説明

断熱容器

【課題】容器内部の内容物の冷却用媒体による低温保持のむらが低減され、かつ下側の内容物のつぶれを防止できる断熱容器を提供する。
【解決手段】容器は本体部11と蓋部12とから構成され、発泡樹脂板23を内包する袋状のシート材21が箱状に組み立てられている。シート材21の容器内部側にはアルミ蒸着フィルム22が設けられている。冷却用媒体を収納可能な複数の断熱性のポケット30が容器内部に配設されていて、複数の方向から容器内の内容物を冷却する。ネット部41とそのネット部の中間部分に配置されたプレート42とからなる1個以上の間仕切り部材40が、本体部11の対向する上縁部近傍から容器内部に取り外し可能に懸垂されているので、冷却用媒体の冷気が容器内部の内容物に広く接触して内容物の温度上昇を抑制するとともに内容物のつぶれが防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は断熱容器に関し、特に冷却用媒体収納ポケットと上下の間仕切り部材とを有する断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
青果物や食品などの流通においては低温流通が求められるものも多い。出荷・受入地点に低温倉庫を有し冷凍車や短時間保冷車で輸送される場合には格納容器としては通常のダンボール箱でもよいが、通常の輸送車両や長時間保冷車で輸送される場合には品質保持のために断熱容器に収納して輸送することが望ましい。長時間の輸送の場合には断熱容器内に保持温度に対応して蓄冷材やドライアイスなどの冷却用媒体を入れることが行われている。
【0003】
特許文献1には、断熱効果が大きく、空になったときには容易に小型に収納することができる折りたたみ式断熱容器が開示されている。この断熱容器では底布、左右の脇布、前布、後布、後布から延出する掩蓋片からなる外袋と、外袋の底に嵌合する底剛性板、底剛性板の両端から延出し中央部で上下に折りたたむことができる脇剛性板からなる支持体とを有し、前布と後布に剛性板が固定され、剛性板は微細な独立気泡からなる折り曲げ不可能なプラスチック発泡体である。下方の内容物が押し潰されるおそれがある場合には両側の脇剛性板の上方に鉤を設け、両側の鉤からネットを吊り下げネットの中央部に仕切り板を載せてもよいとしている。
【0004】
特許文献2には、保冷容器の蓋体の裏面に複数の蓄冷材を着脱可能に保持するロックレバーが設けられ、蓋体の内面とロックレバーとで蓄冷材を押圧保持する保冷容器が開示されている。
【0005】
特許文献3には、蓋体の裏面に裏面より凹んだ状態で嵌合面部を設け、蓄冷剤を封入した中空成形体から形成された蓄冷材の外周に嵌合面部を設け、蓋体の裏面に蓄冷材を着脱自在に装着する保冷容器が開示されている。
【0006】
特許文献4には、容器全体を二重壁構造としその二重壁構造の壁の内部に蓄冷材を充填した保冷容器が開示されている。
【特許文献1】特開2003−205939号公報
【特許文献2】特開2001−80678号公報
【特許文献3】実開平5−34171号公報
【特許文献4】実開平5−68877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されているような折りたたみ可能な保冷容器については多くの特許文献が開示されているが、例えば野菜のような比較的安価な内容物の低温流通においては保冷容器のコストの低減が求められ、産地と消費地との間の往復で使用頻度が高い場合などには折りたたみ・組み立ての手間の問題もあって折りたたみ機能を持たない保冷容器が使用されることが多い。
【0008】
青果物などの輸送では生産地や消費地における低温流通設備にも差があり、輸送時間にも長短があり、輸送手段においてもコストの問題から保冷車以外の輸送車両が使用されることが多いので、保冷容器自体が冷却機能を有することが望まれる。特許文献1の保冷容器には冷却機能が設けられていない。冷却の手段としては蓄冷材を使用することが容易であり、かつコストも低い。特許文献2〜4には蓄冷材が収納される保冷容器が開示されている。蓄冷材は連続使用時間を長くするために通常使用前に望ましい保冷温度より相当程度低温に冷却される。このため蓄冷材が直接内容物に接触すると青果物などの内容物に低温障害が発生する恐れがあるので、特許文献2、3では蓋部に蓄冷材の収納部を設けて内容物との接触を避けている。冷気は下降するので蓄冷材による冷気も内容物に向けて下降するが、内容物の間に適当の隙間が連続していないと冷気が行き渡らず、生きている青果物の場合は呼吸熱を発生するので部分的に温度が上昇するおそれがある。特許文献4では容器全体の二重壁の内部に蓄冷材が充填されているのでその問題は解決できるが、蓄冷材が充填されている容器全体をあらかじめ初期温度まで冷却する必要があり、大きな冷却設備を必要とするという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、容器内部の内容物の冷却用媒体による低温保持のむらが低減され、かつ下側の内容物のつぶれを防止できる断熱容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の断熱容器は、
