説明

散水用水の節水方法、節水式散水装置及び節水式薬剤散布装置

【課題】散水用水、散布される薬剤の希釈の為の希釈用水を節水し、給水、薬剤希釈液調合の為の水場と散布場所の往復作業を軽減する散水用水の節水方法、さらに節水式散水装置及び節水式薬剤散布装置を提供する。
【解決手段】本発明は、上記課題を解決するため、散水環境雰囲気中の水分を回収し、回収した回収水を散水用水として利用することを特徴とする散水用水の節水方法の構成とした。また、散水環境雰囲気中の水分を回収する水分回収装置と、前記水分回収装置で回収した回収水を貯溜するタンクと、前記タンクの水を散水する散水ノズルと、からなることを特徴とする節水式散水装置の構成とした。そして、前記節水式散水装置に、さらに、薬剤を貯溜する薬剤タンクと、前記回収水と前記薬剤を混合希釈した希釈薬剤を貯溜する希釈薬剤タンを備え、前記希釈薬剤を前記散水ノズルで散布環境に散布することを特徴とする節水式薬剤散布装置の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散水用水の節水方法、水を散水するに際して水を節水できる節水式散水装置、また薬剤を散布するに際して薬剤の希釈用水を節水できる節水式薬剤散布装置に関する。
【0002】
ここで、「散水用水」とは、植物、その他水の散水を必要とする箇所に散水される水のことであり、農薬、肥料などの希釈用水も含む。また「薬剤」とは、農業の効率化、或いは農作物の保存に使用される殺菌剤、防黴剤、殺虫剤、除草剤、植物成長調整剤等の農薬、その他、土壌又は植物に対して、何らかの効果を期待されるもの、その他薬品も含み、液体、固体状で、水に溶解又は分散或いは水で希釈して土壌又は植物、その他散水を必要とする箇所に散布されるものである。例えば、肥料、肥料液なども含むこととなる。
【背景技術】
【0003】
植物への灌水では、蛇口にホースを接続し、水道水などを散水している。また、長い距離の移動を伴う植物への灌水には、水道管を敷設し複数の蛇口を設ける方法、穴あきホースなどを敷設して灌水する方法が取れられている。
【0004】
他方、農薬散布に際し、散布場所が比較的狭小な場合には、背負い式の動力付き噴霧器で背負いタンクから農薬希釈液を散布場所に噴霧している。より広範な散布場所、例えば、圃場、ゴルフ場などでは、駆動付き車両に農薬タンクとポンプを積載し、農薬タンクからポンプで農薬希釈液をノズルに送り散布場所に噴霧などしている。
【0005】
このようにして農薬を散布する場合、一般に、水道、井戸、河川、湖沼、溜池、雨水貯溜場等の「水場」で農薬タンクに農薬希釈液を調合し、散布場所で農薬を散布し、農薬希釈液を散布し尽くしたら、また水場に戻り農薬希釈液を調合し、散布することを繰り返す必要があった。このような、繰り返しの農薬希釈液調合作業は作業者に極めて煩雑な作業であった。
【0006】
その煩雑な農薬希釈液調合作業を無くすべく、効率的な農薬散布装置が提案されている。例えば、特許文献1に記載の農薬等の薬液散布装置、特許文献2に記載のスプリンクラーを利用した農薬散布装置などがある。
【0007】
特許文献1に記載の発明は、ゴルフ場内における効率的な農薬散布を可能とする農薬等の薬液散布装置を摘要することを目的に、ゴルフ場内におけるフェアウェー、グリーンの周囲に点在せしめた散水用の導水部と、散水用の導水部からの水を導入する水導入、この水導入部から導入される水に薬剤を混入する薬剤混入部、薬剤が混入された薬液を撹拌する撹拌部、該薬液を導出する薬液導出部、導水量、薬剤混入量を制御する制御部を有する移動車と、からなる。
【0008】
特許文献2に記載の発明は、ゴルフ場等で、スプリンクラーを利用して広範囲にわたり薬液散布を可能とすると共に、薬液タンクを具備する薬液供給装置を自走可能としたスプリンクラーを利用した薬液散布装置に関し、送水管の一端を水源に、他端をスプリンクラーに接続して散水装置を構成する一方、薬液タンクと圧送装置とを具備する薬液供給装置を自走可能に構成し、しかも、前記送水管の一部をベンチュリ部となし、同ベンチュリ部と前記薬液供給装置とを連通自在の構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平05−3745号公報
