説明

文書出力装置、その方法及びそのプログラム

【課題】頁ごとのレイアウトに要する時間を短くしスループットを向上させる。
【解決手段】所定の送信元条件を満たすか(S200でYes)、所定のフォトテンプレート認定条件を満たすとき(S210でYes)、今回入力された文書はフォトテンプレートを利用して作成されているため、強制改頁の指定が正しくなされていることになり、各要素の領域を指定位置に配置するごとにその領域が現在の頁に収まるか否かの判定を行う必要がないことから、シンプルモードに設定する(S220)。一方、所定の送信元条件も所定のテンプレート認定条件も満たさないときには、入力された文書はフォトテンプレートを使用して作成されたものではなく、強制改頁の指定が必ずしも正しくなされているとは限らないとみなし、各要素の領域を指定位置に配置するごとにその領域が現在の頁に収まるか否かの判定を行う必要があることから、通常モードに設定する(S230)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書出力装置、その方法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、XHTML文書などのように階層構造を有する構造化文書がWeb技術の分野において広く利用されている。ところで、プリンタに送られる印刷用データはPDL(Page Description Language)と呼ばれる言語を使って作成されるが、プリンタメーカによって異なるPDLを採用しているのでプリンタに合わせて印刷用データを作成する必要がある。このため、各プリンタメーカは、パソコンOS(Operating System)で規定されている印刷用の中間データをプリンタに合ったPDLデータに変換するプリンタドライバを提供している。そして、プリンタドライバがインストールされたパソコンのアプリケーションが印刷用の中間データを作成すると、それをプリンタドライバがPDLデータに変換してプリンタに送る。これにより、プリンタごとに異なるPDLが採用されていたとしても、印刷することが可能となる。しかし、携帯電話機やデジタルカメラなどの電子機器では、使用できるメモリやストレージ容量が少ないため、プリンタドライバをインストールすることは通常は考えられていない。このため、インターネット技術の標準化団体であるW3C(World Wide Web Consortium)は、このようにプリンタドライバがインストール不可能な環境やインストールしたくない環境を考慮し、XHTML(eXtensible Hyper Text Markup Language)文書向けの印刷仕様としてXHTML−Printを提供している(例えば非特許文献1参照)。この結果、プリンタがXHTML−Print形式のデータを直接解釈して印刷することが可能となる。
【非特許文献1】XHTML−Print、[online]、2004年1月、W3C、[2005年12月検索]、インターネット<URL:http://www.w3.org/TR/xhtml-print/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、XHTML−Print形式のデータを直接解釈して印刷する場合、page−break−beforeやpage−break−afterといったプロパティを使用すると、そのプロパティを指定した要素の直前や直後で強制的に改頁させることが可能なる。ここで、XHTML−Print形式の構造化文書は、予め強制改頁のプロパティを適切に組み入れたテンプレートを利用して作成されていることもあるし、そのようなテンプレートを利用することなく作成されていることもある。後者の場合、構造化文書に強制改頁のプロパティが適切に使用されていないこともある。このため、プリンタが構造化文書を解釈して印刷する場合、テキストやイメージ、表などが頁の途中で途切れてしまわないように印刷しようとすれば、強制改頁のプロパティを組み入れたテンプレートを利用しているか否かにかかわらず、要素ごとに領域を作成しその領域を指定位置に配置したときにその領域がページに収まるか否かを判定し、収まらないときにその要素の直前で改頁処理を行うことが考えられる。しかしながら、強制改頁のプロパティを適切に組み入れたテンプレートを利用している場合にまで要素ごとに改頁するか否かの判定を行うことは、処理時間が長くなりスループットが悪化するため好ましくない。
【0004】
本発明の文書出力装置、その方法及びそのプログラムは、頁ごとのレイアウトに要する時間をできるだけ短くしてスループットを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の文書出力装置は、
階層構造を有する構造化文書を解析して頁単位で出力する文書出力装置であって、
データを記憶可能なデータ記憶手段と、
前記構造化文書につき、強制改頁の指示が組み込まれた改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かを判定する文書判定手段と、