内容物を低温に保持する断熱容器であって、発泡樹脂板を内包する袋状のシートが箱状に組み立てられていて、蓋部と本体部とからなる容器と、容器の内部に配設され、冷却用媒体を収納可能な断熱性のポケットと、ネット部とそのネット部の中間部分に配置されたプレートとからなり、本体部の対向する上縁部近傍からその容器内部に取り外し可能に懸垂される1個以上の間仕切り部材とを有することを特徴とする。
【0011】
ポケットは、本体部の側壁と蓋部の下面とに、それぞれ1箇所以上設けられていてもよく、本体部の側壁の間仕切り部材のプレートに対応する位置の上下にそれぞれ1箇所以上設けられていてもよく、アルミ蒸着フィルムを含む断熱性積層シートを縫製して形成されていてもよい。
【0012】
ポケットに収納される冷却用媒体は蓄冷材およびドライアイスのいずれかであってもよく、間仕切り部材の両端は、本体部の上縁近傍に面ファスナで係着されていてもよく、容器を構成するシートのその容器の内部となる面はアルミ蒸着フィルムで構成されていてもよく、内容物が青果物であってもよい。
【0013】
冷却用媒体を収納可能な複数の断熱性のポケットが容器内部に配設され、ネット部とそのネット部の中間部分に配置されたプレートとからなる1個以上の間仕切り部材が、本体部の対向する上縁部近傍から容器内部に取り外し可能に懸垂されているので、冷却用媒体の冷気が容器内部の内容物に広く接触して内容物の温度上昇を抑制するとともに下側の内容物のつぶれが防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、冷却用媒体を収納可能な複数の断熱性のポケットが容器内部に配設され、ネット部とそのネット部の中間部分に配置されたプレートとからなる1個以上の間仕切り部材が、本体部の対向する上縁部近傍から容器内部に取り外し可能に懸垂されているので、冷気の発生源が容器内に分散され、冷気の通路が確保されるので冷却用媒体の冷気が容器内部の内容物に広く接触し、内容物の温度上昇を比較的均等に抑制するという効果がある。
【0015】
また、間仕切り部材によって上部からの圧力が軽減されるので、下側の内容物の損傷が低減できるという効果がある。
【0016】
さらに、冷却用媒体として蓄冷材を用いればチルド流通品や青果物などの低温流通に使用でき、ドライアイスを用いれば冷凍食品の凍結流通用として使用できるなど広い温度範囲で利用できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態の断熱容器の蓋部を開いて間仕切り部材を取り外した状態の模式的斜視図である。図2は本発明の実施の形態の断熱容器の蓋部を開いて間仕切り部材を取り付けた状態の模式的斜視図である。図3は本発明の実施の形態の断熱容器の蓋部を閉じた状態の模式的斜視図である。図4は図3のA−A断面の断面図である。
【0018】
本発明の実施の形態の断熱容器1は、本体部11と本体部11の上部の一辺に開閉可能にシート材21で接続された蓋部12とを有する。本体部11と蓋部12とは、袋状に縫製されたシート材21と内部に挿入された板状の発泡樹脂板23をシート材21で連接して形成される。断熱容器1の内部となる部分のシート材21の表面はアルミ蒸着フィルム22となっている。蓋部12は閉じたときに本体部11の上面の外縁に整合するが、蓋部12に挿入されている発泡樹脂板23は本体部11の上面の開口部に整合する。アルミ蒸着フィルム22は内部の低温を反射するためのものであるが、必ずしも設けられなくてもよい。
【0019】
蓋部12の本体部11と接続されている辺と反対側の辺にはシート材21からなるフラップ13が形成されてフラップ13の内側面には面ファスナ15が設けられている。その面ファスナ15は蓋部12を本体部11に閉じたときに、本体部11の側面に設けられた面ファスナ15と係合して蓋部12を本体部11に固定する。
【0020】
本体部11の蓋部12取付け部の左右両側となる外側の上辺には、フラップ13が形成されており、このフラップ13の先端部近傍の内側には面ファスナ15が設けられ、蓋部12を本体部11に閉じたときに、蓋部12上面に設けられている不図示の面ファスナと係合して本体部11と蓋部12とを固定するとともに、外気の容器内部への侵入と、内部の冷気の外部への放出を防ぐことができる。
【0021】