【特許文献2】特開平07−298819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、散水用水の使用に際して、給水補給の移動の作業性を改善する試みは行われているが、節水を考慮した散水方法は知られていない。同様に、特許文献1、2の発明では、確かに、農薬希釈液調合の為の水場の往復作業はなくなるが、節水の観点は全く考慮されていない。また、薬剤散布において、薬剤希釈用水の節水を考慮した発明、考案は知られていない。
【0011】
そこで、本発明は、散水用水、散布される薬剤の希釈の為の希釈用水を節水し、給水、薬剤希釈液調合の為の水場と散布場所の往復作業を軽減できる散水用水の節水方法、さらに節水式散水装置及び節水式薬剤散布装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、散水環境雰囲気中の水分を回収し、回収した回収水を散水用水として利用することを特徴とする散水用水の節水方法の構成、散水環境面に風を吹きかけ、前記散水環境面に当たった風を回収して得た空気に含まれる水分を液化回収することで前記散水環境雰囲気中の水分の回収を行うことを特徴とする前記記載の散水用水の節水方法の構成、前記散水環境面に吹きかける風が、温風であることを特徴とする前記記載の散水用水の節水方法の構成、前記散水用水が、農薬希釈用水又は肥料希釈用水或いは植物灌水用水の内何れかであることを特徴とする前記何れかに記載の散水用水の節水方法の構成とした。
【0013】
また、散水環境雰囲気中の水分を回収する水分回収装置と、前記水分回収装置で回収した回収水を貯溜するタンクと、前記タンクの水を散水する散水ノズルと、からなることを特徴とする節水式散水装置の構成、前記水分回収装置には、熱交換器が備えられ、前記散水環境雰囲気中の空気を吸引し、前記熱交換器の冷却部で冷却し、その後、排気することを特徴とする前記記載の節水式散水装置の構成、前記熱交換器の熱源がヒートポンプであり、前記排気を前記熱交換器の加熱部で前記冷却部の排熱を利用して加熱し、加熱された排気を散水環境面に吹きかけ、前記散水環境面に当たった風を吸引して得た空気を前記冷却部で冷却することで、排熱を再利用することを特徴とする前記記載の節水式散水装置の構成とした。
【0014】
そして、前記何れかに記載の節水式散水装置に、さらに、薬剤を貯溜する薬剤タンクと、前記回収水と前記薬剤を混合希釈した希釈薬剤を貯溜する希釈薬剤タンを備え、前記希釈薬剤を前記散水ノズルで散布箇所に散布することを特徴とする節水式薬剤散布装置の構成とした。
【0015】
なお、本発明において「散水」とは、霧状、シャワー状など散水される水の形態は特に限定されず、水を必要とする箇所に水を供給することであり、灌水、薬剤の希釈用水など散水される水の用途も限定されない。
【0016】
また、本発明において「散水環境雰囲気」とは、散水場所周辺の空気を指す。「散水環境雰囲気中の水分」とは、散水環境雰囲気中に分散する水分(湿度)、さらに散水環境雰囲気中に懸濁している水分、すなわち霧や雨のような不均一に空気中に存在する水分も含まれる。「散水環境雰囲気中の水分を回収」とは、散水環境雰囲気中の空気を通じて空気中に分散する水分(湿度)を凝集などさせて水として回収すること、またこの空気に懸濁している水分、すなわち霧や雨のような不均一に空気中に存在する水分を回収することも含まれる。
【0017】
「水分回収」の手段としては、冷却凝縮、吸着などが例示できるが、空気中の水分を液化回収することができれば何れの方法でもよい。本発明において、水を回収するためには、直接雰囲気を冷凍機等で構成されるヒートポンプを用いて、その状態での露点以下の温度の界面に接触させることで、結露させる方式が簡単である。
【0018】
前記冷凍機には、特に制限がなく、通常の機械式冷凍機を用いることができる。また、ペルチェ素子のような熱電素子を利用する冷凍機、または吸収式冷凍機を利用すると、機械的な駆動部分がない装置にすることができ、騒音や振動を抑えた装置とすることができる。
