説明

断熱金型、金型部品及び成形機

【課題】キャビティ空間において転写性にばらつきが生じるのを防止することができ、成形品の品質を高くすることができるようにする。
【解決手段】金型本体と、金型本体に取り付けられ、キャビティ空間C1、C2と対向する面に微細な凹凸のパターンを備える転写面が形成された転写部材と、転写部材の裏側に配設され、キャビティ空間C1、C2への成形材料の流入部に近いほど断熱性が高く、流入部から離れるほど断熱性が低くされた断熱層35とを有する。断熱層35は、キャビティ空間C1、C2への成形材料の流入部に近いほど断熱性が高く、流入部から離れるほど断熱性が低くされるので、キャビティ空間C1、C2の全体において転写性を高くすることができ、パターンを精度良く転写することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱金型、金型部品及び成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形機、例えば、射出成形機においては、加熱シリンダ内において溶融させられた樹脂が、金型装置内のキャビティ空間に充填され、該キャビティ空間内において冷却され、固化させられて成形品が成形されるようになっている。
【0003】
前記射出成形機は金型装置、型締装置及び射出装置を有し、該射出装置は、樹脂を加熱して溶融させる加熱シリンダ、該加熱シリンダの前端に取り付けられ、溶融させられた樹脂を射出する射出ノズル、前記加熱シリンダ内において回転自在に、かつ、進退自在に配設されたスクリュー等を備える。そして、前記金型装置は固定金型及び可動金型を備え、前記型締装置によって可動金型を進退させることにより、金型装置の型閉じ、型締め及び型開きが行われ、型締めに伴って、前記固定金型と可動金型との間にキャビティ空間が形成される。
【0004】
そして、計量工程において、前記スクリューが回転させられると、加熱シリンダ内に供給された樹脂が溶融させられてスクリューの前方に蓄えられ、それに伴って、スクリューが後退させられ、この間に、金型装置の型閉じ及び型締めが行われる。続いて、射出工程において、前記スクリューが前進させられ、前記スクリューの前方に蓄えられた樹脂が射出ノズルから射出され、キャビティ空間に充填される。次に、冷却工程において、前記キャビティ空間内の樹脂が冷却され固化されて、成形品が成形される。続いて、型開きが行われ、前記成形品が取り出される。
【0005】
ところで、成形サイクルを短くするために、キャビティ空間に隣接させて断熱材を配設するようにした金型装置、すなわち、断熱金型が提供されている。
【0006】
図2は従来の断熱金型の断面図である。
【0007】
図において、11は成形品、例えば、導光板を成形するための断熱金型、12は固定金型、13は該固定金型12に対して進退自在に配設された可動金型である。図示されない型締装置は、可動金型13を前進させて型閉じを行い、可動金型13を前記固形金型12に当接させて型締めを行い、これに伴って固定金型12と可動金型13との間に矩形の形状を有するキャビティ空間C1、C2を形成し、可動金型13を固定金型12から離して型開きを行う。
【0008】
また、15は固定金型12に形成されたスプルー15であり、該スプルー15の先端とキャビティ空間C1、C2とがゲートg1、g2を介して連通させられる。
【0009】
そして、前記可動金型13は上板21、及び該上板21を受ける下板22を備え、前記キャビティ空間C1、C2内の可動金型13における固定金型12と対向する面には、入れ子24が取り付けられ、該入れ子24の固定金型12と対向する面に、微小な凹凸が所定のパターンで形成された転写面が形成される。また、前記上板21における入れ子24と当接する面には、断熱材から成る断熱層25が取り付けられる。そして、前記下板22に温調流路23が形成され、該温調流路23に温調媒体を流すことによって断熱金型11及びキャビティ空間C1、C2内の樹脂を冷却することができる。
【0010】
また、前記断熱金型11に対して図示されない射出装置が進退自在に配設され、型締めが行われた状態の断熱金型11の前記スプルー15に、前記射出装置の射出ノズルを押し当て、射出ノズルから樹脂を射出すると、樹脂はゲートg1、g2を介してキャビティ空間C1、C2に充填される。
【0011】
そして、各キャビティ空間C1、C2内の樹脂は、前記温調媒体によって冷却され、固化させられ、このとき、前記入れ子24の転写面のパターンが樹脂に転写される。続いて、型開きを行うと、導光板を成形することができる。
【0012】
ところで、前記断熱金型11においては、入れ子24の裏側に断熱層25が配設されるとともに、温調媒体による冷却温度が、通常の金型装置より低くされる。したがって、キャビティ空間C1、C2に樹脂が充填されたときに、ゲートg1、g2を介して進入した樹脂の温度が断熱層25によって一時的に保持され、続いて、キャビティ空間C1、C2内をゲートg1、g2から離れた部分、すなわち、非ゲート側部分に向けて移動するのに従って、急速に冷却される。その結果、通常の金型装置より早く型開きが可能な状態にされ、樹脂の充填が開始されたタイミングから型開きを開始するタイミングまでの型開待機時間を短縮することができ、成形サイクルを短くすることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−34663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記従来の断熱金型11においては、型開待機時間の短縮を優先すると、導光板の品質がその分低くなってしまう。