前記文書判定手段により前記構造化文書が前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものでないと判定されたときには前記構造化文書の各要素の領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行いながら前記構造化文書を頁ごとにレイアウトし、前記文書判定手段により前記構造化文書が前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものであると判定されたときには前記構造化文書の各要素の領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行うことなく前記強制改頁の指示の有無の判定を行いながら前記構造化文書を頁ごとにレイアウトするレイアウト実行手段と、
前記レイアウト実行手段によって作成された頁ごとのレイアウトを前記データ記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
を備えたものである。
【0007】
この文書出力装置では、まず、構造化文書につき、頁ごとに強制改頁が指示される改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かを判定する。そして、構造化文書が改頁付きテンプレートを使用して作成されたものでないと判定されたときには、構造化文書の各要素の領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行いながら構造化文書を頁ごとにレイアウトする。一方、構造化文書が改頁付きテンプレートを使用して作成されたものであると判定されたときには、構造化文書の各要素の領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行うことなく強制改頁の指示の有無の判定を行いながら構造化文書を頁ごとにレイアウトする。つまり、改頁付きテンプレートを使用して作成された構造化文書については、改頁が必要な箇所に強制改頁が指示されていることから、各要素の領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行う必要がない。こうすることにより、改頁付きテンプレートを使用して作成された構造化文書については、レイアウトに必要となる時間が短くなりスループットが向上する。ここで、構造化文書は、XHTML−Print形式の文書としてもよい。
【0008】
本発明の文書出力装置は、更に、印刷実行指示がなされたとき、前記データ記憶手段に記憶された頁ごとのレイアウトに基づいて前記構造化文書に含まれる印刷対象を取得すると共に印刷媒体へ印刷する印刷実行手段を備えていてもよい。こうすれば、改頁付きテンプレートを使用して作成された構造化文書を印刷する際、レイアウトに必要となる時間が短くなりスループットが向上する。
【0009】
本発明の文書出力装置は、更に、前記構造化文書を受信する文書受信手段を備え、前記文書判定手段は、前記文書受信手段によって受信された前記構造化文書の送信元に基づいて該構造化文書が前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かを判定してもよい。こうすれば、受信した構造化文書が改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かの判定を容易且つ迅速に行うことができる。このとき、本発明の文書出力装置は、改頁付きテンプレートを使用して構造化文書を作成する送信元に関する情報を記憶する送信元情報記憶手段を備え、前記文書判定手段は、前記文書受信手段によって受信された前記構造化文書の送信元と前記送信元情報記憶手段に記憶された送信元に関する情報とに基づいて該構造化文書が前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かを判定してもよい。
【0010】
本発明の文書出力装置において、前記文書判定手段は、前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものであることを特定するための複数の条件を前記構造化文書が満たすか否かによって前記構造化文書が前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かを判定してもよい。こうすれば、受信した構造化文書が改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かの判定を精度よく行うことができる。ところで、構造化文書が改頁付きテンプレートを使用して作成されたときにはその旨を構造化文書の一部に記述しておくようにすれば、文書判定手段はその記述の有無によって構造化文書が改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かを容易に判定することができる。しかし、一般に構造化文書が改頁付きテンプレートを使用して作成されていたとしてもその旨を構造化文書の一部に記述するようになっていない。そこで、改頁付きテンプレートを使用して作成されたものであることを特定するための複数の条件を決めておき、それらの条件を満たすか否かによって構造化文書が改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かを判定することが次善の策として好ましい。
【0011】
本発明の文書出力方法は、
階層構造を有する構造化文書を解析して頁単位で出力する文書出力方法であって、
