説明

整髪方法

【課題】熟練者でなくとも(例えば新米の美容師でも)、また整髪する相手が誰であっても、美しいヘアスタイルを作る際に必要となるベースとなるヘアスタイルを、簡単に整えることができる整髪方法の提供。
【解決手段】次の工程(a)〜(c)の順に操作を行う整髪方法。
工程(a):整髪成分として、整髪性ポリマー〔成分(A)〕、又は整髪性ポリマー〔成分(A)〕及びその可塑剤〔成分(B)〕を含有し、当該整髪成分からなる皮膜の複素弾性率(G*)が、1.0×103〜1.0×109である整髪剤を、水が垂れない程度に全体が湿った頭髪の少なくとも根元に適用する。
工程(b):頭髪の根元に対して、送風を行うことにより乾燥を開始する。
工程(c):送風により、頭髪全体を完全に乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整髪方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毎日のヘアスタイリングにおいて望みのヘアスタイルを形作る際、頭髪を洗髪するか、又は頭髪に水をつけるなどして毛髪を濡らした後、ドライヤーの風を送風するなどして毛髪を乾かす手法がとられる。これは、毛髪を水で濡らすことで毛髪内部の水素結合を切断して毛髪の形状を変えられる状態とし、続いて毛髪を所望の形に決めて乾かすことにより水素結合を新たに形成させてヘアスタイルを固定させているのである。
【0003】
美しいヘアスタイルは、髪の根元から毛先までの自然なまとまりやスタイルのシルエット、ボリュームアップやダウンといったヘアスタイルのベースとなる髪型をまず整え、次いで、髪の動きや流れ、立ち上げや束感など、最終的なヘアスタイルのディテールを作ることで形成される。
【0004】
この最終的なヘアスタイルの出来栄えは、毛髪を湿らせた後これを乾かしてヘアスタイルのベースを整えるという操作のやり方によって左右され、その際、まず頭髪の根元から乾かすことが大切であることが知られている(例えば非特許文献1を参照)。
【0005】
このベースとなるヘアスタイルは、単純で誰でも簡単に作ることが出来るようにも思えるが、実際には熟練の技能を身に付けた美容師が無駄のない手順で行わないと美しく出来ないのが実情である。これは、頭の形、髪の生える向きの癖(生え癖)、髪質等が個人個人によって異なるため、整髪の対象となる個々の頭髪の個性に適合した整髪を行ううえで、高度な技能が必要とされるからである。
【0006】
一方、美しいヘアスタイルを作る目的で、各種道具や、整髪剤が多数提案されている。しかしそれらのいずれもが、最終的なヘアスタイルを作る際の道具や剤、髪の癖を一時的に整えるためのもの、あるいは滑らかさやつやを付与するなど毛髪のコンディショニングを整えるためものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】山本浩未著、「山本浩未の美髪塾」、成美堂出版、2008年8月発行、第106〜111頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明は、熟練者でなくとも(例えば新米の美容師でも)、また整髪する相手が誰であっても、美しいヘアスタイルを作る際に必要となるベースとなるヘアスタイルを、簡単に整えることができる整髪方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の評価値を満たす整髪性ポリマー(又は整髪性ポリマーと可塑剤の混合物として当該評価値を満たすもの)を含有する整髪剤を、特定の手順で頭髪に適用し乾燥させることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、次の工程(a)〜(c)の順に操作を行う整髪方法を提供するものである。
工程(a):整髪成分として、整髪性ポリマー〔成分(A)〕、又は整髪性ポリマー〔成分(A)〕及びその可塑剤〔成分(B)〕を含有し、当該整髪成分からなる皮膜の複素弾性率(G*)が、1.0×103〜1.0×109である整髪剤を、水が垂れない程度に全体が湿った頭髪の少なくとも根元に適用する。
工程(b):頭髪の根元に対して、送風を行うことにより乾燥を開始する。
工程(c):送風により、頭髪全体を完全に乾燥させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の整髪方法によれば、頭髪の根元から、頭の形にそった自然な毛流れに整えつつ固定することにより、熟練者でなくとも(例えば新米の美容師でも)、また整髪する相手が誰であっても、美しいヘアスタイルを作る際に必要となるベースとなるヘアスタイルを、簡単に整えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
●整髪剤
〔複素弾性率〕
本発明において使用する整髪剤は、整髪成分として、整髪性ポリマー〔成分(A)〕、又は整髪性ポリマー〔成分(A)〕及びその可塑剤〔成分(B)〕を含有する。整髪成分の複素弾性率(G*)の測定、算出は、整髪剤中に整髪成分として成分(A)のみを含有する場合には、成分(A)について、整髪成分として成分(A)と成分(B)を含有する場合には、これらの混合物について、以下のようにして行うものとする。
【0013】
○測定対象サンプルの成膜法
整髪成分〔成分(A)、又は成分(B)を含有する場合には成分(A)と成分(B)〕を、水、エタノール又はこれらの混合物に溶解する。この溶液の濃度は、後に続く手順で複素弾性率測定の対象となるサンプルを成膜できる程度であればよく、特に限定されない。ただし、成分(B)を含有する場合の成分(A)と成分(B)の比率は、整髪剤中の含有比率と同一とする。
この溶液を、直径5cmのテフロン(登録商標)製のシャーレに10mL注ぎ、40℃、湿度20%、1013.25hPaの環境下で2日間放置する。続いて残存溶媒を蒸発除去すべく、真空乾燥機で真空度5.33kPaの状態にして24時間放置する。その後、シャーレの底に残った膜を注意深く引き剥がす。
なお、サンプルの成膜の際には、気泡が入らないよう、また熱などによる劣化がないように注意する。もし気泡が入ったり、劣化してしまった場合には、成膜をやり直すものとする。
ただし、成分(A)が、室温(25℃)にて液状である場合には、上記の溶媒への溶解、成膜を行うことなく、成分(A)(又は成分(A)と成分(B)の混合物)をそのまま測定に用いるものとする。
【0014】
○測定対象サンプルの弾性率測定