【0014】
特に、導光板のような、薄い成形品を成形する場合には、キャビティ空間C1、C2に樹脂を充填した後に、ゲートg1、g2に近い部分、すなわち、ゲート側部分の樹脂の温度が低くなる速度が高いのに対して、非ゲート側部分の樹脂の温度が低くなる速度が低く、温度差が生じる。したがって、前記転写面のパターンを樹脂に転写するに当たり、ゲート側部分は、樹脂の温度が早くガラス転移温度になるのに対して、非ゲート側部分は、樹脂の温度が遅くガラス転移温度になる。
【0015】
その結果、非ゲート側部分の転写性が高く、パターンを精度良く転写することができるのに対して、ゲート側部分の転写性が低く、パターンを精度良く転写することができない。すなわち、キャビティ空間C1、C2において転写性にばらつきが生じ、導光板の品質が低くなってしまう。
【0016】
本発明は、前記従来の断熱金型11の問題点を解決して、キャビティ空間において転写性にばらつきが生じるのを防止することができ、成形品の品質を高くすることができる断熱金型、金型部品及び成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そのために、本発明の断熱金型においては、金型本体と、該金型本体に取り付けられ、キャビティ空間と対向する面に微細な凹凸のパターンを備える転写面が形成された転写部材と、該転写部材の裏側に配設され、前記キャビティ空間への成形材料の流入部に近いほど断熱性が高く、流入部から離れるほど断熱性が低くされた断熱層とを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、断熱金型においては、金型本体と、該金型本体に取り付けられ、キャビティ空間と対向する面に微細な凹凸のパターンを備える転写面が形成された転写部材と、該転写部材の裏側に配設され、前記キャビティ空間への成形材料の流入部に近いほど断熱性が高く、流入部から離れるほど断熱性が低くされた断熱層とを有する。
【0019】
この場合、断熱層は、前記キャビティ空間への成形材料の流入部に近いほど断熱性が高く、流入部から離れるほど断熱性が低くされるので、キャビティ空間の全体において転写性を高くすることができ、パターンを精度良く転写することができる。したがって、キャビティ空間の全体において転写性にばらつきが生じるのを防止することができるので、成形品の品質を高くすることができる。
【0020】
また、必要なだけの転写時間を確保することができるので、複雑なパターンであっても精度良く転写することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、成形機としての射出成形機について説明する。
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態における断熱金型の断面図、図3は本発明の第1の実施の形態における樹脂の温度特性を示す第1の図、図4は本発明の第1の実施の形態における樹脂の温度特性を示す第2の図である。なお、図3及び4において、横軸に時間を、縦軸に樹脂の温度を採ってある。
【0023】
図において、11は成形品、例えば、導光板を成形するための金型装置としての断熱金型、12は第1の金型としての固定金型、13は該固定金型12に対して進退自在に配設された第2の金型としての可動金型である。
【0024】
そして、該可動金型13は型板としての、かつ、第1の金型部品としての上板21、該上板21を受ける受け板としての、かつ、第2の金型部品としての下板22等を備え、型締めに伴って固定金型12と可動金型13との間に形成される前記キャビティ空間C1、C2内の可動金型13における固定金型12と対向する面には、転写部材としての入れ子24が取り付けられ、該入れ子24の固定金型12と対向する面に、微小な凹凸が所定のパターンで形成された転写面が形成される。なお、上板21及び下板22は、剛性を保つためにステンレス鋼によって形成され、金型本体を構成し、入れ子24は、加工性を良好にするために、主としてニッケル(Ni)によって形成される。
【0025】
ところで、本実施の形態においては、成形サイクルを短くするために、前記上板21における入れ子24と当接する面には、断熱材から成る断熱層35が取り付けられ、支持部81によって支持される。そして、前記下板22に温調流路23が形成され、該温調流路23に、図示されない温調器から供給された温調媒体を流すことによって断熱金型11及びキャビティ空間C1、C2内の成形材料としての図示されない樹脂を冷却することができる。なお、本実施の形態においては、前記断熱材として、ジルコニア等のセラミック、又はポリイミド等の樹脂を使用することができる。
