説明

断熱紙製容器胴部材用多層シート、その製造方法、及び断熱紙製容器

【課題】断熱性とバリア性とを兼備し、臭気の強い製品からの臭気の移行を抑制することができ、発泡性、層間接着力、外観に優れ、比較的低コストで得られる断熱紙製容器胴部材用多層シートとその製造方法、並びに該多層シートから形成された胴部材を有する断熱紙製容器を提供すること。
【解決手段】
紙基材の一方の表面に低融点の熱可塑性樹脂層が配置された層構成を有し、低融点の熱可塑性樹脂層が紙基材からの水分の加熱蒸発によって発泡可能な層である断熱紙製容器胴部材用多層シートにおいて、紙基材の他方の表面には、接着剤層を介して熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層が配置され、該熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の表面には、接着剤層を介して高融点の熱可塑性樹脂層が配置され、各接着剤層を形成する接着剤が、その融点が該低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも高い接着性樹脂である断熱紙製容器胴部材用多層シート、その製造方法及び該多層シートから胴部材が形成された断熱紙製容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性とバリア性とを備え、化学製品などの臭気の強い製品からの臭気の移行を抑制することができる断熱紙製容器胴部材用多層シートとその製造方法に関する。また、本発明は、該多層シートから形成された胴部材を備えた断熱紙製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ入り即席麺の容器、ファーストフード店や自動販売機などから提供される温かい飲料の容器として、各種断熱容器が用いられている。発泡ポリスチレン製容器は、断熱性に優れるものの、嵩高であり、印刷適性に劣り、割れやすく、かつ、廃棄物処理が困難である。発泡ポリスチレン製容器は、即席麺などの食品の保存、輸送、調理などに適していない。
【0003】
近年、断熱紙製容器が開発され、即席麺などの容器として汎用されている。断熱紙製容器の胴部材は、一般に、板紙などの紙基材の片面に低融点の熱可塑性樹脂層を設け、その他面には、比較的高融点の熱可塑性樹脂層を設けた層構成を有する多層シートから形成されている。該多層シート自体または該多層シートを胴部材として配置した容器を、低融点の熱可塑性樹脂の融点を超える温度に加熱すると、紙基材中に含まれている水分が蒸発し、加熱蒸発した水分によって低融点の熱可塑性樹脂層が発泡する。発泡熱可塑性樹脂層は、断熱層として機能する。
【0004】
発泡温度の制御により、高融点の熱可塑性樹脂層を実質的に発泡させることなく、かつ、該高融点の熱可塑性樹脂層により水蒸気が紙基材の他面から揮散するのを防止しながら、低融点の熱可塑性樹脂層を発泡させることができる。このような層構成を有する断熱紙製容器は、発泡ポリスチレンに比べて、強度が高いため、割れを発生し難い。発泡前の低融点の熱可塑性樹脂層または発泡熱可塑性樹脂層は、良好な印刷適性を有している。断熱紙製容器は、食品などの内容物の保存性に優れている。断熱紙製容器で包装した即席麺は、該容器内に熱湯を注入することにより、簡単に調理することができる。断熱紙製容器は、その廃棄物を焼却処理することができる。このように、断熱紙製容器は、多くの利点を備えている。
【0005】
従来、断熱紙製容器に関し、様々な提案がなされている。例えば、特開昭57−110439号公報(特許文献1)には、容器胴部材及び底板部材からなる紙製容器において、少なくとも容器胴部材の片側側面は、熱可塑性合成樹脂フィルムの発泡断熱層がコーティングまたはラミネートされており、容器胴部材の別の側面は、熱可塑性合成樹脂フィルム、該樹脂フィルムの発泡断熱層若しくはアルミニウム箔のいずれかによってコーティング若しくはラミネートされている断熱紙製容器が提案されている。
【0006】
特許文献1には、原紙の少なくとも片面に、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムをラミネートまたはコーティングした紙製容器を、110〜200℃で20秒間〜4分間加熱し、原紙に含まれている水分により該低密度ポリエチレンフィルムを発泡させて、発泡断熱層を形成する断熱性紙製容器の製造方法が開示されている。特許文献1の実施例には、「LDPE発泡断熱層/原紙/LDPE発泡断熱層」、及び「中低圧ポリエチレン層/原紙/LDPE発泡断熱層」の層構成を有する胴部材を備えたカップ容器が示されている。
【0007】
特許第3596681号公報(特許文献2)には、底板部材と胴部材とからなる紙製容器において、該胴部材の少なくとも一方の壁面に、紙の表面側から、低融点の熱可塑性樹脂の発泡内層と該熱可塑性樹脂の融点よりも高い融点を有する熱可塑性樹脂の非発泡外層とからなる2層構造の断熱膜が被着された構造の紙製容器が提案されている。該低融点熱可塑性樹脂の発泡内層は、紙との層間接着強度が50〜200g/15mm幅の範囲内である低融点熱可塑性樹脂薄膜を、容器を構成する紙に含有されている水分の加熱蒸発により発泡させたものである。
【0008】
特許文献2の紙製容器は、外表面及び/または内表面が平滑な2層構造の断熱膜で形成されている。紙製容器の片面側にのみ2層構造の断熱膜が形成されている場合には、他の側の面には、相対的に高融点の熱可塑性樹脂の薄膜が配置される。特許文献2には、「2層構造断熱膜/紙/熱可塑性樹脂薄膜」、及び「2層構造断熱膜/紙/2層構造断熱膜」の層構成を有する紙製容器が示されている。特許文献2には、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどが例示されており、それらの中でもポリエチレンが好ましいことが記載されている。
【0009】
国際公開第2008/038750号(特許文献3)には、紙基材の少なくとも片面に、溶融状態の熱可塑性樹脂を、Tダイから紙基材に接するまでの時間が0.11〜0.33秒間となるように押出ラミネートして熱可塑性樹脂層を積層して、胴部材原材料シートを作製する工程;該胴部材原材料シートと底板部材原材料シートとを組み立てて、紙製容器を成型する工程;並びに、成型後の紙製容器を加熱処理して、胴部材の紙基材中の水分を蒸発させて、該熱可塑性樹脂層を発泡させる工程;を含む紙製容器の製造方法が提案されている。
【0010】
特許文献3に記載の製造方法は、溶融状態の熱可塑性樹脂をTダイから紙基材の表面に押出ラミネートする際に、溶融状態の熱可塑性樹脂がTダイから紙基材に接するまでの時間(エアギャップの通過時間)を制御することにより、熱可塑性樹脂層の酸化度を調整し、それによって、良好な発泡状態を得る点に特徴を有している。紙基材の反対側の面には、非発泡熱可塑性樹脂層が積層されている。特許文献3には、具体的に、「発泡LDPE層/原紙/中密度ポリエチレン層」の層構成を有する胴部材原材料シートが示されている。
【0011】
従来の断熱紙製容器は、一般に、紙基材の片面に発泡ポリオレフィン樹脂層を設け、その他面に非発泡ポリオレフィン樹脂層を設けた層構成を有するものである。断熱紙製容器が付加的な熱可塑性樹脂層を有する場合にも、熱可塑性樹脂として、通常、ポリオレフィン樹脂が用いられている。紙基材の両面に発泡ポリオレフィン樹脂層を設けた断熱紙製容器もあるが、その場合にも、熱可塑性樹脂の材質は、ポリオレフィン樹脂である。
【0012】
ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂は、水蒸気透過度は低いものの、酸素透過度や炭酸ガス透過度が高く、ガスバリア性が不十分である。そのため、断熱紙製容器は、一般に、ガスバリア性が十分ではない。断熱紙製容器入り即席麺などの包装食品は、洗剤、化粧品、石けん、その他の化学製品など臭気の強い製品と混載して輸送されることがある。断熱紙製容器は、臭いが移行しやすいため、断熱紙製容器入り即席麺などの包装食品を臭気の強い製品と混載すると、輸送の途中で、それらの製品からの臭気が即席麺などの食品に移行し、異臭の発生や味の変化をもたらす。