複素弾性率の測定に用いる測定装置としては、例えば、Paar Physica社製のMCR500を使用することができる。上記の手法により成膜したサンプルをパラレル・プレートに挟み、窒素雰囲気下で昇温、融解し、プレート間隔を1.3mmまで狭める。溶融状態ではみ出した膜の部分をかきとり、サンプルのマウントを完了する。その後約10℃/分の速度で30℃まで降温し、5分保持する。また、成分(A)が液状である場合は成分(A)そのもの又は成分(A)と成分(B)の混合物をコーンプレートに挟み、サンプルのマウントを完了する。
測定条件は以下のとおりである。
【0015】
・測定セル:直径6mm、溝付きパラレルプレート
(ただし、成分(A)が室温(25℃)で液状である場合は、直径75mm、コーンプレートCP-75-2)
・測定周波数:2Hz
・測定温度:30℃
・測定ひずみ:線形範囲内(ひずみ0.01%)
【0016】
○複素弾性率の算出
貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)から、次式に従って、複素弾性率(G*)を計算する。
G* = 〔(G’)2 + (G”)21/2
【0017】
上記のようにして得られる整髪成分の皮膜の複素弾性率(G*)は、美しいヘアスタイルを作る際に必要な、ベースとなるヘアスタイルを簡単に整えることができる観点から、1.0×103〜1.0×109であり、好ましくは5.0×103〜5.0×108、更に好ましくは1.0×104〜1.0×108である。
【0018】
〔(A):整髪性ポリマー〕
成分(A)の整髪性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール;ポリ(N-ホルミルエチレンイミン)オルガノポリシロキサン、ポリ(N-アセチルエチレンイミン)オルガノポリシロキサン、ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)オルガノポリシロキサン等のポリシリコーン-9;特開平2-180911号公報に記載のアルキルアクリルアミド/アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体;特開平8-291206号公報に記載のアルキルアクリルアミド/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体;ユカフォーマーR205、同M-75(三菱化学社)、RAMレジン(大阪有機化学社)等の(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー;ダイヤフォーマーZ-712(三菱化学社)等の(アクリレーツ/アクリル酸ラウリル/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマー;ダイヤフォーマーZ-732(三菱化学社)等の(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマー;ダイヤフィックスC-601(三菱化学社)等の(ビニルアミン/ビニルアルコール)コポリマー;プラスサイズL-9540B(互応化学社)等のアクリル樹脂アルカノールアミン液;ウルトラホールド8、同Strong(以上、BASF社)等のアクリル酸/アクリル酸アミド/アルキル酸エチル共重合体;ルビフレックスSilk(BASF社)等のアクリル酸アルキル・メタクリル酸・シリコン共重合体液;ルビセットP.U.R.(BASF社)等のポリウレタン-1;ルビスコールプラス(BASF社)等のポリビニルカプロラクタム;ルビマー100P、同30E(以上、BASF社)等のアクリル酸アルキル共重合体;アンフォーマーSH-701、同28-4910、同LV-71、同LV-47(以上、ナショナル・スターチ&ケミカル社)等の(オクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマー;アンフォーマーV-42(ナショナル・スターチ&ケミカル社)等の(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)コポリマー;レジン28-2930(ナショナル・スターチ&ケミカル社)等の(VA/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル)コポリマー;ダイナムX(ナショナル・スターチ&ケミカル社)等のポリウレタン-14・AMP-アクリレーツコポリマー;ガフカット440、同734、同755N(ISP社)等のポリクオタニウム-11;ガフカット HS-100(ISP社)等のポリクオタニウム-28;ガントレッツES-225(ISP社)等の(ビニルメチルエーテル/マレイン酸エチル)コポリマー;アクアフレックスSF-40(ISP社)等の(PVP/ビニルカプロラクタム/アクリル酸DMAPA)コポリマー;アクアフレックスFX-64(ISP社)等の(イソブチレン/エチルマレイミド/ヒドロキシエチルマレイミド)コポリマー;スタイリーゼW-20(ISP社)等のポリクオタニウム-55;スタイリーゼCC-10(ISP社)等の(ビニルピロリドン/アクリル酸DMAPA)コポリマー;PVP/VA735(ISP社)等の(ビニルピロリドン/VA)コポリマー;ルビスコールK-12、17、30、60、80、90(以上、BASF社)、PVP K-15、30、60、90(以上、ISP社)等のポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0019】
上記整髪性ポリマーの中でも、ポリシリコーン-9、ポリエチレングリコール、ダイヤフォーマーZ-732(三菱化学社)等の(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマー、(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー、ポリクオタニウム-11、(ビニルメチルエーテル/マレイン酸エチル)コポリマー、ポリビニルピロリドンが好ましく、特にポリシリコーン-9が好ましい。なお、これらの整髪性ポリマーの中には、単独では前述の複素弾性率を有しないものも存在するが、成分(B)の可塑剤との組合せで前述の複素弾性率を有するのであれば、そのような組合せで整髪剤に使用可能である。
【0020】
成分(A)の整髪性ポリマーのうち最も好ましいポリシリコーン-9について説明する。
ポリシリコーン-9としては、オルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも1個に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(1)
【0021】
【化1】

