説明

散気筒及びこれを備えた好気槽

【課題】散気孔の目詰まりが防止でき、圧力損失の低減を達成することができる散気筒、及び、これを備える好気槽を提供すること。
【解決手段】軸線方向及び軸線回りに複数の散気孔Sが並設された散気筒5であって、軸線回りの方向の任意の位置において、軸線方向に複数並設された散気孔Sの開口面積の合計について、散気筒5を設置したときの鉛直方向下側の並びの合計のほうが、これより上側の並びの合計よりも大きくした散気筒5により、水圧の高い下側の散気孔Sからの発泡を容易とし水圧の低い上側と同程度に発泡させるのを可能として、発泡を散気面全体で均一にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散気筒及びこれを備えた好気槽に関する。
【背景技術】
【0002】
排水処理施設において排水を好気性微生物により浄化するために、反応タンク内の好気性微生物に空気を供給するための散気装置を水中に設置するのが一般的である。このような散気装置では、送風機からライザー管及びヘッダー管を通じて散気装置に圧入された空気が、散気装置の散気面に多数設けられた散気孔から微細気泡として水中に供給され、排水への酸素溶解が行われる。散気装置を構成する散気部材の形状としては、板状(特許文献1)、筒状(特許文献2)等、様々な形状が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−103387号公報
【特許文献2】特開2007−14842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筒状の散気部材(以下、散気筒という)を長期間使用した場合、何らかの原因により散気孔の目詰まりが発生し、圧力損失が増大することがある。そこで本発明は、散気孔の目詰まりが防止でき、圧力損失の低減を達成することができる散気筒、及び、これを備える好気槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで、散気孔の目詰まりが発生し、圧力損失が増大する原因について本発明者等が鋭意検討した結果、次のことが判明した。すなわち、水中に設置された散気筒では、その上側と下側との間に散気筒の直径分の水深差があることから、水圧の低い上側からは発泡しやすく、水圧の高い下側からは発泡しにくい。このため、特に発泡しにくい下側の散気孔に汚水等が入り込み散気装置内部に浸入した汚水が乾燥して乾燥汚泥片となり、散気孔の目詰まりが発生し、圧力損失の増大を引き起こすことが分かった。更に、このような状況は、発泡させる空気量が少ない場合に特に顕著となることが分かった。
【0006】
そこで本発明は、軸線方向及び軸線回りに複数の散気孔が並設された散気筒であって、軸線回りの方向の任意の位置において、軸線方向に複数並設された散気孔の開口面積の合計は、散気筒を設置したときの鉛直方向下側の並びの合計のほうが、これより上側の並びの合計よりも大きい散気筒を提供する。このような散気筒によれば、水圧の高い下側の散気孔からの発泡が容易となり、水圧の低い上側と同程度に発泡させることができる。すなわち、発泡を散気面全体で均一にすることができ、散気孔の目詰まりが防止でき、圧力損失の低減を達成することができる。
【0007】
ここで、鉛直方向下側の並びの散気孔は、これより上側の並びの散気孔よりも、孔径が大きい、又は、孔を構成するスリット長及びスリット幅の少なくとも一方が大きいことが好ましい。散気孔の形状をこのような構成とすることにより、水圧の高い下側の散気孔からの発泡がより容易なものとなる。
【0008】
また、鉛直方向下側の並びの散気孔は、これより上側の並びの散気孔よりも数が多いことが好ましい。このような構成によれば、散気孔の形状等が散気筒の上側と下側とでたとえ同一である場合であっても、水圧の高い下側の散気孔からの発泡がより容易なものとなる。
【0009】
これによって、発泡させる空気量が少ない場合であっても、水圧の高い下側から発泡がしやすくなり、発生した気泡は水圧の低い上側の表面に沿って上昇して、目詰まり抑制の効果が期待できる。
【0010】
