説明

文字練習教材、文字練習システム、および、文字練習プログラム

【課題】従来よりも練習効率を高め、練習者の技術を早期に上達させることができる文字練習用教材、文字練習システム、および、文字練習プログラムの提供。
【解決手段】複数の練習枠3a〜3fにそれぞれ配置される、練習対象文字のなぞり線4a〜4fを、その表示部分が段階的に少なくなるよう順次表示してなる文字練習教材。また、練習対象文字の手本55やなぞり線59等を表示する表示手段51,52と、上記手本55およびなぞり線59を表示させるための文字練習用データを保持する記憶手段と、上記表示手段51,52に上記手本55およびなぞり線59を表示させる演算・制御手段と、練習対象文字を手書き入力することが可能な手書き入力手段52とからなる文字練習システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字練習教材、文字練習システム、および、文字練習プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
パソコンや携帯電話が世の中に行き渡ったIT時代においても、文字を速く正確に書く技術・早く美しく書く技術は、大切な情報を正確に記録するためだけでなく、人と人とのコミュニケーションをより円滑にするために従来と変わらず必要不可欠である。判読困難な文字は、ときには読者に誤った情報を伝える可能性があり、これが大きな人災につながるおそれもあるので、大人から子どもまで多くの日本人が、また、外国籍の日本語学習者が要望するものである。
【0003】
また、文字を速く美しく書く技術は、文字を書くときの書き手の精神状態を安定させ、美しい文字を書き続けることができる自分の技術に対する充実感・安心感が精神状態を常に良い状態を継続する原動力となり得る。
さらに、美しい文字で書かれた語句や文章の読み手は、美しい文字から美的感動を得るとともに、書き手の文字を速く美しく書く技術に対する尊敬の念と書き手の文字を大切にする精神性に対し信頼と親愛の感情を抱くことにつながり、円滑なコミュニケーションの原動力となり得る。
【0004】
くわえて、幼児から学生まで、学習者が学習する上で、学習効率及び学習意欲の向上ためにも重要な技術であり、速く正確に書く技術の習得により下記の効果が期待できる。
1. 文字を限られた時間で大量に書けるようになり、学習効率が向上する。
2. 文字を書くための労力・負担が軽減し、読む・聞く・理解するなどの、他の学習活動にエネルギーをより多く注ぐことができる。
【0005】
一方、文字を速く正確に書く技術を習得できないことにより考えられるデメリットは次の通りである。
1. 授業時及び自習時に学習内容を記録するために、多くの時間を要し、限られた学習時間の中でこなせる学習量が少なくなり、学習進度の遅延につながる。
2. 一定時間あたりの学習進度の遅延により、学習カリキュラムの完全な消化に支障をきたすとともに、反復学習の機会を失うおそれがある。それにより学習内容の記憶の定着を図れないことにつながる。
3. 学習内容を記録するために、多くの時間を要してしまうことにより、読む・聞く・などの他の学習活動に必要な時間が削減される。
4. 上記の事項の反復や悪循環により、学習者の学習意欲の減退を招くおそれがある。
【0006】
文字を書き始める年齢は通常は平均して3〜4歳と思われるが、幼児期には両親や周囲の大人は、自由に好きなように字を書かせ、文字が書けただけでその文字のバランスや書き順など書き方の善し悪しに関係なく誉めたたえる。しかし小学校入学が近づくにつれて、誉めることが徐々に少なくなり、バランス・書き順・持ち方・鏡文字などを注意したり、乱雑に書かずにゆっくりていねいに書くように注意するなど、誉めることよりも子どもの書き方を誉めることよりも注意することが著しく多くなりがちであり、子供は文字を書くことに対して消極的になったり、拒否反応を起こすことにつながりかねない。
【0007】
一方、小中学校での文字を書く技術に関する指導の現状は、国語の授業の中で行われる「書写」の限られた僅かな授業時間の中でのみ、下記の学習指導要領に沿って指導行われているのが現状である。
【0008】
<小学校学習指導要領(平成10年12月)>
第2章 各教科
「第1節 国語 第2 各学年の目標及び内容」
〔第1学年及び第2学年〕
文字に関する事項の指導のうち、書写については、次の事項を指導する。
ア.書写に関する事項
(ア) 姿勢や用具の持ち方を正しくして丁寧に書くこと。
(イ) 点画の長短,接し方や交わり方などに注意して,筆順に従って文字を正しく書くこと。
〔第3学年及び第4学年〕
文字に関する事項の指導のうち、書写については、次の事項を指導する。
ア.書写に関する事項
(ア) 文字の組立て方に注意して,文字の形を整えて書くこと。
(イ) 文字の大きさや配列に注意して書くこと。
(ウ) 毛筆を使用して,点画の筆使いや文字の組立て方に注意しながら,文字の形を整えて書くこと。
〔第5学年及び第6学年〕
ア.書写に関する事項
(ア) 文字の形,大きさ,配列などを理解して,読みやすく書くこと。
(イ) 毛筆を使用して,点画の筆使いや文字の組立て方を理解しながら,文字の形を整えて書くこと。
(ウ) 毛筆を使用して,字配りよく書くこと。
【0009】
<中学校学習指導要領(平成10年12月)>
「第2章 各教科 第1節 国語 第2 各学年の目標及び内容」
〔第1学年〕
書写に関する次の事項について指導する。
ア.字形,文字の大きさ,配列・配置などに配慮し,目的や必要に応じて調和よく書くこと。
イ.漢字の楷書や行書とそれらに調和した仮名の書き方を理解して書くとともに,読みやすく速く書くこと。
〔第2学年及び第3学年〕
書写に関する次の事項について指導する。
ア.字形,文字の大きさ,配列・配置などに配慮し,目的や必要に応じて調和よく書くこと。
イ.漢字の楷書や行書とそれらに調和した仮名の書き方を理解して書くとともに,読みやすく速く書くこと。
【0010】
このように、学習指導要領においては「文字を書く技術」に関しては、小学校1年から4年までは、正しく丁寧に書くこと、小学校5,6年は、読みやすく・文字の形を整えて書くこと、中学1年から3年までは、読みやすく速く書くことが、中心的な目標に据えられている。
【0011】
すなわち、小学校では速く読みやすく書くことが目標となっておらず、中学校学習指導要領で初めて目標として掲げられている。
よって、小学校では速く読みやすく書く技術の習得のための指導カリキュラムと指導用教材、そして指導できる人材が存在しないことになる。
また、中学校では、小学校で読みやすく速く書く技術の習得のためのトレーニングがほとんど行われていない状態で生徒が入学してくるため、中学校の学習指導要領に示されている「読みやすく速く書く」技術の指導を、限られた僅かな授業時間の中で行うことが要求されるとともに、現行の書写の教科書には「読みやすく速く書く」技術の習得のための具体的且つ実践的な内容が示されていないため、中学校で「読みやすく速く書く」技術を習得することは極めて困難であると考えられる。
【0012】
より具体的には、小学1年から授業中の板書や連絡事項をノートに書き写すなどの場面で速く読みやすく書くことが要求される。
学年が上がるにつれて、その要求レベルが更に上昇する。したがって、生徒は読みやすく書く技術の指導を受けずに未熟な技術レベルのまま様々な場面で速く書くことになり、文字の書き方が乱れたり、生徒が大きな精神的肉体的負担を感じながら文字を書くことになるのは必然的であり、大切な学習活動の一つである文字を書くことに消極的になるおそれがあり、更には文字を書くことに対し拒絶反応を起こすことも考えられる。
【0013】
このような背景のもと、かなや漢字等の文字を練習するための多くの練習帳やドリルが提案されている。
【0014】
たとえば、漢字ドリルとしては、下記特許文献1に記載されたものがある。これは、練習しようとする漢字の手本を表示した手本欄と、その漢字の使用例を示す使い方欄と、その漢字を書き込んで練習するための練習欄と、書き順を示す書き順欄を設けたもので、その書き順欄には、書き順に従って表示部分を順次増やして、すなわち、3画の文字であれば、第1画目のみ表示したもの、第2画まで表示したもの、第3画まで表示したものを順に並べて表示している。
【0015】
他の漢字ドリルとして、漢字の字形上の間違え易い部分を着色して目立たせ、また、陥り易い間違いを具体的に指摘する説明欄を設けた、下記特許文献2に記載されたものもある。
【0016】
一方、特許文献3に記載されているもののように、文字全体の外形を横長長方形や縦長長方形等の枠で明示することによって、練習者に各文字の外形イメージを認識させやすくした文字練習帳もある。
【0017】
そのほか、特許文献4には、毛筆の練習用紙として、各字画を毛筆筆跡の外周縁を縁取った縁取り線として表示し、また、筆先の運筆通過線をその縁取り線より太い太線で表示して運筆をわかりやすくしたものが記載されている。
【特許文献1】実開昭61−81678号公報
【特許文献2】実用新案登録第2580446号公報
【特許文献3】特開2004−101776号公報
【特許文献4】特開2000−15959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記特許文献1,2のドリルによる練習の場合、練習者は、手本となる文字やその書き順を手本欄等で確認し、これと見比べながら練習欄に文字を書き込む必要がある。