(a)前記構造化文書につき、頁ごとに強制改頁が指示される改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かを判定するステップと、
(b)前記ステップ(a)で前記構造化文書が前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものでないと判定されたときには前記構造化文書の各要素の領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行いながら前記構造化文書を頁ごとにレイアウトし、前記ステップ(a)で前記構造化文書が前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものであると判定されたときには前記構造化文書の各要素の領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行うことなく前記強制改頁の指示の有無の判定を行いながら前記構造化文書を頁ごとにレイアウトするステップと、
を含むものである。
【0012】
この文書出力方法では、まず、構造化文書につき、頁ごとに強制改頁が指示される改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かを判定する。そして、構造化文書が改頁付きテンプレートを使用して作成されたものでないと判定されたときには、構造化文書の各要素の領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行いながら構造化文書を頁ごとにレイアウトする。一方、構造化文書が改頁付きテンプレートを使用して作成されたものであると判定されたときには、構造化文書の各要素の領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行うことなく強制改頁の指示の有無の判定を行いながら構造化文書を頁ごとにレイアウトする。つまり、改頁付きテンプレートを使用して作成された構造化文書については、改頁が必要な箇所に強制改頁が指示されていることから、各要素の領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行う必要がない。こうすることにより、改頁付きテンプレートを使用して作成された構造化文書については、レイアウトに必要となる時間が短くなりスループットが向上する。ここで、構造化文書は、XHTML−Print形式の文書としてもよい。なお、本発明の文書出力方法において、上述した文書出力装置が備える各種構成の作用・機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【0013】
本発明のプログラムは、上述した文書出力方法の各ステップを1又は複数のコンピュータに実現させるためのプログラムである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを一つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに各ステップを分担して実行させれば、上述した文書出力方法と同様の作用・効果を奏することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態としてのマルチファンクションプリンタ20の構成の概略を示す構成図である。本実施形態のマルチファンクションプリンタ20は、図示するように、パーソナルコンピュータ10やデジタルテレビ12,デジタルカメラ14,携帯電話機16などと接続され各種文書の入力を司る入力インタフェース22と、入力インタフェース22に入力される文書の形式に基づいてデータの出力先を割り振る信号処理部24と、XHTML文書を解析して要素の木構造としてのDOM(Document Object Model)ツリーを作成してメモリ50に書き込む文書解析部30と、文書解析部30により作成されたDOMツリーとCSS(Cascading Style Sheets)により記述されたスタイルシートとを用いてXHTML文書に記述されたオブジェクトとしての画像やテキストを印刷用の印刷用のページ毎にレイアウトしてメモリ50に書き込むレイアウタ38と、レイアウタ38により作成されるレイアウトを用いてRGBデータとしての印刷用画像を描画するレンダリングプラグイン(以下、RPIという)40と、描画されたRGBデータの印刷用画像をCMYKデータに変換する色変換部42と、変換されたCMYKデータを誤差拡散処理などの画像処理を行なって2値化する2値化部44と、2値化されたCMYKの各データを図示しないカラーインクジェットの印刷ヘッドを備える印刷実行部48にバンド単位で出力するために一時的にデータを蓄えるイメージバッファ46とを備えている。ここで、信号処理部24は、入力された信号が直ちに印刷可能な印刷用データの場合には印刷実行部48のイメージバッファ46にデータを出力し、RGBデータの場合にはメモリ50の印刷用画面格納領域に出力し、XHTML文書の場合には文書解析部30に出力する。このマルチファンクションプリンタ20は、その他にフラットベッド型のフルカラースキャナや各種ボタンが配列された操作パネルなどを備えているが、これらの説明については省略する。
【0015】