【0013】
断熱紙製容器にバリア性を付与する方法として、ポリビニルアルコール(PVA)やエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などのガスバリア性樹脂からなる層を配置する方法が考えられる。しかし、これらのガスバリア性樹脂は、高価である上、即席麺など乾燥食品の包装材料の用途には過剰なほどの高いガスバリア性を有するものである。PVAやEVOHは、水分によってガスバリア性が著しく低下するため、紙基材からの水分の蒸発によって低融点の熱可塑性樹脂層を発泡させる工程を有する断熱紙製容器の製造には適していない。さらに、これらのガスバリア性樹脂層は、紙基材とポリオレフィン樹脂層との間に密着して配置することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開昭57−110439号公報
【特許文献2】特許第3596681号公報
【特許文献3】国際公開第2008/038750号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、断熱性とバリア性とを兼ね備え、化学製品などの臭気の強い製品からの臭気の移行を抑制することができ、さらに、安定した発泡性、十分な層間接着力、良好な発泡外観を示し、かつ、比較的低コストで得られる断熱紙製容器胴部材用多層シートとその製造方法を提供することにある。本発明の他の課題は、該多層シートから形成された胴部材を有し、臭気の強い製品と混載しても、臭いの移行を抑制することができる断熱紙製容器を提供することにある。
【0016】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、紙基材の一方の表面に低融点の熱可塑性樹脂層が配置された層構成を有し、該低融点の熱可塑性樹脂層が該紙基材からの水分の加熱蒸発によって発泡可能な層である断熱紙製容器胴部材用多層シートにおいて、紙基材の一方の表面に、低融点の熱可塑性樹脂層を接着剤層の介在なしに隣接して配置し、該紙基材の他方の表面には、接着剤層を介して、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を配置し、該熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の表面には、接着剤層を介して、高融点の熱可塑性樹脂層を配置してなる「低融点の熱可塑性樹脂層/紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層/接着剤層/高融点の熱可塑性樹脂層」の層構成を有する多層シートにより、前記課題を解決できることを見出した。
【0017】
本発明の多層シートは、紙基材の両面に、各層の構成成分を(共)押出コーティング及び/またはラミネートする方法により、製造することができる。本発明の多層シートは、多層シートの状態で加熱するか、底板部材と共に容器を組み立ててから加熱することにより、紙基材からの加熱蒸気を利用して、実質的に低融点の熱可塑性樹脂層のみを発泡させることができる。本発明の断熱紙製容器は、断熱性、強度、層間接着力、耐熱性、外観、バリア性に優れる上、臭気の強い製品と混載しても、臭いの移行を抑制することができる。本発明は、これらの知見に基づいて、完成するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、紙基材の一方の表面に低融点の熱可塑性樹脂層が配置された層構成を有し、該低融点の熱可塑性樹脂層が該紙基材からの水分の加熱蒸発によって発泡可能な層である断熱紙製容器胴部材用多層シートにおいて、
1)紙基材の一方の表面に、低融点の熱可塑性樹脂層が接着剤層を介することなく隣接して配置され、
2)該紙基材の他方の表面には、接着剤層を介して、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層が配置され、
3)該熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の表面には、接着剤層を介して、高融点の熱可塑性樹脂層が配置され、
4)該高融点の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂が、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂であって、該低融点の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂よりも高融点の熱可塑性樹脂であり、並びに、
5)各接着剤層を形成する接着剤が、示差走査熱量計により測定した融点が該低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも高い接着性樹脂である
ことを特徴とする断熱紙製容器胴部材用多層シートが提供される。
【0019】
また、本発明によれば、紙基材の一方の表面に低融点の熱可塑性樹脂層が配置された層構成を有し、該低融点の熱可塑性樹脂層が該紙基材からの水分の加熱蒸発によって発泡可能な層である断熱紙製容器胴部材用多層シートの製造方法において、
(1)紙基材の一方の表面に、接着剤を押出コーティングするとともに、該押出コーティングした接着剤層を介して、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂フィルムを圧接することにより、「紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層」の層構成を有する多層シート1を形成する工程1;
(2)該多層シート1の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂フィルムの表面に、接着剤と高融点の熱可塑性樹脂とを共押出コーティングして、「紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層/接着剤層/高融点の熱可塑性樹脂層」の層構成を有する多層シート2を形成する工程2;及び
(3)該多層シート2の紙基材の他方の表面に、低融点の熱可塑性樹脂を押出コーティングして、「低融点の熱可塑性樹脂層/紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層/接着剤層/高融点の熱可塑性樹脂層」の層構成を有する多層シート3を形成する工程3;
を含み、
該高融点の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂が、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂であって、該低融点の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂よりも高融点の熱可塑性樹脂であり、かつ、
各接着剤層を形成する接着剤が、示差走査熱量計により測定した融点が該低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも高い接着性樹脂である
ことを特徴とする断熱紙製容器胴部材用多層シートの製造方法が提供される。
【0020】
