整流格子及びそれを組み込んだ風道
【課題】 流路内の旋回流を抑制したり、流速分布の偏りを少なくフラット化することで、風量測定機器の測定精度を高める整流格子に関し、整流効果を高め、整流格子を構成するプレートの摩耗や騒音を抑制し、計測機器との設置間隔を狭めることができる整流格子及びそれを組み込んだ風道を提供する。
【解決手段】 整流格子が、風道の内壁4と並行的に風道を区画する内設仕切りプレート2と、風道の内壁4や内設仕切りプレート2から風道の中心に向けて延設する複数の放射状仕切りプレート1、3から形成され、各仕切りプレート1、2、3や風道の内壁4で区画されたセル12i、12nの水力平均深さが整流格子を構成する全てのセルでほぼ均一になるような構造を持つ。更に、仕切りプレート同士の交差部分7aやコーナー部分を溶接したり、コーキング処理し固着することでプレート同士の擦れによる摩耗や騒音をなくすことができる。
【解決手段】 整流格子が、風道の内壁4と並行的に風道を区画する内設仕切りプレート2と、風道の内壁4や内設仕切りプレート2から風道の中心に向けて延設する複数の放射状仕切りプレート1、3から形成され、各仕切りプレート1、2、3や風道の内壁4で区画されたセル12i、12nの水力平均深さが整流格子を構成する全てのセルでほぼ均一になるような構造を持つ。更に、仕切りプレート同士の交差部分7aやコーナー部分を溶接したり、コーキング処理し固着することでプレート同士の擦れによる摩耗や騒音をなくすことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風道内を流れる気体の速度や流量を測定するための計測機器が、精度よく計測できるように流れの状態を整える整流格子及びそれを組み込んだ風道に関する。
【背景技術】
【0002】
日本工業規格に定める『送風機の試験及び検査方法(JISB8330)』(非特許文献1参照)をはじめとして、これまでに多くの整流格子に関する提案がなされている(特許文献1参照)。
【0003】
JISB8330を含め従来から提案されている整流格子は、図11に示すように直線状のプレート11a、11bのみで組み立てられている。そのため円形風道では、外周域と中心域において、プレートや風道内壁によって区画された各空洞(以降セルと呼ぶ)13に関し、流体力学で表わされる水力平均深さ(Hydraulic mean depth)に違いが生じる構造となる。
【0004】
そのため、整流格子を構成する夫々のセル13、例えば適宜ナンバリングしたi番目、n番目のセル13iと13nでは、気流に対する流体摩擦に違いが生じる。
【0005】
このように流体摩擦に違いがあると、外周域と中心域で気流の流れ易さに差が生まれる。このことは、例えば外周域の流体摩擦が中心域のそれよりも大きい場合、外周域よりも中心域に多くの気流が流れることになり、目的とする偏った風速分布をフラット化する整流機能が損なわれる状況を招く。
【0006】
更に、整流格子の下流には、風速や風量を測定するためピトー管や図10に示すような多孔管8などの計測機器が設置されるが、プレート面の流線下流域に圧力検出用の測定孔10や風速を検出する素子が設置された場合、プレートの下流端で発生する渦流の影響を受けることになる。
【0007】
例えば、図11に示す一般的な整流格子を、図10に示す多孔管8と組み合わせた場合、図12の状態になる。このような組み合わせでは、測定孔10の流線方向上流に整流プレート11aが位置することになるため、整流格子自身が作る渦流の影響を測定孔10は受けることになる。
【0008】
しかし一方で、例えば、送風機の風量測定に関する試験装置は図9のように定められ、更に円形風道における測定孔や検出素子の位置は、表1のように推奨(JISB8330参照)されている。本表中、Rは円形風道における半径を表している。
【表1】
【0009】
そのため、プレート下流端で発生する渦流の影響が無視できるだけの距離を整流格子と計測機器との間に設けることが、測定精度を高める上で重要である。例えば、図9に示すようにJISB8330では、整流格子と計測機器の間隔は風道の直径寸法(図中Dで表記)以上離す必要がある。しかしながら、実際に計測が必要なフィールドでこのような間隔を設けることは困難である。
【0010】
また一般的に、整流格子を形成するプレートの組み合わせは、交差する両プレートにスリットを開設し、そのスリット同士を差し込むことで作られていることが多い。そのため、風速が早い場合や斜め方向からの気流をプレートが受けると、プレート自体が捻じり振動を起こし、スリット差し込み部位で激しく擦れ合う現象を起こすケースが見られた。この現象により、スリット近傍のプレートの摩耗や騒音が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−336962