このマルチファンクションプリンタ20には、改頁付きテンプレートとしてのDLNAフォトテンプレートを使用して作成されたXHTML文書やこのようなDLNAフォトテンプレートを使用せずに作成されたXHTML文書が入力される。ここで、DLNAとは、Digital Living Network Allianceの略であり、ホーム・ネットワークでディジタルAV機器同士やパソコンを相互に接続し、動画や音楽、静止画像などのデータを相互利用する仕様を策定するために設立された業界団体である。本実施形態では、DLNAフォトテンプレートは複数種類存在するものとし、そのうちの一例を図2に示す。図2のDLNAフォトテンプレートは、2つのイメージを1頁に貼り付けるときに利用されるテンプレートであり、XML宣言のencoding属性がUTF−8、DOCTYPE宣言の識別子がXHTML−Printとなっている。また、ページに関する情報を表すヘッダ部分には、ベースアドレス(base要素のhref属性で指定されたアドレス)や内部スタイルシート(style要素の開始タグと終了タグで囲まれた部分)が記述され、内部スタイルシートには、div要素のうちclass属性値がpageのプロパティとして強制改頁を意味する「page−break−after:always」が記述されているほか、div要素やimg要素がそれぞれクラスセレクタ(要素名の直後にピリオド(.)を介してクラス属性値の名称が付記される形式)で記述されている。更に、コンテンツを表すボディ部分には、頁ごとに2つのイメージが貼り付けられるように記述されている。具体的には、最終頁をn頁とすると、1頁めから(n−1)頁めまではdiv要素のうちクラス属性がpageと指定され、最終頁であるn頁めについてはdiv要素のうちクラス属性がpage_lastと指定されている。このため、1頁めから(n−1)頁めまでは頁の直後に強制改頁が実行されるように記述されている。
【0016】
本実施形態では、送信元がデジタルカメラ14か携帯電話機16で且つデータパスがワイヤレス(赤外線通信やワイヤレスLANなど)である場合には、必ずDLNAフォトテンプレートを使用して作成されたXHTML文書が入力されるものとし、その旨の情報がメモリ50に予め格納されているものとする。また、本実施形態では、DLNAフォトテンプレートが複数種類存在するが、それらはいくつかの点で共通しているものとする。即ち、(1)XML宣言のencoding属性がUTF−8であること、(2)DOCTYPE宣言の識別子がXHTML−Printであること、(3)ヘッダ部分にbase要素が存在すること、(4)ヘッダ部分の内部スタイルシート中にdiv要素やimg要素がそれぞれクラスセレクタで記述されていること、(5)ボディ部分にdiv要素のクラス属性がpageやpage_lastである場合の記述が存在すること、という5つの点で共通しているものとする。したがって、XHTML文書がこれら5つの条件を満足している場合には、そのXHTML文書はDLNAフォトテンプレートを使用して作成されたものとみなすことができる。
【0017】
次に、こうして構成された本実施形態のマルチファンクションプリンタ20の動作、特にXHTML文書を印刷する際の動作について説明する。図3は、文書解析部30により実行される文書解析ルーチンの一例を示すフローチャートである。この文書解析処理ルーチンは、入力インタフェース22がいずれかの機器からのXHTML文書を入力したときに実行される。この文書解析処理ルーチンが実行されると、まず、改ページモード設定ルーチンを実行する(ステップS100)。この改ページモード設定ルーチンは、今回入力したXHTML文書がDLNAフォトテンプレートを使用して作成されたものであるか否かを判定しその判定結果に応じて通常モードかシンプルモードに振り分ける処理であり、その一例を図4に示す。これらのモードはレイアウトの際に利用されるモードであり、通常モードでは各要素の領域を指定位置に配置するごとにその領域が現在の頁に収まるか否かの判定が行われ、シンプルモードではそのような判定は行われず各要素が強制改頁の対象になっているか否かの判定が行われる。
【0018】
さて、図4に示す改ページモード設定ルーチンが開始されると、まず、送信元がデジタルカメラ14か携帯電話機16で且つデータパスがワイヤレスであるという所定の送信元条件を満たすか否かを判定する(ステップS200)。本実施形態では、この所定の送信元条件を満たす場合には、上述したように、入力されたXHTML−Print文書はDLNAフォトテンプレートを利用して作成されていることになっているため、強制改頁の指定が正しくなされていることになり、各要素の領域を指定位置に配置するごとにその領域が現在の頁に収まるか否かの判定を行う必要がないことから、シンプルモードに設定する(ステップS220)。一方、所定の送信元条件を満たさないときには、今回入力したXHTML文書が所定のフォトテンプレート認定条件を満たすか否かを判定する(ステップS210)。本実施形態では、所定のフォトテンプレート認定条件として、(1)XML宣言のencoding属性がUTF−8であること、(2)DOCTYPE宣言の識別子がXHTML−Printであること、(3)ヘッダ部分にbase要素が存在すること、(4)ヘッダ部分の内部スタイルシート中にdiv要素やimg要素がそれぞれクラスセレクタで記述されていること、(5)ボディ部分にdiv要素のclass属性がpageやpage_lastである場合の記述が存在すること、という5つの条件を採用している。