文書用電子透かし情報抽出装置及びその方法、並びにコンピュータプログラム及びコンピュータ可読記憶媒体
【課題】 文書用電子透かしにおいて抽出される透かし情報の信頼性を向上することを目的とする。
【解決手段】 入力された文書画像の文字外接矩形を前処理部0101で抽出し、入力された文書画像より、埋め込まれたビット系列を透かし抽出部0401で抽出し、文字外接矩形の抽出をすることによって得られる情報を用いて、ビット系列の各ビットの信頼度を信頼度計算部0402で計算し、ビット系列と信頼度より、受信信号系列を算出し、軟判定復号を後処理部0403で行う。
【解決手段】 入力された文書画像の文字外接矩形を前処理部0101で抽出し、入力された文書画像より、埋め込まれたビット系列を透かし抽出部0401で抽出し、文字外接矩形の抽出をすることによって得られる情報を用いて、ビット系列の各ビットの信頼度を信頼度計算部0402で計算し、ビット系列と信頼度より、受信信号系列を算出し、軟判定復号を後処理部0403で行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書の著作権保護に適用も可能なデータ隠蔽技術ならびに制御のための技術を実現する文書用電子透かし情報抽出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
音声や静止画像、動画像がデジタル信号によって表されることが、近年、主流となっている。また、こうしたデジタル信号を操作し、人間が知覚出来ぬよう、別のデジタル情報を埋め込む電子透かし技術が、著作権保護や制御のために使われている。
【0003】
電子透かし分野では、DA変換とAD変換を介するための品質の劣化や、また通信路で誤りが発生することにより、埋め込んだ情報が正しく抽出されないことが問題となる。この問題の解決のために、誤り訂正符号を用いて、誤りのある情報を訂正することが知られている。(非特許文献1参照)
【0004】
誤り訂正には、硬判定によるもの、軟判定によるものがある。軟判定による誤り訂正では、入力情報がある値となる確からしさを考慮して、誤り訂正を行う。(本明細書では、この確からしさを信頼度と呼ぶ。)軟判定を行う際は、この信頼度を適切に与える事によって、誤り訂正の精度を向上することが出来る。
【0005】
軟判定復号可能な誤り訂正符号を電子透かしに適用する事例については、特許文献1が知られている。これは、誤り訂正符号化されたビット系列を複数埋め込む事により、軟判定を行う方法である。特許文献1には、画像データに適用する例が記載されている。
【非特許文献1】日経エレクトロニクス、No.683及びNo.684
【特許文献1】特開2000−174628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、文書を対象とした電子透かし(以下、文書用電子透かし)と軟判定復号を関連させる方法は知られていなかった。
【0007】
さらに、文書解析技術を用いた文書用電子透かしにおいては、印刷・スキャニング等に起因するノイズや歪等の影響による誤りだけでなく、領域分割や文字外接矩形抽出等の前処理を行う際に誤りが生じ得るので、抽出される透かし情報を十分な信頼性を持って抽出する事が困難であった。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、文書用電子透かしで抽出される透かし情報の信頼性向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、入力された文書画像の文字外接矩形を抽出する外接矩形抽出手段と、前記入力された文書画像より、埋め込まれたビット系列を抽出する透かし抽出手段と、前記外接矩形抽出手段が文字外接矩形の抽出をすることによって得られる情報を用いて、前記抽出されたビット系列の各ビットの信頼度を計算する信頼度計算手段と、前記得られたビット系列と前記信頼度より、受信信号系列を算出し、軟判定復号を行う手段を有することを特徴とする文書用電子透かし情報抽出装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軟判定復号可能な誤り訂正符号を用いて、文書用電子透かしの信頼性を向上することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施形態1)
本実施形態では、軟判定復号可能な誤り訂正符号を用いる、文書用電子透かし埋め込み装置と、文書用電子透かし抽出装置について説明する。
【0012】
特に、文書用電子透かし抽出装置は、軟判定復号可能な誤り訂正符号を用いる際に、透かし抽出の際のパラメータを元に、誤り訂正復号前の各ビット値の信頼度を算出し、各ビット値と、その信頼度より受信信号系列を算出し、誤り訂正復号することで、最終的な抽出結果を出力するものである。
【0013】
<文書用電子透かし埋めこみ装置>
図1は、文書用電子透かし埋めこみ装置の構成である。文書用電子透かし埋めこみ装置は、前処理部0101、ターボ符号化部0102、透かし埋め込み部0103から構成される。
【0014】
前処理部0101は、入力された文書画像に前処理を施すものである。図2は、前処理部0101を説明するための図である。前処理部0101は、領域分割部0201と、文字外接矩形抽出部0202から構成される。
【0015】
領域分割部0201は、例えば、図8に示すように、入力された文書画像を、テキスト、図、グラフ等の属性をもった領域へ分割するものである。この技術の一例としては、特開平06−068301号公報を参照されたい。
【0016】
また、文字外接矩形抽出部0202は、領域分割部0201により、テキストの属性を持つとされた領域について、図9が示すように、文字の外接矩形の抽出を行うものである。外接矩形の抽出に当たっては、行方向への射影により、行の抽出を行い、各行について垂直方向の射影を求め、各文字をおおまかに囲う矩形を得る。そして、それらの矩形が文字に外接するよう、各矩形を狭める方法が考えられる。文字を切り出す文字外接矩形抽出技術については、「文字認識概論」(橋本新一郎編著、電気通信協会刊)のp.59〜p.64を参照されたい。
【0017】
ターボ符号化部0102は、入力された電子透かし情報をターボ符号により誤り訂正符号化し、ビット系列を出力するものである。ターボ符号については後述する。ターボ符号化部0102は、ターボ符号による誤り訂正符号化するものに限定されるものではなく、軟判定復号可能な符号化であればどのような符号化方式であっても構わない。また、ここでいう電子透かし情報とは、電子透かしによって埋め込む情報のことを指す。