【0019】
また、事前に環境雰囲気を種々吸着体に接触させながら、その気体部分の圧力を高めたり下げたりして、水分を濃縮させる方法(プレッシャースイング法)や、事前に環境雰囲気を種々吸着体に接触させながら、吸着体の温度を上下させて、水分を濃縮させる方法(サーマルスイング法)等の方法と組み合わせて、さらに効率よく水を回収する方法を採用しても良い。
【0020】
「散水環境面」とは、回収したい水分が含まれ得る場所であれば制限はなく、直接散水する場所(散水箇所)及び散水箇所の近傍で風を反射する表面である。「散水箇所」とは、圃場表面、植物・農作物の表面、路面、その他散水を必要としている箇所である。
【0021】
本発明において散水環境面に風を当てるのは、必要以上の水が付着または含まれている場所の水、または、水を回収でき得る場所に含まれる水をできるだけ回収し、節水することを目的としている。従って、散水環境面には、例えば、圃場であれば地表面或いは農作物表面であり、その他圃場近傍の畦、土手などの非耕作地表面、非栽培植物表面なども含む。
【0022】
「温風」としては、より高温が好ましいが、散水環境面が植物・農作物の表面であれば、植物・農作物が耐えられる温度以下である。送風温度の決定は、その影響が季節や対象となる植物によって大きく異なり、場合によっては、植物の表面温度の急激な変化が生育に大きな障害を与えることが有るので、対象植物ごとに適宜変更する。また水分の回収の効率は散水環境雰囲気が低温の時は、すこしの温度差、例えば散水環境雰囲気温度+5℃であっても十分効果的である。
【0023】
風の強さについても、風が強い方が水の回収効率は高くなるが、風によって植物体同士が擦れ合うことによって、風傷みという障害が出ることが有るので、対象植物ごとに十分な事前検討の上適宜変更する。敏感な植物や花卉類によっては、温度を高めず、単に急速に水分が失われただけでも、障害が出るものがあるので、風の温度、風速は植物ごとに適宜変更することを要する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上記構成であるので以下の効果を発揮する。散水環境雰囲気中の水分を回収して散水用水として利用するため、散水用水の節水になる。さらに、散水用水の給水、或いは薬剤希釈調合の給水のための水場と散水場所の往復作業が軽減され、最小限の水場での給水回数で散水・薬剤散布することができる。
【0025】
従って、水道水、井戸水、河川水、湖沼水、雨水などを採取する「水源」が遠い或いは全くない散水・散布する作業環境、例えば山中の山林、原野、大規模な牧草地や農作物栽培地、または孤島、砂丘や砂漠の様な作業環境に於いても、散水、さらには病害虫の防除のために農薬等の散布を効率的に行うことができる。より具体的には、ゴルフ場における散水または薬剤散布、水田における薬剤散布において効果的である。
【0026】
一般に、農薬等散布液は糊状の成分(添着剤・固着剤)を含有しており、一度乾燥させることによって、植物体への固着性を高める処方となっていることが多い。このため散布直後で十分に乾燥していない状態で雨に当たると、農薬等は洗い流され、その効果が低下することが知られている。ところが、風を利用して空気中の水分を回収する構成の本発明においては、短時間で散布薬剤を乾燥させることができるため、雨天下でも、晴天時と同様の残効性を持つ農薬等の散布が可能になる。
【0027】
また、風を利用して空気中の水分を回収する本発明では、晴天下であっても、夜露、朝露を利用することで節水効果を高め、効率的、効果的に散水・散布等を実施することができる。さらに、付着薬剤の乾燥も気にする必要が無いため、夜間に実施することも可能になる。加えて、節水式散水装置、節水式散布装置の動力源として、太陽電池や風力発電等で自然エネルギーを利用することで、省エネや二酸化炭素排出量抑制による環境負荷低減も期待できる。
【0028】
農薬・肥料等の薬剤の形態は、液体でも固体でも良く、少水量散布に適合する薬剤や散布装置を合わせて用いることによって、さらに高い節水を達成することができる。
【0029】
