】
【0239】
抗腫瘍効果の機序を判定するために、NKT、CD4及びCD8マーカーについてFACSにより脾臓内リンパ球集団を分析した。腫瘍サイズ及び重量、血清サイトカインレベル及び脾細胞STAT1−6タンパク質発現も同様に査定された。
【0240】
結果
HCC由来の抗原でパルスされたNKT細胞(グループA)の養子免疫伝達は、結果として、4週間以内で腫瘍を完全に消滅させ、体重減少を弱めた(6.5%)。これとは対照的に、グループB、グループC及びグループD内のマウスは、大きい壊死腫瘍及び重大な体重減少(グループB、グループC及びグループD内でそれぞれ21%、17%及び23%の体重減少、p<0.05)を発生させた;従って、生存率を査定することができなかった。
【0241】
グループA内で、NKT/CD4及びCD8/CD4比が有意に増大した(NKT/CD4比についてグループB、グループC及びグループD内でそれぞれ12.3対6.4、4.8及び5.6、p<0.05)。グループA内で、転写因子STAT4の発現が有意に増大したが、グループB−Dでは増大しなかった。IFNγの血清レベルは、グループB、C及びD(それぞれ3.24、1.77及び1.38倍、p<0.05)に比べてグループA内で増大させられた。
【0242】
HCC由来の抗原を用いてex vivoでパルスされたNKTリンパ球の養子免疫伝達は、マウスHCCの抑制を導く。NKT媒介型抗腫瘍活性は、抗腫瘍NKT及びCD8リンパ球の数の増加、IL−2活性についてのマーカーであるSTAT4の発現の増加、及び血清炎性誘発性サイトカインレベルの上昇によって明示されるTh1免疫の増強と結びつけられた。NKTリンパ球のex vivo変調は、HCCのための免疫療法の新しい様式として期待できる。
【0243】
III.
材料と方法
試薬
コンカナバリンAをウォーシントンバイオケミカル(Worthington Biochemical Corporation)、米国から購入した。
【0244】
抗HBVワクチン(Bio Hep B)をバイオテクノロジカルジェネラル(Bio Technological General Corporation)、米国から購入した。
【0245】
動物
実験用プロトコルは、Animal studies commitee of the Jerusalem Hebrew University Medical Schoolにより承認された。ハーラン(Harlan)研究所から、生後10週間の雄レプチン欠乏C57BL/6Jマウス及びその脂肪の少ない同腹子(+/?)を購入した。ハダサ・ヘブライ大学医学部の動物コアで動物達を恒温で収納した。マウスを規則的な12時間の明暗サイクルに保ち、標準的なマウス食を給餌し、びんから水道水を入手することができた。隔日にマウスを計量し、食物摂取を記録した。実験の終了時に、イソフルラン麻酔下での頸部断頭によりマウスを屠殺した。
【0246】
経口抗原の調製及び投与
肝臓を関係するマウスから取り出し、小片にカットし、機械で均質化した。40mmのナイロン細胞ストレーナを通したろ過の後、無傷の細胞をスピンダウンし、取出した。タンパク質検定キット(バイオラド(Biorad)、ミュンヘン、ドイツ)を使用してタンパク質を定量し、30日間隔日に(合計15用量)、給餌用無外傷性針を用いて以下に記述する実験グループの体内に導入した。
【0247】
トランスアミナーゼ及びトリグリセリドの測定
自動型手順を用いて血清ALT及びAST血漿活性を測定した。ロッシュ(Roche)トリグリセリトGPO−RAP酵素試行キットを用いて、血清220cc血液試料を処理した。試料のトリグリセリドレベルを、550nmの波長を用いてCobas DP−25分光光度計で測定した。
【0248】
グルコース寛容測定
グルコース寛容の測定のためには、マウスは、体重1キログラムあたり1グラムの量でグルコースの給餌を受けた。経口給餌の後、時点0でそして次に15分毎に合計3時間イソフルラン麻酔の下で尾から血液を採取した。エリート(Elite)グルコース試験片及びグルコメータでグルコースレベルを測定した。
【0249】
脾臓及び肝臓リンパ球単離
以前に記述された通りに脾細胞を単離し、赤血球を取り出した[ビカーリ、A.P.ら、Immunology Today 17(2):71頁(1996年)]。幾分かの修正を加えて、以前に記述された通りに肝内リンパ球を研究の終りで全てのマウスグループから単離した[ビカーリら、(1996年)上掲書;ブライシャー、P.A.ら、Science 250:679〜682頁(1990年)]。横隔膜より上で下大動脈をカットし、青くなるまで肝臓を低温PBS5mlで洗い流した。結合組織と胆のうを除去し、肝臓を10ml入りの皿の中で低温無菌PBS内に置いた。肝臓と脾臓をステンレスメッシュを通してつぶした(サイズ60、シグマケミカル、セントルイス、ミズーリ州)。3分間50ml入りの管の中に細胞懸濁液を入れ、低温PBS中(10分間1,250×rpm)で2回洗浄し、デブリを除去した。細胞をPBS中で再懸濁させ、細胞懸濁液を予めPBS中に浸漬したナイロンメッシュを通して入れ、未結合の細胞を収集した。細胞を45mlのPBS中で2回(室温で1,250×rpm)洗浄した。肝臓及び脾臓リンパ球の単離のために、50ml入り管内でPBS7ml中に懸濁させられた細胞の下に20mlのヒストパーク1077(シグマダイアグノスティクス、セントルイス、ミズーリ州)をゆっくりと入れた。管を1,640rpmで室温にて15分間遠心分離した。界面にある細胞を収集し、50ml入りの管内に希釈し、氷冷PBSで2回洗浄した(10分間1,250rpm)。マウス1匹につきおよそ1×106個の細胞を回収した。トリパンブルー染色による生存可能性は、95%を上回っていた。脾細胞及び肝臓関連リンパ球の両方を、全実験グループ中の全ての動物から単離した。
【0250】
リンパ球の養子免疫伝達
関係するグループ全てのドナーマウスを養子免疫伝達実験の一日目に屠殺し、脾臓に由来するリンパ球の単一懸濁液を、記述されている通り[ウィナー、H.ら、Annu Rev Immunol 12:809〜837頁(1994年)]に調製した。移植の前にPBS中に細胞を再懸濁させた。全てのグループからの脾臓リンパ球を、先行する照射無しで、実験未使用のレシピエント内に移植した。
【0251】
サイトカイン測定
1. 血清サイトカイン:全ての寛容された及び寛容されないグループからの全てのマウスについて、サイトカインレベルを測定した。メーカーの指示事項に従って、ジェンザイムダイアグノステックスキッツ(ジェンザイムダイアグノスティックス、マサチューセッツ州、米国)を用いて「サンドイッチ」ELISAによりIFNγ、TGF−β、TNF、IL4、IL6及びIL10レベルを測定した。
2. 脾臓サイトカイン:上述の通り100万個/mlの脾細胞を収集した。その後、Elispot方法(ダイアクローンリサーチ(Diaclone Research)、米国)を用いて、IFNγ及びIL10レベルを計算した。
【0252】
NKT1.1リンパ球集団の判定のためのフローサイトメトリ分析
リンパ球単離の直後に、2〜5×104細胞/500μlPBSのトリプリケートを、Falcon2052管内に入れ、10分間1%のBSA4mlでインキュベートし、5分間1400rpmで遠心分離した。1:20のFITC−抗マウスNK1.1抗体(NKR−P1C、ファーミンジェン、米国)と共に10μlのFCS中で細胞を再懸濁させ、30分間10分毎に混合した。1%のBSA中で2回細胞を洗浄し、読取りまで4℃に保った。対照グループについては、5μlの1%BSAのみを添加した。螢光細胞分析分離装置(FACSTAR plus、ベクトンディッキンソン)を用いて各々のグループから1×104個の細胞について分析的細胞選別を実施した。生きた細胞のみを計数し、抗原処置されていないリンパ球からの背景螢光を、得られたレベルから差し引いた。ゲートを前方散乱及び側方散乱上にセットして、死滅細胞及び赤血球を排除した。データをコンソート30 2色輪郭プロットプログラム(ベクトンディッキンソン、オクスナード、カリフォルニア州)又はセルクエストプログラムで分析した。
【0253】
Statウエスタンブロット分析
ウエスタンブロット分析キットを用いてStat1、3、4、6レベルを推定した。
【0254】
脂肪含有量の肝臓MRI測定
マウスの肝臓中の脂肪の査定/定量化のため、単一回の捕捉で、同相(in−phase)及び対向相(opposed−phase)画像を提供する2重エコー化学シフト勾配−エコー磁気共鳴映像法(MRI)シーケンスの技術を用いて、肝脂肪含有量を測定した。T1−加重対向相MRI技術は、組織内の脂肪の比較的小さな割合の検出に関し感度が高い。全てのMRIは、1.5−Tシステム(シグナ(Signa)LX;GE、ミルウウォーキ州、米国)で実施された。2重エコーMR映像法を、125msecの繰返し時間(TR)、4及び6.5msecの2重エコー時間(TEs)及び80°のフリップ角度で実施した。画像形成パラメータには、3mmの切片厚み、13cmの視野、256*160のマトリクス、そして膝コイルを用いて1つの信号の捕捉が含まれていた。交差点ギャップ無く切片厚み3mmで肝臓のレベルで横方向(軸方向)及び冠状画像が捕捉された。以前の報告書で記述されている通り[ミッチェル(Mitchell)DG ら、Invest.Radiol 26:1041〜1052頁(1991年);トモヒロ(Tomohiro)N.ら、Radiology 218:642〜646頁(2001年)]同相及び対向相の画像間のSI変化の信号強度(SI)測定の定量的査定を計算した。SIインデックスは、以下の式から計算した:SIインデックス=(SIip−Siop)/SIip、(式中、SIipは同相画像上のSIであり、SIopは、対向相画像上のSIである。SIインデックスは、同相画像上のSIと比較した対向相画像上のSI損失の分数を反映している。
【0255】
肝臓組織学検査
各々のマウスについて、10%の緩衝ホルムアルデヒドの中で単一の肝臓セグメントを定着させ、組織学的分析のためパラフィン内に包埋した。切片(μm)を、ヘマトキシリン/エオシンで染色し、組織学的評点を実施した。
【0256】
統計学的分析
データは、平均±SEMとして表現されている。上述のパラメータに関する異なるグループ間の統計学的有意性は、対応のないスチューデントt検定を用いて計算された。0.05未満のp値は、統計的に有意な差を表わすものとみなされた。
【0257】
実施例1
グルコース寛容に対するNKT1.1リンパ球養子免疫伝達の効果
ob/obNASHモデル中で観察された代謝及び肝臓の機能の乱れにおけるNKT1.1リンパ球の役割を査定するために、表1に示されている通りに、マウスを5つのグループへと分割した。実験12日目に、上述のように全てのマウスグループ内で耐糖能試験を実施した。