【0018】
透かし埋めこみ部0103は、ビット系列と文字外接矩形情報から、以下に示す埋めこみ規則に基づき、人間が判別し難いよう文字画像を微小に操作することで、ビット系列を埋め込むものである。
【0019】
本実施形態における埋め込み規則は、1ビットの埋め込み情報を2つの空白長の大小関係を用いて表している。例えば、埋め込み前の文書画像において抽出された文字外接矩形の一部が図7のようであり、文字外接矩形間の空白長がP0、S0、P1、S1、…とする。電子透かし埋め込み後の文書画像における文字外接矩形間の空白長が、P0’、S0’、P1’、S1’、・・・とするならば、これらPi、SiとPi’、Si’の関係は以下のように示される。
【0020】
埋め込むビットが0の場合、
Pi’=(1+ρ)×(Pi+Si)/2、 (式1)
Si’=(1−ρ)×(Pi+Si)/2、 (式2)
埋め込むビットが1の場合、
Pi’=(1−ρ)×(Pi+Si)/2、 (式3)
Si’=(1+ρ)×(Pi+Si)/2、 (式4)
【0021】
以上の関係を持つよう、文字画像を微小にシフトする事によって、ビット系列を埋め込む。つまり、上記の式によると、埋め込むビットが0の場合はPi’>Si’、1の場合はPi’<Si’の関係を持たせる事になる。ρは、埋め込みの強さを表すパラメータであり、ρが大きければ埋め込んだ情報が抽出され易いが、画像としては不自然さを増す結果になり、ρが小さければこの不自然さは少ないものの、埋め込んだ情報を正しく抽出される確率が低くなるという性質を併せ持つ。
【0022】
図3は、文書用電子透かし埋めこみのフローの説明図である。
【0023】
S0301で、文書画像の入力が行われ、S0302で、領域分割部0201において、入力された文書画像の領域分割が行われる。次に、S0303で、文字外接矩形抽出部0202において、領域分割部0201により、テキストの属性を持つとされた領域について、文字の外接矩形抽出が行われる。
【0024】
S0304で、電子透かし情報の入力が行われ、S0305で、入力された電子透かし情報に対して、ターボ符号により誤り訂正符号化され、ビット系列が生成される。
【0025】
S0306で、透かし埋め込み部0103にて、上記埋め込み規則により、ターボ符号により符号化されたビット系列を文書画像に埋め込まれ、電子透かし埋め込み文書画像が生成される。
【0026】
<文書用電子透かし抽出装置>
図4は、文書用電子透かし抽出装置の説明するための図である。文書用電子透かし抽出装置は、前処理部0101、透かし抽出部0401、信頼度計算部0402、後処理部0403から構成される。
【0027】
前処理部0101は、入力された電子透かし埋め込み済み文書に対して、領域分割、及び文字外接矩形抽出の前処理を行うものであり、前述した文書用電子透かし埋め込み装置の前処理部0101と同一である。
【0028】
透かし抽出部0401は、前処理部0101から外接矩形情報を受け取り、外接矩形情報より文字外接矩形間の空白長情報を得て、入力された電子透かし埋め込み済み文書に埋め込まれているビット系列を抽出するものである。透かし抽出部0401は、外接矩形情報より前述の埋め込み規則をもとに、埋め込みビット系列分のビット値を判定するものである。
【0029】
信頼度計算部0402は、透かし抽出部0401から空白長情報を得て、透かし抽出部より出力されるビット系列の各ビットの信頼度を計算するものである。本実施形態では、ビット系列の各ビットの値は0か1のいずれかを取る離散的な値とし、各ビット値の信頼度は、連続値であると定める。
【0030】
ここで、透かし抽出部0401で抽出されるビット系列の各ビットの信頼度は、外接矩形情報より算出される空白長が上記埋め込み規則の場合に、(式5)のように定める。
信頼度Ti=|Pi−Si (式5)
【0031】
後処理部0403は、透かし抽出部0401で抽出されたビット系列と、信頼度計算部0402で計算される信頼度を基にして、最終的な抽出結果として電子透かし情報を出力するものである。
【0032】
図5は、後処理部0403の構成図であり、後処理部0403は、受信信号系列算出部0501と、軟判定復号部0502から構成される。
【0033】
受信信号系列算出部0501は、入力されるビット系列と信頼度から、通信路上からの受信信号系列に見立てた信号系列を算出するものである。この信号系列を受信信号系列と呼ぶ。前述した通り、ビット系列は1か0を取る離散値の系列であり、信頼度は0〜1の連続値である。ビット系列と信頼度から算出される受信信号系列は、連続値の系列となる。その算出方法として、例えば、次のような式が挙げられる。
Ri=(1−2×di)×Ti (式6)
Ri: 受信信号系列の各値、di:ビット系列の各ビット値、Ti:信頼度
この式は、ビット値が0のとき、受信信号系列の値が正、ビットの値が1のとき受信信号系列の値が負となる。
【0034】
しかしながら、後に行われるターボ符号の復号の必要を満たすのであれば、以上の算出方法以外のものでもよい。ターボ符号の復号に際しては、受信信号系列より、通信路値が算出される必要がある。通信路値とは、例えば以下のように表される。
【0035】
【数1】
【0036】
ここで、Rは受信信号系列を表すものである。従って、通信路値を算出するに十分であれば、受信信号系列は、(式6)の例に限らない。
【0037】
軟判定復号部0502は、受信信号系列算出部0501から、受信信号系列を受け取り、この受信信号系列を元に軟判定復号を行う。ここでは、ターボ符号の復号を行う。
【0038】
<ターボ符号について>
ターボ符号は、1993年にフランスのBerrouらによって、情報理論の限界(Shannon 限界)に近い伝送特性を、現実的な処理で実現する手法として提案された。以下、符号化部、復号部の概要について図10を用いて説明する。
【0039】
まず、ターボ符号の符号化について説明する。
【0040】
図10の符号化部では、エンコーダ1(1001)、エンコーダ2(1002)は、再帰的組織畳み込み符号器を使用する。例えば、符号化率1/2の畳み込み符号がある。エンコーダ1(1001)、エンコーダ2(1002)は異なる符号でも構わない。これらは、情報系列1ビットに対して、パリティビット1ビットを出力する。インターリーバ(1003)は、情報系列{dk}の順序を並べ替えるものである。Mux/punc(1004)はパリティビット{p1k},{p2n}を間引きする。例えば、エンコーダ1(1001)、エンコーダ2(1002)からの出力を交互に並べる。間引きしない場合には、全体としては符号化率1/3の符号となる。多重化部(1005)は、情報系列{dk}とパリティビット系列を多重化(単に情報ビット、パリティビットの順に)して通信路へ送り出すものである。