【0022】
〔式中、R1は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示し、nは2又は3の数を示す。〕
で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)が結合してなり、該オルガノポリシロキサンセグメントと該ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントとの質量比が98/2〜40/60であり、重量平均分子量が12,000〜500,000であるオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0023】
オルガノポリシロキサンセグメントとポリ(N-アシルアルキレンイミン)との結合において介在するヘテロ原子を含むアルキレン基としては、窒素原子、酸素原子及び/又はイオウ原子を1〜3個含む炭素数2〜20のアルキレン基が挙げられる。その具体例としては、
【0024】
【化2】

【0025】
等が挙げられる。特に、窒素原子を含む炭素数2〜5のアルキレン基が好ましい。また、一般式(1)中のR1で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられ、R1で示されるシクロアルキル基としては炭素数3〜6のものが挙げられ、アラルキル基としてはフェニルアルキル、ナフチルアルキル等が挙げられ、アリール基としてはフェニル、ナフチル、アルキル置換フェニル等が挙げられる。
【0026】
ポリシリコーン-9は、公知の方法により製造することができ、例えば特開平7-133352号公報に記載の方法に従って、下記一般式(2)
【0027】
【化3】

【0028】
〔式中、R2は同一又は異なって、炭素数1〜22の飽和アルキル基又はフェニル基を示し、R3及びR4はそれぞれR2と同一の基を示すか又は下記式
【0029】
【化4】

【0030】
で表される基を示し、R5は上記式で表される基を示し、aは100〜4000の整数を示し、bは1〜300の整数を示す。〕
で表されるオルガノポリシロキサンと、下記一般式(3)
【0031】
【化5】

【0032】
〔式中、R1及びnは前記と同義である。〕
で表される環状イミノエーテルを開環重合して得られる末端反応性ポリ(N-アシルアルキレンイミン)とを反応させることにより製造される。
【0033】
ここで、環状イミノエーテル(3)の開環重合は、例えばLiebigs Ann. Chem., p996〜p1009(1974)に記載の方法に従って行うことができる。重合開始剤は、求電子反応性の強い化合物、例えばベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸等の強酸のメチル、エチル、3-プロペニル、ベンジルエステルなどを用いることができる。特に、トルエンスルホン酸アルキルエステル、硫酸ジアルキルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸アルキルエステル等を好ましく用いることができる。環状イミノエーテル(3)として例えば2-置換-2-オキサゾリンを用いれば、ポリ(N-アシルエチレンイミン)(式(1)中、n=2に相当)が得られ、2-置換-ジヒドロ-2-オキサジンを用いれば、ポリ(N-アシルプロピレンイミン)(式(1)中、n=3に相当)が得られる。
【0034】
上記ポリ(N-アシルアルキレンイミン)鎖とシリコーン鎖との連結方法には、カルボキシ基と水酸基との縮合によるエステルの形成反応;カルボキシル基とアミノ基との縮合によるアミドの形成反応;ハロゲン化アルキル基と1級、2級あるいは3級アミノ基とによる2級、3級あるいは4級アンモニウムの形成反応;Si−H基のビニル基への付加反応;エポキシ基とアミノ基とによるβ-ヒドロキシアミン形成反応など多くの手法を利用することができる。このうち、特開平2-276824号公報、特開平4-85334号公報、特開平4-85335号公報、特開平4-96933号公報等に開示されているように、環状イミノエーテルをカチオン開環重合して得られる末端反応性ポリ(N-アシルアルキレンイミン)に式(2)で表されるオルガノポリシロキサン、すなわち側鎖に前記置換基を有する変性オルガノポリシロキサンを反応させる方法が簡便かつ有効である。
【0035】
アミノ基を含有するオルガノポリシロキサンと、環状イミノエーテルのカチオン重合で得たポリ(N-アシルアルキレンイミン)の反応性末端との反応は、例えば以下のようにして行うことができる。開始剤を極性溶媒、好適にはアセトニトリル、バレロニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、クロロホルム、塩化メチレン、塩化エチレン、酢酸エチル、酢酸メチル等の単独溶媒、あるいは必要に応じて他の溶媒との混合溶媒に溶かし、40〜150℃、好適には60〜100℃に昇温する。そこに上記一般式(3)で表される環状イミノエーテルを一括投入、あるいは反応が激しい場合には滴下し、重合を行う。重合の進行はガスクロマトグラフィーなどの分析機器でモノマーである環状イミノエーテルの残存量を定量することにより追跡することができる。環状イミノエーテルが消費され重合が終了しても、生長末端の活性種は反応性を維持している。ポリマーを単離することなく、引き続き、このポリマー溶液と分子内にアミノ基を含有するオルガノポリシロキサンとを混合し、5〜100℃、好ましくは20〜60℃の条件で反応させる。混合割合は所望により適宜選ぶことができるが、オルガノポリシロキサン中のアミノ基1モルに対してポリ(N-アシルアルキレンイミン)0.1〜1.3モル当量の割合で反応させるのが好ましい。以上の如き反応によって、ポリジメチルシロキサンにポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの付いたブロックコポリマー又はグラフトポリマーを得ることができる。
【0036】
ポリシリコーン-9において、オルガノポリシロキサンセグメントとポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントとの質量比は98/2〜40/60であるが、美しいヘアスタイルを作る際に必要となるベースとなるヘアスタイルを簡単に整えることができる観点から、95/5〜42/58、更には93/7〜44/56、更には90/10〜46/54が好ましい。なお、この質量比は、成分(A)のオルガノポリシロキサンを重クロロホルム中に5質量%溶解させ、核磁気共鳴(1H−NMR)分析により、オルガノポリシロキサンセグメント中のアルキル基又はフェニル基と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント中のメチレン基の積分比より求めた値をいう。
【0037】
また、ポリシリコーン-9の隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWg)は、美しいヘアスタイルを作る際に必要となるベースとなるヘアスタイルを簡単に整えることができる観点から、1500〜40000、更には1600〜35000、更には1700〜30000が好ましい。
【0038】
ここで、「隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメント」とは、下記式に示すように、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントのオルガノポリシロキサンセグメントに対する結合点(結合点A)から、これに隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの結合点(結合点B)までの2点間において破線で囲まれた部分であって、1つのR2SiO単位と、1つのA4と、y+1個のR22SiO単位とから構成されるセグメントをいう。
【0039】
【化6】

