説明

断熱体及びヒータ

【課題】エアロゲル等のナノ粒子を含む断熱材を無機繊維の織布からなる外装体で包囲し、開口端縁を縫製した構成の断熱体において、外装体端縁の重ね合わせ部分からのナノ粒子の飛散を防止する。
【解決手段】ナノ粒子を含む断熱材を、耐熱性繊維の織布からなる外装体で包囲するとともに、外装体端縁の重ね合わせ部分を、繊維径5μm以下の耐熱性繊維からなるシート状物を挟んだ状態で縫製したことを特徴とする断熱体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材としてエアロゲル等のナノ粒子を用いた断熱体に関し、その発塵を防止する技術に関する。また、前記断熱体と発熱体とを備えるヒータに関する。
【0002】
従来より、断熱性能の高さから断熱材としてシリカ等のエアロゲルが用いられている。このエアロゲルは、単独で、あるいは繊維基材に充填または担持されて用いられるが、断熱性能を維持するためにバインダーを用いることなく成形される。そのため、エアロゲルが微細粒子となって脱離しやすく、無機繊維等の耐熱性繊維からなる織布で包囲して使用するのが一般的である。
【0003】
本出願人も先に、更なる発塵防止を目的として、エアロゲルを充填した繊維基材からなる断熱材を、無機繊維の織布からなる外装体で包囲し、更に外装体を無機繊維の不織布で包囲した断熱体を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−275857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなエアロゲルを含む断熱材を無機繊維の織布からなる外装体で包囲する際、外装体端縁の重ね合わせ部分を通じてエアロゲルが外部に飛散しないように前記重ね合わせ部分を密封する必要がある。従来では、重ね合わせ部分の周囲に接着剤を塗布して密封したり、重ね合わせ部分を縫製して密封している。しかし、接着剤を塗布した場合には、接着剤を塗布し硬化させるための工程が必要で、更には塗布部分が硬くなるため曲面や管体の断熱施工に適さないことが多い。また、縫製する場合は、織布同士を重ね合わせた隙間や、糸と糸の隙間を通じてエアロゲルが飛散する。
【0006】
そこで本発明は、エアロゲル等のナノ粒子を含む断熱材を無機繊維の織布からなる外装体で包囲し、開口端縁を縫製した構成の断熱体において、外装体端縁の重ね合わせ部分から等のナノ粒子の飛散を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するためには本発明は、ナノ粒子を含む断熱材を、耐熱性繊維の織布からなる外装体で包囲するとともに、外装体端縁の重ね合わせ部分を、繊維径5μm以下の耐熱性繊維からなるシート状物を挟んだ状態で縫製したことを特徴とする断熱体を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記断熱体の優れた断熱性能を利用して、該断熱体と、発熱体とを備えることを特徴とするヒータを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の断熱体は、断熱性能に優れることからナノ粒子を含む断熱材を利用するとともに、断熱材を包囲する外装体の開口端縁を、微細な耐熱性繊維からなるシート状物を挟んだ状態で縫製したため、シート状物によりナノ粒子が外部に飛散するのを防止する。また、縫製であるため、接着剤を塗布した場合のように断熱体の周縁が硬化することもなく、曲面や管体の断熱施工にも容易に対応できる。そのため、例えば、半導体製造装置のようなクリーン環境が要求される配管の断熱施工に好適である。
【0010】
また、本発明のヒータは上記断熱体と発熱体とを備えており、断熱体による優れた断熱性能により加熱状態を良好に維持でき、ナノ粒子の飛散もない。そのため、例えば、クリーン環境での配管の加熱に適している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の断熱体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のヒータの一例(テープヒータ)を示す断面図である。
【図3】本発明のヒータの他の例(マントルヒータ)を示す全体斜視図である。