本発明である節水式散水装置及び節水式薬剤散布装置を独立した装置としてコンパクトに製造することにより、人が持って移動できる散水機、噴霧器とすることもできる。また、車両で牽引されるような大掛かり装置とすることで、高い能力を持つ節水式散水装置及び節水式薬剤散布装置とすることもできる。
【0030】
例えば、動力を持つトラクターやコンバインのような農業機械に牽引させる装置にすると、汎用性が高く使用者が簡単に利用できる装置になる。牽引する機械より、電力や燃料またはその軸動力の提供を受けられるように設計すると、その利便性を向上させたり、製造コストを低減したりすることができる。
【0031】
さらに、トラクター、コンバイン等、他の農業機械に組み込み、この農業機械の機能を高めた一体型の装置にすることもでき、さらに使用者の利便性を増すことができる。具体的には、散水を作物灌水に用いる場合に、目的作物の畝以外の部分を耕起しながら、耕起部分に風を当てその風より水分を回収すれば、その水を目的作物の灌水に利用できる。特に目的作物が幼く根の張りが不十分で浅く、土壌の表面近傍の水しか利用することができない場合は、特に効果的である。
【0032】
一方、固定した施設に組み込んだ状態にしても、例えば、乾燥地方の灌漑や薬剤散布に用いることができる。特に乾燥している地方においては、点滴灌漑システムと組み合わせることによって、灌漑や薬剤散布を効率よく実施でき作物を育てることができる。さらに好ましくは、太陽電池及び蓄電池等のエネルギー源と組み合わせることで、水源やエネルギー供給源から遠く離れた乾燥地方においても、低エネルギーコストと低環境負荷で農業を営むことができる。
【0033】
本発明は植物工場等においても、灌水や農薬・肥料の施用に適用することができる。例えば、病害虫等を避けるための厳密なクローズ化や、節水に寄与することができる。さらに本発明を、室内または屋外の園芸に適用すると、水やりや農薬・肥料の施用に手間をかけない園芸システムが構築できる。従って、職業としての農業・園芸だけでなく、趣味分野の農業・園芸にも適用が可能である。
【0034】
このように、本発明である節水式散水装置及び節水式薬剤散布装置により、本来土壌中に存在していた水を、必要な目的作物だけに、集中して供給し、過剰な水を節約することができるので、土壌の有用な成分、栄養、ミネラル等が過剰な灌水によって、流亡させることが無い。従って、目的作物はこれらの有用成分を利用することができるので、収穫の増大が期待でき、さらにこの土壌の有用成分の流亡に因る砂漠化を防ぐ効果もある。
【0035】
一方、乾燥している地域では、返って過剰な灌水によって、地中の塩類が地上に濃縮されることで塩害が発生し、砂漠化が進んでいることが問題になっている。このような世界中の乾燥地域においても、本発明の節水方法で灌水することで、地中深くに水を浸透させることなく灌水を行えるために、これらの塩害を防ぐことができ、砂漠化を防ぐという環境保全の一役を担うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明である節水式散水装置の一実施形態の部分断面模式図である。
【図2】本発明である節水式薬剤散布装置の一実施形態の部分断面模式図である。
【図3】本発明である節水式薬剤散布装置の他の実施形態の部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0038】
図1は、本発明である節水式散水装置の一実施形態の部分断面模式図である。節水式散水装置17は、走行車2と、走行車2に積載される水分回収装置3と、タンク4と、散水ノズル7からなる。
【0039】
走行車2は、タイヤ2aと、走行車2駆動用のエンジン或いはモーターなどの動力さらに制動装置その他自走のための制御装置(図示省略)を有し、散水路面9(図2、3では散布路面9b)を前後左右自走可能な車両である。既存の農耕用車両及び牽引車両、トラックなどに組み込んでもよい。
【0040】
ここでは、散水路面9は、農作物9aが作付けしてある圃場などである。散水路面9は、その他に、水の散水を必要とする箇所であればよい。また、本発明の節水式散水装置は、走行車2を伴わず、水分回収装置3とタンク4を作業者の背中で背負う背負噴霧器形式の節水式散水装置としてもよい。