したがって、第1に、練習者は、手本欄,書き順欄,説明欄等と練習欄との間を頻繁に目線を移動させなければならない。第2に、そのような頻繁な目線移動が、上達に必要な運筆の速さやリズムの養成の妨げになってしまう。第3に、練習者の手本を観察し理解する能力が不十分な場合、手本を見て誤った認識をし、その誤った認識をもとにした書き方を繰り返してしまい練習の効率を低下させてしまうおそれがある。
【0019】
また、特許文献3のように文字全体の外形を表示する練習帳についても、従来は、全ての文字を、正方形、縦長方形、横長方形、三角形等の数種類の単純な外形に分類しているにすぎないから、個々の文字の細かい部分の特徴を練習者に理解させることは難しい。
たとえば、ひらがなや漢字行書の文字外形も直線で囲んで表示してしまうと、それらの重要な特徴である曲線の書き方を効果的に理解させることができない。
【0020】
特許文献4の毛筆の練習用紙は、縁取り線とともに毛筆の筆先の運筆通過線を明示したものであるが、文字中の要所において筆を置く向きは明示されていないので、運筆を効果的に学習するには不十分であるし、文字の外形の表示は、手本欄に示されているので、練習に際しては手本欄と練習欄との間の頻繁な目線移動が必要になってしまう。
【0021】
これら特許文献1〜4を含む従来の文字練習方法の問題点は、次のように集約される。
すなわち、従来の練習方法は、第一段階として、文字全体をなぞり書きする練習をし、その後、手本を見ながら自分で文字全体を書く、という2段階の練習を繰り返すことで文字の上達を図ろうとするものであるが、そもそも手本を正確に認識する能力は練習者個人ごとの差が大きいので、文字の特徴を誤認識したまま練習を繰り返してしまう者は、誤った書き方の反復により練習効率を大きく低下させ、また、失敗体験が繰り返され練習意欲の減退を招くことがある。
【0022】
手本の文字のなぞり線をなぞるという行為は、文字を構成する一本一本の線の長さ・方向・間隔・筆圧の強弱・運筆速度の遅速を、視覚と文字を書くための指先の運動神経で同時に正確に認識しながら書くという行為であり、手本の文字の長所・特徴を正しく理解し、バランス良くなめらかに書く技術を習得するために効果的な基本練習法である。
しかし、なぞる行為の反復回数の増加に伴って、練習者は徐々に手本の長所・特徴に対する意識・注意力が低化し、惰性でなぞる行為の反復を継続し、手本の特徴を考えずに練習する状態に陥るおそれがある。
【0023】
また、2段階のみの練習であるから、どのような失敗をしたのか、どの部分の練習が必要なのか、練習者自身が手本と見比べて判断することは、その理解レベルが一定以上にないと困難であり、その解決方法を自ら見出すことはさらに難しく、親や教師による指導にも困難がともなってくる。
したがって、従来のような練習では、練習者の能力差によって効果の差が大きく出てしまうことが避けられず、全ての練習者にとって効率的な練習とはなっていなかった。
【0024】
具体的には、文字全体をなぞって練習した後は、独力で白紙の練習欄に練習する前に、手本の文字の、(1)図形的特徴に関する情報(文字を構成する一本一本の線の長さ・方向・間隔・筆圧の強弱・運筆速度の遅速)と、(2)手本に対する説明文・矢印・書き順など手本の文字の特徴を表す文字情報とを視覚により正確に感知して理解することが、十分な練習効果を得るために不可欠である。
特に、文字の特徴を脳で正しく認識し理解することは、「文字をバランス良くなめらかに書く技術」の習得のために最初に必要な要素であり、これ無しに「文字を速く正確に書く技術・速く美しく書く技術」の習得はあり得ない。
この、情報を正しく認識し理解する能力が不十分な練習者(初心者や年少者など)は、情報の誤認識や認識不足・理解不足が起こる可能性があり、練習効果を著しく低下させるおそれがある。
すなわち、それらの認識した情報を整理した後に、その情報を手や指先に伝達し、手や指先の運動神経で適切に表現するという作業の反復トレーニングが「文字を速く正確に書く技術・速く美しく書く技術」の習得のためには必要である。
しかし、手本の文字全体のなぞり線をなぞるという行為の単調な多回数の反復により、練習者の手本の長所・特徴に対する意識・注意力の低化を招いた場合、書く文字の特徴の脳での正しい認識・理解に支障をきたし、その場合も練習効果・精度が低化するおそれがある。
【0025】
さらには、実用的な速さで、文字を書くための練習をしようとする場合に、どの程度の速さで練習すればよいのかについて、これまでは、明確かつ具体的な情報が提供されていなかった。
文字を滑らかに書くには、適切な速度で書くことが重要であるが、練習者は、速く書きすぎて不明瞭になったりバランスをくずした文字を書いてしまうとか、あるいは、ゆっくりと書きすぎて非実用的な文字の書き方に陥ってしまうということが多く、文字を書く技術の向上が遅れることがあった。
このことは、自転車に乗るときに、速度が遅すぎると左右に揺れて不安定な走行となる一方、速すぎるとハンドル操作が困難になりカーブで曲がりきれなかったり、ブレーキを掛けても間に合わず停止位置で止まることができなかったり、進行方向も左右にぶれて不安定になりやすいのと同様である。
【0026】
そこで、本発明は、従来よりも練習効率を高め、練習者の技術を早期に上達させることができる文字練習用教材、文字練習システム、および、文字練習プログラムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
請求項1記載の本発明は、複数の練習枠3a〜3f,15a〜15g,22a〜22d,41にそれぞれ配置される、練習対象文字のなぞり線4a〜4f,16a〜16f,24,41’を、その表示部分が段階的に少なくなるよう順次表示してなる文字練習教材である。
【0028】
請求項2記載の本発明は、上記各練習枠3a〜3f,15a〜15g,22a〜22d,41内に、上記練習対象文字の外形を形どった傾斜や湾曲をもつ外形線5,13,23を表示した請求項1記載の文字練習教材である。
【0029】
請求項3記載の本発明は、上記各練習枠3a〜3f,15a〜15g,22a〜22d,41内に、上記練習対象文字の各字画の入筆方向および各字画間あるいは線を引いた後の運筆を示す気脈線12,25を表示した請求項1または2記載の文字練習教材である。
【0030】
請求項4記載の本発明は、なぞり線16a〜16f中の要所に、筆を置くべき向きを示す筆向き表示印17を表示した請求項1,2または3記載の文字練習教材である。
【0031】
請求項5記載の本発明は、練習対象文字の手本またはなぞり線41’を、その文字を書く適正な速さを示すように、字画ごとあるいはその字画の部分ごとに色分け表示した文字練習教材である。
【0032】
請求項6記載の本発明は、複数の文字を記入練習する練習枠45に、その各文字を書くべき時間を指示する秒数表示47’を各文字に対応させて表示した文字練習教材である。
【0033】
請求項7記載の本発明は、練習対象文字の手本55,65,75,84やなぞり線59等を表示する表示手段51,52,61と、上記手本55およびなぞり線59を表示させるための、手本データ,なぞり線データ等の文字練習用データを保持する記憶手段と、練習対象文字を手書き入力することが可能な手書き入力手段52,56,63,73,74と、上記表示手段51,52,61に上記手本55およびなぞり線59並びに上記手書き入力された文字を表示
させる演算・制御手段とからなる文字練習システムである。
【0034】
請求項8記載の本発明は、上記演算・制御手段が、上記なぞり線を、段階的に表示部分を少なくしながら繰り返し表示させる請求項7記載の文字練習システムである。
【0035】
請求項9記載の本発明は、上記演算・制御手段が、上記手本55またはなぞり線を、その文字を書く適正な速さを示すように、字画ごとあるいはその字画の部分ごとに色分け表示させる請求項7記載の文字練習システムである。
【0036】
請求項10記載の本発明は、上記演算・制御手段が、上記手本55またはなぞり線59を、その書き順に従って第1画から順になめ出し動画によって表示させる請求項7記載の文字練習システムである。
【0037】
請求項11記載の本発明は、練習対象文字の手本55,65,75,84やなぞり線59等を表示する表示手段51,52,61と、上記手本55およびなぞり線59を表示させるための、手本データ,なぞり線データ等の文字練習用データを保持する記憶手段と、上記表示手段51,51に上記手本55およびなぞり線59を表示させる演算・制御手段と、請求項1〜6のいずれかに記載の文字練習教材とからなる文字練習システムである。
【0038】
請求項12記載の本発明は、
記憶手段から文字練習データを読み出すステップと、
その文字練習データにより、なぞり線を表示手段52に表示するステップと、
入力手段により入力される軌跡を記憶手段に記憶するステップと、
その入力された軌跡を上記なぞり線に重ねて表示手段52に表示するステップ、および、
前回表示した上記なぞり線よりも表示部分を少なくした次順位のなぞり線を、表示手段52に表示するステップと、
入力手段により入力される軌跡を記憶手段に記憶するステップと、