さらに、本発明によれば、前記断熱紙製容器胴部材用多層シートから形成された胴部材と底板部材とが容器の形状に組み立てられ、かつ、該低融点の熱可塑性樹脂層が発泡熱可塑性樹脂層を形成している断熱紙製容器が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、断熱性とバリア性とを兼ね備え、化学製品などの臭気の強い製品からの臭気の移行を抑制することができ、さらに、安定した発泡性、十分な層間接着力、良好な発泡外観を示し、かつ、比較的低コストで得られる断熱紙製容器胴部材用多層シートとその製造方法が提供される。本発明によれば、該多層シートから形成された胴部材を有し、臭気の強い製品と混載しても、臭いの移行を抑制することができる断熱紙製容器が提供される。本発明の断熱紙製容器は、即席麺などの食品包装用容器として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の多層シートの製造工程の前半の一例を示す説明図である。
【図2】図2は、本発明の多層シートの製造工程の後半の一例を示す説明図である。
【図3】図3は、本発明の多層シートの層構成の一例を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の多層シートの発泡後の層構成の一例を示す断面図である。
【図5】図5(a)〜(d)は、本発明の発泡後の多層シートを用いて臭気源物質を包んで臭いの移行性試験用試料を作製し、該試料を用いて臭いの移行性を測定する手順を示す説明図である。
【図6】図6は、臭いセンサーを用いて、本発明の発泡後の多層シートの臭いの移行性試験を行う方法を示す説明図である。
【図7】図7は、接着性樹脂(組成物)の示差走査熱量計測定における最高吸熱ピーク温度(Tm)と吸熱ピークの最終温度〔Tm(end)〕の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の断熱紙製容器胴部材用多層シートは、紙基材の一方の表面に低融点の熱可塑性樹脂層が配置された層構成を有し、該低融点の熱可塑性樹脂層が該紙基材からの水分の加熱蒸発によって発泡可能な層である多層シートである。該多層シートは、他の樹脂層を含んでいる。
【0024】
より具体的に、本発明の断熱紙製容器胴部材用多層シートは、
1)紙基材の一方の表面に、低融点の熱可塑性樹脂層が接着剤層を介することなく隣接して配置され、
2)該紙基材の他方の表面には、接着剤層を介して、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層が配置され、
3)該熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の表面には、接着剤層を介して、高融点の熱可塑性樹脂層が配置され、
4)該高融点の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂が、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂であって、該低融点の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂よりも高融点の熱可塑性樹脂であり、並びに、
5)各接着剤層を形成する接着剤が、示差走査熱量計により測定した融点が該低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも高い接着性樹脂である
との層構成を有している。本発明の多層シートは、付加的な樹脂層を有するものであってもよい。
【0025】
紙基材は、一般に、植物から得られるセルロース性繊維を水中に分散し、湿式抄紙して得られるシート状材料である。紙基材は、セルロース性繊維と他の繊維とを絡み合わせて膠着させたものであってもよい。紙基材の種類としては、上質紙、コート紙、再生紙などが挙げられる。紙基材として、一般に板紙と呼ばれる原紙を用いることができる。
【0026】
紙基材の坪量は、通常100〜400g/m、好ましくは150〜350g/mの範囲内である。紙基材の坪量が少なすぎると、発泡に必要な水分量が少なくなりすぎて、低融点の熱可塑性樹脂層の発泡が不十分となりやすい。また、紙基材の坪量が少なすぎると、強度が低下する上、内容物に熱湯を注いだときに胴部に熱さを感じ易くなる。紙基材の坪量が多すぎると、コスト高になることに加えて、成型加工性が低下したり、過剰な水分量による過発泡が起こったりし易くなる。紙基材の厚みは、通常100〜600μm、好ましくは200〜500μmの範囲内である。
【0027】
紙基材の含水率は、通常2〜15重量%、好ましくは4〜13重量%、より好ましくは5〜10重量%の範囲内である。紙基材の含水率が低すぎると、加熱蒸気による低融点の熱可塑性樹脂層の発泡が不十分となったり、発泡むらが生じたりし易くなる。紙基材の含水率が高すぎると、強度が低下して成型加工性が低下することに加えて、過発泡や発泡セルの破裂が生じ易くなる。紙基材の含水率は、温度及び湿度を含む環境条件を制御して調湿することにより、所望の水準に保持することができる。紙基材の含水率は、絶乾水分測定法によって測定することができる。
【0028】
低融点の熱可塑性樹脂及び高融点の熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィンを挙げることができる。ポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどを挙げることができるが、これらに限定されない。これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィンが好ましい。
【0029】
低融点の熱可塑性樹脂層は、加熱水蒸気(蒸発水分または加熱蒸気)によって発泡する発泡性熱可塑性樹脂層である。低融点の熱可塑性樹脂としては、発泡性の観点から融点が80〜120℃の範囲内にある熱可塑性樹脂が好ましい。低融点の熱可塑性樹脂の中でも、発泡性に優れる点で、低密度ポリエチレン(LDPE)が特に好ましい。本発明で使用するLDPEの密度は、通常0.910〜0.929g/cm、好ましくは0.910〜0.925g/cmの範囲内にある。LDPEの融点は、通常105℃以上120℃未満、好ましくは105〜115℃の範囲内にある。融点は、示差走査熱量計(DSC)により、最高吸熱ピーク温度として測定される値である。LDPEのメルトフローレイト(MFR;ASTM D1238により測定)は、5.0〜14.0g/分の範囲内にあることが好ましい。
【0030】
低融点の熱可塑性樹脂層の厚み(発泡前の膜厚)は、通常25〜100μm、好ましくは30〜80μmの範囲内である。低融点の熱可塑性樹脂層の発泡後の膜厚は、断熱性や保温性などの観点から、通常100〜2,000μm、好ましくは400〜1,800μm、より好ましくは600〜1,500μmの範囲内である。
【0031】
高融点の熱可塑性樹脂は、低融点の熱可塑性樹脂の融点に比べて、通常5℃以上、好ましくは8℃以上、より好ましくは10℃以上高い融点を有する熱可塑性樹脂である。この融点差の上限値は、特に限定されないが、通常50℃、多くの場合40℃である。両樹脂の温度差が低すぎると、加熱発泡工程で高融点の熱可塑性樹脂層が溶融を開始して、該樹脂層を通して加熱水蒸気が拡散し易くなる。両樹脂の融点差が小さすぎると、多層シートの加熱による低融点の熱可塑性樹脂の発泡時に、紙基材からの加熱蒸気によって高融点の熱可塑性樹脂層の一部が発泡したり、低融点の熱可塑性樹脂の発泡が不完全になったりする。
【0032】
高融点の熱可塑性樹脂としては、中密度ポリエチレン(MDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましく、押出加工性や断熱紙製容器開口部のシール安定性などの観点からMDPEがより好ましい。本発明で使用するMDPEの密度は、通常0.930〜0.941g/cmの範囲内にある。本発明で使用するHDPEの密度は、通常0.942〜0.970g/cmの範囲内にある。MDPE及びHDPEは、コモノマーとして少量のα−オレフィンを用いて合成されたものであってもよい。該α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが代表的なものである。MDPE及びHDPEの融点は、通常120〜135℃、好ましくは122〜135℃、より好ましくは123〜135℃の範囲内にある。
