説明

断熱カバー

【課題】断熱カバーを構成する部位同士の縫合部における断熱性能を向上させる。
【解決手段】ハウジングのスクロール部1Aを覆うカバー本体11を備え、カバー本体11は、スクロール部1Aの外周面から一側端面にわたる範囲を覆う第1部位12と、スクロール部1Aの外周面から他側端面にわたる範囲を覆う第2部位13とからなり、第1部位12と第2部位13の外周縁部同士が縫合され、第1部位12と第2部位13との縫合部21とスクロール部21Aの外周面との間に空気層20を形成するようにカバー本体11が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール部を有するハウジングに装着される断熱カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
舶用ディーゼルエンジン等の大型内燃機関に装備される排気タービン過給機では、高温となるタービンハウジングやコンプレッサハウジングに人が触れる可能性があるため、人が触れる可能性のある部分の表面温度が所定値以下となるように、断熱カバーが装着される。
【0003】
従来の断熱カバーを示すものとしては、例えば下記特許文献1がある。図5は、特許文献1に記載された断熱カバーを示す図である。断熱カバーは、ハウジングのスクロール部における周面に合わせて形成した外周部31と、スクロール部における両端面に合う渦巻状に形成した2つの端面部32,32とを縫合あるいはフォークリング等により接合して立体的なカバー本体31を形成し、各端面部32の両端部にベルト33及びバックル34をそれぞれ取付けた構成となっている。外周部31と各端面部32は、それぞれ、耐熱布からなる袋の内部に断熱材を収納した構造となっている。ハウジングへの断熱カバーの装着は、ハウジングにカバー本体31を被せ、各バックル34に対応するベルトを通して締め付けることにより行う。
【0004】
【特許文献1】特開平7−189725号公報(段落0003、図12〜14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の断熱カバーでは、カバーを構成する各部位31,32同士の縫合部には断熱材が入らず、局所的に薄くなるために、縫合部の断熱性能が他の部分(断熱材が入った部分)よりも低下し、温度が高くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、断熱カバーを構成する部位同士の縫合部における断熱性能を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するため、本発明の断熱カバーは、以下の技術的手段を採用する。
(1)本発明は、スクロール部を有するハウジングに装着される断熱カバーであって、ハウジングのスクロール部を覆うカバー本体を備え、該カバー本体は、スクロール部の外周面から一側端面にわたる範囲を覆う第1部位と、スクロール部の外周面から他側端面にわたる範囲を覆う第2部位とからなり、第1部位と第2部位の外周縁部同士が縫合され、第1部位と第2部位との縫合部と前記スクロール部の外周面との間に空気層を形成するようにカバー本体が形成されている、ことを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、スクロール部を覆うカバー本体を第1部位と第2部位とで構成したことにより、これらの縫合部とスクロール部との間に厚い空気層を形成する。この空気層は、断熱層として機能するので、縫合部の断熱性能を向上させることができる。
【0009】
(2)また、上記(1)の断熱カバーにおいて、前記縫合部は、複数列の縫目を有する。
【0010】
上記の構成によれば、縫合を強化できるので、縫合部からの熱の漏れを減らし、断熱性能を一層向上させることができる。
【0011】
(3)また、上記(1)又は(2)の断熱カバーにおいて、前記縫合部の前記スクロール部側に、周方向に延びる内側補助断熱材が配置されている。
【0012】
上記の構成によれば、内側補助断熱材により縫合部からの熱の漏れを減らすことができるので、断熱性能を一層向上させることができる。
【0013】
(4)また、上記(1)又は(2)の断熱カバーにおいて、第1部位と第2部位は、該第1部位と第2部位の外周縁部が前記カバー本体の内側に突出するように縫合されており、前記カバー本体の内側に、前記突出した部位を覆うように周方向に延びる内側補助断熱材を有する。
【0014】
上記の構成によれば、内側補助断熱材により縫合部からの熱の漏れを減らすことができるので、断熱性能を一層向上させることができる。
【0015】
(5)また、上記(1)乃至(4)のいずれかの断熱カバーにおいて、前記カバー本体の外側に、前記縫合部の外側を覆うように周方向に延びる外側補助断熱材を有する。
【0016】
上記の構成によれば、外側補助断熱材により縫合部からの熱の漏れを減らすことができるので、断熱性能を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、断熱カバーを構成する部位同士の縫合部における断熱性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0019】
図1は本発明の断熱カバーの実施形態を示す図である。図2は図1のII−II線断面図である。
【0020】
図1において、断熱カバー10はスクロール部1Aを有するハウジング1に装着されている。スクロール部1Aは、ハウジング1のうち、内部に環状空間を形成する部分である。断熱カバー10が装着されるハウジング1は、タービンハウジングのほか、コンプレッサハウジングでもよい。またハウジング1は、過給機用のタービンハウジングやコンプレッサハウジングであるのがよいが、スクロール部1Aを有する限り、その他のハウジング1にも適用可能である。
【0021】
断熱カバー10は、ハウジング1のスクロール部1Aを覆うカバー本体11を備える。図1及び図2に示すように、カバー本体11は、外周側が閉じ、内周側が開放した断面形状を有し、ハウジング1のスクロール部1Aを覆うように周方向に延びて全体がカタツムリ形状をなしている。
【0022】
また断熱カバー10は、カバー本体11の周方向の両端部が締結手段24によって締結されることで、ハウジング1に固定されるようになっている。締結手段24としては、図1に示すように、たとえば、ベルト25とバックル26とにより構成したものを適用できる。
【0023】
図2に示すように、カバー本体11は、スクロール部1Aの外周面から一側端面(図2で左側の側面)にわたる範囲を覆う第1部位12と、スクロール部1Aの外周面から他側端面(図2で右側の側面)にわたる範囲を覆う第2部位13とからなる。
