説明

断線検出回路

【課題】通電回路にて通電対象への通電を行ったままの状態で通電回路の断線を検出できるようにする。
【解決手段】通電回路に通電対象となるソレノイド1とは別に断線検出用にコイル5を備え、通電回路のうちのコイル5と通電対象となるソレノイド1の間の部分の電位を通電対象側電位として検出する。そして、通電対象側電位が通電対象側閾電位以上となった場合に、ソレノイド1の断線、コイル5よりもローサイド側の部分の様々な断線を検出する。このようにして断線を検出することで、ソレノイド1への通電を行うための第2トランジスタ4をオンしたままの状態で通電回路の断線を検出することが可能となる。そして、第2トランジスタ4をオンしたままの状態で断線検出できることから、第2トランジスタ4をオフに切替えなければ断線検出できない場合のように、増圧制御弁の駆動に影響を与えないで済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電対象に電流を流す通電回路に適用され、通電回路の断線を検出する断線検出回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、断線検出回路を構成するソレノイド断線診断装置が提案されている。このソレノイド断線診断装置では、ソレノイドに対してトランジスタを直列接続すると共に、ソレノイドとトランジスタの間にツェナーダイオードを接続し、ツェナーダイオードを介してマイクロコンピュータおよびトランジスタのゲートにソレノイドとトランジスタの間の電位に対応する電位が入力されるようにしている。
【0003】
このような構成では、ソレノイドが断線していなければ、トランジスタをオンからオフに切替えた時にL負荷であるソレノイドによって発生させられるフライバック電圧がツェナーダイオードのツェナー降伏電圧を超える。このため、トランジスタをオンからオフに切替えた時に、フライバック電圧がツェナーダイオードのツェナー降伏電圧を超えてトランジスタにゲート電圧が印加されればソレノイドが断線しておらず、ゲート電圧が印加されることなく0Vのままであればソレノイドが断線したと検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3−128868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トランジスタがオンのときにはソレノイドが断線しているか否かにかかわらずソレノイドとトランジスタの間の電位がローレベルとなるため、トランジスタをオンしている最中にソレノイドの断線が発生してもソレノイドの断線を検出することができない。このため、ソレノイドの断線検出を行うためには必ずトランジスタをオンからオフに切替えなければならない。
【0006】
例えば、特許文献1の技術をブレーキ制御に用いられる増圧制御弁、つまりマスタシリンダと各ホイールシリンダとの間において各ホイールシリンダの増圧を制御するノーマルオープン弁に備えられるソレノイドの断線検出に適用することができる。このような場合において、ブレーキ制御中に断線検出のためにソレノイドへの通電をオンからオフに切替えなければならないと、増圧制御弁の駆動に影響し、適切なブレーキ制御が行えなくなる可能性がある。また、ブレーキ制御の影響を最小限とするために、オフの期間を短時間にすると、フライバック電圧が十分に大きくなる前にオンに戻され、的確なソレノイドの断線検出が行えなくなる可能性がある。したがって、トランジスタをオンからオフに切替えなくても、ソレノイドの断線検出が行えるようにすることが望まれる。
【0007】
なお、ここでは通電対象としてソレノイドを例に挙げて説明したが、ソレノイド以外の通電対象に対して電流を流す通電回路についても同様のことが言え、通電回路への電流のオンオフを制御するためのトランジスタをオンしたままの状態で通電回路の断線を検出できるようにすることが必要である。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、通電対象に電流を流す通電回路の断線を検出する断線検出回路において、通電回路にて通電対象への通電を行ったままの状態で通電回路の断線を検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、電源(+BS)と通電対象(1)との間に備えられたコイル(5)と、通電回路のうちコイル(5)と通電対象(1)との間の電位である通電対象側電位を検出する通電対象側電位検出手段(6、6a〜6c)と、通電対象側電位検出手段(6、6a〜6c)により検出された通電対象側電位が所定の通電対象側閾電位以上となったときに、通電回路のうちコイル(5)よりもローサイド側の部分が断線したことを検出する断線検出手段(6d)と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
