説明

断熱パネル

【課題】熱架橋(ヒートブリッジ)の防止及び断熱性能の維持が図れ、かつ、寿命の増大を図れるようにした断熱パネルを提供すること。
【解決手段】一対の上下面板5,6と、これら上下面板5,6の辺部間に介設される枠材7と、上下面板5,6及び枠材7にて形成される空間内に充填される断熱心材8と、上面板5の内面側に当接した状態で断熱心材8内に埋設される取付座金10と、を備える断熱パネルPにおいて、下面板6を貫通する連結ねじ20を、取付座金10の水平片14に設けられた貫通孔と連通するナット15にねじ結合して、取付座金10と下面板6を連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばクリーンルームや倉庫等の建築物の天井や壁等を構成する断熱パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えばクリーンルームや倉庫等の建築物の天井や壁を構成する断熱パネルは、一対の表面板と、両表面板の辺部に介在される枠材と、両表面板及び枠材間に形成される空間内に注入充填される例えば発泡ポリウレタンからなる断熱心材とで構成されている。
【0003】
上記のように構成される断熱パネルを天井用パネルとして使用するには、パネルを天井梁に吊持する必要がある。断熱パネルを天井梁に吊持する構造として、断熱パネルの各辺にビスによって固定される枠部材に凹部を設けておき、天井梁に取り付けられる吊持部材を枠部材の凹部に嵌合させて天井を構成する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1に記載の構造においては、断熱パネルの上下面板と枠部材とがビスによって固定され、かつ、枠部材が吊持部材に連結されているため、熱架橋(ヒートブリッジ)により断熱性能が低下する懸念がある。また、特許文献1に記載の構造においては、各パネルの枠部材に吊持部材を嵌合させるため、パネル同士の接合部(目地部)においても断熱性能が低下する問題がある。更にまた、下面板と枠部材を固定するビスは間隔をおいて複数必要となるため、複数のビスが室内側に露呈し、美観を損ねる問題もある。
【0005】
一方、別の天井構造として、断熱パネルに取付強度を持たせるために、断熱パネルの一方の表面板である上面板の内面に当接した状態で断熱心材内に埋設される取付座金を備え、天井梁に取り付けられる連結金具に設けられたフランジを断熱パネルの上面板の表面に当接した状態で、フランジを貫通する連結ボルトを取付座金にねじ結合することで、天井を構成する構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
上記特許文献2に記載の構造においては、取付座金は上面板に当接するが断熱心材内に埋設されているため、熱架橋(ヒートブリッジ)を防止することができる利点がある。また、特許文献2に記載の構造においては、断熱パネルの枠材に互いに嵌合可能な係合凹条と係合凸条を形成することで、パネルの接合部(目地部)の断熱性の維持が図れ、更にまた、パネルの他方の表面板である下面板の表面にはビスの頭部が露呈しないので、室内側の美観の向上が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−279750号公報
【特許文献2】特開2009−84782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の断熱パネルにおいては、下面板は断熱心材と密着しているが、経年変化により下面板と断熱心材の密着性が低下し、下面板が剥離する虞がある。下面板が剥離すると、パネル自体の断熱性能が低下すると共に、パネルの接合部(目地部)の断熱性の維持が図れない懸念がある。
【0009】
この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、熱架橋(ヒートブリッジ)の防止及び断熱性能の維持が図れ、かつ、寿命の増大を図れるようにした断熱パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、この発明の断熱パネルは、一対の表面板と、これら表面板の辺部間に介設される枠材と、上記両表面板及び枠材にて形成される空間内に充填される断熱心材と、上記一方の表面板の内面側に当接した状態で上記断熱心材内に埋設される取付座金と、を備える断熱パネルであって、上記取付座金と上記他方の表面板とが連結部材を介して連結されている、ことを特徴とする。
