説明

散布作業車の散布ブーム

【課題】 従来、散布作業車の散布ブ−ムは、左右横側方に長く延出支持されているため、車両が凹凸の激しい圃場を走行する場合や、障害物に接触した場合には、散布ブ−ムが上下前後に振れ続け、過度の衝撃負荷を受けることにより、ブ−ムの損傷、変形を招く問題があった。この発明はかかる問題点を解消することを目的とする。
【解決手段】 散布作業車に、センターブーム(9a)と左右サイドブーム(9b、9b)から成る散布ブームを昇降自在に備える。前記サイドブームを車体に対し左右側方に拡開自在に延出支持する。このサイドブーム(9b)を途中部から分割し、その分割された両ブーム(9b1,9b2)間にゴム板から成る衝撃吸収手段(19)を介在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、散布作業車の散布ブームの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所謂ブームスプレーヤーと呼ばれる散布作業車は、車体に対し左右側方に散布ブームを拡開自在に支持し、この散布ブームに備えた噴霧ノズルから薬液を散布する構成となっている。
【特許文献1】特開平3-21364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記散布作業車の散布ブームは、左右側方に長く延出支持されているため、車両が畝を立てた圃場や荒れた圃場を走行する場合には、散布ブームが上下前後に振れ続けて、過度の衝撃負荷を受けることにより、ブームの損傷、変形を招く恐れがあった。この発明はかかる問題点を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0005】
即ち、請求項1記載の発明は、車体(1)に対し左右側方に延出支持されて薬液を散布する散布ブーム(9,9)であって、この散布ブーム(9)を途中部から分割し、その分割された両ブーム(9b1,9b2)間に衝撃吸収手段(19)を介在したことを特徴とする散布作業車の散布ブームの構成とした。
(請求項1の作用)
散布作業を行う時には、散布ブーム(9,9)は車体の横側方に大きく張り出した状態にする。そして、このような散布作業中、機体の大きな揺れに対して散布ブーム(9,9)が上下や前後の振れに伴う過度の衝撃を受けても、衝撃吸収手段(19)によって衝撃負荷を吸収緩和するので、ブームの不慮の損傷、破損を招くことがない。
【発明の効果】
【0006】
以上要するに、この発明によれば、散布ブーム(9,9)を途中部から分割して両者間に衝撃吸収手段(19)を設けたので、車両が凹凸の激しい圃場を走行する場合や、障害物に接触した場合に、散布ブーム(9,9)が上下前後の振れによる衝撃を受けても衝撃吸収手段(19)によってその衝撃を吸収緩和することができ、ブーム(9)の損傷、変形を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を搭載した散布作業車を図面に基づき説明する。
【0008】
図1及び図2は、散布作業車を示すものであり、この車体1の前部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケース2内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を左右前輪3と左右後輪4とに伝えるようにしている。
【0009】
機体後部には薬液を収容している薬液タンク5が設置され、該薬液タンク5の上部に操縦席6が、その前方にはステアリングハンドル7が装備されている。薬液タンク5内の薬液は、ポンプ8により薬液ホース10を介して後述する散布ブーム9に備えた噴霧ノズル11から噴出されるようになっている。また前記ポンプ8はミッションケース2から後方へ突出軸架されたPTO軸12の回転を伝達して駆動する構成となっている。
【0010】
機体前部の左右両側には散布ブーム9,9を後傾状態で支持するための支持枠13,13が延設支持され、この先端の保持具14,14によって係止保持されるようになっている。
【0011】
次に、散布ブーム9の構成について詳しく説明する。
【0012】
散布ブーム9は、車体前部のセンターブーム9aと、この左右両端に接続したサイドブーム9b,9bとから構成され、車体に対し平行リンク(以下、昇降リンク機構R)にて昇降自在に備えられている。
【0013】
図2と図3に示すように、中央のセンターブーム9aは車体の左右横幅、詳細には左右前輪3,3のトレッド幅に略一致し、その左右両側に連結される左右サイドブーム9b,9bは中央の左右巾よりも長く構成されている。またこの左右各サイドブーム9bは、センターブーム9aに対しピン軸15周りに回動自在に連結され、先端側をブーム開閉シリンダ16により車体内側へ回動させて収納状態に保持したり、或いは地面と略平行となる様、拡開して散布作業姿勢状態に回動させて保持する構成となっている。また、このサイドブーム9bは、前方からの外力が加わった時には安全スプリング17に抗して後方へ逃げるようになっており、外力がなくなると、元位置、詳しくはストッパボルト18に当接する位置まで復帰する構成となっている。
【0014】