【0026】
また、15は固定金型12に形成されたスプルーであり、該スプルー15の先端とキャビティ空間C1、C2とが、樹脂の流入部であるゲートg1、g2を介して連通させられる。
【0027】
図示されない型締装置を作動させることによって、前記可動金型13を前進させ、型閉じを行い、可動金型13を前記固形金型12に当接させて型締めを行い、これに伴って固定金型12と可動金型13との間にキャビティ空間C1、C2を形成し、可動金型13を固定金型12から離して型開きを行う。
【0028】
前記型締装置は、第1のプラテンとしての固定プラテン、ベースプレートとしてのトグルサポート、前記固定プラテンとトグルサポートとの間に架設されたタイバー、固定プラテンと対向させて、かつ、タイバーに沿って進退自在に配設された第2のプラテンとしての可動プラテン、及び該可動プラテンとトグルサポートとの間に配設されたトグル機構、型締用の駆動部としての型締用モータ等を備える。そして、前記固定プラテン及び可動プラテンに、互いに対向させて前記固定金型12及び可動金型13がそれぞれ取り付けられる。
【0029】
また、前記固定プラテンと対向させて図示されない射出装置が配設される。該射出装置は、シリンダ部材としての加熱シリンダ、該加熱シリンダ内において、回転自在に、かつ、進退自在に配設された射出部材としてのスクリュー、前記加熱シリンダの前端に取り付けられた射出ノズル、前記加熱シリンダの後端の近傍に配設されたホッパ、前記スクリューと連結された計量用の駆動部としての計量用モータ、前記スクリューと連結された射出用の駆動部としての射出用モータ等を備える。
【0030】
次に、前記型締装置において、型締用モータを駆動すると、トグル機構が伸展させられ、可動プラテンが前進させられて型閉じが行われ、可動金型13が固定金型12に当接させられる。続いて、型締用モータを更に駆動すると、トグル機構において型締力が発生させられ、該型締力で可動金型13が固定金型12に押し付けられる。
【0031】
一方、前記射出装置においては、計量工程において、計量用モータを駆動し、スクリューを回転させると、ホッパから供給された樹脂は、加熱シリンダ内において加熱されて溶融させられ、前方に移動して、スクリューの前方に溜められる。これに伴って、スクリューは、所定の位置まで後退させられる。
【0032】
また、射出工程において、型締めが行われた状態の断熱金型11の前記スプルー15に、前記射出装置の射出ノズルを押し当て、射出用モータを駆動し、スクリューを前進させると、スクリューの前方に溜められた樹脂は射出ノズルから射出され、ゲートg1、g2を介して前記キャビティ空間C1、C2に充填される。
【0033】
そして、各キャビティ空間C1、C2内の樹脂は、前記温調媒体によって冷却され、固化させられ、このとき、前記入れ子24の転写面のパターンが樹脂に転写される。
【0034】
続いて、前記型締用モータを逆方向に駆動すると、トグル機構が屈曲させられ、可動プラテンが後退させられ、型開きが行われる。このようにして、導光板を成形することができる。
【0035】
ところで、前記断熱金型11においては、入れ子24の裏側に断熱層35が配設されるとともに、温調媒体による冷却温度が、通常の金型装置より低くされる。したがって、キャビティ空間C1、C2に樹脂が充填されたときに、ゲートg1、g2を介して進入した樹脂の温度が断熱層35によって一時的に保持され、続いて、キャビティ空間C1、C2内を非ゲート側部分に向けて移動するのに従って、急速に冷却される。その結果、通常の金型装置より早く型開きが可能な状態にされ、樹脂の充填が開始されたタイミングから型開きを開始するタイミングまでの型開待機時間を短縮することができ、成形サイクルを短くすることができる。
【0036】
ところが、前記型開待機時間の短縮を優先すると、導光板の品質がその分低くなってしまう。
【0037】
特に、導光板のような、薄い成形品を成形する場合には、キャビティ空間C1、C2に樹脂を充填した後に、ゲート側部分の樹脂は、入れ子24に早く接触するので、温度が低くなる速度が高いのに対して、非ゲート側部分の樹脂は、入れ子24に遅く接触するので、温度が低くなる速度が低く、温度差が生じる。
【0038】
したがって、前記転写面のパターンを樹脂に転写するに当たり、ゲート側部分においては、樹脂の温度が早くガラス転移温度になり、樹脂が急速に固化すると、転写性が低くなり、パターンを精度良く転写することができなくなってしまう。一方、非ゲート側部分においては、樹脂の温度が遅くガラス転移温度になり、樹脂が緩やかに固化すると、転写性が高くなり、パターンを精度良く転写することができる。
【0039】
すなわち、キャビティ空間C1、C2において転写性にばらつきが生じ、導光板の品質が低くなってしまう。
【0040】
そこで、本実施の形態においては、ゲートg1、g2に近くなるほど前記断熱層35による断熱性を高くし、ゲートg1、g2から離れるほど前記断熱層35による断熱性を低くするようにしている。そのために、前記断熱層35の厚さが段階的に変化させられ、ゲートg1、g2に近くなるほど断熱層35が厚くされ、ゲートg1、g2から離れるほど断熱層35が薄くされる。