その入力された軌跡を上記次順位のなぞり線に重ねて表示手段52に表示するステップ、を有する文字練習プログラムである。
【0039】
請求項13記載の本発明は、
記憶手段から文字練習データを読み出すステップと、
その文字練習データにより、手本55またはなぞり線59を表示手段51,52に、その書き順に従って第1画からワイプ動画によって表示させるステップと、
上記ワイプ動画の表示と並行して入力手段により入力される軌跡を記憶手段に記憶するステップと、
その入力された軌跡を上記なぞり線に重ねて上記表示手段51,52に表示するステップ
を有する文字練習プログラムである。
【発明の効果】
【0040】
請求項1記載の本発明文字練習教材は、複数の練習枠内のなぞり線を、段階的に表示部分を少なくして表示しているので、練習者は各練習枠のなぞり線を順になぞり書きする練習により、独力で正しい文字を書く練習を効率的に進めることができる。
すなわち、その練習は、前段階の練習枠の文字の残像や運筆の感触をもとにしてスムーズに行え、また、手本欄にわざわざ視線を移動することなく、正しい書き順で自然にかつ無意識に、なぞり書きから全体を独力で書くところまで無理なく練習を進めることができる。
また、手本を誤認識したまま間違った練習を繰り返してしまうおそれもない。
【0041】
請求項2記載の本発明文字練習教材は、練習対象文字の外形線が表示されているから、練習者は、各文字の形の全体的な特徴や字画(線)自体の傾き、字画と字画の角度、曲線など、ポイントとなる部分形状を具体的に理解でき、正しい全体形状で、また、ポイントとなる部分の形状も正しく書くことができるようになる。
【0042】
請求項3記載の本発明文字練習教材は、気脈線を表示してあるから、練習者は、第1画を書く前から、最後の字画を書き終わった後まで、正しい運筆方向と運筆経路を保ちながら正しい文字を正確に書く練習をすることができる。
【0043】
請求項4記載の本発明文字練習教材は、筆向き表示印(筆の穂先の方向)を表示してあるから、練習者は、その位置における正しい筆の穂先の向きを確認しながら練習ができる。
【0044】
請求項5記載の本発明文字練習教材は、手本またはなぞり線を、その文字を書く適正な速さを示すように、字画ごとあるいはその字画の部分ごとに色分け表示してあるので、練習者は、文字を書く適正な速さないし運筆の緩急を理解し、リズムに乗って文字を書く練習をすることができる。
【0045】
請求項6記載の本発明文字練習教材は、複数の文字を記入練習する練習枠に、その各文字を書くべき時間を指示する秒数表示を各文字に対応させて表示したので、練習者は、各文字を指定された時間をかけて書く練習を進めることで、実用的な速さで文字を書く技術を容易に修得できる。また、文章全体についても、段階的に速く書く練習をすることができる。
【0046】
請求項7記載の本発明文字練習システムは、練習対象文字の手本やなぞり線等を表示する表示手段と、上記手本およびなぞり線を表示させるための、手本データ,なぞり線データ等の文字練習用データを保持する記憶手段と、上記表示手段に上記手本およびなぞり線を表示させる演算・制御手段と、練習対象文字を手書き入力することが可能な手書き入力手段とからなるので、練習者は、これを用いて効率的な文字の練習を行うことができる。
【0047】
請求項8記載の本発明文字練習システムは、手本またはなぞり線がなめ出し動画によって、その書き順に従って第1画から順に表示されるので、これにより、リズムに乗って文字を書く練習ができる。
【0048】
請求項9記載の本発明文字練習システムは、上記なぞり線が、段階的に表示部分を少なくしながら繰り返し表示されるので、練習者は、その段階的に表示部分が少なくなるなぞり線をなぞり書きする練習を繰り返すことで、独力で正しい文字を書く練習を効率的に進めることができる。
【0049】
請求項10記載の本発明は、文字練習システム、なぞり線が、その文字を書く適正な速さを示すように、字画ごとあるいはその字画の部分ごとに色分け表示されるので、文字を書く適正な速さないし運筆の緩急を理解し、リズムに乗って文字を書く練習をすることができる。
【0050】
請求項11記載の本発明文字練習システムは、練習対象文字の手本やなぞり線等を表示する表示手段と、上記手本およびなぞり線を表示させるための文字練習用データを保持する記憶手段と、上記表示手段に上記手本およびなぞり線を表示させる演算・制御手段と文字練習教材とからなるので、手本やなぞり線を上記表示手段に表示し、これを参照しながら文字練習教材に文字を書く練習を行える。
【0051】
請求項12記載の本発明文字練習プログラムは、記憶手段から文字練習データを読み出すステップと、その文字練習データにより、なぞり線を表示手段に表示するステップと、入力手段により入力される軌跡を記憶手段に記憶するステップと、その入力された軌跡を上記なぞり線に重ねて表示手段に表示するステップ、および、前回表示した上記なぞり線よりも表示部分を少なくした次順位のなぞり線を、表示手段に表示するステップと、入力手段により入力される軌跡を記憶手段に記憶するステップと、その入力された軌跡を上記次順位のなぞり線に重ねて表示手段に表示するステップ、を有するので、練習者は、このプログラムを使用して、その段階的に表示部分が少なくなるなぞり線をなぞり書きする練習を繰り返すことで、独力で正しい文字を書く練習を効率的に進めることができる。
【0052】
請求項13記載の本発明文字練習プログラムは、記憶手段から文字練習データを読み出すステップと、その文字練習データにより、手本またはなぞり線を表示手段に、その書き順に従って第1画からワイプ動画によって表示させるステップと、上記ワイプ動画の表示と並行して入力手段により入力される軌跡を記憶手段に記憶するステップと、その入力された軌跡を上記なぞり線に重ねて上記表示手段に表示するステップを有するので、練習者は、このプログラムを使用して、文字を書く適正な速さないし運筆の緩急を理解し、リズムに乗って文字を書く練習をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
複数の練習枠3a〜3f,15a〜15g,22a〜22d,41にそれぞれ配置される、練習対象文字のなぞり線4a〜4f,16a〜16f,24,41’を、その表示部分が段階的に少なくなるよう順次表示してなる文字練習教材。
【実施例1】
【0054】
本発明文字練習教材の一実施例を図1に示す。
【0055】
この文字練習教材Aは、ノート形式のもので、その手本欄1内に、練習すべき練習対象文字としてここではひらがな楷書体の「ら」の文字が黒色で表示されている。この手本欄1内にはその「ら」の文字の書き順を、各字画の近傍に「1」,「2」の数字を付すことで示し、また、各字画について運筆の方向を複数の矢印で示してある。
この矢印の長さは運筆の速さに対応し、筆を速く運ぶべき箇所には長い矢印を、筆を遅く運ぶべき箇所には短い矢印を表示してある。なお、運筆の速さは速い部分と遅い部分とで色を変えて色分け表示することも可能で、さらには、矢印の長さと色分けとで表示することも可能である
また、第2画目の終端部は点線で囲まれ、その近傍にはその終端部を「はらう」旨の注意書きが表示されている。
【0056】
縦4列に設けられた第1〜第4の練習欄2A〜2Dは、それぞれ、6マスの第1〜第6の練習枠3a〜3fを設け、それらの中に、「ら」の文字の全部または一部をグレーで印刷したなぞり書き練習のためのなぞり線4a〜4fを表示している。
その各練習枠3,…,…内の上記なぞり線4a〜4fは、上から順に、段階的に表示部分が少なくなるように表示してある。
すなわち、第1,第2の練習枠3a,3b内のなぞり線4aおよび4bは「ら」の文字全体を表示してあるが、第3の練習枠3c内のなぞり線4cは、途中まで、具体的には、「ら」の文字の第2画の終端部分が欠けた状態に表示され、第4の練習枠内のなぞり線4dは、第1画と、第2画の前半の縦線のみ、すなわち第2画の後半(折曲部以降)の湾曲部が欠けた状態に表示されている。
第5の練習枠3e内のなぞり線4eは、さらに表示部分が少なく、第1画と、第2画の前半の縦線の上端部までが表示されている。
第6の練習枠3f内のなぞり線4fは、第1画のみが表示されている。
【0057】
また、上記各練習枠3a〜3fには、「ら」の文字全体の外形を形どった外形線5がグレーで表示されている。この外形線5は、具体的には、第1画の始端の近傍から第2画の前半の縦線に沿って第2画の折曲部近傍までやや斜め左に垂下する斜線5aと、その斜線5aの下端に連続し、第2画の終端近傍まで斜め右に垂下する斜線5bと、上記斜線5aの始端から第1画の傾斜に沿って斜め右に垂下する斜線5cと、その斜線5cに連続し第2画の湾曲部の頂点に向けて斜め右に垂下する斜線5dと、その斜線5dに湾曲部を介して連続し第2画の湾曲に沿って上記線5bの終点に連なる斜線5eとからなり、いわば略紡錘形をなすものである。
この外形線5は、従来の単純な外形表示とは異なり、上記「ら」の文字の各字画に沿う傾斜や湾曲をもち、文字全体の外形を最も適切に表すように設計されたものであって、他の文字や他の書体の文字を練習するための練習欄にはそれぞれの文字について細かく設計された外形線が表示される。
