説明

断熱容器

【課題】容器本体と、前記容器本体の外側に断熱用外筒体を具備する二重構造の容器で、開口部側の断熱性が優れる断熱容器を提供することにある。
【解決手段】筒状胴部11の一端に底部12を有し、他端に開口部14を有する容器本体10と、前記容器本体10の筒状胴部11を外側から覆う両端が開口している断熱用外筒体20と、からなる断熱容器1であって、前記断熱用外筒体20は容器本体の開口部側の開口縁に容器本体側に折り目22を介して少なくとも1回折り返されてなる折返し部23を有すると共に、該折り返し部24が容器本体の開口部14の下の筒状胴部外周に接触し、該折り返し部24の反対方向の端部側が容器本体10の底部側の筒状胴部外周に接合されており、容器本体10と断熱用外筒体21の間に空隙30が形成されており、前記断熱用外筒体20の折り返し部24は折り目からの垂直長さが5〜30mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種即席食品等の内容物を入れるカップ形状の容器に関するもので、さらに詳しくは、熱湯を注いで中の内容物を食する時の断熱性が優れる容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カップ形状の断熱容器としては、通常、発泡ポリスチレン製のものが多く使用されているが、廃棄時に容量が嵩張るなどの問題があり、これに代わるものとして、胴部を二重にして断熱用の空隙を設けた紙製の断熱容器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−190944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記提案されている紙製の断熱容器は、筒状側壁部の一端に底部を有し、他端にトップカール部を有する容器本体の外周に、一端にカール部を設け、他端にカール部を設けていない筒状スリーブが容器本体の筒状側壁部の外側に空間を確保しつつ、該筒状スリーブのカール部が容器本体の底部側の筒状側壁部外周に接し、他端が容器本体のトップカール部の直下の筒状側壁部外周に接着されて配置されたものであり、断熱容器のトップカール部側の筒状側壁部と外側に配置された筒状スリーブとの空隙が少なく、特に、トップカール部側の断熱性に難点があった。
【0004】
本発明の課題は、容器本体と、前記容器本体の外側に断熱用外筒体を具備する二重構造の容器で、開口部側の断熱性が優れる断熱容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る発明は、筒状胴部の一端に底部を有し、他端に開口部を有する容器本体と、前記容器本体の筒状胴部を外側から覆う両端が開口している断熱用外筒体と、からなる断熱容器であって、前記断熱用外筒体は容器本体の開口部側の開口縁に容器本体側に折り目を介して少なくとも1回折り返されてなる折返し部を有すると共に、該折り返し部が容器本体の開口部の下の筒状胴部外周に接触し、該折り返し部の反対方向の端部側が容器本体の底部側の筒状胴部外周に接合されており、容器本体と断熱用外筒体の間に空隙が形成されていることを特徴とする断熱容器である。
【0006】
本発明の請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明において、前記断熱用外筒体の折り返し部は折り目からの垂直長さが5〜30mmであることを特徴とする断熱容器である。
【0007】
本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1又は請求項2に係る発明において、前記折り返し部の下端部が対向する断熱用外筒体表面に接合されていることを特徴とする断熱容器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の断熱容器は、筒状胴部の一端に底部を有し、他端に開口部を有する容器本体と、前記容器本体の筒状胴部を外側から覆う両端が開口している断熱用外筒体と、からなる断熱容器であって、前記断熱用外筒体は容器本体の開口部側の開口縁に容器本体側に折り目を介して少なくとも1回折り返されてなる折返し部を有すると共に、該折り返し部が容器本体の開口部の下の筒状胴部外周に接触し、該折り返し部の反対方向の端部側が容器本体の底部側の筒状胴部外周に接合されており、容器本体と断熱用外筒体の間に空隙が形成されているので、優れた断熱性を保持する。断熱用外筒体の折り返し部は折り目からの垂直長さが5〜30mmであることで、容器本体と断熱用外筒体との間の空隙が形成され易くなり、また、断熱用外筒体の折り返し部の下端部が対向する断熱用外筒体表面に接合されることで、容器本体と断熱用外筒体との空隙がさらに安定して形成され、断熱性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の断熱容器を実施の形態に沿って以下に詳細に説明する。図1(a)は本発明の断熱容器の一実施形態を示す断面図であり、断熱容器(1)は、筒状胴部(11)の一端に底部(12)を有し、他端にトップカール部(13)及び開口部(14)を有する容器本体(10)と、容器本体(10)の筒状胴部(11)を外側から覆う断熱用外筒体(20)とからなっている。前記断熱用外筒体(20)は両端が開口しており、容器本体(10)のトップカール部(13)側に折り目(22)を介して容器本体(10)側に1回折り返されてなる折返し部(23)を有しており、さらに、断熱用外筒体(20)はその折り返し部(23)が容器本体(10)のトップカール部(13)の下の筒状胴部(11)外周に接触すると共に、反対方向の端部(25)側が容器本体(10)の底部(12)側の筒状胴部(11)外周に接着剤(図示せず)を介して接合されており、容器本体(10)と断熱用外筒体の(20)間に空隙(30)が形成されている。前記折返し部(23)は折り目(22)からの垂直長さがhである。なお、前記折返し部はさらに1回以上折り返されていても良い。
【0010】
図1(b)は本発明の断熱容器の他の実施形態を示す断面図であり、断熱容器(2)は、筒状胴部(11)の一端に底部(12)を有し、他端にトップカール部(13)及び開口部(14)を有する容器本体(10)と、容器本体(10)の筒状胴部(11)を外側から覆う断熱用外筒体(21)とからなっている。断熱用外筒体(21)の折り返し部(24)は先端が対向する断熱用外筒体(11)表面に接着剤(図示せず)を介して接合されており、折り目(22)からの垂直長さはhである。断熱容器(2)の場合は、断熱容器(1)と比べて、折り返し部(24)に剛性が付与でき、空隙(30)が安定して形成できて断熱性が向上する特徴を有している。
【0011】
図2(a)は本発明の断熱容器に使用する断熱性外筒体の折り返し部形状の一実施形態を示す為の部分斜視図であり、折り返し部(23)の形状は、全体がつながっている状態で折り目(22)を介して内側に一回折り返された形状である。図2(b)は本発明の断熱容器に使用する断熱性外筒体の折り返し部形状の他の実施形態を示す為の部分斜視図であり、折り返し部(23′)の形状は、先端縁は凹凸状にカットされており、各凸部の間には貫通した切り込み(40)が設けられた状態で折り目(22)を介して内側に一回折り返された形状である。図2(c)は(a)のA−A′線断面図であり、折り目(22)を介して折り返し部(23)が折り返されている。
【0012】
前記hの数値は5〜30mmの範囲が好ましく、hの数値を前記範囲にすることで、折り返し部がつぶれ難くなり、強度が強くなる。よって、使用する板紙の坪量も小さくすることが可能になる。さらには、15〜20mmの範囲が好ましく、hの数値を15〜20mmの範囲にすれば、折り返し部のつぶれ難さがさらに向上し、断熱容器を手で持ちやすくなる。5mm未満であると、空隙(30)を形成させるのが難しく、30mmを超えると、折り返しが困難である。
【0013】
前記容器本体(10)は、坪量200〜450g/m2の板紙の片面または両面に低密
度ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を積層した積層材料からなっており、前記積層材料を用いて、筒状胴部用と底部用のブランクを作成し、公知の成形法で製造する。
【0014】
前記断熱用外筒体(20、21)は、坪量200〜360g/m2の板紙からなっている。前記板紙を用いて所定形状のブランクを作成し、公知の方法で筒を作成した後に、一方の開口側を内側に折り返して製造する。
【0015】
本発明の断熱容器を具体的な実施例を挙げて以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
容器本体(10))材料として、坪量260g/m2の板紙の片面に厚さ50μmの低密度ポリエチレンを積層した積層材料を使用し、断熱性外筒体(20)の材料として、坪量270g/m2の板紙を使用して、図1(a)に示す構造で、折り返し部(23)のhの数値が5mmである本発明の断熱容器を作成した。
【実施例2】
【0017】
実施例1において、折り返し部(23)のhの数値を10mmにした以外は、同様にして本発明の断熱容器を作成した。
【実施例3】
【0018】
実施例1において、図1(b)に示す構造で、折り返し部(24)のhの数値を10mmにした以外は、同様にして本発明の断熱容器を作成した。
【0019】
以下に本発明の比較用の実施例について説明する。
【実施例4】
【0020】
折り返し部のhの数値を4mmにした以外は、実施例1と同様にして比較用の断熱容器を作成した。
【0021】
〈評価〉
実施例1〜3の本発明の断熱容器及び実施例4の比較用の断熱容器を用いて、以下の方法で断熱性を評価した。その結果を表1に示す。
(1)断熱性の評価方法
試作した各断熱容器に沸騰したお湯を充填し、5分後の断熱容器の表面温度を温度センサーで測定した。
【0022】
【表1】

