説明

散水ろ床型排水処理装置

【課題】生物反応速度を向上させることでコンパクトに構成可能であるとともに、曝気エネルギを不要とすることが可能な、散水ろ床型排水処理装置を得る。
【解決手段】生物処理用の接触材を設けた散水ろ床型排水処理装置である。第1の接触材15を具備した嫌気部13と、第2の接触材16を具備した好気部14と、好気部14における生物反応で生成した反応熱を嫌気部13に伝達する手段27とを有する。同一処理槽内における上部に嫌気部13を設けるとともに下部に好気部14を設けることが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物含有排水を処理するための、散水ろ床型排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場排水や家庭排水や下水などの有機物含有排水を生物処理するための技術として、活性汚泥処理法、嫌気・好気活性汚泥処理法、生物学的硝化脱窒法、散水ろ床法などが知られている。
【0003】
生物を用いたこれらの処理法は、物理化学的な処理法よりも安価であり、古くから用いられている。たとえば、ビールや焼酎などの醸造排水には、高濃度のBOD成分が含まれることから、嫌気処理法が適用されている。また中濃度BOD成分を含む食品排水、機械工場排水、下水などには、活性汚泥処理法が適用されている。たとえば総量規制の厳しい東京湾、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内などの地域では、BOD成分の除去と同時に窒素の処理が必要であるため、生物学的硝化脱窒法が用いられている。
【0004】
一方、散水ろ床法は、20世紀前半に流行し、欧米や日本において活用された。しかし、殆どが活性汚泥処理法に設備変更されている。これは、従来の散水ろ床法は大規模な敷地面積が必要であり、また蝶ハエが発生するなどの問題があったことが原因している。
【0005】
また、これらの生物反応では、上記のように、物理化学反応よりも安価に処理できるとはいえ大規模な処理装置が必要であり、多大なイニシャルコスト、ランニングコストが必要である。具体的には、イニシャルコストとしては、生物を大量に保持するための大規模な構造物である生物反応槽を構築するためのコストを挙げることができる。ランニングコストとしては、生物反応槽で排水と生物とを接触させるための撹拌動力のためのエネルギコストや、好気処理では酸素供給のための曝気エネルギのコストなどを挙げることができる。
【0006】
このようなイニシャルコストやランニングコストを低減させるための各種技術開発が盛んに行われている。イニシャルコストの低減策としては、たとえば反応速度を向上させて処理設備をコンパクトにする試みがなされている。微生物保持量を増大させるためにバイオフィルムを利用することなどが、その一環である。生物反応槽の処理温度を上げて生物反応速度を向上させることによりコンパクトな設備で処理を行うことも検討されている。ただし、その場合は、処理温度を上げるためのエネルギコストが必要になる。ランニングコストの低減策として、最近では、曝気が不要な嫌気処理が見直されている(特許文献1)。曝気が不要な散水ろ床法も見直されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−036529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、生物反応速度を向上させることでコンパクトに構成可能であるとともに、曝気エネルギを不要とすることができる処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明の、生物処理用の接触材を設けた散水ろ床型排水処理装置は、第1の接触材を具備した嫌気部と、第2の接触材を具備した好気部と、好気部における生物反応で生成した反応熱を嫌気部に伝達する手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の散水ろ床型排水処理装置によれば、同一処理槽内における上部に嫌気部を設けるとともに下部に好気部を設けることが好適である。
【0011】
また本発明の散水ろ床型排水処理装置によれば、好気部における生物反応で生成した反応熱を嫌気部に伝達する手段が熱交換器であることが好適である。
【0012】
また本発明の散水ろ床型排水処理装置によれば、嫌気部に具備された第1の接触材と好気部に具備された第2の接触材とのうちの少なくとも前記第1の接触材が、芯材に汚泥付着糸が編みこまれたマット状の接触材であることが好適である。
【0013】
また本発明の散水ろ床型排水処理装置によれば、嫌気部で処理した排水を好気部に供給する手段と、好気部の処理水を嫌気部に循環させる手段とを有することが好適である。
【0014】