【図4】マントルヒータの断面図である。
【図5】本発明のヒータの更に他の例を示す断面図である。
【図6】実施例の発塵試験の試験方法を説明するための模式図である。
【図7】実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の断熱体1の断面を示す模式図である。断熱体10は、ナノ粒子を単体で、または無機繊維を混合した混合物を圧縮して成形したもの(圧縮成形体)、ゾルを繊維基材に含浸したのちゲル化させ、溶媒を超臨界乾燥させたもの(ナノ粒子繊維体)、圧縮成形体や、ゾルをゲル化させて得たナノ粒子を含む塊を破砕して顆粒状にしたものの集合体(ナノ粒子顆粒の集合体)が挙げられる。
【0014】
ナノ粒子としては、例えば、その一次粒子の平均直径が1〜100nmの範囲のものを用いることができる。ナノ粒子の一次粒子の平均直径は、好ましくは1〜50nmであり、より好ましくは1〜25nmであり、さらに好ましくは1〜15nmであり、特に好ましくは1〜10nmである。尚、この平均直径は、ナノ粒子の真密度(g/m)をa、エアロゲルの比表面積(m/g)をSとした場合に、式「D=6/(a×S)」で算出される換算粒子直径D(m)である。例えば、シリカの真密度は2.2×103kg/m3であるため、比表面積が300m/gであるシリカエアロゲルの平均直径(換算粒子径)は約9nmと算出される。
【0015】
また、ナノ粒子の種類は、無機材料からなるナノ粒子(無機ナノ粒子)又は有機材料からなるナノ粒子(有機ナノ粒子)を用いることができ、耐熱性に優れることから無機ナノ粒子を好ましく用いることができる。無機ナノ粒子としては、例えば、金属アルコキシドを出発原料とし、アルコール中に分散させたゾルをゲル化させ、その後溶媒を超臨界乾燥などの処理で得られたシリカエアロゲルやアルミナエアロゲル、酸化チタン等の金属酸化物エアロゲル、あるいは気相法により製造される乾式シリカ(いわゆるフュームドシリカ)、又は液相法により製造される湿式シリカが挙げられる。
【0016】
圧縮成形体に含まれるナノ粒子はフュームドシリカが適しており、単体でも、繊維材料をさらに含有してもよい。圧縮成形体は、繊維材料を含有することにより、屈曲等の変形時にも亀裂の形成等による断熱性の低下を伴わない、優れた可撓性を有することができる。また、高温での熱伝導率を抑制するために、必要に応じて輻射散乱材を含有してもよい。
【0017】
こうした繊維材料としては、耐熱性に優れた無機材料からなる無機繊維(補強繊維)を好ましく用いることができる。補強繊維としては、例えば、ガラス繊維や、シリカ繊維、アルミナ繊維等のセラミックス繊維を用いることができる。こうした補強繊維の長さは、例えば1〜20mmとすることができ、3〜6mmとすることもできる。
【0018】
また輻射散乱材としては、高温での輻射率の高い炭化珪素粒子や酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ジルコニウム粒子からなる群より選択される1種又は2種以上を好ましく用いることができる。こうした輻射散乱材の大きさは、例えば平均粒子径が0.5〜10μmとすることができ、1〜5μmとすることもできる。
【0019】
圧縮成形体の優れた断熱性を活かすため、圧縮成形体はナノ粒子を主成分として含むことが好ましい。すなわち、圧縮成形体に含まれるナノ粒子の量は、例えば70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが好ましい。また、圧縮成形体の嵩密度は、例えば、100kg/m以上とすることが好ましく、120kg/m以上とすることがより好ましい。
【0020】
また、圧縮成形体が無機繊維を含む場合、その配合割合は、ナノ粒子80〜95質量%、無機繊維20〜5質量%とすることができ、ナノ粒子85〜90質量%、無機繊維15〜10質量%とすることができる。さらに、圧縮成形体が無機繊維および輻射散乱材を含む場合、その配合割合は、ナノ粒子70〜90質量%、無機繊維15〜5質量%、輻射散乱材15〜5質量%とすることができ、ナノ粒子75〜85質量%、無機繊維10〜5質量%、輻射散乱材15〜10質量%とすることができる。
【0021】