表1に示すように、実施例1の本発明の断熱容器は、5分後の表面温度は58℃であり、実施例2の本発明の断熱容器は、5分後の表面温度は53℃であり、実施例3の本発明の断熱容器は、5分後の表面温度は49℃であった。一方、実施例4の比較用の断熱容器は、5分後の表面温度は63℃であった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本発明の断熱容器の一実施形態を示す断面図であり、(b)は断熱容器の他の実施形態を示す断面図である。
【図2】(a)は本発明の断熱容器に使用する断熱用外筒体の折り返し部形状の一実施形態を示す為の部分斜視図であり、(b)は本発明の断熱容器に使用する断熱用外筒体の折り返し部形状の他の実施形態を示す為の部分斜視図であり、(c)は(a)のA−A′線断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1,2…断熱容器
10…容器本体
11…筒状胴部
12…底シール部
13…トップカール部
14…開口部
20,21…断熱用外筒体
22…折り目
23,23´,24…折り返し部
25…端部
30…空隙
40…切り込み
h…垂直長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状胴部の一端に底部を有し、他端に開口部を有する容器本体と、前記容器本体の筒状胴部を外側から覆う両端が開口している断熱用外筒体と、からなる断熱容器であって、前記断熱用外筒体は容器本体の開口部側の開口縁に容器本体側に折り目を介して少なくとも1回折り返されてなる折返し部を有すると共に、該折り返し部が容器本体の開口部の下の筒状胴部外周に接触し、該折り返し部の反対方向の端部側が容器本体の底部側の筒状胴部外周に接合されており、容器本体と断熱用外筒体の間に空隙が形成されていることを特徴とする断熱容器。
【請求項2】
前記断熱用外筒体の折り返し部は折り目からの垂直長さが5〜30mmであることを特徴とする請求項1記載の断熱容器。
【請求項3】
前記折り返し部の下端部が対向する断熱用外筒体表面に接合されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の断熱容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−126577(P2009−126577A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307012(P2007−307012)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】