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「送風機の試験及び検査方法 JISB8330」日本工業規格
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記従来の整流格子の問題点から、整流格子を構成する夫々のセルにおいて、気流に対する流体摩擦が均一になるような整流格子の形状、また下流域に設置する計測機器との組み合わせにおいて、両者が短い距離で間隔配置できるような構造、更に整流格子を形成するプレートが気流による捻じれ振動で擦れ合うことがないような構造体が望まれていた。
【0014】
本発明は、この点に鑑み、整流格子を構成する夫々のセルにおいて、気流に対する流体摩擦が均一になるような整流格子の形状、また下流域に設置する計測機器との組み合わせにおいて、両者が短い距離で間隔配置できるような構造、更に整流格子を形成するプレートが気流による捻じれ振動で擦れ合うことがないような構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そして、本発明は上記目的を達成するために、請求項1の発明は、風量測定のための風量や風速計測機器と整流格子を備え、該整流格子は、風道の内壁と並行に風道を区画する内設仕切りプレートと、風道の内壁や内設仕切りプレートから風道の中心に向けて延設する複数の放射状仕切りプレートにより構成されてなることを特徴とする風道である。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1示す風道の断面が円形であることを特徴とする風道である。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1に示す風道の断面が矩形であることを特徴とする風道である。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1〜3に記載の風道における整流格子の各セルに関して、このセル内部を気流が通過する際の流体摩擦を支配する水力平均深さが、整流格子を構成する全てのセルにおいて、ほぼ均一になるように作られたことを特徴とする整流格子である。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1〜4に示すことを特徴とする整流格子である。
【0020】
請求項6の発明は、請求項5に示す整流格子において、内設仕切りプレートと放射状仕切りプレートの交差部分を溶接したり、コーキング処理することで固着して成る整流格子である。
【発明の効果】
【0021】
上述したように本発明による整流格子およびそれを組込んでなる風道は、整流格子を構成する各セルの気流に対する流体摩擦が均一になるような格子形状を容易に提供できるため、偏った風速分布の流れが整流でき、フラット化する効果が得られる。
【0022】
更に、計測機器との組み合わせにおいて、整流格子を構成する仕切りプレートの下流域にあって、その流線上に圧力検出用の測定孔や風速を検出する素子が位置しないように、各仕切りプレートの配置調整をすることが容易にできる。このような調整により、各仕切りプレートによる渦流の影響を計測機器が受け辛くなるため、整流格子と計測機器を短い距離で間隔配置できるようになる。
【0023】
また、本発明の整流格子は、整流格子を構成する仕切りプレートが気流によって捻じり振動を起こしたとしても、このプレートの交差部分を溶接、またはコーキング処理しているためプレート同士が擦れ合うことがない。これにより、騒音の発生やプレート自体の摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一例を示す円形風道の正面図である。
【図2】図1に示す円形風道の側面図である。
【図3】この発明の他の例を示す矩形風道の正面図である。
【図4】本発明の更に他の例を示す大口径円形風道の正面図である。
【図5】本発明整流格子の風道内壁への取付け例を示す正面図である。
【図6】本発明整流格子の各仕切りプレートを部分的に示す斜視図である。
【図7】本発明風道の一例を示す正面図である。
【図8】本発明風道の他の例を示す遠近法で描いた斜視図である。
【図9】送風機の風量を計測する際に用いるJIS規格(JISB8330)に記載された試験装置図である。
【図10】多孔管を組み込んだ風道を示す正面図である。
【図11】従来の整流格子を示す正面図である。
【図12】図10と図11を組み合わせた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0026】
図1は、円形断面の風道における整流格子の実施形態を示す正面図、図2は側面図である。更に、図3は矩形断面をもつ風道における実施形態を表わす正面図である。