【0033】
高融点の熱可塑性樹脂層は、加熱発泡工程で加熱蒸気により発泡しない非発泡性熱可塑性樹脂層である。高融点の熱可塑性樹脂層の厚みは、加熱発泡時に蒸発水分が該樹脂層を通して拡散するのを防止することができ、かつ、断熱紙製容器の内壁面側に配置される場合には、熱湯などの加熱液体の浸透を防止できる厚みであればよく、特に限定されない。高融点の熱可塑性樹脂層の厚みは、好ましくは15〜60μm、より好ましくは20〜50μmの範囲内である。
【0034】
LDPE、MDPE、及びHDPEの密度は、日本工業規格のJIS K 6748−1981に従って測定した値である。これらのポリエチレンの融点は、特に断りのない限り、常法に従って示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したとき、最高吸熱ピーク温度(Tm)として検知される温度である。
【0035】
低融点の熱可塑性樹脂及び高融点の熱可塑性樹脂には、所望により、顔料(酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカなど)、帯電防止剤、耐ブロッキング剤(アクリルビーズ、ガラスビーズ、シリカなど)、紫外線吸収剤などの添加剤を添加することができる。
【0036】
熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合成分とする非晶性ポリエチレンテレフタレート共重合体(PETG)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート・イソフタレート共重合体(PCTA)、及びこれらの2種以上の混合物が好ましい。
【0037】
PETとしては、単独重合体だけではなく、酸成分の一部をイソフタール酸やナフタレンジカルボン酸で置き換えたコポリエステル、及びグリコール成分の一部をジエチレングリコール等の特殊ジオールに置き換えたコポリエステルなどを使用することができる。
【0038】
熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレート単独重合体またはポリエチレンテレフタレート成分を90モル%以上の割合で含有する共重合体(Co−PET)などのPETが好ましい。
【0039】
熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂の固有粘度(IV値)は、通常0.5〜1.5dl/g、好ましくは0.6〜1.0dl/g、より好ましくは0.7〜0.85dl/gである。熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂のIV値は、オルトクロロフェノールまたはフェノール/クロロエタン(60/40重量%)の混合溶媒に、樹脂を0.5重量%の濃度で溶解し、ASTM D4603−96に準拠し、カノンウベローデタイプ 1B粘度計を用いて、30℃で測定した値(単位=dl/g)である。
【0040】
PETなどの熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の厚みは、耐臭い移行性の観点から、通常5〜30μm、好ましくは8〜20μm、より好ましくは10〜15μmの範囲内である。熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層としては、PETフィルムが好ましく、ガスバリア性や耐臭い移行性の観点から二軸延伸PETフィルムがより好ましい。PETフィルムは、接着剤を用いたラミネート法により紙基材及び高融点の熱可塑性樹脂層と接着させる。
【0041】
接着剤としては、カルボキシル基、酸無水物基、水酸基、カルボニル基、グリシジル基(エポキシ基)、イソシアネート基、アミノ基、イミド基、ウレタン結合基などの官能基を有する接着性樹脂が好ましい。これらの官能基は、接着性樹脂を構成するポリマー合成時に使用するモノマーの種類を選択したり、ポリマーに官能基含有モノマーをグラフト反応させたりする方法により、接着性樹脂中に導入することができる。官能基としては、カルボキシル基及び酸無水物基が好ましい。
【0042】
接着剤としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂〔三菱化学社製モディック(登録商標)S525〕、グリシジル基含有エチレンコポリマー〔日本石油化学社製レクスパール(登録商標)RA3150、住友化学社製ボンドファースト(登録商標)2C、E、B〕、熱可塑性ポリウレタン〔クラレ社製クラミロン(登録商標)1195L〕、ポリアミド・アイオノマー(三井デュポン社製AM7926)、ポリアクリルイミド樹脂(ローム・アンド・ハース社製XHTA)、酸変性線状低密度ポリエチレン〔三井化学社製アドマー(登録商標)NF550;MFR=6.2g/10分(温度190℃、荷重2160g)〕などの接着性樹脂を挙げることができる。
【0043】
これらの接着剤の中でも、共重合及び/またはグラフト反応によって、カルボキシル基や酸無水物基などの官能基を導入した酸変性ポリエチレンや酸変性ポリプロピレンなどの酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。このような酸変性ポリオレフィン樹脂の市販品としては、三井化学社製のアドマー(登録商標)シリーズ(例えば、SF600、SF700、SF710、SF715、SF731、SF810、SE800、SE810、NE050、NE060、NE065、NE825、NE827)、三菱化学社製モディック(登録商標)シリーズ(例えば、F534A、F502、F532)、東ソー社製DLZ−15Eなどが挙げられる。
【0044】
酸変性ポリオレフィン樹脂の融点は、通常70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上である。この融点の上限値は、通常130℃、多くの場合125℃である。融点は、DSCにより測定した値である。酸変性ポリオレフィン樹脂のMFR(JIS K 7210に従って、温度190℃、荷重2160gで測定)は、通常0.4〜20.0g/10分、好ましくは0.5〜18.0g/10分、より好ましくは0.8〜15.0g/10分の範囲内である。
【0045】
接着剤は、低融点の熱可塑性樹脂の融点に比べて、通常5℃以上、好ましくは8℃以上、より好ましくは10℃以上高い融点を有する接着性樹脂であることが好ましい。接着性樹脂の融点が十分に高くない場合には、加熱発泡工程で接着性樹脂層が溶融して、発泡工程で外から力が加わった際に、層間のずれを発生したり、接着強度の低下を引き起こしたりする。また、接着性樹脂層の融点が十分に高くない場合には、加熱発泡時に、紙基材層からの加熱水蒸気が溶融した接着性樹脂層を発泡させ、本来の発泡性樹脂層である低融点の熱可塑性樹脂層の安定かつ十分な発泡を阻害する。加えて、紙基材層からの加熱水蒸気が熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層と高融点の熱可塑性樹脂層との間の接着性樹脂層にまで影響し、該接着性樹脂層の一部が発泡し、「火脹れ」現象を発生し易くなる。接着性樹脂層の発泡または部分的な発泡が生じると、製品価値が損なわれる。
【0046】
低融点の熱可塑性樹脂層の安定した発泡と、高温での良好な層間接着力(耐熱性)を得るには、接着剤として、酸変性ポリオレフィン樹脂などの接着性樹脂とMDPEまたはHDPEとをブレンドした接着性樹脂組成物を使用することが特に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂などの官能基を導入した接着性樹脂は、高価であるため、MDPEやHDPEとブレンドすることにより、多層シートの製造コストを低減することができる。