文字は、一つ一つ異なった形や構成から作られており、従来のように、全ての文字を多くても6種類程度の外形に分類してしまうことは、それぞれの文字の特徴を、学習者に誤って認識させてしまうおそれがあるので、この文字練習教材Aにおいては、個々の文字について外形線を設計している。
【0058】
上記各練習枠3a〜3fにはまた、「ら」の文字の縦中心を示す中心線6がグレーの点線で表示されている。
【0059】
その他、最右行および右から3行目の練習欄2A,2Cの第1の練習枠3aには、さらに、書き順を字画ごとに付した数字で示し、第2画の終端部の近傍に、その終端を「はらう」旨の指示が表示されている。
【0060】
なお、上記練習欄2A〜2Dの左側に設けられた練習欄7は、それぞれの練習枠8,…,…に、筆ペン用のなぞり線全てを表示した、従来と同様の構成のものである。
【0061】
上記の文字練習教材Aを用いた文字の練習は、以下のように実施される。
【0062】
練習者は、まずは練習欄2Aにおいて、第1〜第6の練習枠3a〜3fの順に、なぞり線4a〜4fをなぞる練習からスタートする。
すなわち、第1,第2の練習枠3a,3bには「ら」の文字の全体がなぞり線として表示してあるから、まず、それらの練習枠3a,3bにおいては、その全体をなぞり書きする。
【0063】
続いて、第3の練習枠3cの、途中まで表示されているなぞり線4cをなぞるとともに、なぞり線4cが表示されていない第2画の終端部分を独力で書き、文字全体を完成させる。
このとき、さきに練習をした練習枠3a,3bの文字の全体像が視覚的に残像として残り、また、運筆の感触が手に残った状態であるから、失敗することなくスムーズに、また、手本欄1に視線を移動することなく容易に練習できる。
【0064】
次いで、第4の練習枠3dにおいても、途中まで表示されているなぞり線4dをなぞるとともに、表示されていない残りの部分を独力で書き、文字全体を完成させる。
【0065】
同様に第5の練習枠3eにおいて、表示されているなぞり線4fをなぞるとともに残りの部分を独力で書く。
【0066】
第6の練習枠3fでは、なぞり線4fはほとんど表示されていないのでほぼ全ての部分を独力で書くこととなるが、直前の練習枠3a〜3eでの練習の際の残像、運筆の感触をもとに、スムーズに練習できる。
【0067】
上記の各練習枠3a〜3fにおける練習は、上記外形線5および中心線5を参考にして行うことで、より効率的に行えるようになっている。
すなわち、なぞり線が表示されていない部分では、外形線5および中心線6をたよりにして正しい字形を想定しながら書くことができる。
【0068】
必要に応じ、同様の練習を練習欄2B〜2Dにおいて繰り返し行う。
【0069】
上記の通り、この練習欄2A〜2Dは、第1〜第6の練習枠3a〜3fの順に、段階的になぞり線4a〜4fの表示部分を少なくしてあるので、これを順になぞり書きする練習は、前段階の練習枠の文字の残像や運筆の感触をもとにしてスムーズに行え、また、手本欄1にわざわざ視線を移動することなく、正しい書き順で自然にかつ無意識に、なぞり書きから全体を独力で書くところまで無理なく練習を進めることができる。
また、手本を誤認識したまま間違った練習を繰り返してしまうおそれもない。
仮に、たとえば練習枠3dにおいて練習する際に正しい字形を確認したい場合には、直上の練習枠3cに視線を若干移動するだけで足り、見本欄を見直す必要がない。
これにより、誤った書き方・失敗を未然に防ぎながら、独力で正しい文字を書く練習を効率的に進めることができる。
【0070】
また、手本を見ながら空欄に文字を練習するような従来の文字練習方法に比べると、段階的に表示部分が少なくなるなぞり線を順次なぞるようにしているから、失敗しづらく、正しい文字を書く成功体験を連続させることができる。
このような練習を続けることにより、心理的に成功感が増幅し、練習意欲が高まり、正しい書き方が連続して潜在意識に蓄えられる。
【0071】
いずれかの練習枠3a〜3fにおいて失敗した場合であっても、練習の段階を細分化してあるので、練習枠3a〜3fのどの段階でなぞり線4a〜4fから外れて書いてしまったかが一見して明らかとなるから、従来のように手本を正しく認識する能力のレベルや運筆のレベルに関係なく、誰でも容易に認識し、失敗を確実に是正し、正しい文字を書けるようになる。
また、なぞり線の少ない練習欄においては、練習者が練習成果を自ら測定できる。よって、文字のどの部分の理解が不足しているか、どのような練習が必要かが認識しやすく、その後の練習効率が高まる。
【0072】
上記外形線5は、文字ごとに個別にその外形を細かく設計されているので、各文字の形の全体的な特徴やポイントとなる部分(たとえば曲線部分)の形状を具体的に理解し、正しい全体形状で、また、ポイントとなる部分の形状も正しく書くことができるようになる。
特に、ひらがなや漢字行書の外形線の細部に曲線を用いることにより、練習者は曲線部分を目で確認しながら指の動きを容易に修得することができる。これにより、練習者は、頻繁に手本欄1を見るための視線移動をすることなく、練習しながら自然に無意識に、目から入る文字の形の情報を認識し脳に伝達することができるとともに、手本と同じように書くために必要な柔軟な指の筋力を養成することができる。
このような練習方法により、練習者は、失敗を未然に防ぎ、成功体験を繰り返すことができ、自信をつけながら、効果的に正しい文字を書くための技術をマスターすることができる。
【0073】
上記においては、ひらがなの「ら」を練習するためのものを例に挙げて説明したが、他のあらゆる文字、すなわち、ひらがな・カタカナ・漢字・アルファベット・数字等について、それぞれ楷書,行書,草書,平安時代の文字に代表されるくずして書かれた仮名文字,篆書,隷書その他の各書体で、書き順を誤らずに練習することができる教材が用意される。
【0074】
たとえば、図2(b)に示したものは、漢字の「青」を練習するための教材の例である。図2(a)に示した従来の外形表示は、「青」の文字を単純に縦長長方形で囲んでいるだけであるから、練習者の手本の理解能力によっては、同図(a)の練習例のように、全体形状を長方形とすることに意識が集中し、各横画の長さの認識が不十分になりその長短を意識することなく練習してしまう可能性がある。
これに対し、本発明文字練習教材の外形線は、図2(b)に示したように、「青」の文字について個別に設計されているので、練習者の手本の理解能力の高低に左右されることなく、各横画の長さを視覚的に認識することが可能で、その長短を意識しながら練習することができるものである。
【0075】
また、鉛筆やペン等の硬筆に限らず大筆・小筆等の毛筆、また筆ペン用のものを用意することができる。
そのような教材は、必ずしも冊子の体裁をとらなくてもよく、たとえば、毛筆用のものは、紙・厚紙・プラスチッック・フェルト等任意の素材からなる台紙に上記練習欄を表示して形成することとし、その上面に半紙を載せてその半紙に練習するようなものとすることもできる。
【0076】
その他、練習欄の数は、4つに限らず適宜増減できる。
また、各練習欄の練習枠の数も適宜増減することができる。その際には、各練習枠に段階的に減らして表示するなぞり線の態様を、練習が効率的に行えるよう適宜調整するのが好ましい。
【0077】
上記教材は、なぞりの部分を段階的に減少させて、なぞらずに自力で書く部分を段階的に増加させることにより、練習者はなぞりの練習を継続すると同時に、なぞり線の無い自力で書く部分を、(1)前段階までの練習枠の文字の残像、(2)運筆の際の指先や指先を動かす筋肉の動きの記憶、および、(3)手本の特徴の正しい認識を常時維持しながら練習をできるように設計されているので、練習者は練習効果・精度を低化させることなく練習を継続することができる。
【0078】
また、練習者のレベルに合わせて、練習スタート時の練習段階を変えることができる。初心者は最初の段階(文字全体をなぞる段階)からスタートするのが適切である。上級者は手本の特徴を細部まで観察し正確に認識する脳力があるので後半段階(なぞる部分が少ない)からスタートしても充分な練習効果を得ることができる。また、練習部分が少なくて済むので、無駄なく効率的に練習を消化することができる。
【0079】
<本教材の長所>
1.手本の文字の図形的特徴に関する情報(文字を構成する一本一本の線の長さ・方向・間隔・筆圧の強弱・運筆速度の遅速)と手本に対する説明文・矢印・書き順など手本の文字の特徴を表す文字情報を目で見る視覚で正確に認識して理解すると同時に、練習枠に文字の外形線・書き順・運筆経路や方向を示す支持線・運筆速度を表す表示など、多くの情報が示されているので、手本から目線を移動させることなく、練習しながら常に正確に情報を認識し続けることができるため、高い練習効率・精度を維持しながら、練習を継続することができる。
【0080】
2.練習段階が文字全体をなぞる最初の段階から白紙の練習欄まで、練習の難易度が細分化されているので、無理なく段階的に練習をすすめることができるので、練習者の情報の認識力・理解力の高低により練習効果が左右されることなく、どんなレベルの練習者に対しても、高い練習効果を実現することができる。
【0081】
3.練習段階が進むにしたがって徐々になぞりの部分が少なくなるので、練習者はなぞりによる情報認識や指先の運動神経のトレーニングを行いながら、自力で書く部分の練習で練習者自身の練習効果をテスト・測定できるので、なぞり練習の単調な反復による手本の長所・特徴に対する意識・注意力の低化を招くことなく、常に適度な緊張感を保ちながら練習を継続することができる。また、練習効果のテスト・測定により、練習効果を常に実感しながら練習を継続することができる。