本発明の原理について説明する。すなわち、好気部において排水中のBOD成分を好気分解すると、分解熱が生成する。この熱を嫌気部に移動させると、嫌気部の温度が上昇し、嫌気部における反応速度が上昇する。嫌気部の温度上昇は好気部の温度上昇とリンクし、相乗的に反応が加速されることになって、さらに発熱する。これによって、好気部の反応により生成する熱量が有効に利用され、外部エネルギを用いずに、高効率の反応が実現される。また、散水ろ床型排水処理装置であることから、曝気を必要とせずに反応を行わせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、好気部において生成する熱によって嫌気部を加熱することができ、これによって外部からのエネルギを用いずに嫌気部での反応速度を向上させることができる。したがって処理効率が高く、コンパクトで除去率の高い処理装置を実現することができる。また散水ろ床型排水処理装置であることから、曝気を必要としない利点がある。このため本発明によれば、イニシャルコストおよびランニングコストの低廉な、有機物含有排水のための処理装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態の散水ろ床型排水処理装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1における嫌気部の接触材の全体の立体図である。
【図3】図2の接触材における各モノフィラメントおよび汚泥付着糸の配列方向を横方向とした立体図である。
【図4】図2の接触材における各モノフィラメントおよび汚泥付着糸の配列方向を横方向とした正面図である。
【図5】図2の接触材における各モノフィラメントおよび汚泥付着糸の配列方向と直角な方向を横方向とした立体図である。
【図6】本発明の他の実施の形態の散水ろ床型排水処理装置の概略構成を示す図である。
【図7】本発明のさらに他の実施の形態の散水ろ床型排水処理装置の概略構成を示す図である。
【図8】図7における要部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施の形態の散水ろ床型排水処理装置の概略構成を示す。ここで、11は処理槽であり、その内部が仕切壁12にて上下2段に区分けされ、上段側が嫌気部13を構成するとともに下段側が好気部14を構成している。嫌気部13は密封された嫌気反応槽にて構成されており、その内部には生物処理のための接触材15が設置されている。好気部14には生物処理のための接触材16が設置されている。
【0018】
17は被処理排水の流入管で、嫌気部13の内部における接触材15よりも上方に設置された散水管18に接続されている。被処理排水は、散水管18から、接触材15に向けて散水される。
【0019】
仕切壁12は、その中央部に向けて下り勾配をなすように構成されることで、その中央部に集水部19が形成されている。好気部14における接触材16よりも上方の位置には散水管20が設けられ、この散水管20は、集水部19に連通されることで、この集水部19からの水を接触材16に向けて散水可能である。
【0020】
処理槽11の底部すなわち好気部14の底部には、処理済の水を系外に排出するための処理水配管21が連通されている。22はバイパス管で、処理水配管21と流入管17とを接続しており、循環ポンプ23を備えることで、好気部14から排出された処理水の一部を嫌気部13へ循環させることができるようにされている。
【0021】
好気部14には空気入口25が設けられている。26は好気部14からの排気管で、好気部14の上部で開口するとともに、仕切壁12を貫通して嫌気部13に導かれ、嫌気部13において散水管18と接触材15との間に設けられた熱交換器27に接続されている。28は、熱交換器27からの排気管で、嫌気部13の槽壁を貫通して系外へ導かれている。嫌気部13における槽頂部には、水封されたガス抜き装置29が設けられている。
【0022】
図2〜図5は、嫌気部13に設けられた接触材15の一例の詳細を示す。図示のように、接触材15は、立体的なネット状の芯材31を有し、この芯材31に沿わせて汚泥付着糸32が配された構成となっている。すなわち、立体的に形成された芯材31に汚泥付着糸32が編みこまれたマット状に構成されている。
【0023】
芯材31は、たとえば合成樹脂製の腰の強いモノフィラメント33により構成されており、このモノフィラメント33は、たとえば図3に示すように複数のΩ字状の部分と逆Ω字状の部分とが交互に凹凸状に配置された連続糸により構成されている。そして芯材31は、複数のモノフィラメント33、33、…が並列に配置されるとともに、隣り合うモノフィラメント33、33のΩ字状の部分どうしすなわち凸部どうしあるいは逆Ω字状の部分どうしすなわち凹部どうしが連結糸34によって相互に結び付けられることで、上述のように立体的なネット状に形成されている。
【0024】