【0047】
このようなブレンド物からなる接着性樹脂組成物を用いることにより、加熱発泡工程で接着剤層が溶融するのを防ぎ、さらには、接着剤層の溶融に起因する様々な弊害の発生を抑制することができる。該接着性樹脂組成物を用いることにより、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層(例えば、PETフィルム層)と高融点の熱可塑性樹脂層(例えば、MDPE層またはHDPE層)との間の接着力を向上させることができる。そのため、融点が高い接着性樹脂も、MDPEまたはHDPEとのブレンド物として使用することが好ましい。特に、酸変性ポリオレフィン樹脂は、MDPEまたはHDPEとのブレンド物として使用することが特に好ましい。
【0048】
酸変性ポリオレフィン樹脂などの接着性樹脂とMDPEまたはHDPEなどのポリエチレンとのブレンド比率(重量比)は、好ましくは0.5:95.5〜50:50、より好ましくは1:99〜30:70、特に好ましくは2:98〜25:75の範囲内である。ブレンド物中の接着性樹脂の比率が小さすぎると、紙基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層との間、及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層と高融点の熱可塑性樹脂層との間の接着力を十分に高めることが困難となる。ブレンド物中の接着性樹脂の比率が大きすぎると、接着性樹脂組成物の融点が低下して、加熱発泡工程で接着剤層が溶融したり、接着剤層を通して加熱蒸気が拡散して、低融点の熱可塑性樹脂層の発泡が不十分になったりする。接着性樹脂組成物の融点が低下すると、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層と高融点の熱可塑性樹脂層との間の接着剤層の異常発泡(火脹れ)が発生し易くなる。
【0049】
接着性樹脂及び接着性樹脂組成物の融点は、DSCを用いて測定することができる。本発明において、DSCを用いた接着性樹脂及び接着性樹脂組成物の融点の測定は、以下の方法で行った。第一回目の加熱過程(1st Heat)として、接着性樹脂または接着性樹脂組成物を、昇温速度10℃/分で−50℃から180℃まで加熱して融解する。その後、溶融物を−50℃まで冷却して固化させる。次いで、第二回目の加熱過程(2nd Heat)として、接着性樹脂または接着性樹脂組成物を、昇温速度10℃/分で−50℃から180℃まで加熱し、その際に検知される最高吸熱ピーク温度を融点(Tm)とした。吸熱ピークの高温側の接線と基準線との交点を最終温度〔Tm(end)〕とした。このような測定条件を採用することにより、様々な成分を含有する接着性樹脂及び接着性樹脂組成物の融点を正確に評価することができる。
【0050】
本発明で使用する接着剤は、上記方法で測定される融点(Tm)が好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上の接着性樹脂または接着性樹脂組成物であることが望ましい。本発明で使用する接着剤は、上記方法で測定される吸熱ピークの最終温度〔Tm(end)〕が好ましくは130℃以上、より好ましくは131℃以上の接着性樹脂または接着性樹脂組成物であることが望ましい。このような融点及び吸熱ピークの最終温度を示す接着性樹脂または接着性樹脂組成物を用いることにより、加熱発泡時に接着剤層が溶融したり、接着剤層から加熱蒸気が拡散したりするのを防ぐことができる上、沸騰水などを用いて即席麺などの食品を調理する際に層間剥離が生じない断熱紙製容器を得ることが容易となる。
【0051】
接着剤層の厚みは、通常5〜30μm、好ましくは10〜25μmの範囲内である。接着剤層の厚みが薄すぎると、接着力が低下したり、加熱水蒸気が拡散したりし易くなる。接着剤層の厚みが厚すぎると、製品の総厚み上昇により容器成型時に支障を及ぼしたり、製品コストが上昇したりする。
【0052】
多層シートにおける熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層(例えば、PET層)と高融点の熱可塑性樹脂層(例えば、MDPE層またはHDPE層)との間の接着強度は、多層シートを80℃で1分間加熱後、引張試験を行うことにより測定した値として、好ましくは80g/15mm幅以上、より好ましくは100g/15mm幅以上を示す。このような接着強度を有することにより、加熱条件下での接着力の要求特性を満足することができる。
【0053】
本発明の多層シートは、図1及び図2に示される多層化工程により製造することが好ましい。図1に示すように、紙基材(原紙)を巻回したロール1から紙基材2を繰り出し、送りロール3の上方で紙基材2の片面をコロナ放電処理器4を用いてコロナ放電処理する。ロール5とロール8との間で、紙基材2のコロナ放電処理面に、Tダイ6を通して接着剤7を溶融押出して押出コーティングする。他方、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂フィルム(例えば、PETフィルム)を巻回したロール10から該フィルム11を繰り出し、コロナ放電処理器9でコロナ放電処理を行った後、接着剤層を介して紙基材2に圧着する。これにより、「紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層」の層構成を有する多層シート12を形成する。
【0054】
該多層シート12をロール群13,14,及び16により次の工程に搬送するが、その途中で、コロナ放電処理器15を用いて、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂フィルムの他面のコロナ放電処理を行う。対向するロール16と17の間に多層シート12を通しながら、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層のコロナ放電処理面に、Tダイ18を通して接着剤19及び高融点の熱可塑性樹脂(例えば、MDPEまたはHDPE)を共押出コーティングする。このようにして得られた「紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層/接着剤層/高融点の熱可塑性樹脂層」の層構成を有する多層シート21をロール22を経て半製品としてロールの形状23に巻き取る。
【0055】
図2に示すように、ロール23から半製品の多層シート24を繰り出し、ロール25(該ロール表面に、該多層シート24の紙基材面が接する)からロール26を経て、対向するロール28と29との間に導く。多層シート24の紙基材の表面をコロナ放電処理器27によりコロナ放電処理し、さらにオゾン発生器32でオゾン処理を行う。多層シート24の紙基材の表面処理面に、Tダイ30を通して低融点の熱可塑性樹脂(例えば、LDPE)31を押出コーティングする。このようにして得られた「低融点の熱可塑性樹脂層/紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層/接着剤層/高融点の熱可塑性樹脂層」の層構成を有する多層シート(製品)33を、ロール群34及び35を経て、ロール状に巻回し未発泡の製品36とする。
【0056】
低融点の熱可塑性樹脂層の上に高融点の熱可塑性樹脂層(非発泡性熱可塑性樹脂層)を設ける場合には、Tダイを用いた高融点の熱可塑性樹脂の押出コーティング工程を付加する。低融点の熱可塑性樹脂層の表面は、印刷適性を高めたり、高融点の熱可塑性樹脂層との密着性を高めるために、コロナ放電処理を行ってもよい。この場合、低融点の熱可塑性樹脂と共に高融点の熱可塑性樹脂を共押出コーティングすることもできる。このようにして、「高融点の熱可塑性樹脂層/低融点の熱可塑性樹脂層/紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層/接着剤層/高融点の熱可塑性樹脂層」の層構成を有する多層シートを作製することができる。