【0040】
〔式中、R2は前記と同じ意味を示し、R6はヘテロ原子を含むアルキレン基を示し、Zはポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントを示し、R7は重合開始剤の残基を示し、yは正の数を示す。〕
【0041】
MWgは、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント1モル当たりのオルガノポリシロキサンセグメントの質量(g/mol)と解することができ、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの官能基がポリ(N-アシルアルキレンイミン)で100%置換されると、変性オルガノポリシロキサンの官能基当量(g/mol)と一致する。
【0042】
MWgは、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの含有率(Csi)とポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)を用いて下記式により求めることができる。
【0043】
【数1】

【0044】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)は、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定法により測定される数平均分子量をいい、好ましくは500〜10000、より好ましくは800〜8000、より好ましくは850〜6000、更に好ましくは900〜4000である。これにより、美しいヘアスタイルを作る際に必要となるベースとなるヘアスタイルを簡単に整えることができる。
【0045】
ポリシリコーン-9において、原料化合物であるオルガノポリシロキサン(2)の重量平均分子量は、水等の極性溶媒への溶解性と溶解後の取り扱いやすさ、及びセット性とその持続性向上の観点から、10,000〜200,000、更には15,000〜160,000、更には20,000〜120,000が好ましい。なお、原料化合物であるオルガノポリシロキサン(2)の平均分子量は、GPCにより下記測定条件で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0046】
カラム :Super HZ4000+Super HZ2000(東ソー株式会社製)
溶離液 :1mMトリエチルアミン/THF
流量 :0.35mL/min
カラム温度:40℃
検出器 :UV
サンプル :50μL
【0047】
ポリシリコーン-9の重量平均分子量は、12,000〜500,000であるが、セット性とその持続性をより一層向上させる観点から、20,000〜400,000、更には30,000〜300,000、更には40,000〜200,000が好ましい。なお、成分(A)のオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、原料化合物であるオルガノポリシロキサン(2)の重量平均分子量と、前述のオルガノポリシロキサンセグメントとポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント)との質量比から求めることができる。
【0048】
これら整髪性ポリマーは、成分(A)として2種以上を併用することもでき、またその含有量は、髪へのなじみ、髪のまとまりを向上する観点より、整髪剤中の0.01〜10質量%、更には0.02〜8質量%、特に0.05〜6質量%が好ましい。
【0049】
〔(B):可塑剤〕
前述のように、本発明における整髪成分の複素弾性率の条件は、成分(A)の整髪性ポリマー単独で達成できない場合であっても、成分(B)の可塑剤との組合せで達成される場合には、整髪性ポリマーと可塑剤の組合せで整髪剤に使用することができる。かかる可塑剤は、皮膜形成ポリマーを軟化させ破断強度を下げるものであり、例えば、水酸基を分子内に有する溶剤、エステル系の溶剤、N-ヒドロキシエチルカルボン酸アミド、非イオン界面活性剤がある。
【0050】
水酸基を分子内に有する炭素数3以上の溶剤としては、具体的には、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール等の一価アルコール;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、イソペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(重合度9)、ポリエチレングリコール600等の多価アルコールが挙げられる。
【0051】
エステル系油剤としては、(カプリル/カプリン酸)トリグリセリド、オレイン酸トリグリセリド等の脂肪酸トリグリセリド、ネオペンチルグリコールジパルミテート、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル等の二価アルコールの脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル等の一価アルコールの脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0052】
N-ヒドロキシエチルカルボン酸アミドとしては、N-アセチルエタノールアミド等が挙げられる。
【0053】
また、非イオン界面活性剤としては、具体的には、オレイン酸モノグリセライド、カプリル酸モノグリセライド等の脂肪酸モノグリセリド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸ジエタノールアミド、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、イソステアリルグリセリルエーテル、イソデシルグリセリルエーテル等のアルキルグリセリルエーテル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等の脂肪酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレン(9)トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ラウリル
エーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0054】
〔(C):疎水性シリコーン〕
本発明において使用される整髪剤は、更に成分(C)として疎水性シリコーンを含有することができる。疎水性シリコーンは、湿った頭髪の表面摩擦抵抗を下げることで髪をなめらかにするため、頭髪を送風により乾燥する過程において、頭髪の根元及び全体を乾燥させる際の指通りを向上し、手の動きをなめらかにすることができる。その結果、髪の生え癖を緩和する操作がやりやすくなり、美しいヘアスタイルのベースをつくることができる。また、仕上げた後の乾いた髪の毛流れを整える時に、濡れ髪の毛髪表面摩擦抵抗を下げることで髪をなめらかにして絡まりを抑えて束ねやすくする効果と、仕上げた後の乾いた髪の毛髪表面に柔らかなセット皮膜を作ることで経時的に浮き毛・ふくらみが出るのを抑えてヘアスタイルの持続性をよくするという効果を有する。
【0055】
ここで、疎水性シリコーンとは、室温において、評価液(精製水、好ましくは50質量%エタノール水溶液、最も好ましくは95質量%エタノール水溶液)と1:1の質量比で混合して、5分間静置後に透明とはならない(分離、ゲル化又は白濁)シリコーンをいうものとする。なお、市販されているシリコーンのうち、エマルジョンタイプのもの、有機溶剤と混合されているものは、疎水性シリコーンであるものとする。
【0056】
疎水性シリコーンとしては、例えばジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン(HLBが11未満)、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。この中でも、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン(HLBが11未満、好ましくは8未満、最も好ましくは5未満)、アミノ変性シリコーンが好ましく、特にアミノ変性シリコーンが好ましい。
【0057】
ジメチルポリシロキサンとしては、一般式(c1)で表されるものが挙げられる。
【0058】
【化7】

【0059】
〔式中、R8はSi(CH3)3又は水素原子を示し、n1は3〜20000の数を示す。〕
【0060】
ジメチルポリシロキサンには、シリコーンオイル(数平均重合度1000未満)とシリコーンガム(数平均重合度1000以上)がある。シリコーンオイルの市販品としては、SH200シリーズ(SH200 C Fluid 1CS、同2CS、同5CS、同10CS、同20CS、同30CS、同50CS、同100CS、同200CS、同350CS、同500CS、同1,000CS、同5,000CS、SH200 Fluid 1.5CS、同3,000CS、同10,000CS、同12,500CS、同30,000CS等)(東レ・ダウコーニング社)、TSF-451シリーズ(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)、KF-96シリーズ(信越化学社)等が挙げられる。また、これらのシリコーンオイルをエマルションとしたものも使用できる。
【0061】
シリコーンガムの市販品としては、SH200シリーズ(SH200 Fluid 60,000CS、同100,000CS、同1,000,000CS等;東レ・ダウコーニング社)、TSF451-100MA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)、BY11-026(東レ・ダウコーニング社;高重合シリコーンの低粘度シリコーンによる希釈溶液)、KF9008(信越化学社;高重合シリコーンの環状シリコーンによる希釈溶液)、BY22-050A(東レ・ダウコーニング社;高重合シリコーンのカチオンエマルション)、BY22-060(東レ・ダウコーニング社;高重合シリコーンを低粘度シリコーンで希釈した溶液のカチオンエマルション)、BY22-020(東レ・ダウコーニング社;高重合シリコーンを流動パラフィンで希釈した溶液のカチオンエマルション)、KM904(信越化学社;高重合シリコーンを低粘度シリコーンで希釈した溶液のカチオンエマルション)等が挙げられる。
【0062】
ポリエーテル変性シリコーンは、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体等の総称であり、一般式(c2)又は(c3)で表されるものが挙げられる。
【0063】
【化8】

【0064】
〔式中、R9は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、n2は1〜2000、m2は1〜1000、a1は0〜10、b1は0〜50、c1は0〜50を示し、b1+c1≧1である。〕
【0065】
HLBが11未満のポリエーテル変性シリコーンの市販品としては、SH3775M、SS-2805(以上、東レ・ダウコーニング社)、KF-6015、KF-6016、KF-6017、KF-6029(以上、信越化学社)等が挙げられる。
【0066】
アミノ変性シリコーンとしては、アミノ基又はアンモニウム基を有していればよく、末端水酸基の全て又は一部がメチル基等で封鎖されたアミノ変性シリコーンオイル、末端が封鎖されていないアモジメチコーンのどちらでもよく、以下の一般式(c4)又は(c5)で表されるものが挙げられる。
【0067】
【化9】