以上、望ましい断熱容器の形態として本発明の実施の形態の断熱容器1の構成について説明したが、本発明の断熱容器はこの構成に限定されるものではなく、発泡樹脂板を内包する袋状のシートが箱状に組み立てられていて、蓋部と本体部とからなる容器であり、以下で説明する冷却用媒体収納ポケット30と間仕切り部材40とが取り付けられる構成であれば、冷却用媒体収納ポケット30と間仕切り部材40とを取り付けて本発明の断熱容器とすることができる。可能であれば折り畳み可能となっていてもよい。
【0022】
次に、本発明の断熱容器の特徴である冷却用媒体収納ポケット30と間仕切り部材40とについて詳細に説明する。冷却用媒体収納ポケット30(第1のポケット30a、第2のポケット30b、第3のポケット30c)は冷却用媒体を格納するポケットであり、本実施の形態では、蓋部12の下面に第1のポケット30aが1箇所と、本体部11の片方の側面の低い位置に第2のポケット30b、対向する側面の高い位置に第3のポケット30cの2箇所の計3組が設けられている。この取付け位置はこれに限定されるものではなく2個以上設けられればよい。蓋部12の下面には少なくとも1箇所設けることが望ましいが、本体部11の側面には同じ場所の上下に2個設けてもよいし、本体部11の幅の狭いほうの側面に設けてもよく、小型の蓄熱材を用意して小型のポケットとしてもよい。
【0023】
冷却用媒体収納ポケット30は、冷却用媒体が取り出し可能に収納できるポケット本体31と、開閉可能で閉じたときに面ファスナ等でポケット本体に固定できるポケット蓋32とを有する。冷却用媒体収納ポケット30は側面およびまたは底面を除いて断熱性積層シートが縫製されて形成され、側面側面およびまたは底面には通気ネット33が設けられている。この実施の形態では、冷却用媒体収納ポケット30の断熱容器1の内部側に面する断熱性積層シートの表面にアルミ蒸着フィルムが設けられることとしているが、なくてもよい。断熱容器1の内面とは縫着されていても、面ファスナ等で取り外し可能に取り付けられていてもよい。面ファスナを用いる場合は、断熱容器1の内部の多くの箇所に面ファスナを設け、内容物の状態に応じて適当な場所に冷却用媒体収納ポケット30を取り付けることができる。内容物と接触する面は断熱性積層シートとなっているので、内容物に冷却用媒体の温度が直接には伝わりにくく、内容物が青果物の場合、青果物の低温障害を防止することができる。冷気は側面およびまたは底面の通気ネット33を通って容器の内部に放出される。冷却用媒体として蓄冷材を用いればチルド流通品や青果物などの低温流通に使用でき、ドライアイスを用いれば冷凍食品の凍結流通用として使用でき、広い温度範囲で使用できる。いずれの場合も冷却用媒体はポケット本体31に収納できる大きさに成形されている。
【0024】
間仕切り部材40は、長方形のネット部41とネット部41の中央に配置されたプレート部42とを有し、ネット部41の長手方向の両端には本体部11の上縁部に設けられた面ファスナ43と係合する面ファスナ43が設けられている。ここでは面ファスナ43を用いているが、例えばフックを用いて懸垂してもよい。ネット部41は通気性と柔軟性があってプレート部42にかかる上の内容部の重量を保持できる材料であれば特に限定されない。プレート部42は容器の中で上部の内容物を支持できる大きさで、結露の問題からは樹脂製が望ましい。また、上下の冷気の流通のためにプレート部42に通気口が設けられていることが望ましい。実施の形態では間仕切り部材40は1個となっているが、ネット部41の長さの異なる複数の間仕切り部材40を用いて上下に複数の間仕切りを設けてもよい。それによって冷気の水平方向の流路も増加し、内容物に掛かる上からの加重も軽減される。
【0025】
低温流通で比率の大きな青果物、特にレタス、小松菜、ほうれんそうなどの葉物野菜では上述のように呼吸熱による蒸れによって生ずる品質低下が大きく、内部まで冷気を循環させることが望ましい。そのために蓄冷材の配置場所を広げるとともに間仕切り部材40を設けることで内部までの冷気の循環が促進される。
【0026】
さらに、これらの葉物野菜は殆どパッケージされていないので、断熱容器の下側の野菜は上の野菜の重みの影響を受けて押しつぶされる形となり品質が低下する可能性が大きい。間仕切り部材40を設けることで冷却効果が上がるとともに、上からの重量による品質低下も防止することができるという両面の効果がある。
【0027】
次に、本実施の形態の断熱容器の使用方法について説明する。先ず、内容物の出荷地に冷却用媒体収納ポケットを有する断熱容器1と、間仕切り部材40、冷却用媒体を準備する。間仕切り部材40は断熱容器1に収納された状態であってもよく、冷却用媒体が蓄冷材44の場合は冷却用媒体収納ポケットに収納された状態でもよい。冷却用媒体が蓄冷材44の場合、出荷予定時間に所定の低温となるように事前に冷却する。