【0027】
整流格子は風道の内壁4内に収められる。風道の内壁4と並行的に風道を区画する内設仕切りプレート2と、風道の内壁4や内設仕切りプレート2から風道の中心に向けて延設する複数の放射状仕切りプレート1、3から成っている。
【0028】
放射状仕切りプレートは、風道を横切るように設置される長めのプレート1であっても良いし、風洞内壁4から内設仕切りプレート2、または内設仕切りプレート2同士を接続する短めのプレート3であっても良い。
【0029】
図4は、円形断面の大口径風道における他の実施形態を示しており、口径が大きくなるとともに内設仕切りプレート2、2aが第二、第三とドーナッツ状に増設され、それに伴い放射状仕切りプレート1、3、3aの設置数も多くなる。このようにセル数を増すことで、大口径風道における整流効果の低減を回避できる。
【0030】
これら各プレートを風道の内壁4に固定する方法として、図2や図5に示すような仕切りプレートステー5をビスや溶接で風道内壁4に固定し、次にこの仕切りプレートステー5と各仕切りプレート1や3をビスや溶接で組み付けると容易に整流格子を形成できる。
【0031】
各仕切りプレートは、互いにスリットを設け、そのスリット同士を交差状に差し込むことで整流格子を形成する。図6は、このスリット6の交差部位7aを溶接したり、コーナー部分7bをコーキング処理した状態を示している。このような工夫をすることで、スリット加工で生まれる各プレートの端面が気流によって振動しない構造になる。なお、交差部分7aは上流域、下流域ともに溶接することが好ましいが、上流域だけでも振動抑制の効果は得られる。
【0032】
図7は、本発明による円形断面風道における整流格子と多孔管を組み合わせた正面図である。風速や風量を計測するピトー管や多孔管8の測定孔10は、風道の口径により、その位置が規定されている。この測定孔の流線上流域に整流プレートが位置すると、プレート端面で発生する渦の影響を受けることになるが、本発明では、整流プレートの流線方向下流域に測定孔が位置しないように、各仕切りプレート1、2、3の配置が容易に調整できる構造である。
【0033】
このように、各仕切りプレートを調整配置することで、プレート端面で発生する渦流の影響を下流域の測定孔10は受け辛くなり、多孔管など計測機器と整流格子を従来より短い間隔で設置できるようになる。
【0034】
更に、本発明では、整流格子を構成する夫々のセル12に関し、例えば適宜ナンバリングしたi番目、n番目のセル12iと12nの水力平均深さをほぼ均等になるよう各仕切りプレートを調整配置でき、各セルの流体摩擦が均一化できる。このことにより、風道内の流れに対する整流効果が高まり、気流のフラット化が促進される。
【0035】
風道内の風量計測において測定環境を整えるには、JIS規格に示されるように、ピトー管や多孔管などの計測機器と整流格子の間隔を風道口径の直径分以上離す必要があったが、このように各仕切りプレートを調整配置することで、整流プレート端面で発生する渦の影響を下流域の計測機器は受け辛くなるため、両者を短い間隔で設置できる。このことは、直管部分の少ない多くのフィールドで極めて有効である。
【0036】
このようにピトー管や多孔管8と整流格子を組み合わせるケースにおいて、本発明は、各仕切りプレートの流線下流域に測定孔10が位置しないように内設仕切りプレート2や放射状仕切りプレート1、3の設置数を変えることができ、更に各セルの流体摩擦がほぼ均一になるように配慮して構成することができる。
【0037】
各仕切りプレートを設置する一例として、例えば円形断面風洞の場合、風洞口径が401〜800mmでは内設仕切りプレート2を1重設け、その周りに放射状仕切りプレート1、3を設ける図1のような構造。更に、801〜1200mmでは内設仕切りプレート2を2重に設ける図4のような構造にするなどの工夫ができる。このようにすることで、風道の口径によらず整流効果が維持できるようになる。
【0038】
図8は、本発明による円形断面風道における整流格子と十文字形状の多孔管9を組み合わせた斜視図である。
【0039】
風量や風速を計測するための多孔管を十文字形状にすることで、放射状4方向のより多くの測定孔10で流体の圧力を検出できるため、高い測定精度が得られる。本発明によると、このような使われ方においても、各仕切りプレート1、2、3の流線方向下流域に測定孔10が位置しないように各仕切りプレートを調整配置できる。
【0040】
ここに、水力平均深さに関して説明する。一般的な円形の流路(風道)において、流体摩擦によって生じる圧力損失は(2)式として求めることができる。
【数1】
ここに、ΔPは流路の長さがLの間に生ずる圧力損失、λは抗力係数、Dは流路の内径、Vは流路内の平均流速、ρは流体の密度とする。