【0041】
次に、ターボ符号の復号化について説明する。
【0042】
復号部では、デコーダ1(1006)、デコーダ2(1007)はそれぞれエンコーダ1(1001)、エンコーダ2(1002)に対応した復号器である必要がある。各情報系列の復号結果とその信頼度情報Le1(dk),Le1(dn)を出力する。受信系列(Rdk,Rpk)と前段の信頼度情報を元に、復号処理を行い、デコーダ1(1006)、デコーダ2(1007)で数回から10数回繰り返し復号を行う。このように、前段の信頼度情報を利用して、繰り返し復号を行うことがターボの由縁である。インターリーバ(1008)は符号器と同じもの、デインタリーバ(1009)はインターリーバ(1008)での並べ替えを元に戻す。受信系列(Rdk,Rpk)それに対応する信頼度情報を同時にインターリーバ、デインターリーバする。
【0043】
復号においては、種々のアルゴリズムが提案されているが、一般的に符号トレリスを基に復号を行う。受信系列をR、時点kでの情報ビットdkに対する事後値(または軟出力値)は、次式のように表される。
【0044】
【数2】
【0045】
ここでPr(dk=a|R)は受信系列Rという条件の元で時点kの情報ビットdkがaとなる確率を表す。さらに、事後値は以下のように定式化される。
事後値=通信路値+事前値+外部値 (式9)
事後値の計算は、「ターボ符号の基礎」(トリケップス刊)に委ねるとして、各情報ビットの信頼度(確率)より通信路値が得られ、前段の復号器から事前値(最初の復号の場合は0とする)が得られる。ここで、事後値より通信路値と事前値を減算することで外部値を算出する。この外部値が次段の事前値として入力される。
【0046】
このように繰り返し復号を行い、最後の復号部において、事後値を軟判定することで復号結果を得る。
【0047】
図6は、文書用電子透かし抽出のフローを説明するための図である。
【0048】
先ず、S0601で、電子透かし埋め込み済み文書画像が入力され、S0602で、入力された電子透かし埋め込み済み文書画像に対して、領域分割部0201において、領域分割が行われる。S0603で、外接矩形抽出部0202において、文字外接矩形抽出が行われる。S0604で、外接矩形情報を元に、透かし抽出部0303において、ビット系列抽出が行われる。ここで、ビット系列抽出は、上述した埋め込み規則の一例に基づき、外接矩形情報より算出される空白長の大小関係によって行われる。そして、S0605で、信頼度計算部0402にて信頼度の計算が行われる。
【0049】
次に、S0606で、後処理部0403の受信信号系列算出部0501において、受信信号系列算出が行われる。そして、S0607で、生成された受信信号系列に対してターボ符号の誤り訂正復号が、軟判定復号部0502においてで行われ、S0608で、最終的な抽出結果としての、電子透かし情報が出力される。
【0050】
(実施形態2)
本実施形態では、軟判定復号可能な誤り訂正符号を用いる際に、前処理の際のパラメータを元に誤り訂正復号前の各ビット値の信頼度を算出し、各ビット値とその信頼度より受信信号系列を算出し、誤り訂正復号する事で、最終的な抽出結果を出力する文書用電子透かし抽出装置について説明する。尚、本実施形態の文書用電子透かし埋め込み装置に関しては、実施形態1に示すものと同一とする。
【0051】
本実施形態における文書用電子透かし抽出装置の構成について、図11を用いて説明する。本実施形態の文書用電子透かし抽出装置の信頼度計算部1101以外に関しては、実施形態1に示すものと同一とする。
【0052】
信頼度計算部1101は、透かし抽出部0401で算出されるビット系列の各ビットの信頼度を、前処理部0101で得られる外接矩形情報から算出するものである。
【0053】
また、信頼度は、外接矩形情報より算出される文字幅の偏差によって、偏差が小さければ小さいほど大きくなるように定める事とする。(文字幅wとは、図7を参照)例えば、以下の式のように定める。
【0054】
【数3】
【0055】
ここで、wは文字幅、
【0056】
【数4】
【0057】
は文字幅の平均値、Sは文字幅の標準偏差を示す。この信頼度は、ノイズ等により本来、2つに分かれて抽出されるべきところが、1つになってしまう等の誤りの影響を、少なくすることを意図するものである。
【0058】
また、上記の(式10)は1以下で0より大きい値をとるものであり、その理由としては、ターボ符号の復号において、各ビット値を取る確率(0〜1の値)が必要とされることが挙げられる。
【0059】
次に、文書用電子透かし抽出のフローについて説明する。
【0060】
本実施形態における抽出のフローは、実施形態1で説明した抽出のフローと同一である。異なる部分は信頼度の算出方法に係る部分であり、上述したように、実施形態1では、|Pi−Si|を0〜1の間に正規化した値を信頼度とするのに対し、本実施形態では、文字幅の偏差により信頼度を算出する。
【0061】
なお、信頼度の算出に関しては、上記のような外接矩形抽出における誤りの影響を軽減出来るならば、上記の(式10)に限らない。文字の幅以外にも、文字の高さ、文字送りピッチ等のデータを用いて信頼度を計算してもよい。
【0062】
(実施形態3)
本実施形態では、軟判定復号可能な誤り訂正符号を用いる際に、前処理の際のパラメータから算出される信頼度と、透かし抽出の際のパラメータを元に算出する信頼度の両方を用いる文書用電子透かし抽出装置について説明する。尚、本実施形態の文書用電子透かし埋め込み装置に関しては、実施形態1に示すものと同一のものとする。
【0063】
本実施形態における文書用電子透かし抽出装置の構成について、図12を用いて説明する。本実施形態の文書用電子透かし抽出装置の信頼度計算部A1301と信頼度計算部B1302、後処理部1303以外に関しては、実施形態1に示すものと同一とする。
【0064】
信頼度計算部A1301は、透かし抽出部0401で算出されるビット系列の各ビットの信頼度Aを、前処理部0101による外接矩形情報をもとに、算出する。信頼度計算部A1301の処理としては、信頼度計算部1101と同一である。
【0065】
信頼度計算部B1302は、透かし抽出部0401による空白長情報を用いて、信頼度計算部A1301で算出される信頼度Aとは異なる信頼度Bを算出する。信頼度計算部B1302の処理としては、信頼度計算部0402と同一である。
【0066】