【0057】
本発明の断熱紙製容器胴部材用多層シートは、「低融点の熱可塑性樹脂層/紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層/接着剤層/高融点の熱可塑性樹脂層」または「高融点の熱可塑性樹脂層/低融点の熱可塑性樹脂層/紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層/接着剤層/高融点の熱可塑性樹脂層」の層構成を有するものである。
【0058】
図3には、「低融点の熱可塑性樹脂層301/紙基材302/接着剤層303/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層304/接着剤層305/高融点の熱可塑性樹脂層306」の層構成を有する断熱紙製容器胴部材用多層シートの断面図が示されている。図4には、該多層シートを加熱発泡させて、「低融点の熱可塑性樹脂層301」を「発泡熱可塑性樹脂層401」とした発泡多層シートの断面図が示されている。
【0059】
各層間の接着強度を高めるために、図1及び2に示したとおり、紙基材の表面及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂フィルムの表面に、それぞれコロナ放電処理またはオゾン処理を施した後、各工程において(共)押出コーティングを行うことが好ましい。コロナ放電処理やオゾン処理は、この技術分野における常法に従って行うことができる。
【0060】
本発明の断熱紙製容器胴部材用多層シートは、通常、容器の外側を構成する樹脂層の表面に印刷を施すことができる。印刷適性を向上させるために、最外層の表面に顔料とバインダーを含有するインキ受理層を設けてもよい。本発明の断熱紙製容器胴部材用多層シートは、打ち抜き加工により胴部材ブランクを形成することができる。他方、底板部材用シートから打ち抜き加工により底板部材ブランクを形成する。これらのブランクを用いて、常用のカップ成型機により容器の形状に組み立てる。発泡樹脂層を形成する低融点の熱可塑性樹脂層は、該紙基材よりも外側の位置となるように配置して容器の外層としてもよく、あるいは該紙基材よりも内側の位置となるように配置して容器の内層としてもよい。通常のカップ入り麺では、発泡樹脂層が容器の外側に配置されるようにする。容器の内層に高融点の熱可塑性樹脂層を配置する場合には、該高融点の熱可塑性樹脂層を容器の開口部で少し外側に折り込んで、その折込部を蓋材とのシール面とすることが好ましい。
【0061】
成型後の容器は、発泡させるために加熱処理を行う。加熱処理により、紙基材に含まれる水分が蒸発して、低融点の熱可塑性樹脂層が発泡する。加熱発泡工程での加熱温度は、低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも通常5℃以上高い温度である。加熱発泡時の加熱温度は、一般に、90〜200℃の範囲内から選ばれる。低融点の熱可塑性樹脂がLDPEの場合には、加熱発泡時の温度は、好ましくは100〜150℃の範囲内である。加熱時間は、通常、30秒間から10分間、好ましくは2〜6分間の範囲内である。加熱手段としては、熱風、電熱、電子線など任意の手段を採用することができる。未発泡の容器をコンベアで加熱トンネル内を通過させ、熱風または電熱により加熱発泡させる手段が、生産性が高いため好ましい。均一かつ効率的な発泡を行うために、低融点の熱可塑性樹脂層の表面に、合成樹脂成分を含有する塗料を塗布してもよい。
【0062】
本発明の多層シートを胴部材として使用し、低融点の熱可塑性樹脂層を発泡させてなる断熱紙製容器は、外観、発泡性、耐熱性、ガスバリア性などに優れることに加えて、臭いの移行が抑制されており、臭気の強い化学製品などとの混載によって臭いが内容物にまで移行するのが抑制されている。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。本発明における各種物性及び特性の測定法は、次の通りである。
【0064】
(1)紙基材の含水率
JIS P 8127に規定されている絶乾水分測定法に準拠し、下記の手順に従って、紙基材の含水率を測定した。
a)25℃、相対湿度50%の雰囲気下に、紙基材を25cm×40cmの大きさの試料に裁断して、その重量(A)を測定する。
b)該試料を加熱オーブンに入れ、130℃で2時間乾燥させて、水分を除去する。
c)試料をオーブンから取り出し、直ちに重量(B)を測定する。
d)含水率=〔(A−B)/A〕×100の式により、含水率(重量%)を測定する。
【0065】
(2)接着剤の融点
接着性樹脂及び接着性樹脂組成物の融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。本発明において、DSCを用いた接着性樹脂及び接着性樹脂組成物の融点の測定は、以下の方法で行った。第一回目の加熱過程(1st Heat)として、接着性樹脂または接着性樹脂組成物を、昇温速度10℃/分で−50℃から180℃まで加熱して融解する。その後、溶融物を−50℃まで冷却して固化させる。次いで、第二回目の加熱過程(2nd Heat)として、接着性樹脂または接着性樹脂組成物を、昇温速度10℃/分で−50℃から180℃まで加熱し、その際に検知される最高吸熱ピーク温度を融点(Tm)とした。吸熱ピークの高温側の接線と基準線との交点を最終温度〔Tm(end)〕とした。このように、DSCによる最高吸熱ピーク温度及び最終温度は、第2回目の加熱時の測定値とした。
【0066】
(3)接着強度
多層シートを、その製造直後に80℃で1分間の加熱した。次いで、引張試験機を用いて、下記の条件でPETフィルムと高融点の熱可塑性樹脂層(MDPE層)との間の接着強度を測定した。
【0067】
<測定条件>
1)引張り試験機:(株)エー・アンド・デイ、卓上引張り試験機STA−1150型
2)測定環境:温度23℃、相対湿度55%RH
3)試料:幅15mm、長さ150mm
4)チャック間距離:100mm
【0068】
(4)発泡性の評価
東京理化機械(株)製の送風定温乾燥機ウィンディーオーブンWFO-601SD型(ターンテーブル設置タイプ)温度を130℃に調節した。100mm×100mmの正方形に裁断した多層シート試料を発泡面(低融点の熱可塑性樹脂層面)を上にして、ターンテーブルに載せ、130℃で5分間加熱発泡させた。発泡樹脂層の厚みは、750μmであった。取り出した発泡多層シートを下記基準により評価した。
【0069】
<外観>
A:発泡がきめ細かく、火脹れがなく、非発泡面に発泡が見られない。
B:部分的に、発泡が粗い部分と火脹れが見られる。
C:全面的に発泡が粗く、部分的に大きな火脹れがある。非発泡面にも発泡がある。(*)
【0070】
<発泡性>
A:発泡がきめ細かく均一に所定の厚みに発泡している。火脹れがなく、非発泡樹脂層の表面に発泡が見られない。
B:部分的に、発泡が粗い部分と火脹れが見られる。厚み斑がある。非発泡樹脂層の表面に若干発泡が見受けられる。
C:全面的に発泡が粗く、部分的に大きな火脹れがあり、厚み斑が大きい。非発泡樹脂層の表面の発泡が目立つ。
【0071】
(*)「火脹れ」とは、紙基材層とPETフィルム層との間に位置する接着剤層の耐熱性がない場合、発泡工程で、紙基材層の加熱水蒸気が発泡樹脂層の反対側に位置するPETフィルム層及びPETフィルム層と高融点の内側樹脂層との間に配置されている接着剤層まで影響し、該接着剤層が部分発泡する現象を指す。
【0072】
<耐熱性>
A:非発泡面である内側高融点樹脂層に発泡が見られず、かつ、成型したカップ容器に100℃の熱水を入れた時、PETフィルム層と内側高融点樹脂層とが強固に接着していて、カップの変形破壊が無い。