【実施例2】
【0082】
図3に示した文字練習教材の練習枠は、漢字の「上」の文字を練習するためのものである。
この練習枠も、文字のなぞり線を、その表示部分が段階的に少なくなるように順次表示することで、練習者が常時正しい書き順で練習を継続できるように設計されている。
【0083】
ここで例示した、「上」の書き順は図3の一番上の枠の手本に示されているように、1画目は縦画から書き始め、続いて2画目は上部の短い横画、3画目は最下部の長い横画を書く、と小学1年の学習漢字で示されているが、多くの人は書き順を誤って1画目を横から書いてしまう。その原因としては、縦画と横画が交わって構成される漢字もしくは漢字の部分(例:土・青など)多くの漢字が横画から書き始めてその次に縦画を書く書き順の漢字の割合が非常に高いからではないかと考えられる。
【0084】
<本教材の特徴>
1.上から2番目の枠では1画目2画目は画の全てが表示されている。1画目2画目をなぞった後に、3画目の書き出し部分のなぞり線をなぞり、その後はそのまま自力で書くように設計されている。
2.上から3番目の枠では1画目は画の全てが表示されている。2画目は画の書き出し部分のみ表示されている。1画目をなぞった後に、2画目の書き出し部分のなぞり線をなぞり、その後はそのまま2画目3画目を自力で書くように設計されているので、練習者は常に1画目と2画目の書き順を間違えずに練習を継続することができる。
3.上から4番目、5番目の枠では上記の各枠での練習により視覚で獲得した多くの情報と、実際に手や指先を動かして正しい書き順となめらかな運筆で文字を連続して書いた動作(=運動神経のトレーニング)により獲得した情報と手と指先のトレーニング効果により、なぞりの部分が少ない状態およびなぞりの部分が全くない状態で、ともに100%自力で書くのに近い状態の中で、正しい書き順・なめらかな運筆で練習者が書けるよう設計されている。
【0085】
このように、本教材は、練習者が常に正しい書き順で演習を継続できるように設計されているので、練習者は練習しながら正しい書き順で書くことを常時反復する。
この反復効果により練習者は練習しながら自然に正しい書き順を身につけることができる。
【0086】
また、文字全体を正しい書き順でなぞる最初の練習枠から練習を始め、段階的になぞる部分が少なくなってゆく練習枠の練習を進め、最終の練習枠では1画目の先頭部分のみなぞり、残りの部分はすべて自力で書くように設計されているので、練習者は線の先頭から末尾まで全てが見える部分を正しい書き順でなぞり終えた後に、次の線(線の先頭部分のみなぞるように表示されている)の先頭部分から書き始めて、残りのなぞらずに自力で書く部分を前段階の練習枠の文字を書いた時の筆記具の動きの残像や運筆の感触をもとに書き進め、最終的になぞらずに全て自力で書き順や止め・はね・はらい等を誤らずに練習段階を進むことができる。線の先頭から末尾まで全てなぞる部分を書き終えた後に、次の書き順の線の先頭部分をなぞり、そのまま書き続けるので、常に正しい書き順の流れで書くように設計されている。
【0087】
よって、練習者は初めて書く文字でも、自学自習で正しい書き順・書き方を身につけることが可能であり、学校において未履修の漢字でも、練習者は自学自習で正しい書き順・書き方を身につけることが可能である。
例えば、小学1年生が小学6年生の学習漢字を自学自習で身につけることも可能である。
【0088】
これに対して、従来の教材では手本に書き順が数字で表示されており、練習者は手本に示された書き順の数字を目で確認した後に書き順情報が全く無い練習欄に目線を移動して練習するので、練習者の認識能力不足・注意力不足・視力の不足などにより練習者が数字を誤認識する可能性があり、誤った書き順で練習してしまうおそれがある。
また、手本に表示された書き順を正しく認識して、正しい書き順で練習したとしても、練習者が誤った書き順を練習前に記憶していた場合、練習の途中で先入観により誤った書き順で書いてしまう可能性があり常時正しい書き順で練習を継続することは困難であると考えられる。
【実施例3】
【0089】
図4に示した文字練習教材の練習枠は、行書体漢字の「玉」の文字を練習するためのものである。
【0090】
「玉」の文字は図4の一番上の枠の手本に示されているように、1画目は横画から書き始め、2画目は縦画、3画目4画目は横画を連続して2本書き、最後に5画目の点を書く。
【0091】
行書は楷書に比べて「読みやすさを失わずに速くなめらかにバランス良く書きやすい」という長所があるので、日常生活・忙しい業務・学習活動の中で手早くメモしたり、手紙を書くなどの場面でとても書きやすい書体であり、系統立てた段階的練習プログラムの消化により、「読みやすさを失わずに速くなめらかにバランス良く書く」技術の獲得が容易に行える。
【0092】
また、行書で書かれた文字は曲線で構成されており、視覚的にしなやかで柔らかく温かい好印象を与えるという長所もある。
しかし、現行の日本の教育制度では、小学校で行書の指導や系統立てた段階的練習プログラムの消化は全く行われず、中学校でも行書の指導のための授業時間は、極めて少ない又は殆ど行われていないのが現状である。
【0093】
<本教材の特徴>
1.行書体の特徴である「速くなめらかな運筆」を身につけるために、画から画までの移動部分に曲線による運筆経路の支持線を表し、練習者が適切且つ効率的な運筆経路で書き続けることができるように設計されている。それにより練習者が「速い運筆」を損ねる無駄な動きや「なめらかな運筆」を損ねる動きをすることを未然に防ぐよう設計されている。
【0094】
2.行書体の特徴である曲線を適切に書き続けるためには、線を書き始める前の入筆方向(横画:(1)左斜め上または下から(2)右斜め上または下から入筆、縦画:(1)左斜め下からまたは右斜め下から入筆(2)左斜め上から入筆)が極めて重要である。本発明による教材は、全ての画の入筆方向を曲線による支持線であらわしているので、練習者は常に適切な入筆方向で全ての画を書き続けることができる。
【0095】
3.行書体で文字を書く際の「線の方向」と「運筆速度」を安定させるためには、運筆の途中に適切な箇所(画の方向が鋭角的に変更する箇所)で止まることが重要である。本発明による教材は、練習枠の表示されている画の適切な箇所に止まることを示す目印を表示して、練習者が練習を継続しながら止まる部分を認識できるよう設計されている。
【0096】
4.練習する文字ごとに、練習者の年齢やレベルに合わせて、書くスピードを具体的に数字(秒数)で可変表示できるので、行書体の特徴である「速く読みやすく」書くためのトレーニングを段階的に効率よく行うことができる。
【0097】
これに対し、従来の教材の問題点は以下の通りである。
1.従来教材は手本にのみ多くの情報が表示されていて、練習枠には「速くなめらかな運筆」を身につけるための情報が殆ど表示されていないので、練習者は手本に表示された情報を漏れなく正確に認識した上で、練習することが要求される。また、練習者が手本に表示された情報を十分に把握できていない場合または十分に把握できる能力を持たない場合、文字を書いている途中で手本に表示された情報を確認するためには、頻繁に目線を手本に移さなければならないので、目線を手本に移した際に、書く動作がしばしば停止してしまいがちである。このことは、「速くなめらかな運筆」を身につけるために大きな障害となるおそれがある。
【0098】
2.行書体の特徴である「速くなめらかな運筆」を身につけるために、画から画までの移動部分に曲線による運筆経路の支持線が表示されていないので、練習者が適切且つ効率的な運筆経路を理解することは困難であり、練習効率・効果が低下することが考えられる。
【0099】
3.行書体で文字を書く際の「線の方向」と「運筆速度」を安定させるためには、運筆の途中に適切な箇所(画の方向が鋭角的に変更する箇所)で止まることが重要である。本発明による教材は、練習枠の表示されている画の適切な箇所に目印を表示して、練習者が練習を継続しながら止まる部分を認識できるよう設計されている。
【0100】
4.書くスピードの具体的な表示が無いので、練習者はどのくらいのスピードで書けばよいかわからず、適切な情報を獲得できない。そのため練習者は、書くスピードが速すぎて文字のバランスを崩したり、遅すぎて行書体の特徴である「速くなめらかな運筆」が身に付きにくいおそれがある。
【実施例4】
【0101】
本発明文字練習教材の他の実施例を図5に示す。
【0102】
この文字練習教材Bは、漢字行書体の「円」の文字を練習対象文字として筆(大筆・小筆・筆ペン)で練習するためのものである。
その手本欄11内にはその行書体の「円」の文字が黒色で表示されるとともに、各字画の入筆方向および各字画間あるいは線を引いた後の運筆を示す気脈線12が点線矢印により示され、また、この文字全体の外形を最も適切に表すよう各字画に沿った所要の傾斜や湾曲をもつ外形線13が表示されている。14は点線で表示された中心線である。
【0103】