後処理部1303は、透かし抽出部0401で得られたビット系列と、信頼度計算部A1301で得られた信頼度Aと、信頼度計算部B1302で得られた信頼度Bを鑑み、ターボ符号の軟判定復号を行い電子透かし情報を出力するものである。本実施形態において、信頼度は上述した通り、信頼度計算部A1301で算出するものと、信頼度計算部B1302で算出するものの2つがあり、ここでは両方を鑑みるものである。例えば、具体的な方法としては両方の信頼度を重畳したものを(式6)における信頼度として、受信信号系列を計算することが考えられる。
【0067】
【数5】
【0068】
しかしながら、両方の信頼度を考慮に入れて計算するのであれば、以上に説明した計算方法以外のものであってもかまわない。後処理部1303の処理としては、2つの信頼度を考慮に入れる以外は、後処理部0403と同一である。
【0069】
なお、信頼度計算部A1301における信頼度Aの計算は、外接矩形情報より算出される文字幅の偏差によって、偏差が小さければ小さいほど大きくなるように定めるが、この方法に限るものでなく、発明の実施の形態2同様、外接矩形抽出における誤りの影響を軽減出来るならば、上記の(式10)に限るものではない。文字の幅以外にも、文字の高さ、文字送りピッチ等のデータを用いて信頼度を計算してもよい。
【0070】
また、信頼度計算部B1302において計算される信頼度Bは、実施形態1に示すものと同様に、|Pi−Si|を基に定める事ととするが、これに限定されない。
【0071】
尚、本実施形態における抽出のフローは、実施形態1で説明した抽出のフローと同一である。異なる部分は2つの信頼度を考慮に入れて計算している点である。
【0072】
<その他の実施形態>
電子透かし埋め込み方法としては、上記実施形態1〜3では、ある文字の前後の空白長の大小関係と、ビット値0、1を対応させる方法を用いているが、これのみに限ることなく、文字を用いて、ビット値を表現出来るものであれば、どのような方法でも構わない。また、その際、信頼度の算出においては、ビット値の信頼度として、電子透かし埋め込み方法に応じた、適当な方法を用いることとする。尚、実施形態3では、信頼度計算部Aと信頼度計算部Bのそれぞれにおいて、適当な方法を用いることとする。
【0073】
また、上記実施形態では、ネットワークを構成するハードウェア等が含まれるものの、各処理部は実際はソフトウェアで実現できるものである。即ち、本発明の目的は、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体(または、記録媒体)を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(または、CPUやMPU)が、記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し、実行することによっても達成されることは言うまでもない。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が、上述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体が本発明を構成することになる。
【0074】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)等が、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって、上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0075】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって、上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施形態1における文書用電子透かし埋め込み装置を説明するための図である。
【図2】前処理部0101を説明するための図である。
【図3】実施形態1における文書用電子透かし埋め込みのフローを説明するための図である。
【図4】実施形態1における電子透かし抽出装置を説明するための図である。
【図5】後処理部0403を説明するための図である。
【図6】実施形態1における電子透かし抽出のフローを説明するための図である。
【図7】文字外接矩形と空白長の関係を説明するための図である。
【図8】領域分割を説明するための図である。
【図9】文字外接矩形抽出を説明するための図である。
【図10】ターボ符号、ターボ復号を説明するための図である。
【図11】実施形態2における電子透かし抽出装置を説明するための図である。
【図12】実施形態3における電子透かし抽出装置を説明するための図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書の著作権保護に適用も可能なデータ隠蔽技術ならびに制御のための技術を実現する文書用電子透かし情報抽出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
音声や静止画像、動画像がデジタル信号によって表されることが、近年、主流となっている。また、こうしたデジタル信号を操作し、人間が知覚出来ぬよう、別のデジタル情報を埋め込む電子透かし技術が、著作権保護や制御のために使われている。
【0003】
電子透かし分野では、DA変換とAD変換を介するための品質の劣化や、また通信路で誤りが発生することにより、埋め込んだ情報が正しく抽出されないことが問題となる。この問題の解決のために、誤り訂正符号を用いて、誤りのある情報を訂正することが知られている。(非特許文献1参照)
【0004】
誤り訂正には、硬判定によるもの、軟判定によるものがある。軟判定による誤り訂正では、入力情報がある値となる確からしさを考慮して、誤り訂正を行う。(本明細書では、この確からしさを信頼度と呼ぶ。)軟判定を行う際は、この信頼度を適切に与える事によって、誤り訂正の精度を向上することが出来る。
【0005】
軟判定復号可能な誤り訂正符号を電子透かしに適用する事例については、特許文献1が知られている。これは、誤り訂正符号化されたビット系列を複数埋め込む事により、軟判定を行う方法である。特許文献1には、画像データに適用する例が記載されている。
【非特許文献1】日経エレクトロニクス、No.683及びNo.684
【特許文献1】特開2000−174628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、文書を対象とした電子透かし(以下、文書用電子透かし)と軟判定復号を関連させる方法は知られていなかった。