【0041】
水分回収装置3は、散水環境雰囲気中(図2では散布環境雰囲気中)の水分を回収する装置である。ここでは、散水環境雰囲気中の空気を吸引する吸気口3b、排気する排出口3cを有し、空気から回収した回収水3gを底部に一時貯溜する回収室3aと、排出口3cに設けられ空気を吸気口3b、排出口3cから吸引、排気する送風機3dと、回収室3a内部に収納された水回収部3eとからなる。送風機3dは、空気を吸引し、排気するファン、ブロワなどである。その駆動のための動力源は図示を省略した。走行車2の動力、他のエンジン、電源で駆動させることができる。
【0042】
水回収部3eは、回収室3aに吸引された空気を冷却し空気中の水分を凝縮水3fとする冷凍機、その他、空気中の水分を吸着、加熱して液化回収する装置など、散水・散布環境雰囲気中の水分を液化回収することができれば、何れの手段であってもよい。回収水3gは、タンク4に送られる。
【0043】
タンク4は、水分回収装置3で散水環境雰囲気中の水分を液化回収した水4a(回収水3g)、必要に応じて水場で採取した給水との混合水4aを貯溜する容器である。従って、タンク4は、水分回収装置3に接続するとともに、水源水を供給する給水口4bを有する。
【0044】
散水ノズル7は、散水路面9に水4aを散水する装置である(図2、3では薬剤を散布する)。図1では、散水ノズル7は、タンク4の底部に接続し、水4aの自重で、水4aをシャワー状に散水路面9の農作物9aの上から散水している。
【0045】
散水ノズル7には、その他に、タンク4から水4aを汲み上げるポンプも含まれることがある。そのポンプは、走行車2の動力、他のエンジン、電源で駆動させることができる。また、散水される水4aの形状は、スプレー状の他に、霧状、蛇口から吐出される形状であっても勿論よい。
【0046】
また、「散水」には、勿論、農作物9aの作付け圃場に直接散水すること、また圃場に張り巡らした水路などに補給すること等も含まれる。
【実施例2】
【0047】
図2は、本発明である節水式薬剤散布装置の一実施形態の部分断面模式図である。節水式薬剤散布装置1は、走行車2と、水分回収装置3と、タンク4と、薬剤タンク5と、希釈薬剤タンク6と、混合装置15と、散水ノズル7からなる。なお、実施例2において、実施例1と同一の符号及び名称は、実施例1と同一の作用・効果を奏し、その説明を省略する。図3においても同じ。
【0048】
薬剤タンク5は、液体(原液、濃縮薬剤、希釈液)、固体(粉末、顆粒)状の薬剤5aを補充する補充口5cを有し、薬剤5aを貯溜する容器である。薬剤5aは、水4aの流量に比例させ、所定の混合比率になるよう希釈薬剤タンク6に連結する管を通し希釈薬剤タンク6に注入される。
【0049】
例えば、図2に示したように、薬剤タンク5が、希釈薬剤タンク6上に配置されていれば、水4aの流量に比例させるよう、薬剤タンク5と希釈薬剤タンク6とを連結する管に設けたバルブ5bの開閉を制御すればよい。また、薬剤5aをポンプにより希釈薬剤タンク6に注入することもできる。その場合には、水4aの流量に比例させ、水4aと薬剤5aを所定の混合比率になるように、ポンプの運転を制御すればよい。従って、図示は省略したが、ポンプの駆動装置、バルブ5b、ポンプの運転を制御する制御装置、その他制御手段(パルス制御など)を有する。
【0050】
希釈薬剤タンク6は、薬剤5aを薬剤5a毎に異なる散布時の希釈率・分散率になるよう水(水4a、水場での初期給水)で希釈・分散した希釈薬剤6aを散布まで一時貯溜する容器である。希釈薬剤タンク6には、初期希釈薬剤6aを注入し、或いは水場で給水し、薬剤5aを投入し初期希釈薬剤6aを作るための給水口6bを設けてもよい。なお、水4aに溶解せず分散させる必要がある場合には、希釈薬剤タンク6には撹拌機を設けるとよい。
【0051】