練習欄15は、第1〜第7の7つの練習枠15a〜15gからなり、それら各練習枠15a〜15g内には、外形線13と中心線14が表示されており、そのほか、グレーで印刷したなぞり線16a〜16f、気脈線12、および、筆を置く際の穂先の方向を示す筆向き表示印17の全部または一部が、順に、段階的に表示部分が少なくなるように表示してある。
すなわち、第1,第2の練習枠15a,15b内のなぞり線16a,16bは「円」の文字全体を表示し、気脈線12も全てが表示してある。
また、上記なぞり線16aから16f中の「止め」の箇所等の要所に、筆を置くべき向きを黒色のいわば略紡錘形の筆向き表示印17として表示している。その筆向き表示印17の太さにより、筆圧を示すようにするのも好ましい。
【0104】
第3の練習枠15c内には、外形線13と中心線14のほか、第3画の途中までのなぞり線16cおよび筆向き表示印17と、全ての気脈線12とが表示されている。
【0105】
第4の練習枠15d内には、外形線13と中心線14のほか、第2画の途中までのなぞり線16dと、第2画目までの気脈線12と、同じく第2画の途中までの筆向き表示印17とが表示されている。
【0106】
第5の練習枠15e内には、外形線13と中心線14のほか、第2画の始端部までのなぞり線16eと、第2画目までの気脈線12と第1画の終端の筆向き表示印17とが表示されている。
【0107】
第6の練習枠15f内には、外形線13と中心線14のほか、第1画の始端部だけのなぞり線16fと、第1画の入筆方向を示す気脈線12とが表示されている。
【0108】
第7の練習枠15g内には、外形線13と中心線14、および、第1画の入筆方向を示す気脈線12のみが表示され、なぞり線は表示されていない。
【0109】
この文字練習教材Bを用いる文字練習では、第1の練習枠15aから第7の練習枠15gによりこの順に文字の練習をすることで、実施例1の文字練習教材Aと同様、練習者は、失敗を未然に防ぎ、成功体験を繰り返すことができ、自信をつけながら、効果的に正しい文字を書くための技術をマスターすることができる。
【0110】
特に、この教材Bは、文字を書く際の運筆を気脈線12によって表示しているから、練習者は、第1画を書く前から、最後の字画を書き終わった後まで、正しい運筆方向と運筆経路を保ちながら正しい文字を正確に書く練習をすることができる。
【0111】
また、筆向き表示印17を適宜の位置に表示しているから、その位置における正しい筆の向きを確認しながら練習ができるようになっている。
【0112】
上記のほか、さらに、実施例1の文字練習教材Aのように、字画ごとに数字で示した書き順、「はらう」、「止める」などの注意書き、運筆方向・速度を矢印で表示することも好ましい。
【0113】
逆に、この実施例4の文字練習教材Bに表示されているような、気脈線・筆向き表示印を、他の実施例の文字練習教材に表示することも可能である。
【実施例5】
【0114】
図6に、大筆用の文字練習教材の練習シートを示す。
これは、冊子の体裁でなく所要の材質からなるシートに練習欄を表示したもので、その上面に半紙を乗載し、練習欄を透かして見ながらその半紙に練習するようにしたものである。
この練習シートには、外形線の他に、書き始めから書き終わりまでの筆の穂先の軌跡と、筆を止める位置での穂先の向きを示す筆向き表示印を併せて表示している。
また、手本として用いられる手本用シートには、図7のように筆書きの文字とともに外形線、穂先の軌跡、筆向き表示印を表示する。
図8は、他の練習シートの例である。その練習欄には、外形線の全体を表示するとともに、図6のものと異なり穂先の軌跡と筆向き表示印については途中までを表示している。したがって、図6の文字練習教材での練習ののち、この練習シートでの練習に進むことで、効果的な練習が行える。
【実施例6】
【0115】
図9に、複数の文字を練習するための本発明文字練習教材Cを示す。
【0116】
複数の文字を練習する場合には、その文字間の運筆を示す気脈線を表示することにより、文字から文字への筆運びを適切な経路を辿って練習をすることができるので、これにより、筆脈の理解が容易になり、言葉や文章をなめらか且つ無駄のない動きで書くことができるようになる。
【0117】
図示したものは「さる」のひらがな2文字と「りす」のひらがな2文字を練習するためのもので、これは、「さる」および「りす」の文字それぞれについての手本欄21を上下2段にし、それぞれの練習欄22a〜22dを各段に横方向に並べたもので、練習欄22a〜22dは、各文字について設計された外形線23をグレーで表示しているほか、グレーのなぞり線24を、その表示部分が段階的に少なくなるよう、また、気脈線25についてもその表示部分が段階的に少なくなるように表示してある。
【0118】
したがって、この文字練習教材Cを用いて、第1の練習欄22aから第4の練習欄22dへ、上記外形線23,なぞり線24,気脈線25をたよりにしながら、順に文字を書き込み練習することで、失敗を未然に防ぎ、成功体験を繰り返すことができ、自信をつけながら、効果的に正しい文字を書くための技術をマスターすることができる。
【実施例7】
【0119】
図10に示した文字練習教材Dは、「山では初雪がふり、いよいよ寒い冬になります。」という文章を構成する各文字の練習を行うものである。
この教材の手本欄31には、3行8列に並べた計24の文字枠の各々に、上記の文章の各文字の手本が黒色で、またその各文字の外形を最も的確に示すよう、それぞれの文字について設計された外形線がグレーで表示されている。
一方、練習欄32は、3行8列に並べた計24の練習枠を設けるとともに、文頭と文末を除いた練習枠に、それぞれ、上記の手本欄31に表示された文章を構成する1文字ずつの外形線がグレーで表示され、また、各文字の字画の一部がなぞり線として表示されている。
【0120】
したがって、この各練習枠の外形線およびなぞり線をたよりにして各文字を記入練習することができる。
【0121】
ここでは練習欄32を1つのみ示したが、各文字のなぞり線の表示部分がこれよりも多い練習欄、あるいはこれよりも少ない練習欄を所要数用意し、なぞり線の表示部分が多い練習欄から少ない練習欄へと段階を追って練習を進めることにより、誤った書き方・失敗を未然に防ぎながら、多くの異なる文字を書く練習を効率的に進めることができる。
【0122】
なお、これに加え、気脈線・字画ごとの書き順・「止める」,「はねる」などの要所の注意書き等を表示するのも好ましい。
また、毛筆用の練習教材の場合は、実施例4の文字練習教材Bと同様の筆向き表示印を併せて示すのが好ましい。
【0123】
この文字練習教材Dを用いて練習を行うことにより、多種の文字を正しく書くための技術を効果的にマスターすることができる。
【実施例8】
【0124】
図11に示したものは、本発明文字練習教材Eの練習枠41のみを示したものである。
この文字練習教材Eは、文字を書く適正な速さないし運筆の緩急を示すように、なぞり線を字画ごとあるいはその字画の部分ごとに色分け表示したものである。
練習枠41内には「あ」の文字を示すなぞり線41’について、その第1画および第2画を赤線42で、第3画の前半の斜線およびその斜線の終端から起立する部分を青線43で、また、第3画の後半の曲線部分を緑線44で表示している。
上記赤線42の部分は最初の1秒間で、青線43の部分は続く1秒間で、また、緑線44の部分はさらにその後の1秒間で書くべきことを示している。
【0125】
したがって、この練習枠41において、最初の1秒目に上記赤線42の部分をなぞり、2秒目に上記青線43の部分をなぞり、3秒目に上記緑線44の部分をなぞることで、適正な速さでリズムに乗って文字を書く練習をすることができる。
【0126】
従来は、文字を速く正確に書くための、明確かつ具体的な情報が表示されていなかったので、速すぎて不明瞭になったりバランスの悪い書き方になるか、ゆっくりと書きすぎて非実用的な書き方に陥りやすかったが、この文字練習教材Eを用いる文字練習方法によれば、文字を書くべき速さを明示した上記練習枠41により、練習者は、具体的な速度目標を確認しながら、正確にリズムに乗って練習することができ、誤った動きを制約し指の筋力を整えるので正確な運筆が可能となる。
【0127】
また、練習者のレベルに応じて、文字を書くべき時間を適宜設定することにより、幅広いレベルの者に対応することができ、その時間設定を段階的に短縮しながら繰り返すことで、実用的な速さで文字を書く練習までスムーズに進むことができる。
【0128】
また、複数の練習枠を設け、各練習枠に、上記のように色分けしたなぞり線を、実施例1〜4のようにその表示部分を段階的に少なくして表示したり、あるいは外形線をあわせて表示するのも好ましい。
なお、なぞり線を色分けすることに代えて、線の濃淡や線種により字画の各部を示し、文字を書く速さを示すこととしてもよい。
さらに、別途手本欄を設け、その欄内の手本を、色分け表示してもよい。
【0129】
個々の文字についてこのような練習を進めた後には、たとえば図12に示すように、複数の文字について、各文字を書くべき時間を秒表示した練習枠45を用い、各文字を指定された時間をかけて書く練習を進めることで、実用的な速さで文字を書く技術を容易に修得できる。
図13〜15はそれぞれ図12の部分拡大図である。
【0130】