連結糸34は、たとえばモノフィラメント33よりも細繊度の合成樹脂製の腰の強い連続糸にて形成されており、立体的なネット状の芯材31の厚み方向に沿った一端部および他端部において、一本のモノフィラメント33に複数の連結糸34が絡み付くように配置され、隣り合うモノフィラメント33、33のΩ字状の部分どうしあるいは逆Ω字状の部分どうしを重ね合わせた状態で、これらΩ字状の部分どうしあるいは逆Ω字状の部分どうしを相互に結び付けることができるように構成されている。
【0025】
また、モノフィラメント33のΩ字状の部分あるいは逆Ω字状の部分におけるモノフィラメント33が存在せずに開口となっている部分35には、複数の連結糸34がモノフィラメント33の長さ方向にわたされた構成となっている。そして、連結糸34は、このように立体的なネット状の芯材31の厚み方向に沿った一端部および他端部にのみ配置されることで、この芯材31の厚み方向に沿った内側の部分には配置されないように構成されている。
【0026】
このような構成の立体的なネット状の芯材31に沿わせて、汚泥付着糸32が配されている。この汚泥付着糸32は、たとえばアクリルハイバルク繊維のような汚泥の付着性の良好な糸条にて形成されており、また芯材31を構成するモノフィラメント33よりも太繊度で形成されて、芯材31により形成される立体的な空間内を所定の体積割合で占めることができるように構成されている。
【0027】
また汚泥付着糸32は、芯材31のモノフィラメント33とは逆の凹凸状になるように配置されている。すなわち、モノフィラメント33のΩ字状の凸部では逆Ω字状の凹部となり、反対にモノフィラメント33の逆Ω字状の凹部ではΩ字状の凸部となるようにして、このモノフィラメント33に沿って配置されている。つまり汚泥付着糸32は、芯材31の厚み方向に沿った一端部および他端部においては、開口となっている部分35に配置されている。そして汚泥付着糸32は、この開口となっている部分35で連結糸34が絡められ、また開口となっている部分35の縁部では連結糸34によってモノフィラメント33に縛り付けられることで、立体的なネット状の芯材31と一体化されている。芯材31の厚み方向に沿った一端部および他端部以外の、この芯材31の厚み方向に沿った内側の部分では、汚泥付着糸32は、モノフィラメント33に沿っているものの、このモノフィラメント33に連結されることなしに、モノフィラメント33から浮いた自由な状態で配置されている。
【0028】
なお、図2は接触材15の全体の立体図であり、図3は各モノフィラメント33および汚泥付着糸32の配列方向を横方向とした立体図であり、図4は各モノフィラメント33および汚泥付着糸32の配列方向を横方向とした正面図であり、図5は各モノフィラメント33および汚泥付着糸32の配列方向と直角な方向を横方向とした立体図である。
【0029】
好気部14に設けられる接触材16としては、公知の散水ろ床に用いられる接触材と同様のものを任意に用いることができる。あるいは、上述の嫌気部13に用いられる接触材15と同じものを用いることも好適である。
【0030】
このような構成において、図1の流入管17から系内に流入された排水は、嫌気部13において、散水管18から散水される。この散水された排水は、熱交換器27に触れた後に流下して接触材15に触れる。接触材15には、運転立上げ時に種汚泥が供給されることで、その表面にバイオフィルムが形成されている。接触材15に触れた排水は、バイオフィルムによって嫌気処理された後に、接触材15から流下し、仕切壁12で受け止められて集水部19に集められる。
【0031】
接触材15は、上述のようにマット状であり、相応の体積を有してバイオフィルムが嵩高く形成されているため、散水された排水を効果的にバイオフィルム接触させて、良好な嫌気処理を行うことが可能である。
【0032】
集水部19に集められた排水は、好気部14に設けられた散水管20に導かれたうえで、接触材16に向けて散水される。好気部14では、空気入口25から無動力で系内に空気が供給されて、好気性雰囲気が形成されている。また、接触材16も、運転立上げ時に種汚泥が供給されることでその表面にバイオフィルムが形成されている。したがって、散水された排水は、バイオフィルムによって好気処理される。
【0033】
そのとき、好気生物反応すなわち好気分解により、分解熱が発生する。すると好気部14の雰囲気ガスの温度が上昇する。この雰囲気ガスは、たとえば中濃度排水では2〜3℃程度上昇し、高濃度排水では4〜8℃程度上昇する。温度が上昇した雰囲気ガスは、それにともなう上昇流となって、排気管26へ導かれ、嫌気部13の熱交換器27の内部を通過したうえで、排気管28を経て系外へ排出される。
【0034】
熱交換器27では、この熱交換器27の内部を通過するガスの持つ熱が嫌気部13に放出される。この熱は、特に、この熱交換器27に接触する排水に伝えられてその温度を上昇させる。これにより嫌気部13が加温され、嫌気部13の温度が上昇されて、嫌気処理の速度が上昇する。
【0035】
好気部14で処理された処理水は、処理水配管21を経て系外に排出される。
【0036】