このような圧縮成形体は、25℃における熱伝導率が、0.024W/m・K以下が好ましく、より好ましくは0.020W/m・K以下、特に好ましくは0.018W/m・K以下である。また、80℃における熱伝導率は、0.035W/m・K以下が好ましく、より好ましくは0.027W/m・K以下、特に好ましくは0.025W/m・K以下である。
【0022】
圧縮成形体は、例えば、フュームドシリカと、必要に応じて無機繊維と、輻射散乱材とを含む混合物を圧縮して、例えば板状に成形して得ることができる。
【0023】
ナノ粒子繊維体の繊維基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維等の樹脂繊維、カーボン繊維、シリカ繊維やアルミナ繊維等の無機繊維の織布または不織布を用いることができるが、耐熱性に優れることから無機繊維の織布または不織布を好ましく用いることができる。中でも、無機繊維がランダムに配向した不織布を用いることにより、繊維間にナノ粒子を効果的に保持することができる。
【0024】
尚、ナノ粒子繊維体におけるナノ粒子と繊維基材との比率は、断熱性や耐熱性、低発塵性、可撓性等に応じて適宜設定することができ、例えば繊維基材100質量部に対してナノ粒子が300〜600質量部とすることができ、400〜500質量部とすることもできる。また、ナノ粒子繊維体の密度は、20〜500kg/mが好ましく、より好ましくは100〜300kg/mである。
【0025】
このようなナノ粒子繊維体は、繊維間の空隙を埋めるナノ粒子内の微細孔が空気の平均自由行程よりも小さいため、ナノ粒子繊維体内における気体分子同士の衝突を効果的に防止できるため、優れた断熱性を有する。具体的には、ナノ粒子繊維体の25℃における熱伝導率は、0.024W/m・K以下が好ましく、より好ましくは0.020W/m・K以下、特に好ましくは0.018W/m・K以下である。また、ナノ粒子繊維体の80℃における熱伝導率は、0.035W/m・K以下が好ましく、より好ましくは0.027W/m・K以下、特に好ましくは0.025W/m・K以下である。このような熱伝導率は、エアロゲルと繊維基材との比率、密度により調整することができる。
【0026】
このように、ナノ粒子繊維体は優れた断熱性を有するため、十分な断熱性を維持しつつ薄型化することができる。具体的に、ナノ粒子繊維体の厚さは、1〜100mmとすることができ、好ましくは1〜50mmであり、より好ましくは1〜20mmであり、特に好ましくは1〜10mmである。断熱材10の厚さを低減することにより、可撓性を向上させることができる。
【0027】
ナノ粒子繊維体は、例えば、ガラス繊維製フェルトにナノ粒子原料(例えば、ゾル状のシリカ前駆体)を含浸させ、ゲル化させた後、超臨界乾燥といった方法により溶媒を除去して得ることができる。こうしたナノ粒子繊維体として、アスペン社製「Pyrogel−XT」を使用することができる。
【0028】
ナノ粒子顆粒は、例えばフュームドシリカ等のナノ粒子を圧縮して成形して得られた成形体や、エアロゲル前駆体(例えば、シリカのゾル)をゲル化させた後、表面を疎水化処理し、大気圧下で溶媒を乾燥して得たシリカエアロゲル顆粒体として得ることができる。こうしたナノ粒子顆粒の大きさは例えば50〜2000μmとすることができ、100〜2000μmとすることができ、400〜2000μmとすることもできる。本発明において、こうしたナノ粒子顆粒の集合体を断熱材として使用することができる。こうしたシリカエアロゲルの顆粒としてCabot社製「TLD301」等を使用することができる。
【0029】
このようなナノ粒子顆粒は、25℃における熱伝導率が、0.024W/m・K以下が好ましく、より好ましくは0.020W/m・K以下、特に好ましくは0.018W/m・K以下である。また、80℃における熱伝導率は、0.035W/m・K以下が好ましく、より好ましくは0.027W/m・K以下、特に好ましくは0.025W/m・K以下である。
【0030】
上記の断熱材10は、耐熱性を有する外装体20で包囲される。外装体20は、ガラス繊維やシリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミックス繊維、アルミニウム繊維等の金属繊維からなる織布、あるいはフッ素樹脂や芳香族ポリアミド、ポリイミド等の耐熱性樹脂からなるシートを好ましく用いることができる。また、外装体20として、ガラス繊維からなる織布の断熱材側の面に、アルミ箔のような金属箔を接合したアルミ加工クロスを用いることもできる。