B:非発泡面である内側高融点樹脂層に部分的な発泡が見られ、かつ、成型したカップ容器に100℃の熱水を入れた時、PETフィルム層と内側高融点樹脂層との間の接着強度が若干弱く、カップがやや変形する。
C:非発泡面である内側高融点樹脂層に発泡が見られ、かつ、成型したカップ容器に100℃の熱水を入れた時、PETフィルム層と内側高融点樹脂層との間の接着強度が弱く、カップの変形破壊が見られる。
【0073】
(5)パネラーによる耐臭い移行性の官能評価
150mm×600mmの長方形に裁断した多層シート試料を、前項(4)に記載の方法と同じ方法により発泡させた。図5(a)に示すように、長方形の発泡多層シート501を、発泡樹脂層面が内側になるように長さ方向に二つ折りにした。次いで、図5(b)に示すように、二つ折りにした発泡多層シート502の内側に、臭いの源となる物質503を挟んだ。臭い源として、樟脳(パラゾール)及び洗剤を用いた。図5(c)に示すように、二つ折りした発泡多層シート502の3方をヒートシール504し、臭気源物質を密封した臭いの移行性試験用試料505を作製した。この試料(臭気発生源密封体)505を、図5(d)に示すように、ポリカーボネート製容器506に入れ、蓋507をして密封し、所定時間放置した。
【0074】
所定時間放置後、密封容器の蓋を開け、健常人10人をパネラーとして、下記の基準により臭い移行性を評価して貰った。
【0075】
A:全く臭わない、
B:僅かに臭いを感じる人がいる、
C:全員臭いを感じる、
D:全員臭いを酷く感じる、
E:全員臭いを酷く感じ、さらに目に沁みる。
【0076】
(6)機器による耐臭い移行性の評価
官能評価に使用したのと同じ臭いの移行性試験用試料(臭気発生源密封体)を作製した。図6に示すように、この試料603を、径300mm、高さ300mm、コック付きガラス製デシケータ601に入れて、所定時間放置した。所定時間放置後、デシケータのコック(バキュウム口)に臭いセンサー602の吸気用ホースを挿入し、1分間後の数値を測定した。
【0077】
<臭いセンサー>
メーカー:新コスモ電気株式会社製
機種名 :ポータブル型ニオイセンサー XP−329シリーズ汎用型
仕様 :汎用型
【0078】
測定値は、測定室の測定値を基準値とし、試料測定値との差をもってその試料の臭気値とした。
【0079】
[接着剤1〜15]
接着性樹脂、及び接着性樹脂と中密度ポリエチレン(MDPE)とを溶融ブレンドした接着性樹脂組成物の融点(最高吸熱ピーク温度及びピーク最終温度)を測定した。結果を表1に示す。
【0080】

【表1】

【0081】
(脚注)
(1)MDPE:東ソー(株)製ペトロセン(登録商標)LW04(密度=0.940g/cm、MFR=6.5g/10分、融点=133℃)
(2)MO F534A:三菱化学社製モディックF534A〔Tm=116℃、Tm(end)=124℃〕
(3)AD SE810:三井化学社製アドマーSE810〔Tm=123℃、Tm(end)=128℃〕
(4)AD SF710:三井化学社製アドマーSF710〔Tm=123℃、Tm(end)=128℃〕
(5)AD NE827:三井化学社製アドマーSE827〔Tm=123℃、Tm(end)=128℃〕
【0082】
[実施例1〜13、及び比較例1〜3]
図1及び2に示す工程により、表2に示す層構成を有する多層シートを作製した。多層シートを130℃で5分間加熱発泡させた。発泡樹脂層の厚みは、750μmであった。層構成と結果を表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
(脚注)
(1)LDPE:東ソー社製P203;低密度ポリエチレン〔密度=0.920g/cm、MFR=8.0g/10分、Tm=106℃、Tm(end)=112℃〕
(2)紙:日本製紙社製原紙(製品名「コップ原紙#320」、坪量=320g/m、含水率=7.8重量%)
(3)AD1〜AD15:表1に示した接着剤コード
(4)PET:東洋紡社製二軸延伸フィルム(製品名「東洋紡ポリエステル」)
(5)MDPE:東ソー(株)製ペトロセン(登録商標)LW04(密度=0.940g/cm、MFR=6.5g/10分、融点=133℃)
(6)樟脳:白元製〔パラゾール(登録商標)、p−ジクロロベンゼン、1包み8g入り〕
(7)洗剤:花王社製〔ニユービーズ(登録商標)〕
(8)*1:完全接着しており、接着強度の測定不可であった。
(9)*2:材料破壊
【0085】
<耐臭い移行性試験>
比較例1及び実施例2で得られた発泡多層シートを用いて、樟脳及び洗剤入りの試験用試料を作製し、経時による臭い移行性を評価した。結果を表3に示す。
【0086】

【表3】

【0087】
<バリア性の評価試験>
比較例1及び実施例2で得られた発泡多層シートを用いて、臭いセンサー試験を行い、また、酸素透過度と水蒸気透過度を測定した。結果を表4に示す
【0088】
【表4】

【0089】
(脚注)
(1)臭いセンサー試験では、有意の差が得られたが、パネラーを用いた官能試験の方が実用的であると考えられる。
(2)酸素透過度:JIS K 7126−1987に規定されている「プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験方法」(差圧法)に従って、東洋精機製作所製の差圧式ガス透過試験機を用いて測定した。
(3)水蒸気透過度:JIS K 7129−1992に規定されている「プラスチックフィルム及びシートの水蒸気透過度試験方法」(感湿センサー法)に従って、Lyssy社製の水蒸気透過度計L80−5000を用いて測定した。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の多層シート及び断熱紙製容器は、カップ入り麺などの容器として利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 紙基材のロール
2 紙基材
3,5,8,13,14,16,17,22 ロール群
4,9,15 コロナ放電処理器
6 Tダイ
7 接着剤
10 PETフィルムのロール
11 PETフィルム
18 Tダイ
19 接着剤
20 高融点の熱可塑性樹脂
23 半製品シート巻回ロール
24 半製品シート
25,26,28,29,34,35 ロール群
27 コロナ放電処理器
30 Tダイ
31 低融点の熱可塑性樹脂
32 オゾン発生器
33 多層シート
36 製品多層シートの巻回ロール
301 低融点の熱可塑性樹脂層
302 紙基材層
303 接着剤層
304 PETフィルム層
305 接着剤層
306 高融点の熱可塑性樹脂層
401 発泡熱可塑性樹脂樹脂層
501 発泡多層シート試料
502 二つ折りした発泡多層シート試料
503 臭いの源となる物質
504 ヒートシール部
505 臭いの移行性試験用試料
506 ポリカーボネート製容器
507 蓋
601 デシケータ
602 臭いセンサー
603 臭いの移行性試験用試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の一方の表面に低融点の熱可塑性樹脂層が配置された層構成を有し、該低融点の熱可塑性樹脂層が該紙基材からの水分の加熱蒸発によって発泡可能な層である断熱紙製容器胴部材用多層シートにおいて、
1)紙基材の一方の表面に、低融点の熱可塑性樹脂層が接着剤層を介することなく隣接して配置され、
2)該紙基材の他方の表面には、接着剤層を介して、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層が配置され、
3)該熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の表面には、接着剤層を介して、高融点の熱可塑性樹脂層が配置され、