混合装置15は、タンク4と希釈薬剤タンク6とを結ぶ連結管8と、連結管8に設けたポンプ8a、流量計8bからなる。連結管8は、水4aをタンク4から希釈薬剤タンク6に通す。ポンプ8aは水4aをタンク4から連結管8を通し希釈薬剤タンク6に送水する。流量計8bは、タンク4から希釈薬剤タンク6に送水された送水量を測定し、バルブ5bの開閉、その他薬剤5aの比例注入を制御する装置の運転を制御する信号8cを生成する。信号8cは、直接薬剤5aの比例注入を制御する装置に入力されても、他の制御装置に入力され、薬剤5aの比例注入を制御する装置に別な制御信号として送られてもよい。
【実施例3】
【0052】
図3は、本発明である節水式薬剤散布装置の他の実施形態の部分断面模式図である。節水式薬剤散布装置10は、走行車2と、水分回収装置11と、タンク4と、薬剤タンク5と、希釈薬剤タンク6と、吸気部13と、排気部14と、混合装置15とからなる。
【0053】
水分回収装置11は、吸引した空気を冷却する冷却部11b及び冷却した空気を冷却部11bの排熱で加熱する加熱部11cを収納した熱交換室11aと、冷却部11bと加熱部11cを接続する触媒循環ライン11eを通し冷却部11bと加熱部11cに触媒を循環させるヒートポンプ11dとからなる。
【0054】
さらに、排気14dの加熱は、ヒートポンプ11dの冷却による排熱利用の他に、別途電気、燃料による加熱、走行車2の駆動用の動力の排熱、その他動力の排熱も利用できる。
【0055】
本発明である節水式散水装置及び節水式薬剤散布装置の動力は、エンジン等の内燃機関、モーター、牽引車両の動力を利用することが可能である。そのエネルギー源として、ガソリン、ガス、水素、太陽電池、蓄電池、その他の動力とのハイブリッド等の組み合わせでもよい。特に、太陽電池、蓄電池、その他の動力とのハイブリッド等の組み合わせであれば、地理的かつ時間的に束縛されにくい長時間にわたる散水・散布が可能になり、かつ環境負荷の少ない作業となる。
【0056】
このようにしてなる水分回収装置11では、吸引した空気中の水分を冷却部11bで冷却して凝縮水3fにし、回収水3gとして熱交換室11aの底部に一時貯溜する。そして、回収水3gはタンク4に送られる。また、冷却部11bの排熱を利用して吸引した空気を暖める。その後加熱された排気14dを再び散布路面9bに吹き付けることとなる。温められた空気には、より多くの水分を湿度として分散させることができるため、吹き付ける風16が温風であればより効果的に空気中の水分を回収することができる。
【0057】
吸気部13は、散布路面9bに向け開口し、散布路面9bに吹き付けた排気14d(風16)を採取する吸気フード13cと、吸気フード13cと熱交換室11aの冷却部11b側とを接続する吸気管13aとからなる。
【0058】
吸気管13aには、必要に応じて、空気の吸引を補給する外気取込フード12、さらにバルブ12a、13bを取り付ける。バルブ12a、13bの開閉により空気の吸引場所、吸引量を制御することができる。
【0059】
排気部14は、排気14dとともに希釈薬剤6aを散布路面9bに吹き付けるよう開口した送気フード14cと、熱交換室11aの加熱部11cから排出された排気14dを通す排気管14aと、送気フード14cと排気管14aとを送風機3dを介して接続する送風管14bとからなる。
【0060】
吸気フード13c、送気フード14cは、散布路面9bに近い位置に配置されることが望ましい。地表近くは湿度が高く、朝夕には露が結露し、効率的に空気中の水分として回収することができる。また、吸気フード13cは、走行車2の進行方向後方に設けることが望ましい。効果的に送気フード14cから散布路面9bに吹きかけられた風16を回収することができる。
【0061】
送風機3dによって、作業環境雰囲気中の空気を水分回収装置11内に吸引し、水分回収装置11内の排気14dを送風管14bに通して散布路面9bに吹き付ける。
【0062】
送風管14b内に、希釈薬剤タンク6から散水ノズル7にポンプ7aによって希釈薬剤6aを送る配管7bが通っている。従って、希釈薬剤6aは、排気14dとともに散布路面9bに吹き付けられる。
【0063】
散水ノズル7は、排気14dの風16と同一箇所或いは排気の風16より進行方向前側に位置することが望ましい。これにより、希釈薬剤6a中の水分も吸気部13の風16とともに水分回収装置11に送られ、回収水3gとして回収することができ、一層水の節水になる。