【0031】
外装体20は、図示されるように、断熱材10の上下面を挟むように配置され、その端縁の重ね合わせ部分(ここでは符号21で示す四隅)を、繊維径が5μm以下、好ましくは4μmの耐熱性繊維からなるシート状物30を挟んだ状態で縫製される。耐熱性繊維としては、耐熱性を有し、かつ繊維径5μm以下の細線に加工できることから、ガラス繊維や芳香族ポリアミド繊維等が好ましく、ガラス繊維が特に好ましい。尚、繊維径の下限は、実用上0.01μmである。
【0032】
シート状物30により、外装体端縁の重ね合わせ部分を通じて断熱材10のナノ粒子が外部に飛散するのを防止することができる。従って、シート状物30は高密度である方が好ましく、具体的には100〜250kg/mとすることが好ましい。
【0033】
尚、耐熱性繊維をシート状に成形するには、抄造法が好ましい。バインダーを用いるとシート状物30が硬くなり、断熱体全体として柔軟性が低下する。
【0034】
また、縫製は、好ましくは耐熱性繊維を有する縫い糸40を用いて行えばよいが、密に縫製しすぎると柔軟性が低下する。
【0035】
上記のように構成される本発明の断熱体1は、ナノ粒子による優れた断熱性能を有するとともに、ナノ粒子が飛散して外部を汚染することもないため、半導体製造装置のようなクリーン環境での断熱施工に好適である。また、外装体20の端縁を接着剤を用いて密封した場合のような硬化がなく、柔軟性を有するため曲面や管体の断熱施工も容易である。
【0036】
本発明はまた、上記の断熱体1を断熱層とするヒータを提供する。例えば、図2はテープヒータに応用した例を示す断面図である。図示されるテープヒータ110では、ガラス繊維不織布から成るガラス繊維テープ114の上に、発熱体であるニクロム線115が平行に配置され、ガラスヤーン等で縫製して固定されている。また、ニクロム線115の末端には、先端に電源接続用コネクタ(図示せず)が連結された電力線116が接続されている。
【0037】
ニクロム線115が配置し固定されたガラス繊維テープ114は、電力線116のみが外に取り出されるように均熱材113で包囲される。この均熱材113は、アルミ箔等の良熱伝導性材料であり、ニクロム線115からの熱をヒータ全体に伝熱するものである。また、均熱材113のニクロム線115が配置された側の面(加熱側面)の上には、熱電対117が両端と中央部に配置されており、熱伝対117は外部の温度調整手段に接続している。そして、均熱材113の裏面(非加熱側面)には、上記の断熱体1からなる断熱層112が積層され、全体がPTFEフィルム111で包囲されている。尚、電力線116は、PTFEフィルム111の開口118から取り出される。
【0038】
また、図3(全体斜視図)、図4(断面図)に示すようなマントルヒータに応用することもできる。マントルヒータは管体に装着して加熱する装置であり、ここでは直管220に装着されるマントルヒータ200を示している。
【0039】
マントルヒータ200は、外層材210と内層材230との間に、発熱体300を取り付けた無機繊維製シート303と不燃難燃繊維製シート400が介在され、これら構成部材211は、一体に、あるいは単に重ね合わせて積層状に構成されている。外層材210及び内層材230は、PTFE、テトラフルオロエチレン−パーフォルオアルコキシエチレン共重合体(PFT)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケルトン、ポリフタエミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリメチルペンテン等の耐熱性の樹脂を円筒状に成形したものである。
【0040】
発熱体300は、図4に示すように、断熱クロス301に絶縁被覆された発熱線302を無機繊維製シート303のガラスクロスに縫い糸304で縫い付けられたものである。また、発熱線302には、リード線306を介して電源接続用コネクタ307が取り付けられている。そして、発熱体300と外層材210との隙間に、上記断熱体1からなる断熱層400が配設される。
【0041】