中高濃度排水を処理する場合や、脱窒処理する場合には、循環ポンプ23を運転して、処理水の循環を行う。たとえば、BOD濃度100〜500mg/Lの場合には、循環量を排水流入量の2〜4倍とすることが適当である。さらに、BOD濃度が500mg/Lを超える場合には、5倍以上の循環を行うことが適当である。一方、脱窒処理の場合には、循環量は処理水の窒素含量によって異なるが、通常は排水流入量の3倍以上の循環量とすることが好ましい。
【0037】
以上の構成によれば、散水ろ床型排水処理装置であるために曝気が不要であり、このため曝気エネルギも不要とすることができる。また生物反応速度を向上させる手段として好気部14の反応熱を利用するため、外部エネルギを使わずに反応温度を上昇させることができる。このため、イニシャルコストおよびランニングコストの低廉な処理装置とすることができる。しかも、嫌気部13の温度上昇は好気部14の温度上昇にリンクすることになり、相乗的に反応が加速されてさらに発熱することになる。また熱移動の媒体として好気部14の雰囲気ガスを利用しているため、上記のような迅速な熱量移動を行うことが可能となる。このため、散水ろ床型の装置であることが最適となる構造を実現することができる。
【0038】
図6は、本発明の他の実施の形態の散水ろ床型排水処理装置の概略構成を示す。図1の装置との相違点は、図1における熱交換器27に代えて、嫌気部13と好気部14との仕切壁を、熱伝導率の高い材料にて形成された伝熱性仕切壁36としたことにある。好気部14からの排気は、嫌気部13を通らずに、好気部14に連通された排気管37によって直接系外に排出される。
【0039】
このような構成であると、好気部14で発生した熱により温度が上昇した雰囲気ガスが上昇流となって伝熱性仕切壁37に到達する。それにより、雰囲気ガスが保有する熱は、伝熱性仕切壁37を通過して嫌気部13に導入される。
【0040】
図7は、本発明のさらに他の実施の形態の散水ろ床型排水処理装置の概略構成を示す。ここでは、図6のものとは異なる構造の伝熱性仕切壁38が設けられている。詳細には、伝熱性仕切壁38は、同様に熱伝導率の高い材料にて形成されるとともに、嫌気部13へ向けて突出する多数のフィン形状の熱交換部39を有している。熱交換部39は、図8に示すように、好気部14から見たときに、仕切壁38の本体部分を基準として多数の凹部40が形成された構成となっている。なお、好気部14には、図6のものと同様の排気管37が設けられている。
【0041】
このような構成であると、仕切壁38は、伝熱面積が大きく、図示のように好気部14の内部で昇温されて上昇流となっている雰囲気ガス41が凹部40に入り込むことで、その熱を効果的に嫌気部13に導入させることができる。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
BODが200〜320mg/Lの機械工場排水を、図1に示す構成の装置を備えたベンチプラントにて処理した。嫌気部13には、図2〜図5に示した接触材15を配置した。好気部14の接触材16は、嫌気部13の接触材15と同じものを用いた。運転期間中の供試排水の温度は13〜18℃であった。
【0043】
ベンチプラントの仕様は、次の通りとした。
反応槽全容積 :4m
嫌気部13の容積 :2m
好気部14の容積 :2m
嫌気部13における接触材15の充填量:1m
好気部14における接触材16の充填量:1m
このベンチプラントにおいて、下記の条件で、3ケ月間、処理実験を行った。すなわち、馴養期間での処理条件は、次の通りとした。
【0044】
滞留時間:4〜6時間
容積負荷:0.8〜1.2kg−BOD/m/日
定常期間での処理条件は、次の通りとした。
【0045】
滞留時間:2時間
容積負荷:2.4〜3.8kg−BOD/m/日
本発明の方法にもとづく定常期間での処理結果を表1に示す。また、従来法として、図1の装置における嫌気部13と好気部14とを熱的に切り離し、これら嫌気部13と好気部14との間で熱の伝達が無いようにして、これら嫌気部13と好気部14とを直列につないで運転した結果を、あわせて表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示すように、本発明の方法によれば、従来法に比べてBOD除去率を大幅に向上することができて、良好な処理水を得ることができた。また本発明の方法により得られた処理水を砂ろ過装置で再処理したところ、BOD10mg/L以下を達成することができた。
【0048】
(実施例2)
BODが1000〜2400mg/Lと高濃度である食品排水について、同様に図1に示す構成の装置を備えたベンチプラントにて処理実験を行った。運転期間中の供試排水の温度は19〜22℃であった。
【0049】
ベンチプラントの仕様は、実施例1の場合と同じとした。このベンチプラントにおいて、下記の条件で、3ケ月間、処理実験を行った。すなわち、馴養期間での処理条件は、次の通りとした。
【0050】
滞留時間:24〜48時間
容積負荷:0.8〜1.6kg-BOD/m/日