この練習枠45は、「すみきった青い空」という文章を表示した手本欄46と、この文章を16秒かけて書くべき旨の指示47と、各文字に対応させて、各々の上側にそれらの文字を書くべき時間(秒数)を秒数表示47’として明示したもので、その手本欄46の直下の練習欄48a〜48e内に、その手本欄46と同様の文章を記入練習できるようにしてある。
手本欄46の各文字については、外形線と気脈線が示してあり、また、各文字の字画を色分け表示することにより、文字を書くべき速さを示してある。
【0131】
各練習欄48a〜48eにも、手本欄46と同様に外形線・気脈線をなぞり線とともに示してあるが、そのなぞり線と気脈線は、練習欄48aから48eの順に、段階的に表示部分を少なくして表示してある。
【実施例9】
【0132】
図16(a)〜(d)に、練習者のレベルに応じ、文字を書く速さ(運筆スピード)を示した文字練習教材(手本)の例を示す。このように、練習者の年齢・能力レベルに合わせて、目標タイム別の教材を提示することが、効率的な学習効果を得るために好ましい。
【0133】
図16に左から順に示したように、(a)4秒で書場合、(b)3秒で書く場合、(c)2秒で書く場合、(d)1秒で書く場合それぞれにつき、各字画を何秒目で書くかを設定する。たとえば、年齢に応じて、園児(4〜6歳程度)であれば4秒、小学校低学年(小1〜2程度)であれば3秒、小学校中学年(小3〜4程度)であれば2秒、小学校高学年(小5〜6程度)〜成人であれば1秒で書く旨を色分けあるいは実線と点線とで示すなど、適宜レベルに応じた教材とする。
また、成人学習者であれば、その能力に応じ、初心者であれば4秒で、中級者は3秒で、上級者は2秒で、また、指導者レベルの者は1秒で書くべき旨を示す。
【0134】
このように、様々なレベル設定の方法に合わせて、段階別に目標タイムを
提示した教材を提供することにより、練習者は自分のレベルに合わせて段階的に練習することができる。
すなわち、練習者は自分の現在の能力レベルを確認できると同時に、次の目標タイム(レベル)を常に意識しながら、練習を進めることができる。また、指導者にとっても、練習者の書く能力を明確に把握することができるとともに、
練習者に次の練習目標を明確に提示・説明することができる。
【実施例10】
【0135】
文字を「速くバランスよく良いリズムで書く」には、構成する線(画)各々について、速く書いたほうが良い部分とゆっくり書いたほうが良い部分を明確に認識し、適切なスピードで書くことが必要であるので、運筆スピード(運筆の遅速)の調節方法を学ぶ必要がある。
図17〜20に、運筆スピード(運筆の遅速)の調節を練習するための文字練習教材の手本の例を示す。
すなわち、図17に示すように、速く書く部分とゆっくり書く部分を、実線と点線とで示したり(同図(a))、濃い色と薄い色とで白黒表示したもの(同図(b))である。なお、黒く塗りつぶした箇所は一旦筆を止める箇所である。
【0136】
そのような手本は、ひらがな・漢字の楷書や行書、カタカナ等、各文字について作成される。漢字・カタカナ楷書の文字の場合、速く書く部分は、横画,最終部分を止める縦画(斜めに書く画も含む),短い左払い,はね等で、遅く各部分は、最終部分を払う縦画,長い左払い,右払い等であるので、図18には、速く書く部分を濃く、ゆっくり書く部分を薄く、白黒で表示した例を示す。なお、カラーで色分け表示したり、実線と点線とで表示をすることも可能である。
【0137】
漢字行書の文字の場合は、速く書く部分は、横画,最終部分を止める縦画,短い左払い等で、遅く書く部分は、すべての画の書き始める部分のうち急激に曲がる部分,長い左払い,右払い,はね等であるので、図19に示すように、白黒表示する場合であれば、たとえば、速く書く部分を濃く、ゆっくり書く部分を薄く表示する。
【0138】
ひらがな楷書の文字の場合は、速く書く部分は、横画,最終部分を止める縦画,はね等で、遅く書く部分は、すべての画の書き始める部分のうち急激に曲がる部分,右回り円形曲線等であるので、図20に示すように、白黒表示する場合であれば、たとえば、速く書く部分を濃く、ゆっくり書く部分を薄く表示する。
【実施例11】
【0139】
図21,22に、本発明文字練習装置(文字練習システム)の一実施例を示す。
本装置Fは、メインディスプレイ51およびサブディスプレイ52(表示手段)並びに、複数の操作キー53,…,…を備えた携帯可能な携帯端末54と、これに附属する入力用ペン56(手書き入力手段)とにより構成される。その携帯端末54のサブディスプレイ52は、入力タブレット(手書き入力手段)を兼ねるもので、上記入力用ペン56を上記サブディスプレイ52上で動かすことでその位置および軌跡をデータとして入力が可能である。
【0140】
上記携帯端末54は、練習対象文字の手本55やなぞり線59等を表示させるための、練習すべき各文字の手本データ,外形線データ,中心線データ,なぞり線データ(なぞり線自体のデータ、なぞり線を字画ごとあるいはその字画の部分ごとに色分けしたデータ、また、書き順に従ってなめ出し(ワイプ出し)表示される動画データ等を含む),気脈線データ,注意書きデータ等の文字練習用データを含む文字練習プログラムを記録した記憶手段たるメモリ(カートリッジ方式等により取り外し可能な外部メモリを含む)、上記ディスプレイ51,52等を制御する入出力インターフェイス、演算・制御手段たるCPU等を備えている。
【0141】
この装置Fによる文字練習方法は、上記CPUが上記メモリ上の文字練習プログラムを読み出して実行することによって、練習者に文字練習を行わせるものである。
具体的には、所要の操作をすると、上記文字練習データに基づいてCPUが所要の演算を行うことにより、上記メインディスプレイ51に、練習対象文字の手本55が表示され、練習者はこれを参照しながらサブディスプレイ52上に、入力用ペン56を用いて手書き入力により文字を書く練習を行う。入力された軌跡は、メモリに記憶されるとともにそのサブディスプレイ52に表示される。
CPUにおいて上記文字練習データを適宜処理することにより、メインディスプレイ51に、上記の手本55、および、必要に応じて、その文字の外形線、中心線、注意書き等(以下、これらを「手本等表示」という。)57を表示し、これを参考に練習ができるようにするのも好ましい。
【0142】
一方、CPUは、サブディスプレイ52に、練習対象文字の外形線58、なぞり線(その全体を表示したもの、あるいは、一部を表示したもの)59、中心線等を表示し、これをたよりに文字の練習ができるようにするのも好ましい。
【0143】
たとえば、サブディスプレイ52になぞり線59を静止画で表示する場合、表示部分を段階的に少なくしながら繰り返し表示し練習することができるようにするのが好ましい。
すなわち、上記文字練習プログラムは、記憶手段から文字練習データを読み出すステップと、その文字練習データにより、なぞり線を表示手段に表示するステップと、入力手段により入力される軌跡を記憶手段に記憶するステップと、その入力された軌跡を上記なぞり線に重ねて表示手段に表示するステップ、および、前回表示した上記なぞり線よりも表示部分を少なくした次順位のなぞり線を、表示手段に表示するステップと、入力手段により入力される軌跡を記憶手段に記憶するステップと、その入力された軌跡を上記次順位のなぞり線に重ねて表示手段に表示するステップ、の順に処理を行う。
したがって、練習者は、段階的に表示部分が少なくなるなぞり線をなぞり書きする練習を繰り返すことで、独力で正しい文字を書く練習を効率的に進めることができる。当初は文字全体のなぞり線全体を表示し、その全体を入力用ペン56でなぞる練習から行えるようにし、段階を追って、なぞり線の表示部分を少なくしてゆき、独力で文字を書く練習を行えるようにする。
【0144】
また、メインディスプレイ51上の手本55またはサブディスプレイ52の上記なぞり線59を、字画ごとあるいはその字画の部分ごとに色分け表示し、文字を書く適正な速さを示すのも好ましい。
【0145】
また、メインディスプレイ51に、図22(a)に示した手本を表示するとともに、サブディスプレイ52に図22(b)〜(d)に順次示したように、その書き順に従って第1画から順に、なめ出し動画により、所定の速さでなぞり線を表示するのも好ましい。
たとえば1秒目、2秒目、3秒目に書くべき部分を3秒間かけて順に動画表示するような場合には、この動画にあわせて、たとえば1,2,3のカウントを、「いーち」、「にーい」、「さーん」というように音声により再生することとし、このなぞり線をなぞりながら、リズムに乗って文字を書く練習ができるようにするのが好ましい。
すなわち、上記文字練習プログラムは、記憶手段から文字練習データを読み出すステップと、その文字練習データにより、手本またはなぞり線を表示手段に、その書き順に従って第1画からワイプ動画によって表示させるステップと、上記ワイプ動画の表示と並行して入力手段により入力される軌跡を記憶手段に記憶するステップと、その入力された軌跡を上記なぞり線に重ねて上記表示手段に表示するステップを有するので、練習者は、文字を書く適正な速さないし運筆の緩急を理解し、リズムに乗って文字を書く練習をすることができる。
【0146】
また、サブディスプレイ52への入力結果(入力用ペン56の軌跡)が、手本の文字の形状と一致する度合いや、その入力の速さ等を評価し、練習結果に対して得点を付与し、これを表示するようにすることで、ゲーム感覚で文字の練習を進めることができる。
