説明

断線予測機能付ロボットケーブル

【課題】ロボットケーブルの断線時期を正確に予測し、交換時期を適切に決定できるようにする。
【解決手段】ロボットの可動部2、3との電気的接続に使用されるロボットケーブル10において、機械的寿命がそれぞれ異なる上に、いずれも主要芯線11、12の機械的寿命より短い複数の断線検知用芯線13〜15を、長さ方向に沿ったケーブル内に、主要芯線と一体的に配設すると共に、前記各断線検知用芯線13〜15は、一端が同側に配設され、他端が互いに電気的に接続された送信線13a〜15aと受信線13b〜15bとから、それぞれ対形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断線予測機能付ロボットケーブル、特に電子部品実装装置が備えているXY軸上に配置されて、曲げ伸ばし等の動作が繰返されるロボットケーブルの摩耗及び疲労等の機械的劣化により断線時期が近づいたことを事前に予測することが可能な断線予測機能付ロボットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、産業用ロボット等のメカトロニクス機器においては、可動部を動かすために設けられたアクチュエータに対する電力供給や制御等のためにアクチュエータと制御部又は電源部とを接続するロボットケーブルが用いられている。
【0003】
例えば、電子部品実装装置では、電子部品を吸着して基板上に搭載する搭載ヘッド(ユニットヘッド)を駆動するためのXY軸を備えており、XY軸の動作によりXY軸上に配線されたロボットケーブルが一緒に動作するため、経時的な摩耗及び疲労等に起因する機械的劣化により断線を起こすことがある。
【0004】
このようなロボットケーブルの断線に対して、従来の電子部品実装装置では、使用時の動作状況に関係なく装置の稼動時間からその交換時期を決め、その時間に到達した時点で交換する方法を採用していた。
【0005】
又、その一方、ロボットケーブルの交換時期を知るための先行技術として、信号線より断線し易い特性を持つ断線検知用の芯線をロボットケーブルに入れ、該断線検知用芯線の断線を監視することにより、ロボットケーブルの交換時期を決めるようにしたものが、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−56726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ロボットケーブルの交換時期を稼動時間から一律に決める方法には、通常、電子部品実装装置の動作状況がユーザ毎に異なることから、ロボットケーブルの摩耗及び疲労等による機械的劣化の度合も異なるために、ロボットケーブルが断線する時期もユーザ毎に異なることになり、想定した交換時期より早く断線したり、逆に実際の断線時期に比べて交換時期が早すぎてしまったりするという問題があった。
【0008】
又、前記特許文献1に開示されている、交換時期を知るために断線検知用芯線をロボットケーブルに入れる技術には、ロボットケーブルを構成する信号線等の他の芯線との関係で断線検知用芯線がケーブルのどの位置(場所)に入れられるか等の理由により断線する時期が早すぎたり、遅すぎたりするばらつきが出ることから、断線検知用芯線の断線後にロボットケーブルの適切な交換時期を決定することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、ロボットケーブルの断線時期を正確に予測することができることから、交換時期を適切に決定することができるロボットケーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ロボットの可動部との電気的接続に使用されるロボットケーブルにおいて、機械的寿命がそれぞれ異なる上に、いずれも主要芯線の機械的寿命より短い複数の寿命の断線検知用芯線を、長さ方向に沿ったケーブル内に、主要芯線と一体的に配設したことにより、前記課題を解決したものである。
【0011】
前記各断線検知用芯線は、一端が同側に配設され、他端が互いに電気的に接続された一対の送信線と受信線とから、それぞれ形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、機械的寿命の異なる複数の断線検知用芯線の断線を監視した結果から、使用中のロボットケーブルの断線時期が近づきつつあることを段階的に予測することができるため、該ロボットケーブルを交換すべき適切な時期を正確に決定することができ、ロボットケーブルの交換を装置稼動時以外の時間に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る一実施形態のロボットケーブルが適用される電子部品実装装置の概要を示す斜視図