【0041】
したがって、ゲート側部分の樹脂の温度、及び非ゲート側部分の樹脂の温度がガラス転移温度になるタイミングを近づけることができる。
【0042】
すなわち、図1に示されるように、非ゲート側部分における入れ子24に近い所定の部分を外側表面部Pofとしたとき、キャビティ空間C1、C2に樹脂を充填した後の外側表面部Pofの温度Tofは、本発明のような断熱層35を使用した場合でも、従来の技術のような断熱層25(図2参照)を使用した場合でも、図3に示される線Lofのように推移し、タイミングtaでガラス転移点Tγ(約150〔℃〕)になる。また、ゲート側部分における入れ子24に近い所定の部分を内側表面部Pifとしたとき、内側表面部Pifの温度Tifは、従来の技術のような断熱層25を使用した場合、線Lif1のように推移し、タイミングtbでガラス転移点Tγになるのに対して、本発明のような断熱層35を使用した場合、線Lif2のように推移し、タイミングtcでガラス転移点Tγになる。
【0043】
このように、本実施の形態においては、断熱層35が配設されるので、温度Tof、Tifは、ほぼ同じタイミングta、tcでガラス転移点Tγになり、固化する。すなわち、キャビティ空間C1、C2のいずれの表面部分も、ほぼ同じタイミングta、tcでガラス転移点Tγになり、固化する。
【0044】
したがって、キャビティ空間C1、C2の全体において転写性を高くすることができ、パターンを精度良く転写することができる。すなわち、キャビティ空間C1、C2の全体において転写性にばらつきが生じるのを防止することができ、導光板の品質を高くすることができる。
【0045】
また、必要なだけの転写時間を確保することができるので、複雑なパターンであっても精度良く転写することができる。
【0046】
また、図1に示されるように、非ゲート側部分のキャビティ空間C1、C2の厚さ方向におけるほぼ中央の所定の部分を外側中心部Pomとしたとき、キャビティ空間C1、C2に樹脂を充填した後の外側中心部Pomの温度Tomは、本発明のような断熱層35を使用した場合でも、従来の技術のような断熱層25を使用した場合でも、図4に示される線Lomのように推移し、タイミングteでガラス転移点Tγになる。また、ゲート側部分のキャビティ空間C1、C2の厚さ方向におけるほぼ中央の所定の部分を内側中心部Pimとしたとき、内側中心部Pimの温度Timは、従来の技術のような断熱層25を使用した場合、線Lim1のように推移し、タイミングtfでガラス転移点Tγになるのに対して、本発明のような断熱層35を使用した場合、線Lim2のように推移し、タイミングtgでガラス転移点Tγになる。
【0047】
このように、本実施の形態においては、断熱層35が配設されるので、温度Tom、Timは、ほぼ同じタイミングte、tgでガラス転移点Tγになり、固化する。すなわち、キャビティ空間C1、C2のいずれの中心部分も、ほぼ同じタイミングte、tgでガラス転移点Tγになり、固化する。
【0048】
したがって、断熱層35を配設することによって、樹脂が固化するタイミングが遅くならないので、型開きを行うタイミングが遅くならない。その結果、成形サイクルが短くなる。
【0049】
次に、断熱層35の厚さを変更したときの転写性のばらつきを評価した結果について説明する。この場合、樹脂の充填時の温度、すなわち、初期温度を350〜400〔℃〕とし、樹脂の流れ速度を450〔mm/s〕とし、キャビティ空間C1、C2の厚さを0.6〔mm〕とし、温調媒体の温度を120〔℃〕として、非ゲート側部分の断熱層35の厚さを0.3〔mm〕とし、ゲート側部分の厚さを異ならせて0.3、0.5、0.7、0.9及び1.1〔mm〕として、転写性のばらつきの評価評価を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1において、×は転写性のばらつきが大きいことを、○は転写性のばらつきが小さいことを、◎は転写性のばらつきが極めて小さいことを表す。
【0052】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0053】
図5は本発明の第2の実施の形態における断熱金型の断面図である。
【0054】
この場合、断熱層45の厚さが連続的に変化させられ、前記流入部であるゲートg1、g2に近くなるほど断熱層45が厚くされ、ゲートg1、g2から離れるほど断熱層45が薄くされる。
【0055】
次に、成形品、例えば、ディスク基板を成形するためのディスク成形金型としての断熱金型に適用した本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0056】
図6は本発明の第3の実施の形態における断熱金型の断面図である。
【0057】