4)該高融点の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂が、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂であって、該低融点の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂よりも高融点の熱可塑性樹脂であり、並びに、
5)各接着剤層を形成する接着剤が、示差走査熱量計により測定した融点が該低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも高い接着性樹脂である
ことを特徴とする断熱紙製容器胴部材用多層シート。
【請求項2】
該低融点の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂が、示差走査熱量計により最高吸熱ピーク温度として測定される融点が105℃以上120℃未満の範囲内にある低密度ポリエチレンである請求項1記載の断熱紙製容器胴部材用多層シート。
【請求項3】
前記各接着剤層を形成する接着剤が、示差走査熱量計により最高吸熱ピーク温度として測定される融点が120℃以上の接着性樹脂である請求項1または2記載の断熱紙製容器胴部材用多層シート。
【請求項4】
前記各接着剤層を形成する接着剤が、示差走査熱量計による融点測定時に検知される吸熱ピーク温度の最終温度が130℃以上を示す接着性樹脂である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の断熱紙製容器胴部材用多層シート。
【請求項5】
前記各接着剤層を形成する接着剤が、酸変性ポリオレフィン樹脂と、中密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンとの重量比0.5:99.5〜50:50のブレンド物からなる接着性樹脂組成物である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の断熱紙製容器胴部材用多層シート。
【請求項6】
該熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の断熱紙製容器胴部材用多層シート。
【請求項7】
該高融点の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂が、示差走査熱量計により最高吸熱ピーク温度として測定される融点が120〜135℃の範囲内にある中密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンである請求項1乃至6のいずれか1項に記載の断熱紙製容器胴部材用多層シート。
【請求項8】
紙基材の坪量が100〜400g/mの範囲内であり、その含水率が2〜15重量%の範囲内である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の断熱紙製容器胴部材用多層シート。
【請求項9】
該多層シートが、「低融点の熱可塑性樹脂層/紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層/接着剤層/高融点の熱可塑性樹脂層」または「高融点の熱可塑性樹脂層/低融点の熱可塑性樹脂層/紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層/接着剤層/高融点の熱可塑性樹脂層」の層構成を有するものである請求項1乃至8のいずれか1項に記載の断熱紙製容器胴部材用多層シート。
【請求項10】
紙基材の一方の表面に低融点の熱可塑性樹脂層が配置された層構成を有し、該低融点の熱可塑性樹脂層が該紙基材からの水分の加熱蒸発によって発泡可能な層である断熱紙製容器胴部材用多層シートの製造方法において、
(1)紙基材の一方の表面に、接着剤を押出コーティングするとともに、該押出コーティングした接着剤層を介して、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂フィルムを圧接することにより、「紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層」の層構成を有する多層シート1を形成する工程1;
(2)該多層シート1の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂フィルムの表面に、接着剤と高融点の熱可塑性樹脂とを共押出コーティングして、「紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層/接着剤層/高融点の熱可塑性樹脂層」の層構成を有する多層シート2を形成する工程2;及び
(3)該多層シート2の紙基材の他方の表面に、低融点の熱可塑性樹脂を押出コーティングして、「低融点の熱可塑性樹脂層/紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層/接着剤層/高融点の熱可塑性樹脂層」の層構成を有する多層シート3を形成する工程3;
を含み、
該高融点の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂が、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂であって、該低融点の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂よりも高融点の熱可塑性樹脂であり、かつ、
各接着剤層を形成する接着剤が、示差走査熱量計により測定した融点が該低融点の熱可塑性樹脂の融点よりも高い接着性樹脂である
ことを特徴とする断熱紙製容器胴部材用多層シートの製造方法。
【請求項11】
該工程3において、低融点の熱可塑性樹脂と共に高融点の熱可塑性樹脂を共押出コーティングして、「高融点の熱可塑性樹脂層/低融点の熱可塑性樹脂層/紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層/接着剤層/高融点の熱可塑性樹脂層」の層構成を有する多層シート4を得る請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
該工程3の後、低融点の熱可塑性樹脂層の表面に、高融点の熱可塑性樹脂を押出コーティングする工程4を付加的に配置して、「高融点の熱可塑性樹脂層/低融点の熱可塑性樹脂層/紙基材/接着剤層/熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層/接着剤層/高融点の熱可塑性樹脂層」の層構成を有する多層シート4を得る請求項10記載の製造方法。
【請求項13】
紙基材の表面及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂フィルムの表面に、それぞれコロナ放電処理またはオゾン処理を施した後、各工程において(共)押出コーティングを行う請求項10乃至12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の断熱紙製容器胴部材用多層シートから形成された胴部材と底板部材とが容器の形状に組み立てられ、かつ、該低融点の熱可塑性樹脂層が発泡熱可塑性樹脂層を形成している断熱紙製容器。
【請求項15】
該発泡熱可塑性樹脂層が、該紙基材よりも外側の位置に配置されている請求項14記載の断熱紙製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−208174(P2010−208174A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57492(P2009−57492)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(509071677)株式会社ACT (1)
【Fターム(参考)】