【図2】本実施形態のロボットケーブルとロボットケーブルユニットとの関係を示す模式図
【図3】本実施形態のロボットケーブルに適用される断線予測システムを示す説明図
【図4】本実施形態のロボットケーブルによる断線予測方法の手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1には本発明に係る一実施形態のロボットケーブルが適用される電子部品実装装置の概要を示す斜視図である。
【0016】
この電子部品実装装置1は、X軸モータ2により駆動されるヘッドユニット3をX方向に移動させるX軸4と、図示しないY軸モータにより駆動されるヘッドユニット3をX軸4と一体でY方向に移動させる2つのYR軸5、YL軸6とを備えている。
【0017】
この実装装置1では、X軸モータ2に電力や制御信号を伝送するためのX軸用のロボットケーブルユニット7がX軸上に配置されている。同様に、Y軸モータに電力や制御信号を伝送するためのY軸用のロボットケーブルユニット7がY軸上に配置されている。又、これらのX・Y軸用のロボットケーブルユニット7を介して、各モータを制御するためのコントローラ8が装置ベースの内部に設置されている。
【0018】
前記ロボットケーブルユニット7は、図2に模式的に示すような複数の単位となるロボットケーブル10が屈曲可能なケース内に収容された構造からなり、本実施形態のロボットケーブルは、この単位ケーブルに相当する。
【0019】
図3には、図2の左端に示した本実施形態のロボットケーブル10について前記コントローラ8との接続状態のイメージを示す。
【0020】
この図に示されるように、本実施形態のロボットケーブル10は、前記ヘッドユニット3及びX軸モータ2にそれぞれ接続され、信号線として用いられる芯線11及び12等のように、ケーブルとしての主要な機能を有する主要芯線の他に、ケーブルの断線時期を予測するために、第1〜第3の断線検知用芯線13〜15を、長さ方向に一体的に並べた構造に形成されている。
【0021】
ここで、ロボットケーブル10を構成している芯線は、信号線としての単位となるもので、素材となる細い銅線からなる素線を多数束ねて(縒り合せて)形成されている。
【0022】
このロボットケーブル10で採用されている全ての芯線11〜15は、いずれも素材や太さが同一の素線を束ねて形成してあり、各芯線は図示されているように太さが11(12)<13<14<15の順で形成されている。即ち、束ねた素線の本数がこの順で多くなっている。
【0023】
このように、本実施形態に使用されているロボットケーブル10は、太さ、即ち素線の本数が異なる第1〜第3の断線検知用芯線13〜15と、それが同一の多数の主要芯線11(12等)とを張り合わせて(一体的に束ねて)できている。
【0024】
一般に、ケーブルを構成する芯線の摩耗及び疲労等に起因する機械的劣化による断線は、屈曲半径と芯線に係る負荷(以下、芯線負荷という)の大きさで決まる。又、芯線負荷の大きさは、芯線を構成する素線の太さと本数で決まる。具体的には、芯線を構成する素線が太いほど芯線負荷が大きく、又素線の太さが同じならば本数が多いほど芯線負荷が大きくなり、断線し易くなる。
【0025】
即ち、本実施形態のロボットケーブル10では、芯線の寿命の長さは、芯線自体の径の太さとは逆に、15<14<13<11(12)の順になり、第3断線検知用芯線15が一番切れ易い(短い)ことになる。
【0026】
又、ロボットケーブル間では芯線の本数が多いほど摩擦や疲労等による断線は起こり易くなる。そこで、ロボットケーブルユニット7に含まれるロボットケーブルのいずれかに、本実施形態のロボットケーブル10を適用する場合、芯線の数が異なっている場合には、一番芯線の数が多いケーブル中に断線予測用として第1〜第3断線検知用芯線13〜15を挿入(配設)した構成とする。但し、断線検知用芯線は全て、できるだけ負荷が同一の位置、例えば図示されているようなケーブルの周縁部に配設した構成にすることが好ましい。
【0027】
このようにすることにより、ロボットケーブル10における摩耗及び疲労による断線は第3断線検知用芯線15に一番早く起こることになる。
【0028】
従って、本実施形態においては、ロボットケーブルに含まれる第1〜第3断線検知用芯線13〜15の断線を常時監視することにより、各断線検知用芯線の実際の断線を段階的に検知(把握)することが可能となり、これにより予め作成してある主要芯線11(12)の断線時期との関係(データ)から、例えば第1断線検知用芯線13が断線した時点から、例えば1週間が主要芯線11(12)の断線時期であると予測し、その前にロボットケーブルを交換する如く、交換時期を適切に決定することが可能となる。