【0011】
このように構成することにより、一方の表面板の内面側に当接した状態で断熱心材内に埋設される取付座金と他方の表面板とが連結部材を介して連結されているので、経年変化によって断熱心材と他方の表面板との密着性が低下しても他方の表面板の剥離を阻止することができる。
【0012】
この発明において、上記連結部材を、上記他方の表面板を貫通して上記取付座金に設けられた上記表面板と略平行な水平片にねじ結合する連結ねじにて形成することにより、取付座金と他方の表面板とを簡単かつ確実に連結することができる。
【0013】
また、この発明において、上記連結部材を、一端が上記取付座金に連結され、他端が上記他方の表面板における上記枠材側の端部に連結されるワイヤにて形成することにより、取付座金と他方の表面板とをパネル内に埋設されるワイヤによって連結することができる。
【0014】
また、この発明において、上記取付座金は、上記一方の表面板の内面側に当接する第1の水平片と、上記第1の水平片の一端から屈曲する起立片と、上記起立片の他端から屈曲し、かつ、上記他方の表面板の内面側に当接する第2の水平片とからなり、上記第2の水平片と上記他方の表面板とが連結部材を介して連結されるようにしてもよい。
【0015】
また、この発明において、上記取付座金は、上記一方の表面板又は上記他方の表面板の内面側に当接する水平基片と、上記水平基片と反対方向に延在する水平連結片とからなる断面クランク状に形成され、上記取付座金の両水平連結片同士が座金用連結部材を介して連結され、上記水平基片と上記他方の表面板とが連結部材を介して連結されるようにしてもよい。この場合、上記取付座金の水平基片と上記一方の表面板の内面及び上記他方の表面板の内面との間、又は、上記取付座金の水平連結片と上記座金用連結部材との間に、断熱部材を介設する方が好ましい。
【0016】
また、この発明において、上記連結部材は、一端が上記取付座金に設けられた係止受け部に係止し、他端に上記表面板と略平行な水平片を有する補助連結部材と、上記他方の表面板を貫通して上記補助連結部材の水平片にねじ結合される連結ねじとで構成されるようにしてもよい。
【0017】
また、この発明において、上記一方の表面板の内面と上記取付座金との間に断熱部材を介設する方が好ましい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、一方の表面板の内面側に当接した状態で断熱心材内に埋設される取付座金と他方の表面板とが連結部材を介して連結することにより、熱架橋(ヒートブリッジ)の防止及び断熱性能の維持が図れ、かつ、経年変化によって断熱心材と他方の表面板との密着性が低下しても他方の表面板の剥離を阻止することができるので、断熱パネルの寿命の増大を図ることができる。
【0019】
また、この発明によれば、一方の表面板の内面と取付座金との間に断熱部材を介在するか、あるいは、取付座金の水平基片と一方の表面板の内面及び他方の表面板の内面との間、又は、取付座金の水平連結片と座金用連結部材との間に、断熱部材を介在することにより、更に熱架橋(ヒートブリッジ)の防止及び断熱性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係る断熱パネルを天井構造に使用した状態の断面図である。
【図2】図1のI−I線に沿う断面図である。
【図3】この発明に係る断熱パネルの第1実施形態を示す要部断面図である。
【図4】第1実施形態における取付座金の一部を示す斜視図である。
【図5】この発明に係る断熱パネルの第2実施形態を示す要部断面図である。
【図6】第2実施形態における取付座金の一部を示す断面斜視図である。
【図7】この発明に係る断熱パネルの第3実施形態を示す要部断面図である。
【図8】この発明に係る断熱パネルの第4実施形態の使用状態を示す断面図である。
【図9】図8のII−II線に沿う断面図である。
【図10】この発明に係る断熱パネルの第5実施形態の使用状態を示す断面図(a)、(a)のIII部拡大断面図(b)及び(a)のIV部拡大断面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係る断熱パネルを天井構造に用いた場合について説明する。
【0022】