【0068】
〔式中、R10はSi(CH3)3又は水素原子を示し、R11は炭素数2〜8のアルキレン基を示し、n3は1〜20000の数を示し、m3は1〜2000の数を示し、a2は0〜3の数を示し、窒素含量は好ましくは0.02〜4質量%、特に0.1〜1質量%である。〕
【0069】
アミノ変性シリコーンの市販品としては、SF8451C(東レ・ダウコーニング社,粘度600mm2/s,窒素含量0.8質量%)、SF8452C(東レ・ダウコーニング社,粘度700mm2/s,窒素含量0.2質量%)、SF8457C(東レ・ダウコーニング社,粘度1200mm2/s,窒素含量0.8質量%)、KF8003(信越化学社,粘度1850mm2/s,窒素含量0.7質量%)、KF8005(信越化学社,粘度1200mm2/s,窒素含量0.1質量%)、KF867(信越化学社,粘度1300mm2/s,窒素含量0.8質量%)、KF8012(信越化学社,粘度90mm2/s,窒素含量0.6質量%)等のアミノ変性シリコーンオイルや、SM8704C(東レ・ダウコーニング社,窒素含量0.8質量%)、SM8904C(東レ・ダウコーニング社,窒素含量0.3質量%)、BY22-079(東レ・ダウコーニング社,窒素含量0.6質量%)等のアモジメチコーンエマルションが挙げられる。また、ジメチルポリシロキサン(数平均重合度550)、ジメチルポリシロキサン(数平均重合度2700)及びアミノ変性シリコーンの混合物(質量比は10:3.7:2.9)であるCF1046(東レ・ダウコーニング社,窒素含量0.14質量%)等も好適に使用できる。
【0070】
〔(D):カチオン界面活性剤〕
本発明で使用する整髪剤には、頭髪になめらかさを付与することにより、頭髪を乾燥させる際の指通りと手の動きをなめらかにして髪の生え癖を緩和する操作を容易にする観点から、更に成分(D)としてカチオン界面活性剤を含有させることができる。カチオン界面活性剤としては、次の一般式(d1)で表される第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0071】
【化10】

