説明

断熱内戸

【課題】取り付け及び取り外しが容易で、且つ気密性の確保に有効な断熱内戸を提供する。
【解決手段】断熱内戸1は、建物の開口部3に嵌め込まれる第1の断熱パネル5、第1の断熱パネル5から見付方向に張り出す張出部6aを有する第2の断熱パネル6、外壁2の開口部3を画成する内周面2cと第1の断熱パネル5との隙間を気密に封止する隙間テープ8を備えている。隙間テープ8は、第1の断熱パネル5と外壁2の内周面2cとの間に配置された弾性変形部材8aを有し、弾性変形部材8aは、第1の断熱パネル5側において接着層8bを介し第1の断熱パネル5に接着固定され、外壁2の内周面2c側において内周面2cに直接に当接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の窓部などの建物開口部に取り付けられる断熱内戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、例えば特開平11−324526号公報がある。この公報に記載された断熱内戸は、合成樹脂製の敷居レールと、レールに嵌め込まれた断熱引戸とを備えている。そして、断熱引戸によって室内の温かい空気が窓ガラス等に触れるのを遮断することにより、室内外の温度による結露の発生を防止する。
【特許文献1】特開平11−324526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した従来の断熱内戸では、断熱内戸の開閉のためにレールを取り付ける必要があるので、新たに内装工事が必要となり、取り付け及び取り外しのための作業負担が非常に大きい。特に、建物の躯体側にも施工する必要が生じるので、賃貸住宅の場合は気軽に取り付けることはできなかった。また、引戸を使用して断熱内戸の開閉を行うため、閉じた状態で隙間が生じ易い。その結果、気密性を確保するのが難く、結露が発生し易い室内環境を形成してしまうおそれがあった。
【0004】
本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、取り付け及び取り外しが容易で、且つ気密性の確保に有効な断熱内戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る断熱内戸は、建物の外壁に設けられた開口部に取り付けられる断熱内戸であって、開口部に嵌め込まれる嵌合部を有する断熱パネルと、外壁の開口部を画成する内周面と断熱パネルの嵌合部との隙間を気密に封止する気密封止部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る断熱内戸では、開口部を形成する外壁の内周面に嵌め込まれる嵌合部を有する断熱パネルを備えるので、嵌合部を外壁の開口部に嵌め込むことにより断熱内戸を容易に開口部に取り付けることができると共に、開口部から断熱パネルを容易に取り外すことができる。また、外壁の開口部を画成する内周面と断熱パネルの嵌合部との隙間を気密に封止する気密封止部を備えるので、この気密封止部が嵌合部と外壁の内周面との隙間を気密に封止することにより、断熱パネルの嵌合部と外壁の内周面との隙間を生じ難く、断熱内戸の気密性を確保し易くなる。
【0007】
本発明に係る断熱内戸において、外壁は、室内側の内面と屋外側の外面とを有し、断熱パネルは、断熱パネルから見付方向に張り出すと共に外壁の室内側の内面に突き当てられる張出部を有することが好適である。ここで、断熱パネルが外壁の室内側の内面に突き当てられるとは、外壁の室内側の内面より室内側に張り出している開口木枠等に突き当てられる場合も含む。
【0008】
この場合にあっては、張出部が外壁の室内側の内面に突き当たるまで、断熱パネルを押し込むように嵌め込むことで断熱パネルの位置を簡単に決めることができる。また、断熱内戸を開口部から取り外す際に、例えばこの張出部を掴んで引っ張ることにより、簡単に取り外すことができる。
【0009】
本発明に係る断熱内戸において、気密封止部は、断熱パネルの嵌合部と外壁の内周面との間に配置され、且つ弾性変形可能な弾性変形部材を有し、弾性変形部材は、断熱パネルの嵌合部と外壁の内周面とに当接し、且つ嵌合部にのみ接着されることが好適である。
【0010】
この場合にあっては、弾性変形部材が弾性変形をすることにより、断熱パネルの嵌合部と外壁の内周面との隙間を埋めるので、断熱内戸の気密性を確保し易くなる。また、弾性変形部材における外壁の内周面側は接着性を有していないので、断熱パネルを取り外す際に、取り外す作業が簡単に行うことができ、しかも外壁の内周面にダメージを与えることがない。
【0011】
本発明に係る断熱内戸において、張出部の外周縁を被覆する被覆部を更に備えることが好適である。
【0012】
この場合にあっては、張出部の外周縁を保護することができる。
【0013】
本発明に係る断熱内戸において、被覆部は樹脂材料により形成されていることが好適である。
【0014】
この場合にあっては、金属製の被覆部と比べて熱伝導率が低いので、被覆部の断熱効果を高めることができる。
【0015】
本発明に係る断熱内戸において、開口部には窓部または扉部が設置され、断熱パネルは、窓部または扉部の高さ方向に沿って並ぶ複数の断熱ユニットに分割されていることが好適である。
【0016】
この場合にあっては、必要に応じて複数に分割された断熱ユニットのうち一部を外すことにより、採光を確保ことができ、断熱内戸の適用性を高めることができる。
【0017】
本発明に係る断熱内戸において、複数の断熱ユニットの少なくとも一部は、開口部の最下部を含む領域に嵌め込まれることが好適である。
【0018】