このように、通電回路に通電対象(1)とは別に断線検出用にコイル(5)を備え、通電回路のうちのコイル(5)と通電対象(1)の間の部分の電位を通電対象側電位として検出している。そして、通電対象側電位が通電対象側閾電位以上となった場合に、コイル(5)よりもローサイド側の部分の様々な断線を検出する。このようにして断線を検出することで、通電対象(1)への通電を行ったままの状態で通電回路の断線を検出することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、通電回路のうち電源(+BS)とコイル(5)との間の電位である電源側電位を検出する電源側電位検出手段(6、6e〜6g)を備え、断線検出手段(6d)は、通電対象側電位検出手段(6、6a〜6c)により検出された通電対象側電位が通電対象側閾電位以上となった時点に、電源側電位検出手段(6、6e〜6g)により検出された電源側電位が所定の電源側閾電位未満である場合に、通電回路のうちコイル(5)よりもローサイド側の部分が断線したことを検出することを特徴としている。
【0012】
このように、通電対象側電位に加えて電源側電位を検出するようにすれば、通電対象側電位が通電対象側閾電位以上となった時点に、電源側電位が所定の電源側閾電位未満である場合に、通電回路のうちコイル(5)よりもローサイド側の部分が断線したことを検出することができる。このようにすれば、コイル(5)のインダクタンスLを小さくしても、電源ノイズが発生した際にフライバック電圧として認識されないようにでき、電源ノイズなのに断線が検出されるという誤検出を防止できる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、コイル(5)は、電源(+BS)と通電対象(1)との間を接続する印刷配線を部分的にコイル形状パターンとすることにより構成されていることを特徴としている。
【0014】
このように印刷配線によってコイル(5)を構成すれば、ディスクリート素子とする場合のように、印刷配線とのはんだ接合などが必要なくなるため、はんだ接合などを行う場合に発生する接合箇所での断線を防止することができる。
【0015】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる断線検出回路が適用された通電回路の回路図である。
【図2】通電回路と断線検出回路の動作を表した図表である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる断線検出回路が適用された通電回路の回路図である。
【図4】通電回路と断線検出回路の動作を表したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、車両におけるブレーキ制御用の増圧制御弁に備えられたソレノイドを通電対象とする場合を例に挙げ、この通電対象の断線を検出する断線検出回路について説明する。
【0019】
図1は、本実施形態にかかる断線検出回路が適用された通電回路の回路図である。図1に示す通電回路によって増圧制御弁のソレノイド1への通電のオンオフを制御し、この通電回路におけるソレノイド1の断線、例えばソレノイド1自身の断線やソレノイド1と配線の電気的な接続箇所の断線などの様々な断線を断線検出回路によって検出する。
【0020】
増圧制御弁は、マスタシリンダと各ホイールシリンダとの間において各ホイールシリンダの増圧を制御するための弁であり、ノーマルオープン弁にて構成され、ソレノイド1への通電状態に応じて連通状態と遮断状態が切り替えられる。増圧制御弁は、通常時ブレーキ時にはソレノイド1への通電がオフされているため連通状態とされ、例えばアンチスキッド制御(ABS制御)における減圧制御や保持制御時にはソレノイド1への通電がオンされることで遮断状態とされる。アンチスキッド制御における減圧制御時のように、車輪がロックしそうになってホイールシリンダ圧を減圧したいときに増圧制御弁のソレノイド1が断線すると、増圧制御弁が連通状態となって減圧ができなくなり、車輪がロックして制動力を低下させてしまう。このため、増圧制御弁のソレノイド1への通電をオンしているときのソレノイド1の断線に対する対策が重要となる。このため、本実施形態では、このような増圧制御弁のソレノイド1の断線検出を断線検出回路によって行っている。