このような構成のマントルヒータ200を直管220に被覆させるには、直管220の径に対応させて円筒状のマントルヒータ200を、スリット205を拡げて被覆させた後、接合部201,202を当接させて、面ファスナー206等を介して固定すればよい。
【0042】
また、ヒータとして図5に示す構成とすることができる。図示されるヒータは、図1に示した断熱体1の内部に発熱体500を配置したものであり、断熱材10と発熱体500とを積層して外装体20で挟み、外装体20の重ね合わせ部分21でシート状物30を挟んだ状態で縫製して得られる。尚、発熱体500は、図4に示したような、断熱クロスに発熱線を縫い付けたもの等を使用できる。
【0043】
本発明のヒータは、上記断熱体1による優れた断熱性を有するとともに、外部汚染もないため、半導体製造装置のようなクリーン環境が要求される装置や配管を加熱するのに好適である。
【実施例】
【0044】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0045】
(試験体の作製)
繊維径が0.8〜3μmの微細ガラス繊維を抄造してなる、密度150kg/mで厚さ1.2mmのシートA(実施例)、繊維径が5〜10μmのガラス繊維を抄造してなる、密度120kg/mで厚さ1.2mmのシートB(比較例)、繊維径が4〜6μmのロックールを抄造してなる、密度215kg/mで厚さ2.2mmのシートC(比較例)を用意した。
【0046】
また、断熱材としてエアロゲル繊維体(アスペン社製「Pyrogel−XT」)の成形体を用意し、外装体としてアルミ加工クロスを用意した。そして、アルミ箔が断熱材側となるようにして外装体で断熱材を挟み、端縁の重ね合わせ部分に上記のシートA〜Cを挟んだ状態で縫製して試験体A〜Cとした。また、比較のために、シートA〜Cを挟まずに、アルミニウム加工クロスの重ね合わせ部分を直接縫製して試験体Dとした。
【0047】
(発塵試験)
図6に示すように、クリーンブース内の略中央に試験体を置き、その周囲にスペーサを配置した。そして、試験体の上面に押圧板を載置し、厚さ当初の70%になるまで圧縮した。クリーンブース内にはパーティクルカウンタが配置されており、圧縮直後1分間にわたり、クリーンブース内のパーティクル数を測定した。また、参考のために、試験体を置く前のクリーンブースのパーティクル数(ブランク)も測定した。尚、試験は5回行い、その平均を求めた。
【0048】
結果を図7に示す。パーティクルは、試験体のエアロゲルに由来するものと、クリーンブース内に存在する他の粒子(例えば、アルミニウム加工クロスに含まれる酸化チタン)であるが、エアロゲルに由来する粒子は他の粒子に比べると小径であるため、より小径のパーティクルの数を比較すればよい。図示されるように、本発明に従い微細ガラス繊維製のシートAを挟んで縫製した試験体Aは、シートB、Cを挟んで縫製した試験体B、Cに比べてもエアロゲルに由来する粒子の飛散を防いでいることがわかる。
【符号の説明】
【0049】
1 断熱体
10 断熱材
20 外装体
30 シート状物
40 縫い糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子を含む断熱材を、耐熱性を有する外装体で包囲するとともに、外装体端縁の重ね合わせ部分を、繊維径5μm以下の耐熱性繊維からなるシート状物を挟んだ状態で縫製したことを特徴とする断熱体。
【請求項2】
シート状物を形成する耐熱性繊維がガラス繊維であることを特徴とする請求項1記載の断熱体。
【請求項3】
外装体が、断熱材側にアルミ箔を積層したアルミ加工クロスまたはフッ素樹脂からなるシートであることを特徴とする請求項1または2記載の断熱体。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の断熱体と、発熱体とを備えることを特徴とするヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−145204(P2012−145204A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6042(P2011−6042)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】