【0258】
【表10】
【0259】
本発明人らの先行実験において示されているように、免疫学的操作(グループC)に付されなかったob/obマウスは、グルコール寛容試験でひどく混乱を受けた(表2、及び図1参照)。同様にして、規則的ob/ob脾細胞で養子免疫伝達を受けるob/obマウスは、耐糖能試験全体を通して有意に上昇したグルコースレベルを有していた。
【0260】
【表11】
【0261】
対照的に、野生型(グループA)又はob/ob(グループB)NKT1.1リンパ球のいずれかが注射されたマウスは、グループDに比べて(最高120分の時限まで全ての時限についてp<0.001)耐糖能試験の著しい改善を特色としていた。実際、耐糖能試験中のob/obグループの各々とその脂肪の少ない同腹子の間のグルコースレベルの差は、統計的に異なるものではなかった(耐糖能試験全体を通してP値は0.20〜0.63の間の範囲内にある)。野生型脾細胞が移植されたグループCのマウスのグルコースレベルは、グループD及びグループEマウスの有意に高いレベルとグループA及びグループBマウスの事実上正常なレベルの中間であった。
【0262】
これらの結果は、ob/obNKT1.1リンパ球の数の減少及び/又は機能の混乱が、ob/obマウスにおけるグルコース寛容の発達の中で主要な役割を果たす、ということを示唆している。野生型又はob/obNKTリンパ球のいずれかを補充することにより、これらのマウス内のグルコース不寛容を矯正することができる。
【0263】
実施例2
肝脂肪含有量に対するNKT1.1リンパ球の養子免疫伝達効果
肝臓脂肪症のレベルに対するNKT1.1リンパ球の養子免疫伝達の効果を査定するために、実験の終りにおいて、全てのグループのマウス(表3参照)は腹部MRIを受け、肝脂肪含有量を上述の方法に従って推定し、SIインデックスとして提示した。
【0264】
【表12】
【0265】
野生型(グループA)及びob/ob(グループB)のNKT1.1リンパ球の養子免疫伝達を受けるマウスは両方共、図2a及び2bに示されているように、MRIによる肝脂肪含有量のレベル低下を示した。養子免疫伝達とMRI記録の間の経過時間は短かいものにすぎなかった(12日間)が、これらの差は、統計的有意性(それぞれP=0.063、P=0.008)に近づいていた。このことは、NKT1.1リンパ球の枯渇又は機能不良がob/obモデル内の非アルコール系脂肪性肝炎の病因に関与していること、そしてその補充が肝臓脂肪症を矯正し得ることを示唆している。
【0266】
実施例3
コンカナバリン−A肝炎に対する罹病性に対するNKT1.1リンパ球の養子免疫伝達の効果
Con−Aで誘発された肝炎に対するob/obマウスのこれまでに既知の耐性に対するNKT1.1リンパ球の役割を査定する目的で、全てのグループのマウス(表4)は、実験の12日目に、その尻尾の1本の静脈内に、合計体積を0.1ccとして発熱物質無しの食塩水の中に溶解された200μgのCon−Aの静脈内注射を受けた。24時間後、全てのマウスを屠殺し、血清トランスアミナーゼレベル及び肝臓炎症の組織学的度合を判定した。図4及び図3a及び3bに示されているように、グループD及びグループEのマウスは、Con−A攻撃誘発に応答したその基線レベルに比べて穏やかな肝臓トランスアミナーゼの上昇しか発生させなかった(AST、その基線レベルのそれぞれ1.48及び1.40倍、及びALT、その基線レベルのそれぞれ1.52及び1.79倍)。これとは対照的に、グループA及びBは、ConAに応答して、AST(その基線レベルの3.6及び2.44倍)及びALT(その基線レベルの5.2及び3.46倍)の両方において有意な上昇を発生させた。野生型脾細胞の移植を受けたグループCのマウスは、グループA及びグループBのものとグループDとグループEのものの中間で肝臓トランスアミナーゼの控めな上昇を特色としていた。この実験の結果は、NKTリンパ球の養子免疫伝達が、場合によってCon−A肝炎に関与するCD4リンパ球の活性化によって、ob/obマウスをよりCon−A肝炎にかかりやすいものにする可能性があるということを示唆している。
【0267】
【表13】
【0268】
実施例4
グルコース寛容に対する経口免疫調節(肝臓抽出物給餌による)の効果
NASHモデルのさまざまな代謝及び免疫学的成分に対する経口免疫調節の効果を評価するために、マウスを表5に記されているように各々14のマウスから成る6つのグループへと分割した。隔日に、各グループに、マウス1匹につき50μgのob/op肝臓抽出物、50μgの正規同腹子肝臓抽出物又は50μgのウシ血清アルブミンのいずれかを与えた。
【0269】
【表14】
【0270】
30日目に、全ての肝臓抽出物の給餌(合計15回の給餌)が終結した。59日目に、以上で記述されているように、全てのマウスに対して耐糖能試験を実施した。予想された通り、ob/obマウスの全てのグループは、その脂肪の少ない同腹子グループ(p<0.001、表6)に比べ、グルコース食の後血中のグルコースレベルを有意に上昇させた。しかしながら、野生型及びob/ob肝臓抽出物での食餌を受けたグループB及びグループCのob/obマウスはそれぞれ、図4に描かれているように、BSAでの給餌を受けたグループCのob/obマウス(p<0.001)に比べて、経口グルコースに応答して有意に低いグルコースレベルを発生させた。
【0271】
このことは、経口免疫調節誘発を通した免疫変調がob/obマウスの代謝プロファイルを改変し、そのグルコース寛容の結果を改善し、それらの糖尿病性をより低くする、ということを示唆している。
【0272】
【表15】
【0273】
実施例5
肝脂肪含有量に対する肝臓抽出物給餌による経口免疫調節誘発の効果
肝脂肪含有量に対する経口免疫調節の効果を判定するために、6つのグループ全てのマウスに、実験59日目に腹部MRIを行った(表7)。肝脂肪含有量を、上述の方法を用いて判定し、SIインデックスとして記述した。3匹の野生型マウスは全て、ob/obマウスグループよりも有意に低い肝脂肪含有量を特色としてもち(全てのグループでp<0.001)、肝臓抽出物の給餌の効果は全く指摘されなかった(図2a)。野生型及びob/ob肝臓抽出物をそれぞれ受けたグループA及びグループBのマウスは、グループCのマウスに比べて肝脂肪含有量における有意な減少を示した(それぞれにp=0.03及びp=0.019)。図5a及び図5bにこれらの結果が示されている。
【0274】
この耐性は、肝臓抽出物の給餌を通した経口免疫調節誘発が、罹病性の高い哺乳動物の肝臓内のNASH及び脂肪蓄積速度の減少を結果としてもたらすような形で代謝プロファイルを改変するということを示唆している。
【0275】
【表16】
【0276】
実施例6
コンカナバリン−A肝炎への罹病性に対する肝臓抽出物給餌による経口免疫調節誘発の効果
野生型マウスとは対照的に、ob/ob(レプチン欠乏症の脂肪質のマウス)マウスは、以前、コンカナバリン−A誘発型肝炎に対するユニークな耐性を提示することが示されてきた。この耐性は、これらのマウスの体内のNKT1.1リンパ球集団内の定量的及び定性的改変から判定された。実験60日目に、Con−A肝炎への罹病性に対する肝臓抽出物給餌による経口免疫調節誘発の効果を判定するために、イソフルラン麻酔下で全てのマウスの眼窩後方神経叢から血液を採取し、血清トランスアミナーゼレベルを測定した。同じ日に、全てのマウスは、合計体積0.1ccとなるよう発熱物質を含まない食塩水の中で溶解させられた200μgのCon−Aをその尾部静脈中の静脈注射で受けた。24時間後に、全てのマウスを屠殺し、血清トランスアミナーゼレベル及び肝炎症の組織学的度合いを判定した。
【0277】
前述した通り、ob/obマウスは自発性肝炎を患らっていた(平均AST=227、平均ALT=204)が、一方その脂肪の少ない同腹子は患らっていなかった(平均AST=37、平均ALT=102)。グループCとグループFのマウス(BSAが与えられたob/obマウス及びその脂肪の少ない同腹子)は、200μgのCon−Aの注射に付され、ob/obマウスは、ob/obマウスがCon−A肝炎に対し比較的耐性があったことを示唆する以前の観察事実と一致して、その脂肪の少ない同腹子(平均ASTはその基線値の5.94倍まで増加)に比べ、有意なほど穏やかなAST増加(平均ASTはその基線値の1.83倍まで増加)を有していた。未知の理由で、ALTレベルは、ob/ob及び脂肪の少ない同腹子グループにおいて匹敵する形で増加した(それぞれその基線値の2.75及び2.098倍)。Con−Aの投与に応答した野生型マウス内のトランスアミナーゼ上昇度に対する肝臓抽出物給餌の効果は全く存在しなかった(グループE及びグループF内でASTはそれぞれその基線値の5.56及び6.67倍まで増加する)。このことは、図6a及び図6bに示されている。
【0278】
これとは対照的に、野生型及びob/ob肝臓抽出物での給餌を受けたグループA及びグループBのob/obマウスは、BSAの給餌を受けたob/obに比べ、有意にはるかに顕著なASTの上昇を発生させた(ASTはそれぞれその基線値の2.71及び2.89倍まで増大する)。ALTは、さらに控めな効果を示した(ALTは、グループCでのその正常値の2.75倍に比べ、グループA及びグループBでそれぞれその基線値の3.1及び3.72倍まで増大する)。Con−A肝炎に対する罹病性度のこの差異は、これらのマウスにおいてより顕著なCD4リンパ球媒介型肝損傷に向かってのシフトをひき起こした、グループA及びグループBにおける肝臓抽出物給餌によって誘発される免疫変調に原因がある。
【0279】
実施例7
B型肝炎ワクチン接種に対する応答
外部刺激に対する免疫学的T細胞媒介型応答に関してob/obマウスとその脂肪の少ない同腹子の間に存在する深遠な差異を確認するために、10匹のob/obマウスと10匹の脂肪の少ない同腹子をB型肝炎に対し免疫化した。実験1日目、14日目、21日目、25日目及び30日目に、全てのマウスに腹腔内で0.4μグラムのbio Hep Bワクチンを注射した。30日目に、全てのマウスを屠殺し、標準的な機器を用いて抗−HBS抗体力価を測定した。その脂肪の少ない同腹子に比べて、ob/obマウスは減衰された免疫応答を示し、有意に低い抗HBS抗体力価を特色としていた(p=0.027)。このことは表8及び図7に描かれている。このことは、ob/obマウスが深く損われたT細胞免疫応答を有するという、先行する実験からの印象の正当性を立証しており、このことは、ob/obマウス内での上述の代謝的及び免疫学的な現象の発生において主たる役割を果たす可能性がある。肝臓抽出物との経口寛容及びNKT細胞の養子免疫伝達がこの応答を矯正し得る。
【0280】
【表17】
【0281】
IV.