【0007】
さらに、文書解析技術を用いた文書用電子透かしにおいては、印刷・スキャニング等に起因するノイズや歪等の影響による誤りだけでなく、領域分割や文字外接矩形抽出等の前処理を行う際に誤りが生じ得るので、抽出される透かし情報を十分な信頼性を持って抽出する事が困難であった。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、文書用電子透かしで抽出される透かし情報の信頼性向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、入力された文書画像の文字外接矩形を抽出する外接矩形抽出手段と、前記入力された文書画像より、埋め込まれたビット系列を抽出する透かし抽出手段と、前記外接矩形抽出手段が文字外接矩形の抽出をすることによって得られる情報を用いて、前記抽出されたビット系列の各ビットの信頼度を計算する信頼度計算手段と、前記得られたビット系列と前記信頼度より、受信信号系列を算出し、軟判定復号を行う手段を有することを特徴とする文書用電子透かし情報抽出装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軟判定復号可能な誤り訂正符号を用いて、文書用電子透かしの信頼性を向上することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施形態1)
本実施形態では、軟判定復号可能な誤り訂正符号を用いる、文書用電子透かし埋め込み装置と、文書用電子透かし抽出装置について説明する。
【0012】
特に、文書用電子透かし抽出装置は、軟判定復号可能な誤り訂正符号を用いる際に、透かし抽出の際のパラメータを元に、誤り訂正復号前の各ビット値の信頼度を算出し、各ビット値と、その信頼度より受信信号系列を算出し、誤り訂正復号することで、最終的な抽出結果を出力するものである。
【0013】
<文書用電子透かし埋めこみ装置>
図1は、文書用電子透かし埋めこみ装置の構成である。文書用電子透かし埋めこみ装置は、前処理部0101、ターボ符号化部0102、透かし埋め込み部0103から構成される。
【0014】
前処理部0101は、入力された文書画像に前処理を施すものである。図2は、前処理部0101を説明するための図である。前処理部0101は、領域分割部0201と、文字外接矩形抽出部0202から構成される。
【0015】
領域分割部0201は、例えば、図8に示すように、入力された文書画像を、テキスト、図、グラフ等の属性をもった領域へ分割するものである。この技術の一例としては、特開平06−068301号公報を参照されたい。
【0016】
また、文字外接矩形抽出部0202は、領域分割部0201により、テキストの属性を持つとされた領域について、図9が示すように、文字の外接矩形の抽出を行うものである。外接矩形の抽出に当たっては、行方向への射影により、行の抽出を行い、各行について垂直方向の射影を求め、各文字をおおまかに囲う矩形を得る。そして、それらの矩形が文字に外接するよう、各矩形を狭める方法が考えられる。文字を切り出す文字外接矩形抽出技術については、「文字認識概論」(橋本新一郎編著、電気通信協会刊)のp.59〜p.64を参照されたい。
【0017】
ターボ符号化部0102は、入力された電子透かし情報をターボ符号により誤り訂正符号化し、ビット系列を出力するものである。ターボ符号については後述する。ターボ符号化部0102は、ターボ符号による誤り訂正符号化するものに限定されるものではなく、軟判定復号可能な符号化であればどのような符号化方式であっても構わない。また、ここでいう電子透かし情報とは、電子透かしによって埋め込む情報のことを指す。
【0018】
透かし埋めこみ部0103は、ビット系列と文字外接矩形情報から、以下に示す埋めこみ規則に基づき、人間が判別し難いよう文字画像を微小に操作することで、ビット系列を埋め込むものである。
【0019】
本実施形態における埋め込み規則は、1ビットの埋め込み情報を2つの空白長の大小関係を用いて表している。例えば、埋め込み前の文書画像において抽出された文字外接矩形の一部が図7のようであり、文字外接矩形間の空白長がP0、S0、P1、S1、…とする。電子透かし埋め込み後の文書画像における文字外接矩形間の空白長が、P0’、S0’、P1’、S1’、・・・とするならば、これらPi、SiとPi’、Si’の関係は以下のように示される。
【0020】
埋め込むビットが0の場合、
Pi’=(1+ρ)×(Pi+Si)/2、 (式1)
Si’=(1−ρ)×(Pi+Si)/2、 (式2)
埋め込むビットが1の場合、
Pi’=(1−ρ)×(Pi+Si)/2、 (式3)
Si’=(1+ρ)×(Pi+Si)/2、 (式4)
【0021】
以上の関係を持つよう、文字画像を微小にシフトする事によって、ビット系列を埋め込む。つまり、上記の式によると、埋め込むビットが0の場合はPi’>Si’、1の場合はPi’<Si’の関係を持たせる事になる。ρは、埋め込みの強さを表すパラメータであり、ρが大きければ埋め込んだ情報が抽出され易いが、画像としては不自然さを増す結果になり、ρが小さければこの不自然さは少ないものの、埋め込んだ情報を正しく抽出される確率が低くなるという性質を併せ持つ。
【0022】
図3は、文書用電子透かし埋めこみのフローの説明図である。
【0023】
S0301で、文書画像の入力が行われ、S0302で、領域分割部0201において、入力された文書画像の領域分割が行われる。次に、S0303で、文字外接矩形抽出部0202において、領域分割部0201により、テキストの属性を持つとされた領域について、文字の外接矩形抽出が行われる。
【0024】
S0304で、電子透かし情報の入力が行われ、S0305で、入力された電子透かし情報に対して、ターボ符号により誤り訂正符号化され、ビット系列が生成される。
【0025】
S0306で、透かし埋め込み部0103にて、上記埋め込み規則により、ターボ符号により符号化されたビット系列を文書画像に埋め込まれ、電子透かし埋め込み文書画像が生成される。
【0026】
<文書用電子透かし抽出装置>
図4は、文書用電子透かし抽出装置の説明するための図である。文書用電子透かし抽出装置は、前処理部0101、透かし抽出部0401、信頼度計算部0402、後処理部0403から構成される。
【0027】
前処理部0101は、入力された電子透かし埋め込み済み文書に対して、領域分割、及び文字外接矩形抽出の前処理を行うものであり、前述した文書用電子透かし埋め込み装置の前処理部0101と同一である。