というのは、上述したように、これらの5つの条件は複数種類存在するDLNAフォトテンプレートに共通しているからである。したがって、ステップS210で所定のフォトテンプレート認定条件をすべて満たす場合には、入力されたXHTML文書はDLNAフォトテンプレートを利用して作成されていることになるため、強制改頁の指定が正しくなされていることになり、各要素の領域を指定位置に配置するごとにその領域が現在の頁に収まるか否かの判定を行う必要がないことから、シンプルモードに設定する(ステップS220)。一方、ステップS200及びS210でいずれも否定判定されたときには、入力されたXHTML文書はDLNAフォトテンプレートを使用して作成されたものではなく、強制改頁の指定が必ずしも正しくなされているとは限らないとみなし、各要素の領域を指定位置に配置するごとにその領域が現在の頁に収まるか否かの判定を行う必要があることから、通常モードに設定する(ステップS230)。そして、ステップS220又はS230で改頁モードを通常モードかシンプルモードのいずれかに設定した後、この改頁モード設定ルーチンを終了する。
【0019】
改ページモード設定ルーチンを実行したあと、図3のフローチャートに戻り、XHTML文書の解析を行う(ステップS110)。XHTML文書はテキストファイルの形で存在するため、そのままアプリケーションで利用することができないことから、XHTML文書をアプリケーションが利用しやすい形に変換するために解析を行い、DOMツリーを作成する。DOMツリーは、XTHML文書を構成している要素や属性、イメージデータなどを解析して木構造としたものである。図5は、図2のDLNAフォトテンプレートに基づいて作成したDOMツリーの説明図である。続いて、XHTML文書の解析の結果得られたDOMツリーをメモリ50のDOMツリー保存領域に保存し(ステップS120)、今回入力されたXHTML文書のレイアウトを実行するようレイアウタ38へ指令を出力し(ステップS130)、この文書解析ルーチンを終了する。
【0020】
次に、レイアウタ38により実行されるレイアウト実行ルーチンについて図6に基づいて説明する。図6はレイアウト実行ルーチンの一例を示すフローチャートである。このレイアウト実行ルーチンは、レイアウタ38が文書解析部30からXHTML文書のレイアウトを実行するよう指令されたときに実行される。このルーチンが開始されると、レイアウタ38は、まず、DOMツリーのボディ部分の最初の要素を読み出し(ステップS300)、その要素に子要素があるか否かを判定し(ステップS310)、子要素があるときにはその子要素を読み出し(ステップS320)、再びステップS310に戻り、その子要素に更に子要素があるか否かを判定する。そして、それ以上子要素がないと判定されたとき、内部スタイルシートのうちその要素に関連づけられた設定内容に基づいてその要素の矩形領域を作成すると共にその矩形領域を指定位置に配置する(ステップS330)。図5のDOMツリーの場合には、最下層に並ぶimage要素がそれ以上子要素のない要素であり、例えば図2に示すDLNAフォトテンプレートのボディ部分のimage要素のうちsrc属性で指定された画像ファイル(例えばimage1.jpg)についてclass属性で指定された幅、高さ、マージン及び回転角度(例えばimg.img_23_0degの設定値)となるような矩形領域を作成し、その矩形領域をdiv要素のclass属性で指定された絶対位置(例えばdiv.img1の設定値)に配置する。
【0021】
続いて、現在の改頁モードが通常モードかシンプルモードかを判定し(ステップS340)、現在の改頁モードがシンプルモードだったときには、入力されたXHTML文書はDLNAフォトテンプレートを利用して作成されていることになっているため、強制改頁の指定が正しくなされていることになり、各要素の領域を指定位置に配置するごとにその領域が現在の頁に収まるか否かの判定を行う必要がないことから、先ほど矩形領域を作成した要素に強制改頁つまり「page_break_afer:always」の指定があるか否かを判定する(ステップS370)。そして、強制改頁の指定があるときにはその要素の直後で改頁処理を行いその頁のレイアウトをメモリ50に保存する(ステップS380)。ステップS370で強制改頁の指定がなかったときやステップS380で改頁処理を行ったあと、今回のDOMツリーのボディ部分に未処理の要素が残っているか否かを判定し(ステップS390)、未処理の要素が残っているときには次の要素を読み出し(ステップS400)、再びステップS310に戻り、未処理の要素が残っていないときにはそのまま本ルーチンを終了する。一方、ステップS340で現在の改頁モードが通常モードだったときには、入力されたXHTML文書はDLNAフォトテンプレートを使用して作成されたものではなく、強制改頁の指定が必ずしも正しくなされているとは限らないから、先ほど作成した矩形領域の座標位置が1頁分の領域の座標位置を超えるか否かを判定することによりその矩形領域が現在の頁に収まるか否かを判定する(ステップS350)。そして、現在の頁に収まるときには、既に述べたステップS370以降の処理を実行し、現在の頁に収まらないときには、その要素の直前で改頁処理を行いその頁のレイアウトをメモリ50に保存し(ステップS360)、その後既に述べたステップS390へと移行する。