断熱パネルP(以下にパネルPという)は、図1及び図2に示すように、一対の表面板5,6(以下に上面板5,下面板6という)と、上下面板5,6の辺部間に介設される枠材7と、上下面板5,6と枠材7とで形成される空間内に注入充填される例えば発泡ポリウレタン等の発泡性の断熱心材8と、パネルPの所定の部位例えば角部に配置され、上面板5の内面側に当接すると共に、一端部が断熱心材8内に埋設される取付座金10とを備えている。この場合、取付座金10と下面板6とは後述する連結部材である連結ねじ20を介して連結されている。
【0023】
上下面板5,6は、例えばアルミニウム合金によって一定規格の大きさの薄板状に形成されており、各辺には対向する上下面板5,6に向かって垂直に折曲される端部折曲片5a,6aが形成されている。
【0024】
上記枠材7は、図1に示すように、接合される一方のパネルPの上下面板5,6の辺部間に、その長手方向に沿って略断面台形状に形成される係合凸条7aと、接合される他方のパネルPの上下面板5,6の辺部間に、上記係合凸条7aと嵌合(係合)し得る断面が略逆台形状の係合凹条7bが形成されている。これら枠材7の係合凸条7a及び係合凹条7bの両端には、上下面板5,6に対して垂直に延在すると共に、上下面板5,6の端部折曲片5a,6aが嵌合可能な嵌合溝7cを有する垂直片7dが連続的に形成されている。また、上記垂直片7dの端部から上下面板5,6に対して平行に屈曲されて上下面板5,6の内面に当接する水平片7eが連続的に形成されている。なお、上記枠材7は、例えば合成樹脂製の押出形材や射出成形材にて形成されている。
【0025】
なお、隣接する枠材7同士は、例えば、合成樹脂製の射出成形材にて形成されるコーナー材(図示せず)によって連結されている。
【0026】
一方、上記取付座金10は、図1及び図3において上方の上面板5の内面に例えば発泡ポリスチレンフォーム等の合成樹脂製の板状断熱部材30を介して当接される矩形状の水平基片12と、この水平基片12の一辺すなわち枠材7に隣接しない辺からパネルPの厚さ方向(パネルの内方)に屈曲して延設される起立片13と、この起立片13の先端から水平基片12と反対側に上下面板5,6に対して平行に屈曲して延設される水平片14とで一体に形成されている。この場合、起立片13は水平基片12に対して垂直に屈曲されているが、傾斜をもたせてもよい。
【0027】
上記水平基片12の中央部には取付孔(図示せず)が設けられ、下面には取付孔に連通する取付ねじ受け部11が固着されている。この取付ねじ受け部11は例えばナットあるいはバーリング加工された取付孔に刻設された雌ねじ部にて形成されている。また、水平片14には、この水平片14の幅方向に適宜間隔をおいて複数例えば3固の貫通孔14aが穿設されており、その中の一つの中央の貫通孔14aに連通するナット15が水平片14の上面に固着されている。このナット15に連結部材である連結ねじ20がねじ結合されるようになっている。この場合、ナット15に代えて貫通孔14aをバーリング加工し、雌ねじを刻設したものであってもよい。なお、その他の2固の貫通孔14aは、パネルPを作製する際に注入充填される断熱心材8が入り込むことで、取付座金10と断熱心材8との密着性の向上を図っている。
【0028】
連結ねじ20は、図1ないし図4に示すように、円弧状曲面にて形成される頭部20aを有しており、下面板6に設けられた取付孔(図示せず)を貫通して取付座金10の水平片14に固着されたナット15にねじ結合される。このように連結ねじ20によって取付座金10と下面板6とが連結されることによって、断熱心材8と下面板6との密着を強固にすることができる。
【0029】
上記のように構成されるパネルPを作製するには、まず、上面板5の辺部に枠材7を枠組みし、両面粘着テープを介して上面板5の内面に板状断熱部材30を介設して取付座金10の水平基片12を仮接着する。次に、下面板6を組み付けした後、下面板6に設けられた取付孔(図示せず)を介して貫通する連結ねじ20を取付座金10の水平片14に設けられたナット15にねじ結合する。このようにして、複数のパネルを定盤及びスペーサを介して平積みし、平積みされた各パネルの上面板5及び下面板6と枠材7によって形成された空間内に、枠材7に設けられた注入口から断熱心材8を注入・充填して断熱パネルを作製する。この際、断熱心材8は、取付座金10の貫通孔14aを流れて、取付座金10の起立片13と水平片14に均一に接触する。
【0030】