【0021】
図1に示すように、通電回路は、電源+BSに繋がる電源供給ライン2に増圧制御弁のソレノイド1を備えることにより、電源供給ライン2を通じてソレノイド1に対する電源+BSからの電圧印加を行う。この通電回路では、ソレノイド1のハイサイド側に備えられたソレノイドリレーを構成する第1トランジスタ3と、ソレノイド1のローサイド側に備えられたソレノイドドライバーを構成する第2トランジスタ4をオンオフ制御することにより、ソレノイド1への通電のオンオフが切り替えられ、ソレノイド1への通電状態に基づいて増圧制御弁の弁位置の切替えが行われる。
【0022】
ソレノイドリレーを構成する第1トランジスタ3とソレノイドドライバーを構成する第2トランジスタ4は、本実施形態ではそれぞれPchMOSFET、NchMOSFETによって構成され、ゲート電圧の印加によってオンされる。第1トランジスタ3についてはソレノイド1に対する電源スイッチの役割を果たし、基本的にはオン状態とされ、第2トランジスタ4のオンオフを制御することで増圧制御弁のソレノイド1への通電のオンオフの切替えを行っている。このため、第1トランジスタ3がオンされている状態において、第2トランジスタ4がオフの状態だとソレノイド1への通電がオフとなるため増圧制御弁は連通状態となり、第2トランジスタ4がオンされるとソレノイド1への通電がオンされて増圧制御弁は遮断状態となる。
【0023】
なお、図1中では図示していないが、第1、第2トランジスタ3、4のゲート電圧はゲート駆動回路によって発生させられ、本実施形態のようにブレーキ制御用の増圧制御弁のソレノイド1を通電対象とする場合には、ブレーキECUがゲート駆動回路の役割を果たす。
【0024】
そして、このように構成される通電回路に対して、断線検出回路が適用されている。具体的には、図1に示すように、断線検出回路は、第1トランジスタ3と増圧制御弁のソレノイド1との間に接続されたコイル5と、コイル5とソレノイド1の間の電位、つまりコイル5の両端電位のうちのソレノイド1側の電位である通電対象側電位を検出することで断線検出を行う検出部6とを有した構成とされている。
【0025】
コイル5は、電源供給ライン2中に、通電対象となるソレノイド1とは別部材として備えられている。このコイル5は、ディスクリート素子とされていても良いが、電源+BSとソレノイド1とを接続している電源供給ライン2を回路基板中に印刷配線にて構成し、この印刷配線を部分的にコイル形状パターンとすることで形成されると好ましい。このように印刷配線によってコイル5を構成すれば、ディスクリート素子とする場合のように、電源供給ライン2とのはんだ接合などが必要なくなるため、はんだ接合などを行う場合に発生する接合箇所での断線を防止することができる。
【0026】
検出部6は、通電対象側電位検出手段および断線検出手段を構成するもので、本実施形態ではツェナーダイオード6aとNPNトランジスタ6bと抵抗6cおよびマイコン6dを有した構成とされている。
【0027】
ツェナーダイオード6aは、コイル5とソレノイド1の間にカソード側を向けて接続されており、通電対象側閾電位を設定する。すなわち、ツェナーダイオード6aのツェナー降伏電圧Vzが通電対象側閾電位を設定している。ツェナー降伏電圧Vzは、電源+BSよりも大きく設定され、かつ、フライバック時に印加されるフライバック電圧よりも小さく設定される。NPNトランジスタ6bは、ベースがツェナーダイオード6aのアノードに接続されると共に、コレクタが抵抗6cに接続され、エミッタがGNDに接続されている。抵抗6cは、定電圧源VCCとNPNトランジスタ6bのコレクタとの間に接続されている。これら、ツェナーダイオード6a、NPNトランジスタ6bおよび抵抗6cが本実施形態では通電対象側電位検出手段を構成している。マイコン6dは、断線検出手段に相当するもので、抵抗6cとNPNトランジスタ6bの間の電位をAD変換して入力し、その入力電位がハイレベルかローレベルかに基づいて、通電対象側電位が所定の通電対象側閾電位以上となったことを判別し、ソレノイド1の断線を検出する。具体的には、マイコン6dは、第2トランジスタ4のオンオフ切替えのタイミングが把握できるようにしてあり、第2トランジスタ4の状態と読込んだ電圧値のレベルに基づいてソレノイド1の断線を検出している。