この場合にあっては、採光を確保することができると共にダウンドラフトの発生を軽減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、取り付け及び取り外しが容易で、且つ気密性の確保に有効な断熱内戸を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照し本発明に係る断熱内戸の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明に係る断熱内戸を開口部に取り付けた状態を示す分解斜視図であり、図2は開口部に取り付けられた断熱内戸を示す縦断面図である。本実施形態に係る断熱内戸1は、建物の外壁2に設けられた開口部3に取り付けられ、冷たい外気の室内への侵入を防止し、快適な室内環境を改善するものである。
【0022】
外壁2は、例えばコンクリートから形成され、室内側の内面2aと屋外側の外面2bとを有する。開口部3は、外壁2の内周面2cにより画成されている。開口部3の屋外側には、窓部4が設置され、開口部3の室内側には、断熱内戸1が窓部4と対向するように開口部3に取り付けられている。そして、断熱内戸1は、開口部3に嵌め込まれる第1の断熱パネル(嵌合部)5と、第1の断熱パネル5より室内側に配置される第2の断熱パネル6とを備えて構成されている。
【0023】
第1の断熱パネル5と第2の断熱パネル6とは、優れた断熱効果を有するフェノールフォームからなり、矩形薄板状に形成されている。この第1の断熱パネル5及び第2の断熱パネル6は、例えば両面接着テープで張り合わせることにより一体的に形成されている。
【0024】
第1の断熱パネル5は、開口部3に嵌め込み可能な大きさに形成され、一方、第2の断熱パネル6は、第1の断熱パネル5より大きめに形成され、第1の断熱パネル5の外周面から見付方向に張り出している。そして、第1の断熱パネル5の外周面から見付方向に張り出す部分は、張出部6aとなる。
【0025】
図3は、断熱内戸の要部を示す拡大図である。図3に示すように、張出部6aは、外壁2の室内側の内面2aに突き当てられている。張出部6aと室内側の内面2aとの間には、面ファスナー7が介在されている。張出部6aは、面ファスナー7を介して室内側の内面2aに当接すると共に、この面ファスナー7によって室内側の内面2aに固定されている。このようにすれば、断熱内戸1の落下を防止することができる。なお、ここでは、面ファスナー7に代えてマグネット等を用いてもよい。
【0026】
また、断熱内戸1は、外壁2の内周面2cと第1の断熱パネル5との隙間を気密に封止する隙間テープ(気密封止部)8を備えている。この隙間テープ8は、第1の断熱パネル5と外壁2の内周面2cとの間に配置され、弾性変形可能な弾性変形部材8aを有する。弾性変形部材8aは、例えば発泡ウレタンあるいは発泡ラバーから形成されている弾性発泡体である。
【0027】
弾性変形部材8aは、第1の断熱パネル5と外壁2の内周面2cとに当接し、第1の断熱パネル5にのみ接着されている。具体的には、この弾性変形部材8aは、第1の断熱パネル5側において接着層8bを介し第1の断熱パネル5に接着固定され、外壁2の内周面2c側において内周面2cに直接に当接している。
【0028】
また、断熱内戸1は、張出部6aの外周縁を被覆する被覆部9を備えている。この被覆部9は、樹脂材料からなり、張出部6aを取り囲むように枠状に形成され、張出部6aの外周縁を保護する。そして、樹脂材料からなる被覆部9を用いることによって、金属製の被覆部と比べて熱伝導率が低いので、被覆部9の断熱効果を高めることができる。
【0029】
このように構成された断熱内戸1にあっては、開口部3を形成する外壁2の内周面2cに嵌め込まれる第1の断熱パネル5を備えるので、第1の断熱パネル5を開口部3に嵌め込むことにより断熱内戸1を容易に開口部3に取り付けることができると共に、開口部3から断熱パネルを容易に取り外すことができる。
【0030】
また、外壁2の内周面2cと第1の断熱パネル5との隙間を気密に封止する隙間テープ8を備えるので、この隙間テープ8が外壁2の内周面2cと第1の断熱パネル5との隙間を気密に封止することにより、外壁2の内周面2cと第1の断熱パネル5との隙間を生じ難く、断熱内戸1の気密性を確保し易くなる。その結果、窓部4の結露の発生を防止することができると共に、室内環境を確実に改善することができ、省エネルギ効果を高めることが可能となる。
【0031】
また、第1の断熱パネルから見付方向に張り出す張出部6aを有するので、断熱内戸1を開口部3に取り付ける際に張出部6aが外壁2の室内側の内面2aに突き当たるまで、第1の断熱パネル5を押し込むように嵌め込むことで第1の断熱パネル5の嵌合位置を簡単に決めることができる。そして、断熱内戸1を開口部3から取り外す際に、例えばこの張出部6aを掴んで引っ張ることにより、簡単に取り外すことが可能となる。
【0032】
更に、隙間テープ8は、弾性変形可能な弾性変形部材8aを有するので、この弾性変形部材8aが弾性変形をすることにより、第1の断熱パネル5と外壁2の内周面2cとの隙間を埋めるので、断熱内戸1の気密性を確保し易くなる。しかも、この弾性変形部材8aにおける外壁2の内周面2c側は接着性を有していないので、第1の断熱パネル5を開口部3から取り外す際に、取り外す作業が簡単に行うことができ、外壁2の内周面2cにダメージを与えることがない。
【0033】
図1及び図2に示すように、第1の断熱パネル5及び第2の断熱パネル6は、窓部4の高さ方向に沿ってそれぞれ上部ブロック5A,6A、中部ブロック5B,6B、及び下部ブロック5C,6Cに等間隔に分割されている。そして、上部ブロック5A及び上部ブロック6Aは上部断熱ユニット10と、中部ブロック5B及び中部ブロック6Bは中部断熱ユニット11と、下部ブロック5C及び下部ブロック6Cは下部断熱ユニット12を形成する。