【0147】
文字練習を繰り返し行う場合には、上記手本55だけでなく、必要に応じ、練習者が前回入力した入力結果59’をも参照しながら入力練習することができるようにすると、上達の度合いを自ら確認できるので練習を効率化することができる。
【0148】
図23に示したものは、他のハードウェアにより構成される文字練習装置(文字練習システム)の例である。
【0149】
すなわち、図23に示した装置Gは、入力が可能な入力タブレットを兼ねるディスプレイ(手書き入力手段兼表示手段)61を1つだけ備え、かつ、文字練習プログラムをインストールした携帯可能な携帯端末62とこれに附属する入力用ペン(手書き入力手段)63からなる。
【0150】
上記装置Gは、ディスプレイ61が1つだけである点、上記の装置Fとは異なるが、手本64その他の手本等表示を表示する領域65と、入力用ペン61による入力を行う入力領域(必要に応じてなぞり線等を表示する箇所)66を、ディスプレイ62内で分けることにより、同様の処理を行うことができる。
【実施例12】
【0151】
図24に示したものは、上記と同様の文字練習プログラムをインストールし記憶させたパーソナルコンピュータ(演算・制御手段)71とディスプレイ(表示手段)72とUSB等により接続されたペンタブレット73およびこれに付属する入力用ペン(手書き入力手段)74により文字練習システムHを構成した例である。
この文字練習システムHにおいては、手本75のほか、外形線、繰り返しの練習をする場合には前回入力された練習者の文字の軌跡などの情報をディスプレイ72に表示するものとする。
【0152】
ディスプレイ72上には、適宜表示切り替えのための操作ボタンを表示し、ペンタブレット73あるいはマウス等の操作により、外形線の表示または非表示の切替、前回以前に入力された文字の軌跡の表示または非表示、複数回入力した場合には、何回前の入力軌跡までを表示するか、等を設定することができるようにすれば、練習者のレベルに応じた練習が可能となる。
ペンタブレット73は、入力用ペン74を使用して入力を行うためだけに使用してもよいし、あるいは、外形線76や、図示しないなぞり線等を表示する表示する表示手段を兼ねるものとしてもよい。
【0153】
図25に示した文字練習システムJは、パーソナルコンピュータ81とディスプレイ82と、練習帳83から構成される。
このシステムJでは、練習しようとする文字の手本84その他の手本等表示を静止画または動画により上記ディスプレイ83に表示させるようにし、練習者は実施例1〜5と同様の文字練習教材を用い、これに文字を記入して練習する。
【0154】
上記の文字練習装置F,Gおよび文字練習システムH,Jは、実施例1〜5の文字練習教材A〜Eをコンピュータに実装したものに相当し、それらと同様に、従来よりも文字の練習効率を高め、練習者の技術を早期に上達させることができるものである。
これら文字練習教材A〜E、文字練習装置F,G、あるいは、文字練習システムH,Jを用いて文字を指導することにより、さまざまなレベルの練習者に対する指導を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】実施例1に係る文字練習教材より抽出したページの平面図である。
【図2】(a)は従来の文字練習教材における文字の外形表示の例を、(b)は上記実施例に係る文字練習教材における文字の外形線の例を示す説明図である。
【図3】実施例2に係る文字練習教材の練習枠の平面図である。
【図4】実施例3に係る文字練習教材の練習枠の平面図である。
【図5】実施例4に係る文字練習教材より抽出したページの部分平面図である。
【図6】実施例5に係る文字練習教材の練習シートの平面図である。
【図7】同文字練習教材の手本用シートの平面図である。
【図8】同文字練習教材の他の練習シートの平面図である。
【図9】実施例6に係る文字練習教材より抽出したページの部分平面図である。
【図10】実施例7に係る文字練習教材より抽出したページの部分平面図である。
【図11】実施例8に係る文字練習教材より抽出した練習枠の平面図である。
【図12】複数の文字を練習するための練習枠の平面図である。
【図13】図12の部分拡大図である。
【図14】図12の他の部分の拡大図である。
【図15】図12のさらに他の部分の拡大図である。
【図16】実施例9に係る文字練習教材の部分平面図である。
【図17】実施例10に係る文字練習教材の部分平面図である。
【図18】同上。
【図19】同上。
【図20】同上。
【図21】実施例11に係る文字練習装置の斜視図である。
【図22】(a)は、同装置のディスプレイに表示される手本の表示例、(b)〜(d)は、なめ出し表示されるなぞり線の表示例である。
【図23】他の文字練習装置の正面図である。
【図24】実施例12の文字練習システムの構成図である。
【図25】他の文字練習システムの構成図である。
【符号の説明】
【0156】
A〜E 文字練習教材
F,G 文字練習装置(文字練習システム)
H,J 文字練習システム
2A〜2D,15,32 練習欄
3a〜3f,15a〜15g,22a〜22d,41 練習枠
4a〜4f,16a〜16f,24,41’,59 なぞり線
5,13,23 外形線
17 筆向き表示印
55,65,75,84 手本
51,52,61 表示手段
52,56,63,73,74 入力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の練習枠にそれぞれ配置される練習対象文字のなぞり線を、その表示部分が段階的に少なくなるよう順次表示してなることを特徴とする文字練習教材。
【請求項2】
上記各練習枠内に、上記練習対象文字の外形を形どった傾斜や湾曲をもつ外形線を表示したことを特徴とする請求項1記載の文字練習教材。
【請求項3】
上記各練習枠内に、上記練習対象文字の各字画の入筆方向および各字画間あるいは線を引いた後の運筆を示す気脈線を表示したことを特徴とする請求項1または2記載の文字練習教材。
【請求項4】
なぞり線中の要所に、筆を置くべき向きを示す筆向き表示印を表示したことを特徴とする請求項1,2または3記載の文字練習教材。
【請求項5】
練習対象文字の手本またはなぞり線を、その文字を書く適正な速さを示すように、字画ごとあるいはその字画の部分ごとに色分け表示したことを特徴とする文字練習教材。
【請求項6】
複数の文字を記入練習する練習枠に、その各文字を書くべき時間を指示する秒数表示を各文字に対応させて表示したことを特徴とする文字練習教材。
【請求項7】
練習対象文字の手本やなぞり線等を表示する表示手段と、上記手本およびなぞり線を表示させるための、手本データ,なぞり線データ等の文字練習用データを保持する記憶手段と、練習対象文字を手書き入力することが可能な手書き入力手段と、上記表示手段に上記手本およびなぞり線並びに上記手書き入力された文字を表示させる演算・制御手段とからなることを特徴とする文字練習システム。
【請求項8】
上記演算・制御手段が、上記なぞり線を、段階的に表示部分を少なくしながら繰り返し表示させることを特徴とする請求項7記載の文字練習システム。
【請求項9】
上記演算・制御手段が、上記手本またはなぞり線を、その文字を書く適正な速さを示すように、字画ごとあるいはその字画の部分ごとに色分け表示させることを特徴とする請求項7記載の文字練習システム。
【請求項10】
上記演算・制御手段が、上記手本またはなぞり線を、その書き順に従って第1画から順になめ出し動画によって表示させることを特徴とする請求項7記載の文字練習システム。
【請求項11】
練習対象文字の手本やなぞり線等を表示する表示手段と、上記手本およびなぞり線を表示させるための、手本データ,なぞり線データ等の文字練習用データを保持する記憶手段と、上記表示手段に上記手本およびなぞり線を表示させる演算・制御手段と、請求項1〜6のいずれかに記載の文字練習教材とからなることを特徴とする文字練習システム。
【請求項12】
記憶手段から文字練習データを読み出すステップと、
その文字練習データにより、なぞり線を表示手段に表示するステップと、
入力手段により入力される軌跡を記憶手段に記憶するステップと、
その入力された軌跡を上記なぞり線に重ねて表示手段に表示するステップ、および、
前回表示した上記なぞり線よりも表示部分を少なくした次順位のなぞり線を、表示手段に表示するステップと、
入力手段により入力される軌跡を記憶手段に記憶するステップと、
その入力された軌跡を上記次順位のなぞり線に重ねて表示手段に表示するステップ、を有することを特徴とする文字練習プログラム。
【請求項13】
記憶手段から文字練習データを読み出すステップと、
その文字練習データにより、手本またはなぞり線を表示手段に、その書き順に従って第1画からワイプ動画によって表示させるステップと、
上記ワイプ動画の表示と並行して入力手段により入力される軌跡を記憶手段に記憶するステップと、
その入力された軌跡を上記なぞり線に重ねて上記表示手段に表示するステップを有することを特徴とする文字練習プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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