【0028】
なお、図1では断線検出回路にマイコン6dとブレーキECUとの関係について図示していないが、マイコン6dとブレーキECU(ゲート駆動回路)とを別構成としても良いし、ブレーキECUをマイコン6dとして用いても良い。ただし、ブレーキECUをマイコン6dとして用いる場合には、自分自身で第2トランジスタ4の状態を把握しているため、マイコン6dとブレーキECUとを別構成とする場合のように、ブレーキECUからマイコン6dに対して第2トランジスタ4の状態を伝えなくても良くなる。
【0029】
以上のように、断線検出回路が適用された通電回路が構成されている。このような構成の通電回路の作動およびそれに適用された断線検出回路の作動について説明する。
【0030】
まず、図示しないイグニッションスイッチがオフからオンに切り替えられると、ブレーキECUなどのゲート駆動回路を通じて第1トランジスタ3へゲート電圧が印加され、第1トランジスタ3がオンされる。
【0031】
そして、増圧制御弁の動作確認のためのイニシャルチェックやアンチスキッド制御などのブレーキ制御が行われていないとき、例えば通常ブレーキ時には、増圧制御弁を連通状態としてマスタシリンダに発生させられるブレーキ液圧が各ホイールシリンダに伝えられる状況とされる。このため、増圧制御弁のソレノイド1への通電はオフとなる。この場合には、コイル5とソレノイド1との間の通電対象側電位が電源+BSの電位となり、ツェナーダイオード6aのツェナー降伏電圧Vzより小さくなる。したがって、NPNトランジスタ6bはベースに電流が流れないためオンせず、マイコン6dには定電圧源VCCの電圧が入力され、入力電位がハイレベルとなる。
【0032】
また、イニシャルチェック時やアンチスキッド制御の減圧制御や保持制御時には、増圧制御弁を遮断状態としてマスタシリンダのブレーキ液圧がホイールシリンダに伝わらないようにされる。このため、第2トランジスタ4がオンされ、増圧制御弁のソレノイド1への通電がオンされる。この場合には、第1、第2トランジスタ3、4での電圧降下分を無視すると、通電対象側電位は電源+BSの電圧がコイル5とソレノイド1とによって分圧された電圧となり、ツェナーダイオード6aのツェナー降伏電圧Vzより小さくなる。したがって、NPNトランジスタ6bはベースに電流が流れないためオンせず、マイコン6dには定電圧源VCCの電圧が入力され、入力電位がハイレベルとなる。
【0033】
その後、第2トランジスタ4をオフしてソレノイド1への通電をオンからオフに切替えると、コイル5に流されていた電流が遮断されることからフライバックが発生し、通電対象側電位がフライバック電圧となり、ツェナーダイオード6aのツェナー降伏電圧Vzよりも大きくなる。これにより、NPNトランジスタ6bはべースに電流が流れてオンし、マイコン6dにはNPNトランジスタ6bのオン電圧が入力され、入力電位がローレベルとなる。そして、フライバックが収まると、通電対象側電位が再び電源+BSの電位となり、ツェナーダイオード6aのツェナー降伏電圧Vzより小さくなるため、NPNトランジスタ6bがオフされ、マイコン6dの入力電位はハイレベルに戻る。
【0034】
一方、ソレノイド1に対して通電を行っている最中にソレノイド1が断線した場合には、第2トランジスタ4をオンからオフに切替えた場合と同様の状態となるため、第2トランジスタ4をオンしているにもかかわらず、コイル5への通電が遮断されてフライバックが発生することになる。このため、瞬間的にマイコン6dの入力電圧がローレベルになったのちフライバックが収まると再びハイレベルに戻る。したがって、マイコン6dでは、第2トランジスタ4をオンしている際に入力電位がローレベルに変化した場合には、ソレノイド1が断線したと検出する。
【0035】