【0064】
なお、図3では、薬剤タンク5は連結管8の流量計8bの下流に接続し、実施例2と異なり薬剤5aは希釈薬剤タンク6でなく連結管8に注入される。薬剤5aの注入位置は、希釈薬剤6aが水4aと薬剤5aとで所定の混合比率になるのであればいずれの場所であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 節水式薬剤散布装置
2 走行車
2a タイヤ
3 水分回収装置
3a 回収室
3b 吸気口
3c 排出口
3d 送風機
3e 水回収部
3f 凝縮水
3g 回収水
4 タンク
4a 水
4b 給水口
5 薬剤タンク
5a 薬剤
5b バルブ
5c 補充口
6 希釈薬剤タンク
6a 希釈薬剤
6b 給水口
7 散水ノズル
7a ポンプ
7b 配管
8 連結管
8a ポンプ
8b 流量計
8c 信号
9 散水路面
9a 農作物
9b 散布路面
10 節水式薬剤散布装置
11 水分回収装置
11a 熱交換室
11b 冷却部
11c 加熱部
11d ヒートポンプ
11e 触媒循環ライン
12 外気取込フード
12a バルブ
13 吸気部
13a 吸気管
13b バルブ
13c 吸気フード
14 排気部
14a 排気管
14b 送風管
14c 送気フード
14d 排気
15 混合装置
16 風
17 節水式散水装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散水環境雰囲気中の水分を回収し、回収した回収水を散水用水として利用することを特徴とする散水用水の節水方法。
【請求項2】
散水環境面に風を吹きかけ、前記散水環境面に当たった風を回収して得た空気に含まれる水分を液化回収することで前記散水環境雰囲気中の水分の回収を行うことを特徴とする請求項1に記載の散水用水の節水方法。
【請求項3】
前記散水環境面に吹きかける風が、温風であることを特徴とする請求項2に記載の散水用水の節水方法。
【請求項4】
前記散水用水が、農薬希釈用水又は肥料希釈用水或いは植物灌水用水の内何れかであることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の散水用水の節水方法。
【請求項5】
散水環境雰囲気中の水分を回収する水分回収装置と、前記水分回収装置で回収した回収水を貯溜するタンクと、前記タンクの水を散水する散水ノズルと、からなることを特徴とする節水式散水装置。
【請求項6】
前記水分回収装置には、熱交換器が備えられ、前記散水環境雰囲気中の空気を吸引し、前記熱交換器の冷却部で冷却し、その後、排気することを特徴とする請求項5に記載の節水式散水装置。
【請求項7】
前記熱交換器の熱源がヒートポンプであり、前記排気を前記熱交換器の加熱部で前記冷却部の排熱を利用して加熱し、加熱された排気を散水環境面に吹きかけ、前記散水環境面に当たった風を吸引して得た空気を前記冷却部で冷却することで、排熱を再利用することを特徴とする請求項6に記載の節水式散水装置。
【請求項8】
請求項5〜請求項7の何れか1項に記載の節水式散水装置に、さらに、薬剤を貯溜する薬剤タンクと、前記回収水と前記薬剤を混合希釈した希釈薬剤を貯溜する希釈薬剤タンを備え、前記希釈薬剤を前記散水ノズルで散布箇所に散布することを特徴とする節水式薬剤散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−229499(P2011−229499A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105172(P2010−105172)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【特許番号】特許第4623445号(P4623445)
【特許公報発行日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(310004493)
【Fターム(参考)】