また、本発明は、上記散気筒を備えた好気槽を提供する。本発明の散気筒は、上述のように、散気筒の散気面全体から均一に発泡され、散気孔の目詰まりが防止でき、圧力損失の低減を達成することができるため、排水を好気性微生物により浄化する好気槽に対して好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、散気孔の目詰まりを防止でき、圧力損失の低減を達成することができる散気筒、及び、これを備える好気槽を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の散気筒の一部破断側面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った端面図である。
【図3】本実施形態の散気筒の散気膜の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本実施形態の散気筒5の一部破断側面図、図2は、図1のII−II線に沿った端面図である。図1に示すように、散気装置1は、送風機に通じ上下方向に延びるライザー管(図示せず)と連結され水平方向(図1の紙面垂直方向)に延びる空気供給管3と、その空気供給管3の軸線に略直交する水平方向(図1の左右方向)に延びる散気筒5とを含んで構成されている。この散気筒5は、空気供給管3に対し、紙面垂直方向に複数が並設されている。
【0015】
空気供給管3と散気筒5との連結部には、通気孔3aが形成されており、空気供給管3は、ライザー管を通して送風されてきた空気を通気孔3aを通して散気筒5に供給する。
【0016】
散気筒5は、円筒状の支持管7を有すると共に、外筒を成す散気膜31を有する。空気供給管3からの空気は、上記通気孔3aを介し、支持管7と散気膜31との間の隙間35に導入される。
【0017】
散気膜31は、例えばゴム等の伸縮性を有する素材から構成されており、散気膜31にあっては、散気孔として散気スリットSが複数形成されている。
【0018】
ここで、散気膜31に形成された散気スリットSについて説明する。図3は、本実施形態の散気筒5の散気膜31の展開図である。この展開図は、散気膜31を支持管7の下側から切り開いて展開した様子を示している。
【0019】
散気スリットSは、軸線方向(図示左右方向)及び軸線回り(図示上下方向)に複数並設されている。そして、軸線回りの方向の任意の位置において、軸線方向に複数並設された散気スリットSの開口面積の合計について、散気筒5を設置したときの鉛直方向下側の並びの合計のほうが、これより上側の並びの合計よりも大きくなるように散気スリットSが形成されている。
【0020】
言い換えると、散気膜31の表面のうち、散気スリットSを有する領域を、散気筒5を設置したときに鉛直方向上側となる部分から下側となる部分へ沿って複数の領域に等分して複数の等分領域に分割したことを想定した場合に、散気時の散気スリットSの開口面積について、下側に位置する等分領域における開口面積の合計が、上側に位置する等分領域における開口面積の合計よりも大きくなるように散気スリットSが形成されている。
【0021】
具体的には、軸線回りの方向の任意の位置における鉛直方向下側の並び(例えば1列)の散気スリットSが、これより上側の並び(例えば1列)の散気スリットSよりもスリット幅(図示上下方向幅)が大きい形状とされている。すなわち、当該スリット幅は、散気筒5の鉛直方向上側となる部分から下側となる部分へ向かって徐々に大きくなる態様とされている。
【0022】
上記構成の散気装置1では、送風機からの送風により通気孔3aを介して送られてきた空気は、支持管7の外周面と散気膜31との隙間35に入り、散気膜31を膨張させて散気スリットSから被処理水中に微細気泡として拡散される。そのため、支持管7の長手方向にわたって微細気泡が均等に散気されやすくなっている。
【0023】
特に、本実施形態では、軸線方向に複数並設された散気スリットSの開口面積の合計について、鉛直方向下側の並びの合計のほうが、これより上側の並びの合計よりも大きくなるように散気スリットSが形成されているため、水圧の高い下側の散気孔からの発泡が容易となり、水圧の低い上側と同程度に発泡する。このため、発泡が散気面全体で均一となり、散気孔の目詰まりが防止でき、圧力損失の低減が達成される。
【0024】
また、従来は、発泡させる空気量が少ない場合(送風機の駆動回転数を低く設定している場合)等においては、水圧の低い上側の散気孔からの発泡のみで水圧の高い下側の散気孔からの発泡が不十分で、下側の散気孔に目詰まりが発生しやすかったが、本実施形態によれば、発泡させる空気量が少ない場合等であっても発泡が散気面全体で均一とすることができるため、そのような問題が生じにくい。