【0041】
一方、円形以外の流路での圧力損失は(3)式が用いられる。
【数2】
つまり、円形流路以外では円形での内径Dの代わりに、4mを用いる。ここで出現するmが水力平均深さ(Hydraulic mean depth)であり、流路断面積をA、管の濡れ縁をUとすれば、(4)式で表わされる。
【数3】
例えば、直径Dの円形流路では、4m=Dとなり、長辺と短辺が夫々a,bの矩形流路では、(5)式で与えられる。
【数4】
【0042】
このように、流路(風道)の水力平均深さはその流路の圧力損失に関係するため、流体の流れ易さを支配することになる。そのため、風道内の流速分布をフラット化する手段として、(1)式で示すように整流格子を構成する全てのセルにおいて水力平均深さをほぼ均一に調整配置することは極めて有効である。
【数5】
ここにNは、各仕切りプレートにて区画されたセルの総数。Aiは、適宜ナンバリングされたi番目のセルの流れ方向に垂直な面の断面積。Uiはi番目のセルを流れ方向垂直に切断した際に生まれるセル端面の切断長さとする。
【符号の説明】
【0043】
1 放射状仕切りプレート
2、2a 内設仕切りプレート
3、3a 放射状仕切りプレート
4 風道の内壁
5 仕切りプレートステー
6 スリット
7a 交差部分の溶接処理
7b コーナー部分のコーキング処理
8 多孔管
9 十字形状の多孔管
10 測定孔
11a、11b 従来の整流格子のプレート
12、12i、12n 本発明による整流格子のセル
13、13i、13n 従来の整流格子におけるセル
100 フランジ
101 接続用ボルト孔
【技術分野】
【0001】
本発明は風道内を流れる気体の速度や流量を測定するための計測機器が、精度よく計測できるように流れの状態を整える整流格子及びそれを組み込んだ風道に関する。
【背景技術】
【0002】
日本工業規格に定める『送風機の試験及び検査方法(JISB8330)』(非特許文献1参照)をはじめとして、これまでに多くの整流格子に関する提案がなされている(特許文献1参照)。
【0003】
JISB8330を含め従来から提案されている整流格子は、図11に示すように直線状のプレート11a、11bのみで組み立てられている。そのため円形風道では、外周域と中心域において、プレートや風道内壁によって区画された各空洞(以降セルと呼ぶ)13に関し、流体力学で表わされる水力平均深さ(Hydraulic mean depth)に違いが生じる構造となる。
【0004】
そのため、整流格子を構成する夫々のセル13、例えば適宜ナンバリングしたi番目、n番目のセル13iと13nでは、気流に対する流体摩擦に違いが生じる。
【0005】
このように流体摩擦に違いがあると、外周域と中心域で気流の流れ易さに差が生まれる。このことは、例えば外周域の流体摩擦が中心域のそれよりも大きい場合、外周域よりも中心域に多くの気流が流れることになり、目的とする偏った風速分布をフラット化する整流機能が損なわれる状況を招く。
【0006】
更に、整流格子の下流には、風速や風量を測定するためピトー管や図10に示すような多孔管8などの計測機器が設置されるが、プレート面の流線下流域に圧力検出用の測定孔10や風速を検出する素子が設置された場合、プレートの下流端で発生する渦流の影響を受けることになる。
【0007】
例えば、図11に示す一般的な整流格子を、図10に示す多孔管8と組み合わせた場合、図12の状態になる。このような組み合わせでは、測定孔10の流線方向上流に整流プレート11aが位置することになるため、整流格子自身が作る渦流の影響を測定孔10は受けることになる。
【0008】
しかし一方で、例えば、送風機の風量測定に関する試験装置は図9のように定められ、更に円形風道における測定孔や検出素子の位置は、表1のように推奨(JISB8330参照)されている。本表中、Rは円形風道における半径を表している。
【表1】
【0009】
そのため、プレート下流端で発生する渦流の影響が無視できるだけの距離を整流格子と計測機器との間に設けることが、測定精度を高める上で重要である。例えば、図9に示すようにJISB8330では、整流格子と計測機器の間隔は風道の直径寸法(図中Dで表記)以上離す必要がある。しかしながら、実際に計測が必要なフィールドでこのような間隔を設けることは困難である。
【0010】
また一般的に、整流格子を形成するプレートの組み合わせは、交差する両プレートにスリットを開設し、そのスリット同士を差し込むことで作られていることが多い。そのため、風速が早い場合や斜め方向からの気流をプレートが受けると、プレート自体が捻じり振動を起こし、スリット差し込み部位で激しく擦れ合う現象を起こすケースが見られた。この現象により、スリット近傍のプレートの摩耗や騒音が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−336962