材料と方法
GVHDにおけるNKT細胞の推定上の保護的役割を査定するために、NKT枯渇された脾細胞の移植を受けたマウスに対する増大する数のNKTリンパ球(0〜4.5×106細胞)の養子免疫伝達を実施した。レシピエントマウスを、GVHD関連の肝臓、腸及び皮膚の損傷の組織学的パラメータについて追跡調査した。NKT細胞媒介型免疫変調機序及び寛容誘発における肝臓の役割を判定するために、肝内及び脾臓内リンパ球を単離しFACSによりCD4+及びCD8+亜集団について分析し、血清サイトカインレベルを判定した。
【0282】
動物
ドナーマウスは、ジャクソンラボラトリーズ(Jackson Laboratories)(アンヌハーバー、メイン州)から得た生後12週間のC57BL/6の雄であった。レシピエントは(C57BL/6×Balb/c)F1の雌のマウスであった。マウスをハダッシュヘブライ大学医学部の動物コアにおいて12時間の明暗サイクル中に保った。全ての動物を、正規の実験室食で給餌し、不断吸水させた。全ての動物実験は、Hebrew−University−Hadassah Institutional Committee for the Care and Use of Laboratory Animalsにより承認された。照射及び脾細胞移植の後、マウスを層流アイソレータ内に維持した。
【0283】
リンパ球の単離及びNKT細胞の分離
ドナーC57BLマウスから収獲した脾臓から、脾細胞を調製した。結合組織を除去した後、脾臓を10ml入り皿の低温滅菌PBS中に入れ、ステンレスメッシュ(サイズ60、シグマケミカル、セントルイス、ミズーリ州)を通して圧壊した。リンパ球の単離のためには、50ml入り管の中で、PBS7ml中に懸濁させられた細胞の下側に、ヒストパーク1077 20ml(シグマダイアグノスティックス、セントルイス、ミズーリ州)を置いた。界面にある細胞を収集し、50ml入り管内で希釈し、氷冷PBSで2回洗浄した(10分間1250rpm)。約1×108個の細胞/マウスを回収した。特異的抗DX5マイクロビーズ(ミルテニルバイオテク、ドイツ)と共に磁気細胞選択(MACS)を用いてNKT細胞分離を行なった。
【0284】
脾細胞の移植
GVHDを誘発するため、C57BL/6ドナーマウスからの2×107脾臓細胞を(C57BL/6×Balb/c)F1レシピエントマウス内に静脈内注射した。移植前にマウスに60Co全身照射(7Gy)を行った。
【0285】
実験グループ(n=8マウス/グループ)
GVHDにおけるNKT細胞の推定上の保護的役割を査定するため、増大する数のNKTリンパ球の養子免疫伝達を実施した。グループAのマウスに全脾細胞を移植し、グループBのマウスにNKT枯渇された脾細胞を移植し、グループC、グループD及びグループEのマウスには、0.5、2.5及び4.5×106個のNKT細胞を添加したNKT枯渇脾細胞を移植した。グループFのマウスは脾細胞移植を受けなかった。
【0286】
GVHDの組織学的変化の等級付け
皮膚、肝臓及び腸の炎症の度合いを評価するために、組織を全てのグループ内のマウスから採取し、10%のホルムアルデヒド内に保つ。各マウスからの5つの組織切片をパラフィン内に包埋し、切片化し、標準的手順によりヘマトキシリン−エオシンで染色し、実験条件を知らない経験豊かな病理学者がこれを検査した。
【0287】
CD4+、CD8+Tリンパ球の判定のためのフローサイトメトリ分析
リンパ球単離の直後に、Falcon2052管の中に2〜5×106個の細胞/500μλのPBSのトリプリケートを入れ、10分間1%のBSA4mlでインキュベートし、5分間1400rpmで遠心分離した。1:20のFITC−抗マウスCD4及びCD81抗体(ファーミンゲン、米国)を伴う10μlのFCS中に細胞を再懸濁させ、10分毎に30分間混合した。細胞を1%のBSA中で2回洗浄し、読取るまで4℃内に保った。螢光細胞分析分離装置(ファクスタープラス(FACSTAR plus、ベクトンディッキンソン)を用いて、各グループからの1×104個の細胞上で分析的細胞選別を実施した。生きた細胞だけを計数し、抗体処置されていないリンパ球からの背景螢光を、得られたレベルから差し引いた。前方−側方散乱装置上でゲートをセットして、死んだ細胞及び赤血球を排除した。コンソート30の2色輪郭プロットプログラム(ベクトン・ディキンソン、オクスナード、カリフォルニア州)又はセルクエスト25プログラムのいずれかを用いてデータを分析した。
【0288】
サイトカインレベルの測定
全てのグループ内のマウスから血液を採取し、14,000rpmで遠心分離した。ジェンザイムダイアグノステックスキッツ(ジェンザイムダイアグノスティックス、マサチューセッツ州、米国)を用いて「サンドイッチ」ELISAにより血清IFNγ、TNFα、IL−10及びIL−12レベルを測定した。
【0289】
統計学的分析
スチューデントt検定(両側検定)により分析した。
【0290】
GVHD関連組織損傷に対するNKT細胞の養子免疫伝達の効果
実施例1
皮膚のGVHDの緩和
全てのグループからのマウス内で皮膚生検を実施した。GVHDにおける表皮は、基底細胞層の広汎性脈管化、海綿状態及び異常角化ケラチノサイト及び表皮下裂溝形成、急性GVHDの等級IIを特徴づける形態変化を示した。一部においては、表皮の局所性完全喪失を伴う表皮下裂溝形成が観察され、これは急性GVHDの等級III−IVと相容性あるものであった。NKT細胞の養子免疫伝達はこれらの変化を改善した。
【0291】
実施例2
小腸GVHDの緩和
小腸生検を、全てのグループからのマウスにおいて実施した。NKT細胞の移植を受けたマウスにおいて、全てのGVHD関係組織学パラメータの有意な減衰が観察された。対照においては、等級Iの急性GVHDの特徴であるアポトーシス体(単一細胞壊死)が、数多くの腺窩の中に見られた。一部の標本では、腸腺窩の中に壊死破片が存在し、これは等級IIの急性GVHDと相容性あるものであった。
【0292】
実施例3
GVHD関連肝臓病の改善
NKT細胞の移植を受けたマウスにおいて、穏やかな門脈炎症、リンパ球浸潤及び肝内胆管の断裂が指摘された。これとは対照的に、NKT枯渇されたマウスは、内皮炎が随伴する重症の非化膿性の胆管炎を発生させた。この内皮炎は、静脈内皮に対する損傷、リンパ球浸潤及び腐肉の形成として明らかであった。
【0293】
実施例4
GVHD関連死亡率に対するNKT細胞の養子免疫伝達の効果
4.5×106個のNKT細胞の養子免疫伝達は、生存率を有意に改善した(28日目で85%の生存率)。これとは対照的に、NKT細胞の枯渇は、高い死亡率を導いた(14日目で100%の死亡率)。移植されたNKT細胞の数との直接的相関が指摘された(4.5×106個のNKT細胞の移植で最大の効果)。これらの結果は図8に示されている。
【0294】
実施例5
末梢寛容誘発としての肝内CD8リンパ球トラッピングに対するNKT細胞の養子免疫伝達の効果
寛容誘発は、NKT細胞枯渇されたマウス(p<0.05)と比べた4.5×106個のNKT細胞の移植を受けたマウスにおける肝内CD4/CD8比の16分の1減少と同時の末梢CD4/CD8比の2.26倍増加によって明示されるCD8リンパ球の肝内トラッピングと結びつけられた。これらの結果は図9及び図10の中に示されている。
【0295】
実施例6
血清サイトカインに対するNKT細胞の養子免疫伝達の効果
血清IL−12レベルは、NKT細胞枯渇された動物(p<0.05)と比べて、4.5×106個のNKT細胞の移植を受けた寛容化されたマウスにおいて、有意に低く(52pg/ml対735pg/ml)、血清IL−10レベルは有意に高い(112pg/ml対50pg/ml)ものであった。グループ間の血清IFNγ及びTNFαレベルの有意な差異は全く存在しなかった。これらの結果は図11及び図12で描かれている。
【0296】
結論
4.5×106個のNKT細胞の養子免疫伝達は、GVHDに関係する肝臓、腸及び皮膚の傷害を有意に緩和した。これとは対照的に、NKT細胞の枯渇は、重症のGVHD関連多器官傷害を導いた。
【0297】
少数の調節NKT細胞の移植は、移植片宿主寛容の発達を容易にすることによって、GVHD関係の肝臓、腸及び皮膚損傷の改善を導く。この効果は、Th2型免疫応答に向かってのエフェクタ細胞サブセット及び血清サイトカインの変調と結びつけられた。肝臓は、リンパ球トラッピングを介した寛容誘発に重要な役割を果たす。NKT細胞の移植は、GVHDに対する新規の治療措置として期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0298】
図面の簡単な説明
【図1A−1B】実験的結腸炎における腸粘膜の組織学的評価に対する寛容化の効果
【図1A】寛容化されていないマウスの遠位結腸組織(最後の10cm)由来のパラフィン切片を示す。
【図1B】寛容化されたマウスの遠位結腸組織(最後の10cm)由来のパラフィン切片を示す。 切片はヘマトキシリン−エオシンで染色された。マウス由来のCEPの給餌は、炎症応答及び粘膜損傷の著しい減少(グループB、図1B)により明示される実験的結腸炎の著しい緩和を導いた。これとは対照的に、BSAの給餌を受けた寛容化されていないマウス内(グループA、図1A)では、重症の結腸炎がみられた。
【図2】NK1.1+リンパ球は、寛容されたマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を増大させる。 全てのグループ内のマウスから脾細胞及び肝臓関連リンパ球(LAL)(2.5×106個の脾細胞と0.5×106のLAL)を収獲し、CEP及びAPCの存在下で72時間培養した。以下のヒストグラム内で要約されているフローサイトメトリ分析は、経口寛容誘発の後のNK1.1−LAL枯渇が、NK1.1枯渇されていない寛容化されたマウス(グループE、白色棒)と比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた(グループB、黒色棒)ということを示した。対照NK1.1−枯渇されたグループ(グループF、黒色棒)は、NK1.1枯渇されてないグループ(グループC、白色棒)に比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比の減少を示した。略号:EXP.GR.=実験グループ、rat.=比、CEP=結腸炎抽出タンパク質、n−dep.=枯渇されていない、NK1.1−dep.(NK1.1−枯渇されている)、cont.=対照
【図3】NK1.1+リンパ球は、実験的結腸炎を有する寛容化されていないマウスにおけるCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた。 寛容化されたグループとは対照的に、NK1.1枯渇は、実験的結腸炎を有する寛容化されていないマウス(N−CEP)において反対の効果を有していた。CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比は、NK1.1枯渇されておらず寛容化されていないグループ(グループA、白色棒)と比べて、NK1.1枯渇され寛容化されていないグループ(グループD、黒色棒)において増大した。略号:EXP.GR.=実験グループ、rat.=比、CEP=結腸炎抽出タンパク質、n−dep.=枯渇されていない、NK1.1−dep.(NK1.1−枯渇されている)、cont.=対照
【図4】異なる実験グループからの単離済みリンパ球上でのIL4及びIFNγの発現 該図は、IL4及びIFNγ発現の判定のためのフローサイトメトリ分析の代表的結果を示す。それぞれ、グループB及びEからの寛容化されたNK1.1枯渇されていない及びされているマウス、及びグループA及びDからの寛容化されていないNK1.1枯渇されている及びされていないマウスからの単離済みリンパ球内のIL4及びIFNγの発現。5×104個の小さいリンパ球のゲーティングの後のドットプロットとしてデータが表示されている。ドットプロットの下の数字は、染色済み細胞を表わす。 異なる実験グループがB、E、A及びDで表わされている。略号:EXP.GR.=実験グループ。
【図5】実験的結腸炎をもつ寛容化された及びされていないマウスにおけるCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比に対するインビトロ抗原の暴露の効果 CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比に対する疾病標的抗原の効果の評価のため、全てのグループ(B、E、A、D、C、F)のマウスから脾細胞及び肝臓関連リンパ球(2.5×106個の脾細胞及び0.5×106個のLAL)を収獲し、ConA(コンカナバリン−A)の存在下でかつCEP及びAPCの不在下(白色棒)で12時間培養した。フローサイトメトリ分析は、CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比が、グループB及びE内及び対照グループC及びFの寛容化されたマウスにおいて有意に減少し、グループA及びD内の寛容化されていない(n−CEP)マウスにおいて有意に増大することを示した。 抗原の不在下でのNK1.1枯渇の効果の評価は、抗原の存在下で記述されたものと類似の効果を示した(黒色棒)。グループB内の寛容化されたマウスから収獲されたリンパ球は、寛容化されたグループE内のNK1.1枯渇されたマウスと比べて有意に高いCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を明らかにした。これとは対照的に、NK1.1枯渇は、疾病標的抗原の不在下でグループA及びDからの寛容化されていないマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比の増加を誘発した。略号:EXP.GR.=実験グループ、rat.=比、CEP=結腸炎抽出タンパク質、n−CEP=寛容化されていない。
【図6】異なる実験グループにおけるIL4及びIFNγレベル。 両方のトリプリケートセットから上清流体を収集し、全ての寛容化された及びされていないグループ(異なるグループがA、B、C、D、E、Fとして表わされている)からの全てのマウスについて、サイトカインレベルを測定した。「サンドイッチ」ELISAにより、IL4及びIFNγレベルを測定した。寛容化されたマウスは、Th1からTh2までの免疫応答サイトカイン分泌のシフトを明示した。これらのマウス(グループB)は、IL4レベルの増加及びIFNγレベルの減少を明示した。これとは対照的に、寛容化されていないグループ(グループA、E及びF)からのマウスは高いIFNγ及び低いIL4レベルを示した。略号:EXP.GR.=実験グループ。
【図7】IL12レベルに対するNK1.1枯渇の効果 両方のトリプリケートセットから上清流体を収集し、全ての寛容化された及びされていないグループ(異なるグループがA、B、C、D、E、Fとして表わされている)からの全てのマウスについて、サイトカインレベルを測定した。NK1.1枯渇は、CEPの給餌を受けたグループ(それぞれグループE及びB)内のIL12レベルの増加を導くがCEPの給餌を受けていないグループ(グループA及びD)においては反対の効果を有していた。略号:EXP.GR.=実験グループ。
【図8A−8B】実験的結腸炎における腸粘膜の組織学的評価に対する寛容化の効果
【図8A】寛容化されていないマウスの遠位結腸組織(最後の10cm)からのパラフィン切片を示す。
【図8B】寛容化されたマウスの遠位結腸組織(最後の10cm)からのパラフィン切片を示す。 切片はヘマトキシリン−エオシンで染色された。マウス由来のCEPの給餌は、炎症応答及び粘膜損傷の著しい減少(グループH、図8B)により明示される実験的結腸炎の著しい緩和を導いた。これとは対照的に、BSAの給餌を受けた寛容化されていないマウス内(グループG、図8A)では、重症の結腸炎がみられた。
【図9】NK1.1+リンパ球は、寛容化されたマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を増大させる。 全てのグループ内のマウスから脾細胞及び肝臓関連リンパ球(LAL)(2.5×106個の脾細胞と0.5×106のLAL)を収獲し、CEP及びAPCの存在下で72時間培養した。異なる実験グループはG’、H’、I’、J’、K’及びL’で表されている。フローサイトメトリ分析は、経口寛容誘発の後のNK1.1−LAL枯渇が、NK1.1枯渇されていない寛容化されたマウス(グループK’)と比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた(グループH’)ということを示した。対照NK1.1−枯渇されたグループ(グループL’)は、NK1.1枯渇されてないグループ(グループI’)に比べてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比の減少を示した。NK1.1+リンパ球は、実験的結腸炎を有する寛容化されていないマウスにおいてCD4+IL4+/CD4+IFNγ+比を減少させた。寛容化されたグループとは対照的に、NK1.1枯渇は、実験的結腸炎をもつ寛容化されていないマウスにおいて反対の効果を示した。CD4+IL4+/CD4+IFNγ+比は、NK1.1枯渇されず寛容化されていないグループ(グループG’)に比べてNK1.1枯渇され寛容化されていないグループ(グループJ’)において増大した。略号:EXP.GR.=実験グループ、rat=比。