【0072】
〔式中、R12及びR13は各々独立して水素原子、炭素数1〜28のアルキル基又はベンジル基を示し、同時に水素原子又はベンジル基となる場合、及び、炭素数1〜3の低級アルキル基となる場合を除く。An-はアニオンを示す。〕
【0073】
ここでR12及びR13は、その一方が炭素数16〜24、更には22のアルキル基、特に直鎖アルキル基であるのが好ましく、また他方は炭素数1〜3の低級アルキル基、特にメチル基であるのが好ましい。アニオンAn-としては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;エチル硫酸イオン、炭酸メチルイオン等の有機アニオン等が挙げられ、ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンが好ましい。
【0074】
カチオン界面活性剤としては、モノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩が好ましく、具体的には、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アラキルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられ、特に塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0075】
〔溶媒〕
本発明で使用する整髪剤には、更に溶媒としてエタノール及び/又は水が含有されることが好ましい。これらの含有量は、化粧料に含まれるポリマーや可塑剤の溶解性を良好にする観点から、本発明で使用する整髪剤中の4〜98.4質量%が好ましく、更には30〜98質量%、特に50〜95質量%が好ましい。
【0076】
〔他の任意成分〕
本発明で使用する整髪剤には、上記成分のほか、通常の毛髪化粧料に用いられる成分を目的に応じて配合できる。このような成分としては、カチオン性ポリマー、油剤、増粘剤、抗フケ剤、ビタミン剤、殺菌剤、抗炎症剤、キレート剤、保湿剤(パンテノール等)、pH調整剤、染料、顔料等の着色剤、植物エキス、パール化剤、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0077】
本発明で使用する整髪剤は、ジャー、ポンプディスペンサー、エアゾール缶、ポンプミスト、ノンエアゾールフォーマー容器(たとえばポンプフォーマーやスクイズフォーマー)に入れて使用することができる。この中でもポンプディスペンサー、ノンエアゾールフォーマー容器に入れて使用することが好ましい。
【0078】
●整髪の各工程
〔工程(a)〕
本工程では、前述した条件を満たす整髪剤を、全体が湿った頭髪の少なくとも根元に適用する。
【0079】
整髪剤を適用する頭髪は、全体が湿った状態である必要がある。濡れ髪は髪内部の水素結合が切れており、髪がやわらかいので、髪の生え癖を直すのに適している。その一方、髪から水が垂れるような濡れそぼった(びしょびしょの)状態では、適用した整髪剤が流れてしまい、また乾燥にも時間がかかるため、水が垂れない程度の湿り具合である必要がある。好ましくは、頭髪に水を適用した後、タオルドライした状態、又はこれと同程度の湿り具合である。
【0080】
また、髪の生え癖を直すには、髪の根元を矯正することが必要である。すなわち、整髪剤の適用は、少なくとも根元に対してする必要があり、根元以外の部分の中間部〜毛先部分のみでは、美しいヘアスタイルのベースを作ることができない。
【0081】
ここで頭髪の根元とは、必ずしも頭皮と毛髪の生え際(接点)のみをさすのではなく、一般的にヘアケアに従事するものが「根元」と称する部分の毛髪部位全体を指し、通常頭皮と毛髪の生え際(接点)から毛先方向に5cmまでの範囲にある毛髪部分を指す。
【0082】
整髪剤の頭髪に対する適用量は、質量比(整髪剤/髪)で0.0005〜0.5、更には0.001〜0.3、特に0.005〜0.2の範囲が好ましい。
【0083】
〔工程(b)〕
本工程では、頭髪の根元に対して、送風を行うことにより乾燥を開始する。
【0084】
乾燥を根元から開始し、まず根元の生えグセを解消することで、頭髪の中間から毛先の部分も根元の毛流れに沿ったかたちで乾燥させることができ、結果的に美しいスタイリングが可能となる。ただし、乾燥をまず根元部分から開始すればよく、根元部分が100%完全に乾ききらずとも、やや湿っている程度の乾燥状態で全体の乾燥に移ってもよい。
【0085】
また、頭髪の根元の乾燥は、襟足、後頭部、側頭部のいずれかの頭髪から開始するのが好ましい。これらの位置は、乾燥しづらい場所であるため、これらの位置から乾燥を開始することで全体の生え癖を好適に取り除くことができる。
【0086】
本工程における頭髪の根元の乾燥を好適に行うには、頭髪を持ち上げて根元を起こした状態で乾燥するのが好ましい。本工程における頭髪の根元に対する送風を、頭皮に手指を接触させ手ぐしにより髪を持ち上げたまま、手指をジグザグに動かしながら行うのが好ましい。このようにすることで、(1)根元を持ち上げることにもつながり、(2)髪の生え癖を取り除くことができ、(3)効率的に風を頭髪の根元に送り込むことができ、まず根元から乾燥させることがやりやすくなる。
【0087】