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「送風機の試験及び検査方法 JISB8330」日本工業規格
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記従来の整流格子の問題点から、整流格子を構成する夫々のセルにおいて、気流に対する流体摩擦が均一になるような整流格子の形状、また下流域に設置する計測機器との組み合わせにおいて、両者が短い距離で間隔配置できるような構造、更に整流格子を形成するプレートが気流による捻じれ振動で擦れ合うことがないような構造体が望まれていた。
【0014】
本発明は、この点に鑑み、整流格子を構成する夫々のセルにおいて、気流に対する流体摩擦が均一になるような整流格子の形状、また下流域に設置する計測機器との組み合わせにおいて、両者が短い距離で間隔配置できるような構造、更に整流格子を形成するプレートが気流による捻じれ振動で擦れ合うことがないような構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そして、本発明は上記目的を達成するために、請求項1の発明は、風量測定のための風量や風速計測機器と整流格子を備え、該整流格子は、風道の内壁と並行に風道を区画する内設仕切りプレートと、風道の内壁や内設仕切りプレートから風道の中心に向けて延設する複数の放射状仕切りプレートにより構成されてなることを特徴とする風道である。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1示す風道の断面が円形であることを特徴とする風道である。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1に示す風道の断面が矩形であることを特徴とする風道である。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1〜3に記載の風道における整流格子の各セルに関して、このセル内部を気流が通過する際の流体摩擦を支配する水力平均深さが、整流格子を構成する全てのセルにおいて、ほぼ均一になるように作られたことを特徴とする整流格子である。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1〜4に示すことを特徴とする整流格子である。
【0020】
請求項6の発明は、請求項5に示す整流格子において、内設仕切りプレートと放射状仕切りプレートの交差部分を溶接したり、コーキング処理することで固着して成る整流格子である。
【発明の効果】
【0021】
上述したように本発明による整流格子およびそれを組込んでなる風道は、整流格子を構成する各セルの気流に対する流体摩擦が均一になるような格子形状を容易に提供できるため、偏った風速分布の流れが整流でき、フラット化する効果が得られる。
【0022】
更に、計測機器との組み合わせにおいて、整流格子を構成する仕切りプレートの下流域にあって、その流線上に圧力検出用の測定孔や風速を検出する素子が位置しないように、各仕切りプレートの配置調整をすることが容易にできる。このような調整により、各仕切りプレートによる渦流の影響を計測機器が受け辛くなるため、整流格子と計測機器を短い距離で間隔配置できるようになる。
【0023】
また、本発明の整流格子は、整流格子を構成する仕切りプレートが気流によって捻じり振動を起こしたとしても、このプレートの交差部分を溶接、またはコーキング処理しているためプレート同士が擦れ合うことがない。これにより、騒音の発生やプレート自体の摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一例を示す円形風道の正面図である。
【図2】図1に示す円形風道の側面図である。
【図3】この発明の他の例を示す矩形風道の正面図である。
【図4】本発明の更に他の例を示す大口径円形風道の正面図である。
【図5】本発明整流格子の風道内壁への取付け例を示す正面図である。
【図6】本発明整流格子の各仕切りプレートを部分的に示す斜視図である。
【図7】本発明風道の一例を示す正面図である。
【図8】本発明風道の他の例を示す遠近法で描いた斜視図である。
【図9】送風機の風量を計測する際に用いるJIS規格(JISB8330)に記載された試験装置図である。
【図10】多孔管を組み込んだ風道を示す正面図である。
【図11】従来の整流格子を示す正面図である。
【図12】図10と図11を組み合わせた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0026】