【図10】異なる実験グループからの単離済みリンパ球上でのIL4及びIFNγの発現 該図は、IL4及びIFNγ発現の判定のためのフローサイトメトリ分析の代表的結果を示す。寛容化されたNK1.1枯渇されていない及びされているマウス、及び寛容化されていないNK1.1枯渇されていない及び枯渇されているマウスからの単離済みリンパ球内のIL4及びIFNγの発現。5×104個の小さいリンパ球のゲーティングの後のドットプロットとしてデータが表示されている。ドットプロットの下の数字は、染色済み細胞のパーセンテージを表わす。代表的な結果が示されている。実験グループ(EXR.GR) 異なる実験グループがG、H、I及びJで表わされている。略号:EXP.GR.=実験グループ。
【図11】NK1.1による肝臓リンパ球細胞毒性 これらの研究においては、100:1〜10:1のE:T比で標的細胞としてYAC−1細胞を使用した。寛容化されておらずNK1.1枯渇されていないマウス(グループH’)からのレシピエントはその他のグループと比べてほぼ全く溶解を示さなかった。グループG’内の寛容化されずNK1.1枯渇されたマウスからのレシピエントは、それぞれグループH’よりも高い溶解を示した。グループI’からのNK1.1枯渇されCEP給餌を受けたマウスからのレシピエントは、グループJ’内のNK1.1枯渇されていないマウスに比べ低い溶解を示した。対照グループからのレシピエントは、それぞれグループL’と比べたグループK’内のマウスについて、23%対22.47%の細胞毒性を有していた。異なる実験グループは、G’、H’、I’、J’、K’及びL’により表わされている。略号:EXP.GR.=実験グループ
【図12】異なる実験グループにおけるサイトカインレベル。 両方のトリプリケートセットから上清流体を収集し、全ての寛容化された及びされていないグループからの全てのマウスについて、サイトカインレベルを測定した。「サンドイッチ」ELISAにより、IL4、IL10及びIFNγレベルを測定した。寛容化されたマウスは、Th1からTh2までの免疫応答サイトカイン分泌のシフトを明示した。これらのマウス(グループH)は、IL4、IL10レベルの増加及びIFNγレベルの減少を明示した。これとは対照的に、寛容化されていないグループ(グループG、J及びK)及び対照グループIからのマウスは高いIFNγ及び低いIL10レベルを示した。グループH内の寛容化されたマウスから収獲されたリンパ球は、寛容化されたグループK内のNK1.1枯渇されたマウスと比べて有意に高いIL4、IL10及び低いIFNγレベルを明らかにした。これとは対照的に、NK1.1枯渇は、抗原の不在下でグループG及びJからの寛容化されていないマウスにおいてIFNγレベルの増加及びIL4、IL10レベルの減少を誘発した。異なる実験グループは、G、H、J及びKにより表わされている。略号:EXP.GR.=実験グループ。IL4及びIL10は、黒色棒でIFNγは白色棒で表わされている。
【図13】グルコース寛容時間曲線
【図14a】MRI脂肪含有量(IP−OP)
【図14b】MRISIインデックス(IP−OP/IP)
【図15a】養子免疫伝達グループ内のCon−Aに応答したASTレベル
【図15b】養子免疫伝達グループ内のCon−Aレベルに応答したALT
【図16】6マウスグループについての平均グルコース寛容曲線
【図17a】平均MRI肝脂肪含有量(SIインデックス)野生型マウス
【図17b】平均MRI肝脂肪含有量(SIインデックス)−ob/obマウス
【図18a】野生型マウスにおけるASTレベル
【図18b】ob/obマウスにおけるASTレベル
【図19】ワクチン接種(Miu/ml)HBVワクチン接種(Miu/ml)後の平均抗−HBS力価
【図20】生存率に対するNKT細胞の移植の効果
【図21】末梢CD4+/CD8+比に対するNKT細胞の移植の効果
【図22】肝臓CD4+/CD8+比に対するNKT細胞の移植の効果
【図23】血清IL−12(pg/ml)に対するNKT細胞の移植の効果
【図24】血清IL−10(pg/ml)に対するNKT細胞の移植の効果
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、前記対象におけるNKT細胞集団を操作する方法であり、
前記NKT細胞集団の操作が、炎症性応答に向かってTh1/Th2細胞バランスの変調をもたらし、前記変調は、前記対象又はもう1つの対象における異なる構成要素、細胞、組織又は器官によって媒介される、治療方法。
【請求項2】
治療を必要とする哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、前記対象におけるNKT細胞集団を操作する方法であり、
前記NKT細胞集団の操作が、抗炎症性又は炎性誘発性応答に向かってTh1/Th2細胞バランスの変調をもたらし、前記変調は、前記対象又はもう1つの対象の免疫系における異なる構成要素、細胞、組織又は器官によって媒介される、治療方法。
【請求項3】
治療を必要とする哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、前記対象におけるNKT細胞集団を操作する方法であり、
前記NKT細胞集団の操作が、抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスの変調をもたらし、前記変調は、前記対象又はもう1つの対象の免疫系の異なる構成要素、細胞、組織又は器官によって媒介されている、治療方法。
【請求項4】
前記構成要素が細胞免疫反応要素、体液性免疫反応要素及びサイトカインを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記操作が、前記NKT細胞集団を枯渇させることにより実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
a.前記対象又はもう1つの対象からNKT細胞を得る工程;
b.結果として得られる教育済みNKT細胞が、抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させ得るような形で、工程(a)で得られたNKT細胞を、ex vivo教育する工程;及び
c.抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させ得る工程(b)で得られた教育済みNKT細胞を前記対象に再導入し、結果としてIL4及びIL10のいずれか1つとIFNγとの定量比の増大をもたらす工程;
を含む、請求項3に記載の哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法。
【請求項7】
a.治療すべき前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患に関連する抗原又はエピトープ、免疫介在性炎症性応答に関連する抗原、又はエピトープ、又はそれらの任意の組合せ;
b.前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない対象の、又は前記対象の、少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c.少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子、又はそれの任意の組合せ;及び
d.(a)、(b)及び(c)の任意の組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下で前記NKT細胞を培養することにより工程(b)の前記ex vivo教育が実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ex vivo教育が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患に関連する抗原の存在下で前記NKT細胞を培養することによって実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗原が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患うドナーから得た同種抗原、異種抗原、同系抗原、自家抗原、非自家抗原、組換えにより調製された抗原、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記肝臓関連細胞が、クッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、肝臓関連幹細胞、アポリポタンパク質、又は任意のその他の肝臓関連リンパ球を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記サイトカインがIL4、IL10、TGFβ、IFNγ、IL12、IL2、IL18又はIL15を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記接着分子がインテグリン、セレクチン又はICAMを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記教育済みNKT細胞が、養子免疫伝達により前記対象に再導入される、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う任意の同種ドナー、異種供給源、同系供給源、自家供給源、非自家供給源、免疫学的に機能的な等価物、又はそれらの任意の組合せに由来する構成要素、細胞、組織、及び/又は器官を前記対象に投与することによって、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の免疫変調を前記対象の体内で惹起する工程をさらに含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項15】
前記構成要素、細胞、組織又は器官が経口投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
治療を必要とする哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、
経口寛容化によって免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患に対する免疫応答のアップ又はダウンレギュレーションを前記対象の体内で惹起する、治療方法。
【請求項17】
治療を必要とする哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、
経口寛容誘発又は経口免疫調節を介して免疫変調する、治療方法。
【請求項18】
経口寛容誘発又は経口免疫調節を介する前記免疫変調には、肝臓抽出物の経口投与が関与する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記投与方法には、経口、静脈内、非経口、経皮、皮下、膣内、腹腔内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所又は直腸投与、又はそれらの任意の組合せが含まれる、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
経口寛容誘発又は経口免疫調節を介する前記免疫変調には、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う任意の同種ドナー、異種供給源、同系供給源、自家供給源、非自家供給源、免疫学的に機能的な等価物又はそれらの任意の組合せに由来する構成要素、細胞、組織、及び/又は器官を含む材料の経口投与が関与する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
経口寛容化、経口寛容誘発又は経口免疫調節による前記障害又は疾患に対する免疫応答のアップ又はダウンレギュレーションを前記対象の体内で惹起することをさらに含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項22】
経口寛容誘発又は経口免疫調節を介する免疫変調をさらに含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項23】
治療を必要とする哺乳類の対象における、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まない)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、経口寛容誘発又は経口免疫調節を介して免疫変調する方法であり、
Th1/Th2バランスがTh2、即ち抗炎症性応答に向かってシフトし、その結果CD4+IL4+IL10+/CD4+IFNγ比が増大する、治療方法。
【請求項24】
治療を必要とする哺乳類の対象における、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まない)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、NKT細胞を変調する方法であり、
Th1/Th2バランスがTh2、即ち抗炎症性応答に向かってシフトし、その結果CD4+IL4+IL10+/CD4+IFNγ比が増大する、治療方法。
【請求項25】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳類の対象がヒトの患者である、請求項25〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記NKT細胞が、CD56マーカーを発現しているNKT細胞である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項33】
哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための治療用組成物であって、
前記組成物は、Th1/Th2細胞バランスを抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かって変調させる能力をもつex vivo教育済みの異種、同系、自家又は非自家NKT細胞を有効成分として含み、さらに薬学的に受容可能な担体、希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤を任意に含む、治療用組成物。
【請求項34】
前記教育済みNKT細胞がIL4及びIL10のうちのいずれか1つ対IFNγの定量比の増大を媒介する、請求項33に記載の治療用組成物。
【請求項35】
前記教育済みNKT細胞が、
a.治療すべき前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患と関連する抗原又はエピトープ、免疫介在性炎症性応答に関連する抗原、又はエピトープ、又はそれらの任意の組合せ;
b.前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない対象の、又は前記対象の、少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c.少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子、又はそれの任意の組合せ;及び
d.(a)、(b)及び(c)の任意の組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下でex vivo培養することにより得られる、請求項34に記載の治療用組成物。
【請求項36】
前記教育済みNKT細胞が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害に関連する抗原の存在下でex vivo培養することによって得られる、請求項35に記載の治療用組成物。
【請求項37】
前記抗原が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患うドナーから得た同種抗原、異種抗原、同系抗原、自家抗原、非自家抗原、組換えにより調製された抗原、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項36に記載の治療用組成物。
【請求項38】
前記肝臓関連細胞が、クッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、及び任意のその他の肝臓関連リンパ球を含む、請求項35に記載の治療用組成物。
【請求項39】
前記サイトカインがIL4、IL10、TGFβ、IFNγ、IL2、IL18、IL12又はIL15を含む、請求項35に記載の治療用組成物。
【請求項40】
前記接着分子がインテグリン、セレクチン又はICAMを含む、請求項35に記載の治療用組成物。
【請求項41】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項42】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項43】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項44】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項45】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項46】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項47】
免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う哺乳類の対象の体内で抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させるための治療用組成物の製造における、教育済み自家、異種、同系又は非自家NKT細胞の使用。