定常期間での処理条件は、次の通りとした。
【0051】
滞留時間:12時間
容積負荷:2.0〜4.8kg-BOD/m/日
本発明の方法にもとづく定常期間での処理結果を表2に示す。また、従来法として、実施例1の場合と同様に図1の装置における嫌気部13と好気部14とを熱的に切り離し、これら嫌気部13と好気部14との間で熱の伝達が無いようにして、これら嫌気部13と好気部14とを直列につないで運転した結果を、あわせて表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
表2に示すように、本発明の方法によれば、従来法に比べてBOD除去率を大幅に向上することができて、良好な処理水を得ることができた。また本発明の方法により得られた処理水を砂ろ過装置で再処理したところ、BOD50mg/L以下を達成することができた。
【0054】
(実施例3)
BODが150〜240mg/Lの窒素含有食品排水を、同様に図1に示す構成の装置を備えたベンチプラントにて処理した。運転期間中の供試排水の温度は15〜20℃であった。
【0055】
ベンチプラントの仕様は、実施例1の場合と同じとした。さらに、図1に示す循環ポンプ23を運転して、排水を循環させた。循環量は、排水の量の3倍とした。
【0056】
これにより、図1に示す好気部14で硝化が進行し、アンモニア性窒素が酸化されて硝酸になり、これが循環され、嫌気部13でBOD成分を水素供与体として硝酸が脱窒される処理が行われた。同時にBODも処理された。
【0057】
供試排水の組成値は、次の通りであった。
BOD :150〜240mg/L
T−N :48〜102mg/L
NH−N :40〜63mg/L
なお、「TーN」は、総窒素濃度(Total Nitrogen)を意味する。
【0058】
このベンチプラントにおいて、下記の条件で、3ケ月間、処理実験を行った。すなわち、馴養期間での処理条件は、次の通りとした。
滞留時間:3〜4時間
定常期間での処理条件は、次の通りとした。
【0059】
滞留時間:3時間
本発明の方法にもとづく定常期間での処理結果を表3に示す。また、従来法として、図1の装置における嫌気部13と好気部14とを熱的に切り離し、これら嫌気部13と好気部14との間で熱の伝達が無いようにして、これら嫌気部13と好気部14とを直列につないで運転した結果を、あわせて表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
従来法では、好気部14と嫌気部13との間における熱の移動がなく、表3に示すように、好気部14と嫌気部13とのいずれも温度上昇は見られなかった。これに対し本発明の方法によれば、好気部14と嫌気部13との両方において温度上昇が見られ、したがって従来法に比べて除去効率を大幅に向上でき、良好な処理水が得られた。また本発明の方法により得られた処理水を砂ろ過装置で再処理したところ、T−N5mg/L以下を達成することができた。
【符号の説明】
【0062】
12 仕切壁
13 嫌気部
14 好気部
15 接触材
16 接触材
26 排気管
27 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物処理用の接触材を設けた散水ろ床型排水処理装置であって、第1の接触材を具備した嫌気部と、第2の接触材を具備した好気部と、好気部における生物反応で生成した反応熱を嫌気部に伝達する手段とを有することを特徴とする散水ろ床型排水処理装置。
【請求項2】
同一処理槽内における上部に嫌気部を設けるとともに下部に好気部を設けたことを特徴とする請求項1記載の散水ろ床型排水処理装置。
【請求項3】
好気部における生物反応で生成した反応熱を嫌気部に伝達する手段が熱交換器であることを特徴とする請求項1または2記載の散水ろ床型排水処理装置。
【請求項4】
嫌気部に具備された第1の接触材と好気部に具備された第2の接触材とのうちの少なくとも前記第1の接触材が、芯材に汚泥付着糸が編みこまれたマット状の接触材であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の散水ろ床型排水処理装置。
【請求項5】
嫌気部で処理した排水を好気部に供給する手段と、好気部の処理水を嫌気部に循環させる手段とを有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の散水ろ床型排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−92862(P2011−92862A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249598(P2009−249598)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(591215878)エヌ・イー・ティ株式会社 (10)
【Fターム(参考)】