【0022】
例えば、図2のDLNAフォトテンプレートを使用して作成したXHTML文書を処理する場合には、改頁モードがシンプルモードに設定されているため、各要素について強制改頁の対象となっているか否かを判定すれば足りる。これに対して、図7に示すXHTML文書は、ヘッダ部分にbase要素が存在せず、div要素やimg要素がそれぞれクラスセレクタで記述されてもいないことから、上述したテンプレート認定条件を満たさないものであり、DLNAフォトテンプレートを使用して作成されていないとみなされるものであるから、各要素について強制改頁の対象となっているか否かを判定するだけでなく、各要素の矩形領域が現在の頁に収まるか否かを判定する必要がある。
【0023】
その後、図示しない操作パネルから印刷実行指示が入力されると、RPI40が、レイアウタ38によってメモリ50に書き込まれた1頁ごとのレイアウトを用いてRGBデータとしての印刷用画像を描画してメモリ50の所定領域に格納し、色変換部42が、印刷用画像をCMYKデータに色変換し、2値化部44が、CMYKデータを誤差拡散処理などの画像処理を行って2値化し、カラーインクジェットの印刷ヘッドを備える印刷実行部48が、2値化されたデータをバンド単位でイメージバッファ46から入力しながらカラー印刷を実行する。
【0024】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のメモリ50が本発明のデータ記憶手段及び送信元情報記憶手段に相当し、文書解析部30が文書判定手段に相当し、レイアウタ38がレイアウト実行手段及び記憶制御手段に相当し、RPI40,色変換部42,2値化部44,イメージバッファ46及び印刷実行部48が印刷実行手段に相当し、入力インタフェース22が文書受信手段に相当する。なお、本実施形態では、マルチファンクションプリンタ20の動作を説明することにより本発明の文書出力方法やそのプログラムの一例も明らかにしている。
【0025】
以上詳述した本実施形態のマルチファンクションプリンタ20によれば、DLNAフォトテンプレートを使用して作成されたXHTML文書については、改頁が必要な箇所に強制改頁が必ず指示されていることから各要素の矩形領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行わないため、レイアウトに必要となる時間が短くなりスループットが向上する。また、受信したXHTML文書がDLNAフォトテンプレートを使用して作成されたものか否かの判定について、送信元がデジタルカメラ14か携帯電話機16であり且つデータパスがワイヤレスであるという条件を満たすか否かにより行ったり所定のフォトテンプレート認定条件を満たすか否かにより行ったりするため、容易且つ迅速に行うことができるし比較的精度よく行うことができる。
【0026】
本発明の文書出力装置において、前記文書判定手段は、前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものであることを特定するための複数の条件を前記構造化文書が満たすか否かによって前記構造化文書が前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かを判定してもよい。こうすれば、受信した構造化文書が改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かの判定を精度よく行うことができる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0028】
例えば、上述した実施形態では、テンプレート認定条件を5つの条件としたが、特に5つに限定されるものではなく、6つ以上としてもよいし4つ以下としてもよい。また、条件の中身については、使用するテンプレートに応じて適宜決定すればよい。
【0029】
上述した実施形態では、DLNAフォトテンプレートのヘッダ部分に内部スタイルシートを記述したものを例示したが、link要素により外部スタイルシートを参照するようにしてもよい。また、オブジェクトとしてイメージデータを取り上げたが、テキストデータや表データなどとしてもよい。
【0030】
上述した実施形態では、構造化文書としてXHTML文書とくにXHTML−Print文書を取り上げたが、他のマークアップ言語により記述された文書を採用してもよい。
【0031】
上述した実施形態では、印刷実行部48をカラーインクジェットの印刷ヘッドを備えるものとしたが、モノクロインクジェットの印刷ヘッドを備えるものとしてもよいし、カラーレーザプリンタやモノクロレーザプリンタとしてもよいし、ドットインパクトプリンタとしてもよい。
【0032】
上述した実施形態では、マルチファンクションプリンタ20に本発明を適用した例を示したが、頁ごとのレイアウトを有効に利用することのできる装置であれば、特にこれに限定されるものではなく、例えばスキャナを有さないプリンタに本発明を適用してもよいし、印刷機能を有さずディスプレイに頁ごとのレイアウトを表示出力する装置に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】マルチファンクションプリンタ20の概略構成を表す説明図。