【0028】
透かし抽出部0401は、前処理部0101から外接矩形情報を受け取り、外接矩形情報より文字外接矩形間の空白長情報を得て、入力された電子透かし埋め込み済み文書に埋め込まれているビット系列を抽出するものである。透かし抽出部0401は、外接矩形情報より前述の埋め込み規則をもとに、埋め込みビット系列分のビット値を判定するものである。
【0029】
信頼度計算部0402は、透かし抽出部0401から空白長情報を得て、透かし抽出部より出力されるビット系列の各ビットの信頼度を計算するものである。本実施形態では、ビット系列の各ビットの値は0か1のいずれかを取る離散的な値とし、各ビット値の信頼度は、連続値であると定める。
【0030】
ここで、透かし抽出部0401で抽出されるビット系列の各ビットの信頼度は、外接矩形情報より算出される空白長が上記埋め込み規則の場合に、(式5)のように定める。
信頼度Ti=|Pi−Si (式5)
【0031】
後処理部0403は、透かし抽出部0401で抽出されたビット系列と、信頼度計算部0402で計算される信頼度を基にして、最終的な抽出結果として電子透かし情報を出力するものである。
【0032】
図5は、後処理部0403の構成図であり、後処理部0403は、受信信号系列算出部0501と、軟判定復号部0502から構成される。
【0033】
受信信号系列算出部0501は、入力されるビット系列と信頼度から、通信路上からの受信信号系列に見立てた信号系列を算出するものである。この信号系列を受信信号系列と呼ぶ。前述した通り、ビット系列は1か0を取る離散値の系列であり、信頼度は0〜1の連続値である。ビット系列と信頼度から算出される受信信号系列は、連続値の系列となる。その算出方法として、例えば、次のような式が挙げられる。
Ri=(1−2×di)×Ti (式6)
Ri: 受信信号系列の各値、di:ビット系列の各ビット値、Ti:信頼度
この式は、ビット値が0のとき、受信信号系列の値が正、ビットの値が1のとき受信信号系列の値が負となる。
【0034】
しかしながら、後に行われるターボ符号の復号の必要を満たすのであれば、以上の算出方法以外のものでもよい。ターボ符号の復号に際しては、受信信号系列より、通信路値が算出される必要がある。通信路値とは、例えば以下のように表される。
【0035】
【数1】
【0036】
ここで、Rは受信信号系列を表すものである。従って、通信路値を算出するに十分であれば、受信信号系列は、(式6)の例に限らない。
【0037】
軟判定復号部0502は、受信信号系列算出部0501から、受信信号系列を受け取り、この受信信号系列を元に軟判定復号を行う。ここでは、ターボ符号の復号を行う。
【0038】
<ターボ符号について>
ターボ符号は、1993年にフランスのBerrouらによって、情報理論の限界(Shannon 限界)に近い伝送特性を、現実的な処理で実現する手法として提案された。以下、符号化部、復号部の概要について図10を用いて説明する。
【0039】
まず、ターボ符号の符号化について説明する。
【0040】
図10の符号化部では、エンコーダ1(1001)、エンコーダ2(1002)は、再帰的組織畳み込み符号器を使用する。例えば、符号化率1/2の畳み込み符号がある。エンコーダ1(1001)、エンコーダ2(1002)は異なる符号でも構わない。これらは、情報系列1ビットに対して、パリティビット1ビットを出力する。インターリーバ(1003)は、情報系列{dk}の順序を並べ替えるものである。Mux/punc(1004)はパリティビット{p1k},{p2n}を間引きする。例えば、エンコーダ1(1001)、エンコーダ2(1002)からの出力を交互に並べる。間引きしない場合には、全体としては符号化率1/3の符号となる。多重化部(1005)は、情報系列{dk}とパリティビット系列を多重化(単に情報ビット、パリティビットの順に)して通信路へ送り出すものである。
【0041】
次に、ターボ符号の復号化について説明する。
【0042】
復号部では、デコーダ1(1006)、デコーダ2(1007)はそれぞれエンコーダ1(1001)、エンコーダ2(1002)に対応した復号器である必要がある。各情報系列の復号結果とその信頼度情報Le1(dk),Le1(dn)を出力する。受信系列(Rdk,Rpk)と前段の信頼度情報を元に、復号処理を行い、デコーダ1(1006)、デコーダ2(1007)で数回から10数回繰り返し復号を行う。このように、前段の信頼度情報を利用して、繰り返し復号を行うことがターボの由縁である。インターリーバ(1008)は符号器と同じもの、デインタリーバ(1009)はインターリーバ(1008)での並べ替えを元に戻す。受信系列(Rdk,Rpk)それに対応する信頼度情報を同時にインターリーバ、デインターリーバする。
【0043】
復号においては、種々のアルゴリズムが提案されているが、一般的に符号トレリスを基に復号を行う。受信系列をR、時点kでの情報ビットdkに対する事後値(または軟出力値)は、次式のように表される。
【0044】
【数2】
【0045】
ここでPr(dk=a|R)は受信系列Rという条件の元で時点kの情報ビットdkがaとなる確率を表す。さらに、事後値は以下のように定式化される。
事後値=通信路値+事前値+外部値 (式9)
事後値の計算は、「ターボ符号の基礎」(トリケップス刊)に委ねるとして、各情報ビットの信頼度(確率)より通信路値が得られ、前段の復号器から事前値(最初の復号の場合は0とする)が得られる。ここで、事後値より通信路値と事前値を減算することで外部値を算出する。この外部値が次段の事前値として入力される。
【0046】
このように繰り返し復号を行い、最後の復号部において、事後値を軟判定することで復号結果を得る。
【0047】
図6は、文書用電子透かし抽出のフローを説明するための図である。
【0048】
先ず、S0601で、電子透かし埋め込み済み文書画像が入力され、S0602で、入力された電子透かし埋め込み済み文書画像に対して、領域分割部0201において、領域分割が行われる。S0603で、外接矩形抽出部0202において、文字外接矩形抽出が行われる。S0604で、外接矩形情報を元に、透かし抽出部0303において、ビット系列抽出が行われる。ここで、ビット系列抽出は、上述した埋め込み規則の一例に基づき、外接矩形情報より算出される空白長の大小関係によって行われる。そして、S0605で、信頼度計算部0402にて信頼度の計算が行われる。
【0049】