【請求項48】
哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための治療用組成物の製造における教育済み自家、異種、同系又は非自家NKT細胞の使用であって、該教育済みNKT細胞はTh1/Th2細胞バランスを抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かって変調させる、使用。
【請求項49】
前記教育済みNKT細胞が、IL4及びIL10のいずれか1つ対IFNγの定量比の増大を媒介する、請求項47又は48に記載の使用。
【請求項50】
前記組成物の教育済みNKT細胞が、免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う哺乳類の対象においてTh1/TH2細胞バランスを抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かって変調させ、前記NKT細胞が、IL4及びIL10のうちのいずれか1つ対IFNγの定量比の増大を媒介する、請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項51】
前記組成物の教育済みNKT細胞がTh1/Th2細胞バランスを抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かって変調させる、哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項52】
治療を必要とする哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療において使用するためのex vivo教育済み自家、同系、異系又は非自家NKT細胞。
【請求項53】
前記教育済みNKT細胞が、
a.治療すべき前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患と関連する抗原又はエピトープ、免疫介在性炎症性応答に関連する抗原、又はエピトープ、又はそれらの任意の組合せ;
b.前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない対象の、又は前記対象の、少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c.少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子、又はそれの任意の組合せ;及び
d.(a)、(b)及び(c)の任意の組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下でex vivo培養されている、請求項52に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項54】
前記抗原が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患うドナーの同種抗原、異種抗原、同系抗原、自家抗原、非自家抗原、組換えにより調製された抗原、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項53に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項55】
前記肝臓関連細胞が、クッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、又は任意のその他の肝臓関連リンパ球を含む、請求項53に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項56】
前記サイトカインがIL4、IL10、TGFβ、IFNγ、IL2、IL18、IL12又はIL15を含む、請求項53に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項57】
前記接着分子がインテグリン、セレクチン又はICAMを含む、請求項53に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項58】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項52〜57のいずれか1項に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項59】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項52〜57のいずれか1項に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項60】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項52〜57のいずれか1項に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項61】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項52〜57のいずれか1項に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項62】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項52〜57のいずれか1項に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項63】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項52〜57のいずれか1項に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項64】
治療を必要とする哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療における、ex vivo教育済みの自家、同系、異種又は非自家NKT細胞の使用。
【請求項65】
前記教育済みNKT細胞が、請求項53〜57のいずれか1項に記載の通りである、請求項64に記載の使用。
【請求項66】
NKT細胞を特異的に認識する抗体を有効成分として含む、免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための治療用組成物。
【請求項67】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項66に記載の治療用組成物。
【請求項68】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項66に記載の治療用組成物。
【請求項69】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項66に記載の治療用組成物。
【請求項70】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項66に記載の治療用組成物。
【請求項71】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項66に記載の治療用組成物。
【請求項72】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項66の治療用組成物。
【請求項73】
免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う哺乳類の対象においてNKT細胞集団の操作をするための治療用組成物の製造における、NKT細胞を特異的に認識する抗体の使用。
【請求項74】
前記操作が、前記NKT細胞集団の枯渇である、請求項73に記載の使用。
【請求項75】
前記NKT細胞集団の枯渇が、結果として抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させることになる、請求項74に記載の使用。
【請求項76】
哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための治療用組成物の製造における、NKT細胞を特異的に認識する抗体の使用。
【請求項77】
前記免疫関連の障害又は疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項73〜76のいずれか1項に記載の使用。
【請求項78】
前記免疫関連の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項73〜76のいずれか1項に記載の使用。
【請求項79】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項73〜76のいずれか1項に記載の使用。
【請求項80】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項73〜76のいずれか1項に記載の使用。
【請求項81】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項73〜76のいずれか1項に記載の使用。
【請求項82】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項73〜76のいずれか1項に記載の使用。
【請求項83】
治療を必要とする哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療方法であって、前記対象におけるNKT細胞集団を操作する方法であり、
前記NKT細胞集団の操作が、炎性誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスの変調をもたらし、前記変調は、前記対象又はもう1つの対象における免疫系の異なる構成要素、細胞、組織又は器官によって媒介されている、治療方法。
【請求項84】
前記構成要素が細胞免疫反応要素、体液性免疫反応要素及びサイトカインを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記操作が、前記NKT細胞集団の枯渇により実施される、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
a.前記対象又はもう1つの対象からNKT細胞を得る工程;
b.結果として得られる教育済みNKT細胞が、炎性誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させ得るような形で、工程(a)で得られた前記NKT細胞を、ex vivo教育する工程;及び
c.炎性誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させ得る工程(b)で得られた教育済みNKT細胞を前記対象に再導入し、結果としてIL4及びIL10のいずれか1つ対IFNγの定量比の減少をもたらす工程;
を含む、請求項83に記載の哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療方法。
【請求項87】
a.治療すべき免疫関連又は免疫介在性の障害に関連する抗原又はエピトープ、免疫介在性炎症性応答と結びつけられる抗原又はエピトープ、又はそれらの任意の組合せ;
b.前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない対象の、又は前記対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c.少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子、又はその任意の組合せ;及び
d.(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下で前記NKT細胞を培養することにより工程(b)のex vivo教育が実施される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記ex vivo教育が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害に関連する抗原の存在下で前記NKT細胞を培養することによって実施される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記抗原が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患うドナー対象から得た同種抗原、異種抗原、自家抗原又は組換えにより調製された抗原、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記肝臓関連細胞が、クッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、肝臓関連幹細胞及び任意のその他の肝臓関連リンパ球から成る群から選択されている、請求項85に記載の方法。
【請求項91】
前記サイトカインがIL4、IL10、TGFβ、IFNγ、IL12、IL2、IL18又はIL15を含む、請求項87に記載の方法。
【請求項92】
前記接着分子がインテグリン、セレクチン又はICAMを含む、請求項87に記載の方法。
【請求項93】
前記教育済みNKT細胞が、養子免疫伝達により前記対象に再導入される、請求項86に記載の方法。
【請求項94】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う任意の同種ドナー、異種供給源、自家供給源又は免疫学的に機能的な等価物又はそれらの任意の組合せに由来する構成要素、細胞、組織、及び/又は器官を前記対象に投与することによって、免疫関連又は免疫介在性の障害の免疫変調を前記対象の体内で惹起する工程をさらに含む、請求項86又は87に記載の方法。
【請求項95】
前記構成要素、細胞、組織又は器官が経口投与される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
経口寛容化による免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患に対する免疫応答のアップ又はダウンレギュレーションを哺乳類の対象の体内で惹起することにより、かかる治療を必要としている哺乳類の対象において免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を治療するための方法。
【請求項97】
経口寛容誘発又は経口免疫調節を通した免疫変調により、かかる治療を必要としている哺乳類の対象の体内で免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を治療するための方法。
【請求項98】
経口寛容誘発又は経口免疫調節を通した前記免疫変調には、肝臓抽出物の経口投与が関与している、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記投与方法には、経口、静脈内、非経口、経皮、皮下、膣内、腹腔内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所又は直腸投与、又はそれらの任意の組合せが含まれる、請求項94に記載の方法。
【請求項100】
経口寛容誘発又は経口免疫調節を通した前記免疫変調には、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う任意の同種ドナー、異種供給源、同系供給源、自家供給源、非自家供給源、免疫学的に機能的な等価物、又はそれらの任意の組合せに由来する構成要素、細胞、組織、及び/又は器官を含む材料の経口投与が関与する、請求項97に記載の方法。
【請求項101】
経口寛容化、経口寛容誘発又は経口免疫調節による前記障害又は疾患に対する免疫応答のアップ又はダウンレギュレーションを前記対象の体内で惹起することをさらに含む、請求項86又は87に記載の方法。
【請求項102】
経口寛容誘発又は経口免疫調節を介した免疫変調をさらに含む、請求項86又は87に記載の方法。
【請求項103】
治療必要とする哺乳類の対象における、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まない)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、経口寛容誘発又は経口免疫調節を介して免疫変調にする方法であり、
Th1/Th2バランスがTh1、即ち炎症誘発性応答に向かってシフトし、その結果CD4+IL4+IL10+/CD4+IFNγ比が減少する、方法。
【請求項104】
治療を必要とする哺乳類の対象における、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、NKT細胞を変調する方法であり、
Th1/Th2バランスがTh1、即ち炎性誘発性応答に向かってシフトし、その結果CD4+IL4+IL10+/CD4+IFNγ比が減少することになる、方法。