【0025】
また、例えばメンテナンス等により、送風機からの送風を停止した場合には、散気膜31は、散気膜31自体の伸縮性(弾性)と、被処理水の圧力により散気スリットSが閉じた状態で支持管7に密着する。このとき、散気膜31の伸縮性により散気スリットSの開口が狭くなるため、散気装置1の運転停止時における散気スリットSの目詰まりが一層防止される。
【0026】
本実施形態の散気筒5は、上述のように、散気筒5の散気面全体から均一に発泡され、散気孔Sの目詰まりが防止でき、圧力損失の低減を達成することができるため、排水を好気性微生物により浄化する好気槽に対して好適に用いることができる。
【0027】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、図3では、開口面積の合計に関して、散気筒を設置したときの鉛直方向下側の並びの合計のほうをこれより上側の並びの合計よりも大きくさせる手段として、スリット幅を調整する態様を示したが、孔を構成するスリット長(図3の左右方向長)について、鉛直方向下側の並びの散気スリットのほうが、これより上側の並びの散気スリットよりも大きい態様とする手段を用いてもよい。また、スリット幅及びスリット長の両方について、鉛直方向下側の並びの散気スリットのほうが、これより上側の並びの散気スリットよりも大きくする態様としてもよい。また、散気孔がスリット状でなく円形や針穴等である場合は、孔径を大きくする態様としてもよい。更に、上記スリット幅、スリット長、及び孔径は、鉛直方向上側となる部分から下側となる部分へ向かって徐々に大きくなる態様であってもよく、段階的に大きくなる態様であってもよい。
【0028】
また、鉛直方向下側の並びの散気孔は、これより上側の並びの散気孔よりも数が多い態様としてもよく、この場合、散気孔の形状等が散気筒の上側と下側とでたとえ同一である場合であっても、水圧の高い下側の散気孔からの発泡を容易なものとすることができる。
【0029】
また、上記開口面積が本発明の構成を満たすものである限り、散気筒の材質やその剛性等は適宜変更することができる。例えば支持管の外周面の全周を覆うものとして、伸縮性を有する散気膜に代えて、金属等で成形された剛性の高い散気管を用いてもよく、更には、内外管の2重管ではなく単管の散気管に対する散気孔にも適用できる。
【0030】
さらに、本発明の散気筒は、被処理水の好気性処理を行う目的に限られず、被処理水の撹拌装置としても使用することができる。すなわち本発明の散気筒によれば、上述のように散気筒の散気面全体から空気が均一に発泡し、対流が効率的に形成されるため、槽内の被処理水を効率的に撹拌することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…散気装置、5…散気筒、31…散気膜、S…散気スリット(散気孔)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向及び軸線回りに複数の散気孔が並設された散気筒であって、
前記軸線回りの方向の任意の位置において、前記軸線方向に複数並設された前記散気孔の開口面積の合計は、前記散気筒を設置したときの鉛直方向下側の並びの合計のほうが、これより上側の並びの合計よりも大きい、散気筒。
【請求項2】
鉛直方向下側の並びの前記散気孔は、これより上側の並びの前記散気孔よりも、孔径が大きい、又は、孔を構成するスリット長及びスリット幅の少なくとも一方が大きい、請求項1に記載の散気筒。
【請求項3】
鉛直方向下側の並びの前記散気孔は、これより上側の並びの前記散気孔よりも数が多い、請求項1又は2に記載の散気筒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の散気筒を備えた、好気槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−170946(P2012−170946A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38401(P2011−38401)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(507036050)住友重機械エンバイロメント株式会社 (88)
【Fターム(参考)】