次に、この発明に係るパネルPを用いた天井構造について説明する。天井構造は、図1及び図2に示すように、図示しない躯体(天井スラブ)から吊り下げられる吊りボルト1と吊り金具2によって吊持される天井梁3に、連結金具4を介してパネルPが取り付けられている。この場合、天井梁3は、例えばアルミニウム合金製の押出形材にて形成され、図1に示すように、断面がC字状に形成されている。
【0031】
上記連結金具4は、例えばアルミニウム合金製の押出形材にて形成され、図1及び図2に示すように、天井梁3を外側からコ字状に囲むようにして取り付けられ、下側フランジ部4aの下面に当接するパネルPに設けられた取付座金10に設けられた上記取付ねじ受け部11にねじ結合される連結ボルト9aによって固定されるようになっている。また、連結金具4の壁部と天井梁3の垂直片とは、固定ねじ9bによって固定されている。なお、天井梁3の下面とパネルPの上面板5との当接部の周縁部には、シール部材(図示せず)が装填され、気水密性の維持が図られている。また、隣接するパネルPは、各パネルPの枠材7に設けられた係合凸条7aと係合凹条7bが嵌合されると共に、両枠材7a間に介在される断熱パッキン7pによって接合されている。
【0032】
上記のように構成される天井構造に使用されるパネルPによれば、上面板5の内面側に当接した状態で断熱心材8内に埋設される取付座金10と、下面板6とが連結ねじ20を介して連結されているので、長期間の使用における室内外の温度変化等の経年変化によって断熱心材8と下面板6との密着性が低下しても下面板6がパネルPから剥離するのを阻止することができる。また、取付座金10は下面板6とは連結ねじ20によって連結するが、上面板5との間に板状断熱部材30を介して当接しているので、室内外の熱架橋(ヒートブリッジ)の防止及び断熱性能の維持が図れる。また、連結ねじ20は、パネルPの4箇所の角部に配置された取付座金10にねじ結合されるので、パネルPの下面には4固の連結ねじ20の頭部20aのみが露出するが、全体の美観が損なわれることはない。
【0033】
上記実施形態では、取付座金10がクランク状に形成される場合について説明したが、取付座金10に代えて別の形態の取付座金を使用してもよい。
【0034】
例えば、図5及び図6に示すように、パネルPAの一部を構成する取付座金10Aを、上面板5の内面側に当接する第1の水平片41と、第1の水平片41の一端から屈曲する起立片43と、起立片43の他端から屈曲し、かつ、下面板6の内面側に当接する第2の水平片42とからなるコ字状に形成し、第2の水平片42と下面板6とを連結ねじ20(連結部材)を介して連結するようにしてもよい。この場合、取付座金10Aにおける第1の水平片41と上面板5の内面との間、及び第2の水平片42と下面板6の内面との間に、それぞれ上記板状断熱部材30が介設されている。このように、取付座金10Aと上面板5及び下面板6との間に板状断熱部材30を介設することにより、パネルPAの上下面板5,6間の熱架橋(ヒートブリッジ)の防止及び断熱性能の向上を図ることができる。
【0035】
なお、取付座金10Aは、第1の水平片41の中央部に取付孔(図示せず)を設けられており、第1の水平片41の下面に、取付孔と連通する例えばナット、あるいはバーリング加工された貫通孔に刻設される雌ねじ部からなる取付ねじ受け部11が固着されている。また、第2の水平片42の中央部に取付孔(図示せず)を設けられており、第2の水平片42の上面に、取付孔と連通するナット15が固着されており、このナット15に連結ねじ20がねじ結合されている。なお、起立片43には、取付座金10Aと断熱心材8との密着性の向上を図るために、3固の貫通孔44が設けられている。この場合、ナット15に代えて貫通孔44をバーリング加工し、雌ねじを刻設したものであってもよい。
【0036】
また、別の実施形態として、図7に示すように、パネルPBは、上面板5又は下面板6の内面側に当接する水平基片51と、水平基片51の一端から屈曲する起立片52を介して水平基片51と反対方向に延在する水平連結片53とからなる断面クランク状に形成される2固の取付座金10Bを備え、両取付座金10Bの両水平連結片53同士が座金用連結部材である座金連結ねじ20とナット55を介して連結し、一方の取付座金10Bの水平基片51と下面板6とを連結ねじ20(連結部材)を介して連結する構造としてもよい。この場合、パネルPBの上下面板5,6間の熱架橋(ヒートブリッジ)の防止及び断熱性能の向上を図るために、一方の取付座金10Bの水平連結片53と座金連結ねじ54との間に、上記板状断熱部材30と同様の材質の断熱部材31が介設されている。