図1は、円形断面の風道における整流格子の実施形態を示す正面図、図2は側面図である。更に、図3は矩形断面をもつ風道における実施形態を表わす正面図である。
【0027】
整流格子は風道の内壁4内に収められる。風道の内壁4と並行的に風道を区画する内設仕切りプレート2と、風道の内壁4や内設仕切りプレート2から風道の中心に向けて延設する複数の放射状仕切りプレート1、3から成っている。
【0028】
放射状仕切りプレートは、風道を横切るように設置される長めのプレート1であっても良いし、風洞内壁4から内設仕切りプレート2、または内設仕切りプレート2同士を接続する短めのプレート3であっても良い。
【0029】
図4は、円形断面の大口径風道における他の実施形態を示しており、口径が大きくなるとともに内設仕切りプレート2、2aが第二、第三とドーナッツ状に増設され、それに伴い放射状仕切りプレート1、3、3aの設置数も多くなる。このようにセル数を増すことで、大口径風道における整流効果の低減を回避できる。
【0030】
これら各プレートを風道の内壁4に固定する方法として、図2や図5に示すような仕切りプレートステー5をビスや溶接で風道内壁4に固定し、次にこの仕切りプレートステー5と各仕切りプレート1や3をビスや溶接で組み付けると容易に整流格子を形成できる。
【0031】
各仕切りプレートは、互いにスリットを設け、そのスリット同士を交差状に差し込むことで整流格子を形成する。図6は、このスリット6の交差部位7aを溶接したり、コーナー部分7bをコーキング処理した状態を示している。このような工夫をすることで、スリット加工で生まれる各プレートの端面が気流によって振動しない構造になる。なお、交差部分7aは上流域、下流域ともに溶接することが好ましいが、上流域だけでも振動抑制の効果は得られる。
【0032】
図7は、本発明による円形断面風道における整流格子と多孔管を組み合わせた正面図である。風速や風量を計測するピトー管や多孔管8の測定孔10は、風道の口径により、その位置が規定されている。この測定孔の流線上流域に整流プレートが位置すると、プレート端面で発生する渦の影響を受けることになるが、本発明では、整流プレートの流線方向下流域に測定孔が位置しないように、各仕切りプレート1、2、3の配置が容易に調整できる構造である。
【0033】
このように、各仕切りプレートを調整配置することで、プレート端面で発生する渦流の影響を下流域の測定孔10は受け辛くなり、多孔管など計測機器と整流格子を従来より短い間隔で設置できるようになる。
【0034】
更に、本発明では、整流格子を構成する夫々のセル12に関し、例えば適宜ナンバリングしたi番目、n番目のセル12iと12nの水力平均深さをほぼ均等になるよう各仕切りプレートを調整配置でき、各セルの流体摩擦が均一化できる。このことにより、風道内の流れに対する整流効果が高まり、気流のフラット化が促進される。
【0035】
風道内の風量計測において測定環境を整えるには、JIS規格に示されるように、ピトー管や多孔管などの計測機器と整流格子の間隔を風道口径の直径分以上離す必要があったが、このように各仕切りプレートを調整配置することで、整流プレート端面で発生する渦の影響を下流域の計測機器は受け辛くなるため、両者を短い間隔で設置できる。このことは、直管部分の少ない多くのフィールドで極めて有効である。
【0036】
このようにピトー管や多孔管8と整流格子を組み合わせるケースにおいて、本発明は、各仕切りプレートの流線下流域に測定孔10が位置しないように内設仕切りプレート2や放射状仕切りプレート1、3の設置数を変えることができ、更に各セルの流体摩擦がほぼ均一になるように配慮して構成することができる。
【0037】
各仕切りプレートを設置する一例として、例えば円形断面風洞の場合、風洞口径が401〜800mmでは内設仕切りプレート2を1重設け、その周りに放射状仕切りプレート1、3を設ける図1のような構造。更に、801〜1200mmでは内設仕切りプレート2を2重に設ける図4のような構造にするなどの工夫ができる。このようにすることで、風道の口径によらず整流効果が維持できるようになる。
【0038】
図8は、本発明による円形断面風道における整流格子と十文字形状の多孔管9を組み合わせた斜視図である。
【0039】
風量や風速を計測するための多孔管を十文字形状にすることで、放射状4方向のより多くの測定孔10で流体の圧力を検出できるため、高い測定精度が得られる。本発明によると、このような使われ方においても、各仕切りプレート1、2、3の流線方向下流域に測定孔10が位置しないように各仕切りプレートを調整配置できる。
【0040】
ここに、水力平均深さに関して説明する。一般的な円形の流路(風道)において、流体摩擦によって生じる圧力損失は(2)式として求めることができる。
【数1】
ここに、ΔPは流路の長さがLの間に生ずる圧力損失、λは抗力係数、Dは流路の内径、Vは流路内の平均流速、ρは流体の密度とする。