図2は、上記の動作をまとめた図表である。この図に示すように、第2トランジスタ4がオンの際にマイコン6dの入力電位がハイレベル(Hi)であれば断線が発生しておらず正常である。第2トランジスタ4がオンからオフに切り替わった際にマイコン6dの入力電位がローレベル(Low)になったのちハイレベルに戻る場合にも断線が発生しておらず正常である。そして、第2トランジスタ4がオンしているにもかかわらず、マイコン6dの入力電位がローレベルになったのちハイレベルに戻る場合には断線が発生していて異常と検出する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の通電回路に適用した断線検出回路では、通電回路に通電対象となるソレノイド1とは別に断線検出用にコイル5を備え、通電回路のうちのコイル5と通電対象となるソレノイド1の間の部分の電位を通電対象側電位として検出している。そして、通電対象側電位が通電対象側閾電位以上となった場合に、ソレノイド1の断線、コイル5よりもローサイド側の部分の様々な断線を検出する。
【0037】
このようにして断線を検出することで、ソレノイド1への通電を行うための第2トランジスタ4をオンしたままの状態で通電回路の断線を検出することが可能となる。そして、第2トランジスタ4をオンしたままの状態で断線検出できることから、第2トランジスタ4をオフに切替えなければ断線検出できない場合のように、増圧制御弁の駆動に影響を与えないで済む。
【0038】
なお、ソレノイド1の断線の検出を行う断線検出回路としては、ソレノイド1のローサイド側に断線検出抵抗を備え、その断線検出抵抗の両端電圧に基づいて通電回路に電流が流れているか否かを判別し、断線検出を行うというものも想定される。しかしながら、このような断線検出回路では、断線検出抵抗の両端電圧それぞれをモニターするためのモニター回路が必要になり、部品点数が増加する。この点からも、本実施形態のように、通電対象側電位のみに基づいて断線検出が行えるような構成とすることで、部品点数の増加を少なくすることが可能となる。
【0039】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してコイル5のインダクタンスLを小さくすることが可能となるように断線検出回路の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0040】
上記第1実施形態では、コイル5と検出回路6を備えた断線検出回路によってソレノイド1の断線、より詳しくはコイル5よりもローサイド側での断線を検出するようにしている。しかしながら、通電回路中に通電対象となるソレノイド1とは別にコイル5を備えることになるため、ソレノイド1の通電制御性向上の観点からは、コイル5のインダクタンスLをできる限り小さくする方が好ましい。その反面、的確な断線検出が行えるようにするという観点からは、コイル5のインダクタンスLは大きい方が好ましい。すなわち、コイル5のインダクタンスLを小さくするほどソレノイド1の断線時に発生するフライバック電圧が小さくなるため、それに合せて通電対象側閾電位を小さく設定しなければならないが、この場合、電源ノイズをフライバック電圧として認識してしまい、電源ノイズなのに断線が検出されるという誤検出が懸念される。したがって、本実施形態では、コイル5のインダクタンスLを小さくしつつ、電源ノイズ時に断線が検出されるという誤検出が為されないようにする。
【0041】
図3は、本実施形態にかかる断線検出回路が適用された通電回路の回路図である。この図に示されるように、本実施形態では、検出部6により、第1トランジスタ3とコイル5との間の電位、つまりコイル5に対する電源側電位も検出する。本実施形態の検出部6は、第1実施形態で説明したツェナーダイオード6a、NPNトランジスタ6bおよび抵抗6cと同様の構成のツェナーダイオード6e、NPNトランジスタ6fおよび抵抗6gを備えている。
【0042】
ツェナーダイオード6eは、第1トランジスタ3とコイル5の間にカソード側を向けて接続されており、電源側電位の閾電位を設定する。すなわち、ツェナーダイオード6eのツェナー降伏電圧Vzが閾電位を設定しており、例えばツェナー降伏電圧Vzは、ツェナーダイオード6aのツェナー降伏電圧Vzと等しくされる。NPNトランジスタ6fは、ベースがツェナーダイオード6eのアノードに接続されると共に、コレクタが抵抗6gに接続され、エミッタがGNDに接続されている。抵抗6gは、定電圧源VCCとNPNトランジスタ6fのコレクタとの間に接続されている。そして、抵抗6gとNPNトランジスタ6fの間の電位がマイコン6dにAD変換して入力されるようになっている。本実施形態では、これらツェナーダイオード6e、NPNトランジスタ6fおよび抵抗6gが電源側電位検出手段を構成している。
【0043】