【0037】
なお、この実施形態において、ナット55に代えて貫通孔をバーリング加工し、雌ねじを刻設したものであってもよく、また、連結ねじ20とナット55に代えてリベットのかしめ処理によって両取付座金10Bの両水平連結片53同士を連結してもよい。
【0038】
この場合、一方の取付座金10Bの上面板5の内面側に当接する水平基片51の中央部に取付孔(図示せず)を設けられており、水平基片51の下面に、取付孔と連通する例えばナットからなる取付ねじ受け部11が固着されている。また、他方の取付座金10Bの水平基片51の中央部に取付孔(図示せず)を設けられており、水平基片51の上面に、取付孔と連通するナット15が固着されており、このナット15に連結ねじ20がねじ結合されている。この場合、上記取付ねじ受け部11とナット15に代えて貫通孔をバーリング加工し、雌ねじを刻設したものであってもよい。
【0039】
上記のように構成されるパネルPBを作製するには、まず、上面板5の辺部に枠材7を枠組みし、両面粘着テープを介して上面板5の内面に一方の取付座金10Bの水平基片51を仮接着する。次に、一方の取付座金10Bの水平連結片53と他方の取付座金10Bの水平連結片53同士を、上記断熱部材31を介して座金連結ねじ54とナット55で連結する。次に、他方の取付座金10Bに下面板6を組み付けした後、下面板6に設けられた取付孔(図示せず)を介して貫通する連結ねじ20を他方の取付座金10Bの水平基片51に設けられたナット15にねじ結合する。このようにして、複数のパネルを定盤及びスペーサを介して平積みし、平積みされた各パネルの上面板5及び下面板6と枠材7によって形成された空間内に、枠材7に設けられた注入口から断熱心材8を注入・充填して断熱パネルを作製する。
【0040】
上記のように構成される2個の取付座金10Bを備える構造において、起立片52を上記第1実施形態の取付座金10の起立片13より若干短い寸法に形成し、両取付座金10Bの水平連結片53同士を座金連結ねじ54とナット55によって調整可能に連結することができる。したがって、この構造によれば、異なる厚さのパネルに対応させて取付座金10Bを使用することができる。
【0041】
上記実施形態では、連結部材が下面板6を貫通して取付座金10,10A,10Bにねじ結合される連結ねじ20のみによって形成される場合について説明したが、連結部材を別の形態にしてもよい。
【0042】
例えば、図8及び図9に示すように、パネルPCの一部を構成する連結部材20Aを、一端が上面板5の内面側に当接される取付座金10Cに設けられた係止受け部25に係止し、他端に上下面板5,6と略平行な連結用水平片21を有する補助連結部材20Bと、下面板6を貫通して補助連結部材20Bの連結用水平片21にねじ結合される連結ねじ20とで構成してもよい。
【0043】
この場合、取付座金10Cは、上面板5の内面に上記板状断熱部材30を介して当接される矩形状の水平基片22と、この水平基片22の一辺すなわち枠材7に隣接しない辺からパネルPの厚さ方向(パネルの内方)に屈曲して延設される起立片23と、この起立片23の先端から水平基片22と反対側に上下面板5,6に対して平行に屈曲して延設される水平片24と、水平基片22の他辺すなわち枠材7に隣接する辺部の下面において枠材7側に開口する段付き凹状の係止受け部25とが一体に形成されている。なお、水平片24には、この水平片24の幅方向に適宜間隔をおいて複数例えば3固の貫通孔24aが穿設されている。これら貫通孔24aに、パネルPCを作製する際に注入充填される断熱心材8が入り込むことで、取付座金10Cと断熱心材8との密着性の向上を図っている。
【0044】
また、補助連結部材20Bは、垂直基片26と、垂直基片26の一端(上端)から直交状に屈曲されて上記係止受け部25に係止(嵌合)される係止用水平片27と、垂直基片26の他端(下端)から係止用水平片27と平行に屈曲され、中央部にねじ孔28が設けられた連結用水平片21とが一体に形成されている。この補助連結部材20Bは、例えばアルミニウム合金製の押出形材にて形成されている。
【0045】