【0028】
内容物の収納時間になると、断熱容器1の蓋部12を開いて、低温輸送の場合は冷却済の蓄熱材を、凍結輸送の場合はドライアイスを所定の冷却用媒体収納ポケット30に収納し、内容物を1段目の所定の高さまで収納する。次に、間仕切り部材40の両端の面ファスナ43を本体部11の上縁の面ファスナ43に係合させ、内容物をそのプレート部42の上に所定の高さまで収納する。複数の間仕切り部材40を使用する場合には、この作業を繰り返す。
【0029】
内容物の収納が終わると蓋部12を閉じて、フラップ13の面ファスナ15を本体部11の面ファスナ15と係合させる。次いで左右のフラップ13を蓋部12の上に畳んで面ファスナ15を蓋部12の面ファスナに係合さる。移動は本体部11の側面に設けられた取っ手14を持って行ってもよい。
【0030】
到着地の荷卸場では、断熱容器1を輸送手段から荷捌き場に下ろし、蓋部12を開いて内容物を取り出し、取り外した間仕切り部材40を本体部11内に戻し、蓋部12を閉じて次の出荷地へ輸送手段で輸送して次の内容物の収納に備える。青果物などの場合は内容物が収納された状態で小売店、あるいは加工工場まで輸送してもよい。それによって、よりよい鮮度保持を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態の断熱容器の蓋部を開いて間仕切り部材を取り外した状態の模式的斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の断熱容器の蓋部を開いて間仕切り部材を取り付けた状態の模式的斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態の断熱容器の蓋部を閉じた状態の模式的斜視図である。
【図4】図3のA−A断面の断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 断熱容器
11 本体部
12 蓋部
13 フラップ
14 取っ手
15 面ファスナ
21 シート材
22 アルミ蒸着フィルム
23 発泡樹脂板
30 冷却用媒体収納ポケット
30a 第1のポケット
30b 第2のポケット
30c 第3のポケット
31 ポケット本体
32 ポケット蓋
33 通気ネット
40 間仕切り部材
41 ネット部
42 プレート部
43 面ファスナ
44 蓄冷材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を低温に保持する断熱容器であって、
発泡樹脂板を内包する袋状のシートが箱状に組み立てられていて、蓋部と本体部とからなる容器と、
前記容器の内部に配設され、冷却用媒体を収納可能な断熱性のポケットと、
ネット部と該ネット部の中間部分に配置されたプレートとからなり、前記本体部の対向する上縁部近傍から該容器内部に取り外し可能に懸垂される1個以上の間仕切り部材と、を有することを特徴とする断熱容器。
【請求項2】
前記ポケットは前記本体部の側壁と前記蓋部の下面とに、それぞれ1箇所以上設けられている、請求項1に記載の断熱容器。
【請求項3】
前記ポケットは、前記本体部の側壁の前記間仕切り部材の前記プレートに対応する位置の上下にそれぞれ1箇所以上設けられている、請求項2に記載の断熱容器。
【請求項4】
前記ポケットは、アルミ蒸着フィルムを含む断熱性積層シートを縫製して形成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の断熱容器。
【請求項5】
前記ポケットに収納される前記冷却用媒体は蓄冷材およびドライアイスのいずれかである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の断熱容器。
【請求項6】
前記間仕切り部材の両端は、前記本体部の上縁近傍に面ファスナーで係着される、請求項1に記載の断熱容器。
【請求項7】
前記容器を構成する前記シートの該容器の内部となる面はアルミ蒸着フィルムで構成されている、請求項1に記載の断熱容器。
【請求項8】
前記内容物が青果物である、請求項1に記載の断熱容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−276817(P2007−276817A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103996(P2006−103996)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(594061964)株式会社コステム (4)
【Fターム(参考)】