〔工程(c)〕
送風により、頭髪全体を完全に乾燥させる。
乾燥が不十分では(生乾きの状態で乾燥をやめてしまうと)、ベーススタイルの出来栄えや仕上がりの感触不十分となり、スタイル保持性も劣るものとなる。
【実施例】
【0088】
以下の実施例・比較例における整髪成分の複素弾性率(G*)の測定、算出は、以下のようにして行った。
【0089】
○測定対象のサンプルの成膜
各整髪剤を、直径5cmのテフロン(登録商標)製のシャーレに10mL注ぎ、40℃、湿度20%、1013.25hPaの環境下で2日間放置する。続いて残存溶媒を蒸発除去すべく、真空乾燥機で真空度5.33kPaの状態にして24時間放置する。その後、シャーレの底に残った膜を注意深く引き剥がす。
なお、サンプルの成膜の際には、気泡が入らないよう、また熱などによる劣化がないように注意する。もし気泡が入ったり、劣化してしまった場合には、サンプルの成膜をやり直すものとする。
ただし、比較例1については、PEG-600が液状であるため、そのまま測定に用いた。
【0090】
○測定対象サンプルの弾性率測定の測定条件
・測定装置:Paar Physica社製のMCR500
・測定セル:直径6mm、溝付きパラレルプレート(成分(A)が液状の場合は、直径75mm、コーンプレートCP-75-2)
・測定周波数:2Hz
・測定温度:30℃
・測定ひずみ:線形範囲内(ひずみ0.01%)
実施例1〜4、比較例2については、上記の手法により成膜したサンプルをパラレル・プレートに挟み、窒素雰囲気下で昇温、融解し、プレート間隔を1.3mmまで狭める。溶融状態ではみ出した膜の部分をかきとり、サンプルのマウントを完了する。その後約10℃/分の速度で30℃まで降温し、5分保持する。
比較例1については、PEG-600をコーンプレートCP-75-2に挟み、サンプルのマウントを完了する。
【0091】
○複素弾性率の算出
貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)から、次式に従って、複素弾性率(G*)を計算する。
G* = 〔(G’)2 + (G”)21/2
【0092】
実施例1〜4・比較例1〜2
表1に示す整髪剤を調製した。これらの整髪剤を使用して、以下に示す手順で整髪を行い、以下に示す方法・基準に従って評価した。結果を表1に示す。
【0093】
・整髪手順
株式会社ビューラックス社製のウィッグ(No.775S)を髪の長さがミディアムレングスになるようにカットする。ウィッグをプレーンシャンプー(花王社製キュレルシャンプー 以下同じ)を用いて洗浄し、タオルドライした後、実施例又は比較例に記載の整髪剤をポンプディスペンサー(吐出した際の噴霧粒径は50〜100μm)によりウィッグの頭髪全体に4g塗布し、目の粗いクシで全体になじませた。その後、ブロードライヤー(パナソニック社製Ionity EH5305P)の温風にて乾燥させた。乾燥の手順は、まずウィッグ頭髪の根元部分に温風が行き渡るように片手を動かしながら頭髪をもちあげるように行い、続いて頭髪全体を乾燥させた。本操作中における評価を以下の視点で10名の専門パネラーによって評価した。
【0094】
・評価方法・基準
「乾燥させやすさ(ベーススタイルの作りやすさ)」
専門パネラー10名により、以下の評価基準に対する投票を行い、投票数の一番多かったカテゴリーを評価結果とした。
A:乾くスピードが遅すぎず、また早すぎず、ヘアスタイルを整えやすい
B:乾くスピードが遅く、時間がかかりすぎる
C:乾くスピードが早すぎるため、ヘアスタイルをうまく整えられない
【0095】
「乾燥中の髪の感触」
下記基準による5段階官能評価を行った。
5点:良い、4点:やや良い、3点:どちらともいえない、2点:あまり良くない、1点:良くない
10名の合計点により、以下の基準で判定結果とした。
◎ :43〜50点
○ :35〜42点
○△:27〜34点
△ :19〜26点
× :10〜18点
【0096】
「ベーススタイルの出来栄え」、「仕上がりの感触(なめらかさ、ごわつきのなさ、べたつきのなさ)」
前述の整髪手順で仕上げたウイッグについて、ベーススタイルの出来栄え、なめらかさ、ごわつきのなさ、べたつきのなさについて、専門パネラー10名が、下記基準による5段階官能評価を行った。
5点:良い、4点:やや良い、3点:どちらともいえない、2点:あまり良くない、1点:良くない
10名の合計点により、以下の基準で判定結果とした。
◎ :43〜50点
○ :35〜42点
○△:27〜34点
△ :19〜26点
× :10〜18点
【0097】
「振動を与えたときのスタイルのもち」
前述の整髪手順で仕上げたウィッグを、アズワン株式会社製万能シェーカーAS-1Nに固定し、振とう幅40mm、周波数3Hz、15分間の振動を与えた後のヘアスタイルのもちについて、専門パネラー10名が、下記基準による5段階官能評価を行った。
5点:ヘアスタイルはほとんど変化しない、4点:ヘアスタイルはあまり変化していない、3点:どちらともいえない、2点:ヘアスタイルがやや崩れてしまっている、1点:ヘアスタイルがかなり崩れてしまっている
10名の合計点により、以下の基準で判定結果とした。
◎ :43〜50点
○ :35〜42点
○△:27〜34点
△ :19〜26点
× :10〜18点
【0098】
【表1】