上記のように構成される連結部材20Aを用いるパネルPCを作製するには、まず、上面板5の辺部に枠材7を枠組みし、予め補助連結部材20Bを係止した取付座金10Cの水平基片22を、両面粘着テープを介して上面板5の内面に板状断熱部材30を介設して仮接着する。次に、下面板6を組み付けした後、下面板6に設けられた取付孔(図示せず)を介して貫通する連結ねじ20を補助連結部材20Bの連結用水平片21に設けられたねじ孔28にねじ結合する。このようにして、複数のパネルを定盤及びスペーサを介して平積みし、平積みされた各パネルの上面板5及び下面板6と枠材7によって形成された空間内に、枠材7に設けられた注入口から断熱心材8を注入・充填して断熱パネルを作製する。この際、断熱心材8は、取付座金10Cの貫通孔24aを流れて、取付座金10Cの起立片23と水平片24に均一に接触する。
【0046】
上記のように構成される補助連結部材20Bを用いることにより、取付座金10Cの水平基片22の一端側に設けられる水平片24と、水平基片22の他端側に係止される補助連結部材20Bとが断熱心材8内に埋設されるので、取付座金10CをパネルPC内に強固に取る付けることができ、天井構造の強度を更に強固にすることができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、連結部材である連結ねじ20が下面板6を貫通して取付座金10,10A又は10Bにねじ結合により連結されるか、あるいは、連結ねじ20が取付座金10Cに係止される補助連結部材20Bの連結用水平片21にねじ結合により連結される場合について説明したが、連結ねじ20に代えてワイヤ60を用いて取付座金10と下面板6とを連結する構造としてもよい。
【0048】
すなわち、図10に示すように、一端が上面板5の内面に当接される取付座金10に設けられた水平片14に連結され、他端が下面板6における枠材側の端部すなわち下面板6の端部の折曲片6aに連結されるワイヤ60によって取付座金10と下面板6とを連結する構造としてもよい。この場合、ワイヤ60と取付座金10又は下面板6との連結は、繋着あるいは図10(b)に示すように、ワイヤ60の端部にループ部61を形成し、ループ部61内に抜け止めピン62を貫挿するか、あるいは、ワイヤ60の端部に結び目を設けるなどの方法によって連結することができる。なお、図10(b)では、ワイヤ60の端部を取付座金10の水平片14に設けられた透孔14b内を貫通させ、その先端側に形成されたループ部61に抜け止めピン62を貫挿してワイヤ60と取付座金10とを連結する場合について説明している。ワイヤ60と下面板6との連結も同様に行うことができ、例えば、枠材7と下面板6の端部折曲片6aに設けられた透孔(図示せず)にワイヤ60の端部を貫通し、ワイヤ60の端部に形成されるループ部に同様に抜け止めピンを貫挿してワイヤ60と下面板6の端部折曲片6aとを連結してもよく、あるいは、図10(c)に示すように、枠材7に設けた透孔7aと下面板6の端部折曲片6aに設けた透孔6bを貫通するワイヤ60の先端に結び目63を設けて連結してもよい。
【0049】
なお、図10において、その他の部分は上記実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0050】
上記のように構成されるパネルPDを作製するには、まず、上面板5の辺部に枠材7を枠組みし、両面粘着テープを介して上面板5に、予めワイヤ60の一端が連結された取付座金10の水平基片12を仮接着する。次に、下面板6を組み付けると共に、ワイヤ60の他端を枠材7の嵌合溝7cに嵌合される下面板6の端部折曲片6aに連結する。このようにして、複数のパネルを定盤及びスペーサを介して平積みし、平積みされた各パネルの上面板5及び下面板6と枠材7によって形成された空間内に、枠材7に設けられた注入口から断熱心材8を注入・充填して断熱パネルを作製する。
【0051】
上記のように構成されるパネルPDによれば、取付座金10と下面板6の端部折曲片6aとが、断熱心材8内に埋設されるワイヤによって連結されているので、室内外の熱架橋(ヒートブリッジ)の防止及び断熱性能の維持が図れる。また、長期間の使用における室内外の温度変化等の経年変化によって断熱心材8と下面板6との密着性が低下しても下面板6がパネルPDから剥離するのを阻止することができ、万一、下面板6が剥離してもワイヤ60によって落下を防止することができる。また、ワイヤ60は下面板6の下面に露出しないので、天井面の美観の向上が図れる。
【0052】