【請求項105】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項83〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項83〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項83〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項83〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項83〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項83〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
前記哺乳類の対象がヒトの患者である、請求項105〜110のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
前記NKT細胞が、CD56マーカーを発現しているNKT細胞である、請求項86又は87に記載の方法。
【請求項113】
哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための治療用組成物であって、
前記組成物は、Th1/Th2細胞バランスを炎性誘発性サイトカイン産生細胞に向かって変調させる能力をもつex vivo教育済みの異種、同系、自家又は非自家NKT細胞を有効成分として含み、さらに薬学的に受容可能な担体、希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤を任意に含む、治療用組成物。
【請求項114】
前記教育済みNKT細胞がIL4及びIL10のうちのいずれか1つ対IFNγの定量比の減少を媒介する、請求項113に記載の治療用組成物。
【請求項115】
a.治療すべき前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患と関連する抗原又はエピトープ、免疫介在性炎症性応答に関連する抗原、又はエピトープ、又はそれらの任意の組合せ;
b.前記障害又は疾患を患う寛容化された又はされていない患者の又は前記対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c.少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子、又はその任意の組合せ;及び
d.上記(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下でex vivo培養することにより前記教育済みNKT細胞が得られる、請求項114に記載の治療用組成物。
【請求項116】
前記教育済みNKT細胞が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害と結びつけられる抗原の存在下でex vivo培養することによって得られる、請求項115に記載の治療用組成物。
【請求項117】
前記抗原が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患うドナーからの同種抗原、異種抗原、同系抗原、自家抗原、非自家抗原、組換えにより調製された抗原、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項116に記載の治療用組成物。
【請求項118】
前記肝臓関連細胞が、クッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、及び任意のその他の肝臓関連リンパ球を含む、請求項115に記載の治療用組成物。
【請求項119】
前記サイトカインがIL4、IL10、TGFβ、IFNγ、IL2、IL18、IL12又はIL15を含む、請求項115に記載の治療用組成物。
【請求項120】
前記接着分子がインテグリン、セレクチン又はICAMを含む、請求項115に記載の治療用組成物。
【請求項121】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項113〜120のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項122】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項113〜120のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項123】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項113〜120のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項124】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項113〜120のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項125】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項113〜120のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項126】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項113〜120のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項127】
免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う哺乳類の対象において、炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させるための治療用組成物の製造における、教育済み自家、異種、同系又は非自家NKT細胞の使用。
【請求項128】
哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための治療用組成物の製造における教育済み自家、異種、同系又は非自家NKT細胞の使用であって、該教育済みNKT細胞がTh1/Th2細胞バランスを炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かって変調させる、使用。
【請求項129】
前記教育済みNKT細胞が、IL4及びIL10のいずれか1つ対IFNγの定量比の増大を媒介する、請求項127又は128に記載の使用。
【請求項130】
前記組成物の教育済みNKT細胞が、免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う哺乳類の対象において炎性誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/TH2細胞バランスを変調させ、前記NKT細胞が、IL4及びIL10のうちのいずれか1つ対IFNγの定量比の減少を媒介する、請求項127または128に記載の治療用組成物。
【請求項131】
前記組成物の教育済みNKT細胞が炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させる、哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための請求項127または128に記載の治療用組成物。
【請求項132】
免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う哺乳類の対象のNKT細胞集団の操作のための治療用組成物の製造における、NKT細胞を特異的に認識する抗体の使用。
【請求項133】
前記操作が、前記NKT細胞集団の枯渇である、請求項132に記載の使用。
【請求項134】
前記NKT細胞集団の枯渇が、結果として炎性誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させることになる、請求項133に記載の使用。
【請求項135】
前記免疫関連の障害又は疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項132〜134のいずれか1項に記載の使用。
【請求項136】
前記免疫関連の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項132〜134のいずれか1項に記載の使用。
【請求項137】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項132〜134のいずれか1項に記載の使用。
【請求項138】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項132〜134のいずれか1項に記載の使用。
【請求項139】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項132〜134のいずれか1項に記載の使用。
【請求項140】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項132〜134のいずれか1項に記載の使用。
【請求項1】
治療を必要とする哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、前記対象におけるNKT細胞集団を操作する方法であり、
前記NKT細胞集団の操作が、炎症性応答に向かってTh1/Th2細胞バランスの変調をもたらし、前記変調は、前記対象又はもう1つの対象における異なる構成要素、細胞、組織又は器官によって媒介される、治療方法。
【請求項2】
治療を必要とする哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、前記対象におけるNKT細胞集団を操作する方法であり、
前記NKT細胞集団の操作が、抗炎症性又は炎性誘発性応答に向かってTh1/Th2細胞バランスの変調をもたらし、前記変調は、前記対象又はもう1つの対象の免疫系における異なる構成要素、細胞、組織又は器官によって媒介される、治療方法。
【請求項3】
治療を必要とする哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、前記対象におけるNKT細胞集団を操作する方法であり、
前記NKT細胞集団の操作が、抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスの変調をもたらし、前記変調は、前記対象又はもう1つの対象の免疫系の異なる構成要素、細胞、組織又は器官によって媒介されている、治療方法。
【請求項4】
前記構成要素が細胞免疫反応要素、体液性免疫反応要素及びサイトカインを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記操作が、前記NKT細胞集団を枯渇させることにより実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
a.前記対象又はもう1つの対象からNKT細胞を得る工程;
b.結果として得られる教育済みNKT細胞が、抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させ得るような形で、工程(a)で得られたNKT細胞を、ex vivo教育する工程;及び
c.抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させ得る工程(b)で得られた教育済みNKT細胞を前記対象に再導入し、結果としてIL4及びIL10のいずれか1つとIFNγとの定量比の増大をもたらす工程;
を含む、請求項3に記載の哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法。
【請求項7】
a.治療すべき前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患に関連する抗原又はエピトープ、免疫介在性炎症性応答に関連する抗原、又はエピトープ、又はそれらの任意の組合せ;
b.前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない対象の、又は前記対象の、少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c.少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子、又はそれの任意の組合せ;及び
d.(a)、(b)及び(c)の任意の組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下で前記NKT細胞を培養することにより工程(b)の前記ex vivo教育が実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ex vivo教育が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患に関連する抗原の存在下で前記NKT細胞を培養することによって実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗原が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患うドナーから得た同種抗原、異種抗原、同系抗原、自家抗原、非自家抗原、組換えにより調製された抗原、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記肝臓関連細胞が、クッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、肝臓関連幹細胞、アポリポタンパク質、又は任意のその他の肝臓関連リンパ球を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記サイトカインがIL4、IL10、TGFβ、IFNγ、IL12、IL2、IL18又はIL15を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記接着分子がインテグリン、セレクチン又はICAMを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記教育済みNKT細胞が、養子免疫伝達により前記対象に再導入される、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う任意の同種ドナー、異種供給源、同系供給源、自家供給源、非自家供給源、免疫学的に機能的な等価物、又はそれらの任意の組合せに由来する構成要素、細胞、組織、及び/又は器官を前記対象に投与することによって、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の免疫変調を前記対象の体内で惹起する工程をさらに含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項15】
前記構成要素、細胞、組織又は器官が経口投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
治療を必要とする哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、
経口寛容化によって免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患に対する免疫応答のアップ又はダウンレギュレーションを前記対象の体内で惹起する、治療方法。
【請求項17】
治療を必要とする哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、
経口寛容誘発又は経口免疫調節を介して免疫変調する、治療方法。
【請求項18】
経口寛容誘発又は経口免疫調節を介する前記免疫変調には、肝臓抽出物の経口投与が関与する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記投与方法には、経口、静脈内、非経口、経皮、皮下、膣内、腹腔内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所又は直腸投与、又はそれらの任意の組合せが含まれる、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
経口寛容誘発又は経口免疫調節を介する前記免疫変調には、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う任意の同種ドナー、異種供給源、同系供給源、自家供給源、非自家供給源、免疫学的に機能的な等価物又はそれらの任意の組合せに由来する構成要素、細胞、組織、及び/又は器官を含む材料の経口投与が関与する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
経口寛容化、経口寛容誘発又は経口免疫調節による前記障害又は疾患に対する免疫応答のアップ又はダウンレギュレーションを前記対象の体内で惹起することをさらに含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項22】
経口寛容誘発又は経口免疫調節を介する免疫変調をさらに含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項23】