このように本実施形態にかかる断線検出回路が適用された通電回路が構成されている。このような構成の通電回路の作動およびそれに適用された断線検出回路の作動について説明する。
【0044】
本実施形態では、第2トランジスタ4のオンオフの状態とコイル5のハイサイド側となる電源側電位とローサイド側となる通電対象側電位のレベルに基づいて断線検出を行う。
【0045】
まず、図示しないイグニッションスイッチがオフからオンに切り替えられると、ブレーキECUなどのゲート駆動回路を通じて第1トランジスタ3へゲート電圧が印加され、第1トランジスタ3がオンされる。
【0046】
そして、増圧制御弁の動作確認のためのイニシャルチェックやアンチスキッド制御などのブレーキ制御が行われていないとき、例えば通常ブレーキ時には、増圧制御弁を連通状態としてマスタシリンダに発生させられるブレーキ液圧が各ホイールシリンダに伝えられる状況とされる。このため、増圧制御弁のソレノイド1への通電はオフとなる。この場合には、コイル5のハイサイド側となる電源側電位とローサイド側となる通電対象側電位が共に電源+BSの電位となり、ツェナーダイオード6a、6eのツェナー降伏電圧Vzより小さくなる。したがって、NPNトランジスタ6b、6fはベースに電流が流れないためオンせず、マイコン6dには抵抗6cとNPNトランジスタ6bとの間の電位(以下、第1入力電位という)として定電圧源VCCの電圧が入力されると共に、抵抗6gとNPNトランジスタ6fの間の電位(以下、第2入力電位という)として定電圧源VCCの電圧が入力される。つまり、第1、第2入力電位が共にハイレベルとなる。
【0047】
また、イニシャルチェック時やアンチスキッド制御の減圧制御や保持制御時には、増圧制御弁を遮断状態としてマスタシリンダのブレーキ液圧がホイールシリンダに伝わらないようにされる。このため、増圧制御弁のソレノイド1への通電がオンされる。この場合には、第1、第2トランジスタ3、4での電圧降下分を無視すると、電源側電位は電源+BSの電圧となり、通電対象側電位は電源+BSの電圧がコイル5とソレノイド1とによって分圧された電圧となる。したがって、電源側電位と通電対象側電位は共にツェナーダイオード6a、6eのツェナー降伏電圧Vzより小さくなる。よって、NPNトランジスタ6b、6fはベースに電流が流れないためオンせず、マイコン6dには第1、第2入力電位として定電圧源VCCの電圧が入力され、入力電位がハイレベルとなる。
【0048】
その後、ソレノイド1への通電をオンからオフに切替えると、コイル5に流されていた電流が遮断されることからフライバックが発生し、通電対象側電位がフライバック電圧となり、ツェナーダイオード6aのツェナー降伏電圧Vzよりも大きくなる。しかし、電源側電位についてはフライバック電圧の影響を受けないため、ツェナーダイオード6eのツェナー降伏電圧Vzよりも小さいままとなる。このため、NPNトランジスタ6bについてはべースに電流が流れてオンし、NPNトランジスタ6fについてはベースに電流が流れずオフとなるため、マイコン6dには第1入力電位としてNPNトランジスタ6bのオン電圧が入力されると共に、第2入力電位として定電圧源VCCの電圧が入力される。したがって、第1入力電位はローレベル、第2入力電位はハイレベルとなる。そして、フライバックが収まると、通電対象側電位が再び電源+BSの電位となり、ツェナーダイオード6aのツェナー降伏電圧Vzより小さくなるため、NPNトランジスタ6bがオフされ、マイコン6dに入力される第1入力電位もハイレベルに戻る。
【0049】
一方、ソレノイド1に対して通電を行っている最中にソレノイド1が断線した場合には、第2トランジスタ4をオンからオフに切替えた場合と同様の状態となるため、第2トランジスタ4をオンしているにもかかわらず、コイル5への通電が遮断されてフライバックが発生することになる。このため、マイコン6dの入力電位のうち第2入力電位についてはハイレベルの状態で、第1入力電位については瞬間的にローレベルになったのちフライバックが収まると再びハイレベルに戻る。したがって、マイコン6dでは、第2トランジスタ4をオンしている際に第1入力電位がローレベルに変化した場合には、ソレノイド1が断線したと検出する。
【0050】