【0029】
次に、本実施形態のロボットケーブルに適用されている断線検知システムについて、前記図3を参照して説明する。
【0030】
本実施形態のロボットケーブルに挿入されている第1〜第3の各断線検知用芯線13〜15が、それぞれ図示されているように送信線13a〜15a、受信線13b〜15bの各対で構成されており、各対毎に一端は同側で前記コントローラ8に接続され、他端はショートケーブル16を介して互いに連結され、電気的に接続された構成になっている。
【0031】
次に、電子部品実装装置1における基板生産時に実施する断線予測のための監視について、図4のフローチャートに従って説明する。
【0032】
図3に併記したように、コントローラ8において第1〜第3の各断線検知用送信線13a〜15aの端部から、常時パルス信号を送信し(ステップ1)、各断線検知用受信線13b〜15bの端部からその信号を受信すると共に(ステップ2)、その受信信号の解析を行なう(ステップ3)。
【0033】
解析した結果、発信したパルス信号が正常に受信されたか否かを判定する監視を行ない(ステップ4)、正常な場合は受信信号の解析を継続する。一方、パルス信号が受信されない異常な場合は、どの断線検知用芯線が断線したかを把握(検知)する。
【0034】
断線は、第3芯線15→第2芯線14→第1芯線13(“断線検知用”を省略)の順に発生するので、コントローラ8はそれぞれの信号の受信状態を監視することにより、ロボットケーブル10の断線時期を正確に予測することができると共に、交換時期が近づいていることを段階的に把握することができる。
【0035】
この情報をモニタ等により常時表示することにより、操作者にロボットケーブル10の交換時期をより適切に、正確に決定して通知することができるようになる。
【0036】
以上詳述した本実施形態によれば、ロボットケーブルの断線時期を段階的に把握する複数の断線検知用芯線の断線時期から正確に予測することができるようになり、その結果、交換時期を適切に決定することができるようになった。
【0037】
従って、メンテナンス等の装置稼動時以外の時間にロボットケーブルの交換を行なうことができると共に、基板生産時にロボットケーブルの断線に伴う装置稼動停止時間を無くすことが可能となり、生産効率の向上を図ることが可能となる。
【0038】
又、各断線検知用芯線を送信線と受信線からなる対構成としたので、断線検知用の信号の発信器と受信器を同側に設置できるため、検知システムをコンパクトにできる。
【0039】
なお、前記実施形態では、本発明のロボットケーブルとしては、断線時期が異なる断線検知用芯線を、同一の太さの素線の本数を変更して調整する場合を示したが、これに限定されず、逆に本数を同一にして芯線の太さを変更して調整するようにしても良い。
【0040】
又、発信器と受信機を同側に設けることはできないが、各断線検知用芯線を1本で構成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…電子部品実装装置
2…X軸モータ
3…ヘッドユニット
4…X軸
5…YR軸
6…YL軸
7…ロボットケーブルユニット
8…コントローラ
10…ロボットケーブル(単位ケーブル)
11、12…信号線
13…第1断線検知用芯線
13a…第1断線検知用送信線
13b…第1断線検知用受信線
14…第2断線検知用芯線
14a…第2断線検知用送信線
14b…第2断線検知用受信線
15…第3断線検知用芯線
15a…第3断線検知用送信線
15b…第3断線検知用受信線
16…ショートケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの可動部との電気的接続に使用されるロボットケーブルにおいて、
機械的寿命がそれぞれ異なる上に、いずれも主要芯線の機械的寿命より短い複数の寿命の断線検知用芯線を、長さ方向に沿ったケーブル内に、主要芯線と一体的に配設したことを特徴とする断線予測機能付ロボットケーブル。
【請求項2】
前記各断線検知用芯線は、一端が同側に配設され、他端が互いに電気的に接続された一対の送信線と受信線とから、それぞれ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の断線予測機能付ロボットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−42004(P2011−42004A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191366(P2009−191366)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】