治療を必要とする哺乳類の対象における、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まない)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、経口寛容誘発又は経口免疫調節を介して免疫変調する方法であり、
Th1/Th2バランスがTh2、即ち抗炎症性応答に向かってシフトし、その結果CD4+IL4+IL10+/CD4+IFNγ比が増大する、治療方法。
【請求項24】
治療を必要とする哺乳類の対象における、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まない)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、NKT細胞を変調する方法であり、
Th1/Th2バランスがTh2、即ち抗炎症性応答に向かってシフトし、その結果CD4+IL4+IL10+/CD4+IFNγ比が増大する、治療方法。
【請求項25】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳類の対象がヒトの患者である、請求項25〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記NKT細胞が、CD56マーカーを発現しているNKT細胞である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項33】
哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための治療用組成物であって、
前記組成物は、Th1/Th2細胞バランスを抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かって変調させる能力をもつex vivo教育済みの異種、同系、自家又は非自家NKT細胞を有効成分として含み、さらに薬学的に受容可能な担体、希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤を任意に含む、治療用組成物。
【請求項34】
前記教育済みNKT細胞がIL4及びIL10のうちのいずれか1つ対IFNγの定量比の増大を媒介する、請求項33に記載の治療用組成物。
【請求項35】
前記教育済みNKT細胞が、
a.治療すべき前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患と関連する抗原又はエピトープ、免疫介在性炎症性応答に関連する抗原、又はエピトープ、又はそれらの任意の組合せ;
b.前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない対象の、又は前記対象の、少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c.少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子、又はそれの任意の組合せ;及び
d.(a)、(b)及び(c)の任意の組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下でex vivo培養することにより得られる、請求項34に記載の治療用組成物。
【請求項36】
前記教育済みNKT細胞が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害に関連する抗原の存在下でex vivo培養することによって得られる、請求項35に記載の治療用組成物。
【請求項37】
前記抗原が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患うドナーから得た同種抗原、異種抗原、同系抗原、自家抗原、非自家抗原、組換えにより調製された抗原、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項36に記載の治療用組成物。
【請求項38】
前記肝臓関連細胞が、クッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、及び任意のその他の肝臓関連リンパ球を含む、請求項35に記載の治療用組成物。
【請求項39】
前記サイトカインがIL4、IL10、TGFβ、IFNγ、IL2、IL18、IL12又はIL15を含む、請求項35に記載の治療用組成物。
【請求項40】
前記接着分子がインテグリン、セレクチン又はICAMを含む、請求項35に記載の治療用組成物。
【請求項41】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項42】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項43】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項44】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項45】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項46】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項47】
免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う哺乳類の対象の体内で抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させるための治療用組成物の製造における、教育済み自家、異種、同系又は非自家NKT細胞の使用。
【請求項48】
哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための治療用組成物の製造における教育済み自家、異種、同系又は非自家NKT細胞の使用であって、該教育済みNKT細胞はTh1/Th2細胞バランスを抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かって変調させる、使用。
【請求項49】
前記教育済みNKT細胞が、IL4及びIL10のいずれか1つ対IFNγの定量比の増大を媒介する、請求項47又は48に記載の使用。
【請求項50】
前記組成物の教育済みNKT細胞が、免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う哺乳類の対象においてTh1/TH2細胞バランスを抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かって変調させ、前記NKT細胞が、IL4及びIL10のうちのいずれか1つ対IFNγの定量比の増大を媒介する、請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項51】
前記組成物の教育済みNKT細胞がTh1/Th2細胞バランスを抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かって変調させる、哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための請求項33〜40のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項52】
治療を必要とする哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療において使用するためのex vivo教育済み自家、同系、異系又は非自家NKT細胞。
【請求項53】
前記教育済みNKT細胞が、
a.治療すべき前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患と関連する抗原又はエピトープ、免疫介在性炎症性応答に関連する抗原、又はエピトープ、又はそれらの任意の組合せ;
b.前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない対象の、又は前記対象の、少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c.少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子、又はそれの任意の組合せ;及び
d.(a)、(b)及び(c)の任意の組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下でex vivo培養されている、請求項52に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項54】
前記抗原が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患うドナーの同種抗原、異種抗原、同系抗原、自家抗原、非自家抗原、組換えにより調製された抗原、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項53に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項55】
前記肝臓関連細胞が、クッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、又は任意のその他の肝臓関連リンパ球を含む、請求項53に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項56】
前記サイトカインがIL4、IL10、TGFβ、IFNγ、IL2、IL18、IL12又はIL15を含む、請求項53に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項57】
前記接着分子がインテグリン、セレクチン又はICAMを含む、請求項53に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項58】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項52〜57のいずれか1項に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項59】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項52〜57のいずれか1項に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項60】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項52〜57のいずれか1項に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項61】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項52〜57のいずれか1項に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項62】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項52〜57のいずれか1項に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項63】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項52〜57のいずれか1項に記載の教育済みNKT細胞。
【請求項64】
治療を必要とする哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療における、ex vivo教育済みの自家、同系、異種又は非自家NKT細胞の使用。
【請求項65】
前記教育済みNKT細胞が、請求項53〜57のいずれか1項に記載の通りである、請求項64に記載の使用。
【請求項66】
NKT細胞を特異的に認識する抗体を有効成分として含む、免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための治療用組成物。
【請求項67】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項66に記載の治療用組成物。
【請求項68】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項66に記載の治療用組成物。
【請求項69】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項66に記載の治療用組成物。
【請求項70】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項66に記載の治療用組成物。
【請求項71】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項66に記載の治療用組成物。
【請求項72】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項66の治療用組成物。
【請求項73】
免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う哺乳類の対象においてNKT細胞集団の操作をするための治療用組成物の製造における、NKT細胞を特異的に認識する抗体の使用。
【請求項74】
前記操作が、前記NKT細胞集団の枯渇である、請求項73に記載の使用。
【請求項75】
前記NKT細胞集団の枯渇が、結果として抗炎症性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させることになる、請求項74に記載の使用。
【請求項76】
哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための治療用組成物の製造における、NKT細胞を特異的に認識する抗体の使用。
【請求項77】
前記免疫関連の障害又は疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項73〜76のいずれか1項に記載の使用。
【請求項78】
前記免疫関連の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項73〜76のいずれか1項に記載の使用。
【請求項79】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項73〜76のいずれか1項に記載の使用。
【請求項80】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項73〜76のいずれか1項に記載の使用。
【請求項81】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項73〜76のいずれか1項に記載の使用。
【請求項82】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項73〜76のいずれか1項に記載の使用。
【請求項83】
治療を必要とする哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療方法であって、前記対象におけるNKT細胞集団を操作する方法であり、
前記NKT細胞集団の操作が、炎性誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスの変調をもたらし、前記変調は、前記対象又はもう1つの対象における免疫系の異なる構成要素、細胞、組織又は器官によって媒介されている、治療方法。
【請求項84】
前記構成要素が細胞免疫反応要素、体液性免疫反応要素及びサイトカインを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記操作が、前記NKT細胞集団の枯渇により実施される、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
a.前記対象又はもう1つの対象からNKT細胞を得る工程;
b.結果として得られる教育済みNKT細胞が、炎性誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させ得るような形で、工程(a)で得られた前記NKT細胞を、ex vivo教育する工程;及び
c.炎性誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させ得る工程(b)で得られた教育済みNKT細胞を前記対象に再導入し、結果としてIL4及びIL10のいずれか1つ対IFNγの定量比の減少をもたらす工程;
を含む、請求項83に記載の哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害の治療方法。
【請求項87】
a.治療すべき免疫関連又は免疫介在性の障害に関連する抗原又はエピトープ、免疫介在性炎症性応答と結びつけられる抗原又はエピトープ、又はそれらの任意の組合せ;
b.前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う寛容化された又はされていない対象の、又は前記対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c.少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子、又はその任意の組合せ;及び