【0024】
第1部位12と第2部位13は、それぞれ、断熱材(例えば、グラスウールなど)と、この断熱材14を収納する袋15とからなる。袋15は、耐熱材(例えば、ガラスクロスなど)からなる表面材15aと裏面材15bが縫合されて袋形状をなしたものである。
【0025】
第1部位12と第2部位13の外周縁部同士は縫合されており、第1部位12と第2部位13との縫合部21とスクロール部1Aの外周面との間に空気層20を形成するようにカバー本体11が形成されている。図2の構成例では、第1部位12と第2部位13は、第1部位12と第2部位13の外周縁部がカバー本体11の内側に突出するように縫合されている。
【0026】
上記のように構成された断熱カバー10によれば、スクロール部1Aを覆うカバー本体11を第1部位12と第2部位13とで構成したことにより、これらの縫合部21とスクロール部1Aの外周面との間に厚い空気層20を形成する。この空気層20は、断熱層として機能するので、縫合部21の断熱性能を向上させることができる。
【0027】
このように、縫合部21をスクロール部1Aの外周面から離れた位置に配置することで、断熱層である空気層が形成される。したがって、所望の断熱性能が得られる程度に厚い(例えば15mm〜50mm、あるいはそれ以上)空気層20が形成されるように第1部位12と第2部位13の大きさ及び縫合部21の位置を設定するのがよい。
【0028】
図2に示すように、縫合部21は複数列の縫目22を有するのが好ましい。図2の構成例では、縫合部21の縫目22は3重となっている。このように構成することにより、縫合を強化できるので、縫合部21からの熱の漏れを減らし、断熱性能を一層向上させることができる。
【0029】
また図2の構成例のように、カバー本体11の内側において、縫合部21のスクロール部1A側に、周方向に延びる内側補助断熱材23を配置するのがよい。内側補助断熱材23は、縫合や接着剤などによる接着によって、カバー本体11に固定することができる。この構成によれば、内側補助断熱材23により縫合部21からの熱の漏れを減らすことができるので、断熱性能を一層向上させることができる。
【0030】
また図2の構成例のように、カバー本体11の外側に、縫合部21の外側を覆うように周方向に延びる外側補助断熱材25を配置するのがよい。外側補助断熱材25は、縫合や接着剤などによる接着によって、カバー本体11に固定することができる。この構成によれば、外側補助断熱材25により縫合部21からの熱の漏れを減らすことができるので、断熱性能を一層向上させることができる。
【0031】
図3は、断熱カバー10の別の構成例を示す断面図である。図3において、第1部位12と第2部位13の外周縁部がカバー本体11の内側に突出するように縫合されている点は図2と同様であるが、図2の内側補助断熱材23に代えて、図3の構成例では、カバー本体11の内側に、上記の突出した部位を覆うように周方向に延びる内側補助断熱材24が配置されている。図3の構成例では、内側補助断熱材24は、上記の内側に突出した部分を覆うように湾曲した断面形状を有する。
【0032】
図3の構成例における上記以外の部分の構成は、図2の構成例と同じである。図3の構成例によっても、内側補助断熱材24により縫合部21からの熱の漏れを減らすことができるので、断熱性能を一層向上させることができる。
【0033】
図4は、断熱カバー10のさらに別の構成例を示す断面図である。図2及び図3の構成例と異なり、図4の構成例では、第1部位12と第2部位13の外周縁部がカバー本体11の外側に突出するように縫合されており、その突出した部位を覆うように周方向に延びる外側補助断熱材26が配置されている。図4の構成例では、外側補助断熱材26は、上記の外側に突出した部分を覆うように湾曲した断面形状を有する。
【0034】
図4の構成例における上記以外の部分の構成は、図2の構成例と同じである。図4の構成例によっても、外側補助断熱材により縫合部21からの熱の漏れを減らすことができるので、断熱性能を一層向上させることができる。
【0035】
なお、上記において、本発明の実施形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の断熱カバーの実施形態を示す図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】断熱カバーの別の構成例を示す図である。
【図4】断熱カバーのさらに別の構成例を示す図である。
【図5】従来の断熱カバーの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ハウジング
1A スクロール部
10 断熱カバー
11 カバー本体
12 第1部位
13 第2部位
14 断熱材
15 袋
15a 表面材
15b 裏面材
20 空気層
21 縫合部
22 縫目
23,24 内側補助断熱材
25,26 外側補助断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロール部を有するハウジングに装着される断熱カバーであって、
ハウジングのスクロール部を覆うカバー本体を備え、
該カバー本体は、スクロール部の外周面から一側端面にわたる範囲を覆う第1部位と、スクロール部の外周面から他側端面にわたる範囲を覆う第2部位とからなり、第1部位と第2部位の外周縁部同士が縫合され、第1部位と第2部位との縫合部と前記スクロール部の外周面との間に空気層を形成するようにカバー本体が形成されている、ことを特徴とする断熱カバー。
【請求項2】
前記縫合部は、複数列の縫目を有する請求項1記載の断熱カバー。
【請求項3】
前記縫合部の前記スクロール部側に、周方向に延びる内側補助断熱材が配置されている請求項1又は2記載の断熱カバー。
【請求項4】
第1部位と第2部位は、該第1部位と第2部位の外周縁部が前記カバー本体の内側に突出するように縫合されており、
前記カバー本体の内側に、前記突出した部位を覆うように周方向に延びる内側補助断熱材を有する請求項1又は2記載の断熱カバー。
【請求項5】
前記カバー本体の外側に、前記縫合部の外側を覆うように周方向に延びる外側補助断熱材を有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の断熱カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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