次に、S0606で、後処理部0403の受信信号系列算出部0501において、受信信号系列算出が行われる。そして、S0607で、生成された受信信号系列に対してターボ符号の誤り訂正復号が、軟判定復号部0502においてで行われ、S0608で、最終的な抽出結果としての、電子透かし情報が出力される。
【0050】
(実施形態2)
本実施形態では、軟判定復号可能な誤り訂正符号を用いる際に、前処理の際のパラメータを元に誤り訂正復号前の各ビット値の信頼度を算出し、各ビット値とその信頼度より受信信号系列を算出し、誤り訂正復号する事で、最終的な抽出結果を出力する文書用電子透かし抽出装置について説明する。尚、本実施形態の文書用電子透かし埋め込み装置に関しては、実施形態1に示すものと同一とする。
【0051】
本実施形態における文書用電子透かし抽出装置の構成について、図11を用いて説明する。本実施形態の文書用電子透かし抽出装置の信頼度計算部1101以外に関しては、実施形態1に示すものと同一とする。
【0052】
信頼度計算部1101は、透かし抽出部0401で算出されるビット系列の各ビットの信頼度を、前処理部0101で得られる外接矩形情報から算出するものである。
【0053】
また、信頼度は、外接矩形情報より算出される文字幅の偏差によって、偏差が小さければ小さいほど大きくなるように定める事とする。(文字幅wとは、図7を参照)例えば、以下の式のように定める。
【0054】
【数3】
【0055】
ここで、wは文字幅、
【0056】
【数4】
【0057】
は文字幅の平均値、Sは文字幅の標準偏差を示す。この信頼度は、ノイズ等により本来、2つに分かれて抽出されるべきところが、1つになってしまう等の誤りの影響を、少なくすることを意図するものである。
【0058】
また、上記の(式10)は1以下で0より大きい値をとるものであり、その理由としては、ターボ符号の復号において、各ビット値を取る確率(0〜1の値)が必要とされることが挙げられる。
【0059】
次に、文書用電子透かし抽出のフローについて説明する。
【0060】
本実施形態における抽出のフローは、実施形態1で説明した抽出のフローと同一である。異なる部分は信頼度の算出方法に係る部分であり、上述したように、実施形態1では、|Pi−Si|を0〜1の間に正規化した値を信頼度とするのに対し、本実施形態では、文字幅の偏差により信頼度を算出する。
【0061】
なお、信頼度の算出に関しては、上記のような外接矩形抽出における誤りの影響を軽減出来るならば、上記の(式10)に限らない。文字の幅以外にも、文字の高さ、文字送りピッチ等のデータを用いて信頼度を計算してもよい。
【0062】
(実施形態3)
本実施形態では、軟判定復号可能な誤り訂正符号を用いる際に、前処理の際のパラメータから算出される信頼度と、透かし抽出の際のパラメータを元に算出する信頼度の両方を用いる文書用電子透かし抽出装置について説明する。尚、本実施形態の文書用電子透かし埋め込み装置に関しては、実施形態1に示すものと同一のものとする。
【0063】
本実施形態における文書用電子透かし抽出装置の構成について、図12を用いて説明する。本実施形態の文書用電子透かし抽出装置の信頼度計算部A1301と信頼度計算部B1302、後処理部1303以外に関しては、実施形態1に示すものと同一とする。
【0064】
信頼度計算部A1301は、透かし抽出部0401で算出されるビット系列の各ビットの信頼度Aを、前処理部0101による外接矩形情報をもとに、算出する。信頼度計算部A1301の処理としては、信頼度計算部1101と同一である。
【0065】
信頼度計算部B1302は、透かし抽出部0401による空白長情報を用いて、信頼度計算部A1301で算出される信頼度Aとは異なる信頼度Bを算出する。信頼度計算部B1302の処理としては、信頼度計算部0402と同一である。
【0066】
後処理部1303は、透かし抽出部0401で得られたビット系列と、信頼度計算部A1301で得られた信頼度Aと、信頼度計算部B1302で得られた信頼度Bを鑑み、ターボ符号の軟判定復号を行い電子透かし情報を出力するものである。本実施形態において、信頼度は上述した通り、信頼度計算部A1301で算出するものと、信頼度計算部B1302で算出するものの2つがあり、ここでは両方を鑑みるものである。例えば、具体的な方法としては両方の信頼度を重畳したものを(式6)における信頼度として、受信信号系列を計算することが考えられる。
【0067】
【数5】
【0068】
しかしながら、両方の信頼度を考慮に入れて計算するのであれば、以上に説明した計算方法以外のものであってもかまわない。後処理部1303の処理としては、2つの信頼度を考慮に入れる以外は、後処理部0403と同一である。
【0069】
なお、信頼度計算部A1301における信頼度Aの計算は、外接矩形情報より算出される文字幅の偏差によって、偏差が小さければ小さいほど大きくなるように定めるが、この方法に限るものでなく、発明の実施の形態2同様、外接矩形抽出における誤りの影響を軽減出来るならば、上記の(式10)に限るものではない。文字の幅以外にも、文字の高さ、文字送りピッチ等のデータを用いて信頼度を計算してもよい。
【0070】
また、信頼度計算部B1302において計算される信頼度Bは、実施形態1に示すものと同様に、|Pi−Si|を基に定める事ととするが、これに限定されない。
【0071】
尚、本実施形態における抽出のフローは、実施形態1で説明した抽出のフローと同一である。異なる部分は2つの信頼度を考慮に入れて計算している点である。
【0072】
<その他の実施形態>
電子透かし埋め込み方法としては、上記実施形態1〜3では、ある文字の前後の空白長の大小関係と、ビット値0、1を対応させる方法を用いているが、これのみに限ることなく、文字を用いて、ビット値を表現出来るものであれば、どのような方法でも構わない。また、その際、信頼度の算出においては、ビット値の信頼度として、電子透かし埋め込み方法に応じた、適当な方法を用いることとする。尚、実施形態3では、信頼度計算部Aと信頼度計算部Bのそれぞれにおいて、適当な方法を用いることとする。
【0073】
また、上記実施形態では、ネットワークを構成するハードウェア等が含まれるものの、各処理部は実際はソフトウェアで実現できるものである。即ち、本発明の目的は、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体(または、記録媒体)を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(または、CPUやMPU)が、記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し、実行することによっても達成されることは言うまでもない。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が、上述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体が本発明を構成することになる。