なお、上記実施形態では、この発明に係るパネルP,PA,PB,PC,PDを天井パネルに使用する場合について説明したが、この発明に係るパネルP,PA,PB,PC,PDを壁パネルにも使用することができる。この場合は、上面板5を躯体(壁スラブ)側に配置し、下面板6を室内側に配置する構成とする。
【符号の説明】
【0053】
P,PA〜PD 断熱パネル
5 上面板(一方の表面板)
6 下面板(他方の表面板)
7 枠材
8 断熱心材
10,10A〜10C 取付座金
12 水平基片
13 起立片
14 水平片
15 ナット
20 連結ねじ(連結部材)
20A 連結部材
20B 補助連結部材
21 連結用水平片
22 水平基片
23 起立片
24 水平片
25 係止受け部
26 垂直基片
27 係止用水平片
28 ねじ孔
30 板状断熱部材
31 断熱部材
41 第1の水平片
42 第2の水平片
43 起立片
51 水平基片
52 起立片
53 水平連結片
54 座金連結ねじ(座金連結部材)
55 ナット
60 ワイヤ(連結部材)
61 ループ部
62 抜け止めピン
63 結び目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の表面板と、これら表面板の辺部間に介設される枠材と、上記両表面板及び枠材にて形成される空間内に充填される断熱心材と、上記一方の表面板の内面側に当接した状態で上記断熱心材内に埋設される取付座金と、を備える断熱パネルであって、
上記取付座金と上記他方の表面板とが連結部材を介して連結されている、ことを特徴とする断熱パネル。
【請求項2】
請求項1記載の断熱パネルにおいて、
上記連結部材は、上記他方の表面板を貫通して上記取付座金に設けられた上記表面板と略平行な水平片にねじ結合する連結ねじにて形成されている、ことを特徴とする断熱パネル。
【請求項3】
請求項1記載の断熱パネルにおいて、
上記連結部材は、一端が上記取付座金に連結され、他端が上記他方の表面板における上記枠材側の端部に連結されるワイヤにて形成されている、ことを特徴とする断熱パネル。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の断熱パネルにおいて、
上記取付座金は、上記一方の表面板の内面側に当接する第1の水平片と、上記第1の水平片の一端から屈曲する起立片と、上記起立片の他端から屈曲し、かつ、上記他方の表面板の内面側に当接する第2の水平片とからなり、上記第2の水平片と上記他方の表面板とが連結部材を介して連結されている、ことを特徴とする断熱パネル。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の断熱パネルにおいて、
上記取付座金は、上記一方の表面板又は上記他方の表面板の内面側に当接する水平基片と、上記水平基片と反対方向に延在する水平連結片とからなる断面クランク状に形成され、上記取付座金の両水平連結片同士が座金用連結部材を介して連結され、上記水平基片と上記他方の表面板とが連結部材を介して連結されている、ことを特徴とする断熱パネル。
【請求項6】
請求項1記載の断熱パネルにおいて、
上記連結部材は、一端が上記取付座金に設けられた係止受け部に係止し、他端に上記表面板と略平行な水平片を有する補助連結部材と、上記他方の表面板を貫通して上記補助連結部材の水平片にねじ結合される連結ねじとで構成されている、ことを特徴とする断熱パネル。
【請求項7】
請求項1ないし4又は6のいずれかに記載の断熱パネルにおいて、
上記一方の表面板の内面と上記取付座金との間に断熱部材が介設されている、ことを特徴とする断熱パネル。
【請求項8】
請求項5記載の断熱パネルにおいて、
上記取付座金の水平基片と上記一方の表面板の内面及び上記他方の表面板の内面との間、又は、上記取付座金の水平連結片と上記座金用連結部材との間に、断熱部材が介設されている、ことを特徴とする断熱パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−17565(P2012−17565A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153953(P2010−153953)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(303013811)日軽パネルシステム株式会社 (47)
【Fターム(参考)】