そして、第1、第2トランジスタ3、4を共にオンしているときに電源供給ライン2に電源ノイズが重畳されたときには、コイル5のハイサイド側とローサイド側の両方でその電源ノイズが重畳され、同相の電位レベル上昇として現れる。このため、電源ノイズが大きくて通電対象側電位がツェナーダイオード6aのツェナー降伏電圧Vzを超えると、電源側電位もツェナーダイオード6eのツェナー降伏電圧Vzを超えることになり、マイコン6dに入力される第1、第2入力電位が同時にローレベルになる。したがって、第2トランジスタ4がオンしている際に仮に第1入力電位がローレベルになったとしても、その時点で第2入力電位がハイレベルになっている場合にのみソレノイド1の断線と検出し、第2入力電位がローレベルであればソレノイド1の断線と検出しないようにする。
【0051】
図4は、上記の動作を表したタイミングチャートである。この図に示すように、第2トランジスタ4をオフしてソレノイド1への通電をオフすると、第2入力電位はハイレベルであるが第1入力電位はローレベルとなる。また、断線時には、第2トランジスタ4をオンしているが、第1入力電位はローレベルとなる。この場合には、断線が発生して異常と検出する。そして、電源ノイズ発生時には、第2トランジスタ4をオンしているときに、第1、第2入力電位が共にローレベルになる。この場合には、断線ではなく電源ノイズであるため、断線と検出しないようにする。
【0052】
このように、通電対象側電位に加えて電源側電位を検出するようにすれば、通電対象側電位が通電対象側閾電位以上となった時点に、電源側電位が所定の電源側閾電位未満である場合に、通電回路のうちコイル5よりもローサイド側の部分が断線したことを検出することができる。このようにすれば、コイル5のインダクタンスLを小さくしても、電源ノイズが発生した際にフライバック電圧として認識されないようにでき、電源ノイズなのに断線が検出されるという誤検出をしてしまうことを防止できる。
【0053】
(他の実施形態)
上記各実施形態では通電対象としてソレノイドを例に挙げて説明したが、ソレノイド以外の通電対象に対して電流を流す通電回路についても、上記断線検出回路を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…増圧制御弁のソレノイド、2…電源供給ライン、3、4…第1、第2トランジスタ、5…コイル、6…検出部、6a、6e…ツェナーダイオード、6b、6f…NPNトランジスタ、6c、6g…抵抗、6d…マイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源(+BS)に接続され、通電対象(1)に電流を流す通電回路に適用され、当該通電回路の断線を検出する断線検出回路において、
前記電源(+BS)と前記通電対象(1)との間に備えられたコイル(5)と、
前記通電回路のうち前記コイル(5)と前記通電対象(1)との間の電位である通電対象側電位を検出する通電対象側電位検出手段(6、6a〜6c)と、
前記通電対象側電位検出手段(6、6a〜6c)により検出された前記通電対象側電位が所定の通電対象側閾電位以上となったときに、前記通電回路のうち前記コイル(5)よりもローサイド側の部分が断線したことを検出する断線検出手段(6d)と、を備えていることを特徴とする断線検出回路。
【請求項2】
前記通電回路のうち前記電源(+BS)と前記コイル(5)との間の電位である電源側電位を検出する電源側電位検出手段(6、6e〜6g)を備え、
前記断線検出手段(6d)は、前記通電対象側電位検出手段(6、6a〜6c)により検出された前記通電対象側電位が前記通電対象側閾電位以上となった時点に、前記電源側電位検出手段(6、6e〜6g)により検出された前記電源側電位が所定の電源側閾電位未満である場合に、前記通電回路のうち前記コイル(5)よりもローサイド側の部分が断線したことを検出することを特徴とする請求項1に記載の断線検出回路。
【請求項3】
前記コイル(5)は、前記電源(+BS)と前記通電対象(1)との間を接続する印刷配線を部分的にコイル形状パターンとすることにより構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の断線検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−194056(P2012−194056A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58202(P2011−58202)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】