【0041】
一方、円形以外の流路での圧力損失は(3)式が用いられる。
【数2】
つまり、円形流路以外では円形での内径Dの代わりに、4mを用いる。ここで出現するmが水力平均深さ(Hydraulic mean depth)であり、流路断面積をA、管の濡れ縁をUとすれば、(4)式で表わされる。
【数3】
例えば、直径Dの円形流路では、4m=Dとなり、長辺と短辺が夫々a,bの矩形流路では、(5)式で与えられる。
【数4】
【0042】
このように、流路(風道)の水力平均深さはその流路の圧力損失に関係するため、流体の流れ易さを支配することになる。そのため、風道内の流速分布をフラット化する手段として、(1)式で示すように整流格子を構成する全てのセルにおいて水力平均深さをほぼ均一に調整配置することは極めて有効である。
【数5】
ここにNは、各仕切りプレートにて区画されたセルの総数。Aiは、適宜ナンバリングされたi番目のセルの流れ方向に垂直な面の断面積。Uiはi番目のセルを流れ方向垂直に切断した際に生まれるセル端面の切断長さとする。
【符号の説明】
【0043】
1 放射状仕切りプレート
2、2a 内設仕切りプレート
3、3a 放射状仕切りプレート
4 風道の内壁
5 仕切りプレートステー
6 スリット
7a 交差部分の溶接処理
7b コーナー部分のコーキング処理
8 多孔管
9 十字形状の多孔管
10 測定孔
11a、11b 従来の整流格子のプレート
12、12i、12n 本発明による整流格子のセル
13、13i、13n 従来の整流格子におけるセル
100 フランジ
101 接続用ボルト孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピトー管や多孔管などの風量計測機器と整流格子を備え、該整流格子は、風道の内壁と並行的に風道を区画する内設仕切りプレートと、風道の内壁や内設仕切りプレートから風道の中心に向けて設置する複数の放射状仕切りプレートにより構成されてなることを特徴とする風道。
【請求項2】
断面が円形である請求項1記載の風道。
【請求項3】
断面が矩形である請求項1記載の風道。
【請求項4】
上記請求項1〜3のいずれかに記載の風道において、整流格子を形成する各仕切りプレートや風道内壁によって区画された各空洞(以降セルと呼ぶ)の水力平均深さが、式(1)に示す関係を持つことを特徴とする風道。
【数1】
Nは、各仕切りプレートにて区画されたセルの総数。Aiは、適宜ナンバリングされたi番目のセルの流れ方向に垂直な面の断面積。Uiはi番目のセルを流れ方向垂直に切断した際に生まれるセル端面の切断長さとする。
【請求項5】
上記請求項1〜4に記載の整流格子。
【請求項6】
上記請求項5に記載の整流格子において、内設仕切りプレートと放射状仕切りプレートの交差部分を固着して成る整流格子。
【請求項1】
ピトー管や多孔管などの風量計測機器と整流格子を備え、該整流格子は、風道の内壁と並行的に風道を区画する内設仕切りプレートと、風道の内壁や内設仕切りプレートから風道の中心に向けて設置する複数の放射状仕切りプレートにより構成されてなることを特徴とする風道。
【請求項2】
断面が円形である請求項1記載の風道。
【請求項3】
断面が矩形である請求項1記載の風道。
【請求項4】
上記請求項1〜3のいずれかに記載の風道において、整流格子を形成する各仕切りプレートや風道内壁によって区画された各空洞(以降セルと呼ぶ)の水力平均深さが、式(1)に示す関係を持つことを特徴とする風道。
【数1】
Nは、各仕切りプレートにて区画されたセルの総数。Aiは、適宜ナンバリングされたi番目のセルの流れ方向に垂直な面の断面積。Uiはi番目のセルを流れ方向垂直に切断した際に生まれるセル端面の切断長さとする。
【請求項5】
上記請求項1〜4に記載の整流格子。
【請求項6】
上記請求項5に記載の整流格子において、内設仕切りプレートと放射状仕切りプレートの交差部分を固着して成る整流格子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−232316(P2011−232316A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112612(P2010−112612)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(508332416)株式会社芝田技研 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(508332416)株式会社芝田技研 (2)
【Fターム(参考)】
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