【図2】DLNAフォトテンプレートの一例を示す説明図。
【図3】文書解析ルーチンのフローチャート。
【図4】改頁モード設定ルーチンのフローチャート。
【図5】DOMツリーの一例を示す説明図。
【図6】レイアウト実行ルーチンのフローチャート。
【図7】DLNAフォトテンプレート以外のテンプレートの一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0034】
10 パーソナルコンピュータ、12 デジタルテレビ、14 デジタルカメラ、16 携帯電話機、20 マルチファンクションプリンタ、22 入力インタフェース、24 信号処理部、30 文書解析部、38 レイアウタ、40 RPI、42 色変換部、44 2値化部、46 イメージバッファ、48 印刷実行部、50 メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階層構造を有する構造化文書を解析して頁単位で出力する文書出力装置であって、
データを記憶可能なデータ記憶手段と、
前記構造化文書につき、強制改頁の指示が組み込まれた改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かを判定する文書判定手段と、
前記文書判定手段により前記構造化文書が前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものでないと判定されたときには前記構造化文書の各要素の領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行いながら前記構造化文書を頁ごとにレイアウトし、前記文書判定手段により前記構造化文書が前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものであると判定されたときには前記構造化文書の各要素の領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行うことなく前記強制改頁の指示の有無の判定を行いながら前記構造化文書を頁ごとにレイアウトするレイアウト実行手段と、
前記レイアウト実行手段によって作成された頁ごとのレイアウトを前記データ記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
を備えた文書出力装置。
【請求項2】
前記構造化文書は、XHTML−Print形式の文書である、
請求項1に記載の文書出力装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の文書出力装置であって、
印刷実行指示がなされたとき、前記データ記憶手段に記憶された頁ごとのレイアウトに基づいて前記構造化文書に含まれる印刷対象を取得すると共に印刷媒体へ印刷する印刷実行手段
を備える文書出力装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の文書出力装置であって、
前記構造化文書を受信する文書受信手段を備え、
前記文書判定手段は、前記文書受信手段によって受信された前記構造化文書の送信元に基づいて該構造化文書が前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かを判定する、
文書出力装置。
【請求項5】
前記文書判定手段は、前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものであることを特定するための複数の条件を前記構造化文書が満たすか否かによって前記構造化文書が前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かを判定する、
請求項1〜4のいずれかに記載の文書出力装置。
【請求項6】
階層構造を有する構造化文書を解析して頁単位で出力する文書出力方法であって、
(a)前記構造化文書につき、頁ごとに強制改頁が指示される改頁付きテンプレートを使用して作成されたものか否かを判定するステップと、
(b)前記ステップ(a)で前記構造化文書が前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものでないと判定されたときには前記構造化文書の各要素の領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行いながら前記構造化文書を頁ごとにレイアウトし、前記ステップ(a)で前記構造化文書が前記改頁付きテンプレートを使用して作成されたものであると判定されたときには前記構造化文書の各要素の領域ごとに頁内に収まるか否かの判定を行うことなく前記強制改頁の指示の有無の判定を行いながら前記構造化文書を頁ごとにレイアウトするステップと、
を含む文書出力方法。
【請求項7】
請求項6に記載の文書出力方法の各ステップを1又は複数のコンピュータに実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−188163(P2007−188163A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3727(P2006−3727)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】