図において、53は第1の金型としての図示されない固定金型に対して進退自在に配設された第2の金型としての可動金型であり、該可動金型53は、円形の形状を有する型板としての、かつ、第1の金型部品としての鏡面盤61、及び該鏡面盤61を受ける受け板としての、かつ、第2の金型部品としてのベースプレート62を備え、キャビティ空間C3内の可動金型53における固定金型と対向する面には、転写部材としてのスタンパ64が取り付けられ、該スタンパ64の固定金型と対向する面に、微小な凹凸が所定のパターンで形成された転写面Saが形成される。また、前記スタンパ64の周囲には、環状のキャビリング69が鏡面盤61に取り付けられる。なお、鏡面盤61及びベースプレート62は、剛性を保つためにステンレス鋼によって形成され、金型本体を構成し、スタンパ64は、加工性を良好にするために、主としてニッケル(Ni)によって形成される。
【0058】
ところで、本実施の形態においては、成形サイクルを短くするために、前記鏡面盤61におけるスタンパ64と当接する面には、断熱材から成る断熱層65が取り付けられ、支持部81によって支持される。そして、前記ベースプレート62に温調流路23が形成され、該温調流路23に、図示されない温調器から供給された温調媒体を流すことによって断熱金型及びキャビティ空間C3内の成形材料としての図示されない樹脂を冷却することができる。なお、本実施の形態においては、前記断熱材として、ジルコニア等のセラミック、又はポリイミド等の樹脂を使用することができる。
【0059】
前記断熱層65は、厚さが段階的に変化させられ、樹脂の流入部である中央に近くなるほど断熱層65が厚くされ、中央から離れるほど断熱層65が薄くされる。
【0060】
そのために、前記断熱層65は、直径の異なる複数の、本実施の形態においては、三つの断熱板66〜68を、上方から下方に向けて直径の大きい順に、同心状に重ねることによって形成される。
【0061】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0062】
図7は本発明の第4の実施の形態における断熱金型の断面図である。
【0063】
この場合、断熱層75の厚さが連続的に変化させられ、成形材料としての図示されない樹脂の流入部である中央に近くなるほど断熱層75が厚くされ、中央から離れるほど断熱層75が薄くされる。
【0064】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態における断熱金型の断面図である。
【図2】従来の断熱金型の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における樹脂の温度特性を示す第1の図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における樹脂の温度特性を示す第2の図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における断熱金型の断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態における断熱金型の断面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態における断熱金型の断面図である。
【符号の説明】
【0066】
11 断熱金型
21 上板
22 下板
24 入れ子
35、45、65、75 断熱層
61 鏡面盤
62 ベースプレート
64 スタンパ
81 支持部
C1〜C3 キャビティ空間
g1、g2 ゲート
Sa 転写面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金型本体と、
(b)該金型本体に取り付けられ、キャビティ空間と対向する面に微細な凹凸のパターンを備える転写面が形成された転写部材と、
(c)該転写部材の裏側に配設され、前記キャビティ空間への成形材料の流入部に近いほど断熱性が高く、流入部から離れるほど断熱性が低くされた断熱層とを有することを特徴とする断熱金型。
【請求項2】
前記断熱層は、前記キャビティ空間への成形材料の流入部に近いほど厚く、流入部から離れるほど薄くされる請求項1に記載の断熱金型。
【請求項3】
前記断熱層の厚さは段階的に変更される請求項2に記載の断熱金型。
【請求項4】
前記断熱層の厚さは連続的に変更される請求項2に記載の断熱金型。
【請求項5】
凹凸のパターンを備える転写面が形成された転写部材の裏側に配設される金型部品において、
(a)キャビティ空間への成形材料の流入部に近いほど断熱性が高く、流入部から離れるほど断熱性が低くされた断熱層と、
(b)該断熱層を支持する支持部とを有することを特徴とする金型部品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の断熱金型を有する成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−320261(P2007−320261A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155152(P2006−155152)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】