更にこの左右の各散布ブーム9b,9bは、図3と図4に示すように、これを途中部から分割(以下、内側ブーム9b1、外側ブーム9b2)する構成とし、そして、これら両ブーム9b1,9b2間には、衝撃吸収手段として二枚のゴム板19(緩衝吸収手段)を内壁に沿わせた状態で介装して内外のブーム9b1,9b2を連結保持する構成となっている。図中符号20はその連結ボルトを示す。また、散布配管ホース10においても、弾性変位可能なゴム製のホースにて接続構成する。
【0015】
尚、この発明の別形態としては、図5と図6に示すように、前記両ブーム9b1,9b2の外壁に沿わせた状態で、二枚のゴム板19を取り付ける構成としても良い。
【0016】
以上のように、前記散布ブーム9では、前後、上下、左右方向からの衝撃負荷に対して柔軟に弾性変位するよう構成している。従って、散布作業時の畦越え走行時や荒れた圃場での移動時に散布ブーム9が大きく揺れて、散布ブーム9に過度の衝撃負荷を受けても、上記ゴム板19が吸収緩和することになり、ブーム自体の亀裂、切損などの不具合を防ぐことができる。
【0017】
次に、図7に基づいて、前記散布ブーム9を利用した散布作業車の散布制御装置について説明する。
【0018】
従来、散布作業車の散布制御は、散布ブーム9に予め指定された規格のノズル11を取り付け、このノズル11に応じた特定係数Zを用いて、散布圧及び散布流量を車速に連動して、噴霧する構成となっている。この為、規格外のノズル11を利用することができず、同ノズル11が損傷したときには、独自に修理できなかったり、調達に時間を要するという課題が有った。
【0019】
よって、ここでは、 図7に示すように、散布作業車のコントローラ30の入力側にポンプ8から送り込まれた薬液の圧Pを検出する圧力センサ31と、流量Qを検出する流量センサ32を接続すると共に、前記ノズル11の特定係数を判定する為の自己診断スイッチ33を備える構成としている。また出力側には、電動モータ34を接続し、散布液流路の開度を適宜変更する構成としている。
【0020】
具体的には、前記ノズル特性係数Zを判定するには、まず前記散布ブーム9にユーザの選んだノズル11を装着すると共に薬液タンク5に清水を収納して、前記自己診断スイッチ33を押して車両を判定モードの状態に切り替える。すると、前記コントローラ30は、試行的に一定時間だけ噴霧を行い、この間に低圧から高圧に至る様々な散布圧とこれに応じた散布量を検知する。また前記コントローラ30による自己診断中に、散布圧に応じた流量が得られない場合は、点検を促すエラー表示をする構成としている。尚、前記ノズル特定定数Zを判定する式としては、Z=√P/Qを利用する。
【0021】
これにより、コントローラ30では特定係数が決定されので、オペレータが選んだ作業に合った散布ノズル11を使用することができ、前記のように、ノズル11が損傷しても自分で修理ができ、専用のノズルを調達することが無くなり、作業の中断時間を削減したり、部品コストを抑えることができる。
【0022】
尚、前記判定式のQは、ブームに装着した全ノズルに対する流量を示すので、別途スイッチにより個数を指定し、このノズル1つの特定定数を算出し記憶する構成とすれば、例えば散布幅の異なる圃場でノズル11の個数を変更した場合にも、自己診断を行うこと無く作業を開始することができる。
【0023】
また図19に示す例は、散布ブーム9に、少量散布ノズル11aと慣行散布ノズル11bを切替えて装着可能に構成した散布作業車において、少量散布ノズル11aのコネクタ接続部に検出スイッチ41を設け、この検出スイッチ41が少量散布ノズル11aの接続を検知した場合は、前記コントローラ30により車両を自動的に少量散布モードによる散布制御に切り替える構成としている。
【0024】
従来は散布ホースを少量散布ノズル11aのコネクタに接続すると、コントローラ30の散布モードを別途指定スイッチにより少量散布モードに切り替えていたものであるが、本例の場合はノズル11a,11bを取付けると自動的に適した散布モードが設定されるので、作業性が向上し、モードの切替忘れによる散布精度の低下も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】散布作業車の側面図。
【図2】同上正面図。
【図3】散布ブームの要部平面図。
【図4】S1ーS1断面図。
【図5】別形態の散布ブームの斜視図。
【図6】別形態の散布ブームの拡大斜視図。
【図7】噴霧ノズルの自己診断システムの説明図。
【図8】少量散布ノズルの検知スイッチを示す正面図。
【符号の説明】
【0026】
1 車体
2 ミッションケース
3 前輪
4 後輪
5 薬液タンク
8 ポンプ
9a センターブーム(散布ブーム)
9b サイドブーム(散布ブーム)
10 散布ホース
11 噴霧ノズル
19 ゴム板19(衝撃吸収手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(1)に対し左右側方に延出支持されて薬液を散布する散布ブーム(9,9)であって、この散布ブーム(9)を途中部から分割し、その分割された両ブーム(9b1,9b2)間に衝撃吸収手段(19)を介在したことを特徴とする散布作業車の散布ブーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−7109(P2006−7109A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188298(P2004−188298)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】