【0099】
比較例3〜7(実施例2との比較)
実施例2と同じ整髪剤を用い、整髪手順を表2に示すように変更(採用した手順を★で示す)した以外は実施例2と同様にして評価を行った。この結果を表2に示す。
【0100】
【表2】

【0101】
処方例1
(数値はアクティブ量)
水 残量
エタノール 15.0
ポリシリコーン-9(エラストマーOS-88、花王) 2.0
アミノ変性シリコーンエマルション
(SM8904 Cosmetic Emulsion、東レ・ダウコーニング) 1.0
セトリモニウムクロライド(コータミン60W、花王) 0.6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程(a)〜(c)の順に操作を行う整髪方法。
工程(a):整髪成分として、整髪性ポリマー〔成分(A)〕、又は整髪性ポリマー〔成分(A)〕及びその可塑剤〔成分(B)〕を含有し、当該整髪成分からなる皮膜の複素弾性率(G*)が、1.0×103〜1.0×109である整髪剤を、水が垂れない程度に全体が湿った頭髪の少なくとも根元に適用する。
工程(b):頭髪の根元に対して、送風を行うことにより乾燥を開始する。
工程(c):送風により、頭髪全体を完全に乾燥させる。
【請求項2】
整髪剤を適用する全体が湿った頭髪が、頭髪に水を適用した後、タオルドライしたものである請求項1記載の整髪方法。
【請求項3】
工程(a)における整髪剤の頭髪に対する適用量が、質量比(整髪剤/髪)で0.0005〜0.5の範囲である請求項1又は2記載の整髪方法。
【請求項4】
工程(b)における頭髪の根元の乾燥を、頭髪を持ち上げて根元を起こした状態で行う請求項1〜3のいずれかに記載の整髪方法。
【請求項5】
工程(b)における頭髪の根元の乾燥を、襟足、後頭部、側頭部のいずれかの頭髪から開始する請求項1〜4のいずれかに記載の整髪方法。
【請求項6】
工程(b)における頭髪の根元に対する送風を、頭皮に手指を接触させ手ぐしにより髪を持ち上げたまま、手指を頭に沿ってジグザグに動かしながら行う請求項1〜5のいずれかに記載の整髪方法。
【請求項7】
整髪剤が、更に成分(C)を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の整髪方法。
成分(C):疎水性シリコーン
【請求項8】
整髪剤が、更に成分(D)を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の整髪方法。
成分(D):カチオン界面活性剤

【公開番号】特開2012−36130(P2012−36130A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178127(P2010−178127)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)平成22年7月6日「http://www.kao.com/jp/index.html、http://www.kao.com/jp/corp_news/2010/index.html#07及びhttp://www.kao.com/jp/corp_news/2010/20100706_001.html」を通じて発表
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】