【0074】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)等が、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって、上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0075】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって、上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施形態1における文書用電子透かし埋め込み装置を説明するための図である。
【図2】前処理部0101を説明するための図である。
【図3】実施形態1における文書用電子透かし埋め込みのフローを説明するための図である。
【図4】実施形態1における電子透かし抽出装置を説明するための図である。
【図5】後処理部0403を説明するための図である。
【図6】実施形態1における電子透かし抽出のフローを説明するための図である。
【図7】文字外接矩形と空白長の関係を説明するための図である。
【図8】領域分割を説明するための図である。
【図9】文字外接矩形抽出を説明するための図である。
【図10】ターボ符号、ターボ復号を説明するための図である。
【図11】実施形態2における電子透かし抽出装置を説明するための図である。
【図12】実施形態3における電子透かし抽出装置を説明するための図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された文書画像の文字外接矩形を抽出する外接矩形抽出手段と、
前記入力された文書画像より、埋め込まれたビット系列を抽出する透かし抽出手段と、
前記外接矩形抽出手段が文字外接矩形の抽出をすることによって得られる情報を用いて、前記抽出されたビット系列の各ビットの信頼度を計算する信頼度計算手段と、
前記得られたビット系列と前記信頼度より、受信信号系列を算出し、軟判定復号を行う手段を有することを特徴とする文書用電子透かし情報抽出装置。
【請求項2】
前記信頼度計算手段は、前記外接矩形抽出手段が文字外接矩形の抽出をすることによって得られる情報のうち、少なくとも、文字間の空白長、文字幅、文字の高さ、文字送りピッチの何れかを用いて、信頼度を計算することを特徴とする請求項1に記載の文書用電子透かし情報抽出装置。
【請求項3】
入力された文書画像の文字外接矩形を抽出する外接矩形抽出工程と、
前記入力された文書画像より、埋め込まれたビット系列を抽出する透かし抽出工程と、
前記外接矩形抽出工程で文字外接矩形の抽出をすることによって得られる情報を用いて、前記抽出されたビット系列の各ビットの信頼度を計算する信頼度計算工程と、
前記得られたビット系列と前記信頼度より、受信信号系列を算出し、軟判定復号を行う工程を有することを特徴とする文書用電子透かし情報抽出装置。
【請求項4】
前記信頼度計算工程は、前記外接矩形抽出工程で文字外接矩形の抽出をすることによって得られる情報のうち、少なくとも、文字間の空白長、文字幅、文字の高さ、文字送りピッチの何れかを用いて、信頼度を計算することを特徴とする請求項3に記載の文書用電子透かし情報抽出方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の文書用電子透かし情報抽出方法を実行するコンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムを格納し、コンピュータが読み取り可能なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項1】
入力された文書画像の文字外接矩形を抽出する外接矩形抽出手段と、
前記入力された文書画像より、埋め込まれたビット系列を抽出する透かし抽出手段と、
前記外接矩形抽出手段が文字外接矩形の抽出をすることによって得られる情報を用いて、前記抽出されたビット系列の各ビットの信頼度を計算する信頼度計算手段と、
前記得られたビット系列と前記信頼度より、受信信号系列を算出し、軟判定復号を行う手段を有することを特徴とする文書用電子透かし情報抽出装置。
【請求項2】
前記信頼度計算手段は、前記外接矩形抽出手段が文字外接矩形の抽出をすることによって得られる情報のうち、少なくとも、文字間の空白長、文字幅、文字の高さ、文字送りピッチの何れかを用いて、信頼度を計算することを特徴とする請求項1に記載の文書用電子透かし情報抽出装置。
【請求項3】
入力された文書画像の文字外接矩形を抽出する外接矩形抽出工程と、
前記入力された文書画像より、埋め込まれたビット系列を抽出する透かし抽出工程と、
前記外接矩形抽出工程で文字外接矩形の抽出をすることによって得られる情報を用いて、前記抽出されたビット系列の各ビットの信頼度を計算する信頼度計算工程と、
前記得られたビット系列と前記信頼度より、受信信号系列を算出し、軟判定復号を行う工程を有することを特徴とする文書用電子透かし情報抽出装置。
【請求項4】
前記信頼度計算工程は、前記外接矩形抽出工程で文字外接矩形の抽出をすることによって得られる情報のうち、少なくとも、文字間の空白長、文字幅、文字の高さ、文字送りピッチの何れかを用いて、信頼度を計算することを特徴とする請求項3に記載の文書用電子透かし情報抽出方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の文書用電子透かし情報抽出方法を実行するコンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムを格納し、コンピュータが読み取り可能なコンピュータ可読記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−109146(P2006−109146A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293845(P2004−293845)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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