【0034】
そして、これらの断熱ユニット10,11,12は、例えば接着テープで互いに固定されている。一方、被覆部9は、上部断熱ユニット10、中部断熱ユニット11及び下部断熱ユニット12に対応するように、上部被覆部9A、中部被覆部9B、及び下部被覆部9Cに分割されている。
【0035】
このように上部断熱ユニット10、中部断熱ユニット11及び下部断熱ユニット12に分割されることにより、必要に応じてこれらの断熱ユニット10,11,12のうち一部を外すことが可能となる。その結果、採光を確保ことができると共に断熱内戸1の適用性を高めることができる。
【0036】
例えば図4に示すように、開口部3の最下部を含む領域には下部断熱ユニット12のみが取り付けられている。この場合にあっては、外部の光が開口部3の上部から室内に入射するので、採光を確保することができると共にダウンドラフトの発生を軽減することができる。
【0037】
また、図5に示すように、開口部3の中部および下部を含む領域には中部断熱ユニット11と下部断熱ユニット12とが取り付けられている。この場合にあっては、外部の光が開口部3の上部から室内に入射するので、採光を確保することができると共にダウンドラフトの発生を軽減することができる。
【0038】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では窓部4が装着される開口部3に断熱内戸1を取り付けることについて説明したが、本実施形態に係る断熱内戸1は、扉が装着される開口部にも適用される。
【0039】
また、上記の実施形態において、第1の断熱パネル5及び第2の断熱パネル6の材料としてフェノールフォームが挙げられているが、フェノールフォームのほか、例えばグラスウール、ロックウール、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォームなどを用いてもよい。さらに、第1の断熱パネル5及び第2の断熱パネル6の材料は異なる材料を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る断熱内戸を開口部に取り付けた状態を示す分解斜視図である。
【図2】開口部に取り付けられた断熱内戸を示す縦断面図である。
【図3】断熱内戸の要部を示す拡大図である。
【図4】分割された断熱ユニットの取り付けを示す正面図である。
【図5】分割された断熱ユニットの取り付けを示す正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…断熱内戸、2…外壁、2a…内面、2b…外面、2c…内周面、3…開口部、4…窓部、5…第1の断熱パネル(嵌合部)、6…第2の断熱パネル、6a…張出部、8…隙間テープ(気密封止部)、8a…弾性変形部材、9…被覆部、10…上部断熱ユニット、11…中部断熱ユニット、12…下部断熱ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に設けられた開口部に取り付けられる断熱内戸であって、
前記開口部に嵌め込まれる嵌合部を有する断熱パネルと、
前記外壁の前記開口部を画成する内周面と前記断熱パネルの嵌合部との隙間を気密に封止する気密封止部と、
を備えることを特徴とする断熱内戸。
【請求項2】
前記外壁は、室内側の内面と屋外側の外面とを有し、
前記断熱パネルは、前記断熱パネルから見付方向に張り出すと共に前記外壁の室内側の内面に突き当てられる張出部を有することを特徴とする請求項1に記載の断熱内戸。
【請求項3】
前記気密封止部は、前記断熱パネルの嵌合部と前記外壁の内周面との間に配置され、且つ弾性変形可能な弾性変形部材を有し、
前記弾性変形部材は、前記断熱パネルの嵌合部と前記外壁の内周面とに当接し、且つ前記嵌合部にのみ接着されることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱内戸。
【請求項4】
前記張出部の外周縁を被覆する被覆部を更に備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の断熱内戸。
【請求項5】
前記被覆部は樹脂材料により形成されていることを特徴とする請求項4に記載の断熱内戸。
【請求項6】
前記開口部には窓部または扉部が設置され、
前記断熱パネルは、前記窓部または前記扉部の高さ方向に沿って並ぶ複数の断熱ユニットに分割されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の断熱内戸。
【請求項7】
複数の前記断熱ユニットの少なくとも一部は、前記開口部の最下部を含む領域に嵌め込まれることを特徴とする請求項6に記載の断熱内戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−95976(P2010−95976A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270114(P2008−270114)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【出願人】(508314342)特定非営利活動法人多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議 (1)
【出願人】(508314467)有限会社アーバン・ファクトリー (1)
【Fターム(参考)】