d.(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下で前記NKT細胞を培養することにより工程(b)のex vivo教育が実施される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記ex vivo教育が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害に関連する抗原の存在下で前記NKT細胞を培養することによって実施される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記抗原が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患うドナー対象から得た同種抗原、異種抗原、自家抗原又は組換えにより調製された抗原、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記肝臓関連細胞が、クッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、肝臓関連幹細胞及び任意のその他の肝臓関連リンパ球から成る群から選択されている、請求項85に記載の方法。
【請求項91】
前記サイトカインがIL4、IL10、TGFβ、IFNγ、IL12、IL2、IL18又はIL15を含む、請求項87に記載の方法。
【請求項92】
前記接着分子がインテグリン、セレクチン又はICAMを含む、請求項87に記載の方法。
【請求項93】
前記教育済みNKT細胞が、養子免疫伝達により前記対象に再導入される、請求項86に記載の方法。
【請求項94】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害を患う任意の同種ドナー、異種供給源、自家供給源又は免疫学的に機能的な等価物又はそれらの任意の組合せに由来する構成要素、細胞、組織、及び/又は器官を前記対象に投与することによって、免疫関連又は免疫介在性の障害の免疫変調を前記対象の体内で惹起する工程をさらに含む、請求項86又は87に記載の方法。
【請求項95】
前記構成要素、細胞、組織又は器官が経口投与される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
経口寛容化による免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患に対する免疫応答のアップ又はダウンレギュレーションを哺乳類の対象の体内で惹起することにより、かかる治療を必要としている哺乳類の対象において免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を治療するための方法。
【請求項97】
経口寛容誘発又は経口免疫調節を通した免疫変調により、かかる治療を必要としている哺乳類の対象の体内で免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を治療するための方法。
【請求項98】
経口寛容誘発又は経口免疫調節を通した前記免疫変調には、肝臓抽出物の経口投与が関与している、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記投与方法には、経口、静脈内、非経口、経皮、皮下、膣内、腹腔内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所又は直腸投与、又はそれらの任意の組合せが含まれる、請求項94に記載の方法。
【請求項100】
経口寛容誘発又は経口免疫調節を通した前記免疫変調には、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う任意の同種ドナー、異種供給源、同系供給源、自家供給源、非自家供給源、免疫学的に機能的な等価物、又はそれらの任意の組合せに由来する構成要素、細胞、組織、及び/又は器官を含む材料の経口投与が関与する、請求項97に記載の方法。
【請求項101】
経口寛容化、経口寛容誘発又は経口免疫調節による前記障害又は疾患に対する免疫応答のアップ又はダウンレギュレーションを前記対象の体内で惹起することをさらに含む、請求項86又は87に記載の方法。
【請求項102】
経口寛容誘発又は経口免疫調節を介した免疫変調をさらに含む、請求項86又は87に記載の方法。
【請求項103】
治療必要とする哺乳類の対象における、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まない)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、経口寛容誘発又は経口免疫調節を介して免疫変調にする方法であり、
Th1/Th2バランスがTh1、即ち炎症誘発性応答に向かってシフトし、その結果CD4+IL4+IL10+/CD4+IFNγ比が減少する、方法。
【請求項104】
治療を必要とする哺乳類の対象における、骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療方法であって、NKT細胞を変調する方法であり、
Th1/Th2バランスがTh1、即ち炎性誘発性応答に向かってシフトし、その結果CD4+IL4+IL10+/CD4+IFNγ比が減少することになる、方法。
【請求項105】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項83〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項83〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項83〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項83〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項83〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項83〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
前記哺乳類の対象がヒトの患者である、請求項105〜110のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
前記NKT細胞が、CD56マーカーを発現しているNKT細胞である、請求項86又は87に記載の方法。
【請求項113】
哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための治療用組成物であって、
前記組成物は、Th1/Th2細胞バランスを炎性誘発性サイトカイン産生細胞に向かって変調させる能力をもつex vivo教育済みの異種、同系、自家又は非自家NKT細胞を有効成分として含み、さらに薬学的に受容可能な担体、希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤を任意に含む、治療用組成物。
【請求項114】
前記教育済みNKT細胞がIL4及びIL10のうちのいずれか1つ対IFNγの定量比の減少を媒介する、請求項113に記載の治療用組成物。
【請求項115】
a.治療すべき前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患と関連する抗原又はエピトープ、免疫介在性炎症性応答に関連する抗原、又はエピトープ、又はそれらの任意の組合せ;
b.前記障害又は疾患を患う寛容化された又はされていない患者の又は前記対象の少なくとも1つの肝臓関連細胞;
c.少なくとも1つのサイトカイン、又は接着分子、又はその任意の組合せ;及び
d.上記(a)、(b)及び(c)のいずれかの組合せ;
のうちのいずれか1つの存在下でex vivo培養することにより前記教育済みNKT細胞が得られる、請求項114に記載の治療用組成物。
【請求項116】
前記教育済みNKT細胞が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害と結びつけられる抗原の存在下でex vivo培養することによって得られる、請求項115に記載の治療用組成物。
【請求項117】
前記抗原が、前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患うドナーからの同種抗原、異種抗原、同系抗原、自家抗原、非自家抗原、組換えにより調製された抗原、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項116に記載の治療用組成物。
【請求項118】
前記肝臓関連細胞が、クッパー細胞、星細胞、肝臓内皮細胞、及び任意のその他の肝臓関連リンパ球を含む、請求項115に記載の治療用組成物。
【請求項119】
前記サイトカインがIL4、IL10、TGFβ、IFNγ、IL2、IL18、IL12又はIL15を含む、請求項115に記載の治療用組成物。
【請求項120】
前記接着分子がインテグリン、セレクチン又はICAMを含む、請求項115に記載の治療用組成物。
【請求項121】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項113〜120のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項122】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項113〜120のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項123】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項113〜120のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項124】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項113〜120のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項125】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項113〜120のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項126】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項113〜120のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項127】
免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う哺乳類の対象において、炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させるための治療用組成物の製造における、教育済み自家、異種、同系又は非自家NKT細胞の使用。
【請求項128】
哺乳類の対象の免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための治療用組成物の製造における教育済み自家、異種、同系又は非自家NKT細胞の使用であって、該教育済みNKT細胞がTh1/Th2細胞バランスを炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かって変調させる、使用。
【請求項129】
前記教育済みNKT細胞が、IL4及びIL10のいずれか1つ対IFNγの定量比の増大を媒介する、請求項127又は128に記載の使用。
【請求項130】
前記組成物の教育済みNKT細胞が、免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う哺乳類の対象において炎性誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/TH2細胞バランスを変調させ、前記NKT細胞が、IL4及びIL10のうちのいずれか1つ対IFNγの定量比の減少を媒介する、請求項127または128に記載の治療用組成物。
【請求項131】
前記組成物の教育済みNKT細胞が炎症誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させる、哺乳類の対象における免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患の治療のための請求項127または128に記載の治療用組成物。
【請求項132】
免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患を患う哺乳類の対象のNKT細胞集団の操作のための治療用組成物の製造における、NKT細胞を特異的に認識する抗体の使用。
【請求項133】
前記操作が、前記NKT細胞集団の枯渇である、請求項132に記載の使用。
【請求項134】
前記NKT細胞集団の枯渇が、結果として炎性誘発性サイトカイン産生細胞に向かってTh1/Th2細胞バランスを変調させることになる、請求項133に記載の使用。
【請求項135】
前記免疫関連の障害又は疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項132〜134のいずれか1項に記載の使用。
【請求項136】
前記免疫関連の障害又は疾患が真性糖尿病又は耐糖能異常である、請求項132〜134のいずれか1項に記載の使用。
【請求項137】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が肥満である、請求項132〜134のいずれか1項に記載の使用。
【請求項138】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患がメタボリック・シンドロームである、請求項132〜134のいずれか1項に記載の使用。
【請求項139】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が移植片対宿主病である、請求項132〜134のいずれか1項に記載の使用。
【請求項140】
前記免疫関連又は免疫介在性の障害又は疾患が骨粗鬆症、多発性硬化症、SLE、関節リウマチ、JRA、眼疾患、皮膚疾患、腎臓疾患、血液疾患、ITP、PA、自己免疫肝疾患、その他のリウマチ性疾患、内分泌疾患(糖尿病を含まず)、脈管炎、強皮症、CREST、神経系疾患、肺疾患、筋炎、耳疾患、又は重症筋無力症を含む、請求項132〜134のいずれか1項に記載の使用。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14a】
【図14b】
【図15a】
【図15b】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図18a】
【図18b】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14a】
【図14b】
【図15a】
【図15b】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図18a】
【図18b】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2007−533633(P2007−533633A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533946(P2006−533946)
【出願日】平成16年9月20日(2004.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/030891
【国際公開番号】WO2005/032463
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(500334070)エンゾー セラピューティクス, インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】Enzo Therapeutics, Inc.
【住所又は居所原語表記】C/O Enzo Biochem, Inc., 527 Madison Avenue, 9th Floor, New York, New York 10022, United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月20日(2004.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/030891
【国際公開番号】WO2005/032463
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(500334070)エンゾー セラピューティクス, インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】Enzo Therapeutics, Inc.
【住所又は居所原語表記】C/O Enzo Biochem, Inc., 527 Madison Avenue, 9th Floor, New York, New York 10022, United States of America
【Fターム(参考)】
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